本開示は、空気調和装置の制御装置、空調システム、空気調和装置の制御方法、およびプログラムに関するものである。
従来より、運転開始時の躯体蓄熱が十分に処理されていない状況で、壁面からの輻射による不快感を軽減するために、室温を検知するセンサと、壁温度を検知するセンサとを備え、壁温度に基づいた運転制御を実施する空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の空気調和装置は、暖房時の壁温度が低いときは、室温が設定温度よりも高くなるまで、冷房時の壁温度が高いときは、室温が設定温度よりも低くなるまで運転するように構成される。
しかしながら、特許文献1の空気調和装置によると、壁温度によって室内空気の到達温度が変わることで、ユーザーが意図する設定温度と実際の室温との間にずれが生じてしまうおそれがある。一方で、一般的な空気調和装置の制御方法は、室温が設定温度に近づくにつれ、空調能力を減少させることでユーザーが意図する設定温度に室温を収束させる方法である。しかし、この制御方法によって壁温度を、躯体蓄熱が十分に処理されたとみなされる所定の目標温度に収束させるには、多大な運転時間を要し、その間ユーザーは輻射による不快な温熱環境にさらされることになる。あるいは、躯体蓄熱が十分に処理された温熱環境を予備運転で実現しようとすると、多大な運転時間が必要になって消費電力が増加してしまう。
本開示の目的は、壁や床などの表面温度と室内温度とを各々の目標温度に速やかに近づけることにある。
本開示の第1の態様は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる。
第1の態様では、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第2の態様では、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第3の態様は、上記第2の態様において、上記温度調節運転において、上記第1動作と上記第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第3の態様において、制御装置(70)は、まず空気調和装置(20)に第1動作を実行させ、第1動作の終了後に空気調和装置(20)に第2動作を実行させる。
本開示の第4の態様は、上記第1の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第4の態様では、第1動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、この態様では、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定することを特徴とする。
第5の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定されるため、仕切部(101)が暖まり過ぎるのを抑制できる。
本開示の第6の態様は、上記第4の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定することを特徴とする。
第6の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定されるため、仕切部(101)が冷え過ぎるのを抑制できる。
本開示の第7の態様は、上記第3〜第6のいずれか1つの態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に上記対象空間(100)の暖房を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させることを特徴とする。
第7の態様では、空気調和装置(20)が対象空間(100)を暖房するときに、第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができ、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
本開示の第8の態様は、上記第3〜第7の態様のいずれか1つにおいて、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に上記対象空間(100)の冷房を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させることを特徴とする。
第8の態様では、空気調和装置(20)が対象空間(100)を冷房するときに、第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができ、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
本開示の第9の態様は、上記第3の態様において、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させることを特徴とする。
第9の態様では、目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
本開示の第10の態様は、上記第9の態様において、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第1目標温度(Fs)に収束するまでの第1実行時間(t1)を推定することを特徴とする。
第10の態様では、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
本開示の第11の態様は、上記第4〜第6の態様のいずれか1つにおいて、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させることを特徴とする。
第11の態様では、目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
本開示の第12の態様は、上記第11の態様において、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第3目標温度(Fn)に収束するまでの第1実行時間(t1)を推定することを特徴とする。
第12の態様では、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
本開示の第13の態様は、上記第2または第3の態様において、上記第1目標温度(Fs)は、上記第1動作において上記第1温度(F)の変化率が所定値以下になるときの上記第1温度(F)の推定値であることを特徴とする。
第13の態様では、第1動作を不必要に長時間実行することを回避できる。
本開示の第14の態様は、上記第1〜第12の態様のいずれか1つにおいて、上記第1目標温度(Fs)は、ユーザーによって入力される設定値であることを特徴とする。
第14の態様では、第1目標温度(Fs)を任意に設定できる。
本開示の第15の態様は、上記第1〜第12の態様のいずれか1つにおいて、上記第1目標温度(Fs)は、上記第2目標温度(Ts)に基づいて決定される温度であることを特徴とする。
第15の態様では、第1目標温度(Fs)と第2目標温度(Ts)との間の関係性を利用して第1目標温度(Fs)を決定できる。
本開示の第16の態様は、上記第3〜第13の態様のいずれか1つにおいて、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における外気温度(Tout)および上記第2温度(T)を含む学習データと、該学習データから推定される今回の上記第2動作の開始時の上記第2温度(T)と、現在の外気温度(Tout)とに基づいて、今回の上記第2動作の開始から上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)に収束するまでの第2実行時間(t2)を推定することを特徴とする。
第16の態様では、過去の第2動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第2動作の第2実行時間(t2)を推定できる。
本開示の第17の態様は、上記第1の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転の実行時間を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御することを特徴とする。
第17の態様では、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の実行時間を短くしつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第18の態様は、上記第1の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転における消費電力を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御することを特徴とする。
第18の態様では、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の消費電力を抑制しつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第19の態様は、空調システム(10)を対象とする。空調システム(10)は、上記第1〜第12の態様のいずれか1つの制御装置(70)と、上記制御装置(70)によって制御され、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)とを備える。
本開示の第20の態様は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)の制御方法を対象とする。制御方法は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる。
第20の態様では、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第21の態様は、上記第20の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作と、該第1動作の後の、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第21の態様では、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第22の態様は、上記第20の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第22の態様では、第1動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、この態様では、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第23の態様は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。そして、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
第23の態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータによって、空気調和装置(20)が制御される。その結果、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第24の態様は、上記第23の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させる処理を上記コンピュータに実行させることを特徴とする。
第24の態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータが、空気調和装置(20)に第1動作と第2動作とを実行させる。その結果、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第25の態様は、上記第23の態様において、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる処理を上記コンピュータに実行させることを特徴とする。
第24の態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータが、空気調和装置(20)に第1動作と第2動作とを順に実行させる。その結果、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
図1は、実施形態1の空調システムを概略的に示す模式図である。
図2は、実施形態1の空調システムの冷媒回路を示す図である。
図3は、実施形態1の空調システムの構成を示すブロック図である。
図4は、予備暖房運転または予備冷房運転における実施形態1の空調システムの動作を示すフローチャートである。
図5は、実施形態1の空調システムの予備暖房運転における温度変化を示すグラフである。
図6は、実施形態1の携帯端末(制御装置)が各実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図7は、実施形態1の空調システムの予備冷房運転における温度変化を示すグラフである。
図8は、実施形態3の携帯端末(制御装置)が予備暖房運転における第1実行時間および第2実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図9は、実施形態3の空調システムの予備暖房運転における温度変化を示すグラフである。
図10は、実施形態3の携帯端末(制御装置)が予備冷房運転における第1実行時間および第2実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図11は、実施形態3の空調システムの予備冷房運転における温度変化を示すグラフである。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、対象空間(100)の暖房および冷房を実行できる。空調システム(10)は、対象空間(100)に在室者がいない状態で暖房運転または冷房運転が予約された場合に、目標時点において、室内温度をその目標温度に近づけるのみでなく、床や壁などの表面温度をその目標温度に近づけることができる。
図1〜図3に示すように、空調システム(10)は、空気調和装置(20)と、携帯端末(70)とを備える。携帯端末(70)は、コンピュータの一例であって、制御装置を構成している。対象空間(100)に面する床(101)は、仕切部を構成する。なお、対象空間(100)に面する天井または壁が仕切部を構成してもよいし、床(101)、天井、および壁の任意の組合せが仕切部を構成してもよい。
空気調和装置(20)は、対象空間(100)の外部に設置される室外ユニット(30)と、対象空間(100)に設置される室内ユニット(40)と、制御部(50)とを備える。
〈室外ユニット、室内ユニット〉
室外ユニット(30)と室内ユニット(40)とは、連絡配管(22,23)により互いに接続され、図2に示す冷媒回路(21)を構成する。冷媒回路(21)では、充填された冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。冷媒は、例えばR32冷媒であってもよい。
室外ユニット(30)は、例えば、建物の屋上や建物脇の地面上、ベランダなどの屋外に設置される。室外ユニット(30)は、圧縮機(31)と、四方切換弁(32)と、室外熱交換器(33)と、膨張弁(34)と、室外ファン(35)とを備える。圧縮機(31)、四方切換弁(32)、室外熱交換器(33)、および膨張弁(34)は、この順に冷媒配管で接続される。
圧縮機(31)は、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(31)は、例えば容量が可変なインバータ式に構成される。圧縮機(31)は、例えば回転式圧縮機である。室外ファン(35)は、室外熱交換器(33)の近傍に設置される。室外ファン(35)は、例えばプロペラファンによって構成される。室外ファン(35)は、外気を搬送し、室外熱交換器(33)に通過させる。
室外熱交換器(33)は、室外ファン(35)によって搬送される外気と内部を流れる冷媒とを熱交換させる。室外熱交換器(33)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。膨張弁(34)は、開度が可変な制御弁である。膨張弁(34)は、内部を流れる冷媒を減圧する。膨張弁(34)は、例えば電子膨張弁によって構成される。
四方切換弁(32)は、冷媒回路(21)における冷媒の流路を第1状態(図2の実線で示す状態)と第2状態(図2の破線で示す状態)とに切り替える。第1状態の四方切換弁(32)は、圧縮機(31)の吐出部と室外熱交換器(33)とを連通させ、かつ圧縮機(31)の吸入部と室内熱交換器(41)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(32)は、圧縮機(31)の吐出部と室内熱交換器(41)とを連通させ、かつ圧縮機(31)の吸入部と室外熱交換器(33)とを連通させる。
室内ユニット(40)は、例えば、室内の壁面や天井に取り付けられる。図1に示す室内ユニット(40)は、壁面に取り付けられる壁掛け式のユニットである。室内ユニット(40)は、室内熱交換器(41)と、室内ファン(42)とを備える。室内ファン(42)は、室内熱交換器(41)の近傍に設置される。
室内ファン(42)は、例えばクロスフローファンによって構成される。室内ファン(42)は、室内空気を搬送し、室内熱交換器(41)に通過させる。室内熱交換器(41)は、室内ファン(42)によって搬送される室内空気と内部を流れる冷媒とを熱交換させる。室内熱交換器(41)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。
冷媒回路(21)において、四方切換弁(32)が第1状態である場合、室外熱交換器(33)が凝縮器または放熱器として機能し、かつ室内熱交換器(41)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。一方、冷媒回路(21)において、四方切換弁(32)が第2状態である場合、室外熱交換器(33)が蒸発器として機能し、かつ室内熱交換器(41)が凝縮器または放熱器として機能する冷凍サイクルが行われる。
〈センサ類〉
空調システム(10)は、室内温度センサ(61)、床温度センサ(62)、および外気温度センサ(63)をさらに備える。これら各センサ(61〜63)は、有線または無線により制御部(50)に接続される。各センサ(61〜63)は、検出信号を制御部(50)に出力する。
室内温度センサ(61)および床温度センサ(62)は、例えば室内ユニット(40)に設けられる。室内温度センサ(61)は、室内ユニット(40)に吸い込まれる室内空気の温度を検出することで、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を検出する。床温度センサ(62)は、床(101)からの輻射熱を検出することで、床(101)の表面温度である第1温度(F)を検出する。
外気温度センサ(63)は、例えば室外ユニット(30)に設けられる。外気温度センサ(63)は、室外ユニット(30)に吸い込まれる外気の温度(外気温度(Tout))を検出する。
〈制御部〉
制御部(50)は、周知のマイクロコンピュータを備えたコントローラである。図3に示すように、制御部(50)は、プログラムを実行するCPU(51)と、CPU(51)上で実行される各種のプログラムやデータを記憶する記憶部(52)とを有する。記憶部(52)は、ROMやRAMなどによって構成される。制御部(50)は、例えば室内ユニット(40)に内蔵される。
制御部(50)は、室内温度センサ(61)、床温度センサ(62)、および外気温度センサ(63)の検知信号と、携帯端末(70)やリモコン(図示せず)からの操作信号とに基づいて、室外ユニット(30)および室内ユニット(40)の制御量を計算する。制御部(50)は、計算した制御量に係る制御信号を室外ユニット(30)および室内ユニット(40)に出力する。
〈携帯端末〉
