JP4561046B2 - コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト - Google Patents
コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物およびそれを用いるコンベヤベルトに関する。特に、消費電力を低減できるコンベヤベルト用ゴム組成物およびそれを用いるコンベヤベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
ベルトコンベヤは、資材等の輸送によく用いられるが、近年、輸送量の増大、輸送効率の向上等により、大型化および高強力化が要請され、全長が数kmにも及ぶものも少なくない。このため、設備コスト、消費電力が膨らんでおり、低コストおよび低消費電力のベルトコンべヤシステムが求められている。
【0003】
その対策の1つとして、ベルトコンベヤ装置の改良等により、コスト低減および低消費電力化がなされている。例えば、速度制御により省エネルギー化したベルトコンべヤ装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
他には、ベルトを構成するゴム特性の改良により、ベルトコンべヤの低コスト化および低消費電力化も検討されている。例えば、コンベヤベルトのプーリーに接触するベルト内面ゴムの物性ロスファクター(tanδ)および動的弾性率(E′)を、夫々0.04≦tanδ≦0.12、E′≧20kgf/cm2 としたことを特徴とするコンベヤベルトが提案されている(特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、該技術は、tanδを小さくし低消費電力化を目的としたものであるが、tanδをあまりに小さくしすぎると破断強度(TB )および破断伸び(EB )も低下し、引裂き強さおよび耐疲労性に劣る場合があり、高物性のコンベヤベルトが要求されるコンベヤラインに用いることができないという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−206133号公報
【特許文献2】
特開平11−139523号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決する技術として、本出願人は、ゴム成分100質量部に対し、以下に示すコロイダル特性を持つカーボンブラックを30〜65質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物および特定の物性を満足するコンベヤベルト用ゴム組成物を提案した(特願2002−177976号明細書)。
1)窒素吸着比表面積(N2 SA)が80(m2 /g)以下
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm3 /100g)以上
【0008】
上記ゴム組成物を用いたコンベヤベルトは十分な消費電力の低減効果と優れた破断強度等の物性を有するものである。
しかし、近年は輸送距離がより長いベルトコンベヤ装置または輸送物量がより大きいベルトコンベヤ装置が用いられるようになっており、このような装置においては、上記コンベヤベルトを用いても、コンベヤ装置のローラとベルトが接触する際にエネルギーロスが発生し、更なる消費電力の低減効果が求められる場合がある。
【0009】
本発明は、コンベヤベルトとしたときの消費電力をより低減できるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、高破断強度、耐摩耗性等の基本物性を維持し、かつ、コンベヤベルトとしたときの消費電力をより低減できるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、これらのコンベヤベルト用ゴム組成物を用いる、消費電力をより低減できる、または、高破断強度、耐摩耗性等を維持し消費電力をより低減できるコンベヤベルトを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、コンベヤベルトに用いられるゴム組成物が省電力化に与える影響、特にコンベヤベルト用ゴム組成物の消費電力の低減評価に有効と考えられる下記式[1]のモジュラス(M25)に注目して、引き続き鋭意検討した結果、ゴム組成物のゴム成分として結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を含有するブタジエンゴム(SPB−BR)を特定量含有させると、組成物のモジュラスが大きくなる傾向があり下記式[1]の値を小さくでき、かつ、その他の物性にも優れ、コンベヤベルトとしたときの消費電力の低減がより図れることを知見した。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 [1]
式[1]中、SpGr、tanδ、およびM25は、上記した通りである。
【0011】
また、好ましくは、上記組成物に特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックをさらに含有させると、上記式[1]の値をより小さくでき、かつ、特定の物性の調整が容易であることを知見した。
本発明は上記知見を基になされたものである。
【0012】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)を提供する。
(1)(A)天然ゴム(NR)と、結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を3〜20質量%含むブタジエンゴム(SPB−BR)とを含有し、SPB−BRは極細繊維状に分散された樹脂相が重合で形成され、高シスBRと結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を複合化したものであり、NRとSPB−BRとの質量比率(NR/SPB−BR)が80/20〜20/80であるゴム成分100質量部と、
(B)カーボンブラック20〜65質量部とを含有する、コンベヤベルト用ゴム組成物。
【0014】
