JP2021004168A - 結晶配向アパタイト及びその製造方法 - Google Patents

結晶配向アパタイト及びその製造方法 Download PDF

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功一郎 福田
Koichiro Fukuda
功一郎 福田
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Abstract

【課題】ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトの製造方法及びケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトを用いた酸化物イオン伝導体又は固体電解質を提供することである。【解決手段】ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトであり、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、不均一に分布していることを特徴とするケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト、又はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、不均一に分布していることを特徴とするケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトである。【選択図】図3

Description

本発明は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト、及びその製造方法に関する。さらには、このようなケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトを用いた酸化物イオン伝導体及び固体電解質に関する。
アパタイト型の結晶構造を有する希土類ケイ酸塩は、特許文献1および特許文献2において500〜700℃程度の中温度領域であっても比較的優れた酸化物イオン伝導性を示すことが報告されている。このようなアパタイト型化合物からなる酸化物イオン伝導体を固体酸化物形燃料電池の電解質とした場合、イットリア安定化ジルコニアやスカンジナドープドセリア、ランタンガレート系酸化物を電解質とする燃料電池に比べて運転温度を低温にすることができ、加熱に要するエネルギー等を省力化することができるという利点がある。
一方、アパタイト型化合物が有する酸化物イオン伝導特性は、特許文献3および非特許文献1において、ベルヌーイ法やチョコラルスキー法等にて作製された単結晶から、c軸に沿う平行方向に延在する箇所と、c軸に対して直交方向に延在する箇所から切り出した試料の酸化物イオン伝導度を比較すると、c軸に沿う平行方向に延在する箇所から切り出した試料の方が優れているという報告があり、酸化物イオン伝導度はc軸方向に沿う平行方向が高い。そのため、アパタイト型化合物が有する酸化物イオン伝導特性を最大限に発揮させるためには、c軸方向が揃った結晶配向アパタイトを作製して、この結晶配向アパタイトを酸化物イオン伝導体又は固体電解質として用いることが好ましい。
また、特許文献4及び非特許文献2には、高い酸化物イオン伝導度を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトの結晶配向アパタイトの製造方法として、LaSiOを主成分とする第1の層とLaSiを主成分とする第2の層とLaSiOを主成分とする第3の層を、第1の層/第2の層/第3の層の順に接合してなる接合体をアパタイト型の結晶構造を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトが生成する温度で加熱することによって、第1の層と第2の層の間及び第2の層と第3の層の間で元素拡散を生じさせ、元の接合界面に対してc軸が垂直方向に沿って配向しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを製造する方法が開示されている。この方法により、酸化物イオン伝導度が高いケイ酸ランタンオキシアパタイトの結晶配向アパタイトを得ることができる。
しかし、この特許文献4及び非特許文献2に開示された結晶配向アパタイトの製造方法では、加熱後に生成する積層構造のうち、最も中間に位置するケイ酸ランタンオキシアパタイト多結晶体の層以外の層を除去する必要があるため、クラックの無い高品質な結晶配向アパタイトを効率よく製造することが困難であるという問題があった。
このようなケイ酸ランタンオキシアパタイトの結晶配向アパタイトは、高い酸化物イオン伝導度を有することから、酸化物イオン伝導体又は固体電解質として有用であるが、クラックの無い高品質な結晶配向アパタイトを効率よく製造する方法の提示が望まれており、改良の余地が残されていた。
一方、特許文献5には、チタン酸ビスマス(BiTi12)からなる板状テンプレート粒子に、BiとNaCO、TiOからなるセラミックス粉末を所定の比率で混合し、この混合物を板状テンプレート粒子が配向するように成形して焼結する方法(以下、「テンプレート粒成長法」と言う場合がある)が開示されている。これによると、チタン酸ビスマスの板状結晶を用いることで、チタン酸ナトリウムビスマス(Bi0.5Na0.5TiO)の結晶方位が揃った配向多結晶体(結晶配向チタン酸ナトリウムビスマス)を容易に得ることができる。
また、特許文献6及び非特許文献3には、KFをフラックス(融剤)として用いることで、KOとFが固溶した六方晶系アパタイトの板状結晶粒子とその製造方法が開示されている。これによると、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子の化学組成は一般式[La8.964+1.426x0.850−0.035x]Σ9.914+1.391x[Si6−x]Σ6[O25.742+0.243x0.258−0.243x]Σ26(0≦x≦0.134)で表された。ただし、□はSi席の空孔を表す。作製した複数の結晶粒子から1個の結晶粒子を選び出して、その結晶構造を単結晶X線回折法で調べた結果、当該結晶粒子の化学式は [La9.110.85]Σ9.96[Si5.900.10]Σ6[O25.770.23]Σ26(x=0.10)であった。特許文献6及び非特許文献3に記載の板状結晶粒子は、(001)面が発達していることから、既述のテンプレート粒子として好適であった。
特許文献6によると、当該テンプレート粒子として好適なケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶は、熱処理温度の最高値が900℃又はそれ以下のフラックス法で作製することが開示されている。さらに、特許文献6によると、板状結晶は当該粒子の発達面の直径を厚みで割った値(直径/厚み:以下、「アスペクト比」と言う場合がある)が3以上であることを特徴とする。なお、発達面の直径とは、板状結晶粒子の発達面と同じ面積を有する円の直径のことである。
特開平8−208333号公報 特開平11−130595号公報 特開2004−244282号公報 国際公開第2012/015061号 特開平10−139552号公報 特願2018−126484
M. Higuchi, Y. Masubuchi, S. Nakayama, S. Kikkawa, K. Kodaira, Solid State Ionics, 174, 73-80 (2004). K. Fukuda, T. Asaka, R. Hamaguchi, T. Suzuki, H. Oka, A. Berghout, E. Bechade, O. Masson, I. Julien, E. Champion, and P. Thomas, Chem. Mater., 23, 5474-5483 (2011). K. Fukuda, Y. Tsunoda, D. Urushihara, T. Asaka, and H. Yoshida, J. Ceram. Soc. Jpn, 127, 143-149 (2019). T. Kinoshita, T. Iwata, E. Bechade, O. Masson, I. Julien, E. Champion, P. Thomas, H. Yoshida, N. Ishizawa, K. Fukuda, Solid State Ionics, 181, 1024-1032 (2010). S. Beaudet-Savignat, A. Vincent, S. Lambert, F. Gervais, J. Mater. Chem., 17, 2078-2087 (2007). K. Fukuda, R. Watanabe, M. Oyabu, R. Hasegawa, T. Asaka, and H. Yoshida, Cryst. Growth Des., 16, 4519-4525 (2016). P. J. Panteix, I. Julien, P. Abelard, D. Bernache-Assollant, J. Eur. Ceram. Soc., 28, 821-828 (2008). P. J. Panteix, I. Julien, P. Abelard, D. Bernache-Assollant, Mater. Res. Bull., 43, 1223-1231 (2008). A. L. Shaula, V. V. Kharton, F. M. B. Marques, J. Solid State Chem., 178, 2050-2061 (2005). J. E. H. Sansom, J. R. Tolchard, P. R. Slater, M. S. Islam, Solid State Ionics, 167, 17-22 (2004). A. L. Shaula, V. V. Kharton, J. C. Waerenborgh, D. P. Rojas, F. M. B. Marques, J. Eur. Ceram. Soc., 25, 2583-2586 (2005). J. McFarlane, S. Barth, M. Swaffer, J. E. H. Sansom, P. R. Slater, Ionics, 8, 149-154 (2002). J. E. H. Sansom, A. Najib, P. R. Slater, Solid State Ionics, 175, 353-355 (2004). A. Najib, J. E. H. Sansom, J. R. Tolchaed, M. S. Islam, P. R. Slater, Dalton Trans., 19, 3106-3109 (2004). T. Sakakura, M. Kamoshita, H. Iguchi, J. Wang, and N. Ishizawa, Acta Crystallogr., E66, i68 (2010). B. M. Wanklyn, F. R. Wondre, G. B. Ansell, W. Davison, J. Mat. Sci., 9, 2007-2014 (1974). F. Werner, and F. Kubel, Mater. Lett., 59, 3660-3665 (2005). M. Setoguchi, J. Cryst. Growth, 99, 879-884 (1990). J. Ito, Am. Mineral., 53, 890-907 (1968).
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト、及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、高い酸化物イオン伝導度を有する酸化物イオン伝導体及び固体電解質を提供することを目的とする。
La9.33+2xSi6−1.5x26(たたし、0≦x<0.333である。)で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトを作製する方法については、特に制限はなく、テンプレート粒成長法や反応性テンプレート粒成長法、磁場配向法などを用いて作製することができるが、量産性に優れ、低コストであるという観点から、テンプレート粒子を用いた方法が好ましい。
テンプレート粒子を用いた結晶配向アパタイトの作製には、少なくともケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子を作製する第1の工程と、 少なくともケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末を作製する第2の工程と、 少なくとも前記テンプレート粒子と前記セラミックス粉末とを所定の割合で混合し、その後ドクターブレード法又はカレンダー法等のシート成形法を用いて薄膜状の成形体を作製する第3の工程と、前記成形体を焼成することにより、前記テンプレート粒子を起点として前記セラミックス粉末を焼結させ、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が配向した薄膜状の多結晶体(すなわち結晶配向アパタイト)を作製する第4の工程を含むことを特徴とする。
また、前記第3の工程においては、個々のテンプレート粒子が成形体の中で凝集することなく単粒子の状態で均一に分散することが望ましい。
なお、前記の結晶配向アパタイトの製造方法は単なる例示であって、各工程を区別することなく連続した単一の工程とするなど、適宜変更することができる。
ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶は六方晶系に属する。そのため、本発明による結晶配向アパタイトは、これを構成する各結晶粒子のc軸が一方向に概ね揃っていることを特徴とする。以下、結晶配向アパタイトを構成するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする各結晶粒子のc軸が概ね揃っている方向を、「結晶配向アパタイトの配向方向」と言う場合がある。
テンプレート粒子の作製には、特に制限はなく、フラックス法や化学気相成長法、昇華法、水熱合成法、ゾルゲル法などを用いて作製することができるが、量産性に優れ、低コストであるという観点から、フラックス法が好ましい。フラックス法を用いて作製したテンプレート粒子には、そのフラックスを構成する1種類もしくは複数種類の構成元素が当該テンプレート粒子の結晶格子内に取り込まれることがある。
そのため、前記ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、前記第4の工程における結晶配向アパタイト中に不均一に分布する。
前記第1の工程におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子の作製には、ケイ酸塩結晶又は複合酸化物結晶を育成するために広く用いられているフラックスが適している。これらのフラックスには、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clから選択される1種類もしくは複数種類の元素が含まれる。
したがって、前記第1の工程におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子には、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clから選択される1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が含まれるという特徴がある。
さらに、前記第2の工程におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末には1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が含まれることを特徴とする。この1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素は、前記第4の工程における焼成過程でLa成分又はSiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に液相を生成し、この液相には前記の微量又は少量元素が比較的高濃度で含まれるという特徴がある。
上記の液相は、前記第4の工程における焼成過程でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒成長を促進することから、前記第4の工程でテンプレート粒子を起点としてセラミックス粉末を焼結させ、配向したセラミックス多結晶体を作製するために好適であるとの観点から特に有用である。
前記第4の工程における焼成過程でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒成長を促進する効果を有する液相には、多様な化学組成の液相が候補となるが、好ましくはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶と熱力学的平衡に共存する液相又はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶と概ね熱力学的平衡に共存する液相(以下、「共存液相」と言う場合がある)である。すなわち、前記の共存液相とケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶が概ね熱力学的平衡に共存する環境を比較的高い温度(1200℃以上)で達成できれば、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子はテンプレート粒子を起点として当該テンプレート粒子の結晶学的方位を保持しつつ粒成長することが期待できる。
また、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子はごく少量の液相共存下で比較的短時間に顕著な粒成長を起こす。さらに、前記の共存液相はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在し、冷却過程でガラス質又は結晶質の間隙相としてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界で固化する。
そのため、前記ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、前記第4の工程における結晶配向アパタイトを構成するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に不均一に分布する。
また、結晶配向アパタイトを構成するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相は、結晶配向アパタイトの粒界抵抗を増加させる原因となる。結晶配向アパタイトの粒界抵抗はできるだけ低いことが望ましいので、前記間隙相の存在割合はできるだけ小さいことが好ましい。
前記第4の工程において、前記の共存液相はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在するだけでなく、その一部はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の内部に固溶する。そのため、前記の共存液相を構成するLaとSi及びO以外の元素は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の内部に固溶することで前記結晶配向アパタイトの酸化物イオン伝導度が上昇する元素であることが望ましい。ケイ酸ランタンオキシアパタイトに固溶することで酸化物イオン伝導度を上昇させる元素は、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ga、Fe、Ge、Bから選択される1種類もしくは複数種類の元素である。
したがって、前記第2の工程におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末には、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ga、Fe、Ge、Bから選択される1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が含まれるという特徴がある。
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とし、第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素を含むセラミックス粉末を少なくとも原料として生成されたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトであって、前記結晶配向アパタイト中において前記第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素の分布状態が比較的高濃度で分布する領域である第1の個々の元素分布領域と、前記第1の個々の元素分布領域以外であり、かつ前記第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が比較的低濃度で分布する領域の形成により不均一であることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(2)前記原料がさらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とし、第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素を含むテンプレート粒子を含み、前記テンプレート粒子中に含まれる前記第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素の分布状態が比較的高濃度で分布する領域である第2の個々の元素分布領域と、前記第2の個々の元素分布領域以外であり、かつ前記第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が比較的低濃度で分布する領域の形成により不均一であることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(3)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、前記第2の個々の元素分布領域の最大面積の方が前記第1の個々の元素分布領域の最大面積より大きいことを特徴とする(2)に記載の結晶配向アパタイト。
(4)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、第1の個々の元素分布領域の面積が500μm以下であることを特徴とする(1)から(3)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイト。
(5)結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、第2の個々の元素分布領域の面積が10000μm以下であることを特徴とする(2)から(4)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイト。
(6)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、第1の個々の微量又は少量元素の分布領域の総面積の割合が8%以下であることを特徴とする(1)から(5)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイト。
(7)第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ga、Fe、GeおよびBからなる群から選択される元素であることを特徴とする(1)から(6)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイト。
(8)第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clからなる群から選択される元素であることを特徴とする(2)から(7)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイト。
