以下、本発明の第1の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、電動工具本体の前後左右、上下の方向や、電池パックの装着方向と、電池パック単体で見た前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。さらに、電池パックの装着方向とは、説明の都合上、電動工具本体、電気機器本体を動かさずに電池パックを移動させる状況を基準として説明する。
図1は本実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電気機器の一形態である電動工具は、電池パックを有し、ビット等の先端工具によりボルトやナット、ねじ等を締結する工具であって、いわゆるインパクト工具と呼ばれるものである。電動工具本体30は、図示しないソケットレンチ等の先端工具に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより図示しないボルトやナット等の締め付け作業を行う工具である。これらの電動工具本体1、30は、外形を形成する外枠たるハウジング2、32を備え、ハウジング2、32にはハンドル部3、33が形成される。作業者が片手で、又は片手で把持して他方の手を添えながら電動工具本体1、30を保持して作業を行う。電動工具本体1、30は電池パック15又は100から供給される直流を電源として、ハウジング2、32の内部に収容された図示しないモータを駆動する。ハンドル部3、33の一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状の動作スイッチ4、34が設けられ、ハンドル部3、33の下方には電池パック15、100を装着するための電池パック装着部10、40が形成される。
電動工具本体1は定格電圧36Vの電池パック15を用いる電気機器である。従って、矢印aの組み合わせのように、電池パック15を36V対応の電気機器(電動工具本体1)の電池パック装着部10に装着できる。一方、電動工具本体30は、定格電圧108Vという商用電圧並の高電圧を必要とし、矢印b1に示すように108Vの出力が可能な電池パック100を電池パック装着部40に装着する。高電圧を出力可能な電池パック100の内部には、定格3.6Vのリチウムイオン電池のセルが30本収容される。以上のように、電動工具本体1、30においては定格電圧に応じた専用の電池パック15、100を装着するのが通常であるが、本実施例では電池パック100を複数電圧対応に構成し、低電圧での出力も可能とすることにより、矢印b2で示すように電池パック100を36V対応の電動工具本体1にも装着できるようにした。電池パック100を矢印b1、b2のように異なる電圧の電動工具本体1、30に装着できるようにするためには、電池パック装着部10、40の形状をほぼ同じ形状にすることと、電池パック100の電圧を切り替え可能にすることが重要である。また、電池パック100の設定された電圧が、装着される電気機器や電動工具の電圧と対応しない場合には、電池パック100を装着できないように構成することが重要である。
図2は電動工具本体1の電池パック装着部10の形状を示す斜視図である。電動工具だけに限られずに、電池パックを用いた電気機器全般では、装着される電池パックに合わせた電池パック装着部10が形成され、適合しない電池パックを装着できないように構成される。電池パック装着部10には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部20が設けられる。ターミナル部20は、合成樹脂等の非導電性材料の一体成形により製造され、そこに金属製の3枚の端子、即ち正極入力端子21、負極入力端子22、LD端子23(異常信号端子)が鋳込まれることにより強固に固定される。LD端子23(異常信号端子)は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。ターミナル部20は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面20aだけでなく、水平面(端子21〜23からみて上面)20bが形成され、水平面20bは電池パック100の装着時に、上段面115(図3にて後述)と摺動する面となる。水平面20bの前方側には、電池パック100の隆起部132と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部24が形成される。突起部24は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1のハウジングのネジ止め用のボスであり、左右方向からネジ26とナットにより固定される。突起部24は、さらに電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。突起部24の左右方向の幅S1は、電池パック100側に形成されるストッパ部(後述)に対応する幅とされる。
図3は108V対応の別の電動工具本体30Aを示す図であって、(1)は電源コード90から給電される状態での側面図であり、(2)は電池パック装着部40の底面図であり、(3)は電源コード90とコネクタ部93の形状を示す図である。電動工具本体30Aは、使用されるモータが交流100Vと同等仕様のブラシレスモータ、例えば、インバータ回路(図4にて後述)によって駆動されるブラシレスDCモータである。従って、インバータ回路に電池パック100から出力される直流108Vが入力されるか、又は、交流100V(60Hz)のような商用電源を、後述する整流回路によって整流させた後にインバータ回路に入力する。このように電池パック100の出力電圧を商用電圧と同程度まで高めることによって電池パックでも商用電圧でも動作する、AC/DC兼用の高出力の電動工具本体30Aを実現できる。電動工具本体30Aに装着される電源コード90は、接続コード94の一方側に2つの端子92a、92bを保持し、商用電源のコンセントに装着されるためのプラグ部91を有し、他方側に電動工具本体30Aに接続されるコネクタ部93が形成される。本実施例では、コネクタ部93を接続する箇所を、電池パック100を取り外した後の電池パック装着部40内に配置した。つまり、電源コード90を電動工具本体30Aに接続する場合は、電池パック100を電動工具本体30Aから取り外す必要があり、逆に、電池パック100を電動工具本体30Aに装着する場合には電源コード90を取り外す必要がある。
図3(2)は電動工具本体30Aの電池パック装着部40を下から見た図であり、(1)のA方向からの矢視図である。この図は電池パック100及び電源コード90のいずれもが取り外された状態を示している。電池パック装着部40には、後方側から前方側(図中右から左)にかけて電池パック100をスライドさせるようにして、電池パック100が装着される。そのため取付面40aには、装着方向上流側に開口部分が形成され、側方側に2本のレール溝48a、48bが形成される。また、開口部分よりも上流側(後方側部分)には上方向に窪むように形成された窪み部40bが形成される。取付面40aのレール溝48a、48bに挟まれた部分のほぼ中央付近には、電池パック100の正極端子や負極端子と接続されるターミナル部41が設けられる。本実施例では、ターミナル部41よりもやや後方部分にACソケット49を設けた。ACソケット49には、周方向においてピン状の第一端子49a、第二端子49b、第三端子49cが形成される。
図3(3)は電源コード90のコネクタ部93の形状を示す図であり、左側がコネクタ部93を長手方向外側から見た図であって、右側がコネクタ部93を含む電源コード90の全体形状を示す側面図である。コネクタ本体93aの外周面には雄ねじが形成され、その雄ねじの外周側に円筒状の固定用ネジ93bが相対回転可能であって軸方向の移動量を制限された状態で保持される。コネクタ部93の外形は円形であって、内周部分において3つの雌型の端子、第一端子95a、第二端子95b、第三端子95cが周方向に並んで配置される。ここでは、商用電源供給のためには第一端子49aと第二端子49bの2つだけを結線すれば良く、第三端子49cは、電動工具本体30A内で非配線状態としても良いし、アース線として利用するようにしても良い。固定用ネジ93bは電源コード90が電動工具本体30Aから抜け落ちないように保持するもので、固定用ネジ93bの内周側の雌ねじ部が、ACソケット49の外周面に形成された雄ねじ部と螺合する。このように、コネクタ本体93aをACソケット49に挿入した後に、固定用ネジ93bを締めてACソケット49側の雄ねじと螺合させることによって電源コード90が電動工具本体30Aから抜け落ちないように固定できる。
次に、モータ35の駆動制御系の構成と作用を図4に基づいて説明する。図4はモータ35の駆動制御系の構成を示すブロック図である。本実施例の電動工具では、電池パック100から供給される直流を、インバータ回路70を用いて励磁電流を生成し、モータ35の所定のコイルに励磁電流を切り替えながら流すことによりブラシレス方式のモータ35を回転させる。電池パック100からの入力は、電池パック100の正極端子161に接続される正極入力端子81と、電池パック100の負極端子162に接続される負極入力端子82を介して入力される。モータ35は、例えばインナーロータ型とすることができ、複数組(本実施例では2組)のN極とS極を含む永久磁石(マグネット)を含んで構成される回転子(ロータ)35aと、スター結線された3相の固定子巻線U、V、Wから成る固定子35bと、回転子35aの回転位置を検出するために周方向に所定の間隔毎、例えば角度60°毎に配置された3つの回転位置検出素子(ホール素子)65を有する。これらの出力は回転位置検出回路53によりパルス列に変換され、演算部51に出力される。回転数検出回路54は回転位置検出回路53の出力を用いてモータ35の回転数を検出して演算部51に出力する。演算部51では、これらの出力を用いて固定子巻線U、V、Wへの通電方向と時間を決定する。
制御信号出力回路52は、印加電圧設定回路58と回転位置検出回路53の出力信号に基づいて演算部51の指示により所定のスイッチング素子Q1〜Q6をスイッチングするための駆動信号を形成し、その駆動信号をインバータ回路70に出力する。インバータ回路70は、3相ブリッジ形式に接続されたIGBT等の6個のスイッチング素子Q1〜Q6を含む。スイッチング素子Q1〜Q6の各ゲートは制御信号出力回路52に接続され、各エミッタまたは各コレクタはスター結線された固定子巻線U、V、Wに接続される。これによって、6個のスイッチング素子Q1〜Q6は、制御信号出力回路52から入力されたスイッチング素子駆動信号(H1〜H6等の駆動信号)によってスイッチング動作を行い、インバータ回路70に印加される電池パック100の直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに印加する。
演算部51は、動作スイッチ56を操作するためのトリガ34A(又は図1の動作スイッチ4、34)の操作の有無をスイッチ操作検出回路57により設定し、操作量(ストローク)の大きさによって変化する印加電圧設定回路58からの信号に基づいてPWM信号のパルス幅(デューティ比)を変化させ、制御信号出力回路52を介して6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ゲートを駆動する。この駆動制御によって、モータ35への電力供給量を調整し、モータ35の起動/停止と回転速度を制御する。ここでPWM信号は、インバータ回路70の正電源側スイッチング素子Q1〜Q3または負電源側スイッチング素子Q4〜Q6の何れか一方に供給され、スイッチング素子Q1〜Q3またはスイッチング素子Q4〜Q6を高速スイッチングさせることによって電池パック100の直流電圧から各固定子巻線U、V、Wに供給する電力量を制御する。
演算部51は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するためのマイクロコンピュータを含んで構成される。演算部51には、処理プログラムや制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を含んで構成される。コンデンサ61の両端電圧は、入力電源の電圧として電圧検出回路59にて検出され演算部51に出力される。
電動工具本体30Aの電源は、電池パック100だけでなく電源コード90を用いた供給も可能であり、電動工具本体30Aに設けられたAC入力用のACソケット49の第一端子49aと第二端子49bがダイオードブリッジ60の入力側に接続される。ダイオードブリッジ60は、4つの整流用のダイオードを用いて全波整流を行うことで電流をどちらか一方にのみ流れるようにする整流回路であり、交流電圧を直流電圧に変換する。ダイオードブリッジ60の出力はインバータ回路70に接続される。ダイオードブリッジ60の出力は脈流であるので、ダイオードブリッジ60とインバータ回路70の間に、平滑回路を介在させても良い。インバータ回路70に流れる電流の大きさは、シャント抵抗62を用いて電流検出回路55によって測定され、その値が演算部51にフィードバックされることにより、設定された駆動電力がモータ35に印加されるように調整される。
図5は電動工具本体30への電源コード90の接続状況を説明するための図であって、(1)は電動工具本体30での接続例であり、(2)及び(3)はその変形例に係る接続例を示す図である。同図(2)及び(3)はその本実施例の変形例に係る電動工具本体30B、30Cを示す図である。同図(1)に示す本実施例の形態では、電池パック装着部40にACソケット49(図3参照)が設けられるため、電池パック100を装着した際には電源コード90を取り付けることができない。また、電源コード90を装着する際には電池パック100を必ず取り外す必要がある。このように電池パック100の装着時にはアクセスできない位置に、電源コード90用のACソケット49を設けたので、電池パック100からの電源供給と電源コード90からの電源供給を誤ること無く確実に区別することができる。また、電動工具本体30に定格入力電圧が100V以上のブラシレスモータを搭載しているので、商用交流電源にて駆動させることも、電池パック100で駆動させることも可能であり、AC/DC共用の電動工具を実現できた。
電源コード90は、作業者が電動工具本体30Aのハンドル部33を片手で把持した状態で作業できる程度に十分な長さとすれば良いが、電源コード90の長さが届かないような場所での一時的な作業では、電源コード90を取り外して電池パック100を装着すれば、電動工具本体30Aの出力低下を気にせずに同等に作業を行うことができる。また、図5(1)に示す形態での電動工具本体30Aへの電源コード90の接続の仕方は、AC電源での作業時に電池パック100を必ず取り外すために電動工具本体30Aの重量が軽くなるという利点がある。さらに、電源コード90から電池パック100を用いた運転に切り替える際には、電源コード90を取り外さない限り電池パック100を装着できないために、電源コード90の取り外し忘れを確実に防止できる。また、電池パック100を装着した際にはACソケット49が外部に露出しないために、ACソケット49が粉塵や水等に曝される虞を大幅に低下でき、ACソケット49を覆うカバーの設置も省略できる。
図5(2)は、同図(1)の電動工具本体30Aの変形例に係る電動工具本体30Bであって、ここでは、ACソケット49Aの位置を、電動工具本体30Bのハウジングの下面であって、電池パック100よりも前方側に形成した点にある。このように配置すれば、電池パック100を装着したままで電源コード90を接続することが可能となる。本実施例では、電池パック100の出力電圧が直流接続時で108Vであって、商用交流電力が100V〜120Vであるので、両方の入力を任意に用いて電動工具本体30Bを駆動させることができる。但し、両方の電源の利用が可能な場合は、電源コード90から供給される商用交流電力を用いる方が、電池パック100の放電を防止できるので好ましい。そこで、図5(2)による電動工具本体30Bでは、電池パック100と商用交流電力が双方利用可能である場合に、商用交流電力側を使用するような入力自動切替手段を設けた。
図6(1)は、図5(2)で示す電動工具本体30Bの駆動制御系の回路ブロック図である。基本的には図4で示した回路と同様であるが、電池パック100からの正極側入力線の途中に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の半導体のスイッチング素子66を介在させている。スイッチング素子66のゲート信号は、演算部51からの制御信号線66aに接続され、演算部51によってスイッチング素子66のソース・ドレイン端子間を接続又は遮断を制御する。また、電池パック100の電圧を監視する電池電圧検出回路67と、AC電圧の有無(又は電圧)を監視する商用電源検出回路68を設けて、それぞれの出力を演算部51に入力する。演算部51は商用電源99が利用可能な状態にあるときには、スイッチング素子66のゲート信号をオフにすることにより電池パック100からの入力回路を遮断する。一方、商用電源99が利用不能な状態になったら演算部51はスイッチング素子66のゲート信号をオンにすることにより電池パック100からの入力回路を接続状態とする。このような回路構成とすることにより電動工具本体30Bにおいて、電池パック100が接続されると直流108V(定格)が供給され、その状態で電源コード90によりACコンセントに接続されると自動的にAC電源が供給されるようになり、電源コード90が取り外されると自動的に電池パック100による駆動に切り替わるので、使い勝手の良い電動工具本体30Bを実現できた。また、電池パック100の着脱と電源コード90の接続状態、特に一方を接続した際の他方の取り外し忘れを気にする必要が無いので、電池パック100の装着と取り外しの扱いも容易になる。
再び図5に戻る。図5(3)は本実施例の別の変形例に係る電動工具本体30Cである。電動工具本体30Cは、直流108Vの電池パック100と電源コード90を介したAC駆動の両方が可能である点は同図(1)、(2)と同じであるが、電源コード90を接続アダプタ75を介して接続するようにした。ここでは、接続アダプタ75は電源コード90からの2本の出力線を、電池パック100用の正極入力端子81と負極入力端子82に接続させるための、いわゆるダミーケースである。接続アダプタ75の内部には電池のセルは収容されない。接続アダプタ75の下面には、図3(2)で示したACソケット49と同じ形状のACソケットが設けられ、ACソケット49の第一端子49aが電力線76aにより正極入力端子81に接続され、第二端子49bが電力線76bにより負極入力端子82に接続される。尚、この場合は図4に示したブロック図において電池パック100の入力経路を変更して、電池パック100の使用時にもダイオードブリッジ60を介してインバータ回路70に接続されるようにした。その回路を示したのが図6(2)である。
ここではダイオードブリッジ60の入力端子81、82に接続アダプタ75の正極端子161と負極端子162が装着される。電池パック100は直流108Vであるので、ダイオードブリッジ60を介して接続しても問題はない。また、接続アダプタ75の正極端子161及び負極端子162を装着しても、ダイオードブリッジ60によって交流電流が整流されるので、インバータ回路70を同様に作動させてモータ35を駆動することができる。本実施例では、直流108Vの直流入力とインバータ回路70を介してブラシレスDCモータを駆動するようにしたが、使用するモータの種類はブラシレスモータだけに限られずに、AC100〜120V程度で駆動される別のモータ、例えば交流整流子モータであっても良い。この構成により、交流整流子モータを用いた電動工具を電池パック100にて駆動することも可能となり、AC/DC共用の電動工具を容易に実現できる。
次に図7〜図9を用いて出力電圧を36Vと108Vに切替可能とした電池パック100について説明する。図7は電池パック100の外観形状を示す斜視図である。電池パック100の筐体は、上下方向に分割され、図示しない4本のネジによって固定される下ケース101と上ケース110により形成される。上ケース110は、電池パック装着部40に取り付けるために2本のレール138a、138bが形成された装着部が形成される。レール138a、138bは、電池パック100の装着方向と平行な方向であって、上ケース110の左右側面に平行するように形成される。レール138a、138bは、電動工具本体30の電池パック装着部40に形成されたレール溝48a、48b(図3(2)参照)と対応して形成され、レール138a、138bがレール溝48a、48bと嵌合した状態で、ラッチ機構が動作することにより電池パック100が電動工具本体30に固定される。上ケース110の前方側は平らな下段面111が形成され、中央付近は下段面111よりも高く形成された上段面115が形成される。下段面111と上段面115の接続部は段差状に形成された段差部112となり、段差部112から上段面115の前方側領域がスロット群配置領域120(図7(2)参照)になる。スロット群配置領域120には、前方の段差部112から後方側に延びる複数のスロット(121〜124)が形成される。ここでは、左側のレール138bに近い側に正極端子挿入口121が配置され、右側のレール138aに近い側に負極端子挿入口122が形成される。正極端子挿入口121と負極端子挿入口122に挟まれる部分には、低電圧切替部材挿入口123と高電圧切替部材挿入口124が形成される。正極端子挿入口121と負極端子挿入口122の内部には、図では見えない金属製の正極端子と負極端子が配置される。また、低電圧切替部材挿入口123と高電圧切替部材挿入口124の位置に重複する部分(上ケース110の内部空間)には、後述する電圧切替手段が配置される。尚、図7ではスロット群配置領域120には4つのスロット(121〜124)だけを有するように図示して、4つ以外のスロットを図示していないが、その他の接続端子を収容するためのスロットを形成しても良い。また、上述したようにスロット群配置領域120が位置する上ケース110の内部空間には端子や電圧切替手段(例えば切替端子)が配置されるため、スロット群配置領域120は端子配置領域となる。
上段面115の後方側には、隆起するように形成された隆起部132が形成される。隆起部132はその外形が上段面115より上側に隆起しており、その中央付近に窪み状のストッパ部131が形成される。ストッパ部131は、電池パック100を、電池パック装着部10の突起部24(図2参照)に装着した際の突き当て面となるもので、電動工具本体1側の突起部24がストッパ部131に当接するまで挿入されると、電動工具本体1に配設された複数の端子21〜23(図2参照)と電池パック100に配設された端子群が接触して導通状態となる。ストッパ部131の内側には、電池パック100の内部とつながる冷却風取入口たるスリット134が設けられる。また、電池パック100のラッチ141の係止部がばねの作用によりレール138a、138bの下部で垂直方向外側に飛び出して、電動工具本体30のレール溝48a、48bに形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック100の脱落が防止される。この電池パック100が電動工具本体1に装着された状態では、スリット134が外部から視認できないように覆われる。スリット134は、電池パック100を図示せぬ充電器に連結して充電を行う際に、電池パック100の内部に冷却用の空気を強制的に流すために用いられる風窓であって、電動工具本体30に装着されている際には冷却風取入口134が閉鎖状態とされる。
図7(1)において、36Vで駆動される電動工具本体1側のターミナル部20Aは、金属製の正極入力端子21と負極入力端子22が合成樹脂製の端子取付部にて固定されたものである。ここではさらに電池パック100の出力を低電圧側に切り替えるための切替用突起24Aが形成される。切替用突起24Aはターミナル部20Aの基台部分と一体に形成された切替要素であって合成樹脂製とする。切替用突起24A自体は、回動式ターミナル基台171(図9参照)を移動させるだけのものであり、電力または信号を伝達させる端子としては用いないため、導電材料で作る必要は無くターミナル部の基台部分と同様の絶縁材料で一体に形成しても良い。
図7(2)は108Vにて駆動される電動工具本体30側のターミナル部80に装着される状態を示している。ターミナル部80は、金属製の正極入力端子81と負極入力端子82が合成樹脂製の基台部分にて固定されたものである。ここではさらに電池パック100の出力を高電圧側に切り替えるための切替用突起84が形成される。切替用突起84はターミナル部80の基台部分と一体に形成された部材であって合成樹脂製とする。本実施例によれば、電池パック100の外観形状は、36V出力でも108V出力でも同じである。作業者は電池パック100の出力電圧の設定を何ら気にすること無く、36V用の電気機器本体又は108V用の電気機器本体に単に装着するだけで、切替用突起24A又は切替用突起84によって装着された電気機器本体に最適な出力電圧が選択される(切り替えられる)。
図8は、電池パック100の内部に収容されるものであって、複数のセル151をスタックさせて1つのパックにまとめたセルパック150の外観を示す斜視図である。同図(1)は斜視図であり、(2)はセル151の軸線方向から見た側面図である。ここでは14500サイズと呼ばれる、直径14mm、長さ50mmの複数回充放電可能な二次電池によるセル151を合計30本スタックした。セル151は、10本ずつを1つのユニットとし、3つのセルユニット156〜158を形成した。各セルユニット156〜158内においては、各セル151の軸線A1がそれぞれ平行になるように積み重ねられ、隣接するセル151の向きが交互に逆になるように配置して、隣接するセル151の正極端子と負極端子を金属の薄板159により接続して10本の直列接続とする。スタックされたセル151の最外側の円筒部分は、絶縁体となる合成樹脂製のセパレータ152によって覆われることにより、セル151がセパレータ152に対して動かないように保持される。セル151としてリチウムイオン電池(1本の定格出力3.6V)を用いる場合は、各セルユニット156〜158からは、定格36Vの出力が得られるので、セルユニット156〜158の+出力(プラス出力、正極端子)と−出力(マイナス出力、負極端子)を並列に接続した状態で電池パック100からの出力を取り出すことによって36Vの大容量の電源として利用できる。一方、セルユニット156〜158の+出力と−出力を直列に接続した状態とすると、108Vの高電圧の電源として利用できる。
14500サイズのセル151を30本スタックすると、軸方向の長さが50mm、軸方向と直交する幅方向が124.8mm、軸方向と直交する高さ方向が57.3mmとなる。また、セル151の単体重量は約23gであるので、セル151の合計重量が690gになる。体積的には、セル151が占める部分の体積が230,907mm3であり、セパレータ152の占める体積が67,392mm3であり、合計体積が298,299mm3となった。従って、電池パック100の全体重量を800g又は2lb(ポンド)未満に収めることが可能となった。現在、電動工具の電池パックで広く用いられているリチウムイオン電池は、いわゆる18650と呼ばれるものである。18650サイズとは、直径18mm、長さ65mmであって体積的には14500サイズのセルの2倍をわずかに超える。重量的には、14500サイズのセルの2倍の46gである。直流108Vを得るために、仮に18650サイズのセルを30本スタックすると、セルの重量だけで1380gとなり、電池パック自体の重量が重くなってしまうため、作業者が片手で把持しながらの作業を可能とする電動工具においては実用性のない大きさと重さになってしまう。
発明者らの実験によると、作業者が片手で快適に作業を行うことができる上限は、電池パックを装着した後の電動工具の総重量で2kg又は5lb以内であることがわかった。従って、18650サイズのセル30本を用いて108Vの出力を得る場合には、片手で操作可能な携帯型の電動工具の実現が難しいことになる。本実施例では、14500サイズという、いわゆる単三乾電池と同じサイズのリチウムイオン電池をスタックすることにより携帯性を維持しながら高電圧の電動工具を実現することができた。本実施例の電池パック100では、AC電源と同等の出力電圧100V以上を確実に確保でき、しかもそのセルパック150のセル重量を0.69kgに抑えることできた。このリチウムイオン電池からは15Aほどの電流を得ることができるので、電池パックとしてのパワーウェイトレシオは100V×15A/0.69kg=2173W/kg以上、100V/0.69kg=144V/kg以上の値をクリアすることができた。
図9(1)は、電池パック100を定格36Vの電動工具本体又は電気機器本体に装着した際の状態を示す図である。電池パック100には、セルユニット156〜158の出力を並列接続とするか、又は、直列接続をするかを切り替えるための電圧切替機構170を含んで構成される。電池パック100の出力電圧を切り替えるための要素である電圧切替要素となる電圧切替機構170は、基板160上に固定された揺動軸172により軸支される回動式ターミナル基台171を含んで構成され、電池パック100の装着方向において電源用の接続端子が配置される端子配置領域に設けられる。回動式ターミナル基台171は、揺動軸172から2つの方向に延びる部材に、複数の角棒状の接続端子173a〜173dを設置することにより、接続端子173a〜173dの内周側に位置する複数の接点と、外周側に位置する接点を短絡又は開放させるための部材である。回動式ターミナル基台171は、電池パック100の出力電圧を切り替えるための切替スイッチを操作する操作部として機能する。回動式ターミナル基台171は合成樹脂製であって、揺動軸172の一方側と他方側に金属製の接続端子173a〜173dを間隔を空けて2本ずつ鋳込んだものである。負極端子162に近い側には、接続端子173aと173bが基板160に対向する側一面を露出するように配置され、正極端子161に近い側には、接続端子173cと173dが基板160に対向する側一面を露出するように配置される。
基板160は、正極端子161と負極端子162を固定すると共に、これらの端子からセルユニット156〜158への電気的な接続経路を確立又は変更するために用いられる複数の電極(接点)176a〜176jを配置するために用いられる。基板160の上部であって回動式ターミナル基台171の回動領域と部分的に重複する領域には、複数の接点176a〜176jが設けられ、回動式ターミナル基台171の下面に露出する接続端子173a〜173dがこれら接点176a〜176jのいずれかと接触することにより、正極端子161から負極端子162へと至る電気的な接続経路を変更する。複数の接点176a〜176j及び接続端子173a〜173dが、電池パック100の出力電圧を切り替えるための操作部によって操作される切替スイッチとして機能する。36V用の電動工具本体1においては、ターミナル部20Aに切替用突起24Aが形成される。切替用突起24Aは、操作部と当接して出力電圧を切り替える切替素子又は接続素子としての機能を果たし、正極入力端子が挿入される第1のスロット121と、負極入力端子が挿入される第2のスロット122との間にある第3のスロット123又は124に挿入される。電池パック100が電動工具本体に装着されると、切替用突起24Aが矢印25の位置で回動式ターミナル基台171を押すことにより、回動式ターミナル基台171が上面視で反時計回りに回転して図9(1)に示す位置になる。この状態では、接続端子173aは電極(接点)176dと176bを短絡し、接続端子173bは電極(接点)176eと176cを短絡することが理解できよう。同様にして、接続端子173cは接点176iと176gを短絡し、接続端子173dは接点176jと176hを短絡することが理解できよう。
図9(2)は、(1)のように切替用突起24Aによって回動式ターミナル基台171が上面視で反時計回りに回転している状態の接続状況を示している。セルユニット156の+側出力は正極端子161に直接接続される。セルユニット157の+側出力は接点176bに接続され、セルユニット158の+側出力は接点176gに接続される。セルユニット156の−側出力は、接点176eに接続され、セルユニット157の−側出力は接点176jに接続され、セルユニット158の−側出力は負極端子162に直接接続される。この状態では、接点176dと176b、接点176eと176c、接点176iと176g、接点176jと176hが接続状態となる。この結果、セルユニット156〜158が並列接続状態となり、正極端子161と負極端子162の間には、定格36Vの直流が出力される。
図10(1)は、電池パック100を定格108Vの電動工具本体又は電気機器本体に装着した際の状態を示す図である。定格108Vの電動工具では、ターミナル部80に切替用突起84が形成され、36V機器のターミナル部20の切替用突起24Aの位置には突起は形成されていない。切替用突起84は、操作部と当接して出力電圧を切り替える切替素子又は接続素子としての機能を果たし、正極入力端子が挿入される第1のスロット121と、負極入力端子が挿入される第2のスロット122との間にある第3のスロット124に挿入される。この状態で電池パック100を電動工具本体又は電気機器本体に装着すると、正極入力端子81と正極端子161が接触し、負極入力端子82と負極端子162が接触するが、同時に切替用突起84が回動式ターミナル基台171の一方のアームに矢印84aのように接触することにより、回動式ターミナル基台171を上面視で時計回りに回転させる。この回転によって回動式ターミナル基台171の接続端子173a〜173dと、接点176a〜176jとの接続関係が切り替わる。切り替え後の接続状態を示すのが同図(2)である。ここでは、回動式ターミナル基台171の位置が図9(2)から図10(2)に切り替わることにより、接点176dと176a、接点176eと176b、接点176iと176f、接点176jと176gが接続状態となる。この結果、セルユニット156〜158が直列接続状態となり、正極端子161と負極端子162からは定格108Vの直流が出力されることになる。尚、揺動部材たる回動式ターミナル基台171の揺動軸172にクリック機構又はラッチ機構を設けて、切替用突起24A又は切替用突起84によって揺動部材に所定以上の回転トルクを加えないと揺動しないように構成すると良い。また、接点176aと176fはどこにも結線されていない電極であるので、これらを無くして接点176bと176c、接点176gと176hの電極間隔を大きくすることで、切り替え時に隣接する電極間の短絡のリスクを低減させても良い。
本実施例によれば、コードレス電動工具においても、商用電源駆動の電動工具と同等の高い電圧を電池パック100から得ることができ、高出力の携帯型の電動工具や電気機器を実現できる。また、電圧を上げるためにセルの本数を増やしたものであっても、18650サイズのセルでは無くて14500サイズのリチウムセルを30本使用したので、高出力でありながら小型軽量であり、パワーウェイトレシオを大きくすることができる。さらに、本実施例の電池パック100は、電池パック100の内部に並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素(電圧切替機構170)を配置してセルユニット156〜158の接続を切り替えることで、36Vと108Vの出力切替を可能としたので、広く用いられている定格36Vの電動工具や電気機器を動作させることができる。また本実施例の電池パック100においては、電圧切替要素として機能する電圧切替機構170が、電源端子として機能する正極端子161及び負極端子162が配置された位置と略同じ高さの位置に配置されているから、電池パック100の上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。
次に図11〜図14を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例では、第1の実施例と同様に、出力電圧を低電圧側の36Vと高電圧側の108Vの2段階に切り替えることができる電池パック200を提供するものである。図11は電池パック200とそれに接続されるターミナル部の形状を示す斜視図であり、(1)は定格36Vの電気機器に接続される際の状態を示し、(2)は定格108Vの電気機器に接続される際の状態を示す。電池パック200の外観形状は、基本的には図1〜図8で示した第1の実施例の電池パック100の形状と一部(スロット群の配置領域付近の形状)を除いて同じである。
電池パック200は、下ケース201と上ケース210を接合することによって形成されるハウジング内に、14500サイズのリチウムイオン電池によるセル151が30本収容される。ハウジングが大きくなることが許容されるならば、セルとして18650サイズを用いても良いし、その他の形状やサイズのセルを用いても良い。電池パック200の上ケース210には電動工具本体1又は電動工具本体30側への装着のための取付機構が形成されるが、その構成や形状は図7で示した第1の実施例の電池パック100の形状とほとんど同じである。上ケース210には、電気機器側のターミナル部を案内するための下段面211と、その上側に配置される上段面215が形成され、下段面211と上段面215の境界となる段差部212において、複数の端子挿入口(スロット)が形成される。上段面215の左右両側縁部には、電気機器本体側溝レール溝と嵌合するレール部238a、238bが形成される。ここでは、左右方向に5つの端子挿入口が図示されているが、配置される端子挿入口の数は任意であり、さらに増やしても良い。上段面215の上側には隆起部240が形成され、隆起部240の左右両側にはラッチ部241が設けられる。ラッチ部241はラッチ爪241aに連動している。
図11(1)は、36V定格の電気機器本体、電動工具本体1等に接続される場合を示している。電気機器本体1側に設けられるターミナル部270は、左右方向に狭い幅を有し、電池パック200は、正極入力端子271と負極入力端子272が中央寄りの2つの端子挿入口222、224に挿入されるように移動される。正極入力端子271と負極入力端子272は、後述する電池パック200の切替端子と接続されて、電池パック200の出力電圧を低電圧に切り替える切替素子又は接続素子として機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する低電圧用の接続素子としても機能する。図11(2)は、108V定格の電気機器本体、電動工具本体30等に接続される場合を示している。電動工具本体30のターミナル部280は、ターミナル部270に対して左右方向に広い幅を有し、この間の領域が端子配置領域となる。端子配置領域では左右両端近くに配置された正極入力端子281と負極入力端子282を有し、左右方向のほぼ中央に接続素子283が形成される。電池パック200が電動工具本体30に装着されると、正極入力端子281と負極入力端子282が端子挿入口221と225に挿入され、接続素子283が端子挿入口223に挿入されることになる。
図12は、電池パック200の接続回路図である。電池パック200内には3つのセルユニット156〜158が収容される。セルユニット156〜158は図8で示したセルパック150として形成され、セパレータ152によって保持されたものであり、それぞれ14500サイズのリチウムイオン電池のセル151が10本ずつ直列接続されている。尚、図12では10本分のセルをまとめて1つの電池として図示しているので注意されたい。ターミナル部270、280側の入力端子を挿入するための端子挿入口(スロット)221〜225にはそれぞれ1〜4個の接続端子が、ターミナル部270、280の挿入方向に並べて配置される。ここに配置される接続端子群は、電池パック200の並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素となるものである。端子挿入口222と端子挿入口224の組は、36V用のターミナル部270に対応するものあり、そこには低電圧を出力するための切替端子群(端子群232と端子群234)が配置される。正極入力端子271は端子群232のそれぞれと接触するように装着され、負極入力端子272は端子群234のそれぞれと接触するように装着される。
端子挿入口221と端子挿入口225の組は108V用のターミナル部280に対応するものであり、そこには高電圧を出力するための切替端子群(端子231と端子235)が配置される。正極入力端子281は端子231と接触するように装着され、負極入力端子282は端子235と接触するように装着される。端子231は正極端子として機能し、端子235は負極端子として機能する。ターミナル部280の左右中央部には、出力電圧を切り替えるための接続素子283がさらに設けられる。並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素となる接続素子283は端子挿入口223に挿入される。接続素子283は先端側(図中、電池パック200に近い側)の導通部283aと後端側の導通部283cを有し、それらの導通部283aと283cの間に絶縁体283bを配置することによって、導通部283aと導通部283cが電気的に非導通状態とされる。導通部283aと283cの目的は、端子群233中の所定の端子間を短絡させる短絡子であって、電気機器本体側では導通部283aと283cから配線する必要がない。従って、接続素子283はターミナル部280と一体成形で形成される非導電体による接続素子基台に、導通部283aと283cを形成する金属板を鋳込むようにして製造するか、又は非導電体による接続素子基台の外周面に金属板を張り付けるか又は外周面を金属メッキ等による導電処理することで製造すると良い。このようにターミナル部280には複数のセルユニットを互いに直列に接続する短絡子を付加して形成した。接続素子283の導通部283aは、後述するように、電池パック200の切替端子と接続されて、電池パック200の出力電圧を高電圧に切り替える切替素子又は接続素子として機能し、さらに複数のセルユニット156,157を互いに直列に接続する一体型の高電圧用の接続素子としても機能する。同様に、接続素子283の導通部283cも、電池パック200の切替端子と接続されて、電池パック200の出力電圧を高電圧に切り替える切替素子又は接続素子として機能し、さらに複数のセルユニット157,158を互いに直列に接続する一体型の高電圧用の接続素子としても機能する。
図13は端子231〜235の形状を示す図であり、(1)は上面図であり、(2)は端子群232の側面図((1)のB方向からの矢視図)である。端子群232は、端子232a、232b、232cを有している。これら端子232a、232b、232cは、低電圧の電気機器本体1の接続素子に接続されて電池パック200の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する並列端子としても機能する。端子群232は、複数の並列端子を互いに隣接するよう配置した並列端子群として構成されている。端子群234は、端子234a、234b、234cを有している。これら端子234a、234b、234cは、低電圧の電気機器本体の接続素子に接続されて電池パック200の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する並列端子としても機能する。端子群234は、複数の並列端子を互いに隣接するよう配置した並列端子群として構成されている。端子群233は、端子233a、233b、233c、233dを有している。これら端子233a、233b、233c、233dは、高電圧の電気機器本体30の接続素子に接続されて電池パック200の出力電圧を高電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニット156〜158を互いに直列に接続する直列端子としても機能する。端子群233は、複数の直列端子を互いに隣接するよう配置した直列端子群として構成されている。ここでは端子231、235と、端子232a、233a、234aは従来から広く用いられている端子と同じ形状であり、平板をU字形状に曲げ、開口端部付近の両側側面を内側に向けて凸状にへこませたような形状にし、凸状部分による最狭部がターミナル部側の板状の端子の両面と接触するように形成される。端子231、235、232a、233a、234aは、嵌合するターミナル部側の金属端子が後方側に貫通しないため、後方側が閉鎖された形状とされる。一方、その他の端子群、即ち端子232b、232c、233b〜233d、234b、234cは、接触するターミナル部側の金属端子を前方から後方に貫通させた状態で嵌合するため、前方側だけでなく後方側にも開口部が形成される。(2)の側面図においてその具体型な形状を示しており、端子232aは上端の後方付近(矢印236a)が閉鎖されているが、端子232b、232cは前方側だけで無く後方側(矢印236b、236cで示す付近)が開放されているような形状とされる。このため、図に示すようなターミナル部270が矢印265の方向に挿入されると、正極入力端子271が3つの端子232a〜232cに同時に接触することにより、それぞれが電気的に導通状態になる。この接続状態は、負極入力端子272と3つの端子234a〜234cにおいても同様となる。このように一つの端子挿入口において、複数の端子を装着方向と同方向(平行方向)に並べ、ターミナル部の電極板を用いて電池パック200内のセルユニット156〜158の接続状態を並列接続と直列状態のいずれかに設定することができるようにした。
図14は電池パック200をターミナル部270、280に装着した時の状態を示す図であり、(1)は36V出力状態、(2)は108V出力状態である。(1)に示す36V出力の時のターミナル部270は、正極入力端子271と負極入力端子272を有する。正極入力端子271は、端子232a、232b、232cと接触することによりこれらが導通する。端子232aはセルユニット156の+端子(正極)に接続されており、端子232bはセルユニット157の+端子に接続されており、端子232cはセルユニット158の+端子に接続されている。従って、正極入力端子271が3つのセルユニット156〜158の+端子に接続されたことになる。同様にして負極入力端子272は、端子234a、234b、234cと接触することによりこれらが導通する。端子234aはセルユニット156の−端子(負極)に接続されており、端子234bはセルユニット157の−端子に接続されており、端子234cはセルユニット158の−端子に接続されている。従って、負極入力端子272が3つのセルユニット156〜158の−端子に接続されたことになる。尚、端子群233には何も接続されないため、端子233a〜233dは開放状態にされる。これらの結果、セルユニット156〜158が並列接続され、即ち定格36Vの直流が正極入力端子271と負極入力端子272に出力されることになる。
図14(2)は電池パック200をターミナル部280に装着した時の状態を示す図である。108V出力の時のターミナル部280は、正極入力端子281と負極入力端子282と接続素子283を有する。正極入力端子281は、セルユニット156の+端子と接続される端子231とだけ接触する。同様にして負極入力端子282は、セルユニット158の−端子と接続される端子235とだけ接触する。また接続素子283(接続端子)が4つの端子群(直列端子要素233a〜233d)と接触するようにして挿入される。この接続素子283により、端子233aと端子233bが導通部283a(図12参照)により短絡し、端子233cと端子233dが導通部283c(図12参照)により短絡する。ここで、端子233bと端子233cの間は、接続素子283に形成された絶縁体283b(図12参照)によって非導電状態で保たれる。端子233aはセルユニット156の−端子に接続され、端子233bはセルユニット157の+端子に接続されるため、セルユニット156、157間の直列接続状態が確立される。同様にして、端子233cはセルユニット157の−端子に接続され、端子233dはセルユニット158の+端子に接続されるため、セルユニット157、158間の直列接続状態が確立される。これらの導通状態の結果、セルユニット156〜158が直列接続され、定格108Vの直流が正極の端子231と負極の端子235に出力されることになる。尚、端子群232と端子群234の各端子は開放状態にされる。
