(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図1から図10を参照して詳細に説明する。まず、図1から図9を参照しながら、電池パック100をアダプタ1を介して電動工具200の電源として使用する際の機器の構成について説明する。
図1から図9は、本発明の第1の実施形態に係るアダプタ1の構成および使用状態を示した図である。アダプタ1は、電動工具200と、電動工具200の定格電圧と異なる電圧を出力する電池パック100とを機械的および電気的に接続し、使用可能とする機器である。アダプタ1は、電池パック100とはスライド式に接続され、電動工具200とは差し込み式に接続可能であるように構成されている。さらにアダプタ1は、電池パック100の出力電圧を電動工具200の定格電圧に変換して供給し、電池パック100による電動工具200の駆動を可能にしている。なお、電動工具200に接続しようとする電池パックがたとえ差し込み式であっても、電池パックの公称電圧が電動工具200の定格電圧より高い場合には、両者は直接接続されない構造となっている。
図1から図3に示すように、第1の実施の形態においては、スライド式の電池パック100にアダプタ1をスライド方式によって着脱可能に装着して構成されている。上述のように、本実施の形態による電動工具200は、差込式の不図示の電池パックを装着して使用されるものであって、接続部として外方に向かって開口する不図示の収納空間(係合部)が形成されており、図示しないが、この収納空間の奥部には、複数の端子を有する電気接続部が設けられている。よって、電動工具200をスライド式の電池パック100を電源として使用するには、アダプタ1を単体で電動工具200に装着しておき、このアダプタ1に電池パック100をスライド方式によって装着するか、あるいはアダプタ1を予め装着して成るアダプタ付電池パック100を電動工具200に差込方式によって装着することが行われる。
以下、アダプタ1の構成を説明する。アダプタ1は、樹脂にて一体成形され、略直方体を成す基部1Aと、楕円筒状の挿入部1Bとを有している。基部1Aの電池パック側接続面(以下、下面という)は開口しており、開口部に対向する側の面の後部からは挿入部1Bが一体に突設されている。また、アダプタ1の内部には不図示の回路基板が保持されて収納されている。
挿入部1Bは、電動工具200に形成された不図示の収納空間に挿入されるものであって、挿入部1Bの電動工具側(以下、上部という)外周には、上記回路基板に連なる端子9がそれぞれ露出している。また、挿入部1Bの側面には、指示部となるスイッチ5が設けられている。
端子9は、挿入部1Bが電動工具200に形成された収納空間に挿入されると、収納空間の奥部に設けられた電気接続部の端子に接続される。スイッチ5は、電動工具200に定格電圧以上の電圧を印加することを防止するため、予め定格電圧に適合する位置に合わせて設定しておく切換手段である。スイッチ5の詳細は後述する。
基部1Aの前面には、電動工具200側との接続を固定する工具側ラッチ手段8として、操作部8Aと、該操作部8Aの後端部に垂直に立設されたラッチ爪8Bとが設けられている。また、基部1Aには、後述する電池パック100の電池側ラッチ手段109の受け側部分(図示せず)が設けられている。図2に示すように、基部1Aの下面は開口しており、その下面の左右には、左右の側壁に沿って前後方向に延びる一対のレール7が平行に延びている。
左右一対のレール7は、電池パック100が当該アダプタ1にスライド方式によって装着されるときのガイドとしての機能と、装着された電池パック100のアダプタ1からの脱落を防ぐ係止機能を果たす。
工具側ラッチ手段8の操作部8Aと図示しない電池側ラッチ手段109の受け側部分とは、ラッチ手段を付勢する加圧方向が一致しないように配置されている。具体的には、工具側ラッチ手段8の操作部8Aは、基部1Aの前面に沿って設けられており、垂直に立設されたラッチ爪8Bは図示しないスプリングで前方に付勢される。一方、電池パック100の電池側ラッチ手段109の図示しない受け側部分は、基部1Aの左右方向に付勢されるように構成されている。
そして、アダプタ1を電動工具200から取り外すには、アダプタ1に設けられた工具側ラッチ手段8の操作部8Aをスプリングの付勢力に抗してアダプタ1の後方に押せば良い。すると、ラッチ爪8Bの電動工具200側の不図示の係合溝との係合が解除される。
次に、電池パック100の構成の詳細について説明する。電池パック100は、樹脂にて形成された略直方体のケースの内部に、後述するリチウムイオン電池等の充電可能な複数の電池が収納されている。図1に示すように、電池パック100のアダプタ側接続面(以下、上面という)には接続部101が設けられている。更に、電池パック100には、電池側ラッチ手段109の操作部109Aが左右の側壁に沿ってそれぞれ1つずつ計2つ設けられている。
接続部101には、端子挿入部103と左右一対のリブ105が設けられている。一対のリブ105は、基部1Aの左右の側壁に沿って前後方向平行に延びており、該リブ105の下方には断面矩形の係合溝107が前後方向に互いに平行に形成されている。
電池側ラッチ手段109には、不図示のラッチ爪が左右の係合溝107に突出して設けられ、操作部109Aが電池パック100の内方に押圧されると、係合溝107から退避する。このとき、アダプタ1をその左右のレール7が電池パック100の左右の係合溝107に後方から嵌合したまま前方へスライドさせると、該アダプタ1の左右のレール7が電池パック100の左右の係合溝107に係合することによってアダプタ1が電池パック100に結合される。このとき、左右のラッチ爪は、図示しない付勢手段の復元力によって外側方向へ突出してアダプタ1の係合溝7Aに係合するため、アダプタ1が電池パック100に確実に装着される。上述のようにしてアダプタ1が電池パック100に装着されて、図3に示すようにアダプタ付電池パック150が組み立てられる。
また、アダプタ1を電池パック100から取り外すには、電池パック100に設けられた電池側ラッチ手段109の左右の操作部109Aをスプリングの付勢力に抗して電池パック100の内側方に押せば良い。すると、該ラッチ爪のアダプタ1側の係合溝7Aとの係合が解除されるため、アダプタ1を電池パック100から取り外すことができる。
図4に示すように、アダプタ1と電池パック100とが接続されたアダプタ付電池パック150は、アダプタ1を上にしてその挿入部1Bを電動工具200に形成された不図示の収納空間に下方から挿入することによって、電動工具200の下端に装着される。
電動工具200は、例えば電動ドリルであって、側面視T字状を成し、胴体部200Aと、胴体部200Aから略直角に延びるハンドル部200Bとを有している。胴体部200Aの内部には駆動源としての不図示のモータが内蔵されており、胴体部200Aの前端には先端工具保持部であるドリルチャック200Cが回転可能に設けられ、このドリルチャック200Cに先端工具である例えばドリルビットが着脱可能に装着される。
胴体部200Aからはハンドル部200Bが略直角に延びており、このハンドル部200Bの端部(図4の下端部)にはアダプタ付電池パック150が着脱可能に装着されている。ハンドル部200Bの上端前部の胴体部200Aとの接続部にはトリガスイッチ202が設けられている。
ところで、電動工具200は、ハンドル部200Bの下端に差込式の不図示の電池パックを装着して使用されるものであって、上述のように、スライド式の電池パック100を電源として用いる際には、アダプタ1を用いて電動工具1に装着する。
このとき、アダプタ1に設けられた工具側ラッチ手段8のラッチ爪8Bが電動工具200側の不図示の係合溝(工具側ラッチ手段8の受け側部分)に係合することによってアダプタ付電池パック150の電動工具200からの脱落が防がれるとともに、アダプタ1の挿入部1Bの外周に配置された複数の端子9が電動工具200のハンドル部200Bの収納空間に設けられた不図示の電気接続部の複数の端子に接続され、電池パック100から電動工具200への給電が可能となる。
また、アダプタ1又はアダプタ付電池パック150の電動工具200のハンドル部200Bに対する着脱は工具側ラッチ手段8によって行われ、アダプタ1と電池パック100との着脱は電池側ラッチ手段109によって行われる。
なお、図5に示すように、スライド式の電池パック100は、スライド式の電池パックを直接接続可能な電動工具300と直接接続可能である。電動工具300は、胴体部300Aと、胴体部300Aから略直角に延びるハンドル部300Bとを有している。胴体部300Aの内部には駆動源としての不図示のモータが内蔵されており、胴体部300Aの前端には先端工具保持部であるドリルチャック300Cが回転可能に設けられ、このドリルチャック300Cに先端工具であるドリルビット310が着脱可能に装着される。
ハンドル部300Bの電池パック側接続部300Dはスライド式になっており、上述したアダプタ100の電池パック側接続部と同様の構成を有する。このとき、電池パック100と電動工具300との接続は、電池パック100とアダプタ1との接続と同様に可能である。
続いて、スイッチ5の構成について説明する。図6および図7に示すように、アダプタ1の挿入部1B側面に設けられたスイッチ5は、2つの位置5Aまたは位置5Bに設定される。位置5Aは、例えばアダプタ1で変換せず出力電圧が14.4V、即ち電池電圧がそのまま出力されることを表し、位置5Bは、アダプタ1で変換された出力電圧が例えば12Vであることを表す。なお、スイッチ5は、位置5A(14.4V)に設定されている場合には、12Vの電動工具、即ち、定格電圧が14.4Vより小さい電動工具には接続できないように誤挿入防止機能を有している。