(2)前記カーボンブラックが、以下に示すコロイダル特性を持つカーボンブラックである上記(1)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
1)窒素吸着比表面積(N2 SA)が80(m2 /g)以下
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm3 /100g)以上
【0015】
(3)25%伸び時における引張応力(モジュラスM25)が、1.10(MPa)以上である、上記(1)または(2)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0016】
(4)周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数tanδが、0.125〜0.180である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0017】
(5)下記式[1]に示すΔHが、0.16以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 [1]
ここで、SpGrは、20℃での比重(g/cm3 )、tanδは、周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数、M25は、25%伸び時における引張応力(MPa)である。
【0018】
(6)下記式[2]に示すΔH(指数)が、0.37以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
ΔH(指数)=(SpGr(指数)×tanδ(指数))/M25(指数) [2]
ここで、「指数」とあるのは、従来のコンベヤベルト用ゴム組成物として用いられている、横浜ゴム社製(JIS S級)のコンベヤベルト用ゴム組成物の各測定値を100とした場合の相対値である。
SpGr、tanδ、M25は上記(5)と同義である。
【0019】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いるコンベヤベルト。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、ベルトコンベヤ装置におけるエネルギーロス、特に、稼動時にコンベヤベルトがベルトコンベヤ装置のローラを乗り越える際に生じるエネルギーロスに注目して、コンベヤベルトに用いられるゴム組成物のモジュラスを規定することにより該エネルギーロスを低減し、ベルトコンベヤ装置全体の消費電力を低減することができるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供することにある。
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(以下、「本発明の組成物」という場合がある)は、特定のブタジエンゴム(SPB−BR)を特定量含有するゴム組成物、好ましくは、特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックをさらに含有するゴム組成物である。
【0021】
本発明の組成物は、(A)天然ゴム(NR)と、結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を3〜20質量%含むブタジエンゴム(SPB−BR)とを含有し、NRとSPB−BRとの質量比率(NR/SPB−BR)が80/20〜20/80であるゴム成分100質量部と、(B)カーボンブラック20〜65質量部とを含有する、コンベヤベルト用ゴム組成物である。好ましくは、上記カーボンブラックが、以下に示すコロイダル特性を持つカーボンブラックである。
1)窒素吸着比表面積(N2 SA)が80(m2 /g)以下
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm3 /100g)以上
【0022】
以下、本発明の組成物について説明する。
ゴム成分(A)は天然ゴム(NR)と、結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を含むブタジエンゴム(SPB−BR)とを含有する。
本発明のゴム成分(A)に用いられる特定のブタジエンゴムは、結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を含むブタジエンゴム(ビニル・シスブタジエンゴムともいう。本明細書において「SPB−BR」という場合がある。)である。
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物の消費電力の低減評価に有効と考えられる上記式[1]のモジュラス(M25)に注目してなされたものであり、ゴムとしてSPB−BRを用いるとゴム組成物としたときのモジュラスを大きくすることができΔHを小さくできる。そのため、該組成物はコンベヤベルトとしたときの省電力化に優れる。また、該ゴムの配合量にかかわらず優れた圧延加工性を維持できる。
【0023】
SPB−BRは、極細繊維状に分散された樹脂相が重合で形成されるため、SPB−BRは樹脂で補強されたBRとしての特徴を有する。本発明で用いるSPB−BRは、高シスBRと結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を複合化したものであれば、特に限定されない。
本発明では、SPB−BRは結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂(SPB)を3〜20質量%含む。この範囲であれば、ゴム組成物(コンベヤベルト)としたときのモジュラスを大きくできΔHを小さくできるため、コンベヤベルトとしたときの省電力化に特に優れる。
【0024】
上記のSPB−BRの製造方法は、特に限定されず、例えば、特公昭49−17666号、特公昭49−17667号、特公昭61−57858号、特公昭62−171号、特公昭63−36324号、特公平2−37927号、特公平2−38081号、特公平3−63566号の各公報等に記載された方法を用いることができる。
