JP2021091767A - 樹脂シートおよび金属ベース基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁耐久性に優れた樹脂シートおよび当該樹脂シートを含む金属ベース基板を提供する。【解決手段】本発明の樹脂シートは、(A)熱硬化性樹脂と、(B)分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂と、(C)熱伝導性粒子と、を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化してなり、熱伝導率および吸湿率は以下の式を満たす。式:熱伝導率≧0.77×吸湿率+1718.0≦熱伝導率(W/m・K)≦25.00.28≦吸湿率(%)≦0.40【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シート、および当該樹脂シートを含む金属ベース基板に関する。
電気・電子機器等を構成する絶縁材料に対して放熱性が要求されている。絶縁材料の放熱性について様々な開発がなされてきた。
この種の技術として、たとえば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、熱硬化性樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用し、熱伝導性粒子として鱗片状または球形状の窒化ホウ素粒子を使用した熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
特開2015−193504号公報
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術においては、絶縁耐久性が低下する場合があった。
本発明者らは、所定の成分を含む熱硬化性樹脂組成物からなり、かつ熱伝導率および吸湿率が従来の樹脂シートが満たさない関係にあり、かつ何れも所定の範囲内にあってこれらのバランスに優れる樹脂シートは、絶縁耐久性に優れることを見出した。
本発明によれば、
(A)熱硬化性樹脂と、
(B)分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂と、
(C)熱伝導性粒子と、
を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂シートであって、
熱伝導率および吸湿率は以下の式を満たす、樹脂シートが提供される。
式:熱伝導率≧0.77×吸湿率+17
18.0≦熱伝導率(W/m・K)≦25.0
0.28≦吸湿率(%)≦0.40
本発明によれば、
第1金属基板と、
前記樹脂シートからなる絶縁層と、
第2金属層と、をこの順で備える、金属ベース基板が提供される。
本発明によれば、絶縁耐久性に優れた樹脂シート、および当該樹脂シートを含む金属ベース基板を提供することができる。
本実施形態に係る金属ベース基板の構成を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「〜」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
本実施形態の樹脂シートは、(A)熱硬化性樹脂と、(B)分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂と、(C)熱伝導性粒子と、を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化してなり、熱伝導率および吸湿率が以下の式を満たす。
式:熱伝導率≧0.77×吸湿率+17
18.0≦熱伝導率(W/m・K)≦25.0
0.28≦吸湿率(%)≦0.40
本実施形態の樹脂シートは、所定の成分を含む熱硬化性樹脂組成物からなり、かつ熱伝導率および吸湿率が所定の範囲にあり、これらが上記式を満たすことから、絶縁耐久性に優れる。
金属ベース基板を構成する絶縁層(樹脂シート)は樹脂等の様々な成分を含んでおり、これら個々の成分について吸湿率の改善を図っても、複合材料としての吸湿率改善には限界がある。吸湿率は絶縁性に影響を与えるため、吸湿率の低減は重要な課題になっている。一方で、当該絶縁層(樹脂シート)は放熱性を付与するために熱伝導性粒子を含むが、この熱伝導性粒子と樹脂との界面において吸湿率が高くなる現象を本発明者は見出した。しかしながら、熱伝導性粒子は必須成分であることから、熱伝導率および吸湿率の改善はトレードオフの関係にあり、長期に亘る絶縁耐久性に改善の余地があった。
本発明者らは、熱伝導率および吸湿率の改善を同時に達成するために、鋭意検討を行い、(A)熱硬化性樹脂と、(B)分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂と、(C)熱伝導性粒子とを含む熱硬化性樹脂組成物において、熱伝導率および吸湿率を特定の範囲とし、さらに前記式を満たす構成とすることで、熱伝導率および吸湿率が改善されるとともに、さらに長期に亘る絶縁耐久性にも優れることを見出し、本発明を完成した。
[熱硬化性樹脂(A)]
本実施形態の樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)を含む。熱硬化性樹脂(A)にはフェノキシ樹脂(B)を含まない。
熱硬化性樹脂(A)として、分子内にメソゲン構造(メソゲン骨格)を含有する熱硬化性化合物や、分子内にメソゲン構造を含有しない熱硬化性化合物が挙げられる。
熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、またフェノール誘導体これらの誘導体等が挙げられ、少なくとも1種含むことができる。
本実施形態においては、熱硬化性樹脂(A)は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂から選択される少なくとも1種含むことが好ましく、さらに好ましくは少なくともエポキシ樹脂およびシアネート樹脂のどちらか一つまたは両方を含むことが好ましい。
これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、本発明の効果を奏する範囲で公知のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型等のグリシジルエーテル、水素添加したビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック型のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル、ビスフェノールA型のノボラック型のグリシジルエーテル、ナフタレン型のグリシジルエーテル、ビフェノール型のグリシジルエーテル、ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型のグリシジルエーテルなどが挙げられ、少なくとも1種用いることができる。
エポキシ樹脂としては、本発明の効果の観点から、ナフタレン型のグリシジルエーテル、ビフェノール型のグリシジルエーテル、ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル、ハイドロキノン型のグリシジルエーテルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂は、好ましくはメソゲン骨格を含むエポキシ樹脂を含むことができる。これにより、硬化時の熱伝導性(放熱性)を一層高めることができる。
メソゲン骨格を含むエポキシ樹脂の硬化時に、そのメソゲン骨格により高次構造(液晶相または結晶相)が形成されると考えられる。そして、その高次構造を熱が伝わることで熱伝導性(放熱性)が一層高まると考えられる。硬化物中の高次構造の存在は、偏光顕微鏡による観察によって調べることができる。
メソゲン骨格としては、分子間相互作用の働きにより、液晶性や結晶性を発現しやすくする骨格全般を挙げることができる。メソゲン骨格は、好ましくは共役構造を含む。メソゲン骨格として具体的には、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フェナントレン骨格などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、特に好ましくは縮合多環芳香族炭化水素骨格を含み、とりわけ好ましくはナフタレン骨格を含む。
例えばビフェニル骨格(−C−C−)は、高温下では、熱運動により左記構造の中心の炭素−炭素の単結合部分が「回転」し、液晶性が低下する可能性がある。フェニルベンゾエート骨格(−C−COO−C−)も、同様に、高温下ではエステル結合が回転する可能性がある。しかし、ナフタレン骨格のような縮合多環芳香族炭化水素骨格では、原理的にはそのような回転による液晶性の低下は無い。つまり、エポキシ樹脂が縮合多環芳香族炭化水素骨格を含むことで、高温環境下での放熱性を一層高めやすい。
また、多環芳香族炭化水素骨格として特にナフタレン骨格を採用することで、前記メリットを得つつ、エポキシ樹脂が剛直になりすぎることを抑えることもできる。これは、ナフタレン骨格はメソゲン骨格としては比較的小さいためである。エポキシ樹脂が剛直になりすぎないことは、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化時の応力が緩和されやすくなることによるクラック等の抑制、などの点で好ましい。
エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。つまり、エポキシ樹脂1分子中には2以上のエポキシ基が含まれることが好ましい。エポキシ樹脂の官能基数は、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4である。
本実施形態におけるエポキシ樹脂は、本発明の効果の観点から、下記式で表される樹脂から選択される1または2以上を含むことが好ましい。
Figure 2021091767
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば100〜200g/eq、好ましくは105〜190g/eq、より好ましくは110〜180g/eqである。適度なエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を用いることで、硬化性の制御、硬化物の物性の最適化などを図ることができる。
一態様として、エポキシ樹脂は、室温(23℃)で液状または半固形状である他のエポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂の一部または全部は、23℃で液体状または半固形状であることが好ましい。
液状または半固形状エポキシ樹脂を用いることは、所望の形状の硬化物の形成しやすさなどの点で好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
本実施形態において、エポキシ樹脂は、熱伝導性粒子(D)を含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば5質量%〜40質量%、好ましくは7質量%〜35質量%、より好ましくは10質量%〜30質量%である。これにより、熱伝導率および吸湿率が所定の条件を満たし、絶縁耐久性により優れた樹脂シートを得ることができる。
(シアネート樹脂)
シアネート樹脂としては、本発明の効果を奏する範囲で公知のものを用いることができる。シアネート樹脂は、例えばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果の観点から、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことが特に好ましい。
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
Figure 2021091767
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。平均繰り返し単位nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することをより一層抑制できる。また、平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、樹脂シートの成形性を向上させることができる。
