JP2021084940A - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】湿潤空間で硬化させることができ、硬化物の機械強度が良好であり、かつ水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができる、熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、及び水(F)を含有し、前記熱硬化性樹脂(A)、前記エチレン性不飽和化合物(B)、及び前記水(F)の合計含有量100質量部に対する界面活性剤の含有量が0質量部以上0.05質量部未満であり、前記熱硬化性樹脂(A)及び前記エチレン性不飽和化合物(B)の合計含有量100質量部に対する前記水(F)の含有量が0.5質量部以上5質量部未満である、熱硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
熱硬化性樹脂は、成形材料、接着剤、プライマー、塗料、さらにコンクリートの断面修復、クラック注入、及び止水等のための無機構造物修復材、充填材、間詰め材、並びに、繊維強化複合材料等の幅広い用途で利用されている。
熱硬化性樹脂の中でも不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等のラジカル重合性熱硬化性樹脂は、成形性、硬化性、及び基材との密着性等という利点を有するものが多く、上記分野で広く用いられている。
また、熱硬化性樹脂の硬化物の機械強度を向上させるために無機骨材と混合し、熱硬化性樹脂組成物として利用することもある。このような熱硬化性樹脂組成物はレジンコンクリートやレジンモルタルと呼ばれ、セメントモルタルに比べ、比強度と耐薬品性に優れるといった利点を有している。
ここで、クラック注入剤やモルタル塗布剤は、コンクリート等の無機構造物基材へ湿潤状態でも密着することが求められる。しかしながら、水中やその他薬液中では、徐々に熱硬化性樹脂と無機骨材が剥離し機械強度が低下するといった課題があった。
そこで従来、熱硬化性樹脂の二重結合力価を増大させる方法(非特許文献1)や疎水性を有する構造にする方法(非特許文献1)、無機骨材にカップリング剤と呼ばれる熱硬化性樹脂と反応或いは相互作用するような表面改質剤を添加する方法(非特許文献2)が採用されてきた。中でも、無機骨材へのカップリング剤処理は熱硬化性樹脂本来の機械強度をほとんど変化させることなく、樹脂と無機骨材の密着性を向上させることができるため、よく用いられている手段である。
また、ラジカル重合性の熱硬化性樹脂組成物中又は該熱硬化性樹脂組成物の使用環境下に水が存在しても、硬化促進剤として用いられる金属石鹸の機能の低下を抑え、安定的に該熱硬化性樹脂組成物を硬化させる技術が開示されている(特許文献1及び2)。
国際公開第2016/171150号 国際公開第2016/171151号
越智光一、「フェノール硬化エポキシ樹脂の吸水性に及ぼす自由体積と極性基濃度の影響」、熱硬化性樹脂、Vol.15 No.1(1994) 中村吉伸、「シランカップリング剤処理における加水分解および縮合反応のコントロール」、日本接着学会誌、Vol.52 No.1(2016)
しかし、上記非特許文献1及び2の方法では、熱硬化性樹脂の初期物性が変わること、種々添加剤との相溶性が悪化すること、カップリング剤による表面処理工程が増えるため作業が煩雑となることといった課題や、カップリング処理中にメタノールが副生するといった課題がある。
また、近年、湿潤空間に充填することにより短時間で高い強度を発現し、さらにはそれを長期間保持しつつ止水することができる間詰め材の需要が高まっている。また、間詰め材は、管渠更生やトンネル施工する場合に用いられ、基材と基材の間に迅速に充填できることが求められる。さらに、一時的な補修手段であるクラック注入剤やモルタル塗布剤とは異なり、漏水等の影響があっても長期にわたって強度を維持することが求められる。上記特許文献1及び2では、水が存在しても熱硬化性樹脂組成物を安定的に硬化することができるが、硬化物の長期的な機械強度の維持については言及されていない。
そこで本発明は、湿潤空間で硬化させることができ、硬化物の機械強度が良好であり、かつ水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができる、熱硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、硬化促進剤として金属錯体を含み、かつ、硬化促進助剤としてチオール化合物を含む熱硬化性樹脂組成物に、無機骨材及び水を添加することにより、該熱硬化性樹脂組成物の硬化物を、長期間水にさらした場合においても、機械強度の低下を抑制できることを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、及び水(F)を含有し、
前記熱硬化性樹脂(A)、前記エチレン性不飽和化合物(B)、及び前記水(F)の合計含有量100質量部に対する界面活性剤の含有量が0質量部以上0.05質量部未満であり、
前記熱硬化性樹脂(A)及び前記エチレン性不飽和化合物(B)の合計含有量100質量部に対する前記水(F)の含有量が0.5質量部以上5質量部未満である、
熱硬化性樹脂組成物。
[2] 25℃における粘度が2.5Pa・s以下である、前記[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3] 前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂のいずれか1種以上を含む、前記[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記金属錯体(D)が金属石鹸である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5] 前記無機骨材(E)が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪砂、ガラスパウダー、タルク、及び溶融シリカのいずれか1種以上を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[6] 前記無機骨材(E)の中心粒径が1〜300μmである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[7] さらに、ラジカル重合開始剤(G)を含有する前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含む空間充填材。
[9] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
[10] 前記[9]に記載の硬化物を用いた管渠又はトンネル
本発明によれば、湿潤空間で硬化させることができ、硬化物の機械強度が良好であり、かつ水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができる、熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書において、「〜」は、「〜」という記載の前の値以上、「〜」という記載の後の値以下を意味する。