また、上記各公報に記載された触媒の他に、例えば、特開平11−49924号公報に記載の各種触媒を用いることができる。
【0025】
SPB−BRは、上記の各方法にしたがって合成することもできるし、市販品を用いることもできる。
市販品としては、例えば、宇部興産(株)製のUBEPOL−VCRシリーズ等が挙げられる。
具体的には、UBEPOL−VCRシリーズとして、VCR412(結晶成分12質量%)、VCR617(結晶成分17質量%)、VCR450(結晶成分3.8質量%)およびVCR800(結晶成分5.3質量%)等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、UBEPOL−VCR412、VCR617が、ゴム組成物としたときのモジュラスを大きくすることができΔHを小さくできるため、コンベヤベルトとしたときの省電力化に特に優れるため好ましい。
【0027】
ゴム成分(A)には、天然ゴム(NR)を含有する。
ここで、天然ゴム(NR)は、シス−1,4−ポリイソプレンが頭尾結合する構造を有するポリマーであり、一般に用いられる天然ゴム(NR)を使用することができる。
【0028】
ゴム成分(A)における、上記NRとSPB−BRとの質量比率(NR/SPB−BR)は、80/20〜20/80である。この範囲であれば、ゴム組成物としたときのモジュラスを大きくすることができΔHを小さくできるためコンベヤベルトとしたときの省電力化に特に優れる。また、該質量比率が20/80超(すなわち、NRとSPB−BRの合計量に対してNRが20質量%未満)であると後述するtanδが大きくなる傾向がある。該質量比率が80/20未満(同様に、NRが80質量%超)であると後述するM25が小さくなる傾向がありΔHおよびΔH(指数)も大きくなる傾向がある。
上記両傾向をバランスよく調整でき、コンベヤベルトとしたときの省電力化が非常に優れる点で、NR/SPB−BRは、好ましくは70/30〜30/70であり、特に好ましくは60/40〜40/60である。
【0029】
本発明のゴム成分(A)には、上記NRとSPB−BRの他に、コンベヤベルトに通常用いられるゴムを含有させることができる。具体的には、例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム(NBR、NIR等)等の未加硫ゴムが挙げられる。これらのゴムの特性、例えば、アクリロニトリル量等は、任意に選択することができる。
これらのゴムの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に選択することができる。
【0030】
カーボンブラック(B)は、一般呼称で分類されるSAF系、ISAF系、HAF系等のゴム用カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックを用いることにより、ゴム組成物の破断強度、耐摩耗性等の基本物性を改善することができる。
カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、20〜65質量部である。この範囲であれば、ゴム組成物の破断強度、耐摩耗性等の基本物性を改善することができる。これらの物性を改善でき、また、消費電力をより低減できる点で、該含有量は、好ましくは25〜55質量部であり、特に好ましくは30〜45質量部である。該含有量が20質量部未満では圧延加工性が劣り引張強度が低下する場合があり、後述するM25が小さくなる傾向がある。該含有量が65質量部超では後述するtanδが大きくなりΔHおよびΔH(指数)も大きくなる傾向がある。また、組成物の粘度が高くなりムーニースコーチが短縮され、ヤケが生じて圧延ができなくなる場合がある。
【0031】
好ましいカーボンブラックとして、以下に示すコロイダル特性を持つカーボンブラックを挙げることができる。
1)窒素吸着比表面積(N2 SA)が80(m2 /g)以下
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm3 /100g)以上
【0032】
これらの3特性を合わせ持つカーボンブラックを用いると、ゴム組成物としたときに後述する特定の物性を容易に所定の値に調整でき、エネルギーロスも小さくなり、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できる。また、高破断強度、耐摩耗性の改善効果が高い。
【0033】
窒素吸着比表面積(N2 SA)は、カーボンブラックの比表面積の尺度と考えられ、この値が80(m2 /g)以下であると上記効果を得ることができる。窒素吸着比表面積(N2 SA)は、上記効果により優れる点で、より好ましくは78以下であり、特に好ましくは75以下である。
なお、窒素吸着比表面積(N2 SA)は、ASTMD3037−89に準拠して測定することができる。
【0034】
ヨウ素吸着量(IA)は、カーボンブラックの比表面積を測定する尺度と考えられ、この値が70(m2 /g)以下であると上記効果を有効に得ることができる。ヨウ素吸着量(IA)は、上記効果により優れる点で、好ましくは68以下であり、特に好ましくは66以下である。
なお、ヨウ素吸着量(IA)は、JIS K 6221に準拠して測定することができる。
【0035】
ジブチルフタレート(DBP)吸油量は、カーボンブラック粒子間のストラクチャーの発達の程度を示す尺度であると考えられ、この値が100(cm3 /100g)以上であると上記効果を有効に得ることができる。ジブチルフタレート(DBP)吸油量は、上記効果により優れる点で、好ましくは103(cm3 /100g)以上であり、特に好ましくは130(cm3 /100g)以上である。
なお、ジブチルフタレート(DBP)吸油量は、JIS K 6221に準拠して測定する。
【0036】
上記コロイダル特性を満たすカーボンブラックとしては、市販品を使用することができ、例えば、ショウブラックN330T、ショウブラックN335、ショウブラックN351、ショウブラックMAF、ショウブラックN550(以上、昭和キャボット(株)製)、旭♯60HMAF、旭♯60FEF(共に、旭カーボン(株)製)等が挙げられる。
