JP2021011612A - 化成処理鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛系めっきの付着量が低くても、高い耐食性と外観性を有する化成処理鋼板を提供すること。【解決手段】鋼板と、前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、前記めっき層上に、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質を含有する皮膜と、を有する化成処理鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、化成処理鋼板に関する。
亜鉛系めっき鋼板」等の金属材料は、自動車、家電、建材などの幅広い分野で使用されている。
亜鉛系めっき鋼板は、腐食環境において亜鉛などのめっき成分が優先的に溶解することで、鋼板などの下地の金属が腐食することを抑制する。さらには溶解しためっき成分は、白錆と呼ばれる腐食生成物として下地の金属や亜鉛系めっきの表面上に形成することで、腐食の進行を抑制する。
このように亜鉛系めっきは、環境中で溶出し、さらに腐食生成物となることでさらに耐食性を向上するが、同時にめっきが消費されるため、使用される環境において耐用期間内に消失しないようにする必要がある。また、過度な白錆の発生は表面外観を低下させるため、特に家電分野において問題となることがある。
そのため、家電等に用いられる亜鉛系めっき鋼板では、化成処理を行い、めっき鋼板上に皮膜を形成することによって下地の金属やめっきの保護性を高めており、耐食性の向上が実現されている。これらの皮膜には用途に応じて、塗装密着性、溶接性、耐指紋性、加工性、実操業性等の性能も求められる。
一方、亜鉛系めっき鋼板のさらなる低コスト化や生産性向上の観点からは、めっき付着量が低くても耐食性が高い皮膜処理が求められている。しかし、亜鉛系めっき鋼板のめっき付着量が小さいと、腐食過程において端面やカット部、加工部で犠牲防食能が小さいため赤錆が生じやすく、さらにめっきが黒く変色する現象が発生することがある。この現象は亜鉛めっきが犠牲防食作用により消費されて白錆化し、さらには枯渇して赤錆化する現象に先んじて進行する。
このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の化成処理には、耐食性の向上に加え、めっき付着量が低い亜鉛系めっき鋼板においては、特に端面やカット部における変色を抑制できる技術の確立が不可欠である。そのため、鉄鋼材料の化成処理膜や、さらには金属材料に対する防錆剤に関してこれまで多くの技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、グリシジル基を有するシランカップリング剤(A)、テトラアルコキシシラン(B)、炭酸ジルコニウム化合物(C)、ガラス転移点(Tg)が80℃〜130℃であるアニオン性ポリウレタン樹脂(D)、バナジウム化合物(E)、モリブデン酸化合物(F)、及び水が添加され、pHが8.0〜10.0で、かつ、各成分の添加量が所定の関係を満足する表面処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板に表面処理皮膜を形成することによって、クロム化合物を含まずに耐熱変色性、耐熱割れ性、平面部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、耐黒変性、スタック耐黒変性、耐水しみ性、耐溶剤性、耐汗性、塗膜密着性、貯蔵安定性に優れることを示している。
特許文献2では、電気亜鉛めっき後クロメート処理前に酸化鉄ゾルの水溶液で処理することにより、めっき直後の板温が低くても鉄の酸化物皮膜を形成できるようにすることで、耐黒変性を高められることを示している。

特許文献3では、吸水性樹脂と、気化性防錆剤とから成る混合物を多孔質フィルム製容器内に収容したことを特徴とする気化性防錆剤について示しており、気化性防錆剤はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアンモニウムカルバネート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールのうち少なくとも1種類からなり、多孔質フィルム製容器が水蒸気またはガス透過性フィルム材で構成された袋体であることを示している。
特許文献4は、鉄系金属や非鉄系金属に対して優れた防錆効果を有する金属防錆用フィルムを得るための金属防錆剤組成物について検討されており、金属防錆剤組成物は脂肪族ジカルボン酸のアルカリ金属塩と、トリアゾール化合物、ピラロゾン化合物およびイミダゾール化合物よりなることが示されている。
WO2018/070350 特開平1−177382号公報 特開昭63−210285号公報 特開2009−102692号公報
