以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
以下の実施形態には、硬貨および紙葉類(紙幣、商品券、小切手等)を処理する出納機に通信線で接続された貨幣管理装置と、出納機と貨幣管理装置とからなる貨幣処理システムとに本発明を適用した例が示されている。
本実施形態において、貨幣処理システム1が、特許請求の範囲に記載の「貨幣管理システム」に対応する。また、ドロア24bおよび24cあるいは24dおよび24eが、特許請求の範囲に記載の「収納部」に対応する。さらに、ロードセル202が、特許請求の範囲に記載の「検出部」に対応する。
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。また、特許請求の範囲の構成と後述する変更例の構成の対応付けについても同様である。
図1は、本実施形態に係る貨幣処理システム1の外観を示す斜視図である。
貨幣処理システム1は、出納機10と貨幣管理装置20とを備えている。通常、貨幣管理装置20は、出納機10の近辺に配置される。出納機10で出金できない大量現金の支払いが貨幣管理装置20から行われ、出納機10に収納しきれなくなった紙幣や硬貨が貨幣管理装置20に移される。また、出納機10に紙幣や硬貨が少なくなった場合は、貨幣管理装置20から紙幣や硬貨が取り出されて出納機10に戻される。出納機10と貨幣管理装置20は、通信線により接続され、互いに通信可能である。
出納機10は、束紙幣を処理する束紙幣処理ユニット11と、バラ紙幣を処理するバラ紙幣処理ユニット12と、包装硬貨を処理する包装硬貨処理ユニット13と、バラ硬貨を処理するバラ硬貨処理ユニット14とを備えている。束紙幣処理ユニット11には、束紙幣を個別に出金する束紙幣出金口11aと束紙幣を投出する束紙幣シュート11bが設けられている。バラ紙幣処理ユニット12には、バラ紙幣を出金するバラ紙幣出金口12aとバラ紙幣を入金するバラ紙幣入金口12bが設けられている。また、包装硬貨処理ユニット13には、包装硬貨を出金する包装硬貨出金口13aが設けられており、バラ硬貨処理ユニット14には、バラ硬貨を出金するバラ硬貨出金口14aが設けられている。
さらに、出納機10は、入力部15と、表示部16と、カードリーダ17と、プリンタ18を備えている。入力部15と表示部16は、それぞれ、機械式のキーボードおよびモニターであり、出納機10に対する操作者のインタフェースとして利用される。カードリーダ17は、操作者が所持するIDカードを読み取る。プリンタ18は、レシート発行装置として機能する。本実施形態では、後述のように、出納機10から貨幣管理装置20に貨幣を移す際に、連携番号(4桁の数字)が印字されたレシートがプリンタ18により発行され、操作者に渡される。なお、入力部15と表示部16に替えて、タッチパネル等の入力兼表示部が設けられてもよい。
貨幣管理装置20は、入力部21と、表示部22と、カードリーダ23と、5つのドロア24a〜24eと、を備えている。入力部21と表示部22は、それぞれ、機械式のキーボードおよびモニターであり、貨幣管理装置20に対する操作者のインタフェースとして利用される。カードリーダ23は、IDカードを読み取って操作者のID情報を取得する。なお、入力部21と表示部22に替えて、タッチパネル等の入力兼表示部が設けられてもよい。
5つのドロア24a〜24eは、それぞれ、装置本体20aから前方に引き出された開放位置と装置本体20aの内部に収納された閉塞位置の間を水平方向に移動可能に装置本体20aに支持されている。図1には、ドロア24a〜24eが閉塞位置にある状態が示されている。
5つのドロア24a〜24eは、それぞれ、収納する貨幣の金種が決まっている。本実施形態では、最上段のドロア24aが紙幣用のドロアとされており、2段目から最下段までのドロア24b〜24dが硬貨用のドロアとされている。即ち、最上段のドロア24aは、1万円、5千円、2千円および千円の紙幣の収納に用いられる。また、2段目のドロア24bは500円および100円の硬貨の収納に用いられ、3段目のドロア24cは500円および50円の硬貨の収納に用いられ、4段目のドロア24dは5円および10円の硬貨の収納に用いられ、最下段のドロア24eは5円および1円の硬貨の収納に用いられる。このように、本実施形態では、500円の金種に、2つのドロア24b、24cに割り当てられており、5円の金種に、2つのドロア24d、24eが割り当てられている。即ち、500円の金種は、上下2段のドロア24b、24cが割り当てられた金種であり、5円の金種は、上下2段のドロア24d、24eが割り当てられた金種である。
以降、上下2段のドロアが割り当てられた金種を、1つのドロアが割り当てられた金種と区別するため、便宜上、「2段に跨る金種」と称することとする。
なお、ドロア24b〜24eのそれぞれに割り当てられる金種は、上記のものに限らず、適宜、決めることができる、さらに、2段に跨る金種も、上記のものに限らず、適宜、決めることができる。
また、貨幣管理装置20が販売される際に、既に2つのドロア24b、24c(24d、24e)が同一金種の貨幣の収納に割り当てられた状態となっていてもよいし、貨幣管理装置20の販売時には、2つのドロア24b、24c(24d、24e)が同一金種の貨幣の収納に割り当てられた状態となるように設定できる状態にあり、販売後、貨幣管理装置20の設置先において、2つのドロア24b、24c(24d、24e)が同一金種の貨幣の収納に割り当てられた状態に設定されてもよい。
ドロア24a〜24eは、ロック機構201(図1には図示せず、図4参照)によって、それぞれ個別に、閉塞位置から移動しないように、即ち、閉塞状態にロックされる。ドロア24a〜24eは、バネ等の付勢手段によって開放方向に付勢されている。したがって、ドロア24a〜24eは、それぞれ、ロック機構201によるロックが解除されると、付勢手段による付勢によって、僅かに引き出される。
なお、以降、ドロア24a〜24eを、それぞれ、第1ドロア24a、第2ドロア24b、第3ドロア24c、第4ドロア24dおよび第5ドロア24eと称することがある。
本実施形態において、紙幣は、100枚が結束された小束紙幣および10束の小束紙幣が結束された大束紙幣の形態で、ドロア24aに収納される。また、硬貨は、50枚ごとに包装された包装硬貨の形態で、ドロア24b〜24eに収納される。操作者は、小束紙幣または大束紙幣を出納機10の束紙幣出金口11aから取出して、ドロア24aに収納し、また、包装硬貨を出納機10の包装硬貨出金口13aから取出して、ドロア24b〜24eに収納する。
