JP2021095466A - グラフト共重合体を含む粉体塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、靭性が向上した塗膜が得られる粉体塗料組成物を提供することにある。【解決手段】ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合した粉体塗料用グラフト共重合体。また前記グラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む粉体塗料組成物。また被塗物上に前記粉体塗料組成物を用いて形成された塗膜であって、ISO1520の耐カッピング性試験において特定の条件で測定した押し込み深さが5mmを超える値である塗膜。さらに前記塗膜を有する物品。【選択図】 なし

Description

本発明は、グラフト共重合体を含む粉体塗料組成物に関する。
近年、塗膜を焼き付けする際に有機溶剤を発生させず、またこのような有機溶剤を含まないため作業環境に優れ、さらに非危険物であって省資源となる粉体塗料が広い分野で使用されている。
粉体塗料は溶剤系塗料と比較して、無溶剤であること以外に、1コートで30〜100μmの厚膜塗装が可能であるという特徴を有しているが、その反面、塗膜が厚くなることにより、塗膜の加工性が低下する等の問題点がある。特に従来から、道路資材や建築資材などの屋外用途に多く使用されているポリエステル系粉体塗料について、近年メンテナンスフリーの観点から、さらに高度な耐候性を持つポリエステル系粉体塗料が検討されている。この高耐候性ポリエステル系粉体塗料において、塗膜の靭性を改良する要求が高まっている。
一方、ゴム状重合体にビニル系単量体をグラフト重合させたグラフト共重合体を粉体塗料に応用した例が特許文献1に示されている。
特許文献1では、ガラス転移温度20℃以下のポリマー層と、ガラス転移温度60℃以上のポリマー層を有する多層ポリマー粒子を粉体塗料に分散させることで、塗膜の加工性や耐衝撃性を改良できることが開示されている。しかし、さらに靭性が改良した塗膜が得られる粉体塗料の開発が望まれている。
また、熱可塑性樹脂にポリオルガノシロキサンゴム成分を含むグラフト共重合体粒子を配合して耐衝撃性を向上させることは従来から知られており、この様なグラフト共重合体を耐衝撃性改質剤として応用した例が特許文献2に示されている。
特許文献2では、ポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が分離できないように相互に絡み合った複合ゴムに、ビニル系単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体が、塩ビ系樹脂の耐衝撃性改質剤として応用できることが開示されている。しかし、前記特許文献記載の複合ゴムからなるグラフト共重合体では、粉体塗料をなす熱可塑性樹脂への分散性が低位で、また粉体塗料組成物の溶融粘度が増加する傾向となるため、粉体塗料組成物から得られる塗膜の外観は低位となる。
特開2000−1633号公報 特開平1−279954号公報
本発明はこのような課題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、外観が良好で、かつ靭性が向上した塗膜が得られる粉体塗料組成物を提供することにある。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>
ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合した粉体塗料用グラフト共重合体。
<2>
複合ゴム状重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、ポリオルガノシロキサンを10〜70質量%含有する、前記の粉体塗料用グラフト共重合体。
<3>
グラフト共重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、複合ゴム状重合体を50〜95質量%含有する、前記の粉体塗料用グラフト共重合体。
<4>
ポリアルキル(メタ)アクリレートを構成する単量体単位全量を100質量%とした場合、各単量体単位を以下に示す質量割合で含有する、前記の粉体塗料用グラフト共重合体。
アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単位: 75〜99質量%
グラフト交叉性単量体単位: 0.5〜10質量%
架橋性単量体単位: 0.5〜5質量%
その他ビニル重合可能な単量体単位: 0〜10質量%
<5>
複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、1種以上のビニル系単量体の各単量体単位を以下に示す質量割合で含有する、前記の粉体塗料用グラフト共重合体。
メタクリル酸メチル単位: 5〜40質量部
架橋性単量体単位: 0.1〜2質量部
反応性基含有重合性単量体単位: 1〜10質量部
<6>
一次粒子径の体積平均粒子径が0.1〜10μmである、前記の粉体塗料用グラフト共重合体。
<7> 前記のグラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む粉体塗料組成物。
<8> 熱可塑性樹脂がポリエステルである、前記の粉体塗料組成物。
<9> 前記の粉体塗料組成物全量を100質量%とした場合、グラフト共重合体の割合が1〜20質量%である、前記の粉体塗料組成物。
<10>
被塗物上に前記の粉体塗料組成物を用いて形成された塗膜であって、ISO 1520の耐カッピング性試験において以下の条件で測定した押し込み深さが5mmを超える値である、塗膜。
塗膜を形成する素地: Q−panel、 厚み: 0.5mm
塗装方法: スプレー塗布、 乾燥塗膜の膜厚: 40μm
焼き付け条件: 200℃、10分
<11>
前記の塗膜を有する物品。
ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
なお、表記「a〜b」は数値の範囲を示し、「a以上b以下」を意味する(a、bは任意の数値)。
本発明の粉体塗料組成物は、靭性が向上し、外観が良好な塗膜が得られる粉体塗料組成物を提供すことができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の粉体塗料組成物は、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む。
