JP2021102694A - ポリビニルアルコールフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]PVA(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有し、粒子(B)のアスペクト比が1.1以上10以下であり、上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、PVAフィルム;
[2]上記金属が亜鉛である上記[1]のPVAフィルム;
[3]波長345nmの紫外線における偏光度が5%以上である、上記[1]又は[2]のPVAフィルム;
[4]波長540nmの可視光における透過率が40%以上である、上記[1]〜[3]のいずれかのPVAフィルム;
[5]PVA(A)100質量部に対する上記金属の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である、上記[1]〜[4]のいずれかのPVAフィルム;
[6]一軸延伸フィルムであり、粒子(B)の長軸が延伸方向に配向している、上記[1]〜[5]のいずれかのPVAフィルム;
[7]PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程、及び上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程を備え、上記延伸フィルムを得る工程が、上記PVA及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程、又は上記PVAを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程であり、上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、PVAフィルムの製造方法;
に関する。
<PVAフィルム>
本発明のPVAフィルムは、PVA(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有する。
PVA(ポリビニルアルコール)(A)は、通常、本発明のPVAフィルムの主成分である。主成分とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本発明のPVAフィルムにおけるPVA(A)の含有量としては、例えば50質量%以上99質量%が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましい場合もあり、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい場合もある。
粒子(B)は、アスペクト比が1.1以上10以下の粒子である。粒子(B)は、通常、棒状の粒子である。上記アスペクト比は、2.0以上9.6以下が好ましく、3.0以上9.2以下がより好ましく、4.0以上8.8以下がさらに好ましく、5.0以上8.4以下がよりさらに好ましく、6.0以上8.0以下が特に好ましい。粒子(B)のアスペクト比が1.1以上であることで、紫外線に対する十分な偏光性能を発揮することができる。一方、粒子(B)のアスペクト比が10以下であることで、生産性を高めることができ、また、十分な可視光透過性を発揮することができる。
本発明のPVAフィルムは、可塑剤を含んでいてもよい。PVAフィルムが可塑剤を含むことにより、PVAフィルムの取り扱い性や延伸性等が高まり、その結果偏光性能がより良好なものとなる。可塑剤としては多価アルコールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、PVAフィルムの延伸性がより良好になることからグリセリンが好ましい。また、可塑剤は1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のPVAフィルムは、波長345nmの紫外線に対する偏光性能を有する。本発明のPVAフィルムの波長345nmの紫外線における偏光度は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。一方、この波長345nmの紫外線における偏光度の上限は特に限定されないが、例えば80%であってよく、60%又は40%であってもよい。
本発明のPVAフィルムの製造方法は特に限定されないが、粒子(B)の分散性を高めるために、原反フィルム(材料フィルム)に金属のイオンを含ませた後に一軸延伸を行い、析出処理を行うことで、金属イオンを粒子化させる方法が好ましい。原反フィルムとは、本発明のPVAフィルムを得る前の未延伸のPVAフィルムのことをさす。原反フィルムを延伸することで延伸フィルムが得られ、延伸フィルムを処理することで本発明のPVAフィルムが得られる。原反フィルムに金属イオンを含ませる方法に特に制限はないが、原反フィルムを製造する際に金属イオンを含ませる方法、及び原反フィルムから本発明のPVAフィルムを製造する際に金属イオンを含む水溶液中で一軸延伸することで原反フィルムに金属イオンを含ませる方法が好ましい。
PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程(工程B)、及び
上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程(工程C)
を備え、
上記延伸フィルムを得る工程(工程B)が、
上記PVA及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程(工程B1)、又は
上記PVAを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程(工程B2)
であり、
上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む。
原反フィルムを製造する工程(工程A)
をさらに備えていてよい。
以下、各工程について順に詳説する。
