JP7228484B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents
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Description
従来、耐擦過性を向上させる手段として、ドデセニル無水コハク酸のような柔軟性に優れるソフトセグメント部位であるアルキル基を有する非晶性のモノマーを複合樹脂中のポリエステル部の原料として用いることで、耐擦過性が改善するものの、ガラス転移温度の低下による保存性の悪化や、ソフトセグメント部位の耐衝撃性の影響により、生産性の悪化が懸念される(例えば、特許文献1参照)。
また、耐衝撃性に優れる部位を導入する観点から、例えば、炭素数2又は3のα-オレフィン重合体の酸変性物のようなアルキル基を有する結晶性のマクロモノマーを複合樹脂中のポリエステル部の原料として用いる方法が考えられるが、この方法では耐擦過性の改善は確認されなかった(例えば、特許文献2、3参照)。
〔1〕 ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分由来の構成単位を有するポリエステル樹脂部分と、ビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを含有する、トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
で表される化合物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
工程(A)の後に工程(B)を行ってもよいし、工程(B)の後に工程(A)を行ってもよく、工程(A)と工程(B)を同時に行ってもよい。また、工程(A)と工程(B)は、同一容器内で行うことが好ましい。
なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂部分の質量は、用いられるポリエステル樹脂部分の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量を除いた質量である。また、ビニル系樹脂部分の量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの合計量である。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度が検出されないものは非晶質であり、検出される場合は樹脂と同様の方法により軟化点を測定して、結晶性指数(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)を算出して判断する。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、表1に示すビニル系樹脂部分の原料モノマー、両反応性モノマー、及びラジカル重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、表1に示す酸変性物を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させた後、200℃まで冷却し、表1に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質の複合樹脂(樹脂A1~A5、A8)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、表1に示すビニル系樹脂部分の原料モノマー、両反応性モノマー、及びラジカル重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200まで昇温し、200℃で5時間重縮合反応させた後、表1に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質の複合樹脂(樹脂A6)を得た。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、表1に示すビニル系樹脂部分の原料モノマー、両反応性モノマー、及びラジカル重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200まで昇温し、200℃で5時間重縮合反応させた後、表1に示す無水トリメリット酸及び炭素数10~14のアルケニル基で置換されたアルケニル無水コハク酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質の複合樹脂(樹脂A7)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃まで昇温し、235℃で10時間反応させた後、235℃、8.0kPaにて1時間反応させた。160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、表2に示すビニル系樹脂部分の原料モノマー、両反応性モノマー、及びラジカル重合開始剤の混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、表2に示す酸変性物を添加し、再度、235℃まで昇温し、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質の複合樹脂(樹脂B1)を得た。
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「SP-105」(加藤洋行社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
A:生産性が10.0未満であり、樹脂の生産性がトナー製造時に問題にならない。
B:生産性が10.0以上、18.0未満であり、製造条件の微調整が必要になる。
C:生産性が18.0以上、26.0未満であり、製造条件の変更が必要になる。
D:粉砕性が26.0以上であり、トナーの生産効率がやや低下する。
カラープリンター「C612dnw」(商品名、沖データ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出し(印刷面積:6cm×6cm、0.5mg/cm2)を行った。
未定着画像を、前記プリンターの定着機をオフラインで使用し、100mm/secにて100℃から5℃ずつ温度を上げて定着させた。なお、定着紙にはJ紙(富士ゼロックス製、坪量:82g/m2、紙厚:97μm)を使用した。
定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
トナー5gを円柱型容器に入れ、温度50℃、相対湿度50%の高温環境下で72時間放置後、200メッシュ(目開き:75μm)の篩にかけ、通過したトナーの質量を秤量した。通過したトナーの質量が多いほど保存性に優れ、以下の評価基準に従って保存性を評価した。結果を表3に示す。
A:篩を通過したトナーが90質量%以上であり、トナーの凝集による印刷不良が発生しない。
B:篩を通過したトナーが80質量%以上、90質量%未満であり、トナーの凝集による印刷不良が発生する可能性がわずかにある。
C:篩を通過したトナーが20質量%以上、80質量%未満であり、トナーの凝集による印刷不良が発生する可能性が高い。
D:篩を通過したトナーが20質量%未満であり、トナーの凝集による印刷不良が発生する。
評価紙としてBusiness4200(秤量105g/m2、Xerox社製)を用い、トナーの載り量を0.50mg/cm2としたベタ画像を180℃に温調した定着器に通して定着させた。定着画像を、40℃、相対湿度80%の環境下にて1か月放置した。500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、放置後の定着画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、(1-(擦り後の反射濃度/擦り前の反射濃度))×100から、画像濃度の低下率(%)を算出し、定着画像の耐擦過性を評価した。結果を表3に示す。
A:画像濃度の低下率が15%未満であり、擦過による画像の変化が見られない
B:画像濃度の低下率が15%以上、20%未満であり、擦過によって画像にカスレ等が若干みられる
C:画像濃度の低下率が20%以上、25%未満であり、擦過によって画像にカスレ等がみられる
D:画像濃度の低下率が25%以上であり、擦過によってあきらかな画像不良がみられる
これに対し、酸変性物を用いていない複合樹脂を含有する比較例1のトナーは、トナー表面の平滑性が低く、耐擦過性に欠けている。また、酸変性物の代わりに、アルキル基を有する非晶性のモノマー(アルケニル無水コハク酸)を用いたポリエステル樹脂を含有する比較例2のトナーは、樹脂のガラス転移温度の低下により保存性が悪化しており、かつ、耐衝撃性の影響のためか、生産性は改善されていない。さらに、酸変性物に炭素数2又は3のα-オレフィン重合体の酸変性物のようなアルキル基を有する結晶性のマクロモノマーを用いた複合樹脂を含有する比較例3のトナーは、複合樹脂中での分散性や、印字後のトナー表面への染み出しが少ないためか、耐擦過性は改善されていない。
Claims (7)
- ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分由来の構成単位と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分由来の構成単位を有するポリエステル樹脂部分と、ビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを含有する、トナー用結着樹脂組成物。
- 複合樹脂Aにおけるビニル系樹脂部分に対するポリエステル樹脂部分の質量比が50/50以上95/5以下である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
- ビニル系樹脂部分の原料モノマーが、スチレン系化合物を含む、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの酸の無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸により変性された酸変性物である、請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の片末端が酸により変性された酸変性物である、請求項1~5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 請求項1~6いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー。
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