JP6254704B2 - コンベヤベルト、コンベヤベルトの製造方法、及び、ゴム組成物 - Google Patents
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Description
一般的に高い強度が求められるような用途においては、ゴム製のコンベヤベルトが採用されており、このゴム製のコンベヤベルトとしては、厚み方向中央部に芯体を備え、この芯体を表裏両面から覆うカバーゴム層が備えられたものが広く採用されている。
このコンベヤベルトのカバーゴム層を構成するゴム組成物としては、強度や耐摩耗性などに優れることから、天然ゴムやポリブタジエンゴム等のジエン系ゴムをベースゴムとしたものが知られている(下記特許文献1、2参照)。
また、上記のようなベルトコンベヤは、通常、駆動プーリと従動プーリとの間でコンベヤベルトを裏面側から支持するための複数の支持ローラを備えている。
コンベヤベルトは、運転時に駆動プーリや従動プーリによって大きな曲げが加えられるばかりでなく、駆動プーリと従動プーリとの間に配された支持ローラ上を通過する際にも裏面側(非搬送側)に僅かな屈曲、伸長、圧縮などの変形が生じる。
そして、このカバーゴム層は、ベルト長手方向に延在する形でコンベヤベルトに備えられているため、ベルトコンベヤの運転時には、当然ながらコンベヤベルト全体と同様に変形が生じることになる。
一般的なコンベヤベルトは、ベルトコンベヤの運転時において、駆動力や摩擦力によってベルト長手方向に張力が発生する。また、一般的なコンベヤベルトは、ベルトコンベヤの運転時において、搬送物を搭載して支持ローラ上を通過する際に圧縮応力などが加わる。
特に、近年、ベルトコンベヤの長距離化・高速化が進んでいることから、コンベヤベルトに発生するエネルギーロスの内、コンベヤベルトが支持ローラ上を乗り越える際に生じるエネルギーロスの割合が増大している。
支持ローラに接触する裏面側のカバーゴムは、弾性率が比較的高く、且つ動的粘弾性における損失係数(Tanδ)の低いゴム組成物によって形成される方が、屈曲、伸長、圧縮といった変形を受けた際のエネルギーロスを抑制させる観点から好ましい。
即ち、コンベヤベルトに省エネルギー性を発揮させるには、少なくとも裏面側カバーゴム層の弾性率を比較的高くして、且つ損失係数の低いゴム組成物で裏面側カバーゴム層を形成させることが有効である。
但し、特許文献1、2のように、カバーゴムの損失係数(Tanδ)を小さくすると、前記支持ローラの上を通過する際のエネルギーロスが低減され、コンベヤベルト駆動時の消費電力が低減されるもののカバーゴムの耐引裂性、耐摩耗性などの耐久性が低くなる傾向がある。
このように、従来のコンベヤベルトは、省エネルギー性と耐久性とを両立できないという問題を有している。
従って、本発明によれば、省エネルギー性及び耐久性に優れたコンベヤベルトが提供され得る。
なお、以下においては、本発明のゴム組成物がコンベヤベルト用ゴム組成物で、該ゴム組成物をカバーゴムの形成に利用する場合を例にして本発明の実施の形態を説明する。
まず、添付図面に基づき、本実施形態のコンベヤベルトが用いられてなるベルトコンベヤについて説明する。
本実施形態のベルトコンベヤ1においては、搬送路の長手方向一端側(積載側)と他端側(荷下ろし側)とに配されたプーリ20の間に前記コンベヤベルト10が掛け渡されている。
なお、前記コンベヤベルト10が掛け渡されている一対のプーリ20の内の荷下ろし側のプーリ20は、駆動源に接続された駆動プーリ21である。積載側に配されたプーリ20は前記駆動プーリ21によって無端状のコンベヤベルト10が周回されることで共回りする従動プーリ22となっている。
また、複数の前記復路側支持ローラ30bは、復路におけるコンベヤベルト10を略一定傾斜で支持しうるように、その回転軸を互いに平行に配しつつ上端部の垂直位置が図1において右下がりとなるように前記ベルトコンベヤ1に備えられている。
そして、本実施形態におけるコンベヤベルト10は、図2に示すように、搬送物Aが載置されるコンベヤベルト10の表面側(外周側)を形成するカバーゴム11(以下「表面側カバーゴム11a」ともいう)と、前記搬送物Aが載置される表面とは逆側の裏面を構成するカバーゴム11(以下「裏面側カバーゴム11b」ともいう)との2層のカバーゴム11を備えている。本実施形態におけるコンベヤベルト10は、この2層のカバーゴム11の内側に、芯体層12が形成されている。該芯体層12は、コンベヤベルトに抗張力を付与するための芯体帆布が2層のカバーゴム11の内側に埋設されて形成されている。
