JP2014015531A - 退色性樹脂組成物および退色性樹脂成形物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、天然木材に近い良好で高級な木質感を付与することが可能で、経時により天然木材と同様の自然な退色性を示す、退色性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の退色性樹脂組成物は、樹脂と木粉と第1顔料と第2顔料とを含み、該第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料であり、該第2顔料は、酸化チタンおよび/または弁柄であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、天然木材に近い良好で高級な木質感を付与することが可能な退色性樹脂組成物およびそれを用いて形成された退色性樹脂成形物に関する。
従来から、木粉等の木質系材料を熱可塑性樹脂に配合した複合材を、建築材料、家具、日用品、自動車部品等に利用しようとする試みが各方面で行なわれている。これらの試みは、熱可塑性樹脂に木質系材料を配合することによって、曲げ弾性率等の機械的強度が向上すること、および得られる成形品に木材に似た外観や触感(以下「木質感」と記す)が付与できることを利用するものであり、これによって建築廃材や各種木材工業から大量に排出される木粉等の有効利用が可能となった。
しかしながら、このような木質系材料を熱可塑性樹脂に配合した複合材の利用が広がるにつれて、木質感だけでなく、高度な意匠性、すなわち天然木材のような木目模様を付与した成形品や木質の色相を長時間維持できる素材を提供することが要望されるようになってきている。
これらの要望に応えるべく、たとえば特開2002−138179号公報(特許文献1)には、優れた木質感を有し、紫外線に長期間照射されても、変色、退色またはチョーキングが生じにくい、非鉛系の熱安定剤を配合した塩化ビニル樹脂組成物が提案されている。
特開2002−138179号公報
天然の木材を使用した古い寺院や神社などの建造物は、光や雨にさらされている部分は特に赤色要素の退色により古木感を呈しており、一方、光や雨にさらされていない部分は、退色の進行が緩やかとなり、これらのコントラストにより歴史的な重厚感や高級感を感じることができる。
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物をはじめ一般の着色剤と合成樹脂とを用いた成形物によりこのような微妙なコントラストの色相を表現することは困難であった。たとえば、着色剤として耐候性の良好な無機顔料のみを使用すれば、光のあたり具合に関わらず殆ど退色しないため、色相の差異を表現しようとすれば、部位ごとに異なる色の樹脂組成物を用いて成形物を作成しなければならず、煩雑で現実的でない。一方、着色剤として耐候性の低い有機顔料のみを使用した場合には、退色が顕著に進行し木質の色相が維持できず、利用することは困難であった。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、天然木材に近い良好で高級な木質感を付与することが可能で、経時により天然木材と同様の自然な退色性を示す、退色性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行なった結果、木粉を含んだ樹脂に特定の無機顔料と特定の有機顔料を併用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の退色性樹脂組成物は、樹脂と木粉と第1顔料と第2顔料とを含み、該第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料であり、該第2顔料は、酸化チタンおよび/または弁柄であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の退色性樹脂組成物を用いて形成された退色性樹脂成形物にも係わる。
本発明の退色性樹脂組成物は、上記の構成を有することにより、経時により天然木材と同様の自然な退色性を示すという優れた効果を有する。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<退色性樹脂組成物>
本発明の退色性樹脂組成物は、樹脂と木粉と第1顔料と第2顔料とを含み、該第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料であり、該第2顔料は、酸化チタンおよび/または弁柄であることを特徴とする。これにより、本発明の退色性樹脂組成物は、経時により天然木材に類似した自然な退色を示すという特有の効果を示すものとなる。
すなわち、本発明でいう「退色性」とは、天然木材が建材等に用いられた際、日光、風雨、気温の変化等の自然環境により経時的にその色相が変化するのと同様の色相の変化を意味する。このような色相の変化は、特に赤味の色相が失われる傾向を示す。
本発明の退色性樹脂組成物が有するこのような特有の効果は、上記のような特定の顔料を組み合わせて用いた場合においてはじめて発揮されるものであり、第1顔料が有する耐候性等の諸特性と第2顔料が有する堅牢性等の諸特性が相乗的に作用することによって奏されるものである。
以下、本発明の退色性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
<樹脂>
本発明の退色性樹脂組成物に用いられる樹脂は、特に限定されないが、合成樹脂が好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂である。
このような熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、成形が容易であること、および焼却時に塩素化合物が発生しないこと等の理由から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が特に好ましい。
