JP2021102694A - ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】紫外線、特に波長345nm近傍の領域の紫外線に対する偏光性能を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供する。【解決手段】ポリビニルアルコール(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有し、粒子(B)のアスペクト比が1.1以上10以下であり、上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、ポリビニルアルコールフィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法に関する。
紫外線偏光板は、蛍光分光光度計等の分光分析装置、紫外線を照射する露光装置、紫外線偏光サングラス等に用いられている。紫外線偏光板の構成部材としては、プリズム偏光子、偏光フィルム等が知られている。しかし、プリズム偏光子では、大型化が困難で、大面積の偏光を得ることが難しい。また、偏光フィルムとしては、延伸配向したポリビニルアルコール(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)フィルム等の基材に二色性色素であるヨウ素を含有させたヨウ素系偏光フィルムが知られている。ヨウ素系偏光フィルムは、大型化が容易であるという利点を有するが、紫外線光源からの発熱などによる耐久性が十分ではない。
そこで、金属等から形成されるグリッドを透明基板上に縞状に配置した紫外線用吸収型グリッド偏光素子が提案されている(特許文献1参照)。また、モノアゾ化合物又はその塩を一軸延伸されたPVAフィルムに含有させてなる近紫外偏光板用偏光膜が提案されている(特許文献2参照)。
特開2016−071138号公報 特開2002−357719号公報
特許文献1に記載のグリッド偏光素子は、高い耐久性を有すると考えられるが、プリズム偏光素子と同様に大型化が難しい。また、特許文献2に記載の偏光膜も、ヨウ素系偏光フィルムと比べて耐久性が向上すると考えられる。しかし、特許文献2に記載の偏光膜は、波長370〜400nmの近紫外領域において偏光性能を有するものであり、より低波長の領域の紫外線に対する偏光性能は十分ではない。例えば、YAGレーザ等の固体レーザの第三高調波(THG:355nm)、フォトリソグラフィーにおける露光で多用されるi線(365nm)など、波長345nm近傍の領域の紫外線に対応した偏光膜の要望もある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、紫外線、特に波長345nm近傍の領域の紫外線に対する偏光性能を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供することである。
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、PVA及び特定の金属イオンを含む原反フィルム(材料フィルム)を延伸した後に析出処理することにより、金属を含み延伸方向に配向した粒子が分散性良く析出すること、及び得られたPVAフィルムが波長345nm近傍の領域の紫外線に対する偏光性能を有することを見出し、これらの知見に基づいて更に検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]PVA(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有し、粒子(B)のアスペクト比が1.1以上10以下であり、上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、PVAフィルム;
[2]上記金属が亜鉛である上記[1]のPVAフィルム;
[3]波長345nmの紫外線における偏光度が5%以上である、上記[1]又は[2]のPVAフィルム;
[4]波長540nmの可視光における透過率が40%以上である、上記[1]〜[3]のいずれかのPVAフィルム;
[5]PVA(A)100質量部に対する上記金属の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である、上記[1]〜[4]のいずれかのPVAフィルム;
[6]一軸延伸フィルムであり、粒子(B)の長軸が延伸方向に配向している、上記[1]〜[5]のいずれかのPVAフィルム;
[7]PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程、及び上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程を備え、上記延伸フィルムを得る工程が、上記PVA及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程、又は上記PVAを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程であり、上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、PVAフィルムの製造方法;
に関する。
本発明によれば、紫外線、特に波長345nm近傍の領域の紫外線に対する偏光性能を有するPVAフィルム、及びこのようなPVAフィルムの製造方法を提供することができる。
図1は、実施例1のPVAフィルムの微分干渉顕微鏡画像である。
以下に本発明のPVAフィルム及びその製造方法について詳細に説明する。
<PVAフィルム>
本発明のPVAフィルムは、PVA(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有する。
(PVA(A))