図2(a)、(b)は、それぞれ、小束紙幣および大束紙幣を模式的に示す図であり、図2(c)、(d)は、それぞれ、包装硬貨の構成を模式的に示す図である。図2(b)に示すように、大束紙幣は、10束の小束紙幣を重ねた状態で、長手方向と短手方向に紙帯で結束した構成となっている。また、図2(d)に示すように、10個の包装硬貨が輪ゴム等で束状に纏められてドロア24b〜24eに収納される場合もある。
図3(a)および(b)は、それぞれ、第1ドロア24aと第3ドロア24cの構造を示す斜視図である。
図3(a)に示すように、第1ドロア24aには、4種類の金種(1万円、5千円、2千円、千円)の紙幣の束が、規則正しく収納保管される。図3(a)の例では、第1ドロア24aの内部に、8つの紙幣収納容器241が、左右2列、前後4列に並ぶように設置されており、紙幣収納容器241ごとに、収納保管される紙幣の金種が決められている。8つの紙幣収納容器241には、それぞれ、ロードセル202(図3(a)には図示せず、図4参照)が配置され、このロードセル202によって各紙幣収納容器241に収納された紙幣の総重量が計測される。
また、図3(b)に示すように、第3ドロア24cには、2種類の金種の包装硬貨、本実施形態では500円および50円の包装硬貨が、規則正しく収納保管される。図3(b)の例では、第3ドロア24cの内部に、3つの硬貨収納容器242が前後に並ぶように設置されている。硬貨収納容器242は、複数の収納凹部242aを有し、これら収納凹部242aに包装硬貨が縦向きの状態で収納される。最前列の硬貨収納容器242は、500円硬貨のためのものであり、その収納凹部242aが500円の硬貨に対応する大きさを有する。後2列の硬貨収納容器242は、50円硬貨のためのものであり、その収納凹部242aが50円の硬貨に対応する大きさを有する。3つの硬貨収納容器242には、それぞれ、ロードセル202(図3(a)には図示せず、図4参照)が配置され、このロードセル202によって各硬貨収納容器242に収納された硬貨の総重量が計測される。
なお、第2ドロア24b、第4ドロア24dおよび第5ドロア24eは、第3ドロア24cと同様の構成となっている。第2ドロア24bには、500円および100円の硬貨が収納されるため、最前列に500円のための硬貨収納容器242が設置され、後2列に100円のための硬貨収納容器242が設置される。また、第4ドロア24dには、5円および10円の硬貨が収納されるため、最前列に5円のための硬貨収納容器242が設置され、後2列に10円のための硬貨収納容器242が設置される。さらに、第5ドロア24eには、5円および1円の硬貨が収納されるため、最前列に5円のための硬貨収納容器242が設置され、後2列に1円のための硬貨収納容器242が設置される。
図4は、貨幣管理装置20の主たる構成を示すブロック図である。
図4に示すように、貨幣管理装置20は、図1に示す入力部21、表示部22およびカードリーダ23の他、ロック機構201、ロードセル202、報知部203、閉塞検知部204、制御部205、記憶部206および通信部207を備えている。上記のように、ロック機構201は、ドロア24a〜24eごとに設けられ、ドロア24a〜24eをそれぞれ閉塞状態にロックする。また、ロードセル202は、上記のように、ドロア24a〜24eに配された紙幣収納容器241および硬貨収納容器242ごとに設けられ、紙幣収納容器241および硬貨収納容器242に収納された紙幣および硬貨の総重量を容器ごとに計測する。
報知部203は、スピーカを備え、貨幣管理装置20に対する貨幣の入出金時に所定のガイダンス、メッセージ、その他の音声を出力する。
閉塞検知部204は、ドロア24a〜24eごとに設けられ、ドロア24a〜24eが閉塞状態にあるか否かを検知する。たとえば、閉塞検知部204は、マイクロスイッチを含み、ドロア24a〜24eが閉塞されると、ドロア24a〜24eの一部がマイクロスイッチのアクチュエータ部に触れて接点がオンすることで、ドロア24a〜24eの閉塞を検知するような構成とすることができる。
制御部205は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備え、記憶部206に記憶されたプログラムに従って、各部を制御する。記憶部206は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部205の動作プログラムを記憶し、また、制御部205の制御処理の際にワーク領域として利用される。
記憶部206には、変換テーブル206a、順番テーブル206bおよび在高データベース206cが備えられている。変換テーブル206aは、ロードセル202により計測された総重量を、在高である貨幣の数量(小束の束数、包装硬貨の本数)に変換するためのテーブルであり、金種ごとに設けられる。
図5(a)は、順番テーブル206bの一例を示す図であり、図5(b)は、在高データベース206cの一例を示す図である。
図5(a)に示すように、順番テーブル206bには、2段に跨る金種、本実施形態では、500円と5円の金種について、取引操作別に、取引操作が優先される、即ち、貨幣の収納または取出が優先されるドロアの順番が登録されている。本実施形態において、たとえば、500円の金種では、取引操作が収納操作である場合は、上段の第2ドロア24bが順番上位の最優先ドロア、下段の第3ドロア24cが順番下位の次優先ドロアとされ、取引操作が取出操作である場合は、反対に、下段の第3ドロア24cが最優先ドロア、上段の第2ドロア24bが次優先ドロアとされる。同様に、5円の金種では、取引操作が収納操作である場合は、上段の第4ドロア24dが最優先ドロア、下段の第5ドロア24eが次優先ドロアとされ、取引操作が取出操作である場合は、反対に、下段の第5ドロア24eが最優先ドロア、上段の第4ドロア24dが次優先ドロアとされる。最優先ドロアが、2つのドロアの中で貨幣の収納または取出の際に優先的に開放される。