しかし、特許文献1では、防錆効果は期待されても、めっき付着量の低い亜鉛系めっき鋼板における白錆発生に先行して生じるめっきが黒く変色する腐食に対しては、十分な効果を得ることは難しかった。
特許文献2では、クロメートによる皮膜処理によるものであり、クロメートによる防錆効果は期待できるが、環境規制等の点で現実的ではなかった。
特許文献3及び特許文献4では、クロメートフリーの防錆剤について示されているが、フィルムに含有して使用するため、めっき鋼板上の皮膜により耐食性や変色等の外観性を向上するものではなかった。
上述の通り、従来技術ではクロメートフリーにおける化成処理膜の成分により、耐食性や外観性を維持向上できる技術は示されているが、これらは十分なめっき付着量を有する亜鉛めっき鋼板に関するものであり、めっき付着量が低い状況において、端面やカット部、加工部の耐食性を維持しつつ、さらにめっきの変色等も抑制し、外観性を付与する技術については検討されていなかった。
そこで、本発明の課題は、亜鉛系めっきの付着量が低くても、高い耐食性と外観性を有する化成処理鋼板を提供することである。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
鋼板と、
前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
前記めっき層上に、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質を含有する皮膜と、
を有する化成処理鋼板。
<2>
前記皮膜が、(A)ホスホン酸誘導体を分類A、(B1)安息香酸誘導体および(B2)亜硝酸塩を分類B、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体を分類Cで分類したとき、前記分類A〜Cで分類された物質のうち、少なくとも二つ以上の分類の物質を含む<1>に記載の化成処理鋼板。
<3>
前記皮膜が、少なくとも、前記(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体の少なくとも一方を含有する<1>又は<2>に記載の化成処理鋼板。
<4>
前記(A)ホスホン酸誘導体が、一分子中に2つ以上のホスホン酸基を有する化合物である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
<5>
前記(B1)安息香酸誘導体が、分子中にアミノ基を有する化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
<6>
前記(B2)亜硝酸塩が、アルカリ金属、マグネシウム、またはアルカリ土類金属の亜硝酸塩である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
<7>
前記皮膜が、樹脂、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、シリカ、りん酸、およびリン酸塩から選択されるいずれか一つ以上をさらに含む<1>〜<6>のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
<8>
前記皮膜の前記鋼板片面あたりの付着量が10mg・m−2以上2000mg・m−2以下であり、
前記めっき層の前記鋼板片面あたりの付着量が1g・m−2以上10g・m−2以下である<1>〜<7>のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
本発明によれば、亜鉛系めっきの付着量が低くても、高い耐食性と外観性を有する化成処理鋼板を提供できる。
以下、本発明の化成処理鋼板の一例について説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「めっき層」を「めっき」、「亜鉛を含有するめっき層」を「亜鉛系めっき」と称する。
また、めっき層を有する鋼板を「めっき鋼板」、「亜鉛を含有するめっき層を有する鋼板」を「亜鉛系めっき鋼板」とも称する。
また、「皮膜」を「化成処理膜」とも称する。
本発明の化成処理鋼板は、
鋼板と、
前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
前記めっき層上に、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質を含有する皮膜(以下「化成処理膜」とも称する)と、
を有する。
本発明の化成処理鋼板は、上記構成により、亜鉛系めっきの付着量が低くても、高い耐食性と外観性を有する化成処理鋼板となる。
そして、本発明の化成処理鋼板は、次の知見により見出された。
まず、発明者らは、めっき付着量の低い亜鉛系めっきの腐食過程を調査したところ、次の知見を得た。