(9)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともMgOが8.22モル%から16.66%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(10)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともBaOが2.59モル%から16.67モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(11)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともSrOが1.59モル%から6.02モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(12)請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともCaOが0.93モル%から6.78モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(13)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともAlが1.00モル%から7.44モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(14)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともGaが2.38モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(15)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともFeが2.39モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(16)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともGeOが4.93モル%から39.13モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(17)(1)から(8)までのいずれか1つに記載の結晶配向アパタイトに、少なくともBが2.39モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
(18)前記テンプレート粒子を作製する第1の工程と、 前記セラミックス粉末を作製する第2の工程と、 少なくとも前記テンプレート粒子と前記セラミックス粉末とを所定の割合で混合し、その後ドクターブレード法又はカレンダー法等のシート成形法を用いて成形体を作製する第3の工程と、前記成形体を焼成することにより、前記テンプレート粒子を起点として前記セラミックス粉末を焼結させ、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が配向した多結晶体を作製する第4の工程を含むことを特徴とする(2)に記載の結晶配向アパタイトの製造方法。
(19)前記セラミックス粉末を作製する第2の工程と、ドクターブレード法又はカレンダー法等のシート成形法を用いて成形体を作製する第3の工程と、前記成形体を焼成することにより、前記セラミックス粉末を焼結させ、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が配向した多結晶体を作製する第4の工程を含むことを特徴とする(1)に記載の結晶配向アパタイトの製造方法。
本発明によれば、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト及びその製造方法を提供すること、又はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、不均一に分布していることを特徴とするケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト及びその製造方法を提供すること、又はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、不均一に分布していることを特徴とするケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高い酸化物イオン伝導度を有する酸化物イオン伝導体及び固体電解質を提供することができる。
実験例1で得られたLaBaSi26の化学組成を有する焼結体の偏光顕微鏡写真である。(a)はアナライザーを取り除いてポーラライザーだけで観察し、(b)は直交ポーラーで観察した。図中の矢印は偏向板(A:アナライザー;P:ポーラライザー)の振動方向を表す。 実験例2で得られたLa:46.49モル%;SiO:51.12モル%;Al:2.39モル%の化学組成を有する焼結体の偏光顕微鏡写真である。(a)はアナライザーを取り除いてポーラライザーだけで観察し、(b)は直交ポーラーで観察した。図中の矢印は偏向板(A:アナライザー;P:ポーラライザー)の振動方向を表す。 実施例1で得られた3種類の円盤状結晶配向アパタイトについて、(a)SampleC−1−1、(b)SampleC−1−2、(c)SampleC−1−3を透過光の下で観察した写真である。 実施例1で得られた3種類の円盤状結晶配向アパタイトについて、(a)SampleC−1−1、(b)SampleC−1−2、(c)SampleC−1−3の試料表面から収集したX線回折パターンを示した図である。 実施例1で得られた3種類の円盤状結晶配向アパタイトについて、(a)SampleC−1−1、(b)SampleC−1−2、(c)SampleC−1−3の薄片を盤面に対して平行な方向(すなわち結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直な方向)から観察した偏光顕微鏡写真である。図中の矢印は偏向板(A:アナライザー;P:ポーラライザー)の振動方向を表す。 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)の反射電子組成像である。 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)中のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子について、電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)による元素分析の結果を示すグラフである。使用した分光結晶はLDE1L、TAP、PETJ、LIFである。 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)中のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相について、電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)による元素分析の結果を示すグラフである。使用した分光結晶はLDE1L、TAP、PETJ、LIFである。 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)の電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)による(a)K元素、(b)Mg元素、(c)La元素、(d)Si元素の二次元濃度分布図である。当該元素が高濃度の領域は輝度が高く、低濃度の領域は輝度が低い。 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)について、(a)K元素濃度分布図、及び(b)Mg元素濃度分布図の二値化画像である。当該元素の分布領域は黒、及びそれ以外の領域は白で表示してある。 実施例1で得られた(a)円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)及び比較例1で得られた(b)ランダム配向多結晶体(SampleD−1)の450℃から800℃の範囲における酸化物イオン伝導度を示すグラフである。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)を透過光の下で観察した写真である。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)について、試料表面から収集したX線回折パターンを示した図である。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)の薄片を偏光顕微鏡を用いて盤面に対して平行な方向(すなわち結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直な方向)から観察した微細組織である。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)の反射電子組成像である。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)の電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)による(a)K元素、(b)Ba元素、(c)La元素、(d)Si元素の二次元濃度分布図である。当該元素が高濃度の領域は輝度が高く、低濃度の領域は輝度が低い。 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)について、(a)K元素濃度分布図、及び(b)Ba元素濃度分布図の二値化画像である。当該元素の分布領域は黒、及びそれ以外の領域は白で表示してある。 実施例2で得られた(a)円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)及び比較例2で得られた(b)ランダム配向多結晶体(SampleD−2)の400℃から750℃の範囲における酸化物イオン伝導度を示すグラフである。 実施例3で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−3)を透過光の下で観察した写真である。 実施例3で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−3)について、試料表面から収集したX線回折パターンを示した図である。 実施例3で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−3)の薄片を偏光顕微鏡を用いて盤面に対して平行な方向(すなわち結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直な方向)から観察した微細組織である。 実施例3で得られた(a)円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−3)及び比較例3で得られた(b)ランダム配向多結晶体(SampleD−3)の400℃から750℃の範囲における酸化物イオン伝導度を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
<Mgが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献4にはLa−SiO−MgO系の1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子及びそれと共存する液相が報告されている。非特許文献4の試料S−Cの化学組成はLa:33.33モル%;SiO:50.00モル%;MgO:16.67モル%である。非特許文献4の図3(a)から、当該試料中のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子は200μm程度の大きさに成長していることから、前記第4の工程で結晶配向アパタイトを作製するために十分な量の共存液相が生成している。さらに、非特許文献4の図3(a)から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の存在割合と、それと共存する液相の存在割合を、それぞれが占める面積から算出すると、[結晶粒子の存在割合:共存液相の存在割合]=[91.5%:8.5%]であり、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に比較的多量の間隙相が残存している。
すなわち、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分が16.67モル%である場合には、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相が比較的多量に生成するので、前記テンプレート粒子を起点として前記セラミックス粉末を焼結させることで、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトを作製することが十分に可能である一方で、残存する間隙相の存在割合が大きくなるという問題がある。そのため、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分は16.67モル%よりも少ないことが好ましい。
また、非特許文献4にはLa−SiO−MgO系の1600℃において、少量の液相しか存在しない又は液相が存在しない条件下でのケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の作製について報告されている(非特許文献4の試料S−A)。当該ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の化学組成はLa:45.28モル%;SiO:46.51モル%;MgO:8.21モル%である。すなわち、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分が8.21モル%以下である場合には、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相が少量しか生成しない又は生成しないので、前記テンプレート粒子を起点として前記セラミックス粉末を焼結させ、結晶配向アパタイトを作製することが困難である。そのため、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分は8.21モル%よりも多いことが好ましい。
上記から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分は8.21モル%よりも多く、かつ16.67モル%よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるMgO成分は8.22モル%又はそれよりも多く、かつ16.66モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるMgO成分は8.22モル%から16.66モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Baが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献5にはケイ酸ランタンオキシアパタイトにBaO成分が固溶する場合の酸化物イオン伝導度の変化に関する報告がある。具体的には、化学式がLa8.5Ba1.5Si26.25、及びLaBaSi26.5で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、いずれも純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも酸化物イオン伝導度が高い。そのため、前記第2の工程におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる微量又は少量元素としてBa元素が有望である。
[実験例1]
本実験例では、LaBaSi26の化学組成を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体([La:Ba:Si:O]=[8:2:6:26]のモル比である。)の1600℃における粒成長について説明する。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と炭酸バリウム(BaCO)試薬、酸化ケイ素(SiO)試薬を、[La:BaCO:SiO]=[4.00:2.00:6.00]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を一軸加圧成型して、直径約19mm×高さ約10mmのペレット状の圧粉体を作製した。この圧粉体を10ccの白金坩堝に入れ、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で1時間保持し、さらに電気炉の電源をOFFにして室温に冷却した。得られた試料は緻密な焼結体であった。
上記試料の一部を粉砕し、粉末状試料を得た。X線粉末回折装置を用いて、当該粉末状試料から回折X線のプロフィル強度を測定した。得られたX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が主に観測された。すなわち、当該粉末状試料の大部分はBaOが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトであることが確かめられた。測定条件・使用機材は以下のとおりであった。
[測定条件・使用機材]
・X線粉末回折装置:スペクトリス(株)パナリティカル事業部製、X’Pert PRO Alpha-1
・入射X線:CuKα線(45kV×40mA)
前記の焼結体をダイヤモンドカッターで複数の小片に切り出した。その一つをダイヤモンドペーストを用いて断面を鏡面研磨して研磨片を作製した。上記研磨片の研磨面を、エポキシ樹脂を用いてスライドガラスに貼り付け、さらに余分な部分をダイヤモンドカッターを用いて切り取った後、SiC研磨ペーパーとダイヤモンドペーストで研磨して薄片を作製した。偏光顕微鏡を用いて微細組織を観察したところ、当該焼結体を構成する結晶粒子のうち、200μm程度の大きさに成長した結晶粒子が確認できた(図1)。使用機材は以下のとおりであった。
[使用機材]
・偏光顕微鏡:(株)ニコン製、OPTIPHOT-2
前記ダイヤモンドカッターで切り出した小片の一つを、ダイヤモンドペーストを用いて、その断面を鏡面研磨して研磨片を作製した。この研磨片の研磨面に対して、電子線照射による帯電を防ぐためにカーボン蒸着装置を用いてカーボン蒸着を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて化学組成を調べた。
前記の焼結体は、BaOが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの結晶粒子、及びその粒界に存在する比較的少量の間隙相から構成されていた。当該結晶粒子は、粒界に生成した液相によって、その結晶粒子が急速に成長したと考えられる。使用機材は以下のとおりであった。
[使用機材]
・カーボン蒸着装置:(株)真空デバイス製、VES-30T
・走査型電子顕微鏡(SEM):日本電子(株)製、JSM−6010LA
・エネルギー分散型X線分光器(EDS):日本電子(株)製、JED-2300
EDSにより求めた上記間隙相の化学組成は、La:12.7モル%;SiO:61.3モル%;BaO:26.0モル%であった。すなわち、BaO成分は主にSiO成分とともにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の間隙に焼成過程で共存液相を生成したこと、及び当該液相にはSiO成分とBaO成分が比較的高濃度で含まれることが確かめられた。
上記の微細組織の観察結果から、化学式がLaBaSi26で表される焼結体は、1600℃で結晶粒界に少量の共存液相を生成すること、及び1600℃の加熱過程で結晶粒子が急速に成長することが示された。この焼結体の化学組成はLa:33.33モル%;SiO:50.00モル%;BaO:16.67モル%である。
したがって、当該化学組成の焼結体は結晶粒界に適量の共存液相を生成することから、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるBaO成分は16.67モル%又はそれよりも少ないことが好ましい。
また、非特許文献5によると、化学式がLa8.5Ba1.5Si26.25、及びLaBaSi26.5で表される焼結体の酸化物イオン伝導度は、純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも高い。なお、前記La8.5Ba1.5Si26.25で表される焼結体の化学組成はLa:36.17モル%;SiO:51.06モル%;BaO:12.77モル%であり、前記LaBaSi26.5で表される焼結体の化学組成はLa:39.13モル%;SiO:52.17モル%;BaO:8.70モル%である。
さらに、非特許文献6によると、化学式がLa9.32Ba0.28Si5.8726で表される焼結体(化学組成はLa:43.11モル%;SiO:54.30モル%;BaO:2.59モル%である。)の酸化物イオン伝導度は、純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも高い。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるBaO成分は2.59モル%又はそれよりも多く、かつ8.70モル%から12.77モル%の範囲を含むことが好ましい。
上記から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるBaO成分は2.59モル%又はそれよりも多く、かつ8.70モル%から12.77モル%の範囲を含み、かつ16.67モル%又はそれよりも少ないことが好ましい。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるBaO成分は2.59モル%から16.67モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Srが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献7には化学式がLa8.88Sr0.67Si26、La9.00Sr0.50Si26、La9.11Sr0.33Si26、La9.22Sr0.17Si26で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度に関する報告がある。
化学式がLa8.88Sr0.67Si26、及びLa9.22Sr0.17Si26で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、いずれも純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)と比較して、酸化物イオン伝導度の向上が見られなかった。なお、前記La8.88Sr0.67Si26で表される焼結体の化学組成はLa:39.97モル%;SiO:54.00モル%;SrO:6.03モル%であり、前記La9.22Sr0.17Si26で表される焼結体の化学組成はLa:42.75モル%;SiO:55.67モル%;SrO:1.58モル%である。
一方、化学式がLa9.00Sr0.50Si26、及びLa9.11Sr0.33Si26で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、いずれも純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも酸化物イオン伝導度が高い。なお、前記La9.00Sr0.50Si26で表される焼結体の化学組成はLa:40.90モル%;SiO:54.55モル%;SrO:4.55モル%であり、前記La9.11Sr0.33Si26で表される焼結体の化学組成はLa:41.85モル%;SiO:55.12モル%;SrO:3.03モル%である。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるSrO成分は1.58モル%よりも多く、かつ3.03モル%から4.55モル%の範囲を含み、かつ6.03モル%よりも少ないことが好ましい。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるSrO成分は1.59モル%から6.02モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Caが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献8には化学式がLa9.23Ca0.10Si25.95、La9.08Ca0.25Si25.875、La8.83Ca0.50Si25.75、La8.58Ca0.75Si25.625で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度に関する報告がある。
