JP2018080267A - 摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を形成できる摺動部材用成形材料の提供を目的とする。【解決手段】本発明の摺動部材用成形材料は、フェノール樹脂と黒鉛と木粉とを含有し、上記木粉が、針葉樹に由来する木粉を含む。上記針葉樹が、スギ、マツ、ヒノキ、モミ、イチイ、イチョウ、カヤ、ツガ、イヌマキ、コウヤマキ又はこれらの組み合わせであるとよい。上記木粉におけるリグニンの含有割合としては、20質量%以上35質量%以下が好ましい。上記フェノール樹脂100質量部に対する上記木粉の含有量としては、15質量部以上75質量部以下が好ましい。上記黒鉛に対する上記木粉の質量比としては、0.4以上4.5以下が好ましい。当該摺動部材用成形材料は、無機フィラーをさらに含有するとよい。本発明には上述の摺動部材用成形材料により形成される摺動部材も含まれる。【選択図】なし

Description

本発明は、摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法に関する。
従来、産業機器、事務機器、輸送機器等の摺動部材として、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性(例えば耐摩耗性の高さ、摩擦係数の低さ等)に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い金属製摺動部材が多用されている。しかし、近年、各種機器の小型化、低コスト化及び軽量化といったニーズに応えるため、金属製摺動部材を樹脂製摺動部材に代替しようとする傾向がある。樹脂製摺動部材用の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられるが、高荷重条件下や高速条件下で使用されてきた従来の金属製摺動部材を代替する樹脂製摺動部材には、溶融しない熱硬化性樹脂の方が形状保持性の観点から好適であり、中でも耐熱性、寸法精度、コスト及び軽さのバランスに優れるフェノール樹脂が特に好適である。
また、フェノール樹脂にガラス繊維、有機系繊維、カーボン繊維等の繊維材料等を加えることで、形成される摺動部材の摺動特性等をさらに向上することができる。このようなフェノール樹脂及び繊維材料を含有する摺動部材用成形材料としては、例えばフェノール樹脂にガラス繊維及びワックスを配合した摺動部材用成形材料(特許文献1参照)、フェノール樹脂、黒鉛、及び平均繊維長が200〜300μmのアラミド繊維を含有する摺動部材用成形材料(特許文献2参照)などが提案されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載のガラス繊維を含む摺動部材用成形材料により形成される摺動部材は、空気や液体を輸送するポンプ等の部品として、摺動面に砂や埃等の異物が挟まりやすい状況で用いられる場合には表面に細かい傷が付き摩耗が進行し易い。また、上記特許文献2に記載の有機系繊維を含む摺動部材用成形材料により形成される摺動部材は、アラミド繊維により機械的強度及び摺動特性に改善効果が見られるものの生産性に難がある。具体的には、射出成形を行う場合、薄肉部や細密部分の充填性が低くなり易く、また研削加工等の加工を行う際にもアラミド繊維が加工性を低下させる傾向にある。さらに、有機系繊維やカーボン繊維を用いた場合、摺動部材のコストパフォーマンスが低下するという別の不都合が生じるおそれがある。
そこで、フェノール樹脂に添加する繊維材料として、比較的安価な木粉を用いることが検討されている。木粉を用いた摺動部材用成形材料としては、例えば木粉40〜60質量%、グラファイト10〜15質量%、及び酸化チタン10〜20質量%を配合した摺動部材用成形材料が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、上記特許文献3の摺動部材用成形材料により形成される摺動部材は、金属製摺動部材と比べると、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性が不十分で、かつ反り及び摺動時の音鳴きを十分に抑制できない。そのため、上記従来の摺動部材用成形材料により形成される摺動部材によっては、金属製摺動部材を完全に代替することは難しい。
特開2006−328215号公報 特開2004−204031号公報 特開平4−320443号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を形成できる摺動部材用成形材料を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた発明は、フェノール樹脂と黒鉛と木粉とを含有し、上記木粉が、針葉樹に由来する木粉を含む摺動部材用成形材料である。