なお、上記の例では、収納操作の場合に上段のドロアが最優先ドロアとして登録され、取出操作の場合に下段のドロアが最優先ドロアとして登録された。しかしながら、これとは反対に、収納操作の場合に下段のドロアが最優先ドロアとして登録され、取出操作の場合に上段のドロアが最優先ドロアとして登録されてもよい。また、2つのドロアの間では、最優先ドロアが決まれば、次優先ドロアが決まることになる。よって、順番テーブル206bは、最優先ドロアのみが登録されるような構成であってもよい。
図5(b)に示すように、在高データベース206cでは、金種ごとに数量(小束の束数、包装硬貨の本数)と金額が、在高として管理されている。また、2段に跨る金種では、ドロアごとに数量と金額が管理されている。在高データベース206cで管理される在高は、収納または取出の取引操作において、自動精査が完了して新たな在高が確定したときに更新される。
図4に戻り、通信部207は、通信インタフェースであって、通信回線で出納機10の通信部と接続されている。通信部207と出納機10の通信部との間の通信は、上記のような通信線、即ち有線によるものに限らず、無線で行われても良い。
図6(a)は、貨幣管理装置20の入力部21の構成を示す図である。
上記のように、入力部21は、機械式のキーボードにより構成されている。図6(a)に示すように、入力部21は、数字を入力するためのテンキーB11と、収納または取出を行う貨幣の数量を束数または本数単位で入力するための束/本キーB12と、処理の指定または入力項目の確定を行うための実行キーB13と、処理の確定および確認を行うための完了キーB14と、カーソルを上下に移動させるためのカーソルキーB15と、を備えている。さらに、入力部21は、収納または取出を行う硬貨の金種を指定するための硬貨金種キーB16と、収納または取出を行う紙幣の金種を指定するための紙幣金種キーB17と、表示されているウィンドウを一つ前のウィンドウに戻す切替キーB18と、入力中の数値を訂正する訂正キーB19と、を備えている。硬貨金種キーB16および紙幣金種キーB17には、各キーに金種の表示が付されている。1千円札の紙幣金種キーB17と、1円硬貨の硬貨金種キーB16は、それぞれ、カーソルを左右方向に移動させるためのキーとして共用される。
たとえば、操作者が、貨幣管理装置20に対して、手動で、取引情報を入力する場合、操作者は、図6(a)に示す入力部21を操作して、貨幣管理装置20に対して収納または取出を行う貨幣の金種と数量(小束の束数、包装硬貨の本数)を入力する。このとき、金種の入力は、硬貨金種キーB16または紙幣金種キーB17を用いて行われる。また、小束紙幣の束数や包装硬貨の本数の入力は、テンキーB11と束/本キーB12を用いて行われる。なお、大束紙幣を収納しまたは取出す場合、操作者は、該当金種を入力した上で、10束と入力する。
図6(b)、(c)は、それぞれ、操作者が小束紙幣および包装硬貨の収納を行う場合に表示部22に表示される画面の一例を示す図である。
図6(b)、(c)に示すように、入力画面は、領域R11〜領域R17を含んでいる。領域R11には、当該取引操作が収納操作であることが表示される。領域R12には、収納に関するシリアル番号が表示され、領域R13には、操作者のID情報が表示される。操作者のID情報は、操作者が自身のIDカードをカードリーダ23に読み取らせることにより取得される。領域R14には、入力操作の際に行われるべき手順が表示される。領域R15には、入力部21へ入力された情報が金種ごとに表示され、また、その合計額が表示される。領域R16には、画面の切り替えを行う場合の操作が表示される。領域R17には、現在の日時が表示される。
操作者は、自身が収納しようとする貨幣の取引情報(入金情報)を、図6(b)、(c)の画面を参照しながら、図6(a)の入力部21により入力する。そして、収納対象の貨幣に関する取引情報の入力が完了すると、操作者は、完了キーB14を押下して、入力を確定させる。
貨幣管理装置20から貨幣を取り出す場合も、上記収納時と同様の操作により、取引情報(出金情報)として、取り出す貨幣の金種と数量(小束の束数、包装硬貨の本数)が入力部21を介して入力される。なお、取引操作が収納操作であるか取出操作であるかは、図6(b)、(c)の一つ前の受付画面で選択可能となっている。操作者は、この受付画面で取引操作が収納操作と取出操作の何れであるかを選択する。取引操作が取出操作である場合、図6(b)、(c)の領域R11には、「取出」の文字が表示される。
なお、本実施形態では、貨幣管理装置20と出納機10が通信可能であるため、出納機10から貨幣管理装置20に貨幣を移す場合は、通信により、取引情報(入金情報)が、出納機10から貨幣管理装置20に送信される。このとき、通信部207が取引情報を受信する。
この場合、操作者は、出納機10に対して自身のIDカードを読み取らせた上で、出納機10から貨幣管理装置20に移し替える貨幣の金種と貨幣の数量(小束紙幣の束数、包装硬貨の本数)を出納機10の入力部15と表示部16とを用いて入力し、出納機10から当該貨幣を取り出す。このとき、出納機10は、取出された貨幣に関する情報(金種と個数を含む)を、貨幣管理装置20において設定される取引情報(入金情報)として、固有の連携番号(4桁の数字)に紐づけて記憶し、記憶した連携番号が印字されたレシートをプリンタ18に出力させる。こうして、操作者は、当該貨幣の連携番号を取得する。
出納機10から取出した貨幣を貨幣管理装置20に収納する場合、操作者は、貨幣管理装置20に対して自身のIDカードを読み取らせた上で、レシートに印字された連携番号を貨幣管理装置20に入力する。これにより、当該貨幣を出納機10から取出す際に出納機10に記憶された取引情報(入金情報)が、貨幣管理装置20に送信される。こうして、図6(a)〜(c)を参照して説明した入力操作を行わずとも、取引情報が貨幣管理装置20に設定される。
同様に、貨幣管理装置20から出納機10へ貨幣を戻す場合も、連携番号を用いて、通信により、取引情報(出金情報)が、出納機10から貨幣管理装置20に送信されるようにすることができる。
図7は、取引操作における貨幣管理装置20の処理を示すフローチャートである。図8は、2段に跨る金種の取引処理を示すフローチャートである。図9は、自動精査の処理を示すフローチャートである。これら図7ないし図9の処理は、貨幣管理装置20の制御部205により実行される。
図7を参照して、制御部205は、操作者から操作者IDの入力と取引情報(金種と数量)の入力を受け付ける(S101)。操作者IDは、操作者が自身のIDカードをカードリーダ23に読み込ませることにより取得される。また、取引情報は、図6(a)〜(c)を参照して説明した手続により操作者が入力部21に入力することにより取得される。あるいは、出納機10の入力部15で取引情報が入力され、出納機10から貨幣管理装置20に送信されることにより、取引情報が取得される。