PVA(ポリビニルアルコール)(A)は、通常、本発明のPVAフィルムの主成分である。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)の含有量としては、例えば50質量%以上99質量%が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましい場合もあり、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい場合もある。
PVA(A)は、ビニルアルコール単位(−CH−CH(OH)−)を主の構造単位として有する重合体である。PVA(A)は、ビニルアルコール単位の他、ビニルエステル単位やその他の単位を有していてもよい。
PVA(A)としては、ビニルエステルの1種又は2種以上を重合して得られるポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロペニル等が挙げられる。ビニルエステルの中でも、製造の容易性、入手の容易性、コスト等の点から、分子中にビニルオキシカルボニル基(HC=CH−O−CO−)を有する化合物が好ましく、酢酸ビニルがより好ましい。
ポリビニルエステルは、単量体として1種又は2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたポリビニルエステルがより好ましい。本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、1種又は2種以上のビニルエステルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合樹脂であってもよい。
共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の割合の上限は、共重合樹脂を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、5モル%がさらに好ましく、1モル%がよりさらに好ましい。
ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜30のα−オレフィン;(メタ)アクリル酸又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミド又はその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、又はその塩、エステル若しくは酸無水物;イタコン酸、又はその塩、エステル若しくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;不飽和スルホン酸又はその塩などを挙げることができる。
ポリビニルエステルは、上記単量体の1種又は2種以上に由来する構造単位を有することができる。
PVA(A)としては、グラフト共重合がされていないものを好ましく使用することができる。但し、本発明の効果を大きく損なわない範囲内であれば、PVA(A)は1種又は2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。グラフト共重合は、ポリビニルエステル及びそれをけん化することにより得られるPVAのうちの少なくとも一方に対して行うことができる。グラフト共重合可能な単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体;不飽和スルホン酸又はその誘導体;炭素数2〜30のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステル又はPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル又はPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
PVA(A)はそのヒドロキシ基の一部が架橋されていてもよいし、架橋されていなくてもよい。また、PVA(A)はそのヒドロキシ基の一部がアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物などと反応してアセタール構造を形成していてもよい。
PVA(A)の重合度の下限としては、1,000が好ましく、1,500がより好ましく、1,700がさらに好ましい。PVA(A)の重合度が上記下限以上であることにより、PVAフィルムの柔軟性を向上させることができる。一方、この重合度の上限としては、10,000が好ましく、8,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。PVA(A)の重合度が上記上限以下であることにより、PVA(A)の製造コストの上昇や製膜時における不良発生を抑制することができる。なお、PVAの重合度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
PVA(A)のけん化度は、PVAフィルムの耐湿熱性が良好になることから、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、99.3モル%以上であることが特に好ましい。PVA(A)のけん化度の上限は100モル%であってよい。なお、PVA(A)のけん化度とは、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対するビニルアルコール単位のモル数の割合(モル%)をいう。けん化度は、JIS K6726−1994の記載に準じて測定することができる。
(粒子(B))
粒子(B)は、アスペクト比が1.1以上10以下の粒子である。粒子(B)は、通常、棒状の粒子である。上記アスペクト比は、2.0以上9.6以下が好ましく、3.0以上9.2以下がより好ましく、4.0以上8.8以下がさらに好ましく、5.0以上8.4以下がよりさらに好ましく、6.0以上8.0以下が特に好ましい。粒子(B)のアスペクト比が1.1以上であることで、紫外線に対する十分な偏光性能を発揮することができる。一方、粒子(B)のアスペクト比が10以下であることで、生産性を高めることができ、また、十分な可視光透過性を発揮することができる。