切断端面やカット疵部、加工部などのめっきの割れや下地の鋼板が露出するところにおいて、一般的なめっきの腐食による白錆の発生に先行して、化成処理膜下のめっきが黒く変色する現象が生じる。
このめっきが黒く変色する原因について詳細は明らかではないが、めっき付着量の低い亜鉛系めっき鋼板で生じやすいことから、鋼露出部とめっき層のガルバニックアクションによる犠牲防食反応によるものと考えられる。即ち、変色が発生しやすいめっき鋼板はめっき層の厚みが薄いため、比較的早い段階から犠牲防食反応によるめっき層の消費が平面方向に進展することで生じていることが推定された。また、犠牲防食に寄与するめっきの量が少なく、下地の鋼の保護が不十分であるため、従来の亜鉛系めっき鋼板に対する化成処理では、下地の鋼の腐食による赤錆も発生しやすいことがわかった。
そこで、本発明者らは、片面のめっき付着量が例えば10g・m−2以下であるような低付着量の亜鉛系めっき鋼板においても、耐食性と外観性(変色)を両立する方法を鋭意検討した。その結果、特に切断端面やカット疵部、加工部で露出した下地の鋼を速やかに、かつ継続して保護する機能を有する腐食反応を抑制するインビター成分を塗装の下地となる化成皮膜に導入することが有効であることを見出した。そしてその機能を有するインヒビターとして、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質が有効であることを見出した。つまり、これら物質が、耐食性を向上させると共に、変色を抑制し、高い外観性を付与することを見出した。
さらに、発明者らは、これらの化合物は、インヒビター作用別に、(A)沈殿皮膜形成型、(B)鉄不動態皮膜形成型、(C)吸着皮膜形成型に分けられ、特に(A)沈殿皮膜形成型および(B)鉄不動態皮膜形成型は、湿潤環境において皮膜中のインヒビター成分が溶出し、鋼と反応して皮膜を形成し露出する鋼表面を保護することで、ガルバニック腐食を抑制することで、安定した耐食性を発揮することを知見した。
また、モノ又はジシクロヘキシルアミン誘導体は蒸気圧が高いため揮散しやすく、一般的には紙やフィルムに含有させることで、短期的な防食効果を得る手段として用いられている。本発明者らは、このような気化性物質の特性を利用し、化成処理膜中で固定化することで、揮発速度を低下させながら同時に、鋼板を剪断したり、傷の発生により露出した鋼やめっき層の断面に吸着し即効性のある、インヒビターとして作用することを知見した。
さらに、これらのインヒビターは、(A)沈殿皮膜形成型、(B)鉄不動態皮膜形成型、(C)吸着皮膜形成型をそれぞれ組み合わせて導入することでさらに高い効果を発揮することを知見した。
その理由は明確ではないが、露出した鋼表面の保護と、めっきの過溶出の抑制をインヒビター作用別に相互に補完することにより効果的に発揮するものと考えられる。特に、(A)沈殿皮膜形成型及び(B)鉄不動態皮膜形成型と、(C)吸着皮膜形成型とを併用することで、腐食初期には即効性のある(C)吸着皮膜形成型が大きく寄与し、(A)沈殿皮膜形成型や(B)鉄不動態皮膜形成型が長期の安定した耐食性を示すことによって、耐食性を向上させられると共に、変色を抑制できるものと推定される。
以上から、本発明の化成処理鋼板は、亜鉛系めっきの付着量が低くても、高い耐食性と外観性を有する化成処理鋼板となることが見出された。
以下、本発明の化成処理鋼板を詳細に説明する。
[鋼板]
鋼板は、めっき層が形成される対象の鋼板である。鋼板は、特に限定されるものではない。鋼板としては、例えば、極低C型(フェライト主体組織)、Al−k型(フェライト中にパーライトを含む組織)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(フェライト主体組織)等のいずれの型の鋼板を用いてもよい。
[亜鉛系めっき]
亜鉛系めっき(亜鉛を含有するめっき層)としては、亜鉛めっき、亜鉛−ニッケルめっき、亜鉛−鉄めっき、亜鉛−クロムめっき、亜鉛−アルミニウムめっき、亜鉛−チタンめっき、亜鉛−マグネシウムめっき、亜鉛−マンガンめっき、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき等の亜鉛系めっきが挙げられる。
亜鉛系めっきは、異種金属元素または不純物として、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を少量含有しためっき、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させためっきも挙げられる。
ここで、化成処理鋼板には、亜鉛系めっき以外に、他の種類のめっき(例えば、鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等)を有していてもよい。
つまり、化成処理鋼板には、亜鉛系めっきと他の種類のめっきとを組み合わせた複層めっきを有いてもよい。