当該摺動部材用成形材料は、基材であるフェノール樹脂に、固体潤滑材である黒鉛と、繊維材料として機能する木粉とを添加し、この木粉の少なくとも一部に針葉樹に由来する木粉を用いている。ここで、針葉樹は、全組織のうち90質量%程度が木繊維(仮道管)により構成されているため、広葉樹等の他の樹木と比較して組織構造が単純である。そのため、針葉樹に由来する木粉は、広葉樹等の他の樹木に由来する木粉と比較し、弾力性、かさ密度等のバラつきが少なく比較的均質な粉末であるため、繊維材料としての機能を安定的に発揮することができる。また、針葉樹に由来する木粉は、上述の通り比較的均質な粉末であるため、黒鉛と組み合わせて用いてもその固体潤滑材としての機能を阻害し難い。このように、当該摺動部材用成形材料は、繊維材料としての機能を安定的に発揮する針葉樹に由来する木粉を含有することで、形成される摺動部材の曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性を向上でき、かつ反り及び摺動時の音鳴きを抑制できる。
上記針葉樹が、スギ、マツ、ヒノキ、モミ、イチイ、イチョウ、カヤ、ツガ、イヌマキ、コウヤマキ又はこれらの組み合わせであるとよい。このように、上記針葉樹が、スギ、マツ、ヒノキ、モミ、イチイ、イチョウ、カヤ、ツガ、イヌマキ、コウヤマキ又はこれらの組み合わせであること、すなわち上記木粉が上述の針葉樹に由来する木粉を含むことで、形成される摺動部材の曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性の向上と、反り及び摺動時の音鳴きの抑制とをより確実に達成できる。
上記木粉におけるリグニンの含有割合としては、20質量%以上35質量%以下が好ましい。このように、上記木粉におけるリグニンの含有割合を上記範囲とすること、すなわち比較的大きくすることで、形成される摺動部材の耐摩耗性をより向上できる。
上記フェノール樹脂100質量部に対する上記木粉の含有量としては、15質量部以上75質量部以下が好ましい。このように、上記フェノール樹脂100質量部に対する木粉の含有量を上記範囲とすることで、生産性と、射出成形や切削加工を行う際の成形性とを向上できる。
上記黒鉛に対する上記木粉の質量比(木紛/黒鉛)としては、0.4以上4.5以下が好ましい。このように、上記黒鉛の含有量に対する上記木粉の含有量を上記範囲とすることで、形成される摺動部材の摺動特性と成形性とをバランスよく向上できる。
当該摺動部材用成形材料は、無機フィラーをさらに含有するとよい。当該摺動部材用成形材料が無機フィラーをさらに含有することで、形成される摺動部材の強度を補強効果によって向上することができ、その結果、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性の向上と、反りの抑制とをより確実に達成することができる。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上述の摺動部材用成形材料により形成される摺動部材である。
当該摺動部材は、上述の摺動部材用成形材料により形成されるため、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上述の摺動部材用成形材料を成形する工程を備える摺動部材の製造方法である。
当該摺動部材の製造方法は、上述の摺動部材用成形材料を用いることで、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を容易かつ確実に製造できる。
ここで「針葉樹」とは、裸子植物球果植物門の樹木をいう。
本発明の摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法によれば、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を提供することができる。
実施例で行った耐摩耗性試験を示す模式図である。
以下、本発明の摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法について詳説する。
<摺動部材用成形材料>
当該摺動部材用成形材料は、フェノール樹脂と黒鉛と木粉とを含有し、上記木粉が針葉樹に由来する木粉を含む。当該摺動部材用成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
[フェノール樹脂]
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを原料としたオリゴマーであり、後述する硬化工程により硬化させることで三次元架橋構造を形成し、不溶不融の状態となる。フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂としては、例えばメチロール型フェノール樹脂、ジメチレンエーテル型フェノール樹脂等が挙げられ、これらの中で、加工時の欠けを発生し難くする観点から、ジメチレンエーテル型フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂としては、これらの中で、形成される摺動部材の耐摩耗性を向上する観点から、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記フェノール類としては、例えばクレゾール、エチルフェノール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のアルキルフェノールや、p−フェニルフェノール、フェノールなどが挙げられる。