JP2020076068A - 摩擦材料及び摩擦部材、並びにその製造方法 - Google Patents

摩擦材料及び摩擦部材、並びにその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020076068A
JP2020076068A JP2019182241A JP2019182241A JP2020076068A JP 2020076068 A JP2020076068 A JP 2020076068A JP 2019182241 A JP2019182241 A JP 2019182241A JP 2019182241 A JP2019182241 A JP 2019182241A JP 2020076068 A JP2020076068 A JP 2020076068A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
modified cellulose
group
curable resin
mass
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019182241A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7284681B2 (ja
Inventor
山田 昌宏
Masahiro Yamada
昌宏 山田
村瀬 裕明
Hiroaki Murase
裕明 村瀬
真之 廣田
Masayuki Hirota
真之 廣田
伊藤 玄
Gen Ito
玄 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka Gas Co Ltd
Osaka Gas Chemicals Co Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
Osaka Gas Chemicals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka Gas Co Ltd, Osaka Gas Chemicals Co Ltd filed Critical Osaka Gas Co Ltd
Publication of JP2020076068A publication Critical patent/JP2020076068A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7284681B2 publication Critical patent/JP7284681B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Braking Arrangements (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】高温環境下において、高摩擦性及び耐摩耗性を備えた摩擦材料及び摩擦部材を提供する。【解決手段】フェノール樹脂などの硬化性樹脂100質量部に対し、セルロースナノファイバーに、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が結合した修飾セルロースナノファイバーを0.1〜30質量部添加し、摩擦部材を形成するのに有用な硬化性樹脂組成物(摩擦材料)を調製する。前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。(式中、環Zはアレーン環、R1及びR2は置換基、X1はヘテロ原子含有官能基、kは0〜4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)。【選択図】なし

