JP2021017578A - 耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物 - Google Patents

耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂の耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できる耐摩耗性向上剤を提供することにある。
【解決手段】樹脂に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を添加して、耐摩耗性を向上する。前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
Figure 2021017578

(式中、環Zはそれぞれ独立してアレーン環、RおよびRはそれぞれ独立して置換基、Xはそれぞれ独立してヘテロ原子含有官能基、kはそれぞれ独立して0〜4の整数、nはそれぞれ独立して1以上の整数、pはそれぞれ独立して0以上の整数を示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する耐摩耗性向上剤、この耐摩耗性向上剤と樹脂とを含む樹脂組成物およびこの樹脂組成物で形成された成形体、ならびに樹脂に前記耐摩耗性向上剤を添加して耐摩耗性を向上する方法に関する。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEFともいう)などの9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、光学的特性や耐熱性などの特性に優れており、樹脂の重合成分としてのみならず、樹脂の物性を向上するための添加剤などとしてもよく利用されている。
このような添加剤として、例えば、特開2014−218659号公報(特許文献1)では、樹脂の引張強度などの機械的強度を向上できる強度向上剤;特開2014−205734号公報(特許文献2)では、樹脂のアッベ数を向上できるアッベ数向上剤;特開2014−205733号公報(特許文献3)および特開2014−218655号公報(特許文献4)では、所定のポリエステル樹脂の耐熱性を向上できる耐熱性向上剤;特開2011−144344号公報(特許文献5)では、セルロースエステルなどのセルロース誘導体を可塑化できる可塑剤;国際公開第2016/139826号(特許文献6)では、ポリアミド樹脂の溶融流動性を改善できる流動性改善剤;特開2005−290113号公報(特許文献7)では、使用済ポリマーを含む複数種のポリマーを相溶化して、再生プラスチック材料の実用的な物性を確保できる相溶化剤などが開示されている。
特開2014−218659号公報 特開2014−205734号公報 特開2014−205733号公報 特開2014−218655号公報 特開2011−144344号公報 国際公開第2016/139826号 特開2005−290113号公報
特許文献1〜7では、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が様々な添加剤として機能することが記載されているものの、いずれの文献でも耐摩耗性については何ら評価されていない。
従って、本発明の目的は、樹脂の耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できる耐摩耗性向上剤、この耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物およびその成形体、ならびに前記耐摩耗性向上剤を添加する耐摩耗性の改善方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、添加量が少なくても、耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できる耐摩耗性向上剤、この耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物およびその成形体、ならびに前記耐摩耗性向上剤を添加する耐摩耗性の改善方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、低分子化合物であっても、樹脂の機械的特性(曲げ特性など)を保持または向上しつつ、耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できる耐摩耗性向上剤、この耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物およびその成形体、ならびに前記耐摩耗性向上剤を添加する耐摩耗性の改善方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、繊維を含んでいても、動摩擦係数を低減できる耐摩耗性向上剤、この耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物およびその成形体、ならびに前記耐摩耗性向上剤を添加する耐摩耗性の改善方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、特許文献5および6記載の可塑剤や流動性改善剤などのように樹脂を柔らかく(または流れ易く)する機能を有する添加剤として知られているにもかかわらず、意外なことに、樹脂組成物における柔軟性(または流動性)とは相反する特性である耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の耐摩耗性向上剤は、樹脂の耐摩耗性を向上する(または摩耗質量を低減する)ための耐摩耗性向上剤であって、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含んでいる。
前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
Figure 2021017578
(式中、環Zはそれぞれ独立してアレーン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を示し、Xはそれぞれ独立してヘテロ原子含有官能基を示し、kはそれぞれ独立して0〜4の整数を示し、nはそれぞれ独立して1以上の整数を示し、pはそれぞれ独立して0以上の整数を示す)。
前記式(1)において、Xは基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基を示し、Yはヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基を示し、m1は0以上の整数を示す)であってもよい。
前記樹脂は、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。前記樹脂は、ポリオレフィン樹脂又はポリアセタール樹脂を含んでいてもよい。
本発明は前記樹脂および前記耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物を包含する。前記樹脂組成物は、さらに、セルロースを含んでいてもよい。前記樹脂組成物は、前記樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度の割合で前記耐摩耗性向上剤を含んでいてもよい。前記樹脂組成物は、前記樹脂100質量部に対して、1〜20質量部程度の割合で前記セルロースを含んでいてもよい。前記樹脂組成物は、前記耐摩耗性向上剤100質量部に対して、100〜500質量部の割合で前記セルロースを含んでいてもよい。
