JP2021071194A - Vリブドベルト及びその製造方法 - Google Patents

Vリブドベルト及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021071194A
JP2021071194A JP2019238462A JP2019238462A JP2021071194A JP 2021071194 A JP2021071194 A JP 2021071194A JP 2019238462 A JP2019238462 A JP 2019238462A JP 2019238462 A JP2019238462 A JP 2019238462A JP 2021071194 A JP2021071194 A JP 2021071194A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rubber
rubber layer
layer
unvulcanized
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019238462A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6778315B1 (ja
Inventor
学 光冨
Manabu Mitsutomi
学 光冨
裕司 勘場
Yuji KAMBA
裕司 勘場
日根野 順文
Yorifumi Hineno
順文 日根野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsuboshi Belting Ltd
Original Assignee
Mitsuboshi Belting Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsuboshi Belting Ltd filed Critical Mitsuboshi Belting Ltd
Priority to US17/426,512 priority Critical patent/US20220099157A1/en
Priority to PCT/JP2020/002613 priority patent/WO2020158629A1/ja
Priority to CN202080010684.7A priority patent/CN113348070B/zh
Priority to EP20747836.3A priority patent/EP3919263B1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP6778315B1 publication Critical patent/JP6778315B1/ja
Publication of JP2021071194A publication Critical patent/JP2021071194A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G5/00V-belts, i.e. belts of tapered cross-section
    • F16G5/04V-belts, i.e. belts of tapered cross-section made of rubber
    • F16G5/06V-belts, i.e. belts of tapered cross-section made of rubber with reinforcement bonded by the rubber
    • F16G5/08V-belts, i.e. belts of tapered cross-section made of rubber with reinforcement bonded by the rubber with textile reinforcement
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29DPRODUCING PARTICULAR ARTICLES FROM PLASTICS OR FROM SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE
    • B29D29/00Producing belts or bands
    • B29D29/10Driving belts having wedge-shaped cross-section
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16GBELTS, CABLES, OR ROPES, PREDOMINANTLY USED FOR DRIVING PURPOSES; CHAINS; FITTINGS PREDOMINANTLY USED THEREFOR
    • F16G5/00V-belts, i.e. belts of tapered cross-section
    • F16G5/20V-belts, i.e. belts of tapered cross-section with a contact surface of special shape, e.g. toothed
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29DPRODUCING PARTICULAR ARTICLES FROM PLASTICS OR FROM SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE
    • B29D29/00Producing belts or bands
    • B29D29/10Driving belts having wedge-shaped cross-section
    • B29D29/103Multi-ribbed driving belts

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Textile Engineering (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)