また、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
「エチレン性不飽和結合」とは、芳香環を形成する炭素原子を除く炭素原子間で形成される二重結合を意味し、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン性不飽和結合を有する単量体を意味する。
[熱硬化性樹脂組成物]
熱硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、及び水(F)を含むものである。
上記熱硬化性樹脂組成物は、湿潤空間で硬化させることができ、硬化物の機械強度が良好であり、かつ水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができるため、その硬化物は耐水性に優れる。
(エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A))
エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A)は、エチレン性不飽和結合を複数個有し、ラジカル重合開始剤によって重合反応が進行する化合物であれば、特に限定されない。
熱硬化性樹脂(A)は不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びウレタン(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。中でも熱硬化性樹脂(A)は、硬化物の機械強度の観点から不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂のいずれか1種以上を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(不飽和ポリエステル樹脂(A1))
不飽和ポリエステル樹脂(A1)は、多価アルコールと不飽和多塩基酸と、必要に応じて飽和多塩基酸及び一塩基酸から選択される少なくとも一つとを重縮合させて得られるものであれば、特に限定されない。不飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有する多塩基酸であり、飽和多塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有さない多塩基酸である。不飽和ポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<多価アルコール>
多価アルコールは、2個以上の水酸基を有する化合物であれば特に制限はない。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、グリセリン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物がより好ましい。多価アルコールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<不飽和多塩基酸>
不飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に制限はない。例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロロマレイン酸等が挙げられる。中でも、硬化物の耐熱性及び機械的強度等の観点から、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びクロロマレイン酸が好ましく、無水マレイン酸及びフマル酸がより好ましい。不飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<飽和多塩基酸>
飽和多塩基酸は、エチレン性不飽和結合を有さず、かつ、2個以上のカルボキシ基を有する化合物又はその酸無水物であれば特に制限はない。例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、シュウ酸、マロン酸、アゼライン酸、グルタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でも、硬化物の耐熱性及び機械的強度等の観点から、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸及びテトラヒドロ無水フタル酸が好ましく、無水フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸がより好ましい。飽和多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<一塩基酸>
一塩基酸としては、ジシクロペンタジエンマレート、安息香酸とその誘導体、桂皮酸とその誘導体が挙げられ、ジシクロペンタジエンマレートが好ましい。ジシクロペンタジエンマレートは、無水マレイン酸とジシクロペンタジエンから公知の方法によって合成可能である。一塩基酸を用いることで、不飽和ポリエステル樹脂の粘度を低下させることができ、スチレンの使用量を削減することができる。一塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
不飽和ポリエステル樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。不飽和ポリエステル樹脂(A1)の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜25,000であり、より好ましくは3,000〜20,000であり、さらに好ましくは3,500〜10,000である。重量平均分子量が2,000〜25,000であれば、不飽和ポリエステル樹脂組成物の成形性がより一層良好となる。なお、本明細書において「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)によって測定される標準ポリスチレン換算値とする。
不飽和ポリエステル樹脂(A1)の不飽和度は50〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜100モル%であり、さらに好ましくは70〜100モル% である。不飽和度が上記範囲であると、不飽和ポリエステル樹脂(A1)を含む熱硬化性樹脂組成物の成形性がより良好となる。不飽和ポリエステル樹脂(A1)の不飽和度は、原料として用いた不飽和多塩基酸及び飽和多塩基酸のモル数を用いて、以下の式により算出可能である。ただし、不飽和多塩基酸中の不飽和基の数は1つとする。
不飽和度(モル%)={(不飽和多塩基酸のモル数)/(不飽和多塩基酸のモル数+飽和多塩基酸のモル数)}×100