これらの中でも、ショウブラック系カーボンブラックが好ましく、ショウブラックN335およびショウブラックN330Tが特に好ましい。
【0037】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上記成分(A)および(B)の他に、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤等の架橋剤、加硫遅延剤を含有し、さらに、本発明の目的を損わない範囲で、配合剤、ポリマー等を含有させてもよい。
加硫剤としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0038】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等;グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン等;チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、エチレンチオウレア等;チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等;チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等;ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等がそれぞれ挙げられる。
【0039】
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
【0040】
上記加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤の含量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのが特に好ましい。0.1質量部未満では、加硫が不十分でゴム組成物が柔らかく、後述するΔHが大きくなる場合があり、10質量部を超えると、3次元架橋密度が高くなるためEB が小さくゴムの特性(伸縮性等)を損いコンベヤベルトの材料として適さない場合がある。
【0041】
また、本発明の組成物には、加硫遅延剤を含有することもできる。
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等の有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体等のニトロソ化合物;トリクロルメラニン等のハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI等が挙げられる。
加硫遅延剤の含量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜0.3質量部であるのが好ましく、0.1〜0.2質量部であるのが好ましい。0.1質量部未満では、加硫遅延効果が小さく圧延時のヤケを引き起こす場合があり、0.3質量部超では、加硫速度の低下により生産性の低下が懸念される場合がある。
【0042】
添加剤、配合剤としては、例えば、補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー(充填剤)、加工助剤等が挙げられる。
これらの添加剤、配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0043】
本発明の組成物の製造は、上記成分(A)、(B)、および、通常用いられる各種添加剤等を加え、バンバリーミキサー等で混練し、ついで、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を加え混練ロール機等で混練して行うことができる。
【0044】
本発明の組成物は、通常行われる条件で、加硫することができる。具体的には、温度140〜150℃程度、0.5時間の条件下、加熱することにより行われる。
【0045】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、コンベヤベルトとしたときに消費電力を低減でき、ベルトコンベア装置の省電力化が図れる。
また、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物に特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックを配合すると、コンベヤベルトとしたときに消費電力を低減でき、かつ、高破断強度、耐摩耗性を維持できる。
特に、輸送距離が長いベルトコンベヤ装置または輸送物量がより大きいベルトコンベヤ装置に用いるコンベヤベルトとして、より優れた省電力化と高破断強度等の性能を発揮する。
なお、本発明のコンベヤベルトは、上記装置に用いると優れた性能を発揮するが、これらの装置以外の装置(例えば、従来の輸送距離が短い装置等)においても、使用できることは言うまでもなく、また、省電力化と高破断強度等の性能を発揮できる。
【0046】
本発明の組成物は、上記特定のブタジエンゴムを含有することにより、本発明の目的を達成でき、該ゴムの配合量にかかわらず優れた圧延加工性を維持できる。本発明の組成物は、好ましくは、さらに特定のコロイダル特性を有するカーボンブラックを含有する。
【0047】
本発明の組成物は、上記各成分を含有するが、後述する特定の物性を満たすことにより、さらに、コンベヤベルトとしたときの消費電力の低減が可能になり好ましい。
ここで、「特定の物性」とは、ゴム組成物が加硫硬化した後の物性であって、具体的には、モジュラスM25、損失係数tanδ、ΔH、ΔH(指数)およびこれらの組み合わせであり、本発明の組成物はこれらの特定の物性値が後述する範囲を満たすことを特徴とする。
以下、これらの特定の物性について説明する。
【0048】
本発明の組成物の特定の物性の1つは、25%伸び時における引張応力(モジュラス、本発明において「M25」という。)であり、M25が1.10(MPa)以上であるのが好ましい。
