フローセルの第一の形態は、中間領域によって分離された凹部及び前記凹部内に配された表面化学物質(すなわち、官能化ポリマー被覆層及びそれにグラフトされるプライマー)を含むパターン基材と;前記パターン基材の結合領域に結合された蓋部と、この場合、前記蓋部が少なくとも部分的に流路を画定し、当該流路は前記凹部と選択的に接続しており;前記凹部内の前記表面化学物質及び前記パターン基材の一部を被覆する水溶性保護被膜を有する。
フローセルの形態の一つにおいて、露出面を有する基材と、前記基材の前記露出面に共有結合した官能化ポリマー被覆層と、前記官能化ポリマー被覆層にグラフトしたプライマーと、前記プライマー及び前記官能化ポリマー被覆層上の水溶性保護被膜と、を有する。いくつかの例において、フローセルは、前記基材の結合領域に結合された蓋部をさらに含み、前記蓋部と前記基材とが少なくとも部分的に流路を画定することをさらに含む。
いくつかの例において、前記官能化ポリマー被覆層は、前記露出面上の化学基と前記官能化ポリマー被覆層の第1の反応性基との反応により、前記露出面に共有結合する。いくつかの例において、前記プライマーと前記官能化ポリマー被覆層の第2の反応性基との反応により、前記プライマーは前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされる。いくつかの例において、前記プライマーは、前記第2の反応性基と反応するためのアルキニル基を含む。いくつかの例において、前記露出表面に付着する前記化学基は、アルケニル、シクロアルケニル、又はノルボルネニル基である。いくつかの例において、前記化学基は、前記基材の前記露出表面に付着する、シラン又はシラン誘導体等のリンカーの一部である。
いくつかの例において、前記基材は、パターン基材である。前記パターン基材は、中間領域によって分離された凹部を含む。いくつかの例において、蓋部は、前記パターン基材の結合領域に結合され、前記蓋部が、前記凹部と選択的に接続されている流路を少なくとも部分的に画定する。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、前記官能化ポリマー被膜層及びプライマーを前記凹部内で被覆する。いくつかの例において、前記露出面上の前記化学基は、前記凹部内で必要によりリンカーを介して前記基材に付着する。
いくつかの例において、前記フローセル基材は、非パターン基材である。いくつかの例において、前記非パターン基材の結合領域に蓋部が結合し、前記蓋部及び前記非パターン基材が、前記露出面を含む流路を少なくとも部分的に画定する。前記官能化ポリマー被覆層及びプライマーは、前記非パターン基材上及び前記流路内に存在する。前記水溶性保護被膜は、前記官能化ポリマー被膜層及びプライマーを前記凹部内で被覆する。いくつかの例において、前記露出面上の前記化学基は、前記凹部内で必要によりリンカーを介して前記基材に付着する。したがって、いくつかの態様では、フローセルは、非パターン基材と;前記非パターン基材の結合領域に結合する蓋部と、この場合、前記蓋部及び前記非パターン基材が、流路を少なくとも部分的に画定する;前記非パターン基材及び前記流路内に配された表面化学物質(すなわち、官能化ポリマー被覆層及びそれにグラフトされるプライマー)と;前記表面化学物質を覆う水溶性保護被膜と、を有する。
第1の態様において、方法は、フローセル基材の一部に表面化学物質を添加すること、及び少なくとも前記表面化学物質上に水溶性保護被膜を塗布することを含む。この第1の態様におけるいくつかの例において、前記表面化学物質を添加することは、官能化ポリマー被覆層を形成すること、及びプライマーを前記官能化ポリマー被覆層にグラフトすることを含み、プライマーをグラフトした後に前記水溶性保護被膜を塗布する。この第1の態様のこの例においても、前記水溶性保護被膜が形成された後に、水溶性保護被膜がパターニングされてフローセル基材の結合領域を画定し、この方法は、前記フローセル基板の画定された前記結合領域に蓋部を結合して流路を形成することをさらに含む。
前記方法のこの第1の態様の別の例において、前記表面化学物質を添加することは、官能化ポリマー被覆層を形成することを含み、かつ前記水溶性保護被膜は前記官能化ポリマー被覆層が形成された後に塗布される。この第1の態様のこの例においても、前記水溶性保護被膜は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、ポリアクリルアミド、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される。さらにこの第1の態様のこの例において、前記水溶性保護被膜が形成された後に、前記水溶性保護被膜がパターン化されて前記フローセル基材の結合領域を画定し、そしてこの方法はさらに、前記フローセル基材の画定された前記結合領域に蓋部を結合して流路を形成することを含む。結合後、この方法はさらに、前記水溶性保護被膜を除去し、それによって前記官能化ポリマー被覆層及び前記基材の他の部分を露出させること;前記官能化ポリマー被覆層にプライマーをグラフトすること;並びに、前記プライマー、官能化ポリマー被覆層及び前記フローセル基材の他の部分の上に第2の水溶性保護被膜を形成すること、を含む。この態様の一例において、前記水溶性保護被膜を除去することは溶解工程を含む。またこの態様において、前記第2の水溶性保護被膜は、非カチオン性合成ポリマー、天然多糖類又はその誘導体、天然タンパク質又はその誘導体、水溶性塩、水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコール、グリセリン及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる低分子化合物、並びにシクロデキストリンからなる群から選択される。
一態様は、官能化ポリマー被覆層が基材の露出面上に形成される方法である。プライマーが前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされている。前記官能化ポリマー被覆層上に水溶性保護被膜が形成される。いくつかの例において、前記露出面はそれに結合したリンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を含む。いくつかの態様では、前記方法は、前記リンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を前記露出面に付着させることを含む。いくつかの態様では、前記基材はパターン化されていない(非パターン)。他の態様では、前記基材はパターン化され、かつ前記付着は誘導体化(例えば、シラン化)された凹部及び誘導体化(例えば、シラン化)された中間領域を提供する。
一態様において、方法は、第1の化学基を組み入れる基材の露出面を改質すること;前記第1の化学基を官能化ポリマー分子の第1の反応性基と反応させて、前記基材の前記露出表面に共有結合した官能化ポリマー被覆層を形成すること;プライマーを前記官能化ポリマー被覆層の第2の反応性基と反応させることにより、前記プライマーを前記官能化ポリマー被覆層にグラフトすること;並びに前記プライマー及び前記官能化ポリマー被覆層上に水溶性保護被膜を形成することを含む。
本明細書に開示される方法の別の例において、前記露出面の改質は、リンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を基材の前記露出面に付着させることを含む。いくつかの例において、前記リンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)は、第1の化学基を含む。いくつかの例において、前記リンカーはシラン又はシラン誘導体である。いくつかの例において、前記露出面の改質はプラズマアッシングを含む。いくつかの例において、前記改質は、プラズマアッシングを含み、プラズマ灰化表面を形成し、及びそこへのリンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)の付着を含む。
いくつかの例において、前記基材はパターン化されていない。いくつかの例において、前記第1の化学基と前記官能化ポリマー分子の前記第1の反応性基との反応は、前記リンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を介して前記基材の前記露出表面に共有結合した官能化ポリマー被覆層を形成する。いくつかの例において、前記露出表面の改質後、方法は、蓋部を非パターン基板の結合領域に結合することをさらに含み、蓋部及び非パターン基材は、前記露出面の一部を含む流路を、少なくとも部分的に画定する。
他の例において、前記基板はパターン化されていない。いくつかの例において、前記露出面の改質はプラズマアッシングを含み、かつ前記露出面の修正後に、前記方法はさらに、蓋部が非パターン基材の結合領域に結合することを含み、この場合、前記蓋部及び前記非パターン基材は、前記露出面の一部を含む流路を少なくとも部分的に画定する。
いくつかの例において、前記基材はパターン基材(中間領域によって分離された凹部を含む)である。いくつかの例において、前記官能化ポリマー被覆層が前記凹部内に形成されて官能化された凹部を形成し、前記水溶性保護被膜が前記官能化された凹部上に形成される。いくつかの態様では、前記化学基は前記凹部内で前記基材に付着しており、前記流路は前記凹部と選択的に連通している。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は前記凹部内及び前記中間領域の少なくとも一部の上に存在する。
いくつかの例において、前記パターン基板は、前記露出面に付着したリンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を含む。いくつかの例において、前記リンカーは前記凹部内の前記露出面に付着し、いくつかの例において、前記リンカーは前記凹部及び中間領域内の露出面に付着して、誘導体化(例えば、シラン化)された凹部及び誘導体化(例えば、シラン化された)された中間領域を形成する。いくつかの例において、前記露出表面の改質は、前記第1の化学基を含むリンカー(例えば、シラン又はシラン誘導体)を前記露出表面に付着させて誘導体化(例えば、シラン化)された凹部、及び必要により誘導体化(例えば、シラン化)された中間領域を形成することを含む。いくつかの例において、反応することにより、誘導体化された(例えば、シラン化された)凹部及び中間領域に、官能化ポリマー被覆層が形成される。いくつかの例において、前記プライマーのグラフト化の前に、前記方法は、前記官能化ポリマー被覆層を前記誘導体化(例えば、シラン化)された中間領域から除去することをさらに含む。いくつかの例において、前記除去は、中間領域から前記官能化ポリマー被覆層を研磨することによって行われる。プライマーは、前記誘導体化(例えば、シラン化)された凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされて、官能化された凹部を形成する。いくつかのそのような例において、前記グラフトは、誘導体化(例えば、シラン化)された凹部内の前記官能化ポリマー被覆層に前記プライマーを付着させ、それによって官能化された凹部を形成する。水溶性保護被膜は、前記官能化された凹部及び中間領域の少なくとも一部の上に形成される。いくつかの例において、前記形成は、前記官能化された凹部及び少なくとも一部の前記中間領域上に前記水溶性保護被膜を供する。いくつかの例において、前記官能化ポリマー被覆層を除去した後、方法は、蓋部をパターン基材の結合領域に結合することをさらに含み、この場合、前記官能化ポリマー被覆層をその上に有する、シラン化された凹部を含む流路を、前記蓋部及び前記非パターン基板は少なくとも部分的に画定する。
したがって、いくつかの例において、前記方法は、中間領域によって分離された凹部を含むパターン基材の表面に、シラン又はシラン誘導体を付着させ、それによってシラン化された凹部及びシラン化された中間領域を形成すること;官能化ポリマー被覆層を前記シラン化された凹部及び前記シラン化された中間領域上に形成すること;前記官能化ポリマー被覆層を前記シラン化された中間領域から研磨すること;前記シラン化された凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にプライマーをグラフトして官能化された凹部を形成すること;前記官能化された凹部及び前記中間領域の少なくとも一部の上に水溶性保護被膜を形成することを含む。
前記方法のいくつかの態様において、前記水溶性保護被膜は、前記プライマーがグラフトされた後に形成され;前記水溶性保護被膜は、前記水溶性保護被膜が形成された後に前記パターン基材の結合領域が露出した状態でパターン化され;この方法は、前記パターン基板の結合領域に蓋部を結合して、少なくとも一部が官能化された凹部と選択的に流体的に連通する流路を形成することをさらに含む。
前記方法の他の態様では、前記官能化ポリマー被覆層をパターン基材の中間領域から(例えば研磨により)除去した後、かつi)前記プライマーをグラフトする前及びii)前記水溶性保護被膜を形成する前、前記方法はさらに、前記パターン基材の結合領域が露出したままになるように、前記官能化ポリマー被覆層上に初期の水溶性保護被膜をパターン化すること;蓋部を前記パターン基材の前記結合領域に結合して、少なくともいくつかの凹部と選択的に流体的に連通する流路を形成すること;そして前記初期の水溶性保護被膜を除去することをさらに含む。
いくつかの例において、前記露出表面の改質、前記第1の化学基と第1の反応性基との反応、前記プライマーのグラフト化、及び/又は前記水溶性保護被膜の形成は、それぞれのフロースループロセスを含む。いくつかの例において、前記プライマーのグラフト化及び前記水溶性保護被膜の形成は、それぞれのフロースループロセスを含む。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜を塗布することは、フロースルーデポジション、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を含む。
いくつかの例において、前記方法は、フローセル基材の結合領域に蓋部を結合して流路を形成すること、次いで前記表面化学物質(例えば、官能化ポリマー被覆層及びプライマー)を添加すること、並びに前記水溶性保護被膜を塗布することをさらに含む。
いくつかの例において、前記プライマーをグラフトした後、前記方法は、前記水溶性保護被膜を少なくとも部分的に除去すること、及び前記プライマーの劣化(例えば、欠損又は機能の喪失)を検出するための染料系アッセイを実施することをさらに含む。
いくつかの例において、前記官能化ポリマー被覆層が形成された後、並びに前記プライマーのグラフト化及び前記水溶性保護被膜の形成の前、前記方法は、前記官能化ポリマー層上に、前記基材の前記結合領域を露出した状態を維持するよう、初期の水溶性保護被膜をパターニングすること;蓋部を前記基材の結合領域に結合して、前記初期の水溶性保護被膜と選択的に流体的に連通する流路を形成すること;そして前記初期の水溶性保護被膜を除去することを含む。いくつかの例において、前記初期の水溶性保護被膜はスプレーコーティング又はフロースループロセス(flow through process)によって塗布される。いくつかの例において、前記初期の水溶性保護被膜と前記水溶性保護被膜とは同じ材料から形成され、他の例においてそれらは異なる材料から形成される。
いくつかの例において、水溶性保護被膜の形成は、水溶性材料の水溶液を基材の露出面に塗布することを含む。いくつかの例において、次いで水溶性材料の水溶液を露出面上で(例えば、加温、加熱、蒸発、真空暴露等により)乾燥させる。いくつかの例において、前記水溶性材料が最大約15%、若しくは約1〜15%、若しくは約1〜10%、若しくは約1〜5%、若しくは約2〜5%、若しくは約4〜8%、若しくは約5〜7.5%(体積に対する質量)水溶液に含まれる。いくつかの例において、前記水溶性材料が約5〜7.5%、若しくは約5%、若しくは約7.5%(体積に対する質量)水溶液に含まれる。いくつかの例において、前記水溶液中の前記水溶性材料の割合は、前記プライマーのプライマー密度に基づいて調整される。いくつかの例において、前記水溶液は、エタノール等の混合溶媒をも含む。いくつかの例において、約5〜7.5%、若しくは約5%、若しくは約7.5%の前記水溶性材料が10%水系エタノール溶液に含まれる。
本明細書におけるフローセル又は方法のいくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、非カチオン性合成ポリマー、天然多糖類若しくはその誘導体、天然タンパク質若しくはその誘導体、水溶性塩、あるいは水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコール、グリセリン及びシクロデキストリンからなる群から選択される低分子化合物、又はそれらの組み合わせを含む。
いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、以下のいずれかを含む。
(a)ポリアクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリ(N-ジアルキルアクリルアミド)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ(ジビニルエーテル−無水マレイン酸)、ポリ(ホスフェート)、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、ポリ(スルホベタインメタクリレート)、ポリ(ビニルエーテル−マレイン酸)、ヒドロキシル官能性ポリマー、非天然ポリペプチド、若しくはシリコーン、又はそれらの組み合わせを含む非カチオン性合成ポリマー、
(b)デンプン、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)、ヒアルロン酸、デンプンホスフェート、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アガロース、寒天、あるいはアルギン酸塩、若しくはそれらの組み合わせを含む、天然多糖類又はその誘導体、
(c)カゼイン若しくはアルブミンを含む天然タンパク質又はその誘導体
(d)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、若しくはクエン酸ナトリウム塩、又はそれらの組み合わせを含む水溶性塩
(e)クエン酸ナトリウム塩水溶液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)と、場合によりエチレンジアミン四酢酸と混合、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3−[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO)、N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン(トリシン)、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、又は3-(N、N-ビス([2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO))を含む緩衝液
(f)アニオン性若しくは非イオン性界面活性剤を含む水溶性界面活性剤、あるいはドデシル硫酸ナトリウム、アルキルエトキシレート、エトキシル化油、脂肪若しくはスルホコハク酸を含む水溶性界面活性剤
(g)糖、酸化防止剤、グリコール、グリセリン、又はシクロデキストリン
(h)エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、又はバソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩を含むキレート剤
(i)それらの組み合わせ
好適な非カチオン性合成ポリマーの例は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(一例には、BASF Corpから入手可能なコリコート(KOLLICOAT)(登録商標)IRが含まれる)がある。好適なヒドロキシル官能性ポリマーの例は、商品名コリコート(登録商標)IRとしてBASF Corpから市販されている。酸基を含む任意の水溶性非カチオン性合成ポリマーは、アルカリ金属塩の形で使用してもよい。
本明細書に開示されるいくつかの実施例において、プライマーグラフト化後に塗布される際に、前記保護被膜はポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えばコリコート(登録商標)IR、両方BASF Corpから入手可能)、スクロース、デキストラン(例えば分子量200,000Da)、ポリアクリルアミド(例えば、分子量40,000Da、200,000Da等)、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(すなわちEDTA)、エチレンジアミン四酢酸を含むトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(トリス(2-カルボキシエチル))ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、ヒドロキシル官能性ポリマー、グリセロール、又はクエン酸ナトリウム塩)であり得る。本明細書に開示される他のいくつかの例において、官能化ポリマー被覆層形成後又はその間に塗布されるとき、前記保護被膜はポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、ポリアクリルアミド、又はポリエチレングリコールであり得る。少なくともスクロース及びポリアクリルアミドについては、前記官能化ポリマー被覆層はこれらの材料の保護被膜を塗布する前に硬化されるべきであると理解されうる。
いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は非カチオン性合成ポリマー、天然多糖類若しくはその誘導体、天然タンパク質若しくはその誘導体、水溶性塩、水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコール及びグリセリンからなる群から選ばれる小分子化合物、シクロデキストリン又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、グリコール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン若しくはその塩、エチレンジアミン四酢酸若しくはその塩、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン若しくはその塩、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、ヒドロキシル官能性ポリマー、グリセロール若しくはクエン酸ナトリウム塩、又はそれらの混合物を含む。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、又はそれらの混合物を含む。いくつかの例において、前記水溶性保護被膜はポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを含む。いくつかの例において、前記グラフトコポリマーは、約75%のポリビニルアルコールと約25%のポリエチレングリコールとを含む。
本明細書に記載の方法又はフローセルのいくつかの例において、官能化ポリマー被覆層は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド−コ−アクリルアミド(PAZAM)を含む。
本明細書に記載の方法又はフローセルのいくつかの例において、前記水溶性保護被膜は、官能化ポリマー被覆層との混合物としてフローセル上に存在する(又はそれに塗布される)。そのような例において、フローセルは以下:露出表面を含む基板;前記基材の前記露出面に共有結合している官能化ポリマー被覆層;前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされたプライマー;前記官能化ポリマー被覆層と混合された水溶性保護被膜を含む。関連する方法は以下:第1の化学基を組み込むために基板の露出表面を改質すること;前記第1の化学基を、水溶性保護被膜と第1の反応性基を含む官能化ポリマー分子との混合物と反応させて、前記基材の前記露出面に共有結合した官能化ポリマー被覆層を形成し、前記水溶性保護被膜と混合すること;そして、プライマーを前記官能化ポリマー被覆層の第2の反応性基と反応させることにより、前記プライマーを前記官能化ポリマー被覆層にグラフトすることを含む。そのような例において、次いで前記官能化ポリマー被覆層及び前記水溶性保護層が同時に塗布される。そのような例において、前記官能化ポリマー被覆層は、官能化ポリマー分子と水溶性保護被膜との混合物を塗布した後に硬化される。いくつかの例において、前記混合物は、前記官能化ポリマー分子に対して5重量%〜約95重量%の水溶性被膜、又は約10重量%〜約80重量%、又は約25重量%〜約75重量%、又は約25重量%、50wt%、又は75wt%である。前記水溶性保護被膜は、硬化工程中に表面を保護することができる。いくつかの例において、水溶性被膜前駆体と官能性ポリマー分子とを含む混合物が塗布される。いくつかの例において、混合物はエタノール等の溶媒をさらに含む。いくつかの例において、前記水溶性被膜の前駆体は、コリコート(登録商標)IRであり、前記官能化ポリマー分子はPAZAMである。一例において、官能化ポリマーの被覆工程中に、水に、5%w/vのコリコート(登録商標)IRと、0.25%w/vのPAZAMと、5%のエタノールとを含む混合物を塗布することは、CFR強度を改善し、1サイクル1強度を読み取り、コントロール(0.25%w/v PAZAM及び5%エタノール水溶液)に対して、0.8μM、1.1μM、1.5μM、及び5μMの濃度でロードされる、得られたグラフトプライマーの%通過フィルターを維持した。いくつかの例において、混合物は、5%w/vの水溶性被膜の前駆体(例えば、コリコート(登録商標)IR)、0.25%w/vの官能性ポリマー分子(例えば、PAZAM)、及び5%のエタノールを含む。そのような例において、水溶性被膜は、プライマーグラフト工程の間に適所に留まり得る。パターン基材の場合、前記水溶性被膜は、次の研磨工程(これは水性条件を使用する)中、又はグラフト化前のフローセルの再水和中(官能化ポリマー被膜は硬化中に脱水する)に除去されてもよい。
本明細書に記載の方法又はフローセルのいくつかの例において、前記基材の前記露出面に組み込まれる前記化学基は、任意に置換されるアルケニル、任意に置換されるアルケニル、任意に置換されるシクロアルケニル、任意に置換されるノルボルネニル、任意に置換されるシクロオクチニル、任意に置換ビシクロノニニル、任意に置換されるアルキニル、アジド、任意に置換されるテトラジニル、ヒドラゾニル、任意に置換されるテトラゾリル、ホルミル、又はヒドロキシルである。いくつかの例において、前記化学基はノルボルネニル又は置換されたノルボルネニルである。いくつかの例において、前記化学基はリンカーを介して前記基板の前記露出面に共有結合している。前記リンカーは、例えば、アルキレン、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセチル、カルボニル、アセトアミド、アミド、シラン、ケイ素、シリルエーテル、若しくは他のスペーサ単位、又はそれらの組み合わせを含みうる。いくつかの例において、前記リンカーはシラン又はシラン誘導体を含み、本明細書ではシランリンカーと称する。いくつかの例において、前記シランリンカーは、-Si(X)2-C2-6アルキル−を含み、前記式中、それぞれのXは、-OH、-O-アルキル、又は-O-SiR3誘導体(例えば、シロキサン)である。いくつかの例において、前記リンカーは−Si(OR)2−CH2−である。いくつかの例において、前記リンカーはシリルエーテル及びアルキレン基を含む。
本明細書に記載の前記フローセル又は方法のいくつかの例において、前記第1及び第2の反応性基は、それぞれ独立して、任意に置換されるアルケニル、任意に置換されるシクロアルケニル、任意に置換されるノルボルネニル、任意に置換されるシクロオチニル、任意に置換されるビシクロノニニル、任意に置換されるアルキニル、アジド、任意に置換されるテトラジニル、ヒドラゾニル、任意に置換されるテトラゾリル、ホルミル、又はヒドロキシルである。いくつかの例において、前記第1及び第2の反応基は同じである。いくつかの例において、前記第1及び第2の反応性基は両者ともアジドである。
本明細書に記載のフローセル又は方法のいくつかの例において、前記プライマーは、その一端が第2の反応基と反応するための部位で修飾されている。例えば、前記プライマーは、前記第2の反応基との反応のためのアルキニル基を含む。
本明細書に記載のフローセル又は方法のいくつかの例において、前記プライマーは、2つの集団の官能性プライマー(functional primer)を含む複数のプライマーである。いくつかの例において、前記プライマーは、官能性プライマーの集団(これは、官能性プライマーの2つの亜集団、例えば、プライマーA及びプライマーBを含み得る)及び非官能性プライマーの集団である。いくつかの態様において、前記プライマーは、プライマー配列を含む。官能性プライマーの2つの亜集団を使用する場合、それらは異なるプライマー配列を含む。標的オリゴヌクレオチドを前記プライマーに(前記プライマー配列に相補的な配列を介して)ハイブリダイズさせて、そして前記プライマーをポリメラーゼの存在下で伸長させて、前記基材に結合している標的オリゴヌクレオチドの相補的コピーを形成する。
本明細書に記載の前記フローセル及び前記フローセルを作製する方法の任意の特徴は、任意の望ましい方式及び/又は構成を併せて組み合わせられることに理解すべきである。さらに、任意の前記方法及び/若しくは前記フローセルからの特徴の任意の組み合わせを併せて使用でき、並びに/又はこれらの態様のいずれか若しくは全てからの任意の特徴が、本明細書に開示されている実施例の任意の特徴と組み合わせられることに理解すべきである。
本明細書に開示される方法の例は、フローセル製造のワークフロー中に保護被膜を塗布することを含む。前記保護被膜は、基材上に堆積させた化学的及び/又は生物学的に活性な表面化学物質(例えば、官能化ポリマー被覆層、プライマー)上に直接塗布することができる。前記保護被膜は、その後の処理技術(例えば、蓋部の結合、ウェハダイシング等のアセンブリー技術)中及び/又はフローセルの出荷中及び/又はフローセルの短期間及び/又は長期間の保管中に表面化学物質を保護することができる。一例において、保管期間は最大120日、又はそれ以上であり得る。別の例において、保管期間は約1日から約75日の範囲であり得る。別の例において、保管期間は、約1日から、約2年、又は約12ヶ月、18ヶ月、又は24ヶ月であり得る。一例を示しているが、当然のことながら、前記保管期間は、前記フローセルを使用することが望ましくなるまで前記保護被膜を塗布した後、いつからでもよい。一例として、前記保護被膜は、例えば蓋部の結合又は他のアセンブリー工程中、表面化学物質に接触する可能性がある破片及び/又は汚染といった化学的又は物理的劣化から表面化学物質を保護することができる。別の例として、前記保護被膜は、輸送中に生じうる引っかき傷又は他の取り扱い由来の欠陥から表面化学物質を保護することができる。さらに別の例として、前記保護被膜は、製造中、出荷中、及び/又は短期保管中及び/又は長期保管中(4℃〜約80℃、又は場合によってはより低い温度、約-25℃まで)の環境要因(例えば、温度、湿度等)から表面化学物質を保護し得る。前記保護被膜は、表面化学物質の固有の安定性の維持を補助し、したがってフローセルの保管寿命、温度許容度、耐久性、及び周囲保管能力を向上させる。前記表面化学物質の安定化は有効なプロセスであり、そして当該表面化学物質は経時的に安定である。
本明細書に開示される方法は、完全にウェハレベルで、完全にダイレベルで、部分的にウェハレベルで、及び/又は部分的にダイレベルで実行されてもよい。ウェハ及びダイのレベルで部分的に方法を実行する例として、前記方法はウェハを使用して開始され、次いでウェハはいくつかのダイを形成するようにダイシングされ、そして前記方法は各ダイを使用し続けてもよい。少なくともいくつかの例において、オープンウェハ処理(例えば、蓋部の結合前に行われる化学的又は物理的工程)を実行する能力によって、品質管理及び特性評価に様々な計測/分析技術を用いることが可能になる。フローセルを形成するために結合される前に、パターンウェハ及び表面改質されたウェハ/基材は、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、偏光解析法、ゴニオメトリー、光波散乱計測、及び/又は蛍光を用いた技術にさらしてもよい。あるいは、結合されたフローセルはこれらの技術にさらされてもよい。前記ダイレベルでは、前記方法は、オープンフェースのダイ上で、又はアセンブリーてられたフローセル(密閉フローチャネルを有する)上で実行されてもよい。
本明細書で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとることが理解されるべきである。本明細書中で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味を以下に記載する。
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないと定義されていない限り、複数の対象を含む。
これらの用語を「comprise(含む、有する、備える)」、「including(含む、有する、備える)」、「containing(含む、有する、備える)」及びそれらのさまざまな活用形態の用語は、互いに同義であり、同等に広い意味で使用されている。
「上部」、「下」、「下方」、「上方」、「上」等の用語は、前記フローセル及び/又は前記フローセルの種々の構成要素を説明するために、本明細書で使用される。これらの方向の用語は、特定の向きを意味することを表すものではなく、構成要素間の相対的な向きを示すために使用されることを理解すべきである。方向性のある用語の使用は、本明細書に開示された例を特定の方向に限定解釈されるべきではない。
本明細書で使用する場合、「アルキル」は、完全に飽和した(すなわち、二重結合又は三重結合を含まない)直鎖又は分岐の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有していてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。一例として、「C1−4アルキル」という表現は、アルキル鎖中に1〜4個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、当該アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択される。
本明細書で使用する場合、「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を含む直鎖又は分岐の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2〜20個の炭素原子を有していてもよい。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等が含まれる。アルケニル基は、例えば、「C2-4アルケニル」と表すことができ、これは、アルケニル鎖中に2〜4個の炭素原子があることを示す。
本明細書で使用する場合、「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合を含む直鎖又は分岐の炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2〜20個の炭素原子を有していてもよい。アルキニル基は、例えば、「C2-4アルキニル」と表すことができ、これはアルキニル鎖中に2〜4個の炭素原子があることを示す。
「アミノ」官能基とは、-NRaRb基をいい、ここで、Ra及びRbは、それぞれ独立して、本明細書中に定義されている、水素原子、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5〜10員ヘテロアリール、及び5〜10員ヘテロシクリルから選択される。
本明細書で使用する場合、「アリール」とは、環骨格中に炭素のみを含む芳香族環又は環式(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2以上の縮合環)をいう。アリールが環式であるときは、その系中の全ての環は芳香族である。アリール基は、6〜18個の炭素原子を有していてもよく、これはC6〜18と表されてもよい。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが含まれる。
本明細書で使用する場合、用語「取り付けられた」は、2つのものが互いに結合、固定、接着、接続又は結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によって官能化ポリマー被覆層に付着することができる。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を含まない物理的結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用及び疎水性相互作用を含み得る。
「アジド」又は「アジド」官能基は、-N3を指す。
本明細書で使用する場合、「カルボシクリル」は、環式骨格内に炭素原子のみを含む非芳香族環状環又は環式を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2以上の環が縮合、架橋又はスピロ結合形態で併せて結合されてもよい。カルボシクリルは、環式中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件で、任意の飽和度であってもよい。従って、カルボシクリルは、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルを含む。カルボシクリル基は、3〜20個の炭素原子(すなわち、C3−20)を有していてもよい。カルボシクリル環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ−インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが含まれる。
本明細書における用語「カルボン酸」又は「カルボキシル」は、-C(O)OHを指す。
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」は、完全飽和したカルボシクリル環又は環式を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、「シクロアルキレン」は、2つの結合点を介して分子の残りの部分に結合している完全飽和カルボシクリル環又は環系を意味する。
本明細書で使用する場合、「シクロアルケニル」又は「シクロアルカン」は、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環又は環系を意味し、ここで前記環式中の環は芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネン又はノルボルネニルが挙げられる。また本明細書で使用する場合、「ヘテロシクロアルケニル」又は「ヘテロシクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有し、環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環又は環式を意味し、ここで前記環式中の環は芳香族ではない。
本明細書で使用する場合、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有するカルボシクリル環又は環式を意味し、前記環式中の環は芳香族ではない。一例としてはシクロオクチンである。他の例はビシクロノニンである。
また本明細書で使用する場合、「ヘテロシクロアルキニル」又は「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する環骨格内に有し、前記環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環又は環系を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「堆積する」は、手動又は自動であり得る、任意の好適な塗布技術を指し、そして表面特性の改質をもたらす。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術等を使用して実行され得る。いくつかの具体例としては、化学蒸着(CVD)、スプレーコーティング(例えば超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パドルディスペンス、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。いくつかの態様において、水溶性保護被膜はスプレーコーティングによって塗布される。他の態様では、水溶性保護被膜はフロースルーコーティングによって塗布される。
本明細書で使用する場合、用語「凹部」は、パターン基材表面の中間領域によって完全に囲まれている表面開口部を有する、パターン基材内の個別のくぼみ状の形状を指す。凹部は、その凹部の開口部の表面において、例えば、円形、楕円形、正方形、多角形、六角形、星形(任意の数の頂点を有する)等を含む、様々な形状のうちのいずれかを有することができる。凹部表面と直交する凹部の断面は、曲線、正方形、多角形、双曲線、円錐形、角形等であり得る。一例として、凹部はウェルであり得る。また本明細書で使用する場合、「官能化された凹部」は、官能化ポリマー被覆層及びプライマーが付着している別個のくぼみ状の形状を指す。
「それぞれ」という用語が、項目のコレクションに関して使用される場合、コレクション内の個々の項目を識別することを意図しているが、コレクション内の全ての項目を必ずしも指すわけではない。明示的な開示又は文脈が明らかにそうではないことを示す場合、例外が発生する可能性がありうる。
本明細書で使用する場合、用語「フローセル」は、反応が進行できるチャンバ(すなわち、流路)、前記チャンバに試薬を送達するための入口、及び前記チャンバから試薬を取り出すための出口、を有する容器を意味することを意図している。いくつかの例において、チャンバは、当該チャンバ内で起こる反応の検出を可能にする。例えば、チャンバは、当該チャンバ内において、必要により光学標識された分子等のアレイの光学的検出を可能にする、1以上の透明表面を含んでもよい。
本明細書で使用する場合、「流路」は、液体サンプルを選択的に受け入れる可能な、2つの結合された構成要素間に画定される領域であり得る。いくつかの例において、流路は、パターン基材と蓋部との間に画定されてもよく、したがって、パターン基材内に画定された1以上の凹部と流体的に連通してもよい。他の例において、流路は、パターン化されていない基板(非パターン基材)と蓋部との間に画定されてもよい。
本明細書で言及される「官能化ポリマー被覆層」は、液体及び気体を透過する半硬質材料を意味することを意図している。官能化ポリマー被覆層は、液体(例えば、水)を取り込むと膨潤して、そして液体が乾燥によって除去されると収縮し得るヒドロゲルであってもよい。典型的には、ヒドロゲルは水を吸収しうるが、それは水溶性ではない。一例において、官能化ポリマー被覆層はポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド−コ−アクリルアミド)(PAZAM)である。官能化ポリマー被覆層は、任意に置換されるアルケニル、アジド/アジド、任意に置換されるアミノ、カルボキシル、任意に置換されるヒドラゾン、任意に置換されるヒドラジン、ヒドロキシル、任意に置換されるテトラゾール、任意に置換されるテトラジン、酸化ニトリル、ニトロン、又はチオールからなる群から選択される1以上の官能基を含む、他の分子を含んでもよい。いくつかの態様では、官能基は、前記官能化ポリマー被覆層を、前記基材表面及び/又はプライマーと結合させて、これらの構成要素間に共有結合を形成するために使用される反応性基である。
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」は、1以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素を含む芳香族環又は環式(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。これに限定されないが、環骨格中に窒素、酸素及び硫黄を含む。ヘテロアリールが環式であるとき、その系中の全ての環は芳香族である。ヘテロアリール基は、5〜18個の環員を有し得る。