Abstract

【課題】加硫工程において成形体を加圧して成形しても、摩擦伝動面へのゴムの滲出を抑制でき、耐発音性を向上できるVリブドベルト及びその製造方法を提供する。【解決手段】Vリブドベルト1のベルト本体は、ベルト背面を形成する伸張ゴム層2と、この伸張ゴム層の内周面に積層され、リブ部5を有する圧縮ゴム層3とを含んでおり、ベルト本体の長手方向には心線4が埋設され、前記リブ部5の表面には摩擦伝動面としての編布6が積層されている。前記圧縮ゴム層3は、内周ゴム層3aと外周ゴム層3bとを有しており、前記内周ゴム層3a及び前記外周ゴム層3bを形成するゴム組成物は、特定のムーニースコーチ最低粘度Vmを有するゴム組成物で形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、圧縮ゴム層の摩擦伝動面が布帛(編布など)で被覆されたVリブドベルト及びその製造方法に関する。
伝動ベルトは、その伝動機構の違いにより、かみ合い伝動ベルトと摩擦伝動ベルトとに大別される。かみ合い伝動ベルトは、ベルトの歯部がプーリの溝と機械的に嵌合して動力伝達が行われる。かみ合い伝動ベルトでは、ベルトとプーリの間でスリップは発生しないため、駆動側と従動側を同期伝動するのに適している。しかし、かみ合い伝動ベルトではスリップが許されないために、過剰な負荷が発生した場合には負荷を逃がすことができずに、ベルトが損傷する虞がある。
一方、摩擦伝動ベルトは、ベルトとプーリの間で摩擦力を介して動力伝達が行われる。摩擦伝動ベルトでは、ベルトとプーリの間で多少のスリップは許容されるため、過剰な負荷が発生した場合でも負荷を逃がすことができる。このように、かみ合い伝動ベルトと摩擦伝動ベルトは、伝動機構の違いによって得意とする用途が異なっており、目的によって使い分けられている。
摩擦伝動ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが知られている。中でも、Vリブドベルトは、伝動容量の高さと耐屈曲疲労性とを両立できることから、自動車の補機駆動用として汎用されている。Vリブドベルトの中には、耐摩耗性を高めたり、摩擦係数を調整したりするために、圧縮ゴム層の表面を補強布で被覆したベルトがある。前記補強布には、織布、編布、不織布などが適用でき、これらの補強布を構成する繊維としては、耐摩耗性や吸水性などの要求に合わせて、種々の繊維を用いることができる。
例えば、特表2010−539394号公報(特許文献1)には、リブ表面が帆布により被覆され、前記帆布が所定の2方向に伸縮自在であり、Vリブドベルトのベルトマトリクスが前記帆布の布目を透過し、前記Vリブドベルトがモールデッド製法を用いて製造され、前記モールデッド製法において、前記リブ表面がベルトマトリクスの外周に配置した前記帆布を、前記ベルトマトリクスとともにシェルの内周面に設けられたマルチリブ形状の型に押圧するとともに前記ベルトマトリクスを加硫することにより成型され、前記帆布が、前記マルチリブド形状に合わせて伸張可能である、Vリブドベルトが開示されている。また、帆布の伸張性を選択することにより、マトリクスの透過を間接的に制御することができ、それによりリブ表面における摩擦係数を制御することが記載されている。
さらに、特開2014−209028号公報(特許文献2)には、摩擦伝動面を編布で被覆したVリブドベルトであって、前記編布がポリエステル系複合糸とセルロース系天然紡績糸で編成されており、前記ポリエステル系複合糸が嵩高加工糸であり、前記セルロース系天然紡績糸の編成比率が前記ポリエステル系複合糸の編成比率以上である、Vリブドベルトが開示されている。そして、このような構成とすることで、嵩高加工糸の嵩高さによってベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲み出さないようにして、摩擦伝動面のドライ状態での摩擦係数増大とウェット状態での摩擦係数低下を防止できると記載されている。さらに、前記編布に親水化処理剤を含有又は付着させてもよいこと、共架橋剤として不飽和カルボン酸の金属塩を含んでよいこと、潤滑剤として超高分子量ポリエチレンを含んでよいことが記載されている。さらに、特許文献2には、伸張層用ゴムシート、心線、圧縮層用ゴムシート、編布を順次に積層し、この成形体を、可撓性ジャケットの膨張力を利用して、外型のリブ型に向かって押圧して加硫することにより製造することが記載されている。
特表2010−539394号公報(請求項18、段落[0067]) 特開2014−209028号公報(段落[0015][0035][0037][0067][0068]、請求項8)
前記特許文献1及び2に開示されるように、圧縮層の表面を被覆する補強布の伸張率や嵩高さ若しくはゴム層の粘度によって、ベルト本体のゴムの摩擦伝動面への滲み出しを制御することは公知である。しかし、特許文献1及び2に開示される構成では、その効果が十分ではない場合がある。すなわち、圧縮層の表面を編布で被覆したVリブドベルトを、特許文献2に記載の方法で製造するには、心線の弾性率が高い程、成形体を高い圧力で押圧する必要がある。そして、成形体を高圧で外型のリブ型に圧入すると、ベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲み出しやすくなる。一方、近年、Vリブドベルトの用途では高負荷伝動を可能とするために、弾性率の高い心線が用いられることが多くなっており、特許文献1及び2に記載の構成だけでは、ベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲み出すのを十分に抑制できない。
従って、本発明の目的は、加硫工程において成形体を加圧して成形しても、ベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲み出すのを抑制し、耐発音性に優れるVリブドベルト、及びそのようなVリブドベルトを簡便に製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、摩擦伝動面へのゴムの滲出が抑制され、かつリブ部が精度よく形成されたVリブドベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、編布の耐摩耗性が向上し、耐注水発音性を長期に亘って持続できるVリブドベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、引張弾性率の高い心線を用い、加硫工程で成形体を高圧で加圧しても、摩擦伝動面へのゴムの滲出を抑制し、耐久性が改善されたVリブドベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、圧縮ゴム層の表面(摩擦伝動面)が布帛(編布などの布帛)で被覆されたVリブドベルトにおいて、特定のムーニースコーチ最低粘度(ムーニー粘度の最低値)を有し、かつ前記布帛と接触する内周ゴム層と、この内周ゴム層よりも外周側の特定のムーニースコーチ最低粘度を有する外周ゴム層とで圧縮ゴム層を形成すると、ベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲出するのを有効に防止でき、耐発音性などを大きく改善できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のVリブドベルトは、圧縮ゴム層の摩擦伝動面が布帛(編布などの布帛)で被覆され、前記圧縮ゴム層が、前記布帛と接触する内周ゴム層と、前記内周ゴム層よりも外周側の外周ゴム層とを有し、前記内周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度50〜110を有するゴム組成物で形成され、かつ前記外周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度70〜130を有するゴム組成物で形成されている。このようなゴム組成物で圧縮ゴム層を形成すると、加硫工程において成形体を加圧したとしても、ベルト本体のゴムが布帛(編布など)から滲出するのを有効に防止できる。このように、内周ゴム層を50〜110のムーニースコーチ最低粘度を有するゴム組成物で形成することにより、ゴム組成物の摩擦伝動面への滲出を抑制できる。しかも、外周ゴム層を70〜130のムーニースコーチ最低粘度を有するゴム組成物で形成することにより、摩擦伝動部(例えば、リブ部)を精度よく形成でき、リブ形状の不良を防止できる。さらに、摩擦伝動面が布帛で被覆されているため、被水時及び劣化時においても異音の発生を抑制でき、摩擦伝動特性を安定化できる。さらには、発音限界張力を低減でき、ベルト張力を低く設定しても発音(異音)を有効に抑制できる。
さらに、前記内周ゴム層は、前記外周ゴム層を形成するゴム組成物よりも低いムーニースコーチ最低粘度を有するゴム組成物で形成してもよい。
なお、前記圧縮ゴム層全体に対して、前記内周ゴム層の厚み割合は、1〜50%程度であってもよい。
前記内周ゴム層を形成するゴム組成物は、親水性可塑剤(親水化処理剤又は界面活性剤)を含んでいてもよい。また、前記内周ゴム層を形成するゴム組成物は、ポリオレフィン粒子を含んでいてもよい。さらに、布帛にイソシアネート化合物を含浸又は付着させてもよい。
さらに、前記Vリブドベルトは、ベルト本体の長手方向に延びる心線を含んでいてもよく、前記心線を構成する繊維の引張弾性率は50GPa以上であってもよい。
なお、Vリブドベルトは、ベルト背面を形成する伸張ゴム層と、前記伸張ゴム層の内周面に積層され、長手方向に延びるリブ部(例えば、複数の断面逆V字状(逆台形状)のリブ部)が形成された前記圧縮ゴム層とを少なくとも含むベルト本体と、前記ベルト本体の長手方向に埋設された心線と、前記布帛として、摩擦伝動面としての前記リブ部に積層され、少なくともセルロース繊維を含む編布とを備えていてもよく、前記内周ゴム層は、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度60〜100を有するゴム組成物で形成され、前記外周ゴム層は、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度80〜120を有するゴム組成物で形成されていてもよく、前記心線は、アラミド繊維及び/又は炭素繊維で形成してもよく、前記編布には、少なくともブロック型ポリイソシアネート化合物を含浸又は付着させてもよい。
本発明は、前記Vリブドベルトの製造方法も包含する。この方法では、中空円筒状外型内に配置された円筒状内型(例えば、同心円状に配置された円筒状内型)に、圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートと前記未加硫ゴムシートに積層された布帛を含む未加硫積層体を、前記布帛を前記外型に向けた形態で配置し、;前記未加硫ゴムシートを少なくとも前記外型に向かって加圧(例えば、膨張収縮性ジャケットの膨張力で加圧)して前記未加硫ゴムシートを加硫し;加硫したゴムシートと前記布帛との成形体を脱型して、所定の形態のVリブドベルトを製造する。本発明では、このような方法において、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを、前記布帛と接触する内周ゴム層用未加硫ゴムシートと、前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートよりも外周側の外周ゴム層用未加硫ゴムシートとで形成し、前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートを、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度50〜110を有するゴム組成物で形成し、かつ前記外周ゴム層用未加硫ゴムシートを、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度70〜130を有するゴム組成物で形成する。この方法において、1.2MPa以上の圧力で前記未加硫ゴムシートを加圧して加硫してもよい。
また、未加硫ゴムシートをカレンダーロールで圧延して、前記摩擦伝動面を形成する(前記表層部又は加硫ゴム層の内周面を形成する)前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートを形成し、カレンダーロール上で前記外周ゴム層用未加硫ゴムシートと積層して前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを調製してもよい。
さらには、前記製造方法では、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートと、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの一方の面に積層又は配された伸張ゴム層用未加硫ゴムシートとを少なくとも含む、ベルト本体を形成するための未加硫ゴム積層シートと;前記未加硫ゴム積層シートの長手方向に埋設した心線と;前記布帛として、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの他方の面に積層又は配された編布とを含む中空筒状又はスリーブ状の前記未加硫積層体を、前記編布を外型のリブ型に向けて配置し、前記内型に装着され、かつ膨張収縮可能な可撓性ジャケットの膨張圧力で、前記未加硫ゴム積層シートを加圧して加硫してもよい。
なお、本明細書において、ゴム組成物のムーニースコーチ最低粘度を「Vm」で示す場合があり、特に言及しない限り、ムーニースコーチ最低粘度「Vm」は、温度125℃での値を示す。また、アクリル系単量体とメタクリル系単量体とを(メタ)アクリル系単量体と総称する場合がある。数値範囲「XX〜YY」は、数値「XX」と数値「YY」とを含む意味、すなわち、数値「XX」以上であり、かつ数値「YY」以下であることを意味する。
本発明では、圧縮ゴム層を特定のムーニースコーチ最低粘度(ムーニー粘度の最低値)を有し、かつ前記布帛と接触する内周ゴム層と、この内周ゴム層よりも外周側の特定のムーニースコーチ最低粘度を有する外周ゴム層とで形成するため、加硫工程において成形体を加圧して成形しても、ベルト本体のゴムが摩擦伝動面に滲み出すのを抑制でき、耐発音性を向上できるとともに、簡便かつ効率よくVリブドベルトを製造できる。また、精度よくリブ部を形成できる。さらに、ゴム組成物の処方、布帛の処理により、布帛(編布など)の耐摩耗性を向上させて、耐注水発音性を長期に亘って持続できる。さらには、引張弾性率の高い心線を用い、加硫工程において高圧で成形体を加圧しても、摩擦伝動面へのゴムの滲出を抑制でき、耐久性を大きく改善できる。
図1は、本発明のVリブドベルトの一例を示す概略断面図である。 図2は、ムーニースコーチ最低粘度(Vm)の測定方法を説明するためのムーニー粘度の挙動を示すグラフである。 図3は、実施例での水に対する接触角の測定方法を説明するための概略図である。 図4は、実施例での内周ゴム層の平均厚みの測定方法を説明するための概略断面図である。 図5は、実施例での耐注水発音性の評価で用いた試験機のレイアウトを示す概略図である。 図6は、実施例での耐久走行試験で用いた試験機のレイアウトを示す概略図である。
以下に、必要に応じて、添付図面を参照しつつ、本発明のVリブドベルトについて詳細に説明する。
[Vリブドベルト]
図1には、本発明の一例であるVリブドベルト1が示されている。Vリブドベルト1は、ベルト背面(ベルトの外周面)を形成する伸張層(この例では、伸張ゴム層)2と、この伸張ゴム層の内周面に積層された圧縮ゴム層3とを含むベルト本体を備えており、前記圧縮ゴム層3と伸張ゴム層2との間にはベルト幅方向に所定間隔で並設してベルト長手方向(周長方向)に延びる心線4が埋設されている。また、前記圧縮ゴム層3のベルト内周面には、幅方向に間隔をおいて長手方向(周長方向)に延びる複数の断面V字状溝により断面逆V字形(逆台形)の複数のリブ部5が形成され、Vリブドベルトを形成している。Vリブドベルトにおいて、前記リブ部5の両側部の二つの傾斜面(傾斜両側壁)が摩擦伝動面を形成している。摩擦伝動面としての前記リブ部5の表面には布帛としての編布6が積層されており、前記摩擦伝動面は、編布6を介して、プーリ(前記リブ部5の両側壁の編布が接触可能な溝部を備えたプーリ)と接触可能である。なお、この例では、前記心線(芯体)4は、撚りコードで形成され、伸張ゴム層2と圧縮ゴム層3とに接して、両ゴム層2,3の間に介在している。
そして、前記圧縮ゴム層3は、内周ゴム層(内層又は編布6と接触して接着したゴム層)3aと外周ゴム層(外層又は伸張ゴム層2に接着したゴム層)3bとの二層構造を有しており、前記内周ゴム層3aが、前記外周ゴム層3bを形成するゴム組成物よりも低いムーニースコーチ最低粘度Vmを有するゴム組成物で形成されている。この例では、外周ゴム層(外層)3bは、Vm=70〜130程度のゴム組成物で形成され、内周ゴム層(内層)3aは、Vm=50〜110程度のゴム組成物で形成されている。さらに、この例では、Vリブドベルト1の厚みが3〜6mm程度、圧縮ゴム層3の厚み(リブ部の頂部での厚み)が2〜5mm程度であるのに対して、内周ゴム層(内層)3aは、外周ゴム層(外層)3bよりも厚みが小さく、0.03〜0.5mm程度の厚みに形成されている。すなわち、内周ゴム層3aは、圧縮ゴム層3の厚み(リブ部の頂部での厚み)に対して、1〜50%程度の厚みで形成されている。
このようにVリブドベルトでは、圧縮ゴム層3の内周ゴム層(内層)3aを形成するゴム組成物のVm値が特定の範囲に調整されているため、ゴム又はその組成物が編布6の組織の間を透過して摩擦伝動面に滲出するのを抑制でき、耐発音性を向上できる。さらに、内周ゴム層(内層)3aの厚みが小さく、外周ゴム層(外層)3bを形成するゴム組成物のVmも特定の範囲に調整されているため、ベルトの耐久性が向上し、リブ部を精度よく形成できる。さらに、圧縮ゴム層3が二層構造であるため、多数のゴム層で圧縮ゴム層を形成するのと比べて、ベルトの製造工数を低減することができ、生産性を向上できる。さらには、摩擦伝動面が編布6で被覆されているため、摩擦伝動特性を安定化できるとともに、被水及び/又は劣化しても異音の発生を抑制できる。また、発音限界張力を低減でき、ベルト張力が低くても、発音(異音)を有効に抑制で、耐発音性を向上できる。
なお、本発明のVリブドベルトは、前記図に示す構造のVリブドベルトに限定されず、例えば、伸張層は伸張ゴム層(ゴム組成物)ではなく布帛(織物、編物、不織布などの繊維部材で形成されたカバー帆布)で形成してもよく、伸張層は伸張ゴム層の外周面に布帛(帆布)を積層してもよい。圧縮ゴム層と伸張層(又は伸張ゴム層)との間に接着ゴム層を介在させてもよい。心線は、この接着ゴム層に埋設してもよい。また、心線は圧縮ゴム層と伸張層(又は伸張ゴム層)との間に埋設してもよく、例えば、圧縮ゴム層に埋設させてもよく、伸張層に接触させつつ圧縮ゴム層に埋設させてもよく、前記接着ゴム層に埋設させてもよく、圧縮ゴム層と接着層との間または接着ゴム層と伸張層との間に心線を埋設してもよい。さらに、前記圧縮ゴム層には、必要であれば、ゴム層を介して布帛(帆布)を積層してもよいが、通常、圧縮ゴム層には布帛(編布などの繊維部材)が直接的に積層する場合が多い。
好ましい態様では、前記圧縮ゴム層の内周面には、長手方向(周長方向)に延びる前記リブ部が形成され、このリブ部の表面が前記布帛で直接的に被覆されている。好ましいVリブドベルトは、ベルト外周面を形成する伸張層(又は外周面に布帛が積層されていてもよい伸張ゴム層)と、この伸張層の内周面に積層された圧縮ゴム層と、ベルト長手方向(周長方向)にスパイラル状に延びて伸張層と圧縮ゴム層との間に埋設された心線と、この圧縮ゴム層の内周面に幅方向に間隔をおいて形成され、長手方向(内周方向)に延びる複数のリブ部と、このリブ部を含む内周面(リブ部の両側壁を含む摩擦伝動面)を被覆する布帛とを備えており、前記心線は、前記伸張層と圧縮ゴム層との間に介在する接着ゴム層に埋設してもよい。
なお、Vベルトは、ベルトの両側壁をプーリの断面V字状内壁に接触させて摩擦伝動する摩擦伝動ベルトであり、例えば、特開平9−317831号公報に記載の変速Vベルト(ローエッジコグドVベルト)では、屈曲性を高めるため、長手方向に間隔をおいて幅方向に延びるコグ部が形成されている。このようなVベルト(変速ベルト)では、ベルトの両側壁が摩擦伝動面となり、圧縮ゴム層の下面に配設された下布と、プーリの断面V字状内壁との接触面積は極めて少ない。これに対して、Vリブドベルトでは、プーリのV字状溝(通常、幅方向に間隔をおいて形成された複数のV字状溝)の両側壁に、前記リブ部の両側壁の布帛が直接的に接触して動力を伝達する。そのため、Vリブドベルトにおいて、前記リブ部の両側壁(摩擦伝動面)で布帛からゴムが滲出すると、摩擦伝動特性が不安定となって、発音が生じる。このように、プーリのV字状溝の両側壁と下布との接触面積が極めて少ないVベルトと異なり、Vリブドベルトでは、リブ部の両側壁の布帛がプーリのV字状溝と大きな面積で直接的に接触するため、布帛からのゴムの滲出は、ベルトの走行に伴う発音性に大きく影響する。
以下に、Vリブドベルトを構成する各部材およびVリブドベルトの製造方法の詳細を説明する。
[布帛]
圧縮ゴム層の摩擦伝動面を布帛で被覆することにより、Vリブドベルトの耐久性および耐発音性を向上できる。特に、摩擦伝動特性を安定化できるとともに、ベルト張力が低くても、耐発音性を向上できる。布帛としては、織物(織布)、編物(編布)、不織布などの繊維部材が利用でき、編布(又は帆布)を使用する場合が多い。編布は、吸水性繊維及び/又は非吸水性繊維で形成でき、被水時の耐発音性を向上できる点から、吸水性繊維(又は親水性繊維)と非吸水性繊維とで形成された編布(例えば、特開2016−70494号公報に記載の編布)であってもよい。