本発明のグラフト共重合体は、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴム粒子を含むゴムラテックスに、1種以上のビニル系単量体をグラフト重合させることにより得られるグラフト共重合体ラテックスから回収することで得られる。前記複合ゴムとは、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが分離できないように、相互に絡まりあった構造を有するゴムである。
ポリオルガノシロキサン
ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に少なくとも1つの有機基が結合したオルガノシロキサン単位を構成単位として含有する重合体である。ポリオルガノシロキサンは、オルガノシロキサンまたは、オルガノシロキサンと他の成分を1種以上含む「オルガノシロキサン混合物」を重合することにより得ることができる。他の成分としては、シロキサン系架橋剤、シロキサン系グラフト交叉剤、及び末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマー等が挙げられる。
オルガノシロキサンとしては、鎖状オルガノシロキサン、アルコキシシラン化合物、環状オルガノシロキサンのいずれも用いることができる。その中でも、アルコキシシラン化合物、環状オルガノシロキサンが好ましく、環状オルガノシロキサンが、重合安定性が高く、重合速度が大きいのでより好ましい。環状オルガノシロキサンとしては、靭性改良効果のより高いグラフト共重合体を得ることができることから、環状ジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
アルコキシシラン化合物としては、2官能性アルコキシシラン化合物が好ましく、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
環状ジメチルシロキサンとしては、3〜7員環のものが好ましく、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンを挙げることができる。これらは1種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、粒子径分布を制御しやすいことから、主成分がオクタメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
シロキサン系架橋剤としては、シロキシ基を有するものが好ましい。シロキサン系架橋剤を用いることによって、架橋構造を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。シロキサン系架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の3官能性または4官能性のシラン系架橋剤を挙げることができる。中でも、4官能性の架橋剤が好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。シロキサン系架橋剤の含有率は、靭性改良効果の観点から、オルガノシロキサン混合物100質量%中、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%であることがさらに好ましい。また熱可塑性樹脂への分散性の観点から1質量%以上であることが好ましい。シロキサン系架橋剤の含有率を1〜30質量%とすることによって、靭性改良効果の高いグラフト共重合体を得ることができる。
シロキサン系グラフト交叉剤は、シロキシ基を有すると共にビニル系単量体と重合可能な官能基を有するものである。シロキサン系グラフト交叉剤を用いることによって、ビニル単量体と重合可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。ポリオルガノシロキサンがビニル単量体と重合可能な官能基を有することにより、ポリオルガノシロキサンと、ポリアルキル(メタ)アクリレートとが結合を形成し、分離できない相互に絡まりあった構造を有する複合ゴムを得ることができる。
シロキサン系グラフト交叉剤は、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物として具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルシロキサン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン系グラフト交叉剤の含有率は、オルガノシロキサン混合物100質量%に対して、靭性改良効果の観点から40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。またシロキサン系グラフト交叉剤は、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが分離できないように、互いを繋ぐ結合点となり、靭性改良効果と熱可塑性樹脂への分散性、粉体塗料の溶融粘度低減などに寄与することから、0.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。シロキサン系グラフト交叉剤の含有率を0.5〜40質量%とすることによって、靭性改良効果が高く、かつ熱可塑性樹脂への分散性が良好となるため、靭性と外観に優れた塗膜を作製可能な粉体塗料組成物を提供できるグラフト共重合体を得ることができる。
また、末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーとは、オルガノシロキサンオリゴマーの末端にアルキル基等を有するシロキサンオリゴマーをいう。
末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーとしては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、末端封鎖基がトリメチルシリル基であるシロキサンオリゴマーなどを挙げることができる。
ポリオルガノシロキサンの製造方法
ポリオルガノシロキサンの製造方法としては特に制限はなく、例えば、以下の製造方法を採用できる。まず、オルガノシロキサン単独、またはシロキサン系架橋剤、シロキサン系グラフト交叉剤、及び末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーの内の少なくとも一つを含むオルガノシロキサン混合物を、乳化剤と水によって乳化させてエマルションを調製する。その後、該混合物を、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンのラテックスを得る。
尚、以下に重合用の原料として「オルガノシロキサン混合物」を用いた場合についての製造方法を説明するが、「オルガノシロキサン」を単独で用いた場合についても同様の製造方法を適用できる。
