JP2021063155A - グリース組成物および転がり玉軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽負荷条件かつ低速回転条件においても、低トルクで、かつ、軸受寿命に優れるグリース組成物、およびこれを封入した転がり玉軸受を提供する。【解決手段】グリース組成物7は、アキシアル荷重およびラジアル荷重が5kgf以下で、かつ、2000min−1以下の回転速度域で使用される転がり玉軸受に封入されるグリース組成物であり、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が3000Pa以上である。【選択図】図1
Description
本発明はグリース組成物、およびそのグリース組成物を封入した転がり玉軸受に関する。
転がり玉軸受の内部には、転がり摩擦や滑り摩擦の軽減などを目的として、潤滑用のグリース組成物が封入されている。グリース組成物を封入してなる転がり玉軸受は、長寿命で外部の潤滑ユニットなどが不要かつ安価であるため、自動車や産業用機器などの汎用用途によく利用される。
転がり玉軸受における軸受トルク(回転トルクともいう)は、製品上重要な特性であり、省エネルギーや省資源の観点から、低トルク化が求められている。転がり玉軸受の回転トルクには、チャネリングやチャーニングといったグリースの挙動が関与している。チャネリングの場合、回転中にグリースがかき分けられ、転動体表面や軌道面へのグリースの付着量が少なくなり、低トルクになる傾向がある。一方、チャーニングの場合、回転によりかき分けられたグリースが再び軌道面に戻ることで、転動体表面や軌道面へのグリースの付着量が常に多くなり、高トルクになる傾向がある。そのため、グリースの挙動として、チャネリング状態になるグリースの開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、基油と増ちょう剤を含有し、その増ちょう剤が12−ヒドロキシステアリン酸リチウムであり、当該グリース組成物の全質量に対する増ちょう剤の質量比が15%以下であり、降伏応力が2kPa以上であるグリース組成物が開示されている。この特許文献1では、降伏応力を上げることでチャネリング性を高め、低トルク化を図っている。
ところで、近年、転がり玉軸受の使用条件は多様化しており、様々な条件下でも低トルク性を示しつつ、軸受寿命に優れる転がり玉軸受が求められている。上記特許文献1では、回転トルクについては評価されているものの、軽負荷条件かつ低速回転条件における回転トルクについて検討はなされていない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、軽負荷条件かつ低速回転条件においても、低トルクで、かつ、軸受寿命に優れるグリース組成物、およびこれを封入した転がり玉軸受を提供することを目的とする。
本発明のグリース組成物は、アキシアル荷重およびラジアル荷重が5kgf以下で、かつ、2000min−1以下の回転速度域で使用される転がり玉軸受に封入されるグリース組成物であって、上記グリース組成物は、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が3000Pa以上であることを特徴とする。
上記基油は、鉱油と合成炭化水素油との混合油であり、基油全体に対して上記合成炭化水素油を50質量%以上含むことを特徴とする。
上記基油は、40℃における動粘度が50〜80mm2/sであり、上記鉱油の40℃における動粘度は、上記合成炭化水素油の40℃における動粘度よりも高いことを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られるジウレア化合物であり、上記増ちょう剤は、上記モノアミン成分が、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンであることを特徴とする。
上記添加剤が、カルシウム系添加剤を含有することを特徴とする。
本発明の転がり玉軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する玉と、上記玉を保持する保持器と、上記玉の周囲に封入されたグリース組成物とを備える転がり玉軸受であって、上記グリース組成物が本発明のグリース組成物であることを特徴とする。
本発明のグリース組成物は、アキシアル荷重およびラジアル荷重が5kgf以下で、かつ、2000min−1以下の回転速度域で使用される転がり玉軸受に封入され、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、降伏応力が3000Pa以上であるので、軽負荷条件かつ低速回転条件においてもグリースのチャネリング性が高められることで、回転トルクを低下させることができ、また、軸受寿命にも優れる。
上記基油は、鉱油と合成炭化水素油との混合油であり、基油全体に対して合成炭化水素油を50質量%以上含み、さらに、40℃における動粘度が50mm2/s〜80mm2/sであるので、比較的高粘度とすることでグリース寿命の延命化に寄与できる。
転がり玉軸受のグリース潤滑において、低トルク化には、玉と保持器ポケット面間に介在するグリースのせん断抵抗を低減することが重要である。本発明者らは、軽負荷条件かつ低速回転条件におけるせん断抵抗の低減を図るべく、チャネリング性に着目して鋭意検討を重ねた結果、降伏応力を所定範囲にすることで、低トルクかつ長寿命を示すことを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明の転がり玉軸受の一例を図1および図2に基づき説明する。図1は、本発明の転がり玉軸受として、冠形保持器を組み込んだ深溝玉軸受の一部断面図であり、図2はこの冠形保持器の一部斜視図である。図1に示すように、深溝玉軸受1は、外周面に軌道面2aを有する内輪2と、内周面に軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置される。内輪の軌道面2aと外輪の軌道面3aとの間に複数個の玉4が介在して配置される。この複数個の玉4が、冠形の保持器5により保持される。保持器5には、樹脂製の保持器や鋼製の保持器を用いることができる。また、深溝玉軸受1は、内・外輪の軸方向両端開口部に設けられた環状のシール部材6を備え、内輪2と外輪3と保持器5とシール部材6とで構成される軸受内空間に封入されたグリース組成物7によって潤滑される。このグリース組成物7が本発明のグリース組成物に相当する。
