JP2021016495A - 歯ブラシ - Google Patents

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Abstract

【課題】毛束の抜け強度を維持しつつ、台割れや外観不良が抑えられ、ヘッド部のさらなる薄型化が可能となる歯ブラシを提供せんとする。
【解決手段】ヘッド部2に植毛穴20を有する植毛台5を有し、該植毛台の各植毛穴20に平線3打ち込みにより毛束が植毛された歯ブラシ1において、ヘッド部2が、数平均分子量50000以上のポリアセタール樹脂により成形され、厚みT1が3.0mm以下の薄型ヘッドであり、前記植毛台5の各植毛穴20の底部の厚みT2が0.15mm以上0.5mm未満である。各植毛穴底の底部の厚みT2は好ましくは0.2mm以上である。植毛台5の最大厚みT1が2.2mm以下で且つ前記植毛穴底の底部の厚みT2が0.25mm以下のものを除く。各植毛穴の深さU1は1.95mm以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄型のヘッド部の複数の植毛穴に平線を用いて毛束を植設してなる歯ブラシに関する。
歯ブラシは、ヘッド部の植毛台の植毛穴に毛束よりなる毛束が植毛されている。口腔内での操作性を高めるため、歯ブラシのヘッド部及びネック部は樹脂の材質や植毛の仕様、形状等を検討することで薄型化のための工夫が行われている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、平線の長さや幅、植毛穴の直径、深さ、樹脂の材質等につき適切な組み合わせとすることで、ヘッド部を薄型化することが提案されている。
しかしながら、特許文献1からも分かるように、ヘッド部の樹脂材料としてポリアセタール樹脂(POM)を用いた場合、薄型のヘッド部に対して平線により抜け強度を維持しつつ毛束を植毛すると亀裂(台割れ)や白化などの不具合が発生する(文献表2実施例8参照)。すなわちヘッド部の材料としてPOMを用いる場合には、ヘッド厚を厚く設定しなければ安定した生産を行うことができなかった。
特許第5427486号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、毛束の抜け強度を維持しつつ、台割れや外観不良が抑えられ、ヘッド部のさらなる薄型化が可能となる歯ブラシを提供する点にある。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) ヘッド部に植毛穴を有する植毛台を有し、該植毛台の各植毛穴に平線打ち込みにより毛束が植毛された歯ブラシにおいて、ヘッド部が、数平均分子量50000以上のポリアセタール樹脂により成形され、最大厚みが3.0mm以下の薄型ヘッドであり、前記植毛台の各植毛穴の底部の厚みが0.15mm以上0.5mm未満であることを特徴とする歯ブラシ。
(2) 各植毛穴底の底部の厚みが0.2mm以上である(1)記載の歯ブラシ。
(3) 前記植毛台の最大厚みが2.2mm以下で且つ前記植毛穴底の底部の厚みが0.25mm以下のものを除く、(1)又は(2)記載の歯ブラシ。
(4) 各植毛穴の深さが1.95mm以上である、(1)〜(3)の何れかに記載の歯ブラシ。
以上にしてなる本発明によれば、毛束の抜け強度を維持しつつ、台割れや外観不良が抑えられ、ヘッド部のさらなる薄型化が可能となる。
本発明の代表的実施形態に係る歯ブラシを示す平面図. 同じく歯ブラシの側面図。 同じく歯ブラシのヘッド部の横断面図。 同じくヘッド部の植毛部を示す説明図。 各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。 同じく各サンプルの一株抜毛強度および一本抜毛強度を示すグラフ。
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
本発明に係る歯ブラシ1は、図1〜図3に示すように薄型のヘッド部2に複数の植毛穴20を有する植毛台5を有し、各植毛穴20に平線を用いて毛束4を植設したものである。本例の歯ブラシ1は、ヘッド部2と首部11と柄部12が合成樹脂で一体成形された手動の歯ブラシである。ただし、本発明はこのような手動の歯ブラシに限定されるものではなく、駆動機構を内蔵する把持部としての本体部の先端側に、ヘッド部及び首部からなる歯ブラシ清掃体が接続される電動歯ブラシでも勿論よく、その他の形態でも勿論よい。