不飽和ポリエステル樹脂(A1)は、上記の原料を用いて公知の方法で合成することができる。不飽和ポリエステル樹脂(A1)の合成における各種条件は、使用する原料及びその量に応じて適宜設定することができる。一般的に、窒素ガス等の不活性ガス気流中、140〜230℃の温度にて加圧又は減圧下でのエステル化反応を用いることができる。エステル化反応では、必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例としては、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド、シュウ酸第一錫、酢酸亜鉛及び酢酸コバルト等の公知の触媒が挙げられる。エステル化触媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記不飽和ポリエステル樹脂(A1)の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「リゴラック(登録商標)」等が挙げられる。
(ビニルエステル樹脂(A2))
ビニルエステル樹脂(A2)としては、一般的には、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する不飽和一塩基酸(b)のカルボキシ基との開環反応によって得られるエチレン性不飽和結合を有する化合物である。不飽和一塩基酸とは、エチレン性不飽和結合を有する一塩基酸である。このようなビニルエステル樹脂(A2)は、例えば、ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞、1988年発行)等に記載されている。ビニルエステル樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<エポキシ化合物(a)>
エポキシ化合物(a)は、2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はない。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、及びノボラックフェノール型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を使用することができる。このようなエポキシ樹脂は、硬化物の機械的強度及び耐食性をより向上させることができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロモビスフェノールA等のビスフェノールと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、或いは、ビスフェノールAのグリシジルエーテルと、上記ビスフェノール化合物の縮合物と、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるものが挙げられる。
水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水素化ビスフェノールAのグリシジルエーテルと、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。
ノボラックフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるものが挙げられる。
エポキシ樹脂の中でも、耐薬品性の観点からビスフェノールAエポキシ樹脂が好ましい。
<不飽和一塩基酸(b)>
不飽和一塩基酸(b)としては、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸であれば、特に制限はない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、及び桂皮酸から選択される少なくとも一種であることが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸であることがより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。メタクリル酸とエポキシ樹脂との反応により得られるビニルエステル樹脂(A2)は、酸及びアルカリに対する高い耐加水分解性を有するため、硬化物の耐食性をより向上させることができる。
エポキシ化合物(a)及び不飽和一塩基酸(b)を開環反応させる際の不飽和一塩基酸(b)の使用量は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対し、0.3〜1.5当量であることが好ましく、0.4〜1.2当量であることがより好ましく、0.5〜1.0当量であることが特に好ましい。不飽和一塩基酸(b)の使用量が、エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して0.3〜1.5当量の範囲であれば、ビニルエステル樹脂(A2)を含む熱硬化性樹脂組成物のラジカル重合反応により、十分な硬度を有する硬化物を得ることができる。
ビニルエステル樹脂(A2)は、公知の合成方法により合成することができる。例えば、エステル化触媒の存在下、エポキシ化合物及び不飽和一塩基酸を必要に応じて溶剤に溶解させて、70〜150℃、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃で反応させる方法が挙げられる。
前記ビニルエステル樹脂(A2)の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)」等が挙げられる。
なお、ビニルエステル樹脂(A2)を合成した後の未反応の不飽和一塩基酸(b)は、後述するエチレン性不飽和単量体(B)とみなす。
(ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A3))
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、多価イソシアネートと多価アルコールとを反応させて得られるポリウレタンの両末端の水酸基又はイソシアナト基に対して、(メタ)アクリル酸を反応させて得られた樹脂を用いることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(エチレン性不飽和化合物(B))
エチレン性不飽和化合物(B)は、エチレン性不飽和基を有するモノマー化合物であれば特に制限はない。エチレン性不飽和基は1つでも複数でもよい。