図2に示すように、冠形の保持器5は、環状の本体5a上面に周方向に一定ピッチをおいて対向一対の保持爪8を形成し、その対向する各保持爪8を相互に接近する方向にわん曲させるとともに、その保持爪8間に転動体である玉を保持するポケット9を形成したものである。隣接するポケット9の縁に形成された相互に隣接する保持爪8の背面相互間に、保持爪8の立ち上がり基準面となる平坦部10が形成される。軸受内部において、このポケット9において、保持器5と玉とのポケット隙間にグリースが入り込んでいる状態(チャーニング)の場合にグリースのせん断抵抗の影響を受けやすくなる。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が3000Pa以上であることを特徴としている。
グリース組成物の降伏応力は、レオメータを用いて、JIS K 7244に準拠した動的粘弾性測定法により測定される。具体的には、所定の条件下でレオメータで揺動角を変化させて、グリースの弾性成分を表す貯蔵弾性率G′と、粘性成分を表す損失弾性率G″を実測し、その比(tanδ=G″/G′)が1となるせん断応力値を降伏応力とする。なお、貯蔵弾性率G′は、グリース組成物が受けた外力の内で、弾性的に蓄えることのできるエネルギーに相当し、損失弾性率G″は、グリース組成物が受けた外力の内で熱として散逸するエネルギーに相当する。
動的粘弾性測定の条件として、好ましくは、周波数1Hz、温度25℃の条件である。また、レオメータとしては、パラレルプレート型のセルを有するレオメータを用いることが好ましい。このレオメータは、一定の応力を印加することが可能であるという特徴を有しているため、グリース組成物の降伏応力の測定に適している。
ここで、図3に、モデル軸受を用いて、X線CTスキャナで撮影した軸受内部のグリース付着状態の写真を示す。図3では、X線が透過できるように、内外輪、玉、保持器、およびシールに樹脂製を用いた。また、グリースと部材間のコントラストがつきやすいように、グリースにトレーサとしてタングステンを5質量%添加した。この軸受をトルク測定しながら運転し、初期(5時間)に停止したチャーニング品(トルク13Nmm)および長時間(23時間)で停止したチャネリング品(トルク5Nmm)を観察した。図3に示すように、チャネリング時とチャーニング時では、保持器と玉のポケット隙間のグリース量に大きな違いがあることが分かる。すなわち、ポケット隙間において、チャネリング時はグリースが存在しないのに対して、チャーニング時にはグリースが存在することでせん断抵抗を受ける。
本発明のグリース組成物は、25℃における降伏応力が3000Pa以上であるので、軽負荷条件かつ低回転速度条件でも、回転中にグリース組成物がかき分けられ、一度軌道面から弾かれたグリース組成物が位置決めされ、軌道面に導入されにくくなる。例えば、内輪回転される玉軸受では、グリース組成物は遠心力により軌道面から外輪内径面に移動し、そこに塊として堆積する。その結果、玉表面や軌道面へのグリースの付着量が少なくなるチャネリング状態となり、回転トルクが減少する。なお、堆積したグリース組成物またはその分離油が軌道面に還流されることで、軸受が潤滑される。
本発明において、グリース組成物の降伏応力は3500Pa以上であることが好ましい。降伏応力が高い方が、振動や昇温などを駆動力とするグリース組成物の軌道面への移動を妨げ、安定なチャネリング状態を維持しやすい。また、回転トルクの上昇に伴う発熱によって軸受寿命が短寿命になることを抑制できる。一方、降伏応力の上限は、例えば5000Paである。降伏応力が高くなると潤滑成分が供給されにくくなり、軸受寿命が短寿命になるおそれがある。グリース組成物の降伏応力は、好ましくは3500Pa〜4500Paである。
本発明のグリース組成物は、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、上述の降伏応力が所定範囲内であれば、特に限定されない。基油は、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。基油としては、例えば、高度精製油、鉱油、エステル油、エーテル油、合成炭化水素油(PAO油)、シリコーン油、フッ素油およびこれらの混合油などを使用できる。
鉱油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油のいずれも使用できるが、高温時の粘度変化が小さいため、パラフィン系鉱油を用いることが好ましい。PAO油は、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。
本発明において、基油は、鉱油とPAO油との混合油であることが好ましい。混合割合は、特に限定されないが、基油(混合油)全体に対して、PAO油が50質量%以上含まれることがより好ましい。基油として、さらに好ましくはPAO油が50質量%〜70質量%含まれ、鉱油が30質量%〜50質量%含まれる混合油である。なお、鉱油およびPAO油はそれぞれ、2以上の油の混合油(混合鉱油や混合PAO油)であってもよい。