このような樹脂は、1種のものを単独で用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いてもよい。
<木粉>
本発明の退色性樹脂組成物に用いられる木粉は、微粉状の木質系材料であるが、その組成および形状は特に限定されず、従来公知の木粉およびその類似物を特に限定することなく用いることができる。
たとえば、平均粒径が200μm以下の微粉状のものであって、建築廃材や各種木材工業から排出される木質系材料を通常の粉砕方法により粉砕されたものを用いることができる。
また、その樹種も特に限定されるものではないが、強度面で優れている針葉樹が望ましく、たとえば栂(ツガ)や杉を挙げることができる。
ここで、上記樹脂と木粉の配合割合は、これら両者の合計量に対して木粉を15〜70質量%とすることが好ましく、30〜60質量%とすることがより好ましい。木粉の配合割合が15質量%未満では、木質感が不十分となる場合や、後加工後に樹脂が冷却されるときに、収縮を起こしひずみが生じる場合がある。一方、木粉の配合割合が70質量%を超えると、木粉が表面に露出する場合があるとともに、表層のみが当該退色性樹脂組成物で被覆された成形品の場合、強度不足をまねく場合や、研磨等の後加工時の熱によってひび割れが発生する場合がある。
なお、上記平均粒径は、粒度分布測定装置等により測定することができる。
<第1顔料>
本発明において用いられる第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料である。ここで、「赤色系」とは一般概念の赤色を含むとともに、より広範囲な色相群を包含し、たとえば黄色、橙色、茶色、紫色、青色等をも含む概念である。
このようなアゾ基を有する赤色系有機顔料は、従来、耐候性が低いことから屋外での使用等を目的とする樹脂組成物中に用いられることはなかった。本発明は、このような従来の技術常識に捉われることなく、このように適度に低い耐候性に注目し、このアゾ基を有する赤色系有機顔料と後述の第2顔料とを併用することにより「退色性」の発現に成功したものである。このような効果は、アゾ基を有する赤色系有機顔料が共通して有する特有の効果であると考えられる。
このような第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料である限り、特にその種類は限定されない。たとえばアゾレーキ系顔料、ジスアゾピラゾロン顔料、ナフトールAS顔料等を挙げることができる。
アゾレーキ系顔料としては、たとえばC.I.(カラーインデックス)ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド51、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ17:1、C.I.ピグメントオレンジ46等のβ−ナフトール系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド200等のβ−オキシナフトエ酸系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド247等のナフトールAS系レーキ顔料等を挙げることができる。
ジスアゾピラゾロン顔料としては、たとえばC.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド111等を挙げることができる。
ナフトールAS顔料としては、たとえばC.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド13、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド148、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド212、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド261、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド267、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット44、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントブルー25等を挙げることができる。
このような第1顔料は、上記のような顔料を1種単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
<第2顔料>
本発明において用いられる第2顔料は、酸化チタンおよび/または弁柄である。酸化チタンおよび弁柄は、ともに無機顔料であり、上記の第1顔料に比し、堅牢な耐候性を有している。このため、上記の第1顔料と併用することにより、はじめて上記のような退色性が示され、本発明の特徴を構成する。
このような第2顔料は、酸化チタンおよび弁柄から選択される少なくとも1種の顔料を用いることができる。
ここで、酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型等、結晶構造は特に限定されず、いずれの結晶構造のものも用いることができる。中でも、ルチル型の酸化チタンは、熱安定性等に優れるため好ましい。
また、弁柄は、本発明においては赤色系酸化鉄顔料の総称を意味し、たとえば黄色酸化鉄(C.I.ピグメントイエロー42)、弁柄(C.I.ピグメントレッド101)、複合酸化鉄(C.I.ピグメントブラウン11、C.I.ピグメントブラウン31)等を挙げることができる。
<配合量>