吸水性繊維若しくは親水性繊維(又は吸水性糸を含む繊維)としては、例えば、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体の繊維、ビニロンなど)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維など)、セルロース系繊維[セルロース繊維(綿、麻などの植物、動物又はバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、レーヨン、アセテートなどセルロース誘導体の繊維]、動物由来の繊維(羊毛、絹など)などが例示できる。これらの吸水性繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの吸水性繊維のうち、セルロース繊維(特に、綿繊維)が好ましい。
セルロース系繊維はスパン糸であってもよい。セルロース系繊維の太さ(番手)は、例えば5〜100番手、好ましくは10〜80番手、さらに好ましくは20〜70番手(特に30〜50番手)程度である。太さが小さすぎると、編布の機械的特性が低下する虞があり、大きすぎると、吸水性が低下する虞がある。好ましいセルロース系繊維はセルロース繊維である。
非吸水性繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維(高強力ポリエチレン繊維を含む)、ポリプロピレン繊維など)、非吸水性ポリアミド繊維(アラミド繊維などの芳香族ポリアミド繊維など)、アクリル繊維、ポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維、ポリアリレート系繊維など]、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維;炭素繊維などの無機繊維が例示できる。これらの非吸水性繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの非吸水性繊維のうち、複合繊維(複合糸)、例えば、合成繊維同士の複合繊維(合成繊維の複合糸)であってもよく、編布の耐摩耗性を向上させるとともに、摩擦伝動面(または編布の表面)にゴムが滲出するのを抑制するためには、断面の嵩を大きくした嵩高加工糸又は嵩高複合糸(PTT/PETコンジュゲート糸などのポリエステル系複合糸など)が好ましい。
非吸水性繊維の繊度は、例えば、20〜600dtex、好ましくは50〜300dtex、さらに好ましくは60〜200dtex(特に70〜100dtex)程度であってもよい。
布帛(編布など)は、少なくとも吸水性繊維(特に、セルロース系繊維)を含むのが好ましい。非吸水性繊維の割合は、吸水性繊維100質量部に対して、例えば、200質量部以下(例えば、0〜200質量部)の範囲から選択してもよく、例えば、1〜100質量部、好ましくは3〜80質量部(例えば、5〜50質量部)、さらに好ましくは10〜40質量部(特に20〜30質量部)程度であってもよい。非吸水性繊維の割合が多すぎると、編布の吸水性が低下し、被水時の耐発音性が低下する虞がある。
編布の構造は、特に限定されず、慣用の構造を利用でき、単層の緯編[例えば、平編(天竺編)を編組織とする緯編]、多層編布[例えば、鹿の子編(鹿の子編を編組織とする緯編)など]が好ましく、多層編布が特に好ましい。多層編布において、編布の層の数は、例えば、2〜5層、好ましくは2〜4層、さらに好ましくは2層又は3層であってもよい。
なお、編布の繊維または糸の密度は、例えば、ウェール方向およびコース方向で、それぞれ30本/インチ以上(例えば、32〜70本/インチ、好ましくは34〜60本/インチ、さらに好ましくは35〜55本/インチ)であってもよい。また、合計で60本/インチ以上(例えば、62〜120本/インチ、好ましくは70〜115本/インチ、さらに好ましくは80〜110本/インチ、特に90〜105本/インチ)であってもよい。
さらに、布帛又は繊維部材(例えば、合成繊維として嵩高加工糸などの複合糸を編成した編布)の嵩高さの範囲は、ゴムの滲出を抑制できる範囲で選択でき、例えば、2〜4.5cm/g(例えば、2.2〜4cm/g)、好ましくは2.3〜3.8cm/g(例えば2.4〜3.5cm/g)、さらに好ましくは2.5〜3.3cm/g程度であってもよい。なお、嵩高さ(cm/g)は、編布の厚み(cm)を単位面積当たりの質量(g/cm)で除算することにより算出できる。
布帛(編布など)の目付は、例えば、50〜500g/m、好ましくは80〜400g/m、さらに好ましくは100〜350g/m程度であってもよい。
布帛(編布など)の厚み(平均厚み)は、0.1〜5mm程度の範囲から選択でき、例えば、0.3〜3mm(例えば、0.4〜2mm)、好ましくは0.5〜1.5mm(例えば、0.7〜1.2mm)程度であってもよい。
摩擦伝動面に対する接着性を向上させるため、布帛(編布など)には、必要に応じて、接着処理を施してもよい。接着処理により、摩擦伝動面(動力伝達面)の耐摩耗性を向上させることもできる。接着処理としては、例えば、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなど)に溶解した処理液に浸漬した後、加熱乾燥する方法;レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL処理液)に浸漬した後、加熱乾燥する方法などが挙げられる。これらの方法は、単独で又は組み合わせて行うことができ、処理順序や処理回数も限定されない。例えば、エポキシ化合物及び/又はイソシアネート化合物で前処理した後、RFL処理液に浸漬した後、加熱乾燥してもよい。
(イソシアネート化合物)
少なくともイソシアネート化合物(ポリイソシアネート化合物)で布帛を処理(含浸又は付着処理)すると、ゴム組成物との接着性、布帛の耐摩耗性が向上し、耐発音性を長期に亘って持続させることができる。特に、圧縮ゴム層のゴム成分及び/又は布帛の繊維(セルロース系繊維などの吸水性又は親水性繊維)が、イソシアネート化合物に対する反応性官能基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基などの活性水素原子を有する有機基)を有していると、布帛をイソシアネート化合物で処理することにより、布帛自体の機械的特性および圧縮ゴム層との接着性、Vリブドベルトの耐摩耗性及び耐久性をさらに向上でき、長期に亘り耐発音性を持続できる。なお、帆布処理剤として汎用されているレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)及び/又はエポキシ樹脂と組み合わせて、イソシアネート化合物で布帛を処理してもよいが、前記RFL液及び/又はエポキシ樹脂で処理しなくても、前記接着性や機械的特性を向上できる。
イソシアネート化合物は、反応性のイソシアネート基を有していればよく、通常、1分子中に複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(例えば、ジイソシアネート)を用いる場合が多い。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などのジイソシアネート;1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどのトリ又はポリイソシアネート]、脂環族ポリイソシアネート[シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどのジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリ又はポリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどのジイソシアネート;トリ又はポリイソシアネート]などが挙げられる。
ポリイソシアネートは、多量体(二量体や三量体、四量体など)、アダクト体、変性体(ビウレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体など)などの誘導体や、複数のイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーなどであってもよい。ポリイソシアネートの変性体又は誘導体としては、例えば、ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートなど)と多価アルコール(トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールなど)とのアダクト体、前記ポリイソシアネートのビウレット体、前記ポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート)の多量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなど)などが例示できる。
これらのイソシアネート化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのイソシアネート化合物(特に、ポリイソシアネート)のうち、脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体(例えば、HDI又はその三量体など)、芳香族ポリイソシアネート(TDI、MDIなど)などが汎用される。
さらに、イソシアネート化合物は、遊離のイソシアネート基を有する汎用のイソシアネート化合物(ブロック剤で保護されていないイソシアネート化合物)であってもよいが、イソシアネート基がブロック剤で保護された熱反応型イソシアネート化合物(又はブロックドポリイソシアネート)を用いるのが好ましい。熱反応型イソシアネート化合物を用いると、ベルトの成形過程では、イソシアネート基がブロック剤で保護されているため、不活性であり、硬化に関与しないため、布帛の伸縮性(成形性)を阻害せず、ベルトの加硫過程では、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が活性化して布帛の反応器と反応して硬化し、耐摩耗性を高めることができる。そのため、熱反応型イソシアネート化合物を用いると、ベルトの生産性を低下させることなく、布帛の接着性、Vリブドベルトの耐摩耗性及び耐久性を向上でき、被水時の耐発音性を長期に亘って持続できる。さらに、イソシアネート化合物を含む水系の浸漬液を調製すると、前記RFL液と比較して調液が簡単であり、環境負荷も小さい。
熱反応型イソシアネート化合物としては、慣用の熱反応型ポリイソシアネートが利用できる。前記ブロック剤(保護剤)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−24モノアルコール類またはそのアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイドなどのC2−4アルキレンオキサイド付加物);フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類;ε−カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類;ジブチルアミン、エチレンイミンなどの第2級アミン類などが挙げられる。これらのブロック剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、オキシム類やラクタム類などが汎用される。熱反応型イソシアネート化合物の形態は特に制限されず、液体状、粉末状の形態であってもよく、水性又は有機溶媒を含む形態(水性溶液又は分散液,有機溶媒溶液など)の形態であってもよい。
イソシアネート化合物(熱反応型イソシアネート化合物など)のイソシアネート基の含有率は、特に限定されず、例えば、1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度であってもよい。
熱反応型イソシアネート化合物の解離温度(ブロック剤が解離して、活性イソシアネート基が再生する温度)は、ゴム成分の加硫工程の前のベルト成形工程での加熱温度以上(通常、浸漬によって液状組成物が含浸した布帛の乾燥温度以上)であり、ゴム成分の加硫温度以下であればよい。解離温度が高いと、乾燥温度を高くできるため、生産性を向上できる。前記解離温度は、例えば、120℃以上(好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上)であってもよく、例えば、120〜250℃(例えば150〜240℃)、好ましくは160〜230℃(例えば170〜220℃)、さらに好ましくは175〜210℃(特に180〜200℃)程度であってもよい。解離温度が低すぎると、乾燥温度を高くできないため、乾燥に時間がかかり、生産性が低下する虞がある。
イソシアネート化合物の存在形態は、布帛を形成する繊維の少なくとも一部を被覆又は付着する形態であればよい。イソシアネート化合物の分布領域は、布帛の表面、布帛の内部の繊維間のいずれであってもよいが、耐摩耗性を向上させるためには、布帛の内部の繊維間(絡み合った多孔質構造)も含めて布帛全体に亘って略均一(特に、均一)に分布して存在するのが好ましい。なお、イソシアネート化合物を含む液状組成物中に布帛を浸漬することにより、布帛の全体に亘りイソシアネート化合物を容易かつ均一に分布させることができる。
イソシアネート化合物の割合は、布帛中1〜30質量%程度であってもよく、布帛の柔軟性を維持しつつ、接着性及び耐摩耗性を高めて被水時の耐発音性を長期に亘って持続する観点から、例えば、3〜20質量%、好ましくは5〜18質量%(例えば、7〜15質量%)、さらに好ましくは10〜15質量%(例えば、11〜13質量%)程度であってもよい。イソシアネート化合物の割合が少なすぎると、接着性及び耐摩耗性がさほど改善されず、被水時の耐発音性が低下する虞があり、逆に多すぎると、布帛やベルトの柔軟性が低下する虞がある。
なお、布帛(編布など)は、繊維表面又は繊維内部に、慣用の添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、フィラー、着色剤、安定剤、表面処理剤、レベリング剤などを含んでいてもよい。なお、界面活性剤としては、例えば、後述の親水性可塑剤(親水化処理剤)などが利用できる。これらの添加剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。添加剤の割合は、布帛(編布など)全体に対して10質量%以下、例えば、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.5〜2質量%程度であってもよい。また、界面活性剤の処理量(含有量)は、布帛1mあたり、0.1〜200g(例えば、1〜150g)、好ましくは3〜100g(例えば、5〜60g)程度であってもよい。
[圧縮ゴム層の内層]
内層(内周ゴム層)を形成する未加硫ゴム組成物のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR)、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム(HNBR)など)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBRなどのように、カルボキシル化されていてもよい。これらのゴム成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましいゴム成分は、少なくともエチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン−α−オレフィン系エラストマー(又はエチレン−α−オレフィン系ゴム)を主成分として含む。これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。さらに、耐熱性、耐寒性、および耐久性に優れる点から、EPDMなどのエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体が好ましい。
エチレン−α−オレフィンエラストマーのジエン含量は、例えば0.5〜3.5質量%、好ましくは1〜3質量%、さらに好ましくは1.5〜2.8質量%(特に2〜2.5質量%)程度である。ジエン含量が少なすぎると、架橋密度が低下してゴムの強度が低下する虞があり、逆に多すぎると、ムーニー粘度が低下して、耐発音性が低下する虞がある。なお、本明細書および特許請求の範囲において、ジエン含量は、ASTM D6047の標準試験法に準拠して測定できる。
なお、ゴム成分は、エチレン−α−オレフィン系エラストマー(又はエチレン−α−オレフィン系ゴム)だけで形成してもよく、Vmを調整するため、第1のゴム成分としてのエチレン−α−オレフィン系エラストマー(又はエチレン−α−オレフィン系ゴム)と他のゴム成分(第2のゴム成分)とを組み合わせてもよい。第2のゴム成分の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(第1のゴム成分)100質量部に対して、50質量部以下(例えば、1〜40質量部、好ましくは5〜30質量部程度)であってもよい。
未加硫ゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)は、布帛(編布など)を透過して摩擦伝動面にゴム組成物が滲み出すのを抑制して、耐発音性を向上できる点から、例えば、20〜80(例えば、25〜70)程度であってもよく、通常、30〜65(例えば、35〜63)、好ましくは40〜60(例えば、45〜55)程度であってもよい。未加硫ゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)のムーニー粘度は、異なるムーニー粘度を有する複数種のゴム成分の混合物であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、ムーニー粘度は、JIS K6300−1(2013)に準じた方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度125℃、予熱時間1分、ロータ作動時間4分である。
内層全体(又はゴム組成物全量)に対するエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は、例えば、20質量%以上(例えば、25〜80質量%程度)、好ましくは35〜75質量%(例えば、40〜70質量%)、さらに好ましくは45〜65質量%(例えば、50〜60質量%)程度であってもよい。
(補強剤(補強性充填剤))
内層を形成するゴム組成物は、補強剤(補強性充填剤)として、カーボンブラック及び/又はシリカを含んでいてもよい。このような補強剤を添加すると、ゴム組成物のVmを高めることができ、補強剤の種類及び添加量によりゴム組成物のVmを調整できる。
カーボンブラックは、ASTMにより「N0**」〜「N9**」に分類(ヨウ素吸着量に基づき分類)され、従来、ゴム製品の性能などに基づいてもSAF、HAF、GPFなどに分類されている。一次粒子径の小さいN110(SAF)、N220(ISAF)、N330(HAF)などはハードカーボンと称され、一次粒子径の大きいN550(FEF)、N660(GPF)、N762(SRF)などはソフトカーボンと称されることもある。
カーボンブラックの平均粒径(平均一次粒子径)は、例えば、5〜200nm(例えば、10〜150nm)、好ましくは15〜120nm(例えば、20〜100nm)、さらに好ましくは25〜100nm(例えば、30〜80nm)程度であってもよい。カーボンブラックの平均粒径が小さすぎると、トルクロスが大きくなる虞があり、大きすぎると、ベルト本体の機械的特性が低下する虞がある。カーボンブラックは単独又は組み合わせて使用できる。
カーボンブラックとしては、少なくとも一次粒子径の小さいカーボンブラック(ハードカーボン)を用い、ゴムに対する補強性、ゴムの硬度や耐摩耗性、並びにベルトの耐久性(高負荷での伝動性)を向上させる場合が多い。カーボンブラック(ハードカーボン)の平均一次粒子径は、例えば、10〜35nm、好ましくは15〜33nm、さらに好ましくは20〜32nm(特に25〜30nm)程度であってもよい。平均一次粒子径が小さすぎるハードカーボンは、調製が困難となる虞があり、平均一次粒子径が大きすぎると、高負荷伝動の向上効果が低下する虞がある。
なお、カーボンブラックは、ベルト屈曲時の発熱を抑えて、トルクロスを低減するため、一次粒子径が40nm以上のソフトカーボンを含んでいてもよい。ソフトカーボンの平均一次粒子径は、例えば、300nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下であってもよい。ソフトカーボンの平均一次粒子径は、例えば、45〜200nm、好ましくは50〜150nm、さらに好ましくは55〜100nm(特に60〜100nm)程度であってもよい。ソフトカーボンの平均一次粒子径が小さすぎると、トルクロスの低減効果が小さくなる虞があり、逆に大きすぎると、補強性が低下し、高負荷伝動が困難となる虞がある。