本明細書で使用する場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族環式環又は環式を意味する。ヘテロシクリルは、融合、架橋又はスピロ結合形態で併せて結合することができる。ヘテロシクリルは、環式中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件で、任意の飽和度をしてもよい。環式において、ヘテロ原子は非芳香族環又は芳香族環のいずれかに存在し得る。ヘテロシクリル基は、3〜20個の環員(すなわち、炭素原子及びヘテロ原子を含む環骨格を構成する原子の数)を有することができる。ヘテロシクリル基は、「3〜6員ヘテロシクリル」又は同様の表現で称されてもよい。いくつかの例において、ヘテロ原子はO、N、又はSである。
本明細書で使用する用語ヒドラジン又はヒドラジニルは、−NHNH2基を意味する。
本明細書で使用する場合、本明細書で使用する用語ヒドラゾン又はヒドラゾニルは、
基を
意味しRa及びRbは本明細書で定義される。
本明細書で使用する場合、ヒドロキシ又はヒドロキシルは、−OH基を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「中間領域」は、凹部を隔てる基材内又は表面上の領域を指す。例えば、中間領域は、アレイの1つの形状をアレイの別の形状から分離することができる。互いに分離されている2つの形状は離散的であり得る、すなわち、互いに物理的な接触を欠いている。別の例において、中間領域は、第1の部分形状を第2の部分形状から分離することができる。多くの例において、中間領域は連続的であるのに対して、別の点では連続的な表面に画定された複数のウェルの場合のように、形状は離散的である。中間領域によって供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。中間領域は、表面内で画定された形状の表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、アレイの形状は、中間領域に存在する前記被覆層及びプライマーの量又は濃度を超える、量又は濃度を有することができる。いくつかの例において、被覆層及びプライマーは、中間領域に存在しなくてもよい。
本明細書で使用するニトリルオキシドは、RaC≡N+O−基を意味し、Raは本明細書で定義される。ニトリルオキシドを調製する例としては、クロラミド-Tでの処理によって、又はイミドイルクロリド[RC(Cl)=NOH]に対する塩基の作用を介して、アルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
本明細書で使用される「ニトロン」は、「RaRbC=NRc +O−」基を意味し、ここでRa及びRbは本明細書で定義され、Rcは、本明細書において定義される、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、及び5-10員ヘテロシクリルから選択される。
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド」は、複素環式塩基を含有する窒素、糖、及び1以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは核酸配列の単量体単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAでは、糖はデオキシリボース、すなわちリボースの2‘位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。複素環式塩基を含有する窒素(すなわち核酸塩基)はプリン塩基又はピリミジン塩基であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾誘導体又は類似体を含む。デオキシリボースのC−1原子は、ピリミジンのN−1又はプリンのN−9に結合している。
本明細書で使用する場合、用語「オープンウェハ処理」は、任意の組み立て(任意のアセンブリー)(例えば、結合)処理の前に、表面化学物質及び保護被膜で基板ウェハの表面を改質するために使用される一連の逐次プロセスを指す。
「フローセル基材」又は「基材」という用語は、その上に表面化学物質を添加することができる支持体を指す。「パターン基材」という用語は、その中又は上に凹部が画定されている支持体を指す。「パターン化されていない基材(非パターン基材)」という用語は、実質的に平面の支持体を指す。基材は、ウェハ、パネル、長方形のシート、ダイ、又は他の任意の好適な構成であり得る。基材は一般に硬質であり、水性液体に不溶である。基材は、凹部を改質するために使用される化学物質に対して不活性であり得る。例えば、官能化ポリマー被覆層を形成するため、保護被膜を形成するため、又はプライマーを官能化ポリマー被覆層に付着させるため等に使用される化学的性質に対して、基材は不活性であり得る。適用可能な例としては、エポキシシロキサン、相補的金属酸化物半導体(CMOS)材料、シルセスキオキサン(例、多面体シルセスキオキサン又はPOSS材料)、ガラス(コーニング製のEAGLE XG(登録商標)ガラス等)及び変性又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン及びスチレンと他の共重合体を含み、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(例えばChemours製のテフロン(登録商標))、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(ゼオン製のZEONOR(登録商標)等)、ポリイミド等)、ナイロン、セラミック/セラミック酸化物、シリカ、溶融シリカ、又はシリカ系材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン及び変性シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、五酸化タンタル(TaO5)又は他の酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HaO2)、炭素、金属、無機ガラス等を含む。基材はガラス又はシリコンであってもよく、表面に酸化タンタル又は他のセラミック酸化物の被覆層を有してもよい。基材は剛性又は可撓性であり得る。
本明細書で使用する場合、「プラズマアッシング」とは、酸素プラズマによって基材から有機物を除去する処理を指す。プラズマアッシングから生じる生成物は、真空ポンプ/システムを用いて除去することができる。プラズマアッシングは、反応性ヒドロキシル基を導入することによって基材を活性化することができる。いくつかの態様では、次いでリンカー基をヒドロキシル基に結合させてもよい。
本明細書で使用する場合、「プライマー」は、DNA又はRNA合成のための出発点として働く一本鎖の核酸配列(例えば、一本鎖DNA又は一本鎖RNA)として定義される。プライマーの5’末端は、官能化ポリマー被覆層とのカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。いくつかの態様において、プライマーの5’末端はアルキン基で修飾されている。プライマー長は、任意の数の塩基長であり、そして種々の非天然ヌクレオチドを含み得る。一例において、シークエンシングプライマーは、例えば20〜40塩基の範囲の短鎖である。いくつかの態様では、プライマーは、約5〜50μM、又は約10〜40μM、又は約15〜30μMの濃度(本明細書では「プライマー密度」と称する)の溶液中で基材に塗布される。本明細書で使用される「プライマー密度」は、表面グラフト化プライマーの測定値ではないが、グラフト混合物中のプライマーの濃度に基づく推定密度である。いくつかの態様において、プライマー密度は約1〜約20μM(1〜20μMのプライマー溶液を使用して表面にグラフトされたプライマー)である。いくつかの態様では、プライマーは官能性プライマー(オリゴヌクレオチド合成の出発点として機能することができる)と非官能性プライマーとの混合物である。非官能性プライマーは、切断型プライマー配列、又は検出可能な、場合により切断可能な標識でタグ付けされた短いオリゴヌクレオチド配列といったプライマーとして機能しないオリゴヌクレオチドである。非官能性プライマーは、グラフトされた基材上の官能性プライマーと同様、全オリゴヌクレオチド/プライマー密度の独立した(別々の)制御を可能にする。いくつかの例において、プライマー密度は12μMプライマー及び6μM非官能性プライマー(例えば、品質管理トレーサーが結合したオリゴヌクレオチド)である。いくつかの例において、総プライマー密度は約18μMである。いくつかの例において、総プライマー密度は約22μMである。グラフトプライマーは、1平方マイクロメートル当たり約10,000から約50,000、又は約25,000のプライマーで表面に存在してもよい。
本明細書で使用する場合、用語「保護被覆」は、表面化学物質に塗布される、固体(例えば、薄膜)、液体、又はゲルの形態の水溶性材料を指し、例えば、パターン基材の凹部内、又は少なくとも実質的に平坦な基板(すなわち、非パターン基材)の流路領域上に形成される。保護被膜は、その下にある表面化学物質又は基材に悪影響を与えず、当該表面化学物質の機能性を保護及び/又は維持するのに役立つ任意の水溶性材料であり得る。水溶性保護被膜は、定義によればヒドロゲルと区別でき、保護被膜は水に曝されると溶解し、ヒドロゲルは水不溶性でありながらこのようにして洗い流されることがある。例えば、保護被膜は官能化層を膨潤させ、処理及び/又は出荷及び/又は保管中に当該活性化層が有害な変化を受けるのを少なくとも実質的に防止することができる。別の例において、保護被膜はプライマーの接近可能性を維持し、そして少なくとも実質的に官能化層の劣化を防止することができる。
いくつかの例が提供されているが、選択された材料が、その下の表面化学物質又は基材に悪影響を及ぼさない限り、他の水溶性合成ポリマー、非カチオン性合成ポリマー及び小分子を使用して保護被膜を形成してもよいことを理解すべきである。さらに、容易に除去することができ、その後に行われる処理(例えば、プライマー付着、洗浄等)を妨げない、及び/又はその後に行われる塩基配列決定技術を妨げない材料を選択することも望ましい。一例としては、保護被膜は自己蛍光材料ではない。
一例において、水溶性保護被膜の厚さ又は深さは少なくとも約25nmである。一例において、水溶性保護被膜の厚さ又は深さは、約50nmから約100nmの範囲である。別の例において、水溶性保護被膜の厚さ又は深さは、約1μmから約15μmの範囲である。さらに別の例において、水溶性保護被膜の厚さ又は深さは、約1.5μmから約12μmの範囲である。厚さの上限は、少なくとも部分的には、流路及び形成されるフローセルの構造及び寸法に依存し得る。一例において、厚さ範囲の上限値は、約10μmから約15μmの範囲であり得る。
本明細書で使用する場合、用語「シラン」及び「シラン誘導体」は、1以上のケイ素原子を含有する有機又は無機化合物を指す。無機シラン化合物の例は、SiH4、又は水素原子が1以上のハロゲン原子によって置換されているハロゲン化SiH4である。
有機シラン化合物の例は、X-RB-Si(ORC)3であり、
式中、Xはアミノ、ビニル、エポキシ、
メタクリレート、硫黄、アルキル、アルケニル、アルキニルのような非加水分解性有機基であり;
RBはスペーサであり、例えば−(CH2)n−であり、nは0〜1000であり;
RCは、本明細書に定義の水素原子、任意に置換されるアルキル、任意に置換されるアルケニル、任意に置換されるアルキニル、任意に置換されるカルボシクリル、任意に置換されるアリール、任意に置換される5〜10員ヘテロアリール、及び任意に置換される5〜10員ヘテロシクリルから選ばれる。本明細書で使用する場合、用語「シラン」及び「シラン誘導体」は、異なるシラン及び/又はシラン誘導体化合物の混合物を含み得る。
いくつかの例において、シラン又はシラン誘導体は、官能化ポリマー被覆層の官能基と反応できる不飽和部分を含む。本明細書で使用する場合、用語「不飽和部分」は、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、ヘテロシクロアルキン、又は少なくとも1つの二重結合若しくは少なくとも1つの三重結合を含むそれらの任意に置換される変異体を含む化学基を指す。不飽和部分は、一価又は二価であり得る。不飽和部分が一価であるとき、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、及びヘテロシクロアルキンは、それぞれ、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロシクロアルキニルと互換的に使用される。不飽和部分が二価である場合、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、及びヘテロシクロアルキンは、それぞれ、シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、ヘテロシクロアルケニレン、及びヘテロシクロアルキニレンと互換的に使用される。
不飽和部分は、シラン若しくはシラン誘導体のケイ素原子に直接共有結合するか、又はリンカーを介して間接的に結合することができる。好適なリンカーの例には、場合により置換されていてもよいアルキレン(すなわち、二重結合の開環によりアルケンから又は異なる炭素原子からの2個の水素原子の除去によりアルカンから誘導されると見なされる二価飽和脂肪族基(例えばエチレン))、置換ポリエチレングリコール等が含まれる。
本明細書で使用する場合、「スペーサ層」は、2つの要素を併せて結合する材料を指す。いくつかの例において、スペーサ層は、結合を助ける放射線吸収材料とすることができ、又は結合を助ける放射線吸収材料と接触させることができる。
本明細書で使用される「表面化学物質」という用語は、フローセルのチャンバに組み込まれている化学的及び/又は生物学的に活性な成分を指す。本明細書に開示される表面化学の例は、基材の表面の少なくとも一部に付着した官能化ポリマー被覆層及び/又は官能化ポリマー被覆層の少なくとも一部分に付着したプライマーを含む。
「チオール」官能基は、-SHを指す。
本明細書で使用する場合、用語「テトラジン」及び「テトラジニル」は、4個の窒素原子を含む6員ヘテロアリール基を指す。テトラジンは任意に置換され得る。
本明細書で使用される「テトラゾール」は、4個の窒素原子を含む5員複素環式基を指す。テトラゾールは任意に置換され得る。
本明細書で用いる場合、用語「YES法」は、Illumina社により開発された化学蒸着プロセスを有するYield Engineering Systems(「YES」)により提供される化学蒸着ツールを指す。それには3つの異なる蒸着システムが含まれる。自動化されたYES−VertaCoatシラン蒸気システムは、200mm又は300mmのウェハに対応できる柔軟なウェハハンドリングモジュールを使用して、大量生産用に設計されている。手動ロードYES−1224Pシラン蒸気システムは、その設定可能な大容量チャンバで多用途生産のために設計されている。Yes−LabKoteは、実現可能性の研究や研究開発に理想的な低コストの卓上バージョンである。
本明細書及び特許請求の範囲に記載された態様及び実施例は、上記の定義に照らして理解することができる。
保護被膜を含むフローセルの例及びその製造方法、並びに使用方法を、図面を参照しながら説明する。
方法100の一例を図1に示す。方法100は、(参照番号102で示すように)基材の一部に表面化学物質を添加すること、及び少なくとも前記表面化学物質(参照番号104で示すように)の上に水溶性保護被膜を塗布することを含む。一例において、方法100は、フローセル基材の一部に表面化学物質を加えることを含み、ここで前記表面化学物質は、塩基配列決定プライマー、又は前記塩基配列決定プライマー、若しくは塩基配列決定プライマー及び官能化ポリマー被覆層を結合する官能化ポリマー被覆層であり、;少なくとも前記表面化学物質上に水溶性保護被膜を塗布することを含む。前記方法100の2つの例を、方法100’及び100’として図2に示す。
前記方法100’、100’’は、図2の参照番号101で示されるようにパターン基材、又は非パターン基材を含んでもよい。非パターン基板12’を含む方法100の他の例は、図6A〜図6Eを参照してさらに説明される。前記パターン基材は、パターン付きウェハ又はパターン付きダイ、あるいは本明細書に開示されている他のパターン付き基材のいずれでもよい。本明細書に記載の基板の任意の例を使用することができる。前記パターン基材(図3の参照番号12で示す)は、前記基材の露出層上若しくは表面内部に画定された凹部と、隣接する凹部を分離する中間領域とを含む。前記凹部は、例えば、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術等を含む様々な技術を使用して、前記基材中又は基材上に製作してもよい。当技術分野では、使用される技術は基材の組成及び形状に依存するであろう。図5Aを参照して以下に説明されるように、凹部には多くの異なるレイアウトが考えられうる。
図2には示されていないが、前記表面化学物質を添加する前に、方法100’、100’’のそれぞれは、パターン基材を洗浄プロセス、及び/又は、後工程の表面化学物質の堆積のためにパターン基材表面(例えば、凹部、及び場合によっては隣接する中間領域)を処理する別のプロセスにさらすことを含みうる。前記洗浄プロセス及び表面処理プロセスの例は、図4及び図5A〜図5Lを参照して以下にさらに説明する。
例示的な方法100’において、前記表面化学物質は、官能化ポリマー被覆層及び前記プライマーの両方であってもよく、また単一の保護被膜を使用してもよい。この例において、前記表面化学物質を添加することは、前記凹部内に前記官能化ポリマー被覆層を形成し(参照番号102’)、そして前記官能化ポリマー被膜層に前記プライマーをグラフトすること(参照番号102’’)を含み、前記プライマーがグラフトされた後に前記保護被膜が形成される(参照番号104’)。
方法100’の参照番号102’では、官能化ポリマー被覆層の形成が行われる。官能化ポリマー被覆層の例は、以下の式(I)の繰り返し単位を含む。
上記式中、R1は、(水素原子)又は任意に置換されるアルキルであり;
RAは、アジド、任意に置換されるアミノ、任意に置換されるアルケニル、任意に置換されるヒドラゾン、任意に置換されるヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されるテトラゾール、任意に置換されるテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、及びチオールからなる群から選択され;
R5は、H及び任意に置換されるアルキルからなる群から選択され;
−(CH2)p−のそれぞれは任意に置換されていてもよく;
pは1〜50の範囲の整数であり
nは1〜50,000の範囲の整数であり、そして
mは1〜100,000の範囲の整数であり、
式(I)の構造中、当業者は、「n」及び「m」サブユニットがポリマー中にランダムな順序で存在する繰り返しサブユニットであることを理解するであろう。
官能化ポリマー被覆層の特定の例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド−コ−アクリルアミド、PAZAMである(例えば、米国特許公開第2014/0079923A1号又は同第2015/0005447A1号を参照のこと。これらのそれぞれの特許公開公報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)。当該PAZAMは、以下に示される構造を含む。
ここで、上記式中、nは1〜20,000の範囲の整数であり、そしてmは1〜100,000の範囲の整数である。式(I)と同様に、当業者は、「n」及び「m」サブユニットがポリマー構造全体にわたってランダムな順序で存在する繰り返し単位であることを認識するであろう。
式(I)又はPAZAMポリマーの分子量は、約10kDa〜約1500kDaの範囲であり得、又は具体例において、約312kDaであり得る。
いくつかの例において、式(I)又はPAZAMポリマーは直鎖状ポリマーである。いくつかの他の例において、式(I)又はPAZAMポリマーは、わずかに架橋された架橋ポリマーである。他の例において、式(I)又はPAZAMポリマーは分岐状ポリマーを含む。
好適なポリマー材料の他の例には、アガロースのようなコロイド構造、ゼラチンのようなポリマーメッシュ構造、ポリアクリルアミドポリマー及びコポリマーのような架橋ポリマー、シランフリーアクリルアミド(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2011/0059865号を参照のこと)、又はアジド化型(azidolyzed version)等のSFA等が含まれる。好適なポリアクリルアミドポリマーの例は、例えば国際公開第2000/031148(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、アクリルアミド及びアクリル酸若しくはビニル基を含有するアクリル酸から形成されてもよく、又は、例えば、国際公開第2001/001143号パンフレット若しくは国際公開第2003/0014392号パンフレット(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、[2+2]光環状付加反応を形成するモノマーから形成されてもよい。他の好適なポリマーは、ブロモ−アセトアミド基で誘導体化されたSFA及びSFAのコポリマー(例えば、BRAPA)、又はアジド−アセトアミド基で誘導体化されたSFA及びSFAのコポリマーである。