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネート樹脂は、例えば、α−ナフトールあるいはβ−ナフトール等のナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。一般式(II)の繰り返し単位nは10以下の整数であることが好ましい。繰り返し単位nが10以下であると、より均一な樹脂シートを得ることができる。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
Figure 2021091767
上記一般式(II)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1以上10以下の整数を示す。
シアネート樹脂の含有量は、熱伝導性粒子(C)を含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、10質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜60質量%である。これにより、熱伝導率および吸湿率が所定の条件を満たし、絶縁耐久性により優れた樹脂シートを得ることができる。
(マレイミド樹脂)
マレイミド樹脂は、例えば分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド樹脂が好ましい。
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド樹脂としては、例えば、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N'−エチレンジマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する樹脂、ビフェニルアラルキル型マレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、およびレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
フェノール樹脂の中でも、フェノールノボラック樹脂であることが好ましい。
(ベンゾオキサジン樹脂)
ベンゾオキサジン樹脂としては、具体的には、o−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p−クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−m−トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−3,5−ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA−メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール−ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
熱硬化性樹脂(A)の含有量は、本発明の効果の観点から、熱伝導性粒子(D)を含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、0.1質量%〜70質量%が好ましく、0.5質量%〜65質量%がより好ましい、1質量%〜60質量%がさらに好ましい。
[フェノキシ樹脂(B)]
本実施形態の樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物は、分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂(B)を含む。
前記メソゲン構造含有フェノキシ樹脂の一例として、分子内において、フェノール化合物由来の構造単位およびエポキシ化合物由来の構造単位を含み、これらの構造単位の少なくとも一方にメソゲン構造を有する化合物を含むものが挙げられる。
また前記メソゲン構造含有フェノキシ樹脂の他の例として、分子内において、メソゲン構造含有フェノール化合物由来の構造単位を含むものが挙げられる。
前記メソゲン構造含有フェノキシ樹脂の一例は、公知の手法で製造できるが、例えば、2個以上のヒドロキシ基を分子内に有する多官能フェノール化合物と、2個以上のエポキシ基を分子内に有する多官能エポキシ化合物とを反応することにより得ることができる。
すなわち、前記フェノキシ樹脂は、多官能フェノール化合物と多官能エポキシ化合物との反応化合物を含むことができる。これらの多官能フェノール化合物および多官能エポキシ化合物のいずれか一方または両方が、メソゲン構造を有するものである。
また前記メソゲン構造含有フェノキシ樹脂の他例は、公知の手法で製造できるが、例えば、2個以上のフェノール基を分子内に有するメソゲン構造含有フェノール化合物をエピクロロヒドリン中に付加重合反応することにより得ることができる。
すなわち、前記フェノキシ樹脂は、メソゲン構造含有フェノール化合物の付加重合物を含むことができる。
前記フェノキシ樹脂の製造において、無溶媒下または反応溶媒の存在下に行うことができ、用いる反応溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトフェノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、シクロヘキサノンなどを好適に用いることができる。反応終了後に溶媒置換などを行なうことで好適な溶媒に溶解した樹脂として得ることが可能である。また、溶媒反応で得られたフェノキシ樹脂は、蒸発器等を用いた脱溶媒処理をすることにより、溶媒を含まない固形状の樹脂とすることもできる。
前記フェノキシ樹脂の製造に用いることのできる反応触媒としては、従来公知の重合触媒として、アルカリ金属水酸化物、第三アミン化合物、第四アンモニウム化合物、第三ホスフィン化合物、及び第四ホスホニウム化合物、イミダゾール化合物が好適に使用される。
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常500〜200,000である。好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは2,000〜50,000である。Mwはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