これらの中で、フェノールが好ましい。上記フェノール類は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。これらの中で、パラホルムアルデヒドが好ましい。上記アルデヒド類は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記フェノール樹脂の数平均分子量(Mn)の下限としては、350が好ましく、450がより好ましい。一方、上記Mnの上限としては、1,200が好ましく、900がより好ましい。上記フェノール樹脂のMnが上記下限より小さい場合、形成される摺動部材の耐ヒートショック性が不十分となるおそれがある。逆に、上記フェノール樹脂のMnが上記上限を超える場合、当該摺動部材用成形材料を製造する際の作業性が低下するおそれがある。なお、上記フェノール樹脂の数平均分子量及び後述する重量平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフの面積法により測定される値である。
上記フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限としては、400が好ましく、1,000がより好ましく、1,500がさらに好ましい。一方、上記Mwの上限としては、9,000が好ましく、5,000がより好ましく、4,000がさらに好ましい。上記フェノール樹脂のMwが上記下限より小さい場合、摺動部材への成形が困難となるおそれがある。逆に、上限フェノール樹脂のMwが上記上限を超える場合、当該摺動部材用成形材料を製造する際の作業性が悪くなるおそれがある。
上記フェノール樹脂の分散比(Mw/Mn)の下限としては、1.5が好ましく、3がより好ましく、5がさらに好ましい。一方、上記分散比の上限としては、20が好ましく、15がより好ましく、10がさらに好ましい。上記分散比を上記範囲とすることで、形成される摺動部材の摩擦係数を低減することができ、その結果、耐摩耗性をより向上することができる。
上記フェノール樹脂におけるフェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの合計含有量の上限としては、20質量%が好ましく、12質量%がより好ましく、6質量%がさらに好ましい。上記合計含有量の下限としては、例えば0.1質量%である。フェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの合計含有量を上記範囲とすることで、形成される摺動部材の摩擦係数を低減することができる。なお、上記フェノール類モノマー及びフェノ−ル類ダイマーの合計含有量は、ゲル濾過クロマトグラフの面積法により測定される値である。
上記フェノール樹脂は、分散比が上記範囲であり、かつフェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの合計含有量が上記範囲であることが特に好ましい。上記フェノール樹脂における分散比及びフェノール類モノマー及びフェノール類ダイマーの合計含有量をいずれも上記範囲とすることで、形成される摺動部材の摩擦係数をより低減することができ、その結果、耐摩耗性をより向上することができる。
当該摺動部材用成形材料におけるフェノール樹脂の含有割合の下限としては、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。一方、上記フェノール樹脂の含有割合の上限としては、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。上記フェノール樹脂の含有割合が上記下限より小さい場合、成形性が低下するおそれがある。逆に、上記フェノール樹脂の含有割合が上記上限を超える場合、黒鉛、木粉等の他の成分が不足し、形成される摺動部材の摺動特性等が低下するおそれがある。
(フェノール樹脂の製造方法)
上記フェノール樹脂の製造方法としては、例えばフェノール類、アルデヒド類及び触媒の混合液を調製する工程(調製工程)と、上記調製した混合液を還流温度で縮合反応させる工程(縮合反応工程)と、縮合反応後の混合液からモノマー等を除去する工程(除去工程)とを備える方法等が挙げられる。
(調製工程)
ノボラック型フェノール樹脂を合成する場合、触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸や、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛等の酸性無機塩などの酸触媒などが挙げられる。これらの中で、無機酸が好ましく、リン酸がより好ましい。また、上記混合液におけるアルデヒド類のフェノール類に対するモル比としては、例えば0.75以上0.95以下である。