本発明は、前記樹脂組成物で形成された成形体を包含するとともに、前記耐摩耗性向上剤を前記樹脂に添加して、前記樹脂の耐摩耗性(樹脂組成物における耐摩耗性)を向上する方法も包含する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル」で示し、炭素数が6〜10のアリール基は「C6−10アリール」で示す。
本発明では、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(フルオレン化合物ともいう)を樹脂に添加することにより、樹脂の耐摩耗性を向上(摩耗質量を低減)できる。また、フルオレン化合物の添加量が少なくても、樹脂の耐摩耗性を有効に向上できる。さらに、フルオレン化合物が低分子化合物であっても、樹脂の機械的特性(曲げ特性など)を保持または向上できるため、樹脂の特性を大きく損なうことなく耐摩耗性を向上できる。また、本発明では、樹脂組成物がセルロース繊維などの繊維(または繊維状フィラー)を含んでいても、動摩擦係数を低減できる。
[耐摩耗性向上剤(または摩耗質量低下剤)]
本発明の耐摩耗性向上剤は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(フルオレン化合物)を少なくとも含んでいればよく、通常、フルオレン化合物のみで構成されることが多い。フルオレン化合物としては、構成単位中に9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含む高分子化合物であってもよいが、樹脂中に均一分散し易い点から、通常、低分子化合物であることが多く、代表的なフルオレン化合物としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021017578
(式中、環Zはそれぞれ独立してアレーン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を示し、Xはそれぞれ独立してヘテロ原子含有官能基を示し、kはそれぞれ独立して0〜4の整数を示し、nはそれぞれ独立して1以上の整数を示し、pはそれぞれ独立して0以上の整数を示す)。
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニル環などのテルC6−12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環が挙げられる。
フルオレンの9位に置換する2つの環Zの種類は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6−14アレーン環が好ましく、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6−12アレーン環が挙げられ、特にベンゼン環が好ましい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよく、通常、2−ナフチル基であることが多い。また、環Zがビフェニル環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は3−ビフェニリル基であることが多い。
で表されるヘテロ原子含有官能基におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素、硫黄および窒素原子から選択された少なくとも1種を有する官能基などが挙げられる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1または2個である。
前記官能基としては、例えば、基−[(OA)m1−Y](式中、Yはヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基またはメルカプト基であり、Aはアルキレン基であり、m1は0以上の整数である)、基−[(CHm2−COOR](式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
基−[(OA)m1−Y]において、YのN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
アルキレン基Aには、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状C2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基)が挙げられ、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。これらのアルキレン基のうち、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2−4アルキレン基が好ましく、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基が好ましい。
オキシアルキレン基−(OA)−の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm1は、0以上(例えば0〜15、好ましくは0〜10程度)の範囲から選択でき、例えば0〜8(例えば1〜8)、好ましくは0〜5(例えば1〜5)、さらに好ましくは0〜4(例えば1〜4)、特に0〜3(例えば1〜3)程度であってもよく、通常0〜2(例えば0〜1)、特に1である。なお、m1が2以上である場合、2以上のアルキレン基Aの種類は、同一または異なっていてもよい。また、同一のまたは異なる環Zに複数の基−[(OA)m1−Y]が結合する場合、複数のm1の値は、それぞれ、同一または異なっていてもよい。さらに、アルキレン基Aおよび基Yの種類は、それぞれ、同一のまたは異なる環Zにおいて、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
基−[(CHm2−COOR]において、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1−6アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基は、C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm2は0または1以上の整数(例えば1〜6程度、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2)である。m2は、通常、0または1〜2であってもよい。
これらのうち、基Xは、基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基であり、Yはヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基であり、m1は0以上の整数である)が好ましく、さらに好ましくはYがヒドロキシル基である基−[(OA)m1−OH][式中、Aはエチレン基などのC2−6アルキレン基(例えばC2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基)であり、m1は0〜5の整数(例えば0または1、好ましくは1)である]が特に好ましい。