本工程では、PVAを含む原反フィルムを製造する。原反フィルムは、金属のイオンをさらに含有していてもよい。原反フィルムの製造方法は特に限定されず、厚み及び幅がより均一になる製造方法を好ましく採用することができる。例えば、原反フィルムを構成するPVA、ならびに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤及び他の成分のうちの1種又は2種以上が液体媒体中に溶解した製膜原液や、PVA、並びに必要に応じて更に可塑剤、界面活性剤、他の成分及び液体媒体のうちの1種又は2種以上を含み、PVAが溶融している製膜原液を用いて製造することができる。当該製膜原液が可塑剤、界面活性剤及び他の成分のうちの少なくとも1種を含有する場合には、それらの成分が均一に混合されていることが好ましい。
本工程では、原反フィルムを延伸(通常、一軸延伸)し、PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る。原反フィルムが金属のイオンを含む場合は、水(水溶液)中で延伸する湿式延伸法、及び気中で延伸する乾式延伸法のいずれを採用してもよい(工程B1)。一方、原反フィルムが金属のイオンを含まない場合は、湿式延伸法を採用する(工程B2)。
原反フィルムに対する水中での一軸延伸は公知の方法により行うことができる。必要に応じて、原反フィルムに対して、膨潤処理、架橋処理、乾燥処理、熱処理等を施してもよい。膨潤処理、一軸延伸、架橋処理などの各処理の順序は特に制限されず、1つ又は2つ以上の処理を同時に行うこともできる。また、各処理の1つ又は2つ以上を2回又はそれ以上行うこともできる。
原反フィルムに対する気中での一軸延伸は公知の方法により行うことができる。乾式延伸法においては、一軸延伸を室温で行ってもよく、加熱しつつ延伸を行ってもよく、原反フィルムを吸水させた後に延伸を行ってもよい。一軸延伸における延伸温度の上限としては、90℃が好ましく、80℃がより好ましく、70℃がさらに好ましい。一方、上記温度の下限としては、30℃が好ましく、40℃がより好ましく、50℃が更に好ましい。
本工程では、PVA及び金属のイオンを含む延伸フィルム(延伸された原反フィルム)に対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする。析出処理を行うと、延伸フィルム中に存在する金属のイオンを、金属を含む粒子として析出させることができる。
上記工程Cの後に、例えば、フィルム(PVAフィルム)に対して乾燥処理や熱処理を施してもよい。乾燥処理は、30℃以上150℃以下で行うことが好ましく、50℃以上130℃以下で行うことがより好ましい。上記範囲内の温度で乾燥することで寸法安定性に優れるPVAフィルム(偏光フィルム)が得られやすい。
本発明のPVAフィルムは、少なくとも一方の面に、光学的に透明で且つ機械的強度を有する保護フィルムを配置した積層体(偏光板)として用いてもよい。すなわち、上記偏光板は、本発明のPVAフィルムと、このPVAフィルムに積層された保護フィルムとを有する積層体である。
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルム中に含まれる金属の含有量は、析出処理前のPVAフィルムに基づいて測定した。すなわち、析出処理前のPVAフィルムをサンプリングし、これを水に溶解した後、ICP発光分析装置を用いて金属イオン量を測定し、金属の含有量(PVA100質量部に対する含有量)を求めた。
なお、以下の実施例1で得られたPVAフィルムを乾式分解処理後、同様に金属イオン量を測定したが、上記の析出処理前のPVAフィルムを用いて測定した金属イオン量と同じ値であった。
以下の各実施例又は比較例で得られたPVAフィルムについて、微分干渉顕微鏡観察を行い、PVAフィルム中に存在する粒子のアスペクト比を求めた。
以下の実施例又は比較例で得られたPVAフィルムから、長さ方向に3cm×幅方向に3cmの正方形のサンプルを2枚採取した。2枚のサンプルについて、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製V7100)を用いて、JIS Z8722:2009(物体色の測定方法)に準拠し、C光源、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
1枚のサンプルについて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、透過率の平均値T1(%)を求めた。もう1枚のサンプルについても、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、透過率の平均値T2(%)を求めた。前記で求めたT1とT2を平均して、透過率T(%)とした。
次に、2枚のサンプルを、その長さ方向が平行になるように重ねて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率とを測定して、平行透過率の平均値T‖(%)を求めた。
更に、長さ方向が直交するように重ねて、長さ方向に対して45°傾けた場合の透過率と−45°傾けた場合の透過率を測定して、直交透過率の平均値T⊥(%)を求めた。
波長345nmの紫外線及び540nmの可視光それぞれにおいて、上記透過率T、平行透過率T‖及び直交透過率T⊥を測定した。
上記で得られた波長345nmの紫外線におけるT‖とT⊥とから、下記式(1)により波長345nmの紫外線における偏光度V(%)を求めた。
V={(T‖−T⊥)/(T‖+T⊥)}1/2×100 (1)
<製膜原液(PVA水溶液)の作製>
PVA(A)(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物、重合度2,400、けん化度99.95モル%)と、硝酸亜鉛(PVA100質量部に対して20質量部)と、グリセリン(PVA100質量部に対して10質量部)と、界面活性剤(PVA100質量部に対して0.03質量部)と、水とを混合し、PVA(A)等を90℃で4時間溶解させ、製膜原液(PVA水溶液)を得た。