携帯端末(70)は、空気調和装置(20)を操作するためにユーザーにより使用される。携帯端末(70)は、例えばスマートフォンによって構成される。コンピュータである携帯端末(70)には、携帯端末(70)を制御装置として機能させるためのプログラムがインストールされている。携帯端末(70)は、インストールされたプログラムを実行することによって、空気調和装置(20)を制御する制御装置として機能するための処理を行う。
携帯端末(70)は、ネットワーク(80)を介して空気調和装置(20)の制御部(50)と無線で通信することができる。携帯端末(70)は、図3に示すように、CPU(71)と、CPU(71)上で実行される各種のプログラムやデータを記憶する記憶部(72)とを有する。記憶部(72)は、ROMやRAMなどによって構成される。記憶部(72)には、後述する温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を実行する際に利用する学習データが記憶されている。
−空調システムの運転動作−
空調システム(10)は、ユーザーの操作にしたがって、暖房運転と、冷房運転と、予備暖房運転と、予備冷房運転とを選択的に実行する。予備暖房運転は、特殊な暖房運転であって、温度調節運転の一例である。予備冷房運転は、特殊な冷房運転であって、温度調節運転の一例である。
〈暖房運転〉
暖房運転では、四方切換弁(32)が第2状態になる。圧縮機(31)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(41)を流れる。室内熱交換器(41)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。室内熱交換器(41)で加熱された室内空気は、室内ファン(42)により対象空間(100)に送風される。凝縮した冷媒は、膨張弁(34)で減圧された後、室外熱交換器(33)で蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(31)に吸入される。
暖房運転において、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を行う。空気加熱動作は、加熱した空気を対象空間(100)へ吹き出す動作である。なお、暖房運転において、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を一時的に休止する場合がある。例えば、暖房運転中に室内温度センサ(61)の計測値が設定温度にまで上昇すると、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を一時的に休止する。
〈冷房運転〉
冷房運転では、四方切換弁(32)が第1状態になる。圧縮機(31)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(33)により放熱(凝縮)する。放熱した冷媒は、膨張弁(34)により減圧された後に、室内熱交換器(41)を流れる。室内熱交換器(41)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(41)で冷却された室内空気は、室内ファン(42)により対象空間(100)に送風される。蒸発した冷媒は、圧縮機(31)に吸入される。
冷房運転において、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を行う。空気冷却動作は、冷却した空気を対象空間(100)へ吹き出す動作である。なお、冷房運転において、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を一時的に休止する場合がある。例えば、冷房運転中に室内温度センサ(61)の計測値が設定温度にまで低下すると、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を一時的に休止する。
〈予備暖房運転〉
予備暖房運転は、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるための特殊な暖房運転である。予備暖房運転は、対象空間(100)にいないユーザーが、携帯端末(70)で所定の指令操作を行った場合に実行される。
−予備暖房運転の動作−
予備暖房運転の動作について、図4のフローチャートと図5のグラフを参照して具体的に説明する。図4では、携帯端末(70)に関連する動作を破線よりも左側に、空気調和装置(20)に関連する動作を破線よりも右側に、それぞれ記述している。図5のグラフは、横軸が時間を、縦軸が第1温度(F)および第2温度(T)を、それぞれ表している。
まず、ステップST1では、ユーザーが、任意の時点(tr)において、携帯端末(70)で所定の指令操作を行う。ユーザーは、例えば、対象空間(100)から外出しようとする時点や、外出先から対象空間(100)へ戻る前の時点において、指令操作を行う。
この指令操作において、ユーザーは、第2目標温度(Ts)および目標時点(tg)を指定する。第2目標温度(Ts)は、第2温度(T)が到達するべき目標温度である。目標時点(tg)は、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)に到達するべき時点(例えば、時刻)である。なお、第2目標温度(Ts)および目標時点(tg)は、携帯端末(70)によって自動で設定されてもよい。
続いて、携帯端末(70)は、ステップST2の処理を行う。ステップST2の処理において、携帯端末(70)は、予備暖房運転時の第1温度(F)および第2温度(T)の過去データの数(nsamp)が所定の数(N)以上であるか否かを判定する。当該過去データの数(nsamp)は、予備暖房運転を実行するたびに1ずつ増加する。所定の数(N)は、例えば1に設定されるが、2以上に設定されてもよい。携帯端末(70)は、過去データの数(nsamp)が所定の数(N)以上であればステップST3の処理を行い、そうでなければステップST7の処理を行う。
ステップST3の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、開始時点(tp)を決定する決定時点(td)から目標時点(tg)までの時間(t0)以下であるか否かを判定する。開始時点(tp)は、予備暖房運転を開始する時点である。決定時点(td)は、開始時点(tp)を決定する時点である。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が後者の時間(t0)以下であればステップST4の処理を行い、そうでなければステップST3の処理を繰り返す。
ステップST4の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を送り返すように要求する指令信号を送る。指令信号を受信した空気調和装置(20)は、ステップST5の処理を行う。
ステップST5の処理において、空気調和装置(20)は、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)で取得した第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を、携帯端末(70)に向けて送信する。信号を受信した携帯端末(70)は、ステップST6の処理を行う。
ステップST6の処理において、携帯端末(70)は、予備暖房運転時の第1温度(F)および第2温度(T)の過去データに基づいて、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する。第1実行時間(t1)は、予備暖房運転において予熱動作(第1動作)を実行する時間である。第2実行時間(t2)は、予備暖房運転において通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここで、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する方法について、図6のフローチャートを用いて詳しく説明する。
まず、ステップST61の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇勾配の予測式F’(t,T(tp),Tout)に基づいて、第1温度(F)の変化率が所定値(例えば、1分あたりの温度変化が0.1℃)以下となるまでに要する所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇勾配の予測式F’(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶部(72)に記録する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST62の処理を行う。ステップST62の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の予測式F(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、予熱動作を開始してから上記所要時間(第1実行時間(t1))が経過した時点(tn)における第1温度F(tn)の推定値を算出する。第1温度(F)の予測式F(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した第1温度F(tn)の推定値を、第1目標温度(Fs)として記憶部(72)に記録する。第1目標温度(Fs)は、第1温度(F)が到達するべき目標温度である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST63の処理を行う。ステップST63の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tu(t,T(tp),Tout)に基づいて、予熱動作を開始してから上記所要時間(第1実行時間(t1))が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tu(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した第2温度T(tn)の推定値を、記憶部(72)に記録する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST64の処理を行う。ステップST64の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予熱動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで低下するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶部(72)に記録する。
以上で、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する方法の説明を終える。
ステップST7の処理において、携帯端末(70)は、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)のそれぞれを、予め設定された値(t1def,t2def)に設定する。第1実行時間(t1)の設定値t1defは、例えば30分間である。また、第2実行時間(t2)の設定値t2defは、例えば10分間である。
ステップST6又はステップST7の処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST8の処理を行う。ステップST8の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、総実行時間(ttot)以下であるか否かを判定する。総実行時間(ttot)は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)との和である(ttot=t1+t2)。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が総実行時間(ttot)以下であればステップST9の処理を行い、そうでなければステップST8の処理を繰り返す。
ステップST9の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、予熱動作の開始を要求する指令信号を送る。この指令信号を受けた空気調和装置(20)は、ステップST10の処理において予熱動作を開始する。空気調和装置(20)が予熱動作を開始した時点が、予熱動作開始時点(tp)(第1動作開始時点(tp))である。そして、空気調和装置(20)は、予熱動作開始時点(tp)から第1実行時間(t1)にわたって予熱動作を行う。
この予熱動作において、空気調和装置(20)は、加熱した空気を対象空間(100)へ吹き出す空気加熱動作を行う。また、この予熱動作では、空気調和装置(20)の暖房能力が最大に設定される。具体的には、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度が、それぞれの最大値に設定される。
携帯端末(70)は、ステップST9の処理が終了すると、ステップST11の処理を行う。ステップST11の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を送り返すように要求する指令信号を送る。指令信号を受信した空気調和装置(20)は、ステップST12の処理を行う。
ステップST12の処理において、空気調和装置(20)は、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)で取得した第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を携帯端末(70)に向けて送信する。信号を受信した携帯端末(70)は、ステップST13の処理を行う。
ステップST13の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、第2実行時間(t2)以下であるか否かを判定する。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が第2実行時間(t2)以下であればステップST14の処理を行い、そうでなければステップST11の処理を再び行う。
ここで、ステップST11〜14の処理を繰り返し行うことで、携帯端末(70)は、予熱動作における第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関するデータを取得する。携帯端末(70)は、取得されたデータを、記憶部(72)に記録し、次回以降の予備暖房運転で用いる学習データの更新のために過去データとして利用する。
ステップST14の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、通常動作の開始を要求する指令信号を送る。この指令信号を受けた空気調和装置(20)は、ステップST15の処理において、予熱動作を終了し、通常動作を開始する。空気調和装置(20)が通常動作を開始した時点が、通常動作開始時点(tn)(第2動作開始時点(tn))である。
この通常動作において、空気調和装置(20)の制御部(50)は、室内温度センサ(61)の計測値が第2目標温度(Ts)となるように、空気調和装置(20)の加熱能力を調節する。具体的に、制御部(50)は、室内温度センサ(61)の計測値が第2目標温度(Ts)となるように、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度を調節する。
−予備暖房運転における温度変化−
予備暖房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図5のグラフを用いて説明する。図5のグラフでは、第1温度(F)を実線で、第2温度(T)を破線で、それぞれ示している。
上述したように、予備暖房運転における予熱動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予熱動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに上昇し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に上昇する。第2温度(T)は、予熱動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも高くなる。それでも、予熱動作(空気調和装置(20)の空気加熱動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予熱動作の終了時点(tn)において、第1目標温度(Fs)に収束する。
予熱動作に続いて、予備暖房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高いので、空気調和装置(20)の暖房能力が予熱動作よりも低下する。図5に示す例では、予熱動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気加熱動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに低下し、第2温度(T)は相対的に大幅に低下する。第2温度(T)は、通常動作の終了時点(tg)(予備暖房運転の終了時点(tg))において、第2目標温度(Ts)に収束する。
〈予備冷房運転〉
予備冷房運転は、第1温度(F)と、第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるための特殊な冷房運転である。予備冷房運転は、対象空間(100)にいないユーザーが、携帯端末(70)で所定の指令操作を行った場合に実行される。
−予備冷房運転の動作−
予備冷房運転の動作は、上述した予備暖房運転の動作のほぼ同じであるので、その詳細な説明を省略する。異なる点として、予備冷房運転では、第1実行時間(t1)にわたって、予熱動作ではなく予冷動作(第1動作)が行われる。
予冷動作において、空気調和装置(20)は、冷却した空気を対象空間(100)へ吹き出す空気冷却動作を行う。また、この予冷動作では、空気調和装置(20)の冷房能力が最大に設定される。具体的には、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度が、それぞれの最大値に設定される。
−予備冷房運転における温度変化−
予備冷房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図7のグラフを用いて説明する。図7のグラフでは、第1温度(F)を実線で、第2温度(T)を破線で、それぞれ示している。
上述したように、予備冷房運転における予冷動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予冷動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに低下し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に低下する。第2温度(T)は、予冷動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも低くなる。それでも、予冷動作(空気調和装置(20)の空気冷却動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予冷動作の終了時点(tn)において、第1目標温度(Fs)に収束する。
予冷動作に続いて、予備冷房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低いので、空気調和装置(20)の冷房能力が予冷動作よりも低下する。図7に示す例では、予冷動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気冷却動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに上昇し、第2温度(T)は相対的に大幅に上昇する。第2温度(T)は、通常動作の終了時点(tg)(予備冷房運転の終了時点(tg))において、第2目標温度(Ts)に収束する。
−実施形態1の効果(1)−