化学式がLa8.58Ca0.75Si25.625で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)と比較して、酸化物イオン伝導度の向上が見られなかった。なお、前記La8.58Ca0.75Si25.625で表される焼結体の化学組成はLa:38.86モル%;SiO:54.35モル%;CaO:6.79モル%である。
一方、化学式がLa9.23Ca0.10Si25.95、及びLa9.08Ca0.25Si25.875、及びLa8.83Ca0.50Si25.75で表されるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、いずれも純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも酸化物イオン伝導度が高い。なお、前記La9.23Ca0.10Si25.95で表される焼結体の化学組成はLa:43.07モル%;SiO:56.00モル%;CaO:0.93モル%であり、前記La9.08Ca0.25Si25.875で表される焼結体の化学組成はLa:42.07モル%;SiO:55.61モル%;CaO:2.32モル%であり、前記La8.83Ca0.50Si25.75で表される焼結体の化学組成はLa:40.45モル%;SiO:54.97モル%;CaO:4.58モル%である。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるCaO成分は0.93モル%又はそれよりも多く、かつ2.32モル%から4.58モル%の範囲を含み、かつ6.79モル%よりも少ないことが好ましい。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるCaO成分は0.93モル%から6.78モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Alが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献9には、1650℃から1700℃の間の温度で10時間加熱して得られたAl成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の微細組織を、SEMで観察した結果の報告がある。具体的には、化学式がLa9.67Si5.5Al0.526.25(試料A)、La10Si5.5Al0.526.75(試料B)、La9.83Si4.5Al1.526(試料C)、La9.83Si5.5Al0.526.5(試料D)、La9.67Si4.5Al1.525.75(試料E)、La9.67SiAl26(試料F)で表される焼結体を、1650℃から1700℃の間の温度で10時間加熱したところ、試料Eを構成するそれぞれの結晶粒子が試料Aから試料Fの6種類の試料の中で最も大きく成長していた。一方、試料Aを構成するそれぞれの結晶粒子は試料Aから試料Fの6種類の試料の中で最も小さかった。
試料Aの化学組成はLa:45.68モル%;SiO:51.96モル%;Al:2.36モル%であり、試料Aから試料Fの6種類の試料の中で、試料B(化学組成はLa:46.51モル%;SiO:51.16モル%;Al:2.33モル%である。)と試料D(化学組成はLa:46.09モル%;SiO:51.57モル%;Al:2.34モル%である。)に次いでAl成分濃度が低かった。一方、試料Eの化学組成はLa:47.94モル%;SiO:44.62モル%;Al:7.44モル%であり、試料Aから試料Fの6種類の試料の中で最もAl成分濃度が高かった。
すなわち、試料Aでは1650℃から1700℃の間の温度で10時間加熱した過程で、Al成分が固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトと共存する液相の存在割合が、試料Aから試料Fの6種類の試料の中で最も少なかった又は共存液相が生成しなかったと考えられる。一方、試料Eでは1650℃から1700℃の間の温度で10時間加熱した過程で、Al成分が固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトと共存する液相が十分に生成し、その存在割合が試料Aから試料Fの6種類の試料の中で最も多かったと考えられる。
[実験例2]
本実験例では、上記試料AのAl成分濃度(2.36モル%)よりも僅かに高いAl成分濃度を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体(化学組成はLa:46.49モル%;SiO:51.12モル%;Al:2.39モル%である。)の1600℃における共存液相の生成量と粒成長について説明する。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と酸化ケイ素(SiO)試薬、酸化アルミニウム(Al)試薬を、[La:SiO:Al]=[4.857:5.340:0.250]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を一軸加圧成型して、直径約19mm×高さ約15mmのペレット状の圧粉体を作製した。この圧粉体を10ccの白金坩堝に入れ、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で1時間保持し、さらに電気炉の電源をOFFにして室温に冷却した。得られた試料は緻密な焼結体であった。
上記試料の一部を粉砕し、粉末状試料を得た。X線粉末回折装置を用いて、当該粉末状試料から回折X線のプロフィル強度を測定した。得られたX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が主に観測された。すなわち、当該粉末状試料は主にケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粉末から構成されていることが確かめられた。
前記の焼結体をダイヤモンドカッターで複数の小片に切り出した。その一つをダイヤモンドペーストを用いて断面を鏡面研磨して研磨片を作製した。上記研磨片の研磨面を、エポキシ樹脂を用いてスライドガラスに貼り付け、さらに余分な部分をダイヤモンドカッターを用いて切り取った後、SiC研磨ペーパーとダイヤモンドペーストで研磨して薄片を作製した。偏光顕微鏡を用いて微細組織を観察したところ、当該焼結体を構成する結晶粒子のうち、200μm程度の大きさに成長した結晶粒子が確認できた(図2)。
前記ダイヤモンドカッターで切り出した小片の一つを、ダイヤモンドペーストを用いて、その断面を鏡面研磨して研磨片を作製した。この研磨片の研磨面に対して、電子線照射による帯電を防ぐためにカーボン蒸着装置を用いてカーボン蒸着を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて化学組成を調べた。
前記の焼結体は、Alが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの結晶粒子、及びその粒界に存在する間隙相から構成されていた。当該結晶粒子は、粒界に生成した液相によって、その結晶粒子が急速に成長したと考えられる。
EDSにより求めた上記間隙相の化学組成は、La:26.4モル%;SiO:45.9モル%;Al:27.7モル%であった。すなわち、Al成分は焼成過程でLa成分又はSiO成分とともにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の間隙に液相を生成したこと、及び当該液相にはSiO成分とAl成分が比較的高濃度で含まれることが確かめられた。
上記の微細組織の観察結果から、化学組成がLa:46.49モル%;SiO:51.12モル%;Al:2.39モル%のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、1600℃で結晶粒界に適量の共存液相を生成すること、及び1600℃の加熱過程で結晶粒子が急速に成長することが確かめられた。
したがって、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるAl成分は2.36モル%よりも多く、かつ2.39モル%を含み、かつ7.44モル%又はそれよりも少ないことが好ましい。より好ましくは、Al成分は2.37モル%又はそれよりも多く、かつ7.44モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるAl成分は2.37モル%から7.44モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Gaが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献10には、Ga成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体(一般式はLa9.33+x/3Si6−xGa26である。)の500℃における酸化物イオン伝導度の報告がある。非特許文献10の表1と図3から、xの値が0.50から1.50までのケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体は、いずれも純粋なケイ酸ランタンオキシアパタイト(La9.33Si26)よりも酸化物イオン伝導度が高い。しかし、最もGa成分濃度の高い試料(x=1.75であり、化学組成はLa:50.00モル%;SiO:40.00モル%;Ga:10.00モル%である。)では逆に低下することが示された。
また、上記xの値がx=0.50の試料では化学組成はLa:45.24モル%;SiO:52.38モル%;Ga:2.38モル%であり、上記xの値がx=1.50の試料では化学組成はLa:48.35モル%;SiO:44.27モル%;Ga:7.38モル%である。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるGa成分は2.38モル%又はそれよりも多く、かつ7.38モル%を含み、かつ10.00モル%よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、Ga成分は2.38モル%又はそれよりも多く、かつ9.99モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるGa成分は2.38モル%から9.99モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Feが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献11と非特許文献12には、Fe成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の800℃における酸化物イオン伝導度の報告がある。非特許文献11と非特許文献12に記載されたすべてのFe成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のFe成分濃度は、2.38モル%から10.00モル%の範囲であった。
また、Fe成分濃度が2.38モル%のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は800℃で6.5×10−4Scm−1であり、Fe成分濃度が10.00モル%のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は800℃で4.8×10−4Scm−1であった。
一方、非特許文献11と非特許文献12に記載されたFe成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のうち、Fe成分濃度が4.76モル%から7.32モル%の範囲では、800℃における酸化物イオン伝導度の値は1.7×10−3Scm−1から2.3×10−2Scm−1の範囲であった。
すなわち、Fe成分濃度が4.76モル%から7.32モル%の範囲のFe成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度は、Fe成分濃度が2.38モル%及び10.00モル%のFe成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度よりも高かった。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるFe成分は2.38モル%よりも多く、かつ4.76モル%から7.32モル%の範囲を含み、かつ10.00モル%よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、Fe成分は2.39モル%又はそれよりも多く、かつ9.99モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるFe成分は2.39モル%から9.99モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Geが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献13には、GeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の800℃における酸化物イオン伝導度の報告がある。非特許文献13に記載されたすべてのGeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のGeO成分濃度は、4.92モル%から39.14モル%の範囲であった。GeO成分が4.92モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は800℃で1.0×10-2Scm−1であり、GeO成分が39.14モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は800℃で1.0×10−2Scm−1であった。一方、これら以外の非特許文献13に記載されたGeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体(これらのGeO成分濃度は、10.35モル%から30.62モル%の範囲である。)の800℃における酸化物イオン伝導度の値は、3.0×10−2Scm−1から6.0×10−2Scm−1であった。
すなわち、非特許文献13に記載されたGeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のうち、GeO成分濃度が10.35モル%から30.62モル%の範囲のGeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度は、GeO成分濃度が4.92モル%及び39.14モル%のGeO成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度よりも高かった。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるGeO成分は4.92モル%よりも多く、かつ10.35モル%から30.62モル%の範囲を含み、かつ39.14モル%よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、GeO成分は4.93モル%又はそれよりも多く、かつ39.13モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるGeO成分は4.93モル%から39.13モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<Bが不均一に分布しているケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイト>
非特許文献14には、B成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の500℃における酸化物イオン伝導度の報告がある。非特許文献14に記載されたすべてのB成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のB成分濃度は、2.38モル%から10.00モル%の範囲であった。B成分が2.38モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は500℃で4.1×10-4Scm−1であり、B成分が4.76モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は500℃で1.1×10−3Scm−1であった。また、B成分が7.38モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は500℃で4.9×10−4Scm−1であり、B成分が10.00モル%含まれたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度の値は500℃で5.5×10−7Scm−1であった。
すなわち、非特許文献14に記載されたB成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体のうち、B成分濃度が4.76モル%から7.38モル%の範囲のB成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度は、B成分濃度が2.38モル%及び10.00モル%のB成分を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする焼結体の酸化物イオン伝導度よりも高かった。
したがって、酸化物イオン伝導度の観点から、前記第4の工程で得られる結晶配向アパタイト中に含まれるB成分は2.38モル%よりも多く、かつ4.76モル%から7.38モル%の範囲を含み、かつ10.00モル%よりも少ないことが好ましい。より好ましくは、B成分は2.39モル%又はそれよりも多く、かつ9.99モル%又はそれよりも少ないことである。したがって、前記第4の工程で作製される結晶配向アパタイトに含まれるB成分は2.39モル%から9.99モル%であることを特徴とすることが確かめられた。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子>
本発明の結晶配向アパタイトはテンプレート粒子を用いた方法によって作製されることから、その製造工程でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子を用いる。そのため、当該結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が不均一に分布していることを特徴とする。以下、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素のことを「T元素群」と言う場合がある。
T元素群を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトをテンプレート粒子として用いる場合には、本発明の結晶配向アパタイト中にT元素群が不均一に分布する。さらに、T元素群を含まないケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末を用いる場合には、当該結晶配向アパタイト中で不均一に分布するT元素群は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれていたT元素群に由来する。したがって、当該T元素群の分布領域は前記のテンプレート粒子が存在していた領域に相当する。
前記第1の工程で作製するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子は、その発達面の直径が概ね45μmから125μmの範囲であり、かつ厚みが概ね2μmから40μmの範囲である。
前記第3の工程では、シート成形法を用いて成形体を作製するので、上記の板状テンプレート粒子は、その発達面がシート状成形体の盤面に対して平行に配置される(言い換えると、板状テンプレート粒子は、その発達面が結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直である)。したがって、当該シート状成形体の盤面に垂直な断面を作製してその断面上の微細組織を観察すると、当該板状テンプレート粒子の発達面に垂直な断面が観察される。上記のサイズ分布を有する板状テンプレート粒子の場合、最大面積を示す断面は、厚みが40μmであり、かつ発達面の直径が125μmの板状テンプレート粒子において観察され、その最大断面積は5000μm(=125μm×40μm)である。
より詳細に考察すると、本発明の結晶配向アパタイトは、上記のシート状成形体を焼成することによりテンプレート粒子を起点としてセラミックス粉末を焼結させることで得られるので、T元素群は焼成過程で起こる元素拡散により、その分布領域はテンプレート粒子が存在していた領域よりも広がることになる。したがって、当該結晶配向アパタイト中にT元素群が不均一に分布する個々の領域(以下、「T元素群分布領域」という場合がある。)の最大面積は、上記の最大断面積である5000μmよりも広くなる。
さらに、前記シート状成形体の盤面と前記板状テンプレート粒子の発達面は平行であることが望ましいが、これらが実際には斜めになって交差する場合がある。この場合は、上記板状テンプレート粒子の断面積が増加し、結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、T元素群分布領域の最大断面積は前記の断面積よりも増加することがある。
したがって、前記のシート状成形体を構成する板状テンプレート粒子のサイズ分布から前記の最大断面積を求め、その概ね2倍の面積がT元素群分布領域の最大断面積であると考えれば良い。すなわち、当該最大断面積が5000μmであれば、本発明の結晶配向アパタイト中に不均一に分布するT元素群の個々の分布領域は、結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、10000μm以下の範囲である。
既述のとおり、本発明の結晶配向アパタイトは、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が不均一に分布している。さらに、当該結晶配向アパタイトは、結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、T元素群の個々の分布領域が10000μm以下であることを特徴とする。
なお、シート成形法に使用する板状テンプレート粒子のサイズ(発達面の直径又は粒子の厚み)の増減に応じて上記のT元素群分布領域の断面積が増減することは言うまでもない。
また、前記第1の工程ではケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子を作製する。非特許文献3では熱処理温度の最高値が900℃又はそれ以下のフラックス法を用いることで、KOとFが固溶した六方晶ケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を作製できることが報告されている。当該板状結晶粒子は、(001)面が発達した板状粒子であり、かつアスペクト比が3以上であることから、既述のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に好適である。
一方、非特許文献15から非特許文献19には、六方晶系の希土類ケイ酸塩オキシアパタイトの柱状又は厚板状の結晶粒子をフラックス法で育成した報告がある。これらの柱状結晶はc軸方向に伸長しており結晶配向アパタイトのテンプレート粒子には不適格である。さらにこれらの厚板状結晶粒子はアスペクト比が3よりも小さいことから結晶配向アパタイトのテンプレート粒子には不適格である。
表1は非特許文献15から非特許文献19に記載された実験結果のうち、育成されたアパタイト結晶の化学式、加熱工程における熱処理温度の最高値、使用したフラックス、育成された結晶の形態をまとめたものである。