なお、粒子(B)のアスペクト比とは、短軸方向の長さ(短径)に対する長軸方向の長さ(長径)の比(長径/短径)をいう。長軸方向とは最も粒径が長い方向をいう。短軸方向とは、長軸方向に垂直な方向をいう。上記長軸方向及び短軸方向は、PVAフィルムを法線方向視で観察した際の粒子(B)の形状に基づく。また、アスペクト比は、微分干渉電子顕微鏡などによりPVAフィルムを法線方向視で観察したときに観察される任意の10個の粒子(B)のそれぞれの測定値の平均値とする。
粒子(B)は、金属を含む。粒子(B)に含まれる金属は、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む。このような金属を含む粒子(B)を用いることで、紫外線に対する良好な偏光性能を発揮することができる。また、これらの金属は、後述する析出処理により効果的に粒子状に析出することからも好ましい。上記金属は、亜鉛及びマンガンの少なくとも一方を含むことが好ましく、亜鉛を含むことがより好ましい。また、上記金属は、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましく、亜鉛及びマンガンの少なくとも一方であることがより好ましく、亜鉛であることがさらに好ましい。上記金属として亜鉛を用いることで、紫外線に対する偏光性能が高まり、また、可視光透過性も高めることができる。
粒子(B)に含まれる金属は、金属単体として存在していてもよいし、化合物として存在していてもよい。化合物としては、酸化物、硫化物、窒化物等が挙げられる。これらの中でも、硫化物として存在していることが好ましい。すなわち、粒子(B)は、上記金属の硫化物の粒子であることが好ましい。金属がこのような形態で存在していることにより、紫外線に対する偏光性能をより高めることなどができる。また、金属の硫化物である場合、後述する析出処理を用いる方法により効果的に製造することができる。
本発明のPVAフィルムは、通常、一軸延伸フィルムであり、粒子(B)の長軸がこのPVAフィルムの延伸方向に配向していることが好ましい。このように、粒子(B)の長軸方向が延伸方向に配向している場合、紫外線に対する偏光性能がより良好なものとなる。なお、PVAフィルムの微分干渉顕微鏡観察を行うことで、粒子(B)の長軸が延伸方向に配向しているかを確認することができる。例えば、微分干渉顕微鏡で観察される任意の10個の粒子(B)のうち、PVAフィルムの延伸方向(PVA(A)の配向方向)と粒子(B)の長軸の方向とがなす鋭角が10°以下(さらには5°以下)である粒子(B)が、8個以上であることが好ましく、9個以上であることがより好ましく、10個であることがさらに好ましい。
粒子(B)の長径(長軸方向の長さ)としては、例えば10nm以上200μm以下が好ましく、100nm以上100μm以下がより好ましく、1μm以上50μm以下がさらに好ましい。粒子(B)の長径が10nm以上であることで、紫外線に対するより十分な偏光性能を発揮することができる。一方、粒子(B)の長径が200μm以下であることで、可視光透過性を高めることなどができる。また、長径は、微分干渉顕微鏡によりPVAフィルムを法線方向視で観察したときに観察される任意の10個の粒子(B)のそれぞれの測定値の平均値とする。
本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)100質量部に対する上記金属の含有量は、例えば0.01質量部以上20質量部以下であってよいが、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上9質量部以下がより好ましく、2質量部以上8質量部以下がさらに好ましく、3質量部以上7質量部以下がよりさらに好ましく、6質量部以下、5質量部以下又は4質量部以下がよりさらに好ましい場合もある。上記金属の含有量を0.1質量部以上とすることで、紫外線に対する偏光性能を高めることができる。一方、上記金属の含有量を10質量部以下とすることで、可視光、紫外線等の透過率を高めることができる。
本発明のPVAフィルムにおける上記金属(粒子(B)に含まれる金属)の含有量は、例えば0.01質量%以上20質量%以下であってよいが、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上9質量%以下がより好ましく、2質量%以上8質量%以下がさらに好ましく、3質量%以上7質量%以下がよりさらに好ましく、6質量%以下、5質量%以下又は4質量%以下がよりさらに好ましい場合もある。上記金属の含有量を0.1質量%以上とすることで、紫外線に対する偏光性能を高めることができる。一方、上記金属の含有量を10質量%以下とすることで、可視光、紫外線等の透過率を高めることができる。
(その他の成分)
本発明のPVAフィルムは、可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性等が高まり、その結果偏光性能がより良好なものとなる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、PVAフィルムの延伸性がより良好になることからグリセリンが好ましい。また、可塑剤は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のPVAフィルムにおける可塑剤の含有量は、PVA(A)100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上17質量部以下がより好ましく、4質量部以上14質量部以下がさらに好ましい。可塑剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して1質量部以上であることにより延伸性が向上し、PVAフィルムの偏光性能が高まる。一方、可塑剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して20質量部以下であることにより、PVAフィルムの表面に可塑剤がブリードアウトしてPVAフィルムの取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