ヘッド部2は、首部11および柄部12とともにポリアセタール樹脂によって一体成形されている。ヘッド部2は、厚さ(台厚)T1が3.0mm以下の薄型の植毛台5からなるヘッドに構成されている。好ましくは2.9mm以下、より好ましくは2.6mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下の薄型ヘッドに構成される。植毛台5の厚さである台厚T1の下限は2mm以上が好ましく、2.2mm以上がより好ましい。2mm未満だと十分な抜け強度を確保することが難しくなる。台厚T1は、少なくとも毛束4が植設される植毛面の部分に関する。
ヘッド部2(植毛台5)の毛束4が突設される腹側の植毛面21には、断面視略円形の有底の植毛穴20が複数形成されている。植毛穴20の個数、配列形態などは本例に何ら限定されず、開口径、深さ、縦断面形状、毛束一つあたりのフィラメントの本数、その材質など、種々の条件に応じて適切な範囲から選択される。例えば、開口径(内径D1)が1.2〜2.4mm程度で適宜決められる。本例の植毛穴20は、図4に示すように、基本的に断面円形のストレート状の穴であり、底部の周壁には円錐台状に縮径した傾斜面が形成されている。
植毛穴20の穴深さU1は、植毛面21の開口から植毛穴20の底面200までの深さである。底部の厚みT2、すなわち植毛穴底面200からヘッド部(植毛台5)の背面22までの距離を、本明細書では「穴下〜台下」と称す。なお、植毛穴20は、その他の形状でもよい。
各植毛穴20には、それぞれ複数本のフィラメントを束ねて二つ折りにした毛束が平線3を用いて植設される。平線3の材質は特に限定されず、一般的な歯ブラシで用いられている金属製や硬質合成樹脂製などの公知の材質とすればよい。平線3の厚さは、0.1mm以上0.2mm以下、より好ましくは0.15mm以上0.185mm以下に設定される。厚さが0.1mmより薄くなると打ち込みの際に変形して抜け強度が維持できない。厚さが0.21mm以上になると特に薄型ヘッドの場合にヘッド部が白化したり台割れの虞が生じる。
植毛穴20に対する平線3の掛かり代(植毛穴20の穴径D1に対する平線3の打込み方向に直交する横方向の長さLの差)は、好ましくは+0.35mm以上+0.6mm以下、より好ましくは+0.45mm以上+0.6mm以下に設定される。+0.35mmより小さいと食い込み量が少なく抜け強度が維持できない。+0.6mmより大きくなると平線の変形に繋がり、結果として毛束やフィラメント1本の抜け強度が低下してしまう。平線3の長さ方向の各端部が同じだけ食い込むように打ち込むと、それぞれ植毛穴20の周壁に対して、好ましくは0.175mm以上0.3mm以下の長さ食い込んだ状態となる。
平線3の横方向に垂直な面で切断した断面積は、0.1mm以上0.3mm未満、より好ましくは0.12mm以上0.3mm以下に設定されている。断面積が0.1mmより小さいと平線が屈曲してしまい、結果として毛束やフィラメント1本の抜け強度が低下する。この断面形状は本例では長円形状とし、打ち込み方向基端側及び先端側に曲面を有し、毛束4に負担を掛けないように考慮されている。本例の平線3の厚さtは、両端の曲面部分を除く部分のストレート領域の厚さである。
平線3の打ち込みは、図4の仮想線のようになる。本明細書では、植毛穴が開口する植毛面21から打ち込んだ平線3の上端までの距離H1を「平線打込深さ」と称す。また、同じく植毛面21から打ち込んだ平線3の下端までの距離H2を平線3の縦寸法を含む打ち込み深さとして「プラス平線」と称す。さらに、平線の下端から植毛穴底面200までの距離H3を「平線〜穴底」と称す。
フィラメントの材質は特に限定されず、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンなどの樹脂材料からなる人工毛でもよく、豚毛などの天然毛でもよい。またこれらを組み合わせてもよい。その他、断面形状や断面の大きさ、長さ、先細形状の有無など、公知の形態を広く採用できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