希土類ケイ酸塩オキシアパタイトのフラックス法を用いた結晶育成実験の育成条件と結晶形態
表1に記載された希土類ケイ酸塩オキシアパタイトのフラックス法を用いた結晶育成実験では、加熱温度の最高値が900℃よりも高かった。そのため、育成された結晶の形態は柱状又は厚板状となり、前記テンプレート粒子には不適格であった。
したがって、表1に記載のフラックス又は表1に記載のフラックスと類似の性質を有するフラックス又はこれらのフラックスから選択される複数種類のフラックスの混合物を用い、かつ900℃又はそれ以下の最高温度で熱処理することで、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶の育成が可能である。
上記のフラックス及びフラックスの混合物について、それらの候補となる化合物又は混合物を列挙すると、次のとおりである。
LiF、NaF、KF、RbF、BiF、MgF、CaF、SrF、BaF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、MgClc、CaCl、SrCl、BaCl、LiCO、NaCO、KCO、RbCO、MgCO、CaCO、SrCO、BaCO、LiSO、NaSO、KSO、RbSO、LiNaSO、LiKSO、LiRbSO、NaKSO、NaRbSO、KRbSO、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Ba(NO、MoO、WO、B、Bi、V、Nb、Ta、LiO、NaO、KO、RbO、P、GeO、CuO、Li、Na、K、Rb、LiBO、NaBO、KBO、RbBO、MgB、CaB、SrB、BaB、CoB、MnB、LiVO、NaVO、KVO、RbVO、LiV、NaV、KV、RbV、LiPO、NaPO、KPO、RbPO、LiFeO、NaFeO、KFeO、RbFeO、LiSiO、NaSiO、KSiO、RbSiO、LiFeO、NaFeO、KFeO、RbFeO、LiS、NaS、KS、RbS、MgS、CaS、SrS、BaS、LiCr、NaCr、KCr、RbCr、LiO-MoO系の化合物又は混合物、NaO-MoO系の化合物又は混合物、KO-MoO系の化合物又は混合物、RbO-MoO系の化合物又は混合物、LiO-WO系の化合物又は混合物、NaO-WO系の化合物又は混合物、KO-WO系の化合物又は混合物、RbO-WO系の化合物又は混合物、LiO-B系の化合物又は混合物、NaO-B系の化合物又は混合物、KO-B系の化合物又は混合物、RbO-B系の化合物又は混合物、LiO-TiO系の化合物又は混合物、NaO-TiO系の化合物又は混合物、KO-TiO系の化合物又は混合物、RbO-TiO系の化合物又は混合物。
これらの化合物又は混合物は、ケイ酸塩結晶又は複合酸化物結晶を育成するためのフラックスとして広く用いられていることから、当該化合物又は当該混合物はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶の育成にも当然適用できる。
上記の化合物又は混合物から選択される1種類もしくは複数種類のフラックスを用いてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子を900℃又はそれ以下の最高温度で熱処理することで作製すると、当該テンプレート粒子にはLi、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clから選択される1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が含まれる。
したがって、本発明におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素(T元素群)として、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clから選択される1種類もしくは複数種類の元素がある。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末>
本発明の結晶配向アパタイトはテンプレート粒子を用いた方法によって作製されることから、その製造工程でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末を用いる。以下、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素のことを「Q元素群」と言う場合がある。
Q元素群を含むケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末を用いる場合には、本発明の結晶配向アパタイト中にQ元素群が不均一に分布する。さらに、Q元素群を含まないケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子を用いる場合には、当該結晶配向アパタイト中で不均一に分布するQ元素群は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれていたQ元素群に由来する。また、当該Q元素群はLa成分又はSiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に液相を生成する場合がある。
より詳細に考察すると、本発明の結晶配向アパタイトは、成形体を焼成することによりテンプレート粒子を起点としてセラミックス粉末を焼結させることで得られるので、当該Q元素群は焼成過程でケイ酸ランタンを主成分とするアパタイト結晶内に一部固溶する。ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶内に固溶しなかったQ元素群は、La成分又はSiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に共存液相を生成する場合がある。この共存液相はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在し、冷却過程でガラス質又は結晶質の間隙相としてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界で固化することで、結晶配向アパタイトの粒界抵抗を増加させる原因となる。イオン伝導度の観点から結晶配向アパタイトの粒界抵抗はできるだけ低いことが望ましいので、前記間隙相の存在割合はできるだけ小さいことが好ましい。
したがって、本発明の結晶配向アパタイトの任意の断面(この面積をAとする)において、その断面上に不均一に分布する全ての間隙相が占める総面積(この総面積をSとする)の割合(={S/A}×100%)は8%以下である。
また、本発明の結晶配向アパタイト中では前記の間隙相は不均一に分布するが、イオン伝導度の観点から、当該間隙相が一箇所に凝集すること無く、できるだけ広く分散することが好ましい。したがって、本発明の結晶配向アパタイトは、その任意の断面上において個々の間隙相が500μm以下の断面積を占める。
既述のとおり、当該間隙相にはQ元素群が比較的高い濃度で含まれる。したがって、本発明の結晶配向アパタイトは、Q元素群が不均一に分布する個々の領域(以下、「Q元素群分布領域」という場合がある。)が、当該結晶配向アパタイトの任意の断面上において500μm以下であることを特徴とする。
さらに、本発明の結晶配向アパタイトは、その任意の断面上においてQ元素群分布領域が占める総面積の割合が8%以下であることを特徴とする。
既述のとおり、本発明の結晶配向アパタイトにはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれるT元素群が不均一に分布する領域があり、かつケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれるQ元素群が不均一に分布する領域がある。本発明の結晶配向アパタイトはT元素群分布領域の最大面積の方がQ元素群分布領域の最大面積よりも大きいことを特徴とする。
既述のとおり、本発明におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素(Q元素群)として、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ga、Fe、Ge、Bから選択される1種類もしくは複数種類の元素がある。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:33.33モル%;SiO:50.00モル%;MgO:16.67モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイト及びその製造方法について説明する。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子の調製>
非特許文献3に記載の合成方法に従ってKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を作製した。ただし、非特許文献3に記載の合成方法ではKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子以外に、KLaF(SiOの柱状結晶粒子が得られるので、この柱状粒子を取り除いた試料を本実施例のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子として用いた。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と酸化ケイ素(SiO)試薬、フッ化カリウム(KF)試薬を、[La:SiO:KF]=[1.00:1.29:42.64]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を10ccの白金坩堝に入れ、電気炉中にて900℃で72時間加熱し、その後800℃まで1K/hの速度で冷却し、800℃で電気炉の電源をOFFにして室温に冷却した。試料を坩堝ごと取り出し、KF成分に富む固化物を蒸留水で洗い流すことで、残存物を得た(SampleA)。
上記のSampleAには、非特許文献3に記載のとおり、KOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子に加えて、KLaF(SiOの柱状結晶粒子が共存していた。当該柱状結晶粒子は当該板状結晶粒子と比較して、概ね粒子サイズが小さいことから、前者は篩を用いて分離した。すなわち、SampleAを目開き125μmの篩にかけて透過物を収集し、この透過物をさらに目開き45μmの篩にかけて当該篩上に残存したKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を得た(SampleA−1)。
CuKα線(45kV×40mA)を入射光とするX線粉末回折装置を用いて、SampleA−1から回折X線のプロフィル強度を測定した。10.0°から70.0°の2θ範囲におけるX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が観測された。すなわち、生成物はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子であることが確かめられた。さらに、上記のX線粉末回折パターンでケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射のうち、回折面指数が002および004の反射が顕著に観測されることから、当該ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする六方晶系の結晶粒子は(001)面の発達した板状であることが確かめられた。
また、SampleA−1を構成する板状結晶粒子の化学組成を、電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)を用いて調べたところ、主要な構成元素としてLa、Si、Oを検出し、微量元素としてKとFを検出した。すなわち、前記SampleA−1を構成する板状結晶粒子には、微量のKOとFが固溶することを元素分析の結果から確認した。測定条件・使用機材は以下の通りであった。
[測定条件・使用機材]
・電子線プローブ微小部分析装置:日本電子(株)製、JXA−8230
・分光結晶:全元素分析にはLDE1L、TAP、PETJ、LIF
・分光結晶:フッ素の検出:TAPL
・加速電圧:15kV、プローブ電流:200nA、プローブ径:15μm
さらに、SampleA−1を構成する板状結晶粒子の外形を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ランダムに選択した20個の板状結晶粒子のアスペクト比を求めたところ、各粒子のアスペクト比は全て3以上であった(厚み:2μmから40μm)。したがって、テンプレート粒子に好適な結晶外形を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子が調製できたことを確認した。
非特許文献3には、前記のKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子の化学組成が報告されている。これによると、当該板状結晶粒子の化学組成は一般式[La8.964+1.426x0.850−0.035x]Σ9.914+1.391x[Si6−x]Σ6[O25.742+0.243x0.258−0.243x]Σ26で表され、xの範囲は0≦x≦0.134であった。ただし、□はSi席の空孔を表す。xの平均値は0.067なので、当該板状結晶粒子の平均の化学組成に相当する化学式は[La9.0600.848]Σ9.907[Si5.9330.067]Σ6[O25.7580.242]Σ26(x=0.067)である。この化学式から当該板状結晶粒子の平均の化学組成はLa:40.70モル%;KO:3.81モル%;SiO:53.31モル%;F:2.17モル%である。
SampleA−1を構成する板状結晶粒子は、非特許文献3に記載の合成方法に従って作製したので、その化学組成は一般式[La8.964+1.426x0.850−0.035x]Σ9.914+1.391x[Si6−x]Σ6[O25.742+0.243x0.258−0.243x]Σ26で表され、xの範囲は0≦x≦0.134である。したがって、SampleA−1を構成する板状結晶粒子の平均の化学組成はLa:40.70モル%;KO:3.81モル%;SiO:53.31モル%;F:2.17モル%である。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末の調製>
化学組成がLa:33.33モル%;SiO:50.00モル%;MgO:16.67モル%の粉末試料を作製し、これを本実施例のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として用いた。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と酸化ケイ素(SiO)試薬、酸化マグネシウム(MgO)試薬を、[La:SiO:MgO]=[2.00:3.00:1.00]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を直径約19mm×高さ約5mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1200℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1200℃で1時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。得られた試料を粉砕・混合し、さらにこの粉末試料を直径約19mm×高さ約5mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで2時間かけて昇温し、引き続き1600℃で10時間保持し、さらに室温まで10時間かけて冷却した。得られた試料を粉砕してセラミックス粉末を得た(SampleB−1)。
SampleB−1は、非特許文献4に記載の試料S−Cと同一の化学組成を有しており、かつ最高加熱温度も同一である。したがって、SampleB−1には1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相が生成したと考えられる。
CuKα線(45kV×40mA)を入射光とするX線粉末回折装置を用いて、上記の粉末試料(SampleB−1)から回折X線のプロフィル強度を測定した。10.0°から70.0°の2θ範囲におけるX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が主に観測された。すなわち、生成物はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする粉末試料であったことから、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末が調製できたことを確認した。
<結晶配向アパタイトの作製>
SampleA−1とSampleB−1を[SampleA−1:SampleB−1]=[16.7:83.3]、[37.5:62.5]、[50.0:50.0]の重量%で秤量・混合して3種類の粉末状混合物を得た。それぞれの粉末状混合物に対して、15.0重量%のポリビニルアルコールと水を主成分とする市販の液状糊(商品名: アラビックヤマト、ヤマト株式会社製)を外割で添加した(表2)。さらに適量の水を加えた後に、これらをガラス棒で攪拌・混合して3種類のスラリー状試料を得た(Slurry−1−1、Slurry−1−2、Slurry−1−3)。

