以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、電気機器の一例として電池パックにて動作する電動工具を用いて説明するものとする。
本発明の実施例係る電池パック100が装着される電動工具本体1の斜視図である。電気機器の一形態である電動工具には様々な種類のものがあり、広く用いられている定格電圧18Vの電池パックを用いる電動工具に加えて、より高出力が得られる定格電圧36Vの電池パック100を用いる電動工具が市販されている。また、出願者によって定格電圧18Vの電動工具本体と定格電圧36Vの電動工具本体1のいずれにも装着可能な複数電圧対応の電池パックが市販されている。
図1で示す電動工具本体1はインパクト工具と呼ばれるものであって、ビット等の先端工具9を出力軸に装着し、先端工具に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより締め付け作業を行う。電動工具本体1は、外形を形成する外枠たるハウジング2を備える。ハウジング2は、略筒状の胴体部2aと、胴体部2aの軸方向中央付近から直交方向(下方)に延在するハンドル部2bが形成される。ハウジング2の前方側には出力軸たるアンビル(図では見えない)が設けられ、出力軸に断面形状が六角形状の六角穴(図示せず)が形成され、出力軸の先端には先端工具9を装着するためのワンタッチ式の先端工具保持部8が設けられる。ここでは先端工具9としてプラスのドライバービットが装着されている。ハンドル部2bの一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状のトリガスイッチ4が設けられる。トリガスイッチ4の近傍には、出力軸の回転方向を切り換える為の正逆切替レバー5が設けられる。ハンドル部2bの下方には電池パック100を装着するための電池パック装着部2cが形成される。
電池パック装着部2cには、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びる溝部を含むレール部11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部30が設けられる。ターミナル部30は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子32、負極入力端子37、LD端子(異常信号端子)38が鋳込まれる。さらに、電池パック100の正極端子172(図4で後述)と負極端子177(図4で後述)を短絡させるためのU字状のショートバーが鋳込まれており、ショートバーの一端が短絡用端子39aとなり、他端が短絡用端子39bとなる。ここでは正極入力端子32の下側に離間するように短絡用端子39aが配置され、負極入力端子37の下側に離間するように短絡用端子39aが配置される。尚、ここでは後述する他の信号用の接続端子については図示を省略している。
ターミナル部30は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面30aと、水平面30bが形成され、水平面30bは電池パック100の装着時に、上段面113(図2で後述)と隣接、対向する面となる。水平面30bの前方側には、電池パック100の隆起部115と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部14が形成される。突起部14は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
図2は本発明の実施例に係る電池パック100の斜視図である。電池パック100は、上ケース110と下ケース101からなるケースに、定格電圧3.6Vのリチウムイオン電池セルを10本収容したものである。ここでは、リチウムイオン電池のセル5本を直列接続してなるセルユニットが2組収容され、これら2つのセルユニットを直列接続した状態とすることで36Vの定格出力(高電圧出力)が得られるようにし、並列接続した状態とすることで18Vの定格出力(低電圧出力)が得られるように構成した。
電池パック100の前方の段差部112から上段面113にて後方側に延びる部分がスロット群配置領域120になる。上ケース110の下段面111と上段面113は階段状に形成され、それらの接続部分から後方側に延びる複数のスロット121〜128が形成される。スロット121〜128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電動工具本体1又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子が配設される。スロット121〜128は、電池パック100の右側のレール部(レール溝)118aに近い側のスロット121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、左側のレール部(レール溝)118bに近い側のスロット127が負極端子(−端子)の挿入口となる。正極端子と負極端子(電力端子群)の間には、電池パック100と電動工具本体1や外部の充電装置(図示せず)への信号伝達用の複数の信号端子が配置され、ここでは信号端子用の4つのスロット123〜126が電力端子群の間に設けられる。尚、スロット123は予備の端子挿入口であり、本実施例では端子は設けられない。スロット124は電池パック100の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(−端子)の挿入口となるスロット127の左側には、さらに電池パック100内に含まれる電池保護回路(図示せず)による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット128が設けられる。
電池パック100の上段面113の側面には、2本のレール部118a、118bが形成される。レール部118a、118bは、長手方向が電池パック100の装着方向と平行になるように形成される。レール部118a、118bの溝部分は、前方側端部が開放端となり、後方側端部が隆起部115の前側壁面と接続された閉鎖端となる。上段面113の後方側には、隆起するように形成された隆起部115が形成される。隆起部115の中央付近に窪み状のストッパ部119が形成される。ストッパ部119は、電池パック100を、電池パック装着部2cに装着した際に突起部14(図1参照)の突き当て面となる。電池パック100が電動工具本体1の所定の位置に装着されると電動工具本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック100に配設された複数の接続端子が接触して導通状態となる。電池パック100を電動工具本体1から取り外すときは、左右両側にあるラッチ116a、116bを押すことにより、爪状の係止部117a(図では見えない)、117bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック100を装着方向と反対側に移動させる。
本実施例の電池パック100は、電池パック100側の端子構成と、36V用の電動工具本体1の機器側のターミナル部30の端子構成を工夫することにより、18V用の従来の電動工具本体にも36V用の電動工具本体1にも装着できるようにした。この装着の際に、電池パック100を18V用の電動工具本体51に装着すると電池パック100の出力が自動的に18Vとなり、36V用の電動工具本体1に装着すると電池パック100の出力が自動的に36Vとなるように構成した。