更に、鉱油とPAO油の混合油の場合、鉱油の40℃における動粘度が、PAO油の40℃における動粘度よりも高いことが好ましい。言い換えると、その混合油は、低粘度のPAO油と高粘度の鉱油からなることが好ましい。この場合、例えば、PAO油の40℃における動粘度(混合PAO油の場合は、混合PAO油の動粘度)が20mm2/s〜50mm2/sであり、鉱油の40℃における動粘度(混合鉱油の場合は、混合鉱油の動粘度)が80mm2/s〜120mm2/sである。後述の実施例で示すように、低粘度のPAO油と高粘度の鉱油の組み合わせとすることで、低粘度の鉱油と高粘度のPAO油の組み合わせよりも、降伏応力値を大幅に増大でき、軽負荷条件かつ低速回転条件においてより低トルクを実現できる。
基油全体の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)は、例えば、40℃において50mm2/s〜100mm2/sである。好ましくは、50mm2/s〜80mm2/sであり、より好ましくは60mm2/s〜80mm2/sである。基油の動粘度は、低トルク化の観点では低い方が適しているが、軸受寿命の短縮を招くおそれがある。本発明のグリース組成物は、降伏応力を所定範囲にすることで、基油の動粘度を比較的高粘度(50mm2/s以上)に維持できるため、低トルク化と長寿命化の両立を一層図りやすい。
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としては、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん、複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けんなどが、ウレア化合物およびウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物、ジウレタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、高温耐久性に優れるジウレア化合物が好ましい。
ジウレア化合物は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られる。ジウレア化合物の中でも、特に、脂肪族・脂環式ジウレア化合物が好ましい。脂肪族・脂環式ジウレア化合物は、モノアミン成分として脂肪族モノアミンと脂環式モノアミンを用いて得られる。ここで、脂肪族モノアミンと脂環式モノアミンの配合比(例えばモル%)は特に限定されないが、脂環式モノアミンの方が脂肪族モノアミンよりも多いことが好ましい。具体的には、モノアミン全体に対して、脂環式モノアミンを60モル%以上にすることが好ましい。
ジウレア化合物を構成するジイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。脂環式モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
また、ジウレア化合物として、脂環式モノアミンを用いた脂環式ジウレア化合物や、脂肪族モノアミンを用いた脂肪族ジウレア化合物、芳香族モノアミン(p−トルイジンなど)を用いた芳香族ジウレア化合物も使用できる。
基油に増ちょう剤を配合してベースグリースが得られる。ジウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中でジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。グリース組成物全体に占める増ちょう剤の配合割合は、例えば5質量%〜40質量%であり、好ましくは10質量%〜30質量%であり、より好ましくは10質量%〜20質量%である。増ちょう剤の含有量が5質量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となる。また、40質量%をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られにくくなる。
本発明に用いる添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、有機モリブデン化合物などの極圧剤、アミン系、フェノール系、イオウ系化合物などの酸化防止剤、イオウ系、リン系化合物などの摩耗防止剤、多価アルコールエステルなどの防錆剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤などが挙げられる。
これらの中でも、添加剤がカルシウム系添加剤を含むことが好ましい。カルシウム系添加剤としては、例えば、過塩基性のCaスルホナートや中性のCaスルホナートなどが挙げられる。カルシウム系添加剤は、グリース組成物全体に対してCa量換算で0.05質量%〜0.3質量%含まれることが好ましく、0.05質量%〜0.2質量%含まれることがより好ましい。また、カルシウム系添加剤と、分子構造内にイオウや、リン、亜鉛を含む添加剤を組み合わせて用いることができる。なお、バリウム系添加剤(例えば、過塩基性のBaスルホナートなど)は、グリース組成物に含まれないことが好ましい。
グリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220)は、200〜350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。
本発明の転がり玉軸受は、軽負荷条件かつ低速回転条件で使用される軸受であり、具体的には、アキシアル荷重およびラジアル荷重が5kgf以下で、かつ、2000min−1以下の回転速度域で使用される。該軸受は、より好ましくは、アキシアル荷重およびラジアル荷重が3kgf以下で、かつ、1600min−1以下の回転速度域で使用される。このような条件で使用される転がり玉軸受としては、産業用の汎用モータ軸受などが挙げられる。また、後述の実施例で示すように、本発明の転がり玉軸受は、軽負荷条件かつ低回転条件において低トルクを示し、さらに高温耐久性にも優れることから、軽負荷、低速、かつ高温の条件で使用される転がり玉軸受に適している。