Description

本発明は、ブレーキパッドなどのブレーキ材などに利用される摩擦部材を形成するための摩擦材料として有用な硬化性樹脂組成物、及び摩擦部材、並びにその製造方法に関する。
車両、航空機などのブレーキ材(例えば、ブレーキパッド、ブレーキディスク)などに利用される摩擦部材(又は摩擦材)は、高温環境下においても、高い機械的強度、高摩擦係数、及び耐摩耗性を備えていることが要求される。ブレーキ材などの摩擦部材は、無機系と有機系とに大別でき、有機系の摩擦部材には、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂と強化繊維とを含む摩擦材料が使用されている。また、近年、環境負荷に対する配慮から、前記強化繊維として、セルロースなどの植物由来の繊維の使用が検討されている。
例えば、特開2018−131477号公報(特許文献1)には、摩擦材用の結合材として、リグノセルロースナノファイバーが熱硬化性樹脂に分散された熱硬化性樹脂組成物が記載され、リグノセルロースナノファイバーを用いることで、分散処理をすることなく、セルロース繊維を熱硬化性樹脂に分散できることが記載されている。また、この文献の実施例では、リグノセルロースナノファイバーを含む前記熱硬化性樹脂組成物10質量%と、アラミド繊維5質量%と、硫酸バリウムなどの摩擦調整材85質量%とを含む摩擦材が、高い曲げ強度及び耐摩耗性を示すことが記載されている。
しかし、特許文献1では、熱硬化性樹脂にセルロース繊維を分散させるために、セルロース純度の低い(セルロース成分の含有量が少ない)リグノセルロースナノファイバーを用いる必要がある。また、所望の強度及び耐摩耗性を得るためには、リグノセルロースナノファイバーの含有割合を高め、セルロース成分を高濃度とすることが有利であるが、リグノセルロースナノファイバーはリグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分を多量に含むため、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性及び耐摩耗性を高めることが困難である。
一方、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とセルロースナノファイバーとを含む材料としては、機械装置の軸受けなどに利用される摺動材及び摺動材料も報告されている。
例えば、特開2017−171698号公報(特許文献2)には、疎水変性セルロースナノファイバーと、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選択された樹脂成分とを主成分とする摺動性樹脂組成物が記載されている。この文献の実施例では、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂と、長鎖脂肪酸基により疎水変性された疎水変性セルロースナノファイバーとを含む摺動性樹脂組成物が、高負荷条件下においても低摩擦性及び低摩耗性を維持していたことが記載されている。
しかし、特許文献2に記載の摺動性樹脂組成物は摩擦係数が低く、さらに実施例において比較的融点の低い熱可塑性樹脂を使用していることから、高温環境下での使用は想定されておらず、摩擦部材としての利用は困難である。
また、特開2010−37412号公報(特許文献3)には、含水したゲル状のバクテリアセルロースと、親水性の有機溶剤で溶解した液状のフェノール樹脂とを混合して、バクテリアセルロースに含まれる水分を脱水する乾燥工程と、バクテリアセルロースにフェノール樹脂を含侵する含浸工程とを同時に行なって得られるプリプレグを乾燥・硬化させて、所望形状のFRP成形体を作製し、次いでこのFRP成形体を不活性雰囲気下で焼成して、バクテリアセルロースとフェノール樹脂とを炭化し、かつバクテリアセルロースを炭化した炭素繊維の体積含有率を30〜70体積%とすると、無潤滑下でも、充分な低摩擦性と低摩耗性とを兼ね備えた摺動部材が製造できることが記載されている。
しかし、特許文献3に記載の摺動部材も、無潤滑下でも摩擦係数が低く、摩擦部材としての利用は困難である。さらに、特許文献3に記載の摺動部材は、FRP成形体を作製後、さらに焼成する必要があるため、多くの製造工程を要し、操作が煩雑となる。
特開2018−131477号公報 特開2017−171698号公報 特開2010−37412号公報
従って、本発明の目的は、高温環境下において、高摩擦性(又は高摩擦係数)及び耐摩耗性(又は低摩耗性)を備えた摩擦材料(摩擦部材を形成するための硬化性樹脂組成物)、及び摩擦部材、並びにその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、長期間使用しても、高摩擦性及び耐摩耗性の低下を抑制できる摩擦材料、及び摩擦部材、並びにその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、セルロースナノファイバーの含有量が少量であっても、高い機械的強度及び耐摩耗性を有する摩擦材料、及び摩擦部材、並びにその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、煩雑な製造工程を必要とせず、摩擦材料、及び摩擦部材を簡便に製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、摩擦材料及び摩擦部材の高摩擦性及び耐摩耗性を長期に亘って向上できる新規な炭素化修飾セルロースナノファイバーを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、硬化性樹脂に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が結合した修飾セルロースナノファイバーを添加すると、高温環境下であっても、高摩擦性(又は高摩擦係数)と耐摩耗性(又は低摩耗性)とを備えた摩擦部材を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物(又は摩擦材料)は、硬化性樹脂とセルロースナノファイバーとを含み、前記セルロースナノファイバーが、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が結合した修飾セルロースナノファイバーを含んでいる。前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
(式中、環Zはアレーン環、R及びRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0〜4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)。
前記式(1)において、Xは、基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基、Yはヒドロキシル基又はグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数を示す)であってもよい。
また、前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、好ましくはフェノール樹脂であってもよい。また、前記修飾セルロースナノファイバーは、前記修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化された後述の炭素化修飾セルロースナノファイバーを含んでいてもよい。前記炭素化修飾セルロースのX線光電子分光法における炭素原子と酸素原子との比率(ピーク強度比)は、前者:後者=50:50〜85:15の範囲であってもよい。前記セルロースナノファイバーに対する9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の結合割合(修飾率)は、前記修飾セルロースナノファイバーの全体に対して0.01〜33質量%であってもよい。前記修飾セルロースナノファイバーの割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部であってもよい。
本発明は、前記硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された摩擦部材(例えば、ブレーキパッドなどのブレーキ材)も含む。JIS K 7218 A法(リング対ディスク)に従い、荷重150Nの条件で測定した滑り距離150mにおける前記摩擦部材の動摩擦係数は、0.5〜0.8であってもよい。
本発明は、前記硬化性樹脂組成物の製造方法も含み、この製造方法は、硬化性樹脂と修飾セルロースナノファイバーとを混合する工程を含んでいてもよい。また、本発明は、前記摩擦部材の製造方法も含み、この製造方法は、前記硬化性樹脂組成物を成形する成形工程と、硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
本発明は、新規な炭素化修飾セルロースナノファイバーも含む。前記炭素化修飾セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーと9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とが結合した修飾セルロースナノファイバーであって、前記修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化されている。前記炭素化修飾セルロースナノファイバーは、X線光電子分光法における炭素原子と酸素原子との比率(ピーク強度比)が、前者:後者=50:50〜85:15の範囲であってもよい。前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、前記式(1)で表される化合物であってもよい。本発明は、前記炭素化修飾セルロースナノファイバーの製造方法を含み、この製造方法は、前記修飾セルロースナノファイバーを炭素化する工程(例えば、焼成などの炭素化工程)を含んでいてもよい。
なお、本明細書中、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を単に「フルオレン化合物」、セルロースナノファイバーと9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とが結合した修飾セルロースナノファイバーを単に「修飾セルロースナノファイバー(修飾セルロースナノ繊維)、又はフルオレン修飾セルロースナノファイバー(フルオレン修飾セルロースナノ繊維)」という場合がある。
また、本特許請求の範囲及び本明細書中、「炭素化」とは、「炭化」、「黒鉛化」を包含する意味として用いる場合がある。
本発明の摩擦部材を形成するための硬化性樹脂組成物(又は摩擦材料)は、硬化性樹脂、及び所定の修飾セルロースナノファイバーを含むため、高温環境下であっても、高摩擦性(又は高摩擦係数)及び耐摩耗性(又は低摩耗性)を両立でき、例えば、ブレーキパッドなどのブレーキ材の材料として好適に利用できる。また、本発明に用いる修飾セルロースナノファイバーは、セルロース成分の含有量が多く、かつ硬化性樹脂に容易に分散可能であるため、少量であっても硬化性樹脂組成物の機械的強度及び耐摩耗性を向上できる。さらに、前記修飾セルロースナノファイバーが、前記修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバーを含んでいると、摩擦部材を長期間使用しても高摩擦性及び耐摩耗性の低下を抑制できる。また、本発明の硬化性樹脂組成物(摩擦材料)及び摩擦部材は、通常の硬化性樹脂の成形工程及び硬化工程により製造でき、煩雑な製造工程を必要としないため、簡便に製造できる。
図1は、実施例で使用したセルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図2は、炭素化修飾セルロースナノファイバーのFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)を示すチャートである。
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、摩擦部材を形成するために有用であり、単に摩擦材料という場合がある。本発明の硬化性樹脂組成物(又は摩擦材料)は、硬化性樹脂と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(フルオレン化合物)が結合した修飾セルロースナノファイバー(フルオレン修飾セルロースナノファイバー)とを含む。
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなど)、及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、通常、熱硬化性樹脂が使用される場合が多い。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂(ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など);ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂(アセトグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ホルモグアナミン樹脂など)などのアミノ樹脂;ポリイミド樹脂(芳香族ポリイミド樹脂など);不飽和ポリエステル樹脂(フタル酸系不飽和ポリエステル樹脂など);ビニルエステル樹脂(ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂、ノボラック型ビニルエステル樹脂など);ジアリルフタレート樹脂;熱硬化性アクリル樹脂;エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などの芳香環を含むグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂など);ポリウレタン樹脂;ケイ素樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの熱硬化性樹脂のうち、耐熱性及び耐摩耗性の観点から、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの主鎖に芳香族環(アレーン環、ヘテロアレーン環)を含む樹脂が好ましく、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの主鎖において芳香族環の含有割合の高い樹脂がさらに好ましく、フェノール樹脂が特に好ましい。また、ノボラック型樹脂は、芳香族環の密度が高く、耐熱性及び耐摩耗性に優れる。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂、及びレゾール型フェノール樹脂のいずれであってもよいが、機械的強度及び耐熱性の観点から、好ましくはノボラック型フェノール樹脂(ハイオルソノボラック樹脂、ハイパラノボラック樹脂、クレゾール型ノボラック樹脂、ビフェニル型ノボラック樹脂、キシリレン型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ノボラック樹脂、ビフェニレンメチレン型ノボラック樹脂、トリフェノール型ノボラック樹脂、高分子量ノボラック樹脂など)であってもよい。また、前記フェノール樹脂は、外部可塑化(可塑化剤の添加)、内部可塑化などにより変性された変性フェノール樹脂であってもよい。ノボラック型フェノール樹脂は、酸触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを反応(縮合反応)させることにより得られる。
(フェノール類)
フェノール類としては、例えば、モノフェノール類、及び複数のフェノール性ヒドロキシル基を有するフェノール類が挙げられる。
モノフェノール類としては、フェノール、アルキルフェノール[例えば、クレゾール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール)、エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのモノC1−20アルキルフェノールなど;キシレノール(2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノールなど)などのジC1−10アルキルフェノールなど]、シクロアルキルフェノール(2−シクロヘキシルフェノールなど)、アリールフェノール(o−フェニルフェノールなど)、アルコキシフェノール(o−メトキシフェノールなどのアニソール類など)、アミノフェノールなど;ナフトール類[例えば、ナフトール(α−ナフトール、β−ナフトールなど)、アルキルナフトール(メチルナフトール(2−メチル−1−ナフトール、3−メチル−1−ナフトールなど)、エチルナフトール、ジメチルナフトール、プロピルナフトールなどのC1−4アルキルナフトールなど)など]などが挙げられる。