また、本発明のPVAフィルムの原反フィルム(材料フィルム)を後述する製膜原液を用いて製造する場合には、製膜性が向上してフィルムの厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからの原反フィルムの剥離が容易になることから、当該製膜原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤が配合された製膜原液から原反フィルムを製造した場合には、最終的に得られるPVAフィルム中には界面活性剤が含有され得る。原反フィルムを製造するための製膜原液に配合される界面活性剤、ひいてはPVAフィルム中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型等が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等が好ましい。
これらの界面活性剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
原反フィルムを製造するための製膜原液中に界面活性剤を配合する場合、製膜原液中における界面活性剤の含有量、ひいてはPVAフィルム中における界面活性剤の含有量は製膜原液又はPVAフィルムに含まれるPVA(A)100質量部に対して0.01質量部以上0.5質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上0.3質量部以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して0.01質量部以上であることにより製膜性及び剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA(A)100質量部に対して0.5質量部以下であることにより、原反フィルム又はPVAフィルムの表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
本発明のPVAフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等、上記したPVA(A)、粒子(B)、可塑剤及び界面活性剤以外の他の成分を含有していてもよい。但し、これらの他の成分の含有量は、PVA(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましいことがあり、1質量部以下又は0.1質量部以下が好ましいこともある。
(物性、サイズ、用途等)
本発明のPVAフィルムは、波長345nmの紫外線に対する偏光性能を有する。本発明のPVAフィルムの波長345nmの紫外線における偏光度は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。一方、この波長345nmの紫外線における偏光度の上限は特に限定されないが、例えば80%であってよく、60%又は40%であってもよい。
本発明のPVAフィルムの波長345nmの紫外線における透過率の下限は、20%が好ましく、40%がより好ましく、50%がさらに好ましく、60%又は70%がよりさらに好ましい場合もある。波長345nmの紫外線における透過率が上記下限以上であることで、例えば本発明のPVAフィルムを分光分析装置、露光装置等の紫外線偏光板に用いた場合の紫外線光源の光量を下げることができる。一方、上記波長345nmの紫外線における透過率の上限は、例えば90%であってよく、80%、70%又は60%が好ましい場合もある。例えば本発明のPVAフィルムを偏光サングラスに用いる場合など、紫外線透過率が比較的低いことが好ましいこともある。
本発明のPVAフィルムの波長540nmの可視光における透過率としては、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上又は85%以上がさらに好ましい場合もある。例えば本発明のPVAフィルムを偏光サングラスに用いる場合などにおいては、可視光透過率が高いことが好ましい。本発明のPVAフィルムにおいて、このように可視光透過率が高い場合、使用用途を拡大することなどができる。一方、上記波長540nmの可視光における透過率の上限は、例えば99.9%であってよく、99%又は95%であってもよい。
本発明のPVAフィルムの平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば50μmであり、40μmが好ましく、30μmがより好ましく、20μm又は10μmがさらに好ましいこともある。一方、この平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。PVAフィルムの平均厚さが上記範囲であることで、取り扱い性などを高めることができる。平均厚さは、任意の5点における測定値の平均値とする。
本発明のPVAフィルムの形状に特に制限はないが、長尺のフィルムであることが好ましい。当該長尺のフィルムの長さは特に制限されず、偏光フィルム等の用途などに応じて適宜設定することができ、例えば、5m以上20,000m以下の範囲内にすることができる。当該長尺のフィルムの幅に特に制限はなく、例えば50cm以上とすることができるが、近年幅広の偏光フィルムが求められていることから1m以上であることが好ましく、2m以上であることがより好ましく、4m以上であることが更に好ましい。当該長尺のフィルムの幅の上限に特に制限はないが、当該幅があまりに広すぎると、実用化されている装置でPVAフィルム(偏光フィルム)を製造する場合に、均一に延伸することが困難になる傾向があることから、PVAフィルムの幅は7m以下であることが好ましい。
本発明のPVAフィルムの形状に特に制限はなく、単層フィルムであってもよく、多層フィルム(積層体)であってもよいが、積層(コート等)作業の煩雑さ・コストなどの観点から、単層フィルムであることが好ましい。