以下、本発明に係る歯ブラシのヘッド部の実施例1〜実施例40、材料樹脂であるポリアセタール樹脂の分子量が比較的小さい歯ブラシのヘッド部の比較例1〜比較例9について、それぞれ平線打込深さの異なる複数のサンプルを用意(実施例1〜4、比較例1は平線打込深さ0.6mmのみ)するとともに、各実施例、比較例の各サンプルについて、植毛台の台割れ、外観をそれぞれ評価した結果、並びに、毛束一株の抜け強度、フィラメント一本の抜け強度をそれぞれ測定した結果について説明する。
(サンプル)
実施例、比較例のヘッド部(植毛台)の構造は、図1〜図4の代表的実施形態の構造とし、ヘッド部の材質は、5種類のポリアセタール樹脂(POM)を用いた。
具体的には、実施例1、5、9、13、17、21、25、29、33、37は、ポリアセタールホモポリマー(数平均分子量(Mn)55400、重量平均分子量(Mw)130000、z平均分子量(Mz)261000、MFR25g/10min、引張弾性率3300Mpa、曲げ弾性率3000Mpa)を用い、実施例2、6、10、14、18、22、26、30、34、38は、ポリアセタールホモポリマー(数平均分子量(Mn)58200、重量平均分子量(Mw)143000、z平均分子量(Mz)301000、MFR15g/10min、引張弾性率3100Mpa、曲げ弾性率3000Mpa)を用いた。
また、実施例3、7、11、15、19、23、27、31、35、39は、ポリアセタールホモポリマー(数平均分子量(Mn)67100、重量平均分子量(Mw)184000、z平均分子量(Mz)471000、MFR7g/10min、引張弾性率3300Mpa、曲げ弾性率3100Mpa)を用い、実施例4、8、12、16、20、24、28、32、36、40は、ポリアセタールホモポリマー(数平均分子量(Mn)85000、重量平均分子量(Mw)227000、z平均分子量(Mz)549000、MFR2.5g/10min、引張弾性率3200Mpa、曲げ弾性率3000Mpa)を用い、比較例1〜9は、ポリアセタールコポリマー(数平均分子量(Mn)24900、重量平均分子量(Mw)122000、z平均分子量(Mz)247000、MFR27g/10min、引張弾性率2800Mpa、曲げ弾性率2550Mpa)を用いた。
各実施例、比較例の植毛台の厚さ(台厚)、植毛穴底部の厚さ(穴下〜台下)の寸法は、表1〜表10(表11〜表20)に記載のとおりに設定した。これらの寸法の差が植毛穴の穴深さとなる。また、植毛穴の内径(開口部)は1.5mmとした。
植毛する毛束1つあたりのフィラメントの本数は21〜23本(平均22本)本、径は0.19mm、長さは29mm、材質はナイロンとした。打ち込みに用いる平線の打込み方向である縦方向の長さは1.2mm、これに直交する横方向の長さは2.0〜2.05mm(平均2.03mm)、厚さは0.185mmとした。平線の打ち込み深さは、表1〜表10(表11〜表20)のとおり、0.4mm/0.5mm/0.6mm/0.7mm/0.8mmとした。
(台割れ、外観の評価)
以上の実施例、比較例の各サンプルそれぞれについて、目視にて台割れ、外観をそれぞれ評価する。台割れは、次の5段階の基準で判定する。「5」:クラックなし。「4」:わすかに薄いクラックが見られる穴がある。「3」:多くの穴に薄いクラックが見られるが、穴間は繋がっていない。「2」:多くの穴に薄いクラックが観察され、穴間が繋がっている。「1」:亀裂(クラック間に隙間がある)が見える、又は複数穴間にまたがるクラックあり。評価結果を表1〜表10に示す。
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また、外観は、次の5段階の基準で判定する。「5」:凹凸なし。「4」:わずかに凹凸が見える。「3」:指で触ると、若干凹凸を感じる。「2」:指で触ると凹凸を感じる。「1」:指で触ると引っ掛かりを感じる程度の凹凸がある。評価結果を表11〜表20に示す。
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(毛束一株/フィラメント一本の抜け強度の測定)
毛束一株の抜け強度は、表21〜表29に示す各実施例、比較例の特定の平線打ち込み深さのサンプルについて、植毛穴1つあたりの毛束を専用器具でつかみ、島津製作所製オートグラフを用いて植毛穴から毛束が抜けるまでの最大引張応力(N)を測定(引張速度20mm/min)(n=15)し、その値の平均値とした。測定結果は、表21〜表29、および図5〜13に示す。