図8は、図7のA−A面における断面図である。図8に示すように、スイッチ5は、回動部81に接続されている。回動部81は、開口部83を有する略扇形の平板であり、扇形の中心に相当する固定部81Aを中心に所定角度回動可能に構成されている。図8(a)および図8(b)に示すように、開口部83にはアダプタ1内に設けられた回路基板上に設けられる後述するスイッチピン15Cが挿入されており、回動部81の回動に連動して端子15Aと端子15Bとの間で回動する。なお、回動部81には一端が回動可能に支持されたバネ85が接しており、バネ85の他端は挿入部1B内に回動可能に支持され、回動部81を所定の位置(端子15Aと端子15Bの位置)に付勢する。
図8(b)の位置では、スイッチ15は端子15Aに接続された状態にあり、このとき、スイッチ5は位置5Aに設定され、アダプタ1で変換されて出力される電圧(実際には変圧されず、出力電圧は電池電圧14.4Vとなる)が14.4Vであることを示している。図8(d)の位置では、スイッチ15は端子15Bに接続された状態にあり、このとき、スイッチ5は位置5Bに設定され、変換電圧が12Vであることを示している。
図9に示すように、スイッチは別の形態でもよい。図9のスイッチ87はスライド式のスイッチであり、挿入部1Bに設けられたレール89に沿って位置87Aから位置87Bまで移動し、電動工具の定格電圧に合わせて変換する電圧を設定できる。このとき、図示しない機構によりスイッチ15が端子15Aと端子15Bとの間で切り換えられるように構成されている。よって、図8の場合と同様に出力電圧を選択することができる。
次に、本発明の第1の実施の形態によるアダプタ1と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200との電気的な構成について説明する。図10は、アダプタ1と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200の接続状態を示した回路図である。
図10に示すように、電池パック100は、リチウム電池111〜114からなる組電池110を備えた電池パックであって、電圧3.6Vの素電池を4本直列に接続しており公称電圧は14.4Vである。電動工具200は、モータ201とスイッチ202等から構成される駆動装置であり、本実施形態では電動工具であって一般的な定格電圧12V用のコードレス電動工具である。
電動工具200を使用する際には、上述のようにアダプタ1を電池パック100に接続する。アダプタ1は入力電圧、すなわち電池パック100の電池電圧14.4Vを降圧させ、電動工具200の定格電圧に対応する電圧12Vに変換する。アダプタ1を12V用の電動工具200に接続することで正常に動作可能になる。
図10において、電池パック100は、リチウム電池111〜114からなる電池組110、電池組110の正極に接続されたプラス端子と負極に接続されたマイナス端子、電池組110の各リチウム電池111〜114の各電圧を監視する保護IC120、電池組110の温度を検出するサーミスタ130、充電時の異常な温度上昇を防ぐサーマルプロテクタ131、充電時の素電池数を識別可能にする識別抵抗132、電池パック110の使用状況、使用来歴を記憶し、電池パック100の充電状態を監視し制御する信号を出力可能な電池パック制御回路140を備えた電池パックである。なお、本実施形態ではプラス端子を放電用(+端子)と充電用(L+端子)と別々に設けているが共通に設けても良い。また、電池パック100は、電池組110に流れる電流を検出する電流検出抵抗(不図示)を有している。この電流検出抵抗は、例えば、電池組110の最上位の素電池111のプラス側と電池組110の正極に接続されたプラス端子との間に接続され、その両端の電位差を保護ICにより検出することで電流を検出する。
保護IC120は、電池組110を構成する素電池111〜114の各電圧を監視しており、少なくとも一つが過放電になった場合には電池状態信号を出力するためのLD端子に放電停止信号を出力する。また、上述の電流検出抵抗により電池組110に過電流が流れたことを検知した場合にも、LD端子に放電停止信号を出力する。一方、電池パック100を充電する際に過充電になった場合には、LE端子を介して後述する充電器に充電停止信号を出力し、電池パック100の充電を停止する。
電動工具200は、モータ201、モータ201と直列に接続されたスイッチ202、及びモータ201と並列に接続されたフライホイールダイオード203を備えた駆動電圧が12V用の電動工具である。
アダプタ1は、電池パック100のプラス端子と電気的に接続されるプラス端子と、マイナス端子と電気的に接続されるマイナス端子と、電池パック100の電池状態信号を出力するLD端子と電気的に接続されるLD端子と、電動工具200のプラス端子及びマイナス端子と電気的に接続されるプラス端子及びマイナス端子(図1から図3における端子9)とを備えると共に、定電圧回路10、電源供給回路20、スイッチング回路30、電源供給保持回路(電源供給保持手段)40、スイッチング制御回路2、スイッチ15から主に構成されている。
定電圧回路10は、3端子レギュレータ10と、コンデンサ12、13からなり、電源供給回路20を介して供給される電池パック100の電池電圧を、スイッチング制御回路2、電源供給保持回路40の電源電圧、例えば5Vの回路電源電圧に変換する。この定電圧回路10により、電池電圧が変動しても安定した例えば5Vの回路電源電圧を供給することができる。
電源供給回路20は、FET21、22、抵抗23〜25、ツェナーダイオード26、及びコンデンサ27から構成される。電動工具200のスイッチ202のオン動作に対応して、後述するスイッチング回路30を構成するFET31のドレイン端子に電圧が印加されると、電源供給回路20のFET22がオンしてFET21がオンするため、定電圧回路10に電池電圧を供給することになる。
スイッチング回路30は、FET31、抵抗32〜34、ツェナーダイオード35、コンデンサ36、ダイオード37から構成されている。抵抗34、コンデンサ36、ダイオード37は電動工具200の逆起電力対策用のスナバ回路である。スイッチング回路30は、電池パック100と電動工具200の電流路、すなわち、本実施形態では、電池パック100と電動工具200とのマイナス端子間に接続されており、スイッチング回路30のFET31のゲート端子に、後述するスイッチング制御回路2のスイッチング周波数及びスイッチングデューティに応じた信号が入力されることにより、電池パック100の電池電圧14.4Vが電動工具200に対応した電圧12Vに変換される。また、後述するように、電池パック100の保護IC120から電池組110の過放電信号、過電流信号等の放電停止信号がLD端子を介してFET31のゲート端子に入力されると、FET31はオフし電池パック100と電動工具200間の閉回路を遮断する。なお、スイッチング回路30は、電池パック100と電動工具200のプラス端子間に接続されてもよい。
スイッチング制御回路2は、定電圧回路10により例えば5Vの回路電源電圧が供給されることで動作可能となり、スイッチング回路30のFET31のスイッチング周波数とデューティを制御する。スイッチング制御回路2の出力に基づいて、アダプタ1への入力電圧すなわち電池パック100の電池電圧を電動工具200が駆動可能な所定の電圧に変換させるためにパルス的な信号をスイッチング回路30のFET31のゲート端子に出力する。
スイッチ15は、出力電圧の切換手段であり、端子15A、端子15Bおよびスイッチピン15Cで構成されている。スイッチピン15Cが端子15Aに接続されている場合には、電圧変換はオフ状態となり、スイッチング回路30に定電圧回路10の出力である例えば5Vを入力してFET31を継続的にオンさせる。スイッチピン15Cが端子15Bに接続されているときには、電圧変換がオン状態となり、スイッチング制御回路2からスイッチング回路30に所定のパルス的な信号を入力させ、FET31を所定のデューティでオンオフさせる。すなわち、本実施の形態においては、端子15Aに接続されていると、電動工具200に14.4Vの電圧が出力され、端子15Bに接続されていると電圧変換により12Vの電圧が出力される。なお、スイッチピン15Cが端子15Aに接続されるときは、図8(a)及び(b)に相当し、スイッチピン15Cが端子15Bに接続されるときは、図8(c)及び(d)に相当する。
電源供給保持回路40は、カウンタIC41、トランジスタ42、プルアップ抵抗43から構成される。電動工具200のスイッチ202のオン動作に対応して、電源供給回路20および定電圧回路10を介してスイッチング制御回路2と電源供給保持回路40に例えば5Vの回路電源電圧が供給されると共に、トランジスタ42がオンする。トランジスタ42のオンの間は電源供給回路20のFET21のゲート端子にはGNDレベルの信号が入力されるため、FET21のオン状態が維持される。
カウンタIC41は、電源供給回路20から電源が供給される時間をカウントし、所定時間経過するとトランジスタ42をオフする信号を出力する。トランジスタ42のオフにより電源供給回路20はオフされスイッチング制御回路2及び電源供給保持回路40の電源供給が遮断される。すなわち、電動工具200の動作後、所定時間はアダプタ1の電源供給回路20等の内部回路だけ動作させ、所定時間経過後は、トランジスタ42はオフされるので電源供給回路20がオフされる。従って、電源供給回路20をオンするためには再び電動工具200のスイッチ202のオン動作を行うことになる。
なお、コンデンサ3はノイズ除去用として設けられており、フライホイールダイオード4は電動工具200の逆起電力対策用として設けられている。
次に、電池パック100を、アダプタ1を介して電動工具200に接続した状態での動作について説明する。
