JP7165028B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関する。
国際エネルギースタープログラム適合も含めた省エネの観点から、トナーには低温定着性が求められる。また、低温定着性に優れたトナーは、省エネルギーで紙面に定着させる事が可能なため、マシンの高速化も可能となる。しかしながら、トナー自体が低温定着可能であっても、帯電立ち上がり性が不十分な場合、現像工程に時間がかかり、ウォームアップ時間が長くなることや、定着時に画像カブリ等の定着画像不良が発生することが予想される。
特許文献1には、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び長期保存性のいずれにも優れる電子写真用トナー用結着樹脂組成物として、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂Pとビニル樹脂との非晶質複合樹脂であり、軟化点が107℃以上140℃以下である非晶質複合樹脂ACと、炭素数2以上16以下の脂肪族ジオールを95モル%以上含有するアルコール成分と炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を95モル%以上含有するカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂CPとを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記ポリエステル樹脂Pのカルボン酸成分がアルコール成分100モルに対して、3価以上の芳香族カルボン酸系化合物を3モル以上18モル以下含有し、前記ビニル樹脂が、アルキル基の炭素数が2以上6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを25質量%以上50質量%以下含有する原料モノマーの付加重合物である、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性に優れる電子写真用トナー用結着樹脂組成物として、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる重縮合系樹脂成分と、アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、10質量%以上60質量%以下含有する原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂成分とを含み、軟化点が100℃以上130℃以下、メチルエチルケトン不溶分が5質量%以上50質量%以下である非晶質複合樹脂を含有する、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
特開2017-203831号公報 特開2016-130797号公報
しかしながら、特許文献1、2には、低分子量の重縮合樹脂が使われているため、帯電の立ち上がり性に課題があると予想される。
また、低温定着性の向上のための手段としては、低軟化点の樹脂を用いることが一般的である。しかしながら、低軟化点の樹脂に含まれる低分子量成分は帯電の立ち上がり性に悪影響を及ぼす。
本発明は、低温定着性と帯電の立ち上がり性の両立が可能な、トナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナーに関する。
本発明者らは前記課題に対し、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分を有する複合樹脂において、カルボン酸成分中の3価以上のカルボン酸系化合物の含有量を制御し、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中に(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルを含ませることにより、低温定着性と帯電の立ち上り性の両立が可能なことを見出した。
本発明は、
〔1〕 アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物であるポリエステル樹脂部分と、(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの反応物であるビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを20質量%以上含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記複合樹脂Aの軟化点が85℃以上115℃以下であり、前記カルボン酸成分における3価以上のカルボン酸系化合物の含有量が、前記アルコール成分100モルに対して2モル以下であり、前記(メタ)アクリル系化合物が、アルキル基の炭素数が1以上5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、30質量%以上である、トナー用結着樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、複合樹脂Aを、
工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180~250℃の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
を含む方法により製造する、トナー用結着樹脂組成物の製造方法
に関する。
本発明の結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーは、低温定着性と帯電の立ち上がり性の両立が可能であるという優れた効果を奏するものである。
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを含有し、ポリエステル樹脂部分のカルボン酸成分における3価以上のカルボン酸系化合物の含有量が所定量以下であり、ビニル系樹脂部分の原料モノマーが、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルを含むものである。この複合樹脂Aでは、(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルのアルキル基が、ポリエステル樹脂部分のアルコール成分末端とのエステル交換によりポリエステル樹脂部分と結合し、架橋体を形成する。この架橋体は内側にビニル系樹脂部分、外側にポリエステル樹脂部分が移行しやすい。そのため、外側のポリエステル樹脂部分に低分子量のポリエステル樹脂成分が吸着しやすく、低分子量成分の運動性が抑制されることで電荷のリークが抑制され、帯電の立ち上がり性と低温定着性の両立が可能となるものと推察される。
ポリエステル樹脂部分は、アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物である。
ポリエステル樹脂部分のアルコール成分は、保存性の観点から、式(I):
Figure 0007165028000001
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
ポリエステル樹脂部分のカルボン酸成分は、保存性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物及びそれらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられるが、これらの中では、テレフタル酸が好ましい。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数が1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物及びそれらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
本発明では、低温定着性の観点から、カルボン酸成分における3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、アルコール成分100モルに対して、2モル以下であり、好ましくは1.5モル以下、さらに好ましくは1モル以下、さらに好ましくは0.5モル以下、さらに好ましくは0.3モル以下、さらに好ましくは0モルである。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
