以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る偏波共用アンテナ100の構成を図1Aから図1Cを参照して説明する。なお、図1Aは、偏波共用アンテナ100の断面図、図1Bは、第1平面S1の平面図、図1Cは、給電線路形成面SFの平面図である。また、図1Aは、図1B、図1CのA−A’線矢視断面図に相当する。なお、図1A〜1Cにおいては、部材の識別のため、断面図以外であっても一部の部材にハッチングを示す。図1B、図1Cにおいては、位置関係を明確にするため、本来見えない一部の部材を一点鎖線で示している。また、図面を見やすくするため、断面図であっても一部の部材にはハッチングを施さないことがある。
また、以下の説明において、図1Aに示す偏波共用アンテナ100の幅方向をX軸方向、高さ方向をZ軸方向、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向をY軸方向とするXYZ直交座標系を設定し、これを適宜参照して説明する。また、以下の説明おいて、+Z軸方向から−Z軸方向のことを積層方向と称する。
図1A〜1Cに示すように、偏波共用アンテナ100は、第1誘電体層11と、第2誘電体層12と、環状導体層13と、第1給電線路14と、第1給電ポート15と、第2給電線路16と、第2給電ポート17と、基準電位導体層18と、導体ピン19と、を備える。
第1誘電体層11と第2誘電体層12とは、それぞれが平板状に形成され、積層されて、偏波共用アンテナ100全体を支持する誘電体層を構成している。第1誘電体層11は厚みt1を有し、第2誘電体層12は厚みt2を有し、積層方向からの平面視で、同一の矩形状の外形形状を有する。第1誘電体層11および第2誘電体層12は、例えば、テフロン(登録商標)、セラミック、エポキシ樹脂等の誘電性の素材から形成される。
なお、図1A〜1Cに示す偏波共用アンテナ100において、第1誘電体層11の+Z軸方向の主面を第1平面S1、第2誘電体層12の−Z軸方向の主面を第2平面S2、第1平面S1と第2平面S2の間に位置し、第1誘電体層11と接する第2誘電体層12の+Z軸方向の主面を給電線路形成面SFと称する。上述のとおり、第1誘電体層11と第2誘電体層12とは積層されているため、第1平面S1、給電線路形成面SF、第2平面S2の順にこれらの平面が積層配置される。
環状導体層13は、第1偏波および第2偏波を送受信するための放射素子である。環状導体層13は、積層方向からの平面視で、円の中央部分がくり抜かれた環状に形成されている。環状導体層13は、第1誘電体層11の第1平面S1に形成されている。
第1給電線路14と第2給電線路16とは、第2平面S2から見て第1平面S1側であり、かつ、第1平面S1および第2平面S2とは異なる位置に形成されている。図1A〜1Cに示す偏波共用アンテナ100においては、第1給電線路14と第2給電線路16とは、第1誘電体層11と第2誘電体層12とに挟まれた給電線路形成面SFに形成されている。第1給電線路14と第2給電線路16とは、積層方向からの平面視で、長方形状に形成されている。積層方向からの平面視において、第1給電線路14の延在方向と第2給電線路16の延在方向とは直角に交差する。第1給電線路14と第2給電線路16は、離間して配置されている。第1給電線路14と第2給電線路16とは、それぞれ、積層方向からの平面視で環状導体層13と重なる部分を有する。
第1給電ポート15は、円柱または円筒状に形成され、第2誘電体層12に形成された貫通孔を貫通し、一端で、第1給電線路14に接続され、他端部は、第1同軸コネクタ20a(図示せず)の信号線(内部導体)に接続されている。第1給電ポート15は、第1同軸コネクタ20aの信号線を介して外部の信号源に接続されている。第2給電ポート17は、円柱または円筒状に形成され、第2誘電体層12に形成された貫通孔を貫通し、一端で、第2給電線路16に接続され、他端部は、第2同軸コネクタ20bの信号線(内部導体)に接続されている。第2給電ポート17は、第2同軸コネクタ20bの信号線を介して外部の信号源に接続されている。なお、以下では、第1同軸コネクタ20aおよび第2同軸コネクタ20bを総称して同軸コネクタ20と呼ぶ。第1給電ポート15と第2給電ポート17には、送信時には、外部の信号源から同軸コネクタ20を介して送信対象の高周波信号が独立して給電される。また、受信時には、受信した高周波信号がそれぞれ第1給電ポート15と第2給電ポート17を介して同軸コネクタ20に出力される。
基準電位導体層18は、第2誘電体層12の第2平面S2に配置された導体層から構成され、その電位は基準電位(一例として、ゼロ電位である接地電位)になっている。なお、基準電位導体層18は、第1給電ポート15および第2給電ポート17から絶縁されている。また、基準電位導体層18は、同軸コネクタ20の外部導体と接続されている。
導体ピン19は、第1誘電体層11および第2誘電体層12に形成された貫通孔を貫通し、一端は基準電位導体層18に接続され、他端は、第1誘電体層11の第1平面S1の環状導体層13の中心位置に位置している。環状導体層13は、第1誘電体層11および第2誘電体層12により基準電位導体層18および導体ピン19から絶縁され、基準電位導体層18および導体ピン19と接続されていない。第1給電線路14および第2給電線路16は、第1誘電体層11および第2誘電体層12により導体ピン19から絶縁され、導体ピン19と接続されていない。導体ピン19は、基準電位導体層18に接続されているため、その電位は、基準電位と同じになっており、環状導体層13の中心位置の電位を基準電位に近づける。導体ピン19は、円柱状または円筒状に形成され、Z軸方向に延在し、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径の中央部分、すなわち、環状導体層13の重心CG1に、自身の重心CG2を合わせて配置されている。
環状導体層13と、第1給電線路14と、第2給電線路16と、基準電位導体層18とは、導体の膜、箔または板などから構成される。環状導体層13と、第1給電線路14と、第2給電線路16と、基準電位導体層18と、第1給電ポート15と、第2給電ポート17と、導体ピン19は、導体、例えば、銅、金またはアルミニウムなどから形成される。
なお、第1誘電体層11と第2誘電体層12とは、別体に形成されても、一体に形成されてもよい。
次に、上記構成を有する偏波共用アンテナ100の動作を説明する。送信動作時、送信対象の第1高周波信号と第2高周波信号(信号自体は同一でもよい)が、第1給電ポート15と第2給電ポート17に独立して給電される。第1高周波信号は、第1給電ポート15と第1給電線路14を介して環状導体層13に給電される。また、第2高周波信号は、第2給電ポート17と第2給電線路16を介して環状導体層13に給電される。第1高周波信号と第2高周波信号とが直交する方向から環状導体層13に給電されることから、環状導体層13は、主偏波面が互いに直交する第1偏波と第2偏波を放射する。