まず、上述したスイッチ5の位置により変換したい電圧を選択する。本実施の形態においては、電池パック100の14.4Vの出力電圧を、電動工具200の定格電圧である12Vに変換するので、スイッチ5を位置5Bに設定することにより、スイッチピン15Cを端子15Bに接続する。この状態で電動工具200のスイッチ202がオンされると、スイッチング回路30を構成するFET31のドレイン端子に電圧が印加される。これにより、電源供給回路20のFET22のゲート端子に電圧が印加されるためFET22がオンし、FET22のオンによりFET21もオンする。これにより定電圧回路10には電池電圧が供給されることになる。
定電圧回路10に電源電圧(電池電圧)が供給されると、定電圧回路10は電源電圧を例えば5Vの回路電源電圧に変換し、スイッチング制御回路2と電源供給保持回路40に供給すると共に、トランジスタ42をオンする。トランジスタ42がオンすると、電源供給回路20のFET21のゲート端子にはGNDレベルの信号が入力されるため、トランジスタ42のオンの間はFET21のオン状態が維持される。
また、スイッチング制御回路2に例えば5Vの回路電源電圧が入力されると、スイッチ5が位置5Bに設定されることによりスイッチ15が端子15Bに接続されている場合には電圧変換を行うことになり、スイッチ15を介してスイッチング回路30のFET31のゲート端子に、スイッチング制御回路2のスイッチング周波数及びスイッチングデューティに応じた信号が入力される。本実施形態では、電動工具200の定格電圧は12Vなので、電池パック100の公称電圧14.4Vから12V(実効電圧)に降圧するために、スイッチング制御回路2は所定の周波数でデューティを12V/14.4V=83%としてパルス信号をスイッチング回路30のFET31のゲート端子に出力し、FET31をスイッチングする。変換されたパルス信号は、デューティ83%でオンとオフを繰返すため実効電圧が下がり14.4Vから12Vに変換され、実効値12Vの電圧としてアダプタ1のプラス端子およびマイナス端子を介して電動工具200に供給され、モータ201を回転させて電動工具200を駆動する。
なお、スイッチ5が位置5Aに設定されることによりスイッチ15が端子15Aに接続されている場合には、FET31は常にオン(デューティ100%)となるため、電池パック100の出力である14.4Vがそのままプラス端子とマイナス端子との間に出力される。
電動工具200のスイッチ202がオフされると、モータ201は電圧が供給されなくなり、停止する。アダプタ1においては、電池パック100から電源供給回路20および定電圧回路10を介して電源供給保持回路40への例えば5Vの回路電源電圧供給は継続しており、トランジスタ42はオンとなっている。一方、カウンタIC41は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されてからの時間をカウントしており、所定時間経過するまではトランジスタ42がオンを継続することで、電源供給回路20および定電圧回路10は駆動されている。所定時間経過すると、電源供給保持回路40(カウンタIC41)はトランジスタ42をオフする信号をトランジスタ42に出力し、トランジスタ42がオフすることにより電源供給回路20がオフされ、アダプタ1への電池パック100からの電源供給が遮断される。
(省電力機能)
本実施の形態においては、上記のように電池パック100のエネルギを無駄に消費しないようにするための省電力機能が備えられている。すなわち、カウンタIC41は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されるとその時間をカウントし、所定時間経過するとトランジスタ42をオフする信号を出力する。トランジスタ42のオフにより電源供給回路20はオフされ、スイッチング制御回路2及び電源供給保持回路40への電源供給が遮断される。よって、電動工具200のスイッチ202がオフされているときや電動工具200が接続されていないときには、アダプタ1内での回路の動作を制限することになり、電池パック100の消費電力を抑制することができる。すなわち、電動工具200の動作後、所定時間はアダプタ1の電源供給回路20等の内部回路だけ動作させ、所定時間経過後は、トランジスタ42をオフすることで電源供給回路20をオフにし、省電力化を実現している。
(過放電防止機能および過電流防止機能)
本実施の形態においては、電池パック100の保護IC120は、上記したように、過放電検出機能と過電流検出機能とを有している。また、充電時には過充電検出機能も有している。電池パック100の保護IC120は、電池組110の過放電を、各リチウム電池111〜114の各電池電圧を検出することで監視している。検出された各電圧のいずれか1つでも一定値を下回ると、過放電信号をLD端子を介してアダプタ1に出力する。また、保護IC120は、過電流を不図示の電流検出抵抗により検出された電池組110の電流を検出することにより監視している。検出された電流が一定値を上回ると、過電流信号をLD端子を介してアダプタ1に出力する。過放電信号または過電流信号が放電停止信号としてLD端子を介してスイッチング回路30のFET31のゲート端子に入力されると、FET31はオフし電池パック100と電動工具200間の閉回路を開放し、電動工具200への電力の供給を遮断する。
これらの過放電防止機能、過電流防止機能により、電池パック100の過放電や過電流を防止することができ、電池パック100の異常発熱や、モータ202のロック等の異常動作を防止するとともに、電池パック100の故障や寿命低下を防止することができる。
なお上述のように、本実施形態の電動工具200は、電池パックを直接接続する場合には、差込式の電池パックを駆動源とするものである。よって、上述のように、スライド式の電池パック100を使用するためには、差込式のアダプタ1を介して電池パック100を接続する。
以上詳細に説明したように、第1の実施の形態による電池パック100、アダプタ1および電動工具200によれば、電池パック100と電動工具200との差込形式が異なる場合、または電池パック100の出力電圧と電動工具200の駆動電圧とが異なる場合にも、アダプタ1を介することで電池パック100により電動工具200を駆動させることが可能になる。また、省電力機能、過放電防止機能、および過電流防止機能を有しているので、効率よく安全に電動工具200を使用することができる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1の変形例について、図11を参照して詳細に説明する。第1の実施形態と同様の構成、動作を有するものについては同一番号を付し、説明を省略する。
アダプタ160の外観の構成は、アダプタ1と実質的に同一である。ここでは、アダプタ160と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200との電気的な構成について説明する。図11は、アダプタ160と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200の接続状態を示した回路図である。
アダプタ1とアダプタ160との相違は、電池パック100と電動工具200とのそれぞれのプラス端子の間にインダクタ71を設け、電動工具200側のプラス端子とマイナス端子との間にコンデンサ72を設けたことである。これらのインダクタ71およびコンデンサ72は、電動工具200へのパルス状の電圧波形を平滑するために設けられている。アダプタ1における場合と同様に変換されたパルス状の電圧波形は、インダクタ71およびコンデンサ72で平滑化され、12Vの略直流電圧としてアダプタ160のプラス端子およびマイナス端子を介して電動工具200に供給され、モータ201を回転させて電動工具200を駆動する。
以上のように第1の実施の形態の第1の変形例によるアダプタ160とそれに接続される電池パック100および電動工具200によれば、第1の実施の形態による効果に加え、より安定した電圧供給が可能になり、モータ201のより精密な制御や、他の制御が可能になる。例えばモータ201の位相制御や、作業中の照明のための蛍光灯の点灯等が可能になる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2の変形例について、図12および図13を参照して詳細に説明する。第1の実施形態または第1の実施形態の第1の変形例と同様の構成、動作を有するものについては同一番号を付し、説明を省略する。
アダプタ500の外観の構成は、アダプタ1およびアダプタ160と実質的に同一である。アダプタ500は、電動工具200と、電動工具200の定格電圧と異なる電圧を出力する電池パック100とを機械的および電気的に接続し、使用可能とする機器である。アダプタ500は、電池パック100とはスライド式に接続され、電動工具200とは差し込み式に接続可能であるように構成されている。さらにアダプタ500は、電池パック100の出力電圧を電動工具200の定格電圧に変換して供給し、電池パック100による電動工具200の駆動を可能にしている。
ここでは、アダプタ500と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200との電気的な構成について説明する。図12は、アダプタ500と、それに接続される電池パック100と12Vの電動工具200の接続状態を示した回路図である。電池パック100および電動工具200については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
アダプタ500は入力電圧、すなわち電池パック100の電池電圧14.4Vを降圧させ、電動工具200の定格電圧に対応する電圧12Vに変換する。