この製造方法において、エマルションの調製方法としては、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーを用いる方法、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して高速攪拌により混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、ホモジナイザーを使用する方法は、ポリオルガノシロキサンのラテックスの粒子径の分布が狭くなるので好ましい方法である。
重合の際の酸触媒の混合方法としては、(1)オルガノシロキサン混合物、乳化剤及び水とともに酸触媒を一括して添加し、混合する方法、(2)オルガノシロキサン混合物のエマルション中に酸触媒水溶液を一括して添加する方法、(3)オルガノシロキサン混合物のエマルションを高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下して混合する方法等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御しやすいことから、オルガノシロキサン混合物のエマルションを高温で保持し、次いでその中に酸触媒水溶液を一括して添加する方法が好ましい。
重合温度は、重合速度の観点から50℃以上が好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また水を溶媒とするため、100℃以下であることが好ましい。また、重合時間は、オルガノシロキサン混合物のエマルション中に酸触媒水溶液を一括して添加して重合する場合には、通常2時間以上、好ましくは5時間以上である。
さらに、30℃以下の温度においては、シラノール間の架橋反応が進行することから、ポリオルガノシロキサンの架橋密度を上げるために、50℃以上の高温で重合させた後に、生成したラテックスを、30℃以下の温度で5時間から100時間程度保持することもできる。
オルガノシロキサン混合物の重合反応は、ラテックスを含む反応系を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液等のアルカリ性物質でpH6〜8に中和して、終了させることができる。
前記製造方法で使用される乳化剤としては、オルガノシロキサン混合物を乳化できれば特に制限されないが、アニオン系乳化剤またはノニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムを挙げることができる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を挙げることができる。これらの乳化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
乳化剤の使用量は、オルガノシロキサン混合物100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。乳化剤の使用量によって、ポリオルガノシロキサンのラテックスの粒子径を所望の値に調整することが可能である。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、オルガノシロキサン混合物のエマルションの乳化安定性が十分である。乳化剤量が10質量部以下であれば、グラフト共重合体の粉体中に残存する乳化剤の量を十分に低減できるので、該グラフト共重合体と熱可塑性樹脂を含む粉体塗料組成物の耐熱分解性及び表面外観の低下を抑制できる。
オルガノシロキサン混合物の重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類及び硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸を使用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布を狭くすることができ、さらに、ポリオルガノシロキサンラテックス中の乳化剤成分に起因する粉体塗料組成物の耐熱分解性の低下ならびに外観不良の低減を達成することができる。
酸触媒の使用量は、オルガノシロキサン100質量部に対して0.005〜5質量部であることが好ましい。酸触媒の使用量が0.005質量部以上であれば、ポリオルガノシロキサンを短時間で重合することができる。また酸触媒の使用量が5質量部以下であれば、耐熱分解性ならびに外観が良好な粉体塗料組成物を得ることができる。
また、酸触媒の使用量がポリオルガノシロキサンの粒子径を決定する因子となるため、後述する粒子径のポリオルガノシロキサンを得るためには、酸触媒の使用量を0.005〜1.5質量部とすることがより好ましい。
ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は、特に制限はないが、50〜1000nmであることが好ましい。ポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径を50〜1000nmとすることによって、複合ゴムの質量平均粒子径を150〜2000nmに調整することが可能である。
ポリアルキル(メタ)アクリレート
複合ゴム状重合体を構成するポリアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。すなわち、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体単位を1種以上有する重合体である。前記単量体成分には、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体以外の他の単量体が含まれていてもよい。すなわち、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートは、他の単量体をさらに有していてもよい。このポリアルキル(メタ)アクリレートは、ゴム状重合体であることが好ましい。
アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。なお、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸とメタクリル酸の総称である。