カーボンブラックのヨウ素吸着量は、例えば、5〜200mg/g(例えば、10〜150mg/g)、好ましくは12〜130mg/g(例えば、20〜100mg/g)程度であってもよい。
なお、ハードカーボンのヨウ素吸着量は、60mg/g以上、例えば、60〜150mg/g、好ましくは65〜130mg/g、さらに好ましくは70〜100mg/g(特に75〜90mg/g)程度であってもよい。ヨウ素吸着量が少なすぎると、高負荷伝動の向上効果が低下する虞があり、多すぎるハードカーボンは、調製が困難となる虞がある。
ソフトカーボンのヨウ素吸着量は、60mg/g未満、例えば、10mg/g以上60mg/g未満、好ましくは15〜50mg/g、さらに好ましくは18〜40mg/g(特に20〜30mg/g)程度であってもよい。ヨウ素吸着量が少なすぎると、カーボンブラックの補強性が低下し、高負荷伝動が困難となる虞があり、逆に多すぎると、トルクロスの低減効果が小さくなる虞がある。
ハードカーボンとソフトカーボンとの質量比は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90(例えば、70/30〜20/80)程度の範囲から選択でき、90/10〜30/70、好ましくは80/20〜40/60程度であってもよい。
シリカには、乾式シリカ、湿式シリカ、表面処理したシリカなどが含まれる。また、シリカは、製法によって、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどにも分類できる。これらのシリカは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリカのうち、表面シラノール基を有するシリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸)が好ましく、表面シラノール基の多い含水ケイ酸はゴム成分との化学的結合力が強い。
シリカの平均粒径(平均一次粒子径)は、例えば、1〜500nm(例えば、3〜300nm)、好ましくは5〜100nm(例えば、10〜50nm)程度であってもよい。シリカの粒径が大きすぎると、ベルト本体の補強性が低下する虞があり、小さすぎると、均一に分散するのが困難となる虞がある。
また、シリカのBET法による窒素吸着比表面積は、例えば、50〜400m/g(例えば、70〜300m/g)、好ましくは100〜250m/g(例えば、150〜200m/g)程度であってもよい。比表面積が大きすぎると、トルクロスが生じやすくなるとともに、均一に分散するのが困難となる虞があり、比表面積が小さすぎると、ゴムに対する補強性が低下する虞がある。
これらの補強性充填剤としては、ゴムの補強剤として市販の充填剤が使用できる。
補強剤(補強性充填剤)の割合は、ゴム組成物のVmに応じて選択でき、内層を形成するゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマーなどの未加硫ゴム)100質量部に対して、30質量部以上(例えば、30〜170質量部)、好ましくは35〜150質量部(例えば、40〜120質量部)、さらに好ましくは45〜100質量部(例えば、50〜100質量部)程度であってもよい。より具体的には、カーボンブラックの割合は、ゴム組成物のVmに応じて選択でき、内層を形成するゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなどの未加硫ゴム)100質量部に対して、30質量部以上(例えば、30〜150質量部)、好ましくは35〜120質量部(例えば、40〜110質量部)、さらに好ましくは45〜100質量部(例えば、50〜80質量部)程度であってもよく、35〜70質量部(例えば、40〜60質量部)程度であってもよい。なお、カーボンブラックの割合が多くなるに従って、ゴム組成物のVmが大きくなる傾向を示す。カーボンブラックの割合が少なすぎると、ベルトの機械的強度が低下する虞があり、逆に多すぎると、均一に分散させるのが困難となる虞がある。
また、シリカの割合は、内層を形成するゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなどの未加硫ゴム)100質量部に対して、0〜50質量部(例えば、1〜30質量部)、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは5〜15質量部(例えば、5〜10質量部)程度であってもよい。補強性充填剤の配合量が多すぎると、トルクロスが大きくなる虞があり、少なすぎると、ゴムの補強性が低下する虞がある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記補強性充填剤(カーボンブラック及びシリカ)の一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡を含む電子顕微鏡写真の画像解析により適当なサンプル数(例えば、50サンプル)の算術平均粒子径として算出できる。また、カーボンブラックのヨウ素吸着量は、ASTM D1510の標準試験法に準拠して測定できる。なお、ヨウ素吸着量と一次粒子径には緊密な関係があり、一次粒子径が小さいほど、ヨウ素吸着量が大きくなる傾向を示す。
(親水性可塑剤)
内層を形成するゴム組成物は、親水性可塑剤(親水化処理剤、界面活性剤)を含んでいてもよい。ゴム組成物(内層)に、親水性可塑剤(又は親水化剤)を含有させると、時間の経過に伴って徐々に摩擦伝動面にブリードアウトするため、布帛の吸水性を高めることができ、耐注水発音性を向上できる。なお、前記特許文献2では、布帛に親水化処理剤(界面活性剤)を付着させて吸水性を高め、耐注水発音性を向上させている。しかし、このような方法では、親水性可塑剤(親水化処理剤、界面活性剤)を布帛に付着させるための処理工程(スプレー、コーティング、浸漬、塗布などの工程及び乾燥工程)が増加し、生産性が低下するだけでなく、布帛に付着した親水性可塑剤(親水化処理剤)が水との接触で比較的容易に流出してしまい、耐注水発音性が短期間内に消失する虞がある。これに対して、ゴム組成物中に親水性可塑剤を含有させると、親水性可塑剤が短期間内に流出することがなく、高い耐注水発音性を長期に亘り持続できる。さらに、ゴム組成物に親水性可塑剤を配合すればよいため、新たな工程を設ける必要がなく、工数を低減して、生産性を向上できる。
さらに、内層を形成するゴム組成物に親水性可塑剤(親水化剤、界面活性剤)を含有させ、布帛の吸水性繊維と親水性可塑剤(親水化剤、界面活性剤)とを組み合わせることにより、摩擦伝動面にブリードアウトした親水性可塑剤が、摩擦伝動面に付着した水滴の表面張力を低下させるため、水滴を広げて摩擦伝動面での濡れ性を高め、吸水性繊維による吸水効率及び耐注水発音性を改善できる。
親水性可塑剤(又は界面活性剤)は、イオン性界面活性剤(アニオン性、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤)、非イオン性界面活性剤などが含まれる。非イオン性活性剤は、例えば、ポリエチレングリコール型(ポリオキシエチレン型)非イオン界面活性剤および多価アルコール型非イオン界面活性剤であってもよい。
ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は、高級アルコール、アルキルフェノール、高級脂肪酸、多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、ポリプロピレングリコールなどの疎水基を有する疎水性ベース成分にエチレンオキシドが付加して親水基が付与された非イオン界面活性剤である。
疎水性ベース成分としての高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、オクタデシルアルコール、アラルキルアルコールなどのC10−30飽和アルコール、オレイルアルコールなどのC10−26不飽和アルコールなどが例示できる。アルキルフェノールとしては、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC4−16アルキルフェノールなどが例示できる。これらの高級アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
疎水性ベース成分の高級脂肪酸としては、飽和脂肪酸[例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸などのC10−30飽和脂肪酸、好ましくはC12−28飽和脂肪酸、さらに好ましくはC14−26飽和脂肪酸、特にC16−22飽和脂肪酸など;ヒドロキシステアリン酸などのオキシカルボン酸など]、不飽和脂肪酸[例えば、オレイン酸、エルカ酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などのC10−30不飽和脂肪酸など]などが例示できる。これらの高級脂肪酸は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
多価アルコール高級脂肪酸エステルは、多価アルコールと前記高級脂肪酸とのエステルであって、未反応のヒドロキシル基を有している。多価アルコールとしては、アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのC2−10アルカンジオールなど)、アルカントリオール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなど)、アルカンテトラオール(ペンタエリスリトール、ジグリセリンなど)、アルカンヘキサオール(ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビット、トリグリセリンなど)、アルカンオクタオール(ショ糖など)、これらのアルキレンオキサイド付加体(C2−4アルキレンオキサイド付加体など)などが例示できる。
以下に、「オキシエチレン」、「エチレンオキサイド」又は「エチレングリコール」を「EO」で表し、「オキシプロピレン」、「プロピレンオキサイド」又は「プロピレングリコール」を「PO」で表すと、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリEO高級アルコールエーテル(ポリEOラウリルエーテル、ポリEOステアリルエーテルなどのポリEOC10−26アルキルエーテル)、ポリEOポリPO高級アルコールエーテル(例えば、ポリEOポリPOC10−26アルキルエーテル);ポリEOオクチルフェニルエーテル、ポリEOノニルフェニルエーテルなどのアルキルフェノール−EO付加体;ポリEOモノラウレート、ポリEOモノオレエート、ポリEOモノステアレートなどの脂肪酸−EO付加体;グリセリンモノ又はジ高級脂肪酸エステル−EO付加体(グリセリンモノ又はジラウレート、グリセリンモノ又はジパルミテート、グリセリンモノ又はジステアレート、グリセリンモノ又はジオレートなどのグリセリンモノ又はジC10−26脂肪酸エステルのEO付加体)、ペンタエリスリトール高級脂肪酸エステル−EO付加体(ペンタエリスリトールジステアレート−EO付加体などのペンタエリスリトールモノ乃至トリC10−26脂肪酸エステル−EO付加体など)、ジペンタエリスリトール高級脂肪酸エステル−EO付加体、ソルビトール高級脂肪酸エステル−EO付加体、ソルビット高級脂肪酸エステル−EO付加体、ポリEOソルビタンモノラウレート、ポリEOソルビタンモノステアレート、ポリEOソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル−EO付加体、ショ糖高級脂肪酸エステル−EO付加体などの多価アルコール脂肪酸エステル−EO付加体;ポリEOラウリルアミノエーテル、ポリEOステアリルアミノエーテルなどの高級アルキルアミン−EO付加体;ポリEO椰子脂肪酸モノエタノールアマイド、ポリEOラウリン酸モノエタノールアマイド、ポリEOステアリン酸モノエタノールアマイド、ポリEOオレイン酸モノエタノールアマイドなどの脂肪酸アミド−EO付加体;ポリEOヒマシ油、ポリEO硬化ヒマシ油などの油脂−EO付加体;ポリPO−EO付加体(ポリEO−ポリPOブロック共重合体など)などが挙げられる。これらのポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
多価アルコール型非イオン界面活性剤は、前記多価アルコール(特に、グリセロール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ショ糖、ソルビトールなどのアルカントリオール乃至アルカンヘキサオール)に高級脂肪酸などの疎水基が結合した非イオン界面活性剤である。多価アルコール型非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンモノステアレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリストールモノステアレート、ペンタエリストールジ牛脂脂肪酸エステルなどのペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトールモノステアレートなどのソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、椰子脂肪酸ジエタノールアマイドなどのアルカノールアミン類の脂肪酸アミド、アルキルポリグリコシドなどが挙げられる。これらの多価アルコール型非イオン界面活性剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、前記ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤と組み合わせて使用してもよい。
なお、イオン性界面活性剤は、スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩など)、硫酸塩(アルキル硫酸塩、ポリEOアルキルエーテル硫酸エステル塩など)、長鎖脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、リン酸エステル(脂肪族リン酸エステル型、芳香族リン酸エステル型、アルキルリン酸塩など)、スルホコハク酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などのカチオン界面活性剤、アルキルベタイン、イミダゾリン誘導体などの両性界面活性剤などであってもよい。
好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、特に、ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤である。そのため、親水性可塑剤(又は界面活性剤)は、少なくとも非イオン性界面活性剤(特に、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤)を含んでいてもよい。
界面活性剤のHLB(Hydrophile-Lipophile-Balance)値は、特に限定されず、5〜15、好ましくは7〜15(例えば、8〜14)、さらに好ましくは10〜14(例えば、11〜13)程度であってもよい。なお、HLB値を調整することにより、圧縮ゴム層からのブリードアウトの程度を調整できる。
さらに、界面活性剤は、特に限定されないが、ゴムの加硫温度よりも高い沸点を有していてもよい。界面活性剤の融点は、室温以下、例えば、−40℃〜20℃(例えば、−35℃〜10℃)、好ましくは−35℃〜5℃(例えば、−30℃〜−5℃)程度であり、通常、0℃以下であってもよい。界面活性剤は、通常、室温(20〜25℃)において液状であってもよい。なお、融点を調整することにより、圧縮ゴム層からのブリードアウトの程度を調整してもよい。
内層を形成するゴム組成物において、親水性可塑剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜20質量部(例えば、1〜15質量部)程度の範囲から選択でき、通常、1.5〜12質量部(例えば、2〜10質量部)、好ましくは2.5〜8質量部(例えば、3〜7質量部)、さらに好ましくは4〜6質量部程度であってもよい。親水性可塑剤の割合が少なすぎると、耐注水発音性を大きく改善できず、多すぎると、ベルトの内周部(摩擦伝動面)の耐久性が低下する虞がある。
なお、特開2015−194239号公報には、摩擦伝動部の表面を被覆する繊維部材が、吸水性繊維を含み、かつ界面活性剤を含有する伝動ベルトが記載され、ベルトの圧縮層が界面活性剤を含んでもよいことが記載されている(段落[0098])。しかし、この文献には、圧縮層に界面活性剤を含有させ、かつ圧縮層の表面を編布で被覆することは具体的に記載されておらず、ゴム組成物が短繊維と界面活性剤とを含む例が比較例として記載されている。
(不飽和カルボン酸金属塩及びポリオレフィン粒子)
内層を形成するゴム組成物は、少なくともポリオレフィン粒子を含んでいてもよく、不飽和カルボン酸金属塩及び/又はポリオレフィン粒子を含んでいてもよい。このような成分(特に、不飽和カルボン酸金属塩及びポリオレフィン粒子の双方の成分)を、内層を形成するゴム組成物に含有させると、布帛の耐摩耗性を向上でき、耐発音性を長期に亘って持続できることを見いだした。このような効果のメカニズムは、明確でなく、一見、圧縮ゴム層の摩擦伝動面が布帛で被覆されているため、布帛の摩耗とゴム組成物の配合処方とは関係がないと思われる。しかし、実際には、ゴム組成物が布帛(編布など)の繊維間に侵入して布帛の繊維を保持(又は繊維と結合)して布帛を強固に固定又は結合しているためか、布帛(編布など)の繊維が圧縮ゴム層の表面から脱落するのを抑制し、耐摩耗性を向上させるものと推測される。特に、吸水性を向上できる親水性繊維(セルロース系繊維など)を含む布帛(編布など)では、親水性繊維が摩耗しやすい。特に、セルロース系繊維は多くの合成繊維と比較して摩耗しやすい。しかし、不飽和カルボン酸金属塩及び/又はポリオレフィン粒子をゴム組成物に含有させることにより、経編などの編布の組織、布帛への樹脂の含浸などを検討しなくても、布帛(編布など)の耐摩耗性を向上できる。
不飽和カルボン酸金属塩の不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、これらのジカルボン酸のモノアルキルエステルなどが例示できる。これらの不飽和カルボン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい不飽和カルボン酸は(メタ)アクリル酸である。不飽和カルボン酸金属塩の金属としては、多価金属、例えば、周期表第2族元素(マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第4族元素(チタン、ジルコニウムなど)、周期表第8族〜第14族元素(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛など)などが例示できる。これらの金属も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属は、周期表第2族元素(マグネシウムなど)、周期表第12族元素(亜鉛など)などである。
好ましい不飽和カルボン酸金属塩としては、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの(メタ)アクリル酸多価金属塩が例示できる。不飽和カルボン酸金属塩も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリオレフィン粒子を形成するオレフィン系樹脂としては、エチレン及び/又はポリプロピレンを主たる単量体とする単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなど)、ポリプロピレン系樹脂(イソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックポリプロピレンなど)、エチレン−プロピレン共重合体(エチレンを主たる単量体とするエチレン−プロピレン共重合体;プロピレンを主たる単量体とするプロピレン−エチレン共重合体)、エチレン及び/又はプロピレンと共重合性単量体(ブテンなどのα−C4−12オレフィン、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル系単量体、塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニル系単量体などから選択された少なくとも一種の単量体)との共重合体などが例示でき、ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いたメタロセン系ポリオレフィンであってもよい。なお、前記共重合性単量体の使用量は、単量体全体に対して、0〜20モル%(例えば、1〜10モル%)程度であってもよい。これらのポリオレフィン粒子は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいポリオレフィン粒子は、耐摩耗性の高いポリエチレン、例えば、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどで形成する場合が多い。