アダプタ500は、電池パック100のプラス端子と電気的に接続されるプラス端子と、マイナス端子と電気的に接続されるマイナス端子と、電池パック100の電池状態信号を出力するLD端子と電気的に接続されるLD端子と、電動工具200のプラス端子及びマイナス端子と電気的に接続されるプラス端子及びマイナス端子とを備えると共に、定電圧回路10、電源供給回路20、スイッチング回路30、電源電圧検出回路540、マイコン502、スイッチ505およびサーミスタ506から主に構成されている。アダプタ1とアダプタ500との相違は、スイッチング制御回路2に代えてマイコン502を設け、スイッチ15に代えて電圧変換をするか否かを選択するスイッチ505を設け、電源供給保持回路40は省略してその機能はマイコン502が行うようにし、電池パック100の電圧を検出する電池電圧検出回路540、およびFET31の温度を検出するサーミスタ506を追加したことである。
電源供給回路20は、電動工具200のスイッチ202のオン動作に対応して、スイッチング回路30を構成するFET31のドレイン端子に電圧が印加されるとFET22がオンするのでFET21がオンし、電池電圧検出回路540および定電圧回路10に電池電圧を供給する。
電池電圧検出回路540は、プラス端子とグランドラインとの間に直列に接続された抵抗541および抵抗542と、抵抗542に接続されたノイズ防止用のコンデンサ543とから構成されている。電池電圧検出回路540は、電池パック100の電池電圧を抵抗541と抵抗542により分圧し、抵抗542の電圧をマイコン502に出力する。
定電圧回路10は、電源供給回路20を介して供給される電池パック100の電池電圧を、マイコン502の電源電圧、例えば5Vの回路電源電圧に変換する。スイッチング回路30は、電池パック100と電動工具200とのマイナス端子間に接続されており、スイッチング回路30のFET31のゲート端子に、後述するマイコン502のスイッチング周波数及びスイッチングデューティに応じた信号が入力されることにより、電池パック100の電池電圧14.4Vが電動工具200に対応した電圧12Vに変換される。また、電池パック100の保護IC120から放電停止信号がLD端子を介してFET31のゲート端子に入力されるとFET31はオフし、電池パック100と電動工具200間の閉回路を遮断する。なお、スイッチング回路30は、電池パック100と電動工具200のプラス端子間に接続されてもよい。
スイッチ505は、マイコン502に接続されており、電圧変換を行うか否かを選択する。すなわち、電池パック100の電圧変換を行わない場合にはスイッチ5を位置5A(図6)に設定して、スイッチ505のスイッチピン505Cを例えば5Vの定電圧の端子505Aに接続する。電池パック100の電池電圧を所定の電圧、すなわち12Vに変換して電動工具200に出力する際には、スイッチ5を位置5Bに設定して、スイッチ505をグランドラインに接続された端子505Bに接続する。このとき、マイコン502がスイッチ505の状態を検出する。
サーミスタ506は、FET31の温度を検出するもので、定電圧回路10の出力電圧すなわち5Vを抵抗7とサーミスタ506で分圧し、その分圧値をマイコン502に出力する。
マイコン502は、電動工具200のスイッチ202のオン動作に対応して、電源供給回路20、電池電圧検出回路540および定電圧回路10を介して例えば5Vの回路電源電圧が供給されることで動作可能となり、電源供給回路20のFET21のゲート端子にGNDレベルの信号を入力し、FET21のオン状態を維持する。また、マイコン502は、スイッチ505の状態に応じてスイッチング回路30のFET31のスイッチング周波数とデューティを制御する。すなわち、スイッチ505が端子505Aに接続されている場合には、電圧変換を行わないのでデューティ100%の信号をスイッチング回路30のFET31に出力する。また、スイッチ505が端子505Bに接続されている場合には、電動工具200が駆動可能な所定の電圧(12V)に変換させるために、パルス的な信号(デューティ83%)をスイッチング回路30のFET31のゲート端子に出力する。
また、マイコン502は、FET31の温度を監視し、検出された温度に応じてスイッチングのデューティを制御する。さらに、電池電圧検出回路540で検出された電池電圧を監視することにより過電流または過放電が検知されると、FET31のゲート信号をオフして電池パック100と電動工具200間の閉回路を遮断する。加えて、電源供給回路20から電源が供給される時間をカウントし、所定時間経過するとFET21をオフする信号を出力し、電源供給回路20をオフすることによりマイコン502への電源供給を遮断する。
以下、図13のフローチャートを参照しながら、電池パック100、アダプタ500および電動工具200の動作を説明する。電動工具200本体のトリガとなるスイッチ202をオンする(ステップ511)。電動工具200のスイッチ202がオンされると、スイッチング回路30を構成するFET31のドレイン端子に電圧が印加される。これにより、電源供給回路20のFET22のゲート端子に電圧が印加されるためFET22がオンし、FET22のオンによりFET21もオンする。よって、定電圧回路10には電池電圧が供給されることになる。定電圧回路10に電源電圧が供給されると、定電圧回路10は電源電圧を例えば、5Vの回路電源電圧に変換し、マイコン502に供給する(ステップ512)。電源電圧検出回路540からマイコン502に所定電圧が入力されると、マイコン502は電源供給回路20のFET21のゲート端子にGND(L)レベルの信号を入力し、FET21のオン状態を維持する(ステップ513)。
また、マイコン502は、例えば5Vの回路電源電圧が入力されると、電圧切換スイッチ505が電圧変換を行う状態(オン状態)か否かを判断する(ステップ514)。スイッチ505からの入力がグランドレベルの場合(端子505Bに接続)、マイコン502は、本実施の形態においては電池パック100の出力電圧14.4Vを電動工具200の駆動電圧12Vに変換するため、所定周波数のデューティ83%のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる(ステップ515)。スイッチ505からの入力電圧が例えば5Vの場合、マイコン502は、電圧変換を行わないと判断して所定周波数のデューティ100%のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる(ステップ516)。
ここで、FET31をスイッチングすることによりFET31の温度が上昇して破壊する恐れがあるため、サーミスタ506によりFET31の温度を検出する(ステップ517)。サーミスタ506が検出するFET31の温度が120℃以下の場合には、ステップ520に進む(ステップ517のNo)。120℃を超える場合には(ステップ517のYes)、スイッチングデューティを30%に低下させて、FET31の温度上昇を抑制する(ステップ518)。FET31の温度が100℃以上の場合には、ステップ518を繰り返す(ステップ519のNo)。FET31の温度が100℃未満になったら(ステップ519のYes)、ステップ520に進む。
ステップ520では過電流検出を行う。すなわち、電池電圧検出回路540で、電池電圧が11V未満の状態が1秒以上継続すると(ステップ520のYes)、ステップ524に進み、そうでない場合にはステップ521に進む(ステップ520のNo)。
ステップ521では後述の過放電検出を行う。すなわち、電池電圧検出回路540で、電池電圧が8V未満の状態になると(ステップ521のYes)、ステップ524に進み、そうでない場合にはステップ522に進む(ステップ520のNo)。
ステップ522では後述の省電力機能が働く。すなわち、アダプタ500のマイコン502で回路電源電圧が供給開始(スイッチ202が一度オン)されてから10時間が経過すると (ステップ522のYes)、ステップ524に進み、そうでない場合にはステップ523に進む(ステップ520のNo)。
ステップ523では、電池パック100のLD端子からLD信号が入力されたか否かを判断する。上述したように、電池パック100は過放電防止機能および過電流防止機能を有しており、いずれかを検知するとLD端子を介して過放電信号または過電流信号が放電停止信号として出力する。この放電停止信号が入力された場合には(ステップ522のYes)、ステップ524に進み、そうでない場合にはステップ511に戻る(ステップ520のNo)。
ステップ524では、FET31のゲート信号をオフして、FET21のゲート信号をHにして、マイコン502の電源をオフし(ステップ525)、ステップ511に戻る。
なお、過電流検出(ステップ520及びステップ523)と過放電検出(ステップ521及びステップ523)をそれぞれ電池電圧検出回路540と保護IC120の両方で行っているため、LD端子が接触不要になり保護IC120からの放電停止信号がアダプタ1に入力されなくなった場合でも、電池電圧検出回路540により検出しているため、確実に過電流及び過放電を防止することができる。
このようにしてアダプタ500により変換された12Vの電圧はアダプタ500のプラス端子およびマイナス端子を介して電動工具200に供給され、モータ201を回転させて電動工具200を駆動すると共に、過放電及び過電流を確実に防止することができる。
電動工具200のスイッチ202がオフされると、モータ201は電圧が供給されなくなり、停止する。アダプタ500においては、電池パック100から電源供給回路20および定電圧回路10を介してマイコン502への例えば5Vの回路電源電圧供給は継続している。一方、マイコン502は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されてからの時間をカウントしており、所定時間経過するまではFET21のオン状態を継続することで、電源供給回路20および定電圧回路10は駆動されている。所定時間経過すると、マイコン502はFET21をオフする信号を出力し、それにより電源供給回路20がオフされ、アダプタ500への電池パック100からの電源供給が遮断される。