他の官能化分子が官能基化されて、パターン基材及びその後に塗布されるプライマーと相互作用する限り、前記他の官能化分子を使用して官能化ポリマー被覆層を形成してもよいことが理解されうる。官能化ポリマー被覆層を形成するための好適な分子の他の例には、アガロースのようなコロイド構造、ゼラチンのようなポリマーメッシュ構造、又は、ポリアクリルアミドポリマー及びコポリマーのような架橋ポリマー構造、シランフリーアクリルアミド(SFA)、又はアジド化型のSFA等を含んでもよい。好適なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミド及びアクリル酸若しくはビニル基を含有するアクリル酸から合成してもよく、あるいは[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成してもよい。
スピンコーティング、ディッピング若しくはディップコーティング、又は陽圧若しくは陰圧下での官能化分子の流れ、又は他の好適な技術を使用して、官能化ポリマー分子(例えば、PAZAM)は、パターン基板の表面に堆積させることができる。官能化分子は溶液中に存在してもよい。一例において、溶液はエタノールと水の混合液中にPAZAMを含む。いくつかの態様において、官能化ポリマー分子は重合を完了する前に基材に塗布され、そして被膜を形成するための重合は、基材表面上で行われる。
コーティングされた後、官能化分子をまた、パターン基材全体にわたって(すなわち、凹部及び中間領域上に)官能化ポリマー被覆層を形成するために硬化処理にさらしてもよい。一例において、官能化分子の硬化は、室温(例えば、約25℃)から約60℃の範囲の温度で、約5分から約2時間の範囲の時間にわたって行われてもよい。場合によっては、官能化ポリマー被覆層は、保護被膜の塗布を施す前に硬化される。
前記パターン基材の中間領域上ではなく前記凹部内に前記官能化ポリマー被覆層を形成するためには、前記官能化ポリマー被覆層は、i)約7.5から約11の範囲のpHを有し、研磨粒子を含む、塩基性水性スラリーを使用して中間領域から研磨除去されてもよい、又はii)研磨パッド及び前記研磨粒子を含まない溶液を使用して中間領域から研磨除去されてもよい。
方法100’のこの例において、次に、参照番号102’’において前記プライマーの付着として示されるように、前記プライマーが前記凹部内に残留している前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされる。好適なプライマーの例には、フォワード増幅プライマー又はリバース増幅プライマーが含まれる。好適なプライマーの特定の例には、HiSeq(商標)、HiSeq X(商標)、MiSeq(商標)、MiSeq X(商標)、NextSeq(商標)、NovaSeq(商標)、Genome Analyzer(商標)及びその他の機器プラットフォームにおける塩基配列決定のためにIllumina Inc.によって販売されている市販のフローセルの表面で使用されるP5又はP7プライマーが含まれる。
グラフト化は、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンスよって達成することができる、又は前記凹部の少なくともいくつかにおいて前記プライマーを官能化ポリマー被覆層に付着させる別の好適な方法によって達成することができる。これらの例示的な技術のそれぞれは、前記プライマー、水、緩衝剤及び触媒を含み得る、プライマー溶液若しくは混合物を利用し得る。
ダンクコーティングは、パターン基材(その凹部内に官能化ポリマー被覆層を有する)を一連の温度制御バスに浸すことを含み得る。当該バスは流量制御されてもよく、及び/又は窒素ブランケットで覆われてもよい。前記バスはプライマー溶液又は混合物を含み得る。様々なバスを通して、前記プライマーは少なくともいくつかの凹部内の官能化ポリマー被覆層に付着する。一例において、コーティングされ研磨されたパターン基材をプライマー溶液又は混合物を含む第1のバスに導入し、そこでプライマーを付着させる反応が起こり、次いでパターン基材を洗浄のために追加の槽に移す。前記パターン基材は、ロボットアームを用いて又は手動でバスから別のバスへ移動させることができる。乾燥システムもダンクコーティングに使用することができる。
スプレーコーティングは、プライマー溶液又は混合物をコーティングされた及び研磨されたパターン基材上に直接スプレーすることによって達成することができる。スプレーコーティングされたウェハは、約0℃〜約70℃の範囲の温度で約4分〜約60分の範囲の時間インキュベートされてもよい。インキュベーション後、前記プライマー溶液又は混合物は、例えばスピンコーターを用いて希釈及び除去することができる。
パドルディスペンスは、プール及びスピンオフ方法に従って実行されてもよく、したがってスピンコーターを用いて達成されてもよい。前記プライマー溶液又は混合物は、(手動で又は自動化プロセスによって)コーティングされた及び研磨されたパターン基材に塗布されてもよい。塗布されたプライマー溶液又は混合物は、コーティングされ研磨されたパターン基材の表面全体に塗布されるか又はその表面全体に展開することができる。プライマーを被覆したパターン基材は、約0℃〜約80℃の範囲の温度で約2分〜約60分の範囲の時間インキュベートすることができる。インキュベーション後、プライマー溶液又は混合物は、例えばスピンコーターを用いて希釈及び除去することができる。
一例において、前記プライマーが前記凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされた後、前記方法100’のこの例はさらに、前記表面化学物質上及び少なくとも基材(参照番号104’で保護被膜形成として示されるように)の一部上に前記水溶性保護被膜を塗布することを含む。別の例において、前記プライマー溶液又は混合物は、保護被膜を形成する水溶性のフィルム形成材料を含んでもよく、したがって、プライマーグラフト化及び保護被膜形成が同時に起こり得る。
プライマーグラフト化及び保護被膜形成が別々のプロセスである場合、前記水溶性保護被膜は、表面化学物質(この例において官能化被覆層及びその上のプライマー)が覆われて、かつ前記パターン基材の結合領域が露出されたままになるよう、選択的に堆積又はパターン化されてもよい。パターン基材の結合領域は、一般に、蓋部が前記パターン基材に結合される、パターン基板の中間領域のうちのいくつかの上に位置する。前記パターン基材がウェハであるとき、前記結合領域は、ウェハから形成されているいくつかのフローセルの境界を画定することができる。前記パターン基材がダイであるとき、前記結合領域は、形成されている1つのフローセルの外側境界を画定することができる。前記結合領域の一部ではないパターン基材の他の部分を前記水溶性保護被膜で被覆することができることを理解すべきである。
前記方法100’の例において、水溶性保護被膜を選択的に堆積又はパターニングすることは、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷によって達成することができる。水溶性保護被膜が結合領域に塗布されないように、マスクを使用してパターン基材の結合領域を覆うことができる。
水溶性保護被膜のための例示的な選択的堆積又はパターニング技術のそれぞれは、水及び最大約15%(質量対体積)の水溶性材料を含み得る水溶液を利用してもよい。いくつかの例において、水溶性材料は水溶液の15%以下を構成する。他の例において、前記水溶液は、約2%〜約13%の水溶性材料、又は約2.5%〜約10%の水溶性材料を含む。前記水溶液の濃度は、フローセル構造(例えば、流路、入力ポート及び出力ポート等の寸法)に応じて変更されることに理解すべきである。例えば、フロースルーデポジションを利用する場合、前記濃度は、ポート、流路等を閉塞することなく水溶液がフローセルを通って流れることができるように選択されてもよい。そのようなものとして、濃度はまた約15%以上でもよい。望ましい厚さを得るために、濃度の下限は約2wt%(質量対体積)であり得る。前記方法100’の例における水溶性材料(及び得られる保護被膜)は、本明細書に開示されている例のいずれか(すなわち、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体;水溶性天然タンパク質若しくはその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物;又はシクロデキストリン)であり得る。一例において、水溶性材料は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(この一例は、BASF Corpから入手可能なコリコート(登録商標)IRとして市販されている)、スクロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、グリセロール、又はクエン酸ナトリウム塩であり得る。
前記水溶液はまた、水溶性共溶媒、酸化防止剤、染料、紫外線安定剤、加工助剤等のような添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、水溶性のフィルム形成材料の
流動性又は溶液若しくはフィルム形成能に悪影響を及ぼさない量であれば、当該水溶液中に含まれていてもよい。例えば、エタノールのような共溶媒が、場合により約1%〜約10%、又は約2.5%〜約7.5%の範囲の量で存在してもよい。別の例において、前記水溶液は、約5%の水溶性材料、約5%の共溶媒、及び残部(約90%)の水を含み得る。他の例において、前記水溶液は、約5〜約7.5%の水溶性材料と、約5〜約10%の共溶媒と、残部の水と(例えば、7.5%w/vのコリコート(登録商標)IRを10%水性エタノールに含む)を含み得る。
前記水溶液を塗布した後、それを乾燥させて、水溶性保護被膜を固体又はゲル形態で形成することができる。乾燥は、空気曝露、窒素曝露、真空、加熱(例えば、オーブン中)、又はスピンコーティング(すなわち、乾燥するまで回転する)によって達成することができる。
前記保護被膜のいくつかの例は、塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)等の液体形態のままであってもよい。前記保護被膜が液体形態であると、溶液が少なくとも実質的に流路を満たして表面化学物質を覆うことができるので、湿式保管を構成する。保護被膜の液体形態は、例えば、保護被膜の塗布の前に(例えば、図2又は図6A〜図6Eのステップ104’’’において)流路が形成されるときに使用されてもよく、その中に液体を入れることができる。一例において、SSCは、0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム混合物として適用される。
次に、前記方法100’の例は、参照番号106で示されるように、アセンブリーを含む。前記保護被膜は、あらゆるアセンブリープロセス中に前記表面化学物質を保護する。一例において、アセンブリーは、前記凹部と選択的に流体的に連通する流路を形成するために、蓋部をパターン基材の結合領域に結合することを含む。パターン基材がウェハであるとき、前記蓋部の異なる領域は、ウェハを使用して形成されているそれぞれの流路を少なくとも部分的に画定することができる。前記パターン基材がダイであるとき、蓋部は、形成されている1以上の流路を画定することができる。
蓋部は、凹部内の表面化学物質に向けられる励起光に対して透明である任意の材料であり得る。例として、蓋部はガラス(例えば、ホウケイ酸塩、溶融シリカ等)、プラスチック等であり得る。市販の好適なホウケイ酸ガラスの例は、Schott North America、Incから入手可能なD263(登録商標)である。好適な市販されているプラスチック材料の例、すなわちシクロオレフィンポリマーは、Zeon Chemicals L.Pから入手可能なZEONOR(登録商標)製品である。
いくつかの例において、前記蓋部は、結合領域の形状に対応し、結合領域に結合される側壁と一体的に形成されてもよい。例えば、へこみ部を透明ブロックにエッチングして、実質的に平坦な部分と、この実質的に平坦な部分から延びる側壁とを形成してもよい。エッチングされたブロックがパターン基材の結合領域に取り付けられると、前記へこみ部は流路になりうる。
他の例において、前記側壁及び前記蓋部は、互いに結合された別々の構成要素でありうる。例えば、前記蓋部は、少なくとも実質的に平坦な外表面と、流路(パターン基材に一旦結合された)の一部(例えば、頂部)を画定する少なくとも実質的に平坦な内表面と、を有する実質的に長方形状のブロックであり得る。前記ブロックは、前記側壁上に搭載(例えば結合)されてもよく、前記側壁は前記パターン基材の結合領域に結合されて流路の側壁を形成する。この例において、前記側壁は、前記スペーサ層(本明細書で後述)について本明細書に記載されている材料のいずれかを含んでよい。
レーザ結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当該技術分野で知られている他の方法といった任意の好適な技法を使用して、蓋部をパターン基材の結合領域に結合してもよい。一例において、スペーサ層を使用して、蓋部をパターン基材の結合領域に結合することができる。前記スペーサ層は、前記パターン基材及び前記蓋部の中間領域(例えば、結合領域)の少なくとも一部と併せて、シールすることになりうる任意の材料でもよい。
一例において、前記スペーサ層は、蓋部及び/又はパターン基材によって透過される波長の放射線を吸収する放射線吸収材料とすることができる。吸収されたエネルギーは、次々に、前記スペーサ層と前記蓋部との間及び前記スペーサ層と前記パターン基材との間に結合を形成する。このような放射線吸収材料の例は、約1064nmで吸収する、デュポン(米国)製のブラックKAPTON(登録商標)(カーボンブラック含有ポリイミド)である。当然のことながら、カーボンブラックを添加せずにポリイミドを使用することができるが、但し、波長を天然のポリイミド材料によって著しく吸収される波長(例えば、480nm)に変更する可能性が生ずる。別の例として、532nmの光を照射するとポリイミドCEN JPが結合されうる。前記スペーサ層が放射線吸収材料である場合、前記スペーサ層は、スペーサ層が所望の結合領域と接触するように、蓋部とパターン基材との間の界面に配置されてもよい。好適な波長のレーザーエネルギーが前記界面に当てられる(すなわち、放射線吸収材料が照射される)間、圧縮(例えば、約100PSIの圧力)を加えてもよい。好適な結合を達成するために、レーザーエネルギーを上からも下からも界面に加えることができる。
別の例において、前記スペーサ層は、当該スペーサ−層と接触している放射線吸収材料を含んでもよい。前記放射線吸収材料は、前記スペーサ層と前記パターン基材との間の界面、並びに前記スペーサ層と前記蓋部との間の界面に塗布されてもよい。一例として、スペーサ層はポリイミドとすることができ、別個の放射線吸収材料はカーボンブラックとすることができる。この例において、前記別個の放射線吸収材料は、前記スペーサ層と前記蓋部との間及び前記スペーサ層と前記パターン基材との間における結合を形成するレーザーエネルギーを吸収する。この例において、好適な波長のレーザーエネルギーを界面に加える(すなわち、放射線吸収材料が照射される)間に、それぞれの界面を圧縮してもよい。
前記パターン基材がウェハであるとき、前記スペーサ層及び(蓋部に接続された又は蓋部の)側壁は、隣接する流路から1つの流路を物理的に分離することができ、前記ウェハの周囲に配置することができる。前記パターン基材がダイであり、形成されているフローセルが単一の流路又はレーンを含む場合、前記スペーサ層及び(蓋部に接続された又は蓋部の)側壁をダイの周囲に配置し、前記流路を画定し、前記フローセルを密封することができる。前記パターン基材がダイであり、形成されているフローセルが複数の隔離された流路(例えば、8つの流路又は4つのフローレーン)を含む場合、前記スペーサ層及び(蓋部に接続された又は蓋部の)側壁は、隣接する流路/レーンから、1つの流路/レーンを物理的に分離することができ、前記ダイの周囲に配置することができる。しかしながら、実施形態に応じて、スペーサ層及び側壁を任意の所望の領域に配置することができることを理解すべきである。
前記パターン基材がダイであるとき、前記方法100’のアセンブリー106はフローセルを形成する蓋部の結合を含む。前記パターン基材がウェハであるとき、前記方法100’のアセンブリー106はダイシングのような追加の処理を含んでもよい。一例において、前記蓋部はパターン化されたウェハ(パターン化ウェハ)に結合されてもよく、ダイシングは個々のフローセルを形成する。本明細書で述べたように、ウェハ上では、側壁は1つの流路を隣接する流路から物理的に分離することができ、したがってダイシングは、各個々のフローセルは望ましい数の流路を含み、それらの各々は、その周囲を取り囲む当初の側壁の一部を有するように、少なくともいくつかの側壁を通して起こり得る。別の例において、前記パターン化されたウェハをさいの目に切って蓋部が無いダイを形成することができ、これに個々のフローセルを形成するためにそれぞれの蓋部を結合することができる。
一例において、アセンブリー106後に、1以上のフローセルが形成される。
ここで図2の方法100’’の一例を参照すると、前記表面化学物質は前記官能化ポリマー被覆層と前記プライマーの両方であってもよく、そして2つの異なる保護被膜が使用されうる。前記方法100’と同様に、前記方法100’’の間に表面化学物質を添加することは、前記凹部内に前記官能化ポリマー被覆層を形成すること(参照番号102’’’)と、前記官能化ポリマー被覆層に前記プライマーをグラフトすること(参照番号102’)とを含む。しかしながら、前記方法100’とは異なり、前記方法100’’の間に、前記官能化ポリマー被覆層が形成された後に初期の水溶性保護被膜が形成され(参照番号104’’)、そして前記プライマーがグラフトされた後に、別の水溶性保護被膜が形成される(参照番号104’’’)。
前記方法100’’中の参照番号102’及び104’’において、表面化学物質を添加することは、凹部(102’)内に官能化ポリマー被覆層を形成することを含み、前記官能化ポリマー被覆層が形成された後に(104’’)、初期の水溶性保護被膜は形成される。本明細書中に記載されるような官能化ポリマー被覆層を形成するための材料及び方法は、方法100’’において使用され得ることが理解されるべきである。一例において、前記官能化ポリマー被覆層を研磨してから約5時間以内に初期の水溶性保護被膜を堆積させることが望ましい場合がある。この時間枠は、官能化ポリマー被覆層の表面崩壊速度を低下させる可能性があり、さらには、より大きな熱処理ウィンドウを提供する可能性もある。
初期の水溶性保護被膜は、表面化学物質(この例において官能化ポリマー被覆層)が覆われ、かつパターン基材の結合領域が露出したままになるように、選択的に堆積又はパターン化されてもよい。結合領域は一般に、蓋部が前記パターン基材に結合される箇所のパターン基材の中間領域の一部の上に位置する。
前記水溶性保護被膜の選択的堆積又はパターニングは、浸漬コーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して達成することができる。上述のように、マスクを使用してパターン基材の結合領域を覆い、その結果、初期の水溶性保護被膜が結合領域上に塗布されないようにしてもよい。
初期の水溶性保護被膜のための例示的な選択的堆積又はパターニング技術の各々は、水溶液を利用してもよく、当該水溶液は、水及び最大約15%(質量対体積)の水溶性材料を含んでもよい。本明細書で述べたように、前記水溶液の濃度は、フローセル構造(例えば、流路、入力ポート及び出力ポート等の寸法)に応じて変更する可能性があり、したがって15%超又は15%未満であり得る。望ましい厚さを得るために、濃度の下限値は約2重量%(質量対体積)であり得る。方法100’’のこの例における、水溶性材料(及び得られる保護被膜)は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、ポリアクリルアミド、又はポリエチレングリコールでありうる。この例において、前記水溶液は、酸化防止剤、染料、紫外線安定剤、加工助剤等の添加剤を含んでもよい。
参照番号106’に示されるように、方法100’’は、初期の保護被膜が形成された後にフローセルを組み立てることを含む。この例において、前記初期の保護被膜は、あらゆる組み立て工程中に前記官能化ポリマー被覆層を保護する。前記パターン基材がウェハである場合、アセンブリー(又は組み立てとも称する)は、それぞれの組の凹部と選択的に流体的に連通するそれぞれの流路を形成するために結合領域に蓋部を結合し、次いで結合された蓋部及び基材をダイシングしてそれぞれのフローセルを形成することを含む。前記パターン基板がダイであるとき、アセンブリーは、蓋部を前記結合領域に結合して、1以上の流路を有する単一のフローセルを形成することを含む。結合及び/又はダイシングプロセスは、本明細書に記載されているように実行することができる。
アセンブリー106’(すなわち、結合、又は結合及びダイシング)の後に、1以上のフローセルが形成される。次いで、方法100’は、前記初期の水溶性保護被膜を除去し、それによって前記官能化ポリマー被覆層及び前記パターン基材の少なくとも一部を露出させること(参照番号108、IPCリムーバルとして示される);前記官能化ポリマー被覆層にプライマーをグラフトすること(参照番号102’’’、プライマー付着として示す);並びに前記プライマー、前記官能化ポリマー被覆層及び前記パターン基材の少なくとも一部の上に、第2の水溶性保護被膜を形成すること(参照番号104’’’、保護被膜形成として示される)を含む。
プロセス108、102’’’及び104’’’は、アセンブリー106’の結果として形成されたフローセルのそれぞれ、又は任意の1以上のフローセルにおいて行われてもよい。
前記初期の保護被膜は水溶性であるため、その除去は溶解プロセスを伴ってもよい。水及び緩衝液、又は、水若しくは水性緩衝液は、前記蓋部又は前記パターン基材に形成されたそれぞれの入力ポートを介してフローセルの流路に導入されてもよく、初期の保護被膜を溶解するのに十分な時間、流路内に水及び緩衝液、又は、水若しくは水性緩衝液を流してもよく、その後、蓋部又はパターン基材に形成されたそれぞれの出力ポートから除去してもよい。そのように、溶解工程はフロースループロセスとして実施することができる。前記保護被膜が溶解すると、形成される溶液は、比較的低濃度(場合によっては、例えば、約15%以下、質量対体積)の水溶性材料を有することになり、それによって、流路及びポートの目詰まりを防止することが可能となる。前記初期の保護被膜を溶解してフローセルから溶液を除去すると、官能化ポリマー被覆層及び初期の保護被膜によって被覆されていた任意のパターン基材が露出する。