3種類のスラリー状試料の調整
上記のスラリー状試料を隙間が500μmのフィルムアプリケーターでシート状に成形し、室温で約2時間乾燥した後、革パンチを用いて型抜きして直径約18mmの円盤状シートを作製した。さらに、2枚の円盤状シートを重ね合わせて円盤状成形体を作製した。この成形体を電気炉中で室温から500℃まで16時間かけて昇温し、500℃で2時間保持し、さらに1600℃まで5時間かけて昇温し、1600℃で50時間焼成した後、室温まで2時間かけて冷却して3種類の円盤状結晶配向アパタイトの薄膜を得た(SampleC−1−1、SampleC−1−2、SampleC−1−3)。使用機材は以下のとおりであった。
[使用機材]
・フィルムアプリケーター:オールグッド(株)製、4面式フィルムアプリケーター
得られた円盤状結晶配向アパタイトの平均の化学組成を、SampleA−1とSampleB−1の混合割合から求めた(表3)。その結果、上記3種類の円盤状結晶配向アパタイトのMgO濃度は8.95モル%から14.21モル%の範囲であったので、当該3種類の結晶配向アパタイトに含まれるMgO成分はいずれも8.22モル%から16.66モル%の範囲内であることが確かめられた。

3種類の円盤状結晶配向アパタイトの化学組成(単位:モル%)
作製した3種類の円盤状結晶配向アパタイト(図3)の直径をノギスで測定したところ、約16.40mm(SampleC−1−1)、約17.80mm(SampleC−1−2)、約18.00mm(SampleC−1−3)であった。焼成前の上記円盤状成形体の直径は約18.00mmであったので、各円盤状結晶配向アパタイトの焼成後の収縮率は約8.9%(SampleC−1−1)、約1.1%(SampleC−1−2)、約0.0%(SampleC−1−3)であった。
非特許文献4によると、本実施例1で使用したケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末(SampleB−1)は、1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相が生成した。一方、本実施例1で使用したケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子(SampleA−1)は、室温から1600℃までの温度範囲において液相を生成しない。上記の3種類の円盤状結晶配向アパタイトのなかで、SampleC−1−1はSampleB−1の割合が最も多く、SampleC−1−2はSampleB−1の割合がSampleC−1−1の次に多く、SampleC−1−3はSampleB−1の割合が最も少ない。したがって、1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相の生成割合はSampleC−1−1が最も多く、SampleC−1−2はSampleC−1−1の次に多く、SampleC−1−3は最も少ない又は当該液相が生成しない。そのため、SampleC−1−1では液相存在下の焼結(以下、「液相焼結」と言う場合がある)が上記3種類の円盤状成形体のなかで最も顕著に起こり、焼成後の収縮率が最大になったと考えられる。一方、SampleC−1−3では、1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相の生成割合が比較的少なく又は当該液相が生成せず、液相焼結が効果的に進行せず、その結果試料がほとんど収縮しなかったと考えられる。
X線粉末回折装置を用いて上記3種類の円盤状結晶配向アパタイトの盤面からの回折X線のプロフィル強度を測定した(図4)。X線粉末回折パターンには回折面指数が002および004、006の反射が顕著に観測されることから、当該円盤状結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体のc軸が盤面に垂直な方向に沿って配向していることが確かめられた。
また、前記3種類の結晶配向アパタイトの配向度は、上記の回折X線のプロフィル強度に基づいて、非特許文献2に記載された方法でロットゲーリングの式から算出することができる。これらの配向度は0.56(SampleC−1−1)、0.37(SampleC−1−2)、0.27(SampleC−1−3)であり、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末(SampleB−1)に対するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子(SampleA−1)の存在割合が大きくなるに従い配向度が低下した。
前記の配向度は0.1以上であることが好ましい。より好ましい配向度は、0.45以上1.0未満の範囲である。
ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれるMgO成分は、焼成過程で主にSiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に液相を生成する。前述のとおり、1600℃においてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子と共存する液相の生成割合はSampleC−1−1が最も多く、SampleC−1−2はSampleC−1−1の次に多く、SampleC−1−3は最も少ない又は当該液相が生成しない。そのため、SampleC−1−1では液相焼結が上記3種類の円盤状成形体のなかで最も顕著に起こり、それに伴ってテンプレート粒子(SampleA−1)を起点としたセラミックス粉末(SampleB−1)の焼結が効果的に起こり、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が最も配向した結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)が生成したと考えられる。
上記3種類の円盤状結晶配向アパタイトの薄片を作製し、各結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上の微細組織を偏光顕微鏡を用いて観察した(図5)。全ての試料において、クラックの無い高品質な結晶配向アパタイトであることが確認できた。また、全ての試料において、盤面に対して直消光を示す比較的多数の柱状結晶粒子が観察された。ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶は光学的一軸性であり、その光軸は結晶軸のc軸と一致する。したがって、比較的多数の前記柱状結晶のc軸が、当該円盤状結晶配向アパタイトの盤面に垂直な方向に沿って配向していることが偏光顕微鏡観察からも確かめられた。また、SampleC−1−1では当該柱状結晶粒子が比較的大きく成長していることから、当該テンプレート粒子を起点として当該セラミックス粉末が焼結・粒成長を十分に起こしたと考えられる。
上記の薄片試料SampleC−1−1の表面に、電子線照射による帯電を防ぐ目的で、カーボン蒸着装置を用いてカーボン蒸着を施し、電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)を用いて反射電子組成像を得て、その組成像内の定性分析を行った。さらに、異なる三箇所のエリア(エリア1、エリア2、エリア3:カーボン蒸着を施した同一の表面でのエリア)からK元素、Mg元素、La元素、Si元素に関する二次元濃度分布データを収集した。これらの二次元濃度分布データから画像処理ソフトウェアを用いて、それぞれ200μm×150μmの範囲(ステップ間隔:1μm)の二次元濃度分布図を描画した。測定条件・使用機材は以下のとおりであった。
[測定条件・使用機材]
・電子線プローブ微小部分析装置:日本電子(株)製、JXA−8900L
・加速電圧:15kV、プローブ電流:120nA、プローブ径:約1μm、
・画像処理ソフトウェア:アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ
SampleC−1−1の反射電子組成像には、比較的輝度の高いケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子、及びその結晶粒界に比較的輝度の低い間隙相が観察された(図6)。これらの結晶粒子及び間隙相の定性分析の結果から、当該ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子からLa元素、Mg元素、Si元素、O元素、K元素が主に検出された(図7)。また、当該間隙相からMg元素、Si元素、O元素が主に検出された(図8)。
二次元濃度分布図から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子内におけるLa元素、Mg元素、Si元素は、いずれも比較的均一な濃度で分布する一方で、当該結晶粒子内におけるK元素の濃度分布は比較的不均一であることが確認できた(図9)。本実施例におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末にはKO成分が含まれていないので、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子内において不均一に分布するK元素は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれていたK元素に由来する。そのため、K元素が比較的高い濃度で分布する領域(以下、「K元素分布領域」という場合がある)は当該テンプレート粒子が存在していた場所に相当する。一方、例えば「K元素分布領域」に対してK元素の濃度が低い領域が、K元素が比較的低濃度で分布する領域となる。
本実施例で使用したケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子(SampleA−1)は、前述のとおり、目開き125μmの篩にかけて透過物を収集し、この透過物をさらに目開き45μmの篩にかけて当該篩上に残存した板状結晶粒子であった。したがって、当該板状結晶粒子のサイズは、その発達面の直径が概ね45μmから125μmの範囲(厚みは2μmから40μmの範囲であった。)であった。
K元素の二次元濃度分布図(図9(a))から、画像処理ソフトウェアを用いて個々のK元素分布領域の面積を求めた。先ずK元素分布領域が黒、及びそれ以外の領域が白になるように画像データを二値化した(図10(a))。次に、これらの黒い領域の面積を三箇所のエリア(エリア1、エリア2、エリア3)から求めたところ、それらの値はいずれも30μmから4,873μmの範囲内であった(表4)。すなわち、本実施例の全ての分析領域におけるK元素分布領域は30μm以上、かつ4,873μm以下であった。したがって、本実施例におけるK元素分布領域は10,000μm以下であることが確認できた。