複数のフェノール性ヒドロキシル基を有するフェノール類としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン)、アルキル−ジヒドロキシベンゼン(ジヒドロキシトルエン、ジヒドロキシキシレンなどのモノ又はジC1−6アルキル−ジヒドロキシベンゼンなど)、アリール−ジヒドロキシベンゼン(2,3−ジヒドロキシビフェニル、3,4−ジヒドロキシビフェニルなどのC6−8アリール−ジヒドロキシベンゼンなど)、アルコキシ−ジヒドロキシベンゼン(3−メトキシカテコールなどのモノ又はジC1−6アルコキシ−ジヒドロキシベンゼンなど)、トリヒドロキシベンゼン類(ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、フロログルシノールなど)などの多価フェノール類;ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)などが挙げられる。
フェノール類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、フェノール類は、ユリア、メラミン、グアナミン(アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミンなど)などの共重合可能な成分と重縮合させてもよい。これらの共重合成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。共重合成分の割合は、フェノール類の総量に対して、30モル%以下であればよく、例えば、0.01〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは1〜10モル%程度であってもよい。
(アルデヒド類)
アルデヒド類としては、特に制限されず、アルカナール(例えば、アセトアルデヒド)、芳香族アルデヒド(例えば、フルフラール)などを使用してもよいが、通常、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド源を好適に使用できる。アルデヒド類は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
フェノール類とアルデヒド類との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.5〜1/2、好ましくは1/0.7〜1/1、さらに好ましくは1/0.8〜1/0.9程度であってもよい。
(酸触媒)
酸触媒としては、特に制限されず、例えば、無機酸[例えば、プロトン酸(硫酸、塩化水素(又は塩酸)、リン酸など)、ルイス酸(三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛など)など]、有機酸{例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)、脂肪族カルボン酸[例えば、アルカン酸(例えば、酢酸、シュウ酸などのアルカンモノ又はジカルボン酸)など]などのカルボン酸}などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常500以上(例えば、700〜50000程度)、好ましくは1000以上(例えば、1200〜40000程度)、さらに好ましくは1500以上(例えば、2000〜30000程度)の範囲から選択でき、例えば、2500以上(例えば、2700〜20000程度)、好ましくは3000〜15000程度、さらに好ましくは3300〜10000(例えば、3500〜8000)程度であり、通常2500〜15000(例えば、3000〜10000)程度であってもよい。
なお、前記酸触媒に代えて、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒の存在下(又は塩基性条件下)でフェノール類とアルデヒド類とを反応させると、付加反応が進行し、レゾール型フェノール樹脂を得ることもできる。
レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、例えば、500〜15000(例えば、550〜13000)、好ましくは600〜10000(例えば、650〜8000)、さらに好ましくは700〜5000程度であってもよい。
なお、重量平均分子量は、通常、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定できる。
[修飾セルロースナノファイバー(修飾セルロースナノ繊維)]
本発明の修飾セルロースナノファイバー(又は修飾セルロースナノ繊維)は、セルロースナノファイバー(セルロースナノ繊維、CNF)と9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(フルオレン化合物)とが結合している。
(セルロースナノファイバー)
修飾セルロースナノファイバーを構成するセルロースナノファイバー(又は原料セルロースナノファイバー、セルロースナノ繊維)は、セルロース(セルロース原料)をナノオーダーまで微細化(又はミクロフィブリル化)したセルロース繊維や、微生物由来のナノメータサイズのセルロース繊維である。前記セルロース原料としては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少なく、セルロース成分の含有量が多いパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースナノ繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースナノ繊維のうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維パルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースナノ繊維などが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ないことからパルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。セルロースナノファイバーは、これらのセルロース原料を慣用の方法、例えば、高圧ホモジナイザー法、水中対抗衝突法、グラインダー法、ボールミル法、二軸混練法などの物理的又は機械的方法、TEMPO触媒、リン酸、二塩基酸、硫酸、塩酸などを用いた化学的方法により、繊維径をナノメータサイズまで解繊処理することにより調製できる。
セルロースナノファイバー(又は原料セルロースナノファイバー)の平均繊維径及び平均繊維長は、修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長が、後述する範囲となるように選択できる。セルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長及び平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、後述する修飾セルロースナノファイバーの範囲と同一であってもよく、通常、略同一である。
セルロースナノファイバーは、結晶性の高いセルロース(又はセルロース繊維)であってもよく、セルロースの結晶化度は、例えば40〜100%(例えば50〜100%)、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%(特に75〜100%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば60〜99%)であってもよい。また、セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。
本発明に用いるセルロースナノファイバーは、セルロース成分の含有量(又はセルロース純度)が高い。セルロース成分の含有量は、セルロースナノファイバー全体に対して、例えば、60〜100質量%程度の範囲から選択でき、例えば、70〜100質量%(例えば、70〜98質量%)、好ましくは80〜100質量%(例えば、80〜99質量%)、さらに好ましくは90〜100質量%程度であってもよい。セルロースナノファイバーのセルロース成分の含有量が多いため、少量であっても、硬化性樹脂組成物の耐摩耗性を向上できる。また、リグニン及びヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量は、例えば、0〜30質量%程度の範囲から選択でき、例えば、0〜15質量%(例えば、0.01〜15質量%)、好ましくは0〜10質量%(例えば、0.01〜10質量%)、さらに好ましくは0〜5質量%(例えば、0.01〜5質量%)程度であってもよく、非セルロース成分を実質的に含まないことが特に好ましい。また、セルロースナノファイバーの非セルロース成分の含有量が少ないため、硬化性樹脂組成物の耐熱性及び耐摩耗性が低下する虞がない。
(フルオレン化合物)
フルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有していればよく、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、ナフタレン環などの多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン環)、縮合三環式アレーン(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1−フェニルナフタレン環、2−フェニルナフタレン環など)などのビC6−12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6−12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6−10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
フルオレンの9,9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環であってもよく、さらに好ましくはベンゼン環であってもよい。
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個であってもよい。
前記官能基としては、例えば、基−[(OA)m1−Y](式中、Yはヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基又はメルカプト基であり、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数である)、基−(CH)m2−COOR(式中、Rは水素原子又はアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
で表される基−[(OA)m1−Y]において、YのN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
アルキレン基Aには、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2−4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2−3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基、1,3−ブタンジイル基などの分岐鎖状C3−6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3−4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数を示すm1は、0以上の整数(例えば0〜15、好ましくは0〜10程度)の範囲から選択でき、例えば0〜8(例えば1〜8)、好ましくは0〜5(例えば1〜5)、さらに好ましくは0〜4(例えば1〜4)、特に0〜3(例えば1〜3)程度であってもよく、通常0〜2(例えば0〜1)であってもよい。また、前記オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数を示すm1は、平均付加モル数であってもよく、平均付加モル数の範囲は、好ましい範囲も含め、前記整数の範囲と同様である。なお、m1が2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
基−(CH)m2−COORにおいて、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数を示すm2は0以上の整数(例えば1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜2程度)であってもよい。m2は、通常、0〜2(例えば、1〜2)であってもよい。また、前記メチレン基の繰り返し数を示すm2は平均付加モル数であってもよく、平均付加モル数の範囲は、好ましい範囲も含め前記整数の範囲と同様である。
これらのうち、基Xは、基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基、Yはヒドロキシル基又はグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数である)が好ましく、Yがグリシジルオキシ基である基−[(OA)m1−Y][式中、Aはエチレン基などのC2−6アルキレン基(例えばC2−4アルキレン基、特にC2−3アルキレン基)、Yはグリシジルオキシ基、m1は0〜5の整数(例えば0又は1)である]が特に好ましい。
前記式(1)において、環Zに置換した基Xの個数を示すnは、1以上であり、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1又は2(特に1)であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2,3,4位(特に、3位及び/又は4位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位又は2位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特にnが1である場合、2,6位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3位又は4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2,4,5,6,2’,3’,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換していてもよい。
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1−6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルキル基、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルコキシ基など)、特にアルキル基(特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば0〜2)の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
置換基Rとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。
これらの置換基Rのうち、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基(特に、メチル基などのC1−3アルキル基)、カルボキシル基又はC1−2アルコキシ−カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0〜4(例えば0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位(2位、3位及び/又は7位など)であってもよい。
これらのうち、好ましいフルオレン化合物としては、基Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)である場合、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシ−C6−12アリール)フルオレンなどが挙げられる。
基Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Yがグリシジルオキシ基を示す)である場合の好ましいフルオレン化合物としては、9,9−ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−グリシジルオキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(2−グリシジルオキシエトキシ)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(2−グリシジルオキシエトキシ)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−メチル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリシジルオキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(アリール−グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3−フェニル−4−(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−10アリール−グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ)C6−10アリール)フルオレン;9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9−ビス(3,4−ジ(2−グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシ)C6−10アリール)フルオレンなどが例示できる。