一方、受信動作時、偏波共用アンテナ100に到達した第1偏波と第2偏波とは、環状導体層13により受信され、第1偏波は、第1給電線路14を介して第1給電ポート15から出力され、第2偏波は、第2給電線路16を介して第2給電ポート17から出力される。
偏波共用アンテナ100において、第1高周波信号と第2高周波信号とを良好に送受信するためには、第1給電ポート15と第2給電ポート17との一方に給電した高周波信号が第1給電ポート15と第2給電ポート17との他方に出力してしまう程度(dB)を表すSパラメータであるS21またはS12の値を小さくする、即ち、アイソレーションを高く(良く)する必要がある。
この点に関し、環状導体層13が単独で存在していると仮定すると、積層方向からの平面視における環状導体層13の重心CG1が、理論上、高周波信号の基準電位(この例ではゼロ電位)となる。しかし、現実には、環状導体層13は単独では存在していないため、基準電位となる位置はずれる。このため、仮に導体ピン19が無い場合、環状導体層13の電位のXY面内における対称性が悪い。電位の対称性が悪いことは、アイソレーションを低くする原因となると考えられる。
そこで、本実施の形態1では、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、環状導体層13の内径内に基準電位となる位置を固定する。これにより、環状導体層13の電位のXY面内における対称性が良くなり、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができると考えられる。
次に、本実施の形態1における偏波共用アンテナ100を、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視における環状導体層13の内径内に配置した導体ピン19を、基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した。
まず、図1Bに示した第1誘電体層11および図1Cに示した第2誘電体層12のX軸方向の長さWxおよびY軸方向の長さWyを、40[mm]とした。環状導体層13の幅W1を2.7[mm]、環状導体層13の外半径aを8.0[mm]、環状導体層13の内半径bを5.3[mm]とした。導体ピン19の直径D2を2.5[mm]とした。第1給電線路14および第2給電線路16の長手方向の長さPLを9.6[mm]、短手方向の長さPwを3.0[mm]とした。積層方向からの平面視における導体ピン19の重心から第1給電線路14および第2給電線路16までの距離P0を、3.53[mm]とした。
第1誘電体層11の厚みt1を2.40[mm]、第2誘電体層12の厚みt2を4.80[mm]とした。第1誘電体層11および第2誘電体層12の比誘電率εrを2.6とした。第1給電ポート15および第2給電ポート17の直径D1を1.20[mm]とした。積層方向からの平面視において、第1給電ポート15の重心から環状導体層13の外縁までの距離Ps1を1.9[mm]、第1給電ポート15の重心から第1給電線路14の−Y軸方向の端部までの距離Ps2を3.3[mm]とした。また、積層方向からの平面視において、第2給電ポート17の重心から環状導体層13の外縁までの距離Ps1を1.9[mm]、第2給電ポート17の重心から第2給電線路16の+X軸方向の端部までの距離Ps2を3.3[mm]とした。
上述の条件により偏波共用アンテナ100を構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図2Aおよび図2Bに示す。図2Aは偏波共用アンテナ100における反射特性を示す図であり、図2Bは第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。図2A、図2Bでは、実線が導体ピン19を配置しなかった場合であり、破線が導体ピン19を配置した場合である。
一般的に、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下となる周波数帯域である。図2Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数はほぼ4[GHz]から5[GHz]である。したがって、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]が、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域となる。
次に、図2Bにおいて、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]では、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。このように、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることで、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域においてアイソレーションを高くすることができる。
以上のように、本実施の形態1に係る偏波共用アンテナ100によれば、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18と接続することにより、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができる。したがって、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域内において、アイソレーション特性が良好な偏波共用アンテナ100を得ることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1に合わせて配置するものとした。この発明は、これに限定されない。実施の形態2に係る偏波共用アンテナ100では、図3Aから図3Cに示すように、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を、環状導体層13の重心CG1より+X軸方向に水平移動し、第2給電線路16へ近づけたものである。なお、図3Aから図3Cに示す偏波共用アンテナ100の各構成は、導体ピン19の位置以外は実施の形態1と同様である。
次に、本実施の形態2における偏波共用アンテナ100を、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した。