前記方法100’’のこの例において、次に、参照番号102’’’で表されるように、前記プライマーを前記凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にグラフトする。本明細書に記載の任意のプライマーを使用することができる。方法100’ ’のこの例において、グラフト化はフロースループロセスによって達成することができる。フロースループロセスにおいて、本明細書に記載のプライマー溶液又は混合物は、それぞれの入力ポートを介してフローセルの流路に導入されてもよく、流路内で維持されてもよい。前記プライマーが1以上の凹部内の官能化ポリマー被覆層に付着するのに十分な時間(すなわち、インキュベーション時間)保持されて、次いでそれぞれの出力ポートから除去され得る。プライマー付着後、追加の流体を前記流路に流して、新たな官能化された凹部及び流路を洗浄することができる。
一例において、前記プライマーが前記凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にグラフトされた後、前記方法100’’のこの例は、前記表面化学物質上及び前記パターン基材(参照番号104’’’)の少なくとも一部の上に(第2の)水溶性保護被膜を形成することをさらに含む(この例において、官能化ポリマー被覆層は、それに付着したプライマーを有する)。
この例示的な方法100’’では、前記(第2の)水溶性保護被膜をフロースループロセスによって堆積させることができる。当該フロースループロセス法では、前記水溶液(水及び場合によっては最大約15%(質量対体積)の水溶性材料を含む)を、それぞれの入力ポートを通って前記フローセルの流路内に導入することができ、前記流路内に維持されてもよい。十分量の前記水溶液を前記流路内の表面化学物質及びパターン基材のあらゆる露出表面を覆うために導入することができる。前記溶液が流路内に存在する間、設定された時間、空気、窒素、又は真空が入力ポートを通って溢れるように流れるドライダウンプロセスに、前記フローセルは曝されてもよく、それにより前記表面化学物質及び前記基材のあらゆる露出部分上の(第2の)水溶性保護被膜を乾燥する。他の例において、乾燥プロセスは実行されなくてもよく、液体の保護被膜がフローセルの流路内に形成されてもよい。
この例示的方法100’’において、前記(第2)水溶性保護被膜は、本明細書に開示されている任意の例(すなわち、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体、水溶性天然タンパク質又はその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物;又はシクロデキストリン)であり得る。一例において、前記水溶性材料は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(例えば、BASF Corpから入手可能なコリコート(登録商標)IR)、スクロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、グリコール、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、ヒドロキシル官能性ポリマー、グリセロール、又はクエン酸ナトリウム塩を含む。
別の例において、表面化学物質20、22上へのプライマーグラフト化及び(第2の)水溶性保護被膜は、フロースループロセスを介して同時に起こり得る。この例において、単一の溶液が前記プライマー及び前記水溶性材料を含む。
一例において、保護被膜形成104’’’の後に、1以上のフローセルが形成される。
方法100’又は100’’によって形成されたフローセル10の一例を図3に示す。フローセル10はパターン基材12を含み、当該パターン基材12は、前記方法100’又は100’’のプロセスにさらされたダイであってもよく、前記方法100’又は100’’のプロセスにさらされたウェハであってもよく、又はアセンブリー106又は106’の一部としてダイシングされたウェハであってもよい。
一般に、パターン基材12は、中間領域16によって分離された凹部14と、凹部14内に配置された表面化学物質20、22とを含む。表面化学物質は、官能化ポリマー被覆層20及びプライマー22を含む。図示していないが、凹部14はまた、基材12と官能化ポリマー被覆層との間に配置された表面処理化学物質(例えば、シラン又はシラン誘導体)を有することができることを理解すべきである。これと同じ表面処理化学物質を中間領域16上に配置することもできる。
フローセル10はまた、パターン基材12の結合領域25に結合された蓋部26を含み、前記蓋部26は、前記凹部14と選択的に連通する流路30A、30B等を少なくとも部分的に画定する。図3に示す例において、蓋部26はいくつかの側壁29に接続された頂部27を含み、これらの構成要素27、29は6つの流路30A、30B、30C、30D、30E、30Fのそれぞれの一部を画定する。各側壁29は、1つの流路30A、30B、30C、30D、30E、30Fを、各隣接する流路30A、30B、30C、30D、30E、30Fから分離し、各流路30A、30B、30C、30D、30E、30Fは、それぞれの組の凹部14と選択的に流体的に連通する。
図示されていないが、26又はパターン基材12は、流体をそれぞれの流路30A、30B、30C、30D、30E、30F(例えば、試薬カートリッジ又は他の流体保管システムから)及び流路の出口(例えば、廃棄物除去システムへ)に方向付けるために、他のポート(図示せず)と流体的に係合する入口ポート及び出口ポートを含んでもよい。
水溶性保護被膜24は、凹部14内の表面化学物質20、22、及びパターン基材12の少なくとも一部(例えば、結合領域25でもない、それらの中間領域16)を覆う。例示のフローセル10では、保護被膜24は、方法100’において参照番号104’で示されるプロセス、又は方法100’’において参照番号104’’’で示されるプロセスによって形成されている。したがって、保護被膜24は、本明細書に開示されている例のいずれかであってもよい(すなわち、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体;水溶性天然タンパク質若しくはその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物、又はシクロデキストリン)。
フローセル10は、前記保護被膜24を所定の位置にした状態で出荷、保管等することができる。フローセル10を用途(例えば、順序付け作業)に利用することが望ましい場合、当該保護被膜は、参照番号108を参照して説明した溶解工程を介して少なくとも部分的に除去してもよい。必要により、塩基配列決定を進行させる目的で除去を行わなくてもよい。
図3に示すフローセル10は、パターン基材の代わりに非パターン基材を使用して形成することができる。パターン化されていない基材(非パターン基材)では、連続的な表面は、図3のウェル14’に見られるのと同じ表面化学物質20、22を含むであろう。一例が示されており、かつ図6A〜図6Eをさらに参照されたい。
方法200の別の例が図4に示されている。前記方法200のこの例は、前記方法100の変形例の一つであり、他のプロセスのいくつかを詳細に説明しており、当該他のプロセスは、その後の表面化学物質20、22の堆積のために、前記パターン基材12の表面(すなわち、凹部14、及び場合によっては隣接する中間領域16)を調節するプロセス等を包含してもよい。
前記方法200は、中間領域によって分離された凹部を含む前記パターン基材の表面にシラン又はシラン誘導体を付着させ、それによって(参照番号202に示すように)シラン化された凹部及びシラン化された中間領域を形成すること;官能化ポリマー被覆層をシラン化された凹部内及びシラン化された中間領域上に形成すること(参照番号204に示すように);前記官能化ポリマー被覆層をシラン化された中間領域から研磨すること(参照番号206で示すように);前記シラン化された凹部内の前記官能化ポリマー被覆層にプライマーをグラフトして官能化された凹部を形成すること(参照番号208に示すように);並びに(参照番号210で示されるように)官能化された凹部上及び前記パターン基材の少なくとも一部の上に水溶性保護被膜を形成することを含む。
前記方法200の例は、図5A〜図5H(方法100’と同様)、図5Aから図5D及び図5Iから図5L(方法100’’と同様である)を参照してさらに説明される。前記方法200のいかなる詳細でも、方法100’又は100’’と組み合わされるか又はそれらに含まれてもよい。
図5Aは、パターン基材12の断面図である。前記パターン基材12は、パターン付きウェハ又はパターン付きダイ、あるいは他の任意のパターン基材(例えば、パネル、長方形シート等)であってもよい。本明細書に記載の前記基材12は、任意の例を使用することができる。パターン付きウェハを使用していくつかのフローセルを形成することができ、パターン付きダイを使用して単一のフローセルを形成することができる。一例において、前記基材は、約2mmから約300mmまでの範囲の直径、又は最大10フィート(約3メートル)までのその最大寸法を備えた、長方形のシート又はパネルを有してもよい。一例において、前記基材ウェハは、約200mmから約300mmの範囲の直径を有する。別の例において、前記基材ダイは約0.1mmから約10mmの範囲の幅を有する。上記には例示的な寸法が提供されているが、任意の好適な寸法を有する基材を使用してもよいことが理解されうる。
パターン基材12は、前記基材12の露出層若しくは表面上又はその中に画定された凹部14と、隣接する凹部14を分離する中間領域16とを含む。 本明細書に開示された例において、前記凹部14は表面化学物質(例えば20、22)で官能化されるようになるが、当該中間領域16は、結合に使用されてもよいが、プライマー(図5E〜5K参照)が前記中間領域16の上に存在するようにはならないであろう。
前記凹部14は、例えばフォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術等を含む様々な技術を使用して前記基材12の中又は当該基材12上に作製してもよい。 当業者には理解されるように、利用される前記技術は、基材12の組成及び形状に依存されるであろう。
規則的なパターン、繰り返しのパターン、及び非規則的なパターンを含むような、凹部14の多くの異なるレイアウトが考えられうる。一例において、前記凹部14は、密充填及び改善された密度のため六角形の格子状に配置されている。他のレイアウトは、例えば、直線(すなわち、長方形)状レイアウト、三角形状レイアウト等を含んでも良い。いくつかの例において、レイアウト又はパターンは、列及び行にあるx−y形式の凹部14であり得る。いくつかの他の例において、レイアウト又はパターンは、凹部14及び/又は中間領域16の繰り返し配列であり得る。さらに他の例において、レイアウト又はパターンは、凹部14及び/又は中間領域16のランダムな配置であり得る。パターンとしては、スポット状、パッド状、ウェル状、ポスト状、ストライプ状、スワール状、ライン状、トライアングル状、四角形状、サークル状、アーク状、チェック状、格子状、対角線状、矢印状、正方形状、及び/又はクロスハッチ状を含んでもよい。
前記レイアウト又は前記パターンは、画定された領域内の凹部14の密度(すなわち凹部14の数)に関して特徴付けることができる。例えば、凹部14は、1mm2当たり約200万個の密度で存在し得る。前記密度は、例えば少なくとも、1mm2当たり約100個以上の密度、1mm2当たり約1,000個以上の密度、1mm2当たり10万個以上の密度、1mm2当たり約100万個以上の密度、1mm2当たり約200万個以上の密度、1mm2当たり約500万個以上の密度、1mm2当たり約1000万個以上の密度、1mm2当たり約5000万個以上の密度、又はそれ以上の密度を含む様々な密度に調整することができる。あるいは又はさらに、前記密度は、1mm2当たり約5000万個以下の密度、1mm2当たり約1000万個以下の密度、1mm2当たり約500万個以下の密度、1mm2当たり約200万個以下の密度、1mm2当たり約100万個以下の密度、1mm2当たり約10万個以下の密度、1mm2当たり約1000個以下の密度、1mm2当たり約100個以下の密度、又はそれ以下の密度を含む様々な密度に調整することができる。基材12上の凹部14の密度は、上記の範囲から選択された下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得ることをさらに理解すべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で離間された凹部14を有することを特徴とし、中密度アレイは、約400nmから約1μmで離間された凹部14を有することを特徴とし、低密度アレイは、約1μm超で離間された凹部14を有することを特徴とする。上記では密度の例が提供されているが、任意の好適な密度を有する基材を使用してもよいことが理解されうる。
前記レイアウト又は前記パターンは、平均ピッチ、すなわち凹部14の中心から隣接する中間領域16の中心までの間隔(中心間距離)に関しても特徴付けられる。平均ピッチの周りの変動係数が小さくなるように、パターンを規則的に設けることができ、あるいはパターンを非規則的に設けることができ、その場合、変動係数は比較的大きくなり得る。いずれの場合も平均ピッチは、例えば少なくとも、約10nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。あるいは又はさらに、平均ピッチは、例えば、最大で、約100μm、約10μm、約5μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm、又はそれ以下であり得る。部位16の特定パターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された下限値の1つと上限値の1つとの間であり得る。一例において、凹部14は、約1.5μmのピッチ(中心間距離)を有する。上記では平均ピッチ値の例が提供されているが、他の平均ピッチ値が使用してもよいことが理解されうる。
図5A〜図5Lに示す例において、凹部14はウェル14’であり、したがってパターン基材12はその表面にウェル14’のアレイを含む。前記ウェル14’は、マイクロウェル又はナノウェルであってもよい。各ウェル14’は、その体積、ウェル開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けることができる。
各ウェル14’は、液体の閉じ込めが可能な任意の容積を有することができる。最小量又は最大量は、例えば、フローセル10(図5G及び図5K参照)の下流での使用に要求される、処理量(例えば、多重度)、分解能、分析物組成、又は分析物の反応性に選択することができる。例えば、当該容積は、少なくとも、約1×10-3μm3、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、又はそれ以上でありうる。代替的に又は追加的に、当該体積は、最大で、約1×104μm3、約1×103μm3、約100μm3、約10μm3、約1μm3、約0.1μm3、又はそれ以下であり得る。官能化ポリマー被覆層は、ウェル14’の容積の全部又は一部を満たすことができることを理解すべきである。個々のウェル14’内の前記被覆層の体積は、上記で特定された値よりも大きい、小さい、又はその間にあってもよい。
表面上の各ウェル開口部によって占められる面積は、ウェル体積について上記されたものと同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、表面上に開口する各ウェルの面積は、約1×10-3μm3、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、又はそれ以上でありうる。代替的に又は追加的に、当該面積は、最大で、約1×103μm3、約100μm3、約10μm3、約1μm3、約0.1μm3、約1×10−2μm3、又はそれ以下であり得る。各ウェル開口部によって占められる面積は、上記で特定された値よりも大きい、小さい、又はその間にあってもよい。
各ウェル14’の深さは、少なくとも、約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。あるいは又はさらに、当該深さは、最大で、約1×103μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm、又はそれ以下であり得る。当該各ウェル14’の深さは、上記で特定された値より大きくても、小さくても、又はその間にあってもよい。
場合によっては、各ウェル14’の直径は、少なくとも、約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上であり得る。あるいは又はさらに、当該直径は、最大で、約1×103μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm以下(例えば、約50nm)であり得る。各ウェル14’の直径は、上記で特定された値よりも大きくても、小さくても、又はその間にあってもよい。
表面化学物質20、22を凹部14内に添加し、そして前記表面化学物質20、22上及び少なくとも1部の前記パターン基材12上に前記水溶性保護被膜24を形成する目的で、前記パターン基材12は一連のプロセスに曝されてもよい。図5Bから5Hを合せて参照すると、前記保護被膜24が形成される前に表面化学物質20、22が添加される例が示されており、そして、図5Bから図5D及び図5Iから図5Lは共に、方法200の異なる段階で異なる表面化学物質20、22を保護する目的でいくつかの保護被膜24’、24が形成される例を示すものである。
図示されていないが、表面を洗浄し活性化するために、パターン基材12をプラズマアッシングに曝してもよい点を理解すべきである。例えば、当該プラズマアッシングプロセスは、有機材料を除去し、そして表面にヒドロキシル基が導入されうる。部分的には基材12の種類に応じて、他の好適な洗浄プロセスを使用して前記基材12を洗浄することができる。例えば化学的洗浄は、酸化剤又は腐食剤溶液を用いて実施してもよい。
前記パターン基材12(図5A参照)は、次いで、本明細書に開示される表面化学物質の一例である官能化ポリマー被膜層20(図5C)の堆積のために、表面12を修飾するプロセスに曝してもよい。一例において、パターン基材12を、前記パターン付きウェハ表面にシラン又はシラン誘導体18(図5B)を付着させるシラン化に、さらしてもよい。シラン化は、凹部14、14’内(例えば、底面上及び側壁に沿って)及び中間領域16上を含む表面と交差してシラン又はシラン誘導体18を導入する。
シラン化は、任意のシラン又はシラン誘導体18を用いて達成することができる。シラン又はシラン誘導体18と官能化ポリマー被膜層20との間で共有結合を形成することが望ましい場合があるので、シラン又はシラン誘導体18の選択は、部分的に、官能化ポリマー被膜層20(図5Cに示す)を形成用として使用する官能化分子に依存し得る。シラン又はシラン誘導体18を基材12に付着させるために使用する方法は、使用されている前記シラン又は前記シラン誘導体18に応じて変えてもよい。いくつかのシラン又はシラン誘導体の例を本明細書に記載する。
一例において、前記シラン又は前記シラン誘導体18は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)又は3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)(すなわち、X-RB-Si(ORc) 3、当該化学式中、Xはアミノであり、RBは−(CH2)3−であり、そしてRcはエチル又はメチルである。)である。この例において、基材12の表面を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)又は3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)で前処理して、表面上で1以上の酸素原子にシリコンを共有結合させる(メカニズムにより拘束されることを意図するものではなく、各ケイ素は1、2又は3個の酸素原子に結合してもよい)。この化学的に処理された表面を焼成してアミン基の単層を形成する。次いでアミン基をスルホ−HSABと反応させてアジド誘導体を形成する。1J/cm2〜30J/cm2のエネルギーで21℃でのUV活性化により、活性ニトレン種を生成し、これはPAZAM(例えば官能化分子)との様々な挿入反応を容易に進めることができる。
他のシラン化方法もまた使用され得る。好適なシラン化方法の例には、蒸着、YES法、スピンコーティング、又は他の堆積方法が含まれる。前記基材12をシラン化するために使用され得る方法及び材料のいくつかの例は、本明細書に記載されているが、他の方法及び材料を使用してもよいことを理解すべきである。
YES CVDオーブンを利用する例において、パターン基材12はCVDオーブン内に配置される。チャンバを排気し、その後シラン化サイクルを開始してもよい。サイクル中、シラン又はシラン誘導体容器は好適な温度(例えば、ノルボルネンシランについては約120℃)に維持され、前記シラン又は前記シラン誘導体の蒸気ラインは好適な温度(例えば、ノルボルネンについては約125℃)に維持され、真空ラインは好適な温度(例えば、約145℃)に維持される。
別の例において、前記シラン又は前記シラン誘導体18(例えば、液体ノルボルネンシラン)をガラス製のバイアルの内側に堆積させたり、パターン基材12と共にガラス製の真空デシケーターの内側に配置することができる。次いで、前記デシケーターを約15mTorrから約30mTorrの範囲の圧力に排気し、オーブン内に約60℃から約125℃の範囲の温度で置くことができる。シラン化を進行させ、次いでデシケーターをオーブンから取り出し、冷却しそして空気中に通気する。
