JP2021080350A - 射出成形用組成物とその製造方法 - Google Patents
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しかし、これらのものを用いた場合には、加熱脱脂温度が高温でないと脱脂率が低いため、焼結体の残留カーボンが多くなるという欠点を有している。また、軟化点が低いために脱脂時に変形を生じやすいという問題があり、脱脂工程が長時間化する要因となっていた。これを解決するために、加熱脱脂の時間を短縮させるためにポリオキシメチレン(POM)にポリオレフィン、ワックスを添加し、脱脂変形の少ない製品を加熱により脱脂する方法(特許公報2955754、特許公報3081779、特許公報3113806)がある。しかしながら、肉厚が5mm以上の成形体では加熱脱脂時に膨れ、クラックを生じるため、加熱脱脂前に有機溶媒を用いてワックスを事前に抽出脱脂する必要がある。
一方、5mm以上の肉厚品を短時間で脱脂する方法として、POM並びにポリオレフィンポリマーを有機バインダとして成形体を作成し、硝酸、シュウ酸等の酸を100℃以上の高温下で脱脂する方法(特開平08−209204、WO94/25205、特表2003−531293、特表2014−514183、特表2017−524809)があるが、脱脂の際には酸を用いるため、窒素酸化物が生成されること、また強酸の使用により、使用量が増えた際の環境面、安全面での対策が必要となる。また、弱酸であるシュウ酸を用いる場合もあるが、POMの分解に時間を要するため、従来の加熱脱脂での方法に対する優位性が認められなくなる。
成分(a)の添加量はバインダ中の30〜90体積%であり、望ましくは50〜90体積%であり、さらに望ましくは60〜85体積%である。添加量が30体積%未満の場合では過熱水蒸気脱脂において除去される有機バインダ量が少ないため、以後の焼結の間にクラックを生じる。また、添加量が90体積%よりも多い場合には、射出成形時の流動性が低く、且つ成形体がもろくなり、成形体にウエルド、クラック等の不具合が生じる。過熱水蒸気脱脂後の成形体が非常にもろくなり、焼結炉への移送が困難になる。
成分(b)の添加量が5体積%未満の場合には射出成形体のじん性が低下しクラックが発生しやすく、過熱水蒸気脱脂後の成形体が脆くなる。また、添加量が40体積%よりも多い場合には過熱水蒸気脱脂において、成分(a)の分解を妨げて、過熱水蒸気脱脂中にクラックが生じる。また、焼結工程において急速に熱分解することでクラックが生じる。
金属粉末はステンレス、鉄系材料、チタン、銅、ニッケル等の粉末が挙げられる。本発明に用いられる金属粉末の平均粒径は1〜30μmが好ましい。粉末の粒径が1μm未満になると、成形に必要なバインダ量が多くなるために脱脂時に変形及び割れ、膨れ等の欠陥が生じやすい。また、粉末平均粒径が30μmを超えると、成形時に粉末とバインダが分離しやすく、また、焼結後の密度が低くなり、得られた焼結体の強度も低下する。ここで、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置を用いて、測定した重量累積50%の平均径を意味する。粒度分布測定装置としては、島津製作所製 SALD−2000型を用いることができる。
加圧ニーダー中に、まず、ポリ乳酸(成分a)、ポリオキシメチレン(成分a)とポリプロピレン(成分b)を投入し、180℃で溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:10μm)、ステアリン酸アミド(成分c)、及びエチレン酢酸ビニル共重合体(成分d)
を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、成形用組成物を得た。次に、成形温度190℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 100重量部(58体積%)
全バインダ量 7.8重量部(42体積%)
バインダ組成
(a)ポリ乳酸 70.0体積%
(b)ポリプロピレン 15.0体積%
(c)ステアリン酸アミド 5.0体積%
(d)エチレン・エチルアクリレート共重合体 10.0体積%
加圧ニーダー中に、まず、ポリエステル系ウレタン(成分a)とポリプロピレン(成分b)を投入し、180℃で溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:10μm)、カルナバワックス(成分c)、及びポリブチルメタクリレート(成分d)
を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、成形用組成物を得た。次に、成形温度190℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 100重量部(58体積%)
全バインダ量 7.8重量部(42体積%)
バインダ組成
(a)ポリエステル系ウレタン樹脂 70.0体積%
(b)ポリプロピレン 15.0体積%
(c)カルナバワックス 5.0体積%
(d)ポリブチルメタクリレート 10.0体積%
加圧ニーダー中に、まず、ポリオキシメチレン(成分a)とポリエチレン(成分b)を投入し、180℃で溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:10μm)、カルナバワックス(成分c)、及びポリブチルメタクリレート(成分d)
を投入して60分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、成形用組成物を得た。次に、成形温度190℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 100重量部(58体積%)
全バインダ量 7.8重量部(42体積%)
バインダ組成
(a)ポリオキシメチレン 70.0体積%
(b)高密度チレン 15.0体積%
(c)ステアリン酸アミド 5.0体積%
(d)エチレングリシジルメタクリレート共重合体 10.0体積%