これらのフルオレン化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
(修飾セルロースナノファイバー)
修飾セルロースナノファイバー(又は変性セルロースナノファイバー)は、前記セルロースナノファイバーと前記フルオレン化合物とが結合したセルロース誘導体である。
修飾セルロースナノファイバーの化学修飾(又は結合)の形態は、特に限定されず、フルオレン化合物の反応性基(ヘテロ原子含有官能基)の種類に応じて適宜選択できる。具体的には、フルオレン化合物が前記式(1)で表されるフルオレン化合物の場合、前記結合形態は、前記式(1)において、基Xが基−[(OA)m1−Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)である場合、セルロースナノファイバーのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と前記式(1)で表されるフルオレン化合物のヒドロキシル基とのエーテル結合及び/又はエステル結合であってもよい。前記式(1)において、基Xが基−[(OA)m1−Y](式中、Yがグリシジルオキシ基を示す)である場合、セルロースナノファイバーのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と前記式(1)で表されるフルオレン化合物のグリシジル基とのエーテル結合及び/又はエステル結合であってもよい。なお、セルロースナノファイバーのカルボキシル基は、パルプなどの製造過程で形成される場合がある。
修飾セルロースナノファイバーは、セルロースナノファイバーと前記フルオレン化合物とを反応させて予め製造してもよく、後述の硬化性樹脂組成物の製造過程において、硬化性樹脂とセルロースナノファイバーとフルオレン化合物とを混合(又は混練)して、反応させ、混合系内に生成させてもよい。
セルロースナノファイバーの割合は、フルオレン化合物の反応性基に応じて選択できるが、例えば、フルオレン化合物100質量部に対して、0.1〜500質量部(例えば1〜300質量部)程度の範囲から選択でき、例えば5〜200質量部(特に10〜150質量部)程度であってもよい。
修飾セルロースナノファイバーの調製において、セルロースナノファイバーとフルオレン化合物との反応は、触媒の非存在下又は存在下で行ってもよい。触媒は、フルオレン化合物の反応性基に応じて選択でき、反応性基がヒドロキシル基の場合、酸触媒を利用してもよい。酸触媒としては、ブレンステッド酸、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸、固体酸[例えば、ヘテロポリ酸(タングステン系ヘテロポリ酸、モリブデン系ヘテロポリ酸など)、陽イオン交換樹脂(スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、スルホン酸基を有する含フッ素陽イオン交換樹脂、カルボン酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂など)]などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
反応性基がグリシジル基の場合、塩基触媒を利用してもよい。塩基触媒は、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよい。無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩などが例示できる。有機塩基としては、三級アミン類、例えば、トリアルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、アルカノールアミン(トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなど)、複素環式アミン(N−メチルモルホリンなど)、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などが挙げられる。これらの塩基触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて選択できるが、セルロースナノファイバー100質量部に対して、例えば0.01〜100質量部程度の範囲から選択でき、通常0.01〜20質量部(例えば0.1〜18質量部)、好ましくは0.5〜18質量部(例えば1〜17質量部)、さらに好ましくは3〜15質量部(特に5〜15質量部)程度であってもよい。
反応は、有機溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、有機溶媒の存在下で行われる。この有機溶媒は原料セルロースナノファイバーに含浸していてもよいが、原料セルロースナノファイバーを有機溶媒に分散させた分散系で反応させる場合が多い。原料セルロースナノファイバーを有機溶媒に分散させた分散系で、原料セルロースナノファイバーと前記フルオレン化合物とを反応させると、均一に反応させることができる。このような方法で得られた修飾セルロースナノファイバーは、取り扱い性及び分散性が高い。
原料セルロースナノファイバー(特に、ミクロフィブリル化した繊維、平均繊維径がナノメーターサイズのナノ繊維)を乾燥すると、繊維が絡み合って再分散できなくなる場合がある。そのため、通常、原料セルロースナノファイバーは水含浸又は水分散液として市販されている場合が多い。このような水分散液では、水分散液の水を有機溶媒に置換する慣用の溶媒置換法、例えば、原料セルロースナノファイバーの水分散液に水溶性有機溶媒を添加混合し、原料セルロースナノファイバーを分離(又は溶媒を除去)した後、さらに有機溶媒を添加混合する操作を繰り返す方法などにより、原料セルロースナノファイバーが有機溶媒に分散した分散液を調製できる。なお、沸点が水よりも高い水溶性有機溶媒を用いる場合、水を蒸留(共沸蒸留を含む)により除去することにより溶媒置換できる。
水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノールなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトンなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2−4アルカンジオール)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトールなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
なお、水溶性有機溶媒を用いて溶媒置換したセルロース含有分散液において、水溶性有機溶媒は、前記と同様にして、非水溶性有機溶媒に溶媒置換することもできる。非水溶性有機溶媒としては、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(ベンゾニトリルなど)、セロソルブアセテート類、カルビトールアセテート類、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンなど)などが例示できる。これらの非水溶性有機溶媒も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性溶媒、特に非プロトン性極性溶媒(例えば、エーテル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類など)が好ましい。
有機溶媒(例えば、非プロトン性極性溶媒)の溶解度パラメーター(SP値、(cal/cm))は8〜15(例えば8.5〜15)程度であってもよく、通常9〜14.5(例えば10〜14.5)程度であってもよい。
分散液中の原料セルロースナノ繊維の固形分濃度は、例えば0.01〜30質量%(例えば0.1〜20質量%)、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜12質量%(例えば5〜10質量%)程度であってもよい。固形分濃度が低すぎると、反応効率が低下する虞がある。
反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多い。反応温度は、溶媒の沸点などにより適宜選択でき、例えば50〜200℃(例えば70〜170℃)、好ましくは80〜150℃(例えば100〜130℃)程度であってもよい。なお、反応は溶媒の還流下で行ってもよい。また、反応時間は、特に限定されず、例えば10分〜48時間(例えば30分〜24時間)程度である。さらに、反応は、空気中又は不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガスなどの希ガスなど)雰囲気下、攪拌しながら行うことができる。
なお、反応は、反応系を撹拌しながら行ってもよく、原料セルロースファイバーとして、繊維径がナノメータサイズではない繊維を使用し、セルロースに機械的剪断力を作用させながら行い、セルロースを微細化した修飾セルロースナノファイバーを得てもよい。さらに、反応終了後に解繊して修飾セルロースファイバーを微細化してもよい。
反応により生成した修飾セルロースナノファイバーは、慣用の方法(例えば、遠心分離、濾過、濃縮、抽出など)により分離精製してもよい。例えば、少なくとも前記フルオレン化合物を溶解可能な溶媒を反応混合物に添加し、前記遠心分離、濾過、抽出などの分離法(慣用の方法)で未反応フルオレン化合物を除去し、分離精製してもよい。なお、前記分離操作は複数回(例えば2〜5回程度)行うことができる。さらに、分離精製した修飾セルロースを常温又は加熱下において、減圧下又は常圧下で乾燥することにより、粉末状の形態を有する修飾セルロースファイバーを得ることができる。
なお、未反応フルオレン化合物を前記分離方法などにより繰り返し除去して精製した修飾セルロースを、ラマン分析などの方法により分析すると、セルロースに由来するピークとフルオレン化合物に由来するピークとが存在し、セルロースにフルオレン化合物が結合していることが確認できる。
(修飾セルロースナノファイバーの特性)
修飾セルロースナノファイバーの形態は、特に制限されず、分散体の形態であってもよいが、通常、粉末状の形態を有しているため、取り扱い性に優れる。さらに、セルロースナノファイバーに結合したフルオレン化合物が種々の有機媒体(樹脂を含む)に対して高い親和性又は混和性を有するため、修飾セルロースナノファイバーは、樹脂に対して高い分散性を示し、かつ高い補強性を有する。また、前記フルオレン化合物の修飾割合(結合量)が、比較的少なくても、修飾セルロースナノファイバーは粉末状の形態を有していてもよい。
セルロースナノファイバーに対する9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の結合割合(又はセルロースナノファイバーに結合したフルオレン化合物の割合、修飾率)は、修飾セルロースナノファイバー全体に対して0.01〜33質量%(例えば1〜25質量%)程度の範囲から選択できる。例えば、フルオレン化合物が、前記式(1)における基Xが基−[(OA)m1−Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)である場合、前記修飾率は、修飾セルロースナノファイバーの総量に対して0.01〜30質量%程度の範囲から選択でき、例えば0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%(例えば1〜25質量%)、さらに好ましくは2〜20質量%(特に3〜20質量%)程度であってもよい。また、フルオレン化合物が、前記式(1)におけるフルオレン化合物の基Xが基−[(OA)m1−Y](式中、Yがグリシジルオキシ基を示す)である場合、前記修飾率は0.01〜33質量%程度(例えば0.1〜30質量%)、好ましくは1〜25質量%(例えば2〜25質量%)、さらに好ましくは3〜20質量%(特に5〜20質量%)程度であってもよい。
修飾率が大きすぎると、水性溶媒に対する分散性、低線熱膨張係数などの特性が低下する虞があり、逆に小さすぎると、粉体状の形態を形成できなくなり、取り扱い性が低下し易くなったり、樹脂組成物中での硬化性樹脂との分散性(又は混和性)が低下する虞がある。修飾率は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば1〜1000nm(例えば2〜800nm)、好ましくは3〜500nm(例えば5〜300nm)、さらに好ましくは10〜200nm(特に15〜100nm)程度であってもよい。なお、セルロースナノファイバーの最大繊維径は、例えば3〜1000nm(例えば4〜900nm)、好ましくは5〜700nm(例えば10〜500nm)、さらに好ましくは15〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。なお、セルロースナノファイバーは、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
修飾セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば0.01〜500μm(例えば0.1〜400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5〜300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20〜200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50〜150μm)であってもよい。平均繊維長が短すぎると、硬化性樹脂組成物の機械的強度(機械的特性)が低下する虞があり、逆に長すぎると、硬化性樹脂組成物中での分散性が低下する虞がある。
修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5〜10000程度)、好ましくは10以上(例えば10〜5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば20〜3000程度)、特に50以上(例えば50〜2000程度)であってもよく、100以上(例えば100〜1000程度)、さらには200以上(例えば200〜800程度)であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、熱硬化性樹脂に対する補強効果が低下し、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(又は損傷)し易くなる虞がある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲では、修飾セルロースナノファイバー(又は原料セルロースナノファイバー)の平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
修飾セルロースナノファイバーは、前記フルオレン化合物の修飾(又は結合)により疎水性が向上するためか、水分含有量が少ない。すなわち、水分含有量は、温度25℃、湿度60%の条件下、1昼夜放置したとき、0〜7質量%(例えば0〜5質量%)、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%程度であってもよい。なお、水分含有量は、近赤外線分析計などを用いて測定できる。
修飾セルロースナノファイバーの嵩密度(見掛密度)は、温度25℃、湿度60%の条件下において、JIS K7365−1999に準拠して測定したとき、例えば0.01〜0.7g/ml、好ましくは0.05〜0.5g/ml、さらに好ましくは0.1〜0.3g/ml程度であってもよく、例えば0.01〜0.05g/ml、好ましくは0.03〜0.3g/ml、さらに好ましくは0.05〜0.15g/mlであってもよい。なお、嵩密度Pは、所定質量Wの修飾セルロースナノファイバーをメスシリンダーに入れて体積Vを測定し、式P=W/Vで算出できる。
修飾セルロースナノファイバーは、流動性が高く、安息角が、温度25℃、湿度60%の条件下において、JIS R9301−2−2に準拠して測定したとき、例えば20〜45°、好ましくは25〜40°、さらに好ましくは30〜35°程度であってもよい。流動性が大きすぎると、取り扱い性が低下し、逆に小さすぎると、分散性が低下するおそれがある。
修飾セルロースナノファイバーは、比較的分子量(又は重合度)が大きく、粘度平均重合度は、例えば100〜10000、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜2000程度であってもよい。