本実施形態の制御装置(70)(携帯端末(70))は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)を制御するものであって、上記対象空間(100)に面する床(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態1の効果(2)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作(予熱動作、予冷動作)と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作(通常動作)とを上記空気調和装置(20)に実行させる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、温度調節運転において、上記第1動作と上記第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態1の効果(3)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に空気加熱動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させる。
通常の暖房運転では、室内温度である第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなると、空気調和装置(20)は空気加熱動作を一時的に休止する。これに対し、本実施形態では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっても、空気調和装置(20)の空気加熱動作が継続される。これにより、予備暖房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができる。さらに、予備暖房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(4)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に空気冷却動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させる。
通常の冷房運転では、室内温度である第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなると、空気調和装置(20)は空気冷却動作を一時的に休止する。これに対し、本実施形態では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっても、空気調和装置(20)の空気冷却動作が継続される。これにより、予備冷房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができる。さらに、予備冷房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(5)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させる。
目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
−実施形態1の効果(6)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第1目標温度(Fs)に収束するまでの上記第1実行時間(t1)を推定する。
したがって、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
−実施形態1の効果(7)−
本実施形態の制御装置(70)において、上記第1目標温度(Fs)は、上記第1温度(F)の変化率が所定値以下になると推定される温度である。これにより、第1動作を不必要に長時間実行することを回避できる。
−実施形態1の効果(8)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における外気温度(Tout)および上記第2温度(T)を含む学習データと、該学習データから推定される今回の上記第2動作の開始時の上記第2温度(T)と、現在の外気温度(Tout)とに基づいて、今回の上記第2動作の開始から上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)に収束するまでの上記第2実行時間(t2)を推定する。
したがって、過去の第2動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第2動作の第2実行時間(t2)を推定できる。
−実施形態1の効果(9)−
本実施形態の制御方法は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)の制御方法であって、上記対象空間(100)に面する床(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態1の効果(10)−
本実施形態の制御方法は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作(予熱動作、予冷動作)と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作(通常動作)とを上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態1の効果(11)−
本実施形態の制御方法は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に空気加熱動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させる。
これにより、暖房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができ、暖房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(12)−
本実施形態の制御方法は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に空気冷却動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させる。
これにより、冷房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができ、冷房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、人工知能(AI)を用いて、できるだけ短い時間で、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるように構成される。
携帯端末(70)の記憶部(72)には、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)の実行時間(総実行時間(ttot))を評価値とし、かつ温度調節運転の開始時の第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、第1動作(予熱動作、予冷動作)の第1実行時間(t1)と、第2動作(通常動作)の第2実行時間(t2)とを入力として生成される学習モデルが記憶されている。この学習モデルは、上記の各入力と各評価値とを関連付けて行われる任意のタイプの機械学習により生成されてもよい。
携帯端末(70)は、温度調節運転において、第1温度(F)を制御値とする第1動作と、第2温度(T)を制御値とする第2動作とを空気調和装置(20)に実行させる。携帯端末(70)は、上記学習モデルを用いて、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)により検出される第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に基づいて、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転の実行時間が最小となるように空気調和装置(20)を制御する。
−実施形態2の効果−
本実施形態の制御装置(70)(携帯端末(70))によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転の実行時間を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御する。
したがって、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の実行時間を短くしつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態2の変形例−
本変形例の空調システム(10)は、学習モデルの評価値が上記実施形態2と異なる。
具体的に、本実施形態の学習モデルの評価値は、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転における消費電力である。
携帯端末(70)は、温度調節運転において、第1温度(F)を制御値とする第1動作と、第2温度(T)を制御値とする第2動作とを空気調和装置(20)に実行させる。携帯端末(70)は、当該学習モデルを用いて、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)により検出される第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に基づいて、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転における消費電力が最小となるように空気調和装置(20)を制御する。
本変形例の制御装置(70)(携帯端末(70))によっても、上記実施形態2と同様の効果が得られる。
また、本変形例の制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転における消費電力を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御する。
したがって、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の消費電力を抑制しつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、制御装置を構成する携帯端末(70)にインストールされたプログラムが、実施形態1と異なる。そのため、本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1とは異なる処理を行う。ここでは、本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)が行う処理について、実施形態1と異なる点を主に説明する。
−予備暖房運転−
空気調和装置(20)の予備暖房運転において携帯端末(70)が行う処理を説明する。
本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1と同様に、図4のフロー図に示す処理を行う。ただし、本実施形態の携帯端末(70)は、図4のステップST6の処理が実施形態1と異なる。
図4のステップST6の処理は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)とを算出する処理である。予備暖房運転における第1実行時間(t1)は、空気調和装置(20)が予熱動作(第1動作)を実行する時間である。予備暖房運転における第2実行時間(t2)は、空気調和装置(20)が通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここでは、本実施形態の携帯端末(70)が第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理について、図8を参照しながら説明する。
ステップST601の処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を設定する。本実施形態の第1目標温度(Fs)は、ユーザーによって指定された目標時点(tg)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を、第2目標温度(Ts)から所定値αを減じた値に設定する(Fs=Ts−α)。所定値αは、例えば「2℃」である。
第2目標温度(Ts)は、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)の目標値である。第2目標温度(Ts)は、図4のステップST1の処理において、ユーザーによって指定される。
次に、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を行う。ステップST602の処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を設定する。第3目標温度(Fn)は、予熱動作(第1動作)の終了時点(tn)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を、第1目標温度(Fs)に所定値aを加えた値に設定する(Fn=Fs+a)。携帯端末(70)は、ステップST602からステップST610までの処理を行うことによって、所定値aを調節する。所定値aの初期値は、例えば1℃である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST603の処理を行う。ステップST603の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇予測式Fuh(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予熱動作を開始してから第1温度(F)が第3目標温度(Fn)に到達するまでの所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇予測式Fuh(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST604の処理を行う。ステップST604の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tuh(t,T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予熱動作を開始してからステップST603で算出した第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tuh(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST605の処理を行う。ステップST605の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Tdh(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予熱動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで低下するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST606の処理を行う。ステップST606の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が通常動作を開始してからステップST605で算出した第2実行時間(t2)が経過した時点(tg)における第1温度F(tg)の推定値を算出する。第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tn),Tout)は、動作時間(t)と、通常動作開始時の第1温度F(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST607の処理を行う。ステップST607からステップST610までの処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(本実施形態では、Fs±βの範囲)に入っているか否かを判定し、その結果に応じて所定の処理を行う。
ステップST607の処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)から所定値βを減じた値(Fs−β)と比較する。所定値βの値は、例えば0.5℃である。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)よりも高い場合(Fs-β<F(tg)が成立する場合)、携帯端末(70)は、次にステップST608の処理を行う。一方、第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合(Fs−β<F(tg)が成立しない場合)、携帯端末(70)は、次にステップST609の処理を行う。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲を下回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、ステップST609の処理を行う。ステップST609の処理において、携帯端末(70)は、ステップST602の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ大きくする。所定値γの値は、例えば0.1℃である。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を再び行う。
ステップST608の処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)に所定値βを加えた値(Fs+β)と比較する。
第1温度F(tg)が値(Fs+β)よりも低い場合(Fs+β>F(tg)が成立する場合)、ステップST606の処理において算出した第1温度F(tg)の推定値は、第1温度(F)の目標範囲(Fs±βの範囲)に入っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、直近のステップST603で算出した所要時間の推定値を第1実行時間(t1)の確定値として記憶すると共に、直近のステップST605で算出した所要時間の推定値を第2実行時間(t2)の確定値として記憶し、第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理を終了する。
一方、第1温度F(tg)が値(Fs+β)以上の場合(Fs+β>F(tg)が成立しない場合)は、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(Fs±βの範囲)を上回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、次にステップST610の処理を行う。ステップST610の処理において、携帯端末(70)は、ステップST602の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ小さくする。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を再び行う。
−予備暖房運転における温度変化−
本実施形態の予備暖房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図9のグラフを用いて説明する。
予備暖房運転における予熱動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予熱動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに上昇し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に上昇する。第2温度(T)は、予熱動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも高くなる。それでも、予熱動作(空気調和装置(20)の空気加熱動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予熱動作の終了時点(tn)において、第3目標温度(Fn)に到達する。本実施形態の予熱動作は、予熱動作の終了時点(tn)において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる動作である。