また、フィラメント1本の抜け強度は、表21〜表29に示す各実施例、比較例の特定の平線打ち込み深さのサンプルについてフィラメント1本を専用器具でつかみ、同じく島津製作所製オートグラフを用いて植毛穴からフィラメント1本が抜けるまでの最大引張応力(N)を測定(引張速度20mm/min)(n=15)し、その値の平均値とした。測定結果は、表21〜表29、および図5〜13に示す。
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(考察)
台厚2.2mmの実施例1〜8、比較例1、2の各サンプルの台割れ、外観の評価結果(表1、2、12)から、ポリアセタール樹脂の数平均分子量が高いほど割れにくくなり、外観も良くなることが分かる。また、数平均分子量50000以上のポリアセタール樹脂により成形された実施例1〜8が、薄い台厚でも穴下〜台下が0.15mm以上あれば、評価「3」以上の製品化に耐える程度の割れの少ないものを実現することができ(実施例4)、外観も「3」以上を確保できる。
特に、表2に示すように、穴下〜台下が0.25mm以上とすれば、数平均分子量50000以上の実施例5から実施例8までのサンプルについて、台割れ評価「4」以上の高い評価が得られることや、抜け強度についても、表21および図5に示すように一株抜毛強度20N以上、一本抜毛強度2.5N以上のもの(実施例7)が得られることから、厚みが3.0mm以下の薄型ヘッドにおいては、植毛台の各植毛穴の底部の厚みが0.15mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.25mm以上であることが分かる。
また、表3〜10、表13〜20から分かるように、台厚2.30mm以上で、且つ穴下〜台下0.25mm以上を確保すれば、数平均分子量50000以上のすべての実施例で台割れ、外観ともに評価「5」が得られる。しかしながら、穴下〜台下が0.5mm以上になると、すべての実施例(実施例33〜40)で一株抜毛強度20Nを下回ってしまうため、下穴〜台下は0.5mm未満、より好ましくは0.45mm以下に抑えることが好ましい。
本発明のように薄型ヘッドの場合、穴下〜台下が0.5mm以上になると植毛穴の穴深さを確保できなくなり、抜毛強度を維持できないことが分かる。具体的には、表24〜表29、図8〜図13の結果から分かるように、穴深さが0.95mm以上確保できれば、毛束一株/フィラメント一本とも十分な抜け強度を維持できることが分かる(一株抜毛強度20N以上、一本抜毛強度2.5N以上)。
平線打込深さについては、0.4mm〜0.8mmの間で台割れ、外観、抜毛強度とも良好な結果が得られるが、表2、4、12、14から分かるように、平線〜穴底は0.2mm以上、より好ましくは0.25mm以上確保することが台割れ防止および良好な外観を維持する点で好ましい。
1 歯ブラシ
2 ヘッド部
3 平線
4 毛束
5 植毛台
11 首部
12 柄部
20 植毛穴
21 植毛面
22 背面
D1 植毛穴の穴径
H1 植毛面から平線上端までの深さ(「平線打込深さ」)
H2 植毛面から平線下端までの深さ(「プラス平線」)
H3 平線下端から植毛穴の底面までの距離(「平線〜穴底」)
T1 ヘッド部(植毛台)の厚さ(「台厚」)
T2 植毛穴底部の厚み(「穴下〜台下」)
U1 植毛穴の穴深さ
L 平線の横方向の長さ

Claims (4)

  1. ヘッド部に植毛穴を有する植毛台を有し、該植毛台の各植毛穴に平線打ち込みにより毛束が植毛された歯ブラシにおいて、
    ヘッド部が、数平均分子量50000以上のポリアセタール樹脂により成形され、厚みが3.0mm以下の薄型ヘッドであり、
    前記植毛台の各植毛穴の底部の厚みが0.15mm以上0.5mm未満であることを特徴とする歯ブラシ。
  2. 各植毛穴底の底部の厚みが0.2mm以上である請求項1記載の歯ブラシ。
  3. 前記植毛台の最大厚みが2.2mm以下で且つ前記植毛穴底の底部の厚みが0.25mm以下のものを除く、請求項1又は2記載の歯ブラシ。
  4. 各植毛穴の深さが1.95mm以上である、請求項1〜3の何れか1項に記載の歯ブラシ。
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