以上、第2の実施例では電圧を切替えるための端子群を備えて、切替端子群は異なる複数の前記セルユニットのそれぞれから延びる端子を隣接配置して構成したので、複数電源に対応できる電池パック200を実現できた。特に、スロット223内に複数のセルユニットの正極又は負極に接続されたものであって、複数のセルユニットを直列に接続するための直列端子群(直列端子要素233a〜233d)を備えたので36Vと108Vの切り替えが可能な電池パック200を実現できた。この際、電動工具本体等の電気機器本体側のターミナル部270又は280を図示したような形状に設定しておくことによって、正極入力端子が挿入されるスロット(221又は222)と、負極入力端子が挿入されるスロット(224と225)とは別に、出力電圧を切り替える切替素子(接続素子283)が挿入される第3のスロット(223)を設けたので、電池パック200を装着するだけで電池パック200側からの出力電圧が自動的に切り替わる。よって、作業者は電池電圧の切り替え作業に注意する必要は無い上に、設定電圧ミスによって電気機器本体側を破損する虞もない。さらに、電池パック200を取り外した際に、3つのセルユニット156〜158が開放状態(非接続状態)とされるため、保管時や輸送時に最適な状態とすることができる。第2の実施例の電池パック200においては、電圧切替要素として機能する端子群232、端子群234及び接続素子283と、電源端子として機能する端子231、端子235、端子群232及び端子群234が、上下方向において略同じ高さの位置に配置されているから、電池パック200の上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。また、直列端子として機能する端子233a、233b、233c、233dと、正極端子として機能する端子231と、負極端子として機能する端子235を、上下方向において略同じ高さの位置に配置するから、電池パック200の上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。さらに、直列端子として機能する端子233a、233bは互いに隣接するよう配置された直列端子群として構成され、導通部283aはこの直列端子群に接続される一体型の高電圧用の接続素子として機能するから、電気機器本体をシンプルな構造とすることができる。同様に、直列端子として機能する端子233c、233dは互いに隣接するよう配置された別の直列端子群として構成され、導通部283cはこの直列端子群に接続される一体型の高電圧用の接続素子として機能するから、電気機器本体をシンプルな構造とすることができる。そして複数の直列端子群を左右方向と直行する方向に並べるとともに、複数の一体型の高電圧用の接続素子を左右方向と直行する方向に並べるから、電池パック及び電気機器本体の左右方向のサイズをコンパクトに構成することができる。
第2の実施例を用いた電池パック200の構造は、電圧切替式の電池パックだけに限られずに、電圧固定の電池パックにおいても有効に適用できる。そのような電池パックの構造を示したのが図15である。図15は108V専用の電池パック200Aの回路図を説明するための図である。ここでは、図14(2)の端子群232、234を取り除いたものと同じ構造であり、端子群232、234の挿入位置に形成される端子挿入口222、224(共に図11参照)は閉鎖される。108V用の電動機器本体は、正極入力端子281と負極入力端子282と接続素子283を有するターミナル部280を用いる。ターミナル部280の構造は図12で示した構造と同一であり、接続素子283は先端側の導通部283aと後端側の導通部283cを有し、それらの導通部283aと283cの間が絶縁体283bによって電気的に非導電状態で接続されるものである。このように複数の端子群を用いて、ターミナル部280が接続されたときにセルユニット156〜158の直列接続状態を確立させるので、電気機器に電池パック200Aが装着されていない際に3つのセルユニット156〜158が非接続状態とされるため、保管時や輸送時に最適な状態とすることができる。
図15(2)は別の変形例の電池パック200Bを示す回路図である。(2)は(1)の接続素子283を左右方向に2つに分けて、第1接続端子285と第2接続端子286に分割したものである。この分割に併せて端子233a〜233dを横方向に分けて配置した。第1接続端子285は、セルユニット157の+端子側と接続される端子233bと、セルユニット156の−端子側と接続される端子233aを短絡させるための金属板である。同様にして、第2接続端子286は、セルユニット157の−端子側と接続される端子233cと、セルユニット158の+端子側と接続される端子233dを短絡させるための金属板である。この変形例でも(1)と同等の効果を得ることができる上に、端子233aと233b、223cと233dの設置スペースが小さくて済むので、既存の電池パックに実装する上では有利である。尚、図15(2)の変形例において、端子挿入口を横方向に6列設けるようにすれば、(2)の構成に36V出力用の端子群232、234(図13参照)を配置することができ、前後方向の端子の長さを短くした電池パックを実現できる。
次に図16〜図20を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第3の実施例の電池パック300においては、第1及び第2の実施例に比べて電池パックの出力電圧を、低電圧側と高電圧側の2段階に切り替えることができる点で共通する。しかしながら、第3の実施例では、36Vと108Vのように電圧比を3倍で切り替えるのではなくて、18Vと36Vのように電圧比を2倍で切り替えるようにしたものである。図16は本発明の第3の実施例に係る電池パック300と、それに装着されるターミナル部370、380の形状を示す概略斜視図である。電池パック300に装着可能な電気機器は、ターミナル部370を有する定格18V機器と、ターミナル部380を有する定格36V機器の2種類である。ターミナル部370には第1の電源入力端子組(機器側電源端子)たる正極入力端子371と負極入力端子372が形成される。ターミナル部380には第2の電源入力端子組(機器側電源端子)たる正極入力端子381と負極入力端子382が形成される。これらターミナル部370、380は電気機器本体側の電池パック装着部に設けられるものである。正極入力端子371、381と負極入力端子372、382は金属製の板状部材で形成され、これらを固定する基台部分は合成樹脂等の非導電体の成形品で形成される。正極入力端子371、381と負極入力端子372、382は、それぞれが電池パック300の操作部と当接して電池パック300の出力電圧を切り替える切替素子又は接続素子として機能する。
ここで図示される電池パック300は、概略図であって下段面311と上段面315の間の段差部312から後方側にかけて、複数のスリット321〜324が形成される。これらスリット321〜324を含めた電池パック300の上側形状は図7で示した電池パック100の形状とほぼ同等の形状とすれば良いが、ここでは隆起部やラッチ部等の記載は省略している。18V用のターミナル部370は、左右方向に幅が狭く構成され、36V用のターミナル部380は左右方向の幅が広く構成される。これらのターミナル部370、380の幅の違いに応じて正極入力端子371と負極入力端子372の間隔は狭く形成され、正極入力端子381と負極入力端子382の間隔は広く形成され、低電圧用の端子組(371、372)の占める領域は、高電圧用の端子組(381、382)の占める範囲に含まれるように配置される。正極入力端子371と負極入力端子372は、スリット322とスリット323にそれぞれ挿入され、正極入力端子381と負極入力端子382は、スリット321とスリット324にそれぞれ挿入される。これらの端子とスリットの位置は、電動工具本体側の電池パック装着部に形成されたレール溝と、電池パック300に形成されるレール部(ここでは図示を省略している)によって適切に案内される。このように電気機器本体側のターミナル部のクリップ(正極入力端子371、381と負極入力端子372、382)が挿入されるスリットを2パターン設け、ターミナル部のクリップの幅が異なる18Vと36Vの製品を取り付けることにより、出力切り替えを可能とした。作業者は電池パック300を18V用の電動工具等の電気機器本体又は36V用の電気機器本体に単に装着するだけで、電池パック300から適切な出力電圧を得ることができる。
図17は、電池パック300の内部、特に段差部312(図16参照)の後方側であってスリット321〜324の位置付近(端子配置領域)に配置される電圧切替機構(電圧切替要素)320の構成パーツを示す図である。電圧切替機構320は切替スイッチ手段であり、金属製の端子部材が鋳込まれた合成樹脂製の2つの可動案内部材330、340を有し、これらはスプリング348等の付勢手段によって、電池パック300の電気機器本体への装着方向に対して交差する方向においてお互いが離れるように付勢される。可動案内部材330、340は、電池パック300の出力電圧を切り替えるために電気機器本体の切替素子と当接して操作される操作部として機能する。可動案内部材330、340の左右両側付近と中央付近後方側には、接点端子(351〜354)が4つ設けられる。可動案内部材330、340には、正極入力端子371と負極入力端子372が挿入されるための端子装着部331、341が形成される。図17(1)の左側の図は電池パック300が電気機器本体に装着されていない時の可動案内部材330、340の位置を示しており、この状態では正極入力端子371と負極入力端子372を、端子装着部331、341にそのまま挿入させることができる。一方、図17(2)の左側の図に示すようにターミナル部380を装着するときは状況が異なる。ターミナル部380の接続素子である正極入力端子381と負極入力端子382に対して電池パック300を相対移動させると、正極入力端子381が可動案内部材330の傾斜部332に接触し、負極入力端子382が可動案内部材340の傾斜部342に接触する。これはスプリング348の作用によって可動案内部材330、340の平行面333、343が正極入力端子381と負極入力端子382の間隔よりも広い間隔の位置に静止しているためである。
正極入力端子381が傾斜部332に接触しながら、負極入力端子382が傾斜部342に接触しながらターミナル部380が矢印349のように押し込まれると、すなわち、正極入力端子381、負極入力端子382がそれぞれ、スリット321、324(図16参照)に挿入されていくと、スプリング348を圧縮しながら可動案内部材330、340が内側に向けて矢印336、346の方向(互いに近づく方向)に移動する。尚、本実施例での説明では、ターミナル部380を電池パック300に近づけるように図示した矢印349の意味は、電池パック300側との距離が縮まることを意味するだけであって、便宜上方向を示したにすぎず、固定した電気機器本体側に電池パック300側を移動させる場合と、電池パック300側に電気機器本体側を移動させる場合の双方を含む。本実施例では理解の容易性から、これらの相対移動をターミナル部380が矢印349のように電池パック300側に移動するとして説明したが、どちら側を移動させても装着後の状態は同じである。
可動案内部材330、340が矢印336、346の方向に移動しながらターミナル部380がさらに挿入されると、スプリング348がさらに圧縮されて可動案内部材330、340がさらに互いに接近するので、正極入力端子381が可動案内部材330の外側(右側)の平行面333と第1+端子(第1正極端子)351の間に入り込み、同様にして負極入力端子382が可動案内部材340の外側(左側)の平行面343と第2−端子(第2負極端子)354の間に入り込む。この入り込んだ状態で矢印349の方向の所定位置まで移動したら、電池パック300の装着完了である。この可動案内部材330、340の移動によって、同時に中間端子335、345の位置も移動して、それらの最接近点が“非接触”状態から“接触”状態に変わって導通することになる。さらに、可動案内部材330、340と端子351〜354との接触状態が変わり、この結果ターミナル部380には定格36Vの直流が出力されることになる。中間端子335、345及び4つの接点端子(351〜354)は、電池パック300の出力電圧を切り替えるために操作部によって操作される切替スイッチとして機能する。
図18は、可動案内部材330、340と端子351〜354を用いた電圧切替機構320を説明するための図である。同図(1)は電圧切替機構320の電池パック300内での収容位置を示す図である。同図(1)において電圧切替機構320は、電池パックの下段面311と上段面315により形成される段差部312よりも後方側であって、上面視では複数のスリット321〜324(図16参照)の配置位置と重複する位置に収容される。可動案内部材330、340は端子基板360(図18(3)参照)上において、左右方向に移動する可動部材であり、4つの接点端子(351〜354)は端子基板360に固定されて動かない非可動部材である。
図18(2)は電圧切替機構320の上面から見た展開図であり、各部品の構成がわかるように距離的に離して図示している。同図(2)において、可動案内部材330は、上面視で四角形の部材と三角形の部材を連結したような基本形状であって、基本形状部分はプラスチック等の合成樹脂で製造される。合成樹脂部分には、金属製の中間端子335が鋳込まれ、これらは強固に固定される。中間端子335は後方側に2つの接触子335cと335dが形成され、端子装着部331の間に延びるようにして前方側に延在してターミナル部370の正極入力端子371と接触するために内側から外側に凸状に曲げられた接触子335aが形成され、内側部分(図中、可動案内部材330の左側)には他方の可動案内部材340側の中間端子345の接触子345bと接触する接触子335bが形成される。可動案内部材340とそれに鋳込まれる中間端子345は、可動案内部材330と中間端子335と左右対称に形成されるものである。中間端子345は後方側に2つの接触子345cと345dが形成され、端子装着部341の間に延びるようにして前方側に延在してターミナル部370の負極入力端子372と接触するために内側から外側に向けて凸状に曲げられた接触子345aが形成され、内側部分(図中、可動案内部材340の右側)には他方の中間端子335の接触子335bと接触する接触子345bが形成される。接触子335aと345aが低い電圧を出力する低電圧用端子組であって第一電源端子を構成する。可動案内部材330、340の間にはスプリング348(図18(2)では図示省略)が鋳込まれ、成形時点において可動案内部材330、340が弾性体を介して連結される。スプリング348は金属製の圧縮コイルバネである。
中間端子335、345の後方側には、4つの端子351〜354が配置される。左右方向で中央寄りに配置されるのは、第一セルユニットの+端子(正極端子)に接続される第2+端子(第2正極端子)352と、第1セルユニットの−端子(負極端子)に接続される第1−端子(第1負極端子)353である。第2+端子352には、前方側に凸状に曲げられ左右方向に並んで配置した接触子352a、352bが形成され、第1−端子353には前方側に凸状に曲げられ左右方向に並んで配置した接触子353a、353bが形成される。接触子335cは接触子352a、352bのいずれかと択一的に接触し、接触子345cは接触子353a、353bのいずれかと択一的に接触する。
中間端子335の右側には第1+端子(第1正極端子)351が配置され、中間端子345の左側には第2−端子(第2負極端子)354が配置される。第1+端子351は上面視で略L字状に折り曲げられた部材であり、前側に位置する一方の端部には、ターミナル部380の正極入力端子381(図17参照)と接触するために外側から内側に向けて凸状に曲げられた接触子351aが形成され、後方に位置する他方の端部には、中間端子335の接触子335dと接触するために前側に凸状に曲げられた接触子351bが形成される。第2−端子354は第1+端子351と左右対称の形状とされ、前側に位置する一方の端部には、ターミナル部380の負極入力端子382(図17参照)と接触するために凸状に曲げられた接触子354aが形成され、後方に位置する他方の端部には、中間端子345の接触子345dと接触するために凸状に曲げられた接触子354bが形成される。接触子351aと354aが高い電圧を出力する高電圧用端子組であって第2電源端子を構成する。
図18(3)は、同図(1)のC−C部の断面図である。可動案内部材330は上側を電池パック300の上ケース310にて覆われ、下側は端子基板360によって左右方向に摺動可能なように保持される。端子基板360の上面には、上側に向けて凸状に突出し、左右方向に直線状に延びる案内レール361が形成される。また、上ケース310の上段面315の内側壁には、左右方向に直線状に延びるように設けられた案内レール316が形成される。一方、可動案内部材330の上側面には左右方向に連続して形成される案内溝部334aが形成され、下側面には左右方向に連続して形成される案内溝部334bが形成される。尚、図18(3)以外の図では可動案内部材330の案内溝部334aと、可動案内部材340側に設けられる案内溝部344aの図示をしていないので注意されたい。
このように案内溝部334bが案内レール361により案内され、案内溝部334aが案内レール316により案内されることによって、可動案内部材330は電池パック300の装着方向と交差する方向に移動可能となる。可動案内部材340側も同様にして、案内溝部と案内レールが形成され、それらによって案内されることによって、可動案内部材340が電池パック300の装着方向と交差する方向(左右方向)にスムーズに摺動可能となり、装着方向と同方向(前後方向)には移動しないことになる。中間端子335は可動案内部材330に固定されるため、端子基板360とはほぼ非接触となるように配置される。第2+端子352は固定用のピン部352cが端子基板360の内部に嵌合し、接続用のピンが端子基板360を貫通して半田付けされる。なお、ピン部352cとピンを分けずにピン部352cを半田付けしても良い。
以上、第3の実施例によれば端子基板360の上面であって電源端子(正極端子と負極端子)が配置される端子配置領域において、電池パック300の装着方向と交差する方向に移動可能な複数の可動案内部材たる電圧切替要素(330、340)によって、複数のセルユニットを並列に接続するか直列に接続するかを切り替えることができるので、電圧の自動切り替え機構を有する電池パック300を実現できた。尚、本実施例では可動案内部材330の移動方向は電池パック300の装着方向と直交するようにしているが、必ずしも90度の交差角に限られる訳で無く、90度よりも所定の角度だけ増減させて斜めに交差するように移動させても良い。このように第3の実施例では、可動案内部材330、340を電池パック300の装着方向において、端子351〜354、335、345の配置領域(スリット321〜324が配置されている領域)に配置しているので、電池パックを大きくすることなく電圧の切り替えを行うことができる。
次に、図19を用いて定格18Vの電気機器本体と接続される時の電圧切替機構320によるセルユニットの接続状態を説明する。図19は(1)がターミナル部370を電池パック300に装着する前の状態を示している。同図(2)が装着後の状態を示すもので、4つの端子351〜354からセルユニット356、357への結線状態を回路図として示している。電池パック300には2つのセルユニット356、357が収容される。セルユニット356、357はそれぞれ5本のリチウムイオン電池のセル151が直列に接続された集合体であって、その出力は定格18Vである。セルユニット(第1セルユニット)356の+出力(プラス出力)は第1+端子351にリード線により配線され、−出力(マイナス出力)は第1−端子353にリード線により配線される。同様にして、セルユニット(第2セルユニット)357の+出力は第2+端子352にリード線により配線され、−出力は第2−端子354にリード線により配線される。
ターミナル部370が装着されていない場合は、可動案内部材330、340はスプリング348によって互いに離反するように付勢される。この状態では接触子335bと接触子345bは離反しており非接触状態である。図19(1)の状態からターミナル部370が装着されると、同図(2)に示すようにターミナル部370の正極入力端子371がスリット322(図17参照)を介して端子装着部331内に収容され、その結果、接触子335bと正極入力端子371が接触する。同様にして負極入力端子372がスリット323(図17参照)を介して端子装着部341に収容され、その結果、接触子345bと負極入力端子372が接触する。しかしながら可動案内部材330と340は矢印349と同方向にも直交する方向(左右方向又は上下方向)にも移動しないため、中間端子335、345と4つの端子351〜354との接触関係に変化はない。この状態では接触子335dと351bが接触し、接触子335cと352aが接触し、接触子345cと353aが接触し、接触子345dと354bが接触する。これら接触子の接触の結果、正極入力端子371からセルユニット356、357の+出力(プラス出力、正極端子)への接続経路が確立され、負極入力端子372からセルユニット356、357の−出力(マイナス出力、負極端子)への接続経路が確立され、2つのセルユニット356、357は並列接続され、その出力、即ち定格18Vの直流が電池パック300から出力されることになる。
図20は(1)がターミナル部380を電池パック300に装着する前の状態を示し、(2)が装着後の状態を示すもので、4つの端子351〜354からセルユニット356、357への結線状態を回路図で示している。図20(1)に示すように、ターミナル部380が装着されていない場合は、可動案内部材330、340はスプリング348によって互いに離反するように付勢される。この状態では接触子335bと接触子345bは離反しており非接触状態である。同図(1)の状態からターミナル部380が装着されると、正極入力端子381がスリット321(図16参照)を介して傾斜部332に接触するが、接触したままターミナル部380を押し込む(又は、電池パック300をターミナル部380側に移動させる)と、傾斜部332が正極入力端子381の内側に逃げるようにして移動するため、可動案内部材330が矢印336の方向にスプリング348を圧縮しながら移動する。同様にして負極入力端子382がスリット324(図16参照)を介して傾斜部342に接触しながら押し込まれると、傾斜部342が負極入力端子382の内側に逃げるようにして移動するため、可動案内部材340が矢印346の方向にスプリング348を圧縮しながら移動する。可動案内部材330が内側に移動すると、正極入力端子381は傾斜部332よりも側方側に位置する平行面333と第1+端子351の間に入り込み、スプリング348の付勢によってその状態(図20(2)で示す状態)にて保持され、正極入力端子381が第1+端子351の接触子351aと良好に接触する。同様にして可動案内部材340が内側に移動すると、負極入力端子382は傾斜部342よりも側方側に位置する平行面343と第2−端子354の間に入り込み、その状態(同図(2)で示す状態)にて保持され、負極入力端子382が第2−端子354の接触子354aと良好に接触する。
可動案内部材330、340が内側に移動すると他の接触子の接触関係も変化する。まず中間端子335の接触子335bと中間端子345の接触子345bが接触することにより、中間端子335と345が導通状態になる。また、中間端子335の接触子335cと接触するのが、図20(1)で示すような接触子352aから同図(2)で示すように接触子352bに切り替わり、中間端子335の接触子335dと第1+端子351の接触子351bとの接続状態が解消される。同様にして、中間端子345の接触子345cと接触するのが、同図(1)で示すような接触子353aから同図(2)で示すように接触子353bに切り替わり、中間端子345の接触子345dと第2−端子354の接触子354bとの接続状態が解消される。これら接触子の接触状態の切り替えの結果、正極入力端子381からセルユニット356の+出力(プラス出力、正極端子)への接続経路が確立され、セルユニット356の−出力(マイナス出力、負極端子)からセルユニット357の+出力への接続経路が確立され、セルユニット357の−出力から負極入力端子382への接続経路が確立される。この接続は、2つのセルユニット356、357の直列接続であって、電池パック300から定格36Vの直流が出力されることになる。尚、電圧切替機構320の可動案内部材330、340はスプリング348によって付勢されているので、図20(2)の状態からターミナル部380を取り外した場合は、元の同図(1)の状態に戻るため、セルユニット356と357の直列接続状態は自動的に解消され、並列接続状態に戻る。
以上のように、可動案内部材330、340を用いた電圧切替機構320を実現することによって、作業者は電池パック300を定格18Vの電気機器本体又は定格36Vの電気機器本体のいずれかに単に装着するだけで、電気機器本体に対して最適な出力電圧を得ることができる。尚、上述した第3の実施例は、電圧比が2倍であれば、他の電圧、例えば54V/108Vの切替をおこなう電池パックにおいても実現可能である。さらに、可動案内部材を3つ用いることによって切り替え電圧比が3倍となるような切り替え機構を実現しても良い。第3の実施例の電池パック300においては、電圧切替要素として機能する電圧切替機構320と、電源端子として機能する接触子335a及び接触子345aが、上下方向において略同じ高さの位置に配置されているから、電池パック300の上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。
次に図21及び図22を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図21は第4の実施例に係る電池パック600の上面図である。電池パック600の外観形状は、図7に示した電池パック100とほぼ同じであり、レール部の形状や下段面611や上段面615の形状は同じである。上段面615には複数のスロット部が設けられ、スロット部の配置された領域が端子配置領域となる。ここではスロット部として、正極端子用スロット621、負極端子用スロット622に加えて、第3のスロットとなる直並切替素子用スロット623が形成される。正極端子用スロット621は正極出力端子661(正極端子)を収容するためのスロットであり、負極端子用スロット622は負極出力端子662(負極端子)を収容するためのスロットである。正極端子用スロット621と負極端子用スロット622に挟まれる部分には、直並切替素子用スロット623が配置される。ここでは従来の電池パックにおいて何も端子が割り当てられずに空いていたスロットを、直並切替素子用スロット623に割り当てたものである。
直並切替素子用スロット623の内部には、入口側(前方側)から、2つの並列接続子663a、663bからなる並列接続子対663と、直列接続子664が配置される。並列接続子663aは、セルユニット356の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)と、セルユニット357の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)とからなる接続子対によって構成される。同様に、並列接続子663bは、セルユニット356の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)と、セルユニット357の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)とからなる接続子対(導電体対)によって構成される。言い換えると、並列接続子663a、663bは各セルユニットの同極(+出力又は−出力)にそれぞれ接続され隣接して配置された一対の接続子から構成される。並列接続子663a、663bは、左右方向に分離された導電体対によりそれぞれ構成され、通常状態では図示のように導電体対が接触状態にある。並列接続子663aを構成するセルユニット356の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)と、並列接続子663aを構成するセルユニット357の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)は、それぞれが電池パック600の出力電圧を低電圧に切り替えるための切替端子として機能する。また並列接続子663bを構成するセルユニット356の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)と、並列接続子663bを構成するセルユニット357の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)は、それぞれが電池パック600の出力電圧を低電圧に切り替えるための切替端子として機能する。直列接続子664は、左右方向に分離された導電体対により構成され、通常状態では図示のように左右の導電体対が離合して非接触状態にある。直列接続子664は、セルユニット356の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)と、セルユニット357の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)とからなる接続子対(導電体対)によって構成される。言い換えると、直列接続子664は各セルユニットの異極(+出力及び−出力)にそれぞれ接続され隣接して配置された一対の接続子から構成される。尚、直列接続子664は、分離された導電体対の端子間の距離を稼ぐべく電池パック600の装着方向に距離をとった位置関係でも良い。直列接続子664を構成するセルユニット356の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)と、直列接続子664を構成するセルユニット357の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)は、それぞれが電池パック600の出力電圧を高電圧に切り替えるための切替端子として機能し、さらに複数のセルユニット356、357を互いに直列に接続する直列端子としても機能する。
正極端子用スロット621と負極端子用スロット622及びその他のスロットの装着方向の長さはLSであり、これらに対して直並切替素子用スロット623の装着方向の長さLS1は倍程度に長く形成される。これは直並切替素子用スロット623の内部には、装着方向に並列接続子663a、663bと直列接続子664の3組の導電体対が直列に並べて配置されているためである。ここで、正極出力端子661及び負極出力端子662(これらを総称して電源端子)は装着方向に対して交差する方向に離間して配置されており、これら電源端子が配置されている領域(具体的には装着方向で段差部612から長さLS1又はLS2(図24で後述)までの領域、より詳細には長さLSの領域)に、電圧切替要素となる並列接続子対663と直列接続子664が配置されている。言い換えると、スロット部が設けられている領域に電圧切替要素が配置されている。
図22は、電池パック600が電気機器本体に接続されたときのセルユニットの接続回路を示す図であり、(1)が低電圧(例えば18V)用の電気機器本体に接続された状態を示し、(2)が高電圧(例えば36V)用の電気機器本体に接続された状態を示す図である。18V用の電気機器本体においては、従来から用いられている形状と同一のターミナル部650の形状を有する。即ち、正極入力端子651と負極入力端子652を有する。ターミナル部650には、図示している以外の入力端子(例えばLD端子)を設けても良いが、ここでは第4の実施例の特徴的な構成に係る部分だけを説明し、その他の入力端子の説明は省略する。LD端子は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。
図22(1)の下側の回路図は、電池パック600が電気機器本体に装着されることによってターミナル部650と電池パック600の出力端子群が接続された状態を示す図である。電池パック600の内部には、リチウムイオン電池のセル5本が直列接続されたセルユニット356、357が構成される。(1)の状態ではセルユニット356、357の+出力と−出力が並列に接続された状態で正極出力端子661と負極出力端子662に接続される。つまり、5本のセルが直列接続されたセルユニット357の+端子は正極出力端子661に接続され、−端子は並列接続子663bを介して負極出力端子662に接続される。一方、5本のセルが直列接続されたセルユニット356の+端子は並列接続子663aを介して正極出力端子661に接続され、−端子は負極出力端子662に接続される。ここでは、セルユニット356の+端子とセルユニット357の−端子を接続する直列接続子664は、複数のセルユニット356、357を直列に接続するために複数の接触端子(図中で右側の端子と左側の端子)からなる直列端子群を形成し、左右の接触端子は初期状態(電池パック600が取り外されている状態)では開放状態(非導通状態)にある。
図22(2)の上側の図は、36V用の電気機器本体のターミナル部680の端子形状を示す図である。ここでは、従来から用いられている形状と同一の正極入力端子681及び負極入力端子682に加えて、直並列切替端子683が形成される。直並列切替端子683は、電池パックの装着方向において電源端子(正極出力端子661、負極出力端子662)が配置される端子配置領域に設けられ、並列接続と直列接続を切り替える接続素子となる。直並列切替端子683には2つの機能が設けられるもので、電池パック600の装着時に最初に電圧切替要素(並列接続子対663、直列接続子664)に当接する先端側部分が導電体による導通端子683bとして形成され、後端側部分が非導電体による遮断端子683aとして形成される。ターミナル部680は合成樹脂の一体成形によってその基台部分が形成され、そこに金属製の板状の正極入力端子681と負極入力端子682が鋳込まれる。直並列切替端子683は切替端子群を備え、遮断端子683aがターミナル部680と一体に非導電材料により成形され、その先端の一部に金属製の導通端子683bが鋳込み成形により形成される。ここで、遮断端子683aは、電池パック600の非装着時には接触状態(導通状態)にある並列接続子663a、663bの間に入り込むことによって並列接続子663aの導通状態を遮断し、並列接続子663bの導通状態を遮断することを目的とするものである。遮断端子683aは、複数の切替端子によって構成された電池パック600の並列接続子663a、663bに接続されて、電池パック600の出力電圧を低電圧に切り替える切替素子として機能する。逆に導通端子683bは、電池パック600の非装着時には非接触状態(遮断状態)にある直列接続子(直列接続要素)664の間に入り込むことによってそれぞれを短絡させることによって直列接続子664の導通状態を確立することを目的とする。導通端子683bは、複数の切替端子によって構成された電池パック600の切替端子である直列接続子(直列接続要素)664に接続されて、電池パック600の出力電圧を高電圧に切り替える切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット356、357を互いに直列に接続する一体型の高電圧用の接続素子としても機能する。従って導通端子683bは単なる金属板で良く、電動工具本体側の基板等に結線する必要は無い。このようにして電圧切替要素たる直並列切替端子683を、異なる複数のセルユニットのそれぞれから延びる切替端子を隣接配置して構成した。
図22(2)の下側の回路図は、電池パック600が電気機器本体に装着されることによってターミナル部680と電池パック600の出力端子群が接続された状態を示す図である。(2)の状態ではセルユニット356の+出力とセルユニット357の−出力が接続された状態で正極出力端子661と負極出力端子662への直列接続回路が確立される。5本のセルが直列接続されたセルユニット357の+端子は正極出力端子661に接続され、−端子は導通端子683bの挿入によって短絡状態にされた直列接続子664の接続を介してセルユニット356の+端子に接続される。セルユニット356の−端子は負極出力端子662に接続される。ここで並列接続子対663を形成する並列接続子663a、663bは、遮断端子683aが2つの接点の間に介在するために非導通状態にされるので、(1)で示したようなセルユニット356、357の並列接続状態が解消される一方で、直列接続状態が確立する。
以上のように第4の実施例によれば電動工具本体側のターミナル部650、680の形状を変えて、正極入力端子681が挿入される第1のスロット621と、負極入力端子682が挿入される第2のスロット622に加えて、出力電圧を切り替える切替素子(直並列切替端子683)が挿入される第3のスロット623を用いることで電池パック600の出力電圧を適切に切り替えることが可能となった。しかも、従来から広く用いられる18V出力の際には、従来の電動工具と同じターミナル部650の形状としたので、本実施例による電池パック600を従来から市販されている18V用の電動工具本体や、電気機器本体に装着して同様に使用することができる。一方において、定格36Vを必要とする電動工具本体や、電気機器本体においてターミナル部680の形状を図22(2)のように構成すれば、電池パック600を装着するだけで、電池パック600から定格36Vの直流を得ることができる。この際、複雑なスイッチ機構が存在しないので、製造コストの上昇を抑えて耐久性の良い電圧自動切替式の電池パックを実現できた。また、電圧切替要素となる切替端子群(663a、663b、664)を装着方向において電源端子(正極出力端子661と負極出力端子662)が配置されている領域内の、第3のスロット623内に配置したため、電気機器本体に電池パックを装着するだけで容易に電圧を切り替えることができた。特に、装着方向と交差する方向において電源端子間に電圧切替要素を配置したので、電池パックの寸法を大きくすることなく、既存の電気機器本体を装着することも可能となった。第4の実施例においては、電圧切替要素と電源端子が上下方向において略同じ高さの位置に配置されているから、電池パックの上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。また直列接続子664を構成するセルユニット356の+出力(正極)に接続される接続子(導電体)と、直列接続子664を構成するセルユニット357の−出力(負極)に接続される接続子(導電体)は、それぞれが複数のセルユニット356、357を互いに直列に接続する直列端子として機能するが、これら直列端子を、正極端子である正極出力端子661と、負極端子である負極出力端子662に対して、上下方向において略同じ高さの位置に配置したから、電池パックの上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。
図23は、電池パック600の電気機器本体への非装着時に装着される電池パックカバー640の形状を示す図である。電池パックカバー640は、例えば塩化ビニル樹脂や、その他のプラスチック素材などの非導電性の材料から製造されるものであり、電池パック600の下段面611、段差部612、上段面615を覆うようにして取り付けられる。電池パックカバー640は、第1の平坦部たる上段部643と、第2の平坦部たる下段部641が鉛直面642によって接続された、横から見た断面がクランク状の形状である。電池パックカバー640の上段部643と鉛直面642を跨ぐように、3つの垂直リブ646〜648が形成される。垂直リブ646〜648は、それぞれ正極入力端子651と681、負極入力端子652と682、直並列切替端子683とほぼ同位置、同サイズにて形成したものである。但し、垂直リブ646〜648の先端側下部分の板厚はやや薄めに形成されて、装着がし易いようにしている。電池パック600に電池パックカバー640を装着することにより、セルユニット356、セルユニット357が電気的に完全に独立した状態となる。例えば、セルユニット356、セルユニット357各々が電力量54Wh(=電圧18V×容量3.0Ah)の場合、電池パックカバー640無しの状態では、セルユニット356、セルユニット357が並列接続となり電力量108Wh(=電圧18V×容量3.0Ah)となる。通常、リチウムイオン電池パックで電力量が100Whを超える場合は、輸送規制対象となる。しかしながら、電池パックカバー640を装着することにより、54Wh電池×2個の扱いとなり、輸送規制対象外となり通常の輸送形態での取り扱いが可能となり、梱包材、輸送コストの大幅な低減を図ることができる。
電池パックカバー640の外周側及び長手方向中心線付近には、厚さ方向(上下方向)に伸びるエッジ644とリブ645が一体成型にて形成され剛性を高めている。垂直リブ646〜648は、電池パックカバー640への装着時に、垂直リブ646が正極端子用スロット621に挿入されて正極入力端子651と嵌合し、垂直リブ647が負極端子用スロット622に挿入されて負極入力端子652と嵌合し、垂直リブ648が直並切替素子用スロット623に挿入されて並列接続子663a、663bと直列接続子664に嵌合する。電池パックカバー640は、正極入力端子651、負極入力端子652、並列接続子663a、663b等のばね性を用いて電池パック600から抜け落ちないように保持される。
以上、図21〜図23に示す電池パック600では、2組の並列接続子663a、663bからなる並列接続子対663と、一組の開放状態の接点からなる直列接続子664を、直並切替素子用スロット623の内部において装着方向に並べて配置した。従って図21に示すように、直並切替素子用スロット623の装着方向の長さLS1が、その他のスロットの長さLSに比べると長くなっていた。直並切替素子用スロット623の長さLS1分の領域が長くなると電池パック600への実装上、スペースを確保できない虞がある。そのような場合は、直列接続子664と並列接続子663a、663bのすべてを、一つのスロット(直並切替素子用スロット623)内に配置するのでは無く、2つのスロットに分散配置しても良い。図24及び図25はその構成(実施例4の変形例)を示す電池パック600Aの上面図である。
図24は第4の実施例の変形例に係る電池パック600Aの上面図である。電池パック600Aの外観形状のうち変更したのは直並切替子用の第一スロット623Aと第二スロット624Aである。上段面615には複数のスロット部が設けられるが、使われている信号伝達用のスロット部分を変更して、直並切替子用としての第二スロット624Aを確保した。第一スロット623Aにおいては下段面611側の開口に近い側(装着方向入口側)に並列接続子673aが配置され、奥側に直列接続子674を配置して、これらの接端子対を直列に並べるようにした。一方、第二スロット624Aには下段面611と離れた奥側部分に並列接続子673bを配置した。直列接続子674、並列接続子673a、673bは、それぞれ左右方向に分離された1組の導電体対により構成され、電池パック600Aが装着されていない状態では並列接続子673a、673bは左右の導電体対が接触状態にあり、直列接続子674は左右の導電体対が離合して非接触状態にある。このように配置することによって、第一スロット623Aと第二スロット624Aの装着方向にみた長さをLS2とすることができたので、図21に示す直並切替素子用スロット623の長さLS1分に比べると短く構成できるので実装上有利である。また、第二スロット624Aの開口側には、図示していないが従来から配置される信号接続用の接続子、例えば電池の出力を示すV端子等をそのまま配置することも可能なので、18V用の電動工具を接続した際の互換性を損なうことがない。信号接続用の接続子は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。
図25は、第4の実施例の変形例に係る電池パック600Aが電気機器本体に接続されたときのセルユニットの接続回路を示す図である。(1)が低電圧(例えば18V)用の電気機器本体に接続された状態を示し、(2)が高電圧(例えば36V)用の電気機器本体に接続された状態を示す図である。図22に示した構成と比べると低電圧(18V)用の電気機器のターミナル部650の形状は同じであるが、高電圧(36V)用の電気機器のターミナル部680Aの形状が異なる。図22に示したターミナル部680では、直並列切替端子683が1本で構成されたが、変形例のターミナル部680Aでは直並列切替端子として、第一直並列切替端子693と第二直並列切替端子694に分けて配置した。第一直並列切替端子693は電池パック600Aの装着時に最初に並列接続子673bに当接する先端側部分が、導電体による導通端子693bとして形成され、後端側部分が非導電体による遮断端子693aとして形成される。一方、第二直並列切替端子694はすべてが非導電体の遮断端子として製造される。ここではターミナル部680Aは合成樹脂の一体成形によってその基台部分が形成され、そこに金属製の板状の正極入力端子681と負極入力端子682が鋳込まれる。第一直並列切替端子693の遮断端子693aと、第二直並列切替端子694は、基台部分と一体に合成樹脂製とすれば良い。
図25の下側の回路図は、電池パック600Aが電気機器本体に装着されることによってターミナル部650、680Aと電池パック600Aの出力端子群が接続された状態を示す図である。(2)の状態ではセルユニット356の+出力とセルユニット357の−出力が直列に接続された状態で正極出力端子661と負極出力端子662に接続される。5本のセルが直列接続されたセルユニット357の+端子は正極出力端子661に接続され、−端子は導通端子693bの挿入によって短絡状態にされた直列接続子674を介してセルユニット356の+端子に接続される。セルユニット356の−端子は負極出力端子662に接続される。ここでは、並列接続子対673を形成する並列接続子673a、673bは遮断端子693aと第二直並列切替端子(遮断端子)694がそれぞれの2つの接点間に介在するために非導通状態とされ、(1)で示したようなセルユニット356、357間の並列接続状態が解消される。ここで、並列接続子673aの装着方向に見た位置は直列接続子674と隣接して設けられ、並列接続子673bと隣接する位置ではない。これは、並列接続子673aの入口側に従来から用いられる信号伝達用の端子を配置できるようにするためである。尚、第一直並列切替端子693側にまとめて並列接続子673a、673bを配置して、第二直並列切替端子694側に直列接続子674を配置するようにしても良い。しかしながら、万一、第一直並列切替端子693が破損してターミナル部680Aから離脱して第二直並列切替端子694の作用により直列接続子674だけが接続すると短絡する虞があるので、本図のように配置したほうが有利である。
以上説明したように図24及び図25に示す変形例の利点は第一直並列切替端子693の長手方向の長さを抑えることができ、第一スロット623Aも同様に長さを抑えることができることである。第二直並列切替端子694の根元側には、金属製の端子を鋳込むことによって従来から信号伝達用の端子を維持することも可能である。また、低電圧(18V)用の電気機器本体のターミナル部650の改造は一切不要であるため、従来の電気機器本端に本発明に係る電池パックをそのまま適用できる。尚、第4の実施例では低電圧用と高電圧用として、セル5本を1つのセルユニットとして、18Vと36Vを出力する電池パックの例で説明したが、出力電圧は任意に設定でき、2倍の電位差であればその他の組み合わせ、例えばセル15本を1つのセルユニットとして54V(低電圧側)と108V(高電圧側)を切り替えるようにした電池パックを実現できる。