積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2から第2給電線路16までの距離P01を2.53[mm]とした。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
上述の条件により偏波共用アンテナ100を構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aは偏波共用アンテナ100の反射特性を示す図であり、図4Bは第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。図4A、図4Bでは、実線が導体ピン19を配置しなかった場合であり、破線が、積層方向からの平面視において導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1に合わせて配置した場合であり、一点鎖点が、積層方向からの平面視において導体ピンの重心CG2を環状導体層13の重心CG1よりも第2給電線路16に近づけて配置した場合である。
一般的に、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下となる周波数帯域である。図4Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数は、ほぼ4[GHz]から5[GHz]である。したがって、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]が、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域となる。
次に、図4Bにおいて、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]では、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。特に、ほぼ周波数4.3[GHz]から5[GHz]においては、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1よりも第2給電線路16に近づけて配置した場合の方が、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1に合わせて配置した場合よりもS21およびS12の値が小さい。これは、環状導体層13だけでなく、第1給電線路14、第2給電線路16、第1給電ポート15および第2給電ポート17を含めた偏波共用アンテナ100全体の電位の対称性が、積層方向からの平面視において導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1に合わせて配置した場合よりも良くなっているためであると考えられる。
この例では、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1よりも第2給電線路16に近づけて配置した例で説明したが、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1よりも第1給電線路14に近づけて配置した場合でも同様である。このように、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1からずらして配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させた場合でも、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域においてアイソレーションを高くすることができる。
以上説明したように、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1からずらして配置し、導体ピン19を基準電位導体層18と接続しても、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができる。したがって、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域内において、アイソレーション特性が良好な偏波共用アンテナ100を得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、動作周波数帯域が1つの周波数帯域である偏波共用アンテナ100において、アイソレーションを高くする構成を例示した。この発明は、これに限定されない。実施の形態3では、動作周波数帯域を複数有する偏波共用アンテナ100Aにおいても、アイソレーションを高くする構成を示す。
図5Aから図5Dに、実施の形態3に係る偏波共用アンテナ100Aの構成を示す。図5Aは、偏波共用アンテナ100Aの断面図であり、図5Bは第1平面S1の平面図、図5Cは第3平面S3の平面図、図5Dは給電線路形成面SFの平面図である。図5Aの断面図は、図5B〜5DのA−A’線矢視断面図に相当する。
図5A〜5Dに示すように、偏波共用アンテナ100Aは、第1誘電体層11と、第2誘電体層12と、環状導体層13と、第1給電線路14と、第2給電線路16と、第1給電ポート15と、第2給電ポート17と、基準電位導体層18と、導体ピン19と、第3誘電体層21と、小型環状導体層22と、を備える。
第3誘電体層21は、第1誘電体層11と第2誘電体層12と同様に、平板状に形成されている。第1誘電体層11と第2誘電体層12と第3誘電体層21とは積層されて、偏波共用アンテナ100A全体を支持する誘電体層を構成している。第3誘電体層21は、厚みt3を有し、積層方向からの平面視で、第1誘電体層11および第2誘電体層12と同一の矩形状の外形形状を有する。第3誘電体層21は、例えば、テフロン(登録商標)、セラミック、エポキシ樹脂等の誘電性の素材から形成される。
なお、図5A〜5Dに示す偏波共用アンテナ100Aにおいて、第1誘電体層11と接する第3誘電体層21の+Z軸方向の主面を第3平面S3と称する。第3平面S3は、第1平面S1、第2平面S2および給電線路形成面SFとは異なる平面であり、第2平面S2から見て第1平面S1側に位置する。本実施の形態では、上述のとおり、第1誘電体層11と第2誘電体層12と第3誘電体層21とは、積層されている。このため、第1誘電体層11の+Z軸方向の主面である第1平面S1、第3平面S3、第3誘電体層21と接する第2誘電体層12の+Z軸方向の主面である給電線路形成面SF、第2誘電体層12の−Z軸方向の主面である第2平面S2の順にこれらの平面が積層配置される。
小型環状導体層22は、図5Bに示した環状導体層13と周波数帯域の異なる第3偏波および第4偏波を送受信するための放射素子である。小型環状導体層22は、積層方向からの平面視で、円の中央部分がくり抜かれた環状に形成されており、環状導体層13と内径および外径が異なっている。小型環状導体層22は、第3誘電体層21の第3平面S3に形成されている。