エチレン性不飽和化合物(B)の例としては、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等のスチレンのα−、о−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、クロロ、ジクロロ又はエステル誘導体、酢酸ビニル、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、アセナフチレン等のビニル化合物;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アリルフタレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PTMGのジメタアクリーレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロイルエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO変性(n=2)ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性(n=3)ジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N−フェニルマレイミド等のモノマレイミド化合物;N−(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。中でも、硬化物の物性及び表面乾燥性の観点から、スチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和化合物(B)の含有量は、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計に対し好ましくは10〜95質量%であり、より好ましくは30〜75質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。エチレン性不飽和化合物(B)の含有量が、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計に対し10〜95質量%であれば、硬化物の機械的強度をより高めることができる。
(チオール化合物(C))
チオール化合物(C)は、メルカプト基を有する化合物である。
チオール化合物(C)は、熱硬化性樹脂組成物中において、硬化促進剤として機能する金属錯体(D)と併用されることにより、硬化促進助剤として機能するものである。チオール化合物(C)は、後述するように、金属錯体(D)の金属原子に配位することにより、金属錯体の電子状態を変化させ、硬化促進能を発揮するものと考えられる。
チオール化合物(C)は、下記式(Q−1)で表されるエステル構造を有するものが好ましい。
Figure 2021084940

式(Q−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基である。ただし、R及びRの両方ともが水素原子ではない。*は任意の有機基に連結していることを示す。aは0〜3の整数である。
チオール化合物(C)が上記構造を有することにより、aが1である場合は特に、下記式(T)で表すように、金属錯体(D)の金属原子に、カルボニル基中の酸素原子及びメルカプト基中の硫黄原子が配位しやすくなり、金属錯体(D)の金属原子がチオール化合物(C)に囲まれた形になると考えられる。
なお、下記式(T)中、R及びRは、上記式(Q−1)におけるR及びRと同義であり、Mは、金属錯体(D)に由来する金属元素を示す。
Figure 2021084940

熱硬化性樹脂組成物を湿潤条件下で用いる場合、上記式(T)のようにチオール化合物(C)が配位することにより、金属原子へ水が配位することが抑制され、安定的に硬化促進能を発揮することができる。
このため、特に前記熱硬化性樹脂組成物を湿潤条件下で使用する場合は、硬化するまでの可使時間の観点から、チオール化合物(C)は、2級チオール化合物であることが好ましく、さらに多官能チオールであることがより好ましい。
これらのうち、下記式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとのエステル化合物がより好ましい。このような化合物は、メルカプト基含有カルボン酸と多価アルコールとの公知の方法でのエステル化反応により得られる。
なお、下記式(S)中、R、R、及びaは、上記式(Q−1)におけるR、R、及びaと同義である。
Figure 2021084940

前記式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸は、2級チオール化合物の由来化合物である場合、具体的には、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、3−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールアルキレンオキシドA付加物、ビスフェノールFアルキレンオキシド化合物、ビスフェノールSアルキレンオキシド化合物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]フルオレン等の2価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ショ糖、2,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシフェニル)プロパン等の3価以上のアルコール;その他、ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらのうち、入手容易性や湿潤条件下でも硬化促進能を発揮させる観点から、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、2,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシフェニル)プロパン等の3価以上のアルコール;ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオールが好ましく、官能基数及び蒸気圧の観点から、1,4−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオールがより好ましい。
チオール化合物(C)の具体例としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)BD1」)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)PE1」)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシエチル)]―1,3,5−トリアジンー2,4,6(1,3,5)−トリオン(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)NR1」)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)」TEMB)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)TPMB」)等の市販品を好適に用いることができる。
チオール化合物(C)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂組成物中のチオール化合物(C)の含有量は、金属錯体(D)の金属原子へのチオール化合物(C)の配位能、及びコストと硬化促進能のバランスを考慮して、金属錯体(D)の合計モルに対して(すなわち、モル比[(C)/(D)])、0.1〜15モルであることが好ましく、より好ましくは1〜12モル、さらに好ましくは5〜10モルである。