本実施形態において、メソゲン構造は、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有するものである。
−A1−x−A2− ・・(1)
−x−A1−x− ・・(2)
前記一般式(1)、一般式(2)中、A1およびA2は、各々独立して、芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、または脂環式複素環基を表し、xは、各々独立して、直接結合、または−O−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−および−N(O)=N−からなる群から選択される2価の結合基を示す。
ここで、A1、A2は各々独立して、ベンゼン環を有する炭素数6〜12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10〜20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12〜24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数12〜36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12〜36の炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。A1、A2は、無置換であってもよく、または置換基を有する誘導体であってもよい。
メソゲン構造中のA1、A2の具体例としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であっても良く、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であってもよい。
メソゲン構造中の結合基(連結基)に相当するxとしては、例えば、直接結合、または−C=C−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基が好ましい。
ここで、直接結合とは、単結合、またはメソゲン構造中のA1およびA2が互いに連結して環構造を形成することを意味する。例えば、前記一般式(1)で表される構造に、ナフタレン構造が含まれていてもよい。
前記多官能フェノール化合物としては、例えば、下記の一般式(A)で表されるメソゲン構造含有化合物を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2021091767
前記一般式(A)中、RおよびRは、それぞれ独立に、ヒドロキシ基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、aおよびcはそれぞれ1〜3の整数であり、bおよびdはそれぞれ0〜2の整数である。ただし、a+bおよびc+dは、それぞれ1〜3のいずれかである。a+cは3以上でもよい。
前記多官能エポキシ化合物としては、例えば、下記の一般式(B)で表されるメソゲン構造含有化合物を用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 2021091767
前記一般式(B)中、RおよびRは、それぞれ独立に、グリシジルエーテル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基、フェニル基およびハロゲン原子から選択される1種を表し、eおよびgはそれぞれ1〜3の整数であり、fおよびhはそれぞれ0〜2の整数である。ただし、e+fおよびg+hは、それぞれ1〜3のいずれかである。
また、前記一般式(A)および一般式(B)中のRは、それぞれ、前記の−A1−x−A2−、−x−A1−x−、または−x−を表すものである。なお、前記一般式(A)中の2つのベンゼン環は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
前記R、R、RおよびRの具体例としては、それぞれ、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、塩素原子、臭素原子等が挙げられるが、これらの中でも、特に、水素原子、またメチル基であるのが好ましい。
前記メソゲン構造を含有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、前記の一般式(B)で表される化合物の付加重合物を用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記多官能フェノール化合物および前記多官能エポキシ化合物の中でも、3個以上のヒドロキシ基を分子内に有する多官能フェノール化合物、および2個以上のエポキシ基を分子内に有する多官能エポキシ化合物を用いてもよい。
すなわち、前記フェノキシ樹脂は、3個以上のヒドロキシ基を分子内に有する多官能フェノール化合物と、2個以上のエポキシ基を分子内に有する多官能エポキシ化合物との分岐状反応化合物を含むことができる。
3個以上のヒドロキシ基を分子内に有する多官能フェノール化合物としては、例えば、ポリフェノールまたはポリフェノール誘導体を含むことができる。
前記ポリフェノールは、分子内に3個以上のフェノール性ヒドロキシ基を含有する化合物である。また、このポリフェノールは、分子内に前記メソゲン構造を備えるものが好ましい。例えば、メソゲン構造として、ビフェニル骨格、フェニルベンゾエート骨格、アゾベンゼン骨格、スチルベン骨格等を用いることができる。
なお、ポリフェノール誘導体とは、3個以上のフェノール性ヒドロキシ基およびメソゲン構造を有するポリフェノール化合物に対して、当該化合物の置換可能な位置で他の置換基に変更される化合物を含むものである。
本実施形態において、前記分岐状反応化合物は、少なくとも3個以上のヒドロキシ基を分子内に有する多官能フェノール化合物を含む、1または2種以上の前記多官能フェノール化合物と、1または2種以上の前記多官能エポキシ樹脂とを用いて得ることができる。