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物の消費電力の低減評価に有効と考えられる下記式[1]のM25に注目してなされたものであり、他の物性等にも影響されるが、一般的にM25が1.10(MPa)以上であれば、下記式[1]のΔHを小さくできるためコンベヤベルトとしたときの省電力化に特に優れる。
M25は、好ましくは1.10(MPa)以上であり、より好ましくは1.15(MPa)以上であり、特に好ましくは1.20(MPa)以上である。
【0049】
M25は、ベルト剛性としての硬度の代用特性と考えることができゴム組成物の撓みの大小に影響する。すなわち、M25が大きいとベルトとしたときの撓みが小さくなり消費電力低減効果が得られる。
ここで、M25はJIS K 6251に記載の方法に準拠して測定できる。
【0050】
本発明の組成物の特定の物性の1つは、周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数tanδであり、tanδが、0.125〜0.180であるのが好ましい。
損失係数tanδは、ゴム組成物の動的性質を表す貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”との比、tanδ=E”/E’で表され、この値が小さいほどゴム組成物の変形の間に熱として散逸されるエネルギー量(エネルギーロス量)が小さいことを意味し、エネルギーロスの尺度として用いることができる。
【0051】
一方、tanδが小さいと低消費電力化が可能になると考えられるが、tanδをあまりに小さくしすぎると破断強度(TB )および破断伸び(EB )も低下し、引裂き強さおよび耐疲労性に劣る場合がある。したがって、本発明では、低消費電力化と上記破断強度、破断伸び等の基本物性とを両立し、高物性のコンベヤベルトが要求されるコンベヤラインにも用いることができるようにtanδを特定の範囲にするのが好ましい。
つまり、本発明の組成物のtanδは、上記観点から、好ましくは0.125〜0.180であり、より好ましくは0.130〜0.180であり、特に好ましくは0.135〜0.175である。
【0052】
M25およびtanδは上記した性質を有し上記範囲にあることが好ましいが、後述するΔHまたはΔH(指数)を満たすものであれば、M25およびtanδは上記の範囲になくても消費電力を十分低減できる。特に、M25が1.10未満であっても、または、tanδが0.180超であっても、ΔHまたはΔH(指数)を満せば消費電力を十分に低減できると共に、基本物性の低下を抑えることができる。
なお、本発明において、上記基本物性は、例えば、破断強度(TB )、破断伸び(EB )および引裂き強さ(TrA)で評価する。
【0053】
本発明の組成物の特定の物性の1つは、下記式[1]に示すΔHであり、ΔHが0.16以下であるのが好ましい。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 [1]
ここで、SpGrは、20℃での比重(g/cm3 )を表し、tanδは、周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数を表し、M25は、25%伸び時における引張応力(MPa)を表す。
【0054】
上記式[1]は、従来タイヤの分野で用いられている路面との摩擦低減効率の目安となる式であるが、コンベヤベルト用ゴム組成物の消費電力の低減評価においても有効と考えられる。
コンベヤベルトのエネルギーロスにおいて、SpGrが小さいと、総質量の低減が可能になることから小負荷の場合と同等の低消費電力効果が得られる。tanδは、上記したように、ローラ乗り越え時のゴム組成物の変形によるエネルギーロスに影響する。tanδを特定の値にすることにより低消費電力効果が得られる。またM25は、上記したようにベルト剛性としての硬度の代用特性と考えることができゴム組成物の撓みの大小に影響し、値が大きいと撓みが小さくなり低消費電力効果が得られる。
したがって、SpGrとtanδの積をM25で除することにより、ゴム組成物がローラを乗り越える時のエネルギーロスを、これらの物性に基づいて総合的に判断でき、上記式[1]のΔHをコンベヤベルト用ゴム組成物に適用することにより、ゴム組成物をコンベヤベルトとしたときの消費電力の評価に有効である。
【0055】
上記ΔHは小さいほど、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できる。ベルトコンベヤ装置のエネルギーロスの要因は複数考えられるが、本発明は稼動時にコンベヤベルトがローラを乗り越える時のエネルギーロスに注目し低消費電力化を達成するものである。
【0056】
本発明の組成物では、ΔHは、好ましくは0.16以下である。この範囲であれば、ベルトとしての基本物性等を満足させつつ、エネルギーロス低減を達成できると考えられ、ローラ乗り越え時のゴム組成物のエネルギーロスを小さくでき、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できる。上記効果により優れる点で、ΔHは、より好ましくは0.15以下であり、特に好ましくは、0.14以下である。
【0057】
上記式[1]において、SpGr、tanδおよびM25を、従来コンベヤベルト用ゴム組成物として用いられている、横浜ゴム社製(JIS S級)のコンベヤベルト用ゴム組成物の各測定値を100とした場合の相対値で表した、SpGr(指数)、tanδ(指数)およびM25(指数)で規定する下記式[2]を用いると、該コンベヤベルトとの比較がより容易となり消費電力の評価に特に有効である。
ΔH(指数)=(SpGr(指数)×tanδ(指数))/M25(指数) [2]
なお、上記式[2]は上記従来品と比較した指数を用いているが、上記式[2]、および、それに用いる各物性の技術的意義等は、上記式[1]と同様である。
【0058】
ΔH(指数)は、上記式[2]で0.37以下であれば、消費電力の低減効果が大きいといえる。
ΔH(指数)は、従来コンベヤベルト用ゴム組成物として用いられている、横浜ゴム社製(JIS S級)のコンベヤベルト用ゴム組成物を基準にしており、本発明の組成物は大幅な消費電力の低減が可能となる。