また、熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対するチオール化合物(C)の合計量としては、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物において樹脂特性に影響を及ぼさない程度の量であることが好ましいことから、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
(金属錯体(D))
金属錯体(D)は、金属原子に配位結合を介して有機化合物が配位している化合物であれば、特に限定されるものではない。
金属錯体(D)の金属元素の例としては、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄、銅、チタン、鉛、錫、バリウム、ビスマス、イットリウム、バナジウム、カルシウムが挙げられる。中でも、硬化促進性能の観点から、ジルコニウム、コバルト、マンガン、鉄、銅、バナジウムが好ましく、コバルト、マンガン、鉄、バナジウムがより好ましく、コバルト、マンガン、鉄がさらに好ましい。
上記有機化合物としては、長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸以外の有機酸が挙げられ、長鎖脂肪酸であることが好ましい。
長鎖脂肪酸の例としては、例えば、炭素数7〜30の脂肪酸が好ましい。具体的には、ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸等のオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、ナフテン酸等の鎖状又は環状の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が好ましい。
また、長鎖脂肪酸以外の有機酸に特に制限はないが、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エノール基を有する弱酸の化合物であって有機溶剤に溶けるものが好ましい。
金属錯体(D)は金属石鹸であることが好ましい。
具体的な金属石鹸(D)としては、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、バナジウムアセトアセテート、コバルトアセトアセテート、及び鉄アセトアセテート等が好ましく、オクチル酸マンガン、オクチル酸コバルト、及びナフテン酸コバルト等がより好ましい。
金属錯体(D)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属錯体(D)の含有量は、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、0.05〜5.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.20〜3.00質量部であり、さらに好ましくは0.50〜1.50質量部である。
金属錯体(D)の含有量が、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、0.05〜5.00質量部であれば、湿潤条件下及び水中においても該樹脂組成物をより一層容易に硬化させることが可能である。
(無機骨材(E))
無機骨材(E)は、熱硬化性樹脂組成物中の成分によって溶解するものでなければ、特に限定されるものではない。無機骨材(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機骨材(E)としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪砂、ガラスパウダー、タルク、及び溶融シリカのいずれか1種以上を含むことが好ましい。
また無機骨材(E)の中心粒径は、1〜300μmが好ましく、3〜200μmがより好ましく、5〜150μmがさらに好ましい。無機骨材(E)の中心粒径が1〜200μmであれば、無機骨材の添加による熱硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。なお、上記中心粒径とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準の粒度分布における小径側からの体積累積頻度が50%に達するメジアン径である。
無機骨材(E)の含有量は、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜300質量部であり、さらに好ましくは50〜200質量部である。
無機骨材(E)の含有量が、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対し、10〜500質量部であれば、硬化物の機械的強度をより高めることができる。
(水(F))
水(F)の具体例としては、イオン交換水、水道水、海水、河川水、井戸水、工場水、蒸留水、及び放射性物質等から選ばれる1種以上を含有する水が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物は、前述のとおり水を含有した状態で硬化させることができる。
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計含有量100質量部に対する水(F)の含有量が0.5質量部以上5質量部未満であり、好ましくは0.5〜4質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
水(F)の含有量が熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)100質量部に対して0.5質量部未満であると硬化物の耐水性が期待できない。一方で5質量部以上であると硬化物は水と長期間接触した場合、機械強度が損なわれやすく耐水性の向上が困難となる。水(F)の含有量が上記範囲内であり、かつ後述する界面活性剤の含有量が少ない又は界面活性剤を含有しないことで、硬化物の弾性率や弾性保持率等の機械強度が良好となって、水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができ、硬化物の耐水性が向上する。この理由は確かではないが、熱硬化性樹脂組成物が水(F)を上記含有量で含有することにより、硬化物中の樹脂と他の成分との界面において適度な剥離状態が形成され、硬化物が水と接しても該界面がほとんど変化せず、弾性率が維持されるものと推測される。
(界面活性剤)
熱硬化性樹脂組成物において、界面活性剤は任意に含有させ得る成分である。