表4中の面積は個々のK元素分布領域の面積を示す。
既述の本実施例によって、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれるK元素が本発明による結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、及び当該K元素分布領域が10,000μm以下であったことが確かめられた。
また、前記の二次元濃度分布図から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相について、Mg元素とSi元素の濃度が比較的高いことが確認できた(図9)。本実施例におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子にはMgO成分が含まれないので、当該結晶配向アパタイト中に不均一に分布するMg元素は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれていたMg元素に由来する。そのため、Mg元素が比較的高い濃度で分布する領域(以下、「Mg元素分布領域」という場合がある)及び、Si元素が比較的高い濃度で分布する領域(以下、「Si元素分布領域」という場合がある)は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に生成した共存液相が存在した場所に相当する。一方、例えば「Mg元素分布領域」に対してMg元素の濃度が低い領域が、Mg元素が比較的低濃度で分布する領域となる。
より詳細に考察すると、本実施例の結晶配向アパタイトは、成形体を焼成することによりテンプレート粒子を起点としてセラミックス粉末を焼結させることで得られたので、当該MgO成分は焼成過程でケイ酸ランタンを主成分とするアパタイト結晶内に一部固溶したと考えられる。また、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶内に固溶しなかったMgO成分は、SiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に共存液相を生成したと考えられる。この共存液相はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在し、冷却過程でガラス質又は結晶質の間隙相としてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界で固化したと考えられる。したがって、当該結晶配向アパタイトの結晶粒子の粒界に不均一に分布するMg元素分布領域又はSi元素分布領域は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に生成した共存液相が存在した場所に相当する。
Mg元素の二次元濃度分布図(図9(b))から、画像処理ソフトウェアを用いて個々のMg元素分布領域の面積を求めた。先ずMg元素分布領域が黒、及びそれ以外の領域が白になるように画像データを二値化した(図10(b))。次に、これらの黒い領域の面積を三箇所のエリア(エリア1、エリア2、エリア3)から求めたところ、それらの値はいずれも1μmから386μmの範囲内であった(表5)。すなわち、本実施例の分析領域におけるMg元素分布領域は1μm以上、かつ386μm以下であった。したがって、本実施例におけるMg元素分布領域は500μm以下であることが確認できた。