予熱動作に続いて、予備暖房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高いので、空気調和装置(20)の暖房能力が予熱動作よりも低下する。図9に示す例では、予熱動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気加熱動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに低下し、第2温度(T)は相対的に大幅に低下する。第1温度(F)は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第1目標温度(Fs)に到達する。第2温度(T)は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第2目標温度(Ts)に到達する。このように、本実施形態の通常動作は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させ、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させる動作である。
−予備冷房運転−
空気調和装置(20)の予備冷房運転において携帯端末(70)が行う処理を説明する。
本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1と同様に、図4のフロー図に示す処理を行う。ただし、本実施形態の携帯端末(70)は、図4のステップST6の処理が実施形態1と異なる。
図4のステップST6の処理は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)とを算出する処理である。予備冷房運転における第1実行時間(t1)は、空気調和装置(20)が予冷動作(第1動作)を実行する時間である。予備冷房運転における第2実行時間(t2)は、空気調和装置(20)が通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここでは、本実施形態の携帯端末(70)が第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理について、図10を参照しながら説明する。
ステップST621の処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を設定する。本実施形態の第1目標温度(Fs)は、ユーザーによって指定された目標時点(tg)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を、第2目標温度(Ts)に所定値αを加えた値に設定する(Fs=Ts+α)。所定値αは、例えば「2℃」である。
第2目標温度(Ts)は、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)の目標値である。第2目標温度(Ts)は、図4のステップST1の処理において、ユーザーによって指定される。
次に、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を行う。ステップST622の処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を設定する。第3目標温度(Fn)は、予冷動作(第1動作)の終了時点(tn)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を、第1目標温度(Fs)から所定値aを減じた値に設定する(Fn=Fs−a)。携帯端末(70)は、ステップST622からステップST630までの処理を行うことによって、所定値aを調節する。所定値aの初期値は、例えば1℃である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST623の処理を行う。ステップST623の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の下降予測式Fdc(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予冷動作を開始してから第1温度(F)が第3目標温度(Fn)に到達するまでの所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST624の処理を行う。ステップST624の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Tdc(t,T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予冷動作を開始してからステップST623で算出した第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Tdc(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST625の処理を行う。ステップST625の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tuc(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予冷動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで上昇するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tuc(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST626の処理を行う。ステップST626の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇予測式Fuc(t,F(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が通常動作を開始してからステップST625で算出した第2実行時間(t2)が経過した時点(tg)における第1温度F(tg)の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇予測式Fuc(t,F(tn),Tout)は、動作時間(t)と、通常動作開始時の第1温度F(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST627の処理を行う。ステップST627からステップST630までの処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(本実施形態では、Fs±βの範囲)に入っているか否かを判定し、その結果に応じて所定の処理を行う。
ステップST627の処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)から所定値βを減じた値(Fs−β)と比較する。所定値βの値は、例えば0.5℃である。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)よりも高い場合(Fs−β<F(tg)が成立する場合)、携帯端末(70)は、次にステップST628の処理を行う。一方、第1温度F(tg)が値(Fs-β)以下の場合(Fs-β<F(tg)が成立しない場合)、携帯端末(70)は、次にステップST629の処理を行う。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲を下回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、ステップST629の処理を行う。ステップST629の処理において、携帯端末(70)は、ステップST622の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ小さくする。所定値γの値は、例えば0.1℃である。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を再び行う。
ステップST628の処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)に所定値βを加えた値(Fs+β)と比較する。
第1温度F(tg)が値(Fs+β)よりも低い場合(Fs+β>F(tg)が成立する場合)、ステップST626の処理において算出した第1温度F(tg)の推定値は、第1温度(F)の目標範囲(Fs±βの範囲)に入っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、直近のステップST623で算出した所要時間の推定値を第1実行時間(t1)の確定値として記憶すると共に、直近のステップST625で算出した所要時間の推定値を第2実行時間(t2)の確定値として記憶し、第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理を終了する。
一方、第1温度F(tg)が値(Fs+β)以上の場合(Fs+β>F(tg)が成立しない場合)は、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(Fs±βの範囲)を上回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、次にステップST630の処理を行う。ステップST630の処理において、携帯端末(70)は、ステップST622の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ大きくする。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を再び行う。
−予備冷房運転における温度変化−
本実施形態の予備冷房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図11のグラフを用いて説明する。
予備冷房運転における予冷動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予冷動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに低下し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に低下する。第2温度(T)は、予冷動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも低くなる。それでも、予冷動作(空気調和装置(20)の空気冷却動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予冷動作の終了時点(tn)において、第3目標温度(Fn)に到達する。本実施形態の予冷動作は、予冷動作の終了時点(tn)において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる動作である。
予冷動作に続いて、予備冷房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低いので、空気調和装置(20)の冷房能力が予冷動作よりも低下する。図11に示す例では、予冷動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気冷却動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに上昇し、第2温度(T)は相対的に大幅に上昇する。第1温度(F)は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第1目標温度(Fs)に到達する。第2温度(T)は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第2目標温度(Ts)に到達する。このように、本実施形態の通常動作は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させ、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させる動作である。
−実施形態3の効果(1)−
本実施形態の携帯端末によって構成される制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる。
本実施形態によれば、第1動作である予熱動作または予冷動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、本実施形態によれば、第2動作である通常動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態3の効果(2)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定する。その結果、床(101)の温度である第1温度(F)が高くなり過ぎるのを回避でき、在室者の快適性を向上させることができる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定する。その結果、床(101)の温度である第1温度(F)が低くなり過ぎるのを回避でき、在室者の快適性を向上させることができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
−第1変形例−
各上記実施形態では、携帯端末(70)が制御装置を構成しているが、制御装置の構成要素は任意に選択されてもよい。例えば、携帯端末(70)と空気調和装置(20)の制御部(50)とが制御装置を構成していてもよいし、携帯端末(70)および制御部(50)と通信可能なサーバ(図示せず)が制御装置を構成していてもよいし、携帯端末(70)、制御部(50)、およびサーバのうち任意の要素が制御装置を構成していてもよい。
−第2変形例−
各上記実施形態において、制御装置を構成するコンピュータは、携帯端末(70)に限定されない。この明細書において、「コンピュータ」は、「計算の手順(アルゴリズム))を記述したプログラムを記憶し、記憶するプログラムに従って計算を自動的に実行する機械」を指す。従って、各上記実施形態の制御装置は、例えば、タブレットPC、サーバー、空気調和装置(20)のリモコン等によって構成されてもよい。
−第3変形例−
各上記実施形態において、携帯端末(70)は、予備暖房運転の予熱動作において、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高い所定値(例えば、第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃高い値)よりも高くなっても空気調和装置(20)の空気加熱動作を継続するように構成されてもよい。
−第4変形例−
各上記実施形態において、携帯端末(70)は、予備冷房運転の予冷動作において、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低い所定値(例えば、第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃低い値)よりも低くなっても空気調和装置(20)の空気冷却動作を継続するように構成されてもよい。
−第5変形例−
各上記実施形態において、第1目標温度(Fs)は、ユーザーにより入力される設定値であってもよい。また、上記実施形態1又は2において、第1目標温度(Fs)は、第2目標温度(Ts)に基づいて決定される温度(例えば、暖房運転では第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃低い温度、冷房運転では第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃高い温度)であってもよい。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、空気調和装置の制御装置、空調システム、空気調和装置の制御方法、およびプログラムについて有用である。
10 空調システム
20 空気調和装置
70 携帯端末(制御装置)
100 対象空間
101 床(仕切部)
F 第1温度
Fs 第1目標温度
T 第2温度
Ts 第2目標温度
Tout 外気温度
t1 第1実行時間
t2 第2実行時間
ttot 総実行時間
本開示は、空気調和装置の制御装置、空調システム、空気調和装置の制御方法、およびプログラムに関するものである。
従来より、運転開始時の躯体蓄熱が十分に処理されていない状況で、壁面からの輻射による不快感を軽減するために、室温を検知するセンサと、壁温度を検知するセンサとを備え、壁温度に基づいた運転制御を実施する空気調和装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の空気調和装置は、暖房時の壁温度が低いときは、室温が設定温度よりも高くなるまで、冷房時の壁温度が高いときは、室温が設定温度よりも低くなるまで運転するように構成される。
しかしながら、特許文献1の空気調和装置によると、壁温度によって室内空気の到達温度が変わることで、ユーザーが意図する設定温度と実際の室温との間にずれが生じてしまうおそれがある。一方で、一般的な空気調和装置の制御方法は、室温が設定温度に近づくにつれ、空調能力を減少させることでユーザーが意図する設定温度に室温を収束させる方法である。しかし、この制御方法によって壁温度を、躯体蓄熱が十分に処理されたとみなされる所定の目標温度に収束させるには、多大な運転時間を要し、その間ユーザーは輻射による不快な温熱環境にさらされることになる。あるいは、躯体蓄熱が十分に処理された温熱環境を予備運転で実現しようとすると、多大な運転時間が必要になって消費電力が増加してしまう。
本開示の目的は、壁や床などの表面温度と室内温度とを各々の目標温度に速やかに近づけることにある。
本開示の第1の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定する。
本開示の第2の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定する。
第1,第2の各態様では、床の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第1の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が暖まり過ぎるのを抑制できる。
第2の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が冷え過ぎるのを抑制できる。
本開示の第3の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも高い値に設定することを特徴とする。
本開示の第4の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも低い値に設定することを特徴とする。
第3,第4の各態様では、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第3,第4の各態様では、第1動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、これらの態様では、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させることができる。
本開示の第5の態様は、上記第3の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定することを特徴とする。
第5の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定されるため、仕切部(101)が暖まり過ぎるのを抑制できる。
本開示の第6の態様は、上記第4の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定することを特徴とする。
第6の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定されるため、仕切部(101)が冷え過ぎるのを抑制できる。