亜鉛系めっきの形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
[皮膜(化成処理膜)]
皮膜は、インヒビターとして、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質を含有する。
ここで、インヒビター作用別に、(A)ホスホン酸誘導体は分類A(沈殿皮膜形成型)、(B1)安息香酸誘導体および(B2)亜硝酸塩は分類B(鉄不動態皮膜形成型)、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体は分類C(吸着皮膜形成型)で分類される。
そして、皮膜は、分類A〜Cで分類された物質のうち、少なくとも二つ以上の分類の物質を含むことが好ましい。それにより、さらなる耐食性および外観性の向上が図られる。
特に、皮膜は、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体の少なくとも一方を含有することが好ましい。それにより、さらなる耐食性および外観性の向上が図られる。
((A)ホスホン酸誘導体)
ホスホン酸誘導体は、基本構造である−P(=O)(OH)を有した化合物であり、基本構造を含むものであれば、特に限定されるものではない。
ホスホン酸誘導体としては、より好ましくは、一分子中にホスホン酸基を2つ以上有する化合物である。ホスホン酸誘導体は、下地の鋼板上で沈殿皮膜を形成すると考えられ、一分子中のホスホン酸基が多いと、より沈殿皮膜の形成能が高いためと推定される。
ホスホン酸誘導体としては、例えば、ニトリロトリスメチルホスホン酸三ナトリウム(NTMP・3Na)、ニトリロトリスメチルホスホン酸五ナトリウム(NTMP・5Na)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ナトリウム水和物(エチドロン酸二ナトリウム水和物)(HEDP・2Na)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ジナトリウム(エチドロン酸四ナトリウム)(HEDP・4Na)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸ナトリウム(PBTC・5Na)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTMP・8H)、アレンドロン酸一ナトリウム三水和物、フェニルホスホン酸二ナトリウム水和物、1,4−フェニレンジホスホン酸などが挙げられる。
ホスホン酸誘導体の含有量は、皮膜固形分に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上7質量%以下である。0.1質量%未満では含有量が少なすぎて、期待する効果が得られにくい。15質量%超ではその他の皮膜構成成分の割合が低下し、インヒビター以外の皮膜として求められる性能が低下するおそれがある。
((B1)安息香酸誘導体)
安息香酸誘導体は、基本構造C−COOを含むものであれば特に限定されるものではない。耐食性および外観性の向上の観点から、より好ましくは、一分子中にアミノ基を有する化合物である。安息香酸誘導体は、下地の鋼上に酸化皮膜を形成すると考えられ、アミノ基を含有すると酸化皮膜の形成能が高くなるものと推定される。
安息香酸誘導体としては、例えば、安息香酸ナトリウム、2−アミノ安息香酸ナトリウム、3−アミノ安息香酸ナトリウム、4−アミノ安息香酸ナトリウム、2−ニトロ安息香酸ナトリウム、3−ニトロ安息香酸ナトリウム、4−ニトロ安息香酸ナトリウム、m−トルイル酸ナトリウム(3−メチル安息香酸ナトリウム)、p−トルイル酸ナトリウム(4−メチル安息香酸ナトリウム)、3−クロロ安息香酸ナトリウム、4−クロロ安息香酸ナトリウム、3−アセチル安息香酸ナトリウム、4−アセチル安息香酸ナトリウム、5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム(5−アミノサリチル酸ナトリウム)、3−ブロモ安息香酸ナトリウム、4−ブロモ安息香酸ナトリウム、2−アミノ−3−ブロモ安息香酸ナトリウム(3−ブロモアントラニル酸ナトリウム)、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸ナトリウム二水和物(4−アミノサリチル酸ナトリウム二水和物)、安息香酸カルシウム三水和物、安息香酸亜鉛、安息香酸マグネシウム三水和物、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸カルシウム七水和物(4−アミノサリチル酸カルシウム七水和物))、モノシクロヘキシルアミン安息香酸、ジシクロヘキシルアミン安息香酸、ジイソプロピルアミン安息香酸、モノエタノールアミン安息香酸、エチルモルフォリン安息香酸等があげられる。