即ち、前記表面側カバーゴム11a及び前記裏面側カバーゴム11bは、ベルト長手方向に沿って延在するゴム層を形成するもので、該ベルト長手方向において略一定厚みとなるよう形成されている。
即ち、搬送物Aの重量が往路側支持ローラ30aによって支持されていない状況においては、この搬送物Aの重量に相当する張力がコンベヤベルト10に加わることになる。
そして、本実施形態のベルトコンベヤは、搬送物Aが往路側支持ローラ30aに接近するに従って、コンベヤベルト10が持ち上げられた状態となり、搬送物Aが往路側支持ローラ30aを通過した後は往路側支持ローラ30aから離れるに従ってコンベヤベルト10が再び下方に撓んだ状態となる。
このようにして本実施形態のコンベヤベルト10は、往路において複数回の屈曲を受ける。
本実施形態のベルトコンベヤ1は、図2に示すように、コンベヤベルト10が往路側支持ローラ30aによって支持される箇所において、ベルト幅方向に複数の往路側支持ローラ30aを配置している。
そして、本実施形態のベルトコンベヤ1は、この複数の往路側支持ローラ30aによってコンベヤベルト10の幅方向両端部を中央部よりも持ち上げた状態とし、コンベヤベルト10を樋状にして搬送物Aがコンベヤベルト10の側方から落下することを防止している。
即ち、本実施形態のコンベヤベルト10は、平坦な状態で従動プーリ22を通過した後に樋状に曲げられ、駆動プーリ21に巻き掛けられる前に再び平坦な状態へと戻される。
また、コンベヤベルト10は、駆動プーリ21や従動プーリ22を通過する際においてこれらによって大きな曲げが加えられる。
さらに、本実施形態のコンベヤベルト10は、搬送物Aが往路側支持ローラ30aの上を通過する際に、搬送物Aの質量によって往路側支持ローラ30aと搬送物Aとによって圧縮応力等が加えられる。
本実施形態のコンベヤベルトは、以下に例示の裏面側カバーゴム11bと同様のゴム組成物で前記表面側カバーゴム11aを形成させることができる。
なお、前記表面側カバーゴム11a及び前記裏面側カバーゴム11bは、同じゴム組成物によって形成される必要はなく、それぞれが別のゴム組成物によって形成されていても良い。
また、本実施形態の前記ゴム組成物は、シランカップリング剤として、スルフィド系シランカップリング剤、及び、アミノ系シランカップリング剤を含んでいる。
前記ゴム組成物は、特に、損失係数(Tanδ)と引裂強度等との両立を図る観点から、前記ポリブタジエンゴムや前記スチレン−ブタジエンゴムとして、フィラー(充填剤)と結合可能な官能基を分子中(主鎖末端など)に備えさせた変性品を含有させることが好ましい。
前記ゴム組成物は、ゴム成分に占める割合が50質量%以上80質量%以下となる割合で天然ゴムを含有していることが好ましい。
従って、前記ゴム組成物は、ポリブタジエンゴムやスチレン−ブタジエンゴムの変性品及び/又は非変性品を含有させる場合、全てのポリブタジエンゴムと全てのスチレン−ブタジエンゴムとの合計がゴム成分において20質量%以上50質量%以下となるように含有させることが好ましい。
ただし、本実施形態においては、カーボンブラック及びシリカ以外の充填剤を過度にゴム組成物に含有させるのは好ましいことではない。
従って、ゴム組成物に含有される充填剤は、80質量%以上がカーボンブラック及びシリカであることが好ましく、90質量%以上がカーボンブラック及びシリカであることがより好ましく、95質量%以上がカーボンブラック及びシリカであることが特に好ましい。
この凝集塊は、カバーゴムに大きな変形が生じた際に崩壊し、せん断弾性率が低下することから、カバーゴムのヒステリシスロスを大きくさせてしまう要因となり得る。
このようなことから本実施形態においては、一般にカーボンブラックよりも補強効果の点において劣る傾向があるもののシランカップリング剤等によって凝集塊を形成させ難くすることができるシリカをゴム組成物に含有させている。
具体的には、ゴム組成物に含有されるシリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。