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、修飾セルロースナノファイバー(又は原料セルロースナノファイバー)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程度攪拌して修飾セルロースナノファイバーを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアル(日本木材学会編、文永堂出版)に記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
粘度平均重合度=175×[η]
また、本発明の硬化性樹脂組成物において、修飾セルロースナノファイバーの特性(例えば、低線熱膨張特性、強度、耐熱性など)を有効に発現させる場合、結晶性の高い修飾セルロースナノファイバーが好ましい。前記のように、修飾セルロースはセルロースナノファイバーの結晶性を維持できるため、修飾セルロースナノファイバーの結晶化度は前記セルロースナノファイバーの数値をそのまま参照できる。例えば、修飾セルロースの結晶化度は、40〜100%(例えば50〜100%)、好ましくは60〜100%(例えば65〜100%)、さらに好ましくは70〜100%(特に75〜100%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば75〜99%程度)であってもよい。結晶化度が小さすぎると、線熱膨張特性や強度などの特性を低下させるおそれがある。セルロースの結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、低線膨張特性及び弾性率などが高いI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
(炭素化修飾セルロースナノファイバー)
前記修飾セルロースナノファイバーは、修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバーを含んでいてもよい。
本発明の炭素化修飾セルロースナノファイバーは、新規の化合物であり、後述のように樹脂の配合剤(補強剤、強化剤、充填剤など)などとして幅広い用途で使用できる。
前記炭素化修飾セルロースナノファイバーは、完全に炭素化していてもよいが、完全に炭素化していない(部分的に炭素化されている)ことが好ましい。炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化の程度は、FT−IR(フーリエ変換(赤外分光法))による官能基の有無で確認することができる。炭素化修飾セルロースナノファイバーをFT−IRで測定すると、セルロースの−OHに由来する3300cm−1付近のピーク、セルロースのC−Hに由来する2900cm−1付近のピーク、セルロースC−O−Cに由来する1150cm−1付近のピーク、及びフルオレンのC−Hに由来するピーク1500cm−1付近のピークが観測できる。加熱処理により炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化が進むとこれらのピークは徐々に減少し、炭素化修飾セルロースナノファイバーが完全に炭素化すると、これらのピークは消失する。前記のように、炭素化修飾セルロースナノファイバーは、部分的に炭素化されていることが好ましいため、炭素化修飾セルロースナノファイバーは、これらのピークが存在していることが好ましい。
また、前記炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化の程度は、炭素化修飾セルロースナノファイバーの嵩密度で確認することもできる。嵩密度は、修飾セルロースナノファイバーの嵩密度と同条件の下で測定される。炭素化修飾セルロースナノファイバーの嵩密度は、例えば、修飾セルロースナノファイバーの嵩密度の60%〜110%、好ましくは70%〜100%、さらに好ましくは75%〜80%である。前記炭素化修飾セルロースナノファイバーの嵩密度が、修飾セルロースナノファイバーの嵩密度よりも大きくなるのは、単独で存在する嵩密度の小さいナノファイバー及び/又は低分子量成分が消失するため、見かけ上の充填性が向上すると考えられる。そして、加熱処理温度がある温度を超えると、空隙ができやすくなって、嵩密度が小さくなると考えられる。前記炭素化修飾セルロースナノファイバーの嵩密度は、例えば、加熱処理温度が190〜270℃の範囲で修飾セルロースナノファイバーの嵩密度よりも大きくなり、例えば、加熱処理温度が270℃を超えると小さくなる。
さらに、前記炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化の程度は、炭素化修飾セルロースナノファイバーにおける炭素含量と酸素含量との比で表すこともできる。なお、炭素含量と酸素含量との比は、慣用の元素分析法、例えば、X線光電子分光法(XPS)などにより測定できる。
前記炭素化修飾セルロースナノファイバーをXPSで測定すると、炭素(C1s)と酸素(O1s)とのピークが現れる。C1sについては、C−O結合を示す286eV付近のピークとC−C結合を示す284eV付近のピークとが検出される。前記のように、炭素化修飾セルロースナノファイバーは、部分的に炭素化されていることが好ましいため、286eV付近のピークと284eV付近のピークとの両方が検出されることが好ましい。286eV付近のピーク強度は、284eV付近のピーク強度よりも低くてもよく、同じであってもよいが、286eV付近のピーク強度のほうが、284eV付近のピーク強度よりも高いことがより好ましい。286eV付近のピーク強度を「I286284eV付近のピーク強度を「I284」としたとき、I286/I284=10/100〜220/100、好ましくは15/100〜210/100、さらに好ましくは50/100〜200/100、特に好ましくは100/100〜190/100程度である。また、炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化が進むとC−O結合が分解して、C−O結合を示す286eV付近のピークの強度が低下するため、未炭素化修飾セルロースナノファイバー及び部分的に炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバーでは、O1sは、532eV付近のピークが存在していることが好ましい。532eV付近のピーク強度は、好ましくは5000〜35000(例えば、6000〜33000)、さらに好ましくは7000〜32000(例えば、8000〜31000)、特に好ましくは10000〜30000(例えば、12000〜29000)である。なお、XPSは、実施例に記載の測定条件と同条件で測定される。
XPSによる炭素原子(原子濃度%)と酸素原子(原子濃度%)との原子濃度比は、例えば、前者:後者=40:60〜90:10であり、好ましくは50:50〜85:15であり、より好ましくは55:45〜80:20、さらに好ましくは60:40〜70:30であってもよく、40:60〜85:15であり、好ましくは50:50〜75:25であり、より好ましくは60:40〜65:35であってもよい。
炭素化修飾セルロースナノファイバーが完全に炭素化すると、摩擦部材(硬化性樹脂組成物)の摩擦性及び耐摩耗性が低下する虞があるが、炭素化修飾セルロースナノファイバーが完全に炭素化しないことにより、摩擦部材(硬化性樹脂組成物)は、高摩擦性(又は高摩擦係数)及び耐摩耗性(又は低摩耗性)を両立できる。
炭素化修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば0.5〜800nm(例えば1.5〜650nm)、好ましくは2〜400nm(例えば3〜250nm)、さらに好ましくは5〜150nm(特に10〜80nm)程度であってもよい。なお、炭素化修飾セルロースナノファイバーは、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
炭素化修飾セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば0.005〜400μm(例えば0.05〜350μm)程度の範囲から選択でき、通常0.5μm以上(例えば3〜250μm)、好ましくは5μm以上(例えば15〜150μm)、さらに好ましくは20μm以上(特に40〜120μm)であってもよい。
修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、好ましい態様も含め、前述の修飾セルロースナノファイバーと同様である。
なお、炭素化修飾セルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長及びアスペクト比は、前述の修飾セルロースナノファイバーと同様にして測定できる。
炭素化修飾セルロースナノファイバーは、修飾セルロースナノファイバーを焼成などの炭素化処理(又は加熱処理)などの炭素化工程(又は加熱工程)を経て製造できる。炭素化修飾セルロースナノファイバーは、予め修飾セルロースナノファイバーを焼成して製造してもよく、後述の硬化性樹脂組成物及び/又は摩擦部材の製造過程(例えば、後述の混合工程、成形工程、硬化過程など)における加熱、又は摩擦部材の使用過程における発熱などで、修飾セルロースナノファイバーを炭素化させてもよい。
修飾セルロースナノファイバーの焼成は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多く、また、真空中又は不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガスなど)雰囲気下で行うことが多い。
修飾セルロースナノファイバーの焼成温度は、例えば、200〜3000℃(例えば、200〜1500℃)、好ましくは200〜1000℃程度の範囲から選択でき、通常、フルオレン骨格の炭素化を抑制できる温度、例えば、150〜500℃(例えば、200〜500℃)、好ましくは160〜450℃(例えば、210〜400℃)、さらに好ましくは170〜370℃(例えば、230〜350℃)、特に、180〜330℃(例えば、250〜300℃)程度、最も好ましくは、180〜280℃であってもよい。焼成温度が低すぎると、炭素化が充分に進行せず、焼成温度が高すぎると、炭素化が過度に進行して硬化性樹脂組成物の機械的特性及び耐摩耗性が低下する虞がある。
焼成前の修飾セルロースナノファイバー(未炭素化修飾セルロースナノファイバー)に対して、炭素化修飾セルロースナノファイバーの質量は、例えば、1〜99質量%程度の範囲から選択でき、例えば、5〜99質量%(例えば、10〜97質量%)、好ましくは30〜95質量%(例えば、50〜90質量%)、さらに好ましくは60〜85質量%(例えば、70〜80質量%)程度であってもよい。焼成後の炭素化修飾セルロースナノファイバーが、焼成前の修飾セルロースナノファイバーの質量に対して過度に低下すると、修飾セルロースナノファイバーの補強効果が低下して、硬化性樹脂組成物の機械的強度が低下する虞がある。
修飾セルロースナノファイバーは、少なくとも一部が炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバーを含んでいると、摩擦部材の高摩擦性及び耐摩耗性を維持(又は低下を抑制)でき、摩擦部材の耐久性を向上できる。炭素化修飾セルロースナノファイバーの添加により、摩擦部材の耐久性を向上できる理由は定かではないが、修飾セルロースナノファイバーの炭素化部分が、カーボンブラックのように作用して、耐摩耗性が向上することが考えられる。さらに、断続的又は継続的に200℃を超える環境(例えば、ブレーキパッドなどの摩擦部材の使用環境)において徐々に炭素化が進行すると、例えば、カーボンストラクチャーを形成するように、カーボン(炭素)が連なった構造を形成するためか、高摩擦性及び耐摩耗性を向上できると考えられる。
炭素化修飾セルロースナノファイバーの割合は、修飾セルロースナノファイバー全体(炭素化されていない修飾セルロースナノファイバー及び炭素化修飾セルロースナノファイバーの総量)に対して、例えば、30〜100質量%程度の範囲から選択でき、例えば、50〜100質量%(例えば、50〜90質量%)、好ましくは70〜100質量%(例えば、70〜95質量%)、さらに好ましくは90〜100質量%(例えば、90〜98質量%)、特に95〜100質量%(例えば、95〜99質量%)程度であってもよく、修飾セルロースナノファイバー全体が炭素化修飾セルロースナノファイバーであってもよい。
修飾セルロースナノファイバーの割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部(例えば、0.3〜25質量部)、好ましくは0.5〜20質量部(例えば、1〜18質量部)、さらに好ましくは1.5〜15質量部(2〜12質量部)、特に2.5〜10質量部(例えば、3〜9質量部)程度であってもよい。
また、修飾セルロースナノファイバーの割合は、硬化性樹脂、修飾セルロースナノファイバーの総量に対して、例えば、0.1〜30質量%(例えば0.5〜25質量%)、好ましくは0.8〜20質量%(例えば1〜15質量%)、さらに好ましくは1.5〜10質量%、特に好ましくは2〜8質量%程度であってもよい。また、修飾セルロースナノファイバーの割合は、硬化性樹脂、修飾セルロースナノファイバーの総量に対して、温度25℃において、例えば、0.1〜20体積%(例えば0.5〜15体積%)、好ましくは0.8〜12体積%(例えば1〜10体積%)、さらに好ましくは1.2〜10体積%(例えば1.5〜8体積%)、特に好ましくは2〜6体積%程度であってもよい。
修飾セルロースナノファイバーの割合が少なすぎると、硬化性樹脂組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、硬化性樹脂組成物の成形性が低下する虞がある。
[他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂及び修飾セルロースナノファイバーに加え、必要に応じて、さらに他の成分、例えば、硬化剤、分散剤、摩擦調整剤、前記修飾セルロースナノファイバー以外の他の繊維、及び添加剤などを含んでいてもよい。
(硬化剤)
硬化剤は、硬化性樹脂の種類に応じて選択できる。硬化性樹脂がフェノール樹脂の場合、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)、ニトロソ化合物、ポリアセタール樹脂、フェニレンビスオキサゾリンなどが挙げられ、通常、ヘキサメチレンテトラミンが使用される場合が多い。エポキシ樹脂では、アミン系硬化剤(脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミンなど)、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤(脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族ジカルボン酸無水物、芳香族ジカルボン酸無水物など)、ポリメルカプタン系硬化剤、潜在性硬化剤などが使用できる。アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂など)では、無機酸、有機酸、硫酸ナトリウムなどの酸性塩、潜在性硬化剤(カルボン酸エステル、酸無水物、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの塩類)などが使用できる。不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂)、及び熱硬化性アクリル樹脂では、例えば、有機過酸化物などの熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)などが使用できる。
硬化剤の割合は、硬化剤の種類に応じて選択でき、例えば、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは5〜15質量部(例えば、8〜12質量部)程度であってもよく、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部程度であってもよい。
(分散剤)
本発明で用いる修飾セルロースナノファイバーは、樹脂に対する分散性に優れるため、必ずしも分散剤を用いる必要はないが、必要に応じて分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、慣用の界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤など)などの分散剤を利用できるが、分散性に優れる点から、修飾セルロースナノファイバーを形成する前記フルオレン化合物が好ましい。フルオレン化合物は、原料セルロースナノファイバーとフルオレン化合物とを反応させて修飾セルロースナノファイバーを製造した場合において、原料セルロースナノファイバーと未反応のフルオレン化合物であってもよい。
分散剤の割合は、固形分全体に対して、例えば、10質量%以下(例えば0.01〜10質量%程度)であってもよく、例えば5質量%以下、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であってもよい。