なお、取引情報が入力される際、2段に跨る金種が取引操作の対象である場合にも、その金種の硬貨が収納または取り出されるドロアが入力画面上で指定されることはなく、その入力操作は、1つのドロアが割り当てられた金種と同じとなる。
制御部205は、受け付けた取引情報に基づいて、取引操作の対象となる金種(以下、「対象金種」と称する)に、上側の2段のドロア24b、24cに跨る金種、ここでは500円の金種が含まれるか否かを判定する(S102)。対象金種に上側の2段のドロア24b、24cに跨る金種が含まれる場合(S102:YES)、制御部205は、図8に示す、2段に跨る金種の取引処理を実行する。
図8を参照し、制御部205は、図5(a)の順番テーブル206bを用いて、開放を優先するドロアの順番、即ち最優先ドロアと次優先ドロアとを決定する(S201)。ここでは、金種が500円であるため、取引操作が収納操作であれば、第2ドロア24bが最優先ドロア、第3ドロア24cが次優先ドロアに決定され、取引操作が取出操作であれば、第3ドロア24cが最優先ドロア、第2ドロア24bが次優先ドロアに決定される。
次に、制御部205は、最優先ドロアに、収納または取り出される数量として全数量を割り当てることができるか否かを判定する(S202)。取引操作が収納操作である場合、制御部205は、在高データベース206cから最優先ドロアの現在の数量を取得し、ドロアが収納できる上限の数量と現在の数量とから収納可能な数量を求める。そして、制御部205は、入力された数量が収納可能な数量以下である場合に、最優先ドロアに全数量の割当が可能である判定する。また、取引操作が取出操作である場合、制御部205は、在高データベース206cから最優先ドロアの現在の数量を取得する。そして、制御部205は、現在の数量が、入力された数量以上である場合に、最優先ドロアに全数量の割当が可能である判定する。
最優先ドロアに全数量を割り当てることができる場合(S202:YES)、制御部205は、最優先ドロアに全数量を割り当てる(S203)。そして、制御部205は、最優先ドロアを開閉する処理を行う(S204)。即ち、制御部205は、まず、最優先ドロアに設けられたロック機構201を制御し、当該ロック機構201によるロックを解除する。これにより、最優先ドロアが引出可能な状態となる。操作者は、最優先ドロアを引き出す。収納操作の場合、操作者は最優先ドロアに全数量の硬貨(包装硬貨)を収納し、取出操作の場合、操作者は最優先ドロアから全数量の硬貨(包装硬貨)を取り出す。その後、操作者は、最優先ドロアを閉じる。閉塞検知部204により最優先ドロアが閉塞状態となったことが検知されると、制御部205は、ロック機構201を制御し、当該ロック機構201によるロックを行う。
一方、最優先ドロアに全数量を割り当てることができない場合(S202:NO)、制御部205は、最優先ドロアに取引可能、即ち収納または取出可能な数量を割り当てるとともに(S205)、次優先ドロアに残りの数量(全数量−取引可能な数量)を割り当てる(S206)。そして、制御部205は、最優先ドロアを開閉する処理を行う(S207)。操作者により、最優先ドロアに対して、取引可能な数量の硬貨の収納または取出が行われる。次に、制御部205は、次優先ドロアを開閉する処理を行う(S208)。操作者により、次優先ドロアに対して、残りの数量の硬貨の収納または取出が行われる。
なお、最優先ドロアが割り当てられた、2段に跨る金種以外の金種が対象金種である場合、操作者は、最優先ドロアが開放された際に、その金種の硬貨についても、最優先ドロアに対して収納または取出を行う。また、次優先ドロアが割り当てられた、2段に跨る金種以外の金種が対象金種である場合、次優先ドロアが開放された場合には、操作者は、その金種の硬貨についても、次優先ドロアに対して収納または取出を行う。
図7に戻り、対象金種に上側の2段のドロア24b、24cに跨る金種が含まれていない場合(S102:NO)、または、当該金種の硬貨のドロア24b、24cに対する収納または取出が完了した場合(S103)、制御部205は、受け付けた取引情報に基づいて、対象金種に、下側の2段のドロア24d、24eに跨る金種、ここでは5円の金種が含まれるか否かを判定する(S104)。対象金種に下側の2段のドロア24d、24eに跨る金種が含まれる場合(S104:YES)、制御部205は、図8に示す、2段に跨る金種の取引処理を実行する。これにより、下側の2段のドロア24d、24eに跨る金種について、当該金種の硬貨のドロア24d、24eに対する収納または取出が完了する。
対象金種に下側の2段のドロア24d、24eに跨る金種が含まれていない場合(S104:NO)、または、当該金種の硬貨のドロア24d、24eに対する収納または取出が完了した場合(S105)、制御部205は、取引操作が行われていない対象金種があるか否かを判定する(S106)。
対象金種に2段に跨る金種(500円、5円)とその他の金種(1万円、5千円、2千円、千円、100円、50円、10円、1円)が含まれて、2段に跨る金種に対する取引操作が完了したときに、取引操作がなされていないその他の金種が残っている場合、または、最初から対象金種に2段に跨る金種が含まれておらず、その他の金種のみが対象金種であった場合に、取引操作が行われていない対象金種があることになる。よって、この場合(106:YES)、制御部205は、取引操作が行われていない対象金種に割り当てられたドロアを開閉する処理を行う(S107)。これにより、対象金種の紙幣または硬貨が、対応するドロアに対して収納あるいは取り出される。なお、取引操作が行われていない対象金種が複数ある場合は、それら対象金種に割り当てられたドロアが、所定の順序、たとえば、上段優先あるいは下段優先の順序に従って、順次、開放される。
なお、対象金種に第1ドロア24aに収納される紙幣の金種(1万円、5千円、2千円、千円)が含まれる場合は、S107の処理のときではなく、S102の処理が行われる前に、第1ドロア24aを開閉する処理が行われてもよい。また、このように、最初に第1ドロア24aを開閉する処理が行われる場合は、S106およびS107の処理が行われず、代わりに、図8の処理において、次優先ドロアが割り当てられたその他の金種がある場合に、S204の最優先ドロアの開閉の後に、次優先ドロアを開閉する処理が行われてもよい。