本実施の形態3では、積層方向からの平面視において、環状導体層13の重心CG1と小型環状導体層22の重心CG3とが合わせられている。
図5B〜5Dに示すように、第1給電線路14と第2給電線路16とは、それぞれ、積層方向からの平面視で、小型環状導体層22と重なる部分を有する。小型環状導体層22は、第1誘電体層11、第2誘電体層12、および第3誘電体層21により基準電位導体層18および導体ピン19から絶縁され、基準電位導体層18および導体ピン19と接続されていない。小型環状導体層22は、導体の膜、箔または板などから構成され、例えば、銅、金またはアルミニウムなどの導体から形成される。
導体ピン19は、第1誘電体層11、第2誘電体層12および第3誘電体層21に形成された貫通孔を貫通し、一端は基準電位導体層18に接続され、他端は、第1誘電体層11の第1平面S1の環状導体層13の中心位置に位置している。導体ピン19は、基準電位導体層18に接続されているため、その電位は基準電位と同じになっており、小型環状導体層22の中心位置の電位を基準電位に近づける。導体ピン19は、円柱状または円筒状に形成され、Z軸方向に延在し、積層方向からの平面視において、小型環状導体層22の内径の中央部分、すなわち、環状導体層13の重心CG1と小型環状導体層22の重心CG3とに、自身の重心CG2を合わせて配置されている。
以上の構成において、小型環状導体層22以外の構成は、実施の形態1と同様である。
なお、第1誘電体層11、第2誘電体層12、第3誘電体層21とは、別体に形成されても、一体に形成されてもよい。
次に、上記構成を有する偏波共用アンテナ100Aの動作を説明する。送信動作時、送信対象の第1高周波信号と第2高周波信号(信号自体は同一でもよい)が、第1給電ポート15と第2給電ポート17に独立して給電される。第1高周波信号は、第1給電ポート15と第1給電線路14を介して環状導体層13に給電される。また、第2高周波信号は、第2給電ポート17と第2給電線路16を介して環状導体層13に給電される。第1高周波信号と第2高周波信号とが直交する方向から環状導体層13に給電されることから、環状導体層13は、主偏波面が互いに直交する第1偏波と第2偏波を放射する。
また、送信対象の第1高周波信号および第2高周波信号とは周波数の異なる第3高周波信号および第4高周波信号(信号自体は同一でもよい)が、第1給電ポート15と第2給電ポート17に独立して給電される。第3高周波信号は、第1給電ポート15と第1給電線路14を介して小型環状導体層22に給電される。また、第4高周波信号は、第2給電ポート17と第2給電線路16を介して小型環状導体層22に給電される。第3高周波信号と第4高周波信号とが直交する方向から小型環状導体層22に給電されることから、小型環状導体層22は、主偏波面が互いに直交する第3偏波と第4偏波を放射する。
一方、受信動作時、偏波共用アンテナ100Aに到達した第1偏波と第2偏波とは、環状導体層13により受信される。第1偏波は、第1給電線路14を介して第1給電ポート15から出力され、第2偏波は、第2給電線路16を介して第2給電ポート17から出力される。
また、偏波共用アンテナ100Aに到達した第3偏波と第4偏波とは、小型環状導体層22により受信される。第3偏波は、第1給電線路14を介して第1給電ポート15から出力され、第4偏波は、第2給電線路16を介して第2給電ポート17から出力される。
偏波共用アンテナ100Aにおいて、第1高周波信号、第2高周波信号、第3高周波信号、および第4高周波信号を良好に送受信するためには、第1給電ポート15と第2給電ポート17との一方に給電した高周波信号が第1給電ポート15と第2給電ポート17との他方に出力してしまう程度(dB)を表すSパラメータであるS21またはS12の値を小さくする、即ち、アイソレーションを高く(良く)する必要がある。
この点に関し、小型環状導体層22が単独で存在していると仮定すると、積層方向からの平面視における小型環状導体層22の重心CG3が、理論上、高周波信号の基準電位(この例ではゼロ電位)となる。しかし、現実には、小型環状導体層22は単独では存在していないため、基準電位となる位置はずれる。このため、仮に導体ピン19が無い場合、小型環状導体層22の電位のXY面内における対称性が悪い。電位の対称性が悪いことは、アイソレーションを低くする原因となると考えられる。
そこで、本実施の形態3では、積層方向からの平面視において、小型環状導体層22の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に基準電位となる位置を固定する。これにより、環状導体層13および小型環状導体層22の電位のXY面内における対称性が良くなり、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができると考えられる。
なお、第1誘電体層11、第2誘電体層12、第3誘電体層21は、特許請求の範囲における誘電体層の一例である。また、環状導体層13は、特許請求の範囲における第1環状導体層の一例であり、小型環状導体層22は、特許請求の範囲における第2環状導体層の一例である。
次に、本実施の形態3における偏波共用アンテナ100Aを、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視において、小型環状導体層22の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した。
小型環状導体層22の幅W2を1.45[mm]とした。小型環状導体層22の外半径cを5.05[mm]、小型環状導体層22の内半径dを3.6[mm]とした。また、第1誘電体層11の厚みt1および第3誘電体層21の厚みt3を、1.20[mm]、第2誘電体層12の厚みt2を、4.80[mm]とした。第3誘電体層21の比誘電率εrを、2.6とした。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
上述の条件により偏波共用アンテナ100Aを構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図6Aおよび図6Bに示す。図6Aは、偏波共用アンテナ100Aにおける反射特性を示す図であり、図6Bは、第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。図6A、図6Bでは、実線が導体ピン19を配置しなかった場合であり、破線が導体ピン19を配置した場合である。