前記式(1)において、環Zに置換した基Xの個数を示すnは、1以上であり、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2(特に1)である。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2位、3位、または4位(例えば、3位および/または4位、特にnが1である場合、4位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1−ナフチルまたは2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特にnが1である場合、2,6位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環および/またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3位または4位(特に3位)がフルオレンの9位に結合することが多く、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2,4,5,6,2’,3’,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換することが多い。
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6−12アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1−10アルコキシ基など);シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルコキシ基など);アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など);アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など);アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など);シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など);アリールチオ基(チオフェノキシ基(フェニルチオ基)などのC6−10アリールチオ基など);アラルキルチオ基(ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)であり、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1−4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、互いに同一または異なっていてもよい。
置換基Rの置換数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば0〜2)の整数、さらに好ましくは0または1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。異なる環Zにおける置換数pは、互いに異なっていてもよいが、通常、同一であることが多い。
置換基Rとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。
これらの置換基Rのうち、直鎖状または分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)、カルボキシル基またはC1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0〜4(例えば0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば0または1)、特に0である。なお、異なる環Zにおける置換数kは、互いに同一または異なっていてもよい。また、kが2以上である場合、フルオレン環を形成する同一のベンゼン環に置換する2以上の置換基Rの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一または異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位(2位、3位および/または7位など)であってもよい。
これらのうち、基Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)である場合の好ましいフルオレン化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノまたはジC1−4アルキル−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[アルキル−ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノまたはジC1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−ヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[アリール−ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ−アリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−10アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス(ジまたはトリヒドロキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジまたはトリヒドロキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[ジまたはトリ(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ)アリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジまたはトリ(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール]フルオレンなどが挙げられる。
基Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Yがグリシジルオキシ基を示す)である場合の好ましいフルオレン化合物としては、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノまたはジC1−4アルキル−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジメチル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[モノまたはジC1−4アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス[アリール−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−10アリール−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス[ジまたはトリ(グリシジルオキシ)アリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジまたはトリ(グリシジルオキシ)C6−10アリール]フルオレン;9,9−ビス[ジまたはトリ(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシ)アリール]フルオレン、例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,5−ジ(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジまたはトリ(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール]フルオレンなどが挙げられる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