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩類、ステアリン酸ソーダ石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ソルビタンモノラウリレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル:テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミドアミン及びその塩、アルキルエーテルアミン及びその塩又は四級塩、脂肪酸アミド型四級アンモニウム塩及びシリコーン骨格含有陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型化合物、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、及び水(F)の合計含有量100質量部に対する界面活性剤の含有量が0質量部以上0.05質量部未満である。界面活性剤の上記含有量は好ましくは0.03質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、さらに好ましくは0質量部である。
界面活性剤の含有量が熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、及び水(F)の合計100質量部に対して0.05質量部以上であると、硬化物は水と長期間接触した場合、機械強度の低下を抑制することが困難となる。界面活性剤の上記含有量を0.05質量部未満、さらに好ましくは界面活性剤を含まないことで、耐水性、耐薬品性及び機械物性を向上できることが期待できる。
(ラジカル重合開始剤(G))
熱硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合反応により硬化させるため、ラジカル重合開始剤(G)を含有させることが好ましい。
ラジカル重合開始剤(G)は、熱硬化性樹脂(A)のラジカル重合反応を開始させない条件下で保存される場合は、作業効率等の観点から、熱硬化性樹脂組成物中にあらかじめ含有させておいてもよい。また、熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、及び水(F)、並びにその他の成分を混合した樹脂組成物に、硬化させる直前でラジカル重合開始剤(G)を添加して混合してもよい。
ラジカル重合開始剤(G)の種類は、熱硬化性樹脂(A)の種類や該樹脂組成物の使用条件、反応条件等に応じて適宜選択されるが、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始等を用いることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱ラジカル重合開始剤としては、具体的に、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド系、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系、パーオキシシクロヘサン等のパーオキシケタール系、パーオキシデカン等のアルキルパーエステル系、パーオキシジカーボネート等のパーカーボネート系の有機過酸化物が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等のベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物に対するラジカル重合開始剤(G)の含有量は、熱硬化性樹脂(A)の種類や該樹脂組成物の使用条件、反応条件等に応じて適宜設定される。ラジカル重合開始剤(G)の含有量は、通常、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。ラジカル重合開始剤(G)の上記含有量が0.1質量部以上であれば良好にラジカル重合反応を進行させることができ、10質量部以下であれば得られる効果と製造コストのバランスが良好である。
(その他成分)
前記熱硬化性樹脂組成物は、使用目的や用途等に応じて、必要により、硬化促進剤、溶剤、着色剤、繊維、カップリング剤、ワックス、揺変剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させるために用いることができる。
硬化促進剤としては、具体的には、アニリン、N,N−置換アニリン、N,N−置換−p−トルイジン、4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類が挙げられ、具体的には、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニリモルホリン、ピペリジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
溶剤は、熱硬化性樹脂組成物中の各含有成分を均一に混合する観点から、必要に応じて用いられるものである。その含有量は、特に限定されるもので半句、使用時の取り扱い性等に応じて適宜調整することができる。溶剤の種類は、樹脂の種類や使用用途等に応じて、熱硬化性樹脂組成物の硬化性能及び保存安定性に影響を及ぼさない範囲内で適宜選択されるものである。例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、鎖状炭酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
具体的には、脂肪族炭化水素としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ホワイトスピリット、無臭ミネラルスピリット等のミネラルスピリット等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、ナフテン、ナフテンとパラフィンとの混合物、ベンゼン、トルエン、キノリン等が挙げられる。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソブチレート、ケトグルタル酸のモノ及びジエステル、ピルビン酸エチル等のピルベート類、パルミテート等のアスコルビン酸のモノ及びジエステル等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が挙げられる。その他、1,2−シクロヘキサンジオンジオキシム等の1,2−ジオキシム類、メチルピロリドン、エチルピロリジノン、ジメチルホルムアミド等も用いることができる。
これらの溶剤は、市販の熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、水(F)の製品中に含まれている場合もある。
着色剤としては、公知の着色顔料、体質顔料、防錆顔料等の顔料や、染料等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、スチール繊維等の金属、アルミナ繊維等のセラミック繊維等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ワックスとしては、パラフィンワックス、極性ワックス等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