本発明の退色性樹脂組成物は、木粉を15〜70質量%含む樹脂と木粉とからなる配合物(以下、「母材組成物」ともいう)100質量部に対して、第1顔料を0.05〜0.5質量部および第2顔料を1.0〜3.0質量部の範囲で含むことが好ましい。より好ましくは、第1顔料が0.1〜0.3質量部であり、第2顔料が1.7〜2.5質量部である。
第1顔料の配合量が0.05質量部以下であると、経時による退色性が示されない場合がある。一方、第1顔料の配合量が0.5質量部を超えると、色の変化(退色性)が大きすぎて天然木の色相の範囲を超えた色となる場合がある。
また、第2顔料の配合量が1.0質量部以下であると、退色後に天然木の色を保持しなくなる場合がある。一方、第2顔料の配合量が3.0質量部を超えると、経時により天然木と同様の退色性が示されない場合がある。
<他の添加剤>
本発明の退色性樹脂組成物は、上記の通り、樹脂と木粉と第1顔料と第2顔料とを含むものである。これらの各成分を含み、かつ本発明の効果を示す限り、さらに任意の他の添加剤を含んでいても差し支えない。
このような他の添加剤としては、たとえば第1顔料および第2顔料以外の着色剤、安定剤、安定助剤、可塑剤、加工助剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
ここで、第1顔料および第2顔料以外の着色剤としては、たとえばカーボンブラックを挙げることができる。カーボンブラックは、色相の調整に好適に用いることができる。カーボンブラックを用いる場合、その添加量を過剰にすると色相が黒くなり、木質の色相が発現しなくなるため、その添加量は、母材組成物100質量部に対して、1質量部未満とすることが好ましい。また、カーボンブラック以外にも、各種の顔料や染料を配合することができる。
安定剤としては、樹脂が塩化ビニル樹脂の場合は、ラウレート系、マレート系、メルカプタイド系等の有機スズ安定剤、Ca、Ba、Pb等の金属石けん安定剤、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛、けい酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、ステアリン酸鉛などの鉛系安定剤、バリウム−亜鉛、またはカルシウム−亜鉛等の複合安定剤等を挙げることができ、これらを各単独で、または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
安定剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。安定剤の配合量が、0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分となる場合があり、また、100質量部を超える場合、安定剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
安定助剤としては、エポキシ化合物等を挙げることができる。安定助剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。安定助剤の含有量が、0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分となる場合があり、また、100質量部を超えた場合、安定助剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジ2エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸系、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸ブチル等のエポキシ系、アジピン酸ジ2エチルヘキシル、アジピン酸ジイソノニル等の脂肪族二塩基酸エステル系、該脂肪族二塩基酸とグリコールとから得られるポリエステル系、塩素化パラフィン系、トリクレジルホスフェイト、トリフェニルホスフェイト等のリン酸エステル系、トリ2エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系等を用いることができる。これらは各々単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
可塑剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。可塑剤の配合量が0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分な場合があり、また100質量部を超えると、可塑剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
加工助剤としては、たとえば、MBS系耐衝撃性改良剤、塩素化ポリエチレン、アクリルグラフト塩ビ等を挙げることができる。この用途に用いられるアクリル系耐衝撃性改良剤としては、パラロイドKM−355P等を挙げることができる。
加工助剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。加工助剤の配合量が0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分な場合があり、また100質量部を超えると、加工助剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
充填剤としては、たとえばタルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、シリカ、マイカ、ガラス粉、けいそう土等を挙げることができる。これらの中でも、炭酸カルシウムが好ましく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムを問わず使用できる。
充填剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、1〜400質量部、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは5〜100質量部である。充填剤の配合量が400質量部を超えると、退色性樹脂組成物の製造および成形が困難になる場合がある。