(摩擦調整剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の摩擦調整剤を含んでいてもよい。摩擦調整剤としては、例えば、有機摩擦調整剤(カシューダスト、ゴムダストなど)、無機摩擦調整剤(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;珪酸マグネシウム、珪酸ジルコニウムなどの金属珪酸塩;チタン酸カリウムなどのチタン酸塩;バーミキュライトなどの珪酸塩;マイカ、シリカ、タルクなどの鉱物質材料;黒鉛などの炭素質材料)、金属摩擦調整剤(アルミニウム、亜鉛、銅、錫などの金属粉末など)が挙げられる。これらの摩擦調整剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、摩擦調整剤の割合は、所望の摩擦特性に応じて、例えば、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜1000質量部(例えば、0.1〜900質量部)、好ましくは0.5〜500質量部(例えば、1〜300質量部)、さらに好ましくは5〜100質量部(例えば、10〜50質量部)程度であってもよく、例えば、300〜1000質量部、好ましくは500〜900質量部、さらに好ましくは600〜800質量部程度であってもよい。
(他の繊維)
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、修飾セルロースナノファイバー以外の他の繊維を含んでいてもよい。他の繊維としては例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ウィスカー、ワラストナイトなどの無機繊維;芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、ポリエステル繊維などの有機繊維;アルミ、鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコンなどの金属単体又は合金形態の金属繊維などが挙げられる。これらの他の繊維は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。また、他の繊維の割合は、例えば、硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部、1〜30質量部、さらに好ましくは2〜15質量部程度であってもよい。
(添加剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよく、慣用の添加剤としては、例えば、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、難燃助剤、可撓化剤、可塑剤、滑剤、着色剤(例えば、染顔料など)、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、導電剤、帯電防止剤、流動調整剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。また、添加剤の割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部程度であってもよい。
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物(又は摩擦材料)は、硬化性樹脂と、修飾セルロースナノファイバーと、必要に応じて前述の他の成分(例えば、硬化剤)とを混合機又は撹拌機で混合(又は混練)する混合工程を経て調製できる。また、前記のように、前記修飾セルロースナノファイバーは、硬化性樹脂とセルロースナノファイバーとフルオレン化合物とを混合して反応させることにより、混合系内に生成させてもよい。
混合工程では、各成分を一括添加して混合してもよいが、例えば、熱硬化性樹脂と修飾セルロースナノファイバーとを混合した後に、他の成分を添加して混合してもよい。例えば、加熱によって硬化が進行するのを抑制する点から、硬化剤などの成分は、最後に添加して混合するのが好ましい。
混合機又は撹拌機としては、例えば、ボールミル、タンブルミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。
混合温度は、硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂)が完全には硬化しない温度であればよく、例えば、−20〜120℃、好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃(例えば、50〜70℃)程度であってもよく、混合系内で修飾セルロースナノファイバーを生成させる場合は、例えば、20〜120℃、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃程度であってもよい。混合時間は、特に限定されないが、例えば、1分〜24時間、好ましくは5分〜6時間、さらに好ましくは10分〜3時間程度であってもよい。
硬化性樹脂組成物の形態は特に制限されず、粉体、ペレット状などの形態であってもよい。
[摩擦部材とその製造方法]
本発明の摩擦部材(又は摩擦材)は、前記硬化性樹脂組成物を所定の形態に成形する成形工程と、硬化する硬化工程とを経て製造できる。
成形工程は、前記硬化性樹脂組成物を所望の形態に成形すればよく、例えば、プレス機などを用いて加圧しながら成形してもよい。成形圧力は、例えば、0.1〜50MPa、好ましくは0.3〜15MPa、さらに好ましくは0.5〜10MPa程度であってもよい。
硬化工程では、成形工程で成形した前記硬化性樹脂組成物の成形体を熱及び/又は光エネルギーにより硬化処理すればよく、通常、加熱により行う場合が多い。加熱温度は、硬化性樹脂の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、80〜300℃、好ましくは90〜250℃、さらに好ましくは100〜200℃程度であってもよい。また、加熱は段階的に昇温して行ってもよく、例えば、80〜100℃程度で加熱後、120〜200℃程度に昇温して加熱してもよい。加熱時間は、例えば、0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間程度であってもよい。
また、硬化は、プレス機などにより加圧しながら行ってもよく、圧力は、例えば、0.1〜50MPa、好ましくは0.3〜15MPa、さらに好ましくは0.5〜10MPa程度であってもよい。なお、圧力は、加熱温度などに応じて、段階的に上昇又は降下させてもよい。
なお、成形工程及び硬化工程は、プレス機など同一の設備を用いて、連続して行ってもよい。
本発明の摩擦部材は、耐熱性が高く、高温環境下であっても、高摩擦性(高摩擦係数)及び耐摩耗性(低摩耗性)を有している。特に、炭素化修飾セルロースナノファイバーを含んでいると、高摩擦性及び耐摩耗性を長期間維持(保持)できる。
JIS K 7218 A法(リング対ディスク)に従い、荷重150Nの条件で測定した滑り距離150mにおける本発明の摩擦部材の動摩擦係数は、例えば、0.5〜0.8、好ましくは0.52〜0.75、さらに好ましくは0.55〜0.7程度であってもよい。また、炭素化修飾セルロースナノファイバーを含む摩擦部材は、長期に亘って高摩擦性を有する。例えば、前記と同様の条件で測定した滑り距離3000mにおける摩擦部材の動摩擦係数は、例えば、0.2以上(例えば、0.25〜0.6)、好ましくは0.3以上(例えば0.3〜0.5)、さらに好ましくは0.35以上(例えば、0.35〜0.4)程度であってもよい。また、滑り距離3000mにおける動摩擦係数は、滑り距離150mにおける動摩擦係数を1としたとき、例えば、0.5〜1、好ましくは0.55〜0.9、さらに好ましくは0.6〜0.8程度であってもよい。なお、動摩擦係数は、JIS K 7218 A法(リング対ディスク)に従い、荷重150Nの条件で測定でき、詳細には、実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の摩擦部材は、修飾セルロースナノファイバーを含むため、高い耐摩耗性を有する。本発明の摩擦部材の摩耗量は、例えば、100mg以下(例えば、1〜100mg)、好ましくは50mg以下(例えば、5〜50mg)、さらに好ましくは30mg以下(例えば、10〜30mg)程度であってもよい。なお、摩耗量は、JIS K 7218 A法(リング対ディスク)に従って測定でき、詳細には、実施例に記載の方法で測定できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。用いた原料及び評価方法は以下の通りである。
(原料)
フルオレン化合物:9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン
フェノール樹脂(フェノールノボラック樹脂):DIC(株)製、「フェノライトTD−2090」(重量平均分子量:3800)
硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン、ナカライテスク(株)製
セルロースナノファイバー:植物由来のセルロース繊維を機械的方法により、繊維径をナノメータサイズまで解繊処理して調製した繊維。
(修飾セルロースナノファイバーの調製)
セルロースナノファイバーの水分散液(固形分濃度15質量%)100gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらに500gのDMAcに分散して再び遠心分離することにより、溶媒置換し、セルロースナノファイバーとDMAcとの混合物(セルロース含量約10質量%)を得た。この混合物を1000mLの三口フラスコに移し、さらにDMAc350g、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG)15g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)10gを加え、120℃で3時間攪拌した。得られた混合液を遠心分離で回収し、1200mLのDMAcで洗浄する工程を3回繰り返し、修飾セルロースナノファイバー(B−CNF)を得た。得られた修飾セルロースナノファイバーをジグライムに分散させ、修飾セルロースナノファイバーの分散液(固形分濃度12.55質量%)を調製した。フルオレン化合物の修飾率を、以下の方法で測定したところ、12質量%であった。なお、使用した原料であるセルロースナノファイバーをSEM(日本電子(株)製「JSM−6510」)で観察したSEM写真を図1に示す。
(修飾セルロースナノ繊維に結合したフルオレン化合物の修飾率)
フルオレン化合物の修飾率(以下フルオレン修飾率)は、ラマン顕微鏡(HORIBA JOBIN YVON社製、XploRA)を使用してラマン分析を行い、芳香族環(1604cm−1)とセルロースの環内CH(1375cm−1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)により算出した。なお、算出にあたっては、所定量のフルオレン化合物を含有するジアセチルセルロース((株)ダイセル製)フィルムを、溶液キャスト法により作成し、これらの強度比(I1604/I1375)から作成した検量線を用いた。すべてのサンプルは3回測定し、その結果から算出される値の平均値をフルオレン修飾率とした。
(動摩擦係数及び摩耗量)
動摩擦係数及び摩耗量の測定は、摩擦摩耗試験機((株)エー・アンド・デイ製、「EFM−III−F」)を用い、JIS K 7218 A法(リング対ディスク)に従って以下の条件で測定した。
荷重:150N
滑り速度:0.5m/秒
相手材料:S45C(炭素鋼鋼材)
測定時間:100分(滑り距離:3000m)
また、動摩擦係数は、試験開始から5分(滑り距離150m)、15分(滑り距離450m)、30分(滑り距離900m)、60分(滑り距離1800m)、100分(滑り距離3000m)経過時の動摩擦係数をそれぞれ測定し、摩耗量は、試験終了後(100分後、滑り距離3000m)の摩耗量を測定した。なお、測定は各試験片について2回実施し、測定した2回の算術平均値を動摩擦係数及び摩耗量とした。
(炭素:酸素比率(XPS:X線光電子分光法))
炭素:酸素比率(XPS)は、(アルバック・ファイ(株)製、「PHI 5000」)を用いて測定した。
(嵩密度)
嵩密度は、温度25℃、湿度60%の条件下において、JIS K7365−1999に準拠して測定した。
[実施例1]
ラボニーダーミル((株)トーシン製、「TRD100-500X3型」)を用いて、フェノール樹脂17.7gと、固形分濃度12.55質量%の修飾セルロースナノファイバー分散液5.6g(修飾セルロースナノファイバーの実配合量0.7g)とを60℃、100rpmで15分間混合した。混合後、さらに硬化剤1.8gを添加し、60℃、500rpmで15分間混合し、修飾セルロースナノファイバーの割合が2.5体積%の硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物を、乳鉢で粉砕し、真空乾燥機を用いて60℃で1時間真空乾燥させ、乾燥後、熱プレス機(テクノサプライ(株)製、「卓上型ホットプレス」)を用いて、85℃、20MPaで3分間熱プレスしてタブレット化した。得られたタブレットを120℃、0.5MPaで5分間、さらに150℃、0.5MPaで30分間真空プレスした。プレス後、オーブンを用いて150℃で4時間、さらに180℃で1時間加熱し、硬化させて、試験片を得た。得られた試験片の動摩擦係数、及び摩耗量を測定した。
[実施例2]
修飾セルロースナノファイバーの割合を5体積%とする以外は、実施例1と同様に試験片を調製し、評価を行った。
[実施例3]
修飾セルロースナノファイバーの分散液中のジグライムをアセトンで置換し、80℃で6時間乾燥させた。乾燥後、修飾セルロースナノファイバーをマッフル炉にてアルゴン気流中、室温〜270℃まで30分かけて昇温し、30分間保持して、炭素化処理を行い、炭素化修飾セルロースナノファイバーを調製した。なお、炭素化処理後の修飾セルロースナノファイバーの質量は、処理前の約75質量%であった。得られた炭素化修飾セルロースナノファイバーにアセトンを加え、固形分濃度10質量%の分散液とした。修飾セルロースナノファイバーとして、炭素化修飾セルロースナノファイバーを用いた以外は、実施例2と同様に試験片を調製し、評価を行った。
[比較例1]
修飾セルロースナノファイバーを添加することなく、実施例1と同様にして試験片を調製し、評価を行った。
[比較例2]
修飾セルロースナノファイバーに代えて、セルロースナノファイバー(未修飾のセルロースナノファイバー)の水分散液(固形分濃度15質量%)を有機溶媒で置換して用いた以外は、実施例1と同様に硬化性樹脂組成物を調製したところ、フェノール樹脂に対してセルロースナノファイバーを均一に分散できず、成形することができなかった。
実施例及び比較例の配合と、評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例では、比較例1と比較して摩耗量が約1/10以下と大幅に低減され、かつ動摩擦係数が高かった。また、炭素化修飾セルロースナノファイバーを含む実施例3では、試験開始から100分後においても高い摩擦係数を保持していた。
また、実施例4〜実施例6では、実施例3の炭素化処理の処理温度を変化させて、炭素化修飾セルロースナノファイバーを調整し、炭素化修飾セルロースナノファイバーの炭素化の程度を測定した。炭素化の程度として、XPSの元素分析による炭素原子と酸素原子との原子濃度比(XPS)、嵩密度、加熱処理前後の重量変化、及びFT−IR(フーリエ変換赤外分光法)によってピーク値(官能基の有無)を測定した。それらの結果を表2、表3、及び表4に示す。また、FT−IRによる測定結果を図2に示す。
[実施例4]
炭素化処理の温度を室温から190℃まで30分かけて昇温する以外は、実施例3と同様に試験片を調整し、炭素化の程度を測定した。
[実施例5]
炭素化処理の温度を室温から310℃まで30分かけて昇温する以外は、実施例3と同様に試験片を調製し、炭素化の程度を測定した。
[実施例6]
炭素化処理の温度を室温から350℃まで30分かけて昇温する以外は、実施例3と同様に試験片を調製し、炭素化の程度を測定した。
[実施例7]
炭素化処理の温度を室温から430℃まで30分かけて昇温する以外は、実施例3と同様に試験片を調製し、炭素化の程度を測定した。
表2〜表4及び図2から明らかなように、処理温度190℃〜350℃では、炭素化修飾セルロースナノファイバーが完全に炭素化されていないことが示された。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(又は摩擦材料)、及び摩擦部材は、高温環境下においても、高摩擦性及び耐摩耗性を備えており、特に車両、航空機などのベヒクルのブレーキ材又は摩擦材(ブレーキパッド、ブレーキディスク、ブレーキライニング、クラッチフェーシングなど)として好適に利用できる。
また、本発明の炭素化修飾セルロースナノファイバーは、取り扱い性及び樹脂に対する分散性に優れるため、幅広い用途、例えば、樹脂(熱可塑性樹脂、硬化性樹脂など)の補強剤、強化剤、充填剤などとしての配合剤(又は添加剤)として有用である。特に、本発明の炭素化修飾セルロースナノファイバーを樹脂に添加すると、成形体(又は硬化物)の耐摩耗性及び摩擦性を長期に亘って向上できるとともに、耐熱性及び補強性を向上できる。そのため、高い耐久性を備えた摩擦部材として利用できるだけでなく、耐熱性及び機械的強度が要求される種々の用途(車両部品、金属鋳造部品、産業用電子電機部品、家電部品、産業機器部品など)の成形体、積層板、鋳型材料、断熱マット、接着剤、粘結剤、結合剤などとして利用できる。