本開示の第7の態様は、上記第3の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に上記対象空間(100)の暖房を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させることを特徴とする。
第7の態様では、空気調和装置(20)が対象空間(100)を暖房するときに、第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができ、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
本開示の第8の態様は、上記第4の態様において、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に上記対象空間(100)の冷房を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させることを特徴とする。
第8の態様では、空気調和装置(20)が対象空間(100)を冷房するときに、第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができ、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
本開示の第9,第11,第13,第14,第15,第16の各態様は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)を制御する制御装置(70)を対象とする。制御装置(70)は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる。
第9,第11,第13,第14,第15,第16の各態様では、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第9,第13の各態様は、上記の構成に加えて、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第9,第13の各態様では、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
また、第9,第13の各態様において、制御装置(70)は、まず空気調和装置(20)に第1動作を実行させ、第1動作の終了後に空気調和装置(20)に第2動作を実行させる。
本開示の第9の態様は、上記の構成に加えて、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させることを特徴とする。
第9の態様では、目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
本開示の第10の態様は、上記第9の態様において、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第1目標温度(Fs)に収束するまでの第1実行時間(t1)を推定することを特徴とする。
第10の態様では、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
本開示の第11,第14の各態様は、上記の構成に加えて、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させることを特徴とする。
第11,第14の各態様では、第1動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、これらの態様では、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
本開示の第11の態様は、上記の構成に加えて、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させることを特徴とする。
第11の態様では、目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
本開示の第12の態様は、上記第11の態様において、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第3目標温度(Fn)に収束するまでの第1実行時間(t1)を推定することを特徴とする。
第12の態様では、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
本開示の第13,第14の各態様は、上記の構成に加えて、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における外気温度(Tout)および上記第2温度(T)を含む学習データと、該学習データから推定される今回の上記第2動作の開始時の上記第2温度(T)と、現在の外気温度(Tout)とに基づいて、今回の上記第2動作の開始から上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)に収束するまでの第2実行時間(t2)を推定することを特徴とする。
第13,第14の各態様では、過去の第2動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第2動作の第2実行時間(t2)を推定できる。
本開示の第15の態様は、上記の構成に加えて、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転の実行時間を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御することを特徴とする。
第15の態様では、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の実行時間を短くしつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第16の態様は、上記の構成に加えて、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転における消費電力を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御することを特徴とする。
第16の態様では、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の消費電力を抑制しつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
本開示の第17の態様は、空調システム(10)を対象とする。空調システム(10)は、上記第1または第3の態様の制御装置(70)と、上記制御装置(70)によって制御され、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)とを備える。
本開示の第18の態様は、空調システム(10)を対象とする。空調システム(10)は、上記第2または第4の態様の制御装置(70)と、上記制御装置(70)によって制御され、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)とを備える。
本開示の第19の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)の制御方法を対象とする。制御方法は、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定する。
本開示の第20の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)の制御方法を対象とする。制御方法は、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定する。
第19,第20の各態様では、床の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第19の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が暖まり過ぎるのを抑制できる。
第20の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が冷え過ぎるのを抑制できる。
本開示の第21の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)の制御方法を対象とする。制御方法は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも高い値に設定する。
本開示の第22の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)の制御方法を対象とする。制御方法は、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させ、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させ、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも低い値に設定する。
第21,第22の各態様では、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第21,第22の各態様では、第1動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、この態様では、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させることができる。
本開示の第23の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。そして、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定する処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
本開示の第24の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。そして、上記対象空間(100)に面する床の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定する処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
第23,第24の各態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータによって、空気調和装置(20)が制御される。その結果、床の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第23の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が暖まり過ぎるのを抑制できる。
第24の態様では、第1目標温度(Fs)が第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定されるため、対象空間(100)に面する床が冷え過ぎるのを抑制できる。
本開示の第25の態様は、対象空間(100)の暖房を行う空気調和装置(20)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。そして、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも高い値に設定する処理とを上記コンピュータに実行させることを特徴とする。
本開示の第26の態様は、対象空間(100)の冷房を行う空気調和装置(20)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。そして、上記対象空間(100)に面する床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転を上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる処理と、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第3目標温度(Fn)を上記第1目標温度(Fs)よりも低い値に設定する処理とを上記コンピュータに実行させることを特徴とする。
第25,第26の各態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータによって、空気調和装置(20)が制御される。その結果、床、壁、および天井の少なくとも1つを含む仕切部(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
第25,第26の各態様では、この態様のプログラムを実行するコンピュータが、空気調和装置(20)に第1動作と第2動作とを順に実行させる。その結果、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、第2動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
図1は、実施形態1の空調システムを概略的に示す模式図である。
図2は、実施形態1の空調システムの冷媒回路を示す図である。
図3は、実施形態1の空調システムの構成を示すブロック図である。
図4は、予備暖房運転または予備冷房運転における実施形態1の空調システムの動作を示すフローチャートである。
図5は、実施形態1の空調システムの予備暖房運転における温度変化を示すグラフである。
図6は、実施形態1の携帯端末(制御装置)が各実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図7は、実施形態1の空調システムの予備冷房運転における温度変化を示すグラフである。
図8は、実施形態3の携帯端末(制御装置)が予備暖房運転における第1実行時間および第2実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図9は、実施形態3の空調システムの予備暖房運転における温度変化を示すグラフである。
図10は、実施形態3の携帯端末(制御装置)が予備冷房運転における第1実行時間および第2実行時間を算出する手順を示すフローチャートである。
図11は、実施形態3の空調システムの予備冷房運転における温度変化を示すグラフである。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、対象空間(100)の暖房および冷房を実行できる。空調システム(10)は、対象空間(100)に在室者がいない状態で暖房運転または冷房運転が予約された場合に、目標時点において、室内温度をその目標温度に近づけるのみでなく、床や壁などの表面温度をその目標温度に近づけることができる。
図1〜図3に示すように、空調システム(10)は、空気調和装置(20)と、携帯端末(70)とを備える。携帯端末(70)は、コンピュータの一例であって、制御装置を構成している。対象空間(100)に面する床(101)は、仕切部を構成する。なお、対象空間(100)に面する天井または壁が仕切部を構成してもよいし、床(101)、天井、および壁の任意の組合せが仕切部を構成してもよい。
空気調和装置(20)は、対象空間(100)の外部に設置される室外ユニット(30)と、対象空間(100)に設置される室内ユニット(40)と、制御部(50)とを備える。
〈室外ユニット、室内ユニット〉
室外ユニット(30)と室内ユニット(40)とは、連絡配管(22,23)により互いに接続され、図2に示す冷媒回路(21)を構成する。冷媒回路(21)では、充填された冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。冷媒は、例えばR32冷媒であってもよい。
室外ユニット(30)は、例えば、建物の屋上や建物脇の地面上、ベランダなどの屋外に設置される。室外ユニット(30)は、圧縮機(31)と、四方切換弁(32)と、室外熱交換器(33)と、膨張弁(34)と、室外ファン(35)とを備える。圧縮機(31)、四方切換弁(32)、室外熱交換器(33)、および膨張弁(34)は、この順に冷媒配管で接続される。
圧縮機(31)は、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(31)は、例えば容量が可変なインバータ式に構成される。圧縮機(31)は、例えば回転式圧縮機である。室外ファン(35)は、室外熱交換器(33)の近傍に設置される。室外ファン(35)は、例えばプロペラファンによって構成される。室外ファン(35)は、外気を搬送し、室外熱交換器(33)に通過させる。
室外熱交換器(33)は、室外ファン(35)によって搬送される外気と内部を流れる冷媒とを熱交換させる。室外熱交換器(33)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。膨張弁(34)は、開度が可変な制御弁である。膨張弁(34)は、内部を流れる冷媒を減圧する。膨張弁(34)は、例えば電子膨張弁によって構成される。
四方切換弁(32)は、冷媒回路(21)における冷媒の流路を第1状態(図2の実線で示す状態)と第2状態(図2の破線で示す状態)とに切り替える。第1状態の四方切換弁(32)は、圧縮機(31)の吐出部と室外熱交換器(33)とを連通させ、かつ圧縮機(31)の吸入部と室内熱交換器(41)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(32)は、圧縮機(31)の吐出部と室内熱交換器(41)とを連通させ、かつ圧縮機(31)の吸入部と室外熱交換器(33)とを連通させる。
室内ユニット(40)は、例えば、室内の壁面や天井に取り付けられる。図1に示す室内ユニット(40)は、壁面に取り付けられる壁掛け式のユニットである。室内ユニット(40)は、室内熱交換器(41)と、室内ファン(42)とを備える。室内ファン(42)は、室内熱交換器(41)の近傍に設置される。
室内ファン(42)は、例えばクロスフローファンによって構成される。室内ファン(42)は、室内空気を搬送し、室内熱交換器(41)に通過させる。室内熱交換器(41)は、室内ファン(42)によって搬送される室内空気と内部を流れる冷媒とを熱交換させる。室内熱交換器(41)は、例えばフィンアンドチューブ式熱交換器によって構成される。
冷媒回路(21)において、四方切換弁(32)が第1状態である場合、室外熱交換器(33)が凝縮器または放熱器として機能し、かつ室内熱交換器(41)が蒸発器として機能する冷凍サイクルが行われる。一方、冷媒回路(21)において、四方切換弁(32)が第2状態である場合、室外熱交換器(33)が蒸発器として機能し、かつ室内熱交換器(41)が凝縮器または放熱器として機能する冷凍サイクルが行われる。
〈センサ類〉
空調システム(10)は、室内温度センサ(61)、床温度センサ(62)、および外気温度センサ(63)をさらに備える。これら各センサ(61〜63)は、有線または無線により制御部(50)に接続される。各センサ(61〜63)は、検出信号を制御部(50)に出力する。
室内温度センサ(61)および床温度センサ(62)は、例えば室内ユニット(40)に設けられる。室内温度センサ(61)は、室内ユニット(40)に吸い込まれる室内空気の温度を検出することで、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を検出する。床温度センサ(62)は、床(101)からの輻射熱を検出することで、床(101)の表面温度である第1温度(F)を検出する。
外気温度センサ(63)は、例えば室外ユニット(30)に設けられる。外気温度センサ(63)は、室外ユニット(30)に吸い込まれる外気の温度(外気温度(Tout))を検出する。
〈制御部〉
制御部(50)は、周知のマイクロコンピュータを備えたコントローラである。図3に示すように、制御部(50)は、プログラムを実行するCPU(51)と、CPU(51)上で実行される各種のプログラムやデータを記憶する記憶部(52)とを有する。記憶部(52)は、ROMやRAMなどによって構成される。制御部(50)は、例えば室内ユニット(40)に内蔵される。
制御部(50)は、室内温度センサ(61)、床温度センサ(62)、および外気温度センサ(63)の検知信号と、携帯端末(70)やリモコン(図示せず)からの操作信号とに基づいて、室外ユニット(30)および室内ユニット(40)の制御量を計算する。制御部(50)は、計算した制御量に係る制御信号を室外ユニット(30)および室内ユニット(40)に出力する。