また、最優先ドロア対し全数量または取引可能な数量の硬貨が収納または取り出される場合、その数量が表示部22に表示されるとよい。同様に、次優先ドロア対し残りの数量の硬貨が収納または取り出される場合も、その数量が表示部22に表示されるとよい。このようにすれば、操作者は、収納または取出の数量を誤りにくくなる。
このようにして、ドロア24a〜24eへの貨幣(紙幣、硬貨)の収納が完了すると、制御部205は、図9に示す自動精査の処理を行う。
図9を参照し、制御部205は、全ての金種について精査を行う(S301)。即ち、制御部205は、その他の金種(1万円、5千円、2千円、千円、100円、50円、10円、1円)について、それら金種の貨幣(紙幣、硬貨)に割り当てられたドロアに収納されている貨幣の実際の数量(小束の束数、包装硬貨の本数)をロードセル202による計測重量と変換テーブル206aとにより求めるとともに、在高データベース206c上の数量と入力部21により入力された数量とにより貨幣の管理上の数量を求める。管理上の数量は、取引操作が収納操作である場合、在高データベース206c上の数量に入力された数量を加算することにより求められ、取引操作が取出操作である場合、在高データベース206c上の数量から入力された数量を減算することにより求められる。そして、制御部205は、実際の数量と管理上の数量とが一致するか否かを、金種ごとに確認する。また、制御部205は、2段に跨る金種(500円、5円)については、ドロア単位で、実際の数量と管理上の数量とが一致するか否かを確認する。このとき、管理上の数量は、そのドロアにおける在高データベース206c上の数量と、図8の処理においてそのドロアに割り当てられた数量とにより求められる。
次に、制御部205は、全金種の貨幣の数量、即ち在高が一致しているか否かを判定する(S302)。そして、全金種の在高が一致している場合(S302:YES)、制御部205は、在高が一致している旨を表示部22に表示させる(S303)。こうして、自動精査の処理が終了する。
一方、何れかの金種について、在高が一致していない場合(S302:NO)、制御部205は、在高が不一致である旨、たとえば、不一致の金種と、過剰または不足の数量とを表示部22に表示させる(S304)。次に、制御部205は、不一致の金種に2段に跨る金種が含まれているか否かを判定する(S305)。
2段に跨る金種が含まれていない場合(S305:NO)、制御部205は、不一致の金種に割り当てられたドロア、即ち在高が不一致のドロアを開閉する処理を行う(S306)。在高が不一致のドロアが複数ある場合、それらドロアが所定の順序で順次開放される。操作者は、過剰分の硬貨を回収する、または不足分の硬貨を補充することで、在高の不一致を解消させる。
一方、2段に跨る金種が含まれている場合(S305:YES)、制御部205は、その金種に割り当てられた2つのドロアのうち、一方のドロアの在高(数量)が過剰で他方のドロアの在高(数量)が不足の状態にあるか否かを判定する(S307)。そのような状態にある場合は、在高の不一致を解消させる際に、在高が過剰のドロアから在高が不足のドロアへ硬貨が移されるため、このときにドロアが開閉される回数が少なくなることが望まれる。そこで、この場合(S307:YES)、制御部205は、まず、在高が過剰のドロアを開閉する処理を行い(S308)、その後に、在高が不足のドロアを開閉する処理を行う(S309)。
その後、制御部205は、他に在高が不一致のドロアがある場合(S310:YES)、全ての在高が不一致のドロアについて、そのドロアを開閉する処理を行う(S306)。また、不一致の対象金種に2段に跨る金種が含まれているが、一方のドロアの在高が過剰で他方のドロアの在高が不足の状態にはない場合(S305:YES→S307:NO)、制御部205は、2段に跨る金種に割り当てられたドロアを含む全ての在高が不一致のドロアについて、そのドロアを開閉する処理を行う(S306)。
こうして、全ての在高が不一致のドロアについて、そのドロアを開閉する処理が行われると、制御部205は、再び精査を行う(S301)。そして、制御部205は、全金種の在高が一致すれば(S302:YES)、在高が一致している旨を表示部22に表示させた後(S303)、自動精査の処理を終了する。
なお、図9に示す処理では、在高が過剰のドロアを開閉する処理と在高が不足のドロアを開閉する処理とが行われた後に、他の在高が不一致のドロアを開閉する処理が行われたが、他の在高が不一致のドロアを開閉する処理が先に行われるなど、それらの順序は如何なるものであってもよい。
自動精査が完了すると、図7の取引操作の処理が終了する。この際、在高データベース206cの中の在高(数量、金額)が、最新の在高に更新される。
なお、図7のフローチャートには示されていないが、収納操作において、対象金種に割り当てられたドロア(2段に跨る金種の場合は、2つのドロア)に、入力された数量の貨幣を全て収納できない場合、あるいは、取出操作において、対象金種に割り当てられたドロアから、入力された数量の貨幣を全て取り出せない場合、制御部205は、その対象金種についての取引操作を中止し、その対象金種の取引操作が行えない旨を表示部22に表示させる。
また、図8のフローチャートには示されていないが、最優先ドロアが満杯状態にあり、最優先ドロアに数量の割当が全くできない場合、制御部205は、次優先ドロアに全数量を割り当てて、次優先ドロアを開閉する処理のみを行う。この点は、後述する変更例1ないし変更例3についても同様である。
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
2つのドロア24b、24c(24d、24e)が割り当てられた金種の貨幣(硬貨)について、その数量の入力が入力部15、21で行われたとき、2つのドロアの間で決められた順番に基づいて、2つのドロアに対するロック機構201によるロックの解除が行われる。このため、操作者は、入力部15、21において、2つのドロアのうち、ロックを解除するドロア、即ち収納または取出を行うドロアを指定する入力を行う必要がなくなり、貨幣の収納または取出の操作を容易に行うことができる。