滑剤としては、たとえば流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等の炭化水素系、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド系、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸系、グリセリンモノステアレート、ジステアリルフタレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレート、ステアリン酸モノグリセライド、硬化油等のエステル系、ステアリルアルコールなどの高級アルコール系等を挙げることができる。これらは各単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
滑剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。滑剤の配合量が0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分な場合があり、また100質量部を超えると、滑剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
酸化防止剤としては、たとえばフェノール系、イオウ系、リン酸系等を挙げることができる。特にフェノール系が好ましく、たとえば、n−オクタデシル−3−(3'、5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート等を挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、たとえば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
このような酸化防止剤および/または紫外線吸収剤の配合量は、母材組成物100質量部に対し、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.03〜10質量部、さらに好ましくは0.03〜5質量部である。酸化防止剤および/または紫外線吸収剤の配合量が0.01質量部未満の場合、機械的強度の耐久性が不十分な場合があり、また100質量部を超えた場合、酸化防止剤および/または紫外線吸収剤を含有させて得られる効果が飽和してしまい、経済的に不利となる。
<製造方法>
本発明の退色性樹脂組成物は、樹脂、木粉、第1顔料、第2顔料、および必要に応じ上記で説明した他の添加剤を、単軸押出機、二軸押出機、二軸押出機と単軸押出機とを直列に接続したタンデム型混練装置、カレンダ、バンバリーミキサ、混練ロール、ニーダなどの公知の混合装置を用いて溶融混合することにより製造することができる。
なお、本発明の退色性樹脂組成物を配合する際、上記の各成分を一度に溶融混練しても良いが、先ず樹脂、木粉、他の添加剤等を溶融混練して熱可塑性樹脂配合物のペレットを得、次いでこれに、第1顔料、第2顔料、および必要に応じカーボンブラック等を添加し、再度溶融混練して目的の退色性樹脂組成物を得ることもできる。
また、上記で用いる樹脂と相溶性のあるビヒクル配合物100質量部に、第1顔料、第2顔料、カーボンブラック等を目的濃度の2倍から20倍の範囲の濃度で添加することによりマスターパウダーを作製し、これを着色されていない上記の熱可塑性樹脂配合物のペレットと共に成形物の成形時に用いることにより、成形物を簡便に得ることもできる。この場合、マスターパウダー中の顔料濃度が低すぎると、マスターパウダーを多量に用いなければならず、経済的に現実的ではない。一方、マスターパウダー中の顔料濃度が高すぎると、成形時に顔料の分散が不良となり、成形物に色むらが生じる場合がある。マスターパウダー中の顔料濃度は、より好ましくは目的濃度の5倍から10倍の範囲である。
ここで、上記のビヒクル配合物とは、退色性樹脂組成物を構成する樹脂と同一か、または極めて近似する樹脂、または該樹脂の低分子量物、モノマー、重合成分等を主成分とし、併せて顔料の樹脂中での分散を容易にする金属石鹸等の分散助剤、および酸化防止剤等を含んだものである。たとえば、退色性樹脂組成物を構成する樹脂がポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂であれば、低分子量のポリエチレンWAX、ポリプロピレンWAX等を主成分として好適に用いることができる。
<退色性樹脂成形物>
本発明は、本発明の退色性樹脂組成物を用いて形成された退色性樹脂成形物にも係わる。このような退色性樹脂成形物は、本発明の退色性樹脂組成物を用いて各種の成型装置を利用することにより製造することができる。
たとえば、このような成型装置としては、押出成型機(異型、Tダイ)、射出成形機、カレンダ成形機、押出圧縮成形機、真空成形機、圧空成形機などを挙げることができる。
本発明の退色性樹脂成形物は、経時により天然木材と同様の自然な退色性を示すという優れた効果を示すものであり、具体的には、デッキ材、窓枠、戸枠、腰板、幅木、手摺りなどの建材、建具材や、テーブルの天板などの家具材などを例示することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りのない限り「部」とは「質量部」を示す。
<実施例1>
木粉(商品名:「スギ間伐材木粉80ME」(平均粒径:100μm)、富山県西部森林組合製)を55質量%含み、樹脂をポリプロピレン(商品名:「ノーブレンH501」、住友化学株式会社製)とする、樹脂と木粉とからなる母材組成物100.0000部に対し、第1顔料としてβ−オキシナフトエ酸系レーキ顔料(C.I.ビグメントレッド48:2)0.1000部およびナフトールAS顔料(C.I.ビグメントレッド170)0.2000部、第2顔料として酸化チタン(C.I.ビグメントホワイト6)0.5250部、弁柄A(C.I.ビグメントレッド101)0.2730部、および弁柄B(C.I.ビグメントブラウン11)1.3500部、他の着色剤としてカーボンブラック(C.I.ビグメントブラック7)0.3250部、をヘンシェルミキサーに投入し混合することにより、退色性樹脂組成物である混合物を得た。