蒸着、YES法及び/又は真空デシケーターは、様々なシラン又はシラン誘導体18、例えば、本明細書に開示されている不飽和部分の例を含むそれらのシラン又はシラン誘導体18等と共に使用してもよい。例として、前記シラン又は前記シラン誘導体18が、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体(例えば、1つの炭素原子の代わりに酸素原子又は窒素原子を含む(ヘテロ)ノルボルネン)、トランスシクロオクテン、トランスシクロオクテン誘導体、トランスシクロペンテン、トランスシクロヘプテン、トランス−シクロノネン、ビシクロ[3.3.1]ノン-1-エン、ビシクロ[4.3.1]デカ-1(9)−エン、ビシクロ[4.2.1]ノン-1(8)−エン、及びビシクロ[4.2.1]ノン-1-エン等のシクロアルケン不飽和部分を含む際に、これらの方法を使用してもよい。これらのシクロアルケンのいずれも、例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、又は(ヘテロアリシクリル)アルキル等のR基で置換することができる。ノルボルネン誘導体の例には、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシランが含まれる。他の例として、前記シラン又は前記シラン誘導体18が、シクロオクチン、シクロオクチン誘導体、又はビシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノン-4-イン若しくはそれらの誘導体、ビシクロ[6.1.0]ノン-2-イン、又はビシクロ[6.1.0]ノン-3-イン)等のシクロアルキン不飽和部分を含む場合にこれらの方法を使用できる。これらのシクロアルキンは、本明細書に記載の前記R基のいずれかで置換されていてもよい。
図5Bに示されるように、シラン又はシラン誘導体18の付着により、シラン化された凹部及びシラン化された中間領域を含む、シラン化パターン基材を形成する。
次いで、官能化ポリマー被覆層20をシラン化された凹部及びシラン化された中間領域上に形成することになるプロセスに対して、シラン化されたパターン化ウェハを曝してもよい。
本明細書に記載されているように、前記官能化ポリマー被覆層20の例には、PAZAM、又はパターン付きウェハ12と、その後に塗布されるプライマー22と相互作用するように官能化される、任意の他の分子とが含まれる。前記官能化ポリマー被覆層20を、参照番号102’を参照して説明したいずれかの技術を用いて、シラン化されたパターン付きウェハの表面上(すなわち、シラン化された凹部及びシラン化された中間領域上)に形成することができる。得られた被覆層20を図5Cに示す。
前記シラン化された凹部及びシラン化された中間領域(例えば18)への前記官能化ポリマー被覆層20の付着は、共有結合を介してもよい。シラン化された凹部への前記前記官能化ポリマー被覆層20の共有結合は、様々な使用の間、最終的に形成されるフローセルの寿命を通して、官能化ポリマー被覆層20を凹部14、14’内に維持するのに有用である。以下は、シラン又はシラン誘導体18と官能化ポリマー被覆層20との間で起こり得る反応のいくつかの例である。
シラン又はシラン誘導体18が不飽和部分としてノルボルネン又はノルボルネン誘導体を含む場合、前記ノルボルネン又は前記ノルボルネン誘導体は以下のことが可能である:i)PAZAMのアジド/アジド基と1,3-双極子環状付加反応を起こす;ii)PAZAMに結合したテトラジン基とのカップリング反応を起こす;PAZAMに結合したヒドラゾン基との環化付加反応を起こす;PAZAMに結合したテトラゾール基と光クリック反応を起こす;あるいは、PAZAMに結合したニトリルオキシド基との環化付加を起こす。
シラン又はシラン誘導体18が不飽和部分としてシクロオクチン又はシクロオクチン誘導体を含む場合、前記シクロオクチン又は前記シクロオクチン誘導体は、i)PAZAMのアジド/アジドと、歪み促進型アジド−アルキン1,3-付加環化(SPAAC)反応を起こす、又はii)PAZAMに結合したニトリルオキシド基と、歪み促進型アルキン−ニトリルオキシド環状付加反応を起こす。
前記シラン又は前記シラン誘導体18が不飽和部分としてビシクロノニンを含む場合、前記ビシクロノニンは、二環式における歪みに起因して、PAZAMに結合したアジド又はニトリルオキシドと同様のSPAACアルキン付加環化を起こす。
図示していないが、前記方法のいくつかの例において、パターン基材12はシラン化にさらされなくてもよいことを理解すべきである。また一方、パターン基材12をプラズマアッシングにさらし、次いで官能化ポリマー被覆層20をプラズマアッシングされたパターン基材12上に直接スピンコーティング(又は他の方法で堆積)してもよい。この例において、プラズマアッシングは、官能化ポリマー被覆層20を前記パターン基材12に接着することができる表面活性化剤(例えば、-OH基)を生成することができる。これらの例において、官能化ポリマー被覆層20は、プラズマアッシングによって生成された表面基と反応するように選択される。
また図示していないが、シラン化され、かつコーティングされたパターン基材(図5Cに示される)は、クリーニングプロセスにさらされる可能性があることを理解すべきである。この方法は、ウォーターバス及び超音波処理を利用することができる。前記ウォーターバスは、約22℃〜約45℃の範囲の比較的低い温度に維持することができる。別の例において、ウォーターバス温度は約25℃〜約30℃の範囲である。
次いで、シラン化され、かつコーティングされたパターン基材を研磨にさらして、シラン化された中間領域から官能化ポリマー被覆層20の一部を除去する。シラン化され、コーティングされ、かつ研磨されたパターン基材を図5Dに示す。中間領域16に隣接するシラン又はシラン誘導体18の一部は、研磨の結果として除去されても、又は研磨されなくてもよい。このように、図5D〜図5Lにおいて、中間領域16に隣接するシラン又はシラン誘導体18の一部は、研磨後に少なくとも部分的に残ってもよく、又は研磨後に除去されてもよいことから、当該一部を仮想線で示す。これらシラン化された部分が完全に除去されると、下地基材12が露出されることを理解すべきである。そのため、いくつかの例において、スペーサ層28は、結合領域25(図5G及び5J)で基材12に直接接触していてもよく、また保護被膜24’、24は、1以上の中間領域16(例えば、図5F、図5J及び図5L)において基材12に直接接触してもよい。これらのシラン化された部分が研磨後に少なくとも部分的に残留した場合であっても、その後に結合する蓋部及びその後に形成される保護被膜24、24’は、結合領域25及び中間領域16においてシラン又はシラン誘導体18と直接接触する。
研磨プロセスは、温和な反応の化学スラリー(研磨剤を含む)を用いて行ってもよく、そして当該化学スラリーを用いると、薄膜である官能化ポリマー被覆層20、及び場合によってはシラン又はシラン誘導体18の少なくとも一部を、下地基材12に中間領域で影響を及ぼすこと無く、中間領域16から除去できる。あるいは、研磨粒子を含まない溶液で研磨を行ってもよい。
前記温和な反応の化学スラリーは、約7.5〜約11の範囲のpHを有し、研磨粒子を含む塩基性の水性スラリーである。研磨粒子の例としては、炭酸カルシウム(CaCO3)、アガロース、グラファイト、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、シリカ、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ)、セリア、ポリスチレン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの例において、前記研磨粒子は、炭酸カルシウム(CaCO3)、アガロース、及びグラファイトからなる群から選択される。前記研磨粒子の平均粒径は、約15nm〜約5μmの範囲であってもよく、そして一例において、約700nmである。
研磨剤粒子に加えて、前記塩基性の水性スラリーは、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を含んでもよい。前記緩衝剤の例は、トリス塩基(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を含み、当該トリス塩基はpHが約9である溶液として存在しうる。前記キレート剤の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、これはpHが約8の溶液として存在しうる。前記界面活性剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤である。異なる分子量を有するポリアクリレート分散剤を使用してもよい。前記分散剤の例は、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)である。前記分散剤は、研磨剤粒子のサイズを維持し、そして少なくとも実質的に研磨剤粒子の沈降の防止を助けることができる。
前記塩基性の水性スラリーを化学的機械研磨システムに用いることで、図5Cに示すシラン化され、かつコーティングされたパターン基材の表面を研磨することができる。研磨ヘッド/パッド又は他の研磨ツールによって、官能化ポリマー被覆層20を凹部14、14’内に残して、かつ下地基材12を少なくとも実質的に無傷な状態にしながら、中間領域16から官能化ポリマー被覆層20を研磨することができる。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってもよい。
上述のように、研磨剤なしで研磨パッド及び溶液を用いて研磨をおこなってもよい。例えば、前記研磨パッドは、研磨粒子がフリーな溶液(すなわち、研磨粒子を含まない溶液)と共に利用されてもよい。
研磨により、官能化ポリマー被覆層20の一部(及び場合によってはシラン又はシラン誘導体18の少なくとも一部)が中間領域16から除去され、図5Dに示すように、官能化ポリマー被覆層20の一部がシラン化された凹部内に残る。また上述のように、中間領域16は、研磨が完了した後もシラン化されたままであってもよい。言い換えれば、シラン化された中間領域は、研磨後に無傷の状態であってもよい。あるいは(18の仮想部分によって示されるように)、研磨の結果として、シラン又はシラン誘導体18を中間領域16から除去してもよい。
図示していないが、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン基材(図5Dに示されている)がクリーニングプロセスにさらされてもよいことを理解されるべきである。この方法は、ウォーターバス及び超音波処理を利用することができる。前記ウォーターバスは、約22℃〜約30℃の範囲の比較的低い温度で維持することができる。シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン基材はまた、スピン乾燥されてもよく、又は他の好適な技術によって乾燥されてもよい。
図5Dに示されるように、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン基材は、図5E〜図5Hに示されるプロセスにさらされてもよく、あるいは図5I〜図5Lに示されるプロセスにさらされてもよい。図5E〜5Hにおいて、単一の水溶性保護被膜24が形成されており、図51〜図5Lにおいては、複数の水溶性保護被膜24’,24が形成されている。
図5E〜図5Hに示す例について以下説明する。図5Eにおいて、プライマー22は、凹部14,14’において官能化ポリマー被覆層20にグラフトされている。本明細書に記載の任意のプライマーを使用することができる。この例において、前記グラフトは、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンスによって達成され、又は凹部14,14’の少なくともいくつかでプライマーを官能化ポリマー被覆層20に付着させる他の好適な方法によって達成される。これらの例示的な技術の各々は、本明細書に記載されているプライマー溶液又は混合物を利用してもよく、当該プライマー溶液又は混合物は、プライマー、水、緩衝剤、及び触媒を含んでもよい。
図5Fに示すように、プライマー22が凹部14,14’内の官能化ポリマー被覆層20にグラフトされた後、水溶性保護被膜24が表面化学物質20、22上及びパターン基材の少なくとも一部の上に形成される。水溶性保護被膜24は、結合領域25の一部ではないパターン基材12の露出面上に形成されてもよい。この例において、水溶性保護被膜24は、隣接する凹部14、14’の間の中間領域16上に選択的に堆積又はパターン化されるが、結合領域25が位置するパターン基材12の縁部/周辺部に形成されない。水溶性保護被膜24の選択的堆積/パターニングは、本明細書に記載されているように、水溶液を使用して達成してもよい。この例において、水溶液中の材料は、本明細書に開示されている例のいずれか(例えば、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体;水溶性天然タンパク質若しくはその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物;又はシクロデキストリン)であってもよい。一例において、水溶性材料であってもよい。水溶液を堆積させた後、それを乾燥させて水溶性保護被膜24を形成することができる。
図5Gに示されているように、前記蓋部26は、次に結合領域25に結合されてもよい。前記蓋部26は、本明細書に記載の任意の材料及び任意の構成であり得る。前記蓋部26を、本明細書に記載の技術のいずれかを介して結合領域25に結合してもよい。
図5Gに示す例において、前記蓋部26は側壁29と一体的に形成された頂部27を含む。前記側壁29は、前記スペーサ層28を介してパターン基材12の結合領域25に結合されている。
あわせて、蓋部26及びパターン基材12(表面化学物質20,22を有する)は、流路30を画定し、当該流路は、凹部14、14’と選択的に流体連通する。流路30は、例えば、コーティング24を除去するために流体を保護被膜24に選択的に導入するように機能し、また凹部14,14’内/で指定された反応を開始するために、反応成分又は反応物を表面化学物質20,22(保護被膜24が除去された後に)に選択的に導入するように機能しうる。
蓋部26が、シラン化され、コーティングされ、研磨され、そしてグラフト化されたパターン基材に結合すると、図5Gに示されるように、フローセル10’の一例を形成する。この例において、保護材24は、表面化学物質20、22の上及びいくつかのパターン基材表面の上に留まる。保護被膜24を所定の位置に備えたフローセル10’は、出荷、保管等ができる。
フローセル10’を応用分野(例えば、塩基配列決定操作)で利用することが望ましい場合、保護被膜24は、参照番号108を参照して説明した溶解工程を介して除去してもよい。当該保護被膜の下の表面化学物質20、22又はパターン基材12にとって害がない水溶液中に溶解させるによって、保護被膜24の水溶性が保護被膜24の除去を可能にする。図5Hは保護被膜24が除去された後のフローセル10’を示す。
図5I〜図5Lに示す例について以下説明する。図5Iでは、官能化ポリマー被覆層20が覆われて、かつパターン基板12の結合領域25が露出したままになるように、初期の水溶性保護被膜24’を選択的に堆積又はパターン化することができる。この例では、初期の水溶性保護被膜24’は、隣接する凹部14、14’の間の中間領域16上に選択的に堆積又はパターン形成されるが、結合領域25が位置するパターン基板12の縁部/周辺には形成されない。初期の水溶性保護被膜24’の選択的な堆積/パターニングは、参照番号104’’(水を含み、場合によっては、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、又はポリエチレングリコールを最大約15%(体積に対する質量)含む)を参照して説明した水溶液を用いて本明細書に記載のように達成できる。
初期の保護被膜24は、その後に行われる任意のアセンブリー工程中に官能化ポリマー被覆層20を保護する。図5Jに示すように、アセンブリー工程は、蓋部26を結合領域25に結合することを含んでもよい。図示していないが、基板ウェハを使用する場合、アセンブリー工程は結合及びダイシングを含んでもよい。蓋部26は、任意の材料であってもよく、そして本明細書に記載の任意の構成を有し得る。蓋部26は、本明細書に記載の技術のいずれかを介して結合領域25に結合することができる。
図5Jに示される例では、蓋部26は側壁29と一体的に形成された頂部27を含む。側壁29は、スペーサ層28を介してパターン基板12の結合領域25に結合される。蓋部26が結合された後、流路30は蓋部26とパターン基板12との間に形成される。流路30は、フローセル10’に様々な流体を選択的に導入するのに役立ちうる。
その後、図5Kに示すように、初期の水溶性保護被膜24’を除去することができる。初期の保護被膜は水溶性であるので、その除去は、参照番号108を参照して説明したように、水溶性を含んでもよい。初期の保護被膜24’の溶解及び流路30からの溶液の除去の際に、初期の保護被膜24’によってコーティングされているパターン基板12(例えば、蓋部26に結合されていない中間領域16)のいずれか及び官能化ポリマー被覆層が露出される。
また図5Kに示されるように、初期の保護被膜24’が除去された後、プライマー22は凹部14、14’内の官能化ポリマー被覆層20にグラフトされてもよい。本明細書に記載の任意のプライマー22を使用することができる。この例では、フロースループロセス(参照番号102’’)、並びにプライマー、水、緩衝剤、及び触媒を含みうる本明細書に記載のプライマー溶液又は混合物を使用してグラフト化を達成することができる。プライマー22がグラフトされた後、フローセル10’が形成される。
フローセル10’を出荷する、又はある期間保管する場合、図5Lに示すように、(第2の)水溶性保護被膜24を表面化学物質20、22及びパターン基板12(すなわち、チャネル30内に露出した中間領域16)の少なくとも一部の上に塗布することができる。(第2の)水溶性保護被膜24の堆積は、参照番号104’’’を参照して説明したフロースループロセス及び水溶液を使用して達成することができる。繰り返しになるが、この例における水溶液中の水溶性材料は、本明細書に開示されている実施例のいずれか(例えば、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体;水溶性天然タンパク質若しくはその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物;又はシクロデキストリン)。一例では、前記水溶性材料は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、グリコール、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、ヒドロキシル官能性ポリマー、グリセリン、又はクエン酸ナトリウム塩であり得る。
本発明の方法のさらに別の例(例えば方法100又は200)は、図6A〜図6Eに示すように、非パターン基板12’を含む。
本明細書に開示されるいずれの基板、及び非パターン基板12’は、凹部14又は中間領域16を含まない。この例示的な方法では、蓋部26は、最初に非パターン基板12’に結合して流路30を形成する。蓋部26は、本明細書に記載の任意の材料及び任意の構成であり得る。蓋部26はまた、本明細書に記載の技術のいずれかを用いて、非パターン基板12’に結合されてもよい。
図6Bに示す例では、蓋部26は、側壁29と一体的に形成された頂部27を含む。側壁29は、非パターン基板12’の結合領域にスペーサ層28を介して結合されている。結合領域は、非パターン基板12’の周囲に存在してもよく、又は流路30の境界を形成することが望ましい任意の領域にあってもよい。他の例では、スペーサ層28は、側壁を形成し、少なくとも実質的に平坦な蓋部26に取り付けることができる。
あわせて、蓋部26(側壁29を含む)及び非パターン基板12は、流路30を画定する。流路30は、例えば、表面化学物質20、22及び保護被膜24を形成する目的で、流体を選択的に導入するのに機能し、被膜24を除去し、反応成分又は反応物を表面化学物質20、22に選択的に導入して(保護被膜24が除去された後に)、流路30内で指定された反応を開始させるために機能する。
官能化ポリマー被覆層20(図6Cに示す)を形成する前に、この方法は、(フロースループロセスを介して)非パターン基板を洗浄プロセス、及び/又は官能化分子のその後の堆積のために、非パターン基板の露出面を修飾する別のプロセス(例えば、シラン化反応)に、さらすことを含んでもよい。
非パターン基板12’のシラン化を図6Bに示す。この例では、シラン化により、流路30内に存在するパターン化されていないウェハ表面12’の露出部分にシラン又はシラン誘導体18が付着する。
シラン化は、任意のシラン又はシラン誘導体18を使用して達成することができる。シラン又はシラン誘導体18と官能化ポリマー被覆層20との間に共有結合を形成することが望ましい場合があるので、シラン又はシラン誘導体18の選択は、部分的には、官能化ポリマー被覆層20(図6Cに示す)を形成するのに使用される官能化分子に依存しうる。シラン又はシラン誘導体18を基材12’に付着させるために使用される方法は、フロースループロセスであってもよい。
図6Cに示されるように、この例では、官能化ポリマー被覆層20は、次いで、シラン又はシラン誘導体18上に形成される、又は流路30内にある非パターン基板12’の露出面を修飾するために堆積された他の化学物質上に形成される。
本明細書に記載の官能化分子のいずれも使用することができる。この例では、官能化ポリマー被覆層の形成はフロースループロセスによって達成することができる。フロースループロセスにおいて、官能化分子は、それぞれの入力ポートを介してフローチャネル30に導入されてもよく、硬化されてもよい。官能化ポリマー被覆層20は、非パターン基板12’の露出面上に形成され、研磨は行われない。
図6Dに示すように、プライマー22は、流路30内の官能化ポリマー被覆層20にグラフトされている。本明細書に記載されている任意のプライマーを使用することができる。この例では、グラフト化はフロースループロセスによって達成することができる。フロースループロセスでは、本明細書に記載のプライマー溶液又は混合物は、それぞれの入力ポートを介して流路30に導入することができ、プライマーを官能化ポリマー被覆層20に付着させるために十分な時間(インキュベーション期間)にわたって流路内に維持することができ、そしてそれぞれの出力ポートから除去することができる。プライマーを付着させた後、流路を介して追加の流体を流して、現在の官能化された流路30を洗浄してもよい。
この例で得られたフローセル10’’を図6Dに示す。このフローセル10’’は、塩基配列決定作業において使用されてもよく、又は出荷及び/又は保管のために保護被膜24でコーティングされてもよい。