また、順番が上位の最優先ドロアに対して、入力された数量の貨幣の全てが収納または取出できる場合、最優先ドロアに全数量が割り当てられて次優先ドロアに数量が割り当てられず、最優先ドロアのみロックの解除が行われ、順番が下位である次優先ドロアはロックの解除が行われない。これにより、2つのドロアが割り当てられた金種の貨幣について収納または取出を行う場合に、ドロア24b、24c(24d、24e)が開閉される回数を減らすことができる。
さらに、収納操作と取出操作とで、最優先ドロアとするドロアと次優先ドロアとするドロアとが反対となるように、即ち、ロック機構201によるロックが解除されるドロアの順番が反対となるようにされているので、1つのドロアに、即ち最優先ドロアに決めたドロアに優先的に貨幣(硬貨)を集めることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、上記以外に種々の変更が可能である。以下、各種の変更例について説明する。
<変更例1>
図10は、変更例1に係る、2段に跨る金種の取引処理を示すフローチャートである。なお、図10では、図8のフローチャートと同じ内容の処理に、同じステップ番号を付している。
図10を参照し、変更例1では、制御部205は、最優先ドロアに全数量を割り当てることができない場合(S202:NO)、次優先ドロアに全数量を割り当てることができるか否かを判定する(S211)。そして、次優先ドロアに全数量を割り当てることができる場合(S211:YES)、制御部205は、次優先ドロアに全数量を割り当てた後(S212)、次優先ドロアを開閉する処理を行う(S213)。
このように、変更例1では、最優先ドロアに対して全数量の硬貨の収納または引出が行えない場合に、必ず最優先ドロアと次優先ドロアの双方が開閉されるのではなく、次優先ドロアに対して全数量の硬貨の収納または引出が行えるときには、次優先ドロアのみが開閉される。よって、ドロア24b、24c(24d、24e)が開閉される回数を一層減らすことが可能となる。
なお、変更例1において、最優先ドロアに全数量を割り当てることができる場合(S202:YES)であっても、最優先ドロアが割り当てられた、2段に跨る金種以外の金種が対象金種でなく、次優先ドロアが割り当てられた、2段に跨る金種以外の金種が対象金種であり、且つ、次優先ドロアに全数量を割り当てることができるか否かが判定され、この判定が肯定(YES)の場合に、S212へ進み、次優先ドロアに全数量が割り当てた後、S213で次優先ドロアを開閉する処理が行われるような構成が採られてもよい。このようにすれば、ドロア24b、24c(24d、24e)が開閉される回数を、より一層減らすことができる。
<変更例2>
図11は、変更例2に係る、2段に跨る金種の取引処理を示すフローチャートである。なお、図11では、図8のフローチャートと同じ内容の処理に、同じステップ番号を付している。
図11を参照し、変更例2では、制御部205は、同一金種に割り当てられた2つのドロア24b、24c(24d、24e)の在高を、在高データベース206cから取得し、取得した在高に基づいて、開放を優先するドロアの順番、即ち最優先ドロアと次優先ドロアとを決定する(S221)。このため、変更例2では、記憶部206に順番テーブル206bが設けられず、代わって、在高に基づいて順番を決定するための決定条件が記憶部206に記憶される。変更例2では、取引操作が収納操作である場合と取出操作である場合とで決定条件が異なっており、収納操作の場合、在高が少ないため収納可能な数量が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされ、取出操作の場合、在高が多いため取出可能な数量が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされる。
S221で最優先ドロアと次優先ドロアとが決定された後の処理(S202〜S208)は、上記実施形態と同様である。
このように、変更例2では、同一金種に割り当てられた2つのドロア24b、24c(24d、24e)の在高に基づいて順番が決まるので、貨幣(硬貨)の収納状況を考慮してドロアの順番を決めることができる。特に、収納操作の場合、在高が少ないために収納可能な数量が多い方のドロアが最優先ドロアとされ、取出操作の場合、在高が多いため取出可能な数量が多い方のドロアが最優先ドロアとされるので、1回のドロアの開閉で全数量の貨幣の収納または取出が行える可能性が高くなり、ドロア24b、24c(24d、24e)が開閉される回数を減らすことができる。
<変更例3>
上記実施形態では、最優先ドロアに対して収納または取出を行う数量が、全数量または取引可能な数量の何れかに決められ、次優先ドロアに対して収納または取出を行う数量が、ゼロまたは残りの数量(全数量−取引可能な数量)に決められるため、操作者は、最優先ドロアおよび次優先ドロアに対して、決められた数量の貨幣(硬貨)の収納または取出を行うことになる。これに対し、変更例3では、最優先ドロアおよび次優先ドロアに対して収納または取出を行う貨幣の数量を、操作者が自由に決めることができるようになされている。
図12は、変更例3に係る、2段に跨る金種の取引処理を示すフローチャートである。
図12を参照し、変更例3では、制御部205は、図5(a)の順番テーブル206bを用いて、開放を優先するドロアの順番、即ち最優先ドロアと次優先ドロアとを決定する(S401)。そして、制御部205は、最優先ドロアを開閉する処理を行う(S402)。最優先ドロアを開放した操作者は、自身が決めた数量の硬貨の収納または取出を行う。
次に、制御部205は、最優先ドロアに対して収納または取出された硬貨の数量を取引数量として取得する(S403)。即ち、制御部205は、ロードセル202による計測重量と変換テーブル206aとにより、最優先ドロアに収納されている硬貨の現在の数量を求める。そして、制御部205は、取引操作が収納操作である場合は、現在の数量から在高データベース206c上の数量(取引前の数量)を減算することにより、取引操作が取出操作である場合は、在高データベース206c上の数量から現在の数量を減算することにより、取引数量を算出する。
次に、制御部205は、取引数量が図7のS101で入力部15、21により入力された数量より多いか否かを判定する(S404)。取引数量が入力数量より多い場合(S404:YES)、その対象金種について在高が不一致であることになるので、制御部205は、在高が不一致である旨を表示部22に表示させる(S405)。その後、制御部205は、再び、最優先ドロアを開閉する処理を行う(S402)。操作者は、最優先ドロアに対する収納または取出をやり直すことになる。