次いで、上記で得られた混合物を、原料の供給部から、スクリューの直径が37mmの二軸押出機(商品名:「TEM−37BS」、東芝機械社製)に供給して混練/押出を行なうことにより、該混合物のペレットを得た。
続いて、上記で得られたペレットを、6インチロールを用いて190℃で5分間混練することにより厚み1mmのシートとし、さらに190℃で5分間プレスすることにより退色性樹脂成形物である厚み1mmのシートを得た。このシートは、天然木材に類似した高級な木質感に富んだ茶色を呈していた。
このシートについて、以下の条件により500時間、1000時間、および1500時間の促進耐候性試験を行なった結果、この試験前では新しい木材と類似の色相を呈していたが、時間の経過とともに退色し、1500時間後には所望の色相(すなわち長期間使用した天然木材に類似する色相)を呈した。各時間経過後に測定したa*の値を以下の表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同じ母材組成物100.0000部に対し、第1顔料としてβ−オキシナフトエ酸系レーキ顔料(C.I.ビグメントレッド48:2)0.0750部およびナフトールAS顔料(C.I.ビグメントレッド170)0.1020部、第2顔料として酸化チタン(C.I.ビグメントホワイト6)0.5250部、弁柄A(C.I.ビグメントレッド101)0.2730部、および弁柄B(C.I.ビグメントブラウン11)0.9983部、他の着色剤としてカーボンブラック(C.I.ビグメントブラック7)0.3000部、をヘンシェルミキサーに投入し混合することにより、退色性樹脂組成物である混合物を得た。
この混合物を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、退色性樹脂成形物である厚み1mmのシートを得た。このシートは、天然木材に類似した高級な木質感に富んだ茶色を呈していた。
このシートについて実施例1と同様の促進耐候性試験を行ない、測定したa*の値を以下の表1に示す。このシートは、実施例1のシートと同様の退色性を示すものであった。
<比較例1>
実施例1と同じ母材組成物100.0000部に対し、第2顔料として酸化チタン(C.I.ビグメントホワイト6)0.5250部、弁柄A(C.I.ビグメントレッド101)0.2730部、および弁柄B(C.I.ビグメントブラウン11)0.6480部、他の着色剤としてカーボンブラック(C.I.ビグメントブラック7)0.3000部、をヘンシェルミキサーに投入し混合することにより、混合物を得た。この混合物は、実施例1および2の混合物に比較して、第1顔料を含まないことを特徴としている。
そしてこの混合物を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、厚み1mmのシートを得た。
このシートについて実施例1と同様の促進耐候性試験を行ない、測定したa*の値を以下の表1に示す。このシートは、実施例1および2のシートのような退色性を示すことはなく、経時による色相の変化はなかった。そして、該色相は、実施例1のシートに対し1500時間の促進耐候性試験を行なった後の色相と類似するものであった。
<促進耐候性試験>
JIS B 7753に準拠して行なった。すなわち、上記の実施例および比較例で得られたシートを30mm×30mmの大きさに切断したものを試験片とし、サンシャインカーボンアーク燈式耐候性試験機(商品名:「デューサイクルサンシャインウェザーメーターWEL−SUN−DC」、スガ試験機社製)を用い、試験片に水スプレーをかける条件で照射を行ない、照射時間500時間、1000時間、1500時間後の試験片について、カラーコンピューター分光光度計(商品名:「Color−Eye−7000A」、gretag macbeth社製)を用いて色相a*(JIS Z8722)を測定した。なお、上記の照射を行なう前の試験片(すなわち照射時間:0時間)についても、同様の測定を行なった。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2014015531
なお、a*の値は、数値が大きければ赤みの強い色相であることを示し、小さければ赤みの低い色相であることを示す。
表1より明らかなように、実施例1および実施例2の退色性樹脂成形物(シート)は、比較例1の樹脂成形物(シート)に比し、時間の経過とともに良好な退色性(色相の変化)を示すことは明らかである。よって、本発明の退色性樹脂組成物が、経時により天然木材と同様の自然な退色性を示すという優れた効果を有することを確認することができた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (2)

  1. 樹脂と木粉と第1顔料と第2顔料とを含み、
    前記第1顔料は、アゾ基を有する赤色系有機顔料であり、
    前記第2顔料は、酸化チタンおよび/または弁柄である、退色性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の退色性樹脂組成物を用いて形成された、退色性樹脂成形物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018080267A (ja) * 2016-11-16 2018-05-24 旭有機材株式会社 摺動部材用成形材料、摺動部材及び製造方法

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