揺変剤としては、無機系揺変剤、及び有機系揺変剤を挙げることができる。有機系揺変剤としては、水素添加ひまし油、アクリルアミド等のアマイド系、酸化ポリエチレン、植物油、重合油、界面活性剤、及びこれらの併用が挙げられる。無機系揺変剤としては、シリカやベントナイトが挙げられ、疎水性の無機系揺変剤及び親水性の無機系揺変剤のいずれも用いることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化性能及び保存安定性に影響を及ぼさない範囲内おいて、製造する該樹脂組成物の硬化物の所望の物性に応じて適宜調整することができる。前記添加剤の合計含有量は、熱硬化性樹脂(A)及びエチレン性不飽和化合物(B)の合計100質量部に対して、0.1〜700質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜500質量部、さらに好ましくは0.1〜300質量部である。
(熱硬化性樹脂組成物の製造方法)
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、水(F)を、公知の方法で混合撹拌することにより得ることができる。さらに、任意の成分として前記添加剤等を添加してもよい。各成分の添加混合順序は特に限定されるものではない。混合撹拌の際、上述したように、各配合成分を均一に混合する観点から、適宜溶剤を用いてもよい。
一実施態様は、例えば熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、及び金属錯体(D)を混合後、チオール化合物(C)を混合する。その後、水(F)を混合し、最後に無機骨材(E)を混合する方法である。この方法により製造すると、金属錯体(D)の金属の近傍にチオール化合物(C)を効率的に配位させることが可能になる。
また、別の一実施態様は、あらかじめ水(F)と無機骨材(E)とを混合しておき、前記(A)〜(D)の混合物に混合する方法である。この方法により製造すると、無機骨材(E)の表面に偏析している水溶性成分を効率的に分散させることができ、硬化物の耐水性をより向上させることが可能である。
各工程における混合方法に特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。また、各混合時の温度は、均一に混合する観点、及び各成分の変質を抑制する観点から、20〜40℃が好ましい。
(熱硬化性樹脂組成物の粘度)
前記熱硬化性樹脂組成物の粘度は、2.5Pa・s以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物の粘度が2.5Pa・s以下であることにより、空間への充填性が良好となり、狭い空間へ密に充填することが可能となる。熱硬化性樹脂組成物の粘度は、より好ましくは2.0Pa・s以下であり、さらに好ましくは1.0Pa・s以下であり、よりさらに好ましくは0.5Pa・s以下である。また、熱硬化性樹脂組成物の粘度の下限値は、本発明の効果が損なわれない範囲であればよく、熱硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば0.15Pa・s以上とすることができる。
上記熱硬化性樹脂組成物の粘度は、JIS K7117:1999「プラスチック−液状、乳濁状又は分散上の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に準じて測定することができ、詳細は実施例に記載のとおりである。
[熱硬化性樹脂組成物の硬化物]
また、本発明は上述の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を提供する。
熱硬化性樹脂組成物は、上記ラジカル重合反応により硬化物とすることができるが、熱硬化性樹脂組成物が水(F)を含有した状態、熱硬化性樹脂組成物と水とを接触させた状態、又は熱硬化性樹脂組成物を水中に浸漬させた状態、のいずれであっても硬化させることができる。
上記のラジカル重合開始剤(G)を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物を好ましくは5℃以上の温度で硬化させることができる。
上記「熱硬化性樹脂組成物が水(F)を含有した状態」とは、熱硬化性樹脂組成物から水(F)を乾燥等によって除いていない状態をいう。また、「熱硬化性樹脂組成物と水とを接触させた状態」とは、熱硬化性樹脂組成物の全部又は一部と、水(F)以外の水、すなわち、熱硬化性樹脂組成物の周囲の環境に存在する水とが接触している状態をいう。さらに、「熱硬化性樹脂組成物を水中に浸漬させた状態」とは、熱硬化性樹脂組成物の全部又は一部が水中に浸漬している状態をいう。
熱硬化性樹脂組成物は、前述のとおり含水状態であっても硬化させることができるため、水と接触している状態、さらに浸漬している状態であっても硬化させることが可能である。
上記の硬化方法により、熱硬化性樹脂組成物中の水(F)の全部又は一部は樹脂成分の硬化物中に固−液分離することなく取り込まれることで、硬化物の弾性率や弾性保持率等の機械強度が良好となり、さらに水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができ、硬化物の耐水性が向上することになる。
[用途等]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、乾燥条件下はもちろん、湿潤・水中下においても、良好な硬化性能を発揮し、その硬化物において優れた機械強度が得られることから、管渠更生やトンネル施工における間詰め材、コンクリートの止水等のための無機構造物修復材、繊維強化複合材料等の様々な用途に使用することができる。特に、熱硬化性樹脂組成物は、空間充填材として有用であり、その硬化物を用いた管渠やトンネルとして好適に利用できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
下記実施例及び比較例の各熱硬化性樹脂組成物の製造に使用した原料は以下の通りである。
<熱硬化性樹脂(A)>
[不飽和ポリエステル樹脂A−1の製造]
撹拌機、分留コンデンサー、温度計、窒素ガス導入管を付した1Lのフラスコに、プロピレングリコール191g、ジエチレングリコール164g、イソフタル酸64g、テレフタル酸64gを仕込み、加熱撹拌しながら215℃で5時間反応させた後、120℃まで冷却した。そこへ無水マレイン酸189g、ターシャリーブチルハイドロキノン0.04gを仕込み、加熱撹拌しながら215℃で反応させ、酸価が20mgKOH/gになった時点で冷却し、ハイドロキノン0.05g、ナフテン酸銅0.02g、スチレンモノマー400gを仕込み、不飽和ポリエステル樹脂A−1(重量平均分子量3,700、不飽和度100モル%)を60質量%含有する混合物AB−1を609g得た。
<エチレン性不飽和化合物(B)>
・スチレン(上記混合物AB−1に含まれるスチレン(含有量40質量%)、及び別途配合されるスチレンの合計である。)
<チオール化合物(C)>