本発明では、ΔH(指数)は、好ましくは0.35以下である。この範囲であれば、他のエネルギーロスの要因にかかわらず、上記式[1]と同様に、ローラ乗り越え時のゴム組成物のエネルギーロスを小さくでき、コンベヤベルトとしたときの消費電力も大幅に低減できる。上記効果により優れる点で、ΔH(指数)は、より好ましくは0.33以下である。
【0059】
例えば、後述する実施例1は、ΔH(指数)が0.30であり消費電力の大幅な低減が可能と考えられる。その割合は、比較例1(ΔH(指数)が1.00)に対して約70%程度である。ただし、実際のベルトコンベヤ装置においては、本発明で想定していないエネルギーロス、例えば、装置起動時におけるエネルギーロス、さらには、ローラ数、基長、揚程(高低差)等により、約70%まで消費電力を低減することはできない場合もあると考えられる。
しかし、ベルトコンベヤ装置においては、ローラ乗り越え時のゴム組成物のエネルギーロスがベルトコンベヤ装置全体のエネルギーロスに特に大きく影響すると考えられるため、損失係数tanδ、比重および引張応力の、エネルギーロスに関与すると考えられる物性を用いて規定されるΔHおよびΔH(指数)は、コンベヤベルト用ゴム組成物としてのエネルギーロス量を評価するには、非常に有効である。
【0060】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、M25、tanδ、ΔHおよびΔH(指数)のいずれかが上記値をとれば、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できるが、これらの物性から選択される2種以上の物性が上記値をとるのが好ましい。
具体的には、M25とΔHまたはM25とΔH(指数)が上記値を満たすと、基本物性等と低消費電力化とを高い水準で両立できる。
【0061】
本発明においては、ゴム組成物が上記特定の物性を満たせば、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できるが、ローラ乗り越え時におけるエネルギーロスは、ゴム組成物の硬さにも影響する。
そこで、本発明では、上記特定の物性を満たし、かつ、コンベヤベルト用ゴム組成物の硬度(JIS A)が、50以上であるのが好ましく、55以上が特に好ましい。この範囲であれば、ローラ乗り越え時におけるエネルギーロスを低減できる。
【0062】
本発明は、また、上記コンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトを提供する。ローラと接触する少なくとも裏側表面のゴム(図1において、外層16)に上記コンベヤベルト用ゴム組成物を用いるのが好ましい。
本発明のコンベヤベルトは、少なくとも上記裏側表面のゴムに上記本発明の組成物を用いるコンベヤベルトであれば、その構造等は特に限定されない。
以下、上記本発明の組成物を用いたコンベヤベルトの一例を示して説明する。
【0063】
図1は、本発明のコンベヤベルトの一実施形態を模式的に示した断面図である。図1において、1はコンベヤベルト、2はカバーゴム層、3は芯体補強層、4は裏カバーゴム層、5は運搬物搬送面、11および16は外層、12および15は内層である。
図1に示したように、本発明のコンベヤベルト1は、芯体補強層3を中心層とし、その両側にカバーゴム層2と裏カバーゴム層4が設けられており、カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、裏カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。カバーゴム層2および裏カバーゴム層4の外層と内層(外層11と内層12、外層16と内層15)は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されているのが好ましい。
【0064】
図1において、カバーゴム層2は、外層11と内層12の2層から構成されているが、本発明において、カバーゴム層2を構成する層の数は、2に限定されず、1でもよく、3以上であってもよい。そして、3以上の場合にも、これらの層は、互いに異なるゴム組成物を用いて形成されてもよい。
また、裏カバーゴム層4も同様である。
カバーゴム層2の運搬物搬送面5を構成する外層11は、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等に優れたゴム組成物から形成されるのが好ましく、したがって、カバーゴム層2は2層から構成されるのが好ましい。
裏カバーゴム層4の裏側表面(ローラと接触する面)を構成する外層16は、上記したように、消費電力を低減するため、上記本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物から形成され、裏カバーゴム層4の内層15は、製造コスト削減等により他のゴム組成物から形成されるのが好ましく、したがって、カバーゴム層4は2層から構成されるのが好ましい。
【0065】
芯体補強層3の芯体としては、特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、例えば、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられる。
芯体は、単独で用いてもよいし、2種以上のものを積層して用いてもよい。
芯体補強層3の形状も特に限定されず、図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0066】
上記カバーゴム層2の内層12および裏カバーゴム4の内層15を形成するゴム組成物としては、特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を適宜選択して用いることができる。
該ゴム組成物は、単独で用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0067】
上記カバーゴム層2の外層11を形成するゴム組成物としては、特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を、該内層に要求される基本特性(例えば、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等)に応じて適宜選択して用いることができる。