加圧ニーダー中に、まず、熱可塑性樹脂であるエチレン−酢酸ビニル共重合体及び高密度ポリエチレンを投入し、180℃で溶融させた後、SUS316L粉末(平均粒径:10μm)、及びパラフィンワックス(融点46℃)を投入し、40分間混練し、取り出した後混練物を粉砕し、成形用組成物を得た。次に、成形温度150℃の条件で射出し、図1に記載の厚さ3mm、幅10mm、長さ60mmの成形体を得た。
成形用組成物
SUS316L粉末 100重量部(58体積%)
全バインダ量 7.8重量部(42体積%)
バインダ組成
エチレン−酢酸ビニル共重合体 25.0体積%
高密度ポリエチレン 25.0体積%
パラフィンワックス 50.0体積%
さらに、有機バインダ成分を種々変更して実験を行った。用いた有機バインダの組成を表1に、射出成形用組成物の組成と結果を表2に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1〜3に準じて行った。成形体の肉厚については図1に記載の3mmで行った。
さらに、有機バインダ成分を種々変更して実験を行った。用いた有機バインダの組成を表3に、射出成形用組成物の組成と結果を表4に示す。なお、混練の条件、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1〜3に準じて行った。成形体の肉厚については図1に記載の3mmで行った。
また、試料19〜22に関しては、成分(c)を添加せず成形を行った。成形時には欠陥は生じ無かったものの、過熱水蒸気脱脂を行った際に内部に膨れを生じた。
さらに、有機バインダ成分および成形用組成物中の有機バインダの含有量を変えて実験を行った。用いた有機バインダの組成を表5に、射出成形用組成物の組成と結果を表6に示す。金属粉末としては、SUS316LおよびSUS630を用いた。
なお、混練の条件、射出成形、脱脂の条件並びに焼結の条件は実施例1〜3に準じて行った。成形体の肉厚については図1から図3に記載の厚さ3mm、6mm、9mmに変えて成形体を作成した。幅は10mm、長さは60mmに固定して成形体を作成した。脱脂条件は以下の通りで行った。
図1 肉厚3mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で空気をフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で4時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し1時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度100℃/hrで2時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約11時間)
図2 肉厚6mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で空気をフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で5時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し3時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度75℃/hrで4時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約17時間)
図3 肉厚9mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で空気をフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で6時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し5時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度50℃/hrで4時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約21時間)
さらに、有機バインダ成分および成形用組成物中の有機バインダの含有量を変えて実験を行った。用いた有機バインダの組成を表1に、射出成形用組成物の組成と結果を表6に示す。セラミックス粉末としては、アルミナAl2O3(平均粒径0.5μm)および部分安定化ジルコニウムZrO2(イットリア添加3mol%、比表面積7平米/g)を用いた。
なお、混練の条件並びに射出成形の条件は実施例1〜3に準じて行った。成形体の肉厚については3mm、6mm、9mmに変えて成形体を作成した。幅は10mm、長さは60mmに固定して成形体を作成した。脱脂条件は以下の通りで行った。
図1 肉厚3mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で窒素ガスをフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で窒素ガスをフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で4時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し1時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度100℃/hrで2時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約11時間)
図2 肉厚6mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で窒素ガスをフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で5時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し3時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度75℃/hrで4時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約17時間)