図3は電池パック100の断面図である。電池パック100は下ケース101と上ケース110の間の収容空間内に、合成樹脂製のセパレータ149に保持されたリチウムイオンの電池セル131〜135、141〜145の合計10本が収容される。電池セル131〜135が小容量側のセルユニット(第2のセルユニット130)を構成し、電池セル141〜145が大容量側のセルユニット(第1のセルユニット140)を構成する。ここでは電池セル131〜135として、いわゆる14700サイズ(直径14mm、全長70mm)のリチウムイオン電池セルを用い、電池セル141〜145として、いわゆる21700サイズ(直径21mm、全長70mm)のリチウムイオン電池セルを用いる。この際、並べ方を工夫する。電池セルは上段と下段の2段に積むようにして、上段は、前側から直径14mmの小径電池セルと直径21mmの大径電池セルを交互に積むようにした。つまり、上段前方から、電池セル131→142→133→144→135のように並べる。一方、下段は前方を大径セル(電池セル141)とし、電池セル141→132→143→134→145のように並べる。また、電池セルの正極の向きは同一ではなく、直列接続の隣接する電池セル同士は正極の向きが反対になるように配置される。ここでは、電池セル144、142、132、134は左側に正極が来るように配置され、電池セル131、133、136、145、143、141は左側に負極が来るように配置される。また、電池セル141〜145は側面視でM字状に配置され、電池セル131〜135は側面視でW字状に配置される。
このように異なる直径の電池セルを前後及び上下方向に交互に積層することで、従来とほぼ同等の下ケース内に定格容量の大きな電池パックを収容することが可能となる。図13はそのサイズを説明するための模式図である。従来の18Vの電池パック301は、セパレータの大きさを考慮しないとすると、縦方向に36mm(直径18mmの2倍)、前後方向に90mm(直径18mmの5倍)のスペースが必要であった。一方、本実施例の電池パック100(100A)では、縦方向に35mm(直径14mm+直径21mm)のスペースであり、従来例より1mm少なくて済み、前後方向には図13の上段(図3の下段)は89mm(電池セルを単純に前後方向に並べると直径21mm×3+直径14mm×2で91mmであるが、軸心が上下にずれており前後方向における各電池セルの最外径部分がオーバーラップしているため単純に並べた場合の寸法と比較して小さい)であり、従来例より1mm少なくて済む。なお、図13の下段(図3の上段)は82mmである(上記と同じ理由で、単純に前後方向に並べた場合の直径21mm×2+直径14mm×3で84mmより小さい)。このように、異径電池セルの混在によって、前後方向及び上下方向の寸法を従来よりも小さく構成できた。但し、左右方向には従来の電池パック301の65mmより5mmほど大きい70mmになっている。
図13に示す例では、従来の電池パック301は、定格電圧3.6V、定格容量2500mAhの電池セルを5本ずつ直列接続した2つのセルユニットを並列接続したので、定格電圧18V、定格容量5.0Ahとなった。一方、本実施例の電池パック100(100A)では、定格電圧3.6V、定格容量5000mAhの大径電池セル5本と、定格電圧3.6V、定格容量1000mAhの小径電池セル5本を組み合わせることによって、定格電圧18V、定格容量6.0Ahの電池パックを実現できた。
再び図3に戻る。電池セル131〜135は、金属製の薄板で形成された第2の接続タブ(136〜138等)を用いて直列に接続される。同様にして電池セル141〜145は、金属製の第1の接続タブ(146〜148等)を用いて直列に接続される。これらの接続タブは、例えばステンレス製であって、電池セルへの固定は複数箇所のスポット溶接によって行われる。各接続タブには各電池セルへのスポット溶接を安定させるために、3つの切り抜き穴がそれぞれ形成される。本実施例では2種類の直径の異なる電池セルを交互に配置した関係で、同一セルユニット内での電池セル同士の接続は、斜め上下に隣接する電池セル同士となる。従って、接続タブ146、147は斜めの延在距離が大きくなる。また、接続タブ136、137は斜めの延在距離が大きくなり、かつ幅が細くなる。ここで、電池セル131〜135、141〜145をなるべく密に詰めて下ケース101の大きさを抑えているため、接続タブ136は、上段に位置する電池セル131と電池セル131の斜め下の下段に位置する電池セル132を接続しており、側面視で矢印136aの部分にて電池セル141、142の位置とオーバーラップする(重なっている)。同様に、接続タブ137は、側面視で矢印137aの部分にて電池セル143、144の位置とオーバーラップする(重なっている)。即ち、接続タブ(例えば第2の接続タブ136)と、この接続タブで接続された電池セル(例えば第2の接続タブ136で接続された第2の電池セルユニットの電池セル131及び132)以外の電池セル(例えば第1の電池セルユニットの電池セル141及び142)とがオーバーラップする。従って、接続タブ136、137と電池セル142〜144の間の、側面視(電池セルの軸線方向視)でオーバーラップする部分136a、137aに絶縁紙(絶縁部材)136b、137bを介在させるようにして十分な絶縁対策をすることが重要である。
電池セル141〜145によって構成される第1のセルユニット140の両端電圧は、電池セル141の右側端部の接続タブからの延長板(図では見えない)と、電池セル141の左側端部の接続タブからの延長板148aの端部148bによって回路基板150に半田付け等で電気的に接続される。延長板148aの上側端部148bは、回路基板150に形成された貫通穴(図では見えない)を下から上に貫通され、回路基板150の上面において回路パターンと半田付けにより固定される。同様にして、電池セル131〜135によって構成される第2のセルユニット130の両端電圧は、電池セル131の右側端部の接続タブからの延長板(図では見えない)と、電池セル135の左側端部の接続タブからの延長板138aによって回路基板150に半田付け等で電気的に接続される。延長板138aの上側端部は、回路基板150に形成された貫通穴(図では見えない)を下から上に貫通され、回路基板150の上面において回路パターンと半田付けにより固定される。
セパレータ149は、不導体材料たる合成樹脂の一体成形にて構成されたもので、複数の電池セル131〜135、141〜145を整然かつ非接触状態で固定すると共に、その上側に回路基板150を固定する機能を果たす。回路基板150は図示しないネジや、ラッチ爪等の公知の手段によってセパレータ149に固定される。回路基板150には、正極端子162及び172、負極端子167及び177等の複数の接続端子が固定される。接続端子は、切り抜いた金属の薄板をU字状に曲げて、脚部分を回路基板150の貫通穴に上側から下側に貫通させて、回路基板150の下側にて半田付けすることによって固定される。
図4(A)は本実施例の正極端子(162と172)、負極端子(167と177)の形状を示す部分斜視図と高電圧出力時の接続回路を示す図であり、(B)は高電圧用電気機器のターミナル部30と、電池パック100側の端子との接続状況を示すための部分斜視図である。図4(A)に示すように、本実施例の電池パック100の接続端子群のうち、正極端子と負極端子だけは、電圧可変電池パックを実現するために2つずつ設けられる。それ以外の接続端子、即ち、スロット124〜126、128のT端子、V端子、LS端子、LD端子(いずれも図示せず)の数は1つずつであって、従来から用いられる電圧固定電池パックと同様の端子形状である。スロット122には、上側正極端子162と下側正極端子172が並んで配置される。上側正極端子162と下側正極端子172は金属板のプレス加工によって形成され、脚部を回路基板150に貫通させて、貫通された側を半田付け等により固定する。上側正極端子162と下側正極端子172は距離を隔てて配置され、物理的に非接触状態にあり、図6にて後述するスイッチ部151によって短絡される場合を除いて、電池パック100内では電気的に非導通状態にある。同様にしてスロット127には、上側負極端子167と下側負極端子177が並んで配置される。上側負極端子167と下側負極端子177も距離を隔てて配置され、物理的に非接触状態にあり、図6にて後述するスイッチ部152によって短絡される場合を除いて、電池パック100内では電気的に非導通状態にある。上側正極端子162と上側負極端子167、下側正極端子172と下側負極端子177は同じ金属部品である。