ポリオレフィン粒子の形状は、無定形状、柱状、楕円体状、球状などであってもよく、通常、球状である場合が多い。ポリオレフィン粒子の平均粒子径は、例えば、0.1〜300μm(例えば、1〜250μm)、好ましくは5〜200μm(例えば、10〜170μm)、さらに好ましくは15〜150μm(例えば、20〜120μm)程度であってもよく、50〜250μm(例えば、70〜220μm)、好ましくは80〜200μm(例えば、100〜150μm)程度であってもよい。平均粒子径の異なるポリオレフィン粒子を組み合わせて使用してもよい。なお、ポリオレフィン粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を利用して測定できる。
不飽和カルボン酸金属塩の割合は、内層を形成するゴム成分100質量部に対して、0.5〜30質量部(例えば、1〜25質量部)程度の範囲から選択でき、通常、2〜20質量部(例えば、2.5〜17質量部)、好ましくは3〜15質量部(例えば、4〜12質量部)程度であってもよく、3〜7質量部(例えば、4〜6質量部)程度であってもよい。不飽和カルボン酸金属塩の含有量が少なすぎると、布帛の耐摩耗性をさほど改善できず、多すぎると、不飽和カルボン酸金属塩を含むゴム層の耐久性が低下する虞がある。
なお、上記ゴム成分として不飽和カルボン酸金属塩を含む市販品(ゴムアロイ)を使用してもよく、ゴム成分と不飽和カルボン酸金属塩との質量比は、市販品の不飽和カルボン酸金属塩の含有量を考慮して、市販のゴムと混合して調製してもよい。
ポリオレフィン粒子の割合は、内層を形成するゴム成分100質量部に対して、1〜40質量部(例えば、2〜35質量部)程度の範囲から選択でき、通常、5〜30質量部(例えば、7〜25質量部)、好ましくは7〜20質量部(例えば、8〜15質量部)程度であってもよく、5〜15質量部(例えば、7.5〜12.5質量部)程度であってもよい。ポリオレフィン粒子の含有量が少なすぎると、布帛の耐摩耗性をさほど改善できず、多すぎると、ポリオレフィン粒子を含むゴム層の耐久性が低下する虞がある。
(短繊維)
内層を形成するゴム組成物は、さらに、短繊維を含んでいてもよい。短繊維としては、前記布帛(編布など)で例示の繊維(吸水性繊維及び/又は非吸水性繊維)の短繊維[例えば、綿やレーヨンなどのセルロース系短繊維、ポリエステル系短繊維(PET短繊維など)、ポリアミド短繊維(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド短繊維、アラミド短繊維など)など]が挙げられる。短繊維は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。短繊維の平均繊維長は、例えば、0.1〜30mm(例えば0.2〜20mm)、好ましくは0.3〜15mm、さらに好ましくは0.5〜5mm程度であってもよい。
これらの短繊維は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物(又はエポキシ樹脂)、イソシアネート化合物(ポリイソシアネート)、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)などで表面処理してもよい。
なお、短繊維は、バンバリーミキサーなどで混練したゴム組成物を、ロール又はカレンダーなどで圧延して未加硫ゴムシートを調製する過程で、所定の方向に配向させることができる。
なお、内層に短繊維を含有させると、屈曲性が低下し、トルクロスが増大しやすくなる。そのため、短繊維の含有量は少ないのが好ましい。短繊維の割合は、内層を形成するゴム成分100質量部に対して、少量、例えば、10質量部以下(例えば、0.1〜10質量部程度)であってもよく、内層は短繊維を含まなくてもよい。なお、摩擦伝動面が布帛で被覆されていないVリブドベルトでは、短繊維の含有量が少ないと、ベルトの耐久性や耐発音性が低下することがあるが、本発明では摩擦伝動面が布帛(編布など)で被覆されているため、短繊維の含有量が少量若しくは短繊維を含まなくても、耐久性や耐発音性に優れている。
(加硫剤及び架橋剤)
内層を形成するゴム組成物は、通常、加硫剤及び/又は架橋剤をさらに含んでいる。加硫剤としては、例えば、硫黄、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)などが挙げられる。架橋剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられ、有機過酸化物としては、慣用の成分、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール(1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタンなど)、アルキルパーオキシエステル(t−ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど)、パーオキシカーボネート(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの加硫剤及び架橋剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
加硫剤及び架橋剤の合計割合は、耐久性を向上できる点から、内層を形成するゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)100質量部に対して、例えば、0.2〜10質量部(例えば、0.5〜7質量部)程度の範囲から選択でき、通常、1〜5質量部(例えば、1.5〜4質量部)、好ましくは1.5〜3質量部(例えば、1.5〜2.5質量部)程度であってもよい。加硫剤および架橋剤の割合が多すぎると、ゴム硬度が過度に上昇して耐久性が低下する虞があり、少なすぎると、架橋が十分に進行せず、ゴムの強度やモジュラスが不足して高負荷伝動が困難となる虞がある。
(他の成分)
内層を形成するゴム組成物は、必要に応じて、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。
慣用の添加剤としては、例えば、共架橋剤(エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリストリールテトラメタクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;トリアリル(イソ)シアヌレート;N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド)などのビスマレイミドなど)、加硫助剤、加硫促進剤(チウラム系促進剤など)、加硫促進助剤(ステアリン酸など)、加硫遅延剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、非親水性可塑剤又は軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(芳香族アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は組み合わせて使用できる。
添加剤は、添加剤の種類に応じて選択でき、添加剤の合計割合は、内層を形成するゴム成分(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部(例えば、0.5〜20質量部)、好ましくは1〜15質量部(例えば、1.5〜10質量部)程度であってもよい。
(内層の特性)
内層は、ムーニースコーチ最低粘度Vmが50〜110の範囲に調整されたゴム組成物(温度125℃で測定したとき、Vmが50〜110の未加硫ゴム組成物)で形成されている。前記Vmは、好ましくは60〜100、さらに好ましくは70〜90(特に75〜85)程度であってもよい。このようなゴム組成物で内層を形成すると、布帛の組織を透過してゴムが摩擦伝動面に滲出するのを抑制でき、耐発音性を向上できる。ゴム組成物のVmが高すぎると、ゴム組成物の流動性が低下し、布帛への浸透性が低下して耐摩耗性が低下するとともに、内層の成形性が低下する虞があり、Vmが低すぎると、ゴム組成物の流動性が高いため、ゴム組成物が布帛(編布など)の組織を透過して摩擦伝動面に滲出しやすくなり、摩擦伝動面への滲出を十分に抑制できず、耐発音性が低下する虞がある。
なお、ゴム組成物のVmが高すぎると、摩擦伝動面での布帛との接着性が低下する虞もあるが、高いVmのゴム組成物を用いても、加硫工程において予備的に加圧した後、加熱して加硫成形する方法、加硫成形温度を高くする方法、布帛を処理する方法などにより、接着ゴム層と布帛との高い接着性を確保できる。
内層の厚み(平均厚み)は0.03〜0.5mm(例えば、0.1〜0.5mm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜0.3mm、好ましくは0.1〜0.25mm、さらに好ましくは0.12〜0.2mm(特に0.13〜0.18mm)程度であってもよい。内層の厚み(平均厚み)は、圧縮ゴム層全体の平均厚み(リブ部の頂部での平均厚み)に対して1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、2〜40%(例えば、5〜20%m)、好ましくは3〜30%(例えば4〜20%)、さらに好ましくは5〜15%(特に6〜10%)程度であってもよい。内層の厚みが薄すぎると、耐注水発音性および耐摩耗性がさほど改善しない虞があり、逆に厚すぎると、耐クラック性が低下する虞がある。
[圧縮ゴム層の外層]
圧縮ゴム層は、前記内層に加えて、前記内層よりも外周側の外層(外周ゴム層)を有している。外層は、複数の層で形成されていてもよいが、生産性などの点から、単層(単一層)であるのが好ましい。
外層を形成する未加硫ゴム組成物のゴム成分は、未加硫ゴムのムーニー粘度を除いて、好ましい態様および割合も含め、内層のゴム成分と同様である。外層の未加硫ゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマーなど)のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)は、成形性やベルトの耐久性を向上できる点から、例えば、20〜80(例えば、35〜75)程度であってもよく、通常、40〜75(例えば、45〜73)、好ましくは50〜70(例えば、55〜65)程度であってもよい。
外層を形成するゴム組成物は、補強剤(補強性充填剤)をさらに含んでいてもよい。補強剤は、好ましい態様も含め、内層の補強剤と同様である。ゴム組成物の粘度は、前記ゴム成分の粘度で調整してもよいが、補強剤(特に、カーボンブラック)の割合で調整してもよい。その場合、カーボンブラックの割合は、内層よりも多くてもよく、外層を形成するゴム成分(特に、エチレン−α−オレフィンエラストマー)100質量部に対して30質量部以上、好ましくは40〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部、より好ましくは60〜100質量部程度であってもよい。
外層を形成するゴム組成物は、親水性可塑剤をさらに含んでいてもよい。親水性可塑剤は、好ましい態様および割合も含め、内層の親水性可塑剤と同様である。
外層を形成するゴム組成物は、不飽和カルボン酸金属塩をさらに含んでいてもよい。不飽和カルボン酸金属塩は、好ましい態様および割合も含め、内層の不飽和カルボン酸金属塩と同様である。
外層を形成するゴム組成物は、ポリオレフィン粒子をさらに含んでいてもよい。ポリオレフィン粒子は、好ましい態様および割合も含め、内層のポリオレフィン粒子と同様である。
外層を形成するゴム組成物は、短繊維、加硫剤および架橋剤、他の成分をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、好ましい態様および割合も含め、内層の短繊維、加硫剤および架橋剤、他の成分と同様である。
外層は、ムーニースコーチ最低粘度Vmが70〜130の範囲に調整されたゴム組成物で形成されている。前記Vmは、好ましくは80〜120、さらに好ましくは90〜110(特に95〜105)程度であってもよい。外層を形成するゴム組成物のVmが低すぎると、ベルト強度が低下する虞があり、逆に高すぎるとリブ形状不良が発生する虞がある。
外層を形成するゴム組成物のムーニースコーチ最低粘度Vmは、前記範囲にあればよいが、ベルトの耐久性を向上できる点から、前記内層を形成するゴム組成物のVmは、外層を形成するゴム組成物のVmよりも低いのが好ましい。具体的には、内層を形成するゴム組成物のVmは、外層を形成するゴム組成物のVmよりも、例えば5〜40、好ましくは、10〜30、さらに好ましくは15〜25低いVmであってもよい。このように、Vmが厚み方向に分布した形態の未加硫圧縮ゴム層(未加硫ゴムシート)を用いると、外層のVmを高くしてベルトの強度を高めつつ、内層のVmを(ゴムが布帛を完全に透過してしまわない程度に)低くできる。そのため、ベルトの耐久性を低下させることなく、ゴム組成物が布帛の組織内に浸透しやすくすることができ、布帛と圧縮ゴム層との接着力及び布帛の耐摩耗性を向上できる。
[圧縮ゴム層の特性]
圧縮ゴム層の厚み(リブ部の頂部での平均厚み)は、例えば、1〜10mm(例えば、1.5〜8mm)、好ましくは2〜6mm(例えば、2.5〜6mm)程度であってもよく、1.5〜5mm(例えば、2〜4mm)程度であってもよい。
なお、Vリブドベルトにおいて、リブ部のピッチは、例えば、1〜10mm(例えば、1.2〜8mm)程度の範囲から選択してもよく、1.5〜5mm(例えば、1.6〜4mm)程度であってもよい。
[心線(又は芯体)]
心線(又は芯体)を形成する繊維としては、弾性率の高い繊維、例えば、高強力ポリエチレン繊維、PBO繊維、ポリアリレート繊維、PET繊維、PEN繊維などのポリエステル繊維、アラミド繊維などのポリアミド繊維、炭素繊維などが例示できる。これらの繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、特許文献2には、弾性率の高い繊維を使用するには、成形工程での可撓性ジャケットの膨張率を低く設定する必要があるため、PET繊維などの弾性率の低いポリエステル繊維の心線を使用することが記載されている。このような心線を用いてもVリブドベルトを広い用途で利用できるものの、近年の自動車業界などでは省スペース化や補機の増加などによって、伝動容量の増大が要求されている。そのため、引張弾性率の高い繊維で形成した心線を使用することが重要であるものの、このような心線を用いると、成形及び加硫工程において、可撓性ジャケットの膨張力を利用しても、リブ型を有する外型に対して未加硫ゴム層を含む積層体を十分に押圧できなくなり、ベルトのリブ部の精度が低下する。一方、成形型に対する積層体(未加硫ゴム層を含む積層体)の圧力(例えば、成形体を外型に向かって押圧する膨張圧力)を大きくすると、ゴム組成物が布帛の組織を透過して摩擦伝動面に滲出しやすくなる。そのために、外型に対して積層体を高圧で加圧しても、ゴム組成物が摩擦伝動面に滲出するのを抑制するための対策が必要となる。
本発明は、成形工程で高い圧力で積層体を加圧しても、さらには引張弾性率の高い繊維で形成した心線が埋設されたベルトであっても、ゴム組成物が摩擦伝動面に滲出するのを有効に防止できる。そのため、本発明は、引張弾性率の低い繊維で形成した心線を含むVリブドベルトのみならず、引張弾性率の高い繊維で形成した心線を含むVリブドベルトにも好適に適用できる。
心線を形成する繊維の引張弾性率は、例えば、1〜500GPa(例えば、5〜400GPa)、好ましくは10〜300GPa(例えば、25〜250GPa)程度であってもよいが、本発明は、引張弾性率が、50GPa以上(例えば、60〜500GPa、好ましくは70〜400GPa、さらに好ましくは100〜300GPa)程度であってもよく、60〜150GPa(例えば、65〜120GPa)程度の高弾性率繊維で形成された心線を含むVリブドベルトに有効に適用できる。このような高弾性率繊維には、例えば、アラミド繊維、炭素繊維などが含まれる。
繊維(モノフィラメント糸)の平均繊度は、例えば、0.1〜5dtex、好ましくは0.3〜3dtex、さらに好ましくは0.5〜1dtex程度であってもよい。繊維は、原糸としてのマルチフィラメント糸(例えば、1000〜50000本、好ましくは5000〜20000本程度のモノフィラメント糸を含むマルチフィラメント糸)の形態で使用できる。
心線(又は芯体)は、抗張力を高めるため、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)などの形態で使用できる。心線は、コード、例えば、これらのマルチフィラメント糸を芯糸(無撚糸、好ましくは下撚り糸)とし、所定の方向(例えば、下撚り糸と同じ方向又は逆方向)に上撚りした撚りコード(撚糸)として使用する場合が多い。芯糸の平均直径(平均線径)は、例えば、0.2〜1mm、好ましくは0.3〜0.8mm、さらに好ましくは0.4〜0.7mm程度であってもよく、コード(又は心線)の平均直径(平均線径)は、例えば、0.3〜1.5mm、好ましくは0.5〜1.3mm、さらに好ましくは0.7〜1.2mm程度であってもよい。
ゴム成分との接着性を改善するため、心線には、前記摩擦伝動面の布帛、短繊維と同様に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、RFL処理液、シランカップリング剤などで接着処理を施してもよい。
心線は、通常、ベルト本体の長手方向に埋設され、さらにベルト本体の長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設されていてもよい。心線ピッチは、心線径に応じて、心線径よりも大きければよく、例えば、0.5〜2mm、好ましくは0.7〜1.7mm、さらに好ましくは0.8〜1.5mm程度であってもよい。
[伸張層]
伸張層は、圧縮ゴム層と同様のゴム組成物で形成してもよく、帆布などの布帛(補強布)で形成してもよい。布帛(補強布)としては、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布や、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布や編布などが好ましい。補強布を構成する繊維としては、前記圧縮ゴム層の布帛(編布など)の項で例示した繊維(吸水性繊維、非吸水性繊維など)などを利用できる。
伸張層を形成するゴム(ゴム組成物)としては、前記圧縮ゴム層を形成するゴム組成物と同様のゴム組成物を用いてもよい。このようなゴム組成物において、補強剤又は補強性充填剤(カーボンブラックなど)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30〜150質量部(例えば、40〜120質量部)、好ましくは50〜100質量部(例えば、70〜90質量部)程度であってもよい。伸張ゴム層には、背面駆動において背面ゴムの粘着により発生する異音を抑制するために、前記短繊維を含有させてもよく、短繊維の割合は、例えば、ゴム成分100質量部に対して、5〜30質量部(好ましくは10〜25質量部、さらに好ましくは15〜25質量部)程度であってもよい。短繊維は、ゴム組成物中でランダムに配向させてもよい。
また、伸張層を形成する布帛(補強布)には、前記摩擦伝動面の布帛、短繊維と同様の接着処理を施してもよい。さらに、慣用の接着処理に代えて、又は接着処理した後、補強布とゴム組成物とをカレンダーロールに通して補強布にゴム組成物を刷り込むフリクション処理、補強布にゴム糊を塗布するスプレディング処理、補強布にゴム組成物を積層するコーティング処理などを施してもよい。
さらに、背面駆動において異音を抑制するために、伸張層の表面(ベルトの背面)に凹凸パターン(編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターン、エンボスパターンなど)を設けてもよい。
伸張層の厚みは、例えば、0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。
[接着ゴム層]
圧縮ゴム層と伸張層との間には必ずしも接着ゴム層を介在させる必要はない。接着ゴム層は、例えば、前記圧縮ゴム層と同様のゴム組成物(例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含むゴム組成物)で形成してもよい。接着ゴム層を形成するゴム組成物は、さらに接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)などを含んでいてもよい。
接着ゴム層の厚みは、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度であってもよい。
なお、前記伸張ゴム層及び接着ゴム層のゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮ゴム層のゴム組成物のゴム成分と同系統または同種のゴムを使用する場合が多い。加硫剤または架橋剤、共架橋剤または架橋助剤、加硫促進剤等の添加剤の割合は、それぞれ、前記圧縮ゴム層のゴム組成物と同様の範囲から選択してもよい。
[Vリブドベルトの製造方法]