図6Eに示されるように、一例では、プライマー22が流路30内の官能化ポリマー被覆層20にグラフトされた後、水溶性保護被膜24が表面化学物質20、22上に形成される。この例では、水溶性保護被膜24の形成はフロースループロセスによって達成することができる。フロースループロセスでは、水溶液(水及び場合によっては最大約15%(体積に対する質量)の水溶性フィルム形成材料を含む)をそれぞれの入力ポートを介して流路30に導入してもよく、また流路内に維持されてもよい。流路30内の表面化学物質20、22を覆うために十分量の水溶液を導入してもよい。流路30内に存在している間、フローセルは、設定された時間の間、入力ポートを通して空気、窒素、又は真空を過剰に流すドライダウンプロセスにさらして、表面化学物質20、22上の(第2の)水溶性保護被膜を乾燥させてもよい。
この例における水溶液中の水溶性材料は、本明細書に開示されている実施例のいずれか(例えば、水溶性非カチオン性合成ポリマー;水溶性天然多糖類若しくはその誘導体;水溶性天然タンパク質若しくはその誘導体;水溶性塩;水溶性界面活性剤、糖、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤、グリコールからなる群から選択される水溶性低分子化合物;又はシクロデキストリン)。一例では、前記水溶性材料は、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、スクロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、グリコール、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸とトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン、バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩、ヒドロキシル官能性ポリマー、グリセリン、又はクエン酸ナトリウム塩であり得る。
いくつかの例において、プライマーグラフト化及び水溶性保護被膜24の形成が同時に起こり得ることを理解すべきである。
応用分野(例えば、塩基配列決定操作又は遺伝子型決定操作)においてフローセル10’’(表面化学物質20、22上に保護被膜24を有する)を利用することが望ましい場合、保護被膜24は、参照番号108を参照して説明した溶解プロセスを介して除去することができる。保護被膜24の水溶性は、その下の表面化学物質20、22に悪影響を与えることなく、水溶液中への溶解によって保護被膜24を除去することが可能になる。
さらに、本明細書に開示されている方法は、品質管理アッセイを実施することを含んでもよい。一例において、前記アッセイは、CFR若しくはHP-TETアッセイ又は他の好適な染料系アッセイであり得る。前記アッセイは、保護被膜24を導入する前(ただし、プライマーのグラフト化後)に実施してもよく、次いで保護被膜24を除去した後(そしてプライマーを再露出させた後)に再度実施してもよい。アッセイデータは、何らかのプライマー分解や変質が起こったか否かを示しうるものである。一例において、前記方法は水溶性保護被膜を除去すること及びプライマーの分解を検出するための染料系アッセイの実施を含む。一例において、本明細書に開示されるフローセル10、10’、10’’は、保護被膜を上にして2日間保管した後に15%未満のCFR保持率の低下を示し、また別の例において、保護被膜を上にして2日間保管した後に10%未満のCFR保持率の低下を示しうる。さらに別の例において、フローセル10、10’、10’’は、CFR保持率の低下を示さない可能性があるが、むしろCFR保持率の増大(例えば、約1%〜約25%、又は他の例において、約5%〜約20%の変動)を示しうる。別の例において、プライマーのグラフト化後であるが水溶性被膜の塗布前に、標識化された品質管理オリゴヌクレオチドとグラフト化プライマーとのハイブリダイゼーションにより、プライマーのグラフト化効率を検出することができる。当該ハイブリダイズした品質管理オリゴヌクレオチドを検出し、次いでグラフト化プライマーからデハイブリダイズする。そして、水溶性コーティングを塗布する。
本明細書に開示された例において、保護被膜24が中間領域25上に形成されていないことを示している。しかしながら、他の例において、保護被膜24は、基材12、12’の表面全体に(すなわち表面化学物質20、22上、いくつかの例において中間領域16上、及び結合領域25上)形成されてもよく、前記蓋26部は、保護被膜24を介して基材12、12’に結合されてもよい。
図示されていないが、フローセル10、10’、10’’のいくつかの例において、1以上の固定機構(例えば、接着剤、接着剤、締結具等)を介して検出装置(図示せず)に対して、直接取り付けられ例えば物理的に接触されてもよいことを理解すべきである。当該検出装置は、CMOSデバイス(例えば、シリコン層、誘電体層、金属−誘電体層、金属層等を備えた複数の積層体を含む)及び光学部品を有してもよい。そして、前記検出装置の光学センサが、前記検出装置の単一の光導波路及び前記フローセル10、10’、10’’の単一の凹部14、14’内の表面化学物質20、22と、少なくとも実質的に整列し、そして動作可能に関連付けられるように当該光学部品を配置してもよい。
また、図示されていないが、蓋部26に結合する代わりに、官能化基材(その上に表面化学物質20、22を有するか、あるいは凹部14内にある)は、その凹部内に表面化学物質20、22を有する別の官能化基材に結合されてもよいことを理解すべきである。前記2つの官能化表面は互いに対向することができ、前記2つの官能化表面の間に画定された流路を有することができる。スペーサ層及び好適な結合方法は、前記官能化基材のうちの2つを合せて結合するために使用され得る。
本明細書に開示されるフローセル10、10’、10’’は、多くの場合、合成による塩基配列決定(SBS)、サイクリックアレイ塩基配列決定、ライゲーションによる塩基配列決定、パイロシーケンシング等として呼ばれる技術を含む様々な塩基配列決定アプローチ又は技術において使用され得る。これらの技術のいずれか及び実施例においてパターン基材を使用すると、官能性分子層20及び付着した塩基配列決定プライマー22は、官能化された凹部(すなわち、その上に表面化学物質20、22を有する14、14’)に存在するが中間領域16上には存在しないので、増幅は機能化された凹部に限定されるであろう。他の例において、増幅はフローセルのレーン全体に渡って起こり得る。
一例として、合成(SBS)反応による塩基配列決定は、イルミナ(サンディエゴ、カリフォルニア州)製のHiSeq(商標)、HiSeqX(商標)、MiSeq(商標)、NovaSeq(商標)、又はNextSeq(商標)シーケンサーシステムといったシステムで行われ得る。SBSでは、核酸テンプレートに沿った核酸プライマーの伸長をモニターして前記テンプレート中のヌクレオチドの配列を決定する。基礎となる化学プロセスは、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)又はライゲーション(例えば、リガーゼ酵素によって触媒される)であり得る。特定のポリメラーゼベースのSBSプロセスにおいて、プライマー22に添加したヌクレオチドの順序及び種類の検出が、前記テンプレートの配列を決定するために利用されるように、テンプレート依存形式で蛍光標識ヌクレオチドをプライマー22に添加する(それによりプライマー22を伸長させる)。 例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1以上の標識ヌクレオチド又はDNAポリメラーゼ等が、プライマー22のアレイを収容するフローチャネル30、30A等の中へ/中を通って送達されうる。プライマー伸長により標識ヌクレオチドが取り込まれる場合には、官能化された凹部(すなわち、その上に表面化学20、22を有する14、14’)は、画像結果を介して検出することができる。画像結果を表示中、照明システム(図示せず)は、官能化された凹部(すなわち、その上に表面化学20、22を有する14、14’)に励起光を供給してもよい。
いくつかの例において、ヌクレオチドがプライマー22に添加されると、ヌクレオチドは、更なるプライマー伸長を終結させる可逆的終止特性をさらに含みうる。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチド類似体は、前記部分を除去するためにデブロッキング剤が送達されるまで、その後の伸長が起こり得ないようにプライマー22に添加されうる。したがって、可逆的停止を使用する例において、デブロッキング剤を流路30、30A等に送達することができる(検出をする前後に)。
洗浄は、種々の流体送達ステップの間に行われてもよい。次いで、前記SBSサイクルをn回繰り返して、プライマー22をnヌクレオチドによって伸長させ、それによって長さnの配列を検出することができる。
SBSについて詳細に説明してきたが、本明細書に記載のフローセル10、10’、10’’は、遺伝子型決定のために又は他の化学的用途及び/若しくは生物学的用途のために、他の塩基配列決定プロトコルと共に利用され得ることに理解されるべきである。
本開示をさらに説明するために、本明細書に例を示す。これらの実施例は説明目的のために提供され、そして本開示の範囲を限定すると解釈されるべきでないと理解すべきである。
これらの例のいくつかにおいて、保護被膜は乾燥されたものも、湿潤した保護被膜もある。湿式コーティングは「湿式保管」又は「湿式保管」と呼ばれる。乾燥工程で曝された被膜は目に見えて乾燥しており、そして固体のように見えたが、微量の水分が存在する可能性があることを理解すべきである。湿潤コーティングは液体形態であった。
限定されない実際行った実施例
実施例1
実施例のフローセル(1A及び1B)は、パターニングされた、シリコン及び/又は酸化タンタル基材上に画定された種々のフローチャネル/レーンを含み、各レーンは複数のウェルと流体的に接続される。PAZAM層を各ウェルに形成し、そして1μmのプライマーをPAZAM層上にグラフトした。保護被膜は、最終的に表面化学物質(以下に記載する)上に形成された。前記保護被膜のいくつは乾燥しており、前記保護被膜のうちの1つは湿潤していた。
比較例のフローセルを試験した。前記表面化学物質は、前記実施例のフローセルと同じであった。前記比較例のフローセルの表面化学物質上には保護被膜を形成しなかった。
保護被膜を実施例のフローセルに添加する前に、第1のHP-TET品質管理アッセイをそれぞれの実施例及び比較例のフローセルの各レーンにおいて実施した。HP又はヘアピンは、グラフト化されたフローセル表面上のプライマーをプローブ化するために使用されるDNA分子の二次構造部分を規定し、そしてTET(又はTET+DNA)は、使用されるプライマーに対して相補的な配列を有する色素標識オリゴヌクレオチドである。TETをプライマーとハイブリダイズさせ、過剰のTETを洗い流し、そして付着した染料の蛍光を蛍光検出により測定した。
最初のHP−TETアッセイの後、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(この例においてKOLLICOAT(登録商標)IR)のいくつかの水溶液アルコールを調製した。各溶液は、0.10%〜10%(体積に対する質量)の範囲の異なる濃度の前記コポリマーを有していた。フロースループロセスを使用して、前記水溶液のうちの1つを、各フローセルのうちの1つのレーン内及びそれぞれのレーン内のPAZAM層上及びプライマー上に導入した。前記水溶液を乾燥して保護被膜を形成した。乾燥した保護被膜のそれぞれは異なる濃度のコポリマーを有していた。これら実施例のセル及び比較例のセルを、窒素ガスを用いて乾燥させた。
次いで、乾燥した実施例のフローセルを、保護被膜を所定の位置に置いたまま、60℃で3日間乾式保管した(25℃又は周囲条件で1ヶ月間の乾式保管に相当する)。
比較例のコーティングされていないフローセル(“未被膜(コーティングされていない)”)を同じ乾燥保管条件下にさらした。
フロースループロセスを用いて液体の塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液を導入することによって別の保護被膜を形成した。したがって、本実施例のフローセルを、4℃の塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液でフローセルの表面化学物質を浸すために放置した湿式保管(又は湿潤保管とも称する)条件下に曝した。
保管後、洗浄中における水性溶解により保護被膜をそれぞれの実施例のフローセルのレーンから除去し、湿式保管したフローセルを洗い流した。各実施例及び各比較フローセルのレーンのそれぞれにおいて、別のHPTET品質管理アッセイを実施した。
当該HP-TET保持率の結果は、コーティング前及び保管後のHP-TET結果を用いて算出された。保持率を図7に示す。当該図7に示されるように、HP-TET保持は、一般に、フローセル1A及び1Bの両方についてコポリマー濃度の増加と共に増加した。1%以下では、コポリマーコーティングは比較例又は湿式保管ほど効果的ではなかった。この実施例は、約2.5%〜約10%のコポリマー濃度範囲において、同じ乾燥条件下で保管したコーティングしていない(未被覆の)表面化学物質と比較して、保護被膜が表面化学物質の乾燥保管安定性を改善し、そして湿式保管条件の安定性に近づくことを説明するものである。
実施例2
実施例のフローセル(2A〜2Hのそれぞれ2つ)は、酸化タンタルをコーティングしたシリコン基材上に画定された、1つのレーンを含む。PAZAM層を前記レーン内に形成し、そして1μmのプライマーを当該PAZAM層上にグラフトした。保護被膜は、最終的に表面化学物質(以下に記載される)上に形成された。下記に記載するように、前記2つの実施例のフローセルは、それぞれの種類の保護被膜に関する試験を行い、その結果を図8に示す。保護被膜のいくつは乾燥しており(2Aから2H)、前記保護被膜のうちの1つは湿潤していた。
比較例のフローセルを試験した。前記表面化学物質は、前記実施例のフローセルと同じであった。前記比較のフローセルの表面化学物質上には保護被膜を形成しなかった。
前記保護被膜を実施例のフローセルに添加する前に、第1のHP-TET品質管理アッセイをそれぞれの実施例及び比較例のフローセルの各レーンにおいて実施した。
第1のHP−TETアッセイの後、異なる機能の保護被膜材料の種々の水溶液を調製した。前記水溶液は、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)(0.1重量%)、グリセロール(1重量%)、ヒドロキノン(0.1重量%)、コリコート(KOLLICOAT)(登録商標)IR(1%)、ポリエチレングリコール3000(1%)、(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)(0.1重量%)、トリス塩基(pH7〜8)(100mM)、及びTWEEN(登録商標)20(非イオン性乳化剤)(1%)を用いて調整した。
フロースループロセスを使用して、1種の水溶液を2つの実施例のフローセルに導入した(すなわち、EDTA溶液は2つのフローセル内(まとめて2Aと呼ぶ)に存在していた、グリセロール溶液は別の2つのフローセル内(まとめて2Bと呼ぶ)に存在していた、ヒドロキノン溶液はさらに2つフローセル内(まとめて2Cと呼ぶ)に存在していた、コリコート(登録商標)IR溶液は2つの他のフローセル内(まとめて2Dと呼ぶ)に存在していた、ポリエチレングリコール3000溶液は追加の2つのフローセル内(まとめて2Eと呼ぶ)に存在していた、TCEP溶液はさらに2つのフローセル内(まとめて2Fと呼ぶ)に存在していた、トリス塩基溶液はまたさらに2つのフローセル内(まとめて2Gと呼ぶ)に存在していた、及びTWEEN(登録商標)20溶液は、他の2つのフローセル内(まとめて2Hと呼ぶ)に存在していた)、そしてそれぞれのフローセル内のPAZAM層上及びプライマー上に前記水溶液が存在していた。当該水溶液を乾燥して保護被膜を形成した。実施例及び比較例セルの乾燥は窒素ガスを用いて行った。
次いで、前記実施例のフローセルを、保護被膜を所定の位置に置いたまま、60℃で3日間乾式保管した(25℃又は周囲条件で1ヶ月間の乾式保管に相当する)。
比較例のコーティングされていないフローセル(C1)を同じ乾燥保管条件下にさらした。
フロースループロセスを用いて液体の塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液を導入することによって別の保護被膜を形成した。したがって、この実施例のフローセル(WC)は、4℃の塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液をフローセル表面化学物質に浸すために放置した湿式保管条件下にさらされた。
保管後、洗浄中に水性溶解により保護被膜をそれぞれの実施例のフローセルのレーンから除去し、湿式保管したフローセルを洗い流した。各実施例及び各比較フローセルのレーンのそれぞれにおいて、別のHP−TET品質管理アッセイを実施した。
HP-TET保持結果は、コーティング前及び保存後のHP-TET結果を用いて算出した。保持データを図8に示す。当該図8に示すように、グリセロール(2B)、コポリマー(2D)、ポリエチレングリコール(2E)、及びTCEP(2F)の被膜を有するフローセルについてのHP-TET保持率は、同様の条件で保存した乾式保管の比較例(CI)と同等又はそれ以上であった。被膜2A、2C、2G及び2Hについての結果は、これらの被膜が、これらの濃度及び/又はフロースループロセスによって塗布されると、プライマーの接近を妨げる、及び/又は表面化学的性質、並びに被膜2B及び2D-2Fの劣化を妨げないことがある。被膜2A、2C、2G、及び2Hは、異なる濃度で、及び/又は異なるコーティングプロセスによって塗布されたときに、より良好に機能し得ると考えられる。
実施例3
本実施例で使用されたフローセルは、その上に画定された4レーンを有する非パターン化ガラス基材をそれぞれ含んでいた。1つのフローセルにおいて、2レーン(まとめて3Aと呼ぶ)を実施例のレーンとして用い、2レーン(まとめてC2Aと呼ぶ)を比較例のレーンとして用いた。別のフローセルでは、2レーン(まとめて3Bと呼ぶ)を実施例のレーンとして使用し、2レーン(まとめてC2Bと呼ぶ)を比較例のレーンとして使用した。3番目のフローセルにおいて、2レーン(まとめて3Cと呼ぶ)を実施例のレーンとして用い、2レーン(まとめてC2Cと呼ぶ)を比較例のレーンとして用いた。
各レーンにPAZAM層を形成し、前記PAZAM層上にプライマーをグラフトした。実施例のレーン(3A、3B、3C)では、フロースループロセスを使用して前記表面化学物質上にコリコート(登録商標)IR保護被膜を形成した。比較例のレーン(C2A、C2B、C2C)には、保護被膜を形成しなかった。実施例のレーン及び比較例のレーンの乾燥は、窒素ガスを30秒間各レーンに通して流すことによって行った。
実施例のフローレーン3A及び比較例のフローレーンC2Aを有するフローセルを、84%の相対湿度の包装内で7日間及び14日間保管した。 実施例のフローレーン3B及び比較例のフローレーンC2Bを有するフローセルを、5%の相対湿度の包装内で7日間及び14日間保管した。
これらのフローセルを保管場所から取り出して塩基配列決定に使用した。実施例のレーン3A、3B及び比較例のレーンC2A、C2Bを、塩基配列決定中に洗浄工程に曝した。洗浄工程により、実施例のレーン3A、3Bから保護被膜が少なくとも部分的に除去されていると考えられる。しかしながら、保護被膜を除去せずに塩基配列決定を行ってもよい。
図9は、第1の塩基配列決定サイクル後のレーン(3A、3B、C2A、C2B)についての蛍光強度のプロットを示す。前記データから、保護被膜を使用しなかった場合と保護被膜が所定の位置にある場合(すなわち、3AとC2Aとを比較し、3BとC2Bとを比較する)とを比べると、サイクル1の強度が湿度保管条件による影響を最小限に受けていたことが示される。コーティングされていないレーンC2A、C2Bに関するサイクル1の強度は、表面化学物質が湿度暴露の結果として減衰したことが示されている。5%の湿度の強度に対する影響(フローレーン3B)もまた、84%の湿度で観察された効果(フローレーン3A)よりもはるかに小さかった。
実施例のフローレーン3CA及び比較フローレーンC2Cを有するフローセルを、外部温度変動下の条件で2日間〜19日間保管した。温度プロファイルの傾斜は、それぞれの期間渡って24時間ごとに約-23℃から約60℃の範囲であった。0時間から約8時間まで、温度を約-23℃から-25℃の間に維持した。次いで温度を約60℃まで上昇させて約8時間維持した。さらに温度を約−23℃〜−25℃の間に下げて、約18時間〜24時間の間、温度を約−23℃〜−25℃の間に維持した。
このフローセルを保管場所から取り出し、そして塩基配列決定に使用した。実施例のレーン3C及び比較例のレーンC2Cは、塩基配列決定中に洗浄工程に曝され、これらの工程において、実施例レーン3Cから保護被膜が少なくとも部分的に除去されていると考えられる(但し、塩基配列決定は保護被膜を除去すること無くその前に実行できる)。
図10は、第1の塩基配列決定サイクル後のレーン(3C、C2C)についての蛍光強度のプロットを示す。実験データは、保護被膜を使用しなかった場合と保護被膜が所定の位置にある場合とを比べると、サイクル1の強度が外部温度変動による影響を最小限に受けていたことを示す(すなわち、3CをC2Cと比較する。)。コーティングされていないレーンC2Cに関するサイクル1の強度は、表面化学物質が外部温度変動の結果として減衰したことを表わしている。
実施例4
本実施例では、2つの開放型のフローセル(すなわち、蓋部を取り付けていない)を使用した。各開放型のフローセルは、パターン化シリコン基板上に画定された単一のレーン(4A、4B)を含み、各レーンは複数のウェルと流体的に連通していた。各ウェルにPAZAM層を形成し、その上に1μmのプライマーをグラフトした。
任意の保護被膜を形成する前に、2つの開放型のフローセルを塩基配列決定に曝した。
次に、ディップコーティング法を使用して、各開放型のフローセルにおける半分の表面化学物質の上にコリコート(登録商標)IRの保護被膜を形成した。開放型のフローセルを窒素ガス中で乾燥した。そのため、本実施例では、コーティングされた半分を例4A及び4Bと呼び、コーティングされていない半分を比較例C3及びC4と称する。