これらのフルオレン化合物(耐摩耗性向上剤)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのフルオレン化合物のうち、基Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)であるフルオレン化合物が好ましく、さらに好ましくは9,9−ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2−3アルコキシ−C6−10アリール]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレンが挙げられ、なかでも、9,9−ビス[ヒドロキシ(モノないしヘキサ)C2−3アルコキシ−フェニル]フルオレンが好ましく、特に9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ヒドロキシC2−3アルコキシ−フェニル]フルオレンが好ましい。
[樹脂組成物]
本発明は、樹脂と、前記耐摩耗性向上剤(フルオレン化合物)とを少なくとも含む樹脂組成物を包含する。なお、樹脂組成物は、フルオレン化合物を単独でまたは2種以上組み合わせて含んでいてもよく、フルオレン化合物の好ましい態様は、前記耐摩耗性向上剤の項の記載と同様である。
(樹脂)
樹脂としては、硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂)であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。
硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂など)、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂など)、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂(またはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、多官能(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂(ビスマレイミド系樹脂など)、シリコーン樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂など);スチレン系樹脂[ポリスチレン(PS){一般用ポリスチレン(GPPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など};スチレン系共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分含有スチレン系樹脂またはゴムグラフトスチレン系共重合体{耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、AXS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)−スチレン共重合体(AES樹脂)など)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)など}など]など];(メタ)アクリル樹脂[ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体など];酢酸ビニル系樹脂[ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)など)など];塩化ビニル系樹脂[塩化ビニル樹脂(塩化ビニル単独重合体(PVC);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体などの塩化ビニリデン共重合体など)など];フッ素樹脂[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)など];ポリエステル樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ1,4−シクロヘキシルジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステル(LCP)など];ポリカーボネート樹脂(PC)[ビスフェノールA型ポリカーボネート系樹脂などのビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂];ポリアミド樹脂(PA)[脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66など)、芳香族ポリアミド樹脂またはアラミド樹脂(ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなど)など];ポリアセタール樹脂(POM);ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE);ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)など);フェノキシ樹脂;ポリケトン樹脂(脂肪族ポリケトン樹脂など);ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS);ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)など);セルロース誘導体[セルロースエステル(ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど)、セルロースエーテル(エチルセルロースなど)など];熱可塑性ポリイミド樹脂(ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミドなど);ポリエーテルニトリル樹脂;熱可塑性エラストマー(TPE)[ポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリジエン系TPE、塩素系TPE、フッ素系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE(TPA)など]などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの樹脂のうち、通常、熱可塑性樹脂であることが多く、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも1種を含むのが好ましく、なかでも、ポリオレフィン樹脂又はポリアセタール樹脂が好ましい。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、α−オレフィンを主要な重合成分とする鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン類を重合成分として含む環状オレフィン系樹脂(エチレン−ノルボルネン共重合体などの環状オレフィン共重合体(COC)、ポリノルボルネン、ポリジシクロベンタジエン、ポリシクロペンタジエンもしくはこれらの水添物などの環状オレフィン類の付加もしくは開環重合体またはその水添物など)などが挙げられ、通常、鎖状オレフィン系樹脂であることが多い。