Claims (17)

  1. 硬化性樹脂とセルロースナノファイバーとを含み、摩擦部材を形成するための硬化性樹脂組成物であって、前記セルロースナノファイバーが、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が結合した修飾セルロースナノファイバーである硬化性樹脂組成物。
  2. 9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
    (式中、環Zはアレーン環、R及びRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0〜4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)
  3. 式(1)において、Xが、基−[(OA)m1−Y](式中、Aはアルキレン基、Yはヒドロキシル基又はグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数を示す)である請求項2記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 硬化性樹脂がフェノール樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  6. 修飾セルロースナノファイバーが、修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバーを含む請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  7. 炭素化修飾セルロースナノファイバーのX線光電子分光法における炭素原子と酸素原子との比率が、前者:後者=50:50〜85:15の範囲である請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
  8. セルロースナノファイバーに対する9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の結合割合が、修飾セルロースナノファイバー全体に対して0.01〜33質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  9. 修飾セルロースナノファイバーの割合が、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部である請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された摩擦部材。
  11. JIS K 7218 A法に従い、荷重150Nの条件で測定した、滑り距離150mにおける動摩擦係数が、0.5〜0.8である請求項10記載の摩擦部材。
  12. 硬化性樹脂と修飾セルロースナノファイバーとを混合し、請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を製造する方法。
  13. 硬化性樹脂組成物を成形して硬化し、請求項10又は11に記載の摩擦部材を製造する方法。
  14. セルロースナノファイバーと9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とが結合した修飾セルロースナノファイバーであって、前記修飾セルロースナノファイバーの少なくとも一部が炭素化された炭素化修飾セルロースナノファイバー。
  15. X線光電子分光法における炭素原子と酸素原子との比率が、前者:後者=50:50〜85:15の範囲である請求項14記載の炭素化修飾セルロースナノファイバー。
  16. 9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項14又は15記載の炭素化修飾セルロースナノファイバー。
    (式中、環Zはアレーン環、R及びRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0〜4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)
  17. 修飾セルロースナノファイバーを炭素化し、請求項14〜16のいずれかに記載の炭素化修飾セルロースナノファイバーを製造する方法。
JP2019182241A 2018-11-06 2019-10-02 摩擦材料及び摩擦部材、並びにその製造方法 Active JP7284681B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018209183 2018-11-06
JP2018209183 2018-11-06