S404において、制御部205は、取引数量が入力数量より多くないと判定した場合(S404:NO)、最優先ドロアに対する収納または取出により入力数量分の収納または取出が完了したか否かを判定する(S406)。操作者によって入力数量分の硬貨が全て最優先ドロアに対して収納または取り出されることにより、取引数量が入力数量と同数となれば、入力数量分の収納または取出が完了したことになる。この場合(S406:YES)、制御部205は、2段に跨る金種の取引処理を終了する。
一方、操作者によって入力数量分の硬貨の一部が最優先ドロアに対して収納または取り出されることにより、取引数量が入力数量と同数とならなければ、即ち取引数量が入力数量よりも少なければ、未だ入力数量分の収納または取出が完了していないことになる。この場合(S406:NO)、制御部205は、次優先ドロアに残りの数量(入力数量−取引数量)を割り当てる(S407)。そして、制御部205は、次優先ドロアを開閉する処理を行い(S408)、この処理が完了すると、2段に跨る金種の取引処理を終了する。
変更例3では、図12のように2段に跨る金種の取引処理が変更されるに伴い、図7のS108で実行される図9の自動精査の処理が、以下のとおり、変更される。
即ち、対象金種に含まれる2段に跨る金種について、最優先ドロアは、図12のS403ないしS405の処理が行われることにより、その精査が完了している。このため、変更例3では、図9のS301の精査において、既に精査が完了している最優先ドロアの精査は行われない。
また、最優先ドロアおよび次優先ドロアのうち、一方が過剰の在高となり他方が不足の在高となることがない。このため、変更例3では、図9のS307ないしS310の処理が行われなくなる。
以上、変更例3によれば、上記実施形態と同様の効果を奏し得る。さらに、変更例3によれば、最優先ドロアおよび次優先ドロアに対して収納または取出を行う貨幣の数量を、操作者が自由に決めることが可能となる。
なお、変更例3では、最優先ドロア対して硬貨が収納または取り出される場合、その数量が表示部22に表示されないが、次優先ドロア対し残りの数量の硬貨が収納または取り出される場合は、その数量が表示部22に表示されるような構成とされるとよい。
また、図12のS401の処理において、順番テーブル206bで上位のドロアに全数量を割り当てられず、下位のドロアに全数量を割り当てられる場合、下位のドロアを最優先ドロアに決定し、上位のドロアを次優先ドロアに決定してもよい。このようにすれば、ドロアの開閉回数を低減することが可能となる。
さらに、S401の処理が、図11に示す変更例2のS221の処理に置き換えられてもよい。即ち、2つのドロア24b、24c(24d、24e)の在高に基づいて、開放を優先するドロアの順番、即ち最優先ドロアと次優先ドロアとが決定されてもよい。
<変更例4>
上記実施形態、上記変更例1および上記変更例2では、入力された全数量の貨幣(硬貨)を最優先ドロアに対して収納可能または取出可能な場合に、次優先ドロアを開閉する処理が行われない。また、上記変更例3では、入力された全数量の貨幣(硬貨)が最優先ドロアに対して収納または取り出された場合に、次優先ドロアを開閉する処理が行われない。
これに対し、変更例4では、最優先ドロアおよび次優先ドロアに対する取引操作が全く不能の場合、即ち、これらドロアが収納操作時に満杯であるか取出操作時に空である場合を除いて、常時、双方のドロアを開閉する処理が行われる。このため、変更例4では、最優先ドロアおよび次優先ドロアに数量が割り当てられたり、最優先ドロアに対する取引数量が求められたりしない。
図13は、変更例4に係る、2段に跨る金種の取引処理を示すフローチャートである。
図13を参照し、変更例4では、制御部205は、図5(a)の順番テーブル206bを用いて、開放を優先するドロアの順番、即ち最優先ドロアと次優先ドロアとを決定する(S501)。次に、制御部205は、最優先ドロアに対する取引操作が全く不能であるか否か、即ち、収納操作の場合は最優先ドロアが満杯であるか否か、取出操作の場合は最優先ドロアが空であるか否かを判定する(S502)。そして、最優先ドロアに対する取引操作が全く不能でなければ(S502:NO)、制御部205は、最優先ドロアを開閉する処理を行う(S503)。
次に、制御部205は、次優先ドロアに対する取引操作が全く不能であるか否かを判定する(S504)。そして、次優先ドロアに対する取引操作が全く不能でなければ(S504:NO)、制御部205は、次優先ドロアを開閉する処理を行う(S505)。
変更例4では、操作者は、最優先ドロアおよび次優先ドロアのうち、一方に対して全ての硬貨の収納または取出しを行うか、あるいは、最優先ドロアに対して一部の硬貨の収納または取出を行い、次優先ドロアに対して残りの硬貨の収納または取出を行う。
変更例4では、図13のように2段に跨る金種の取引処理が変更されるに伴い、図7のS108で実行される図9の自動精査の処理が、以下のとおり、変更される。
図14は、変更例4に係る、自動精査の処理を示すフローチャートである。なお、図14では、図9のフローチャートと同じ内容の処理に、同じステップ番号を付している。
変更例4では、上記実施形態と異なり、S301において、2段に跨る金種(500円、5円)についても、ドロア単位で精査が行われることがない。即ち、これら金種については、2つのドロア24b、24c(24d、24e)の合計の実際の数量と管理上の数量との一致が確認される。このとき、変更例4では、図5(b)と違って、在高データベース206cにおいて、2つのドロア24b、24c(24d、24e)の合計の硬貨の数量および金額が管理されることになる。
さらに、変更例4では、最優先ドロアと次優先ドロアのそれぞれに対してどれだけの数量の硬貨が収納または取り出されたのかが不明であるので、S305において、不一致の対象金種に2段に跨る金種が含まれていると判定された場合(S305:YES)、制御部205は、最優先ドロアを開閉する処理と次優先ドロアを開閉する処理とを順次を行う(S321、S322)。なお、次優先ドロアを開閉する処理が先に行われてもよい。