安息香酸誘導体の含有量は、皮膜固形分に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上7質量%以下である。0.1質量%未満では含有量が少なすぎて、期待する効果が得られにくい。15質量%超ではその他の皮膜構成成分の割合が低下し、インヒビター以外の皮膜として求められる性能が低下するおそれがある。
((B2)亜硝酸塩)
亜硝酸塩は、基本構造である亜硝酸イオンNOを有した化合物であり、基本構造を含むものであれば特に限定されるものではない。より好ましくは、アルカリ金属、マグネシウムまたはアルカリ土類金属の亜硝酸塩である。
亜硝酸塩としては、亜硝酸カルシウム一水和物、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、モノシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、モノイソプロピルアミン亜硝酸塩、ジイソプロピルアミン亜硝酸塩、トリエチルアミン亜硝酸塩、ジベンゾイルアミン亜硝酸塩、トリメチルベンゾイルアミン亜硝酸塩、ニトロナフタレンアミン亜硝酸塩、ピリジニウム亜硝酸塩等が挙げられる。
亜硝酸塩の含有量は、皮膜固形分に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上7質量%以下である。0.1質量%未満では含有量が少なすぎて、期待する効果が得られにくい。15質量%超ではその他の皮膜構成成分の割合が低下し、インヒビター以外の皮膜として求められる性能が低下するおそれがある。
((C)シクロヘキシルアミン誘導体[(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体])
モノシクロヘキシルアミン誘導体は、基本構造としてモノシクロヘキシルアミン構造(R−N=(ただし、Rはシクロヘキシル基を示す。))を有した物質であり、この基本構造を有する物質であれば、特に限定されるものでないが、例えば、モノシクロヘキシルアミン、モノシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、モノシクロヘキシルアミンサリチル酸塩、モノシクロヘキシルアミン安息香酸塩、モノシクロヘキシルアミン炭酸塩、モノシクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボン酸塩、モノシクロヘキシルアミンアクリル酸塩等の、モノシクロヘキシルアミン及びその塩が挙げられる。
ジシクロヘキシルアミン誘導体は、基本構造としてジシクロヘキシルアミン構造((R)−N−(ただし、Rはシクロアルキル基を示す。))を有した物質であり、この基本構造を有する物質であれば、特に限定されるものでないが、例えば、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、ジシクロヘキシルアミンサリチル酸塩、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、ジシクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボン酸塩、ジシクロヘキシルアミンアクリル酸塩、ジシクロヘキシルアミンラウリル酸塩等の、ジシクロヘキシルアミン及びその塩が挙げられる。
モノシクロヘキシルアミン亜硝酸塩、ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩は、それぞれ吸着性のモノシクロヘキシルアミン部、ジシクロヘキシルアミン部、及び、鉄を不動態化する亜硝酸部の二つのインヒビター作用機構を有し、さらに蒸気圧が高いため皮膜から比較的速やかにインヒビターとして溶出し、露出した鉄などの金属面の離れた場所への吸着が迅速に進行することで防食機能を作用するものと推定される。
モノシクロヘキシルアミン誘導体、および、ジシクロヘキシルアミン誘導体の含有量(これら物質の合計の含有量)は、皮膜固形分に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.3質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上7質量%以下である。0.1質量%未満では含有量が少なすぎて、期待する効果が得られにくい。15質量%超ではその他の皮膜構成成分の割合が低下し、インヒビター以外の皮膜として求められる性能が低下するおそれがある。
(その他成分)
皮膜には、樹脂、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、シリカ、りん酸、およびリン酸塩から選択されるいずれか一つ以上をさらに含んでもよい。これら物質を含むと、さらに、化成処理液塗布後の成膜性、水分や腐食性イオン等の腐食因子に対する皮膜のバリア性(緻密性)、めっき面への皮膜密着性などが向上し、皮膜の耐食性の底上げに寄与する。