〈携帯端末〉
携帯端末(70)は、空気調和装置(20)を操作するためにユーザーにより使用される。携帯端末(70)は、例えばスマートフォンによって構成される。コンピュータである携帯端末(70)には、携帯端末(70)を制御装置として機能させるためのプログラムがインストールされている。携帯端末(70)は、インストールされたプログラムを実行することによって、空気調和装置(20)を制御する制御装置として機能するための処理を行う。
携帯端末(70)は、ネットワーク(80)を介して空気調和装置(20)の制御部(50)と無線で通信することができる。携帯端末(70)は、図3に示すように、CPU(71)と、CPU(71)上で実行される各種のプログラムやデータを記憶する記憶部(72)とを有する。記憶部(72)は、ROMやRAMなどによって構成される。記憶部(72)には、後述する温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を実行する際に利用する学習データが記憶されている。
−空調システムの運転動作−
空調システム(10)は、ユーザーの操作にしたがって、暖房運転と、冷房運転と、予備暖房運転と、予備冷房運転とを選択的に実行する。予備暖房運転は、特殊な暖房運転であって、温度調節運転の一例である。予備冷房運転は、特殊な冷房運転であって、温度調節運転の一例である。
〈暖房運転〉
暖房運転では、四方切換弁(32)が第2状態になる。圧縮機(31)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(41)を流れる。室内熱交換器(41)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。室内熱交換器(41)で加熱された室内空気は、室内ファン(42)により対象空間(100)に送風される。凝縮した冷媒は、膨張弁(34)で減圧された後、室外熱交換器(33)で蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(31)に吸入される。
暖房運転において、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を行う。空気加熱動作は、加熱した空気を対象空間(100)へ吹き出す動作である。なお、暖房運転において、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を一時的に休止する場合がある。例えば、暖房運転中に室内温度センサ(61)の計測値が設定温度にまで上昇すると、空気調和装置(20)は、空気加熱動作を一時的に休止する。
〈冷房運転〉
冷房運転では、四方切換弁(32)が第1状態になる。圧縮機(31)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(33)により放熱(凝縮)する。放熱した冷媒は、膨張弁(34)により減圧された後に、室内熱交換器(41)を流れる。室内熱交換器(41)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。室内熱交換器(41)で冷却された室内空気は、室内ファン(42)により対象空間(100)に送風される。蒸発した冷媒は、圧縮機(31)に吸入される。
冷房運転において、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を行う。空気冷却動作は、冷却した空気を対象空間(100)へ吹き出す動作である。なお、冷房運転において、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を一時的に休止する場合がある。例えば、冷房運転中に室内温度センサ(61)の計測値が設定温度にまで低下すると、空気調和装置(20)は、空気冷却動作を一時的に休止する。
〈予備暖房運転〉
予備暖房運転は、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるための特殊な暖房運転である。予備暖房運転は、対象空間(100)にいないユーザーが、携帯端末(70)で所定の指令操作を行った場合に実行される。
−予備暖房運転の動作−
予備暖房運転の動作について、図4のフローチャートと図5のグラフを参照して具体的に説明する。図4では、携帯端末(70)に関連する動作を破線よりも左側に、空気調和装置(20)に関連する動作を破線よりも右側に、それぞれ記述している。図5のグラフは、横軸が時間を、縦軸が第1温度(F)および第2温度(T)を、それぞれ表している。
まず、ステップST1では、ユーザーが、任意の時点(tr)において、携帯端末(70)で所定の指令操作を行う。ユーザーは、例えば、対象空間(100)から外出しようとする時点や、外出先から対象空間(100)へ戻る前の時点において、指令操作を行う。
この指令操作において、ユーザーは、第2目標温度(Ts)および目標時点(tg)を指定する。第2目標温度(Ts)は、第2温度(T)が到達するべき目標温度である。目標時点(tg)は、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)に到達するべき時点(例えば、時刻)である。なお、第2目標温度(Ts)および目標時点(tg)は、携帯端末(70)によって自動で設定されてもよい。
続いて、携帯端末(70)は、ステップST2の処理を行う。ステップST2の処理において、携帯端末(70)は、予備暖房運転時の第1温度(F)および第2温度(T)の過去データの数(nsamp)が所定の数(N)以上であるか否かを判定する。当該過去データの数(nsamp)は、予備暖房運転を実行するたびに1ずつ増加する。所定の数(N)は、例えば1に設定されるが、2以上に設定されてもよい。携帯端末(70)は、過去データの数(nsamp)が所定の数(N)以上であればステップST3の処理を行い、そうでなければステップST7の処理を行う。
ステップST3の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、開始時点(tp)を決定する決定時点(td)から目標時点(tg)までの時間(t0)以下であるか否かを判定する。開始時点(tp)は、予備暖房運転を開始する時点である。決定時点(td)は、開始時点(tp)を決定する時点である。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が後者の時間(t0)以下であればステップST4の処理を行い、そうでなければステップST3の処理を繰り返す。
ステップST4の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を送り返すように要求する指令信号を送る。指令信号を受信した空気調和装置(20)は、ステップST5の処理を行う。
ステップST5の処理において、空気調和装置(20)は、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)で取得した第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を、携帯端末(70)に向けて送信する。信号を受信した携帯端末(70)は、ステップST6の処理を行う。
ステップST6の処理において、携帯端末(70)は、予備暖房運転時の第1温度(F)および第2温度(T)の過去データに基づいて、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する。第1実行時間(t1)は、予備暖房運転において予熱動作(第1動作)を実行する時間である。第2実行時間(t2)は、予備暖房運転において通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここで、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する方法について、図6のフローチャートを用いて詳しく説明する。
まず、ステップST61の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇勾配の予測式F’(t,T(tp),Tout)に基づいて、第1温度(F)の変化率が所定値(例えば、1分あたりの温度変化が0.1℃)以下となるまでに要する所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇勾配の予測式F’(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶部(72)に記録する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST62の処理を行う。ステップST62の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の予測式F(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、予熱動作を開始してから上記所要時間(第1実行時間(t1))が経過した時点(tn)における第1温度F(tn)の推定値を算出する。第1温度(F)の予測式F(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した第1温度F(tn)の推定値を、第1目標温度(Fs)として記憶部(72)に記録する。第1目標温度(Fs)は、第1温度(F)が到達するべき目標温度である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST63の処理を行う。ステップST63の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tu(t,T(tp),Tout)に基づいて、予熱動作を開始してから上記所要時間(第1実行時間(t1))が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tu(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した第2温度T(tn)の推定値を、記憶部(72)に記録する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST64の処理を行う。ステップST64の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予熱動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで低下するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶部(72)に記録する。
以上で、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)を算出する方法の説明を終える。
ステップST7の処理において、携帯端末(70)は、第1実行時間(t1)および第2実行時間(t2)のそれぞれを、予め設定された値(t1def,t2def)に設定する。第1実行時間(t1)の設定値t1defは、例えば30分間である。また、第2実行時間(t2)の設定値t2defは、例えば10分間である。
ステップST6又はステップST7の処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST8の処理を行う。ステップST8の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、総実行時間(ttot)以下であるか否かを判定する。総実行時間(ttot)は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)との和である(ttot=t1+t2)。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が総実行時間(ttot)以下であればステップST9の処理を行い、そうでなければステップST8の処理を繰り返す。
ステップST9の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、予熱動作の開始を要求する指令信号を送る。この指令信号を受けた空気調和装置(20)は、ステップST10の処理において予熱動作を開始する。空気調和装置(20)が予熱動作を開始した時点が、予熱動作開始時点(tp)(第1動作開始時点(tp))である。そして、空気調和装置(20)は、予熱動作開始時点(tp)から第1実行時間(t1)にわたって予熱動作を行う。
この予熱動作において、空気調和装置(20)は、加熱した空気を対象空間(100)へ吹き出す空気加熱動作を行う。また、この予熱動作では、空気調和装置(20)の暖房能力が最大に設定される。具体的には、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度が、それぞれの最大値に設定される。
携帯端末(70)は、ステップST9の処理が終了すると、ステップST11の処理を行う。ステップST11の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を送り返すように要求する指令信号を送る。指令信号を受信した空気調和装置(20)は、ステップST12の処理を行う。
ステップST12の処理において、空気調和装置(20)は、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)で取得した第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関する信号を携帯端末(70)に向けて送信する。信号を受信した携帯端末(70)は、ステップST13の処理を行う。
ステップST13の処理において、携帯端末(70)は、現時点(tc)から目標時点(tg)までの時間(dtset)が、第2実行時間(t2)以下であるか否かを判定する。携帯端末(70)は、前者の時間(dtset)が第2実行時間(t2)以下であればステップST14の処理を行い、そうでなければステップST11の処理を再び行う。
ここで、ステップST11〜14の処理を繰り返し行うことで、携帯端末(70)は、予熱動作における第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に関するデータを取得する。携帯端末(70)は、取得されたデータを、記憶部(72)に記録し、次回以降の予備暖房運転で用いる学習データの更新のために過去データとして利用する。
ステップST14の処理において、携帯端末(70)は、空気調和装置(20)(具体的には、空気調和装置(20)の制御部(50))に対して、通常動作の開始を要求する指令信号を送る。この指令信号を受けた空気調和装置(20)は、ステップST15の処理において、予熱動作を終了し、通常動作を開始する。空気調和装置(20)が通常動作を開始した時点が、通常動作開始時点(tn)(第2動作開始時点(tn))である。
この通常動作において、空気調和装置(20)の制御部(50)は、室内温度センサ(61)の計測値が第2目標温度(Ts)となるように、空気調和装置(20)の加熱能力を調節する。具体的に、制御部(50)は、室内温度センサ(61)の計測値が第2目標温度(Ts)となるように、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度を調節する。
−予備暖房運転における温度変化−
予備暖房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図5のグラフを用いて説明する。図5のグラフでは、第1温度(F)を実線で、第2温度(T)を破線で、それぞれ示している。
上述したように、予備暖房運転における予熱動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予熱動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに上昇し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に上昇する。第2温度(T)は、予熱動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも高くなる。それでも、予熱動作(空気調和装置(20)の空気加熱動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予熱動作の終了時点(tn)において、第1目標温度(Fs)に収束する。
予熱動作に続いて、予備暖房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高いので、空気調和装置(20)の暖房能力が予熱動作よりも低下する。図5に示す例では、予熱動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気加熱動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに低下し、第2温度(T)は相対的に大幅に低下する。第2温度(T)は、通常動作の終了時点(tg)(予備暖房運転の終了時点(tg))において、第2目標温度(Ts)に収束する。
〈予備冷房運転〉
予備冷房運転は、第1温度(F)と、第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるための特殊な冷房運転である。予備冷房運転は、対象空間(100)にいないユーザーが、携帯端末(70)で所定の指令操作を行った場合に実行される。
−予備冷房運転の動作−
予備冷房運転の動作は、上述した予備暖房運転の動作のほぼ同じであるので、その詳細な説明を省略する。異なる点として、予備冷房運転では、第1実行時間(t1)にわたって、予熱動作ではなく予冷動作(第1動作)が行われる。
予冷動作において、空気調和装置(20)は、冷却した空気を対象空間(100)へ吹き出す空気冷却動作を行う。また、この予冷動作では、空気調和装置(20)の冷房能力が最大に設定される。具体的には、圧縮機(31)、室外ファン(35)、及び室内ファン(42)の回転速度が、それぞれの最大値に設定される。
−予備冷房運転における温度変化−
予備冷房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図7のグラフを用いて説明する。図7のグラフでは、第1温度(F)を実線で、第2温度(T)を破線で、それぞれ示している。
上述したように、予備冷房運転における予冷動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予冷動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに低下し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に低下する。第2温度(T)は、予冷動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも低くなる。それでも、予冷動作(空気調和装置(20)の空気冷却動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予冷動作の終了時点(tn)において、第1目標温度(Fs)に収束する。
予冷動作に続いて、予備冷房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低いので、空気調和装置(20)の冷房能力が予冷動作よりも低下する。図7に示す例では、予冷動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気冷却動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに上昇し、第2温度(T)は相対的に大幅に上昇する。第2温度(T)は、通常動作の終了時点(tg)(予備冷房運転の終了時点(tg))において、第2目標温度(Ts)に収束する。
−実施形態1の効果(1)−