(過電流防止機能および過放電防止機能)
本実施の形態においては、マイコン502は、上記したように、過電流検出機能と過放電検出機能とを有している。マイコン502は、電池電圧検出回路540で電池パック100の電池電圧を検出することにより過電流および過放電を監視している。検出された電圧が例えば11V等の一定値を下回った状態が所定時間例えば1秒以上継続すると、過電流と判断する。また、検出された電圧が例えば8V等の一定値を下回ると、過放電と判断する。マイコン502が過放電または過電流と判断すると、スイッチング回路30のFET31のゲート端子にオフ信号を入力し、電池パック100と電動工具200間の閉回路を開放して電池パック100から電動工具200への電力の供給を遮断する。その後、マイコン502はFET21のゲート信号をHにして電源供給回路20をオフすることで、電池パック100からアダプタ500への電源供給も遮断されてマイコン502の電源がオフされる。なお、上記したように電池パック100の保護IC120でも過電流及び過放電を検出している。
これらの過放電防止機能、過電流防止機能により、電池パック100の過放電や過電流を防止することができ、電池パック100の異常発熱や、モータ202のロック等の異常動作を防止するとともに、電池パック100の故障や寿命低下を防止することができる。
(省電力機能)
本実施の形態においては、上記のように、マイコン502に電池パック100のエネルギを無駄に消費しないようにするための省電力機能が備えられている。すなわち、マイコン502は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されるとその時間をカウントし、例えば10時間等の所定時間経過(トリガ202が一度オンしてから)するとFET21をオフする信号を出力するので電源供給回路20がオフされ、マイコン502への電源供給が遮断されることになる。
よって、電動工具200のスイッチ202がオフされているときや電動工具200が接続されていないとき、電動工具のスイッチ202が一度オンされて所定時間が経過したときには、アダプタ500内での回路の動作を制限することになり、電池パック100の消費電力を抑制することができる。すなわち、電動工具200の動作後、所定時間はアダプタ500の電源供給回路20等の内部回路だけ動作させ、所定時間経過後は、FET31をオフし、その後FET21をオフすることで電源供給回路20をオフにし、省電力化を実現している。
また、電動工具200の使用方法によっては過電流を誤検出してしまう場合がある。すなわち、電動工具200のスイッチ202を半引き状態(トルクを落とす)で所定時間使用する場合、プラス端子の電圧(電池電圧)の変動が生じてしまい、電池パック100の電流検出抵抗で検出される電流値が変動し、その結果、保護IC120が過電流を誤検出して、LD端子を介して放電停止信号を出力してFET31をオフしてしまう。そこで、電池電圧検出回路540でも過電流を検出しているため、LD端子から放電停止信号が出力されても、電池電圧検出回路540により電池電圧が所定値以上の場合には、LD端子からの信号を無効にして、マイコン502からFET31のオンを維持する信号を出力する構成としても良い。
以上詳細に説明したように、第1の実施の形態の第2の変形例による電池パック100、アダプタ500および電動工具200によれば、電池パック100と電動工具200との差込形式が異なる場合、または電池パック100の出力電圧と電動工具200の駆動電圧とが異なる場合にも、アダプタ500を介することで電池パック100により電動工具200を駆動させることが可能になる。また、スイッチ5により出力電圧を選択できるので、電動工具200の定格電圧を超えた電圧を入力することを防止できる。また、電池パック100に加えてアダプタ500のマイコン502も省電力機能、過放電防止機能、および過電流防止機能を有しているので、より効率よく安全に電動工具200を使用することができる。
上述した第1の実施の形態の第2の変形例は、図14に示したように動作させてもよい。図14に示したフローチャートは図13に示したフローチャートと大略同じであるが、ステップ514において電圧切換スイッチ505がオン状態であると判断した場合に(ステップ514がYes)、直ちにステップ515を実行するのではなく、電池電圧が12Vより大きいか否かを判断するステップ51Xが追加されている点で異なっている。以下、追加されたステップ51X前後の動作を説明する。その他の部分の動作は、図13に示したフローチャートと同じであり、同一のステップ番号を付してある。
マイコン502は、例えば5Vの回路電源電圧が入力されると、電圧切換スイッチ505が電圧変換を行う状態(オン状態)か否かを判断し(ステップ514)、スイッチ505からの入力電圧が、例えば、5Vの場合、マイコン502は、電圧変換を行わないと判断して所定周波数のデューティ100%のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる(ステップ516)。この点は、図13のフローチャートに示した動作と同じである。しかし、スイッチ505からの入力がグランドレベルの場合には、電池電圧検出手段540によって電池電圧を検出し、電池電圧が所定値以上か否かをマイコン502によって判断する(ステップ51X)。この点が図13に示したフローチャートと異なっている。本実施の形態においては、電池パック100の出力電圧14.4Vを電動工具200の駆動電圧12Vに変換するため、電池電圧検出手段540によって検出した電池電圧が12V以上か否かを判断するのが好ましい。電池電圧が12V以上の場合、マイコン502は、所定周波数のデューティ83%のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる(ステップ515)。即ち、図15に示すように、電池電圧が14.4Vであれば12V(実効値)が電動工具200に出力され、電池電圧が12V以上であり14.4V以下であれば、電池電圧の83%に相当する電圧が電動工具200に出力される。
また、電池電圧が12Vよりも低いときは、ステップ516に進み、マイコン502は、所定周波数のデューティ100%のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる。これは電池パック100の保護IC120で過電流検出をする場合、スイッチングしている状態では正確な電流値を検出できないため、電池電圧が12Vよりも低いときは過電流の可能性があるとマイコン502が判断し、デューティ100%の状態で保護IC120で正確に過電流検出できるようにするためである。
上記説明では、電池電圧が12V以上のときは所定周波数のデューティ83%を出力するように制御を行っているが、これに限られるものではない。電池電圧が12V以上のときはマイコン502によって電池電圧を常に監視しながらアダプタ500からの出力電圧の実効値が12Vになるように、最適なデューティ比を演算しFET31を制御しても良い。この場合、電池電圧が12V以上の領域においてはアダプタ500からの出力電圧の実効値を常に一定に保つことができるため、電池電圧が低下した場合であってもこれに影響されることなく電動工具200を安定した電力で使用することが可能となる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図16を参照して詳細に説明する。図16は、本発明の第2の実施形態に係るアダプタ600と、それに接続される電池パック100と電動工具700の接続状態を示した回路図である。第1の実施形態またはその変形例と同様の構成、動作を有するものについては同一番号を付し、説明を省略する。
第2の実施形態に係るアダプタ600の使用状態の外観は、第1の実施の形態およびその第1および第2の変形例における外観と実質的に同一である。アダプタ600は、電動工具700と、電動工具700の定格電圧よりも低い電圧を出力する電池パック100とを機械的および電気的に接続し、使用可能とする機器である。例えば、アダプタ600は、電池パック100とはスライド式に接続され、電動工具700とは差し込み式に接続可能であるように構成されている。
まず、電池パック100をアダプタ600を介して電動工具700の電源として使用する際の機器内部の構成について説明する。電池パック100については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。また、電動工具700は、電動工具200のモータ201をモータ701に、ダイオード203をダイオード703に、スイッチ202をスイッチ702に代えたものであり、定格電圧が例えば14.4Vの電池パック100の出力電圧より高いことが電動工具200と異なっているが、基本的な構成および動作は実質的に同一である。
アダプタ600は入力電圧、すなわち電池パック100の電池電圧14.4Vを昇圧させ、電動工具700の定格電圧に対応する電圧に変換する。このため、第1の実施の形態において説明したスイッチ5の位置Bは、第2の実施の形態によるアダプタ600においては、例えば18V等、電池パック100の出力電圧よりも高い電圧値を示す位置にすることができる。