レゾール型フェノール樹脂を合成する場合、触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物などのアルカリ触媒などが挙げられる。また、上記混合液におけるアルデヒド類のフェノール類に対するモル比としては、例えば1.1以上4.0以下である。
上記混合液における触媒の含有量の下限としては、フェノール類100質量部に対して、例えば0.05質量部であり、0.1質量部が好ましい。一方、上記触媒の含有量の上限としては、フェノール類100質量部に対して、例えば70質量部であり、50質量部が好ましい。
上記混合液には、エチレングリコール等の添加剤をさらに加えてもよい。上記混合液における添加剤の含有量としては、フェノール類100質量部に対して、例えば40質量部以上60質量部以下である。
(縮合反応工程)
縮合反応における反応時間としては、例えば2時間以上12時間以下である。
(除去工程)
除去工程においてモノマー等を除去する方法としては、例えば縮合反応後の混合液へメチルイソブチルケトン等の有機溶媒を添加して有機溶媒層(上層)と水溶液層(下層)とに相分離させる工程と、上記上層を水洗する工程と、減圧蒸留等で上層からメチルイソブチルケトン等の有機溶媒を除去する工程とを備える方法や、縮合反応後の混合液から減圧蒸留により水及びモノマーを除去する方法等が挙げられる。
[黒鉛]
黒鉛は、当該摺動部材用成形材料において、形成される摺動部材の摩擦係数を低減する固体潤滑材として機能する。当該摺動部材用成形材料は、黒鉛を含有することにより、形成される摺動部材が定常摩耗に移行した際に摩擦係数を安定化させることができる。上記黒鉛としては、例えば鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛や、人造黒鉛などが挙げられる。これらの中でも、天然黒鉛が好ましく、土状黒鉛がより好ましい。黒鉛は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
当該摺動部材用成形材料における黒鉛の含有量の下限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、10質量部が好ましく、15質量部がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。一方、上記黒鉛の含有量の上限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、120質量部が好ましく、90質量部がより好ましく、80質量部がさらに好ましく、70質量部が特に好ましい。上記黒鉛の含有量を上記範囲とすることで、形成される摺動部材の摺動時の摩耗量を低減することができ、また音鳴きをより抑制することもできる。上記黒鉛の含有量が上記下限より小さい場合、形成される摺動部材の耐摩耗性が低下するおそれがある。逆に、黒鉛の含有量が上記上限を超える場合、形成される摺動部材の強度が低下するおそれや、摺動時の摩耗量がかえって増大するおそれがある。
[木粉]
当該摺動部材用成形材料における木粉は、樹木を微細粒子に加工したもので、主に繊維材料として機能する。当該摺動部材用成形材料に用いる木粉は、針葉樹に由来する木粉を少なくとも含む。木粉は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
当該摺動部材用成形材料は、黒鉛及び木粉を組み合わせて用いることにより、形成される摺動部材の耐摩耗性を低下させずに摩擦係数を低減できると共に、カーボン繊維、ガラス繊維等を用いなくても物性強度を維持することができる。さらに、繊維材料としてカーボン繊維やガラス繊維を用いた摺動部材は切削加工等の加工が困難になるのに対し、当該摺動部材用成形材料により形成される摺動部材は木粉を用いているので切削加工が非常に容易である。
また、針葉樹は、広葉樹等の他の樹木と比較し、木粉の性能を決定する組織構造に特徴があり、具体的には組織構造が非常に単純で整然と配列した木繊維(仮道管)により主に構成されている。これは、針葉樹は、広葉樹における道管と同様に樹液を運ぶ組織である木繊維が全組織の90質量%以上を占めているためである。そのため、針葉樹に由来する木粉は、細かく分散した木繊維により主に構成されるバラつきの少ない比較的均質な粉末であり、繊維材料としての機能を安定的に発揮することができる。当該摺動部材用成形材料は、このような特性を有する針葉樹に由来する木粉を用いているため、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を形成できる。これに対し、例えば広葉樹等の他の樹木は、様々な種類の細胞により形成される複雑な組織構造を有するため、広葉樹等に由来する木粉を用いても上述のような効果は奏され難い。さらに、針葉樹は、国内調達し易いという面においても好適である。
なお、針葉樹に由来する木粉は、電子顕微鏡で観察した際に、整然と並んだ木繊維により構成されているという特徴を有するため容易に判別することができる。