ポリアルキル(メタ)アクリレートを構成する単量体単位全量を100質量%とした場合、各単量体単位が以下に示す質量割合であることが好ましい。アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合は、75質量%以上が好ましく、82質量%以上がより好ましい。また99質量%以下が好ましく、98.5質量%以下がより好ましい。アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が75〜99質量%であれば、靭性に優れる塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体に加えてグラフト交叉性単量体を併用しても良い。グラフト交叉性単量体は、分子中に少なくとも2つ以上の反応性の異なる重合性基を有するものであり、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネートなどの不飽和カルボン酸アリルエステル等が挙げられ、これらを単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
グラフト交叉性単量体を用いることで、熱可塑性樹脂への分散性が向上し、かつ粉体塗料組成物の溶融粘度を下げることができるため、外観に優れた塗膜を与える粉体塗料組成物を得ることができる。単量体単位全量を100質量%とした場合、グラフト交叉性単量体単位の質量割合は、熱可塑性樹脂への分散性の観点から0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また粉体塗料組成物の溶融粘度低減の観点から10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。グラフト交叉性単量体の含有率を0.5〜10質量%とすることによって、靭性と外観に優れた塗膜を作成可能な粉体塗料組成物を提供できるグラフト共重合体を得ることができる。
ポリアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単量体に加えて架橋性単量体を併用しても良い。架橋性単量体は、分子中に少なくとも2つ以上の同等の反応性の重合性基を有するものであり、例えばエチレングリコールジメタクリレート,プロピレングリコールジメタクリレート,1,3−ブチレングリコールジメタクリレート,1,4−ブチレングリコー ルジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを単独で、または二種以上併用して用いることができる。
架橋性単量体を用いることで、熱可塑性樹脂への分散性が向上し、かつ粉体塗料組成物の溶融粘度を下げることができるため、外観に優れた塗膜を与える粉体塗料組成物を得ることができる。単量体単位全量を100質量%とした場合、架橋性単量体単位の質量割合は、熱可塑性樹脂への分散性向上と粉体塗料組成物の溶融粘度低減の観点から0.5質量以上が好ましい。また靭性改良効果の観点から5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。架橋性単量体単位の含有率を0.5〜5質量%とすることによって、靭性と外観に優れた塗膜を作成可能な粉体塗料組成物を提供できるグラフト共重合体を得ることができる。
その他ビニル重合可能な単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能であれば特に制限されないが、アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート系化合物や、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。単量体単位全量を100質量%とした場合、その他重合可能な単量体の質量割合は、グラフト共重合体の靭性改良効果を損なわない割合であれば問題なく、10質量%以下であることが好ましい。
複合ゴム状重合体
複合ゴム状重合体とは、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴムである。
複合ゴム状重合体におけるポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとの比率は、複合ゴム状重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、ポリオルガノシロキサンが10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。ポリオルガノシロキサンが10質量%以上であれば、靭性に優れた良好な塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができ、70質量%以下であればグラフト共重合体が熱可塑性樹脂への分散が良好となるため外観に優れた塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。
前述した、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが分離できないように相互に絡まりあった構造を有する複合ゴム状重合体は、前述したポリオルガノシロキサンのラテックス中へ前記アルキル(メタ)アクリレート単量体を添加し、ラジカル重合開始剤を作用させてラジカル重合することによって調整することができる。アルキル(メタ)アクリレートを添加する方法としては、ポリオルガノシロキサンのラテックスと一括で混合する方法と、ポリオルガノシロキサンのラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。なお、得られるグラフト共重合体を含む粉体塗料組成物の靭性を考慮すると、ポリオルガノシロキサンのラテックスとを一括で混合する方法が好ましい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。 乳化剤としては特に制限されないが、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。
本発明のゴム、またはゴム状重合体とは、ガラス転移温度(Tg)20℃以下の重合体を含む重合体のことである。ガラス転移温度の測定方法は特に制限されないが、示差走査熱量測定や、動的粘弾性測定などの方法が挙げられる。
前記Tgは、下記のようにFOXの指揮(式(1))からも求めることができる。具体的には、単独の単量体のみからなる重合体(単独重合体)である場合は、高分子学会編「高分子データハンドブック」等に記載されている標準的な分析値を採用することができ、n種類の単量体を重合して得られる共重合体である場合は、各単量体の単独重合体のTgから算出したものとみなすことができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wn/(273+Tgn)) ・・・(式(1))