本発明のPVAフィルムは、通常、延伸されたフィルム(延伸フィルム)である。また、本発明のPVAフィルムは、紫外線偏光フィルムとして好適に用いられる。なお、延伸されていない形態のPVAフィルムも本発明の範囲内である。
本発明のPVAフィルムは、紫外線偏光フィルムとして、蛍光分光光度計等の分光分析装置、紫外光を照射する露光装置、偏光サングラス等に用いることができる。
<PVAフィルムの製造方法>
本発明のPVAフィルムの製造方法は特に限定されないが、粒子(B)の分散性を高めるために、原反フィルム(材料フィルム)に金属のイオンを含ませた後に一軸延伸を行い、析出処理を行うことで、金属イオンを粒子化させる方法が好ましい。原反フィルムとは、本発明のPVAフィルムを得る前の未延伸のPVAフィルムのことをさす。原反フィルムを延伸することで延伸フィルムが得られ、延伸フィルムを処理することで本発明のPVAフィルムが得られる。原反フィルムに金属イオンを含ませる方法に特に制限はないが、原反フィルムを製造する際に金属イオンを含ませる方法、及び原反フィルムから本発明のPVAフィルムを製造する際に金属イオンを含む水溶液中で一軸延伸することで原反フィルムに金属イオンを含ませる方法が好ましい。
すなわち、本発明のPVAフィルムの製造方法は、
PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程(工程B)、及び
上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程(工程C)
を備え、
上記延伸フィルムを得る工程(工程B)が、
上記PVA及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程(工程B1)、又は
上記PVAを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程(工程B2)
であり、
上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む。
当該製造方法は、
原反フィルムを製造する工程(工程A)
をさらに備えていてよい。
なお、当該製造方法は、通常、工程A、工程B及び工程Cの順に行うが、複数の工程を同時に行ってもよい。例えば、延伸を行いながら析出処理を行ってもよい。
以下、各工程について順に詳説する。
(工程A)
本工程では、PVAを含む原反フィルムを製造する。原反フィルムは、金属のイオンをさらに含有していてもよい。原反フィルムの製造方法は特に限定されず、厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができる。例えば、原反フィルムを構成するPVA、ならびに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤及び他の成分のうちの1種又は2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、並びに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、他の成分及び液体媒体のうちの1種又は2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤及び他の成分のうちの少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
製膜原液の調製に使用される上記液体媒体としては、例えば水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。これらのうちでも、環境に与える負荷が小さいことや回収性の点から水が好ましい。
上記工程B1を行う場合、製膜原液には、さらに金属のイオン又は金属塩(金属のイオンを含む塩)が含有される。金属塩としては、例えば金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属酢酸塩等が挙げられる。これらの塩は、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、得られるPVAフィルムの偏光性能がより良好になることから、金属硝酸塩(硝酸亜鉛、硝酸カドミウム、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト)が好ましい。製膜原液におけるPVA100質量部に対する金属塩の含有量としては、0.5質量部以上70質量部以下が好ましく、1質量部以上60質量部以下がより好ましく、2質量部以上50質量部以下がさらに好ましい。
製膜原液に含まれる各成分の具体的形態及び好適形態は、本発明のPVAフィルムに含まれる粒子(B)以外の各成分と同様である。また、製膜原液に含まれるPVA(A)、粒子(B)及び液体媒体以外の各成分のPVA(A)に対する具体的含有量及び好適含有量も、本発明のPVAフィルムに含まれる各成分と同様である。
製膜原液の揮発分率(製膜時に揮発や蒸発によって除去される液体媒体などの揮発性成分の製膜原液中における含有割合)は製膜方法、製膜条件等によっても異なるが、50質量部以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。製膜原液の揮発分率が50質量%以上であることにより、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、製膜原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ない原反フィルム及び最終的に得られるPVAフィルムの製造が容易になる。一方、製膜原液の揮発分率が95質量%以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的な原反フィルム及び最終的に得られるPVAフィルムの製造が容易になる。