当該摺動部材用成形材料が含有する木粉における針葉樹に由来する木粉の含有割合の下限としては、90体積%が好ましく、95体積%がより好ましく、98体積%がさらに好ましい。このように、上記含有割合を上記下限以上とすることで、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材をより確実に形成できる。上記含有割合は、100体積%が最も好ましい。
ここで「針葉樹に由来する木粉の含有割合」は、電子顕微鏡を用いて摺動部材形成用材料又は摺動部材に含まれる任意の100個の木粉を観察し、全木粉の合計面積Sと、針葉樹に由来する木粉の合計面積Sとに基づいて下記式により算出することができる。
針葉樹に由来する木粉の含有割合(体積%)=100×S/S
上記針葉樹としては、特に限定されないが、スギ、マツ、ヒノキ、モミ、イチイ、イチョウ、カヤ、ツガ、イヌマキ及びコウヤマキが好ましく、物性及び入手容易性の観点から、スギ、マツ及びヒノキがより好ましい。木粉の原料となる樹木の種類は、電子顕微鏡を用いた観察により各木紛と比較することによって推定することができる。
上記木粉の最大粒径の下限としては、100μmが好ましく、120μmがより好ましい。一方、上記木粉の最大粒径の上限としては、400μmが好ましく、360μmがより好ましい。上記木粉の最大粒径が上記下限より小さい場合、形成される摺動部材の強度が不十分となることで耐摩耗性が低下するおそれがある。逆に、上記木粉の最大粒径が上記上限を超える場合、形成される摺動部材の摩擦を木粉が阻害することで耐摩耗性が低下するおそれや、反りを十分に抑制できないおそれがある。ここで「最大粒径」とは、当該摺動部材形成用成形材料を電子顕微鏡で観察し、各木粉の最長幅を「粒径」としたときに、視野中の任意の100個の木粉における粒径の最大値を示す。
なお、最大粒径が上記範囲である木粉は、例えば篩分け等により容易に得ることができる。例えば最大粒径180μmの木粉は、原料となる木粉を目開き180μmの篩を用いて篩分けすることで得ることができる。木紛の最大粒径は、摺動部材用成形材料に添加する前であれば、レーザ回析式粒度分布測定装置により測定する事もできる。
上記木粉におけるリグニン含有量の下限としては、20質量%が好ましく、23質量%がより好ましい。一方、上記リグニン含有量の上限としては、35質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記リグニン含有量を上記範囲とすること、つまり比較的大きくすることで、形成される摺動部材の耐摩耗性をより向上できる。なお、針葉樹はリグニン含有量が比較的大きい傾向にあるため、針葉樹に由来する木粉を用いることで、上記リグニン含有量を上記範囲に容易に調整することができる。一方、広葉樹に由来する木粉のリグニン含有量は上記下限よりも小さい傾向にあるため、広葉樹に由来する木粉のみを用いる場合には上記リグニン含有量を上記範囲に調整することが困難である。ここで「リグニン含有量」は、クラーソン法により測定される値をいう。
当該摺動部材用成形材料における上記木粉の含有量の下限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、15質量部が好ましく、25質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。一方、上記木粉の含有量の上限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、75質量部が好ましく、60質量部がより好ましく、55質量部がさらに好ましい。上記木粉の含有量が上記下限より小さい場合、摺動部材の成形が困難となり生産性が低下するおそれがある。逆に、上記木粉の含有量が上記上限を超える場合、形成される摺動部材の摩擦を木粉が阻害することで耐摩耗性が低下するおそれがある。また、形成される摺動部材の反りを十分に抑制できないおそれや、摺動部材の成形が困難となり生産性が低下するおそれがある。
また、当該摺動部材用成形材料における黒鉛の含有量と木粉の含有量とは、形成される摺動部材の摺動特性、曲げ強度等の向上や、反りの抑制などの観点から、一定の範囲内とすることが好ましい。具体的には、当該摺動部材用成形材料における黒鉛に対する木粉の質量比の下限としては、0.4が好ましく、0.5がより好ましく、0.6がさらに好ましい。一方、黒鉛に対する木粉の質量比の上限としては、4.5が好ましく、3.5がより好ましく、2.5がさらに好ましい。
[無機フィラー]