ポリエステル樹脂部分は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で、重縮合させて製造することができる。重縮合反応に適した温度条件は、好ましくは180℃以上、より好ましくは210℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度範囲である。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、チタン化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
ビニル系樹脂部分は、(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの反応物であり、該(メタ)アクリル系化合物は、アルキル基の炭素数が1以上5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、1以上、好ましくは3以上であり、そして、5以下、好ましくは4以下であり、特に好ましくは4である。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ペンチル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの中では、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸ブチルがさらに好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、帯電の立ち上がり性の観点から、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましく80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
ビニル系樹脂部分の原料モノマーは、帯電性の観点から、さらに、スチレン化合物を含有することが好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
スチレン化合物の含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、0質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、そして、帯電性の観点から、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。
(メタ)アクリル系化合物とスチレン化合物の合計含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
(メタ)アクリル系化合物及びスチレン化合物以外のビニル系樹脂部分の原料モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。
ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、付加重合反応に適した温度条件は、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
複合樹脂Aは、例えば、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(重縮合工程)と、ビニル系樹脂部分の原料モノマーによる付加重合反応の工程(付加重合工程)とを含む方法により製造することができる。
重縮合工程の後に付加重合工程を行ってもよいし、付加重合工程の後に重縮合工程を行ってもよく、重縮合工程と付加重合工程を同時に行ってもよい。また、重縮合工程と付加重合工程は、同一容器内で行うことが好ましい。
また、重縮合工程の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。重縮合工程と付加重合工程を並行して進行する際には、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物中に、ビニル系樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
本発明において、複合樹脂Aは、
工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180~250℃の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
を含む方法により、製造することが好ましい。
工程A及び工程Cでは、付加重合反応又は重縮合反応に適した温度条件で、それぞれの反応を促進することが好ましい。また、工程Bは、エステル化触媒の存在下で、又はエステル化触媒とエステル化助触媒の存在下で行うことが好ましい。
工程Bでは、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーの重縮合反応も生じ得るが、工程Aで生成したビニル系樹脂における(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルのアルキル基とアルコール成分の水酸基とのエステル交換反応により、複合樹脂における架橋構造の形成が促進されるものと推察される。
工程Aをカルボン酸成分の存在下で行うことにより、付加重合反応を促進することができる。工程Aに用いるカルボン酸成分の量は、全カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは6モル%以上であり、そして、帯電性の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
工程Bの温度範囲は、エステル交換反応を促進する観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、より好ましくは240℃以下である。
工程Bの時間は、エステル交換反応を促進する観点から、好ましくは3.5時間以上、より好ましくは4.5時間以上であり、そして、好ましくは8時間以下、より好ましくは7時間以下である。
工程Bに用いるアルコール成分の量は、全アルコール成分中、98モル%以上であり、好ましくは100モル%である。
なお、工程Bに用いるアルコール成分は、工程Aの後に反応系に添加してもよいが、作業効率の観点から、工程Aでカルボン酸成分とともに、反応系に存在していることが好ましい。即ち、工程Aの付加重合反応を、全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分と全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行うことが好ましい。
なお、アルコール成分は、工程(B)に存在させるカルボン酸成分とともに用いても、工程(B)の後に残りのカルボン酸成分とともに用いてもよい。
複合樹脂Aにおけるビニル系樹脂部分に対するポリエステル樹脂部分の質量比(ポリエステル樹脂部分/ビニル系樹脂部分)は、低温定着性の観点から、好ましくは80/20以上、より好ましくは90/10以上であり、そして、帯電の立ち上がり性の観点から、好ましくは98/2以下、より好ましくは96/4以下である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂部分の質量は、用いられるポリエステル樹脂部分の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量を除いた質量である。また、ビニル系樹脂部分の量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの合計量である。
複合樹脂Aの軟化点は、帯電性の観点から、85℃以上であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上であり、そして、定着性の観点から、115℃以下であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下である。
複合樹脂Aのガラス転移温度は、保存性の観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、定着性の観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは56℃以下である。
複合樹脂Aの酸価は、定着性の観点から、好ましくは8mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、帯電性の観点から、好ましくは16mgKOH/g以下、より好ましくは14mgKOH/g以下である。