上記した製膜原液を用いて原反フィルムを製膜する際の製膜方法としては、例えばキャスト製膜法、押出製膜法、湿式製膜法、ゲル製膜法等が挙げられ、キャスト製膜法及び押出製膜法が好ましい。これらの製膜方法は1種のみを採用しても、2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜方法の中でも押出製膜法が、厚み及び幅が均一で物性の良好な原反フィルムが得られることからより好ましい。原反フィルムには必要に応じて乾燥や熱処理を行うことができる。
熱処理温度に特に制限はなく、原反フィルムの膨潤度等に応じて適宜調整すればよい。熱処理温度としては、あまりに高いと原反フィルムの変色や劣化がみられることから、210℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることが更に好ましい。熱処理温度の下限としては、例えば100℃であり、120℃であってもよい。
熱処理時間に特に制限はなく、原反フィルムの膨潤度に応じて適宜調整すればよいが、本発明のPVAフィルムを効率よく製造する観点から、1秒以上30分以下が好ましく、3秒以上15分以下であることがより好ましい。
得られる原反フィルムの平均厚さの上限は特に制限されないが、例えば100μmであり、80μmが好ましく、60μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。一方、この平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましく、15μmがさらに好ましい。原反フィルムの平均厚みが上記範囲であることで、取り扱い性などを高めることができる。
得られる原反フィルムに含まれるPVA(A)、可塑剤、界面活性剤、及び他の成分の種類及び含有量に係る具体的形態及び好適形態は、本発明のPVAフィルムに含まれるこれらの各成分と同様である。また、原反フィルムが金属イオンを含む場合、この金属イオンの具体的及び好適な含有量は、本発明のPVAフィルムに含まれる金属の具体的及び好適な含有量と同様である。
(工程B1、B2)
本工程では、原反フィルムを延伸(通常、一軸延伸)し、PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る。原反フィルムが金属のイオンを含む場合は、水(水溶液)中で延伸する湿式延伸法、及び気中で延伸する乾式延伸法のいずれを採用してもよい(工程B1)。一方、原反フィルムが金属のイオンを含まない場合は、湿式延伸法を採用する(工程B2)。
(湿式延伸法)
原反フィルムに対する水中での一軸延伸は公知の方法により行うことができる。必要に応じて、原反フィルムに対して、膨潤処理、架橋処理、乾燥処理、熱処理等を施してもよい。膨潤処理、一軸延伸、架橋処理などの各処理の順序は特に制限されず、1つ又は2つ以上の処理を同時に行うこともできる。また、各処理の1つ又は2つ以上を2回又はそれ以上行うこともできる。
膨潤処理は、原反フィルムを水中に浸漬することにより行うことができる。水中に浸漬する際の水の温度としては、20℃以上40℃以下が好ましく、22℃以上38℃以下がより好ましく、25℃以上35℃以下がさらに好ましい。また、水中に浸漬する時間としては、例えば、0.1分以上5分以下が好ましく、0.5分以上3分以下がより好ましい。なお、水中に浸漬する際の水は純水に限定されず、各種成分が溶解した水溶液であってもよいし、水と水性媒体との混合物であってもよい。
架橋処理は、架橋剤を含む水溶液中に原反フィルムを浸漬することにより行うことができる。架橋工程を行うと、原反フィルムに架橋構造が導入され、比較的高い温度で一軸延伸を行うことができる。使用される架橋剤としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸塩などのホウ素化合物の1種又は2種以上を使用することができる。架橋剤を含む水溶液における架橋剤の濃度は1質量%以上15質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。架橋剤を含む水溶液の温度は、20℃以上50℃以下が好ましく、25℃以上40℃以下がより好ましい。
原反フィルムが金属のイオンを含まない場合、一軸延伸は、金属イオンを含む水溶液中で行う。金属イオンを含む水溶液としては、例えば金属硝酸塩水溶液、金属硫酸塩水溶液、金属酢酸塩水溶液等の金属塩の水溶液が挙げられる。これらのうちでも得られるPVAフィルムの偏光性能がより良好になることから、硝酸亜鉛水溶液中で一軸延伸を行うことが好ましい。水溶液中の硝酸亜鉛等の金属塩の濃度としては、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。上記水溶液は、併せてホウ酸やヨウ化カリウムを含有してもよく、その濃度は0.01質量%以上6質量%以下が好ましい。
一軸延伸における延伸温度は、30℃以上90℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましく、50℃以上70℃以下がさらに好ましい。
(乾式延伸法)
原反フィルムに対する気中での一軸延伸は公知の方法により行うことができる。乾式延伸法においては、一軸延伸を室温で行ってもよく、加熱しつつ延伸を行ってもよく、原反フィルムを吸水させた後に延伸を行ってもよい。一軸延伸における延伸温度の上限としては、90℃が好ましく、80℃がより好ましく、70℃がさらに好ましい。一方、上記温度の下限としては、30℃が好ましく、40℃がより好ましく、50℃が更に好ましい。
一軸延伸における延伸倍率は、延伸方法によらず例えば1.1倍以上であればよいが、得られる偏光フィルムの偏光性能の点から3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、6倍以上が特に好ましい。延伸倍率の上限は特に制限されないが、延伸倍率は10倍以下が好ましく、8倍以下がより好ましい。
(工程C)