また、カーボンブラックとシリカとの合計に占めるシリカの割合は、25質量%以上75質量%以下であることが好ましい。
より具体的には、本実施形態のゴム組成物は、含有するカーボンブラックの内の80質量%以上がGPFやSRFであることが好ましく、90質量%以上がGPFやSRFであることがより好ましく、95質量%以上がGPFやSRFであることが特に好ましい。
該シリカは、乾式法によって製造されたものよりも湿式法によって製造されたものの方が好ましく、湿式法の中でもゲル法によって製造されたものよりも沈降法によって製造されたものが好ましい。
より具体的には、本実施形態のゴム組成物に含有させるシリカは、10nm〜50nmの大きさの1次粒子が集合して2次粒子を形成しているものが好ましく、1μm〜40μmの平均粒子径を有するものが好ましい。本実施形態においては20m2/g〜400m2/gのBET比表面積を有するシリカが好ましい。
このようなシリカの凝集塊もカーボンブラックの凝集塊と同様にゴム組成物の損失係数を悪化させるおそれがある。
そのため、本実施形態のゴム組成物には、当該ゴム組成物中のシリカの分散性を向上させる目的で、アミノ系シランカップリング剤とスルフィド系シランカップリング剤とを含有させている。
なお、アミノ系シランカップリング剤及びスルフィド系シランカップリング剤は、それぞれ1種単独でゴム組成物に含有させる必要はなく、それぞれ2種以上のものをゴム組成物に含有させても良い。
本実施形態のゴム組成物に含有させるアミノ系シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
なお、本実施形態のゴム組成物は、アミノ系シランカップリング剤の添加の影響がゴム組成物の粘弾性などに過度に発現することを防止し、ゴム練りなどの作業を良好にさせる上において、アミノ系シランカップリング剤とともにアルキルアミンを併用することが好ましい。該アルキルアミンは、炭素数6以上20以下のアルキル基を有し、該アルキル基を1つ有するモノアルキルアミンか、又は、前記アルキル基を2つ有するジアルキルアミンかの何れかであることが好ましい。該アルキルアミンは、オクチルアミンやドデシルアミンなどのモノアルキルアミンであることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物に含有させるスルフィド系シランカップリング剤としては、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
従って、ゴム組成物に含まれる全ての成分を含む配合物は、混練時に前記シリカや前記カーボンブラックによる凝集塊が形成されても前記アミノ系シランカップリング剤や前記アルキルアミンを含んでいるため前記凝集塊にせん断力が加わり易い。
即ち、ゴム組成物は、前記アミノ系シランカップリング剤や前記アルキルアミンを含むことで前記シリカや前記カーボンブラックによる凝集塊の存在割合が低減される。
一方、これらの配合物を混練する作業は、前記アミノ系シランカップリング剤や前記アルキルアミンを過度に配合すると、一様な混練物を得るまでの時間が長期化するなどして効率が低下する場合がある。
このことから前記シリカ100質量部に対する前記アミノ系シランカップリング剤の含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが特に好ましい。
前記シリカ100質量部に対する前記アミノ系シランカップリング剤の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましい。
前記シリカ100質量部に対する前記アルキルアミンの含有量は、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。
3 ≦ Xa ≦ 10 ・・・(1)
1 ≦ Xb ≦ 7 ・・・(2)
4 ≦(Xa+Xb)≦ 14 ・・・(3)
なお、後述するように、ゴム組成物を損失係数の低いものとする上においては、シリカは、アミノ系シランカップリング剤によってカップリング処理が施された後にスルフィド系シランカップリング剤でカップリング処理が施されることが好ましい。