アダプタ600は、電池パック100のプラス端子と電気的に接続されるプラス端子と、マイナス端子と電気的に接続されるマイナス端子と、電池パック100の電池状態信号を出力するLD端子と電気的に接続されるLD端子と、電動工具700のプラス端子及びマイナス端子と電気的に接続されるプラス端子及びマイナス端子とを備えると共に、定電圧回路10、電源供給回路20、スイッチング回路30、電池電圧検出回路540、マイコン602、スイッチ505およびサーミスタ506、インダクタ608、ダイオード604、コンデンサ609および停止信号検出回路650から主に構成されている。
アダプタ500とアダプタ600との相違は、昇圧用のインダクタ608、コンデンサ609およびコンデンサ609の放電防止用のダイオード604、スイッチング回路30が兼用していた電動工具700のスイッチ702のオンオフおよび放電停止信号を検出する停止信号検出回路650を設け、マイコン502をマイコン602に代えるとともに、スイッチング回路30をインダクタ608とマイナス端子との間に設けるようにしたことである。
停止信号検出回路650は、FET651、抵抗652、抵抗653およびツェナーダイオード654から構成されている。停止信号検出回路650のFET651は、電動工具700のスイッチ702のオン動作に対応して、後述するマイコン602からゲート信号(FET651のオン信号)が供給されると電池パック100と電動工具700とのマイナス端子間を接続する。また、マイコン602または電池パック100の過電流防止機能、過放電防止機能または省電力機能による放電停止信号が入力されるとFET651がオフされ、電池パック100と電動工具700とのマイナス端子間の接続を開放して電池パック100からの電力供給を遮断する。
電源供給回路20は、電動工具700のスイッチ702のオン動作に対応して、FET22がオンされるとFET21がオンし、電池電圧検出回路540および定電圧回路10に電池電圧を供給する。
マイコン502とマイコン602との相違は、過電流防止機能、過放電防止機能または省電力機能等による放電停止信号を、スイッチング回路30ではなく停止信号検出回路650に出力するようにしたことである。そのほかはマイコン502と実質的に同一の動作を行う。
すなわちマイコン602は、電動工具700のスイッチ702のオン動作に対応して、電源供給回路20、電池電圧検出回路540および定電圧回路10を介して例えば5Vの回路電源電圧が供給されることで動作可能となり、電源供給回路20のFET21のゲート端子にGNDレベルの信号を入力し、FET21のオン状態を維持する。また、マイコン602は、スイッチ505の状態に応じてスイッチング回路30のFET31のスイッチング周波数とデューティを制御するとともに、FET31の温度を監視し、検出された温度に応じてスイッチングのデューティを制御する。すなわち、スイッチ505が端子505Aに接続されている場合には、電圧変換を行わないのでFET31をオフ状態に維持する。また、スイッチ505が端子505Bに接続されている場合には、電動工具200が駆動可能な所定の電圧に変換(昇圧)させるために、パルス的な信号をスイッチング回路30のFET31のゲート端子に出力する。
さらに、マイコン602は、電源供給回路20から電源が供給される時間をカウントし、所定時間経過するとFET21をオフする信号を出力し、電源供給回路20をオフすることによりマイコン602への電源供給を遮断する。
スイッチング回路30は、上述のようにインダクタ608とマイナス端子との間に接続されており、スイッチング回路30のFET31のゲート端子に、後述するマイコン602のスイッチング周波数及びスイッチングデューティに応じた信号が入力されることにより、オンオフする。
インダクタ608は、FET31がオンの間は電池パック100のプラス端子およびマイナス端子間に形成される電流路によりエネルギを蓄積され、FET31がオフのときは、ダイオード604を介してエネルギを出力する。
ダイオード604は、FET31がオンの間はコンデンサ609の放電を防止し、オフの間はインダクタ608から電動工具700およびコンデンサ609への電流路となる。
コンデンサ609は、FET31がオンの間は蓄積されたエネルギを電動工具700に供給し、FET31がオフのときは、電池パック100の電源電圧に加えてインダクタ608に蓄積されたエネルギにより充電される。
すなわち、FET31をオンすることでインダクタ608にエネルギを蓄積し、FET31をオフすることでインダクタ608のエネルギとコンデンサ609の充電電圧とを加算した電圧(昇圧電圧)を電動工具700に供給することができる。
以下、上記のように構成される電池パック100、アダプタ600および電動工具700の動作について説明する。電動工具700のスイッチ702がオンされると、停止信号検出回路650のFET651のドレイン端子に電圧が印加され、電源供給回路20のFET22のゲート端子に電圧が印加されるためFET22がオンし、FET22のオンによりFET21もオンする。これにより定電圧回路10には電池電圧が供給されることになる。定電圧回路10に電源電圧が供給されると、定電圧回路10は電源電圧を例えば5Vの回路電源電圧に変換し、マイコン602に供給する。マイコン602は、電源電圧が供給されるとFET651にゲート信号(オン信号)を出力してFET651をオンさせ、電池パック100と電動工具700の閉回路を形成する。また、マイコン602は電源供給回路20のFET21のゲート端子にGND(L)レベルの信号を入力し、FET21のオン状態を維持する。
また、マイコン602は、例えば5Vの回路電源電圧が入力されると、電圧切換スイッチ505がオン(端子505B側:グランドレベル)か否かを判断する。オンの場合、マイコン602は、本実施の形態においては電池パック100の出力電圧を電動工具700の駆動電圧に昇圧して変換するため、昇圧したい割合に応じたデューティの所定周波数のパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる。一方、切換スイッチ505がオフ(端子505A側)の場合、マイコン502は、電圧変換を行わないと判断しFET31のオフ状態を維持する。
ここで、サーミスタ506によりFET31の温度を検出する。定電圧回路10の出力(5V)を抵抗7とサーミスタ506により分圧し、その分圧値により温度を検出する。サーミスタ506の温度検出によりFET31の温度が120℃を超える場合にはスイッチングデューティを低下させて、例えば100℃未満になるまでFET31の温度上昇を抑制する。
本実施の形態においては、FET31がオン場合には、電池パック100のプラス端子とマイナス端子との間にインダクタ608とFET31とを介した電流路が形成され、インダクタ608にエネルギが蓄積される。オフの場合には、インダクタ608に蓄積されたエネルギが電池パック100の出力電圧に加算されて、ダイオード604を介して電動工具700およびコンデンサ609に供給される。このとき、コンデンサ609は充電される。コンデンサ609に充電されたエネルギは、FET31がオンの間、電動工具700に供給される。電動工具700に供給される電圧は、電池パック100の出力電圧に対し、FET31のオフ時間に対するオン時間とオフ時間とを加算した時間の割合に比例して昇圧されることになる。
また、本実施の形態においても第1の実施の形態の第2変形例における電池パック100およびアダプタ500と同様、過電流防止機能、過放電防止機能および省電力機能を有している。上述のようにこのときマイコン602は、電池電圧検出回路540により過電流または過放電を検出すると放電停止信号を停止信号検出回路650のFET651に出力するため、電力供給が停止される。また、保護IC120でも過電流及び過放電を検出しており、その検出信号(放電停止信号)によりFET651を遮断する。なお、停止信号検出回路650は、電池パック100と電動工具700のプラス端子間に接続されてもよい。
このようにしてアダプタ600により昇圧された電圧はアダプタ600のプラス端子およびマイナス端子を介して電動工具700に供給され、モータ701を回転させて電動工具700を駆動する。
電動工具700のスイッチ702がオフされると、モータ701は電圧が供給されなくなり、停止する。アダプタ600においては、電池パック100から電源供給回路20および定電圧回路10を介してマイコン602への例えば5Vの回路電源電圧供給は継続している。一方、マイコン602は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されてからの時間をカウントしており、所定時間経過するまではFET21のオン状態を継続することで、電源供給回路20および定電圧回路10は駆動されている。所定時間経過すると、マイコン602はFET21をオフする信号を出力し、それにより電源供給回路20がオフされ、アダプタ700への電池パック100からの電源供給が遮断される。
以上詳細に説明したように、第2の実施の形態による電池パック100、アダプタ600および電動工具700によれば、電池パック100と電動工具700との差込形式が異なる場合、または電池パック100の出力電圧が電動工具700の定格電圧よりも低い場合にも、アダプタ600を介することで電池パック100の出力電圧を昇圧して電動工具700を効率よく駆動させることが可能になる。また、アダプタ700のマイコン602も省電力機能、過放電防止機能、および過電流防止機能を有しているので、より効率よく安全に電動工具700を使用することができる。
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図17を参照して詳細に説明する。図17は、本発明の第3の実施形態に係るアダプタ800と、それに接続される電池パック100と電動工具700の接続状態を示した回路図である。第1の実施形態またはその変形例または第2の実施の形態と同様の構成、動作を有するものについては同一番号を付し、説明を省略する。