本工程では、PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルム(延伸された原反フィルム)に対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする。析出処理を行うと、延伸フィルム中に存在する金属のイオンを、金属を含む粒子として析出させることができる。
析出処理は、例えば、析出処理浴としての硫化物イオンを含む水溶液に、上記延伸フィルムを浸漬することにより行うことができる。この場合、金属のイオンは、金属硫化物となって析出し、粒子(B)を形成する。硫化物イオンを含む水溶液としては、硫化ナトリウム水溶液、硫化水素水溶液等が挙げられ、硫化ナトリウム水溶液が好ましい。析出処理浴における硫化ナトリウムの濃度は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
析出処理は、原反フィルムに対して超音波を当てながら行うことが好ましい。このようにすることで、析出反応を均一に進行させることができる。また、析出処理の後に、水や有機溶剤を用いてフィルムの表面を洗浄してもよい。
その他、析出処理としては、還元剤を用いた還元反応により、金属粒子として析出させることなどもできる。
(その他の工程)
上記工程Cの後に、例えば、フィルム(PVAフィルム)に対して乾燥処理や熱処理を施してもよい。乾燥処理は、30℃以上150℃以下で行うことが好ましく、50℃以上130℃以下で行うことがより好ましい。上記範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れるPVAフィルム(偏光フィルム)が得られやすい。
<偏光板>
本発明のPVAフィルムは、少なくとも一方の面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護フィルムを配置した積層体(偏光板)として用いてもよい。すなわち、上記偏光板は、本発明のPVAフィルムと、このPVAフィルムに積層された保護フィルムとを有する積層体である。
保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、酢酸・酪酸セルロース(CAB)フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム等が挙げられる。
PVAフィルムと保護フィルムとは、接着剤を介して貼り合わされていてよい。上記接着剤としては、PVA系接着剤、紫外線硬化型接着剤等が挙げられる。
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において採用された各評価方法を以下に示す。
[金属(金属イオン)の含有量]
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルム中に含まれる金属の含有量は、析出処理前のPVAフィルムに基づいて測定した。すなわち、析出処理前のPVAフィルムをサンプリングし、これを水に溶解した後、ICP発光分析装置を用いて金属イオン量を測定し、金属の含有量(PVA100質量部に対する含有量)を求めた。
なお、以下の実施例1で得られたPVAフィルムを乾式分解処理後、同様に金属イオン量を測定したが、上記の析出処理前のPVAフィルムを用いて測定した金属イオン量と同じ値であった。
[粒子のアスペクト比]
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムについて、微分干渉顕微鏡観察を行い、PVAフィルム中に存在する粒子のアスペクト比を求めた。
[波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率]
以下の実施例又は比較例で得られたPVAフィルムから、長さ方向に3cm×幅方向に3cmの正方形のサンプルを2枚採取した。2枚のサンプルについて、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製V7100)を用いて、JIS Z8722:2009(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
1枚のサンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、透過率の平均値T(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、透過率の平均値T(%)を求めた。前記で求めたTとTを平均して、透過率T(%)とした。
次に、2枚のサンプルを、その長さ方向が平行になるように重ねて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、平行透過率の平均値T‖(%)を求めた。
更に、長さ方向が直交するように重ねて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率を測定して、直交透過率の平均値T⊥(%)を求めた。
波長345nmの紫外線及び540nmの可視光それぞれにおいて、上記透過率T、平行透過率T‖及び直交透過率T⊥を測定した。
[波長345nmの紫外線における偏光度]
上記で得られた波長345nmの紫外線におけるT‖とT⊥とから、下記式(1)により波長345nmの紫外線における偏光度V(%)を求めた。
V={(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)}1/2×100 (1)
[実施例1]
<製膜原液(PVA水溶液)の作製>
PVA(A)(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.95モル%)と、硝酸亜鉛(PVA100質量部に対して20質量部)と、グリセリン(PVA100質量部に対して10質量部)と、界面活性剤(PVA100質量部に対して0.03質量部)と、水とを混合し、PVA(A)等を90℃で4時間溶解させ、製膜原液(PVA水溶液)を得た。
<原反フィルムの作製>