式(1)中、Wnは単量体nの質量分率を表し、Tgnは単量体nのホモポリマーのガラス転移温度(℃)を表す。ここで、質量分率は、全単量体の仕込み量の合計に対する単量体nの仕込み量の割合である。
グラフト共重合体
前記複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体をグラフト重合することでグラフト共重合体が得られる。グラフト共重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、複合ゴム状重合体が50質量%以上であることが好しく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また95質量%以下であることが好ましい。複合ゴム状重合体が50質量%以上であれば、靭性に優れた良好な塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができ、95質量%以下であればグラフト共重合体が熱可塑性樹脂への分散が良好となるため外観に優れた塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。
前記グラフト重合させるビニル系単量体は、ラジカル重合可能であれば特に制限されないが、複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、1種以上のビニル系単量体の各単量体単位のうちのメタクリル酸メチルの割合は、熱可塑性樹脂への分散性の観点から、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上がより好ましい。また、靭性改良効果の観点から、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。メタクリル酸メチルの割合が5〜40質量部であれば、グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂への分散性が良好となり、外観の優れた塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。なお、グラフト重合させるビニル系単量体全てを「グラフト部」ということがある。
前記ビニル系単量体は、メタクリル酸メチルに加えて架橋性単量体を併用することが好ましい。架橋性単量体は、分子中に少なくとも2つ以上の同等の反応性の重合性基を有するものであり、例えばエチレングリコールジメタクリレート,プロピレングリコールジメタクリレート,1,3−ブチレングリコールジメタクリレート,1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらを単独で、または二種以上併用して用いることができる。
架橋性単量体を用いることで、熱可塑性樹脂への分散性が向上し、かつ粉体塗料組成物の溶融粘度を下げることができるため、外観に優れた塗膜を与える粉体塗料組成物を得ることができる。複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、架橋性単量体の割合は、粉体塗料組成物の溶融粘度低減の観点から0.1質量部以上が好ましい。また熱可塑性樹脂への分散性向上の観点から2質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。架橋性単量体の含有率を前記範囲とすることによって、靭性と外観に優れた塗膜を作成可能な粉体塗料組成物を提供できるグラフト共重合体を得ることができる。
前記ビニル系単量体は、メタクリル酸メチルに加えて反応性基含有重合性単量体を併用することが好ましい。反応性基含有重合性単量体は、その分子中に、粉体塗料を構成する熱可塑性樹脂もしくは硬化剤と反応し得る官能基を有する重合性単量体であり、前記官能基として例えばヒドロキシル基やカルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。ヒドロキシル基を有する重合性単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、メタクリル酸やアクリル酸等が挙げられる。エポキシ基を有する重合性単量体としては、グリシジルアクリレートや、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、反応性基含有重合性単量体の割合は、1質量部以上が好ましい。また10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。反応性基含有重合性単量体の含有率を前記範囲とすることによって、グラフト共重合体が熱可塑性樹脂への分散が良好となるため外観に優れた塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。
前記ビニル系単量体としては、前記単量体以外の他の単量体を含んでもよい。他の単量体としては、ラジカル重合可能であれば特に制限されないが、メタクリル酸メチルや前記反応性基含有(メタ)アクリレート系化合物以外の(メタ)アクリレート系化合物や、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、その他重合可能な単量体の質量割合は、グラフト共重合体の靭性改良効果を損なわない割合であれば問題なく、3質量部以下であることが好ましい。
複合ゴム状重合体にビニル系単量体をグラフト重合する方法として特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御可能であることから乳化重合が好ましい。
グラフト重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。これらラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤などが挙げられる。また、ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体の分子量やグラフト率を制御するため、公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
乳化重合で得られるグラフト共重合体は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体のラテックスからグラフト共重合体を回収する方法としては、例えばグラフト共重合体のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法や、加熱雰囲気中にグラフト共重合体のラテックスを噴霧することによってグラフト共重合体を回収する噴霧乾燥法などが挙げられる。特に噴霧乾燥法においては、凝集粒子は、一次粒子同士が強固に結合しないため、高次粒子構造を形成し難く、一次粒子として均一に分散させることが可能であり、かつ直接的に回収することができるため、回収方法としては、噴霧乾燥法が好ましい。