本発明の転がり玉軸受について、上記図1では深溝玉軸受について示したが、転がり玉軸受の形態はこれに限らない。例えば、アンギュラ玉軸受や、転動体として玉を使用する自動車のハブベアリングに適用してもよい。本発明の転がり玉軸受は、産業での利用分野が極めて広く、各種の機器などに使用できる。
実施例1および比較例1〜7について、表1に示す配合組成(質量%)で基油および増ちょう剤を混合してグリース組成物を得た。得られた各グリース組成物を用いて、降伏応力を算出した。なお、比較例7で用いた合成炭化水素油は、40℃における動粘度46mm−1/sのPAO油と、40℃における動粘度155mm−1/sのPAO油を重量比35:65で混合した混合PAO油であり、この混合PAO油の40℃における動粘度は、116.9mm−1/sである。
(1)降伏応力
上部プレートと下部プレートを有するパラレルプレート型(ギャップ1mm)のレオメータを用い、各グリース組成物に対して下記の条件に従って動的粘弾性測定を行った。具体的には、上部プレートと下部プレートの間にグリース組成物を挟み、そのグリース組成物に振動による周期的なせん断応力を印加し、その応答から貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″を測定した。得られた貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″が重なった点におけるせん断応力値を降伏応力とした。結果を表1に示す。
せん断応力 :10Paから3000Paまで増加
測定周波数 :1Hz
測定温度 :25℃
各プレート :直径25mm
上部プレートと下部プレートを有するパラレルプレート型(ギャップ1mm)のレオメータを用い、各グリース組成物に対して下記の条件に従って動的粘弾性測定を行った。具体的には、上部プレートと下部プレートの間にグリース組成物を挟み、そのグリース組成物に振動による周期的なせん断応力を印加し、その応答から貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″を測定した。得られた貯蔵弾性率G′と損失弾性率G″が重なった点におけるせん断応力値を降伏応力とした。結果を表1に示す。
せん断応力 :10Paから3000Paまで増加
測定周波数 :1Hz
測定温度 :25℃
各プレート :直径25mm
(2)高温グリース寿命試験
上記で得たグリース組成物を深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204ZZC3)に封入して、高温グリース寿命試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、温度150℃、アキシアル荷重67N、ラジアル荷重67Nの条件で、10000min−1の回転速度で回転させて、焼き付きに至るまでの時間を測定した。グリース寿命時間は3000時間以上を合格とした。結果を表1に示す。
上記で得たグリース組成物を深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204ZZC3)に封入して、高温グリース寿命試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、温度150℃、アキシアル荷重67N、ラジアル荷重67Nの条件で、10000min−1の回転速度で回転させて、焼き付きに至るまでの時間を測定した。グリース寿命時間は3000時間以上を合格とした。結果を表1に示す。
(3)軸受トルク試験(軽負荷条件かつ低速回転条件)
上記で得たグリース組成物を鋼製の保持器を有する深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204LLBC3)に封入して、軸受トルク試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、回転数1600min−1、成り行き温度、アキシアル荷重2kgf、ラジアル荷重0kgfで回転させた。試験では30分間回転させ、20〜30分間の平均値をトルク値(mNm)とした。結果を表1に示す。
上記で得たグリース組成物を鋼製の保持器を有する深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204LLBC3)に封入して、軸受トルク試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、回転数1600min−1、成り行き温度、アキシアル荷重2kgf、ラジアル荷重0kgfで回転させた。試験では30分間回転させ、20〜30分間の平均値をトルク値(mNm)とした。結果を表1に示す。
(4)軸受トルク試験(軽負荷条件かつ高速回転条件)
参考データとして、軽負荷条件かつ高速回転条件における回転トルクを評価した。上記で得たグリース組成物を鋼製の保持器を有する深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204LLBC3)に封入して、軸受トルク試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、回転数10000min−1、成り行き温度、アキシアル荷重2kgf、ラジアル荷重0kgfで回転させた。試験では60分間回転させ、50〜60分間の平均値をトルク値(mNm)とした。結果を表1に示す。
参考データとして、軽負荷条件かつ高速回転条件における回転トルクを評価した。上記で得たグリース組成物を鋼製の保持器を有する深溝玉軸受(NTN社製TS3−6204LLBC3)に封入して、軸受トルク試験用の軸受をそれぞれ作製した。得られた各軸受を、回転数10000min−1、成り行き温度、アキシアル荷重2kgf、ラジアル荷重0kgfで回転させた。試験では60分間回転させ、50〜60分間の平均値をトルク値(mNm)とした。結果を表1に示す。