上記で得られた製膜原液を、ガラス板上にキャストし、室温で4日間乾燥して原反フィルムを得た。得られた原反フィルムの平均厚さは30μmであった。また、原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して3.8質量部であった。
<PVAフィルムの製造>
上記で得られた原反フィルムから、長さ方向9cm×幅方向5cmの試験片を採取した。当該試験片の長さ方向の両端を、延伸部分のサイズが長さ方向5cm×幅方向5cmとなるように延伸治具に固定し、空気中で12cm/分の延伸速度で元の長さの4倍に長さ方向に一軸延伸した。その後、試験片(延伸フィルム)を金属枠に固定し、硫化ナトリウム1.2質量%の水溶液に3分間浸漬しながら超音波をかけて析出処理を行った。その後、30℃の水と30℃のメタノールに順に浸漬して洗浄した後、65℃の乾燥機で10分間乾燥して、PVAフィルムを得た。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。また、得られたPVAフィルムの微分干渉顕微鏡画像を図1に示す。なお、図1における左右方向が延伸方向である。アスペクト比の高い粒子の存在が確認できる。
[実施例2]
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して50質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して9.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
[実施例3]
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して2.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
[実施例4]
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して50質量部としたこと、及び一軸延伸における延伸倍率を1.7倍にしたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して9.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
[実施例5]
製膜原液の作製において硝酸亜鉛を硝酸マンガン六水和物に替えたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれるマンガン(マンガンイオン)の量は、PVA100質量部に対して3.4質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
[比較例1]
製膜原液の作成において硝酸亜鉛を混合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
[比較例2]
一軸延伸を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して3.8質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2021102694
表1に示されるように、実施例1〜5のPVAフィルムは、波長345nmの紫外線における偏光度が5%以上であり、十分な紫外線偏光性能を有することが確認できた。
本発明のPVAフィルムは、紫外線偏光フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコール(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有し、
    粒子(B)のアスペクト比が1.1以上10以下であり、
    上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、ポリビニルアルコールフィルム。
  2. 上記金属が亜鉛である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  3. 波長345nmの紫外線における偏光度が5%以上である、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  4. 波長540nmの可視光における透過率が40%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  5. ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する上記金属の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  6. 一軸延伸フィルムであり、
    粒子(B)の長軸が延伸方向に配向している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
  7. ポリビニルアルコール及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程、及び
    上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程
    を備え、
    上記延伸フィルムを得る工程が、
    上記ポリビニルアルコール及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程、又は
    上記ポリビニルアルコールを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程
    であり、
    上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、ポリビニルアルコールフィルムの製造方法。

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