次に図26〜図28を用いて本発明の第5の実施例を説明する。第5の実施例の電池パック700においては、第4の実施例と同様に18Vと36Vを電動工具本体側のターミナル形状に応じて自動で切り替え可能としたものである。即ち、電池パック700が電動工具本体又は電気機器本体に装着された際に、自動的に本体側の定格電圧に対応した出力電圧に切り替わる。図26は電池パック700の外観形状を示す斜視図である。この形状は従来の定格18V用の電池パック15(図1参照)と互換である。電池パック700は、下段面111と上段面115の境界において段差状に隆起した部分に複数のスロット部が形成され、それらスロット部の内側が端子配置領域となり複数の出力端子や信号端子が配置される。スロット部は下段面111側から電動工具本体側のターミナルを挿入可能なように、装着方向と平行方向だけで無く上下方向にも切り欠きが形成される。また、スロット部の下側であって、下段面111の後方部分は、横方向に連続して開口する開口部709が形成される。上段面115の前側の領域に形成された複数のスロットのうち、第1のスロット701は電池パック側の+出力を伝達する端子対が収容され、第2のスロット704は電池パック側の−出力を伝達するための端子対が収容され、第3のスロット707には一方のセルユニットからの−出力と他方のセルユニットからの+出力を隣接させて互いに非接触状態で配置し、電池パック700の出力電圧を切り替える直列接続用端子対が収容される。その他、電池パック700には、電池パック700内に含まれる図示しない電池保護回路による過放電保護信号を出力するLD端子、セルに接触して設けられた図示しない感温素子による電池の温度情報を出力するためのLS端子、充電装置からの制御信号が入力されるためのV端子、電池パック700の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子、充電用の+端子となるC+端子等のスロットが形成されるが、これらのスロットに配置される端子は、従来の電池パック15(図1参照)と同じ役目を果たすものである。LD端子、LS端子、T端子は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。
図26(2)は電池パック700内の回路図である。電池パック700の内部には、14500又は18650等のリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニット356、357が2組収容される。セルユニット356の+出力は正極端子712に接続され、セルユニット357の+出力は正極端子713に接続される。並列正極端子対となる正極端子712、713は互いに隣接して端子基板711に固定され、スロット701内に位置するように固定される。正極端子712,713は、正極端子として機能し、さらに電池パック700の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子としても機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する並列端子としても機能する。そして並列端子として機能する複数の正極端子712,713は、互いに隣接するよう配置され、並列端子群として構成される。同様にしてセルユニット357の−出力は負極端子715に接続され、セルユニット356の−出力は負極端子716に接続される。負極端子715,716は、負極端子として機能し、さらに電池パック700の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子としても機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する並列端子としても機能する。そして並列端子として機能する複数の正極端子極端子715,716は、互いに隣接するよう配置され、別の並列端子群として構成される。並列負極端子対となる負極端子715、716は互いに隣接して端子基板714に固定されスロット704内に位置するように固定される。本実施例ではさらに、セルユニット357の+出力から接続された直列接続用端子718と、セルユニット356の−出力から接続された直列接続用端子719が、直列接続用端子対としてスロット707内に配置される。直列接続用端子718、719は、電池パック700の出力電圧を高電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニット256、357を互いに直列に接続する直列端子としても機能する。そして直列端子として機能する複数の直列接続用端子718、719は、互いに隣接するよう配置され、直列端子群として構成される。これら正極端子712、713と負極端子715、716が異なる複数のセルユニット356と357のそれぞれから延びるように隣接、かつ分離して構成されることにより、セルユニット356と357の並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素として機能する。
電池パック700は、電動工具本体や、充電器に装着されていないときは図26(2)の回路図に示すように、正極端子712と713は非接触状態にあり、負極端子715、716は非接触状態にあり、直列接続用端子718と719は非接触状態にある。直列接続用端子718と719は、一対で用いられ、互いに隣接して端子基板717に固定される。なお、端子基板711、714、717は一体基板でも良く、電池保護回路が設けられている保護回路基板と兼用しても良い。正極端子712、713、負極端子715、716、及び、直列接続用端子718、719が切替端子群を構成し、正極端子712、713が正極端子対または並列用正極端子群(並列端子群)を構成し、負極端子715、716が負極端子対または並列用負極端子群を構成し、直列接続用端子718、719が直列接続端子群(直列端子群)を構成する。
図27は電池パック700を従来の定格18Vの電動工具本体に接続した状態を示す図であり、(1)は接続時の回路図である。ここでは電動工具本体側の正極入力端子721が正極端子712と713と接触し、負極入力端子722が負極端子715と716と接触することにより、セルユニット356、357の並列接続回路が形成される。正極入力端子721と負極入力端子722は、電池パック700の出力電圧を低電圧に切り替える切替素子又は接続素子として機能し、さらに複数のセルユニットを互いに並列に接続する低電圧用の切替素子としても機能する。(3)は正極端子712、713の側面図と、それに装着される定格18V用の電動工具本体側のターミナル部720の正極入力端子721の形状であり、(2)は正極端子712、713の上面図である。ここではターミナル部720の正極入力端子721は、従来の電動工具と同じ形状としており、高さHの金属板である。正極端子712、713の正極入力端子721との接触する領域は、上下方向の高さがH/2以下の細長い板状の部材により形成される。正極端子712は正極入力端子721よりも離れた側(スロットの開口部と反対側)において端子基板711から上方に延びて、正極端子713の上側において正極入力端子721側(スロットの開口部)に向けて延在する。一方、正極端子713は、従来の正極端子の上側部分を切り落として背を低くしたような形状であり、正極端子712と713はお互いが接触しないように離間して設けられる。正極入力端子721は、電動工具本体側の合成樹脂製のターミナル部720に鋳込まれた金属板で形成される。
正極端子712は、平板をU字形状に曲げ、開口端部に折り返しをつけて、それらの折り返し部分が接触して開口端部を塞ぐような形状をなしている。同様にして、正極端子713も、平板をU字形状に曲げ、開口端部に折り返しをつけて、それらの折り返し部分が接触して開口端部を塞ぐような形状をなしている。正極端子713は、その前後長さが正極端子712の半分近くにまで短く構成されるが、前側部分Lにおける上面視の形状は、正極端子712の該当部分と同じとなるように形成される。このように複数の正極端子をを第1のスロット701内にて隣接配置して正極端子群とした。そして、電池パック700が電動工具本体の電池パック装着部に取り付けられるときは、正極入力端子721は、正極端子712、713の開口端部を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子721の上側の一部の領域が正極端子712と接触し、下側の領域の一部が正極端子713と接触する。この結果、正極入力端子721によって正極端子712と713が短絡状態となる。図27(2)及び(3)に示した端子構造は、負極端子715、716においても同じ形状とされる。つまり、負極端子715は正極端子712と同形状であり、負極端子716は正極端子713と同形状であり、負極入力端子722は正極入力端子721と同形状である。複数の負極端子を第2のスロット704内にて隣接配置して負極端子群とした。従って、電動工具本体側のターミナル部720に電池パック700が装着されることで、正極入力端子721と負極入力端子722には正極端子対と負極端子対がそれぞれ接続されてセルユニット356と357が並列接続されることになり、その定格出力は18Vとなる。
図27(4)は電動工具本体側のターミナル部720の形状を示す正面図であり、(5)はターミナル部720の斜視図である。ターミナル部720は合成樹脂等の非導電性材料の一体成形により製造され、そこに金属製の3枚の端子、即ち正極入力端子721、負極入力端子722、LD端子723が鋳込まれることにより強固に固定される。(5)からわかるようにLD端子723が、正極入力端子721及び負極入力端子722よりも大きく構成されるが、これは装着される電池パック700を安定して保持するためである。ターミナル部720は、装着方向の突き当て面となる垂直面720bだけでなく、水平面(端子721〜723からみて上面)720aが形成され、水平面720aは電池パック700の装着時に、上段面115と対向して摺動する面となる。
図28は電池パック700を新規の定格36Vの電動工具本体に接続した状態を示す図であり、(1)は接続時の回路図である。ここでは定格36Vの電動工具本体側の正極入力端子731が、正極端子712だけに接触して正極端子713には接触しないようにした。同様にして、負極入力端子732も負極端子715だけに接触して負極端子716には接触しないようにした。一方、直列接続用端子718、719の間に、ターミナル部730に追加して設けられた金属製の導通端子(短絡子)734が挿入されることによって、非接触状態に配置されている直列接続用端子718、719が短絡されることになる。このように短絡子を用いて直列接続用端子718、719を接続した結果、セルユニット356の−出力とセルユニット357の+出力が接続され、同図(1)の回路図から理解できるように正極入力端子731と負極入力端子732にはセルユニット356と357の直列出力が接続される。導通端子(短絡子)734は、電池パック700の出力電圧を高電圧に切り替える切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット356、357を互いに直列に接続する高電圧用の接続素子としても機能する。同図(2)、(3)において電池パック700側の端子形状、即ち正極端子712、713の形状や、同形式の負極端子715、716の形状は図27に示した端子形状から何ら変更はない。しかしながら、ターミナル部730の端子形状を工夫した。(3)の右側において、ターミナル部730の正極入力端子731のうち、正極端子712に対応する部分は金属部分が露出しているが、正極端子713に対応する部分は絶縁端子素材に置き換えられるか、又は正極端子713の一部分を絶縁材で覆うことにより板状の絶縁端子735を形成する。この結果、正極入力端子731は正極端子712にだけ導通するが、正極端子713には導通しないので、電動工具本体側の正極入力端子731にはセルユニット356の+出力が接続され、セルユニット357の+出力は接続されない状態となる(図28(1)では接続されない状態のため点線で図示)。電動工具本体側の負極入力端子732も同図(4)、(5)に示すように正極入力端子731と全く同じ端子形状とされる。負極入力端子732の下側部分に絶縁端子736が設けられるようにして、ターミナル部730が電池パック700に装着された際に負極入力端子732と負極端子716が導通しない。よって、電動工具本体側の負極入力端子732には、セルユニット357の−出力が接続されるが、セルユニット356の−出力は接続されない状態となる。
図28(4)は電動工具本体側のターミナル部730の形状を示す正面図であり、(5)はターミナル部730の斜視図である。ターミナル部730は、図27で示したターミナル部720に比べて正極入力端子731と負極入力端子732が、それぞれ上側に配置された正極端子712と負極端子715にだけ接触するように、上下方向の幅が細く形成されることに特徴がある。また、正極入力端子731より下側部分は合成樹脂製の絶縁端子735が形成され、負極入力端子732より下側部分は合成樹脂製の絶縁端子736が形成される。絶縁端子735と736は、それぞれターミナル部730と一体成形により構成可能であり、後端側が垂直面730bに接続される。ここでは板状の絶縁端子735、736の厚みを正極入力端子731及び負極入力端子732よりも厚く構成することにより、絶縁端子735、736を含めたターミナル部730の合成樹脂部分の成形時に、金属製の正極入力端子731と負極入力端子732の下半分を合成樹脂に鋳込むことで絶縁状態にすることができる。
ターミナル部730にはさらに導通端子734が追加される。導通端子734を設ける位置は任意であるが、ここでは従来の18V用の電池パックにおいて使用されていない空きスロット部分(図26のスロット707)を利用して直列接続用端子718、719を設けた関係から導通端子734が正極入力端子731の隣に位置する。導通端子734は金属製の板材であり、正極入力端子731、負極入力端子732、LD端子733の一部が、電気機器本体内での配線用に配線用接続部731a、732a、733aを有するのに対して、導通端子734は配線用接続部を必要としない。これは導通端子734が直列接続用端子718、719を短絡させるためだけに用いられるためである。尚、導通端子734を用いて信号伝達を行うように構成しても良く、その場合は配線用接続部を形成すると良い。配線用接続部731a、732a、733aは、図28(4)の図で見ると正極入力端子731、負極入力端子732、LD端子733の位置よりも内側にオフセットしたように配置される。これは正極入力端子731、負極入力端子732、LD端子733を形成する金属板に段差を有するようにクランク状に折り曲げて、折り曲げ部分を合成樹脂によって鋳込むように構成したためである。
第5の実施例では、電動工具本体側のターミナル部の形状を、図27の形状(ターミナル部720)又は図28の形状(ターミナル部730)に変えるだけで、電池パック700からの出力電圧を18Vから36Vに容易に変更できる。しかも、電池パック700内にはスイッチ手段等の可動部材を用いないために、構造がシンプルで耐久性が高い電池パックを実現できる。さらに、正極端子712、713、負極端子715、716、直列接続用端子718、719は、18V用電池パックの既存のスロット部内に実装できるため、従来と互換性のある大きさで電圧切替式の電池パックが実現できる。以上、第5の実施例の構造を図27及び図28を用いて説明したが、これら構造、特に端子形状は種々の変形が可能である。第5の実施例においては、電圧切替要素と電源端子が上下方向において略同じ高さの位置に配置されているから、電池パックの上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。また直列端子として機能する直列接続用端子718、719と、正極端子712,713と、負極端子715、716が、上下方向において略同じ高さの位置に配置されているから、電池パックの上下方向のサイズをコンパクトに構成することができる。
図29は、36V用の電動工具本体のターミナル部だけを変更した変形例1を示す図である。図29ではターミナル部750の形状だけが異なり、正極入力端子751の下側に図28のような遮断端子を設けない構成とし、電池パックの装着時に正極端子713には何も接触しないようにした。同図(3)、(4)からわかるように負極入力端子752の下側にも遮断端子を設けない構成である。導通端子754とLD端子753の形状は図28と同じ形状である。以上のようなターミナル部750であっても、図28と同じ効果を得ることができる。
図30は、36V用の電動工具本体のターミナル部だけを変更した変形例2を示す図である。基本的な構成は図29と同様であって、正極端子712、713は電池パック700の挿入方向と交差する方向、ここでは上下方向に接触しないように並べて配置する。36V用のターミナル部770には、正極端子712だけに接触するのに適切な上下方向の幅を有する正極入力端子771が形成され、正極入力端子771の下側縁部に接触するように、水平方向に延在する絶縁板775が形成される。絶縁板775は電池パック700の装着時に、正極端子712と正極端子713の上下方向の隙間777の間に入り込むもので、電動工具稼働時に埃や異物の介在による正極端子712と正極端子713の短絡の虞をほぼ完全に防ぐ効果があり、正極端子712と正極端子713の絶縁状態を良好に保つ。負極入力端子772の形状も正極入力端子771と全く同じに形成され、(3)に示すように電池パックの挿入方向と平行方向に見ると、負極入力端子772に水平方向に所定の幅を有する絶縁板776が形成される。導通端子774とLD端子773の形状には変更はない。(4)の図で見ると正極入力端子771、負極入力端子772の下側の絶縁板775、776はターミナル部770の垂直面770bに接続される。絶縁板775、776の左右方向の幅は、隣接するスロットとの境界付近まで延びるような幅とするのが望ましいが、それよりも小さくても良い。ここでは、絶縁板775、776部分はターミナル部770と一体成形で製造でき、この場合は正極入力端子771と負極入力端子772が鋳込み成形により固定されることになる。
図31は、36V用の電池パック側の端子形状と、電動工具本体側のターミナル部790の双方を変更した変形例3を示す図である。正極端子782、783は電池パック700の挿入方向と同方向に並べて、かつ非接触状態を保つように端子基板781に配置される。正極端子782と783の上側部分782a、783aは、(1)の上面図に示すように装着方向に分離して配置され、挿入される正極入力端子721が、入口側787aから出口側787bまで貫通できるような形状とされる。正極端子782、783の下側部分782b、783bは、左右が連結されたU字状に形成することにより1枚の金属板のプレス加工により、容易に製造できる。
正極端子対(782、783)、及び同形状の負極端子対に挿入される正極入力端子721及び負極入力端子722の形状は、定格18Vの電動工具本体では図31(2)及び(3)で示すように図27で示した形状から変更する必要が無い。一方、定格36Vの電動工具本体ではターミナル部790の形状を変更する必要がある。ターミナル部790は、絶縁板795と正極入力端子791が電池パックの挿入方向に並ぶように配置した。つまり、定格18V用ターミナル部720に比べて、正極入力端子791の露出面積が、正極入力端子721の約半分程度に小さくすることにより、36V出力時には正極入力端子791が正極端子782にだけ接触して正極端子783には導通しないように構成した。負極入力端子792側の構成も正極入力端子791側と同様に構成され、(4)(5)で示すように負極入力端子792に隣接して絶縁板796が形成される。絶縁板795、796はターミナル部790の基台部分と共に合成樹脂の射出成形によって一体に製造できる。以上のように、変形例3においても従来の18V機器と互換性のある電圧切替式の電池パックを実現できた。
図32は、36V用の電動工具本体のターミナル部800だけを変更した変形例4を示す図である。この実施例は、図31に示した例の絶縁板795を取り除いたような形状としている。正極入力端子801は、装着方向の長さが18V用の正極入力端子721(図27参照)の半分よりもやや短い程度とされ。負極入力端子802も同様に装着方向の長さが18V用の負極入力端子722の半分よりもやや短い程度とされる。ターミナル部800の形状は図32(3)のように後方から見ると導通端子804があることを除くと18V用の端子と同等であるが、正極入力端子801と負極入力端子802がその他の端子(803、804)に比べて前後方向に短いことは、同図(4)の斜視図から明らかであろう。
図33は、電池パック側の正極端子対と負極端子対の形状を変えた変形例5を示す図である。この正極端子812と813は、図27で示した正極端子712と713の片面だけを無くした形状であり、正極端子812は右側半分だけを形成し、正極端子813は左側半分だけを形成したような形状である。(2)のように側面視で見ると上下方向に離れているため、正極入力端子721又は731が挿入されていない状態では正極端子812と813が接触する虞はない。ここには図示していないが、負極端子側の形状、直列接続用端子対の形状も同様に構成できる。この端子に装着される18V用のターミナル部720は図27で示した形状と同じであり、36V用のターミナル部730の形状は図28で示した形状と同じである。この変形例5においては、正極端子、負極端子、直列接続用端子対の重量の軽減を図ることができ、電池パックの軽量化を図ることができる。
図34は、図33の変形例5から36V用のターミナル部750だけを変えた変形例6を示す図である。このターミナル部750の形状は図29で示した形状と同一であって、正極入力端子751、負極入力端子752の上下方向の幅を狭くしたものである。このように形成することで、36V用のターミナル部750を接触した際に、電池パックからセルユニット356と357の直列出力が得られることになる。
図35は、図33の変形例5から36V用のターミナル部770だけを変えた変形例7を示す図である。このターミナル部770の形状は図30で示した形状と同一であって、正極入力端子771の上下方向の幅を狭くすると共に、正極入力端子771の下側縁部に接触するように、水平方向に延在する絶縁板775を形成したものである。負極入力端子772側の構成も図30に示す構造と同様である。
以上、第5の実施例では、出力電圧を切替え可能な電池パックにおいて、複数の可動部材を有する切り替え機構に頼らずに、複数に分割された正極端子対及び負極端子対を設け、2つのセルユニット356と357を直列接続状態にする直列接続用端子対を設けたので、電気機器本体のターミナル部側の形状を18V用か36V用を選択するだけで容易に電圧の切り替え可能な電池パックを実現できる。また、複雑なスイッチ機構を電池パック内に実装しなくて済むので、部品点数の削減を図り、組立性を向上し、互換性を維持しつつ電池パックの小形化を達成できた。
上述の実施例1〜5は種々の変更が可能である。上述の実施例では18Vと36Vの電圧切り替えに対応させたが、その他の電圧比としても良い。
図36は第6の実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電気機器の一形態である電動工具は、電池パックを有し、モータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具は種々の種類が実現されているが、図36で示す電動工具本体1001、1030はいずれもインパクト工具と呼ばれるものである。電動工具本体1001、1030は、図示しないビットやソケットレンチ等の先端工具に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより締め付け作業を行う工具である。これらの電動工具本体1001、1030は、外形を形成する外枠たるハウジング1002、1032を備え、ハウジング1002、1032にはハンドル部1003、1033が形成される。ハンドル部1003、1033の一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状の動作スイッチ1004、1034が設けられ、ハンドル部1003、1033の下方には電池パック1015、1100を装着するための電池パック装着部1010、1040が形成される。
電動工具本体1001は定格電圧18Vの電池パック1015を用いる従来の電気機器である。電池パック1015は従来の電池パックであり、矢印aの組み合わせのように18V対応の電気機器(電動工具本体1001)の電池パック装着部1010に装着できる。電池パック1015の内部には、定格3.6Vのリチウムイオン電池のセル5本を直列接続してなるセルユニットが1組だけ収容されるか、又はこのようなセルユニットが2組収容されて互いに並列接続される。電圧18Vは、比較的低い電圧であるという意味で、ここでは低電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧18Vの電動工具本体1001または電気機器本体は、それぞれ低電圧電動工具本体または低電圧電気機器本体と呼ぶことがある。同様に、公称電圧18Vの電池パック1015は、低電圧電池パックと呼ぶことがある。
電動工具本体1030は、定格電圧36Vの電気機器本体であり、矢印b1に示すように36Vの出力が可能な電池パック1100を電池パック装着部1040に装着する。電圧36Vは、比較的高い電圧であるという意味で、ここでは高電圧と呼ぶことがある。同様に、定格電圧36Vの電動工具本体1030または電気機器本体は、それぞれ高電圧電動工具本体または高電圧電気機器本体と呼ぶことがある。電池パック1100の内部には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニットが2組収容され、2組のセルユニットの接続方法の変更により、18V出力と36V出力の双方を切り換えることができるようにした。第6の実施例では電池パック1100を2電圧対応に構成して、低電圧と高電圧の出力を可能とすることにより、矢印b2で示すように電池パック1100を18V対応の電動工具本体1001にも装着できるし、矢印b1のように36V対応の電動工具本体1030にも装着できるようにした。このように、低電圧と高電圧の出力を可能とした電池パック1100は、ここでは電圧可変電池パックと呼ぶことがある。電池パック1100を矢印b1、b2のように異なる電圧の電動工具本体1001、1030に装着するためには、電池パック装着部1010、1040のレール部や端子部の形状をほぼ同じ形状にすることと、電池パック1100の出力電圧を切り替え可能にすることが重要である。この際、電池パック1100の出力電圧が、装着される電気機器本体や電動工具本体の定格電圧と確実に対応させて、電圧設定ミスが生じないようにすることが重要である。
図37は電動工具本体1001の電池パック装着部1010の形状を示す斜視図である。ここで示す電動工具本体1001はインパクトドライバであって、ハウジング1002の胴体部分から下方に延びるハンドル部が設けられ、ハンドル部の下側に電池パック装着部1010が形成される。ハンドル部にはトリガスイッチ1004が設けられる。ハウジング1002の前方側には出力軸たるアンビル(図示せず)が設けられ、アンビルの先端には先端工具1009を装着するための先端工具保持部1008が設けられる。ここでは先端工具1009としてプラスのドライバービットが装着されている。電動工具だけに限られずに、電池パックを用いた電気機器全般では、装着される電池パックの形状に対応させた電池パック装着部1010が形成され、電池パック装着部1010に適合しない電池パックを装着できないように構成する。電池パック装着部1010には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝1011a、1011bが形成され、それらの間にターミナル部1020が設けられる。ターミナル部1020は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子1022、負極入力端子1027、LD端子(異常信号端子)1028が鋳込まれる。LD端子(異常信号端子)1028は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。ターミナル部1020は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面1020aと、水平面1020bが形成され、水平面1020bは電池パック1100の装着時に、上段面1115(図38にて後述)と隣接、対向する面となる。水平面1020bの前方側には、電池パック1100の隆起部1132(図38にて後述)と当接する湾曲部1012が形成され、湾曲部1012の左右中央付近には突起部1014が形成される。突起部1014は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1001のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック1100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
図38は本発明の第6の実施例に係る電池パック1100の斜視図である。電池パック1100は電池パック装着部1010、1040(図36参照)に対して取り付け及び取り外しが可能であって、電動工具本体1001又は1030側のターミナル形状に応じて、低電圧(ここでは18V)と高電圧(ここでは36V)の出力が自動で切り替わるようにしたものである。従来の定格18V用の電池パック1015(図36参照)と取り付け上の互換性を持たせるために、電池パック1100の装着部分の形状は従来の電池パック1015と同じとしている。電池パック1100の筐体は、上下方向に分割可能な下ケース1101と上ケース1110により形成される。下ケース1101と上ケース1110は電気を通さない部材、例えば合成樹脂製であって4本のネジによってお互いが固定される。上ケース1110は、電池パック装着部1010に取り付けるために2本のレール1138a、1138bが形成された装着機構が形成される。レール1138a、1138bは、電池パック1100の装着方向と平行な方向に延びるように、且つ、上ケース1110の左右側面に突出するように形成される。レール1138a、1138bの前方側端部は開放端となり、後方側端部は隆起部1132の前側壁面と接続された閉鎖端となる。レール1138a、1138bは、電動工具本体1001の電池パック装着部1010に形成されたレール溝1011a、1011b(図37参照)と対応した形状に形成され、レール1138a、1138bがレール溝1011a、1011bと嵌合した状態で、ラッチの爪となる係止部1142a(右側の係止部であり図38では見えない)、1142bにて係止することにより電池パック1100が電動工具本体1001に固定される。電池パック1100を電動工具本体1001から取り外すときは、左右両側にあるラッチ1141を押すことにより、係止部1142a、1142bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック1100を装着方向と反対側に移動させる。
上ケース1110の前方側には平らな下段面1111が形成され、中央付近は下段面1111よりも高く形成された上段面1115が形成される。下段面1111と上段面1115は階段状に形成され、それらの接続部分は鉛直面となる段差部1114となっている。段差部1114から上段面1115の前方側部分がスロット群配置領域1120になる。スロット群配置領域1120には、前方の段差部1114から後方側に延びる複数のスロット1121〜1128が形成される。スロット1121〜1128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部が端子配置領域となり、電動工具本体1001、1030又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子(図39で後述)が配設される。スロット1121〜1128は下段面1111側から電動工具本体側のターミナルを挿入可能なように、装着方向と平行な上面だけで無く鉛直面にも切り欠きが形成される。また、スロット1121〜1128の下側であって、下段面1111との間は、横方向に連続して開口する開口部1113が形成される。
スロット1121〜1128は、電池パック1100の右側のレール1138aに近い側のスロット1121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット1122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、電池パック1100の左側のレール1138bに近い側のスロット1127が負極端子(−端子)の挿入口となる。電池パック1100では通常、電力端子の正極側と負極側を十分離すようにして配置するもので、左右中心に位置する鉛直仮想面からみて、右側の十分離した位置に正極端子を設けて、左側の十分離した位置に負極端子を設けている。正極端子と負極端子の間には、電池パック1100と電動工具本体1001、1030や外部の充電装置(図示せず)への信号伝達用の複数の信号端子が配置され、ここでは信号端子用の4つのスロット1123〜1126が電力端子群の間に設けられる。スロット1123は予備の端子挿入口であり、第6の実施例では端子は設けられない。スロット1124は電池パック1100の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット1125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット1126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(−端子)の挿入口となるスロット1127の左側には、さらに電池パック1100内に含まれる後述する電池保護回路による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット1128が設けられる。
上段面1115の後方側には、隆起するように形成された隆起部1132が形成される。隆起部1132はその外形が上段面1115より上側に隆起する形状であり、その中央付近に窪み状のストッパ部1131が形成される。ストッパ部1131は、電池パック1100を、電池パック装着部1010に装着した際に、突起部1014(図37参照)の突き当て面となるもので、電動工具本体1001側の突起部1014がストッパ部1131に当接するまで挿入されると、電動工具本体1001に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック1100に配設された複数の接続端子(図39にて後述)が接触して導通状態となる。また、電池パック1100のラッチ1141の係止部1142a(右側の係止部であり図38では見えない)、1142bがばねの作用によりレール1138a、1138bの下部で垂直方向外側に飛び出して、電動工具本体1030のレール溝1011a、1011bに形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック1100の脱落が防止される。ストッパ部1131の内側には、電池パック1100の内部とつながる冷却風取入口たるスリット1134が設けられる。また、この電池パック1100が電動工具本体1001に装着された状態では、スリット1134が外部から視認できないように覆われて閉鎖状態になる。スリット1134は、電池パック1100を図示せぬ充電装置に連結して充電を行う際に、電池パック1100の内部に冷却用の空気を強制的に流すために用いられる風窓であって、電池パック1100内に取り込まれた冷却風は下ケース1101の前方壁に設けられた排気用の風窓たるスリット1104から外部に排出される。
図39は図38の電池パック1100の上ケース1110を取り外した状態の斜視図である。下ケース1101の内部空間には、10本の電池セルが収容される。下ケース1101の前方側壁面には、上ケース1110とのネジ止め用に2つのネジ穴1103a、1103bが形成され、下から上方向にネジ穴1103a、1103bを貫通するようにして図示しないネジが通される。この図では見えないが、下ケース1101の後方側壁面にも2つのネジ穴が形成される。複数の電池セル(図示せず)は、5本ずつ2段にスタックさせた状態でセパレータ1145にて固定される。セパレータ1145は合成樹脂製であって、電池セルの両端部となる左右両側だけが開口するように形成される。セパレータ1145内においては、各電池セルの軸線がそれぞれ平行になるように積み重ねられ、隣接するセルの向きを交互に逆になるように配置して、隣接する電池セルの正極端子と負極端子を金属の接続タブ(図示せず)により接続することにより電池セル5本を直列接続とする。ここでは上段に設置された5本の直列接続された電池セルによる上側セルユニット1146(図41にて後述)を形成し、下側に設置された5本の直列接続された電池セルが下側セルユニット1147(図41にて後述)を形成する。尚、ここでいうセルユニットの上側、下側とは、電池セルが下ケース1101内の上段にあるか下段にあるかを指すのでは無くて、2つのセルユニットを直列接続した際に、グランド側に位置する方のセルユニットを“下側セルユニット”呼び、直列接続した際に高い電圧側に位置する方のセルユニットを“上側セルユニット”と呼ぶものとする。
電池セルは、18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セル(図示せず)が用いられる。第6の実施例では電池パック1100からの出力電圧を切り替え可能とするために、複数のセルユニットの直列接続電圧(高電圧側出力)と、並列接続電圧(低電圧側出力)の形態が選択可能とされる。従って、第6の実施例の思想に従えば、各セルユニットに含まれるセルの本数を等しくすれば、セルユニットの数は任意である。但しセルユニットの数は2つ又は4つのように偶数とする。使用する電池セルは18650サイズだけに限られずに、いわゆる21700サイズの電池セルや、その他のサイズの電池セルであっても良い。また電池セルの形状は円筒形だけに限られずに、直方体のもの、ラミネート形状のもの、その他の形状であっても良い。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。電池セルの長さ方向の両端には2つの電極が設けられている。2つの電極のうち、一方は正極であり他方は負極であるが、電極を設ける位置は両端側だけに限定されるもので無く、電池パック内で容易にセルユニットが形成できるならば任意の電極配置で良い。
電池セルを保持するセパレータ1145の上側には、回路基板1150が配置される。回路基板1150は複数の接続端子(1161、1162、1164〜1168、1171、1172、1177)を半田付けによって固定すると共に、回路パターンと接続端子との電気的な接続を行う。回路基板1150にはさらに、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板1150は、合成樹脂等の不導体のセパレータ1145の上側にて水平方向に延在するように固定される。回路基板1150の材質は、素材に対して絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔など導電体によってパターン配線を印刷したプリント基板と呼ばれるものであり、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。本実施例では、両面基板を用いて回路基板1150の上面(表面であって図39から見える上側の面)と下面(裏面)を有する。回路基板1150の前後方向の中央よりもやや前側には、複数の接続端子(1161、1162、1164〜1168、1171、1172、1177)を配置する。ここでは複数の接続端子は横方向にほぼ並べて配置される。
各接続端子は、図38で示すように上ケース1110の上段面に刻印にて示されるとおりであり、回路基板1150の右側から左側にかけて、順にC+端子(1161、1171:充電用の正極端子)、+端子(1162、1172:放電用の正極端子)、T端子1164、V端子1165、LS端子1166、−端子(1167、1177:負極端子)、LD端子1168が並んで配置される。ここでは、電池パックからの電力供給ライン用の接続端子、即ち電力端子を、分離させた2つの端子部品にて構成した。即ち、C+端子(充電用の正極端子)は上側正極端子1161と下側正極端子1171により構成され、これら正極端子対(1161、1171)が単一のスロット1121に対応する箇所に配置される。スロット1121の内側部分の上側に上側正極端子1161の腕部組が配置され、上側正極端子1161の腕部組の下側に下側正極端子1171の腕部組が配置される。同様にして、上ケース1110に刻印で示される+端子(放電用の正極端子)は、上側正極端子1162と下側正極端子1172により構成され、これら正極端子対(1162、1172)が単一のスロット1122に対応する箇所に配置される。スロット1122部分の上側に上側正極端子1162の腕部組が配置され、上側正極端子1162の腕部組の下側に下側正極端子1172の腕部組が配置される。上ケース1110に刻印で示される−端子(負極端子)は、上側負極端子1167と下側負極端子1177により構成され、これら負極端子対(1167、1177)が単一のスロット1127に対応する箇所に配置される。スロット1127部分の上側に上側負極端子1167の腕部組が配置され、上側負極端子1167の腕部組の下側に下側負極端子1177の腕部組が配置される。上側正極端子1162と下側正極端子1172はそれぞれ、正極端子として機能し、さらに後述するように、電池パック1100の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、複数のセルユニット1146、1147を互いに並列に接続する並列端子としても機能する。複数の並列端子である上側正極端子1162と下側正極端子1172は、互いに隣接するよう配置されており、並列端子群を構成している。同様に、上側負極端子1167と下側負極端子1177はそれぞれ、負極端子として機能し、さらに後述するように、電池パック1100の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、複数のセルユニット1146、1147を互いに並列に接続する並列端子としても機能する。複数の並列端子である上側負極端子1167と下側負極端子1177は、互いに隣接するよう配置されており、並列端子群を構成している。また後述するように、下側正極端子1172と下側負極端子1177はそれぞれ、複数のセルユニット1146、1147を互いに直列に接続する直列端子としても機能する。よって上側正極端子1162、下側正極端子1172、上側正極端子1162及び下側正極端子1172は、電池パック1100の出力電圧を切り替える電圧切替要素として機能する。
接続端子(1161、1162、1164〜1168)は、図38で示したスロット1121〜1128に対応する位置に配置される。そのため、回路基板1150から上方及び前方側に向けて接続端子の嵌合部分が開口するように配置される。但し、上側正極端子1162とT端子1164との間の部分は、従来の電池パック1015(図36参照)と同様に本実施例の電池パック1100では使われない空きスペースになる。
充電用の正極端子対(1161、1171)は、隣接して配置された正極端子対(1162、1172)よりも前方側にオフセットされて構成される。これはスペース的な制約によるものであって、正極端子対(1161、1171)のすぐ後方の図示しないラッチ機構の移動範囲を回避するためである。従って、スペース的な制約がないならば正極端子対(1161、1171)は、正極端子対(1162、1172)及び負極端子対(1167、1177)と前端位置が並ぶように配置すると良い。
正極端子(1161、1162、1171、1172)と負極端子(1167、1177)は、左右方向に大きく離れた箇所に配置され、それらの間には3つの信号端子(T端子1164、V端子1165、LS端子1166)が設けられる。本実施例では並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素を上側正極端子1162と上側負極端子1167、下側正極端子1172と下側負極端子1177にて実現される。また、信号端子用の部品として、水平方向に延びる腕部が上側の左右に1組、下側の左右に1組の合計2組設けられたものを用いるが、その詳細形状は図44にて後述する。尚、信号端子(1164〜1166、1168)に関しては、従来から用いられるような腕部が上下方向に1つの信号端子部品をそのまま用いることも可能である。しかしながら、本実施例では正極端子(1161、1162、1171、1172)と負極端子(1167、1177)における機器側端子との嵌合状態と同等にするために、信号端子側においても上下に2つの腕部を有する信号端子部品(図44にて後述)を用いるようにした。
負極端子対(1167、1177)の左側には更なる信号端子、即ち、LD端子1168が設けられる。LD端子1168も上側と下側の2組の腕部を有するように形成される。しかしながら、LD端子1168はその他の信号端子(T端子1164、V端子1165、LS端子1166)とはサイズ的に異なる。これはスペース的な制約によるものであって、LD端子1168のすぐ後方に、図示しないラッチ機構が到達するために、それを回避するために他の信号端子よりも小さく形成した。すべての信号端子(1164〜1166、1168)は、回路基板1150の形成された取付孔1151にその脚部を表面から裏面にまで貫通させて、裏面側で半田付けにより固定される。本実施例では3つの信号端子(1164〜1166)の固定方法にも特徴を有するが、その詳細は図44及び図45にて後述する。以上のように、回路基板1150上に図示しない電子素子が搭載され、複数の接続端子が半田付けにより固定されたあとに、回路基板1150はネジ止めまたは接着等によってセパレータ1145に固定される。
回路基板1150の後辺付近には4つのLED(図示せず)が設けられ、そのLEDの上側には、上下方向に細長い直方体状のプリズム1191〜1194が設けられる。プリズム1191〜1194は、底面が上向きに照射するLED (発光ダイオード、図示せず)の点灯面に対向するように配置され、斜めにカットされた上面が上ケース1110に形成されたスリット(図示せず)から外部に露出するように設けられる。プリズム1191〜1194は、光を拡散させて上ケース1110の外部に照射させるために設けられる。図示しない4つのLEDは、電池パック1100の残量表示を行うために用いられるもので、作業者がスイッチ1190を押したときに、電池セルの電圧に応じた数のLEDが一定時間だけ点灯される。スイッチ1190を操作するための操作レバー(図示せず)は、作業者によって操作可能な上ケース1110の外面部分に設けられる。下ケース1101は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面と、底面に対して鉛直方向に延びる前面壁1101a、後面壁1101b、右側側壁1101c、左側側壁1101dにより構成される。前面壁1101aのほぼ中央には、スリット1104が設けられる。スリット1104は、充電装置にて充電を行う際に、電池パック1100の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を排出するための排出口として用いられる。
次に図40を用いて電力端子に用いられる部品(1200、1220)の形状を説明する。図40(1)は、上側端子部品1200と下側端子部品1220の部品単体を示す斜視図である。上側端子部品1200は上側正極端子1161、1162、及び上側負極端子1167に用いられる共通部品であり、下側端子部品1220は下側正極端子1171、1172、及び下側負極端子1177に用いられる共通部品である。上側端子部品1200と下側端子部品1220は、導電性の金属からなる平板をプレス加工によって切り抜いたのちに、U字形に曲げて形成したものである。上側端子部品1200は、U字状の底部となる面、即ちブリッジ部1202が上側になるように折り曲げられ、下側端子部品1220においては、ブリッジ部1222が後側になるように折り曲げられる。このように、U字状に折り曲げて形成されたブリッジ部1202と1222がほぼ直角に交差するように配置したのは、前方側のブリッジ部1222は側壁面の面積が前後方向に十分確保できないため、上側にブリッジ部を配置するとブリッジ部の大きさが小さくなってしまうためである。本実施例の下側端子部品1220ではブリッジ部1222が鉛直面方向になるようにしたので、配置に要する前後方向の長さを短くすることができるうえに、ブリッジ部の大きさ、特に上下方向の長さを十分確保できるので、下側端子部品1220の剛性を高めることができた。一方、上側端子部品1200においては、下側端子部品1220を跨ぐような長い腕部1205、1206を形成できる上に、腕部1205、1206の延びる前後方向と同じ方向に延びる面となるブリッジ部1202としたので、腕部1205、1206の取り付け剛性を高めることができた。