例えば、3官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物の組み合わせや、3官能フェノール化合物、2官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物の組み合わせを用いてもよい。
前記3官能フェノール化合物として、例えば、以下の化学式で表されるレスベラトロールを用いることができる。
Figure 2021091767
前記2官能フェノール化合物として、例えば、前記RおよびRのヒドロキシ基が、それぞれのベンゼン環のパラ位に結合したものを用いることができる。
また、前記2官能エポキシ化合物として、前記RおよびRのグリシジルエーテル基が、それぞれのベンゼン環のパラ位に結合したものを用いることができる。
また、前記2官能フェノール化合物が縮合環としてナフタレン環を備える場合、前記RおよびRのヒドロキシ基が、ナフタレン環の1位と4位、1位と5位、1位と6位、2位と3位、2位と6位、または2位と7位のいずれかに結合したものを用いることができる。また、前記2官能エポキシ化合物が縮合環としてナフタレン環を備える場合、前記RおよびRのグリシジルエーテル基が、ナフタレン環の1位と4位、1位と5位、1位と6位、2位と3位、2位と6位、または2位と7位のいずれかに結合したものを用いることができる。
前記のような3官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物の組み合わせや、3官能フェノール化合物、2官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物の組み合わせにより、前記の分岐型反応化合物(分岐型フェノキシ樹脂)を得られる。
一方、前記多官能フェノール化合物および前記多官能エポキシ化合物の中でも、2官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物を用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
すなわち、前記フェノキシ樹脂は、2個のヒドロキシ基を分子内に有する2官能フェノール化合物と、2個のエポキシ基を分子内に有する2官能エポキシ化合物との直鎖型反応化合物を含むことができる。
前記2官能フェノール化合物として、前記RおよびRのヒドロキシ基が、それぞれのベンゼン環のパラ位に結合したものを用いることができる。また、前記2官能エポキシ化合物として、前記RおよびRのグリシジルエーテル基が、それぞれのベンゼン環のパラ位に結合したものを用いることができる。
また、前記2官能フェノール化合物が縮合環としてナフタレン環を備える場合、前記RおよびRのヒドロキシ基が、ナフタレン環の1位と4位、1位と5位、1位と6位、2位と3位、2位と6位、または2位と7位のいずれかに結合したものを用いることができる。また、前記2官能エポキシ化合物が縮合環としてナフタレン環を備える場合、前記RおよびRのグリシジルエーテル基が、ナフタレン環の1位と4位、1位と5位、1位と6位、2位と3位、2位と6位、または2位と7位のいずれかに結合したものを用いることができる。
このような2官能フェノール化合物および2官能エポキシ化合物を併用することにより、前記の直鎖型反応化合物(直鎖型フェノキシ樹脂)を得られる。
前記分岐型フェノキシ樹脂及び直鎖型フェノキシ樹脂は、分子末端にエポキシ基またはヒドロキシ基、分子内部にエポキシ基またはヒドロキシ基を有することができる。末端または内部にエポキシ基を有することにより、架橋反応を形成できるため、耐熱性を高めることができる。
また、剛直かつ電子共役している直鎖型の構造単位を有することにより、放熱特性を向上させることができる。
フェノキシ樹脂(B)は、熱伝導性粒子(D)を含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、例えば、5質量%〜60質量%、好ましくは10質量%〜50質量%、より好ましくは15質量%〜40質量%である。これにより、熱伝導率および吸湿率が所定の条件を満たし、絶縁耐久性により優れた樹脂シートを得ることができる。
[熱伝導性粒子(C)]
本実施形態の樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性粒子(C)を含む。
熱伝導性粒子(C)は、たとえば、20W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性無機粒子を含むことができる。高熱伝導性無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素及び酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種以上を含むことができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含むことができる。鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を用いることによって、一層に熱伝導性を高められる。凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
熱伝導性粒子(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(100質量%)に対して、100質量%〜400質量%であり、好ましくは150質量%〜350質量%であり、より好ましくは200質量%〜300質量%である。前記下限値以上とすることにより、熱伝導性を向上させることができる。前記上限値以下とすることにより、プロセス性の低下を抑制することができる。
[オルガノシロキサン化合物(D)]
本実施形態の樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、オルガノシロキサン化合物(D)を含むことができる。
オルガノシロキサン化合物(D)は、分子鎖の片末端にSi−OQ結合(Qはアルキル基)を備える脂肪族炭化水素化合物である。オルガノシロキサン化合物(D)は、他方の片末端に、エポキシ基、グリシジルエーテル基、アミノ基、イソシアネート基、フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、ビニル基、およびメルカプト基から選択される少なくとも1種の官能基を備えることがより好ましい。これにより、吸湿率がより低く、絶縁耐久性により優れた樹脂シートを得ることができる。