表5中の面積は個々のMg元素分布領域の面積を示す。
既述の本実施例によって、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれるMg元素が本発明による結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、及び当該Mg元素分布領域が500μm以下であったことが確かめられた。
また、三箇所のエリア(エリア1、エリア2、エリア3)におけるMg元素分布領域の総面積は3,767μm(=944μm+940μm+1,883μm)であった。当該エリアの面積は90,000μm(=3×200μm×150μm)なので、この面積に対するMg元素分布領域の総面積の割合は4.19%であった。また、各エリアにおけるMg元素分布領域の総面積の割合は、3.15%(エリア1)、3.13%(エリア2)、6.28%(エリア3)であった。したがって、本実施例におけるMg元素分布領域の総面積の割合は8%以下であることが確認できた。
円盤状結晶配向アパタイトのSampleC−1−1に対し、盤面をSiC研磨ペーパー(1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を用いて両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:3.49×10−2cm、電極の面積:0.132cm)。その後、450℃〜800℃の温度範囲においてインピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。測定条件・使用機材は以下のとおりであった。
[測定条件・使用機材]
・Ptスパッタ装置:日本電子(株)製、JFC−160
・インピーダンスアナライザ:日置電機(株)製、IM3570
・周波数:4Hz〜5MHz
・温度間隔:50℃
上記の測定データからナイキストプロットを描いてから各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
(数1)
σtotal=(1/Rtotal)×(d/S) (1)
ここで、dは試料の厚み(すなわち電極間の距離)、Sは電極の面積である。
SampleC−1−1におけるσtotal値は450℃の約6.76×10−7Scm−1から800℃の約9.86×10−4Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図11)。
本実施例によって得られた結晶配向アパタイトについて、下記の6項目が確かめられた。すなわち、
(1)ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれるK元素が、結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、
(2)ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれるMg元素が、結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、
(3)結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、個々のK元素分布領域が4,873μm以下であったこと、
(4)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、個々のMg元素分布領域が386μm以下であったこと、
(5)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、Mg元素分布領域が占める総面積の割合が4.19%であったこと、
(6)MgO成分が8.95モル%から14.21モル%含まれていたこと、である。
[比較例1]
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体の作製>
SampleC−1−1の比較試料として,SampleC−1−1と同一の平均化学組成を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体を作製した。
SampleA−1とSampleB−1を[SampleA−1:SampleB−1]=[16.7:83.3]の重量%で秤量・混合して粉末状混合物とし、さらに遊星型ボールミルを用いて粉砕・混合して粉末試料を得た。この粉末試料を直径約5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で50時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。この試料を再び粉砕・混合して粉末試料とし、当該粉末試料を直径約5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で2時間保持し、さらに室温まで5時間かけて冷却し、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体を作製した(SampleD−1)。
上記のSampleD−1の試料表面から、X線粉末回折装置を用いて回折X線のプロフィル強度を測定した。当該X線粉末回折パターンは、結晶粒子がランダムに配向したケイ酸ランタンオキシアパタイトのX線粉末回折パターンに酷似していた。すなわち、上記のSampleD−1を構成する結晶粒子は特定の方向に配向していないことから、当該多結晶体はランダム配向多結晶体であることが確かめられた。
SampleD−1に対し、この試料をダイヤモンドカッターで切断して円盤状(厚み約1.5mm)の試料を得た。さらにSiC研磨ペーパー(120、400、800、1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を使用し、両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:9.49×10−2cm、電極の面積:0.199cm)。その後、インピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。
上記の測定データからナイキストプロットを描いて各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
SampleD−1におけるσtotal値は450℃の約1.07×10−7Scm−1から800℃の約1.15×10−4Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図11)。
<本発明の結晶配向アパタイトとケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体との比較>
前記SampleC−1−1のσtotal値と上記SampleD−1のσtotal値を比較することで、450℃から800℃の温度範囲においてSampleC−1−1のσtotal値の方がSampleD−1のσtotal値よりも高いことが示された。
上記から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:33.33モル%;SiO:50.00モル%;MgO:16.67モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイトは、平均化学組成が同一のランダム配向多結晶体と比較して、酸化物イオン伝導度の向上が確認できた。
[実施例2]
本実施例では、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:33.96モル%;SiO:49.79モル%;BaO:16.25モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイト及びその製造方法について説明する。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子の調製>
前記の実施例1ではテンプレート粒子に好適な結晶外形を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子を作製した。本実施例では実施例1に記載の作製方法と同一の方法でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子を調整し、これをケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子として用いた(SampleA−2)。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末の調製>
化学組成がLa:33.96モル%;SiO:49.79モル%;BaO:16.25モル%の粉末試料を作製し、これを本実施例のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として用いた。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と酸化ケイ素(SiO)試薬、炭酸バリウム(BaCO)試薬を、[La:SiO:BaCO]=[2.000::2.932:0.957]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を直径約19mm×高さ約5mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で1時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。得られた試料を粉砕してセラミックス粉末を得た(SampleB−2)。
CuKα線(45kV×40mA)を入射光とするX線粉末回折装置を用いて、上記の粉末試料(SampleB−2)から回折X線のプロフィル強度を測定した。10.0°から70.0°の2θ範囲におけるX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が主に観測された。すなわち、生成物はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする粉末試料であったことから、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末が調製できたことを確認した。
<結晶配向アパタイトの作製>
SampleA−2とSampleB−2を[SampleA−2:SampleB−2]=[20.0:80.0]の重量%で秤量・混合して粉末状混合物を得た。この粉末状混合物に対して、15.0重量%のポリビニルアルコールと水を主成分とする市販の液状糊(商品名: アラビックヤマト、ヤマト株式会社製)を外割で添加し、さらに適量の水を加えた後に、これらをガラス棒で攪拌・混合してスラリー状試料を得た。
上記のスラリー状試料を隙間が600μmのフィルムアプリケーターでシート状に成形し,室温で約2時間乾燥した後、革パンチを用いて型抜きして直径約18mmの円盤状シートを作製した。さらに、2枚の円盤状シートを重ね合わせて円盤状成形体を作製した。この成形体を電気炉中で室温から500℃まで16時間かけて昇温し、500℃で2時間保持し、さらに1600℃まで5時間かけて昇温し、1600℃で50時間焼成した後、室温まで2時間かけて冷却して円盤状結晶配向アパタイトの薄膜(図12)を得た(SampleC−2)。
得られた円盤状結晶配向アパタイトの平均の化学組成を、SampleA−2とSampleB−2の混合割合から求めた。その結果、上記の円盤状結晶配向アパタイトの化学組成はLa:35.29モル%;KO:0.75モル%;SiO:50.48モル%;F:0.43モル%;BaO:13.05モル%であった。したがって、当該結晶配向アパタイトに含まれるBaO成分は2.59モル%から16.67モル%の範囲内であることが確かめられた。
SampleC−2の配向度は以下のようにして得た。X線粉末回折装置を用いて当該円盤状結晶配向アパタイトの盤面からの回折X線のプロフィル強度を測定した(図13)。X線粉末回折パターンには回折面指数が002および004、006の反射が顕著に観測されることから、作製した3種類の円盤状結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体のc軸が盤面に垂直な方向に沿って配向していることが確かめられた。
また、上記の回折X線のプロフィル強度に基づいて、配向度を非特許文献2に記載された方法でロットゲーリングの式から算出したところ、その配向度は0.45であった。
前記の配向度は0.1以上であることが好ましい。より好ましい配向度は、0.45以上1.0未満の範囲である。
SampleC−2の薄片を作製し、偏光顕微鏡を用いて盤面に対して平行な方向(すなわち結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直な方向)から微細組織を観察したところ、クラックの無い高品質な結晶配向アパタイトであることが確認できた。また、盤面に対して直消光を示す比較的多数の柱状結晶粒子が観察された(図14)。ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶は光学的一軸性であり、その光軸は結晶軸のc軸と一致する。したがって、比較的多数の柱状結晶が一斉に消光したことから、当該円盤状結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体のc軸が盤面に垂直な方向に沿って配向していることが偏光顕微鏡観察からも確かめられた。また、当該柱状結晶粒子が比較的大きく成長していることから、当該テンプレート粒子を起点として当該セラミックス粉末が焼結・粒成長を十分に起こしたと考えられる。
上記の薄片試料の表面に、電子線照射による帯電を防ぐ目的で、カーボン蒸着装置を用いてカーボン蒸着を施し、電子線プローブ微小部分析装置(EPMA)を用いて反射電子組成像、及びK元素、Ba元素、La元素、Si元素に関する二次元濃度分布データを収集した。この二次元濃度分布データから画像処理ソフトウェアを用いて250μm×300μmの範囲(ステップ間隔:1μm)の二次元濃度分布図を描画した。
SampleC−2の反射電子組成像には、比較的輝度の高いケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子、及びその結晶粒界に比較的輝度の低い間隙相が観察された(図15)。さらに、二次元濃度分布図から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子内におけるLa元素、Ba元素、Si元素は、いずれも比較的均一な濃度で分布する一方で、当該結晶粒子内でのK元素の濃度分布は比較的不均一であることが確認できた(図16)。本実施例におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末にはKO成分が含まれていないので、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子内において不均一に分布するK元素は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれていたK元素に由来する。そのため、K元素が比較的高い濃度で分布する領域(K元素分布領域)は当該テンプレート粒子が存在していた場所に相当する。
本実施例で使用したケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子(SampleA−2)は、前述のとおり、目開き125μmの篩にかけて透過物を収集し、この透過物をさらに目開き45μmの篩にかけて当該篩上に残存した板状結晶粒子であった。したがって、当該板状結晶粒子のサイズは、その発達面の直径が概ね45μmから125μmの範囲(厚みは2μmから40μmの範囲であった。)であった。
K元素の二次元濃度分布図(図16(a))から、画像処理ソフトウェアを用いて個々のK元素分布領域の面積を求めた。先ずK元素分布領域が黒、及びそれ以外の領域が白になるように画像データを二値化した(図17(a))。次に、これらの黒い領域の面積を個々に求めたところ、それらの値はいずれも2,089μmから6,312μmの範囲内であった(表6)。すなわち、本実施例の分析領域におけるK元素分布領域は2,089μm以上、かつ6,312μm以下であった。前記K元素分布領域のうち、最も大きな面積を有するK元素分布領域(図17(a)中、符号Cで示す。)は、そのK元素分布領域の全体が当該分析領域内に概ね収まっていた。したがって、本実施例におけるK元素分布領域は10,000μm以下であることが確認できた。

表6中の面積は個々のK元素分布領域の面積を示す。
既述の本実施例によって、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれるK元素が本発明による結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、及び当該K元素分布領域が10,000μm以下であったことが確かめられた。
また、前記の二次元濃度分布図から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相において、Ba元素とSi元素の濃度が比較的高いことが確認できた(図16)。本実施例におけるケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状テンプレート粒子にはBaO成分が含まれないので、結晶配向アパタイト中に不均一に分布するBa元素は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれていたBa元素に由来する。そのため、Ba元素が比較的高い濃度で分布する領域(以下、「Ba元素分布領域」という場合がある)及び、Si元素が比較的高い濃度で分布する領域(Si元素分布領域)は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に生成した共存液相が存在した場所に相当する。
より詳細に考察すると、本実施例の結晶配向アパタイトは、成形体を焼成することによりテンプレート粒子を起点としてセラミックス粉末を焼結させることで得られたので、当該BaO成分は焼成過程でケイ酸ランタンを主成分とするアパタイト結晶内に一部固溶したと考えられる。また、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶内に固溶しなかったBaO成分は、SiO成分とともに、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に共存液相を生成したと考えられる。この共存液相はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在し、冷却過程でガラス質又は結晶質の間隙相としてケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界で固化したと考えられる。したがって、当該結晶配向アパタイトの結晶粒子の粒界に不均一に分布するBa元素分布領域又はSi元素分布領域は、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に生成した共存液相が存在した場所に相当する。
Ba元素の二次元濃度分布図(図16(b))から、画像処理ソフトウェアを用いて個々のBa元素分布領域の面積を求めた。先ずBa元素分布領域が黒、及びそれ以外の領域が白になるように画像データを二値化した(図17(b))。次に、これらの黒い領域の面積を個々に求めたところ、それらの値はいずれも1μmから84μmの範囲内であった(表7)。すなわち、本実施例の分析領域におけるBa元素分布領域は1μm以上、かつ84μm以下であった。したがって、本実施例におけるBa元素分布領域は500μm以下であることが確認できた。