言い換えると、アミノ系シランカップリング剤でのカップリング処理をスルフィド系シランカップリング剤でのカップリング処理に先行して実施するのが好ましいのは、アミノ系シランカップリング剤でシリカをカップリング処理する場合においてもカップリング剤で覆われた凝集塊が形成される点においては共通するが、この凝集塊が混練などによりせん断を受けることで解砕され易くなるためであると考えられる。なお、解砕されて表面の少なくとも一部分がカップリング処理された個々の粒子となったシリカは、通常、スルフィド系シランカップリング剤によるカップリング処理が施されることで、再凝集が抑制され、分散性がより一層良好なものになる。
該添加物としては、例えば、硫黄、有機過酸化物といった加硫剤;アルデヒド・アンモニア系化合物、グアニジン系化合物、チオウレア系化合物、チアゾール系化合物、スルフェンアミド系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバミン酸塩系化合物などの加硫促進剤;有機酸、ニトロソ化合物、ハロゲン化物、2−メルカプトベンツイミダゾール、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等の加硫遅延剤;アミノ・ケトン系化合物、芳香族アミン系化合物、モノフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物などの老化防止剤;脂肪酸エステル系化合物などの加工助剤;難燃剤、顔料などが挙げられる。
本実施形態においては、芯体として帆布などが例示されるが、芯体は、帆布である必要はなく、スチールコードなどであってもよい。
ベルト長手方向に沿って延在するカバーゴム層を備え、該カバーゴム層として表面側カバーゴム層と裏面側カバーゴム層とを備えた本実施形態のコンベヤベルトの製造方法としては、前記ゴム組成物を作製する第1工程、及び、前記表面側カバーゴム層及び前記裏面側カバーゴム層の内、少なくとも前記裏面側カバーゴム層を第1工程で作製されたゴム組成物によって形成する第2工程を実施する方法が挙げられる。
そして、前記第1工程では、ジエン系ゴム、カーボンブラック、シリカ、及び、シランカップリング剤を含み、前記シランカップリング剤としてスルフィド系シランカップリング剤、及び、アミノ系シランカップリング剤を含むゴム組成物を一般的な方法で調製すればよい。
前記ゴム組成物は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等を用いて全ての成分を含んだ配合物を混練することで作製できる。コンベヤベルトは、カレンダー等を用いてゴム組成物をシート状に成形してカバーゴム用未加硫シートを作製し、該未加硫シートと帆布とを一体化させて加硫することによって製造することができる。
従って、前記未加硫ゴムシートを作製するためのゴム練りにおいては、アミノ系シランカップリング剤によって予めカップリング処理されたシリカを用い、当該ゴム練りに際してスルフィド系シランカップリング剤を添加するようにさせるか、或いは、シランカップリング剤の添加を2回に分けて実施することが好ましい。
なお、ここで「成分が不足している」とは、「成分を含むもののその割合が少ない」という場合だけでなく「成分を全く含んでいない」という場合をも意味している。
そして、前記第1混練においては、スルフィド系シランカップリング剤を前記第1配合物に実質的に含有させないことが好ましい。
従って、ゴム組成物の混練は、シリカとシランカップリング剤とを反応させる意味においては加温状態(例えば、100℃以上)で実施することが好ましい。
その一方で、加温状態でゴム組成物の混練を実施すると、ゴムの二重結合が過度に切断されてしまったり、加硫が進行してしまったりして所望の物性をカバーゴムに発揮させるのが難しくなるおそれを有する。
特に加硫剤を含んだ状態でのゴム組成物の混練は、100℃未満で実施することが好ましく、80℃未満で実施することが好ましい。
従って、ゴム組成物の作製に際しては、加硫剤やスルフィド系シランカップリング剤を実質的に含有させずアミノ系シランカップリング剤を含有させた第1配合物を100℃以上の温度で混練する工程と、該工程後に混練物を100℃未満の温度に冷却する工程と、該工程後にスルフィド系シランカップリング剤を加えて100℃以上の温度で混練する工程と、該工程後に混練物を100℃未満の温度に冷却する工程と、該工程後に加硫剤を含有させて100℃未満の温度で混練する工程とを少なくとも実施することが好ましい。