【0068】
本発明のコンベヤベルトの製造方法としては、特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。
例えば、まず、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等を用いて原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を芯体補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、150〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が挙げられる。
【0069】
本発明のコンベヤベルトは、少なくとも裏カバーゴムの外層に上記本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いるため、消費電力の低減、または、高破断強度、耐摩耗性等を維持したまま消費電力の低減ができる。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜14および比較例1〜5)
第1表に示す組成で配合(質量部)して、コンベヤベルト用ゴム組成物を調製した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
得られたコンベヤベルト用ゴム組成物について、ムーニー粘度、ムーニースコーチタイム(ML5up)を測定し圧延加工性を評価した。得られた未加硫のゴム組成物をシート状に成形し、148℃、30分加熱加硫し、得られた加硫シートを試験片とし、損失係数(tanδ)、比重(SpGr)、引張応力(M25)、破断強度(TB )、破断伸び(EB )および引裂き強さ(TrA)を測定し、また、下記式[1]および[2]によりΔHおよびΔH(指数)を算出した。その結果を第2表に示す。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 [1]
ΔH(指数)=(SpGr(指数)×tanδ(指数))/M25(指数))[2]
【0074】
<損失係数(tanδ)>
東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いて、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与え測定した。
【0075】
<比重(SpGr)>
比重の測定は、JIS K 6268に記載の方法に準拠して行った。
<引張応力(M25)>
引張応力M25は、JIS K 6251に記載の方法に準拠して、25%伸び時における引張応力(MPa)を測定した(測定温度23℃)。
<ΔH>
上記測定値から、上記式[1]により、ΔHを求めた。
【0076】
<ΔH(指数)>
比較例1で得られた組成物の各測定値(SpGr、tanδ、M25)に対する、実施例1〜14および比較例2〜5の各測定値の相対値を計算した。
その後、上記式[2]により、ΔH(指数)を求めた。
【0077】
<ブランク引張試験>
JIS K 6251に記載の方法に準拠して、破断強度(TB )、破断伸び(EB )を測定した。
【0078】
<引裂き強さTrA>
JIS K 6252に記載の方法に準拠して、引裂き強さ(TrA)を測定した。
【0079】
<圧延加工性>
下記の方法でムーニー粘度、ムーニースコーチタイムを測定し、これらの値から、ロールによるシート状成形加工のし易さを順に「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に記載の方法に準拠して、L型ローターを用い、測定温度125℃の測定条件で、ローターのシャフトにかかるトルクを測定しムーニー単位で記録しムーニー粘度とした。
粘度−時間曲線を作り、この曲線における最低値を、最低ムーニー粘度とした。
(2)ムーニースコーチタイム(ML5up)
(1)に記載の測定条件で、ローターを回転させ、最低ムーニー粘度よりムーニー粘度が5ムーニー単位だけ上昇するまでに経過した時間(分)を測定した。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
第2表から分かるように、実施例1〜14のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、M25を大きくできるため、ΔHおよびΔH(指数)が小さくなり、これらのゴム組成物を用いて作製するコンベヤベルトは、消費電力の低減に有効であることが分かる。すなわち、実際のベルトコンベヤにおいても十分な消費電力の低減が可能であると考えられる。
比較例2および3に記載のゴム組成物は、ΔHおよびΔH(指数)は小さいが圧延加工性に劣る。
また、実施例1〜14のゴム組成物は、TB 、EB 、HS 、TrA、ムーニー粘度、ムーニースコーチ等の基本物性も、比較例のゴム組成物と大きな相違はなく、またゴム成分の配合量にかかわらず圧延加工性も良好で、高破断強度、耐摩耗性を維持できゴム組成物としての基本的な物性を保持したまま、消費電力の低減ができる。
【0083】
実施例および比較例では、以下のゴム、添加剤等を用いた。
天然ゴムはTECK BEE HANG製;
SPB−BR1は宇部興産(株)製、UBEPOL−VCR412;
SPB−BR2は宇部興産(株)製、UBEPOL−VCR617;
OE−SBR(オイル添加(油展)SBR)は日本ゼオン(株)社製、Nipol1712、スチレン含量23.5%;
E−SBR(乳化重合SBR)は日本ゼオン(株)社製、Nipol1502、スチレン含量23.5%;
BRは日本ゼオン(株)社製、Nipol BR 1220;
カーボンブラック1は昭和キャボット(株)製、ショウブラックN335;
カーボンブラック2は昭和キャボット(株)製、ショウブラックN220;
イオウは軽井沢精練所製、油処理硫黄;
加硫促進剤はノクセラーNS−P、大内新興化学社製;
亜鉛華は正同化学工業社製、亜鉛華3号;