一般的に、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下である。図6Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数は、約4.2[GHz]から5.5[GHz]と、約6.4[GHz]から7[GHz]とである。したがって、ほぼ周波数4.2[GHz]から5.5[GHz]と、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]とが、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域となる。
次に、図6Bにおいて、ほぼ周波数4.2[GHz]から5.5[GHz]では、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。また、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]では、概ね周波数6.5[GHz]以上の周波数帯域において、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。このように、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内および小型環状導体層22の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、偏波共用アンテナ100Aの複数の動作周波数帯域においても、アイソレーションを高くすることができる。
以上のように、本実施の形態3に係る偏波共用アンテナ100Aによれば、積層方向からの平面視において、環状導体層13の内径内および小型環状導体層22の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18と接続することにより、偏波共用アンテナ100Aの複数の動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができる。したがって、偏波共用アンテナ100Aの複数の動作周波数帯域内において、アイソレーション特性が良好な偏波共用アンテナ100Aを得ることができる。
(実施の形態4)
実施の形態3では、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を小型環状導体層22の重心CG3に合わせて配置するものとした。この発明は、これに限定されない。実施の形態4に係る偏波共用アンテナ100Aでは、図7Aから図7Dに示すように、導体ピン19を小型環状導体層22の重心CG3より+X軸方向に水平移動し、第2給電線路16へ近づけたものである。なお、図7Aから図7Dに示す偏波共用アンテナ100Aの各構成は、導体ピン19の位置以外は実施の形態3と同様である。
次に、本実施の形態4における偏波共用アンテナ100Aを、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視において、小型環状導体層22の内径内に導体ピン19を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した。
積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心から第2給電線路16までの距離P02を、2.53[mm]とした。その他の構成については、実施の形態3と同様である。
上述の条件により偏波共用アンテナ100Aを構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図8Aおよび図8Bに示す。図8Aは、偏波共用アンテナ100Aの反射特性を示す図であり、図8Bは、第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。図8A、図8Bでは、実線が導体ピン19を配置しなかった場合であり、破線が、積層方向からの平面視において導体ピン19の重心CG2を小型環状導体層22の重心CG3に合わせて配置した場合であり、一点鎖点が、積層方向からの平面視において導体ピン19の重心CG2を小型環状導体層22の重心CG3よりも第2給電線路16に近づけて配置した場合である。
一般的に、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下である。図8Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数は、約4.2[GHz]から5.2[GHz]と、約6[GHz]から約7[GHz]である。したがって、ほぼ周波数4.2[GHz]から5.2[GHz]と、ほぼ周波数6[GHz]から7[GHz]が、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域となる。
次に、図8Bにおいて、ほぼ周波数4.2[GHz]から5.2[GHz]では、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。特に、ほぼ周波数4.5[GHz]から5[GHz]においては、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1よりも第2給電線路16に近づけて配置した場合の方が、導体ピン19の重心CG2を環状導体層13の重心CG1に合わせて配置した場合よりもS21およびS12の値が小さい。
ほぼ周波数6[GHz]から7[GHz]では、ほぼ周波数6.4[GHz]以上で、導体ピン19を配置した場合のほうが、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。特に、ほぼ周波数6.5[GHz]以上においては、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を小型環状導体層22の重心CG3よりも第2給電線路16に近づけて配置した場合でも、導体ピン19を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。このように、積層方向からの平面視において、小型環状導体層22の重心CG3からずらして導体ピン19の重心CG2を配置し、導体ピン19を基準電位導体層18に接続させた場合でも、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域においてアイソレーションを高くすることができる。
以上のように、本実施の形態4に係る偏波共用アンテナ100Aによれば、積層方向からの平面視において、導体ピン19の重心CG2を小型環状導体層22の重心CG3からずらして配置し、導体ピン19を基準電位導体層18と接続しても、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができる。したがって、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域内において、アイソレーション特性が良好な偏波共用アンテナ100Aを得ることができる。