従って、ベルトコンベヤは、本実施形態のコンベヤベルトが備えられることにより省エネルギー性および耐久性に優れたものになる。
しかし、本発明の効果は、使用時に長手方向での屈曲しか加わらないようなコンベヤベルトにおいても発揮される。
また、図1、2などに示したコンベヤベルトよりも幅方向での大きな屈曲が行われ、本発明の効果が特に顕著に発揮される事例として図3、4に示すような場合が挙げられる。
図3、4に示したコンベヤベルト10は、無端状となって駆動プーリ21と従動プーリ22との間に掛け渡されている点では図1、2に示したコンベヤベルトに共通している。
また、図3、4に示したコンベヤベルト10は、往路側支持ローラ30aや復路側支持ローラ30bを乗り越える際に歪みを受ける点においても図1、2に示したコンベヤベルトに共通している。
そして、図3、4に示したコンベヤベルト10は、表面側カバーゴム11aと裏面側カバーゴム11bとの間に芯体層(図示せず)が形成されている点においても図1、2に示したコンベヤベルトに共通している。
一方で、図3、4に示したコンベヤベルト10は、搬送物Aを搬送する区間においてコンベヤベルト10が筒状に丸められた状態で用いられる。
即ち、図3、4に示したコンベヤベルト10は、積載側で搬送物Aが表面側カバーゴム11aの上面に載置された後、往路側支持ローラ30aによって幅方向両端部が持ち上げられ、さらにこの持ち上げられた両端部どうしが裏面側が上向きになるように引き寄せられて両端部どうしが重ね合せられて筒状とされ、荷下ろしまでの間、この筒状の状態が保持される。
なかでも、搬送物Aの一部が表面側カバーゴム11aの表面に付着した場合でも、これを復路にて落下させないようにするために、復路においても復路側支持ローラ30bによってコンベヤベルト10が筒状とされるタイプのベルトコンベヤ1においては、本発明の効果が特に顕著なものとなって発揮される。
このように、本発明の効果は、図1、2に示した態様以外の各種のコンベヤベルトにおいて発揮されるものである。
例えば、ベルト両側縁に沿って立設された耳桟を有するコンベヤベルトなどにおいては、当該耳桟を本実施形態のゴム組成物によって形成させることで走行時におけるエネルギーロスの低減を図ることができる。
また、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、裏面側カバーゴム層だけでなく、表面側カバーゴム層や芯体層にも適用することができ、コンベヤベルトにおけるその他の部位の形成にも有用なものである。
さらに、本実施形態のゴム組成物は、丸ベルトや平ベルトなどの伝動ベルトの形成材料としても有用である。
また、本実施形態のゴム組成物は、コンベヤベルトや伝動ベルトなどのベルト用ゴム組成物として有用であるばかりでなく、省エネルギー性と耐久性との両立が求められる各種用途において利用可能である。
なお、以下に示す事例の内、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「実施例6」、「実施例10」、「実施例11」、及び、「実施例12」については「参考例」である。
(実施例1)
天然ゴム(NR)(商品名:SVRCV60 DAU TIENG RUBBERCORPORATION製)とポリブタジエンゴム(BR)(商品名:VCR−412 宇都興産製)を60/40(NR/BR)の比率にてバンバリーミキサー(商品名:ミクストロンBB180 神戸製鋼製)にて混練し、そこへ充填剤としてカーボンブラック(GPF)(商品名:シーストV 東海カーボン製)12質量部(「質量部」は、ゴム100質量部に対する割合。以下において同じ。)とシリカ(沈降法シリカ)(商品名:Ultrasil VN3 エボニックデグサジャパン製)30質量部を投入した後、アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)(商品名:dynasilaneAMEOエボニックデグサジャパン製)を1.3質量部、オクチルアミン(商品名:ファーミン08D 花王製)を0.7質量部添加し、150℃にて反応させたのち、スルフィド系シランカップリング剤(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)(商品名:Si69 エボニックデグサジャパン製)3質量部を加え、140℃で反応させた。