上記で得られた製膜原液を、ガラス板上にキャストし、室温で4日間乾燥して原反フィルムを得た。得られた原反フィルムの平均厚さは30μmであった。また、原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して3.8質量部であった。
上記で得られた原反フィルムから、長さ方向9cm×幅方向5cmの試験片を採取した。当該試験片の長さ方向の両端を、延伸部分のサイズが長さ方向5cm×幅方向5cmとなるように延伸治具に固定し、空気中で12cm/分の延伸速度で元の長さの4倍に長さ方向に一軸延伸した。その後、試験片(延伸フィルム)を金属枠に固定し、硫化ナトリウム1.2質量%の水溶液に3分間浸漬しながら超音波をかけて析出処理を行った。その後、30℃の水と30℃のメタノールに順に浸漬して洗浄した後、65℃の乾燥機で10分間乾燥して、PVAフィルムを得た。
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して50質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して9.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して10質量部としたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して2.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
製膜原液における硝酸亜鉛の混合量をPVA100質量部に対して50質量部としたこと、及び一軸延伸における延伸倍率を1.7倍にしたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して9.0質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
製膜原液の作製において硝酸亜鉛を硝酸マンガン六水和物に替えたこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれるマンガン(マンガンイオン)の量は、PVA100質量部に対して3.4質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
製膜原液の作成において硝酸亜鉛を混合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
一軸延伸を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、PVAフィルムを製造した。原反フィルムに含まれる亜鉛(亜鉛イオン)の量は、PVA100質量部に対して3.8質量部であった。
得られたPVAフィルムについて、上記した方法により、粒子のアスペクト比、波長345nmの紫外線及び540nmの可視光における透過率、並びに波長345nmの紫外線における偏光度を求めた。結果を表1に示す。
Claims (7)
- ポリビニルアルコール(A)と、金属を含む粒子(B)とを含有し、
粒子(B)のアスペクト比が1.1以上10以下であり、
上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、ポリビニルアルコールフィルム。 - 上記金属が亜鉛である、請求項1に記載のポリビニルアルコールフィルム。
- 波長345nmの紫外線における偏光度が5%以上である、請求項1又は2に記載のポリビニルアルコールフィルム。
- 波長540nmの可視光における透過率が40%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
- ポリビニルアルコール(A)100質量部に対する上記金属の含有量が0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。
- 一軸延伸フィルムであり、
粒子(B)の長軸が延伸方向に配向している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリビニルアルコールフィルム。 - ポリビニルアルコール及び金属のイオンを含む延伸フィルムを得る工程、及び
上記延伸フィルムに対して、上記金属を含む粒子の析出処理をする工程
を備え、
上記延伸フィルムを得る工程が、
上記ポリビニルアルコール及び上記金属のイオンを含む原反フィルムを水中又は気中で延伸する工程、又は
上記ポリビニルアルコールを含む原反フィルムを、上記金属のイオンを含む水溶液中で延伸する工程
であり、
上記金属が、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄及びコバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、ポリビニルアルコールフィルムの製造方法。
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JPH10300931A (ja) * | 1997-04-25 | 1998-11-13 | Tdk Corp | 偏光板 |
JP2008233607A (ja) * | 2007-03-22 | 2008-10-02 | Fujifilm Corp | 偏光板及びその製造方法 |
JP2009098598A (ja) * | 2007-09-27 | 2009-05-07 | Fujifilm Corp | 偏光板及びその製造方法、並びにガラス |
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2019
- 2019-12-25 JP JP2019234149A patent/JP2021102694A/ja active Pending
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