上側端子部品1200は、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面1203、左側側面1204と、それらを接続するものであって上面となるブリッジ部1202を有する。右側側面1203と左側側面1204の前方側には、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込む腕部1205、1206がそれぞれ設けられる。左側側面1204の前方辺部のうち下側から上端に近い位置までは鉛直方向に直線状に延び、上端に近い矢印1204d付近から大きな曲率半径のカーブを描くようにして前方側に延びるように形成される。右側側面1203の形状は、左側側面1204と面対称に形成される。腕部1205は右側側面1203の上側前方辺から前側に延びるように配置され、腕部1206は左側側面1204の上側前方辺から前側に延びるように配置される。このように腕部1205、1206は、基体部1201の前側辺部の上側部分から前方側、即ち電池パック1100の装着方向と平行方向に延びるように形成される。腕部1205、1206は、左右方向にみるとお互いが対向して、最小間隔部分、即ち機器接続端子と嵌合する嵌合部がほとんど接触する位置まで近接するようにプレス加工されることによりバネ性を持たせている。ここでプレス加工とは、プレス機械を用いて行う塑性加工のことであり、板金などの素材を型に対して高い圧力で押しつけて、切断、打抜き、穴あけなどの剪断加工を施し、さらに必要に応じて曲げ加工や絞り加工を行うことにより、所要の形状に剪断、成形する。本実施例において、上側端子部品1200と下側端子部品1220は、例えば厚み0.5〜0.8mm程度の平板にて形成される。これにより、上側正極端子1161、1162、1171、1172及び上側負極端子1167、1177は高い機械強度を備え、機器側端子と嵌合する際の嵌合圧力が高くなる。尚、プレス加工の後に熱処理やメッキ処理等を施すようにしても良い。
下側端子部品1220も同様にして製造されるもので、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面1223、左側側面1224と、それらを接続するブリッジ部1222からなる基体部1221を有し、右側側面1223と左側側面1224の細長い上部付近から前方側に、腕部1225、1226が形成される。腕部1225、1226は、左右両側から内側に向けて機器側端子を挟み込むような形状とされる。上側の腕部組(1205、1206)の上端位置と、下側の腕部組(1225、1226)の下端位置の距離Sは、従来の18V用の電池パックに設けられる電力端子の幅とほぼ同等になるように構成する。一方、上側の腕部組(1205、1206)と、下側の腕部組(1225、1226)はそれぞれ上下方向に所定の距離S1を隔てるように配置される。下側の腕部組(1225、1226)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部1231が形成される。下側端子部品1220の後方側は、上側端子部品1200の右側側面1203、左側側面1204と所定の隙間1211を隔てて互いに接触しないように前後方向に並べて固定される。このように複数の電力端子(1161、1162、1167、1171、1172、1177)は、セパレータ1145の上方の位置において、互いに左右方向に並ぶように配置されるとともに、電圧切替要素となる端子対は、上下方向において従来の電源端子が配置された高さと略同じ高さの位置に配置される。また直列端子として機能する下側正極端子1172と下側負極端子1177の一部は、上下方向において、正極端子として機能する上側正極端子1162の一部と、負極端子として機能する上側負極端子1167の一部と、同じ高さの位置にある。よって直列端子は、上下方向において、正極端子及び負極端子負極端子と略同じ高さの位置に配置されており、電池パックの上下方向のサイズがコンパクトに構成されている。
図40(2)は上側端子部品1200単体の斜視図であり、ここではブリッジ部1202の領域と、脚部1207、1208の部分にハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。本明細書でいう基体部1201とは、取り付けられる回路基板1150の表面から上側に露出する部分であって、腕部1205と1206を除いた部分である。上側端子部品1200の基体部1201は右側側面1203と左側側面1204とブリッジ部1202により構成される。基体部1201の下辺部より下方には、脚部1207、1208が接続される。脚部1207、1208は回路基板1150の取付孔(貫通孔)1151に挿入して、回路基板1150の取付面(表面)から取付面と反対側の面(裏面)まで脚部1207、1208を突出させ、裏面において脚部1207、1208が回路基板1150に半田付けされる。また、半田付けによって腕部1205、1206と回路基板1150に搭載される電池セルや電子素子等と電気的に接続される。ここで脚部1207、1208の高さH1は、回路基板1150の厚さよりも大きく、2倍よりも小さい程度に形成される。また、左側側面1204の後辺の下側部分には、後方側に突出する凸部1204bが形成される。図40では見えないが右側側面1203の後辺の下側部分にも同様の凸部が形成される。右側側面1203と左側側面1204の下側部分の前方側には、水平方向に凸状に延ばした部分を形成して、その凸状部分を内側に折り曲げた折曲部1203a、1204aが形成される。折曲部1203a、1204aの曲げ部の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために切抜部1203c、1204c、1207a、1208aが形成される。折曲部1203a、1204aと凸部1203b、1204bは、回路基板1150の取付孔近傍の上面に接するようにして、上側端子部品1200の上下方向の位置決めをするために形成されるものである。
基体部1201は側面視で倒立させた略L字状とされる。腕部1205、1206の後方部分は、後方側の接続部付近から前方に向けて右側側面1203、左側側面1204が同一面状に延びた平面部1205a、1206aが形成される。平面部1205a、1206aの左右方向の間隔は一定であり平行である。平面部1205a、1206aの前方には左右方向にみて内側に曲げられる曲げ部1205b、1206bが形成される。曲げ部1205b、1206bの前方側には再び平面部1205c、1206cが形成される。対向する平面部1205cと平面部1206cは後方側の間隔が広くて、前方側にいくにつれて徐々に狭まる先絞りの形状とされ、それぞれが鉛直方向に延在する面である。平面部1205c、1206cの先端部分は大きめの曲率半径R1にて外側に広がるように曲げられた嵌合部1205d、1206dが形成される。嵌合部1205d、1206dの内側の曲面部分が、電動工具本体1001、1030の端子と接触することにより、上側端子部品1200が電動工具本体1001、1030側の接続端子と電気的に導通することになる。嵌合部1205d、1206dの内側は、電池パック1100が電動工具本体1001、1030から取り外された状態ではわずかな隙間1209を有するような形状とされる。嵌合部1205d、1206dの前方側は前方に行くにつれて間隔が急激に広がるように形成された案内部1205e、1206eに接続され、電動工具本体1001、1030側の端子を案内する。案内部1205e、1206eの内側の面は、ここでは平面状としているが、曲面状としても良い。曲げ部1205bから案内部1205eまで、及び、曲げ部1206bから案内部1206eまでは上下方向の高さが一定であるように形成される。一方、平面部1205a、1206aは後方側に行くにつれて高さが低くなるように下方向への切欠き部1205f、1206fが形成される。切欠き部1205f、1206fを形成したのは、プレス加工時に腕部1205、1206の折り曲げを容易にするという製造上の理由と、一組の嵌合部1205d、1206dにおける挟み荷重(又は嵌合圧)を調整するためである。以上のように形成することにより、耐久性に優れて使いやすい上側端子部品1200を実現できた。尚、腕部1205、1206のうち嵌合部1205d、1206dの高さ方向はなるべく大きくする方が好ましいが、曲げ部1205b、1206b、平面部1205c、1206c、案内部1205e、1206eの上下方向の高さは、必ずしも一定である必要は無く前後方向にいくにつれて変化するような形状に形成しても良い。
図40(3)は下側端子部品1220単体の斜視図であり、ここでもブリッジ部1222の領域と、脚部1227、1228の部分にハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。この図にてわかるように下側端子部品1220はU字状に曲げる方向が、上側端子部品1200と異なる。ここでは基体部1221は側面視で正立させた略L字状とされ、右側側面1223と左側側面1224の上方前辺よりも前側に腕部1225、1226が接続される。腕部1225、1226のうち基体部1221との接続部付近は、右側側面1223と左側側面と同一面であって、対向する面が平行となる平面部1225a、1226aが形成される。平面部1225a、1226aの前方には左右方向にみて内側に曲げられる曲げ部1225b、1226bが形成される。曲げ部1225b、1226bの前方側には再び平面部1225c、1226cが形成される。対向する平面部1225cと平面部1226cは後方側の間隔が広くて、前方側にいくにつれて徐々に狭まる先絞りの形状とされる。平面部1225c、1226cの先端部分は大きめの曲率半径にて曲げられた嵌合部1225d、1226dが形成される。嵌合部1225d、1226dの内側の曲面が、電動工具本体1001、1030の端子と接触することにより、電気的に導通することになる。嵌合部1225d、1226dの内側は、電池パック1100が電動工具本体1001、1030から取り外された状態ではわずかな隙間を有するような形状とされる。嵌合部1225d、1226dの前方側は前方に行くにつれて間隔が急激に広がるように形成され、電動工具本体1001、1030側の端子を案内するための案内部1225e、1226eが形成される。案内部1225e、1226eの内側の面は、平面状としても良いし、曲面状としても良い。平面部1225aから案内部1225eまで、及び、平面部1226aから案内部1226eまでは上下方向の高さが一定であるように形成される。しかしながら、上側端子部品1200の腕部1205、1206と同様に、嵌合部1225d、1226dを除いて上下方向の高さが変化するように形成しても良い。以上のように形成することにより、本実施例では耐久性に優れて使いやすい下側端子部品1220を実現できた。
下側端子部品1220の腕部1225、1226の下側には、前方側から後方側に向けて、側面視でU字状に切りかかれた切欠き部1231(図40(1)参照)が形成される。切欠き部1231を形成したのは、この部分に上側端子部品1200と下側端子部品1220を区画するための基板カバー1180(図46にて後述)が設けられるためである。基体部1221の下側には、脚部1227、1228が接続される。脚部1227、1228は、回路基板1150の取付孔に挿入され、回路基板1150の取付面(表面)から反対側の面(裏面)において脚部1227、1228を突出させ、突出部分を半田付けする。また、半田付けによって腕部1225、1226から回路基板1150に搭載される電池セルや電子素子等への電気的な接続状態が確立される。ここで脚部1227、1228の組は、上側端子部品1200の脚部1207、1208の組とは短絡しない状態で独立して配線される。脚部1227、1228の寸法や形状は脚部1207、1208とほぼ同じであり、前側には折曲部1223a、1224aが形成される。折曲部1223a、1224aの曲げ部の上側と下側には、切抜部1223c、1224c、1227a、1228aが形成されるが、切抜部を形成するのはプレス加工時の曲げ加工を精度良くするためであるので、必ずしも切抜部が必要なわけではない。
次に図41を用いて電池パック1100を電動工具本体1001、1030に装着した際の、電動工具本体1001、1030側のターミナル部1020の形状と、電池パック1100の接続端子との接続状態を説明する。ここでは電池パック1100の接続端子のうち、放電用の正極端子(上側正極端子1162、下側正極端子1172)と負極端子(上側負極端子1167と下側負極端子1177)を図示している。電動工具本体1001、1030のターミナル部1020、1050には、さらにLD端子1028、1058が設けられるが、ここでは図示していない。図41(1)は、電池パック1100を36V用の電動工具本体1030に装着した状態を示す図である。前述したように電池パック1100の内部には10本の電池セルが収容され、そのうちの5本が上側セルユニット1146を構成し、残りの5本が下側セルユニット1147を構成する。ここでターミナル部は、従来の電動工具本体1001のターミナル部1020に比べて正極入力端子1052と負極入力端子1057の端子部1052a、1057aが小さい。つまり、上側に配置された上側正極端子1162と上側負極端子1167にだけ接触するように、上下方向の幅が小さく形成される。上側セルユニット1146の正極側出力端子は上側正極端子1162に接続され、負極側出力端子は下側負極端子1177に接続される。一方、下側セルユニット1147の正極側出力端子は下側正極端子1172に接続され、負極側出力端子は上側負極端子1167に接続される。つまり、正極端子と負極端子がそれぞれ独立して2組設けられ、左右方向且つ上下にクロスする一方の端子組(上側正極端子1162と下側負極端子1177)が上側セルユニット1146に接続され、他方の端子組(下側正極端子1172と上側負極端子1167)が下側セルユニット1147に接続される。上側正極端子1161と下側正極端子1172は電気的に接続されていないため、電池パック1100が電気機器本体に装着されていない状態(電池パック1100の取り外された状態)では、電気的に独立した状態にある。同様に、上側負極端子1167と下側負極端子1177は、電池パック1100の内部では電気的に接続されていないため、電池パック1100が電気機器本体に装着されていない状態(電池パック1100の取り外された状態)では、電気的に独立した状態にある。
図41(1)に示すように、定格36Vの電動工具本体1030のターミナル部には、受電用の正極入力端子1052と負極入力端子1057が設けられる。装着時において、正極入力端子1052は上側正極端子1162だけに嵌合し、負極入力端子1057は上側負極端子1167だけに嵌合するような位置関係とされる。一方、電動工具本体1030のターミナル部には、下側正極端子1172と下側負極端子1177を短絡させるように接続するショートバー1059がさらに設けられる。ショートバー1059は金属製の導電部材からなる短絡子又は導通端子であって、電池パック1100からの出力電圧を高電圧に切り替えるための切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット1146、1147を互いに直列に接続する高電圧用の接続素子としても機能する。ショートバー1059のコの字形状に曲げられた金属部材の一端側が下側正極端子1172と嵌合する端子部1059bとなり、他端側が下側負極端子1177と嵌合する端子部1059cとなる。端子部1059bと端子部1059cは接続部1059aにて接続される。ショートバー1059は、正極入力端子1052や負極入力端子1057等の他の機器側端子と共に合成樹脂製の基台1051(図42にて後述)に鋳込まれるようにして固定される。ショートバー1059は、下側正極端子1172と下側負極端子1177を短絡させるためだけに用いられるため、電動工具本体の制御回路等への配線をする必要はない。
正極入力端子1052は、上側正極端子1162と嵌合する部分であって平板状に形成された端子部1052aと、電動工具本体1030側の回路基板側との結線を行うリード線を半田付けするための配線部1052cと、端子部1052aと配線部1052cとの間を接続すると共に合成樹脂製の基台1051に鋳込まれる部分となる連結部1052bにより形成される。ここで配線部1052cの位置は、端子部1052aの左右方向位置に比べて内側にずれるように配置されるが、これは、配線部1052cの間隔を調整するためと、連結部1052bが鋳込みにより基台1051に安定して保持されるようにするためである。さらに端子部1052aの前方側の左右角部は斜めに面取りされ、端子部1052aが腕部1162aと腕部1162bの間に入り込みやすいように構成した。負極入力端子1057は正極入力端子1052と共通部品とすることができ、鉛直軸を中心に180度回転させた状態で配置することにより、負極入力端子1057としても正極入力端子1052としても用いることができる。従って、負極入力端子1057も、端子部1057aと配線部1057cと、これらを接続する連結部1057bにより形成される。端子部1057aの前方側角部(この部品を正極入力端子1052として使う場合は後方側の角部)にも斜めに面取りして、端子部1057aが腕部1167aと腕部1167bの間に入り込みやすくするようにした。
図41(1)において、電池パック1100を装着する際には、電池パック1100を電動工具本体1030に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子1052と端子部1059bが同一のスロット1122(第1のスロット、図38参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側正極端子1162と下側正極端子1172に嵌合される。このとき、正極入力端子1052が上側正極端子1162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子1162の腕部1162aと1162bの間に圧入される。また、負極入力端子1057と端子部1059cが同一のスロット1127(第2のスロット、図38参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子1167と下側負極端子1177に嵌合される。この際、負極入力端子1057が上側負極端子1167の嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子1167の腕部1167aと1167bの間に圧入される。さらに、ショートバー1059の端子部1059b、1059cが下側正極端子1172と下側負極端子1177の腕部1172aと1172bの間、腕部1177aと1177bの間を押し広げるようにして圧入される。端子部1052a、1054a〜1058a、1059b、1059cの前側角部は、矢印1052d、1054d〜1059d、1059eのように斜めに面取りされ、電池パック1100側の接続端子の腕部の間にスムーズに挿入できるようにしている。このようにして電池パック1100が電動工具本体1030に接続された状態において、正極端子(1162)と正極入力端子1052が第1スロット(スロット1122)を介して接続され、負極端子(1167)と負極入力端子(1057)が第2スロット(スロット1127)を介して接続され、これらの電圧切替要素、切替素子が第1及び第2スロットを介して係合する。また電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子、正極入力端子、負極端子、負極入力端子等の電圧切替要素と、ショートバー1059による切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置に配置される。
端子部1052a、端子部1057a、端子部1059b、1059cの板厚は、各腕部の嵌合部の初期隙間(電池パック1100が装着されていない時の隙間)よりも大きいので、端子部1052a、端子部1057a、端子部1059b、1059cの各々と上側正極端子1162、下側正極端子1172、上側負極端子1167、下側負極端子1177との嵌合点に所定の嵌合圧力が作用する。このような接続の結果、電動工具本体1030の機器側端子(端子部1052a、端子部1057a、端子部1059b、1059c)と、電池パックの電力端子(上側正極端子1162、下側正極端子1172、上側負極端子1167、下側負極端子1177)は電気的な接触抵抗が小さくなるような状態にて良好に接触する。このようにして電動工具本体1030は、単一のスロット(1122)に挿入されて第1及び第2の端子(1162、1172)のうち第1の端子(1162)のみに接続される第3の端子(1052a)と、単一のスロット(1122)に挿入されて第2の端子(1172)のみに接続される第4の端子(1059b)と、を有し、電池パック1100が電動工具本体1030に接続されると、単一のスロット1121内で、第1及び第3の端子(1162と1052a)が互いに接続されてともに第1の電位となり、第2及び第4の端子(1172と1059b)が互いに接続されてともに第1の電位とは異なる第2の電位となる。負極端子対(1167、1177)側でも同様に接続状態となるため、図41(1)の接続形態の実現によって、上側セルユニット1146と下側セルユニット1147の直列接続の出力、即ち定格36Vが電池パック1100から出力されることになる。
一方、従来の18V用の電動工具本体1001に電池パック1100が装着された際には、図41(2)のような接続関係となる。電池パック1100が電動工具本体1001に取り付けられるときは、正極入力端子1022は、上側正極端子1162と下側正極端子1172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子1022の上側の一部の領域が上側正極端子1162と接触し、下側の領域の一部が下側正極端子1172と接触する。このように正極入力端子1022が上側正極端子1162と下側正極端子1172を跨ぐようにして接続され、腕部1162a、1162bと同時に嵌合し、腕部1172a、1172bに同時に嵌合する。同様に、負極入力端子1027は、上側負極端子1167と下側負極端子1177の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、負極入力端子1027の上側の一部の領域が上側負極端子1167と接触し、下側の領域の一部が下側負極端子1177と接触する。このように負極入力端子1027が上側負極端子1167と下側負極端子1177を跨ぐようにして接続され、腕部1167a、1167bと同時に嵌合し、腕部1177a、1177bに同時に嵌合する。この結果、上側正極端子1162と下側正極端子1172が短絡状態となり、上側負極端子1167と下側負極端子1177が短絡状態となり、電動工具本体1001には上側セルユニット1146と下側セルユニット1147の並列接続の出力、即ち定格18Vが出力されることになる。よって正極入力端子1022と負極入力端子1027は、電池パック1100の出力電圧を低電圧に切り替える切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット1146、1147を互いに並列に接続する低電圧用の接続素子としても機能する。接続素子となる正極入力端子1022と負極入力端子1027は一定の厚みを有する金属板からなる。従って、上側正極端子1162、上側負極端子1167の腕部による嵌合圧と、下側正極端子1172、下側負極端子1177の腕部による嵌合圧は同等とすることが重要である。また、これらの嵌合圧を一定とするために、図41(1)に示した36V用の電動工具本体1030の正極入力端子1052、負極入力端子1057、ショートバー1059の端子部1059b、1059cの厚さを、従来の18V用の電動工具本体1001の正極入力端子1022と負極入力端子1027の厚さと同じとする。
以上のように本実施例の電池パック1100は、18V用の電動工具本体1001か、36V用の電動工具本体1030に装着することにより、電池パック1100の出力が自動的に切り替わるので、複数電圧に対応した使い勝手の良い電池パック1100を実現できた。この電圧切り替えは電池パック1100側にて行うのではなくて、電動工具本体1001、1030側のターミナル部の形状によって自動的に行われるので、電圧設定ミスが生ずる虞が全くない。また、電池パック1100側には、機械的なスイッチのような専用の電圧切替機構を設ける必要が無いので、構造が単純で故障の虞が低く、長寿命の電池パックを実現できる。この下側正極端子1172と下側負極端子1177を短絡させるショートバー1059は、18V用電池パックの既存のターミナル部1020と同スペース内に実装できるため、従来と互換性のある大きさで電圧切替式の電池パックが実現できる。さらに、外部の充電装置を用いて充電を行う際には、図41(2)のような接続方法にて充電することが可能なので、高電圧/低電圧の双方の充電を行うような充電装置を準備する必要が無い。尚、電池パック1100を外部充電装置(図示せず)で充電する場合は、従来の18V用電池パックと同じ充電装置にて充電が可能である。その場合の充電装置のターミナルは図41(2)と同等の形状となるが、放電用の正極端子(1162、1172)の代わりに、充電用の正極端子(上側正極端子1161、下側正極端子1171)が充電装置(図示せず)の正極端子に接続されることになる。その際の接続状況も図41(2)に示す接続関係とほぼ同等である。このように、上側セルユニット1146と下側セルユニット1147を並列接続させた状態として18V用の充電装置を用いて充電を行うので、本実施例の電池パック1100を充電するにあたって、新しい充電装置を準備しなくて済む。
図42(1)は第6の実施例の電動工具本体1030のターミナル部1050の斜視図である。ターミナル部1050は、図41(1)で示した正極入力端子1052、負極入力端子1057、ショートバー1059に加えて、4つの金属製の接続端子1054〜1056、1058が合成樹脂製の基台1051に鋳込まれて製造されるものである。接続端子1054〜1056の形状は、図41(1)の正極入力端子1052、負極入力端子1057の連結部1052b、1057bの部分を直線状に形成したものであり、電池パック1100側の接続端子に嵌合される端子部1054a〜1056aが一方側に形成され、他方側に穴が形成されリード線が半田付けされるための配線部1054c〜1056cが形成され、端子部と配線部の間を接続するもので合成樹脂内に鋳込まれる接続部1054b〜1056bが形成される。基台1051は端子部1052a、1054a〜1058aの上側辺部全体と、後側辺部全体を鋳込むようにして、端子部1052a、1054a〜1056a、1058aを強固に保持した。また、端子部1054a〜1056a、1058aについては下側辺部の後方の一部を鋳込むようにした。図41(1)にてその形状を示したショートバー1059は、左右方向に延びる接続部1059a(図41参照)が基台1051内にすべて鋳込まれ、基台1051から前方側に端子部1059bと1059cの前方部分が露出する。また、端子部1059b、1059cの外部に露出している部分の後方側の下方が基台1051内に鋳込まれることにより、端子部1059b、1059cが左右方向に動かないように強固に保持される。このようにして複数の板形状の機器側端子がターミナル部1050に並べて配置される。ここで、端子部1052aと端子部1059bは、上下方向に一定の隙間1053aを隔てるように配置される。同様にして端子部1057aと端子部1059cは、上下方向に一定の隙間1053bを隔てるように配置される。
図42(2)は、ターミナル部1050と電池パック1100の電力端子(1162、1172、1167、1177)との接続状況を示す図である。上側正極端子1162は2つの腕部1162a、1162b(図40(1)の腕部1205、1206に相当)を有し、正極の下側正極端子1172は2つの腕部1172a、1172b(図40(1)の腕部1225、1226に相当)を有する。上側正極端子1162の腕部1162a、1162bは板状に形成された端子部1052aを左右から挟み込むように接続される。この接合の際には、腕部1162a、1162bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部1052aに付与することになる。この結果、腕部1162a、1162bと端子部1052aが良好に面接触又は線接触することになるので、接触抵抗がきわめて小さい良好な導電性を実現できた。同様にして、上側負極端子1167の腕部1167a、1167bは板状に形成された端子部1057aを左右から挟み込むようにして嵌合する。
下側正極端子1172の腕部1172a、1172bは板状に形成された端子部1059bを左右から挟み込むようにして嵌合する。この嵌合の際には、腕部1172a、1172bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部1059bに付与することになる。この結果、腕部1172a、1172bと端子部1059bが良好に面接触又は線接触することになるので、接触抵抗をなくして良好な導電性を実現できた。同様にして、下側負極端子1177の腕部1177a、1177bは板状に形成された端子部1059cを左右から挟み込むようにして嵌合する。
本実施例で重要なことは、端子部1052aと上側正極端子1162の接続部分と、端子部1059bと下側正極端子1172の接続部分の非接触状態が保たれて、電気的な絶縁状態を維持することにある。また、端子部1057aと上側負極端子1167の接続部分と、端子部1059cと下側負極端子1177の接続部分の非接触状態が保たれて、電気的な絶縁状態を維持することにある。このように構成すれば、電動工具の使用時における様々な振動や衝撃によって、電池パック1100が電動工具本体1030とは異なる共振周波数で振動したような場合であっても、上側正極端子1162と下側正極端子1172との短絡が起こることを阻止でき、上側負極端子1167と下側負極端子1177との短絡が起こること阻止できる。尚、図42(2)では、端子部1054a〜1056a、1058aに嵌合される電池パック側の接続端子の図示を省略しているが、正極側の電力端子(上側正極端子1162と下側正極端子1172)、負極側の電力端子(上側負極端子1167と下側負極端子1177)が接続された際には、信号端子(図39で示すT端子1164、V端子1165、LS端子1166、LD端子1168)も端子部1054a〜1056a、1058aに同様に嵌合されるものである。
図43(1)は従来の電動工具本体1001のターミナル部1020の斜視図であり、(2)は電池パック1100の電力端子との接続状況を示す図である。ターミナル部1020は6つの金属製の端子1022、1024〜1028が合成樹脂製の基台1021に鋳込まれて製造されるものである。端子1022、1024〜1028の形状は、図41にて鋳込み前の端子1022、1027の一部を示したように、電池パック1100側の接続端子に嵌合される端子部1022a、1024a〜1028aが一方側に形成され、他方側に穴が形成されリード線が半田付けされるための配線部が形成され、端子部と配線部の間を接続すると共に基台1021の合成樹脂内に鋳込まれる接続部が形成される。基台1021は端子部1022a、1024a〜1028aの上側辺部全体と、後側辺部全体と、下側辺部の後方の一部を鋳込むようにして、端子部1022a、1024a〜1028aを強固に保持した。端子部1022a、1024a〜1028aの前側角部は、矢印1022d、1024d〜1028dのように斜めに面取りされ、電池パック1100側の接続端子の腕部の間にスムーズに挿入できるようにしている。ターミナル部1020の形状は、基台1021の前側に左右方向に延びる溝部1021bが形成され、後側にも同様に左右方向に延びる溝部1021bが形成される。これら溝部1021b、1021cはターミナル部1020におけるハウジングの開口部分にて挟持される。
図43(2)は ターミナル部1020と電池パック1100の電力端子(1162、1172、1167、1177)との接続状況を示す図である。ここでは電池パック1100側の信号端子(T端子1164、V端子1165、LS端子1166、LD端子1168)の図示を省略している。上側正極端子1162の腕部1162a、1162bは板状に形成された端子部1022aの上側領域を左右から挟み込むようにして嵌合する。この嵌合の際には、腕部1162a、1162bが左右方向に離れるように曲げられることによりバネ作用の復元力によって所定の挟み荷重(嵌合圧)を端子部1022aに付与することになる。また、下側正極端子1172の腕部1172a、1172bは板状に形成された端子部1022aの下側部分左右から挟み込むようにして嵌合する。電力端子の上側負極端子1167と下側負極端子1177の各腕部は同様の嵌合状態となる。このようにして、1枚の端子部1022aに対して4つの腕部1162a、1162b、1172a、1172bが接触する。同様にして負極側においても、上側負極端子1167の腕部1167a、1167bは板状に形成された端子部1027aの上側領域を左右から挟み込むようにして嵌合し、下側負極端子1177の腕部1177a、1177bは端子部1027aの下側部分を左右から挟み込むようにして嵌合する。このようにして、1枚の端子部1022aに対して4つの腕部1162a、1162b、1172a、1172bが接触し、同様にして端子部1027aに対して4つの腕部1167a、1167b、1177a、1177bと接触するので、これらが良好に面接触又は線接触することができ、接触抵抗をなくして良好な導電性を実現できた。
次に図44を用いて3つの端子(1164〜1166)に用いられる部品、即ち信号端子部品1240の形状を説明する。信号端子部品1240は、1枚の金属板のプレス加工に製造されるものであって、金属の薄板をU字状の底部分となるブリッジ部1242が後側の鉛直面となるように曲げられた基体部1241から、腕部組(腕部基部1245、1246)が前方側に延在し、腕部基部1245は上下の腕部組(腕部1251、1253)に分離するように形成され、腕部基部1246は水平方向に延びる切欠き溝1244bによって上下の腕部組(1252、1254)に分離するように形成される。プレス加工に用いる金属板は、厚み0.3mmの平板であって、電力端子に用いられる上側端子部品1200、下側端子部品1220の板厚0.5mmに比べて薄くて良い。上側及び下側の腕部組は、同一形状に形成され、前後方向の長さ、上下方向の幅、板厚等が同じである。上側の腕部組(腕部1251と1252)、及び、下側の腕部組(腕部1253と1254)にはそれぞれ嵌合部(1251d、1253d等)が形成されるが、嵌合部のために湾曲させた形状も上下で同一であり、左右の腕部が面対称の形状とされる。一方、脚部1249、1250の取り付け位置が前後方向に大きくずらすように配置される。基体部1241の下辺部分の形状は左右で異なり、右側側面1243と左側側面1244の形状が非対称となる。脚部1249は、従前の脚部1250の位置に比べて前側に大きくずらして配置され、脚部1249と1250は前後方向に大きく距離を隔てる。このように脚部1249と脚部1250が左右方向に隣接して並ぶのでは無く、前後にずらすように配置したため、右側側面1243の下辺付近には前方に大きく延ばされた延在部1243aが形成され、その前端部分から下方向に脚部1249が延びるように形成される。脚部1249と脚部1250はそれぞれ回路基板1150に形成された貫通孔(図示せず)を、表面から裏面側まで貫通させて、裏面側に突出した部分が半田付けされることにより回路基板1150に固定され、上側の腕部組(腕部1251と1252)と下側の腕部組(腕部1253と1254)が回路基板1150に搭載される電子素子と電気的に接続されることになる。
脚部1249の上方には、回路基板1150の取付孔1151(図39参照)への挿入量を制限するための、左方向に折り曲げた折曲部1243bが形成される。折曲部1243bの曲げた部分の上側と下側には、折り曲げ加工を容易にするために半円形に切り抜いた切抜部1243c、1249aが形成される。後方側の脚部1250の回路基板1150への位置決めには、脚部1250の前方側と後方側に形成された段差部1250a、1250bを用いるようにした。段差部1250aは左側側面1244の下辺部分を前方側に延ばすことで形成し、段差部1250bはU字状に湾曲するブリッジ部1242の下側辺部を利用して形成される。このように段差部1250a、1250bが回路基板1150の表面に当接することにより脚部1250の上下方向の取り付け位置を決定することができる。脚部1249と1250の前後方向の取り付け位置は、回路基板1150の取付孔1151(図39参照)の位置によって規定される。
図44(2)は信号端子部品1240単体を前方下側から見た図である。この図からわかるように腕部基部1245の前方側には水平方向に延びる切欠き溝1245bが形成されることにより上下の腕部組(腕部1251、1253)に分離される。また、右側の脚部1249は左側の脚部1250に比べて大きく前方側にずれるように配置される。この結果、4つの腕部1251、1252、1253、1254に対して上方向又は下方向に対する力が加わったとしても信号端子部品1240を回路基板にしっかりと保持することができる。腕部1251、1252、1253、1254に対して加わる外力は、電動工具本体1001、1030に電池パック1100を装着する時に腕部組を後方側に押すように加わり、この力は信号端子部品1240を後方に倒す方向となる。逆に、電動工具本体1001、1030から電池パック1100を取り外す時には、腕部組を前方側に押すような力となり、この力は信号端子部品1240を前方に倒す方向となる。このように電池パック1100の装着時と取り外し時に加わる外力を、脚部1249、1250の位置を前後方向にずらしたことにより効果的に受け止めることができ、信号端子部品1240の取り付け剛性を大幅に強化できるので、電池パック1100の耐久性を高めることができた。さらには、腕部組も上側と下側の2段に分けて形成したので、電動工具の動作中に様々な振動を受けたり外力を受けたりしても、腕部の4つの接触領域によって電動工具本体側端子との良好な接触状態を維持できる。一方、この信号端子部品1240を製造する際に必要な、回路基板1150の取付孔の数や半田付け箇所の数は従来と同じであるため、製造コストの上昇は抑制できる。
本実施例の信号端子部品1240は剛性向上だけでなく別の効果も奏する。従来の信号端子部品(図示せず)は、回路基板に半田付して電気的・機械的に取付ける脚部を2箇所設けているが、その脚部は左右方向に並設しており、脚部の間が狭い上に半田付け部分がつながっていることが多く、左右の脚部の間に信号用のパターンを通すような配線ができなかった。本実施例の電池パック1100では、信号端子部品1240の一方の脚部1249を前側に配置し、他方の脚部1250を後側にして両方の脚部を離して配置した。これにより、信号端子部品1240の各脚部の距離が広くなり複数の配線、又は、主電流を流す太いパターンを配線することが容易になる。このような信号端子部品1240は、本実施例の電池パック1100、即ち、従来の電池パックに対して高機能化を図り、電圧比でみた小型化を促進したい場合には好適である。特に、電圧を高めた上に電圧切り替え機能を実現すると、回路基板1150に搭載される電子素子が増加する。そこで、パターン配線の効率化を図ると共に、主電流を流す配線を太くする必要が生じた。本実施例では回路基板1150を従来用いられるものよりも大型のものを用い、接続端子群の後側だけでなく前側領域にも電子素子を搭載するようになった。その際、信号端子部品1240の下側にも配線パターンを配置するようにした。その配置の仕方を図45を用いて説明する。
図45は複数の信号端子部品1240の回路基板1150への固定状況を示す図であり、(1)は前方から見た図であり、(2)は信号端子部品1240を左から見た図である。信号端子部品1240は共通部品であって、T端子1164、V端子1165、LS端子1166として回路基板1150において左右方向に並べて固定される。信号端子部品1240は腕部の中央付近に間隔S2を生ずるように切り欠き部が形成されるため、上側の腕部組(1251、1252)と下側の腕部組(1253、1254)が上下に2段存在するような形状となる。機器側端子が装着されていない状態においては、上側の腕部組(1251、1252)と下側の腕部組(1253、1254)の最も接近する部分(嵌合部)は、わずかに隙間を隔てるか、又は当接するように配置される。それぞれの脚部1249、1250は、回路基板1150の取付孔(図39参照)を貫通して下側まで突出し、回路基板1150の下側(裏面)にて半田1256により固定される。
図45(2)の側面図において、前方に位置する脚部1249と後方に位置する脚部1250の間は距離S3だけ隔てるように構成される。距離S3は、脚部1249と1250との間隔(左右方向の距離)よりも大きくなるようにすると良い。このように矢印1257のような隙間を形成することによって、この隙間部分に回路パターンを配線することが容易となる。図45(3)は、図45(1)の回路基板1150を下側から見た底面図である。回路基板1150の裏面には、信号端子部品1240を半田付けするために中央に貫通孔が形成され、貫通孔の周囲に略四角形の半田付け用の銅箔を配置したランド1153a〜1155a、1153b〜1155bが形成される。ランド1153a〜1155a、1153b〜1155bから上側セルユニット1146又は下側セルユニット1147への接続用の配線パターンは、回路基板1150の表面側にあり、(3)の図では見えない。左側の脚部用のランド1153a〜1155aと右側の脚部用のランド1153b〜1155bは前後にずれるように配置される。この結果、ランド1153a〜1155aとランド1153b〜1155bの間に、図のように複数のパターン1157〜1159を配置することが可能となる。配線パターン1157〜1159はここでは、各3本ずつ設けるように図示しているが、1本の太い配線としたり、その他の本数の組み合わせとしても良い。このように前後方向にずらして配置した脚部1249、1250の間に配線パターンを配置させたので、隣接する信号端子1164と1165、1165と1166の間隔を従来と同じに保ったままで、信号端子1164〜1166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターン1157〜1159を設けることが可能となった。尚、信号端子1164〜1166の後方側と前方側を接続する配線パターン数を増やす別の方法として、図45(2)において点線で示すような切抜部1243cを設ける方法を併用しても良い。右側側面1243の下辺付近であって回路基板1150と接する部分に、点線で示すような上向きに切り欠いた切抜部1243cを形成する。すると、矢印1257に示す部分が回路基板1150と距離を隔てる隙間となる。この隙間と回路基板1150の間に、図45(3)の配線パターン1157〜1159と同様に回路パターンを配置することが可能となる。このように回路基板の裏面側1150bだけでなく表面側1150aにも信号端子1164〜1166の後方側と前方側を接続する複数の配線パターンを配置することができるので、回路基板1150の実行効率を向上させることが可能となる。
図46は、接続端子群(1161〜1162、1164〜1168)とその周囲に配置される基板カバー1180の形状を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は正面図である。ここでは発明の理解のために回路基板1150の図示を省略したものであり、実際の製品では回路基板1150に複数の接続端子群(1161〜1162、1164〜1168、1171、1172、1177)が半田付けにより固定された後に、基板カバー1180が接続端子の周囲に取り付けられる。電力端子(1161、1162、1167)は信号端子(1164〜1166、1168)よりも上方向に距離Hだけ高くなるように形成される。基板カバー1180は、不導体、例えば合成樹脂の成形品によって製造され、隣接する接続端子の脚部の周囲を覆うようにした部材であって、前方側に平面状の上面1181aを有する連結部1181を有し、連結部1181の後方側に複数の仕切り壁1182、1183、1184〜1189が接続される。仕切り壁1182、1183、1184〜1189は平面部1181aよりも後方側、即ち接続端子群の左右部分に配置されることにより接続端子間の電気的な短絡を起こりにくくする機能を果たす。また、連結部1181の上面1181aは、上ケース1110の上段面1115(図38参照)と同一面になるように形成されており、上段面1115から連結部1181までに至る本体側ターミナル部の相対移動を容易としている。また、基板カバー1180には、使われていない領域(図38のスロット1123)の開口を塞ぐような覆い部1184を設けて、スロット1123から電池パック1100のケース内部にゴミや粉塵が入りにくくする。
基板カバー1180には横方向に水平な上面1181aを有する連結部1181と、その上方に延びる複数の仕切り壁部によって、主に形成される。仕切り壁部のうち信号端子間に配置される仕切り壁1185、1186、1189は高さH2の低い壁部とされ、その上端位置は信号端子(1164〜1166)や、LD端子1168の下側の腕部より低い位置になる。これに対して電力端子に隣接する仕切り壁1182、1183、1184、1187、1188は、上面1181aからの高さがH3の高い壁部となり、その上端位置は、下側端子部品の上端位置よりも上側に位置し、上側端子部品の腕部の下側に位置するように構成される。
接続端子群のうち電力端子は、図40〜図43で説明したように、上側正極端子1161、1162と下側正極端子1171、1172の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に並べて配置される。同様にして上側負極端子1167と下側負極端子1177の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に並べて配置される。定格18Vの電気機器本体に電池パック1100を装着した際には、上側正極端子1161、1162、上側負極端子1167の腕部の電位と、下側正極端子1171、1172、下側負極端子1177の電位は同じとなるため、上側端子部品と下側端子部品が接触しても問題ない。しかしながら、定格36Vの電気機器本体に電池パック1100を装着した際には、上側正極端子1161、1162、上側負極端子1167の電位と、下側正極端子1171、1172、下側負極端子1177の電位がそれぞれ異なるため、上下の腕部間の接触による短絡状態が発生しないようにすることが重要である。また、異物の挿入による短絡が起こりにくいような形状とすると良い。そこで、本実施例の基板カバー1180は、連結部1181から上方向に延びるように形成される仕切り壁部のうち、仕切り壁1182、1183、1184a、1187、1188に関しては、高さH3となるように上端位置を上方にまで大きく形成した。また、上方に向けて鉛直方向に延びる壁部だけでなく、鉛直壁部の上端位置から左右方向にも延びる水平壁部も形成した。
図46(3)は、(2)の基板カバー1180の一部拡大図であり、接続端子部分の図示を除いた図である。仕切り壁1182は鉛直壁部1182aと水平壁部1182bを有するもので、その断面形状がL字形となる。水平壁部1182bは鉛直壁部1182aの上端付近から隣接する電力端子(上側正極端子1161、下側正極端子1171)の腕部の間の空間内にまで到達するように水平方向に延びる形状とされる。また、仕切り壁1183はT字形の断面形状を有し、鉛直壁部1183aと、鉛直壁部1183aの上端部から両方向に延びる水平壁部1183b、1183cにより形成される。水平壁部1183bは隣接する水平壁部1182bと近接する側に延びて、上側正極端子1161と下側正極端子1171の腕部の間の空間内に先端が到達する長さとされる。同様にして水平壁部1183cは、隣接する水平壁部1184bと近接する側に延びて、上側正極端子1162と下側正極端子1172の腕部の間の空間内に先端が到達する長さとされる。この腕部の間の空間内にまで水平壁部1182b、1183b、1183cが延びる状況は、図46(2)のように前方から正極端子群を見ることにより明らかであろう。たとえば、上側正極端子1161の右側側面位置と、下側正極端子1171の右側側面位置は同一位置にある。しかしながら、水平壁部1182bの左端位置1182cは、上側正極端子1161と下側正極端子1171の右側側面位置よりも左側にのびるように、上側正極端子1161の腕部1161aの下側部分にまで入り込む程度の長さになる。尚、水平壁部1182bは、下側正極端子1171の腕部1171aの上側に位置することになる。
