JP7229866B2 - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents
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Description
従来、ノンビス系ポリエステル樹脂の耐吸湿性を向上させる手段として、疎水的なポリオレフィンをポリエステルに反応させる手法が考えられるが、炭素数2又は3のα-オレフィン重合体の酸変性物のように疎水的なアルキル基を有する結晶性のマクロモノマーを反応させた場合、ポリエステル樹脂中に十分に分散させることが難しく、充分な耐吸湿効果は得られない(例えば、特許文献2、3参照)。
一方、ドデセニル無水コハク酸のような疎水的なアルキル基を有する非晶性のモノマーをポリエステル樹脂に組み込んだ場合も、一定の耐吸湿効果が得られるものの、まだ十分とは言えず、仮に十分な耐吸湿効果が得られるほど、アルキル基を有するモノマーの添加量を増やした場合、ポリオレフィンとポリエステル樹脂が相溶し、樹脂のガラス転移温度の低下により保存性が悪化する(例えば、特許文献1参照)。
〔1〕 炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物及び非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂Aを含有する、トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー
に関する。
酸変性物の結晶性は、後述の樹脂の結晶性と同様に結晶性指数([軟化点/吸熱の最高ピーク温度])によって表わされる。非晶質の酸変性物は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上のものであるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下のものである。また、吸熱の最高ピーク温度が検出されないものも非晶質であると判断する。
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度が検出されないものは非晶質であり、検出される場合は樹脂と同様の方法により軟化点を測定して、結晶性指数(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)を算出して判断する。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
JIS K0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
示差走査熱量計「DSC Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表1に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、160℃まで冷却し、表1に示す酸変性物を添加し、再度、220℃まで昇温し、220℃で5時間重縮合反応させた。その後、200℃まで冷却し、表1に示す無水トリメリット酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃まで降温し、200℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質のポリエステル樹脂(樹脂A1~A6)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、160℃まで冷却し、表2に示す酸変性物を添加し、再度、220℃まで昇温し、220℃で5時間重縮合反応させ、さらに200℃まで降温し、200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質のポリエステル樹脂(樹脂B1、B4)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、さらに220℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質のポリエステル樹脂(樹脂B2)を得た。
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、130℃まで昇温し、表2に示すエステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、185℃まで昇温し、185℃で5時間反応させた後、220℃まで5℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後220℃にて反応率が90%以上に到達したのを確認した後、200℃まで冷却し、表2に示す炭素数10~14のアルケニル基で置換されたアルケニル無水コハク酸を添加し、200℃で1時間重縮合反応させ、さらに200℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質のポリエステル樹脂(樹脂B3)を得た。
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「SP-105」(加藤洋行社製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
カラープリンター「C612dnw」(商品名、沖データ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出し(印刷面積:6cm×6cm、0.5mg/cm2)を行った。
未定着画像を、前記プリンターの定着機をオフラインで使用し、100mm/secにて100℃から5℃ずつ温度を上げて定着させた。なお、定着紙にはJ紙(富士ゼロックス製、坪量:82g/m2、紙厚:97μm)を使用した。
定着画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前)が最初に90%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
結着樹脂に用いた樹脂の粒径を150~250μmに揃えた後、40℃、60torrの真空乾燥機内で12時間乾燥を行い、乾燥後の質量を測定した(樹脂質量a)。乾燥した樹脂2.00gをガラスシャーレに均一に広げ、40℃、湿度85%の高温高湿環境下で12時間放置後、再度、質量を測定した(樹脂質量b)。
(樹脂質量b-樹脂質量a)/樹脂質量a×100から算出される吸湿率(%)が小さいほど耐吸湿性に優れており、以下の評価基準に従って、耐吸湿性を評価した。結果を表3に示す。
A:吸湿率が0.50%未満であり、トナーの帯電性に影響することがない。
B:吸湿率が0.50%以上、0.60%未満であり、トナーの帯電性をわずかに低下させる可能性がある。
C:吸湿率が0.60%以上、0.90%未満であり、トナーの帯電性を低下させる可能性がある。
D:吸湿率が0.90%以上であり、トナーの帯電性を低下させる可能性が高い、又はトナーの帯電性を低下させ、現像不良の原因となる。
トナー4質量部(0.4g)と、平均粒子径90μmのシリコーンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製)96質量部(9.6g)を20mLのポリプロピレン製の容器に入れた後、温度25℃、相対湿度50%の環境下で0.5分間ボールミルにて混合し、「q/m Meter MODEL 210HS」(TREK社製)を用いて帯電量を測定した。さらに2.5分間撹拌し帯電量を測定した。2つの帯電量の比(0.5分帯電量/2.5分帯電量)の値を算出した。算出値が大きいほど帯電の立ち上がり性に優れ、以下の評価基準に従って、帯電の立ち上がり性を評価した。結果を表3に示す。
A:算出値が0.60以上であり、高速(50枚以上)印刷時でも現像不良による印刷不良が発生しない、又は高速印刷時に現像不良による印刷不良が発生することがある。
B:算出値が0.40以上、0.60未満であり、高速印刷時に現像不良による印刷不良が発生する。
C:算出値が0.40未満であり、高速印刷時に現像不良により印刷ができない。
トナー5gを円柱型容器に入れ、温度50℃、相対湿度50%の高温環境下で72時間放置後、200メッシュ(目開き:75μm)の篩にかけ、通過したトナーの質量を秤量した。通過したトナーの質量が多いほど保存性に優れ、以下の評価基準に従って保存性を評価した。結果を表3に示す。
A:篩を通過したトナーが80質量%以上であり、トナーの凝集による印刷不良が発生しないか、又はトナーの凝集による印刷不良が発生する可能性がわずかにある。
B:篩を通過したトナーが20質量%以上、80質量%未満であり、トナーの凝集による印刷不良が発生する可能性が高い。
C:篩を通過したトナーが20質量%未満であり、トナーの凝集による印刷不良が発生する。
これに対し、酸変性物を用いていないポリエステル樹脂を含有する比較例1のトナーは、耐吸湿性が低く、電荷がリークしやすいため、帯電の立ち上がり性に欠けている。また、酸変性物の代わりに、疎水的なアルキル基を有する非晶性のモノマー(アルケニル無水コハク酸)を用いたポリエステル樹脂を含有する比較例2のトナーは、比較例1に比べると耐吸湿性及び帯電の立ち上がり性は改善されているものの、樹脂のガラス転移温度の低下により保存性が悪化している。また、炭素数2又は3のα-オレフィン重合体の酸変性物のように疎水的なアルキル基を有する結晶性のマクロモノマーを用いたポリエステル樹脂を含有する比較例3のトナーは、実施例7と対比して、帯電の立ち上がり性と耐吸湿性に欠けている。
Claims (5)
- 炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と芳香族ジカルボン酸系化合物及び非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aを含むカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂Aを含有する、トナー用結着樹脂組成物であって、前記ポリエステル樹脂Aが、炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールを80モル%以上含むアルコール成分と非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物A以外のカルボン酸成分との重縮合物に、該酸変性物Aが重縮合した重縮合物であり、前記非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aが、ポリイソブテン系重合体の片末端が無水マレイン酸により変性された酸変性物である、トナー用結着樹脂組成物。
- 非晶質である炭素数4以上18以下のα-オレフィン重合体の酸変性物Aの重量平均分子量が、500以上5,000以下である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 炭素数2以上6以下の脂肪族ジオールが、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、及びネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
- ポリイソブテン系重合体の、イソブテンの割合が60質量%以上である、請求項1~3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
- 請求項1~4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、静電荷像現像用トナー。
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