電池パック100の内部には、5本のリチウムイオンの電池セル141〜145が直列に接続された大容量のセルユニット(第1のセルユニット140)と電池セル131〜135が直列に接続された小容量のセルユニット(第2のセルユニット130)が収容され、第1のセルユニット140の正極が第二正極端子に相当する下側正極端子172に接続され、第1のセルユニット140の負極が第二負極端子に相当する上側負極端子167に接続される。同様に、第2のセルユニット130の正極が第一正極端子に相当する上側正極端子162に接続され、第2のセルユニット130の負極が第一負極端子に相当する下側負極端子177に接続される。このような電池パック100の形態において、電動工具本体1側の正極入力端子32を上側正極端子162に接続し、負極入力端子37を上側負極端子167に接続するとともに、点線39で示すように電気機器本体1側のターミナル部30に含まれるショートバーにて下側正極端子172と下側負極端子177を電気的に接続すれば、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の直列接続の出力、即ち定格電圧36Vが電池パック100から電動工具本体1の負荷装置40に出力されることになる。
図4(B)は定格電圧36Vの電動工具本体1のターミナル部30と、電池パック100側の接続端子(162、167、172,177)との接続関係を示す図である。ターミナル部30は、電動工具本体1の電池パック装着部2cに設けられる。ターミナル部30には、電池パック100のスロット121〜128(図2参照)に対応する機器側端子(32、39a、34〜36、37、39b、38)が設けられ、合成樹脂製の基台31に鋳込まれるようにして固定される。短絡回路39は金属板でできたショートバーであり、図4で示したように正極入力端子32や負極入力端子37等の他の機器側端子と共に、合成樹脂製の基台31にU字状に折り曲げた金属板を鋳込むことで構成できる。U字状に折り曲げた金属板の一方側の端部が短絡用端子39aとなり、他方側の端部が短絡用端子39bとなる。基台31の上側の接続端子部と、下側の板状の端子部であって同じ参照符号の部分は電気的に導通されている金属板により構成される。ここではスロット123(図2参照)に対応する位置には機器側端子は設けられない。電力用の入力端子として、受電用の正極入力端子32と負極入力端子37は他の端子と比べて小さいサイズで構成され、短絡用端子39a、39bの上側にそれぞれ設けられる。正極入力端子32と短絡用端子39aは導通していない。また、負極入力端子37と短絡用端子39bは導通していない。
電池パック100の装着時において、正極入力端子32は上側正極端子162だけに嵌合し、負極入力端子37は上側負極端子167だけに嵌合する。また、電動工具本体1のターミナル部30には、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させる小さい短絡端子39a、39bが設けられるので、電池パック100の装着時には下側正極端子172と下側負極端子177が短絡回路39によって電気的に接続される。
正極入力端子32は、上側正極端子162と嵌合する部分であって平板状に形成された端子部と、電動工具本体1側の回路基板側との結線を行うものであって基台31の上方に突出する端子部により構成される。正極入力端子32は合成樹脂製の基台31に鋳込まれる。負極入力端子37も正極入力端子32と同様であって、端子板の高さが、他の端子(34〜36、38)板に比べて半分よりやや小さい程度の高さとされる。他の端子(34〜36、38)は信号伝達用の端子である。ターミナル部30の合成樹脂製の基台31の前側と後側には、ハウジングによって挟持されるための凹部31aと31bが設けられる。
図4(B)において、電池パック100を装着する際には、電池パック100を電動工具本体1に対して差し込み方向に沿って相対移動させると、正極入力端子32と短絡用端子39aが同一のスロット122(図4参照)を通って内部まで挿入され、上側正極端子162と下側正極端子172にそれぞれ嵌合される。このとき、正極入力端子32が上側正極端子162の嵌合部間を押し広げるようにして上側正極端子162の腕部162aと162bの間に圧入され、短絡用端子39aが下側正極端子172の腕部172aと172bの間を押し広げるようにして圧入される。同様にして、負極入力端子37と短絡用端子39bが同一のスロット127(図2参照)を通って内部まで挿入され、それぞれ上側負極端子167と下側負極端子177に嵌合される。この際、負極入力端子37が嵌合部間を押し広げるようにして上側負極端子167の腕部167aと167bの間に圧入される。さらに、短絡用端子39bが下側負極端子177の腕部177aと177bの間を押し広げるようにして圧入される。このように図4(B)の接続形態の実現によって、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の直列接続の出力、即ち定格電圧36Vが電池パック100から出力されることになる。
図5(A)及び(B)は、従来の定格電圧18Vの電動工具本体(図示せず)に本実施例の電池パック100を装着した際の接続状態を示す図である。ターミナル部80は、電動工具本体の電池パック装着部に設けられる。ターミナル部80には、正極入力端子82、負極入力端子87等の接続端子が、合成樹脂製の基台81に鋳込まれるようにして固定される。その他の機器側端子(84〜86、88)は、図4のターミナル部30に固定された機器側端子(34〜36、38)と同じである。電池パック100が電動工具本体51(図10参照)に取り付けられるときは、正極入力端子82の端子部は、上側正極端子162と下側正極端子172の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、正極入力端子82の端子部の上側一部の領域が上側正極端子162と接触し、下側一部の領域が下側正極端子172と接触する。このように正極入力端子82の端子部を上側正極端子162の腕部162a、162bと下側正極端子172の腕部172a、172bに同時に嵌合させることによって、2つの正極端子(162と172)が短絡状態となる。同様にして負極入力端子87の端子部は、上側負極端子167と下側負極端子177の開口端部の双方を押し広げるように嵌合圧入されて、負極入力端子87の端子部の上側一部の領域が上側負極端子167と接触し、下側一部の領域が下側負極端子177と接触する。このように負極入力端子87の端子部を上側負極端子167の腕部167a、167bと下側負極端子177の腕部177a、177bに同時に嵌合させることによって、2つの負極端子(167と177)が短絡状態となり、電動工具本体51には第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の並列接続の出力、即ち定格電圧18Vが出力される。