最後に加工助剤として、ステアリン酸(商品名:ビーズステアリン酸 つばき サンユインダストリアル製、(加工助剤1))、及び、酸化亜鉛三種(商品名:亜鉛華3号A 三井金属鉱業製、(加工助剤2))、老化防止剤(商品名:ノクラック6C、ノクラック224、サンノック、及び、ノクラックAW−N 大内新興化学製)、加硫促進剤(品番:ノクセラーNS−F 大内新興化学製)、加硫遅延剤(商品名:MIRAD PVI 小倉サンダイン株式会社製)を投入しバンバリーミキサーにて混練した。
混練後のゴムは、シート押出機(商品名:TSR 神戸製鋼製)にてシート状にした後、ミルブレンダーにて加硫剤(硫黄)(商品名:セイミOT ゴム工業資材製)を投入し、所定の厚みの未加硫ゴムシートを得た。
試験はJISK 6251(2004)「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準拠した。試験片はJIS3号ダンベル状試験片とし、厚さ2.0mmとした。
試験機として、株式会社上島製作所製引張試験機TS−1552(商品名)を使用した。試験はJISK 6252(2001)「加硫ゴム及び可塑性ゴム・引裂強さの求め方」に準拠した。
試験片はクレセント形試験片とし、厚さ2.0mmとした。
引裂き力(TR)は以下の式によって求めた。
TR=F/t
TR: 引裂き力[N/mm]
F: 最大引裂力[N]
t: 試験片の厚さ[mm]
JIS K 6253に規定のタイプAデュロメータによって常温(23℃)での硬さ(瞬時値)を測定した。
試験機として、アルファテクノロジーズ社製「RPA2000」を使用した。試験条件は、周波数0.5Hz、温度40℃とし、せん断歪0.28%、60%時におけるせん断弾性率をそれぞれ測定し、それらの比によりせん断弾性率の保持率(%)を求めた。
試験片は、JISK6300−2(2001)「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠して、厚さ12.5mmのシートから直径30mmの円盤を打ち抜いて作製した。
試験機として、株式会社レオロジー製「FT−レオスペクトラDVE−V4」を使用した。試験条件は、周波数10Hz,温度0℃、20℃,サンプル厚さ1.0mm,サンプル長さ8.00mm、サンプル幅3mmとした。損失係数tanδの測定値は、サンプル長さに対して5%伸長させた状態で、振幅±2%の歪みを与えて測定した。
表1に示した配合によってゴム組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にゴム組成物を作製し、実施例1と同様に加硫ゴムシートについての評価を行った。
なお、実施例5においては、エボニックデグサジャパン製のスルフィド系シランカップリング剤(品番:Si69)にて予めシリカ(品番:Ultrasil VN3)に対して表面処理を実施したシリカ(品番:Coupsil 8113 エボニックデグサジャパン製 Si69/VN3=13/87)を用いたため、実施例1においてスルフィド系シランカップリング剤を混練する工程に該当する部分を割愛してゴム組成物を作製した。
また、比較例においては、実施例1でアミノ系シランカップリング剤を加えるタイミングでスルフィド系シランカップリング剤を加えてゴム組成物を作製した。
なお、実施例2、比較例2では、ポリブタジエンゴム(BR)に代えてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)(品番:NS616 日本ゼオン製)を用いゴム組成物を作製した。
これらの評価結果についても、実施例1と同様に表1に示す。
(基準試料の作製:実施例6)
天然ゴム(NR)(商品名:SVRCV60 DAU TIENG RUBBERCORPORATION製)とポリブタジエンゴム(BR)(商品名:VCR−412 宇都興産製)を60/40(NR/BR)の比率にてバンバリーミキサー(商品名:ミクストロンBB180 神戸製鋼製)にて混練し、そこへ充填剤としてカーボンブラック(GPF)(品番:シーストV 東海カーボン製)12質量部(「質量部」は、ゴム100質量部に対する割合。以下において同じ。)とシリカ(沈降法シリカ)(品番:Ultrasil VN3 エボニックデグサジャパン製)30質量部を投入した後、アミノ系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)(商品名:dynasilaneAMEOエボニックデグサジャパン製)を2.5質量部添加し、150℃にて反応させたのち、スルフィド系シランカップリング剤(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)(品番:Si69 エボニックデグサジャパン製)3質量部を加え、140℃で反応させた。