−樹脂−
樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。下地金属板との密着性を更に高めるためには、分子鎖中に強制部位や極性官能基をもつ樹脂(ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)の少なくとも1種を使用することが好ましく、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも1種を使用することが更に好ましい。
樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上60質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上40質量%以下である。
樹脂の含有量が、60質量%超であると、その他の皮膜構成成分の割合が低下し、耐食性以外の皮膜として求められる性能が低下する場合がある。
−シランカップリング剤−
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されている物質が挙げられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げられる。
シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
−ジルコニウム化合物−
ジルコニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモ二ウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸ジルコニウムナトリウム等が挙げられる。
ジルコニウム化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、炭酸ジルコニウム化合物は、樹脂と架橋反応し、ジルコニウムと樹脂との架橋構造を有する皮膜を形成する。また、炭酸ジルコニウム化合物は、塗布して乾燥させる際に炭酸イオンが揮発し、残ったジルコニウム同士が酸素を介して結合し、高分子量化する。この過程で−Zr−OH基がめっき層の表面とZr−O−M結合(M: めっき層中の金属元素)を形成する。
−シランカップリング剤及びジルコニウム化合物の合計の含有量−
シランカップリング剤及びジルコニル塩の含有量は、皮膜中に5質量%以上80質量%以下で含有することが好ましい。より好ましくは、20質量%以上70質量%である。含有量が5質量%未満であると、基材との密着性や耐食性の向上効果が得られない場合があり、80質量%超であると、加工性が低下する場合がある。
−シリカ−
シリカの種類としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどのシリカを挙げられる。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業社製)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業社製)、アエロジル200(日本アエロジル社製)等を挙げられる。
シリカとしては、平均粒子径が5nm以上20nm以下の球状シリカが好ましい。この球状シリカを適用すると、耐食性を向上させる上で好ましい。
シリカの含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上30質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上20質量%以下である。
シリカの含有量が、20質量%超であると、皮膜が脆くなり、本発明の化成処理鋼板を成形加工する際の加工追従性が低下する場合がある。
−りん酸及びその塩−
りん酸及びその塩としては、特に限定されないが、例えば、りん酸、りん酸のアンモニウム塩、りん酸のアルカリ金属塩、りん酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。
りん酸及びその塩の含有量は、皮膜固形分に対して0質量%以上20質量%以下が好ましい。より好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。
りん酸及びその塩の含有量が、20質量%超であると、皮膜が脆くなり、本発明の化成処理鋼板を成形加工する際の皮膜の加工追従性が低下する場合がある。
[皮膜の鋼板片面あたりの付着量]