以上、変更例4によれば、上記実施形態と同様、操作者は、入力部15、21において、収納または取出を行うドロアを指定する入力を行う必要がなくなり、貨幣の収納または取出の操作を容易に行うことができる。さらに、変更例4によれば、変更例3と同様、最優先ドロアおよび次優先ドロアに対して収納または取出を行う貨幣の数量を、操作者が自由に決めることが可能となる。
<その他の変更例>
上記実施形態では、貨幣管理装置20は、同一金種の硬貨の収納に割り当てられた2つのドロア24b、24c(24d、24e)を備える。しかしながら、貨幣管理装置20は、同一金種の紙幣の収納に割り当てられた2つのドロアを備えてもよい。この場合、たとえば、貨幣管理装置20は、紙幣用のドロアが新たに加わることで6つのドロアを備える構成となり得る。また、たとえば、貨幣管理装置20は、ドロアは5つのままで、硬貨用のドロアの一つが紙幣用のドロアに置き換えられ得る。そして、2つのドロアが割り当てられた紙幣の金種について、図8の2段に跨る金種の取引処理が行われる。なお、図10ないし図13の2段に跨る金種の取引処理が行われてもよい。
さらに、上記実施形態では、全ての金種に対して精査を行うこととしたが、開閉されたドロアに収納される金種のみに対して精査を行うこととしてもよい。
さらに、貨幣管理装置20は、同一金種の貨幣(紙幣、硬貨)の収納に割り当てられた3つ以上のドロアを備えるような構成とされてもよい。このような構成においても、図8と同様な取引処理が行われる。即ち、制御部205は、3つ以上のドロアの間で順番を決める(S201の処理に相当)。また、制御部205は、順番が上位のドロアから順に、そのドロアに対して収納または取出が可能な数量に基づいて、入力部15、21で入力された数量のうち、そのドロアに対して収納または取出を行う数量を割り当てる(S203、S205、S206の処理に相当)、そして、制御部205は、数量が割り当てられたドロアについてロックの解除を行い、数量が割り当てられなかったドロアについてロックの解除を行わない(S204、S207、S208の処理に相当)。
なお、貨幣管理装置20が、同一金種の貨幣の収納に割り当てられた3つ以上のドロアを備えるような構成の場合に、図8と同様な取引処理に替えて、図10ないし図13と同様な取引処理が行われてもよい。図12と同様な取引処理が行われる場合、最優先ドロアのみで収納または取出が完了しないときは、順番が2番目以降のドロアについて、S402ないしS406の処理と同様な処理が行われ、残り分の数量の貨幣が全てそのドロアに対して収納または取出され、全数量の収納または取出が完了したときに、それより順番が下位のドロアが開放されなくなる。
さらに、上記実施形態では、図5(a)の順番テーブル206bに示すように、収納操作と取出操作とで、ロック機構201によるロックが解除されるドロアの順番が反対となるようにされた。しかしながら、収納操作と取出操作とでロックが解除されるドロアの順番が同じとなるようにされてもよい。さらに、ロックが解除されるドロアの順番を、操作者が入力部21と表示部22を用いて設定できるようにしてもよい。
さらに、上記変更例2では、収納操作の場合、在高が少ないため収納可能な数量が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされ、取出操作の場合、在高が多いため取出可能な数量が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされた。しかしながら、在高に基づいて順番を決定するための決定条件は、上記の決定条件に限られない。たとえば、上記の決定条件とは反対に、収納操作の場合、在高が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされ、取出操作の場合、在高が少ない方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされてもよい。あるいは、取引操作が収納操作である場合も取出操作である場合も、在高が少ない方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされてもよいし、在高が多い方のドロアを最優先ドロアとすることが決定条件とされてもよい。
さらに、上記変更例2では、図11のS221での順番の決定の処理において、ドロア24b、24c(24d、24e)の在高(数量)自身が用いられた。しかしながら、結果的にドロア24b、24c(24d、24e)の在高に基づいて順番が決まれば、在高とは反対の関係となる収納可能な残りの在高(数量)、即ち、ドロアの空き容量を用いて順番が決められてもよい。
さらに、上記実施形態では、表示部22に入力画面が表示され、この入力画面上に、入力部21の硬貨金種キーB16および紙幣金種キーB17により金種が入力され、テンキーB11および束/本キーB12により数量(小束の束数、包装硬貨の本数)が入力された。しかしながら、全ての金種が入力画面に予め表示されており、収納操作または取出操作が必要な金種について、各金種に用意された数量の入力欄に、テンキーB11と束/本キーB12を用いて数量を入力するような構成、即ち、キー操作による金種の入力が不要な構成が採られてもよい。
さらに、上記実施形態では、出納機10から貨幣管理装置20へ貨幣を移す場合、あるいは、貨幣管理装置20から出納機10へ貨幣を戻す場合に、連携番号を用いて、通信により、取引情報(入金情報、出金情報)が、出納機10から貨幣管理装置20に送信されるようにされた。しかしながら、連携番号を用いることなく、通信により、取引情報(入金情報、出金情報)が、出納機10から貨幣管理装置20に送信されるようにされてもよい。この場合、出納機10での取引情報の入力が完了すると、出納機10から貨幣管理装置20へ取引情報が送信されるとともに、貨幣管理装置で図7の処理が開始される。
さらに、上記実施形態では、ドロア24a〜24eに収納された貨幣(紙幣、硬貨)の数量を検出するために貨幣の重量を測定するロードセル202が用いられた。しかしながら、ロードセル202以外の検出装置が用いられてもよい。
さらに、貨幣管理装置20に備えられるドロアの個数は、上記実施形態のように、5つに限られるものではなく、2つ以上であれば幾つであってもよい。また、貨幣管理装置20は、紙幣のみまたは貨幣のみを収納して管理するものであってもよい。
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。