グラフト共重合体は、その一次粒子の体積平均粒子径が0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。また10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
ここで一次粒子とは、粉体として回収したグラフト共重合体を構成する最小単位の重合体粒子を指す。一次粒子の体積平均粒子径が10μm以下であると、粉体塗料の靭性が向上する。また、0.1μm以上であると、粉体塗料溶融時の粘度上昇を抑制することができ、外観に優れた粉体塗料塗膜を得ることができる。
粉体塗料組成物
本発明の粉体塗料組成物は、粉体塗料を構成する熱可塑性樹脂、前記グラフト共重合体、硬化剤、顔料、およびその他各種添加剤からなるものであり、粉体塗料組成物を構成する配合物全量を100質量%とした場合、グラフト共重合体が1質量%以上であることが好ましい。また20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。グラフト共重合体が1質量%以上であれば靭性に優れた良好な塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができ、20質量%以下であれば粉体塗料組成物の溶融粘度上昇を抑制でき、平滑な塗膜を形成する粉体塗料組成物を提供することができる。
本発明の粉体塗料組成物からなる粉体塗料は、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂を基本成分とするポリエステル系粉体塗料、ポリエステルとエポキシ樹脂を基本成分とするポリエステル―エポキシハイブリット系粉体塗料、アクリル樹脂を基本成分とするアクリル系粉体塗料、エポキシ樹脂を基本成分とするエポキシ系粉体塗料などが挙げられる。これらの中で、靭性、外観、耐光性、コストのバランスから、特にポリエステル系粉体塗料が好ましく用いられる。
粉体塗料組成物は、通常、公知の方法で製造することができる。すなわち、前記グラフト共重合体、前記熱可塑性樹脂、必要に応じて硬化剤、顔料、およびその他添加剤を乾式混合し、熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度で溶融混錬後、必要に応じて粉砕、分級を行うことで製造される。その他添加剤としては、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワキ防止剤等の、通常の粉体塗料組成物に使用され得る公知の添加剤が挙げられる。
粉体塗料組成物の乾式混合においては、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ハイスピードミキサー、ナウターミキサー等の各種ミキサーを用いることができる。溶融混連に用いられる装置としては、加熱ロール機、加熱ニーダー機、エクストクルーダー等が用いられる。粉砕機としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機が、分級機としては、振動篩等が用いられる。
塗膜の形成
得られた粉体塗料組成物は、例えば静電塗装法、流動浸漬法等、一般的な塗装方法により被塗物に塗布した後、加熱、硬化させることで塗膜を形成させる。加熱温度(焼付け温度)及び時間は、適宜設定することができる。例えば加熱温度は通常、熱可塑性樹脂の融点以上とする。被塗物としては、例えば鉄、亜鉛、錫、ステンレス、銅、アルミニウムなどの金属類、ガラス等の無機質類、及びこれらの基材に必要に応じてプラスト処理や、プライマー、中塗り塗装を施したものなどが使用できる。塗膜の膜厚は特に制限されないが、約15μm〜1mmの範囲が好ましい。本発明の粉体塗料組成物を用いて塗膜を形成する前に、公知の下塗り塗料を用いて下塗り塗膜を形成してもよい。本発明の塗膜を有する物品の被塗物としては、各種の金属をはじめ、セラミック、樹脂等が挙げられる。前記被塗物の形状は、特に制限されず、板状品、、面状品、線状品等が挙げられる。前記物品としては、例えばガードレール、ガードパイプ、欄干、標識用ポール、信号機等の道路資材、フェンス、手摺り、シャッター、カーテンウォール、パーティション、鉄筋バー等の建築資材、レンジ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、照明器具、配電盤、モーター、自動販売機、電話機等の電気製品、ボディ、スプリング、ホイール、ルーフレール、ドライブシャフト、トラック荷台、電車内装ポール等の車両部材、鋼管、継手、仕切弁、水栓金具、ガス給湯器等の水道・ガス資材・部品、および精密機器類などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下「部」は「質量部」のことを表す。
各種測定及び評価方法は以下の通りである。
グラフト共重合体の一次粒子の体積平均粒子径の測定
グラフト共重合体の一次粒子の体積平均粒子径を以下の方法で測定した。
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、製品名:LA−960)を用いて、得られたグラフト共重合体分散液のグラフト共重合体の粒子径を測定した。本明細書中における粒子径は、メジアン径(体積平均粒子径)を用いた。樹脂粒子と分散媒の相対屈折率はすべて1.12として粒子径を算出した分散媒にはイオン交換水を用いた。
レベリング性の評価
粉体塗料を塗布・硬化させた塗膜の外観を評価するために、ASTM D4242に従い、以下の方法で粉体塗料のプレートフローを測定した。プレートフローが良好であれば、粉体塗料を加熱溶融・硬化させた際の粉体塗料の流動性が向上するため、レベリング性が良好な塗膜を得ることができる。
作成した粉体塗料1グラムをプレスして、金属基材(Q−panelQD46、厚み0.5mm)に乗せて、水平から65°傾けた状態で200℃/10分間焼き付けた。その溶融した粉体塗料が流れた距離をプレートフローとして測定した。
得られた測定値から、下記基準にてプレートフローを判定した。プレートフローが50mmより大きければ良好とした。
×:50mm以下、〇:50mm超過
塗膜靭性の評価
粉体塗料を塗布・硬化させた塗膜の靭性の評価法の一つである耐カッピング性を、以下の方法で評価した。
金属基材(試験片;Q−panelQD46、厚み0.5mm)に、作成した粉体塗料をスプレー塗布し、200℃で10分間硬化させ膜厚40μmの塗膜を作成した後、PCE−CPT手動カッピングテスターを使用して、ISO1520に記載の方法に従い押し込み深さを測定した。