以上のように本実施例の電池パック100は、18V用の電動工具本体51か36V用の電動工具本体1のいずれかに装着することにより、電池パック100の出力が自動的に切り替わる。この電圧切替えは、電動工具本体側のターミナル部の形状によって自動的に行われるので、電圧設定ミスが生ずる虞が無い。
電池パック100を外部充電装置(図示せず)を用いて充電する場合は、従来の18V用電池パックと同じ充電装置にて充電が可能である。電池パック100のスロット121には、上側正極端子162と下側正極端子172と同等の形状の充電用の正極端子が設けられるので、放電用の正極端子(162、172)の代わりに、充電用の正極端子(図示せず)を外部充電装置(図示せず)の正極端子に接続するようにすれば良い。このように電池パック100は、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130を並列接続させた状態として18V用の充電装置を用いて充電を行うので、本実施例の電池パック100を充電するにあたって、新しい充電装置を準備しなくて済むという利点がある。
図6は本実施例の電池パック100の内部回路を示すブロック図である。ここでは基本的な構成部分だけを図示しており、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130に対する制御部190と保護IC181、155の接続状況を中心に説明する。尚、図6で示す以外の関連する回路、特に、機器本体側の信号端子とのやりとりを行うための回路等も実際には電池パック100内に含まれる。電池パック100は、21700サイズの電池セルを5本直列接続した第1のセルユニット140と、14700サイズの電池セルを5本直列接続した第2のセルユニット130が収容される。図3にて示したように上側正極端子(上+)162と、下側正極端子(下+)172と、上側負極端子(上−)167と、下側負極端子(下−)177を有して構成される。電池パック100にはこれら以外に、充電用の上側正極端子(上C+)と、下側正極端子(下C+)と、その他の信号端子群(T端子、V端子、LS端子、LD端子)が設けられるが、ここではそれらの図示を省略している。第1のセルユニット140の正極(+出力)が下側正極端子172に接続され、負極(−出力)が上側負極端子167に接続される。同様にして、第2のセルユニット130の正極(+出力)が上側正極端子162に接続され、負極(−出力)が下側負極端子177に接続される。
第1のセルユニット140と第2のセルユニット130にはそれぞれ、電池セルの電圧を監視するための保護IC181、155が接続され、これら保護IC181、155には制御部190が接続される。保護IC155は、各電池セルの両端電圧を監視し、第2のセルユニット130のいずれかの電池セルの電圧が所定値未満に低下して過放電状態になった場合は、過放電を示す信号(ハイ信号)157を制御部190に出力し、第2のセルユニット130のいずれかの電池セルの電圧が充電時に所定値以上に到達して過充電状態になった場合は、過充電を示す信号(ハイ信号)158を制御部190に出力する。また、保護IC155は、第2のセルユニット130の各電池セルの両端電圧を入力することにより、過充電保護機能、過放電保護機能の他、カスケード接続機能、断線検出機能を実行する。保護IC155としては、“リチウムイオン電池用保護IC”として市販されている集積回路を用いることができる。
第1のセルユニット140の回路中、即ち下側正極端子172と上側負極端子167の間の回路中に、保護IC181とマイコン(Micro Controller Unit)を有する制御部190が配置される。言い換えると、第1のセルユニット140には保護IC181と制御部190が電気的に接続される。一方、第2のセルユニット130の回路中、即ち上側正極端子162と下側負極端子177の間の回路中に保護IC155が配置される。言い換えると、第2のセルユニット130には保護IC155が電気的に接続される。制御部190には、保護IC155からの出力(過放電信号157、過充電信号158)と、保護IC181からの出力(過放電信号185、過充電信号186)が入力される。制御部190には、例えばアナログ・フロント・エンド(AFE)と呼ばれる電圧検出回路を含み、電流検出回路183(第1の電流検出回路)の出力電圧から第1のセルユニット140に流れる電流値を測定し、電流検出回路154(第2の電流検出回路)の出力電圧から第2のセルユニット130に流れる電流値を測定する。制御部190の駆動用の電源は、第1のセルユニット140に接続される電源回路(電源部)187によって生成され、基準電圧(VDD1)が制御部190に供給される。第1のセルユニット140及び第2のセルユニット130のそれぞれのグランド側には電流値を測定するためのシャント抵抗182、156が設けられる。電流検出回路183はシャント抵抗182により第1のセルユニット140に流れる電流を検出する。電流検出回路154はシャント抵抗156により第2のセルユニット130に流れる電流を検出する。これら電流検出回路により各セルユニットの電流を検出することができるため、一方のセルユニットに設けた場合と比較して確実に各セルユニットの電流を検出することができる。
制御部190は、電流値やセル温度の監視を行うと共に、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の状態を監視して双方の動作状況を統合して制御する。また、電動工具本体1の緊急的な停止が必要となった場合には、図示しない異常信号出力端子となるLD端子を介して放電禁止信号を電気機器本体側に伝達する。保護IC181は第1のセルユニット140内の各電池セルの電圧を監視し、いずれかの電圧が所定の下限値まで低下した状態(過放電状態)を検出した場合に過放電信号185を制御部190に送出する。また、図示しない外部の充電装置に電池パック100が装着されて、充電が行われている際に、保護IC181はいずれかの電池セルの電圧が所定の上限値を越えたことを検出した場合に、過充電状態を示す過充電信号186を制御部190に送出する。制御部190は図示しないLS端子を介して図示しない充電装置に充電停止信号を送出する。
制御部190には、スイッチ手段のスイッチ部(151、152、153)のオン又はオフを切り替える制御信号を発する直並列切替手段191と、電池パック100の残容量を表示する残容量表示手段192と、電池セル131〜135、141〜145の何れかの近傍に設けられた温度センサ(図示せず)を用いて電池温度を測定するためのセル温度検出手段193が接続される。温度センサとしては、サーミスタを用いることができ、サーミスタの一つ以上を第2のセルユニット130に接する又は近接する箇所に設け、別のサーミスタを第1のセルユニット140に接する又は近接する箇所に設ける。セル温度検出手段193は、温度変化に対するサーミスタの電気抵抗の変化を利用して、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130のそれぞれの温度を測定し、制御部190に出力する。
電源回路187は、第1のセルユニット140の電力によって制御部190の動作用の電源を生成する。本実施例の電池パック100は、18Vと36Vの電圧切替式なので、第2のセルユニット130側の保護回路にマイコン(制御部)を搭載すると、2つのセルユニットの直列接続時と並列接続時において、制御部190のグランド電位が変わってしまう。一方、下段側(第1のセルユニット140側)に電源回路187を設けるのであれば電源回路187のグランド電位は変化しない。そこで、本実施例では制御部190を第1のセルユニット140の回路中に設けた(第1のセルユニット140に接続した)。この制御部190の配置により、出力電圧を定格電圧18Vと36Vの切替式としても制御部190を安定して稼働できる。制御部190は、自身にかかる電源電圧(VDD1)の保持と、解除を切り替えることができ、通常動作状態(いわゆるノーマルモード)と動作停止状態(いわゆるスリープモード)を有する。