オルガノシロキサン化合物(D)は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことができる。
Figure 2021091767
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルコキシ基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、少なくとも2つのRは炭素数1〜3のアルコキシ基である。Rの全てが、炭素数1〜3のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基であることがより好ましい。
Lは、炭素数2〜12の直鎖状または分岐状アルキレン基を示す。
Xは、エポキシ基、グリシジルエーテル基、アミノ基、イソシアネート基、フェニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル基、ビニル基、またはメルカプト基を示す。Xは、本発明の効果の観点から、エポキシ基、グリシジルエーテル基、アミノ基、イソシアネート基、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、メルカプト基が好ましく、熱硬化性樹脂組成物のポットライフの観点からエポキシ基、フェニル基、グリシジルエーテル基、メチル基がより好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、オルガノシロキサン化合物(D)を熱伝導性粒子(C)100質量部に対して、0.01〜0.5質量部、好ましくは0.02〜0.3質量部、さらに好ましくは0.03〜0.2質量部の量で含むことができる。これにより、熱伝導率および吸湿率が所定の条件を満たし、絶縁耐久性により優れた樹脂シートを得ることができる。
(硬化促進剤(E))
本実施形態の樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤(E)を含むことができる。
硬化促進剤(E)の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性などの観点から、適切なものを選択することができる。
硬化促進剤(E)としては、例えば、イミダゾール類、有機リン化合物、3級アミン類、フェノール化合物、有機酸等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、耐熱性を高める観点から、イミダゾール類などの窒素原子含有化合物を用いることが好ましい。
前記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられる。
前記3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ノニルフェノール、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、アリルフェノール等が挙げられる。
前記有機酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
硬化促進剤(E)の含有量は、熱硬化性樹脂の合計100質量%に対して、0.01質量%〜10質量%でもよく、0.02質量%〜5質量%でもよく、0.05質量%〜1.5質量%でもよい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。この他の成分としては、例えば、酸化防止剤、レベリング剤が挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法として、例えば、次のような方法がある。
上記の各成分を、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより樹脂ワニス(ワニス状の熱硬化性樹脂組成物)を調製することができる。この混合は、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いることができる。
上記溶剤としては特に限定されないが、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN−メチルピロリドン等が挙げられる。
[樹脂シート]
本実施形態の樹脂シートは、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなり、熱伝導率および吸湿率は以下の式を満たす。
式:熱伝導率≧0.77×吸湿率+17
18.0≦熱伝導率(W/m・K)≦25.0
0.28≦吸湿率(%)≦0.40
本実施形態の樹脂シートは、上述の組成の熱硬化性樹脂組成物からなり、熱伝導率および吸湿率が従来の樹脂シートが満たさない関係にあり、かつ何れも所定の範囲内にあってこれらのバランスに優れることから、絶縁耐久性に優れる。すなわち、トレードオフの関係にある熱伝導率および吸湿率を最適化することにより、樹脂シートの絶縁耐久性を改善することができる。
樹脂シートの具体的な形態は、キャリア基材と、キャリア基材上に設けられた、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と、を備えるものである。
上記樹脂シートは、たとえばワニス状の熱硬化性樹脂組成物をキャリア基材上に塗布して得られた塗布膜(樹脂層)に対して、溶剤除去処理を行うことにより得ることができる。上記樹脂シート中の溶剤含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることができる。たとえば80℃〜200℃、1分間〜30分間の条件で溶剤除去処理を行うことができる。
また、本実施形態において、上記キャリア基材としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。