最後に加工助剤として、ステアリン酸(商品名:ビーズステアリン酸 つばき サンユインダストリアル製、(加工助剤1))、及び、酸化亜鉛三種(品番:亜鉛華3号A 三井金属鉱業製、(加工助剤2))、老化防止剤(商品名:ノクラック6C、ノクラック224、サンノック、及び、ノクラックAW−N 大内新興化学製)、加硫促進剤(商品名:ノクセラーNS−F 大内新興化学製)、加硫遅延剤(商品名:MIRAD PVI 小倉サンダイン株式会社製)を投入しバンバリーミキサーにて混練した。
混練後のゴムは、シート押出機(商品名:TSR 神戸製鋼製)にてシート状にした後、ミルブレンダーにて加硫剤(硫黄)(商品名:セイミOT ゴム工業資材製)を投入し、所定の厚みの未加硫ゴムシートを得た。
そして、加硫剤を分散させたシートの厚み及び幅を調整し、当該調整が完了して所望の厚みと幅とを有する未加硫ゴムシートが得られるまでの時間を「圧延時間(T2)」として計測した。
ここで得られた「せん断弾性率保持率(%)」の値は、フィラーの分散性を表す指標となるものである。
そこで、この基準試料の「せん断弾性率保持率(%)」の値を「分散指数(D1)」として設定した。
さらに、ここで得られた「損失係数(tanδ)」の値は、省エネルギー性を表す指標となるものである。
そこで、この基準試料の「損失係数(tanδ)」の値を「省エネルギー指数(S1)」として設定した。
次いで、表2に示す配合内容で、基準試料(実施例6)とは異なる配合内容で比較試料となるゴムシートを作製した。
そして、この比較試料の作製における「混練時間(Tx)」及び「圧延時間(Ty)」を計測した。
基準試料の「混練時間(T1)」をこの比較試料の「混練時間(Tx)」で除して得られた百分率の値[100%×(T1/Tx)]を「混練時加工性」を判定する指標とした。
また、基準試料の「圧延時間(T2)」を比較試料の「圧延時間(Ty)」で除して得られた百分率の値[100%×(T2/Ty)]を「圧延時加工性」を判定する指標とした。
なお、両指標は、比較試料が作業性に優れ、「混練時間(Tx)」や「圧延時間(Ty)」が短いほど値が高くなるよう設定した。
この比較試料の「分散指数(Dx)」を基準試料の「分散指数(D1)」で除して得られた百分率の値[100%×(Dx/D1)]を「フィラー分散性」を判定する指標とした。
また、基準試料の「省エネルギー指数(S1)」を比較試料の「省エネルギー指数(Sx)」で除して得られた百分率の値[100%×(S1/Sx)]を「省エネルギー性」を判定する指標とした。
ここで、「分散指数」は、「省エネルギー指数」、「混練時間」及び「圧延時間」とは異なり値が高いほうが良好な結果が得られていることになる。
そこで、「分散指数」だけは比較試料の結果を基準試料の結果で割る形にした。
即ち、「フィラー分散性」及び「省エネルギー性」の両方の指標は、「混練時加工性」や「圧延時加工性」と同様に良好な結果が得られている程、値が高くなるように設定した。
これらの結果を表2に示す。
また、上記結果からは、シリカに対してアミノ系シランカップリング処理を施した後にスルフィド系シランカップリング剤でカップリング処理を施した方が好ましい結果が得られることがわかる。
Claims (7)
- ベルト長手方向に沿って延在するカバーゴム層として表面側カバーゴム層と裏面側カバーゴム層とを備えたコンベヤベルトであって、
少なくとも前記裏面側カバーゴム層を構成するゴム組成物は、ジエン系ゴム、カーボンブラック、シリカ、及び、シランカップリング剤を含み、
前記シランカップリング剤としてスルフィド系シランカップリング剤、及び、アミノ系シランカップリング剤を含み、
前記ゴム組成物は、アルキルアミンをさらに含み、
該アルキルアミンが、炭素数6以上20以下のアルキル基を有し、該アルキル基を1つ有するモノアルキルアミンか、又は、前記アルキル基を2つ有するジアルキルアミンかの何れかであり、且つ、