鉛直壁部1182aと水平壁部1182bの前後方向の長さは、下側正極端子1171の前後方向の長さよりも長く形成され、その前端位置は下側正極端子1171の腕部の先端とほぼ同じ位置にあり、後端位置は下側正極端子1171の後端位置よりも後方側にある。このようにして、鉛直壁部1182aは下側正極端子1171の右側側面全体と、左側側面全体を覆いつつ、上側部分も左右中央付近(距離S5の部分)を除いて覆うようにした。ここでは、下側正極端子1171部分の鉛直壁部1182aと水平壁部1182bの形状だけに言及したが、下側正極端子1172についても、右側側面全体と左側側面全体と、中央部分を除く上側部分が覆われるような仕切り壁1184が設けられるので、下側正極端子1171、1172に外力が加わって、これらを曲げるような力が加わったとしても、基板カバー1180によって効果的に保持させることができ、送電用の下側の端子部品と上側の端子部品が意図せずに短絡してしまう虞を大幅に低減させることができる。
負極端子側(1167、1177)についても、正極端子側(1161、1162、1171、1172)と同様の考えであって、負極端子の左右両側には大きな仕切り壁1187、1188を設けた。仕切り壁1187は、仕切り壁1182と同様の形状であって、鉛直壁部1187aと水平壁部1187bにより形成され、その断面形状がL字状とされる。水平壁部1187bは鉛直壁部1187aの上端部分から負極端子側に延びるように形成される。仕切り壁1188は、仕切り壁1187と左右対称に形成されたもので、鉛直壁部1188aと水平壁部1188bにより形成される。水平壁部1187bと1188bは、上側負極端子1167の腕部組と下側負極端子1177の腕部組の間の空間に先端部分が入り込む程度の大きさとされるが、所定の間隔S5を有して電動工具本体1001、1030等の機器側端子が入り込むことを阻害しないようにする。このように電力端子たる負極端子(1167、1177)の周囲を覆うように仕切り壁1187、1188を形成したので、上側負極端子1167又は下側負極端子1177に強い外圧がかかって前後方向に動いた(曲げられた)としても、水平壁部1187bと1188b等の壁部の存在によって短絡現象の発生する可能性を大幅に削減することができる。
信号端子群(1164〜1166)の間の仕切り壁1185、1186は上方向に低い高さH2しか有しない。これは、信号端子群(1164〜1166)には、小電力の信号が流れるだけであるので、短絡時の危険度合いが電力端子側に比べて大幅に小さい為である。また、信号端子群(1164〜1166)はそれぞれが1部品であって、上側の腕部と下側の腕部が同電位であるので、短絡の心配をする必要性が低い為である。仕切り壁1184は、鉛直壁部1184a、1184dを含み、これらの間を塞ぎ板1184cに接続したものである。塞ぎ板1184cは鉛直及び左右方向に延在する平板であって、上側正極端子1162とT端子1164との間の空きスペース(図38の空きスロット1123の内部空間)を閉鎖する作用を奏する。鉛直壁部1184aの上端付近には、正極端子側に延びる水平壁部1184bが形成される。
連結部1181は、接続端子間に位置する鉛直壁部1182a、1183a、1184a、1184d、1185a、1186a、1187a、1188aの前面に接続するようにしてこれらを固定するものである。連結部1181の上面1181aの壁部は、回路基板1150よりも浮いた状態になるように形成される。連結部1181の内側部分には、空間を有するように形成され、その後方側に鉛直壁部1184a、1185a、1187aが配置される。ここでは前方壁面1181bに隠れて見えないが、鉛直壁部1182a、1183a、1184d、1188aも同様に下側まで延びて回路基板1150に接触するように形成される。この連結部1181の内側部分にも図48にて後述するような回路基板1150の上面を覆う液体状の硬化性樹脂が満たされた後に固められる。硬化性樹脂の固化によって、複数の鉛直壁部1182a、1183a、1184a、1184d、1185a、1186a、1187a、1188aの下端付近と回路基板1150が強固に固定される。連結部1181の前方壁面1181bには3つの切欠き部1181c〜1181eが形成される。切欠き部1181c〜1181eは、図48にて後述する液体状の樹脂が回路基板1150の後方部分と前方部分に均等に行き渡るようにするために形成されるものであり、液体状の樹脂は粘度が比較的低いため、切欠き部1181c〜1181eを通って樹脂が前後方向に流れる(詳細は後述する)。
図47は図38の上ケース1110だけを抜き出した図であり、上ケース1110の上段面1115の形状を説明するための図である。図47(1)は上ケース1110の斜視図であり、(2)は(1)の矢印B方向から見た矢視図である。(1)においては段差状になっている部分に、ハッチングを付して、その範囲が明確になるように図示している。図46にて説明したように、電力端子(1161、1162、1167)は信号端子(1164〜1166、1168)よりも上方向に距離Hだけ高くなるように形成される。これは信号端子より電力端子が厚い板材で形成されるからである。従って従来の上ケースの上段面の形状では、電力端子(1161、1162、1167)の上端部が上段面の内壁に干渉してしまう。そこで、本実施例では電力端子(1161、1162、1167)の上部のクリアランスを稼ぐように、上ケース1110の上段面1115の上下方向にみた内側壁面の位置を、部分的に上側にずらすように構成した。内側壁面の位置だけを上方向に窪む凹部とする方法も考えられるが、上段面1115の画面形状をそのままとすると、上ケース1110の上段面1115の一部分の厚さが不足して、局所的に強度が低下する虞がある。そこで、本実施例では上段面1115の外側面であって、電力端子(1161、1162、1167)が位置する付近の上部を、外側に向けて突出する凸部1115a、1115bを形成した。このように上段面1115の壁面の一部を上側にずらすように構成したので、内側部分には収容スペースを拡大させることができ、壁面強度の低下も防ぐことができる。本実施例では、上段面1115の外壁面の突出高さH4が、内壁面の窪み高さH5よりも小さくなるように構成したので、上段面1115に凸部1115a、1115bのサイズを小さく抑えることができ、従来の電動工具本体1001に支障なく装着できる範囲内に収まった。また、上段面1115が同一面ではなくて、部分的な段差部が形成されて網掛け部の高さが高くなるように段差が形成されることにより、従来の同一平面状の上ケースに比べて強度的には同等又は同等以上とすることができた。
次に、図48を用いて回路基板1150への樹脂の塗布方法を説明する。図48は回路基板1150の斜視図であり、ここでは図示を省略しているが、回路基板1150の上面(表面)には、電子素子を搭載するための主領域1156aと副領域1156bが設けられる。主領域1156aは、接続端子群よりも後方側にあって、そこにはマイコンを含む保護管理IC(後述)が搭載される。副領域1156bは接続端子群よりも前方側の領域である。ここでは、搭載される電子素子の全体を硬化性樹脂にて覆うようにした。硬化性樹脂は、液体状態から硬化するもので、例えばウレタン樹脂を用いることができる。回路基板1150の上面に均等に液体のウレタン樹脂を満たすために、最初に回路基板1150に搭載される素子群の外縁部分に、液体状の樹脂の流出を防ぐ堤防の役割をする接着樹脂1155を付着する。接着樹脂1155は、例えばチューブ状の容器内から細い抽出口を通して円柱状に抽出された接着剤を、ウレタン樹脂を満たしたい領域の外縁に沿って連続的に付着させる。この際、外縁部分にそって接着剤が切れ目無く付着されることが重要であり、一方の端部と他方の端部が基板カバー1180に接するように形成する。このように樹脂を流し込む外縁部分のほぼ一周分に、外枠となる接着樹脂1155を付着させたら、その後に回路基板1150の上面内側に液体状態にあるウレタン樹脂を流し込む。
流し込むウレタン樹脂の量は接着樹脂1155にて囲まれた範囲を十分満たす量とする。この際、樹脂にて覆いたくない箇所には、該当箇所の外縁を接着樹脂1155aで囲むようにし、それらの外側に流し込まれた樹脂が、接着樹脂1155aで囲まれた範囲内には届かないようにした。尚、ウレタン樹脂を流し込む位置は主領域の矢印1156aにて示す付近とすれば、接着樹脂1155aで囲まれた範囲内には樹脂が流れ込まない。また、基板カバー1180は上面1181aを形成する連結部1181の壁面が浮いている状態で、その下側部分の後方側壁面が開口状態にあり、前方側が壁面となって、その一部に切欠き部1181c〜1181eが形成されることにより、主領域1156aから副領域1156bに良好に樹脂が流れ込むことが可能となる。このようにして、回路基板1150の素子搭載面全体を樹脂にて覆ったのちに硬化させることにより、回路基板1150の表面側に均一の高さで、対象範囲内を隙間無く樹脂で覆い、搭載された電子素子を水や埃の影響から守ることができる。尚、回路基板1150として両面基板を用いる場合には、裏面側にも同様の手順で樹脂にて覆うようにしても良い。また、接着樹脂1155にて樹脂の充填を除外させた部分、例えばネジ穴付近や、リード線の半田付け部も、ねじ締めが完了した後工程時、半田付けが完了した後工程時に樹脂を塗布するようにしても良い。
以上、図36〜図48を用いて本発明の第6の実施例を説明したが、第6の実施例にて示した電池パック1100は種々の変形が可能である。図49は、第6の実施例の第1の変形例に係る上側端子部品1260と下側端子部品1280の形状を示す図である。図49(1)は斜視図であり、(2)は左側面図であり、(3)は正面図である。上側端子部品1260と下側端子部品1280がそれぞれ左右方向に2つの腕部組(1265と1266、1285と1286)を有し、2つの腕部組が上下方向に整列する点は第6の実施例と同じである。上側端子部品1260の脚部組(1267、1268)が、下側端子部品1280の脚部組(1287、1288)と前後方向に並ぶように配置されることは第6の実施例と同じである。右側側面1263と左側側面1264の後辺の下側部分には、(2)にて矢印1262a、1282aとして示すように、ブリッジ部1262、1282が後方側に湾曲するように突出するので、この突出部分が上側端子部品1260と下側端子部品1280の回路基板1150への取り付け時の上下方向位置決め用に用いられる。脚部1267と1268の前辺上部には、凸状に延ばした部分を内側に折り曲げた折曲部1263a、1264a、1283a、1284a(但し1263aは図49では見えない)が形成されるが、これらの形状は図40で示した第6の実施例の構成と同様である。
上側端子部品1260はU字状の折り曲げる方向が図40で示した方向と異なる。ここでは、U字状に折り曲げた際に底部となる部分、即ちブリッジ部1262が鉛直面となるように形成される。下側端子部品1280の折り曲げ形状は図40で示した下側端子部品1220とU字状の折り曲げる方向が同じであり、ブリッジ部1282が鉛直面となる。ブリッジ部1262と1282は前後方向にほぼ一定の間隔を有するように平行に配置され、これらは回路基板1150の表面に対してほぼ垂直方向に延びるように配置される。上側端子部品1260と下側端子部品1280は金属の平板をプレス加工して製造する点は第6の実施例と同様であるが、その平板の厚さをさらに厚くしたものである。
右側側面1263と左側側面1264は鉛直方向に延びる略長方形であって、上端に近い部分で前方側に腕部1265、1266が延びるように形成される。腕部1265、1266の後方側根元付近、即ち鎖線B2付近では幅(上下方向の長さ)が大きく、前方に行くに従ってその幅が徐々に小さくなり、仮想線B1よりさらに前方側では幅が一定なる。嵌合部1265d、1266dでは、上面視で内側に所定の曲率半径R1を有する曲面状に曲げられる点は、図40で示す第6の実施例と同様である。このようにU字形の基体部の上方前辺部から前方に延びるようにして腕部1265、1266が形成され、腕部1265、1266が互いに非接触状態にてバネ性を持たせるように形成される。
下側端子部品1280は、U字状に折り曲げて平行なるように形成された右側側面1283、左側側面1284と、それらを接続するブリッジ部1282を有し、右側側面1283と左側側面1284の細長い上部から、前方かつ斜め上側に向けて腕部1285、1286が延びるように設けられる。腕部1285、1286の上下方向の幅は前後方向においてほぼ一定であり、仮想線B1よりも前方側では水平方向に延びるように形成されるが、仮想線B1より後方側は斜めに配置される。下側端子部品1280の腕部組(1285、1286)の下方には、前方側から大きく切り欠かれた切欠き部1291が形成される。このように形成した結果、上側端子部品1260の腕部1265、1266の長さ(前後方向長さであってB2よりも前方)は、下側端子部品1280の腕部1285、1286の長さ(前後方向長さであって、矢印1291位置よりも前方側)よりも長くなる。このような前後方向の長さが異なる腕部組であっても、上側端子部品1260の嵌合部における嵌合圧が、下側端子部品1280の嵌合圧と同一になることが好ましい。嵌合圧を均等にしないと電動工具本体1001、1030側の平板状の機器側端子との接触抵抗が変わって、わずかな発熱の違いが発生したり、長期にわたる使用による摩耗状況が異なる虞があるからである。本変形例では、上側端子部品1260と下側端子部品1280による嵌合圧のバランスをとるために、電池パックの非装着状態における初期隙間間隔が異なるようにした。即ち、電池パック1100が電動工具本体1001又は1030に装着されていない状態(取り外し状態)において、左右の腕部1265、1266の最小間隔が、腕部1285、1286の間隔と異なる。ここでは上側端子部品1260の腕部1265と1266の間隔が0.2mmであるのに対して、下側端子部品1280の腕部1285と1286の最小間隔が0.5mmとなるようにした。
嵌合圧を均一にするために、上側端子部品1260と下側端子部品1280の形状にも工夫を施した。即ち、図49(2)に示すように、本来なら上側端子部品1260では点線1264bのようなほぼ直角の内角を形成すべきところ、ここでは点線1264bの輪郭を矢印1264eの方向に延ばして、側面視で二等辺三角形状の補強面1264cが追加されるような形状とした。この結果、この内角部分の輪郭は矢印1264dのように斜めになり、この形状変更によって上側端子部品の腕部1265、1266の取り付け剛性が向上する。上側端子部品1260の内角部分の形状変更に合わせて、下側端子部品1280の外角部分の形状を点線1284bの部分から矢印1284eの方向に切り落とすことにより、側面視で二等辺三角形状の切り落とし部1284cを設けたような形状とした。この結果、この外角部分の輪郭は矢印1284dのようになり、下側端子部品の腕部1285、1286の剛性を低下させた。矢印1264dと矢印1284dに示す輪郭部分は、側面視で互いにほぼ平行となるように一定の間隔を離すようにそれら輪郭が決定される。尚、切り落とし部1284cを形成するとブリッジ部1282の上下方向の長さが短くなってしまう。しかしながら、下側端子部品1280は小さいため、上側端子部品1260に比べて強度的にも十分強いので、これらの形状変更でちょうど強度的なバランスがとれる。このように上側端子部品1260には補強面1264cの追加をするという内角部分の形状を変更し、下側端子部品1280には切り落とし部1284cの形成による強度調整をするという外角部分の形状を変更することで、両者の強度のバランスをとり、腕部1265と1266、1285と1286による本体側端子への嵌合圧をほぼ同等にすることができた。
図49(3)は上側端子部品1260と下側端子部品1280を正面から見た図である。腕部1265と1266の上下方向の高さや取り付け位置、及び、腕部1285と1286の上下方向の高さや取り付け位置は、図40に示した第6の実施例の上側端子部品1200と下側端子部品1220の腕部群と同じ形状、同じ位置関係となる。但し、本変形例では使用する金属板材の厚さが異なり、図40で示す第6の実施例の端子部品よりも厚板を用いて製造される。さらには、電池パック1100の非装着時の状態では、上下の腕部組の最小間隔が異なるようにした。つまり上側の腕部1265と1266の左右方向の間隔に比べて、下側の腕部1285と1286の左右方向の間隔が大きいように構成した。これは上下に並べて配置される腕部1265と1266、腕部1285と1286の、装着方向(前後方向)の長さとは逆比例させたような関係としたものである。長い腕部1265と1266は初期状態において狭い間隔で対向する。逆に短い腕部1285と1286は広い間隔で対向する。
以上のように、第1の変形例では、0.8mmの厚めの板厚の上側端子部品1260と下側端子部品1280を電力端子として用いるようにした。信号端子部品に関しては微小電流しか流れないので、従来の電池パック1015と同様に0.3mm程度の厚さの金属板にて製造すれば良い。本変形例では大電流が流れる電力端子の剛性が一層向上し、作業中だけでなく長期の使用にわたって嵌合状況を良好に維持することができた。尚、上下の腕部組の嵌合圧をほぼ同じとするには、嵌合部の隙間の調整と、取り付け根元付近の形状の変更だけに限定されずに、その他の変更、特に板厚の調整、端子部品の材料の選択等によっても達成可能である。
図50は第6の実施例の第2の変形例の上側端子部品1260と下側端子部品1280Aを示す斜視図である。第2の変形例では、図49で示した第1の変形例に対して上側端子部品1260は同一であるが、下側端子部品1280は板厚と腕部の初期間隔が異なる。即ち、下側端子部品1280Aの板厚を、図49で示した下側端子部品1280の0.8mmから0.6mmと薄くした上で、嵌合部1285dと1286dの間隔を図49で示した下側端子部品1280の0.5mmから0.2mmと狭くした。上側端子部品1260の嵌合部1265d、1266dの間隔は第1の変形例と同様に0.2mmである。このように、バネ性を有する腕部1285、1286の板厚と間隔を調整することによって、上側端子部品1260の嵌合部1265d、1266dによる嵌合圧とほぼ同等にすることができる。ここでは、嵌合部1265d、1266dの形状は、半円筒面としたもので、円筒面の中心軸が鉛直方向に位置し、嵌合部1265d、1266dの内側の壁面は、曲率半径R1となる円筒面となる。下側端子部品1280の嵌合部1285dと1286dの内側の壁面も、曲率半径R1となる円筒面となるように形成される。これら嵌合部1265dと1266d、及び、嵌合部1285dと1286dの嵌合面の円筒形状は、線状又は矩形状の接触部分の大きさや形状がほぼ同じとなるように、等しい曲率半径R1にて形成すると良い。このように接触部分や接触領域の大きさをも均一にしたことにより、挟み込む圧力(嵌合圧)をほぼ同等にするようにして、電気的な接触抵抗もほぼ同一とすると好ましい。
図51は第6の実施例の第3の変形例に係る上側端子部品1200Aと下側端子部品1220を示す斜視図であり、(1)はこれらが定格36Vの電動工具本体1030Aの本体側端子に接続された状態を示す図である。第3の変形例では、上側端子部品1200Aの形状、特に腕部1205A、1206Aの形状だけが第6の実施例と異なり、上側端子部品1200Aの基体部と脚部の構成は第6の実施例と同一である。上側端子部品1200Aは、上側正極端子1161、1162、上側負極端子1167として用いられる。上側端子部品1200Aは腕部1205A、1206Aを前方側に大きく延ばすようにして、上側の腕部1205A、1206Aの嵌合部の位置が、下側の腕部1225、1226の嵌合部の位置よりも前側に位置するようにした。対向する嵌合部の形状は、等しい曲率半径R1を有する半円筒面であって、腕部1205A、1206Aの嵌合部の形状と、腕部1225、1226の嵌合部の形状は同じである。腕部1205A、1206Aを延ばす場合は、この形状変更に対応させて36V側電動工具本体の正極入力端子1072Aも従来よりも短めにする。短絡手段としてのショートバー1079の大きさや板厚は、図41で示したショートバー1059と同じである。しかしながら、ショートバー1079の端子部1079bの上部に半円形の切り欠き1079dを形成した。この切り欠き1079dは、何らかの理由で機器側端子の正極入力端子1072Aと端子部1079bが矢印1045aのように円弧状に、又は水平方向に相対移動した場合に、端子部1079bが上側の腕部1205A、1206Aに接触することを防止する為である。このようにショートバー1079の端子部1079bに切り欠き1079dを形成したので、電池パック1100が装着されて電動工具が動作している際に、電動工具本体1030と電池パック1100の共振周波数の違いに起因する相対的な位置ずれが生じたとしても、上側端子部品1200Aと下側端子部品1220の短絡が起こる虞を大幅に減らすことができる。
図51(2)は従来の電動工具本体1001の本体側端子に接続された状態を示す図である。定格18Vの電動工具本体1001側に装着する際には、正極入力端子1022に上側正極端子1162と下側正極端子1172が跨ぐようにして接続され、2組の腕部1205A、1206Aと腕部1225、1226が嵌合する。この際、腕部1205A、1206Aの嵌合部による正極入力端子1022への接触位置が、腕部1225、1226の嵌合部による正極入力端子1022への接触位置よりも前方側にずれるようになる。しかしながらそれぞれの接触位置を含む近傍の正極入力端子1022の厚さは均一であるので、接触部または接触領域の大きさが腕部1205A、1206Aによるものと、腕部1225、1226の嵌合部によるもので均等になるならば、良好な導通状態を実現できるので、接触位置の移動は何ら問題を生じないものである。
図52は第6の実施例の第4の変形例の上側端子部品1200と下側端子部品1220Aを示す斜視図であり、(1)はこれらが電動工具本体1030Bの本体側端子に接続された状態を示す図である。第4の変形例では、下側端子部品1220Aの腕部1225A、1226Aの形状だけが第6の実施例と異なり、その他の構成は第6の実施例と同じである。ここでは腕部1225A、1226Aを前方側に延ばすようにして、下側の腕部1225A、1226Aの嵌合部の位置が、上側の腕部1205、1206の嵌合部の位置よりも前方に位置するようにした。これに対応させてショートバー1079の後端位置も従来よりも前方側にした。さらに、正極入力端子1072Bの下部に半円形の切り欠き1072dを形成した。この切り欠き1072dは、何らかの理由で機器側端子の正極端子1072Bと端子部1079bが矢印1045bに移動した場合に、切り欠き1072dを設けたことによって正極入力端子1072Bが腕部1225A、1226Aに接触する虞を大幅に減らすためである。
図52(2)は従来の電動工具本体1001の本体側端子に接続された状態を示す図である。電動工具本体1001側の正極入力端子1022に2組の腕部1205、1206と腕部1225A、1226Aが嵌合する。ここでは腕部1205、1206による接触部位の位置と、腕部1225A、1226Aによる接触部位の位置の前後方向に距離Lだけ隔てることになる。しかしながら、接触部または接触領域の大きさが腕部1205、1206によるものと、腕部1225A、1226Aの嵌合部によるもので均等にしたので、第6の実施例と同様に良好な導通状態を実現できる。
図53は第6の実施例の第5の変形例に係る電動工具本体1030A側のターミナル部の形状を示す斜視図である。第5の変形例では第6の実施例の正極端子及び負極端子の位置と、ショートバーの位置を上下逆にしたものである。ここでは、上側正極端子1162と上側負極端子1167がショートバー1089によって短絡されるようにした。ショートバー1089は、第6の実施例のショートバー1059(図41参照)と同一部品を用いることができ、電動工具本体のターミナル部の合成樹脂製の基台に鋳込まれるようにすれば良い。正極入力端子1082は、端子部1082aと、接続部1082bと、配線用端子部1082cからなる点では、第6の実施例の正極入力端子1052(図41参照)と同様であるが、配線用端子部1082cを設ける位置が、ターミナル部の上面でなく後面側にせざるを得ないので、接続部1082bと、配線用端子部1082cの形状が変更されている。同様にして、負極入力端子1087も配線用端子部1087cの位置が異なる。ターミナル部における正極入力端子1082と負極入力端子1087の位置をずらしたことに合わせて、上側セルユニット1146と下側セルユニット1147との接続状態も変更される。即ち、下側正極端子1172と上側負極端子1167に上側セルユニット1146に接続され、上側正極端子1162と下側負極端子1177に下側セルユニット1147に接続される。
以上のようにショートバー1089を設ける位置を変えても、本実施例の電圧自動切り替え機構付きの電池パックを実現できる。この構成に採用することにより、配線用端子部1082c、1087cの取り付け位置を、ターミナル部の上側に引き出す(図42参照)のではなくて、後側に引き出すことが可能となるので、電動工具本体側のターミナル部の設計の自由度が増すことになる。尚、ショートバー1089の機能は、端子部1089bと端子部1089cを有し、これらを短絡させれば達成できるので、接続部1089aの部分を金属の板で連結する必要性は無く、導電性部材にて電気的な接続関係を形成できるような方法、例えばリード線で接続する、ヒューズ素子によって接続する等の他の任意の方法で実現しても良い。
図54は本発明の第7の実施例の電池パック1400を示す斜視図である。電池パック1400には充電装置もしくは工具本体のターミナルと係合して電気的に導通する複数の接続端子が設けられる。ここで設けられる接続端子は、それぞれが上下方向に分離した2つの接続端子部品により構成されるものであり、接続端子部品の形状に特徴がある。電池パック1400の外観形状は、第6の実施例で示した電池パック1100とほぼ同じであり、外観上の唯一の違いは、上段面1415において部分的に隆起させた段差部(図47の1115a、1115b参照)が形成されない点と、下段面1411の左前側の角部に窪み部(図47の1111a参照)が形成されない点だけである。上段面1415と下段面1411の接続部分の段差部に、複数のスロット1420が配置されるが、スロット1420の幅やサイズは第6の実施例の電池パック1100とほぼ同等である。上段面の後方側には隆起部1432が形成され、隆起部1432の左右両側にはラッチ1441が設けられる。
下ケース1401の内部には10本の電池セル1446が収容される。ここでは5本を直列接続した上側セルユニットと下側セルユニットが設けられ、それらのセルユニットの並列接続の出力たる定格18Vが出力される。即ち、電池パック1400は電圧固定式である。それぞれの接続端子は、上側の端子部品と下側の端子部品の2つで1つの端子を構成している。つまり、充電用の正極端子は上側正極端子1461と下側正極端子1472により構成され、これらは短絡される。放電用の正極端子は上側正極端子1462と下側正極端子1472により構成され、これらは短絡される。尚、上側正極端子1461と下側正極端子1472の組と、上側正極端子1462と下側正極端子1472の組の間は、セルフコントロールプロテクタ(図示せず)によって接続される。
負極端子は上側負極端子1467と下側負極端子1477により構成され、これらは接続される。このように1つの接続端子を2つの接続端子部品に分けて構成したので、電動工具本体1001側の機器側端子との接触部分の個数と合計面積が大きくなり、電動工具の稼働時の振動によって生じやすい接触不良による発熱等の問題が起きにくく、長期にわたり安定して使用でき電池パック1400の長寿命化を実現できた。
接続端子のうち、信号伝達用の信号端子、即ちT端子組(上側T端子1464と下側T端子1474)、V端子組(上側V端子1465と下側V端子1475)、LS端子群(上側LS端子1466と下側LS端子1476)、LD端子群(上側LD端子1468と下側LD端子1478)もそれぞれが2つの端子にて構成され、上下の端子間は接続されて同電位とされる。T端子組、V端子組及びLD端子群は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。上側接続端子(1461〜1462、1464〜1468)と下側接続端子(1471〜1472、1474〜1478)は回路基板1450にて固定される。この回路基板には、電池セルの保護用のICが搭載されるが、マイコンや電池残量表示用の発光ダイオードは設けられない。
図55は、図54の接続端子の一部拡大図である。上側端子部品(1465〜1468)と下側端子部品(1476〜1478)は共に側面視で略L字状であって、上下の端子部品の脚部が装着方向に並ぶようにして回路基板1450に固定される。この固定方法は、図39、図40で示した第6の実施例と同様の方法であって、脚部を回路基板1450の取付孔に貫通させて、回路基板1450の裏側から半田付けを行う。上側端子部品(1465〜1468)と下側端子部品(1476〜1478)のそれぞれには、両側腕部の一部の間隔が狭くなるように略V字状に曲げられた嵌合部が形成される。従来の電池パックにおける嵌合部は、略V字状の山部分が、機器側端子の挿入方向と直交するように配置されている。つまり、従来の端子部品では略V字状の山部分(例えば嵌合部1478cで示す部分の内面側頂点部分)の稜線が、上下に延びるように構成されている。しかしながら第7の実施例では、その稜線の延びる方向を上下方向で無くて、斜めになるように形成したので、板状の本体側端末と端子部品との嵌合部との接触部位の長さを長くできた。
図56(1)は、上側端子部品1480を示す斜視図である。但し、上側端子部品1480の脚部の図示は省略しており、回路基板1450の上側に位置する部分だけを図示している。上側端子部品1480は導電性の金属からなる平板をプレス加工によって切り抜いたのちに、U字形に曲げるとともに腕部に所定の曲げ形状を形成したものである。ここでは、U字状の底部となる面、即ちブリッジ部1482が後方側になるように折り曲げられ、鉛直方向に延びるブリッジ部1482の左右両側から前方側に右側側面1483と左側側面1484が形成される。右側側面1483と左側側面1484は左右面対称となるように形成され、右側側面1483と左側側面1484は一定の間隔の平行な面となる。右側側面1483と左側側面1484の上部の前辺から前方側には左右の腕部1485と1486が形成され、腕部1485と1486の付け根部分、即ち平面部1485a、1486aは右側側面1483と左側側面1484と左右方向が同一位置となる平行面である。平面部1485a、1486aの前方側では、内側に向けて曲げられた曲げ部1485b、1486bが形成される。曲げ部1485b、1486bは平面状であるが、大きな外側に向いた折り曲げ部は、その山の稜線が斜めになるように配置される。
曲げ部1485b、1486bの前方には、略V字状に山折りするようにした嵌合部1485c、1486cが形成される。嵌合部1485c、1486cは内側に向けて凸状になる部分である。電池パック1100の装着時には、嵌合部1485c、1486cの内側の山頂部分が板状の機器側端子と接触し、摺動する部分である。従って、略V字状であってもその頂き部分(山頂部分)は大きな曲率半径R1又は小さめの曲率半径によって構成する。これは摺動時には機器側端子と嵌合部1485c、1486cの摺動抵抗が小さく、非摺動かつ接触時には、嵌合部1485c、1486cとの接触面積が大きめとして電気的な接触抵抗を小さくするためである。嵌合部1485c、1486cの前方側には、板状の機器側端子を嵌合部1485c、1486c間に挿入するのを案内するための案内部1485d、1486dが接続される。案内部1485d、1486dは略平面状であって前方側に行くにつれて左右方向に広がるような形状とされる。このため腕部1485、1486の先端部1485e、1486eは腕部1485、1486の下方に位置するような形状とされる。先端部1485e、1486eは、小さな曲率半径を描くように角部を丸く形成した。
図56(2)は、嵌合部1485c、1486cにおける機器側端子との接触部位の位置関係を説明するための図である。ここでは左側の腕部1486部分だけを示しているが、右側の腕部1485も面対称になるだけで形状は同様である。腕部1486は高さ方向の幅Wが前後方向に向かうについて一定であるが、嵌合部1486cの接触部位は太線で示す位置になる。この太線で示す接触部位は、線状の接触部、又は幅の細い矩形状の接触領域となる。太線で示す接触部位は鉛直線上に嵌合部1486cを形成する場合の長さ(=W)に対して、接触長はW/cosθ倍となる。このように嵌合部1486cの接触部又は接触領域の長手方向が、機器側端子との接触面において機器側端子の装着方向に対して斜めになるように配置したので、接触部又は接触領域を大きくすることができ、電動工具本体側の機器側端子との接触面積を広くすることができる。この結果、機器側端子と嵌合部1486cの接触抵抗を小さくすることができ、接触抵抗の増大に起因した端子の発熱を効果的に抑制できる。また、機器側端子との間のアークの発生を抑制できるので、腕部1485、1486の損傷や溶断を防止することができる。尚、電力端子となる上側正極端子1461、1462、下側正極端子1471、1472に関しては、第6の実施例と同様にして上側セルユニット1146と下側セルユニット1147の正極端子をそれぞれ接続するようにして、第6の実施例と同様に低電圧側と高電圧側を切り替えることができるようにした電池パックに適用しても良い。その場合は、第6の実施例で説明した上側端子部品1200(図40参照)と下側端子部品1220(図40参照)の嵌合部において、第7の実施例の腕部及び嵌合部の形状を適用すれば良い。
信号伝達用の端子(図54(2)の上側端子部品1464〜1466、1468と下側端子部品1474〜1476)に関しても上下に2段の嵌合部にて形成し、これらは同電位として同じ信号を流すように構成した。しかしながら、信号端子の上下部分は、別電位として電動工具本体側の機器側端子も同様に分離して形成することにより、伝達される信号の数を増やすように構成しても良い。また、信号伝達用の端子に関しては、上下に完全分離された端子部品を使う必要性は小さいので、上下に連結された端子部品として形成しても良い。次に上下に連結された端子部品1500の形状を図57にて説明する。
図57は、端子部品1500の形状を示す斜視図である。但し、端子部品1500の脚部の図示は省略しており、回路基板1450の上側に位置する部分だけを図示している。端子部品1500は、腕部1505の前方側約半分において、腕部1505を上下に分割する切欠き溝1508を形成したことにより上側の腕部片1506と下側の腕部片1510を形成した。同様に、左側の腕部1509の前方側約半分において、腕部1509を上下に分割する切欠き溝1512を形成したことにより上側の腕部片1507と下側の腕部片1511を形成した。このように切欠き溝1508、1512により上側の腕部片1506、1507と下側の腕部片1510、1511に分けたので、1つの端子部品1500において2組の腕部組を有する構成が実現でき、良好な嵌合状態を保つことができる信号端子を実現できる。上側の端子組(1507、1507)と、下側の端子組(1510、1511)にはそれぞれ、板状の本体側接続端子と嵌合するための嵌合部(1506c、1507c)と嵌合部(1510c、1511c)が形成される(但し図57では嵌合部1510cは見えない)。上側の嵌合部(1506c、1507c)は接触部又は接触領域の長手方向が斜めに配置される。同様にして下側の嵌合部(1510c、1511c)は接触部又は接触領域の長手方向が斜めに配置される。上側と下側の嵌合部の接触部又は接触領域の長手方向は、一列に並ぶように配置される。尚、上側と下側の嵌合部を前後方向にみて同位置になるように配置させて、上側と下側の嵌合部の接触部又は接触領域の長手方向は、一列に並ばないように配置しても良い。また、上側と下側の嵌合部の長手方向の傾きの向きを合わせないで、逆方向の向きにしても良い。例えば、上側の腕部組(1506、1507)の形状を変更して、下側の端子組(1510、1511)を上下反転させたような形状、つまり水平面に対して面対称の形状としても良い。以上のように嵌合部の接触領域の長手方向を鉛直方向でなくて斜めの方向になるように形成することにより、嵌合部を装着方向と直交させる従来例に比べて嵌合部の長さを長くすることができるので、接触抵抗を低減させることができる。
以上、第7の実施例では電圧固定式の電池パックに用いられる接続端子の形状(1480、1500)を説明したが、これらの端子形状を第6の実施例のような電圧切替式の電池パックに適用するように構成しても良い。例えば図57に示す端子部品1500の嵌合部の配置は、図44で示した信号端子部品1240に採用しても良い。
図58は実施例8の電池パック2100の展開斜視図である。電池パック2100の筐体は、上下方向に分離可能な上ケース1110と下ケース1101によって形成され、下ケース1101の内部空間には、10本の電池セルが収容される。下ケース1101の前方側壁面には、上ケース1110とのネジ止め用に2つのネジ穴1103a、1103bが形成され、下から上方向にネジ穴1103a、1103bを貫通するようにして図示しないネジが通される。下ケース1101の後方側壁面にも2つのネジ穴1103c(図では見えない)、1103dが形成される。複数の電池セル(図示せず)は、5本ずつ2段にスタックさせた状態で、合成樹脂等の不導体で構成されたセパレータ2445にて固定される。セパレータ2445は電池セルの両端部となる左右両側だけが開口するようにして複数の電池セルを保持する。
セパレータ2445の上側には、回路基板2150が固定される。回路基板2150は複数の接続端子(2161、2162、2164〜2168、2171、2172、2177)を半田付けによって固定すると共に、これら接続端子と図示しない回路パターンとの電気的な接続を行う。回路基板2150にはさらに、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ、ヒューズ、発光ダイオード等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板2150の材質は、素材に対して絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔など導電体によってパターン配線を印刷したプリント基板と呼ばれるものであり、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。本実施例では、両面基板を用いて回路基板2150の上面(表面であって図58から見える上側の面)と下面(裏面)に配線パターンが形成される。回路基板2150の前後方向の中央よりもやや前側には、接続端子群配置領域2160が設けられ、そこに複数の接続端子(2161、2162、2164〜2168、2171、2172、2177)が横方向に並べて固定される。
正極端子(2161、2162、2171、2172)と負極端子(2167、2177)は、左右方向に大きく離れた箇所に配置され、それらの間には3つの信号端子(T端子2164、V端子2165、LS端子2166)が設けられる。3つの信号端子(T端子2164、V端子2165、LS端子2166)は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。本実施例では電力端子用の部品として、水平方向に延びる腕部が上側の左右に1組、下側の左右に1組の合計2組設けられたものを用いるが、その詳細形状は図49で説明した構造と同一である。尚、信号端子(2164〜2166、2168)に関しては、従来から用いられるような腕部が上下方向に1つの信号端子部品をそのまま用いることも可能である。しかしながら、本実施例では正極端子(2161、2162、2171、2172)と負極端子(2167、2177)における機器側端子との嵌合状態と同等にするために、信号端子側においても上下に2つの腕部を有する信号端子部品(図44参照)を用いるようにした。
負極端子対(2167、2177)の左側にはLD端子2168が設けられる。LD端子2168は、電池パック2100に関する情報又は信号を出力する信号端子として機能する。LD端子2168も上側と下側の2組の腕部を有するように形成される。すべての信号端子(2164〜2166、2168)は、回路基板2150の形成された複数の取付孔2151にそれぞれの脚部を表面から裏面にまで貫通させて、裏面側で半田付けにより固定される。本実施例では3つの信号端子(2164〜2166)の固定方法は図44及び図45で説明した通りである。以上のように、回路基板2150上に図示しない電子素子が搭載され、複数の接続端子が半田付けにより固定されたあとに、図68にて後述する基板カバー2180が設けられ、回路基板2150の表面を樹脂にて固めた後に図示しないネジによってセパレータ2445に固定される。尚、図58では基板カバー2180の図示を省略している。
下ケース1101は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面と、底面に対して鉛直方向に延びる前面壁1101a、後面壁1101b、右側側壁1101c、左側側壁1101dにより構成される。下ケース1101の内部空間はセパレータ2445を収容するのに好適な形状とされ、セパレータ2445を安定して保持するために底面内側に形成される多数の固定用リブ1102や、壁面を補強ために鉛直方向に連続するように形成される多数のリブ1105が形成される。前面壁1101aのほぼ中央には、スリット1104が設けられる。上ケース1110のスリット1134は、充電装置にて充電を行う際に電池パック2100の内部空間に充電装置側から送出される冷却風を流入させるための流入口として用いられ、下ケース1101のスリット1104は冷却風の排出口として用いられる。
電池セル側からの出力の回路基板2150との接続は、上方向に板状に延びる接続用の引出しタブ2461a、2466a、2471a、2476aを介して行われる。また直列接続された電池セルの中間接続点からのリード線の端部2494b、2496b〜2499bが上方向に延びるように配置され、回路基板上に半田付けされる。さらに、直列接続された電池セルの中間接続点からの中間引出しタブ2462a、2463aが回路基板2150に接続されるべく、上方向に延びるように配置される。セパレータ2445の上側には、回路基板2150を固定する為のネジボス2447a、2447bが形成される。
次に図59の展開斜視図を用いてセパレータ2445を用いた電池セルのスタック状況および配線方法を説明する。セパレータ2445は10本の電池セル2146a〜2146e、2147a〜2147eを5本ずつ、上下2段にスタックしたものである。図59では電池セル2146a〜2146e、2147a〜2147eがセパレータ2445から引き出された状態を示しているが、組立時にはセパレータ2445の円筒状の空間2446内に挿入され、セパレータの左右両側に露出した端子間に、接続板2462〜2465、2472〜2475にて相互に接続され、引出し板2461、2466、2471、2476が電池セルに接続される。その後に、絶縁のために絶縁シート2482a、2482bが接続板2462〜2465、2472〜2475や引出し板2461、2466、2471、2476の上に貼り付けられる。
各電池セルの軸線はそれぞれ平行になるように積み重ねられ、隣接するセルの向きを交互に逆になるように配置して、隣接する電池セルの正極端子と負極端子を金属製の接続板2462〜2465、2472〜2475を用いて接続される。電池セルの両側端子と接続板2462〜2465、2472〜2475は、複数箇所のスポット溶接によって固定される。ここでは上段に設置された5本の直列接続された電池セルが上側セルユニット2146(図61にて後述)を形成し、下側に設置された5本の直列接続された電池セルが下側セルユニット2147(図61にて後述)を形成する。尚、ここでいうセルユニットの上側、下側とは、電池セルが下ケース1101内の上段にあるか下段にあるかという物理的な位置を指すのでは無くて、2つのセルユニットを直列接続した際に、グランド側に位置する方のセルユニットを“下側セルユニット”と呼び、直列接続した際に高い電圧側に位置する方のセルユニットを“上側セルユニット”と呼ぶものであり、電気的な電位を基準としている。本実施例の電池パックでは上側セルユニット2146が上段に配置され、下側セルユニット2147が下段に配置されているが、この配置に限られず、電池セルの配置方法は上段と下段に分けずに前側と後側に分けるようにしても良い。
電池セル2146a〜2146e、2147a〜2147eは、18650サイズと呼ばれる直径18mm、長さ65mmの複数回充放電可能なリチウムイオン電池セルが用いられる。本実施例では電池パック2100からの出力電圧を切り替え可能とするために、複数のセルユニットの直列接続電圧(高電圧側出力)と、並列接続電圧(低電圧側出力)の形態が選択可能とされる。従って、本発明の思想に従えば、各セルユニットにおいて直列に接続されるセルの本数を等しくすれば、セルユニットの数は任意である。使用する電池セルは18650サイズだけに限られずに、いわゆる14500、21700サイズの電池セルや、その他のサイズの電池セルであっても良い。また電池セルの形状は円筒形だけに限られずに、直方体のもの、ラミネート形状のもの、その他の形状であっても良い。電池セルの種類はリチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。電池セルの長さ方向の両端には2つの電極が設けられている。2つの電極のうち、一方は正極であり他方は負極であるが、電極を設ける位置は両端側だけに限定されるもので無く、電池パック内で容易にセルユニットが形成できるならば任意の電極配置で良い。
上側セルユニット2146の正極は、引出しタブ2461aが形成された引出し板2461を用いて回路基板2150に接続され、上側セルユニット2146の負極は、引出しタブ2466aが形成された引出し板2466を用いて回路基板2150に接続される。同様にして下側セルユニット2147の正極は、引出しタブ2471aが形成された引出し板2471を用いて回路基板2150に接続され、下側セルユニット2147の負極は、引出しタブ2476aが形成された引出し板2476を用いて回路基板2150に接続される。セパレータ2445の上面には、金属の薄板を折り曲げた形状の引出し板2461、2466、2471、2476のタブを保持するためのタブホルダ2450〜2452、2455〜2457が形成される。タブホルダ2450〜2452、2455〜2457は、L字状に折り曲げられた引出しタブ2461a、2462a、2463a、2466a、2471a、2476aを保持するために形成されるタブ保持部であり、セパレータ2445の成形時に座面、背面、両側側面を有する凹部として一体成形され、この凹部に引出しタブ2461a、2462a、2463a、2466a、2471a、2476aがそれぞれ嵌め込まれる。セパレータ2445の上部には回路基板2150をネジ止めするための2つのネジボス2447a、2447bが形成される。引出し板2461、2471と接続板2463、2465、2473、2475の右側は絶縁シート2482aにて覆われ、引出し板2466、2476と接続板2462、2464、2472、2474の左側は絶縁シート2482bにて覆われる。絶縁シート2482aは電気を通さない材質であって、その内側部分はシール材が塗布されている。