表1に示すように、25℃での降伏応力が3000Pa以上であるグリース組成物(実施例1)は、軽負荷条件かつ低速回転条件下で低トルクを示し、さらに高温条件下でも長寿命を示した。低速回転条件のトルク試験において、基油に低粘度のPAO油と高粘度の鉱油(質量比50:50)の混合油を用いた場合(実施例1)は、PAO油のみ場合(比較例5)や、鉱油過多の混合油の場合(比較例6)、低粘度の鉱油と高粘度のPAO油の混合油(比較例7)に比べて、回転トルクが約1/2であった。
また、表1の参考データに示すように、高速回転条件では、通常、基油の動粘度が低いほど軸受トルクが低くなる傾向がある。実際に、実施例1は、基油の動粘度が比較的高く、軸受トルクも高い傾向がある。これに対して、低速回転条件では、実施例1の軸受トルクは低くなっている。このように、低速回転条件で使用されるグリース組成物は、降伏応力を大きくすることで、比較的高粘度でも低トルクを維持でき、また、高いチャネリング特性により基油分の消耗を防止できるため、グリース寿命を延命化できる。
本発明のグリース組成物は、軽負荷条件かつ低速回転条件においても、低トルクで、かつ、軸受寿命に優れるので、産業での利用分野が極めて広く、各種の機器などに使用できる。
1 深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 レオメータ
12 コーンプレート型セル
13 水平円盤プレート
14 グリース
2 内輪
3 外輪
4 玉
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8 保持爪
9 ポケット
10 平坦部
11 レオメータ
12 コーンプレート型セル
13 水平円盤プレート
14 グリース
Claims (6)
- アキシアル荷重およびラジアル荷重が5kgf以下で、かつ、2000min−1以下の回転速度域で使用される転がり玉軸受に封入されるグリース組成物であって、
前記グリース組成物は、基油と増ちょう剤と添加剤とを含み、レオメータを用いた動的粘弾性測定法により測定される25℃での降伏応力が3000Pa以上であることを特徴とするグリース組成物。 - 前記基油は、鉱油と合成炭化水素油との混合油であり、基油全体に対して前記合成炭化水素油を50質量%以上含むことを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
- 前記基油は、40℃における動粘度が50〜80mm2/sであり、前記鉱油の40℃における動粘度は、前記合成炭化水素油の40℃における動粘度よりも高いことを特徴とする請求項2記載のグリース組成物。
- 前記増ちょう剤は、ジイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応して得られるジウレア化合物であり、前記増ちょう剤は、前記モノアミン成分が、脂肪族モノアミンおよび脂環式モノアミンであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載のグリース組成物。
- 前記添加剤が、カルシウム系添加剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載のグリース組成物。
- 内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する玉と、前記玉を保持する保持器と、前記玉の周囲に封入されたグリース組成物とを備える転がり玉軸受であって、
前記グリース組成物が請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のグリース組成物であることを特徴とする転がり玉軸受。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
JP2019187021A JP2021063155A (ja) | 2019-10-10 | 2019-10-10 | グリース組成物および転がり玉軸受 |
PCT/JP2020/038084 WO2021070887A1 (ja) | 2019-10-10 | 2020-10-08 | グリース組成物および転がり玉軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019187021A JP2021063155A (ja) | 2019-10-10 | 2019-10-10 | グリース組成物および転がり玉軸受 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2021063155A (ja) |
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JPWO2014088006A1 (ja) * | 2012-12-04 | 2017-01-05 | 日本精工株式会社 | 転動装置 |
JP2017172714A (ja) * | 2016-03-24 | 2017-09-28 | 日本精工株式会社 | 転がり軸受 |
-
2019
- 2019-10-10 JP JP2019187021A patent/JP2021063155A/ja active Pending
-
2020
- 2020-10-08 WO PCT/JP2020/038084 patent/WO2021070887A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2021070887A1 (ja) | 2021-04-15 |
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