本実施形態の樹脂基板は、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。この樹脂基板は、LED、パワーモジュールなどの電子部品を搭載するためのプリント基板の材料として用いることができる。
(金属ベース基板)
本実施形態の金属ベース基板100について図1に基づいて説明する。
図1は、金属ベース基板100の構成の一例を示す概略断面図である。
上記金属ベース基板100は、図1に示すように、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備えることができる。この絶縁層102は、上記の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層、熱硬化性樹脂組成物の硬化物および積層板からなる群から選択される一種で構成することが可能である。これらの樹脂層、積層板のそれぞれは、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる硬化体であってもよい。
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄、錫等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、金属層103は、好ましくは銅層またはアルミニウム層であり、特に好ましくは銅層である。銅またはアルミニウムを用いることで、金属層103の回路加工性を良好なものとすることができる。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
金属層103の厚みの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.035mm以上であれば、高電流を要する用途に適用できる。
また、金属層103の厚みの上限値は、例えば、10.0mm以下であり、好ましくは5mm以下である。このような数値以下であれば、回路加工性を向上させることができ、また、基板全体としての薄型化を図ることができる。
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、例えば、銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板、アルミニウム合金基板であり、銅基板またはアルミニウム基板が好ましく、銅基板がより好ましい。銅基板またはアルミニウム基板を用いることで、金属基板101の放熱性を良好なものとすることができる。
金属基板101の厚さは、本発明の目的が損なわれない限り、適宜設定できる。
金属基板101の厚さの上限値は、例えば、20.0mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。この数値以下の金属ベース基板100の外形加工や切り出し加工等における加工性を向上させることができる。
また、金属基板101の厚さの下限値は、例えば、0.01mm以上であり、好ましくは0.6mm以上である。この数値以上の金属基板101を用いることで、金属ベース基板100全体としての放熱性を向上させることができる。
本実施形態において、金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であるが、熱伝導性及び耐熱性に優れることから、LEDやパワーモジュールを用いるプリント基板として用いることが可能である。
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の様々な構成を採用することができる。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<熱硬化性樹脂組成物(ワニス状)の製造>
表1に記載の配合割合に従い、各成分と溶媒を撹拌してワニス状の熱硬化性樹脂組成物を得た。表1中、熱伝導性粒子の含有量は、熱伝導性フィラーを含まない熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分に対する体積%である。
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表1中の各成分の量の単位は質量部である。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1: DIC社製、以下構造式で表されるエポキシ樹脂、品番「EPICLON HP−4700」
Figure 2021091767
・エポキシ樹脂2: 三菱ケミカル社製、以下構造式で表されるテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、品番「YX4000」
Figure 2021091767
・エポキシ樹脂3: DIC社製、以下構造式で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、品番「HP−7200」
Figure 2021091767
・エポキシ樹脂4: DIC社製、以下構造式で表されるエポキシ樹脂、品番「EPICLON 830」
Figure 2021091767
(シアネート樹脂)
・シアネート樹脂1: Lonza社製、Primaset「PT−30」
(分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂)
・フェノキシ樹脂1: 以下の合成手順で得られた分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂
エポキシ樹脂(メソゲン構造あり、4,4'−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル)23.5質量部、ビスフェノール化合物(メソゲン構造あり、以下構造の2官能フェノール、上野製薬社製、HQPOB)72.5質量部、トリフェニルホスフィン(TPP)0.04質量部、および溶剤(メチルエチルケトン)3.9質量部を反応器に投下した。そして、120〜150℃の温度で、溶剤を除去しながら反応させた。GPCで目的の分子量となることを確認し、反応を停止させた。以上により、分子量4500のフェノキシ樹脂を得た。
Figure 2021091767