制御部190には、上側正極端子162に接続される低容量側電圧検出回路189の出力が入力される。この出力は、電池パック100が電動工具本体1や外部充電装置(図示せず)に装着されていない場合は、第2のセルユニット130の電位を示す。一方、低電圧(18V)用の電動工具本体51に装着された場合、上側正極端子162と下側正極端子172が接続されるため、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の各々の正極が同電位となり、各々の負極が同電位となる。高電圧(36V)用の電動工具本体1に装着された場合、低容量側電圧検出回路189が電動工具本体1のトリガスイッチ4の操作を検出し、制御部190は直並列切替手段191を介して、後述するスイッチ部153をオン(導通)にする。このことから制御部190は、上側正極端子162の電位と、下側正極端子172の電位を比較することによって、電池パック100が非装着の状態であるか、低電圧機器本体に装着されているか、高電圧機器本体に装着されているかを判別できる。尚、下側正極端子172の電位検出のためには、第1のセルユニット140内の電池セルのうち最上位の電池セル145の正極電位を制御部190が取得できるように構成すると良い。尚、図6では図示していないが、電池パック100からの電力供給を止めなければならない状況、例えば、放電時の過大電流、放電時のセル電圧の低下(過放電)、セル温度の異常上昇(過温度)等が生じた際には、制御部190を介して電動工具本体1側に放電禁止信号を伝達することで、電動工具本体1の動作を素早く停止できる。
電動工具本体1は定格電圧36Vであって、ターミナル部30(図4参照)には、下側正極端子172と下側負極端子177を短絡させる短絡回路(ショートバー39)が含まれる。このように電動工具本体1にショートバー39を有するターミナル部30(図4参照)を設けることによって、2つの正極端子(162、172)と2つの負極端子(167、177)を有する本実施例の電池パック100を装着するだけで、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の直列接続回路を確立することができる。
電動工具本体1には、負荷装置40となるモータ3の回転制御を行うための制御部20が含まれる。制御部20は、例えばアナログ・フロント・エンド(AFE)と呼ばれる電圧検出回路を含み、制御部20の入力ポートには電池電圧検出回路22から正極入力端子32の電圧(V+)が入力される。制御部20の出力ポート(A/D出力端子)は、スイッチング素子25をオンにするための信号を出力する。スイッチング素子25は、制御部20が電池パック100から図示しないLD端子を介して放電禁止信号を受信した際に、制御部20の制御によってモータ3を停止又は制限するためのスイッチである。電源回路21は、上側正極端子162を介して供給された電池パック100(第2のセルユニット130)の電圧を制御部20の駆動電圧(例えば5V)に変換する回路である。スイッチ(SW)状態検出回路23は、トリガスイッチ4の状態がオンかオフかを検出する回路であり、トリガスイッチ4のレバーが少しでも引かれるとオン信号を制御部20に出力する。制御部20は各種の制御用の信号や、センサ類からの入力信号、電池パック100への制御信号等の様々な信号の入出力が行われる。電流検出回路24は、シャント抵抗26の両端電圧を測定することによってモータ3に流れる電流値の大きさを制御部20に出力する。
以上の構成によって、電圧を自動で切り替え可能な電池パック100を実現できる。しかしながら、本実施例の基本構成では、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の容量が異なるため、直列接続で使用する際には容量の小さい第2のセルユニット130側が使用可能下限電圧まで放電された時点で、電池パック100が使用できなくなってしまう。そこで本実施例の回路では、第1のセルユニット140と第2のセルユニット間で電力の受け渡しができるように構成している。具体的には容量の大きい第1のセルユニット140から容量の小さい第2のセルユニット130への電力の受け渡しができるようにスイッチ手段(第1のスイッチ部151、第2のスイッチ部152、第3のスイッチ部153)を設けた。第1のスイッチ部151は、上側正極端子162と下側正極端子172との電力経路を短絡又は開放するスイッチである。第2のスイッチ部152は、上側負極端子167と下側負極端子177との電力経路を短絡又は開放するスイッチである。第3のスイッチ部153は、下側負極端子177と第2のセルユニット130の間を接続又は遮断するスイッチである。なお、第3のスイッチ部153の設置場所は、上記に限定されず、上側正極端子162と第2のセルユニット130の間、下側正極端子172と第1のセルユニット140の間、上側負極端子167と第2のセルユニット140の間、のいずれか或いは2か所以上に設けても良い。即ち、電池パック100から電動工具本体1への放電経路を接続又は遮断できれば、言い換えると、電池パック100から電動工具本体1への電力供給又は電力供給の停止が可能であれば、その個数や場所は限定されない。ここで、第3のスイッチ部153が接続状態であれば電池パック100から電動工具本体1への電力供給が可能な状態(放電経路が接続した状態)となり、第3のスイッチ部153が遮断状態であれば電池パック100から電動工具本体への電力供給ができない状態、即ち、電力供給の停止状態(放電経路が遮断した状態)となる。
第1〜第3のスイッチ部151、152、153はそれぞれ2つの半導体スイッチング素子(例えばFET)を組み合わせて構成され、双方向スイッチを構成する。この構成により、スイッチオフ時での逆電流を防ぎ遮断動作を可能にするとともに、双方向に電流を流せるため、高容量側と低容量側との間で電力の受け渡しがきる。第1〜第3のスイッチ部151、152、153に、制御部190からの指示(ゲート信号)が直並列切替手段191を介して入力されると、2つのスイッチング素子のゲート電位がハイになり、2つのスイッチング素子が共にオン状態(導通状態)になる。すると、第1〜第3のスイッチ部151、152、153のうち、ゲート信号が入力された対象スイッチ部の両端が短絡状態(スイッチ部のオン状態)になる。第1〜第3のスイッチ部151、152、153に制御部190からの指示(ゲート信号)が消失すると、2つのスイッチング素子のゲート電位が0Vとなる。すると2つのスイッチング素子は共にオフ状態(遮断状態)になる。2つのスイッチング素子がオフ状態にあると、第1〜第3のスイッチ部151、152、153のうち、ゲート信号が0Vになったスイッチ部の両端が遮断状態(スイッチ部のオフ状態)となり、その状態が維持される。
制御部190は、自身にかかる電源電圧(基準電圧VDD1)の保持と、解除を切替えることができ、通常動作状態(いわゆるノーマルモード)と動作停止状態(スリープモード)とシャットダウンモードの3段階の状態を有する。制御部190の電源回路187は保護IC181と共用であるため、マイコンが起動すると保護IC181、151も同時に起動する。ノーマルモードは制御部190が常時起動している状態である。スリープモードは制御部190が自ら間欠的に起動するモードであり、例えば50ミリ秒の起動後に5秒停止するというような動作を繰り返す。シャットダウンモードは、基準電圧VDD1が全く供給されない状態であって、制御部190が完全に停止している状態である。