本発明のVリブドベルトは、慣用の方法で製造できる。例えば、布帛(編布など)と、複数のゴム組成物で構成された未加硫圧縮ゴム層とを少なくとも含む筒状の未加硫積層体の布帛(編布など)を成形型に向けて加圧しつつ、加硫してスリーブ(筒状加硫成形体)を成形し、この加硫スリーブを所定幅にカッティングすることにより、Vリブドベルトを製造できる。好ましい態様では、伸張層(又は未加硫伸張ゴム層)と、心線(芯体)と、複数のゴム組成物で構成された未加硫圧縮ゴム層と、布帛(編布など)とを順次に筒状に積層した筒状の未加硫積層体が使用される。また、筒状の未加硫積層体は、前記のように、必要であれば、未加硫圧縮ゴム層と、伸張層(又は未加硫伸張ゴム層)との間に未加硫接着ゴム層を介在させた積層体であってもよく、このような積層体において、心線(芯体)は所定の部位、例えば、未加硫接着ゴム層に埋設してもよい。より詳細には、例えば、以下の方法で製造できる。
(第1の製造方法)
Vリブドベルトは、中空円筒状外型と、この外型内に同心円状に配置可能な円筒状内型と、前記外型と前記内型との間に配設された筒状の未加硫積層体を、外型に向けて可動又は押圧可能な押圧ユニットとを備えた成形装置を用いて製造できる。すなわち、中空円筒状外型内に同心円状に配置された円筒状内型に、前記布帛を前記外型に向けた形態で、筒状の未加硫積層体を積層して配置し;前記筒状の未加硫積層体を前記外型に向かって加圧して加硫し;加硫した筒状の加硫成形体を脱型して所定の形態に加工することにより製造できる。前記筒状の未加硫積層体は、例えば、圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートと、この未加硫ゴムシートの一方の面に積層又は配された伸張ゴム層用未加硫ゴムシートとを少なくとも含む、ベルト本体を形成するための未加硫ゴム積層シートと;このゴム積層シートの長手方向に埋設した心線と;前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの他方の面に積層又は配された編布とを含む、中空筒状又はスリーブ状の積層体であってもよく、このような積層体を、前記編布を外型のリブ型に向けて配置し、未加硫ゴムシートを加圧して加硫してもよい。
より具体的には、円筒状内型の外周面に膨張収縮可能な可撓性ジャケットを装着し、この可撓性ジャケットに未加硫の伸張層用シートを巻きつけ、このシート上に心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、さらに未加硫の圧縮ゴム層用シートと布帛(編布など)とを巻き付けて筒状の積層体を作製する。前記内型に装着可能な外型として、内周面に複数のリブ型が刻設された中空筒状外型を用い、この外型内に、前記積層体が巻き付けられた内型を、同心円状に設置する。そして、前記可撓性ジャケットを外型の内周面(リブ型)に向かって膨張させて積層体(圧縮ゴム層)をリブ型に圧入し、加硫する。そして、外型から内型を抜き取り、複数のリブ部を有する加硫成形体スリーブを外型から脱型することによりスリーブ状のVリブドベルトを作製できる。なお、必要により、カッターを用いて、スリーブ状のVリブドベルトを、ベルト長手方向に所定の幅でカットすることにより、Vリブドベルトを作製してもよい。
(第2の製造方法)
第1の製造方法に関連して、例えば、特開2004−82702号公報に開示の方法、例えば、布帛および圧縮ゴム層のみを膨張させて予備成形体(半加硫状態)とし、次いで伸張層と心線とを膨張させて前記予備成形体に圧着し、加硫一体化してVリブドベルトに仕上げる方法を採用してもよい。
このような方法(特に、前記第1の製造方法)において、外型に対する未加硫ゴムシート(又は筒状の未加硫積層体)の圧力は、特に制限されないが、引張弾性率の高い繊維の心線を用いる場合には、1.2MPa以上(例えば、1.3〜2MPa、好ましくは1.3〜1.7MPa程度)の圧力(例えば、前記可撓性ジャケットによる膨張圧力)で加圧してもよい。このような圧力で加圧することにより、引張弾性率の高い繊維の心線を用いても、リブ部の形状を精度よく成形できる。さらに、ベルトの少なくとも内周面側でムーニースコーチ最低粘度Vmが50〜110であるゴム組成物を用いることにより、可撓性ジャケットの膨張力を利用して高圧で加圧したとしても、ゴム組成物の摩擦伝動面への滲み出しを抑制でき、耐発音性が低下しない。
なお、複数の未加硫ゴム層で形成された圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートにおいて、前記内周ゴム層を形成する未加硫ゴム層は厚みが薄くてもよい。このような未加硫ゴム層を含む未加硫ゴムシートは、例えば、未加硫ゴムシートをカレンダーロールで圧延して、少なくとも前記内周ゴム層用未加硫ゴム層(内周ゴム層用未加硫ゴム層又はゴムシート)を形成し、カレンダーロール上で外周ゴム層用未加硫ゴムシートと積層して圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを調製してもよい。前記内周ゴム層を形成する未加硫ゴム層単独では厚みが薄いために取り扱い性に劣り、シートに皺などが発生しやすいものの、このような方法を利用すると、カレンダーロールで圧延した薄膜の未加硫ゴムシートを、カレンダーロール上で外周面を形成する未加硫ゴムシートと積層して一体化できるため、内周ゴム層を形成する未加硫ゴム層を均一に積層でき、取り扱い性及び生産性を大きく向上できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」及び「%」は質量基準である。実施例で用いた原料、各物性における測定方法又は評価方法を以下に示す。
[使用材料]
[ゴム組成物]
EPDM1:三井化学(株)製「EPT4045M」、ムーニー粘度(125℃)≒33
EPDM2:三井化学(株)製「EPT3070」、ムーニー粘度(125℃)≒47
EPDM3:三井化学(株)製「EPT3092M」、ムーニー粘度(125℃)≒61
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト3」、平均粒子径28nm,ヨウ素吸着量80mg/g
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
親水性可塑剤1:花王(株)製「エマルゲンLS−106」、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB=12.5、融点−10℃
親水性可塑剤2:ライオン(株)製「レオックスCL−70」、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB=12.3、20℃で液体
不飽和カルボン酸金属塩1:三新化学工業(株)製「サンエステルSK−30」、メタクリル酸亜鉛
不飽和カルボン酸金属塩2:三新化学工業(株)製「サンエステルSK−13」、メタクリル酸マグネシウム
ポリオレフィン粒子1:Ticona社製「GUR4150」、超高分子量ポリエチレン、平均粒子径120μm
ポリオレフィン粒子2:(株)セイシン企業製「SK−PE−20L」、低密度ポリエチレン、平均粒子径20μm
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD−3」、オクチルジフェニルアミン
有機過酸化物:日油(株)製「パークミルD」、ジクミルパーオキサイド
[心線]
心線:1100dtexのアラミド繊維(弾性率70GPa)の束を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りした総繊度6600dtexの撚りコードに接着処理を施した処理コード
[編布(布帛)]
編布基材:吸水性繊維としての綿紡績糸(40番手、1本)と、第2の繊維としてのPTT/PETコンジュゲート糸(繊度84dtex)とを編成し、編組織が緯編(鹿の子、2層)の編布
編布A:上記編布基材を下記イソシアネート処理液に浸漬後、乾燥させた処理編布
編布B:編布Aを下記親水化処理液に浸漬後、乾燥させた処理編布
編布C:上記編布基材を下記RFL処理液に浸漬後、乾燥させた処理編布
[イソシアネート処理液]:熱反応型イソシアネート(第一工業製薬(株)製「エラストロンBN−27」、解離温度180℃、固形分濃度30質量%の水性イソシアネート系架橋剤)を固形分濃度5質量%に水で希釈した水溶液
[親水化処理液]:界面活性剤(花王(株)製「エマルゲンLS−106」)を濃度20質量%に水で希釈した水溶液
[RFL処理液]:レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部、水78.8質量部を含む溶液
[ゴム組成物]
圧縮ゴム層用の未加硫ゴム組成物として、下記表1に示すゴム組成物を用いた。また、伸張ゴム層用の未加硫ゴム組成物として、下記表2に示すゴム組成物を用いた。
Figure 2021071194
Figure 2021071194
[ムーニースコーチ最低粘度(Vm)]
ムーニースコーチ最低粘度は、JIS K6300−1(2013)のムーニースコーチ試験に準じて測定した。ロータはL形を用い、試験温度は125℃とした。なお、試験片(未加硫ゴム組成物)とダイとが接する面の間に、厚さ約0.04mmのポリエステルフィルム(東レ(株)製「ルミラー」)を配置した。ダイを閉じた後1分間予熱し、その後ロータを回転し、ムーニー粘度の推移を記録した。記録したムーニー粘度は、概ね、下記図2に示すような挙動を示し、ムーニー粘度が最低となった時の値をムーニースコーチ最低粘度(Vm)として採用した。
[水に対する接触角]
圧縮ゴム層用ゴム組成物を温度160℃、時間30分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ100mm×幅100mm×厚み2mm)を作製した。加硫ゴムシートの表面と水との接触角θ(水滴の接線と表面とがなす角)は、図3に示すように、表面に水を滴下した水滴の投影写真から、θ/2法を用いて以下の式より求めることができる。
θ=2θ1 …(1)
tanθ1=h/r → θ1=tan−1(h/r) …(2)
(式中、θ1は、表面に対して、水滴の端点(図3では左端点)と頂点とを結ぶ直線の角度であり、hは水滴の高さ、rは水滴の半径を示す。)
式(2)を式(1)に代入して、以下の式(3)が得られる。
θ=2tan−1(h/r) …(3)
接触角の測定は、全自動接触角計(協和界面科学(株)製「CA−W型」)を用いて滴下した水滴の投影写真からrとhとを測定し、式(3)を用いて算出した。投影写真は滴下1秒後のものを用いた。接触角θが小さいほど表面は水との親和性に優れている。
[硬度]
圧縮ゴム層用ゴム組成物を温度160℃、時間30分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ100mm×幅100mm×厚み2mm)を作製した。加硫ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、JIS K6253(2012)に準じ、デュロメータA形硬さ試験機を用いて硬度を測定した。
[DIN摩耗量]
圧縮ゴム層用シートを温度160℃、時間30分でプレス加硫し、加硫ゴムシート(長さ50mm×幅50mm×厚み8mm)を作製した。加硫ゴムシートを内径16.2mmの中空ドリルで加硫ゴムシートの厚み方向から切り抜き、直径16.2±0.2mm、厚み8mmの円柱状の試験片を作製した。摩耗量は、JIS K6264(2005)に準じ、DIN摩耗試験機(回転円筒型摩耗試験機)を用いて測定した。研磨布は研磨布押えによって回転ドラムに取り付け、試験方法は試験片を回転させないで測定するA法とし、試験片の付加力は10Nとした。試験前後における試験片の重量変化を測定し、あらかじめ測定しておいた試験片の比重から摩耗量(摩耗体積)を計算した。
表3にゴム組成物及びゴムの特性を示す。
Figure 2021071194
ゴム組成物R−1〜R−3は、ムーニー粘度の異なるEPDMを用いることでムーニースコーチ最低粘度Vmを調整したゴム組成物である。ゴム組成物R−4及びR−6はカーボンブラックの配合量も変化させ、さらに広い範囲でVmを変化させたゴム組成物である。ゴム組成物R−5は親水性可塑剤を含まないゴム組成物であり、ゴム組成物R−8は不飽和カルボン酸金属塩及びポリオレフィン粒子を含まないゴム組成物である。ゴム組成物R−7は親水性可塑剤、不飽和カルボン酸金属塩、及びポリオレフィン粒子の種類を変更したゴム組成物である。ゴム組成物R−9はポリオレフィン粒子の配合量を変化させたゴム組成物である。
なお、親水性可塑剤を含むゴム組成物が、親水性可塑剤を配合していないゴム組成物R−5と比較して、水に対する接触角が特段小さくなっていないことは意外である。その理由については明確でないものの、下記のベルトの評価結果からすると、布帛との組み合わせにより親水性可塑剤の効果が有効に発現するように思われる。
[ベルトの製造]
円筒状内型の外周面に可撓性ジャケットを装着し、可撓性ジャケットに、伸張ゴム層用未加硫シートを巻きつけ、このシート上に芯体となる心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、圧縮ゴム層用未加硫シートと編布とを巻き付けて積層体を作製した。この筒状積層体を巻き付けた内型を、内周面に複数のリブ型が刻設された筒状外型内に同心円状に設置し、前記可撓性ジャケットを膨張させて圧力1.5MPaで前記積層体をリブ型に圧入し、温度160℃、時間30分で加硫した。そして、外型から内型を抜き取り、複数のリブを有する加硫ゴムスリーブを外型から脱型し、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットし、6PK980のVリブドベルト(リブ数:6個、周長:980mm、ベルト形:K形、ベルト厚み:4.3mm、リブ高さ:約2mm、リブピッチ:3.56mm)を作製した。
なお、圧縮ゴム層用未加硫シートは、前記圧縮ゴム層用ゴム組成物を混練し、カレンダーロールで、所定厚みの内周ゴム層用未加硫シートと、所定厚みの外周ゴム層用未加硫シートとを積層して調製した。なお、圧縮ゴム層を異なる配合の2層構造としない場合は、圧縮ゴム層用シートとして、均一な組成で厚み2.0mmの未加硫ゴムシートを用いた。一方、圧縮ゴム層を異なる配合の2層構造とする場合は、圧縮ゴム層用シートとして、外周ゴム層用の未加硫ゴムシートと、内周ゴム層用の未加硫ゴムシートとをあらかじめ積層(ダブリング)した積層シートを用いた。外周ゴム層用の未加硫ゴムシートの厚みは1.7mmであり、内周ゴム層用の未加硫ゴムシートの厚みは0.3mmであり、外周ゴム層用の未加硫ゴムシートと内周ゴム層用の未加硫ゴムシートとをダブリングした圧縮ゴム層用シートの厚みは2.0mmであった。外周ゴム層と内周ゴム層とに異なる配合を用いたVリブドベルト(加硫後)においては、内周ゴム層の平均厚みは0.15mmに減少していた。また、伸張ゴム層用未加硫シートは、伸張ゴム層用ゴム組成物を混練し、カレンダーロールで所定厚みに形成した。
Vリブドベルトをベルト幅方向と平行に切断して、切断面をマイクロスコープで20倍に拡大して観察した。リブ先端部のベルト幅方向の中央部分における内周ゴム層の厚みを測定した。図4および下記式に示すように、全てのリブにおいて測定した内周ゴム層の厚み(t1〜tn)の算術平均を求め、内周ゴム層の平均厚みとした。
内周ゴム層の平均厚み=(t1+t2+t3+…+tn)/n
(式中、nはリブ数であり、本願実施例の場合は6である)
[耐注水発音性]
図5にレイアウトを示す試験機でベルトを走行させ、耐注水発音性を評価した。試験機は、直径140mmの駆動プーリ(Dr.)、直径60mmのテンションプーリ1(Ten.1)、直径50mmの従動プーリ1(Dn.1)、直径60mmのテンションプーリ2(Ten.2)、および直径111mmの従動プーリ2(Dn.2)を備えていた。駆動プーリの回転数は800±160rpmで変動させた。従動プーリ1の負荷は16N・mとし、従動プーリ2は無負荷とした。ベルト張力は200N/6リブとした。駆動プーリと従動プーリ2の中心の位置で、ベルトの圧縮ゴム層側から断続的に注水を行った。注水は60秒に1回(5秒間)行った。注水量は100cc/秒(500cc/5秒)とした。試験温度(雰囲気温度)は25℃、試験時間は60分とした。試験中の異音の発生の有無を聴覚で確認した。
[耐久走行試験]
図6に示すレイアウトのように、直径55mmの駆動プーリ(Dr.)、直径65mmのアイドラープーリ1(Id.1)、直径55mmのアイドラープーリ2(Id.2)、直径55mmの従動プーリ(Dn.)を順に配した4軸走行試験機を用いて耐久走行試験を行った。4軸走行試験機の各プーリに6PK980のVリブドベルトを掛架し、雰囲気温度を60℃、駆動プーリの回転数を2000rpm、アイドラープーリおよび従動プーリは無負荷とし、ベルト張力を80N/リブとして500時間を上限として走行させた。摩耗率は、耐久走行試験前のVリブドベルトの質量と、耐久走行試験後のVリブドベルトの質量を測定し、次の式で算出した。摩耗率が小さい程、耐摩耗性は良好であるといえる。
摩耗率(%)=[(耐久走行試験前のVリブドベルトの質量−耐久走行試験後のVリブドベルトの質量)/耐久走行試験前のVリブドベルトの質量]×100
[ゴム滲み]
製造したVリブドベルトのリブ面(リブの表面を被覆する編布)を目視で観察し、ゴム組成物の滲みが全くない場合は「○」、少しでもゴム組成物の滲みが確認された場合は「×」と判定した。
[リブ形状]
製造したVリブドベルトのリブ形状を接触型形状測定器((株)ミツトヨ製「CBH−1」)で測定し、リブ高さが1.9mm以上の場合は「○」、リブ高さが1.8mm以上〜1.9mm未満の場合は「△」、リブ高さが1.8mm未満の場合は「×」と判定した。
結果を表4に示す。
Figure 2021071194
なお、実施例3〜4では、圧縮ゴム層を、カレンダー加工により調製した1つの未加硫ゴムシート(厚み2.0mm)で形成した。実施例1〜2、5〜10及び比較例1〜5では、カレンダー加工により調製した所定厚みの内周ゴム層用未加硫ゴムシート及び外周ゴム層用未加硫ゴムシートを用いて圧縮ゴム層を形成した。
実施例3〜4は圧縮ゴム層の内周ゴム層と外周ゴム層を同じゴム組成物で形成しており、実施例1〜2、5〜10及び比較例1〜5は圧縮ゴム層の内周ゴム層と外周ゴム層とを異なるゴム組成物で形成している。
実施例1〜10は、圧縮ゴム層の内周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが一定の範囲にあることから、リブ形状が良好で、ゴム組成物の摩擦伝動面への滲みもなかった。耐注水発音性では30分以上異音が発生せず良好な結果であり、耐久走行試験でも450時間以上の寿命を示した。
これに対して、内周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが最も低い例である比較例1では、ゴム組成物の摩擦伝動面への滲みが発生した。そのため、耐注水発音性が低く、耐久走行試験でもリブ部に亀裂が発生し、耐久性も低かった。内周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが最も高い例である比較例2では、編布との接着性が低下し、耐久走行試験では短時間で寿命となった。
外周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが最も低い例である比較例3では、物性が低下して、耐久走行試験では短時間で寿命となった。外周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが低い例である比較例4でも、物性が低下して、耐久走行試験では短時間で寿命となった。外周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが最も高い例である比較例5では、リブ形状が不良となった。そのため、耐久走行試験ではスリップが大きくなって、短時間で寿命となった。
実施例のなかでは、実施例2が最も諸特性のバランスに優れていた。これに対して、内周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが実施例2よりも低い実施例1では、編布の保持力が低下して耐摩耗性が若干低下した。内周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが実施例2よりも高い実施例3では、編布への浸透性が低下して耐摩耗性が若干低下した。外周ゴム層を形成するゴム組成物のVmが実施例2よりも若干低い実施例4では、物性が低下して、耐久寿命が低下した。
内周ゴム層を形成するゴム組成物が親水性可塑剤を含まない例である実施例5では、耐注水発音性が低下した。内周ゴム層を形成するゴム組成物の可塑剤、不飽和カルボン酸金属塩及びポリオレフィン粒子の種類を変更した実施例6は実施例2と同等であった。内周ゴム層を形成するゴム組成物が不飽和カルボン酸金属塩及びポリオレフィン粒子を含まない実施例7では、耐摩耗性が低下した。内周ゴム層を形成するゴム組成物のポリオレフィン粒子の割合が少ない実施例8でも、耐摩耗性が低下した。内周ゴム層を形成するゴム組成物が親水性可塑剤を含まず、編布に親水性可塑剤を付着させた実施例9では、耐注水発音性が低下した。編布の処理液をイソシアネート処理液からRFL処理液に変更した実施例10では、耐摩耗性が低下した。
本発明のVリブドベルトは、プーリと組み合わせて、種々の分野、例えば、自動車、自動二輪車、雪上車、産業機械、農業機械(大型農業機械を含む)などの動力伝達ベルトとして利用できる。特に、高負荷伝動においても、トルクロスを低減でき、耐久性が高いため、自動車の補機駆動用のVリブドベルトとして特に有用である。
1…Vリブドベルト
2…伸張ゴム層
3…圧縮ゴム層
3a…内周ゴム層
3b…外周ゴム層
4…心線
5…リブ部
6…編布

