JP2021006865A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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しかし、脂肪族モノマーはワックスと比べて親水的であるため、トナー中に配合する疎水的なワックスを分散することが困難であり、耐ホットオフセット性と耐久性の両立が困難である。また、脂肪族モノマーは吸湿性が高いため保存性が悪くなる傾向がある。
酸変性物の結晶性は、後述の樹脂の結晶性と同様に結晶性指数([軟化点/吸熱の最高ピーク温度])によって表わされる。非晶質の酸変性物は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。また、吸熱の最高ピーク温度が検出されないものも非晶質であると判断する。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度が検出されないものは非晶質であり、検出される場合は樹脂と同様の方法により軟化点を測定して、結晶性指数(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)を算出して判断する。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
JIS K2235に従って測定する。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
表1、2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1、2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表1、2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、160℃まで冷却し、表1、2に示す酸変性物を添加し、再度、220℃まで昇温し、220℃で5時間重縮合反応させた。その後、200℃まで冷却し、表1、2に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1、2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1〜A5、A7〜A9)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、200℃まで冷却し、表2に示す炭素数10〜14のアルケニル基で置換されたアルケニル無水コハク酸及び無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A6)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、さらに220℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A10)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、160℃まで冷却し、表2に示す酸変性物を添加し、再度、220℃まで昇温し、220℃で5時間重縮合反応させた。その後、200℃まで冷却し、表2に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A11)を得た。
表3に示す結着樹脂及びワックスと、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))3.0質量部及び荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリエント化学工業(株)製)0.5質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間攪拌した後、以下に示す条件で溶融混練した。
同方向回転二軸押出機「PCM-30」((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 120℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/h(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/h・cm2)であった。
未定着画像を取れるように改造した、プリンター「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度150mm/secにて、定着ロールの温度を100℃から200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。得られた100〜200℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロールの最高温度を最高定着温度とした。結果を表3に示す。得られた温度が高いほど耐ホットオフセット性に優れる。
現像ローラを目視で見ることができるように改造した沖データ社製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを実装し、温度30℃、湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行った。現像ローラフィルミングを目視にて観察し、フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。結果を表3に示す。現像ローラフィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。
20mL容のポリプロピレン製の容器に、5gのトナーを入れた。トナーの入った容器を、50℃、の恒温恒湿槽に入れ、容器の蓋をあけた状態で、24時間保存した。放置後のトナーの凝集度を測定し、耐熱保存性の指標とした。結果を表3に示す。この数値が小さいほど、耐熱保存性に優れる。
凝集度は、パウダーテスタ(ホソカワミクロン(株)製)を用いて測定する。
150μm、75μm、45μmの目開きの篩を重ね、一番上にトナーを5g載せ、1mmの振動幅で60秒間振動させる。振動後、篩い上に残ったトナー量を測定し、下記の計算式を用いて凝集度の計算を行う。
なお、実施例1〜4の対比から、上記酸変性物の増量とともに、ワックスの分散性が向上し、耐ホットオフセット性と耐久性をより高いレベルで両立できることが分かる。また、実施例3で使用したフィッシャートロプシュワックスは、実施例5で使用したエステルワックスと比べて、耐ホットオフセット性、保存性及び耐久性をより向上することが分かる。また、実施例3、6、7の対比から、ワックスを増量することで耐ホットオフセット性が向上し、ワックス分散も良好であるため、耐久性及び保存性が向上することが分かる。また、実施例8のように、上記酸変性物を増量した非晶質ポリエステル樹脂を、酸変性物を用いていない非晶質ポリエステル樹脂と混合できることが分かる。また、非晶質ポリエステル樹脂の脂肪族ジオールを変更した実施例3、9から11のトナーでは、非晶質ポリエステル樹脂とワックスの相溶性を制御することで、ワックスの分散性を制御し、耐ホットオフセット性、耐久性及び保存性がとても良好であることが分かる。
これに対して、上記酸変性物を使用していない比較例1では、ワックスとの相溶化剤がないためか、ワックスの分散性が悪く、耐ホットオフセット性及び耐久性に劣ることが分かる。また、上記酸変性物の代りに、アルケニル無水コハク酸を使用した比較例2では、α−オレフィンの重合体ではなく分子量が小さくポリエステル部位と相溶するためか、実施例3と比べて、熱的に弱いためか、耐ホットオフセット性、耐久性及び保存性が悪化することが分かる。また、結晶性を有する酸変性物を使用した比較例3では、結晶性を有する酸変性物のポリエステル中での分散が悪いためか、実施例3と比べると、ワックスの分散性が不十分であるためか、耐ホットオフセット性と耐久性が悪化することが分かる。
Claims (7)
- 炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物及び非晶質である炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A、及びワックスを含有する静電荷像現像用トナー。
- 非晶質ポリエステル樹脂Aが、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と非晶質である炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の酸変性物A以外のカルボン酸成分との重縮合物に、酸変性物Aが重縮合した重縮合物である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の酸変性物Aの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸により変性された酸変性物である、請求項1〜3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα−オレフィン重合体の片末端が酸により変性された酸変性物である、請求項1〜4いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- ワックスが、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びエステルワックスからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜5いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
- ワックスの融点が、80℃以上130℃以下である、請求項1〜6いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
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