次に図60を用いて、2組の電力端子の形状を説明する。図60は図58に示した回路基板2150の部分図であり、回路基板2150に固定された正極端子対(上側正極端子2162と下側正極端子2172)と、負極端子対(上側負極端子2167と下側負極端子2177)だけを図示したものである。出力用の正極端子は、電気的に独立したものであって、並列正極端子群となる上側正極端子2162と下側正極端子2172が、回路基板2150の取り付け位置で見て前後方向に並ぶように配置される。これらは互いに近接して配置される複数の端子(2162、2172)であって、電圧の切替え用に使用される切替端子群として機能する。上側正極端子2162と下側正極端子2172は、それぞれが前方側に延在する腕部組(腕部2162aと2162b、腕部2172aと2172b)を有する。ここでは腕部2162a、2162bと腕部2172a、2172bが上下方向に離れた位置であって、その嵌合部の前後方向位置がほぼ同一となるような形状とされる。これら正極端子対(2162、2172)は、単一のスロット1122内に配置される。負極端子対も、正極端子対の形状と同じであって、脚部でみて前後方向に隣接して配置された並列負極端子群たる上側負極端子2167と下側負極端子2177により構成され、これら負極端子対(2167、2177)が単一のスロット1127の内部に配置される。これらは互いに近接して配置される複数の端子(2167、2177)であって、電圧の切替え用に使用される正極用の切替端子群と負極用の切替端子群として機能する。よって正極端子対(上側正極端子2162と下側正極端子2172)は、並列正極端子対として機能し、さらに正極用の切替端子群としても機能する。負極端子対(上側負極端子2167と下側負極端子2177)は、並列負極端子対として機能し、さらに負極用の切替端子群としても機能しする。そして正極端子対(上側正極端子2162と下側正極端子2172)と負極端子対(上側負極端子2167と下側負極端子2177)により、電圧切替要素が構成される。スロット1127の内部では、上側に上側負極端子2167の腕部組が配置され、上側負極端子2167の腕部組の下側に下側負極端子2177の腕部組が配置される。尚、図60では図示していないが、放電用の正極端子対(上側正極端子2162と下側正極端子2172)の右側には、充電用の正極端子対(上側正極端子2161と下側正極端子2171:図58参照)が配置される。充電用の正極端子対(2161、2171)の形状は、上側正極端子2162と下側正極端子2172と同形状である。
次に図61を用いて電池パック2100を図36に示した電動工具本体1001、1030に装着した際の、電動工具本体1001、1030側のターミナル部2020の形状と、電池パック2100の接続端子との接続状態を説明する。図61(1)は、電池パック2100を36V用の電動工具本体1030に装着した状態を示す図である。回路基板2150には正極端子対(正極端子群)としての上側正極端子2162と下側正極端子2172が、取付け部分(脚部)でみて電池パック2100の装着方向に並べて配置される。同様にして、上側負極端子2167と下側負極端子2177が、取付け部分(脚部)でみて電池パック2100の装着方向に並べて配置される。前述したように電池パック2100の内部には10本の電池セルが収容され、そのうちの5本が上側セルユニット2146を構成し、残りの5本が下側セルユニット2147を構成する。電動工具本体1030は上側正極端子2162と上側負極端子2167と嵌合することによって駆動部1035を動作させる。この際、電動工具本体1030に設けられているショートバーが、点線2059で示す電気的接続回路を形成するので、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147は直列接続状態となる。つまり、上側セルユニット2146の負極が下側セルユニット2147の正極と接続され、電池パック2100の正極出力として上側セルユニット2146の正極が接続され、負極出力として下側セルユニット2147の負極が接続される。このようにして、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の直列出力、即ち定格36Vが出力されることになる。
図61(2)は、電池パック2100を18V用の電動工具本体1001に装着した状態を示す図である。18V用の電動工具本体1001には、上側正極端子2162と下側正極端子2172と同時に嵌合させる大きさの正極入力端子(図63にて後述)が設けられる。同様にして、上側負極端子2167と下側負極端子2177と同時に嵌合させる大きさの負極入力端子(図63にて後述)が設けられる。つまり、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の正極同士が接続された状態にて正極出力とされ、上側セルユニット2146とが下側セルユニット2147の負極同士が接続された状態にて負極出力とされる並列接続状態となる。この結果、電動工具本体1001に接続されると自動的に定格18Vが出力されることになる。このように電池パック2100の電圧の切替をおこなう切替端子群(2162、2167、2172、2177)との接続関係を変更することにより、電池パック2100から得られる出力電圧を切り替えることが可能となった。
図62は(1)は本実施例の電動工具本体1030のターミナル部2050の斜視図であり、(2)はショートバー2059単体の斜視図であり、(3)はターミナル部2050と電池パック2100の電力端子との接続方法を示す図である。定格36Vの電動工具本体1030のターミナル部には、電力用の入力端子として、受電用の正極入力端子2052の端子部2052aと、負極入力端子2057の端子部2057aが小さく形成されて上側に設けられる。装着時において、正極入力端子2052の端子部2052aは上側正極端子2162だけに嵌合し、負極入力端子2057の端子部2057aは上側負極端子2167だけに嵌合する。一方、電動工具本体1030のターミナル部には、下側正極端子2172と下側負極端子2177を短絡させるショートバー2059(2059a、2059b)が設けられる。図62(2)に図示されるように、ショートバー2059は金属製の導電部材からなる短絡子であって、コの字形状に曲げられた部材である。ショートバー2059の接続部2059aの一端側に端子部2059bが形成され、端子部2052aの下側に配置される。ショートバー2059の接続部2059aの他端側に端子部2059cが形成され、端子部2059cは端子部2057aの下側に配置される。端子部2059bは下側正極端子2172と嵌合し、端子部2059cは下側負極端子2177と嵌合する。ショートバー2059は、正極入力端子2052や負極入力端子2057等の他の機器側端子と共に合成樹脂製の基台2051(図49参照)に鋳込まれるようにして固定される。この際、ショートバー2059は他の金属端子(2052、2054〜2058)とは接触しない。また、ショートバー2059は、下側正極端子2172と下側負極端子2177を短絡させるためだけに用いられるため、電動工具本体の制御回路等への配線をする必要はない。
正極入力端子2052は、上側負極端子2162と嵌合する部分であって平板状に形成された端子部2052aと、電動工具本体1030側の回路基板側との結線を行うリード線を半田付けするための配線部2052cと、端子部2052aと配線部2052cとの間を接続すると共に合成樹脂製の基台2051に鋳込まれる連結部(図では見えない)により形成される。負極入力端子2057も正極入力端子2052と同様であって、端子部2057aの高さが、他の端子部(2054a〜2056a、2058a)に比べて半分程度又は半分より小さい程度の大きさとされる。他の端子部(2054a〜2056a、2058a)は信号伝達用の端子であって、配線部2054c〜2056c、2058cを介してリード線(図示せず)により電動工具本体1030側の制御回路基板に接続される。ターミナル部2050の合成樹脂製の基台2051の前側と後側には、ハウジングによって挟持されるための凹部2051bと2051cが設けられる。
図62(3)において、電池パック2100を装着する際には、電池パック2100を電動工具本体1030に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子2052と端子部2059bが同一のスロット1122(図38参照)を通って内部まで挿入され、上側正極端子2162と下側正極端子2172にそれぞれ嵌合される。このとき、正極入力端子2052が上側正極端子2162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子2162の腕部2162aと2162bの間に圧入され、ショートバー2059の端子部2059bが下側正極端子2172の腕部2172aと2172bの間を押し広げるようにして圧入される。同様にして、負極入力端子2057と端子部2059cが同一のスロット1127(図38参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子2167と下側負極端子2177に嵌合される。この際、負極入力端子2057の端子部2057aが嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子2167の腕部2167aと2167bの間に圧入される。さらに、ショートバー2059の端子部2059cが下側負極端子2177の腕部2177aと2177bの間を押し広げるようにして圧入される。このようにして電池パック2100が電動工具本体1030に接続された状態において、正極端子(2162)と正極入力端子(2052)が第1スロット(スロット1122)を介して接続され、負極端子(2167)と負極入力端子(2057)が第2スロット(スロット(1127)を介して接続され、これらの電圧切替要素と、切替素子たるショートバー2059が第1及び第2スロットを介して係合する。また電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子、正極入力端子、負極端子、負極入力端子、電圧切替要素及び切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置に配置される。
端子部2052a、2057a、2059b、2059cの板厚は、各腕部の嵌合部の初期隙間(電池パック2100が装着されていない時の隙間)よりもわずかに大きいので、端子部2052a、2057a、2059b、2059cの各々と上側正極端子2162、下側正極端子2172、上側負極端子2167、下側負極端子2177との嵌合点に所定の嵌合圧力が作用する。このような接続の結果、電動工具本体1030の機器側端子(端子部2052a、2057a、2059b、2059c)と、電池パックの電力端子(上側正極端子2162、下側正極端子2172、上側負極端子2167、下側負極端子2177)は電気的な接触抵抗が小さくなるような状態にて良好に接触する。このようにして電動工具本体1030は、電池パック2100(図58参照)の単一のスロット(1122)に挿入されて第1及び第2の端子(2162、2172)のうち第1の端子(2162)のみに接続される第3の端子(2052a)と、単一のスロット(1122)に挿入されて第2の端子(2172)のみに接続される第4の端子(2059b)と、を有し、電池パック2100が電動工具本体1030に接続されると、単一のスロット1121内で、第1及び第3の端子(2162と2052a)が互いに接続されてともに第1の電位となり、第2及び第4の端子(2172と2059b)が互いに接続されてともに第1の電位とは異なる第2の電位となる。負極端子対(2167、2177)側でも同様に接続状態となるため、図62(3)の接続形態の実現によって、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の直列接続の出力、即ち定格36Vが電池パック2100から出力されることになる。
一方、従来の18V用の電動工具本体1001に電池パック2100が装着された際には、図63のような接続関係となる。電池パック2100が電動工具本体1001に取り付けられるときは、並列接続用の正極入力端子2022の端子部2022aは、上側正極端子2162と下側正極端子2172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子2022の端子部2022aの上側一部の領域が上側正極端子2162と接触し、下側一部の領域が下側正極端子2172と接触する。このように正極入力端子2022が上側正極端子2162と下側正極端子2172を跨ぐようにして接続され、端子部2022aを上側正極端子2162の腕部2162a、2162bと下側正極端子2172の腕部2172a、2172bに同時に嵌合させることによって、2つの正極端子(2162と2172)が短絡状態となる。同様にして並列接続用の負極入力端子2027が上側負極端子2167と下側負極端子2177を跨ぐようにして接続され、端子部2027aは、上側負極端子2167と下側負極端子2177の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、負極入力端子2027の端子部2027aの上側一部の領域が上側負極端子2167と接触し、下側一部の領域が下側負極端子2177と接触する。このように端子部2027aを上側負極端子2167の腕部2167a、2167bと下側負極端子2177の腕部2177a、2177bに同時に嵌合させることによって、2つの負極端子(2167と2177)が短絡状態となり、電動工具本体1001には上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の並列接続の出力、即ち定格18Vが出力される。正極入力端子2022の端子部2022aと負極入力端子2027の端子部2027aは一定の厚みを有する金属板からなる。従って、上側正極端子2162、上側負極端子2167の腕部による嵌合圧と、下側正極端子2172、下側負極端子2177の腕部による嵌合圧を同等とすることが重要である。
以上のように本実施例の電池パック2100は、並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素を上側正極端子2162と上側負極端子2167、下側正極端子2172と下側負極端子2177にて実現したので、18V用の電動工具本体1001か36V用の電動工具本体1030のいずれかに装着することにより、電池パック2100の出力が自動的に切り替わるように構成できた。この構成により複数電圧に対応した使い勝手の良い電池パック2100を実現できた。この電圧切り替えは電池パック2100側にて行うのではなくて、電動工具本体1001、1030側のターミナル部の形状によって自動的に行われるので、電圧設定ミスが生ずる虞が全くない。また、電池パック2100側には、機械的なスイッチのような専用の電圧切替機構を設ける必要が無いので、構造が単純で故障の虞が低く、長寿命の電池パックを実現できる。この下側正極端子2172と下側負極端子2177を短絡させるショートバー2059は、18V用電池パックの既存のターミナル部2020と同スペース内に実装できるため、従来と互換性のある大きさで電圧切替式の電池パックが実現できる。さらに、外部の充電装置を用いて充電を行う際には、図63(2)のような接続方法にて充電することが可能なので、高電圧/低電圧の双方の充電をおこなうような充電装置を準備する必要が無い。
電池パック2100を外部充電装置(図示せず)を用いて充電する場合は、従来の18V用電池パックと同じ充電装置にて充電が可能である。その場合の充電装置のターミナルは図63(1)と同等の形状となるが、放電用の正極端子(2162、2172)の代わりに、充電用の正極端子(上側正極端子2161、下側正極端子2171)が充電装置(図示せず)の正極端子に接続されることになる。その際の接続状況も図63(2)に示す接続関係とほぼ同等である。このように、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147を並列接続させた状態として18V用の充電装置を用いて充電を行うので、本実施例の電池パック2100を充電するにあたって、新しい充電装置を準備しなくて済むという利点がある。
図64は図59に示した部品を組み立てた後のセパレータ2445の側面図であり、(1)は右側面図であり、(2)は左側面図である。ここでは説明上の容易さから、接続端子群は、放電用の正極端子(2162、2172)と、負極端子(2167、2177)の2組だけを図示し、その他の接続端子(2161、2164〜2166,2168、2171)の図示を省略している。上側セルユニット2146は上段側に配置された電池セル2146a〜2146eにより構成され、正極側の引出し板2461から上方に延びる引出しタブ2461aと、負極側の引出し板2466から上方に延びる引出しタブ2466aにて回路基板2150に接続される。回路基板2150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、引出しタブ2461a、2466aの上部が回路基板2150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板2150と引出しタブ2461a、2466aとの電気的な接続が行われる。同様にして、下側セルユニット2147は下段側に配置された電池セル2147a〜2147eにより構成され、両端に設けられた引出し板2471、2476から上方に延びる接続用の引出しタブ2471a、2476aにて回路基板2150に接続される。回路基板2150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、引出しタブ2471a、2476aの上部が回路基板2150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板2150と引出しタブ2471a、2476aとの電気的な接続が行われる。
図64(1)に示す接続板2463には上方に延びる中間引出しタブ2463aが設けられ、図64(2)に示す接続板2462には上方に延びる中間引出しタブ2462aが設けられる。中間引出しタブ2462a、2463aは、上段側に配置される接続板2462、2463から上側に板状部材を延ばして、回路基板2150に沿って内側に折り曲げ、再度上側に折り曲げることによって中間引出しタブ2462a、2463aを形成した金属の薄板の折曲体である。回路基板2150にはスリット状の貫通孔(図示せず)が開けられ、その貫通孔を下側から上側まで貫通させて、中間引出しタブ2462a、2463aの上部が回路基板2150の表面から上側に露出する。中間引出しタブ2462a、2463aは回路基板2150に半田付けすることにより固定される。中間引出しタブ2462a、2463aの幅(前後方向の距離)は、引出しタブ2461aや引出しタブ2466aの幅(前後方向長さ)よりも小さく形成される。これは引出しタブ2461a、2466a、2471a、2476aは電力の出力用の端子であって大電流が流れる端子であるのに対して、中間引出しタブ2462a、2463aは中間電位の測定用に接続される端子であり、わずかな電流しか流れないためである。上段側に設けられるその他の接続板2464と接続板2465にも中間引出しタブを形成することも可能である。しかしながら、ここでは配線パターンの形成の関係から、接続端子2464a、2465aを設けて図示しないリード線にて回路基板2150と接続することにした。下段側に設けられる接続板2472〜2475については、引出しタブによる回路基板2150との接続が困難であるため、接続端子2472a〜2475aを設けてリード線2496〜2499にて回路基板2150と接続するようにした。
図65はセパレータ2445に回路基板2150を固定した状態を示す斜視図であって、左前上方より見た状態を示す。回路基板2150にはスリット状の貫通孔2152c、2152bの上部が回路基板2150の表面から上側に露出する。その部分を半田付けすることにより、回路基板2150と引出しタブ2471a、2476aとの電気的な接続が行われる。以上のようにして上側セルユニット2146の電池セル2146a〜2146eは直接接続され、下側セルユニット2147の電池セル2147a〜2147eは直列接続されるが、接続板2462〜2464及び接続板2472〜2474の電位を測定するためのリード線2496〜2499(但し図65では2497、2499は見えない)が接続される。図58に示したリード線の端部2494b、2496b、2497b、2498b、2499bは回路基板2150に半田付けされる。これらリード線は、回路基板側の半田付けを先にして、回路基板2150をセパレータ2445に固定した後にリード線の端部2494b、2496b、2497b、2498b、2499bとは反対側の端部を、接続板2464、2465、2472〜2475に半田付けをする。一方、回路基板2150に近接している接続板2462、2463は、リード線を用いて回路基板2150に接続するのでは無くて、L字状に折り曲げられ、垂直板部分が上方に延びる中間引出しタブ2462a、2463aを用いて直接接続される。
上側セルユニット2146の出力(+出力、−出力)用の引出しタブ2461a、2466aは正面視又は後面視で略L形形状となるような形状とされ、その長手方向は略長方形の回路基板2150の長辺と平行になるように配置される。引出しタブ2461a、2466aは、引出し板2461、2466の電池セルの端子に固定された面を上側に延ばして内側に折り曲げ、セパレータの上面を水平方向内側に少し延ばして、適当な箇所で上方向にL字状に折り曲げることにより、折り曲げた鉛直壁部分を引出しタブ2461a、2466aとした、金属の薄板の折曲体である。しかしながら、下段に配置した電池セルからは、上段に電池セル用の電極が位置するため、同様の引き出し方法は採用できない。採用することも不可能ではないが、上側セル部分の電極に配置される接続タブの上に引出板を重ねることになり、十分な絶縁性を確保する必要があるからである。そこで、本実施例では下側セルの端子面2471b(図64(1)も参照)からの引出し板2471を前方側に延ばしてから左側に直角に折り曲げて側面部2471cを形成し、側面部2471cを上側に延ばす。つまり、引出し板2471をセパレータ2445の上面視で短辺側となる側面を這わせて上方向に延ばし、セパレータ2445の前側側面から後方側に折り曲げて水平面部2471dを形成し、水平面部2471dを上側に直角にタブ状に延ばして引出しタブ2471aを形成した。引出しタブ2471aは回路基板2150に形成されたスリット状の貫通孔2152cを裏面から表面まで貫通させ、半田付けされる。引出しタブ2471a、2476aの長手方向は略長方形の回路基板2150の短辺と平行になるように配置される。このように形成することによって、下段側の電池セルからの引出し板2471を、上段側の電池セルの引出し板に干渉することなく配置することができる。
下段のマイナス端子からの引出し板2476も同様の方法で引き出され、引出しタブ2476aまで引き出される。このように、セパレータを左右両側側面だけでなく、前側側面及び後側側面を利用して上方向に引き出すことによって、下段に配置された電池セルからの出力を、上段の電池セルの上側部分、即ちセパレータの上面部にまで効率良く引き出すことができる。本実施例では引出し板2471には、点線にて示す部分から左側に延びるようにして表面積を拡大した面とした放熱部2471hがさらに形成される。これは、引出し板2471が金属の薄板にて形成されるため、これを利用して温度上昇した電池セルを冷やすために形成したものである。放熱部2471hの設けられる位置は、ちょうど下ケース1101のスリット1104(図58参照)に対向する位置であるので放熱面では有利である。尚、電池セルの温度上昇が問題にならない場合は、引出し板2471の点線よりも左側部分(放熱部2471h)を設ける必要はない。引出し板2471にはさらに、接続経路の幅を大きく絞った部分、即ちヒューズ部2471eを形成した。ヒューズ部2471eは、引出し板2471の右側から切り抜き部2471fを形成し、左側から切り抜き部2471gを形成して残りの部分の幅(左右方向幅)を十分狭くしたもので、この部分によって引出し板2471に電力ヒューズとしての機能を持たせた。ヒューズ部2471eに規定電流以上が所定時間以上流れた場合は、ヒューズ部2471eが最初に溶断することにより電池パック2100からの出力経路の一方(下段のセルユニットからの出力)を遮断する。同様のヒューズ機能は、上側セルユニット2146のプラス端子からの引出し板2461(図64(1)参照)の引出しタブ2461aの近傍にも同様に設けられる。隣接する電池セルの電極間を接続するための長円状の接続板2462、2464、2473、2474は、ステンレス等の金属の薄板にて形成され、電池セルに対してスポット溶接をすることで固定される。
上側セルユニット2146は、プラス出力用として引出しタブ2461aが設けられ、マイナス出力用として引出しタブ2466aが設けられる。また、下側セルユニット2147は、プラス出力用として引出しタブ2471aが設けられ、マイナス出力用として引出しタブ2476aが設けられる。本実施例では引出しタブ2461a、2466a、2471a、2476aの設置位置も工夫した。回路基板2150の左右中心線又は正極端子対(2162、2172)と負極端子対(2167、2177)の中心線を点線で示す左右中心線A1とする。また、上側正極端子2162と下側正極端子2172の脚部間の中心位置と、上側負極端子2167と下側負極端子2177の脚部間の中心位置の2つの中心位置を結んだ線を点線で示す仮想線A2とする。これら左右中心線A1と前後方向の脚部中心線A2を引いた際に、上側正極端子2162の脚部がある領域内に上側セルユニット2146の正極の引出しタブ2461aが存在し、下側正極端子2172の脚部がある領域内に下側セルユニット2147の正極の引出しタブ2471aが存在するようにした。このように引出しタブ2461a、2471aを配置することによって引出しタブ2461aと上側正極端子2162、引出しタブ2471aと下側正極端子2172を回路基板2150上に配置する配線パターンにて効率良く接続できる。同様にして、上側負極端子2167の脚部がある領域内に下側セルユニット2147の負極の引出しタブ2476aが存在し、下側負極端子2177の脚部がある領域内に上側セルユニット2146の負極の引出しタブ2466aが存在するようにした。このように引出しタブ2476a、2466aを配置することによって上側負極端子2167、下側負極端子2177と回路基板2150上に配置する配線パターンにて効率良く接続できる。
図66は、セパレータ2445に回路基板2150を固定した状態を示す斜視図であって、右後上方より見た状態を示す。ここでは、図65では見えなかったリード線2497、2499(図65参照)の端部2497b、2499bへの半田付け箇所をも確認できるであろう。回路基板2150の前後方向にみて中央付近の左右縁部には、回路基板2150のセパレータ2445に対する位置決めのための凹部2150c、2150dが形成され、それらにセパレータ2445に形成された凸部2445c、2445dが係合する。また、セパレータ2445の前方側には、回路基板2150の前端を保持する突当て部2445eが形成され、回路基板2150の前縁部に当接する。尚、引出し板2461には電池セルの電極と平行に延在する端子面2461bと、端子面2461bからセパレータ2445の上側に直角方向に折り曲げられた水平面部2461cが形成され、水平面部2461cを上側に直角にタブ状に延ばして引出しタブ2461aを形成した。ヒューズ部2461dは水平面の一部を前方側から大きく切り抜いた切り抜き部2461eを形成することによって、ヒューズ部2461dの幅(前後方向の距離)を小さくしたものである。引出し板2461だけでなく、その他の引出し板2466、2471、2476や、接続板2462〜2465、2472〜2475はステンレス等の薄板をプレス加工することにより形成される。従って、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147に別体式のヒューズ素子を付加する必要が無い。
図67は電池パック2100の 引出し板2461、2466、2471、2476と正極端子(2162、2172)及び負極端子(2167、2177)への接続方法を説明するための図である。(1)が前方側から見た図であり、(2)が後方側から見た図である。接続端子群のうち、放電用の正極端子(2162、2172)と負極端子(2167、2177)以外の接続端子の図示は省略している。上側セルユニット2146の+出力となる引出しタブ2461aは上側正極端子2162の後方側の領域丸2にて回路基板2150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ2461aと上側正極端子2162は直線的に短い距離にて接続できる。上側セルユニット2146の−出力となる引出しタブ2466aは下側負極端子2177の前方側の領域丸3にて回路基板2150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ2466aと下側負極端子2177は直線的に短い距離にて接続できる。下側セルユニット2147の+出力となる引出しタブ2471aは下側正極端子2172の前方側の領域丸1にて回路基板2150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ2471aと下側正極端子2172は直線的に短い距離にて接続できる。下側セルユニット2147の−出力となる引出しタブ2476aは上側負極端子2167の後方側の領域丸4にて回路基板2150に接続される。従って点線で示すように引出しタブ2476aと上側負極端子2167は直線的に短い距離にて接続できる。以上のように、回路基板2150上に示した点線のように電力用の接続端子(2162、2167、2172、2177)へ直線的に接続できるので、それらの配線パターンが交差すること無く太い配線パターンを効率良く配置できる。
図68は、接続端子群(2161〜2162、2164〜2168)とその周囲に配置される基板カバー2180の形状を示す図であり、(1)は左前上方から見た斜視図であり、(2)は右後上方から見た斜視図である。ここでは回路基板2150の図示を省略しているが、複数の接続端子群(2161〜2162、2164〜2168、2171、2172、2177)の脚部が回路基板2150に半田付けにより固定された後に、基板カバー2180が接続端子の周囲に取り付けられる。基板カバー2180は、不導体、例えば合成樹脂の一体成形によって製造され、接続端子の周囲、特に脚部の周囲を覆うようにして隣接する接続端子間で電気的な短絡を起こさないように保護する。基板カバー2180を設ける目的は、接続端子間を絶縁体にて仕切るためである。従って、複数の鉛直方向に延びる仕切り壁2182〜2189が配置され、それらが前方側にて連結部材2181によって連結される。連結部材2181の平坦な上面2181aは、上ケース1110の下段面1111(図38参照)と同一面になるように形成されており、下段面1111から連結部材2181までに至る本体側ターミナル部の相対移動を容易としている。連結部材2181の水平壁は回路基板2150から浮いた状態にて保持され、連結部材2181の水平壁下面と回路基板2150と間に隙間が生じるように複数の脚部2181b〜2181fが形成される。また、連結部材2181の左右両端には、回路基板2150の左右両辺を挟むように嵌合させる位置合わせ用の嵌合リブ2191a(図68(2)参照)、2191bが形成される。また、連結部材2181の左右中央付近には鉛直壁部2185aが前方側にまで伸びるようにして、上面2181aの中央を仕切るようにしている。この鉛直壁部2185aの先端は、図示しない外部充電装置の装着時の位置合わせ用に使用される。
基板カバー2180は、使われていない領域(図38のスロット1123)の開口を塞ぐような覆い部としての機能も果たす。図68(1)、(2)にて示すように、スロット1123に対応する部分には鉛直壁部2184a、2184dと、後方側にてそれらを連結する塞ぎ板2184cが形成される。このようにして基板カバー2180は、使われていない領域(図38のスロット1123)部分を塞ぎ、空きスロットから電池パック2100のケース内部にゴミや粉塵が入りにくくしている。
図68(2)にて理解できるように、複数の仕切り壁2182〜2189の後方位置は、それぞれの接続端子(2161〜2168)の後方位置よりもさらに後側に位置する。ここでは回路基板2150の図示を省略しているが、それぞれの仕切り壁2182〜2189の下辺部分は、回路基板2150の表面に当接する位置まで延びる。仕切り壁2188の左側(図68(1)参照)と、仕切り壁2182の右側部分には、段差部2192a、2192bが形成される。段差部2192a、2192bは図78にて説明するターミナル部の突出部2516a、2516bが接触する当接部になる。電力を送電するための電力端子(2161、2162、2167)は、信号を伝達するだけの信号端子(2164〜2166、2168)に比べて厚い金属板にて形成される。本実施例の電力端子は、電気的に独立した上側端子(2161、2162、2167)と下側端子(2171、2172、2177:ともに図65参照)を有し、それぞれが左右方向に隣接する腕部組を有する。基板カバー2180は、電力端子が、左右方向に隣接する端子(電力端子又は信号端子)と短絡しないように保護する共に、上下方向に隣接する上側端子(2161、2162、2167)の腕部組と下側端子(2171、2172、2177:ともに図65参照)の腕部組との短絡発生を防止する。従って、基板カバー2180のうち、電力端子に隣接する仕切り壁(2182,2183,2184、2187,2188)は上方向に高い壁とするとともに、図68(1)に示すように水平方向にも延びる水平壁部2182b、2183b、2183c、2184b、2187b、2188bがさらに形成される。
図68(3)は、接続端子群(2161〜2162、2164〜2168)と基板カバー2180の正面図である。仕切り壁部のうち信号端子間に配置される仕切り壁2185、2186は上面2181aからの高さH2の低い壁部とされ、その上端位置は信号端子(2164〜2166)や、LD端子2168の下側の腕部よりも低い位置になる。これに対して電力端子に隣接する仕切り壁2182〜2184、2187〜2189は、上面2181aからの高さがH3の高い壁部となり、その上端位置は、下側正極端子2171、2172や下側負極端子2177の上端位置よりも上側に位置し、上側正極端子2161、2162や上側負極端子2167の腕部よりも下側に位置する。
接続端子群のうち電力端子は、図60〜図63で説明したように、上側正極端子2161、2162と下側正極端子2171、2172の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に離間するように配置される。同様にして上側負極端子2167と下側負極端子2177の脚部が前後方向に並び、それぞれの腕部組が上下方向に離間するように配置される。定格18Vの電気機器本体に電池パック2100を装着した際には、上側正極端子2161、2162、上側負極端子2167の腕部の電位と、下側正極端子2171、2172、下側負極端子2177の電位は同じとなるため、上側端子部品と下側端子部品が接触しても問題ない。しかしながら、定格36Vの電気機器本体に電池パック2100を装着した際には、上側正極端子2161、2162と下側正極端子2171、2172の電位は異なり、上側負極端子2167と下側負極端子2177の電位も異なるため、上下の腕部間の接触による短絡を防ぐことが重要である。また、異物の挿入による短絡が起こりにくいような形状とすることも重要である。そこで、本実施例の基板カバー2180は、上方向に延びるように形成される複数の仕切り壁2182〜2189のうち、電力端子(正極端子、負極端子)に隣接する仕切り壁2182〜2184、2187、2188に関しては、高さH3となるように上端位置を上方にまで大きく形成し、後方側にも大きく延在させた。さらに、仕切り壁2182〜2184、2187、2188の鉛直壁部2182a、2183a、2184a、2187a、2188aの上端位置から左右水平方向にも延びる水平壁部2182b、2183b、2183c、2184b、2187b、2188bも形成した。
仕切り壁2182は鉛直壁部2182aと水平壁部2182bを有するもので、その断面形状がL字形となる。水平壁部2182bは鉛直壁部2182aの上端付近から隣接する電力端子(上側正極端子2161、下側正極端子2171)の腕部の間の空間内にまで到達するように水平方向に延びる形状とされる。また、仕切り壁2183はT字形の断面形状を有し、鉛直壁部2183aと、鉛直壁部2183aの上端部から両方向に延びる水平壁部2183b、2183cにより形成される。水平壁部2183bは隣接する水平壁部2182bと近接する側に延びて、上側正極端子2161と下側正極端子2171の腕部の間の空間内に先端が到達する。同様にして水平壁部2183cは、隣接する水平壁部2184bと近接する側に延びて、上側正極端子2162と下側正極端子2172の腕部の間の空間内に先端が到達する。図68(3)のように前方から正極端子群を見ると、上側正極端子2161の右側側面位置と、下側正極端子2171の右側側面位置は同一位置にある。水平壁部2182bの左端位置2182cは、上側正極端子2161と下側正極端子2171の右側側面位置よりも左側になるように、即ち、上側正極端子2161の腕部2161aの下側部分にまで入り込む程度の長さまで延ばされる。この際、水平壁部2182bは下側正極端子2171の腕部2171aの上側に位置することになる。
鉛直壁部2182aと水平壁部2182bの前後方向の長さは、図68(2)からわかるように、下側正極端子2171の前後方向の長さよりも長く形成され、その前端位置は下側正極端子2171の腕部の先端とほぼ同じ位置にあり、後端位置は下側正極端子2171の後端位置よりも後方側にある。このようにして、鉛直壁部2182aは下側正極端子2171の右側側面全体と、左側側面全体を覆いつつ、上側部分も左右中央付近の機器側端子が挿入される空間を除いて覆うようにした。ここでは、下側正極端子2171部分の鉛直壁部2182aと水平壁部2182bの形状だけに言及したが、下側正極端子2172についても、右側側面全体と左側側面全体と、中央部分を除く上側部分が覆われるような仕切り壁2183、2184が設けられるので、下側正極端子2171、2172に外力が加わって、これらを曲げるような力が加わったとしても、基板カバー2180によって効果的に保持させることができ、送電用の下側の端子部品と上側の端子部品が意図せずに短絡してしまう虞を大幅に低減できる。
負極端子側(2167、2177)についても、正極端子側(2161、2162、2171、2172)と同様の考えであって、負極端子の左右両側には大きな仕切り壁2187、2188を設けた。仕切り壁2187は、仕切り壁2182と同様の形状であって、鉛直壁部2187aと水平壁部2187bにより形成され、その断面形状がL字状とされる。水平壁部2187bは鉛直壁部2187aの上端部分から負極端子側に延びるように形成される。仕切り壁2188は、仕切り壁2187と左右対称に形成されたもので、鉛直壁部2188aと水平壁部2188bにより形成される。水平壁部2187bと2188bは、上側負極端子2167の腕部組と下側負極端子2177の腕部組の間の空間に先端部分が入り込む程度の大きさとされる、このように電力端子たる負極端子(2167、2177)の周囲を覆うように仕切り壁2187、2188を形成したので、上側負極端子2167又は下側負極端子2177に強い外圧がかかって前後方向に動いた(曲げられた)としても、水平壁部2187bと2188b等の壁部の存在によって短絡現象の発生する可能性を大幅に低減できる。
信号端子群(2164〜2166)の間の仕切り壁2185、2186は上方向に低い高さH2しか有しない、これは、信号端子群(2164〜2166)には、小電力の信号が流れるだけであるので、短絡時の危険度合いが電力端子側に比べて小さいため、絶縁の必要性が低いためである。また、信号端子群(2164〜2166)はそれぞれが1部品であって、上側の腕部と下側の腕部が同電位であるので、上下の腕部間での短絡の心配をする必要性が低いためである。仕切り壁2184は、鉛直壁部2184a、2184dを含み、これらの間を塞ぎ板2184cと後方接続板2184eにて接続したものである。塞ぎ板2184cは鉛直及び左右方向に延在する平板であって、上側正極端子2162とT端子2164との間の空きスペース(図38の空きスロット1123の内部空間)を閉鎖する作用を奏する。鉛直壁部2184aの上端付近には、正極端子側に延びる水平壁部2184bが形成される。
連結部材2181は、接続端子間に位置する鉛直壁部2182a、2183a、2184a、2184d、2185a、2186、2187a、2188aの前辺部分を接続する。連結部材2181の上面2181aを形成する水平壁は、回路基板2150よりも浮いた状態になる。鉛直壁部2182a、2183a、2184d、2185a、2186、2187a、2188a、2189の下側縁部は図示しない回路基板2150に接触するように位置づけられる。この連結部材2181の下側部分にも図48にて説明したような回路基板2150の上面を覆う液体状の硬化性樹脂が満たされた後に固められる。硬化性樹脂の固化によって、複数の鉛直壁部2182a、2183a、2184a、2184d、2185a、2186、2187a、2188a、2189の下端付近と回路基板2150が強固に固定される。連結部材2181の前方壁面には複数の脚部2181b〜2181fが形成され、それら脚部2181b〜2181fの間が切欠き部となる。このように脚部2181b〜2181fを左右方向に連続する壁部とするのではなくて、切欠き部が形成するのは液体状の樹脂が回路基板2150の後方部分と前方部分に均等に行き渡るようにするためである。液体状の樹脂は粘度が比較的低いため、脚部2181b〜2181fの間を通って樹脂が前後方向に流れる(詳細は後述する)。
図69は、基板カバー2180単体の図であり、(1)は左前上方から見た斜視図である。(1)において、水平壁部2182b、2183b、2183c、2184b、2187b、2188bの前後方向の長さL1は、図49にて示した上側端子部品2260の腕部2265、2266と、下側端子部品2280の腕部2285、2286の長さに対応した程度とされる。ここでは水平壁部2183b、2183c、2184b、2187b、2188bの前端が、図49にて示した上側端子部品2260の腕部2265、2266と、下側端子部品2280の腕部2285、2286の前端位置よりも前方に位置するようにして、後端が図49にて示した上側端子部品2260の右側側面2263と左側側面2264よりも後方側に位置する程度の長さとする。仕切り壁2184には鉛直方向に延びる塞ぎ板2184cとその後側にも後方接続板2184eが形成される。後方接続板2184eと塞ぎ板2184cの間には空間2184fが形成される。
図69(2)は、基板カバー2180単体を右前下方から見た斜視図である。この図からわかるように、仕切り壁2182〜2189の底辺位置は脚部2181b〜2181fの底辺位置と同じとされ、これらは底辺部分が回路基板2150の表面に接触するように基板カバー2180が載置される。脚部2181b及び2181fにはさらに下方向に突出する2つの嵌合リブ2191a、2191bが形成され、対向する嵌合リブ2191a、2191bの間の空間内に回路基板2150が位置することにより基板カバー2180の左右方向の位置決めがなされる。鉛直壁部2184a、2184dの間には底板2184gが設けられ、使われていないスロット1123(図38参照)の下面を閉鎖している。
図69(3)は、基板カバー2180単体の正面図である。基板カバー2180は、回路基板2150に接続端子群を固定したあとに、即ち図65にて示すように回路基板2150に接続端子群(2161〜2162、2164〜2168、2171〜2172、2177)を固定したあとに、回路基板2150を前側から接続端子群の方向にスライドさせることによって装着する。従って、基板カバー2180は接続端子群の腕部や右側側面、左側側面には接触せずに装着が可能であるうえに、装着後も接続端子群の腕部や右側側面、左側側面には通常時には接触しないような位置関係とされる。嵌合リブ2191a、2191bの高さH7は、図示しない回路基板2150の板厚と同等かそれ以上とする。
図70は、接続端子群とその周囲に配置される基板カバー2180を示す図であり、(1)は上面図であり、(2)は背面図である。充電用の正極端子対(2161、2171)は、隣接して配置された正極端子対(2162、2172)よりも前方側にわずかにオフセットされて配置される。これはスペース的な制約によるものであって、正極端子対(2161、2171)のすぐ後方のラッチ機構(図示せず)の移動範囲を回避するためである。従って、スペース的な制約がないならば正極端子対(2161、2171)は、正極端子対(2162、2172)及び負極端子対(2167、2177)と前端位置が並ぶように配置すれば良い。また、LD端子2168はその他の信号端子(T端子2164、V端子2165、LS端子2166)とはサイズ的に異なり若干小型に形成される。これもスペース的な制約によるものであって、LD端子2168のすぐ後方に、図示しないラッチ機構が到達するために、それを回避するためである。LD端子2168を小さく構成した関係から、仕切り壁2189も前後方向の長さが小さめに形成される。
図71(1)は、接続端子群とその周囲に配置される基板カバー2180の右側面図である。ここで、基板カバー2180部分には、左右中央付近の鉛直壁部2185aを除いてハッチングを付して接続端子部と区別がつくように図示している。この図からわかるように、下側正極端子2171の右側は、ほぼ全体が基板カバー2180の仕切り壁2182によって覆われることになる。また、上側正極端子2161も後端部分を除いて、腕部組(2161a、2161b)よりも下側部分が覆われることになる。尚、図では回路基板2150の図示を省略しているので、上側正極端子2161の脚部と下側正極端子2171の脚部が見えているが、実際にはこれら脚部は回路基板の貫通孔の内部に配置されることになる。図71(2)は、左側面図である。ここでもLD端子2168の左側に仕切り壁2189が設けられるので、ほとんどの部分が覆われることになる。また、図より仕切り壁2188の上端位置が上側負極端子2167の腕部2167bと下側負極端子2177の腕部2177bの間まで上方位置が到達していることが理解できよう。
図72は、基板カバー2180に機器側端子が挿入される状況を説明するための図であって、上側正極端子2162と下側正極端子2172の付近を示している。上側正極端子2162の左右両側に位置する仕切り壁2183と2184において、上側正極端子2162の腕部2162a、2162bと下側正極端子2172の腕部2172a、2172bの間に入り込むように水平壁部2183c、2184bが形成される。水平壁部2183c、2184bの左右方向の間隔はL2である。点線で示すように正極入力端子2052の端子部2052aは水平壁部2183c、2184bの間において腕部組2162a、2162b間に挿入される。ここで端子部2052aの厚さはTH1であるので、TH1<L2の関係となり、L2はTH1の2倍程度の間隔としている。この結果、端子部2052aを乱暴に挿入したり、何らかの異物の挿入があったりしても腕部2162a、2162bの最小間隔部分及び腕部2172a、2172bの最小間隔部分が左右方向にL2以上離れる現象を効果的に抑制できる。また、腕部2162a、2162bの前端位置に対して水平壁部2183c、2184bの前端位置が距離F1だけ前方に位置するように構成されるので、電気機器本体側の正極入力端子の端子部2052aが挿入される際に、水平壁部2183c、2184bによって腕部2162a、2162bの間に確実に案内される。このように水平壁部2183c、2184bの間隔や前端位置を構成することにより腕部2162a、2162bと腕部2172a、2172bの損傷を防止し、上側正極端子2162と下側正極端子2172の嵌合状況を長期にわたり良好に保つことができる。
図73(1)、(2)は、本発明の第9の実施例に係るターミナル部2200を示す斜視図である。ターミナル部2200は、定格36Vの電気機器本体に用いられるものであって、端子の配置や基本的な形状は図62で示した形状と同じであり、同じ部品には同じ符号番号を付している。ターミナル部2200は、36V用の電動工具本体1030においてターミナル部2050に替えて装着できる。その際には、電池パック2100の接続端子形状は同じで良い。図73では金属端子が露出している部分にハッチングを付して、樹脂部分と金属部分の区別がつきやすいように図示している。ここで異なるのは、金属製の端子部2052a、2054a〜2058aとショートバーの端子部2059b、2059cを保持する合成樹脂製の基台2201の形状である。基本的な形状は同等であり、上面2201aを有し、上面2201a近傍の前側と後側には上面2201aと平行な凹部2201c、2201dが形成されるが、端子部2052a、2054a〜2058aの後端根元付近には、樹脂の覆い部2202a、2204a〜2208aが形成される。覆い部は合成樹脂によって金属表面が外部に露出しないように覆った部分であり、電池パック2100の接続端子と干渉しない後端根元付近において、基台2201と一体に成形することにより形成される。ショートバー2059の端子部2059b、2059cの後端根元付近においても同様に覆い部2202b、2207bが形成される。