表7中の面積は個々のBa元素分布領域の面積を示す。
既述の本実施例によって、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれるBa元素が本発明による結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、及び当該Ba元素分布領域が500μm以下であったことが確かめられた。
また、Ba元素分布領域の総面積は658μmであった。当該二次元濃度分布図の面積は75,000μm(=250μm×300μm)なので、この面積に対するBa元素分布領域の総面積の割合は0.88%であった。したがって、本実施例におけるBa元素分布領域の総面積の割合は8%以下であることが確認できた。
円盤状結晶配向アパタイトのSampleC−2に対し、盤面をSiC研磨ペーパー(1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を用いて両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:4.00×10−2cm、電極の面積:0.146cm)。その後、400℃〜750℃の温度範囲においてインピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。
上記の測定データからナイキストプロットを描いてから各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
SampleC−2におけるσtotal値は400℃の約1.63×10−5Scm−1から750℃の約9.44×10−4Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図18)。
本実施例によって得られた結晶配向アパタイトについて、下記の6項目が確かめられた。すなわち、
(1)ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれていたK元素が、結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、
(2)ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれていたBa元素が、結晶配向アパタイト内で不均一に分布していたこと、
(3)結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、個々のK元素分布領域が6,312μm以下であったこと、
(4)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、個々のBa元素分布領域が84μm以下であったこと、
(5)結晶配向アパタイトの任意の断面上において、Ba元素分布領域が占める総面積の割合が0.88%であったこと、
(6)BaO成分が13.05モル%含まれていたこと、である。
[比較例2]
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体の作製>
SampleC−2の比較試料として,SampleC−2と同一の平均化学組成を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体を作製した。
SampleA−2とSampleB−2を[SampleA−2:SampleB−2]=[20.0:80.0]の重量%で秤量・混合して粉末状混合物を得た。この粉末状混合物を直径約5.5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で50時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。この試料を粉砕・混合して粉末試料を得た。さらに、当該粉末試料を直径約5.5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で2時間保持し、さらに室温まで5時間かけて冷却し、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体を作製した(SampleD−2)。
上記のSampleD−2の試料表面から、X線粉末回折装置を用いて回折X線のプロフィル強度を測定した。当該X線粉末回折パターンは、結晶粒子がランダムに配向したケイ酸ランタンオキシアパタイトのX線粉末回折パターンに酷似していた。すなわち、上記のSampleD−2を構成する結晶粒子は特定の方向に配向していないことから、当該多結晶体はランダム配向多結晶体であることが確かめられた。
SampleD−2に対し、この試料をダイヤモンドカッターで切断して円盤状(厚み約1.5mm)の試料を得た。さらにSiC研磨ペーパー(120、400、800、1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を使用し、両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:9.50×10−2cm、電極の面積:0.238cm)。その後、インピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。
上記の測定データからナイキストプロットを描いて各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
SampleD−2におけるσtotal値は400℃の約5.59×10−6Scm−1から750℃の約3.80×10−4Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図18)。
<本発明の結晶配向アパタイトとケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体との比較>
前記SampleC−2のσtotal値と上記SampleD−2のσtotal値を比較することで、400℃から750℃の温度範囲においてSampleC−2のσtotal値の方がSampleD−2のσtotal値よりも高いことが示された。
上記から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:33.96モル%;SiO:49.79モル%;BaO:16.25モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイトは、平均化学組成が同一のランダム配向多結晶体と比較して、酸化物イオン伝導度の向上が確認できた。
[実施例3]
本実施例では、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:46.49モル%;SiO:51.11モル%;Al:2.39モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイト及びその製造方法について説明する。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子の調製>
前記の実施例1ではテンプレート粒子に好適な結晶外形を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子を作製した。本実施例では実施例1に記載の作製方法と同一の方法でケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする板状結晶粒子を調整し、これをケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子として用いた(SampleA−3)。
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末の調製>
化学組成がLa:46.49モル%;SiO:51.11モル%;Al:2.39モル%の粉末試料を作製し、これを本実施例のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として用いた。
出発原料として酸化ランタン(La)試薬と酸化ケイ素(SiO)試薬、酸化アルミニウム(Al)試薬を、[La:SiO:Al]=[19.43:21.36:1.00]のモル比で秤量し、原料混合粉末を準備した。この原料混合粉末を直径約19mm×高さ約5mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で1時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。得られた試料を粉砕してセラミックス粉末を得た(SampleB−3)。
CuKα線(45kV×40mA)を入射光とするX線粉末回折装置を用いて、上記の粉末試料(SampleB−3)から回折X線のプロフィル強度を測定した。10.0°から70.0°の2θ範囲におけるX線粉末回折パターンには、ケイ酸ランタンオキシアパタイトに帰属される反射が主に観測された。すなわち、生成物はケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする粉末試料であったことから、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末が調製できたことを確認した。
<結晶配向アパタイトの作製>
SampleA−3とSampleB−3を[SampleA−3:SampleB−3]=[16.7:83.3]の重量%で秤量・混合して粉末状混合物を得た。この粉末状混合物に対して、15.0重量%のポリビニルアルコールと水を主成分とする市販の液状糊(商品名: アラビックヤマト、ヤマト株式会社製)を外割で添加し、さらに適量の水を加えた後に、これらをガラス棒で攪拌・混合してスラリー状試料を得た。
上記のスラリー状試料を隙間が600μmのフィルムアプリケーターでシート状に成形し,室温で約2時間乾燥した後、革パンチを用いて型抜きして直径約18mmの円盤状シートを作製した。さらに、2枚の円盤状シートを重ね合わせて円盤状成形体を作製した。この成形体を電気炉中で室温から500℃まで16時間かけて昇温し、500℃で2時間保持し、さらに1600℃まで5時間かけて昇温し、1600℃で50時間焼成した後、室温まで2時間かけて冷却して円盤状結晶配向アパタイトの薄膜(図19)を得た(SampleC−3)。
得られた円盤状結晶配向アパタイトの平均の化学組成を、SampleA−3とSampleB−3の混合割合から求めた。その結果、上記の円盤状結晶配向アパタイトの化学組成はLa:45.25モル%;KO:0.82モル%;SiO:51.59モル%;F:0.47モル%;Al:1.88モル%であった。したがって、当該結晶配向アパタイトに含まれるAl成分は1.00モル%から7.44モル%の範囲内であることが確かめられた。
SampleC−3の配向度は以下のようにして得た。X線粉末回折装置を用いて当該円盤状結晶配向アパタイトの盤面からの回折X線のプロフィル強度を測定した(図20)。X線粉末回折パターンには回折面指数が002および004、006の反射が顕著に観測されることから、作製した3種類の円盤状結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体のc軸が盤面に垂直な方向に沿って配向していることが確かめられた。
また、上記の回折X線のプロフィル強度に基づいて、配向度を非特許文献2に記載された方法でロットゲーリングの式から算出したところ、その配向度は0.45であった。
前記の配向度は0.1以上であることが好ましい。より好ましい配向度は、0.45以上1.0未満の範囲である。
SampleC−3の薄片を作製し、偏光顕微鏡を用いて盤面に対して平行な方向(すなわち結晶配向アパタイトの配向方向に対して垂直な方向)から微細組織を観察したところ、クラックの無い高品質な結晶配向アパタイトであることが確認できた。また、盤面に対して直消光を示す比較的多数の柱状結晶粒子が観察された(図21)。ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶は光学的一軸性であり、その光軸は結晶軸のc軸と一致する。したがって、比較的多数の柱状結晶が一斉に消光したことから、当該円盤状結晶配向アパタイトはケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする多結晶体のc軸が盤面に垂直な方向に沿って配向していることが偏光顕微鏡観察からも確かめられた。また、当該柱状結晶粒子が比較的大きく成長していることから、当該テンプレート粒子を起点として当該セラミックス粉末が焼結・粒成長を十分に起こしたと考えられる。
円盤状結晶配向アパタイトのSampleC−3に対し、盤面をSiC研磨ペーパー(1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を用いて両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:4.00×10−2cm、電極の面積:0.146cm)。その後、400℃〜750℃の温度範囲においてインピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。
上記の測定データからナイキストプロットを描いてから各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
SampleC−3におけるσtotal値は400℃の約3.20×10−5Scm−1から750℃の約1.75×10−3Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図22)。
[比較例3]
<ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体の作製>
SampleC−3の比較試料として,SampleC−3と同一の平均化学組成を有するケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体を作製した。
SampleA−3とSampleB−3を[SampleA−3:SampleB−3]=[16.7:83.3]の重量%で秤量・混合して粉末状混合物を得た。この粉末状混合物を直径約5.5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で50時間保持し、さらに室温まで2時間かけて冷却した。この試料を粉砕・混合して粉末試料を得た。さらに、当該粉末試料を直径約5.5mm×高さ約10mmのペレット状に一軸加圧成形し、電気炉中で室温から1600℃まで1時間かけて昇温し、引き続き1600℃で2時間保持し、さらに室温まで5時間かけて冷却し、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体を作製した(SampleD−3)。
上記のSampleD−3の試料表面から、X線粉末回折装置を用いて回折X線のプロフィル強度を測定した。当該X線粉末回折パターンは、結晶粒子がランダムに配向したケイ酸ランタンオキシアパタイトのX線粉末回折パターンに酷似していた。すなわち、上記のSampleD−3を構成する結晶粒子は特定の方向に配向していないことから、当該多結晶体はランダム配向多結晶体であることが確かめられた。
SampleD−3に対し、この試料をダイヤモンドカッターで切断して円盤状(厚み約1.5mm)の試料を得た。さらにSiC研磨ペーパー(120、400、800、1500−grid)にて機械研磨し、Ptスパッタ装置を使用し、両研磨面を白金膜で覆って電極とした(試料の厚み:9.50×10−2cm、電極の面積:0.238cm)。その後、インピーダンスアナライザを用いて交流インピーダンス測定を行った。
上記の測定データからナイキストプロットを描いて各温度におけるバルク抵抗値R(Ω)と粒界抵抗値Rgb(Ω)の合計値であるRtotal(=R+Rgb)を求めた。さらに、これらの値をもとに、各温度におけるイオン伝導度σtotal(Scm−1)を式(1)により求めた。
SampleD−3におけるσtotal値は400℃の約1.41×10−5Scm−1から750℃の約9.37×10−4Scm−1まで、温度の上昇にともない一様に増加した(図22)。
<本発明の結晶配向アパタイトとケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするランダム配向多結晶体との比較>
前記SampleC−3のσtotal値と上記SampleD−3のσtotal値を比較することで、450℃から750℃の温度範囲においてSampleC−3のσtotal値の方がSampleD−3のσtotal値よりも高いことが示された。
上記から、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子としてKOとFが固溶したケイ酸ランタンオキシアパタイトの板状結晶粒子を用い、さらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末として化学組成がLa:46.49モル%;SiO:51.11モル%;Al:2.39モル%のセラミックス粉末を用いて得られる結晶配向アパタイトは、平均化学組成が同一のランダム配向多結晶体と比較して、酸化物イオン伝導度の向上が確認できた。
以上の実施例・比較例、及び実験例より、本発明の結晶配向アパタイトは、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするテンプレート粒子に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が不均一に分布していることを特徴とすること、また、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とするセラミックス粉末に含まれる1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が不均一に分布していることを特徴とすることが確認された。
本発明のケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトによって、高い酸化物イオン伝導度を有する酸化物イオン伝導体及び固体電解質を提供することができる。
A 実施例1で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−1−1)において、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相
B 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)において、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子の粒界に存在する間隙相
C 実施例2で得られた円盤状結晶配向アパタイト(SampleC−2)において、最大面積を有するK元素分布領域

Claims (19)

  1. ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とし、第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素を含むセラミックス粉末を少なくとも原料として生成されたケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶配向アパタイトであって、前記結晶配向アパタイト中において前記第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素の分布状態が比較的高濃度で分布する領域である第1の個々の元素分布領域と、前記第1の個々の元素分布領域以外であり、かつ前記第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が比較的低濃度で分布する領域の形成により不均一であることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  2. 前記原料がさらにケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とし、第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素を含むテンプレート粒子を含み、前記テンプレート粒子中に含まれる前記第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素の分布状態が比較的高濃度で分布する領域である第2の個々の元素分布領域と、前記第2の個々の元素分布領域以外であり、かつ前記第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が比較的低濃度で分布する領域の形成により不均一であることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  3. 結晶配向アパタイトの任意の断面上において、前記第2の個々の元素分布領域の最大面積の方が前記第1の個々の元素分布領域の最大面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載の結晶配向アパタイト。
  4. 結晶配向アパタイトの任意の断面上において、第1の個々の元素分布領域の面積が500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイト。
  5. 結晶配向アパタイトの配向方向に平行な断面上において、第2の個々の元素分布領域の面積が10000μm以下であることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイト。
  6. 結晶配向アパタイトの任意の断面上において、第1の個々の微量又は少量元素の分布領域の総面積の割合が8%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイト。
  7. 第1の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、Mg、Ba、Sr、Ca、Al、Ga、Fe、GeおよびBからなる群から選択される元素であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイト。
  8. 第2の1種類もしくは複数種類の微量又は少量元素が、Li、Na、K、Rb、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Mo、W、B、P、Bi、Fe、Mn、Cr、Co、Cu、Ti、Ge、S、F、Clからなる群から選択される元素であることを特徴とする請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイト。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともMgOが8.22モル%から16.66%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  10. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともBaOが2.59モル%から16.67モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  11. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともSrOが1.59モル%から6.02モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  12. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともCaOが0.93モル%から6.78モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  13. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともAlが1.00モル%から7.44モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  14. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともGaが2.38モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  15. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともFeが2.39モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  16. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともGeOが4.93モル%から39.13モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  17. 請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の結晶配向アパタイトに、少なくともBが2.39モル%から9.99モル%含まれることを特徴とする結晶配向アパタイト。
  18. 前記テンプレート粒子を作製する第1の工程と、 前記セラミックス粉末を作製する第2の工程と、 少なくとも前記テンプレート粒子と前記セラミックス粉末とを所定の割合で混合し、その後ドクターブレード法又はカレンダー法等のシート成形法を用いて成形体を作製する第3の工程と、前記成形体を焼成することにより、前記テンプレート粒子を起点として前記セラミックス粉末を焼結させ、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が配向した多結晶体を作製する第4の工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の結晶配向アパタイトの製造方法。
  19. 前記セラミックス粉末を作製する第2の工程と、ドクターブレード法又はカレンダー法等のシート成形法を用いて成形体を作製する第3の工程と、前記成形体を焼成することにより、前記セラミックス粉末を焼結させ、ケイ酸ランタンオキシアパタイトを主成分とする結晶粒子が配向した多結晶体を作製する第4の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶配向アパタイトの製造方法。

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CN115954464A (zh) * 2023-03-13 2023-04-11 新乡天力锂能股份有限公司 一种间隙型氧离子导体包覆的高镍正极材料及其制备方法
CN117024129A (zh) * 2023-08-16 2023-11-10 内蒙古工业大学 一种铬掺杂二硅酸镧陶瓷的制备方法

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