(実施の形態5)
実施の形態1から4では、導体ピン19を1本とする構成を例示した。この発明は、これに限定されない。実施の形態5では、導体ピン19の代わりに、導体ピン19よりも径の細い複数本のピンを用いる構成を示す。
図9Aから図9Dに、実施の形態5に係る偏波共用アンテナ100Aの構成を示す。図9Aは、偏波共用アンテナ100Aの断面図であり、図9Bは第1平面S1の平面図、図9Cは第3平面S3の平面図、図9Dは給電線路形成面SFの平面図である。図9Aの断面図は、図9B〜9DのA−A’線矢視断面図に相当する。
偏波共用アンテナ100Aは、第1細径導体ピン191と、第2細径導体ピン192と、第3細径導体ピン193と、第4細径導体ピン194と、第5細径導体ピン195と、を備える。第1細径導体ピン191〜第5細径導体ピン195は、それぞれ、実施の形態1から4に例示した導体ピン19よりも径の小さな、円柱状または円筒状に形成されている。
第1細径導体ピン191〜第5細径導体ピン195は、第1誘電体層11、第2誘電体層12、および第3誘電体層21に形成された貫通孔を貫通し、一端は基準電位導体層18に接続され、他端は、第1誘電体層11の第1平面S1の環状導体層13の中心付近に位置している。第1細径導体ピン191〜第5細径導体ピン195は、基準電位導体層18に接続されているため、その電位は、基準電位と同じになっており、環状導体層13および小型環状導体層22の中心付近の電位を基準電位に近づける。
第1細径導体ピン191は、Z軸方向に延在し、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径の中央部分、すなわち、環状導体層13の重心CG1および小型環状導体層22の重心CG3に、自身の重心CG4を合わせて配置されている。第2細径導体ピン192は、Z軸方向に延在し、第1細径導体ピン191から+Y軸方向に一定距離離間して配置されている。第3細径導体ピン193は、Z軸方向に延在し、第1細径導体ピン191から−Y軸方向に一定距離離間して配置されている。第4細径導体ピン194は、Z軸方向に延在し、第1細径導体ピン191から+X軸方向に一定距離離間して配置されている。第5細径導体ピン195は、Z軸方向に延在し、第1細径導体ピン191から−X軸方向に一定距離離間して配置されている。
第2細径導体ピン192〜第5細径導体ピン195は、互いに一定距離離間して配置されている。なお、以下では、第1細径導体ピン191、第2細径導体ピン192、第3細径導体ピン193、第4細径導体ピン194、および第5細径導体ピン195を総称して、細径導体ピン197と称する。この他の構成は、実施の形態3と同様である。
本実施の形態5では、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に細径導体ピン197を配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18に接続させることにより、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に基準電位となる位置を固定することができる。これにより、実施の形態1から4に示した導体ピン19と同様に、環状導体層13および小型環状導体層22の電位のXY面内における対称性が良くなり、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができると考えられる。
次に、本実施の形態5における偏波共用アンテナ100Aを、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に、細径導体ピン197を配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した。
第1細径導体ピン191、第2細径導体ピン192、第3細径導体ピン193、第4細径導体ピン194、および第5細径導体ピン195の直径D2をそれぞれ、0.9[mm]とした。また、第1細径導体ピン191の+X軸方向の端面と第4細径導体ピン194の+X軸方向の端面との距離Pdを、1.35[mm]とした。同様に、第1細径導体ピン191の−X軸方向の端面と第5細径導体ピン195の−X軸方向の端面との距離Pd、第1細径導体ピン191の+Y軸方向の端面と第2細径導体ピン192の−Y軸方向の端面との距離Pd、および第1細径導体ピン191の−Y軸方向の端面と第2細径導体ピン192の+Y軸方向の端面との距離Pdを、それぞれ1.35[mm]とした。なお、この他の条件は、実施の形態3と同様である。
上述の条件により偏波共用アンテナ100Aを構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図10Aおよび図10Bに示す。図10Aは、偏波共用アンテナ100Aの反射特性を示す図であり、図10Bは、第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。図10A、図10Bにおいて、実線が細径導体ピン197を配置しなかった場合であり、破線が細径導体ピン197を配置した場合である。
一般的に、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下である。図10Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数は、約4[GHz]から5[GHz]と、約6.4[GHz]から7[GHz]とである。したがって、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]と、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]とが、偏波共用アンテナ100の動作周波数帯域となる。
次に、図10Bにおいて、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]では、細径導体ピン197を配置した場合のほうが、細径導体ピン197を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。また、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]では、概ね周波数6.7[GHz]以上の周波数帯域において、細径導体ピン197を配置した場合のほうが、細径導体ピン197を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。このように、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に複数のピンからなる細径導体ピン197を配置し、基準電位導体層18に接続させることにより、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域においてアイソレーションを高くすることができる。