クレーは、ケンタッキーテネシークレーカンパニー社製、ALUMNUM SILICATE;
アロマオイルは昭和シェル社製、マシン油22;を用いた。
【0084】
実施例および比較例に用いたカーボンブラック1(ショウブラックN335)のコロイダル特性は、窒素吸着比表面積(N2 SA)が78(m2 /g)、ヨウ素吸着量(IA)が66(mg/g)、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が133(cm3 /100g)であった。
同様に、カーボンブラック2(ショウブラックN220)のコロイダル特性は、窒素吸着比表面積(N2 SA)が101(m2 /g)、ヨウ素吸着量(IA)が118(mg/g)、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が114(cm3 /100g)であった。
【0085】
上記実施例6のコンベヤベルト用ゴム組成物を裏カバーゴム層の外層(図1において外層16)に用いて、ベルトにしたときの消費電力を評価した。
<コンベヤベルトの作製>
バンバリーミキサーにより混合したゴム組成物を、押出し圧延機によりカバーゴムの圧延を実施した。それらを最外層に用い、芯体部に補強材としてスチールコードを含むクッションゴムを用い、その上下面にカバーゴムを配置した未加硫ゴム積層体を大型プレスにより加硫することにより、コンベヤベルトを得た。
該コンベヤベルトの大きさは、巾90cm、長さ800m、厚さ1.6cmであった。
【0086】
同様にして、横浜ゴム製 JIS S級カバー(基準:JIS S級)のコンベヤベルト用ゴム組成物(比較例1のゴム組成物)を裏カバーゴム層の外層に用いたコンベヤベルトを作製した。
【0087】
上記で得られたコンベヤベルトを用いて、稼動速度140m/minで、通常使用されているベルトコンベヤ装置により、消費電力量の測定をそれぞれ行った。
その結果、実施例6のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトの消費電力量は、上記比較例1のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトの消費電力量に対する相対値で約75であり、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いるコンベヤベルトは消費電力の低減が実現できることが実証できた。
上記測定は全長の長いベルトコンベヤ装置を用いているため該装置の揚程(高低差)等により消費電力に関わる割合も変化すると考えられることから、上記測定結果と本発明のΔH(指数)値とが一致しなかったが、ΔH(指数)値が小さい本発明の組成物を用いたコンベヤベルトは実際の使用条件下においても消費電力量が小さく、上記測定結果とΔH(指数)が同様の傾向を有することが確認され、さらに、ΔHおよびΔH(指数)がコンベヤベルトの消費電力の低減を評価するのに非常に有効であることが示された。
【0088】
【発明の効果】
本発明により、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供できる。
また、本発明により、高破断強度、耐摩耗性等の基本物性を維持し、かつ、コンベヤベルトとしたときの消費電力を低減できるコンベヤベルト用ゴム組成物を提供できる。
さらに、本発明により、これらのコンベヤベルト用ゴム組成物を用いる、消費電力を低減できる、または、高破断強度、耐摩耗性等を維持し消費電力を低減できるコンベヤベルトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のコンベヤベルトの一実施形態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
1:コンベヤベルト
2:カバーゴム層
3:芯体補強層
4:裏カバーゴム層
5:運搬物搬送面
11、16:外層
12、15:内層
Claims (4)
- (A)天然ゴム(NR)と、結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を3〜20質量%含むブタジエンゴム(SPB−BR)とを含有し、SPB−BRは極細繊維状に分散された樹脂相が重合で形成され、高シスBRと結晶性シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂を複合化したものであり、NRとSPB−BRとの質量比率(NR/SPB−BR)が80/20〜20/80であるゴム成分100質量部と、
(B)1)窒素吸着比表面積(N 2 SA)が80(m 2 /g)以下、
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下、および、
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm 3 /100g)以上であるカーボンブラック20〜65質量部とを含有する、
25%伸び時における引張応力(モジュラスM 25 )が、1.10(MPa)以上であるコンベヤベルト用ゴム組成物。 - 周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数tanδが、0.125〜0.180である、請求項1に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
- 下記式〔1〕に示すΔHが、0.16以下である、請求項1または2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 〔1〕
ここで、SpGrは、20℃での比重(g/cm3)、tanδは、周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数、M25は、25%伸び時における引張応力(MPa)である。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いるコンベヤベルト。
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