第9の実施例においては更に、端子が設けられていない空きスロット1123(図38参照)に相当する位置に、合成樹脂製の仕切り2210を形成した。仕切り2210は、正極入力端子2052とショートバー2059の端子部2059bが、その他の端子部と短絡しにくいようにするための絶縁素材による仕切り板である。金属の端子部2052a、2054a〜2058a、2059b、2059cの材質はばね用リン青銅等の高弾性材であって、高強度で、曲げに強く、耐摩耗性が高い。端子部2052a、2054a〜2058a、端子部2059b、2059cは合成樹脂製の基台2201に鋳込むことにより強固に固定され、特に上辺部分も基台2201内に鋳込まれる。しかし、端子部2059b、2059cについてはターミナル部2200の後方垂直面から前方に延びるだけで、上辺部分や下辺部分は開放された状態である。仕切り2210は基台2201と一体に成形することにより形成した壁状の部分であり、仕切り2210の上下方向の大きさは隣接する端子部(2054a)より下方向と前方向に大きく形成する。
図74(1)、(3)はターミナル部2200の別の角度からの斜視図であり、(2)は正面図である。(1)及び(3)の図からわかるように、ここで樹脂製の覆い部2204a、2205a、2206a、2208aの下側根元付近には水平方向に延びる水平保持部2204b、2205b、2206b、2208bが形成される。水平保持部2204b、2205b、2206b、2208bの下面は、(2)の正面図からわかるように.高さ方向にみて同一面となるように揃えて形成され、電池パック2100の装着時にこれらの下面は基板カバー2180(図68参照)の上面2181aと近接する又は当接する位置にある。このように水平保持部2204b、2205b、2206b、2208bの下面を基板カバー2180に近接又は当接させることにより隣接する金属端子間の電気的な絶縁性を向上させると共に、ターミナル部2200が電池パック2100に対して上下方向に相対移動する範囲を制限することが可能となる。尚、水平保持部2204b、2205b、2206b、2208bの左右方向の間にはそれぞれ所定の隙間2202c〜2207cが開いている。電池パック2100側の接続端子がターミナル部2200の端子部を左右方向から挟むようにする形状であるため、電池パック2100の装着操作によって金属端子部分に付着しているゴミや塵埃が後方側に押し出されることになり、金属端子の後方根本付近にゴミや塵埃が付着しやすくなる。そこで、それら付着したゴミや塵埃が下方向に容易に落下するように隙間2202c〜2207cを形成したものである。図73(2)の正面図から確認できるように、水平保持部2204b、2205b、2206b、2208bの左右方向幅が前方から後方にかけて広くなる、いわゆるテーパー状に形成される。一方、ショートバーの端子部2059b、2059cの下面には水平保持部が形成されない。これは端子部2059b、2059cが下方向に変形しやすいようにすることが、電池パック2100の落下等による強い衝撃が加わった際に端子部2052a、2057aと接触しにくくなるからである。
仕切り2210は左右側面視で略長方形であって、その上辺2210aは基台2201に接するように一体成形されており、付け根部分たる後辺2210dは基台2201に接する。下辺2210cは水平保持部2203bと一体に形成されている。このように仕切り2210は基台2201の成形時に同時に形成することができる。仕切り2210の厚さTH(左右方向の幅TH)は、金属部分である端子部2052a、2054a〜2058aの板厚T6に比べて厚く形成される。仕切り2210の高さH6は、ターミナル部2200の垂直壁2200aの高さと同じであり、前後方向長さL6(図73(1)参照)はターミナル部2200の水平壁2200bの長さとほぼ同じである。また、仕切り2210は、端子部2052a〜2058a、2059b、2059cに比べて、前方向にも長くし、下方向にも大きくした。尚、仕切り2210は、電池パック2100の電動工具本体1030(図36参照)への装着時には、空きスロット1123(図38参照)の内部に挿入されるだけであり、電池パック2100のいずれの接続端子とは当接しない。尚、基板カバー2180(図68参照)の仕切り壁2184については、塞ぎ板2184cの位置を後方にずらして、仕切り2210の挿入時に干渉しないようにすると良い。上下方向に2つ配置されている小型の正極端子部(2052a、2059b)は、電池パック2100の落下等の大きな衝撃によって大きく変形することがあるが、材質の関係から正極端子部(2052a、2059b)は弾性変形域が相当大きく、変形するが折れ曲がりにくい。本実施例では、正極端子部(2052a、2059b)が内側(端子部2054a側)に変形した際には、仕切り2210に当接するようにして、その変形範囲を制限することができる。
図75は本発明の第10の実施例である。ここで示すターミナル部2050Aは、図62に示したターミナル部2050の形状を一部変形したものであり、同じ構成部品を使う箇所には同じ符号番号を付している。ここでは電力端子たる正極入力端子2052Aの端子部2052fを、図74の端子部2052aに比べて前側半分だけの長さとし、ショートバーの端子部2079bを図74の端子部2059bに比べて後側半分だけの長さとした。このように端子部2052fと端子部2079bの長さを短くしたので、端子部2052fとショートバーの端子部2079bが、上下方向に見て、及び、前後方向に見て重ならないようにした。矢印2050dのように端子部2052fの後方側には金属端子は設けられない。負極入力端子2057A側も同様であり、端子部2058fとショートバーの端子部2079cが前後方向にずれるように配置して、上下方向に見て、及び、前後方向に見て端子部2058fと端子部2079cが重ならないようにした。矢印2050eのように端子部2058fの後方側には金属端子は設けられない。
図75(2)、(3)はターミナル部2050Aに対応する上側端子部品1220Bと下側端子部品1230の斜視図である。ここでは上側端子部品1220Bと下側端子部品1230の脚部が前後方向に離間して配置される点、腕部組(1225、1226)と腕部組(1235、1236)が上下方向に離間して配置される点は図40で示す上側端子部品1200と下側端子部品1220と同様である。しかしながら上側の腕部組(1225、1226)の前後方向の長さが短く、下側の腕部組(1235、1236)の前後方向の長さが長くなるように構成した。図75(3)は、(2)に示した上側端子部品1220Bと下側端子部品1230に従来のターミナル部2020(図63参照)を嵌合させた状態を示している。ここでは正極入力端子1022の端子部1022aが挿入されると、上側端子部品1220Bの嵌合領域と下側端子部品1230の嵌合領域の前後方向の位置が距離L7だけ離れた位置になるが、腕部組(1225、1226)の嵌合圧と腕部組(1235、1236)を等しくすれば、図40で示した上側端子部品1200と下側端子部品1220と同様の機能を実現することができる。
次に図76及び図77を用いて本発明の第11の実施例を説明する。図76は第11の実施例に係る電池パックと電気機器本体の概略回路図である。電池パック2100は、図58〜図72で説明した第8の実施例の電池パックと同じ構成である。ここでは電池パック2100の回路図だけを示している。電気機器本体は、第8の実施例に対してショートバー2059の途中にスイッチ回路、即ちショートバー接続スイッチ2059dを設けたことに特徴がある。それ以外の構成に変更は無い。モータ等の駆動部は、マイコンを含んだ制御部によって制御される。この駆動部には正極入力端子2052と負極入力端子2057に接続され、それらの回路中にはトリガスイッチ等の動作スイッチ2034が設けられる。ショートバー接続スイッチ2059dは、ショートバー2059の一方の端子部2059bと他方の端子部2059cの電気的接続を確立又は解除するための追加的な切替スイッチである。このようにショートバー2059に切替スイッチを設けることによって、様々な使用方法が実現できる。
最初の使い方は、トリガスイッチ2034に連動してショートバー接続スイッチ2059dがオン又はオフになるように構成することである。例えば電気機器本体がインパクトドライバのようなトリガスイッチ2034を有する場合、電池パック2100を電動工具本体に装着しても、トリガスイッチ2034がオフのままなら、上側セルユニット2146の負極と下側セルユニット2147の正極が接続されていない状態になり、正極入力端子2052と負極入力端子2057には電力は供給されないことになる。2つめの使い方は、ショートバー接続スイッチ2059dを電気機器本体のメインスイッチとして使用する場合である。電池パック2100を用いる電気機器には、トリガスイッチを用いることが無くてメインスイッチだけの場合がある。その場合、ショートバー接続スイッチ2059dをメインスイッチとして用いても良いし、メインスイッチと連動して動作するように構成しても良い。1つめ及び2つめの使い方のいずれであっても、保管時や輸送時には、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147が確実に非接続の状態に保たれるので、電池パック2100の安全性向上のために特に役に立つ。また、トリガスイッチ2034だけでオン又はオフの制御を行うのでは無く、ショートバー2059側でもオン又はオフの制御が可能となるので、非常停止が必要な場合に電気機器本体側のマイコンはショートバー接続スイッチ2059dを制御することによって電力供給を遮断することが可能となる。トリガスイッチ2034とショートバー接続スイッチ2059dは完全連動として、ディレイタイム無しにトリガスイッチ2034のオンオフ切り替えとショートバー接続スイッチ2059dのオンオフ切り替えを行うように構成してもよい。この場合は機械的な機構によってオンオフ連動を実現しても良いし、電気的な回路構成によってオンオフを同一タイミングで実現しても良い。さらに、電気的な回路構成を用いてトリガスイッチ2034のオンオフ切り替えに対応するショートバー接続スイッチ2059dのオンオフ切り替えを若干ずらすように制御しても良い。そのようなショートバー接続スイッチ2059dのオンオフ切り替えをトリガスイッチ2034のオンオフ切り替えと若干ずらす方法を示すのが図77である。
図77(1)はショートバー接続スイッチ2059dの動作(接続動作2196)と、トリガスイッチ2034の動作(トリガ動作2197)のタイミングを示す図である。それぞれの横軸は時間(単位:秒)を示しており、同じスケールで合わせて図示している。(1)はショートバー接続スイッチ2059dの動作(接続動作2196)と、トリガスイッチ2034の動作(トリガ動作2197)のタイミングを示す図である。電動工具を使用する際には、図示しないメインスイッチをオンにすることにより、それに連動させてショートバー接続スイッチ2059dをオンにする。その後、時刻t2、t5、t6、t8にて作業者がトリガスイッチ2034をオンにすることにより、モータが回転する。時刻t3、t4、t7、t9にて作業者がトリガスイッチをオフにするとモータの回転が停止する。作業者が時刻t10において図示しないメインスイッチをオフにすると、それに連動させてショートバー接続スイッチ2059dもオフになるので電池パック2100の上側セルユニット2146と下側セルユニット2147は非接続状態になる。よって、電池パック2100を電動工具本体に差した状態のままでも、メインスイッチをオフにしておけば、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の直列接続が解除状態になる。
図77(2)は、作業中に連続操作が必要とされるトリガスイッチでなくて、電動工具がグラインダや丸鋸のようなオン又はオフだけの切替スイッチを有する電動工具の場合のショートバー接続スイッチ2059d、マイコン、モータの制御タイミングを示す図である。電気機器本体がグラインダや電動丸鋸のように作業者の継続操作が必要なトリガスイッチ2034を持たない機種では、ショートバー接続スイッチ2059dを電動工具のメインスイッチとして機能させることができる。その場合、時刻t11にてメインスイッチ(ショートバー接続スイッチ2059d)がオンになって、電動工具が使用可能な状態になる。すると電動工具本体側の制御部に含まれるマイコンにも動作電圧が供給されるので、マイコン2198が起動する。起動したマイコン2198は、モータを回転させるが、そのタイミングを若干遅らして時刻t12にて起動する。時刻t20にて作業が終了したら、作業者はメインスイッチ(ショートバー接続スイッチ2059d)をオフ側に切り替える。するとマイコンへの電力供給が遮断するのでマイコンとモータが停止する。以上のように、ショートバー接続スイッチ2059dのオンに対して、モータの起動まで若干のタイムラグを設けたことにより、ショートバー接続スイッチ2059dの接点部分に過大電流が集中することを抑制できる。また、メインスイッチとしてのショートバー接続スイッチ2059dをオフにすることにより、電池パック2100の出力が正極入力端子2052と負極入力端子2057に供給されていない状態を確実に保つことができる。これはメインスイッチをオフにしておけば、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の直列接続が解除状態にあることなので、輸送時の安全性を向上させることにも役にたつものである。
次に図78〜図88を用いて電気機器本体側のターミナルホルダ(2500、2550)の形状を説明する。図78(1)において、ターミナルホルダ2500は従来の電気機器本体のターミナル部2020(図63参照)に替えて取り付け可能な新規な形状であり、定格18V用である。図63にて示したターミナル部2020は、端子を固定する合成樹脂製の基台2021が小さい形状であるが、第12の実施例のターミナルホルダ2500では、水平面2501aを形成する水平壁2501が前後左右方向に大きめに形成される。ターミナルホルダ2500は、電気機器本体側の複数の端子(2522、2524〜2528)を固定するための部材で有り、合成樹脂等の不導体の一体成形によって平板状の端子部を有する金属部品を鋳込むことにより固定したものである。ターミナルホルダ2500には、平板状の正極入力端子2522、T端子2524、V端子2525、LS端子2526、負極入力端子2527、LD端子2528が左右方向に配置される。T端子2524、V端子2525、LS端子2526及びLD端子2528は、電池パック2100に関する情報又は信号を出力する信号を入力又は出力する信号端子として機能する。電池パック2100には更に、充電用の正極端子(図65にて示す2161、2171)が存在するが、ここで示すターミナルホルダ2500は放電専用の電気機器に用いられるものなので、充電用の正極端子(図58の2161、2171)に嵌合する端子は設けられない。ターミナルホルダ2500の基体部2510から前方に延びる複数の端子(2522、2524〜2528)は、後辺部分と、上辺側の一部が水平壁2501に鋳込まれるように強固に固定される。水平壁2501の後方側に、ターミナルホルダ2500を電気機器本体側のハウジングに固定するための湾曲リブ2503a〜2503dが形成される。湾曲リブ2503a、2503dに対向する位置には、湾曲リブ2503a、2503dと反対向きに湾曲する湾曲リブ2504a、2504bが形成される。複数の湾曲リブ2503a〜2503d、2504a、2504bの間には、円柱状の部材を嵌挿させることによってターミナルホルダ2500の後方側が電気機器本体側のハウジングに固定される。この際、ターミナルホルダ2500の前方側は掛止爪2502によって電気機器本体側のハウジングにて掛止される。複数の端子(2522、2524〜2528)の下辺側であって、垂直面2501bに近い部分には、左右方向に細長い水平面2515が形成される。水平面2515は基体部2510と一体成形で製造されるもので、横方向に長い矩形状の水平板である。水平面2515の右側端部には、基体部2510の右端よりも更に右側に突出する突出部2516bが形成される。同様にして基体部2510の左端よりも更に左側に突出する突出部2516aが形成される。
図78(2)はターミナルホルダ2500の左側面図である。18V用のターミナルホルダには複数の端子(2522、2524〜2528)の下辺部分にて横方向に連続する水平面2515が形成され、水平面2515の左右両端には突出部2516a、2516bが形成される。直方体状の基体部2510に鋳込まれる複数の端子(2522、2524〜2528)の後端部分には半田付けのための接続部(2522b、2524b、2527b等)が形成される。接続部(2522b、2524b、2527b等)の下側の湾曲リブ2503dと、湾曲リブ2503dと対向する湾曲リブ2504bの内部に、左右方向に細長い円筒部材を挿入させて円筒部材をネジ等によって電気機器本体のハウジングに固定できる。
図79はターミナルホルダ2500を示す図であり、(1)は正面図であり、(2)は底面図である。ターミナルホルダ2500は、端子(2522、2524〜2528)の下辺を接続する底面部2510bの下にさらに水平面(水平壁)2515が形成される。水平面2515の左右方向中央付近には、凹状に切り抜かれた凹部2516が形成される。凹部2516は、ターミナルホルダ2500が装着された際に、電池パック2100の鉛直壁部2185a(図38参照)と干渉しないように形成される切り欠きである。端子(2522、2524〜2528)の後辺部分と上辺部分の一部は基体部2510に鋳込まれ、下辺後方側の一部は水平壁2515によって鋳込まれるので、端子(2522、2524〜2528)は左右方向にぶれることなく強固に固定される。基体部2510には複数の端子(2522、2524〜2528)が後方側に貫通するように鋳込むようにしている。その際、水平面2515の後方側の基体部2510には、樹脂材料で満たされない空洞部2532〜2538、2544〜2546が形成される。これら空洞部は、内部に鋳込まれる端子(2522、2524〜2528)を覆うのに不要な部分であり、ターミナルホルダ2500の軽量化のために形成される。図79(3)は上面図であり、電動工具本体1001のハウジング1003の内部空間に露出する部分である。第12の実施例のターミナルホルダ2500は比較的大型であって、水平面2501aの上面には、上側に高くなる段差面2506が形成される。水平面2501aの外周側縁部は、電動工具本体1001のハウジング1003に形成された開口部分に挟持されることにより電動工具本体1001に固定される。この際、水平壁2501の外周面にゴムによるシール部材(図示せず)を介在させて、ターミナルホルダ2500とハウジング1003との間の隙間を埋めるようにしても良い。
図80はターミナルホルダ2500を用いた電動工具本体に、従来の電池パック1015を装着した状態を示す部分側面図である。従来の電池パック1015においては、電池パック1015の回路基板1016上に接続端子1018が固定される。接続端子1018の大きさは正極入力端子2522の端子部に対応する大きさである。接続端子1018は電池パックの装着方向前側に向けて延びる左右両側の腕部1018a、1018b(図では1018bは見えない)を有し、これら腕部1018a、1018bの間に正極入力端子2522の端子部が挟まれるようにして電気的に良好な接触状態が達成される。従来の電池パック1015を電気機器本体に装着すると、水平面2515が上ケース1110(図38参照)の上段面1115と近接するように位置し、垂直面2501bが段差部1114(図38参照)と対向する位置にくる。この際、接続端子1018の腕部1018a、1018bが板状の正極入力端子2522を左右から挟み込むように嵌合することで、電気的な接続状態を確立する。従来のターミナル部2020(図63参照)においては、水平面2515が形成されないため、矢印2517で示す部分に隙間が生じてしまう。しかしながら本実施例では水平面2515が基板カバー1019に接触するか近接するので、ターミナルホルダ2500と基板カバー1019の隙間が埋められる状態となり、電池パック1015の接続端子群が電動工具本体1001側に対して相対移動できる範囲を制限する。よって、電動工具稼働時の腕部1018a、1018bの嵌合部分と端子部2027aとの相対移動量も大きく制限され、腕部1018a、1018bと接続端子1018との嵌合部位の擦れの発生を抑制でき、電気的に安定させて電池パック1015や電動工具本体1001の寿命を延ばすことが可能となる。尚、電池パック1015に対するターミナルホルダ2500の上方向への移動も、突出部2516a、2516b(図78参照)によって制限することができるが、突出部2516a、2516bの作用については図85にて後述する。
図81は本発明の第12の実施例に係る36V用のターミナルホルダ2550の形状を示す図であり、(1)は下から見た斜視図であり、(2)は左側面図である。図78で示した18V用のターミナルホルダ2550との違いはわずかであり、樹脂部分の形状は同一と言っても良い。唯一の違いは正極入力端子2572と負極入力端子2577が第8の実施例と同様に上下方向の幅の狭いものが用いられることと、正極入力端子2572と負極入力端子2577の下側部分に、平行するようにしてショートバーの端子部2588b、2588cが設けられる。図81(2)の側面形状もほぼ同様であり、接続端子群の下側には水平面2565が形成され、その左右両側には突出部2566a、2566bが形成される。
図82は図81のターミナルホルダ2550を示す図であり、(1)は正面図、(2)は底面図、(3)は上面図である。ここでは正極入力端子2572と負極入力端子2577が他の端子(2574〜2578)に比べて上下方向の幅が小さく形成され、正極入力端子2572の下側には端子部2588bが形成され、負極入力端子2577の下側には端子部2588cが形成される。端子部2588bと2588cは、ターミナルホルダ2550の基体部2560の内部に鋳込まれているショートバーの両側端部であって、これらは電気的に接続されている。図82(2)の底面部の形状も、図79で示したターミナルホルダ2550とほぼ同じである。基体部2560は複数の端子(2572、2574〜2578)と図示しないショートバーが鋳込まれている。水平面2565の後方側には、多数の空洞部2582〜2588、2594〜2596が形成される。これら空洞部は、内部に鋳込まれる端子(2522、2524〜2528)を覆うのに必要とされない部分であって、ターミナルホルダ2550の軽量化のために形成されるものである。図82(3)は上面図であり、電動工具本体1030のハウジング1032の内部空間に露出する部分である。ターミナルホルダ2550の上面たる水平面2551aには段差面2556が形成される。
図83は、ターミナルホルダ2550を用いた電動工具本体と、本実施例による電池パック2100の接続端子との接続状態を説明するための図である。図83(1)は側面図であり、(2)は(1)のうち、基板カバー2380の側面壁部の図示を省略した側面図である。ここでは上側正極端子2162は正極入力端子2572にだけ嵌合し、下側正極端子2172はショートバーの端子部2588bに接続される。ここでは複数の電源端子(2162、2172等)、複数の機器側電源端子(2572等)、電圧切替要素及び切替素子たるショートバー2588が、上下方向において略同じ高さの位置に配置される。水平面2565が上ケース1110(図38参照)の下段面1111及び基板カバー2380の上面2381aと接触又は近接するように位置する。ターミナルホルダ2550においても、水平面2565と突出部2566a、2566bを形成したので、電池パック2100に対するターミナルホルダ2550の上下方向の移動を制限できる。
次に図84を用いて、電池パックに対するターミナルホルダ2550の相対移動量の制限の別方法を説明する。図78〜図83の方法はターミナルホルダ2500、2550が回路基板1016、2150に対して接近する方向の移動、即ち下方向への移動のみを制限するものであり、そのためにターミナルホルダ2500、2550に水平面2515、2565を形成した。しかしながら、水平面2515、2565を設けるだけではターミナルホルダ2500、2550が回路基板1016、2150から離れる方向への相対移動、即ち上方向への移動を制限することができない。ターミナルホルダ2550は電動工具本体1030のハウジング1032によって保持される。この際、電動工具本体や電気機器本体の種類によってターミナルホルダ2550の固定方法が異なる。通常は分割式のハウジングの分割面に、ターミナルホルダ2500を挟持するための開口部を設けて、その開口部にターミナルホルダ2500を挟み込む。この際、防水性の向上や振動伝達防止のために、開口部とターミナルホルダ2500を強固に固定する方法だけでなく、ゴム製のシール部材を介在させてわずかな可動状態で保持することがある。この場合、電動工具が作業時の大きな振動発生状態に置かれた場合、ターミナルホルダ2550は電動工具本体側ハウジングと異なる周期でほんのわずかに、即ち、シール部材による可動範囲内で振動し、電池パック2100の接続端子と板状の機器側端子との間の相対移動が発生する。この接続端子と機器側端子の相対移動を抑制するために、電池パック2100の接続端子の嵌合圧を高めることが考えられるが、その場合電池パック2100の取り付け及び取り外しがしにくくなる。そこで、本実施例では水平面2515、2565の左右両端付近に、右方向に突出する突出部2516a、2566aを形成し、左方向に突出する突出部2516b、2566bを形成することにより、電池パック2100に対するターミナルホルダ2550の上方向への移動も抑制するようにした。ターミナルホルダ2500、2550の上方向への移動を制限するには、突出部2516a、2516b、2566a、2566bを上側から保持する突き当て部材(被係合部)が必要となる。ここでは被係合部として本実施例では上ケース1110の一部に凸部を形成するか、又は、基板カバー2380に凸部を形成するようにし、この凸部の下側に突出部2516a、2516b又は突出部2566a、2566bを当接させるようにした。このように電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子、正極入力端子、負極端子、負極入力端子、電圧切替要素及び切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置に配置されるので、電圧切替要素及び切替素子を搭載しつつも上下方向にコンパクトな電池パックを実現できた。
図84(1)では電池パック2100にターミナルホルダ2550が装着された状態の右側側面図を示している。ここではターミナルホルダ2550の水平面2551aが上ケース1110の上段面1115に対向している。電池パック2100はレール機構によって電動工具本体1030に装着される。図84(2)は(1)のC−C部の断面図である。ここではターミナルホルダ2550に形成された複数の機器側端子(2572、2574〜2578、2588b、2588c)が、電動工具本体1001側の接続端子(図58参照)と嵌合している。機器側端子(2572、2574〜2578、2588b、2588c)の下面には水平面2565が形成され、水平面2565は基板カバー2380の上面2381aに当接する。しかしながら、矢印2590a、2590b付近では、ターミナルホルダ2550の横側は上ケース1110とは非接触状態にある。
図85は、第12の実施例の変形例に係るターミナル部2650を示す図であり、(1)は図84のD−D部に相当する部分の断面図であり、(2)は(1)の部分拡大図である。この図にて理解できるようにターミナル部2650には左右方向に突出部2666a、2666bを設けた。上ケース1110には、前後方向に延びる平行する2つの突出部1139a、1139bが設けられ、これらの上方向に突出する突出部の各々の上端付近から左右両側に突出するものであって、電動工具側のレール溝と係合するレール1138a、1138bを設けた。また、突出部1139a、1139bの間に形成された開口部には、ターミナル部2650と嵌合させる被係合部となるリブ1140a、1140bを設け、ターミナル部2650の電池パック2100に対する上方向への相対移動を防止する。ターミナル部2650の電池パック2100に対する下方向への相対移動は、突出部1139a、1139bが、基板カバー2380の上面2381aの左右端部に形成された段差部2386a、2386bに当接することにより制限する。ここで、段差部分を形成するリブ1140a、1140bの下面と突出部1139a、1139bの上面との間隔を3.0mmとし、突出部2666a、2666bの高さを2.5mm程度とすれば、電池パック2100の電動工具本体1030への装着及び脱着がスムーズにできる上に、ターミナル部2650の上下方向の揺れを効果的に抑制できる。
図86はターミナル部2650を基板カバー2680に固定する変形例を示す図であり、(1)は図84のD−D部に相当する部分の断面図であり、(2)は(1)のターミナル部2650の単体図であり、(3)はターミナル部2650の左側面図である。ここでは基板カバー2680の両側端部に、ターミナル部2650の突出部2666a、2666bと嵌合させるための誘導用レール2695a、2695bを形成した。誘導用レール2695a、2695bは、前後方向に延びる凹状の第2のレール溝であって、ターミナル部2650が電池パック2100の前側からスライドさせるように相対移動されると、誘導用レール2695a、2695b内にターミナル部2650の突出部2666a、2666bが入り込む形となる。つまり、電動工具本体1001、1030が装着用のレール機構、即ちレール1138a、1138bとレール溝1011a、1011bにて係合されるのに加えて、第2のレール機構の突出部2666a、2666bと誘導用レール2695a、2695bを嵌合させることによってターミナル部2650と電池パック2100との相対移動を制限した。図86(3)の側面図でみるとターミナル部2650の形状は図78〜図83で示した第12の実施例のターミナルホルダ2500、2550の形状とは異なり小型に形成される。しかしながら、接続端子を構成する金属製の端子部(例えば、正極入力端子2672と、ショートバーの端子部2688b)の大きさは同じである。また、複数の金属端子の下側に水平面2665が形成され、さらには水平面2665の左右両端に突出部2666a、2666bを形成することも図78〜図83で示した第12の実施例のターミナルホルダ2500、2550の形状と同じである。このように形成することによって、電動工具本体、又は、電池パックを装着する電気機器本体に対して装着されるターミナル部2650の上下方向への相対移動範囲を効果的に抑制できる。
図87は図86のターミナル部2650Aの水平面2665の下面2665aに、クッション材2690を介在させたものである。クッション材2690は、電池パック2100の電動工具本体への装着時に大きな抵抗とならないように良好な摺動性を持ちつつ、十分な弾性を有する部材であれば良い。ここではターミナル部2650Aの平坦な下面2665aに、両面テープ等の粘着部材によってクッション材2690を貼り付けた。また下面2665aの左右中央付近には、前後方向に所定の長さを有して形成される凸部2665bを形成した。凸部2665bは基体部2660Aに一体に製造されるもので、クッション材2690が必要以上に圧縮されないように保護するストッパである。図87(2)の側面図で見ると、クッション材2690は突出部2666bよりも後方側であって、基体部2660の下側にある。しかしながら、クッション材2690の左右方向の合計長さは、下面2665aの左右方向領域の半分以下程度で良い。
図88は第12の実施例の更なる変形例に係るターミナル部2650Bを示す図であり、(1)は正面図であり、(2)は左側面図であり、(3)は電池パック2100側の接続端子と嵌合状態にあるターミナル部2650Bの左側面図である。ここでは正極入力端子2672とショートバーの端子部2688bの上下縁部に合成樹脂製のガイド部2692a〜2692cを介在させたものである。同様に、負極入力端子2677とショートバーの端子部2688cの上下縁部に合成樹脂製のガイド部2697a〜2697cを介在させた。ガイド部2697a〜2697cは合成樹脂等の不導体にて製造され、基体部2660とは別部材で構成しても良いし、基体部2660と一体成形にて製造しても良い。ガイド部2692a〜2692cは、図88(2)の側面図に示すように正極入力端子2672の前端よりも前側部分から垂直壁2661bに接するまで連続して形成される。ガイド部2697a〜2697cも同様である。従って、金属端子部分は、図88(2)で示すように、ガイド部2692aと2692bの間に正極入力端子2672が露出し、ガイド部2692bと2692cの間にショートバーの端子部2688bが露出することになる。このようにガイド部2692a〜2692cとガイド部2697a〜2697cを形成したことにより、図88(3)に示すようにガイド部2692a〜2692cに案内されるように、ガイド部2692a、2692bの間を上側正極端子2162の腕部2162aが案内され、ガイド部2692bと2692cの間を下側正極端子2172の腕部2172aが案内される。この構成により、装着時に電池パック2100側の接続端子をターミナル部2650Bの所定位置に確実に案内することができ、更には、電動工具の稼働時にターミナル部の機器側端子と電池パック側の接続端子が摺動によって摩耗する現象を大幅に抑制できる。
次に図89〜図94を用いて本発明の第13の実施例を説明する。第8の実施例においては 電力端子(正極端子と負極端子)として、それぞれ上側端子(2162、2167)と下側端子(2172、2177)を設けて、電池パックが低電圧電動工具本体に装着された際は、上側端子と下側端子が低電圧電動工具本体の電力端子に共通して接続される。また、電池パックが高電圧電動工具本体に装着された際は、上側端子と下側端子の一方のみが高電圧電動工具本体の電力端子に接続され、電力端子に接続されない他方の端子間はショートバーによって短絡される。これに対して第13の実施例では、電力端子の腕部の配置として上下方向に分離して配置するのではなく、前後方向に分離して配置するようにした。
図89は第13の実施例の電動工具の電池パック2860の装着状況を説明するための斜視図である。電動工具は、電動工具本体2801とそれに装着される電池パック2860によって構成され、モータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具本体2801は、外形を形成する外枠たるハウジング2802を備え、ハウジング2802にはハンドル部2803が形成され、ハンドル部2803の上端付近には、作業者が操作するトリガスイッチ2804が設けられ、ハンドル部2803の下方には電池パック2860を装着するための電池パック装着部2810が形成される。
ここでは電池パック2860の装着方向2818を、第8の実施例と同様に電池パック2860を電動工具本体2801に近づける方向として説明している。これは説明の便宜上、そう定義しているだけで有り、実際には電池パック2860を保持して、電動工具本体2801を前方に移動させることで、矢印2818の移動と同じ方向の相対移動が実現できる。尚、本明細書では電池パック2860の前後左右方向は装着方向を基準に決定されている。一方、電動工具本体側は、作業者が把持した際の方向を基準に前後左右を定義している。従って、電気機器がインパクトドライバ等の電動工具本体の場合は、図89のようにお互いの前後方向の向きが、逆になることに注意されたい。
電池パック2860の形状は第8の実施例で説明した電池パック2100とは接続端子の配置と、ラッチ機構が異なる。電池パック2860の左右両側にはレール2864a、2864b(図では2864bは見えない)が形成される。ラッチボタン2865は電池パック2860の後面上部に形成され、1つの大きなボタンが左右中央に一つだけ設けられる。電池パック2860が電動工具本体2830に装着されている際に、ラッチボタン2865を押してから電池パック2860を矢印2818と反対方向に移動させる(又は、電動工具本体2830を電池パック2860から離れるように移動させる)ことで、電池パック2860を取り外すことができる。
図90は第13の実施例に係る電池パックの電動工具への装着状況を説明するための図である。電動工具本体2801、2830は、ハウジング2802、2832、ハンドル部2803、2833、トリガスイッチ2804、2834が設けられ、ハンドル部2803、2833の下方には電池パック2860を装着するための電池パック装着部2810、2840が形成される。
電動工具本体2801は定格電圧18Vで動作し、電動工具本体2830は定格電圧36Vで動作する。電池パック2860の内部には、3.6Vのリチウムイオン電池のセルが5本直列接続されたセルユニットが2組収容され、2組のセルユニットの接続を直列又は並列に変更することにより、低電圧(18V)と高電圧(36V)の出力の双方を切り換えることができる。電池パック2860は2電圧対応に構成されることから、矢印b4のように36V対応の電動工具本体2830にも装着できるし、矢印b3で示すように電動工具本体2801にも装着できる。電動工具本体2801の電池パック装着部2810には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びるレール溝2811a、2811bが形成され、左右のレール溝2811a、2811bに囲まれる空間部分にターミナル部2820が設けられる。ターミナル部2820は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面2820aと、水平面2820bが形成され、水平面2820bは電池パック2860の装着時に、上段面2862と隣接、対向する面となる。ターミナル部2820には金属製の複数の接続素子、例えば正極入力端子2822、負極入力端子2827、LD端子(異常信号端子)2828が設けられる。LD端子(異常信号端子)2828は、情報又は信号を入力又は出力する信号端子として機能する。正極入力端子2822、負極入力端子2827は金属の平板にて形成され、装着方向の長さが第8の実施例のターミナル部2020(図63参照)の2倍以上の長さを有する。LD端子2828は負極入力端子2827の右側に配置される。正極入力端子2822と負極入力端子2827は、後述のように、電池パック2860の出力電圧を低電圧に切り替える切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット2146、2147を互いに並列に接続する低電圧用の接続素子としても機能する。
電池パック2860の上側は、前方側に平らな下段面2861が形成され、中央付近は下段面2861よりも高く形成された上段面2862が形成される。下段面2861と上段面2862の接続部分は段差状に形成され、段差状部分に機器側端子を挿入するためのスロット群が配置される。スロット群は、前後方向に長い切り欠きのような大きなスロット2872、2877と、それらの半分程度の長さのスロット2878が形成される。スロット2872が正極端子用の第1のスロットになり、スロット2877が負極端子用の第2のスロットになり、スロット2878がLD端子用の第3のスロットになる。この切り欠かれたスロット2872、2877の内部には、電動工具本体2801、2830側の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子が設けられる。尚、ここではスロットが3つだけ設けられているが、さらにスロットを設けるように構成しても良い。上段面2862の右側側面と左側側面には、レール2864a、2864bが形成される。レール2864a、2864bは右方向及び左方向に突出する凸部である。上段面2862の後方側には隆起部2863が設けられ、その後方側にはラッチボタン2865が設けられる。
電動工具本体2830は定格電圧36Vで動作する。電動工具本体2830は第8の実施例と同様の思想により、正極側スロット2872と負極側スロット2877に挿入される2組の接続端子が、前後方向に離間させて設けられる。正極側スロット2872に対応する接続端子は、前方側に配置されるショートバー2859の一方の端子部2859bと、後方側に配置される正極入力端子2852である。同様にして、負極側スロット2877に対応する接続端子は、前方側に配置されるショートバー2859の他方の端子部2859cと、後方側に配置される負極入力端子2857である。第8の実施例では正極入力端子とショートバー、負極入力端子とショートバーを上下方向に距離を隔てて配置したが、本実施例においてはこれらを前後方向に配置、即ち電池パック2860の装着方向と平行方向に、所定の距離を隔てるようにして配置した。ショートバー2859の一方の端子部2859bとショートバー2859の他方の端子部2859cは、後述するように、電池パック2860の出力電圧を高電圧に切り替える切替素子として機能し、さらに複数のセルユニット2146、2147を互いに直列に接続する高電圧用の接続素子としても機能する。
図91は、電力端子の電動工具本体への接続状態を示す斜視図であり、(1)は18V用の電動工具本体2801に電池パック2860を装着する状態を示し、(2)は36V用の電動工具本体2830に電池パック2860を装着する状態を示す。ここでは電池パック2860の装着方向は、点線で示す2本の矢印方向である。電池パック2860の正極側スロット2872の内部には、電力の切替端子群(又は並列正極端子群)としての前側正極端子2882と後側正極端子2892が前後方向に離れるように配置される。同様にして負極側スロット2877の内部には、電力の切替端子群(又は並列負極端子群)として前側負極端子2887と後側負極端子2897が前後方向に離れるように配置される。電池パック2860の内部には5本のリチウムイオン電池セルにより構成された上側セルユニット2146と下側セルユニット2147が収容される。上側セルユニット2146の正極出力は後側正極端子2892に接続され、負極出力は前側負極端子2887に接続される。下側セルユニット2147の正極出力は前側正極端子2882に接続され、負極出力は後側負極端子2897に接続される。本実施例では、並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素が、前側正極端子2882、後側正極端子2892、前側負極端子2887及び後側負極端子2897にて実現される。前側正極端子2882は正極端子として機能し、前側負極端子2887は負極端子として機能する。そして後述するように、前側正極端子2882と後側正極端子2892は、電池パック2860の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニット2146、2147を互いに並列に接続する並列端子としても機能する。複数の並列端子である前側正極端子2882と後側正極端子2892は、互いに隣接するよう配置されており、並列端子群を構成している。同様に、前側負極端子2887と後側負極端子2897は、電池パック2860の出力電圧を低電圧に切り替える切替端子として機能し、さらに複数のセルユニット2146、2147を互いに並列に接続する並列端子としても機能する。複数の並列端子である前側負極端子2887と後側負極端子2897は、互いに隣接するよう配置されており、並列端子群を構成している。さらに後述のように、後側正極端子2892と後側負極端子2897は、電池パック2860の出力電圧を高電圧に切り替える切替端子としても機能し、複数のセルユニット2146、2147を互いに直列に接続する直列端子としても機能する。
電動工具本体2801の機器側端子は、正極入力端子2852と、負極入力端子2857と、ショートバー2859によって構成される。これらの機能は第8の実施例の構成と基本的に同じであり、電動工具本体の端子群(2852、2857、2859b、2859c)が矢印2855のように相対的に移動されて、点線矢印に示すように電池パック2860の接続端子群(2882、2887、2892、2897)に装着されるように構成される。電動工具本体の端子群(2852、2857、2859b、2859c)については、ターミナル部2850(図90参照)全体の図示では無くて金属端子部分だけの図示としている。正極入力端子2852は、クランク状に折り曲げられた金属板材であり、前側正極端子2882と嵌合する端子部2852aが一端側に形成され、他端側にモータ2836側への配線用端子部2852cが形成される。端子部2852aと配線用端子部2852cの間は横方向に延びる接続部2852bであって、接続部2852b全体と、端子部2852aの後方側一部と配線用端子部2852cの前方側一部がターミナル部2850(図90参照)の合成樹脂部分に鋳込まれることになる。負極入力端子2857も同様の形状であって、前側負極端子2887と嵌合する端子部2857aが一端側に形成され、他端側にモータ2836側への配線用端子部2857cが形成される。正極入力端子2852と負極入力端子2857は面対称の形状とされる。端子部2857aと配線用端子部2857cの間は横方向に延びる接続部2857bであって、接続部2857b全体と、端子部2857aの後方側一部と配線用端子部2857cの前方側一部がターミナル部2850の合成樹脂製の基台に鋳込まれることになる。ショートバー2859の水平部分は、正極入力端子2852の接続部2852bと負極入力端子2857の接続部2857bと共にターミナル部2850中に完全に鋳込まれるので、端子部2852a、2857a、2859b、2859cの相対的な位置、特に前後及び左右方向の位置は変わらない。
電池パック2860の装着時には、ショートバー2859の端子部2859bは後側正極端子2892と後側負極端子2897に嵌合される。また、正極入力端子2852は前側正極端子2882と嵌合し、負極入力端子2857は前側負極端子2887と嵌合する。この結果、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147との直列接続回路が形成され、電動工具本体2830側には定格36Vの電圧が供給されることになる。このようにして電池パック2860が電気機器本体2801に接続された状態において、正極端子(2882)と正極入力端子(2852)が第1スロット(スロット2872)を介して接続され、負極端子(2887)と負極入力端子(2857)が第2スロット(スロット2877)を介して接続され、これらの電圧切替要素、切替素子が第1及び第2スロットを介して係合する。
図91(2)は、低電圧の電動工具本体2801に電池パック2860が装着される状況を示している。正極入力端子2822は、クランク状に折り曲げられた金属板材であり、前側正極端子2882及び後側正極端子2892と同時に嵌合する端子部2822aが一端側に形成され、他端側にモータ2806側への配線用端子部2822cが形成される。端子部2822aと配線用端子部2822cの間は横方向に延びる接続部2822bであって、接続部2822b全体と、端子部2822aの一部と配線用端子部2822cの一部がターミナル部2820の合成樹脂部分に鋳込まれることになる。同様にして、負極入力端子2827もクランク状に形成され、前側負極端子2887及び後側負極端子2897と同時に嵌合する端子部2827aと配線用端子部2827cと接続部2827bが形成される。この結果、電動工具本体2801側には定格18Vの電圧が供給されることになる。ここでは端子部2822aは前側正極端子2882と後側正極端子2892に同時に嵌合するような十分な長さに形成され、端子部2827aは前側負極端子2887と後側負極端子2897に同時に嵌合するような十分な長さに形成される。