Claims (12)

  1. 圧縮ゴム層を含むVリブドベルトであって、
    前記圧縮ゴム層の摩擦伝動面が布帛で被覆され、
    前記圧縮ゴム層が、前記布帛と接触する内周ゴム層と、前記内周ゴム層よりも外周側の外周ゴム層とを有し、
    前記内周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度50〜110を有するゴム組成物で形成され、かつ
    前記外周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度70〜130を有するゴム組成物で形成されている、Vリブドベルト。
  2. 前記内周ゴム層が、前記外周ゴム層を形成するゴム組成物よりも低いムーニースコーチ最低粘度を有するゴム組成物で形成されている請求項1記載のVリブドベルト。
  3. 前記内周ゴム層の厚み割合が、前記圧縮ゴム層全体に対して、1〜50%である請求項1又は2記載のVリブドベルト。
  4. 前記内周ゴム層を形成するゴム組成物が親水性可塑剤を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のVリブドベルト。
  5. 前記内周ゴム層を形成するゴム組成物がポリオレフィン粒子を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のVリブドベルト。
  6. 前記布帛にイソシアネート化合物が含浸又は付着されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のVリブドベルト。
  7. さらに、ベルト本体の長手方向に延びる心線を含み、前記心線を構成する繊維の引張弾性率が50GPa以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載のVリブドベルト。
  8. ベルト背面を形成する伸張ゴム層と、前記伸張ゴム層の内周面に積層され、長手方向に延びるリブ部が形成された前記圧縮ゴム層とを少なくとも含むベルト本体と;前記ベルト本体の長手方向に埋設された心線と;前記布帛として、摩擦伝動面としての前記リブ部に積層され、少なくともセルロース繊維を含む編布とを備えており、
    前記内周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度60〜100を有するゴム組成物で形成され、
    前記外周ゴム層が、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度80〜120を有するゴム組成物で形成され、
    前記心線がアラミド繊維及び/又は炭素繊維で形成され、
    前記編布に少なくともブロック型ポリイソシアネート化合物が含浸又は付着している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のVリブドベルト。
  9. 中空円筒状外型内に配置された円筒状内型に、圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートと前記未加硫ゴムシートに積層された布帛を含む未加硫積層体を、前記布帛を前記外型に向けた形態で配置し;
    前記未加硫ゴムシートを少なくとも前記外型に向かって加圧して前記未加硫ゴムシートを加硫し;
    加硫したゴムシートと前記布帛との成形体を脱型して所定の形態のVリブドベルトを製造する方法であって、
    前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを、前記布帛と接触する内周ゴム層用未加硫ゴムシートと、前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートよりも外周側の外周ゴム層用未加硫ゴムシートとで形成し、
    前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートを、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度50〜110を有するゴム組成物で形成し、かつ
    前記外周ゴム層用未加硫ゴムシートを、125℃で測定したとき、ムーニースコーチ最低粘度70〜130を有するゴム組成物で形成する、Vリブドベルトの製造方法。
  10. 1.2MPa以上の圧力で前記未加硫ゴムシートを加圧して加硫する、請求項9記載の製造方法。
  11. 未加硫ゴムシートをカレンダーロールで圧延して、摩擦伝動面を形成する前記内周ゴム層用未加硫ゴムシートを形成し、カレンダーロール上で前記外周ゴム層用未加硫ゴムシートと積層して前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートを調製する、請求項9又は10記載の製造方法。
  12. 前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートと、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの一方の面に積層又は配された伸張ゴム層用未加硫ゴムシートとを少なくとも含む、ベルト本体を形成するための未加硫ゴム積層シートと;前記未加硫ゴム積層シートの長手方向に埋設した心線と;前記布帛として、前記圧縮ゴム層用未加硫ゴムシートの他方の面に積層又は配された編布とを含む、中空筒状又はスリーブ状の前記未加硫積層体を、前記編布を外型のリブ型に向けて配置し、前記内型に装着され、かつ膨張収縮可能な可撓性ジャケットの膨張圧力で、前記未加硫ゴム積層シートを加圧して加硫する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
JP2019238462A 2019-01-28 2019-12-27 Vリブドベルト及びその製造方法 Active JP6778315B1 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US17/426,512 US20220099157A1 (en) 2019-01-28 2020-01-24 V-ribbed belt and method for producing same
PCT/JP2020/002613 WO2020158629A1 (ja) 2019-01-28 2020-01-24 Vリブドベルト及びその製造方法
CN202080010684.7A CN113348070B (zh) 2019-01-28 2020-01-24 多楔带及其制造方法
EP20747836.3A EP3919263B1 (en) 2019-01-28 2020-01-24 V-ribbed belt and method for producing same