本実施形態の制御装置(70)(携帯端末(70))は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)を制御するものであって、上記対象空間(100)に面する床(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態1の効果(2)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作(予熱動作、予冷動作)と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作(通常動作)とを上記空気調和装置(20)に実行させる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、温度調節運転において、上記第1動作と上記第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態1の効果(3)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に空気加熱動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させる。
通常の暖房運転では、室内温度である第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなると、空気調和装置(20)は空気加熱動作を一時的に休止する。これに対し、本実施形態では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっても、空気調和装置(20)の空気加熱動作が継続される。これにより、予備暖房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができる。さらに、予備暖房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(4)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に空気冷却動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させる。
通常の冷房運転では、室内温度である第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなると、空気調和装置(20)は空気冷却動作を一時的に休止する。これに対し、本実施形態では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっても、空気調和装置(20)の空気冷却動作が継続される。これにより、予備冷房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができる。さらに、予備冷房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(5)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の学習データに基づいて上記第1動作の第1実行時間(t1)および上記第2動作の第2実行時間(t2)を予測し、上記目標時点(tg)から上記第1実行時間(t1)と上記第2実行時間(t2)との和である総実行時間(ttot)以上前の時点に上記第1動作を上記空気調和装置(20)に開始させる。
目標時点(tg)から総実行時間(ttot)以上前に第1動作を空気調和装置(20)に開始させるので、目標時点(tg)において第1温度(F)および第2温度(T)が各々の目標温度(Fs,Ts)により一層近づきやすくなる。
−実施形態1の効果(6)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)を含む学習データと、現在の上記第1温度(F)、外気温度(Tout)、および上記第2温度(T)とに基づいて、今回の上記第1動作の開始から上記第1温度(F)が上記第1目標温度(Fs)に収束するまでの上記第1実行時間(t1)を推定する。
したがって、過去の第1動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第1動作の第1実行時間(t1)を推定できる。
−実施形態1の効果(7)−
本実施形態の制御装置(70)において、上記第1目標温度(Fs)は、上記第1温度(F)の変化率が所定値以下になると推定される温度である。これにより、第1動作を不必要に長時間実行することを回避できる。
−実施形態1の効果(8)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)の運転の開始前に、過去の上記第1動作における外気温度(Tout)および上記第2温度(T)を含む学習データと、該学習データから推定される今回の上記第2動作の開始時の上記第2温度(T)と、現在の外気温度(Tout)とに基づいて、今回の上記第2動作の開始から上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)に収束するまでの上記第2実行時間(t2)を推定する。
したがって、過去の第2動作における各パラメータを含む学習データを利用して、現在における第2動作の第2実行時間(t2)を推定できる。
−実施形態1の効果(9)−
本実施形態の制御方法は、対象空間(100)の冷房および暖房の少なくとも一方を行う空気調和装置(20)の制御方法であって、上記対象空間(100)に面する床(101)の表面温度である第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、上記対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ目標時点(tg)において近づける温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)を上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、床(101)の表面温度である第1温度(F)と、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)とを、目標時点(tg)において各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態1の効果(10)−
本実施形態の制御方法は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させる第1動作(予熱動作、予冷動作)と、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作(通常動作)とを上記空気調和装置(20)に実行させる。
これにより、第1動作において第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に、第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態1の効果(11)−
本実施形態の制御方法は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときに、上記第1動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高くなっても上記空気調和装置(20)に空気加熱動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以上の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも高い場合に上記空気調和装置(20)の暖房能力を上記第1動作よりも低下させる。
これにより、暖房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに上昇させることができ、暖房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
−実施形態1の効果(12)−
本実施形態の制御方法は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときに、上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低くなっても上記空気調和装置(20)に空気冷却動作を継続させ、上記第2動作において、上記第2温度(T)が上記第2目標温度(Ts)以下の所定値(この例では、第2目標温度(Ts))よりも低い場合に上記空気調和装置(20)の冷房能力を上記第1動作よりも低下させる。
これにより、冷房運転の第1動作において第1温度(F)を速やかに低下させることができ、冷房運転の第2動作において第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に速やかに近づけることができる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、人工知能(AI)を用いて、できるだけ短い時間で、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけるように構成される。
携帯端末(70)の記憶部(72)には、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転(予備暖房運転、予備冷房運転)の実行時間(総実行時間(ttot))を評価値とし、かつ温度調節運転の開始時の第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、第1動作(予熱動作、予冷動作)の第1実行時間(t1)と、第2動作(通常動作)の第2実行時間(t2)とを入力として生成される学習モデルが記憶されている。この学習モデルは、上記の各入力と各評価値とを関連付けて行われる任意のタイプの機械学習により生成されてもよい。
携帯端末(70)は、温度調節運転において、第1温度(F)を制御値とする第1動作と、第2温度(T)を制御値とする第2動作とを空気調和装置(20)に実行させる。携帯端末(70)は、上記学習モデルを用いて、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)により検出される第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に基づいて、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転の実行時間が最小となるように空気調和装置(20)を制御する。
−実施形態2の効果−
本実施形態の制御装置(70)(携帯端末(70))によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転の実行時間を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御する。
したがって、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の実行時間を短くしつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
−実施形態2の変形例−
本変形例の空調システム(10)は、学習モデルの評価値が上記実施形態2と異なる。
具体的に、本実施形態の学習モデルの評価値は、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転における消費電力である。
携帯端末(70)は、温度調節運転において、第1温度(F)を制御値とする第1動作と、第2温度(T)を制御値とする第2動作とを空気調和装置(20)に実行させる。携帯端末(70)は、当該学習モデルを用いて、床温度センサ(62)、室内温度センサ(61)、および外気温度センサ(63)により検出される第1温度(F)、第2温度(T)、および外気温度(Tout)に基づいて、第1温度(F)と第1目標温度(Fs)との差、第2温度(T)と第2目標温度(Ts)との差、および温度調節運転における消費電力が最小となるように空気調和装置(20)を制御する。
本変形例の制御装置(70)(携帯端末(70))によっても、上記実施形態2と同様の効果が得られる。
また、本変形例の制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を制御値とする第1動作と、上記第2温度(T)を制御値とする第2動作とを上記空気調和装置(20)に実行させるように構成され、上記第1温度(F)と上記第1目標温度(Fs)との差、上記第2温度(T)と上記第2目標温度(Ts)との差、および上記温度調節運転における消費電力を評価値とし、かつ上記温度調節運転の開始時の上記第1温度(F)、上記第2温度(T)、および外気温度(Tout)と、上記第1動作の第1実行時間(t1)と、上記第2動作の第2実行時間(t2)とを入力として学習モデルを生成し、該学習モデルの評価値が最小となるように上記空気調和装置(20)を制御する。
したがって、各パラメータを利用して生成される学習モデルを利用して、温度調節運転の消費電力を抑制しつつ、第1温度(F)および第2温度(T)を各々の目標温度(Fs,Ts)に近づけることができる。
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態の空調システム(10)は、制御装置を構成する携帯端末(70)にインストールされたプログラムが、実施形態1と異なる。そのため、本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1とは異なる処理を行う。ここでは、本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)が行う処理について、実施形態1と異なる点を主に説明する。
−予備暖房運転−
空気調和装置(20)の予備暖房運転において携帯端末(70)が行う処理を説明する。
本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1と同様に、図4のフロー図に示す処理を行う。ただし、本実施形態の携帯端末(70)は、図4のステップST6の処理が実施形態1と異なる。
図4のステップST6の処理は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)とを算出する処理である。予備暖房運転における第1実行時間(t1)は、空気調和装置(20)が予熱動作(第1動作)を実行する時間である。予備暖房運転における第2実行時間(t2)は、空気調和装置(20)が通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここでは、本実施形態の携帯端末(70)が第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理について、図8を参照しながら説明する。
ステップST601の処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を設定する。本実施形態の第1目標温度(Fs)は、ユーザーによって指定された目標時点(tg)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を、第2目標温度(Ts)から所定値αを減じた値に設定する(Fs=Ts−α)。所定値αは、例えば「2℃」である。
第2目標温度(Ts)は、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)の目標値である。第2目標温度(Ts)は、図4のステップST1の処理において、ユーザーによって指定される。
次に、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を行う。ステップST602の処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を設定する。第3目標温度(Fn)は、予熱動作(第1動作)の終了時点(tn)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を、第1目標温度(Fs)に所定値aを加えた値に設定する(Fn=Fs+a)。携帯端末(70)は、ステップST602からステップST610までの処理を行うことによって、所定値aを調節する。所定値aの初期値は、例えば1℃である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST603の処理を行う。ステップST603の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇予測式Fuh(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予熱動作を開始してから第1温度(F)が第3目標温度(Fn)に到達するまでの所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇予測式Fuh(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST604の処理を行う。ステップST604の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tuh(t,T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予熱動作を開始してからステップST603で算出した第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tuh(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST605の処理を行う。ステップST605の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Tdh(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予熱動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで低下するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Td(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予熱動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST606の処理を行う。ステップST606の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が通常動作を開始してからステップST605で算出した第2実行時間(t2)が経過した時点(tg)における第1温度F(tg)の推定値を算出する。第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tn),Tout)は、動作時間(t)と、通常動作開始時の第1温度F(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST607の処理を行う。ステップST607からステップST610までの処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(本実施形態では、Fs±βの範囲)に入っているか否かを判定し、その結果に応じて所定の処理を行う。
ステップST607の処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)から所定値βを減じた値(Fs−β)と比較する。所定値βの値は、例えば0.5℃である。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)よりも高い場合(Fs-β<F(tg)が成立する場合)、携帯端末(70)は、次にステップST608の処理を行う。一方、第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合(Fs−β<F(tg)が成立しない場合)、携帯端末(70)は、次にステップST609の処理を行う。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲を下回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、ステップST609の処理を行う。ステップST609の処理において、携帯端末(70)は、ステップST602の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ大きくする。所定値γの値は、例えば0.1℃である。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を再び行う。