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1: ノボラック型フェノール化合物(PR−51470、住友ベークライト社製)
(オルガノシロキサン化合物)
・オルガノシロキサン1: 3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
・オルガノシロキサン2: 3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
・オルガノシロキサン3: グリシドキシオクチルトリエトキシシラン
・オルガノシロキサン4: デシルトリエトキシシラン
(熱伝導性粒子)
・熱伝導性粒子1: 下記の手順で作製された顆粒状窒化ホウ素を用いた。
[手順]
市販の炭化ホウ素粉末をカーボンるつぼの中に投入し、窒素雰囲気下、2000℃、10時間の条件で窒化処理した。次いで、上記の窒化処理された窒化ホウ素粉末に、市販の三酸化二ホウ素粉末を加え、ブレンダ―で1時間混合した(窒化ホウ素:三酸化二ホウ素=7:3(質量比))。得られた混合物をカーボンるつぼの中に投入し、窒素雰囲気下、2000℃、10時間の条件で焼成した。
以上により顆粒状窒化ホウ素を得た。
<熱硬化性樹脂組成物の樹脂成形体の物性測定>
(熱伝導率)
・樹脂成形体の作製
得られた熱伝導性フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を用い、0.018umの銅箔で挟みセットし、コンプレッション成形を10MPaで180℃、90minを行い、樹脂成形体(熱伝導率測定用サンプル1)を得た。得られた成形体から直径10mmの熱拡散率測定用サンプルを切り出し、熱拡散率測定に用いた。
・樹脂成形体の比重
比重測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、上記の樹脂成形体から、縦2cm×横2cm×厚み2mmに切り出したものを用いた。比重(SP)の単位をg/cm3とする。
・樹脂成形体の比熱
得られた上記の樹脂成形体について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
・樹脂成形体の熱伝導率の測定
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、直径10mmに切り出したものを試験片とした。次に、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD−1RTVを用いて、非定常法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、比重(SP)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。
熱伝導率[W/m・K]=α[m/s]×Cp[J/kg・K]×Sp[g/cm
表1中、樹脂成形体の熱伝導率を「熱伝導率」とした。
(体積抵抗率)
JIS C 2139に準じて測定した。
具体的には、適当な大きさに加工した測定用硬化物を、30℃のオーブン中に静置し、目的の温度(すなわち30℃)となったときの体積抵抗率を測定した。
(吸湿率)
得られた樹脂成形体からエッチングにより銅箔を除去し、30℃/90%RH条件で48時間放置したときの処理前後の重量変化から吸湿率(%)を算出した。
(絶縁耐久性)
具体的には、片面に25mmφリング電極、もう片面に銅箔を有する樹脂成形体を作製し、リング電極側をアノード、銅箔側をカソードとして85℃/85%RH条件下に静置し、直流電圧2kV印可時に導通するまでにかかった時間を計測した。以下の基準で評価した。(評価基準)
○:100hr以上でも導通しなかった
×:100hr未満で導通した。
Figure 2021091767
100 金属ベース基板
101 金属基板
102 絶縁層
103 金属層

Claims (9)

  1. (A)熱硬化性樹脂と、
    (B)分子内にメソゲン構造を備えるフェノキシ樹脂と、
    (C)熱伝導性粒子と、
    を含む熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂シートであって、
    熱伝導率および吸湿率は以下の式を満たす、樹脂シート。
    式:熱伝導率≧0.77×吸湿率+17
    18.0≦熱伝導率(W/m・K)≦25.0
    0.28≦吸湿率(%)≦0.40
  2. 熱硬化性樹脂(A)はエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂シート。
  3. 前記エポキシ樹脂はメソゲン構造を備えるエポキシ樹脂を含む、請求項2に記載の樹脂シート。
  4. フェノキシ樹脂(B)は、フェノール化合物由来の構造単位およびエポキシ化合物由来の構造単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂シート。
  5. 熱伝導性粒子(C)は、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素および酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂シート。
  6. 熱伝導性粒子(C)は前記窒化ホウ素を含み、
    前記窒化ホウ素は、鱗片状窒化ホウ素の、単分散粒子、顆粒状粒子、凝集粒子またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載の樹脂シート。
  7. さらに、オルガノシロキサン化合物(D)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂シート。
  8. さらに硬化促進剤(E)を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂シート。
  9. 第1金属基板と、
    請求項1〜8のいずれかに記載の前記樹脂シートからなる絶縁層と、
    第2金属層と、をこの順で備える、金属ベース基板。
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