得られた測定値から、下記基準にて耐カッピング性を判定した。押し込み深さが4.5mmより大きければ良好とした。
×:4mm以下、〇:4mm超過、5mm以下、◎:5mm超過
<実施例1>グラフト共重合体(P−1)
[工程1(イ)]
テトラエトキシシラン2.0部、γ−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン2.0部及び、環状ジメチルシロキサン混合物(信越シリコーン(株)製、製品名:DMC)96.0部を混合してオルガノシロキサン混合物100部を得た。脱イオン水200部中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.68部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.68部を溶解した水溶液を、前記混合物中に添加し、ホモミキサー(プライミクス(株)社製、型式;RM)にて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザー(APVゴーリン社製、型式:LAB40−10RBFI)に20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。
次いで、温度計、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を備えた容量5リットルのセパラブルフラスコ内に、前記エマルションを入れた後、該エマルションを温度85℃に加熱し、この温度で加熱した状態を6時間維持して重合反応させた後、25℃に冷却し、得られた反応物を25℃で12時間保持した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液をpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサンラテックスを得た。
[工程1(ロ)]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を備えた容量5リットルのセパラブルフラスコ内に、工程1(イ)で得たポリオルガノシロキサンラテックス102部(ポリマー換算で30部)、ペレックスOT−P(ジオクチルスルホコハク酸ジナトリウム、有効成分70%、花王(株)製)0.5部、脱イオン水105部を入れた後、30分間窒素ガスにてバブリングし、脱イオン水中の溶存酸素を置換した。次いで、窒素ガスの通気を停止し、200rpmで撹拌しながら65℃に昇温した後、アクリル酸n−ブチル50部、アリルメタクリレート1.9部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート1.0部を一括で投入し、1時間撹拌を続けてポリオルガノシロキサンに含侵させた。次いで、t−ブチルハイドロパーオキサイド69%水溶液0.09部、イソアスコルビン酸ナトリウム・1水和物0.02部、硫酸第一鉄0.000135部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0001部、脱イオン水1.5部を投入し、ラジカル重合を開始した。次いで、80℃に昇温した後、1時間保持し、ポリオルガノシロキサンとアクリル(メタ)アクリレートゴム状重合体とが複合した複合ゴムラテックスを得た。
[工程1(ハ)]
工程1(ロ)で得た複合ゴムラテックスに、過硫酸アンモニウム0.05部、脱イオン水2部を投入し、メタクリル酸メチル17.8部、アクリル酸エチル0.35部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.9部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.2部、ペレックスOT−P0.2部、脱イオン水15部を80℃で60分間かけて滴下した。その後80℃で1時間保持して重合を完了させ、グラフト共重合体ラテックスを得た。
[工程2]
工程1(ハ)で得たグラフト共重合体ラテックスを、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製、製品名:L−8i型)を用いて入口温度/出口温度=120/60℃及びディスク回転数20,000rpmの条件で噴霧乾燥してグラフト共重合体(P−1)を得た。グラフト共重合体の一次粒子の体積平均粒子径は、0.52μmであった。結果を表1に示す。
<実施例2>グラフト共重合体(P−2)
[工程1(イ)]
実施例1と同様の方法でポリオルガノシロキサンラテックスを得た。
[工程1(ロ)]
実施例1と同様の方法で複合ゴムラテックスを得た。
[工程1(ハ)]
工程1(ロ)で得た複合ゴムラテックスに、過硫酸アンモニウム0.05部、脱イオン水2部を投入し、メタクリル酸メチル19.6部、アクリル酸エチル0.39部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.2部、ペレックスOT−P0.2部、脱イオン水15部を60分間かけて滴下した。その後1時間保持して重合を完了させ、グラフト共重合体ラテックスを得た。
[工程2]
実施例1と同様の方法でグラフト共重合体(P−2)を製造した。結果を表1に示す。
<比較例1>グラフト共重合体(P−3)
[工程1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗及び冷却管を備えた容量5リットルのセパラブルフラスコ内に、脱イオン水63.8部を入れ、30分間窒素ガスを通気し、脱イオン水中の溶存酸素を置換した。次いで、窒素ガスの通気を停止し、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、アクリル酸n−ブチル4.94部、アリルメタクリレート0.19部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部を一括投入し、過硫酸カリウム0.05部、脱イオン水2.53部を投入し、60分保持した。次いで、ペレックスOT−P0.04部、過硫酸カリウム0.05部、脱イオン水4部を投入し、アクリル酸n−ブチル75.1部、アリルメタクリレート2.85部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート1.52部、ペレックスOT−P0.75部、脱イオン水51.6部を180分かけて滴下した。その後1時間保持して重合を完了し、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムラテックスを得た。