当該摺動部材用成形材料は、無機フィラーをさらに含有することが好ましい。当該摺動部材用成形材料が無機フィラーをさらに含有することで、形成される摺動部材の強度を補強効果によってさらに向上することができる。無機フィラーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記無機フィラーとしては、特に限定されず従来のフェノール樹脂成形材料において慣用されている無機フィラーを適宜用いればよいが、例えば球状フィラー、板状フィラー等を用いることができる。上記球状フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、パーライト、シラスバルーン、けいそう土、焼成アルミナ、ケイ酸カルシウム等に由来するものが挙げられる。また、上記板状フィラーとしては、例えばタルク、マイカ等が挙げられる。これらの中で、特に摩耗特性への影響を抑える観点から、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク及びマイカが好ましい。なお、本明細書において、無機フィラーには繊維フィラーが含まれないものとする。
当該摺動部材用成形材料が無機フィラーを含有する場合、無機フィラーの含有量の下限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、30質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。一方、上記無機フィラーの含有量の上限としては、70質量部が好ましく、60質量部がより好ましい。上記無機フィラーの含有量が上記下限より小さい場合、形成される摺動部材の耐摩耗性が低下するおそれがある。逆に、上記無機フィラーの含有量が上記上限を超える場合、形成される摺動部材の摩擦係数が増大するおそれがある。
(その他の任意成分)
当該摺動部材用成形材料は、その他の任意成分をさらに含有していてもよい。上記その他の任意成分としては、例えば上記木粉以外の他の繊維材料や、硬化剤、充填材、離型剤、硬化促進剤、カップリング剤、溶媒等が挙げられる。
上記他の繊維材料としては、例えばアラミド繊維等の有機系繊維や、ガラス繊維、カーボン繊維などが挙げられる。当該摺動部材用成形材料における上記他の繊維の含有量の上限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、10質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。上記他の繊維材料の含有量が上記上限を超える場合、当該摺動部材用成形材料の加工性が低下するおそれや、原料コストが増大するおそれがある。特に、ガラス繊維等の比較的硬質な繊維材料は、配合量が多すぎると摺動の際に相手材の摩耗量を増大させるおそれがあるため、極力添加を抑えることが望ましい。
上記硬化剤は、フェノール樹脂の硬化反応を促進する。フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂である場合、当該摺動部材用成形材料は、硬化剤を通常含有する。上記硬化剤としては、例えばヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。当該摺動部材用成形材料が硬化剤を含有する場合、硬化剤の含有量の下限としては、フェノール樹脂100質量部に対して、5質量部が好ましい。一方、上記含有量の上限としては、20質量部が好ましい。
上記充填材は、形成される摺動部材の強度、耐久性、耐摩耗性等を向上させる。上記充填材としては、例えば上記黒鉛以外の炭素材、エラストマー、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が挙げられる。
上記離型剤は、形成される摺動部材の離型性を向上する。上記離型剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。当該摺動部材用成形材料における離型剤の含有量としては、フェノール樹脂100質量部に対し、例えば0.2質量部以上5質量部以下とすることができる。
上記硬化促進剤は、フェノール樹脂の硬化反応をより促進する。上記硬化促進剤としては、例えば酸化マグネシウム、消石灰等が挙げられる。
[摺動部材用成形材料の製造方法]
当該摺動部材用成形材料の製造方法としては、特に限定されず公知の摺動部材用成形材料の製造方法を採用できる。具体的には、例えば上述の各種成分を加圧ニーダー、ミキシングロール、二軸押出機等で加熱溶融させて混練した後、得られる混練物をシート状に成形し、このシート状成形品をさらにペレタイザー、パワーミル等を用いて粉砕する方法等が挙げられる。なお、上記混練物をそのまま当該摺動部材用成形材料として成形に供することもできる。
<摺動部材>
当該摺動部材は、上述の当該摺動部材用成形材料から形成される。当該摺動部材の形状としては、特に限定されないが、例えば円板状、角板状、円柱状、角柱状、リング状等が挙げられる。また、当該摺動部材の用途としては、特に限定されないが、好適なものとして、例えばスラストワッシャー、プーリ、軸受、ギア、ベアリング、ポンプ部品、斜板等が挙げられる。
<摺動部材の製造方法>
当該摺動部材の製造方法は、上述の当該摺動部材用成形材料を成形する工程(成形工程)を備える。当該摺動部材の製造方法は、上記成形工程と同時、又は成形工程後に、当該摺動部材用成形材料に含有されるフェノール樹脂を硬化させる工程(硬化工程)をさらに備えることが好ましい。当該摺動部材の製造方法は、上記成形工程前に、当該摺動部材用成形材料を溶融混練する工程(溶融混練工程)をさらに備えてもよい。
