JP2021055700A - 車両のディスクブレーキの水浸入防止構造 - Google Patents

Abstract

【課題】バックプレートを備えないディスクブレーキ内への水の浸入を抑制する。【解決手段】ディスクロータ４は、車軸１に取付けられる円板状のロータ底板部６の外周縁部からロータ筒部７が軸方向一側へ円筒状に延びるロータ部５と、ロータ筒部７の軸方向一側の端部の径方向外側に配置されるドーナツ板状のディスク部８とを一体的に有する。ダストシールド１５は、ディスクロータ４のディスク部８に軸方向一側から対向して近接する板状の外径側シールド部２５と、外径側シールド部２５から軸方向他側へ突出する円筒状の内径側シールド部２１とを有し、車軸１を支持する車体側に固定される。内径側シールド部２１の外周面は、ディスクロータ４のロータ筒部７の内周面に径方向内側から対向して近接する。【選択図】図３

Description

本開示は、車両のディスクブレーキの水浸入防止構造に関する。

特許文献１には、バックプレート本体内にブレーキシューを拡縮自在に収容する車両用のドラムブレーキにおいて、バックプレート本体の外周部にダストシールドを固着し、ダストシールドをブレーキドラムの環状縁部とラビリンス状に遊嵌することにより、ドラムブレーキ内への水や塵の侵入を抑制したドラムブレーキのバックプレート構造が記載されている。

特開２００２−２９５５４４号公報

特許文献１は、ブレーキシューを収容保持するためのバックプレートを備えたドラムブレーキ内への水の浸入を抑制するものであるため、バックプレートを備えないディスクブレーキの場合、特許文献１の構造によってブレーキ内への水等の浸入を抑制することができない。

そこで本開示は、バックプレートを備えないディスクブレーキ内への水の浸入を抑制することを目的とする。

上記目的を達成すべく、本発明の第１の態様は、車両のディスクブレーキの水浸入防止構造であって、ディスクロータとダストシールドとを備える。ディスクロータは、車軸に取付けられる円板状のロータ底板部の外周縁部からロータ筒部が軸方向一側へ円筒状に延びるロータ部と、ロータ筒部の軸方向一側の端部の径方向外側に配置されるドーナツ板状のディスク部とを一体的に有する。ダストシールドは、ディスク部に軸方向一側から対向して近接する板状の外径側シールド部と、外径側シールド部から軸方向他側へ突出する円筒状の内径側シールド部とを有し、車軸を支持する車体側に固定される。内径側シールド部の外周面は、ロータ筒部の内周面に径方向内側から対向して近接する。

上記構成では、ディスク部の軸方向一側において、径方向外側から径方向内側への水の浸入は、外径側シールド部によってある程度規制される。また、外径側シールド部によって阻止されず、ディスク部と外径側シールド部との間に径方向外側から浸入して径方向内側へ向かった水の流通経路には、軸方向他側のロータ部内へ向かう経路（ロータ筒部の内側からロータ底板部へ向かう経路）が含まれるが、ロータ部内へ向かう経路に内径側シールド部を設けているので、内径側シールド部によってロータ部内への水の浸入を抑制することができる。従って、バックプレートを備えないディスクブレーキであっても、ロータ部内への水の浸入を抑制することができる。

本発明の第２の態様は、第１の態様の水浸入防止構造であって、内径側シールド部の外周面の上面は、軸方向一側に向かって下方に傾斜する。

上記構成では、内径側シールド部の外周面の上面が軸方向一側（ロータ底板部から離間する側）に向かって下方に傾斜するので、ディスク部と外径側シールド部との間を下方に流下して内径側シールド部に達した水は、軸方向他側（ロータ部内側）へ流下せずに、内径側シールド部の上面によって軸方向一側へ排出される。従って、ロータ部内への水浸入の防止機能を高めることができる。

本開示によれば、バックプレートを備えないディスクブレーキ内への水の浸入を抑制することができる。

本発明の一実施形態に係るブレーキ装置を軸方向から視た正面図である。 図１のブレーキ装置の分解斜視図である。 図１の側断面図である。 （ａ）はダストシールドの背面図、（ｂ）はダストシールドの側面図である。 図３の要部拡大図である。

以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは車軸１が延びる方向であり、軸方向一側（図２の左側）を車両内側、軸方向他側（図２の右側）を車両外側として説明する。

本実施形態のブレーキ装置（ディスクブレーキ）は、電動パーキングブレーキ装置（EPB：Electric Parking Brake）であり、図２及び図３に示すように、車体側に支持されるキャリパ２及びアクチュエータ３と、車両の車軸１に一体回転可能に取り付けられるディスクロータ４とを備える。キャリパ２とアクチュエータ３とは、ユニット化されて車体側に取付けられる。