鎖状オレフィン系樹脂の重合成分であるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのα−C2−20オレフィン(好ましくはα−C2−10オレフィン、特に、エチレン、プロピレンなどのα−C2−6オレフィン)などが挙げられる。
鎖状オレフィン系樹脂は、前記α−オレフィンの単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体における重合成分は、2種以上のα−オレフィンを含んでいてもよく、α−オレフィンとは異なる共重合性単量体を含んでいてもよい。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体などであってもよい。
共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル{(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルなど}、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド{N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのモノまたはジアルキル(メタ)アクリルアミドなど}、(メタ)アクリロニトリルなど];不飽和カルボン酸またはその酸無水物[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸またはこれらの無水物(無水マレイン酸など)など];カルボン酸ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和カルボン酸ビニルエステルなど);ジエン(1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役アルカジエン、ブタジエン、イソプレンなどの共役アルカジエンなど)などが挙げられる。
これらの共重合性単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。鎖状オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂)が共重合性単量体を含む場合、構成単位全体に対する共重合性単量体の割合は、例えば、70モル%程度以下であってもよく、通常、50モル%以下、例えば、30モル%以下(例えば、0.01〜30モル%)、好ましくは20モル%以下(例えば、0.1〜20モル%)、さらに好ましくは10モル%以下(例えば、1〜10モル%)程度である。
代表的な鎖状オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ1−ブテン系樹脂、ポリ4−メチル−1−ペンテン系樹脂などのポリα−C2−6オレフィン系樹脂などが挙げられ、通常、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、特に、ポリエチレン系樹脂がよく利用される。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレン−(α−C3−10オレフィン)共重合体[エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−プロピレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(4−メチル−1−ペンテン)共重合体など]、変性ポリエチレン(無水マレイン酸変性ポリエチレンなど)、塩素化ポリエチレン、アイオノマーなどが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、HDPE、LLDPE、UHMWPEなどの分岐構造がほとんどない直鎖状ポリエチレンが好ましく、耐摩耗性の観点から、HDPE、UHMWPE、なかでもHDPEが特に好ましい。
(ポリアセタール樹脂)
ポリアセタール樹脂には、実質的にオキシメチレン単位(−CHO−)の繰り返しのみからなるポリアセタールホモポリマー(単独重合体)、及びオキシメチレン単位と少なくとも1種の共重合性単量体(コモノマー)単位とを含有するポリアセタールコポリマー(共重合体)が含まれる。ポリアセタール系樹脂は、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいが、熱安定性に優れ、広範な用途に利用できる観点からコポリマー(共重合体)である場合が多い。
ポリアセタールコポリマー(共重合体)は、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。なお、ポリアセタールコポリマー(共重合体)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってもよい。
前記コポリマーのコモノマー単位としては、オキシC2−6アルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基などのオキシC2−4アルキレン単位など)などが例示できる。
これらのコモノマー単位は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。コモノマー単位の含有量は、ポリアセタール樹脂全体に対し、例えば、0.01〜30モル%、好ましくは0.03〜20モル%、さらに好ましくは0.03〜15モル%程度であってもよい。
具体的には、前記ポリアセタール樹脂は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、トリオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールなどの環状エーテルや環状ホルマールなどを主たる重合成分とする単独又は共重合体であってもよい。さらに、前記ポリアセタール樹脂は、他の共重合成分、例えば、アルキル又はアリールグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなど)、アルキレン又はポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、アルキル又はアリールグリシジルアルコール、環状エステル(例えば、β−プロピオラクトンなど)及びビニル化合物(例えば、ビニルエーテルなど)などを含んでいてもよい。
前記ポリアセタール樹脂の構造は、線状、分岐状であってもよく、架橋していてもよい。また、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化、イソシアネート化合物とのウレタン化、エーテル化などにより安定化してもよい。