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020076068A true JP2020076068A (ja) 2020-05-21
JP7284681B2 JP7284681B2 (ja) 2023-05-31

Family

ID=70724936

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019182241A Active JP7284681B2 (ja) 2018-11-06 2019-10-02 摩擦材料及び摩擦部材、並びにその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7284681B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021017578A (ja) * 2019-07-23 2021-02-15 大阪瓦斯株式会社 耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09302105A (ja) * 1996-05-10 1997-11-25 Rikagaku Kenkyusho 摩擦材
JP2010037412A (ja) * 2008-08-04 2010-02-18 Fukushima Univ 摺動部材の製造方法
JP2011046543A (ja) * 2009-08-25 2011-03-10 Sunstar Engineering Inc 炭素繊維強化炭素複合材料及びその製造方法
JP2016079370A (ja) * 2014-10-22 2016-05-16 大阪瓦斯株式会社 修飾セルロース及びその製造方法
JP2016172823A (ja) * 2015-03-17 2016-09-29 大阪瓦斯株式会社 炭素材料含有複合体、分散液及びそれらの製造方法並びにその複合体を含む樹脂組成物
JP2018131477A (ja) * 2017-02-13 2018-08-23 曙ブレーキ工業株式会社 摩擦材用の熱硬化性樹脂組成物、摩擦材及び摩擦材用の熱硬化性樹脂組成物の製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09302105A (ja) * 1996-05-10 1997-11-25 Rikagaku Kenkyusho 摩擦材
JP2010037412A (ja) * 2008-08-04 2010-02-18 Fukushima Univ 摺動部材の製造方法
JP2011046543A (ja) * 2009-08-25 2011-03-10 Sunstar Engineering Inc 炭素繊維強化炭素複合材料及びその製造方法
JP2016079370A (ja) * 2014-10-22 2016-05-16 大阪瓦斯株式会社 修飾セルロース及びその製造方法
JP2016172823A (ja) * 2015-03-17 2016-09-29 大阪瓦斯株式会社 炭素材料含有複合体、分散液及びそれらの製造方法並びにその複合体を含む樹脂組成物
JP2018131477A (ja) * 2017-02-13 2018-08-23 曙ブレーキ工業株式会社 摩擦材用の熱硬化性樹脂組成物、摩擦材及び摩擦材用の熱硬化性樹脂組成物の製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021017578A (ja) * 2019-07-23 2021-02-15 大阪瓦斯株式会社 耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物
JP7386758B2 (ja) 2019-07-23 2023-11-27 大阪瓦斯株式会社 耐摩耗性向上剤およびそれを含む樹脂組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP7284681B2 (ja) 2023-05-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6454189B2 (ja) 炭素材料含有複合体、分散液及びそれらの製造方法並びにその複合体を含む樹脂組成物
JP5898525B2 (ja) 摩擦材用樹脂組成物の製造方法
JP6357071B2 (ja) 修飾セルロース及びその製造方法
JP6259770B2 (ja) 樹脂組成物及びそれを用いて得られる、炭素繊維強化複合材料の前駆体、炭素繊維強化複合材料並びに炭素繊維強化炭素材料
JP2013199561A (ja) 摩擦材
WO2020257293A9 (en) Phenolic epoxy system
Kavita et al. Thermal and mechanical behavior of poly (vinyl butyral)‐modified novolac epoxy/multiwalled carbon nanotube nanocomposites
JP7284681B2 (ja) 摩擦材料及び摩擦部材、並びにその製造方法
JPWO2016159218A1 (ja) レゾール型変性フェノール樹脂組成物、その製造方法および接着剤
Qin et al. Preparation and performance of novel flavonoid phenols-based biomass-modified phenol formaldehyde resins
JPWO2018190171A1 (ja) 摩擦材
JP2008285534A (ja) 疎水性有機材料に親和性を有するレゾール型フェノール樹脂
JP2008255133A (ja) 過熱水蒸気を利用した有機系摩擦調整材の合成方法
US11002330B2 (en) Thermosetting resin composition for friction material, friction material and method for producing thermosetting resin composition for friction material
JP2019001854A (ja) 繊維強化ポリアミド及びその製造方法
JP2008189749A (ja) 湿式ペーパー摩擦材用フェノール樹脂及び湿式ペーパー摩擦材
JPWO2014156713A1 (ja) ベンジリックエーテル型フェノール樹脂及びその樹脂組成物並びにそれらを用いて得られた結合剤及び炭化物
WO2018030162A1 (ja) 摩擦材用樹脂組成物及び湿式ペーパー摩擦材
JP2010116440A (ja) 湿式ペーパー摩擦材
JP2007246689A (ja) 摩擦材用フェノール樹脂組成物、及び摩擦材
KR101482894B1 (ko) 액상 페놀 수지 및 그 제조 방법
JP2014055215A (ja) 摩擦材
JP2018080267A (ja) 摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法
Moni et al. Modification in Phenolic Foams and Properties of Clay Reinforced PF
JP5601191B2 (ja) 摩擦材用フェノール樹脂組成物、変性フェノール樹脂の製造方法及び摩擦材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220425

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230209

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230411

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230425

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230519

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7284681

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150