ディスクロータ４は、円板状のロータ底板部６の外周縁部からロータ筒部７が車両内側へ円筒状に延びるＵ状断面のロータ部５と、ロータ筒部７の軸方向一側の端部の径方向外側に配置されるドーナツ板状のディスク部８とを一体的に有する。車軸１の車両外側の端部には円板状のディスク固定板９が固定され、タイヤ（図示省略）を支持するホイール（図示省略）をロータ底板部６に車両外側から重ね、ディスク固定板９をロータ底板部６に車両内側から重ね、ロータ底板部６に固定されて車両外側へ延びる複数（図示の例では６本）のハブボルト１０をロータ底板部６及びホイールに挿通し、各ハブボルト１０にホイールナット（図示省略）を螺合して締め込むことにより、ディスクロータ４及びホイールが車軸１に固定される。ディスク部８は、１対のパッド（図示省略）によって挟まれる摩擦面を形成する。

キャリパ２は、車体側に固定されて車軸１を回転自在に支持するナックル部１１に、複数（図示の例では２本）のボルト１２（図１に示す）によって締結固定される。キャリパ２内にはシリンダ部（図示省略）が設けられ、シリンダ部内にはピストン（図示省略）が摺動自在に設けられる。運転者がブレーキペダル（図示省略）を踏込操作すると、シリンダ部にブレーキ液が供給され、ピストンがシリンダ部に対して移動し、キャリパ２に支持された１対のパッドがピストンによってディスクロータ４に押し付けられて摩擦係合する。このように、運転者のブレーキペダル操作による制動力は、ブレーキ液の供給によって発生する。

アクチュエータ３には、車室内のパーキングブレーキスイッチ（図示省略）の操作に応じてモータ軸が回転する電動モータ（図示省略）と、モータ軸の回転をピストンへ伝達する伝達機構（図示省略）が設けられる。運転者がパーキングブレーキスイッチを操作すると、電動モータの回転が伝達機構を介してピストンに伝達され、ピストンがシリンダ部に対して移動して、１対のパッドがディスクロータ４に押し付けられて摩擦係合する。このように、パーキングブレーキとしての制動力は、電動モータによって発生する。従って、本実施形態のブレーキ装置は、パーキングブレーキとしての制動力を付与するためのブレーキシューや、ブレーキシューを支持するためのバックプレートを備えていない。

ディスクロータ４は、ディスク部８の内部に複数のフィン１３が設けられ、これら複数のフィン１３によって内周側から外周側へ貫通する複数の通風路１４が形成されたベンチレーテッドディスクである（図２、図３及び図５参照）。パッドとの摩擦係合により発熱したディスク部８は、通風路１４を流通する空気によって冷却される。

図１〜図４に示すように、ディスクロータ４の車両内側には、ロータ部５内への水等の液体や埃や異物等の固体の浸入を防止するためのダストシールド１５が設けられる。ダストシールド１５は、内周側のシールドインナ１６の外周縁部に外周側のシールドアウタ１７の内周縁部を溶接等によって固着することにより形成される。なお、ダストシールド１５をシールドインナ１６とシールドアウタ１７の２部品によって構成せず、１部品又は３部品以上で構成してもよい。

シールドインナ１６は、車軸１の軸方向と略直交する矩形板状のインナ内径部１８と、インナ内径部１８の外周縁から曲折して車両外側へ延びるインナ側板部１９と、インナ側板部１９の車両外側の端縁から曲折して径方向外側へ延びるインナ外径部２０と、インナ外径部２０の外周縁から曲折して車両外側へ延びる内径側シールド部２１とを一体的に有する。インナ外径部２０の外周は円形状であり、内径側シールド部２１は円筒状である。

車軸１は、インナ内径部１８に形成された車軸挿通孔２２を挿通し、インナ内径部１８は、複数（図示の例では３本）のボルト２３によって車体側のナックル部１１の車両外側に締結固定される（図２参照）。内径側シールド部２１の外周面は、車両内側から車両外側に向かって拡径する逆テーパ状であり、ディスクロータ４のロータ筒部７の内周面に径方向内側から対向して近接する（図５参照）。

シールドアウタ１７は、ドーナツ板形状の一部をキャリパ２及びアクチュエータ３を配置するための空間として切欠いた略Ｃ形状であり（図４（ａ）参照）、シールドインナ１６のインナ外径部２０に車両内側から重なって固着されるアウタ内径部２４と、アウタ内径部２４から径方向外側へ連続して延びる板状の外径側シールド部２５と、外径側シールド部２５の外端縁から車両外側へ曲折するアウタ外周部２６とを一体的に有する。内径側シールド部２１は、外径側シールド部２５の径方向内側の端部から車両外側へ突出する。外径側シールド部２５は、ディスクロータ４のディスク部８に車両内側から対向して近接し、アウタ外周部２６は、ディスロータ４の通風路１４の外周側の開口を径方向外側から覆う（図５参照）。