(溶融混練工程)
当該摺動部材用成形材料を溶融混練する方法としては、例えば上述の摺動部材用成形材料の製造方法で説明した溶融混練の方法と同様とすることができる。
(成形工程)
本工程では、当該摺動部材用成形材料を成形する。当該摺動部材用成形材料を成形する方法としては、特に限定されないが、例えば射出成形、移送成形、圧縮成形等が挙げられる。これらの中で、射出成形が好ましい。射出成形により成形する場合、シリンダー前部の温度としては、例えば70℃以上120℃以下とすることができる。シリンダー後部の温度としては、例えば30℃以上60℃以下とすることができる。
(硬化工程)
本工程では、当該摺動部材用成形材料に含有されるフェノール樹脂を硬化させる。フェノール樹脂を硬化させる方法としては、通常、成形工程で得られた成形品を加熱する方法等が挙げられる。上記加熱の温度としては、例えば150℃以上200℃以下とすることができる。また、上記加熱の時間としては、例えば30秒以上90秒以下とすることができる。
成形工程により得られた成形品、又は硬化工程により得られた硬化物は、そのまま摺動部材として用いることもできるが、アフターキュアを行った後に摺動部材として用いることが好ましい。アフターキュアを施すことで、摺動特性や寸法精度を向上させることができる。アフターキュアの方法としては、例えば上記成形品又は硬化物を加熱する方法等が挙げられる。上記加熱の温度としては、例えば150℃以上230℃以下とすることができる。上記加熱の時間としては、例えば3時間以上24時間以下とすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
まず、本実施例に用いたノボラック型フェノール樹脂及び木粉について説明する。
[ノボラック型フェノール樹脂の製造]
温度計、攪拌装置及びコンデンサーを備えた反応容器内に、フェノール193質量部、37質量%ホルマリン142質量部(ホルムアルデヒド/フェノールのモル比:0.85)及びシュウ酸0.97質量部(フェノールの配合量に対して0.5質量%)をそれぞれ仕込んだ後、徐々に還流温度(98〜102℃)まで昇温し、同温度で6時間の縮合反応を行った。次いで、減圧濃縮を行ったところ、199質量部(フェノールの仕込み量に対して103質量%)のノボラック型フェノール樹脂が得られた。このノボラック型フェノール樹脂は、数平均分子量が512、重量平均分子量が3,842、分散比が7.5であった。
[木粉]
木粉A(針葉樹由来):三和セルロシン製、スギに由来する木粉、マツに由来する木粉及びヒノキに由来する木粉の混合物、80メッシュ(最大粒径180μm)、リグニンの含有割合25質量%
木粉B(針葉樹由来):三和セルロシン製、スギに由来する木粉を主成分とする木粉、80メッシュ(最大粒径180μm)、リグニンの含有割合30質量%
木粉C(針葉樹由来):三和セルロシン製、マツに由来する木粉を主成分とする木粉、80メッシュ(最大粒径180μm)、リグニンの含有割合28質量%
木粉X(広葉樹由来):三和セルロシン製、クスノキに由来する木粉を主成分とする木粉、80メッシュ(最大粒径180μm)、リグニンの含有割合18質量%
木粉Y(広葉樹由来):三和セルロシン製、ブナに由来する木粉を主成分とする木粉、80メッシュ(最大粒径180μm)、リグニンの含有割合19質量%
<摺動部材用成形材料の製造>
[実施例1]
下記表1に示すように、ノボラック型フェノール樹脂100質量部と、グラファイト(黒鉛)(日本黒鉛工業製の「青PA」)23質量部と、木粉A(針葉樹由来)20質量部と、無機フィラーとしての炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製)45質量部と、硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミン14質量部と、離型剤としてのステアリン酸カルシウム1質量部とを配合し、均一に混合した。次に、得られた混合物を熱ロールにて均一に加熱混練してシート状にし、冷却後、パワーミルで粉砕してグラニュール状の摺動部材用成形材料を得た。
得られた実施例1の摺動部材用成形材料を以下の成形条件で射出成形して硬化させることで板状の試験片を得た。
(成形条件)
シリンダー温度:前部90℃、後部40℃
金型温度 :170℃
硬化時間 :60秒
[実施例2〜10及び比較例1〜3]
実施例1において、フェノール樹脂の配合量と、木粉の種類及び配合量と、黒鉛の配合量と、無機フィラーの配合量とを表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2〜10及び比較例1〜3の摺動部材用成形材料及び試験片を製造した。
<評価>
上記得られた試験片を用いて、下記方法に従い、反り、曲げ強度、耐摩耗性及び音鳴きについて評価を行った。評価結果を表1にあわせて示す。
[反り]