・シアヌル酸骨格3官能2級チオール(昭和電工株式会社製、カレンズ(登録商標)MT BD−1、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン)
<金属錯体(D)>
・オクチル酸コバルト(東栄化工株式会社製、ヘキソエートコバルト、製品全量中のコバルトの含有量8質量%、分子量345.34)
<無機骨材(E)>
・水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、B103、中心粒径7μm)
・珪砂(中心粒径80μm)
<水(F)>
・蒸留水
<ラジカル重合開始剤(G)>
・クメンハイドロパーオキシド(日油株式会社製、パークミル(登録商標)H−80)
<界面活性剤>
・ラウリル硫酸ナトリウム
<硬化促進剤>
・N,N−ジメチルアニリン(東京化成工業株式会社製、DMA)
[熱硬化性樹脂組成物の製造]
(実施例1)
混合物AB−1(不飽和ポリエステル樹脂A−1 48g及びスチレン32gを含む)80g及びエチレン性不飽和化合物(B)20gに、金属錯体(D)0.9g(0.0002モル)を加え、25℃で撹拌混合した。これにチオール化合物(C)0.5g(0.002モル)、無機骨材(E)として水酸化アルミニウムを100g、水(F)1.0g、硬化促進剤0.1gを加えて撹拌混合し、さらにラジカル重合開始剤(G)1.0gを加えて撹拌混合することで熱硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例2〜4、比較例1〜4)
下記表1に示した配合組成で、実施例1と同様にして、各熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、比較例4において界面活性剤は水(F)と同時に加えた。
[熱硬化性樹脂組成物の評価]
上記実施例及び比較例で製造した熱硬化性樹脂組成物について、下記の各項目についての評価を行った。
これらの評価結果を下記表1にまとめて示す。
<耐水性能>
上記実施例及び比較例で製造した熱硬化性樹脂組成物を23℃、3日間養生することで硬化させ、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。得られた硬化物を10mm×80mm×4mmの直方体となるように切削し、試験片を作製した。
(初期曲げ弾性率の測定方法)
上記試験片を用いて、JIS K7171:2016「プラスチック−曲げ特性の求め方」に基づき、23℃、湿度50%RHにて曲げ弾性率を測定し、初期曲げ弾性率とした。
(2週間後曲げ弾性率の測定方法)
試験片を、試験片の質量の300倍の蒸留水に浸漬させ、60℃、2週間保管した。
浸漬させた試験片を蒸留水から取り出した後、ウエス等で試験片表面の水分を取り除き、23℃で6時間養生させた後、初期曲げ弾性率と同様の条件で曲げ弾性率を測定し、2週間後曲げ弾性率とした。
(曲げ弾性率保持率の算出方法)
曲げ弾性率保持率は以下の式によって算出した。
(2週間後曲げ弾性率)/(初期曲げ弾性率)×100
<粘度>
上記実施例及び比較例で製造した熱硬化性樹脂組成物250mLを恒温槽(「PH−102」、エスペック株式会社製)内で300mLビーカーに入れ、JIS K7117:1999「プラスチック−液状、乳濁状又は分散上の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に基づき、ブルックフィールドB型回転粘度計(「TV−25」、東機産業株式会社製)を用いて、液温23℃とし、回転数60rpm、スピンドル(ローター)No.3の条件にて粘度を測定し、該熱硬化性樹脂組成物の粘度(Pa・s)とした。
Figure 2021084940
表1に示した結果からもわかるように、水が特定量含まれている熱硬化性樹脂組成物(実施例1〜4)は、比較例1〜4と比較して、曲げ弾性率保持率が高いことから硬化物の耐水性が高いことは明らかである。
また、実施例1〜3と比較例3又は比較例4との対比から、熱硬化性樹脂組成物中の水及び界面活性剤の含有量を特定の範囲とすることで、優れた曲げ弾性率及び曲げ弾性保持率となることがわかり、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、機械強度が良好であり、かつ水と長期間接触しても機械強度の低下を抑制することができるのがわかる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、乾燥条件下はもちろん、湿潤・水中下においても、良好な硬化性能を発揮し、その硬化物において優れた機械強度が得られることから、管渠更生やトンネル施工における間詰め材、コンクリートの止水等のための無機構造物修復材、繊維強化複合材料等の様々な用途に使用することができる。

Claims (10)

  1. エチレン性不飽和結合を複数個有する熱硬化性樹脂(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、チオール化合物(C)、金属錯体(D)、無機骨材(E)、及び水(F)を含有し、
    前記熱硬化性樹脂(A)、前記エチレン性不飽和化合物(B)、及び前記水(F)の合計含有量100質量部に対する界面活性剤の含有量が0質量部以上0.05質量部未満であり、
    前記熱硬化性樹脂(A)及び前記エチレン性不飽和化合物(B)の合計含有量100質量部に対する前記水(F)の含有量が0.5質量部以上5質量部未満である、
    熱硬化性樹脂組成物。
  2. 25℃における粘度が2.5Pa・s以下である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記熱硬化性樹脂(A)が、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂のいずれか1種以上を含む、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記金属錯体(D)が金属石鹸である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記無機骨材(E)が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪砂、ガラスパウダー、タルク、及び溶融シリカのいずれか1種以上を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記無機骨材(E)の中心粒径が1〜300μmである、請求項1〜5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. さらに、ラジカル重合開始剤(G)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含む空間充填材。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  10. 請求項9に記載の硬化物を用いた管渠又はトンネル。
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