複合樹脂Aの重量平均分子量は、帯電の立ち上がり性の観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは60,000以上、さらに好ましくは100,000以上、さらに好ましくは140,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは350,000以下、さらに好ましくは250,000以下である。
複合樹脂Aの含有量は、結着樹脂組成物中、20質量%以上であり、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、さらに、軟化点が複合樹脂Aよりも高いポリエステル系樹脂Bを含有することが好ましい。ポリエステル系樹脂Bにより、高温領域での定着性(耐ホットオフセット性)が向上する。
複合樹脂Aとポリエステル系樹脂Bの軟化点の差は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、さらに好ましくは30℃以下である
ポリエステル系樹脂Bの軟化点は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下である
ポリエステル系樹脂Bのガラス転移温度は、保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは53℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下である。
ポリエステル系樹脂Bの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは4mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、さらに好ましくは12mgKOH/g以上であり、そして、帯電性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは25mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下である。
ポリエステル系樹脂Bとしては、例えば、ポリエステル樹脂、又はポリエステル樹脂とビニル系樹脂等の他の樹脂とを有する複合樹脂等が挙げられ、トナー生産性の観点から、アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物であるポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂(複合樹脂B)が好ましい。
複合樹脂Bは、軟化点が異なる以外は、複合樹脂Aと同様である。軟化点は、ジエステル化反応を促進させる等により調整することができる。
また、ポリエステル系樹脂Bにおけるメチルエチルケトン不溶分の含有量は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは32質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは26質量%以下である。メチルエチルケトン不溶分量は、ジエステル化反応を促進させる等により調整することができる。
ポリエステル系樹脂Bの含有量は、結着樹脂組成物中、80質量%以下であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下であり、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。
複合樹脂A及びポリエステル系樹脂Bは、いずれも非晶質樹脂であることが好ましい。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
本発明の樹脂組成物には、前記の複合樹脂A及びポリエステル系樹脂B以外の樹脂が含有されていてもよいが、複合樹脂A及びポリエステル系樹脂Bの合計含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本発明の結着樹脂組成物を結着樹脂として用いて、本発明の電子写真用トナーが得られる。なお、本発明の結着樹脂組成物は、複合樹脂A及びポリエステル系樹脂Bの混合物を結着樹脂として用いてもよく、トナーを製造する際に、これらの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
本発明のトナーには、結着樹脂(本発明の結着樹脂組成物)以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔樹脂の重量平均分子量(Mw)〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量(Mw)を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
〔樹脂中のメチルエチルケトン(MEK)不溶分〕
(1)試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
(2)試料の溶解
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶(柏洋硝子(株)製、M-140)に秤量した後、MEK 95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
(3)濾過
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mLをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mLをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
(4)乾燥
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40~20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
(5)MEK不溶分の算出
5-1. MEK 20mLに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B-A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. MEK不溶分(質量%)=100-Z
なお、MEK不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂製造例1
表1、2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1、2に示すテレフタル酸のうち、カルボン酸成分の7モル%分に該当する量(樹脂A1では、116g)を添加し、160℃まで昇温した。
表1、2に示すビニル系樹脂部分の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で5時間反応させた後、160℃まで冷却し、残りの93モル%分に該当するテレフタル酸(樹脂A1では1743g-116g=1627g)を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表1、2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A1~A8、A10~A13)を得た。
樹脂製造例2
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温した。
表2に示すビニル系樹脂部分の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A9)を得た。
樹脂製造例3
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸のうち、カルボン酸成分の6.4モル%分に該当する量(テレフタル酸116g)を添加し、160℃まで昇温した。
表2に示すビニル系樹脂部分の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で5時間反応させた後、160℃まで冷却し、残りのテレフタル酸(1743g-116g=1627g)を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて1時間反応を行った。180℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃、8.0kpaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A14)を得た。