制御部190は、電池パック100が電動工具本体1に装着されている時だけでなく、装着されていないときも動作可能である。但し、電池パック100が装着されていない時や、装着時であっても電動工具本体1が一定時間以上使用されていない時、例えば、電気機器本体1のトリガ操作が終了してから長時間(例えば2時間程度)トリガ操作が行われなかった場合は、制御部190はスリープ状態に移行する。電動工具本体1のトリガスイッチ4が引かれてモータ3に電流が流れると、制御部190は、電流検出回路154又は/及び電流検出回路183によって検出される電流値の増加を検知してノーマル状態に復帰する。
本実施例では、電池パック100が放電していない時、例えば電動工具本体1に装着されているが、電動工具本体1のトリガスイッチ4がオフの状態、又は、電池パック100が取り外されている際に、電池残量に余裕のある第1のセルユニット140側から第2のセルユニット130側に電力を受け渡すようにした。この電力の受け渡し時に、電動工具本体1のトリガスイッチ4がオンにされた場合は、すぐに電力の受け渡しを中断して、元の直列接続の状態に戻して、電動工具本体1側への36V出力を再開する。
図7は本実施例に係る電池パック100の放電時における電圧バランスを調整するための制御手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、制御部190に含まれるマイコンがプログラムを実行することでソフトウェア的に制御するもので、制御部190に含まれるマイコンが起動したら実行される。最初に、制御部190のマイコンの起動を検出したら、制御部190によるバッテリシステムがオンになり、その制御が開始される(ステップ201、202)。ここで、マイコンの起動は、電源回路187の起動によるマイコンへの基準電圧VDD1の供給によって行われる。マイコンが起動したら、次に制御部190は第3のスイッチ部(SW_S1)153をオンにする(ステップ203)。この時、電池パック100が36V用の電動工具本体1に接続されているか18V用の電気機器本体に接続されているかで、下側正極端子172の電圧が変わるので、制御部190は低容量側電圧検出回路189によって電圧を検出し、その電圧が所定値以上であるか否かを検出することで、電池パック100が36V用か18V用のいずれかの電気機器本体に装着されているかを判断する(ステップ204)。
電池パック100が36Vの電動工具本体1に装着されているときには、第1のスイッチ部150がオンになると、上側正極端子162の電圧は約36V以上となる。この電圧値を低容量側検出回路189で検出することにより電池パック100が接続された電気機器本体の定格電圧を判別することができる。この場合は、電池パック100の制御部190は、36V動作モードで制御を行う(ステップ205)。36Vモードにおいては、作業者が36V用の電動工具本体1のトリガスイッチ4を操作することによってモータ3を駆動する(ステップ206)。次に制御部190は、作業者がトリガスイッチ4の操作を解除してモータ3が停止したか否かを判定する(ステップ207)。次に、制御部190のマイコンは、制御部190のマイコンは、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電圧を比較し、第2のセルユニット130の電圧が、第1のセルユニット140の電圧よりも所定値以上低い状態(セルアンバランス状態)であるか否かを判定する(ステップ208)。なお、各セルユニットの電圧ではなく相対残容量を比較しても良い。相対残容量は充電状態を示すものであり、満充電時の容量に対する現在の容量を意味する。例えば満充電時の容量(定格容量)が5.0Ahで現在の容量が1.0Ahの場合、相対残容量は20%となり、満充電時の容量が1.0Ahで現在の容量が0.1Ahの場合、相対残容量は10%となる。第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の相対残容量の差が第1の所定値以上の場合(セルアンバランス状態)であるか否かを判定しても良い。また、第2のセルユニット130の相対残容量が第2の所定値より小さくなった場合にセルアンバランス状態と判断しても良い。
第1と第2のセルユニット間がアンバランス状態にあるときには、容量の大きい第1のセルユニット140から容量の小さい第2のセルユニット130への電力の供給(電力の受け渡し)を行う。この電力の受け渡しを行うために、制御部190のマイコンは、第3のスイッチ部(SW_S1)153をオフ(にして(ステップ209)、電動工具本体1側との接続をオフにし、第1のスイッチ部(SW_P1)151と、第2のスイッチ部(SW_P2)152をオンにする(ステップ310)。すると、電池パック100内で並列接続回路が構成されることになる。この状態を示すのが、図9(B)の状態である。
図9において、丸印が導通しているスイッチ部であり、バツ印が遮断しているスイッチ部を示す。ここでは、電圧の高い高容量側の第1のセルユニット140から電圧の低い低容量側の第2のセルユニット130へ給電され、第2のセルユニット130の充電が行われることになる(ステップ211)。この充電が行われている際に、電動工具本体1側からの駆動指令があった場合には(ステップ212)、例えばトリガスイッチ4が操作された場合には、バランス制御を中止し、制御部190のマイコンは、第1のスイッチ部(SW_P1)151と、第2のスイッチ部(SW_P2)152をいずれもオフに戻してステップ203に戻る(ステップ213)。ステップ203に戻ると再び図9(A)の直列接続状態に戻り、電動工具本体1側に36Vの電力が供給される。
図8は、図7のステップ203〜213までの電池パック100の高電圧出力時の動作例を示すタイミングチャートである。図8の横軸は時間の経過(単位:秒)である。図8(A)は、電池パック100が36V電動工具本体1に装着されているときの動作状態241を示し、ここでは、“停止”、“放電”(電動工具本体1のトリガスイッチ4が引かれた状態)、“セルバランス”(電動工具本体1のトリガスイッチ4が戻され、停止状態になった状態であって、電池パック100の内部で容量の大きい第1のセルユニット140から容量の小さい第2のセルユニット130への電力の供給(電力の受け渡し)を行っている状態)、の3つの電池パック100の状態が存在する。実際には、電池パック100の制御部190のマイコンが停止しているシャットダウンの状態も存在する。
図8(B)は電動工具本体1のトリガスイッチ4の検出信号242である。この検出信号242は図6で示したスイッチ状態検出回路23により制御部20に伝達され、電動工具本体1の制御部20から図示しない接続端子を介して電池パック100の制御部190に伝達される。つまり、電池パック100の制御部190のマイコンは、トリガスイッチ4の検出信号242を受信しているか否かを判断することによって、言い換えるとトリガスイッチ4の動作に連動して、電池パック100の動作モードを“セルバランスモード”に切り替えることができる。図8(C)は電池パック100内において、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が直列接続状態にあるか否かを示す直列モード243のチャートである。ここでは、時刻0〜t1、時刻t7〜t9、時刻t12〜t14が直列モードあって、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が直列接続されていることを示す。この直列モードでは第1のスイッチ部153がオン(接続)となり、第1のスイッチ部151及び第2のスイッチ部152が共にオフ(遮断)とされる。