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019012559 2019-01-28
JP2019012559 2019-01-28
JP2019194656 2019-10-25
JP2019194656 2019-10-25

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6778315B1 JP6778315B1 (ja) 2020-10-28
JP2021071194A true JP2021071194A (ja) 2021-05-06

Family

ID=72938173

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019238462A Active JP6778315B1 (ja) 2019-01-28 2019-12-27 Vリブドベルト及びその製造方法

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP3919263B1 (ja)
JP (1) JP6778315B1 (ja)
CN (1) CN113348070B (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6652678B1 (ja) 2018-10-12 2020-02-26 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルトおよびその製造方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0353107B2 (ja) * 1986-03-04 1991-08-14 Mitsuboshi Belting Ltd
JPH0712753Y2 (ja) * 1990-09-21 1995-03-29 三ツ星ベルト株式会社 動力伝動用vベルト
JP2007144714A (ja) * 2005-11-25 2007-06-14 Mitsuboshi Belting Ltd Vベルトの製造方法
JP2014209026A (ja) * 2013-03-29 2014-11-06 三ツ星ベルト株式会社 伝動用ベルト
JP2015194239A (ja) * 2013-06-27 2015-11-05 三ツ星ベルト株式会社 伝動ベルトとその繊維部材並びに繊維部材の製造方法
JP2017007283A (ja) * 2015-06-25 2017-01-12 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルトの製造方法
JP2018071035A (ja) * 2016-10-20 2018-05-10 三ツ星ベルト株式会社 諸撚りコード及びその製造方法並びに伝動ベルト及びその使用方法

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2949331B2 (ja) * 1996-05-30 1999-09-13 三ツ星ベルト株式会社 動力伝動用vベルト
JP2000133047A (ja) * 1998-10-22 2000-05-12 Furukawa Electric Co Ltd:The ゴム組成物
JP2000198518A (ja) * 1999-01-07 2000-07-18 Yokohama Rubber Co Ltd:The 破断強度・伸び・耐摩耗性に優れるコンベアベルトカバ―ゴム用ゴム組成物
US6313223B1 (en) * 1999-11-19 2001-11-06 The Goodyear Tire & Rubber Company Rubbery heat resistant composition
JP2002086583A (ja) * 2000-09-12 2002-03-26 Unitta Co Ltd 芯線を有したベルトの製造方法
JP4234954B2 (ja) * 2001-08-13 2009-03-04 バンドー化学株式会社 伝動ベルト及びその製造方法
JP4561046B2 (ja) * 2003-05-23 2010-10-13 横浜ゴム株式会社 コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト
EP3295053B1 (en) * 2015-05-11 2021-03-03 Gates Corporation Cvt belt
JP6720548B2 (ja) * 2016-01-19 2020-07-08 横浜ゴム株式会社 冷媒輸送ホース用ゴム組成物及び冷媒輸送用ホース
US11053381B2 (en) * 2017-04-14 2021-07-06 Exxonmobil Chemical Patents Inc. Elastomeric propylene-ethylene-diene terpolymer compositions

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0353107B2 (ja) * 1986-03-04 1991-08-14 Mitsuboshi Belting Ltd
JPH0712753Y2 (ja) * 1990-09-21 1995-03-29 三ツ星ベルト株式会社 動力伝動用vベルト
JP2007144714A (ja) * 2005-11-25 2007-06-14 Mitsuboshi Belting Ltd Vベルトの製造方法
JP2014209026A (ja) * 2013-03-29 2014-11-06 三ツ星ベルト株式会社 伝動用ベルト
JP2015194239A (ja) * 2013-06-27 2015-11-05 三ツ星ベルト株式会社 伝動ベルトとその繊維部材並びに繊維部材の製造方法
JP2017007283A (ja) * 2015-06-25 2017-01-12 三ツ星ベルト株式会社 摩擦伝動ベルトの製造方法
JP2018071035A (ja) * 2016-10-20 2018-05-10 三ツ星ベルト株式会社 諸撚りコード及びその製造方法並びに伝動ベルト及びその使用方法

Also Published As

Publication number Publication date
CN113348070B (zh) 2023-03-17
EP3919263A4 (en) 2022-11-23
EP3919263A1 (en) 2021-12-08
JP6778315B1 (ja) 2020-10-28
EP3919263B1 (en) 2023-09-06
CN113348070A (zh) 2021-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4745789B2 (ja) Vリブドベルト及びvリブドベルトの製造方法
JP6831943B1 (ja) 摩擦伝動ベルトおよびその製造方法
JP6676741B2 (ja) 摩擦伝動ベルトおよびその製造方法
JP6198354B2 (ja) Vリブドベルト
JP5926543B2 (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
WO2021060536A1 (ja) 摩擦伝動ベルト
JP6778315B1 (ja) Vリブドベルト及びその製造方法
JP6626226B2 (ja) Vリブドベルトおよびその使用方法
JP6746818B1 (ja) Vリブドベルトとその製造方法、およびゴム組成物
WO2020158629A1 (ja) Vリブドベルト及びその製造方法
JP4856375B2 (ja) Vリブドベルト
JP2008157445A (ja) 摩擦伝動ベルト及びその製造方法
CN111712651B (zh) 多楔带及其使用
JP6916356B2 (ja) 摩擦伝動ベルト
JP2007198468A (ja) 摩擦伝動ベルト
JP2006124484A (ja) エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法及び動力伝動ベルト
JP2006275070A (ja) Vリブドベルト
TW202323021A (zh) 齒型皮帶及其製造方法
JP2008157319A (ja) 摩擦伝動ベルト
JP2006282763A (ja) エチレン・α−オレフィンエラストマー組成物と繊維との接着体の製造方法及び動力伝動ベルト

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200430

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200430

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20200430

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20200807

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200818

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200918

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201006

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201009

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6778315

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250