後側正極端子2892は機器側端子挿入方向(点線矢印で示す方向)から見た形状が倒立したΩ形の形状とされる。ここでは回路基板に固定するための長方形の平板部2892aが形成され、平板部2892aの左右両側辺部から上方向に折り曲げられた2つの腕部2892b、2892dが形成される。2つの腕部2892b、2892dは上方向に行くにつれてお互いが接近するように曲げられて、腕部2892b、2892dの上端部分には接触端子部2892c、2892e(共に図94参照)が形成される。接触端子部2892c、2892eは平行になるように所定の間隔を隔てて配置される略長方形の電極であって、その前側及び後側が対向する接触端子部から離れるように曲げられており、機器側端子が前から後ろ方向に嵌合されやすいような形状とされる。後側正極端子2892として用いられる金属端子部品は、前側正極端子2882、前側負極端子2887、後側負極端子2897にも共通して用いられる共通部品であり、図示しないネジ、又は/及び、半田付けによって回路基板(図示せず)に固定される。
図92は、電池パック2860を36V仕様の電動工具本体2830に装着する際の状況を説明するための図である。図91(1)の状態からさらに電動工具本体2830が電池パック2860に近づくように相対移動させると、最初にショートバー2859の端子部2859b、2859cが前側正極端子2882と前側負極端子2887と嵌合する。この時点では上側セルユニット2146の正極と下側セルユニット2147の負極が非接続の状態なので、電池パック2860の電力は電気機器本体2831側には伝達されない。
電動工具本体2830と電池パック2860が矢印2855の方向にさらに相対移動されるとショートバー2859は前側正極端子2882と前側負極端子2887を通り抜けて、後側正極端子2892と後側負極端子2897の方向に接近することになる。この際、ショートバー2859はいずれの接続端子とも接触しておらず、正極入力端子2852は前側正極端子2882に当接しておらず、負極入力端子2857は前側負極端子2887に当接していない。従って、この時点でも上側セルユニット2146と下側セルユニット2147が非接続の状態なので、電池パック2860の電力は電気機器本体2830には伝達されない。
電動工具本体2830と電池パック2860が矢印2855の方向にさらに相対移動されると、ショートバー2859は後側正極端子2892と後側負極端子2897に嵌合することになる。同時に、正極入力端子2852の端子部2852aは前側正極端子2882に嵌合し、負極入力端子2857の端子部2857aは前側負極端子2887に嵌合する。この結果、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の直列接続状態が実現され、正極入力端子2852と前側負極端子2887間には定格36Vの直流が供給されることになる。
図93は、電池パック2860を18V仕様の電動工具本体2801に装着する際の状況を説明するための図である。図91(2)にて示した状態からさらに電動工具本体2801が電池パック2860に近づくように相対移動させると、図93(1)から(2)のように端子部2822a、2827aが前側正極端子2882と前側負極端子2887と嵌合する。この時点では上側セルユニット2146の正極と下側セルユニット2147の負極が非接続の状態なので、電池パック2860の電力は電動工具本体2801には伝達されない。
図93(2)において、電動工具本体2801と電池パック2860が矢印2825の方向にさらに相対移動されると前後方向に長い端子部2822a、2827aは前側正極端子2882と前側負極端子2887に接触しながら、後側正極端子2892と後側負極端子2897の方向に接近することになる。図93(2)の状態では、端子部2822a、2827aが後側正極端子2892と後側負極端子2897に当接していない。従って、この時点でも上側セルユニット2146の正極と下側セルユニット2147の負極が非接続の状態なので、電池パック2860の電力は電動工具本体2801には伝達されない。
電動工具本体2801と電池パック2860が矢印2825の方向にさらに相対移動されると、端子部2822a、2827aが後側正極端子2892と後側負極端子2897に当接する。この際、端子部2822a、2827aは前側正極端子2882と前側負極端子2887とも嵌合している状態であるので、上側セルユニット2146と下側セルユニット2147の並列接続回路が確立され、正極入力端子2822と負極入力端子2827間には定格18Vの直流が供給されることになる。
図94は、電池パック2860側の端子配置と、電動工具本体2830の端子形状の上面図である。各端子の大きさや配置を説明するために、各部品の縮尺率を合わせて図示している。前側正極端子2882、後側正極端子2892、前側負極端子2887、後側負極端子2897にはそれぞれ左右方向に離間して対向する接触端子部2882c、2882e、2892c、2892e、2887c、2887e、2897c、2897eが設けられる。接触端子部2882c、2892c、2887c、2897cは右側の腕部2882b、2892b、2887b、2897bに接続され、接触端子部2882e、2892e、2887e、2897eは左側の腕部2882d、2892d、2887d、2897dに接続される。これらの接触端子部の前後方向の長さL7は、前側正極端子2882と後側正極端子2892との間隔L8よりも十分小さくなるようにした。尚、すべての端子部品(2882、2892、2887、2897)は共通であるため、接触端子部2882c、2882e、2892c、2892e、2887c、2887e、2897c、2897eの前後方向長さはL7で同じである。前側負極端子2887と後側負極端子2897も同じ間隔L8である。ショートバー2859の端子部の前後方向の長さL9は、前側端子(2882、2887)と後側端子(2892、2897)の間隔L8よりも十分小さくなるように構成される。このように形成すれば、電池パック2860の装着時にショートバー2859によって、前側端子(2882、2887)と後側端子(2892、2897)間を短絡させてしまう虞を効果的に防止できる。正極入力端子2852の端子部2852aと、負極入力端子2857の端子部2857aの長さは、少なくともL9以上とすると良い。
図94(2)は電池パック2860が電動工具本体2830に装着された時の状態を示す図である。ここではショートバー2859の水平部分2859aがむき出しになっているように見えるが、水平部分2859aは図示しないターミナル部の樹脂部の内部に鋳込まれているので、外部には露出していない。以上のように、電池パック2860は、並列接続と直列接続を切り替える電圧切替要素として複数設けられた電力端子(正極端子と負極端子)を用い、電力端子(本明細書では「電源端子」と同意)を前後方向に分けて配置するようにしたので、出力電圧を切り替えるための機械的なスイッチ機構に頼ること無く、電気機器本体に装着するだけで適切な出力電圧に自動的に得ることができる。また、異なる電圧の電気機器間で電池パックを共用することが可能となった。さらに、電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子、正極入力端子、負極端子、負極入力端子及び電圧切替要素と、ショートバー2859による切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置(範囲)に配置されるので、電圧切替要素及び切替素子を搭載しつつも上下方向にコンパクトな電池パックを実現できた。また、直列端子として機能する後側正極端子2892と後側負極端子2897は、正極端子として機能する前側正極端子2882と、負極端子として機能する前側負極端子2887と、上下方向において略同じ高さの位置に配置されるので、上下方向にコンパクトな電池パックを実現できた。
以上、本発明の実施例1〜13を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では18Vと36Vの電圧切替式の電池パックで説明したが、切り替えられる電圧比はこれだけに限られずに、直列接続と並列接続の組み合わせにより切り替えられるその他の電圧比であっても良い。また、本発明の代案に係る発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
1つ目の包括的な発明は、少なくとも一つのセルを有する複数のセルユニットと、前記複数のセルユニットを収容するハウジングと、正極端子及び負極端子と、前記複数のセルユニットを互いに並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは互いに直列に接続して第2の電圧を出力するかを切り替える電圧切替要素と、を有する電池パックである。
例えば前述した実施例1から13は、いずれも1つ目の包括的な発明に対応する実施例である。
1つ目の包括的な発明によれば、出力電圧を切り替え可能とした電池パックを提供するという課題を解決することができる。
2つ目の包括的な発明は、1つ目の包括的な発明にかかる前記電池パックにおいて、前記電圧切替要素は、前記電池パックが前記第1の電圧で駆動する低電圧電気機器本体に接続された状態では前記複数のセルユニットを互いに並列に接続し、前記電池パックが前記第2の電圧で駆動する高電圧電気機器本体に接続された状態では前記複数のセルユニットを互いに直列に接続するよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例1から13は、いずれも2つ目の包括的な発明に対応する実施例である。
2つ目の包括的な発明によれば、異なる電圧の電気機器間で共用できるようにした電池パック及びそれを用いた電気機器を提供するという課題を解決することができる。
3つ目の包括的な発明は、2つ目の包括的な発明にかかる前記電池パックにおいて、前記電圧切替要素は、前記複数のセルユニットが互いに直列に接続された状態を維持したままでは前記電池パックを前記低電圧電気機器本体に接続できないよう構成されるか、又は、前記複数のセルユニットが互いに並列に接続された状態を維持したままでは前記電池パックを前記高電圧電気機器本体に接続できないよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例1から13は、いずれも3つ目の包括的な発明に対応する実施例である。
3つ目の包括的な発明によれば、対応する電気機器に合わせた電圧設定を容易に行うことができるようにし、電圧の設定ミスを効果的に防止できる電池パック及びそれを用いた電気機器を提供するという課題を解決することができる。
4つ目の包括的な発明は、少なくとも一つのセルを有する複数のセルユニットと、前記複数のセルユニットを収容するハウジングであって、電気機器本体に対して前後方向に移動させて装着できるよう構成されたハウジングと、前記複数のセルユニットを構成する一つのセルユニットの正極に接続された正極端子と、前記複数のセルユニットを構成する他の一つのセルユニットの負極に接続された負極端子であって、前記正極端子に対して左右方向に離れて配置された負極端子と、前記複数のセルユニットのそれぞれに接続された複数の切替端子と、を備えた電池パックにおいて、前記電池パックが前記電気機器本体に接続されない場合は、前記複数の切替端子は互いに短絡せず、前記複数のセルユニットは互いに遮断された状態が維持され、前記電池パックが前記電気機器本体に接続された場合は、前記電気機器本体が有する接続素子によって前記複数の切替端子が互いに短絡し、前記複数のセルユニットが互いに接続されるよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例2と実施例5から13が、4つ目の包括的な発明に対応する実施例である。
4つ目の包括的な発明によれば、電池パックに収容された複数のセルユニットの相互の接続を遮断することのできる電池パックを提供するという課題を解決することができる。
以上で述べた包括的な発明に、以下に述べるような一つ又は複数のより具体的な発明を任意に組み合わせることもできる。あるいは、これら包括的な発明に、前述した実施例が備える一つ又は複数の具体的な構成を任意に組み合わせることもできる。このような組み合わせによって成り立つ発明は、以上で述べた課題のうち、少なくともいずれかの課題を解決することができる。また以下に述べる発明は、以上で述べた包括的な発明から独立した発明として考えることもができる。その場合、以下に述べる発明は、上記の課題とは異なる課題を解決する場合がある。
第1の発明は、
少なくとも一つのセルを有する複数のセルユニットと、
前記複数のセルユニットを収容するハウジングであって、電気機器本体に対して前方に移動させて装着できるよう構成されたハウジングと、
前記複数のセルユニットを構成する一つのセルユニットの正極に接続された正極端子と、
前記複数のセルユニットを構成する他の一つのセルユニットの負極に接続された負極端子であって、前記正極端子に対して左右方向に離れて配置された負極端子と、
前記複数のセルユニットを互いに並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは互いに直列に接続して第2の電圧を出力するかを切り替える電圧切替要素と、
を有する電池パックにおいて、
前記電圧切替要素を、前記複数のセルユニットの上方において、前記正極端子及び負極端子と略同じ高さの位置に配置したことを特徴とする電池パックである。
例えば前述した実施例1〜6,8〜13は、いずれも第1の発明に対応する実施例である。
第1の発明によれば、出力電圧を切り替え可能とした電池パックを提供するという課題を解決することができる。さらに第1の発明によれば、電圧切替要素を正極端子及び負極端子と略同じ高さの位置に配置するから、高さ方向の寸法を抑えたコンパクトな電池パックを提供することができるという効果を奏する。
第2の発明は、
前記電圧切替要素を、左右方向において前記正極端子と前記負極端子の間の位置に配置するとともに、前記電圧切替要素を、前後方向において前記正極端子及び前記負極端子と略同じ位置、前記正極端子及び前記負極端子よりも前方の位置、又は前記正極端子及び前記負極端子よりも後方の位置に配置したことを特徴とする電池パックである。
例えば前述した実施例1〜6,8〜13は、いずれも第2の発明に対応する実施例である。実施例1〜6,8〜12には、電圧切替要素を、前後方向において正極端子及び負極端子と略同じ位置に配置した電池パックが記載されている。実施例2には、電圧切替要素を、前後方向において正極端子及び負極端子よりも前方の位置に配置した電池パックが記載されている。実施例4,13には、電圧切替要素を、前後方向において正極端子及び負極端子よりも後方の位置に配置した電池パックが記載されている。
第2の発明によれば、左右方向において正極端子と負極端子の間の位置に電圧切替要素を配置するから、左右方向の寸法を抑えたコンパクトな電池パックを提供することができるという効果を奏する。
第3の発明は、
前記電圧切替要素は、前記電池パックが前記第1の電圧で駆動する低電圧電気機器本体に接続された状態では前記複数のセルユニットを互いに並列に接続し、前記電池パックが前記第2の電圧で駆動する高電圧電気機器本体に接続された状態では前記複数のセルユニットを互いに直列に接続するよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例1〜6,8〜13は、いずれも第3の発明に対応する実施例である。
第3の発明によれば、異なる電圧の電気機器間で共用できるようにした電池パック及びそれを用いた電気機器を提供するという課題を解決することができる。
第4の発明は、
前記電圧切替要素は、前記複数のセルユニットが互いに直列に接続された状態を維持したままでは前記電池パックを前記低電圧電気機器本体に接続できないよう構成されるか、又は、前記複数のセルユニットが互いに並列に接続された状態を維持したままでは前記電池パックを前記高電圧電気機器本体に接続できないよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例1〜6,8〜13は、いずれも第4の発明に対応する実施例である。
第4の発明によれば、対応する電気機器に合わせた電圧設定を容易に行うことができるようにし、電圧の設定ミスを効果的に防止できる電池パック及びそれを用いた電気機器を提供するという課題を解決することができる。
第5の発明は、
前記電池パックの前記電圧切替要素は、前記複数のセルユニットの互いの接続状態を切り替える切替スイッチと、前記切替スイッチを外部から操作可能とする操作部とを有し、
前記電池パックが前記電気機器本体に接続されると、前記電気機器本体に設けられた切替素子が前記操作部と当接し、前記複数のセルユニットの接続状態が切り替わるよう構成された電池パックである。
例えば後述の実施例1,3が、第5の発明に対応する実施例である。
第5の発明によれば、電気機器本体に設けた切替素子によって複数のセルユニットの接続状態を切り替えることができるから、電気機器本体の内部に複雑な回路を設ける必要がなく、シンプルな構造の電気機器本体を提供できるという効果を奏する。
第6の発明は、
前記電池パックの前記電圧切替要素は、前記複数のセルユニットを構成する第1のセルユニットから延びる第1の切替端子と、前記複数のセルユニットを構成する第2のセルユニットから延びる第2の切替端子とを有し、
前記電池パックが前記電気機器本体に接続されると、前記電気機器本体に設けられた接続素子を介して前記第1及び第2の切替端子が互いに電気的に接続され、前記第1及び第2のセルユニットの接続状態が切り替わるよう構成された電池パックである。
例えば前述した実施例2,4,6〜8,13が、第6の発明に対応する実施例である。
第6の発明によれば、電気機器本体に設けた接続素子によって複数のセルユニットの接続状態を切り替えることができるから、電気機器本体の内部に複雑な回路を設ける必要がなく、シンプルな構造の電気機器本体を提供できるという効果を奏する。
第7の発明は、
所定の電圧で動作する高電圧の電気機器本体と、前記電気機本体と接続可能な電池パックと、を有する電気機器であって、
前記電池パックは、
少なくとも一つのセルを有する複数のセルユニットと、
前記複数のセルユニットの一つに接続された正極端子と、
前記複数のセルユニットの他の一つに接続された負極端子であって、前記正極端子に対して左右方向に離れて配置された負極端子と、
前記複数のセルユニットのそれぞれに接続された複数の直列端子と、
前記電池パックに関する情報又は信号を出力する信号端子と、
前記複数のセルユニット、正極端子、負極端子、複数の直列端子及び信号端子を収容するハウジングであって、前記高電圧の電気機器本体に対して前記電池パックを前方に移動させて装着できるよう前後方向に延びた左右一対のレール部と、前記正極端子、負極端子、複数の直列端子及び信号端子を収容する複数のスロットからなるスロット群と、を有するハウジングと、
を備えた電池パックであり、
前記高電圧の電気機器本体は、
負荷装置と、
前記負荷装置に接続された正極入力端子と、
前記負荷装置に接続された負極入力端子と、
前記複数の直列端子のそれぞれと接続可能な複数の高電圧用の接続素子であって、一つの高電圧用の接続素子が他の一つの高電圧用の接続素子に接続された複数の高電圧用の接続素子と、
を備えた高電圧の電気機器本体であり、
前記電池パックが前記高電圧の電気機器本体に接続された場合は、前記正極入力端子が前記スロット群に挿入されて前記正極端子に接続され、前記負極入力端子が前記スロット群に挿入されて前記負極端子に接続され、前記複数の高電圧用の接続素子が前記スロット群に挿入されて前記複数の直列端子にそれぞれ接続され、前記複数のセルユニットが前記複数の直列端子と前記複数の接続素子を介して互いに直列に接続されるよう構成され、
前記電池パックが前記高電圧の電気機器本体に接続されない場合は、前記複数のセルユニットは互いに遮断されるよう構成され、
前記電池パックの前記正極端子、負極端子、複数の直列端子及び信号端子は、上下方向において前記セルユニットの上方に配置され、左右方向において前記左右一対のレール部の間に配置されたことを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例2,5,6,8〜13が、第7の発明に対応する実施例である。
第7の発明によれば、電池パックに収容された複数のセルユニットの相互の接続を遮断することのできる電池パックを提供するという課題を解決することができる。さらに第7の発明によれば、電気機器本体に設けた接続素子によって複数のセルユニットの接続状態を切り替えることができるから、電気機器本体の内部に複雑な回路を設ける必要がなく、シンプルな構造の電気機器本体を提供できるという効果を奏する。
第8の発明は、
前記電池パックは、前記複数のセルユニットが接続される回路基板を有し、
前記回路基板は、前記ハウジングの内部において、前記複数のセルユニットの上方に配置されるとともに、前記複数の直列端子は前記回路基板に直接接続されることを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例5、6、8〜13が、第8の発明に対応する実施例である。
第8の発明によれば、第1及び第2の直列端子の位置が正確に定まるから、第1及び第2の直列端子と第1及び第2の高電圧用の接続素子との接続が安定するという効果を奏する。
第9の発明は、
前記第1及び第2の直列端子は、前記複数のセルユニットの上方において前記正極端子及び負極端子が配置された端子配置領域と略同じ高さの位置に配置されることを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例2,5,6,8〜13が、第9の発明に対応する実施例である。
第9の発明によれば、電池パックの高さを抑えることができ、コンパクトな電池パックとその電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第10の発明は、
前記複数の直列端子を構成する一つの直列端子と他の一つの直列端子が互いに隣接するよう配置されて直列端子群が構成され、
前記複数の高電圧用の接続素子を構成する一つの高電圧用の接続素子と他の一つの高電圧用の接続素子が一体的に接続されて一体型の高電圧用の接続素子が構成され、
前記電池パックが前記高電圧の電気機器本体に接続されると、前記一体型の高電圧用の接続素子が前記直列端子群に接続されるよう構成したことを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例2,4,5が、第10の発明に対応する実施例である。
第10の発明によれば、複数の高電圧用の接続素子が一体的に構成されるから、シンプルな構造の電気機器本体と、その電気機器本体を備えた電気機器を提供することができるという効果を奏する。
第11の発明は、
前記複数の直列端子を構成する一つの直列端子は、前記正極端子を収容するスロット及び前記負極端子を収容するスロットとは別のスロットに収容されることを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例2、5が、第11の発明に対応する実施例である。
第11の発明によれば、スロットに異物が侵入した場合に、直列端子が正極端子及び負極端子と意図せず短絡することを防ぐことができるという効果を奏する。
第12の発明は、
前記複数の直列端子を構成する一つの直列端子と他の一つの直列端子が互いに隣接するよう配置されて直列端子群が構成され、前記直列端子群は前記スロット群を構成する一のスロットに収容されることを特徴とする電気機器である。
例えば前述した実施例2,4,5が、第12の発明に対応する実施例である。
第12の発明によれば、直列端子を収容するために必要となるスロットの数を抑えることができ、コンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第13の発明は、
前記複数の直列端子を構成する一つの直列端子は、前記正極端子を収容するスロット又は前記負極端子を収容するスロットに収容されることを特徴とする電気機器である
例えば後述の実施例6,8〜13が、第13の発明に対応する実施例である。
第13の発明によれば、直列端子を収容するために必要となるスロットの数を抑えることができ、コンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第14の発明は、
前記複数の直列端子を構成する一つの直列端子は、前記複数の直列端子を構成する他の一つの直列端子を収容するスロットとは別のスロットに収容されることを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例6,8〜13が、第14の発明に対応する実施例である。
第14の発明によれば、スロットに異物が侵入した場合に、複数の直列端子が互いに意図せず短絡することを防ぐことができるという効果を奏する。
第15の発明は、
前記電池パックは、前記複数のセルユニットの各々の正極から延びる第1の複数の並列端子と、前記複数のセルユニットの各々の負極から延びる第2の複数の並列端子とを有し、
前記電池パックが、前記所定の電圧よりも低い電圧で動作する低電圧の電気機器本体に接続された場合は、前記低電圧の電気機器本体に設けられた第1の低電圧用の接続素子を介して前記第1の複数の並列端子が互いに接続され、前記電気機器本体に設けられた第2の低電圧用の接続素子を介して前記第2の複数の並列端子が互いに接続され、前記複数のセルユニットが前記第1及び第2の複数の並列端子と前記第1及び第2の低電圧用の接続素子を介して互いに並列に接続されるよう構成され、
前記電池パックが前記低電圧の電気機器本体に接続されない場合は、前記複数のセルユニットは互いに遮断されるよう構成されたことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例2,5,6,8〜13が、第15の発明に対応する実施例である。
第15の発明によれば、異なる電圧の電気機器間で共用できるようにした電池パック及びそれを用いた電気機器を提供するという課題を解決することができる。また電池パックに収容された複数のセルユニットの相互の接続を遮断することのできる電池パックを提供するという課題を解決することができる。
第16の発明は、
前記第1及び第2の複数の並列端子は、前記複数のセルユニットの上方において、前記正極端子及び負極端子と略同じ高さの位置に配置されたことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例5,6,8〜13が、第16の発明に対応する実施例である。
第16の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第17の発明は、
前記信号端子は、上下方向において前記第1及び第2の複数の並列端子と略同じ高さの位置に配置され、左右方向において前記第1の複数の並列端子と前記第2の複数の並列端子の間に配置されることを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例5,6,8〜12が、第17の発明に対応する実施例である。
第17の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第18の発明は、
複数のセルを収容するハウジングと、
前記ハウジングに収容され、電気機器本体への前記ハウジングの装着方向に対して交差する方向に離間して配置される正極端子及び負極端子を備える電源端子と、を有し、
前記複数のセルによって構成された複数のセルユニットを、並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは直列に接続して第2の電圧を前記電源端子に出力するかを切り替え可能とした電池パックであって、
前記装着方向において、前記ハウジング内の前記電源端子が配置される端子配置領域に、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを切り替える電圧切替要素を配置したことを特徴とする電池パックである。
例えば後述の実施例1〜6、8〜13が、第18の発明に対応する実施例である。
第18の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第19の発明は、
前記ハウジングは、前記装着方向に対して交差する方向である左右方向において、互いに離間した位置に設けられた左右一対のレール部を有し、
前記左右一対のレール部は、前記装着方向に対して交差する方向である上下方向において、前記複数のセルユニットよりも上方の位置に配置され、
前記端子配置領域は、左右方向において、前記左右一対のレール部の間に配置され、上下方向において、前記複数のセルユニットよりも上方の位置に配置され、
前記電圧切替要素は、
前記複数のセルユニットを構成する一つのセルユニットの正極から延びる一つの端子である前記正極端子と、前記複数のセルユニットを構成する他の一つのセルユニットの正極から延びる一つの端子である他の正極端子と、を有する複数の正極端子と、
前記複数のセルユニットを構成する一つのセルユニットの負極から延びる一つの端子である前記負極端子と、前記複数のセルユニットを構成する他の一つのセルユニットの負極から延びる一つの端子である他の負極端子と、を有する複数の負極端子と、
を備えており、
前記複数の正極端子と前記複数の負極端子は、左右方向において、互いに離間して配置され、
情報又は信号を入力又は出力する信号端子が、前記端子配置領域に設けられたことを特徴とする電池パックである。
例えば後述の実施例5,6,8〜13が、第19の発明に対応する実施例である。
第19の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第20の発明は、
前記信号端子は、左右方向において、前記複数の正極端子と前記複数の負極端子との間の位置に配置されたことを特徴とする電池パックである。
例えば後述の実施例5,6,8〜13が、第20の発明に対応する実施例である。
第20の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第21の発明は、
前記低電圧の電気機器本体は、負荷装置と、前記負荷装置に接続可能な正極入力端子と、前記負荷装置に接続可能な負極入力端子とを有し、
前記電池パックが前記低電圧の電気機器本体に接続された場合は、前記複数の正極端子を構成する一つの正極端子と他の一つの正極端子が、前記正極入力端子を介して互いに接続され、前記複数の負極端子を構成する一つの負極端子と他の一つの負極端子が、前記負極入力端子を介して互いに接続され、前記複数のセルユニットが互いに並列に接続され、
前記電池パックが前記低電圧の電気機器本体に接続されない場合は、前記複数のセルユニットが互いに遮断されるよう構成したことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例5,6,8〜13が、第21の発明に対応する実施例である。
第21の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第22の発明は、
前記高電圧の電気機器本体は、負荷装置と、前記負荷装置に接続可能な正極入力端子と、前記負荷装置に接続可能な負極入力端子と、導通端子とを有し、
前記電池パックが前記高電圧の電気機器本体に接続された場合は、前記複数の正極端子を構成する一つの正極端子が前記正極入力端子に接続され、前記複数の負極端子を構成する一つの負極端子が前記負極入力端子に接続され、前記複数の正極端子を構成する他の一つの正極端子と前記複数の負極端子を構成する他の一つの負極端子が、前記導通端子を介して互いに接続され、前記複数のセルユニットが互いに直列に接続され、
前記電池パックが前記高電圧の電気機器本体に接続されない場合は、前記複数のセルユニットが互いに遮断されるよう構成したことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例5,6,8〜13が、第22の発明に対応する実施例である。
第22の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第23の発明は、
前記電池パックは、前記複数の正極端子を構成する他の一つの正極端子に接続された第1の直列接続用端子と、前記複数の負極端子を構成する他の一つの負極端子に接続された第2の直列接続用端子とを有し、前記第1及び第2の直列接続用端子は、前記端子配置領域において互いに隣接するよう配置され、
前記高電圧の電気機器本体の前記導通端子は、前記第1及び第2の直列接続用端子と篏合可能に構成され、
前記信号端子は、左右方向において、前記複数の正極端子と前記第1及び第2の直列接続用端子との間の位置に、又は前記複数の負極端子と前記第1及び第2の直列接続用端子との間の位置に、配置されたことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例5が、第23の発明に対応する実施例である。
第23の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
第24の発明は、
前記導通端子は、前記複数の正極端子を構成する他の一つの正極端子と前記複数の負極端子を構成する他の一つの負極端子と篏合可能に構成され、
前記信号端子は、左右方向において、前記複数の正極端子と前記複数の負極端子の間の位置に配置されたことを特徴とする電気機器である。
例えば後述の実施例6,8〜13が、第24の発明に対応する実施例である。
第24の発明によれば、高さを抑えたコンパクトな電池パックと、その電池パックを備えた電気機器を提供できるという効果を奏する。
さらに本願に開示された、他の発明の特徴を説明すると以下の通りである。これら発明の特徴に後述の実施例が備える一つ又は複数の具体的な構成を任意に組み合わせて発明を構成することもできる。
本発明の一つの特徴によれば、複数のセルを収容するハウジングと、ハウジングに収容され、電気機器本体へのハウジングの装着方向に対して交差する方向に離間して配置される正極端子及び負極端子を備える電源端子と、を有し、複数のセルによって構成された複数のセルユニットを、並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは直列に接続して第2の電圧を電源端子に出力するかを切り替え可能とした電池パックであって、装着方向において、ハウジング内の電源端子が配置される端子配置領域に、第1の電圧と第2の電圧とを切り替える電圧切替要素を配置した。電圧切替要素は接続される電気機器本体の端子に接続可能な切替端子群を備え、切替端子群は異なる複数のセルユニットのそれぞれから延びる端子を隣接配置して構成した。また、切替端子群は異なるセルユニットのそれぞれから延びる端子の内、同極の端子を隣接配置して並列端子群を構成し、並列端子群に電気機器本体の端子が接続されることで電源端子に第1の電圧を出力するように構成した。さらに、電源端子が並列端子群を構成する。
本発明の他の特徴によれば、切替端子群は異なるセルユニットのそれぞれから延びる端子の内、異極の端子を隣接配置して直列端子群を構成し、直列端子群に電気機器本体の端子が接続されることで電源端子に第2の電圧を出力するように構成した。また、切替端子群は接続される電気機器本体に応じて電気機器本体の端子との接続形態が異なる複数の端子群を備え、端子群は、装着方向に並ぶように配置されるようにした。
本発明の他の特徴によれば、並列に接続の第1の電圧を出力するか、直列接続の第2の電圧を出力するかを切替え可能とした電池パックにおいて、正極端子と負極端子と、ハウジングに設けられ電気機器本体の端子取付部に設けられ正極端子と接続される正極入力端子が挿入される第1スロットと、電気機器本体へのハウジングの装着方向に交差する方向に離間してハウジングに設けられ、端子取付部に設けられ負極端子と接続される負極入力端子が挿入される第2スロットと、装着方向において第1及び第2スロットが配置される領域に設けられ、電気機器本体側の端子取付部に設けられ出力電圧を切り替えるための切替素子を挿入させるため第3スロットを設けた。この第3スロットは、交差する方向において、第1スロットと第2スロットの間の領域に配置される。また、正極端子及び負極端子として、第1の電圧で駆動する第1の電気機器本体が接続可能な第1の正極端子と第1の負極端子を有する第1の端子組と、第1の電圧より高い第2の電圧で駆動する第2の電気機器本体が接続可能な第2の正極端子と第2の負極端子を有する第2の端子組をそれぞれ独立して形成し、第1の端子組が接続されると第1の電圧が出力され、第2の端子組と切替素子の双方が接続されると第2の電圧が出力されるように構成した。さらに、第1及び第2スロットには、複数のセルユニットの正極から延びる複数の正極端子を装着方向に並べて構成される並列正極端子群と、複数のセルユニットの負極から延びる複数の負極端子を装着方向に並べて構成される並列負極端子群とを配置した。
本発明のさらに他の特徴によれば、第3スロット内には複数のセルユニットを直列接続させるための直列用端子群が装着方向に並んで配置される。この際、装着方向にみて、第2の端子組は、第1の端子組よりも奥側に位置するように配置される。また、第3スロット内に複数のセルユニットの内の第1及び第2のセルユニットを直列に接続可能とする直列接続子と、第1及び第2のセルユニットを並列に接続可能とする並列接続子を設け、第1の電気機器本体が電池パックに接続された場合には、直列接続子を導通させつつ、並列接続子を遮断することで、第1及び第2のセルユニットを直列に接続し、第2の電気機器本体が電池パックに接続された場合には、直列接続子を遮断しつつ、並列接続子を導通させることで、第1及び第2のセルユニットを並列に接続するよう構成した。尚、第3スロット内において、直列接続子と並列接続子とを装着方向に並べて配置しても良い。この際、装着方向において、第3スロットの長さが第1及び第2スロットよりも長く構成すると良い。
本発明のさらに他の特徴によれば、複数のセルを収容するハウジングを有し、セルを直列接続した複数のセルユニットを並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは複数のセルユニットを直列に接続して第2の電圧を出力するかを切替え可能とした電池パックであって、正極出力端子と、負極出力端子と、電気機器本体の端子取付部に形成された出力電圧を切り替えるための接続素子を挿入させるためのスロット部を設けた。この接続素子を設けるためのスロットは、正極出力端子用の第1のスロット、負極端子用の第2スロットと別に第3のスロットとして設けられるだけでなく、同じスロットを兼用して第1のスロット内の一部と、第2のスロットの一部を接続素子用のスロットとして用いるようにしても良い。この構成は、例えば実施例1、2〜6、8〜13に対応する。また、正極出力端子及び負極出力端子として、第1の電圧を出力する正極出力端子及び負極出力端子を有する第1端子組と、第2の電圧を出力する正極出力端子及び負極出力端子を有する第2端子組とをそれぞれ独立して形成し、複数のセルユニットを直列接続するための直列接続要素を有し、第1端子組が電気機器本体の電源入力端子組に接続されると第1の電圧が出力され、第2端子組と直列接続要素がそれぞれ、電気機器本体の電源入力端子組、と接続素子に接続されると第2の電圧が出力されるように構成した。さらに、スロット部は、正極出力端子が配置される第1スロットと、負極出力端子が配置される第2スロットを有し、第1スロットには、複数のセルユニットの各正極から延びる複数の正極端子を、電気機器本体への装着方向に並べて正極出力端子を構成する並列正極端子群が配置され、第2スロットには、複数のセルユニットの各負極から延びる複数の負極端子を、装着方向に並べて負極出力端子を構成する並列負極端子群が配置され、電気機器本体の電源入力端子組が並列正極端子群及び並列負極端子群に接続されると、第1の電圧を出力するように構成した。接続素子は電源入力端子組である。
本発明さらに他の特徴によれば、複数のセルユニットを直列接続するための直列接続要素を有し、スロット部には直列接続要素が配置され、接続素子が直列接続要素に接続されると共に、電気機器本体の電源入力端子組が正極出力端子及び負極出力端子に接続されると、第2の電圧を出力するように構成した。また、直列接続要素は、一のセルユニットの正極から延びる正極端子と、他のセルユニットの負極から延びる負極端子から構成され、正極出力端子は他のセルユニットの正極から延びる正極端子から構成され、負極出力端子は一のセルユニットの負極から延びる負極端子から構成されるようにした。さらに、スロット部は、電池パックの装着方向と交差する方向に離れて配置される正極出力端子と負極出力端子の間に配置される。尚、電池パックの装着方向にみて、第2端子組は、第1端子組よりも奥側に位置するように配置すると良い。
本発明のさらに他の特徴によれば、複数のセルユニットを備えた電池パックと、電池パックが装着される電気機器本体と、を有し、電池パックは、複数のセルユニットの各正極から延びる複数の正極端子を電気機器本体への接続方向に並べて構成される並列正極端子群と、複数のセルユニットの各負極から延びる複数の負極端子を装着方向に並べて構成される並列負極端子群とを備え、電気機器本体は、並列用正極端子と並列用負極端子とを備え、電気機器本体に電池パックが接続されると、並列用正極端子が並列正極端子群に接続されると共に、並列用負極端子が並列負極端子群に接続されると、複数のセルユニットが並列に接続されるように構成した。この構成は、例えば実施例2、5、6、8〜13に対応する。また、複数のセルユニットを備えた電池パックと、電池パックが接続される電気機器本体とを有し、電池パックは複数のセルユニットを直列に接続するための直列端子群を備え、電気機器本体は直列端子群に接続される直列用端子を備え、電気機器本体に電池パックが接続されると、直列用端子が直列端子群に接続され、これにより複数のセルユニットが直列に接続されるように構成した。
本発明のさらに他の特徴によれば、複数のセルユニットを備えた電池パックと、電池パックが接続される第1の電気機器本体と、電池パックが接続され第1の電気機器本体よりも定格電圧の大きな第2の電気機器本体と、を有する電気機器システムであって、第1の電気機器本体は、接続方向と交差する方向に離間して配置される第1正極入力端子と第1負極入力端子とを含む第1電源端子組を備え、第2の電気機器本体は、交差する方向で第1電源端子組と異なる位置に配置される第2正極端子と第2負極端子を含む第2電源端子組と、セルユニットを直列接続するための直列用端子を備え、電池パックは第1電源端子組と接続される第1出力端子組と、第2電源端子組と接続される第2出力端子組と、直列用端子を接続される直列接続端子とを備え、電池パックが第1の電気機器本体に接続されると第1電源端子組と第1出力端子組が接続されて複数のセルユニットが並列接続され、電池パックが第2の電気機器本体に接続されると第2電源端子組と第2出力端子組が接続されると共に、直列用端子と直列接続端子が接続されてセルユニットが直列接続されるように構成した。
本発明のさらに他の特徴によれば、少なくとも1つのセルを有する複数のセルユニットと、複数のセルユニットに接続された複数の電源端子と、複数のセルユニットに接続され、複数のセルユニットを、互いに並列に接続するか、あるいは互いに直列に接続するかを切替え可能な電圧切替要素と、を備えた電池パックであって、複数の電源端子は、セルユニットの上方の位置において、互いに左右方向に並ぶように配置されるとともに、電圧切替要素は、上下方向において複数の電源端子が配置された高さと略同じ高さの位置に配置される。この構成はすべての実施例1〜13に対応する。この電池パックが装着された電気機器において、電気機器本体は、複数の電源端子に接続される複数の機器側電源端子と、電圧切替要素に係合する切替素子とを備え、電池パックが電気機器本体に接続された状態において、複数の電源端子、複数の機器側電源端子、電圧切替要素及び切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置に配置される。また、複数の電源端子は、セルユニットの上方の位置において、互いに左右方向に並ぶように配置された正極端子と負極端子を有し、電圧切替要素は、正極端子が配置された位置から負極端子が配置された位置へと至る領域に配置される。
本発明のさらに他の特徴によれば、電気機器本体は、正極端子に接続される正極入力端子と、負極端子に接続される負極入力端子と、電圧切替要素に係合する切替素子とを備え、電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子、正極入力端子、負極端子、負極入力端子、電圧切替要素及び切替素子が、上下方向において略同じ高さの位置に配置される。この構成はすべての実施例1〜13に対応する。また、複数の電源端子は、セルユニットの上方の位置において、互いに左右方向に並ぶように配置された正極端子と負極端子を有し、電池パックは複数のセルユニットと電圧切替要素を収容するハウジングを有しており、ハウジングは正極端子に対応した位置に設けられた第1スロットと、負極端子に対応した位置に設けられた第2スロットと、電圧切替要素に対応した位置に設けられた第3スロットとを有する。さらに、電気機器本体は、正極端子に接続される正極入力端子と、負極端子に接続される負極入力端子と、電圧切替要素に係合する切替素子とを備え、電池パックが電気機器本体に接続された状態において、正極端子と正極入力端子が第1スロットを介して接続され、負極端子と負極入力端子が第2スロットを介して接続され、電圧切替要素と切替素子が第3スロットを介して係合する。これらの構成は、例えば実施例1〜6、8〜13に対応する。
本発明のさらに他の特徴によれば、複数のセルを収容するハウジングを有し、セルが複数本ずつ直列接続されて複数のセルユニットが構成され、複数のセルユニットを並列に接続して第1の電圧を出力するか、あるいは複数のセルユニットを直列に接続して第2の電圧を出力するかを切替え可能とした電池パックであって、低電圧用の正極端子及び負極端子を有する低電圧用端子組と、高電圧用の正極端子及び負極端子を有する高電圧用端子組と、をそれぞれ独立して設け、低電圧用の端子組の占める領域は高電圧用の端子組の占める範囲に含まれるように配置され、接続する電気機器本体の端子の装着に応じて電圧切替機構が動作して電圧を切り替えるようにした。この構成はすべての実施例1〜13に対応する。また、電池パックにおいて、電気機器本体の端子の位置に応じてセルユニット間の接点位置が移動することにより、複数のセルユニットを並列に接続するか直列に接続するかを切り替える電圧切替機構を有するように構成した。
本発明のさらに他の特徴によれば、電圧切替要素は、複数のセルユニットに接続される電池パック側の端子で構成され、切替素子は、電池パック側の端子に対応した位置に配置された電気機器側の端子で構成され、電池パックが電気機器本体に接続された状態では、電池パック側の端子と電気機器側の端子が接続されて、複数のセルユニットが互いに接続され、電池パックが電気機器本体に接続されていない状態では、電池パック側の端子と電気機器側の端子の接続が遮断されて、複数のセルユニットの接続が遮断されるように構成した。
また本発明によれば、電池パックの出力電圧を切り替えるための電圧切替要素を、電池パックの電源端子が配置された位置と略同じ高さの位置に配置するから、電気機器本体と電池パックの両方、あるいは一方を、コンパクトに構成した電気機器を提供することができる。
また本発明によれば、電池パックの出力電圧を切り替えるための電圧切替要素を電池パックの端子で構成するから、低電圧用の並列接続回路と高電圧用の直列接続回路を切り替えるための機械的なスイッチ機構が不要となり、異なる電圧の電気機器に共用することができて、使いやすい電池パックを実現できる。また、機械的なスイッチ機構を用いることに比べて製造原価を安く抑えることができ、耐久性を向上させることができる。よって電気機器本体と電池パックの両方、あるいは一方を、シンプルな構造で構成した電気機器を提供することができる。
さらに本発明によれば、108V出力となる接点端子は、36V出力端子よりも電池パックの奥側に設けたので、高電圧出力時の遠面距離を確保する事が可能となる。
さらに本発明によれば、電池パックの電圧切替要素を複数のセルユニットに接続された電池パック側の端子で構成し、電気機器本体の切替素子を前記電池パック側端子に接続可能な電気機器側の端子で構成するから、電池パックの取り外し時には、複数のセルユニットが接続されない状態とされるので、輸送時や保管時に最適な状態とすることができる。よって電気機器を輸送する際に、電池パックに収容された複数のリチウムイオン電池等の相互の接続を遮断することのできる電池パック及びそれを用いた電気機器を提供することができる。