図8(D)は電池パック100内において、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が並列接続状態にあるか否かを示す並列モード244のチャートである。ここでは、時刻t5〜t6、時刻t10〜t11、時刻t15〜t16が並列モードあって、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が並列接続され、電動工具本体1とは電気的に切り離されている状態である。即ち、並列モード244では第1のスイッチ部153がオフ(遮断)となり、第1のスイッチ部151及び第2のスイッチ部152が共にオン(接続)とされる。ここで、直列モード243と並列モード244を比較すると理解できるように、直列モードから並列モードへの切り替えは同時に行われるのではなく、時刻t4〜t5、時刻t9〜10、時刻t14〜t15のようにわずかなタイムラグを持たせてから切り替える。これは電池パック100内で内部短絡を防ぐためであり、時刻t4〜t5、時刻t9〜t10、時刻t14〜t15の間は、第1〜第3のスイッチ部(151、152、153)がいずれもオフ(開放又は遮断)となるので、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130は、互いに電気的に接続されていない状態(独立状態)にある。図8(E)はモータ3の稼動状態を示すモータ駆動245である。ここでは時刻t2〜t4、時刻t7〜t9、時刻t13〜t14の間にモータ3が回転する。
図8(F)は、電池パック100の制御部190が実行する第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電位差の監視を行い、電圧のバランスの偏りがないかどうかを検出するアンバランス検出246のチャートである。制御部190は、動作状態241で放電が開始されてから一定時間(時刻t2〜t3、時刻t7〜t8)経過した後に、例えば、放電量がある量以上なった頃に、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電位差を監視する。この時の第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電位(電位差)を示すのが、図8(G)のチャートである。実線で示す電位247が高容量側の第1のセルユニット140であり、二点鎖線で示すのが低容量側の第2のセルユニット130の電位248である。高容量側の第1のセルユニット140の容量は5Ahであり、低容量側の第2のセルユニット130の容量は1Ahであるので、当然ながら第2のセルユニット130側の電位248の低下の度合いが大きい。そこで本実施例では、電池パック100の内部にてセルバランスをとるための状態を設け、時刻t5〜t6、時刻t10〜t11、時刻t15〜t16において、第1のスイッチ部153をオフ(切断)して電池パック100と電動工具本体1との接続を解除し、第1及び第2のスイッチ部151、152をオンにすることにより2つのセルユニットを並列接続とする。この結果、第2のセルユニット130は第1のセルユニット140から充電されることになるので、その電位248は矢印248a、248b、248cのように上昇する。なお、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電位差ではなく相対残容量を監視、比較するようにしても良い。第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の相対残容量の差が第1の所定値より小さくなった場合、又は、第2のセルユニット130の相対残容量が第2の所定値より大きくなった場合にセルバランスがとれたと判断し、セルユニット間のバランス制御を終了(停止)するように構成しても良い。
時刻t6、t16にて高容量側の第1のセルユニット140と低容量側の第2のセルユニット130の電位が等しくなると、制御部190は第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の並列接続状態を解除すべく、第1及び第2のスイッチ部151、152をオフ(遮断)する。尚、矢印248bに示す区間では第1のセルユニット140側から第2のセルユニット130側への充電が完了していない。しかしながら、時刻t11にて電動工具本体1のトリガスイッチ4が引かれたので、すぐに並列モードを解除し(時刻t11)、わずかなタイムラグをおいてから時刻t12にて直列モードとすることで、モータ3は時刻t13から回転を開始する。尚、時刻t11〜t12のタイムラグや、時刻t12〜t13のタイムラグは、理解を容易にするために大きめに図示したが、実際には時刻t11〜t13の遅延時間は、作業者にとって気がつかない程度の短い時間である。
以上のように、電動工具本体1側の動作が止まっている際(作業していない状態)に、電池パック100の内部では、電動工具本体1側との回路(電動工具本体1への放電経路)を遮断し(第3のスイッチ部153をオフ)、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の並列接続状態を確立する(第1及び第2のスイッチ部151、152をオン)ことによって、第1のセルユニット140側から第2のセルユニット130側に電力を充電するように構成した。この結果、第2のセルユニット130として第1のセルユニット140よりも小さい容量の電池セルを組み合わせた電池パック100を実現できる。また、従来の電池パックとほぼ同じ容積の下ケース101を用いながら(電池パック100の大型化を抑制しつつ)、高出力が可能な電池パック100を実現することができた。また、作業者の操作、具体的にはトリガスイッチ4の操作に連動してセルユニット間のバランスを調整することができるため、特別な操作が不要であり操作性を向上することができる。言い換えると、トリガスイッチ4の操作(電動工具本体1の操作)と、切替回路(第1乃至第3のスイッチ部151〜152)の動作、即ち第1セルユニット140と第2セルユニット130間で電力の受け渡しを行うバランス制御と、を連動するように構成したため、更に言い換えると、電池パック100から電動工具本体1への電力供給又は電力供給の停止とバランス制御とを連動するように構成したため、セルユニット間のバランス調整を容易に行うことができる。低容量のセルユニットが放電しても高容量のセルユニットから充電することができるため、電池パック100の大型化を抑制しつつ低容量のセルユニットによらず作業時間を確保することができる。
次に、図10から図12を用いて、本実施例の電池パック100を18Vの電動工具本体51に接続する際の電池パック100の動作を説明する。図10は、本実施例の電池パック100と低電圧用の電気機器(電動工具本体51)の回路図である。図10の点線で囲まれた右側部分の電池パック100の構成は、図6で示した電池パック100の回路と同一である。左側の点線で囲まれた電動工具本体51の回路構成は、接続端子82、87を除いて基本的に図6で示した電動工具本体1と同一である。接続端子82、87は図5に示したように、装着時に上側正極端子162と下側正極端子172を短絡させ、上側負極端子167と下側負極端子177を短絡させる形状である。このように電池パック100を電動工具本体51へ装着するだけで、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の並列接続回路を確立することができる。