ステップST608の処理において、携帯端末(70)は、ステップST606で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)に所定値βを加えた値(Fs+β)と比較する。
第1温度F(tg)が値(Fs+β)よりも低い場合(Fs+β>F(tg)が成立する場合)、ステップST606の処理において算出した第1温度F(tg)の推定値は、第1温度(F)の目標範囲(Fs±βの範囲)に入っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、直近のステップST603で算出した所要時間の推定値を第1実行時間(t1)の確定値として記憶すると共に、直近のステップST605で算出した所要時間の推定値を第2実行時間(t2)の確定値として記憶し、第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理を終了する。
一方、第1温度F(tg)が値(Fs+β)以上の場合(Fs+β>F(tg)が成立しない場合)は、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(Fs±βの範囲)を上回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、次にステップST610の処理を行う。ステップST610の処理において、携帯端末(70)は、ステップST602の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ小さくする。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST602の処理を再び行う。
−予備暖房運転における温度変化−
本実施形態の予備暖房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図9のグラフを用いて説明する。
予備暖房運転における予熱動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予熱動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに上昇し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に上昇する。第2温度(T)は、予熱動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも高くなる。それでも、予熱動作(空気調和装置(20)の空気加熱動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予熱動作の終了時点(tn)において、第3目標温度(Fn)に到達する。本実施形態の予熱動作は、予熱動作の終了時点(tn)において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる動作である。
予熱動作に続いて、予備暖房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高いので、空気調和装置(20)の暖房能力が予熱動作よりも低下する。図9に示す例では、予熱動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気加熱動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに低下し、第2温度(T)は相対的に大幅に低下する。第1温度(F)は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第1目標温度(Fs)に到達する。第2温度(T)は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第2目標温度(Ts)に到達する。このように、本実施形態の通常動作は、予備暖房運転の終了時点(tg)において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させ、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させる動作である。
−予備冷房運転−
空気調和装置(20)の予備冷房運転において携帯端末(70)が行う処理を説明する。
本実施形態の制御装置を構成する携帯端末(70)は、実施形態1と同様に、図4のフロー図に示す処理を行う。ただし、本実施形態の携帯端末(70)は、図4のステップST6の処理が実施形態1と異なる。
図4のステップST6の処理は、第1実行時間(t1)と第2実行時間(t2)とを算出する処理である。予備冷房運転における第1実行時間(t1)は、空気調和装置(20)が予冷動作(第1動作)を実行する時間である。予備冷房運転における第2実行時間(t2)は、空気調和装置(20)が通常動作(第2動作)を実行する時間である。
ここでは、本実施形態の携帯端末(70)が第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理について、図10を参照しながら説明する。
ステップST621の処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を設定する。本実施形態の第1目標温度(Fs)は、ユーザーによって指定された目標時点(tg)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第1目標温度(Fs)を、第2目標温度(Ts)に所定値αを加えた値に設定する(Fs=Ts+α)。所定値αは、例えば「2℃」である。
第2目標温度(Ts)は、対象空間(100)の室内温度である第2温度(T)の目標値である。第2目標温度(Ts)は、図4のステップST1の処理において、ユーザーによって指定される。
次に、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を行う。ステップST622の処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を設定する。第3目標温度(Fn)は、予冷動作(第1動作)の終了時点(tn)において、床(101)の表面温度である第1温度(F)が到達するべき目標温度である。この処理において、携帯端末(70)は、第3目標温度(Fn)を、第1目標温度(Fs)から所定値aを減じた値に設定する(Fn=Fs−a)。携帯端末(70)は、ステップST622からステップST630までの処理を行うことによって、所定値aを調節する。所定値aの初期値は、例えば1℃である。
次に、携帯端末(70)は、ステップST623の処理を行う。ステップST623の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の下降予測式Fdc(t,F(tp),T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予冷動作を開始してから第1温度(F)が第3目標温度(Fn)に到達するまでの所要時間の推定値を算出する。第1温度(F)の下降予測式Fdh(t,F(tp),T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始時の第1温度F(tp)および第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第1実行時間(t1)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST624の処理を行う。ステップST624の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の下降予測式Tdc(t,T(tp),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が予冷動作を開始してからステップST623で算出した第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)の推定値を算出する。第2温度(T)の下降予測式Tdc(t,T(tp),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始時の第2温度T(tp)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST625の処理を行う。ステップST625の処理において、携帯端末(70)は、第2温度(T)の上昇予測式Tuc(t,T(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)の動作が予冷動作から通常動作に切り替わってから第2温度(T)が第2目標温度(Ts)まで上昇するのに要する所要時間の推定値を算出する。第2温度(T)の上昇予測式Tuc(t,T(tn),Tout)は、動作時間(t)と、予冷動作開始から第1実行時間(t1)が経過した時点(tn)における第2温度T(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。携帯端末(70)は、算出した所要時間の推定値を、第2実行時間(t2)として記憶する。
次に、携帯端末(70)は、ステップST626の処理を行う。ステップST626の処理において、携帯端末(70)は、第1温度(F)の上昇予測式Fuc(t,F(tn),Tout)に基づいて、空気調和装置(20)が通常動作を開始してからステップST625で算出した第2実行時間(t2)が経過した時点(tg)における第1温度F(tg)の推定値を算出する。第1温度(F)の上昇予測式Fuc(t,F(tn),Tout)は、動作時間(t)と、通常動作開始時の第1温度F(tn)と、外気温度(Tout)とを変数とした数式であって、過去の運転履歴データから求められる。
次に、携帯端末(70)は、ステップST627の処理を行う。ステップST627からステップST630までの処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(本実施形態では、Fs±βの範囲)に入っているか否かを判定し、その結果に応じて所定の処理を行う。
ステップST627の処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)から所定値βを減じた値(Fs−β)と比較する。所定値βの値は、例えば0.5℃である。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)よりも高い場合(Fs−β<F(tg)が成立する場合)、携帯端末(70)は、次にステップST628の処理を行う。一方、第1温度F(tg)が値(Fs-β)以下の場合(Fs-β<F(tg)が成立しない場合)、携帯端末(70)は、次にステップST629の処理を行う。
第1温度F(tg)が値(Fs−β)以下の場合は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値が、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲を下回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、ステップST629の処理を行う。ステップST629の処理において、携帯端末(70)は、ステップST622の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ小さくする。所定値γの値は、例えば0.1℃である。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を再び行う。
ステップST628の処理において、携帯端末(70)は、ステップST626で算出した第1温度F(tg)の推定値を、第1目標温度(Fs)に所定値βを加えた値(Fs+β)と比較する。
第1温度F(tg)が値(Fs+β)よりも低い場合(Fs+β>F(tg)が成立する場合)、ステップST626の処理において算出した第1温度F(tg)の推定値は、第1温度(F)の目標範囲(Fs±βの範囲)に入っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、直近のステップST623で算出した所要時間の推定値を第1実行時間(t1)の確定値として記憶すると共に、直近のステップST625で算出した所要時間の推定値を第2実行時間(t2)の確定値として記憶し、第1実行時間(t1)及び第2実行時間(t2)を算出する処理を終了する。
一方、第1温度F(tg)が値(Fs+β)以上の場合(Fs+β>F(tg)が成立しない場合)は、第1目標温度(Fs)を含む目標範囲(Fs±βの範囲)を上回っている。そこで、この場合、携帯端末(70)は、次にステップST630の処理を行う。ステップST630の処理において、携帯端末(70)は、ステップST622の処理において用いられる所定値aの値を、所定値γだけ大きくする。この処理が終了すると、携帯端末(70)は、ステップST622の処理を再び行う。
−予備冷房運転における温度変化−
本実施形態の予備冷房運転における第1温度(F)および第2温度(T)の変化について、図11のグラフを用いて説明する。
予備冷房運転における予冷動作は、第1実行時間(t1)にわたって行われる。予冷動作の間、第1温度(F)(床(101)の表面温度)は相対的に緩やかに低下し、第2温度(T)(対象空間(100)の室内温度)は相対的に急峻に低下する。第2温度(T)は、予冷動作の途中で第2目標温度(Ts)よりも低くなる。それでも、予冷動作(空気調和装置(20)の空気冷却動作)は継続される。一方、第1温度(F)は、予冷動作の終了時点(tn)において、第3目標温度(Fn)に到達する。本実施形態の予冷動作は、予冷動作の終了時点(tn)において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる動作である。
予冷動作に続いて、予備冷房運転における通常動作が、第2実行時間(t2)にわたって行われる。通常動作では、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低いので、空気調和装置(20)の冷房能力が予冷動作よりも低下する。図11に示す例では、予冷動作の終了時点(tn)には第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低くなっているので、通常動作を行う空気調和装置(20)は、空気冷却動作を休止した状態(いわゆる、サーモオフ状態)になる。
通常動作の間、第1温度(F)はわずかに上昇し、第2温度(T)は相対的に大幅に上昇する。第1温度(F)は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第1目標温度(Fs)に到達する。第2温度(T)は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第2目標温度(Ts)に到達する。このように、本実施形態の通常動作は、予備冷房運転の終了時点(tg)において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させ、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に収束させる動作である。
−実施形態3の効果(1)−
本実施形態の携帯端末によって構成される制御装置(70)は、上記温度調節運転において、上記第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させる第1動作と、上記第1温度(F)を上記第1目標温度(Fs)に収束させ、上記第2温度(T)を上記第2目標温度(Ts)に収束させる第2動作とを順に上記空気調和装置(20)に実行させる。
本実施形態によれば、第1動作である予熱動作または予冷動作において、第1温度(F)を第3目標温度(Fn)に収束させることができる。また、本実施形態によれば、第2動作である通常動作において、第1温度(F)を第1目標温度(Fs)に収束させることができると共に、第2温度(T)を第2目標温度(Ts)に、それぞれ収束させることができる。
−実施形態3の効果(2)−
本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を暖房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも低い値に設定する。その結果、床(101)の温度である第1温度(F)が高くなり過ぎるのを回避でき、在室者の快適性を向上させることができる。
また、本実施形態の制御装置(70)は、上記空気調和装置(20)が上記対象空間(100)を冷房するときの上記温度調節運転において、上記第1目標温度(Fs)を上記第2目標温度(Ts)よりも高い値に設定する。その結果、床(101)の温度である第1温度(F)が低くなり過ぎるのを回避でき、在室者の快適性を向上させることができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
−第1変形例−
各上記実施形態では、携帯端末(70)が制御装置を構成しているが、制御装置の構成要素は任意に選択されてもよい。例えば、携帯端末(70)と空気調和装置(20)の制御部(50)とが制御装置を構成していてもよいし、携帯端末(70)および制御部(50)と通信可能なサーバ(図示せず)が制御装置を構成していてもよいし、携帯端末(70)、制御部(50)、およびサーバのうち任意の要素が制御装置を構成していてもよい。
−第2変形例−
各上記実施形態において、制御装置を構成するコンピュータは、携帯端末(70)に限定されない。この明細書において、「コンピュータ」は、「計算の手順(アルゴリズム))を記述したプログラムを記憶し、記憶するプログラムに従って計算を自動的に実行する機械」を指す。従って、各上記実施形態の制御装置は、例えば、タブレットPC、サーバー、空気調和装置(20)のリモコン等によって構成されてもよい。
−第3変形例−
各上記実施形態において、携帯端末(70)は、予備暖房運転の予熱動作において、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも高い所定値(例えば、第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃高い値)よりも高くなっても空気調和装置(20)の空気加熱動作を継続するように構成されてもよい。
−第4変形例−
各上記実施形態において、携帯端末(70)は、予備冷房運転の予冷動作において、第2温度(T)が第2目標温度(Ts)よりも低い所定値(例えば、第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃低い値)よりも低くなっても空気調和装置(20)の空気冷却動作を継続するように構成されてもよい。
−第5変形例−
各上記実施形態において、第1目標温度(Fs)は、ユーザーにより入力される設定値であってもよい。また、上記実施形態1又は2において、第1目標温度(Fs)は、第2目標温度(Ts)に基づいて決定される温度(例えば、暖房運転では第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃低い温度、冷房運転では第2目標温度(Ts)よりも2〜3℃高い温度)であってもよい。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、空気調和装置の制御装置、空調システム、空気調和装置の制御方法、およびプログラムについて有用である。
10 空調システム
20 空気調和装置
70 携帯端末(制御装置)
100 対象空間
101 床(仕切部)
F 第1温度
Fs 第1目標温度
T 第2温度
Ts 第2目標温度
Tout 外気温度
t1 第1実行時間
t2 第2実行時間
ttot 総実行時間