工程1で得られたポリアルキル(メタ)アクリレートゴムラテックスに、過硫酸カリウム0.05部、脱イオン水5.40部を投入した後、メタクリル酸メチル17.8部、アクリル酸エチル0.35部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.9部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.20部、ペレックスOT−P0.20部、脱イオン水15部を140分かけて滴下した。その後2時間保持して重合を完了し、グラフト共重合体ラテックスを得た。
[工程2]
実施例1と同様の方法でグラフト共重合体(P−3)を製造した。結果を表1に示す。













Figure 2021095466

表中の化合物は以下の化合物を示す。
・「DMC」:環状ジメチルシロキサン混合物(信越シリコーン(株)製)
・「TEOS」:テトラエトキシシラン(信越シリコーン(株)製)
・「DSMA」:γ−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン(信越シリコーン(株)製)
・「BA」:アクリル酸ブチル(三菱ケミカル(株)製)
・「AMA」:アリルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製)
・「BDMA」:1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(三菱ケミカル(株)製)
・「MMA」:メタクリル酸メチル(三菱ケミカル(株)製)
・「EA」:アクリル酸エチル(三菱ケミカル(株)製)
・「HEMA」:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(三菱ケミカル(株)製)
<実施例3>
[粉体塗料製造工程]
本発明の実施例において使用される粉体塗料の構成成分は以下のとおりである。
・ポリエステル樹脂:SP−6400(Sun polymer international社製)
・硬化剤:トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)(Aalchem社製)
・レベリング剤:Resiflow P−67(Estron chemical社製)
・脱泡剤:Benzoin(Estron chemical社製)
・顔料:TiPure R960(Venator社製)
・靭性付与剤:前記グラフト共重合体P−1
SP−6400を61.4部、TGIC4.6部、Resiflow P−67を1部、Benzoin0.5部、TiPure R960を30部、グラフト共重合体(P−1)2.5部をバイタミックス(Vitamiz社製、型式:TNC5200)で8秒間予備混錬させた後、押出機(APV Baker Perkins社製,19mm二軸押出機)19mm(100℃設定、スクリュー回転数500rpm、チルロール18rpm)で溶融混錬させた。次いでストランドミルで粉砕後、140メッシュで篩別することで粉体塗料を得た。この粉体塗料について前記レベリング性及び耐カッピング性の評価を行った。結果を表2に示す。
<実施例4>
グラフト共重合体P−2を用いたこと以外は、全て実施例2と同様にして粉体塗料を得た。この粉体塗料について前記レベリング性及び耐カッピング性の評価を行った。結果を表2に示す。
<比較例2>
グラフト共重合体P−3を用いたこと以外は、全て実施例2と同様にして粉体塗料を得た。この粉体塗料について前記レベリング性及び耐カッピング性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2021095466

Claims (11)

  1. ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートとが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合した粉体塗料用グラフト共重合体。
  2. 複合ゴム状重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、ポリオルガノシロキサンを10〜70質量%含有する、請求項1に記載の粉体塗料用グラフト共重合体。
  3. グラフト共重合体を構成する重合体全量を100質量%とした場合、複合ゴム状重合体を50〜95質量%含有する、請求項1または2に記載の粉体塗料用グラフト共重合体。
  4. ポリアルキル(メタ)アクリレートを構成する単量体単位全量を100質量%とした場合、各単量体単位を以下に示す質量割合で含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉体塗料用グラフト共重合体。
    アルキル基の炭素数が4〜8であるアルキル(メタ)アクリレート単位: 75〜99質量%
    グラフト交叉性単量体単位: 0.5〜10質量%
    架橋性単量体単位: 0.5〜5質量%
    その他ビニル重合可能な単量体単位: 0〜10質量%
  5. 複合ゴム重合体を構成する重合体全量を100質量部とした場合、1種以上のビニル系単量体の各単量体単位を以下に示す質量割合で含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体塗料用グラフト共重合体。
    メタクリル酸メチル単位: 5〜40質量部
    架橋性単量体単位: 0.1〜2質量部
    反応性基含有重合性単量体単位: 1〜10質量部
  6. 一次粒子径の体積平均粒子径が0.1〜10μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉体塗料用グラフト共重合体。
  7. 請求項1に記載のグラフト共重合体と、熱可塑性樹脂とを含む粉体塗料組成物。
  8. 熱可塑性樹脂がポリエステルである、請求項7に記載の粉体塗料組成物。
  9. 粉体塗料組成物全量を100質量%とした場合、グラフト共重合体の割合が1〜20質量%である、請求項7または8に記載の粉体塗料組成物。
  10. 被塗物上に請求項7に記載の粉体塗料組成物を用いて形成された塗膜であって、ISO 1520の耐カッピング性試験において以下の条件で測定した押し込み深さが5mmを超える値である、塗膜。
    塗膜を形成する素地: Q−panel、 厚み: 0.5mm
    塗装方法: スプレー塗布、 乾燥塗膜の膜厚: 40μm
    焼き付け条件: 200℃、10分
  11. 請求項10に記載の塗膜を有する物品。
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