皮膜の鋼板片面あたりの付着量は、特に限定されるものではないが、10mg・m−2以上2000mg・m−2以下であることが好ましい。皮膜の付着量が、10mg・m−2未満では、皮膜による効果が十分に得られ難くなることがあり、2000mg・m−2を超えると、皮膜成分の有機比率が小さい場合、皮膜が凝集破壊しやすくなり、基材金属板への密着性が低下することがある。安定した効果と経済性の観点から、より好ましい皮膜の付着量の範囲は、50mg・m−2以上1000mg・m−2以下である。
[亜鉛系めっき層の前記鋼板片面あたりの付着量]
亜鉛系めっき層の鋼板片面あたりの付着量は、特に限定されないが、1g・m−2以上10g・m−2以下であることが好ましい。より好ましくは3g・m−2以上8g・m−2以下である。
亜鉛系めっき層の付着量が、1g・m−2未満であると、付着量が小さすぎて不めっき部分が発生し、めっきによる防食効果が発揮されないことがある。また、亜鉛系めっき層の付着量が10g・m−2超であると、耐食性は高いが、めっきが黒く変色する現象は発生しにくい。
[塗布方法]
皮膜は、化成処理液を塗布した後、塗膜を焼付乾燥することで形成されることが好ましい。化成処理液の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。
[化成処理液の作製]
化成処理液の製造方法は特に限定されないが、例えば、各々の皮膜形成成分を混合し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各々の皮膜形成成分の溶解性、又は分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等を添加してもよい。
[焼付乾燥]
焼付乾燥方法は特に制限はなく、あらかじめ鋼板を加熱しておくか、塗布後に鋼板を加熱するか、又はこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。
加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。
焼付乾燥温度については、めっき鋼板の到達板温度で50℃以上150℃以下であることが好ましく、70℃以上130℃以下であることがより好ましい。到達温度が50℃未満であると、皮膜の乾燥が不十分で基材との密着性や耐食性が低下する場合があり、150℃超であると、皮膜の焼付硬化が過剰になり、耐食性や加工性が低下する場合がある。焼付乾燥時間は1秒以上20秒以下であることが好ましい。1秒未満であると焼付硬化が不十分となるおそれがあり、20秒超であると、生産性が低下する。
以下に本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)亜鉛系めっき鋼板
使用した亜鉛系めっき鋼板の種類を表1に示す。めっき鋼板には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。亜鉛系めっき鋼板は、表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
(2)化成処理膜(皮膜)
化成処理膜を形成するためのコーティング剤は、表2から表5に示すインヒビターと、表6に示す樹脂、表7に示すシランカップリング剤、表8に示すジルコニウム化合物、表9に示すシリカ、表10に示すりん酸またはその塩とを、表11〜表17に示す配合量(乾膜の添加濃度=化成処理膜(皮膜)の固形分に対する質量%)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。次いで、前記(1)で準備した亜鉛系めっき鋼板の表面に該コーティング剤を所定の付着量になるようにロールコーターで塗装し、所定の基板到達温度で乾燥させることで化成処理膜を形成した。
(3)評価方法及び評価基準
上記(2)で得られた化成処理板から試験板を採取し、試験板について、下記に示す評価方法および評価基準にて評価した。
(端面変色幅)
試験板(50×100mmサイズ)の端面をテープシールなどで保護することなく、切断したままの状態でJIS Z 2371(2015)に準拠した塩水噴霧試験(SST)を24時間及び72時間実施した。試験後の試験板の端面からのめっきの変色幅を測定し、下記の評価基準で評価した。
評点5:変色幅が5mm未満
評点4:変色幅が5mm以上10mm未満
評点3:変色幅が10mm以上15mm未満
評点2:変色幅が15mm以上20mm未満
評点1:変色幅が20mm以上
(端面赤錆幅)
試験板(50×100mmサイズ)の端面をテープシールなどで保護することなく、切断したままの状態でJIS Z 2371(2015)に準拠した塩水噴霧試験(SST)を24時間及び72時間実施した。試験後の試験板の端面からのめっきの赤錆幅を測定し、下記の評価基準で評価した。
評点5:赤錆幅が2mm未満
評点4:赤錆幅が2mm以上5mm未満
評点3:赤錆幅が5mm以上8mm未満
評点2:赤錆幅が8mm以上10mm未満
評点1:赤錆幅が10mm以上
(エリクセン加工部の変色)