図3 肉厚9mm:射出成形体を過熱水蒸気雰囲気の脱脂炉内に設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で窒素ガスをフローし、以後、過熱水蒸気をフローし、150℃で6時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し5時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度50℃/hrで4時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約21時間)
さらに、有機バインダにおける(a)〜(d)の好適な割合を検討した。成形用組成物における金属粉末としてはSUS316L(平均粒径10μm)を用い、成形用組成物中の金属粉末と有機バインダの割合はそれぞれ58体積%、42体積%とし、実施例1に準じて焼結体を作成した。用いた有機バインダの組成および結果を表7に示す。本実施例の結果から、肉厚の厚い成形体を製造する場合は、有機バインダの各成分(a)〜(d)の体積比率を、からなる有機バインダを30〜60体積%含むとともに、この有機バインダの組成比がa:35〜90体積%、b:5〜40体積%、c:1〜20体積%、d:5〜30体積%の範囲とすることが好ましいことが分かった。
さらに、実施例4で用いたSUS316L粉末並びに有機バインダ成分ア、イ、ウ並びに試料1,2,3を用いて、実施例1〜3と同じ混練条件、射出成形条件で図1に記載の厚さ3mmの射出成形体を作成した。得られた成形体を過熱水蒸気脱脂と、過熱水蒸気脱脂を用いず窒素ガスのみで脱脂を行った際の脱脂、並びに焼結結果を表8に示す。なお、脱脂方法は以下のとおりとした。
脱脂炉内に成形体を設置し、大気で室温から150℃までを100℃/hrの昇温速度で窒素ガスをフローし、以後、過熱水蒸気もしくは窒素ガスにて150℃で4時間保持し、150℃〜200℃までを昇温速度50℃/hrで昇温し1時間保持し、200℃から400℃までを昇温速度100℃/hrで2時間保持し窒素ガスをフローして炉冷した(脱脂加熱時間:合計約11時間)。
実験の結果から、過熱水蒸気で脱脂を行った場合には脱脂後に健全な脱脂体を得て、焼結後においても内部に欠陥はなく、健全な焼結体を得ることができた。しかしながら、試料78〜80において過熱水蒸気を用いないで脱脂をした場合には脱脂後に内部クラックが生じた。このことから、過熱水蒸気をフローすることで、短時間に欠陥の無い脱脂体を得ることができた。
このことから、大量に複雑な金属部品、セラミックス部品を必要とする医療関連部品、自動車部品、通信機器部品への活用が促進すると思われる。
Claims (6)
- 有機バインダを構成する成分が、a:主鎖中にエーテル結合および/もしくはエステル結合を有する熱可塑性樹脂、b:ポリオレフィン樹脂、c:融点が100℃以下である有機化合物、d:ビカット軟化点が130℃以下である熱可塑性樹脂からなることを特徴とする焼結可能な粉末の射出成形用組成物。
- 前記成分(a)、(b)、(c)、(d)からなる有機バインダを30〜60体積%含むとともに、この有機バインダの組成比がa:35〜90体積%、b:5〜40体積%、c:1〜20体積%、d:5〜30体積%である射出成形用組成物を用いて、得られた成形体を100℃以上600℃以下の過熱水蒸気中で脱脂を行うことを特徴とする請求項1記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(a)の熱可塑性樹脂がポリオキシメチレン(POM)、ポリ乳酸樹脂(PLC)、ポリエステル系ウレタン樹脂(TPU)ポリブチレンサクシネート(PBS)、並びにポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(PHH)からなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(b)の熱可塑性樹脂がポリプロピレン、ポリエチレンからなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(c)の有機化合物が、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタル酸エステル、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モンタン系ワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワックス、ステアリン酸及びポリグリコール系化合物からなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1または2記載の射出成形用組成物。
- 前記成分(d)の熱可塑性樹脂が、アモルファスポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、グリシジルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート樹脂、エチルメタクリレート樹脂、ブチルメタクリレート樹脂、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、環状ポリオレフィンコポリマー、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン樹脂、エチレン・ビニルアセテート・無水マレイン酸共重合体及びエチレン・エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれる一種以上の物質からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用組成物。
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