これらのポリアセタール樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(樹脂の特性)
樹脂の密度は、例えば、0.85〜3g/cm程度の範囲から選択してもよく、例えば0.9〜2.7g/cm(例えば0.92〜2.6g/cm)、好ましくは0.94〜2g/cm(例えば0.95〜1.8g/cm)、さらに好ましくは0.95〜1.5g/cmであってもよい。
樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン系樹脂)の密度は、例えば0.87〜1g/cm程度の範囲から選択してもよく、例えば0.9〜0.99g/cm(例えば0.93〜0.98g/cm)、好ましくは0.94〜0.98g/cm(例えば0.95〜0.97g/cm)、さらに好ましくは0.955〜0.965g/cmである。また、樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂)の密度は、例えば0.95〜1.8g/cm程度の範囲から選択してもよく、例えば0.97〜1.78g/cm(例えば1〜1.75g/cm)、好ましくは1.1〜1.73g/cm(例えば1.15〜1.75g/cm)、さらに好ましくは1.2〜1.7g/cmである。密度が小さすぎると、耐摩耗性が低下するおそれがある。なお、本明細書および特許請求の範囲において、密度は、JIS K 6922に準じて測定できる。
樹脂[例えば、ポリオレフィン樹脂(特にポリエチレン系樹脂)、ポリアセタール樹脂など]の重量平均分子量Mwは、例えば、10000〜10000000程度の範囲から選択してもよい。また、数平均分子量Mnは、例えば、10000〜1000000程度の範囲から選択してもよく、例えば、50000〜800000、好ましくは100000〜500000、さらに好ましくは200000〜400000(例えば250000〜350000)である。分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1〜50程度の範囲から選択してもよく、例えば、2〜25である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、GPCにより標準ポリスチレン換算で測定できる。
樹脂組成物において、樹脂100質量部に対するフルオレン化合物(耐摩耗性向上剤)の割合は、例えば、0.001〜100質量部(例えば、0.01〜50質量部)程度の範囲から選択してもよく、例えば、0.03〜30質量部(例えば、0.05〜15質量部)、好ましくは0.1〜10質量部(例えば、0.5〜8質量部)、さらに好ましくは1〜7質量部(例えば、2〜6質量部)、特に好ましくは3〜5質量部である。フルオレン化合物、特に式(1)で表されるフルオレン化合物の割合が多すぎると、脆くなって耐摩耗性が低下するおそれがあり、少なすぎると耐摩耗性向上効果を十分に発揮できないおそれがある。本発明では、フルオレン化合物の添加量が比較的少なくても、耐摩耗性を有効に向上できる。
(セルロース)
必ずしも必要ではないが、樹脂組成物は、さらにセルロースを含んでいてもよい。
セルロースとしては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが挙げられる。これらのセルロースは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維パルプ(例えば、コットンリンターパルプ)など、植物由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ない点から、パルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
セルロースは、粒状などであってもよいが、通常、繊維状である。セルロースが繊維状セルロース(セルロース繊維)である場合、セルロースの繊維径はミクロンオーダーであってもよく、ナノメータサイズであってもよい。セルロース繊維の平均繊維径は、例えば3nm〜500μm(例えば10nm〜100μm)程度の範囲から選択してもよく、例えば100nm〜90μm(例えば1〜80μm)、好ましくは10〜70μm(例えば20〜60μm)、さらに好ましくは30〜50μm(特に35〜45μm)である。平均繊維径が大きすぎると、樹脂組成物の強度などの特性が低下するおそれがある。なお、セルロース繊維の最大繊維径は、例えば1〜1000μm(例えば4〜900μm)、好ましくは5〜700μm(例えば10〜500μm)、さらに好ましくは15〜400μm(例えば20〜300μm、好ましくは30〜100μm、特に40〜80μm)程度であってもよい。
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば0.01μm以上(例えば0.01〜500μm、好ましくは0.1〜400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5〜300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20〜200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50〜150μm)であってもよい。平均繊維長が短すぎると、樹脂組成物の機械的特性が低下するおそれがあり、逆に長すぎると、樹脂組成物中での分散性が低下するおそれがある。
セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5〜10000程度)、好ましくは10以上(例えば10〜5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば20〜3000程度)、特に50以上(例えば50〜2000程度)であってもよく、100以上(例えば100〜1000程度)、さらには200以上(例えば200〜800程度)であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、補強効果が低下するおそれがあり、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(または損傷)し易くなるおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲では、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
セルロース繊維が、平均繊維径がナノメーターサイズのセルロースナノ繊維である場合、セルロースナノ繊維は、慣用の方法、例えば、高圧ホモジナイザー法、水中対抗衝突法、グラインダー法、ボールミル法、二軸混練法などの物理的方法で得られたナノ繊維であってもよく、TEMPO触媒、リン酸、二塩基酸、硫酸、塩酸などを用いた化学的方法で得られたナノ繊維であってもよい。
セルロースは、結晶性の高いセルロース(またはセルロース繊維)であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40〜100%(例えば50〜100%)、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%(特に75〜99%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば60〜98%)であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