前記ゴム組成物は、シリカの含有量100質量部に対する前記アミノ系シランカップリング剤の含有量をXa質量部とし、シリカの含有量100質量部に対する前記アルキルアミンの含有量をXb質量部とした際に、下記式(1)〜(3)の全てを満たすコンベヤベルト。
3 ≦ Xa ≦ 10 ・・・(1)
1 ≦ Xb ≦ 7 ・・・(2)
4 ≦(Xa+Xb)≦ 14 ・・・(3)
- 前記ゴム組成物が含有するゴム成分には、前記ジエン系ゴムとして天然ゴムが含有され、該ゴム成分にはポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの内の一方又は両方が前記ジエン系ゴムとしてさらに含有されており、該ゴム成分に占める前記天然ゴムの割合が50質量%以上80質量%以下で、前記ポリブタジエンゴムと前記スチレン−ブタジエンゴムとの合計量の前記ゴム成分に占める割合が20質量%以上50質量%以下である請求項1記載のコンベヤベルト。
- 前記アルキルアミンが、前記モノアルキルアミンである請求項1又は2記載のコンベヤベルト。
- ベルト長手方向に沿って延在するカバーゴム層として表面側カバーゴム層と裏面側カバーゴム層とを備えたコンベヤベルトを作製するコンベヤベルト製造方法であって、
ジエン系ゴム、カーボンブラック、シリカ、及び、シランカップリング剤を含み、前記シランカップリング剤としてスルフィド系シランカップリング剤、及び、アミノ系シランカップリング剤を含むゴム組成物を作製する第1工程、
前記表面側カバーゴム層及び前記裏面側カバーゴム層の内、少なくとも前記裏面側カバーゴム層を第1工程で作製されたゴム組成物によって形成する第2工程を実施し、
前記第1工程で作製する前記ゴム組成物は、炭素数6以上20以下のアルキル基を有し、該アルキル基を1つ有するモノアルキルアミンか、又は、前記アルキル基を2つ有するジアルキルアミンかの何れかのアルキルアミンをさらに含むゴム組成物であり、且つ、
前記第1工程で作製する前記ゴム組成物は、シリカの含有量100質量部に対する前記アミノ系シランカップリング剤の含有量をXa質量部とし、シリカの含有量100質量部に対する前記アルキルアミンの含有量をXb質量部とした際に、下記式(1)〜(3)の全てを満たすゴム組成物であるコンベヤベルト製造方法。
3 ≦ Xa ≦ 10 ・・・(1)
1 ≦ Xb ≦ 7 ・・・(2)
4 ≦(Xa+Xb)≦ 14 ・・・(3)
- 前記第1工程で作製する前記ゴム組成物は、含有するゴム成分中に前記ジエン系ゴムとして天然ゴムを含むゴム組成物であり、
該第1工程で作製する前記ゴム組成物は、ポリブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムの内の一方又は両方を前記ジエン系ゴムとしてさらに含むゴム組成物であり、且つ、
該第1工程で作製する前記ゴム組成物は、前記ゴム成分に占める前記天然ゴムの割合が50質量%以上80質量%以下で、前記ポリブタジエンゴムと前記スチレン−ブタジエンゴムとの合計量の前記ゴム成分に占める割合が20質量%以上50質量%以下となるゴム組成物である請求項4記載のコンベヤベルト製造方法。 - 前記アルキルアミンが、前記モノアルキルアミンである請求項4又は5記載のコンベヤベルト製造方法。
- 前記第1工程では、
前記ゴム組成物に含まれる全ての成分の内の1又は2以上の成分が不足している第1配合物を混練する第1混練と、
該第1混練によって得られた混練物を含み且つ前記不足している成分が補われた第2配合物を混練する第2混練とを実施し、
前記第1混練では、前記第1配合物に前記アミノ系シランカップリング剤及び前記アルキルアミンを含有させ、且つ、前記第1配合物に前記スルフィド系シランカップリング剤を不足させた状態で混練を実施し、
前記第2混練では前記スルフィド系シランカップリング剤が補われた第2配合物を混練することにより、
前記アミノ系シランカップリング剤によってカップリング処理された後に前記スルフィド系シランカップリング剤でさらにカップリング処理された前記シリカを含む前記ゴム組成物を作製する請求項4乃至6の何れか1項に記載のコンベヤベルト製造方法。
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