このように、ダストシールド１５は、ディスクロータ４の車両内側の面のうちキャリパ２及びアクチュエータ３が重ならない範囲の略全域を車両内側から覆う。また、ダストシールド１５は、ディスク部８に車両内側から対向して近接する板状の外径側シールド部２５と、外径側シールド部２５から車両外側へ突出する円筒状の内径側シールド部２１とを有し、車体側のナックル部１１に固定される。内径側シールド部２１の外周面は、ロータ筒部７の内周面に径方向内側から対向して近接し、内径側シールド部２１の外周面の上面は、車両内側に向かって下方（鉛直下方）に傾斜する。

本実施形態によれば、ディスク部８の車両内側の面上の流下、又は通気路１４内の流下によるディスク部８の径方向外側から径方向内側への水の浸入は、外径側シールド部２５とアウタ外周部２６とによってある程度規制される。また、外径側シールド部２５やアウタ外周部２６によって阻止されず、図５に矢印で示すように、ディスク部８と外径側シールド部２５との間の空間や通気路１４に径方向外側から浸入して径方向内側へ向かった水の流通経路には、車両外側のロータ部５内へ向かう経路（ロータ筒部７の内側からロータ底板部６へ向かう経路）が含まれるが、ロータ部５内へ向かう経路に内径側シールド部２１を設けているので、内径側シールド部２１によってロータ部５内への水の浸入を抑制することができる。従って、バックプレートを備えないディスクブレーキであっても、ロータ部５内への水の浸入を抑制することができる。

また、内径側シールド部２１の外周面の上面が車両内側（ロータ底板部６の反対側）に向かって下方に傾斜するので、ディスク部８と外径側シールド部２５との間の空間や通気路１４を下方に流下して内径側シールド部２１に達した水は、車両外側（ロータ部５内側）へ流下せずに、車両内側へ排出される。従って、ロータ部５内への水浸入の防止機能を高めることができる。

以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。

例えば、上記実施形態では、電動パーキングブレーキ装置の例を説明したが、本発明は他の様々なディスクブレーキに適用することができる。また、上記実施形態では、内径側シールド部２１を、その外周面が車両外側に向かって拡径する円筒状とした例を説明したが、内径側シールド部２１の外周面のうち上面のみが車両外側に向かって傾斜する円筒状としていてもよく、外周面の上面が傾斜しない円筒状としてもよい。

また、上記実施形態では、通風路１４が内部に形成されたベンチレーテッドタイプのディスクロータ４について説明したが、通風路１４を有さないソリッドタイプのディスクロータ（ソリッドディスク）に本発明を適用してもよい。

本発明は、車両のディスクブレーキに広く適用可能である。

１：車軸
２：キャリパ
３：アクチュエータ
４：ディスクロータ
５：ロータ部
６：ロータ底板部
７：ロータ筒部
８：ディスク部
９：ディスク固定板
１０：ハブボルト
１１：ナックル部
１２，２３：ボルト
１３：フィン
１４：通風路
１５：ダストシールド
１６：シールドインナ
１７：シールドアウタ
１８：インナ内径部
１９：インナ側板部
２０：インナ外径部
２１：内径側シールド部
２２：車軸挿通孔
２４：アウタ内径部
２５：外径側シールド部
２６：アウタ外周部

Claims (2)

1. 車軸に取付けられる円板状のロータ底板部の外周縁部からロータ筒部が軸方向一側へ円筒状に延びるロータ部と、前記ロータ筒部の軸方向一側の端部の径方向外側に配置されるドーナツ板状のディスク部とを一体的に有するディスクロータと、
   前記ディスク部に軸方向一側から対向して近接する板状の外径側シールド部と、前記外径側シールド部から軸方向他側へ突出する円筒状の内径側シールド部とを有し、前記車軸を支持する車体側に固定されるダストシールドと、を備え、
   前記内径側シールド部の外周面は、前記ロータ筒部の内周面に径方向内側から対向して近接する
   ことを特徴とする車両のディスクブレーキの水浸入防止構造。
2. 請求項１に記載の水浸入防止構造であって、
   前記内径側シールド部の外周面の上面は、軸方向一側に向かって下方に傾斜する
   ことを特徴とする車両のディスクブレーキの水浸入防止構造。

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