Figure 0007165028000002
Figure 0007165028000003
樹脂製造例4
表3に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表3に示すテレフタル酸のうち、116gを添加し、160℃まで昇温した。
表3に示すビニル系樹脂部分の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で5時間重縮合反応させた後、160℃まで冷却し、残りのテレフタル酸を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表3に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂B1)を得た。
樹脂製造例5
表3に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表3に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温した。
表3に示すビニル系樹脂部分の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて2時間反応を行った。
180℃まで冷却した後、表3に示す無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃、10kPaにて表3に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂B2)を得た。
Figure 0007165028000004
実施例1~11及び比較例1~4
表4に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニンブルー)、大日精化社製)4質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「サゾールワックスH105」(サゾール社製、融点:110℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤として「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
カラープリンター「C612dnw」(商品名、沖データ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出し(印刷面積:6cm×6cm、0.5mg/cm2)を行った。
未定着画像を、前記プリンターの定着機をオフラインで使用し、100mm/secにて100℃から5℃ずつ温度を上げて定着させた。なお、定着紙にはJ紙(富士ゼロックス製、坪量:82g/m2、紙厚:97μm)を使用した。
定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準に従って、低温定着性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:最低定着温度が120℃未満である。
B:最低定着温度が120℃以上、135℃未満である。
C:最低定着温度が135℃以上、150℃未満である。
D:最低定着温度が150℃以上である。
試験例2〔帯電の立ち上がり性〕
トナー4質量部(0.4g)と、平均粒子径90μmのシリコーンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製)96質量部(9.6g)を20mLのポリプロピレン製の容器に入れた後、温度25℃、相対湿度50%(NN)の環境下で0.5分間ボールミルにて混合し、「q/m Meter MODEL 210HS」(TREK社製)を用いて帯電量を測定した。さらに2.5分間撹拌し帯電量を測定した。2つの帯電量の比(0.5分帯電量/2.5分帯電量)の値を算出し、以下の評価基準に従って、帯電の立ち上がり性を評価した。結果を表4に示す。
〔評価基準〕
A:算出値が0.80以上である。
B:算出値が0.60以上、0.80未満である。
C:算出値が0.40以上、0.60未満である。
D:算出値が0.40未満である。
Figure 0007165028000005
以上の結果より、実施例1~11のトナーは、低温定着性と帯電の立ち上がり性がいずれも良好であることが分かる。これに対し、軟化点が低くても、アルキル基の炭素数が1以上5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用していない比較例1は、帯電の立ち上がり性に欠けている。また、複合樹脂の軟化点が低すぎる比較例2は帯電の立ち上がり性に、複合樹脂の軟化点が高すぎる比較例3及び3価以上のカルボン酸系化合物をアルコール成分100モルに対して3モル使用した複合樹脂を含む比較例4は低温定着性に、それぞれ欠けている。
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、例えば、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる電子写真用トナーの結着樹脂として好適に用いられるものである。

Claims (7)

  1. アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物であるポリエステル樹脂部分と、(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの反応物であるビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを40質量%以上含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記複合樹脂Aの軟化点が85℃以上115℃以下であり、前記カルボン酸成分における3価以上のカルボン酸系化合物の含有量が、前記アルコール成分100モルに対して2モル以下であり、前記(メタ)アクリル系化合物が、アルキル基の炭素数が1以上5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含み、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、30質量%以上である、トナー用結着樹脂組成物。
  2. ビニル系樹脂部分に対するポリエステル樹脂部分の質量比が80/20以上98/2以下である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
  3. 複合樹脂Aの重量平均分子量が20,000以上500,000以下である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
  4. さらに、軟化点が110℃以上150℃以下であり、軟化点が複合樹脂Aよりも高いポリエステル系樹脂Bを含有する、請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
  5. 請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー。
  6. 請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、複合樹脂Aを、
    工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
    工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180~250℃の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
    工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
    を含む方法により製造する、トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
  7. 工程Aの付加重合反応を、全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分と全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う、請求項6記載の製造方法。
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