保護被膜が形成された後、被覆面4A及び比較例の未被覆面C3を含むサンプルフローセルを、60℃で6日間の開放系保管にさらした。開放系保管では、保護被膜及びコーティングされていない側の露出した表面化学物質を直接60℃の温度にさらした。コーティングされた面4B及び比較例のコーティングされていない面C4を含むサンプルフローセルを、室温で7日間の開放系保管にさらした。
フローセル全体(すなわち、以前にコーティングされた半分の部分4A及び4B)及びコーティングされていない半分の部分(C3及びC4)を、塩基配列決定に使用する保管庫から取り出した。保護被膜は、洗浄工程の間に水性溶解によってコーティングされた半分の部分4A及び4Bから少なくとも部分的に除去されると考えられていた。
図11Aは、時間T0における4A及びC3を含むフローセルについての最初の塩基配列決定サイクル後(すなわち4A上のプレコーティング)及び時間T1での保管後のそれぞれの蛍光強度のプロットを示す。実験データは、保護被膜を使用しなかった場合と比較して、保護被膜を所定の位置に置いた場合(すなわち、4AとC3を比較した場合)は、サイクル1強度が60℃での開放系保管による影響を、最小限に受けたことを示す。コーティングされていない半分のC3についてのサイクル1の強度は、開放系保管の結果として表面化学物質が分解したことを示す。
図11Bは、2つのプロットを示すものであり−上部のプロット群は、フィルターを通過するクラスターの割合(%通過フィルター(PF))を示し、下部のプロット群は、時間T0(すなわち4B上のプレコーティング)での4B及びC4、並びに保管後に行われた時間T1での2回の運転を含むフローセルについての、最初の塩基配列決定サイクル後の蛍光強度を示す。%透過率フィルター(Passing filter(PF))は、純正しきい値を通過したクラスターを説明するために使用される測定基準であり、塩基配列決定データのさらなる処理と分析に使用される。より高い%通過フィルターは、塩基配列決定データに使用される固有のクラスターの収率の増加をもたらす。図11Bのデータは、保護被膜を使用した場合、%通過率フィルターが改善したことを示している(すなわち、時間T0での4BとC4、時間T1における両者のデータポイントを比較)。また図11Bに示すデータは、保護被膜を使用しない場合と比較して、保護被膜を形成している場合(すなわち、時間T0での4BとC4、時間T1における両者のデータポイントを比較)は、サイクル1強度が室温での開放系保管によって最小限の影響を受けていることを示す。コーティングされていない半分C4についてのサイクル1の強度は、室温であっても、開放系保管の結果として表面化学物質が分解したことを示している。
実施例5
開放型のパターン形成ガラスウェハは、PAZAM層がそれぞれに形成されたウェルを有していた。研磨後、ウェハをダイシングし、ダイシングしたセルの1つにコリコート(登録商標)IR保護被膜をスプレーコーティングした。コリコート(登録商標)IR保護被膜を形成しなかったこと以外は同様の方法で(PAZAMコーティングを用いて)比較例のダイシングセルを形成した。
実施例及び比較例のダイスしたセルを、20℃、60℃、及び80℃で1時間保管した。保管後、保護被膜を実施例のダイシングされたセルから洗浄中の水性溶解により除去した。次いで、実施例及び比較ダイシングセルのPAZAM層上に1μmのプライマーをグラフトして、それぞれ実施例のフローセル及び比較例のフローセルを形成した。
プライマーのグラフト化が異なる保存条件によって影響を受けるかどうかを究明するためにCFRアッセイを行った。CFRアッセイの間、プライマーグラフト表面を緩衝溶液中の蛍光標識(Cal Fluor Red)相補的オリゴに暴露する。これらのオリゴは表面に結合したプライマーに対して結合し、そして過剰のCFRは洗い流される。次に表面を蛍光検出器でスキャンして表面のCFR強度を測定し、表面のプライマー濃度と状態を定量的に測定する。測定後、オリゴを弱塩基性溶液で除去し、表面を再スキャンして全てのCFRが除去されたことを確認した。
実施例のフローセルについての強度中央値の結果を図12Aに示し、比較例のフローセルについての強度中央値の結果を図12Bに示す。60℃以上の温度にさらされると、比較例のフローセルにおけるコーティングされていないPAZAM層がプライマーをグラフトする能力は、明らかに悪影響を受けていた(図12B)。実施例のフローセルのコーティングされたPAZAM層は、比較例のダイスされたセルのコーティングされていないPAZAM層よりも、全ての試験温度において、プライマーをよりよくグラフトすることができていた(図12A及び12Bを比較)。実施例及び比較例の両方のフローセルにおいて、中央値強度は、80℃で減少したが、実施例のフローセルは比較例のフローセルと比較して、ゆっくりと強度が低下するように見えた。
実施例6
本実施例で使用したフローセルはそれぞれ、その上に画定された4つのレーンを有する非パターン化ガラス基板を含んでいた。各フローセルにおいて、2つのレーンは保護被膜を形成した実施例のレーンであり、2つのレーンは保護被膜を形成していない比較レーンであった。
各セルの各レーンにPAZAM層を形成し、フロースループロセスを用いてPAZAM層にプライマーをグラフトした。各フローセルの2つの実施例のレーンのそれぞれにおいて、フロースループロセスを用いて表面化学物質上にコリコート(登録商標)IR保護被膜を形成した。各フローセルの2つの比較例のレーンのそれぞれにおいて、保護被膜を形成しなかった。実施例のレーン及び比較例のレーンの乾燥は、各レーンを通して窒素ガスを30秒間流すことによって行った。
各フローセル(2つの実施例のレーン及び2つの比較例のレーンを含む)を特定の温度、すなわち25℃、40℃、60℃、又は80℃で保管した。当該セルを保存した日数は、1日から最大120日間までを変動させた。
フローセルを保管場所から取り出し、塩基配列決定に使用した。実施例のレーン及び比較例のレーンを塩基配列決定中に洗浄工程にさらしており、これらの工程により実施例のレーンから保護被膜が少なくとも部分的に除去されると考えられる(塩基配列決定はそのような除去なしに実施可能である)。
図13は、第1の塩基配列決定サイクル後のレーンのセット(実施例(すなわち6)又は比較例(すなわちC5))についての平均蛍光強度のプロットを示す。強度データは実施例のレーン及び比較例のレーンについて示されており、実験データはセルが保管された温度及びセルが保管された日数によってプロットされている。当該実験データは、保護被膜を使用しなかった場合と比較して、保管日数にかかわらず、保護被膜が所定の位置にあるとき、サイクル1強度が高温保存条件によって最小限の影響を受けたことを明らかに示している。コーティングされていない比較例のレーンのサイクル1強度は、温度暴露の結果として表面化学物質が分解したことを示す。
実施例7
コリコート(登録商標)IRを、TaOxを表面に備えたパターン化CMOSウェハ上にスプレーコートした。パターン化CMOSウェハの至る所でスプレーパスの数を変えることにより、得られるコーティング厚さに対する影響を究明した。当該実験結果について、μm単位の保護被膜厚さの距離(y軸)に対するmm単位のウェハ上の保護被膜を横切る距離(x軸)として図14に示される。ウェハを横切ってパス数が増加するにつれてコポリマーコーティングの厚さがわずかに増加し、パス数が減少するにつれてコポリマーコーティングの厚さがわずかに減少した。この実験データは、スプレーコーティングを使用して、制御された厚さを有する保護被膜を得ることができることを示している。
実施例8
開放型のパターン化CMOSウェハは、その各ウェル内にPAZAM層を形成していた。研磨後、前記ウェハを700nmのセルにダイスし、当該ダイスしたセルのうちの3つのセル上にコリコート(登録商標)IR保護被膜をスプレーコーティングした。比較例のダイスされたセルは、コリコート(登録商標)IR保護被膜を形成しなかったことを除いて、同様の方法で(PAZAM被膜を用いて)形成した。
1つの実施例のダイスされたセル及び1つの比較例のダイスされたセルを28日間、又は35日間、又は71日間室温(すなわち、約25℃)で保管した。保管後、洗浄工程中に実施例のダイスされたセルから前記保護被膜を水性溶解により除去した。次いで、実施例及び比較例のダイスされたセルのPAZAM層上に1μmのプライマーをグラフトして、それぞれ実施例のフローセル(9A(28日保存)、9B(35日保存)、9C(71日保存))及び比較例のフローセル(C7A(28日保管)、C7B(35日保管)、C7C(71日保管))を形成した。
次いで、前記各セル上で塩基配列決定を行った。 洗浄工程により、実施例のフローセルから保護被膜を除去した。
図15は、最初の塩基配列決定サイクル後の蛍光強度のプロットを示す。各保存期間において、比較例のフローセルC7A、C7B、C7C(保護被膜なしで保存した)は、実施例のフローセル9A、9B、9C(保護被膜有りで保存した)と比較した際に強度が低下したことが確認される。保護被膜でコーティングされていないフローセルC7A、C7B、C7Cについてのサイクル1の強度は、室温であっても、暴露の結果として表面化学物質が分解したことを示している。
実施例9
開放型のパターン化シリコンウェハは、その各ウェル内にPAZAM層を形成していた。研磨後、前記ウェハをダイスしてセルを作製して、当該ダイスしたセルのうちの2つのセル上に、初期のコリコート(登録商標)IR保護被膜を選択的にスプレーコーティングし、その結果、結合領域が露出したままであった。比較例のダイスされたセルは、コリコート(登録商標)IR保護被膜を形成しなかったことを除いて、同様の方法で(PAZAM被膜を用いて)形成した。実施例及び比較例のダイスしたセルのそれぞれの結合領域に蓋部を結合してフローセルを形成した。 次いで、フロースループロセスを用いた水性溶解によって、実施例のフローセル内のPAZAM層から初期のKOLLICOAT(登録商標)IR保護被膜を除去した。
次いで、フロースループロセスを使用して、実施例及び比較例の各フローセル内の各PAZAM層にプライマーをグラフトした。
プライマーグラフト化の後、フロースループロセス及び乾燥工程を経て、別のコリコート(登録商標)IR保護被膜を実施例のフローセル内のプライマー上及びPAZAM層上に形成した。
次いで、保護被膜を所定の位置に置いて、実施例のフローセル(10A及び10B)を30℃で2週間又は6週間乾燥保管した。2つの比較例のコーティングしていないフローセル(C8A、C8B)を同じ乾式保管条件(30℃で2週間保管又は6週間保管)にさらし、そして別の実施例のフローセル(WC2)を湿式保管条件に6週間さらした。その間、塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液でフローセルの表面化学物質を4℃において浸漬した。
保存後、次いで各セルについて塩基配列決定を行った。洗浄工程の間、保護被膜は実施例のフローセル10A、10Bから少なくとも部分的に除去されたと考えられ、そしてSSC緩衝液で湿式保管フローセルWC2をリンスした。
図16は、第1の塩基配列決定サイクル後の蛍光強度のプロットを示す。各保存期間において、実施例のフローセル10A、10B(保護被膜を備えて保存された)と比較した場合、比較例のフローセルC8A、C8B(保護被膜なしで乾燥条件下で保存された)は、強度の低下を示した。6週間で、乾式保管した保護被膜は、湿式保管した保護被膜と同様に表面化学物質に対して良好な保護機能を提供した(10BをWC2と比較)。
実施例10
開口型のパターン化酸化タンタル被覆基板は、各ウェル内に形成されたPAZAM層を有し、プライマーはフロースループロセスを使用してPAZAM層上にグラフトされた。比較例のフローセルも同様に試験した。表面化学物質は実施例のフローセルと同じであった。比較例のフローセルの表面化学物質上には保護被膜を形成しなかった。前記実施例のフローセル上に保護被膜を形成する前に、第1のCFRアッセイを実施した。
前記第1のCFRアッセイの後、異なる潜在的保護被覆材料の水溶液を数種類調製した。当該溶液は、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA)、ポリエチレングリコール、(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)、トリス(3−ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと、EDTA(TE緩衝液)及びバソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム塩(バス)とを用いて調製した。各溶液は表1に示す濃度を有していた。実施例のフローセルの表面上に前記溶液をパドリングすることによって前記水溶液を塗布し、そして前記溶液を蒸発させて被膜を形成させた。実施例のフローセルを次に4℃又は室温で11日間乾式保管した。別の実施例のフローセルは湿式セルであった。以下の表1において、試験した様々なセル及び当該セルを試験した条件を規定する。
比較例のコーティングしていないフローセルC11及びC12については、それぞれ、実施例のセルを4℃乾燥及び室温乾燥で保管したのと同じ乾式保管条件にした。もう一方のフローセルWC3は、フローセルの表面化学物質を塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液に4℃で浸漬したままにする湿式保管条件にした。
それぞれの条件で保管した後、洗浄中の水性溶解によって実施例のフローセル(11A〜11K)のそれぞれから保護被膜を除去し、湿式保管したフローセルWC3をリンスした。実施例及び比較例のフローセルのそれぞれにおいて、別のCFR品質管理アッセイを実施した。
図17に示す結果は、各実施例及び各比較例に関する11日間のCFR結果を、T0CFR結果で割ったものである。当該図で示されるように、各乾式保管した保護被膜を有するフローセルについてのCFR保持率は、同様の条件で保存された比較例の乾式保管した結果よりも良好であり、そして湿式保管条件と同等であった。
実施例11
開口型のパターン化シリコン基板は、当該基板の各ウェル内に形成されたPAZAM層を有していた。研磨後、1μmのプライマーを前記PAZAM層にグラフトした。比較例も同様にして形成した。
前記実施例の開口型のフローセル上に何らかの保護被膜を形成する前に、第1のCFRアッセイを実施した。当該実験データを図18にT0として示す。
最初のCFRアッセイの後、コリコート(登録商標)IRの水溶液を調製し、そして当該水溶液を使用して、前記実施例の開口型セル上にスプレーコーティングによる保護被膜を形成した。
前記実施例の開口型のフローセルを次に60℃で1日間又は2日間乾式保管した。
次いで、それぞれの保管期間の後、それぞれの開口型のセルについて塩基配列決定を行い、そして洗浄工程の間に保護被膜を除去した。
図18は、1日の保管日及び2日の保管日に続いて最初の塩基配列決定サイクルを行った後におけるCFR保持率(% X日目のCFRシグナルを0日目のシグナルで割った比率、X=1又は2)の棒グラフを示す。それぞれの保管期間において、比較例のフローセルC13(保護被膜なしで保管された)は、実施例のフローセル12(保護被膜有りで保管された)と比較した場合、有意に低いCFR保持率を示した。1日間の保管後、比較例のフローセルのCFRは40%低下した。
実施例12
パターン化CMOSウェハは、当該ウェハの各ウェルに形成されたPAZAM層を有していた。研磨後、異なる厚さのコリコート(登録商標)IRコーティングを、パターン化CMOSウェハ上及びパターン化CMOSウェハのそれぞれのウェル内(及びその中のPAZAM層)にスプレーコーティングした。コリコート(登録商標)IRコーティングを選択的にスプレーするのに使用した溶液は、約5%のコリコート(登録商標)IRと、約5%のエタノールと、約90%の水を含む。様々な被膜の厚さは1.708μmから11.73μmの範囲であった。ウェハの他の部分は被覆されないままであり、それを比較例として使用した。
次いで、ウェハ(実施例部分及び比較例部分を含む)を40℃で2日間乾式保管した。
それぞれの被膜を水性溶解によってウェハから除去し、次いでプライマーをウェル内のPAZAM層上にダンクグラフトした。その後、CFRアッセイを実施した。
比較例部分に対する強度%の増加は、コリコート(登録商標)IRコーティングで被覆されていたウェハの各実施例部分について示されている。結果を図19に示し、使用されているコリコート(登録商標)IRコーティングの厚さで表示している。以上の結果から、保護被膜が除去された後に、当該保護被膜の厚さがグラフトプライマーに対するPAZAM層の性能を維持する上での機能性に影響を及ぼさないことを示している。
実施例13
本実施例のフローセルは、パターン化シリコン基板上に画定された8つのレーンを含み、各レーンは複数のウェルと流体的に接続していた。各ウェルにPAZAM層を形成し、当該PAZAM層上に1μmのプライマーをグラフトした。
保護被膜は、最終的に8レーンのうち4レーンに表面化学物質を形成した。より具体的には、8つのレーンのうちの4つを、約5%のコリコート(登録商標)IR、約5%のエタノール、及び約90%の水を含む溶液でコーティングした。当該セルを真空により乾燥し、続いて30秒間窒素ガス下に曝した。フローセルを60℃で2日間保管した。
残りの4つのレーンは比較例のフローレーンとした。比較例フローレーンの表面化学物質は、保護被膜が比較例のフローレーンの表面化学物質上に形成されなかったことを除いて、実施例のフローレーンと同じであった。
保存後、実施例のフローレーン(まとめて13と呼ぶ)及び比較例のフローレーン(まとめてC14と呼ぶ)のそれぞれにおいて塩基配列決定を行った。保護被膜は、塩基配列決定の一部として水性洗浄を用いて除去した。
図20は、第1の塩基配列決定サイクル後の2回の読み取りについての実施例のレーン(13)及び比較例のレーン(C14)についての平均蛍光強度のプロットを示す。図示されるように、実施例のフローセルのレーンは、保護被膜によりC1強度の有意な低下から保護された。
実施例14
本実施例のフローセルは、パターン化シリコン基板上に画定された8つのレーンを含み、各レーンは複数のウェルと流体的に連通していた。各ウェルにPAZAM層を形成し、当該PAZAM層の上に1μmのプライマーをグラフトした。
プライマーグラフト混合物を、5%〜0.1%の範囲の様々な分量のコリコート(登録商標)IRを用いて調製し、そしてフローセル上の8つのレーンの間で無作為に選択した。このグラフト混合物をインキュベートし、次いでセルを真空により乾燥させ、続いて各孔/ポートに30秒間窒素ガス下に曝した。
保護被膜を水性溶解により除去し、そしてCFRアッセイを実施した。
図21は、相対的CFRと、コリコート(登録商標)IRの割合とのプロットを示す。比較的一貫したCFRデータは、保護被膜が堆積されるのと同時にプライマーがグラフトされ得ることを示す。この実施例から、被膜が、本実施例で使用したプライマーの堆積した化学物質に悪影響を与えないという証拠を提供する。
実施例15
本実施例における3つのフローセルは、パターン化シリコン基板上に画定された8つのレーンを含み、各レーンは複数のウェルと流体的に連通していた。各ウェルにPAZAM層を形成し、当該PAZAM層上に1μmのプライマーをグラフトした。
ポリアクリルアミド保護被膜は、8レーンのうちの1レーンの表面化学物質上に形成された。比較例の被膜(異なる水溶性カチオン性ポリマー)を8レーンのうちの5つのレーンの表面化学物質上に形成し、そして8つのレーンのうちの1つのレーンについては被膜を形成しなかった。比較例の被膜は異なるカチオン性ポリマーであった。以下の表2において、試験した様々なセル及びそれらが試験された濃度を規定する。
被膜をフロースループロセスによって形成し、30秒間の窒素ガス曝露を使用して乾燥させた。セルを洗浄した。
各フローセルレーンにおいてクラスタリングを行った。塩基配列決定ライブラリーを各フローレーンにロードし、そして断片を相補的プライマーによって捕捉した。各断片を別々のクローンクラスターに増幅した。強度を測定し、そして図22は、フローセルレーン表面に存在する二本鎖DNAの量を定量化する任意の蛍光単位としての結果を示す。図示されるように、保護被膜は実施例のレーンを保護していたが、カチオン性ポリマーはクラスター化を妨げた(14と、C15A〜C15Eのそれぞれと比較)。カチオン性ポリマーは、おそらくPAZAM及び/又はプライマー表面化学物質に結合していたと考えられる。
補注
前述の概念及び以下でより詳細に論議される追加の概念(そのような概念が互いに矛盾しない限り)の全ての組み合わせが、本明細書に開示される発明の主題の一部であると考えられることを理解すべきである。特に、本開示の最後に記載されている特許請求の範囲に記載されている主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられる。参照により本明細書に包含される任意の開示において表現される可能性がある本明細書で明示的に使用される用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も矛盾しない意味に一致するものと認められる。
本明細書を通して、「一例」、「他の例」、「例」などへの言及は、特定の要素(例えば、形状、特徴、構造、及び/又は特徴)が実施例又は実施形態に関連して説明されたことを意味し、当該実施例又は実施形態は、本明細書に記載の少なくとも1つの例中に含まれ、また他の例中に存在してもしなくてもよい。さらに、文脈が明らかにそうでないことを明記しない限り、任意の例について記載された要素は、さまざまな例において任意の適切な方法で組み合わせられることを理解されるべきである。
本明細書に提供される範囲は、あたかも記載された範囲内の値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、記載された範囲及び記載された範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解すべきである。例えば、約200mm〜約300mmまでの範囲は、約200mmから約300mmまでの明示的に列挙された限定だけでなく、約208mm、約245mm、約275.5mm等の個々の値、及び約225mmから約290mm、約235mmから約280mmなどの小範囲等も含むと解釈されるべきである。さらには、「約」及び/又は「実質的に」が、値を説明するために使用される場合、それらは記載されている値からのわずかな変動(最大+/−10%)を包含することを意味している。
いくつかの例を詳細に説明したが、開示された例は修正されてもよいことを理解すべきである。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。