各試験片から10mm×150mm×3mmの短冊状部材を切り出し、その一方の表面を下にして平坦な試験台上に載置した。この短冊状部材の長辺方向における一方の端部周辺の表面を試験台に対して固定した状態で、上記試験台から浮き上がった他方の端部における反り(短冊状部材の他方の端部における下側の表面と試験台の表面との距離)を隙間ゲージで測定した。反りは、n=3で測定し、その平均値を以下の基準で「A(特に良好)」、「B(良好)」又は「C(良好でない)」と評価した。
A:0.04mm以下
B:0.04mm超0.10mm未満
C:0.10mm以上
[曲げ強度]
JIS−K6911:2006年に準じて各試験片の曲げ強度を測定した。曲げ強度は、80MPa以上の場合を「A(良好)」、80MPa未満の場合を「B(良好でない)」と評価できる。
[耐摩耗試験]
スラスト試験機(東測精密工業製の「AFT−6A」)により各試験片の耐摩耗性を測定した。具体的には、図1に示すように、板状の試験片X1と、この試験片X1の上面に配設される円筒状の相手部材X2とを図示しないスラスト試験機に配設した。相手部材X2は、外径26.6mm、内径20mm、高さ15mmの中空円筒状の炭素鋼(S45C)である。試験片X1と相手部材X2との間は無潤滑(ドライ環境)とした。相手部材X2は、上部から試験面圧Aを与えつつ一定方向Bに回転させた。試験条件は、試験面圧Aを0.49MPa、試験速度を1.34m/s、試験時間を1時間とした。試験後、摩耗量(mm)をすべり距離(m)(試験速度に試験時間を乗じた値)及び荷重(N)(試験面圧Aに試験片X1及び相手部材X2の接触面積を乗じた値)で除すことで比摩耗量を求めた。耐摩耗性は、以下の基準に基づいて「A(良好)」又は「B(良好でない)」と評価できる。
A:比摩耗量が10×10−5mm/N・m未満
B:比摩耗量が10×10−5mm/N・m以上
[音鳴き]
図1に示す試験において、速度及び荷重が一定となった状態における音鳴きの発生を音響振動測定機(リオン株式会社製の「NL−21」)で測定した。測定位置と摺動部との距離は20cmとした。音鳴きは、その音量について、以下の基準に基づいて「A(特に良好)」、「B(良好)」又は「C(良好でない)」と評価した。
A:音鳴きの発生が終始認められなかった(試験装置の駆動音である70dB以下)
B:微小な音鳴きの発生が認められた(70dB超90dB未満)
C:激しい音鳴きの発生が終始認められた(90dB以上)
Figure 2018080267
上記表1の結果から明らかなように、フェノール樹脂と黒鉛と針葉樹に由来する木粉とを含有する実施例の摺動部材用成形材料は、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い試験片を形成することができた。一方、針葉樹に由来する木粉の替わりに広葉樹に由来する木粉を用いた比較例1〜2の摺動部材用成形材料は、実施例の摺動部材用成形材料と比較し、形成される試験片の曲げ強度及び耐摩耗性が低かった。また、黒鉛を用いなかった比較例3〜4の摺動部材用成形材料は、実施例の摺動部材用成形材料と比較し、形成される試験片の耐摩耗性が低く、かつ音鳴きを十分に抑制できなかった。
本発明の摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法によれば、曲げ強度及びドライ環境下での摺動特性に優れ、かつ反り及び摺動時の音鳴きが生じ難い摺動部材を提供することができる。
X1 試験片
X2 相手部材

Claims (8)

  1. フェノール樹脂と黒鉛と木粉とを含有し、
    上記木粉が、針葉樹に由来する木粉を含む摺動部材用成形材料。
  2. 上記針葉樹が、スギ、マツ、ヒノキ、モミ、イチイ、イチョウ、カヤ、ツガ、イヌマキ、コウヤマキ又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の摺動部材用成形材料。
  3. 上記木粉におけるリグニンの含有割合が、20質量%以上35質量%以下である請求項1又は請求項2に記載の摺動部材用成形材料。
  4. 上記フェノール樹脂100質量部に対する上記木粉の含有量が、15質量部以上75質量部以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の摺動部材用成形材料。
  5. 上記黒鉛に対する上記木粉の質量比が、0.4以上4.5以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の摺動部材用成形材料。
  6. 無機フィラーをさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の摺動部材用成形材料。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の摺動部材用成形材料により形成される摺動部材。
  8. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の摺動部材用成形材料を成形する工程
    を備える摺動部材の製造方法。
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