セルロースは、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよいが、セルロース繊維(特に、セルロースナノ繊維)の場合、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維(特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維)であってもよい。
セルロースの重合度は、組成物の機械的特性の点から、500以上であってもよく、好ましくは600以上(例えば600〜10万程度)であってもよく、セルロースナノ繊維の場合、粘度平均重合度が、例えば100〜10000、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜2000程度であってもよい。
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、セルロース(セルロース繊維または原料セルロース)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程度攪拌してセルロースを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアル(日本木材学会編、文永堂出版)に記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
粘度平均重合度=175×[η]。
樹脂組成物において、樹脂100質量部に対するセルロース(特にセルロース繊維)の割合は、例えば0.01〜100質量部(例えば0.1〜50質量部)程度の範囲から選択してもよく、例えば0.5〜30質量部(例えば1〜20質量部)、好ましくは3〜18質量部(例えば5〜17質量部)、さらに好ましくは7〜16質量部(例えば10〜15質量部)である。セルロースの割合が多すぎると動摩擦係数を低減し難くなるおそれがあり、少なすぎると摩耗質量を低減し難くなるおそれがある。
また、フルオレン化合物(耐摩耗性向上剤)100質量部に対するセルロース(特にセルロース繊維)の割合は、例えば10〜1000質量部(例えば50〜800質量部)程度の範囲から選択してもよく、例えば100〜500質量部(例えば200〜400質量部)、好ましくは250〜350質量部(例えば275〜325質量部)である。セルロースの割合が多すぎると、樹脂組成物中に均一に分散し難くなるおそれがある。
(他の成分)
本発明の樹脂組成物は、さらに慣用の添加剤、例えば、充填剤(補強剤または強化剤)(セルロースを除く粉粒状または繊維状の充填剤)、難燃剤、難燃助剤、安定剤(例えば、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など)、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、滑剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、離型剤、帯電防止剤、導電剤、着色剤(染顔料など)、硬化剤、分散剤、相溶化剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。添加剤の割合は、樹脂100質量部に対して、例えば30質量部以下(例えば0〜20質量部)、好ましくは10質量部以下(例えば0〜5質量部)程度であってもよい。
(樹脂組成物の製造方法および特性)
樹脂組成物の製造方法は、各成分を均一に分散できれば特に制限されず、樹脂と、フルオレン化合物(耐摩耗性向上剤)と、必要に応じてセルロースや他の添加剤とを、慣用の混合または混練機、例えば、ホモジナイザー、ミキサーもしくは混合機、混練機(ニーダー、ロール、押出機など)を用いて混合または混練して調製できる。混合または混練は、乾式または湿式であってもよく、溶融混練であってもよい。
また、得られた樹脂組成物を用いて、慣用の成形法、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法などにより成形体を形成できる。成形体の形状としては、二次元的構造(膜、フィルム、シート、板など)、三次元的構造(棒、ブロック、中空品(管(チューブ)など)、異形形状など)などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は高い耐摩耗性(低い摩耗質量)を示すため、代表的な摩耗質量としては、例えば0.1〜10mg(例えば0.3〜8mg)程度であってもよく、例えば0.5〜6mg(例えば0.8〜5mg)、好ましくは1〜4mg(例えば1〜3mg)、さらに好ましくは1.3〜2.7mg(例えば1.5〜2.5mg)である。また、摩耗質量は、樹脂の種類に応じて、例えば、0.5〜10mg(例えば1〜9mg)程度であってもよく、例えば1.2〜8mg(例えば1.4〜7.5mg)、好ましくは1.5〜7mg(例えば2〜6.8mg)、さらに好ましくは2.5〜6.5mg(例えば2.8〜6mg)である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、摩耗質量は、JIS K 7218 A法に準じて測定できる。
また、樹脂組成物は、繊維(例えば、セルロース繊維など)を含んでいても動摩擦係数を低減できるため、摺動部材などとして有効に利用できる。代表的な動摩擦係数としては、例えば0.1〜0.5(例えば0.15〜0.45)、好ましくは0.2〜0.4(例えば0.25〜0.35)程度である。また、動摩擦係数は、樹脂の種類に応じて、例えば0.1〜0.65(例えば0.15〜0.6)、好ましくは0.25〜0.55(例えば0.3〜0.5)程度である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、動摩擦係数は、JIS K 7218 A法に準じて測定できる。
樹脂組成物は、曲げ特性などの機械的強度を維持または向上できる場合がある。樹脂組成物の曲げ強さとしては、10〜120MPa(例えば、15〜100MPa)程度であり、樹脂組成物の代表的な曲げ強さ(例えば、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン系樹脂)としては、例えば10〜50MPa(例えば15〜45MPa)、好ましくは20〜40MPa(例えば25〜35MPa)程度である。なお、本発明では、樹脂の種類に応じて、樹脂組成物の曲げ強さを選択でき、例えば、本来、機械的特性に優れる樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂など)では、樹脂組成物の曲げ強さは、例えば30〜110MPa(例えば50〜100MPa)、好ましくは60〜95MPa(例えば65〜95MPa)、さらに好ましくは70〜90MPa(例えば80〜90MPa)程度であってもよい。