電動工具本体51には、負荷装置90となるモータ53の回転制御を行うための制御部70が含まれる。制御部70には電池電圧検出回路72から正極入力端子82の電圧(V+)が入力される。制御部70はスイッチング素子75をオンにするための信号を出力する。スイッチング素子75は、制御部70が電池パック100から図示しないLD端子を介して放電禁止信号を受信した際に、制御部70の制御によってモータ53を停止又は制限するためのスイッチである。電源回路71は、正極入力端子82を介して供給された電池パック100の電圧を制御部70の駆動電圧(例えば5V)に変換する回路である。スイッチ(SW)状態検出回路73は、トリガスイッチ54の状態がオンかオフかを検出する回路であり、トリガスイッチ54のレバーが少しでも引かれるとオン信号を制御部70に出力する。制御部70は各種の制御用の信号や、センサ類からの入力信号、電池パック100への制御信号等の様々な信号の入出力が行われる。電流検出回路74は、シャント抵抗76の両端電圧を測定することによってモータ53に流れる電流値の大きさを制御部70に出力する。
図11は本実施例に係る電池パック100の第1及び第2のセルユニット130、140間での電力の受け渡し状態を説明するための図であり、図7のステップ203、204、214〜217が電池パック100の低電圧出力時の動作例を示すタイミングチャートである。図11の横軸は時間の経過(単位:秒)である。図7において、ステップ204にて、電池パック100に装着された電気機器本体が18V用であると判断した場合は、制御部190は18V用動作モードで制御を行う(ステップ214)。作業者が電動工具本体51のトリガスイッチ54を操作することによってモータ53を駆動する(ステップ215)。次に制御部190は、作業者がトリガスイッチ54の操作を解除してモータ53が停止したか否かを判定する(ステップ216)。モータ53が停止した後にモータ53を再起動させずに放置し、本システムをオフするための所定時間が経過すると(ステップ217)、制御部190は自身をシャットダウンする。図11(A)は、電池パック100が18V電動工具本体51に装着されているときの動作状態291を示し、ここでは、“停止”、“放電”(電動工具本体51のトリガスイッチ54が引かれた状態)の2つの電池パック100の動作状態が存在する。実際には、電池パック100の制御部190のマイコンが停止しているシャットダウンの状態も存在する。
図11(B)は電動工具本体51のトリガスイッチ54の検出信号292である。ここでは、時刻t1〜t3、時刻t5〜t7、時刻t10〜t11がトリガスイッチ54が引かれた状態であって、モータ53が回転することによって、電池パックの“放電状態”となる。図11(C)は電池パック100内において、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が直列接続状態にあるか否かを示す直列モード293のチャートであるが、18Vの電動工具本体51に装着されるときには、直列接続状態は存在しない。
図11(D)は電池パック100内において並列モード294のチャートであり、ここでは、時刻t1〜t4、時刻t5〜t8、時刻t9〜t12が並列モードあって、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が並列接続されている状態である。並列モード294では、第1のスイッチ部151及び第2のスイッチ部152が共に常時オフ(遮断)となり、トリガSW検出信号292に基づいて(トリガスイッチ54の操作に連動して)、第3のスイッチ部153がオン(接続)とオフ(遮断)とを切り替える。即ち、2つのセルユニット140及び130は正極入力端子82及び負極入力端子87を介して並列接続されるため、第3のスイッチ部153を制御するだけでよく、第1及び第2のスイッチ部151及び152をオンする必要はない。この状態の第1及び第2のセルユニット130、140間での電力供給路を説明するのが図12(A)である。ここで、トリガSW検出信号292と並列モード294を比較するとわかるように、並列モード294が解除されるタイミングは、トリガSW検出信号292のオフからわずかにタイムラグを持たせた時刻t4、t8、t12となる。この遅延時間t3〜t4,t7〜t8、t11〜t12は、モータ54駆動時のわずかなセルアンバランスを解消するために設けている。
図11(E)は、モータ53が回転しているか否かを示すモータ駆動295のチャートである。ここでは、トリガスイッチ54が引かれてわずかに時間を空けた時刻t2にてモータ53が起動し、時刻t3で停止する。同様にして、時刻t6、t10にてモータ53が起動し、時刻t7、t11にてそれぞれ停止する。
図11(F)は、電池パック100の制御部190が実行する第1のセルユニット140と第2のセルユニット130の電位差の監視を行い、電圧のバランスの偏りがないかどうかを検出するアンバランス検出296のチャートである。並列接続状態においては、第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が並列に接続された状態が維持されるため、電位差の監視を行う必要はない。しかしながら、アンバランス検出296の時、即ち、バランスを調整するために図12(B)のように、第3のスイッチ部153をオフ(遮断)とし、第1のスイッチ部151及び第2のスイッチ部152を共にオン(接続又は導通)するように構成してもよい。この場合には、電池パック100単体の状態でもセルユニット間のバランスを調整することができる。
図11(G)は、高容量側の第1のセルユニット140の電位297と、低容量側の第2のセルユニット130の電位298のグラフである。並列接続状態では常に同電位であり、“放電”時の電圧低下時に電池電圧の高い側から多くの電流が流れるため、実質的に“放電”時にセルバランス調整が行われる。
以上のように、18V用の電動工具本体51の接続時には、電池パック100の内部では常に第1のセルユニット140と第2のセルユニット130が同電位に保たれるので、定格容量が異なるセルユニットを組み合わることが可能である。また、電池パック100の大型化を招くことなく(抑制しつつ)、第1及び第2のセルユニット140、130のバランスが自動的に調整できると共に電池パックの容量を増加することができる。言い換えると、従来の電池パックとほぼ同じ容積の下ケース101を用いながら、定格容量が大きな電池パック100を実現することができた。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。本実施例の電池パックは電圧切替え方式のものに限定されずに、複数の電池セルを直列接続で構成される電圧固定式の電池パックにおいても同様に適用でき、複数の電池セルを2つのユニットに分けて、それらの直列接続回路の経路中に本実施例の第1〜第3のスイッチ部を設けるようにすれば、2つのユニットの電圧バランス調整を行うことが可能となる。また、本実施例では上述で説明した第1〜第3のスイッチ部を電池パック100の内部に設けるようにしたが、動作的には電気機器本体1の内部であって、接続端子32、37、39a、39bの近傍に設けて、その制御を電池パック100の制御部190が行うようにしても同様のことが実現できる。さらに、第1〜第3のスイッチ部をアダプタとして、電池パック100と電動工具本体1との間に介在される別部材に設け、それを電池パック100の制御部190が制御するように構成しても良い。即ち、図6において、電池パック100の接続端子(162、172、167、177)から第1及び第2のスイッチ部151、152の右側(第2のセルユニット130の左側)までの構成(各接続端子、各スイッチ部)をアダプタ内に設ければ良い。或いは、アダプタ内にも制御部を設け、制御部190と通信することでアダプタ内の制御部で制御するように構成しても良い。