以上のように、本実施の形態5に係る偏波共用アンテナ100Aによれば、複数のピンにより構成され、各ピンが離間した細径導体ピン197を、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18と接続した場合でも、導体ピン19と同様に、複数の周波数帯域において、アイソレーションを高くすることができる。したがって、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域内において、アイソレーション特性が良好な偏波共用アンテナ100Aを得ることができる。
(実施の形態6)
実施の形態5では、細径導体ピン197の各ピンを離間させて配置するものとした。この発明は、これに限定されない。実施の形態6では、細径導体ピン197の各ピンを接触させて配置するものとする。
図11Aから図11Dに、実施の形態6に係る偏波共用アンテナ100Aの構成を示す。図11Aは、偏波共用アンテナ100Aの断面図であり、図11Bは第1平面S1の平面図、図11Cは第3平面S3の平面図、図11Dは給電線路形成面SFの平面図である。図11Aの断面図は、図11B〜11DのA−A’線矢視断面図に相当する。
第1細径導体ピン191〜第5細径導体ピン195は、第1誘電体層11、第2誘電体層12、および第3誘電体層21に形成された貫通孔を貫通し、一端は基準電位導体層18に接続され、他端は、第1誘電体層11の第1平面S1の環状導体層13の中心付近に位置している。第1細径導体ピン191〜第5細径導体ピン195は、基準電位導体層18に接続されているため、その電位は、基準電位と同じになっており、環状導体層13および小型環状導体層22の中心付近の電位を基準電位に近づける。
第1細径導体ピン191は、Z軸方向に延在し、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径の中央部分、すなわち、環状導体層13の重心CG1および小型環状導体層22の重心CG3に、自身の重心CG4を合わせて配置されている。第2細径導体ピン192〜第5細径導体ピン195はそれぞれ、第1細径導体ピン191と離間せず、接触して配置されている。なお、第2細径導体ピン192〜第5細径導体ピン195は、互いに離間していても、接触していてもどちらでも良い。以下では、第1細径導体ピン191、第2細径導体ピン192、第3細径導体ピン193、第4細径導体ピン194、および第5細径導体ピン195を総称して、細径導体ピン197と称する。
なお、実施の形態6に係る偏波共用アンテナ100Aのこの他の各構成は、実施の形態5と同様である。
本実施の形態6では、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に細径導体ピン197を配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18に接続させることにより、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に基準電位となる位置を固定することができる。これにより、実施の形態1から4に示した導体ピン19と同様に、環状導体層13および小型環状導体層22の電位のXY面内における対称性が良くなり、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域におけるアイソレーションを高くすることができると考えられる。
次に、本実施の形態6における偏波共用アンテナ100Aを、以下の条件で作成した場合に、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に、細径導体ピン197を配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18に接続させることにより、アイソレーションを高くすることができるか否かを検証した
第1細径導体ピン191、第2細径導体ピン192、第3細径導体ピン193、第4細径導体ピン194、および第5細径導体ピン195の直径D2をすべて同じ大きさとし、直径D2を0.6[mm]、0.9[mm]、1.2[mm]、1.5[mm]の4種類に変化させた。なお、この他の条件は、実施の形態3と同様である。
上述の条件により偏波共用アンテナ100Aを構成した場合における、反射特性およびアイソレーション特性を図12Aおよび図12Bに示す。図12Aは、偏波共用アンテナ100Aの反射特性を示す図であり、図12Bは、第1給電ポート15と第2給電ポート17との間のアイソレーション特性を示す図である。
図12A、図12Bにおいて、実線が細径導体ピン197を配置しなかった場合であり、破線および一点鎖線が細径導体ピン197を配置した場合である。なお、破線のうち、小さい破線は細径導体ピン197の各ピンの直径D2が0.6[mm]のものであり、大きい破線は細径導体ピン197の各ピンの直径D2が1.2[mm]のものである。また、一点鎖線のうち、小さい一点鎖線のものは細径導体ピン197の各ピンの直径D2が0.9[mm]ものであり、大きい一点鎖線のものは細径導体ピン197の各ピンの直径D2が1.5[mm]のものである。
一般的に、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域は、反射係数が−10[dB]以下である。図12Aにおいて、反射係数が−10[dB]となる周波数は、約4[GHz]から5[GHz]と、約6.4[GHz]から7[GHz]とである。したがって、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]と、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]とが、偏波共用アンテナ100Aの動作周波数帯域となる。
次に、図12Bにおいて、ほぼ周波数4[GHz]から5[GHz]では、細径導体ピン197を配置した場合のほうが、細径導体ピン197を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。また、ほぼ周波数6.4[GHz]から7[GHz]では、概ね周波数6.5[GHz]以上の周波数帯域において、小型環状導体層22の内径内に細径導体ピン197を配置した場合のほうが、小型環状導体層22の内径内に細径導体ピン197を配置しなかった場合よりも、S21およびS12の値が小さい。このように、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に複数のピンからなる細径導体ピン197を配置し、基準電位導体層18に接続させることにより、偏波共用アンテナ100Aの複数の動作周波数帯域においてアイソレーションを高くすることができる。