第3の実施形態に係るアダプタ800の使用状態の外観は、第2の実施の形態の変形例における外観と実質的に同一である。アダプタ800は、電動工具700と、電動工具700の定格電圧よりも低い電圧を出力する電池パック100とを機械的および電気的に接続し、使用可能とする機器である。例えば、アダプタ800は、電池パック100とはスライド式に接続され、電動工具700とは差し込み式に接続可能であるように構成されている。
まず、電池パック100をアダプタ800を介して電動工具700の電源として使用する際の機器内部の構成について説明する。電池パック100、電動工具700については、第2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
アダプタ800は入力電圧、すなわち電池パック100の電池電圧14.4Vを昇圧させ、電動工具700の定格電圧に対応する電圧に変換する。アダプタ800は、電池パック100のプラス端子と電気的に接続されるプラス端子と、マイナス端子と電気的に接続されるマイナス端子と、電池パック100の電池状態信号を出力するLD端子と電気的に接続されるLD端子と、電動工具700のプラス端子及びマイナス端子と電気的に接続されるプラス端子及びマイナス端子とを備えると共に、定電圧回路10、電源供給回路20、スイッチング回路30、電池電圧検出回路540、マイコン802、スイッチ505およびサーミスタ506、トランス808、ダイオード604、コンデンサ609および停止信号検出回路50から主に構成されている。
アダプタ600とアダプタ800とはともに昇圧機能を有するアダプタであるが、両者の相違は、マイコン602に代えてマイコン802が設けられ、昇圧用のインダクタ608に代えてトランス808が設けられ、トランス808の2次側にダイオード604とコンデンサ609が設けられていることである。
トランス808は、1次側にインダクタ801、2次側にインダクタ803を備えており、インダクタ801が電池パック100側のプラス端子とスイッチング回路30との間に接続されている。インダクタ803は、ダイオード604を介して電動工具700側のプラス端子とマイナス端子との間に接続されている。コンデンサ609は、電動工具700側のプラス端子とマイナス端子との間に接続されている。トランス808は、スイッチング回路30のFET31に所定周波数の所定のデューティのパルス信号が入力することにより、そのパルス信号のデューティおよびインダクタ801とインダクタ803との巻数比に応じて、電動工具700に与える電圧を変化させることができるため、電池電圧を昇圧するだけでなく降圧することも可能である。
ダイオード604は、FET31のオンオフに応じて生じるインダクタ803の交流電圧を整流し、コンデンサ609とともに、整流平滑回路を形成する。
このとき、ダイオード604はコンデンサ609の放電防止用であり、コンデンサ609は、FET31のオンオフに応じて充放電しながら出力電圧を平滑する。
マイコン802とマイコン602との相違は、スイッチ505のオンオフに応じてFET31へ出力される信号である。本実施の形態においては、スイッチ505がオンの場合、インダクタ801とインダクタ803との巻数比に応じて所定周波数のパルス信号のデューティを調整し、電動工具700側に所望の電圧値の出力電圧を出力させる。また、スイッチ505がオフの場合にも、インダクタ801とインダクタ803との巻数比に応じて所定周波数のパルス信号のデューティを調整し、電池パック100と同一の出力電圧を出力させる。
以下、上記のように構成される電池パック100、アダプタ800および電動工具700の動作について説明する。電動工具700のスイッチ702がオンされると、停止信号検出回路650のFET651のドレイン端子に電圧が印加され、電源供給回路20のFET22のゲート端子に電圧が印加されるためFET22がオンし、FET22のオンによりFET21もオンする。これにより定電圧回路10には電池電圧が供給されることになる。定電圧回路10に電源電圧が供給されると、定電圧回路10は電源電圧を例えば5Vの回路電源電圧に変換し、マイコン802に供給する。また、マイコン802は電源供給回路20のFET21のゲート端子にGND(L)レベルの信号を入力し、FET21のオン状態を維持する。
また、マイコン802は、例えば5Vの回路電源電圧が入力されると、電圧切換スイッチ505がオンか否かを判断する。オン(電圧変換を行う)の場合、マイコン802は、本実施の形態においては電池パック100の出力電圧を電動工具700の駆動のための所望の電圧に変換するため、所定周波数の所定デューティのパルス信号をFET31に出力し、FET31をスイッチングさせる。このスイッチングによりトランス808で電磁誘導により起電力が発生し、電動工具700のプラス端子とマイナス端子との間に所望の出力電圧が出力される。切換スイッチ505がオフの場合、マイコン502は、電圧変換を行わないと判断し、所定周波数の上記電圧変換をする場合と異なる所定デューティのパルス信号を出力し、FET31をスイッチングさせる。このスイッチングによりトランス808で電磁誘導により起電力が発生し、電動工具700のプラス端子とマイナス端子との間に電池パック100の出力電圧と同一の出力電圧が出力される。
ここで、サーミスタ506によりFET31の温度を検出する。定電圧回路10の出力(5V)を抵抗7とサーミスタ506により分圧し、その分圧値により温度を検出する。サーミスタ506の温度検出によりFET31の温度が120℃を超える場合にはスイッチングデューティを低下させて、例えば100℃未満になるまでFET31の温度上昇を抑制する。
本実施の形態においては、電圧変換をする場合にもしない場合にもFET31にパルス信号を出力する。電動工具700に供給される電圧は、インダクタ801とインダクタ803との巻数比とパルス信号のデューティに応じて昇圧されることになる。なお、降圧することも可能である。
また、本実施の形態においても第1から第3の実施の形態における電池パックおよびアダプタと同様、過電流防止機能、過放電防止機能および省電力機能を有している。上述のようにこのときマイコン802は、電池電圧検出回路540により過電流または過放電を検出すると放電停止信号を停止信号検出回路650のFET651に出力するため、電力供給が停止される。また、電池パック100の保護IC120により過電流または過放電が検出された場合にもLD端子を介して放電停止信号を出力しFET651をオフする。なお、停止信号検出回路650は、電池パック100と電動工具700のプラス端子間に接続されてもよい。
このようにしてアダプタ800により昇圧(降圧)された電圧はアダプタ800のプラス端子およびマイナス端子を介して電動工具700に供給され、モータ701を回転させて電動工具700を駆動する。
電動工具700のスイッチ702がオフされると、モータ701は電圧が供給されなくなり、停止する。アダプタ800においては、電池パック100から電源供給回路20および定電圧回路10を介してマイコン802への例えば5Vの回路電源電圧供給は継続している。一方、マイコン802は、電源供給回路20から回路電源電圧が供給されてからの時間をカウントしており、所定時間経過するまではFET21のオン状態を継続することで、電源供給回路20および定電圧回路10は駆動されている。所定時間経過すると、マイコン802はFET21をオフする信号を出力し、それにより電源供給回路20がオフされ、アダプタ800への電池パック100からの電源供給が遮断される。
以上詳細に説明したように、第3の実施の形態による電池パック100、アダプタ800および電動工具700によれば、電池パック100と電動工具700との差込形式が異なる場合、または電池パック100の出力電圧が電動工具700の定格電圧よりも低い場合にも、アダプタ800を介することで電池パック100の出力電圧を昇圧して電動工具700を効率よく駆動させることが可能になる。また、アダプタ700のマイコン802も省電力機能、過放電防止機能、および過電流防止機能を有しているので、より効率よく安全に電動工具700を使用することができる。
(第4の実施の形態)
次に、アダプタを介さずに電池パック100を電動工具300の駆動源とする場合について説明する。上述したように図5は、スライド式の電池パック100と正規に接続可能な電動工具300との使用状態を示した図である。図5に示すように、本実施の形態による電池パック100は、スライド式の電池パック100と正規に接続可能な電動工具300と直接接続した状態で電力供給が可能である。
図18は、本発明の第4の実施形態による電池パック100と、電池パック100と正規に接続可能な電動工具300との接続状態を示した回路図である。
図18に示すように、電池パック100はリチウム電池111〜114からなり、公称電圧は素電池電圧3.6Vを4本直列に接続して14.4Vである。電動工具300は、モータ301、スイッチ302、電池パック100が過放電や過電流等の異常状態になった際に電動工具300の動作をオフ(モータ301と電池パック300間の閉回路を遮断)させるFET304等の構成部品から構成されている。本実施形態では、電動工具300は14.4V用の電動工具であり、14.4Vの電池パック100を14.4V用の電動工具300に接続することで正常に動作可能になる。
図18において、電池パック100の構成および動作は、第1から第3の実施の形態による電池パック100と同様である。電動工具300は、モータ301、スイッチ302、フライホイールダイオード303、FET304、プルアップ抵抗305、ツェナーダイオード306を備えている。モータ301、スイッチ302は直列に接続され、スイッチ302とマイナス端子との間にFET304のドレイン端子およびソース端子が接続されている。FET304のゲート端子は、LD端子に接続されるとともに、プルアップ抵抗305を介してプラス端子に、ツェナーダイオード306を介してマイナス端子に接続されている。なお、FET304は電池パック100の電池電圧によりオンされる。すなわち、電動工具300に電池パック100を正常に接続するとFET304はオンされる。