試験板(50×100mmサイズ)の端面をテープシールした後、試験板中央に7 mmのエリクセン押し出しを行い、JIS Z 2371(2015)に準拠した塩水噴霧試験(SST)を24時間及び72時間実施した。試験後の試験板のエリクセン加工により押し出された円形部におけるめっき変色割合を測定し、下記の評価基準で評価した。
評点5:変色の面積割合が10%未満
評点4:変色の面積割合が10%以上20%未満
評点3:変色の面積割合が20%以上30%未満
評点2:変色の面積割合が30%以上40%未満
評点1:変色の面積割合が40%以上
(4)評価結果
評価結果を表11〜表17に示す。
表11は、本発明のインヒビターを添加していない化成処理板の評価試験結果である。
表12は、本発明のインヒビターを添加したときの、その他の成分を変えた化成処理板の評価試験結果である。
表13は、乾燥温度を変えて成膜した化成処理板の評価試験結果である。
表14は、亜鉛系めっき鋼板のめっきの付着量の異なる原板に化成処理膜を成膜した化成処理板の評価試験結果である。
表15は、化成処理膜の付着量を変えた化成処理板の評価試験結果である。
表16は、亜鉛系めっき原板を変えて成膜した化成処理板の評価試験結果である。
表17は、化成処理膜へ添加するインヒビターの種類、添加濃度を変えた化成処理板の評価試験結果である。
本発明のインヒビターを添加した実施例(No.13−114)は、インヒビターを添加していない比較例(No.1−12)に比べ、いずれの評価試験においても、亜鉛系めっきの付着量が低くても、端面から変色や赤錆の発生及びエリクセン加工部での変色が抑制され、耐食性が向上した。
また、ホスホン酸誘導体においてはホスホン酸基数が2つ以上の場合(No.50とNo.No.51、56、61との比較参照)、安息香酸誘導体ではアミノ基を含有する場合(No.62とNo.67、72−74との比較参照)、モノシクロヘキシルアミン誘導体またはジシクロヘキシルアミン誘導体を含有する場合(No.85、86、91と、No.50、60、79と比較参照)、含有するインヒビターの種類が多い場合(No.105−114とNo.50、60、79と比較参照)において、さらに高い耐食性を示す傾向が見られた。
また化成処理膜中の樹脂やシランカップリング剤、ジルコニウム化合物、りん酸またはその塩との組合せでも耐食性が向上することが示された。

Claims (8)

  1. 鋼板と、
    前記鋼板の片面または両面に設けられ、亜鉛を含有するめっき層と、
    前記めっき層上に、(A)ホスホン酸誘導体、(B1)安息香酸誘導体、(B2)亜硝酸塩、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体から選択されるいずれか一つ以上の物質を含有する皮膜と、
    を有する化成処理鋼板。
  2. 前記皮膜が、(A)ホスホン酸誘導体を分類A、(B1)安息香酸誘導体および(B2)亜硝酸塩を分類B、(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体を分類Cで分類したとき、前記分類A〜Cで分類された物質のうち、少なくとも二つ以上の分類の物質を含む請求項1に記載の化成処理鋼板。
  3. 前記皮膜が、少なくとも、前記(C1)モノシクロヘキシルアミン誘導体、および(C2)ジシクロヘキシルアミン誘導体の少なくとも一方を含有する請求項1又は請求項2に記載の化成処理鋼板。
  4. 前記(A)ホスホン酸誘導体が、一分子中に2つ以上のホスホン酸基を有する化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
  5. 前記(B1)安息香酸誘導体が、分子中にアミノ基を有する化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
  6. 前記(B2)亜硝酸塩が、アルカリ金属、マグネシウム、またはアルカリ土類金属の亜硝酸塩である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
  7. 前記皮膜が、樹脂、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、シリカ、りん酸、およびリン酸塩から選択されるいずれか一つ以上をさらに含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
  8. 前記皮膜の前記鋼板片面あたりの付着量が10mg・m−2以上2000mg・m−2以下であり、
    前記めっき層の前記鋼板片面あたりの付着量が1g・m−2以上10g・m−2以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の化成処理鋼板。
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