以上のように、本実施の形態6に係る偏波共用アンテナ100Aによれば、複数のピンにより構成され、各ピンが接触した細径導体ピン197を、積層方向からの平面視において、環状導体層13および小型環状導体層22の内径内に配置し、細径導体ピン197を基準電位導体層18と接続した場合でも、導体ピン19と同様に、複数の周波数帯域において、アイソレーションを高くすることができる。
(変形例)
なお、本発明は、上記実施の形態1から6に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない部分での種々の修正は勿論可能である。
上記実施の形態1から6では、環状導体層13および小型環状導体層22を、積層方向からの平面視で円形状とした。これに限らず、例えば、図13Aおよび図13Bに示すように、積層方向からの平面視で楕円形状、図14Aおよび図14Bに示すように、積層方向からの平面視で四角形状としてもよい。
また、上記実施の形態1から4では、導体ピン19を、積層方向からの平面視で円形状としたが、例えば、図13Aおよび図13Bに示すように、積層方向からの平面視で楕円形状、図14Aおよび図14Bに示すように、積層方向からの平面視で四角形状としてもよい。さらに、上記実施の形態5および6では、細径導体ピン197の各ピンを積層方向からの平面視で円形状としたが、導体ピン19と同様に、例えば、積層方向からの平面視で楕円形状、積層方向からの平面視で四角形状としてもよい。
上記実施の形態1から6では、第1給電線路14および第2給電線路16を、積層方向からの平面視で長方形状とした。第1給電線路14および第2給電線路16のそれぞれの形状はこれに限らず、積層方向からの平面視において、第1給電線路14の延在方向と第2給電線路16の延在方向とが交差すれば、どのような形状であってもよい。また、上記実施の形態1から6では、第1給電線路14および第2給電線路16を、導体の膜、箔、板などから構成されるものとしたが、これ以外から構成されるものであってもよい。
上記実施の形態1から6では、積層方向からの平面視において、第1給電線路14の延在方向と第2給電線路16の延在方向とは、直角に交差するものとした。これに限らず、積層方向からの平面視において、交差する角度は、偏波共用アンテナ100(100A)が、実質的に直交偏波共用アンテナとして機能すれば、90°からずれていてもよい。
また、上記実施の形態1から6では、基準電位導体層18の電位はゼロ電位である接地電位になっているものとした。これに限らず、基準電位導体層18の電位は、任意の基準電位としてもよい。
また、上記実施の形態1から6では、導体ピン19および細径導体ピン197は、一端が基準電位導体層18に接続され、他端が第1誘電体層11の第1平面S1に位置しているものとした。これに限らず、導体ピン19は、例えば図15A、図15Bに示すように、一端が基準電位導体層18に接続され、他端が第1誘電体層11の第1平面S1よりも第2誘電体層12の第2平面S2に近い位置にあるようにしてもよい。なお、細径導体ピン197においても同様である。
また、上記実施の形態1および2では、環状導体層13が形成された第1平面S1、第1給電線路14および第2給電線路16が形成された給電線路形成面SF、基準電位導体層18が形成された第2平面S2の順にこれらの平面を積層配置するものした。これに限らず、例えば図16Aに示すように、第1給電線路14および第2給電線路16が形成された給電線路形成面SF、環状導体層13が形成された第1平面S1、基準電位導体層18が形成された第2平面S2の順にこれらの平面を積層配置してもよい。
また、上記実施の形態3から6では、特許請求の範囲における第2環状導体層の一例として、環状導体層13に対して内径および外径の小さい小型環状導体層22で説明しているが、第2環状導体層はこれに限られない。第2環状導体層は、環状導体層13と周波数帯域の異なる第3偏波および第4偏波を送受信するための放射素子として機能すればよいため、第2環状導体層は、環状導体層13に対して内径および外径の少なくとも一方が異なっていればよい。
また、上記実施の形態3から6では、環状導体層13が形成された第1平面S1、小型環状導体層22が形成された第3平面S3、第1給電線路14および第2給電線路16が形成された給電線路形成面SF、基準電位導体層18が形成された第2平面S2の順にこれらの平面を積層配置するものした。これに限らず、例えば図16Bに示すように、第1給電線路14および第2給電線路16が形成された給電線路形成面SF、小型環状導体層22が形成された第3平面S3、環状導体層13が形成された第1平面S1、基準電位導体層18が形成された第2平面S2の順にこれらの平面を積層配置してもよい。
また、上記実施の形態3から6および上述の変形例では、第1誘電体層11の+Z軸方向の主面である第1平面S1、第1誘電体層11と接する第3誘電体層21の+Z軸方向の主面である第3平面S3、第3誘電体層21と接する第2誘電体層12の+Z軸方向の主面である給電線路形成面SF、第2誘電体層12の−Z軸方向の主面である第2平面S2の順にこれらの平面が積層配置されるものとした。これに限らず、例えば図17に示すように、第3誘電体層21、第1誘電体層11、第2誘電体層12の順にこれらの誘電体層が積層され、第3誘電体層21の+Z軸方向の主面を第3平面S3とし、第3誘電体層21と接する第1誘電体層11の+Z軸方向の主面を第1平面S1としてもよい。この場合、第3平面S3、第1平面S1、第1誘電体層11に接する第2誘電体層12の+Z軸方向の主面である給電線路形成面SF、第2誘電体層12の−Z軸方向の主面である第2平面S2の順にこれらの平面が積層配置される。つまり、小型環状導体層22が形成される第3平面S3は、第1平面S1、第2平面S2および給電線路形成面SFとは異なる平面であり、第2平面S2から見て第1平面S1側に位置していればよい。
また、上記実施の形態1から6、および上述の変形例では、第1給電線路14および第2給電線路16を、誘電体層における同一の平面に配置するものとした。これに限らず、第1給電線路14および第2給電線路16を、誘電体層における同一の平面とは異なる位置に配置されるようにしてもよい。ここで、図18Aおよび図18Bにおいて、本来見えない第1給電線路14を一点鎖線で示す。例えば、図18Aにおいては、第1給電線路14が、第2給電線路16の配置された給電線路形成面SFよりも第1平面S1に近い位置に配置されている。また、例えば、図18Bにおいては、第1給電線路14は、給電線路形成面SFよりも第2平面S2に近い位置に配置されている。なお、第1給電線路14と第2給電線路16との配置は、逆にしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。