また、樹脂組成物の曲げ弾性率としては、例えば、500〜10000MPa(1000〜8000MPa)程度であり、代表的な曲げ弾性率(例えば、ポリオレフィン樹脂、特にポリエチレン系樹脂)としては、例えば500〜3000MPa(例えば1000〜2000MPa)、好ましくは1200〜1800MPa(例えば1300〜1500MPa)程度である。なお、本発明では、樹脂の種類に応じて、樹脂組成物の曲げ弾性率も選択でき、例えば、本来、機械的特性に優れる樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂など)では、樹脂組成物の曲げ弾性率は、例えば1500〜6500MPa(例えば2000〜6000MPa)、好ましくは2500〜4500MPa(例えば3000〜4000MPa)程度であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、曲げ強さおよび曲げ弾性率は、ISO 178に準じて測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価方法および使用原料の詳細について示す。
[評価方法]
(曲げ強さおよび曲げ弾性率)
ISO 178に準拠して、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
(摩耗質量)
JIS K7218A法に準拠し、摩耗質量を測定した。
(動摩擦係数)
JIS K7218A法に準拠し、動摩擦係数を測定した。
[使用原料]
(フルオレン化合物)
BPEF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製「BPEF」)。
(樹脂)
HDPE:高密度ポリエチレン、密度 0.958g/cm、日本ポリエチレン(株)製「ノバテックHD HJ490」
POM:ポリアセタール、ポリプラスチックス(株)製「ジュラコンM90―44」。
(繊維)
セルロース繊維:植物由来のパルプシートを2mm×5mm角程度のチップ状に裁断したもの、平均繊維径 約40μm。
[実施例1および比較例1〜2]
表1に示す質量割合の各成分を二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/hで混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を、温度200℃で射出成形し、短冊状試験片を得た。
Figure 2021017578
実施例1および比較例1〜2で得られた試験片を用いて、曲げ強さ、曲げ弾性率、摩耗質量および動摩擦係数を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2021017578
表2から明らかなように、実施例の組成物は、比較例の組成物に比べて、曲げ強さおよび曲げ弾性率が向上し、摩耗質量および動摩擦係数が小さくなった。
なお、セルロース繊維(パルプ)を添加した実施例1および比較例2において、試験片の外観および破断面などを目視で観察したところ、いずれも繊維凝集物は確認されず、セルロース繊維(パルプ)は同程度に分散していた。
[実施例2および比較例3〜4]
表3に示す質量割合の各成分を用いる以外は、実施例1と同様にペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片を得た。
Figure 2021017578
実施例2および比較例3〜4で得られた試験片を用いて、曲げ強さ、曲げ弾性率、摩耗質量を評価した。結果を表4に示す。
Figure 2021017578
表4から明らかなように、実施例の組成物は、比較例の組成物に比べて、曲げ強さおよび曲げ弾性率を保持又は向上しつつ、摩耗質量が小さくなった。
なお、セルロース繊維(パルプ)を添加した実施例2および比較例4において、試験片の外観および破断面などを目視で観察したところ、いずれも繊維凝集物は確認されず、セルロース繊維(パルプ)は同程度に分散していた。
実施例からも明らかなように、本発明の耐摩耗性向上剤は、種々の樹脂に対して有用である。ポリオレフィン樹脂などの柔軟で成形性に優れる樹脂に対して、本発明の耐摩耗性向上剤を用いると、曲げ強さや曲げ弾性率などの機械的強度を向上しつつ、摩耗質量が減少した。また、ポリアセタール樹脂などの強靭で本来耐摩耗性に優れる樹脂に対し、本発明の耐摩耗性向上剤を用いると、その機械的特性を損なうことなく、摩耗質量を減少させることができた。本発明の耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物は、曲げ強さや曲げ弾性率を向上又は保持しつつ、耐摩耗性にも優れるため、目的や用途に応じて樹脂を選択できる。
本発明の耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物は、摩擦材料(または摩擦部材)または摺動材料(または摺動部材)などとして好適に利用でき、例えば、耐摩耗性を要する各種の工業用部材、建築部材、輸送機部材、電気・電子機器部材などに有効に利用できる。

Claims (12)

  1. 樹脂の耐摩耗性を向上するための耐摩耗性向上剤であって、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を含む耐摩耗性向上剤。
  2. 前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1記載の耐摩耗性向上剤。
    Figure 2021017578
    (式中、環Zはそれぞれ独立してアレーン環を示し、RおよびRはそれぞれ独立して置換基を示し、Xはそれぞれ独立してヘテロ原子含有官能基を示し、kはそれぞれ独立して0〜4の整数を示し、nはそれぞれ独立して1以上の整数を示し、pはそれぞれ独立して0以上の整数を示す。)
  3. 前記式(1)において、Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基を示し、Yはヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基を示し、m1は0以上の整数を示す)である請求項2記載の耐摩耗性向上剤。
  4. 前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性向上剤。
  5. 前記樹脂が、ポリオレフィン樹脂又はポリアセタール樹脂を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性向上剤。
  6. 樹脂および請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐摩耗性向上剤を含む樹脂組成物。
  7. セルロースをさらに含む請求項6記載の樹脂組成物。
  8. 前記樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の割合で前記耐摩耗性向上剤を含む請求項6または7記載の樹脂組成物。
  9. 前記樹脂100質量部に対して、1〜20質量部の割合で前記セルロースを含む請求項7または8記載の樹脂組成物。
  10. 前記耐摩耗性向上剤100質量部に対して、100〜500質量部の割合で前記セルロースを含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された成形体。
  12. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐摩耗性向上剤を樹脂に添加して、樹脂の耐摩耗性を向上する方法。
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