すなわち、FET304のゲート端子に電池パック100からプルアップ抵抗305を介して所定電圧が供給され、FET304がオンする。そこでスイッチ302をオンすると、モータ301に電池パック100から所定電圧が供給され、電動工具300が駆動される。スイッチ302をオフすると、プラス端子とマイナス端子との間の閉回路が遮断され、電動工具300は駆動を停止する。
電池パック100の保護IC120は、各リチウム電池111〜114の過放電検出機能と図示していない過電流検出機能を有し、過放電あるいは過電流状態を検出すると、電池パック100及び電動工具300のLD端子を介して放電停止信号を出力してFET304をオフし、電動工具300への電力の供給を遮断する。
以上のように、電池パック100は、電動工具300と直接に接続して電動工具300に電力を供給し、駆動させることができる。また、過放電防止機能、および過電流防止機能を有しているので、効率よく安全に電動工具300を使用することができる。
(第5の実施の形態)
次に、図19を参照しながら、電池パック100をアダプタ550と接続した状態で充電する場合について説明する。図19に示すように、アダプタ550は、充電器400と電気的に接続可能な充電端子L+を有し、本実施形態では、電動工具200と電気的に接続可能なプラス端子とは別に充電用のプラス端子(L+)を有し、マイナス端子が共通として充電器400とも電気的に接続可能として構成されている。なお、充電用と放電用のプラス端子を共通にすることも可能であり、この場合、端子数を減らすことができる。
電池パック100の保護IC120は、上述のように電池組110の素電池111〜114の各電圧を監視しており、例えば、所定電圧以上になっているのに充電し続けている等過充電となった場合に、過充電信号をLE端子およびアダプタ1内部の信号線を介して充電器400に出力する。また、上述のように保護IC120は、電池組110の電流を監視しており、電流が所定値を下回ると満充電と判断し、満充電信号をLE端子およびアダプタ1内部の信号線を介して充電器400に出力することで充電を停止する。また、識別抵抗132による電池の種類または素電池数に応じた電池種別信号を、T端子およびアダプタ1内部の信号線を介して充電器400に出力する。さらに、サーミスタ130で検出される電池温度に応じた温度信号を、LS端子およびアダプタ1内部の信号線を介して充電器400に出力する。充電器400は、T端子、LS端子からの電池種類信号、温度信号等に基づいて充電電流、充電電圧を制御し、電池パック100を充電する。また、電池パック100の電池電圧も検出している。
アダプタ550は、第1の実施の形態の第2変形例で説明した500と実質的にほぼ同一である。しかし、図1から図3を参照しながら説明した挿入部1Bの端子9は、本実施の形態によるアダプタ550においては充電端子L+、プラス端子、マイナス端子、LD端子、LE端子、T端子、およびLS端子の7個設けられることになる。また、充電器400側の端子は充電端子L+、マイナス端子、LE端子、T端子、LS端子の5個設けられることになる。
充電器400は、充電端子L+、マイナス端子、LE端子、T端子、LS端子、および電池パック100に電力を供給する電源回路401と、電源回路401の動作を制御する制御回路402とを有している。電源回路401は、充電端子L+とマイナス端子とに接続されており、アダプタ500を介して電池パック100に電力を供給する。制御回路402は、電池パック100とアダプタ500を介して接続されるLE端子、T端子、LS端子と接続されているとともに、電源回路401と接続され、LE端子、T端子、LS端子から入力される信号等に応じて電源回路401に制御信号を出力する。
上記のように、アダプタ550を介して電池パック100を充電器400によって充電する際には、まず、電池パック100がアダプタ550に接続された状態でアダプタ550を充電器400に接続する。充電器400の制御回路402は、アダプタ550を介して入力されるT端子からの電池種別信号により素電池数(電池の種類)を認識し、それに基づいて充電電圧、充電電流を決定し、電源回路401に所定の出力を開始させる。電源回路401は、充電端子L+およびマイナス端子からアダプタ1を介して電池パック100に電力を供給する。この場合、充電電流は、マイコン502の動作に関係なく、すなわちFET31のオン動作に関係なく、FET31の回避手段となるダイオードを介して流れるため、充電が可能となる。すなわち、アダプタ1を動作させることなく充電が可能となる。なおこのダイオードは、FET31に並列に接続され、カソードが電動工具側のマイナス端子にアノードが電池パック100側のマイナス端子に接続されている。
電池パック100では、保護IC120により各電池電圧を監視している。LE端子からの過充電検出信号またはLS端子からの温度異常検出信号がアダプタ550を介して入力されると、制御回路402は電源回路401に出力を停止させる信号を出力し、電源回路401は電力の供給を停止する。
また、電池パック100の満充電検出は、充電器400の不図示の充電電流検出手段、電池電圧検出手段、電池温度検出手段等により行う。例えば電池パック100がリチウム電池の場合には、充電電流検出手段で検出した充電電流が満充電電流値以下となったときに満充電と判別し充電を停止する。また、電池パック100がニカド電池やニッケル水素電池の場合には、電池電圧検出手段により検出した電池電圧がピーク値から所定値降下したときに満充電とする周知の−ΔV方式等により満充電を満別する。また、LS端子から入力された電池温度を電池電池温度検出手段により検出することで満充電を判別することも可能である。
以上のように、電池パック100は、アダプタ550と接続した状態で充電器400により充電することができる。このようにスライド式の電池パック100を差込式の充電器で充電する場合には、電池パック100とアダプタ550を電気的に接続したまま、充電器400の充電端子とアダプタ550の端子とを電気的に接続することで充電が可能となる。このとき、アダプタ550内に過放電防止機能、過電流防止機能と同様に過充電防止用の保護手段を設けても良い。
以上詳細に説明したように、電池パックの電池電圧を電動工具に必要な所定の電圧に変換する実効電圧変換手段を設けたので、リチウム電池の組み合わせのみで、通常の組み合わせでは実現することが出来ない所定の電圧を任意に出力することができる。また、電動工具のスイッチ動作に対応して定電圧手段に電源供給をするようにしたので電池パックの低消費化を可能にすることができる。更に、電池パックからの過放電や過電流の電池状態信号によって電流供給路を遮断する保護手段を設けたので、電池パックの故障や寿命低下を防止することができる。
なお、本発明によるアダプタ、電池パックとアダプタの組み合わせ、それらを備えた電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、図20に示すように、スライドタイプの電池パック100aにスライドタイプのアダプタ1aを装着するようにしてもよいし、図21に示すように、差し込みタイプの電池パック100bにスライドタイプのアダプタ1bを装着するようにしてもよい。また、図22に示すように、差し込みタイプの電池パック100bに差し込みタイプのアダプタ1cを装着するようにしてもよい。図20に示したスライドタイプの電池パック100aは、図1、図3等に示した電池パック100と同じものである。スライドタイプのアダプタ1aはスライド式装着部を有する電動工具に装着される。図21に示した差し込みタイプの電池パック100bは、図1に示したアダプタ1の楕円筒状の挿入部1Bと略同一の形状を有する挿入部を有している。本来、差し込みタイプの電池パック100bは、その挿入部を電動工具200のハンドル部200B(図4参照)内に形成された中空部に差し込んで使用することを企図したものであるが、図21は、斯様な形状の電池パック100bをスライドタイプのアダプタ1bに形成された空間(点線で示した部分)に差し込み、アダプタ1bをスライド式装着部を有する電動工具に装着して使用する例を示したものである。図22に示した差し込みタイプの電池パック100bは図21に示した電池パックと同じものである。図22に示した差し込みタイプのアダプタ1cは、図1、図3等に示したアダプタ1と基本的に同じものであるが、電池パック100bの挿入部を受け入れるための空間(点線で示した部分)が形成されている点で図1、図3等に示したアダプタ1とは異なっている。電池パック100bに装着されたアダプタ1cは、電池パック挿入部が形成された電動工具に差し込んで使用する。
また、本実施形態では電池パック100の電池電圧を14.4V、電動工具200の定格電圧を12Vとして説明し、14.4Vから12Vへの電圧変換はスイッチ5により選択するようにしたが、自動的に行うようにしてもよい。この場合、アダプタの出力電圧が、電動工具の定格電圧より大きい値に設定されているときには電動工具に接続することができないように、電圧切換手段と連動して切り換わる接続防止手段を設けても良い。また、スイッチングのデューティを変えて9.6Vや7.2V、18Vや24Vに変圧するようにしてもよい。更に、電池パックとアダプタを一体に構成し(アダプタ機能を電池パックに内蔵)、電池パックで電圧を変圧するようにしてもよい。
1、1a、1b:アダプタ 2:スイッチング制御手段 10:定電圧回路 20:電源供給回路 30:スイッチング回路 40:電源供給保持回路 100、100a、10b:電池パック 200:電動工具