JP2020513435A - シロキサザン化合物、およびそれを含む組成物、ならびにそれを用いたシリカ質膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリカ質膜成膜プロセスの時間を短縮させることができるシロキサザン化合物とそれを含む組成物の提供。【解決手段】特定の構造を有するシロキサザン化合物であって、O原子とN原子の総数に対する、O原子の比率が、5%以上25%以下であり、かつ前記シロキサザン化合物をインバースゲートデカップリング法に基づく29Si−NMRにより得られるスペクトルにおいて、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率が、4.0%以下である、シロキサザン化合物、およびそれを含む組成物。

Description

本発明は、半導体素子等の製造過程において欠陥の少ないシリカ質膜を形成させることができるシロキサザン化合物、およびそれを含む組成物に関するものである。また、本発明は、それらを用いたシリカ質膜の形成方法にも関するものである。
電子デバイス、とりわけ半導体デバイスの製造において、トランジスター素子とビットラインとの間、ビットラインとキャパシターとの間、キャパシターと金属配線との間、複数の金属配線の間などに、層間絶縁膜の形成がなされていることがある。さらに、基板表面などに設けられたアイソレーション溝に絶縁物質が埋設されることがある。さらには、基板表面に半導体素子を形成させた後、封止材料を用いて被覆層を形成させてパッケージにすることがある。このような層間絶縁膜や被覆層は、シリカ質材料から形成されていることが多い。
一方、電子デバイスの分野においては、徐々にデバイスルールの微細化が進んでおり、デバイスに組み込まれる各素子間を分離する絶縁構造などの大きさも微細化が要求されている。しかし、絶縁構造の微細化が進むにつれて、トレンチなどの構成するシリカ質膜における欠陥発生が増大してきており、電子デバイスの製造効率低下の問題が大きくなってきている。
一方、シリカ質膜の形成方法としては化学気相成長法(CVD法)、ゾルゲル法、ケイ素含有ポリマーを含む組成物を塗布および焼成する方法などが用いられている。これらのうち、比較的簡便であるため、組成物を用いたシリカ質膜の形成方法が採用されることが多い。このようなシリカ質膜を形成させるためには、ポリシラザン、ポリシロキサン、ポリシロキサザン、またはポリシランなどのケイ素含有ポリマーを含む組成物を基板などの表面に塗布し、焼成をすることでポリマーに含まれるケイ素を酸化して、シリカ質膜とする。
ポリシラザン主鎖の側鎖にシロキサン結合が導入されているポリシロキサザンについても種々の開発がなされている。例えば、特許文献1および2では、分子量を大きくするために、ポリシラザンのSi原子を三官能シロキサン結合で架橋させる方法が開示されている。
特許1897366号 特許3916272号
一般に、酸素含有率が高いポリシロキサザンを含む組成物からシリカ質膜を形成させると、より短時間で均一な被膜を得ることができる。しかしながら、酸素含有率が高くても、三官能シロキサン結合による架橋が多いと、シリカ質膜が不均一になりやすい。このような課題に鑑みて、主鎖により多くの酸素、すなわちシロキサン結合が導入されており、特に厚膜形成時のシリカ質膜への転化時間の短縮ができるが、均一なシリカ質膜が得られる無機ポリシロキサザン化合物またはそれを含む組成物の開発が望まれていた。本発明者らは、シロキサザン化合物における特定の酸素含有量と、インバースゲートデカップリング法により29Si−NMRを測定して得られる定量的なスペクトルにおける特定のピークの存在の有無がシロキサザン化合物の特性に影響することを見いだした。
本発明によるシロキサザン化合物は、以下の一般式(I)および(II)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、1つのSi原子に結合する2つのRのうち少なくとも1つが水素原子である)
で表される繰り返し単位を有するシロキサザン化合物であって、
前記シロキサザン化合物において、O原子とN原子の総数に対する、O原子の比率が、5%以上25%以下であり、かつ
前記シロキサザン化合物をインバースゲートデカップリング法に基づく29Si−NMRにより得られるスペクトルにおいて、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率が、4.0%以下であることを特徴とするものである。
また、本発明によるシロキサザン化合物の製造方法は、ペルヒドロポリシラザンと、水とを、アミン存在下で、反応させることを含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明による組成物は、上記のシロキサザン化合物と、溶媒とを含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明によるシリカ質膜の製造方法は、上記の組成物を基材上に塗布し、加熱することを含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明による電子素子の製造方法は、上記の組成物を基材上に塗布し、加熱することを含んでなることを特徴とするものである。
本発明によるシロキサザン化合物は、酸化に対する安定性が高く、このシロキサザン化合物を含む組成物を用いて成膜したときに、水蒸気の膜への透過を著しく上昇させることができるため、シリカ質膜成膜プロセスの時間を短縮させることができる。
本発明の一実施態様であるシロキサザン化合物を29Si−NMR測定して得られるスペクトル。 比較例のシロキサザン化合物を29Si−NMR測定して得られるスペクトル。 二次イオン質量分析法による実施例と比較例とにおける窒素原子の分布を示す図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[シロキサザン化合物]
本発明によるシロキサザン化合物は、以下の一般式(I)および(II)
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、1つのSi原子に結合する2つのRのうち少なくとも1つが水素原子である)
で表される繰り返し単位を有するシロキサザン化合物であって、
前記シロキサザン化合物において、O原子とN原子の総数に対する、O原子の比率が、5%以上25%以下であり、かつ
前記シロキサザン化合物をインバースゲートデカップリング法に基づく29Si−NMRにより得られるスペクトルにおいて、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率が、4.0%以下である。
好ましいRとしては、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ビニル基、および炭素数6〜10シクロアルカン基が挙げられ、より好ましくは全てのRが水素原子である。好ましいRとしては、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜8のビニル基、および炭素数6〜10のシクロアルカン基が挙げられ、より好ましくは水素原子である。
このようなシロキサザン化合物は、分子内に分岐構造や環状構造を有するものであり、シロキサン構造部分は主として直鎖構造を有し、かつシラザン構造部分で分岐鎖構造を有するものが好ましい。
本発明によるシロキサザン化合物は、特定の分子量を有することが必要である。本発明によるシロキサザン化合物を含む組成物をシリカ質へ転化させるために加熱する際に、飛散(蒸発)する低分子成分を少なくし、低分子成分の飛散に起因する体積収縮、ひいては微細な溝内部の低密度化を防ぐために、シロキサザン化合物の質量平均分子量は大きいことが好ましい。このような観点から、本発明によるシロキサザン化合物の質量平均分子量は1,500以上であることが必要であり、3,000以上であることが好ましい。一方、シロキサザン化合物を溶媒に溶解させて組成物とした場合、その組成物の塗布性を高くすることが必要である、具体的には、組成物の粘度が過度に高くならないこと、および凹凸部への浸透性を確保するために組成物の硬化速度を制御することが必要である。このような観点から、本発明によるシロキサザン化合物の質量平均分子量は、52,000以下であることが必要であり、20,000以下であることが好ましい。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンの基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
また、本発明によるシロキサザン化合物は、化合物を構成する原子としてO原子とN原子とを含んでなる。そして、O原子とN原子の総数に対する、O原子の比率(以下、O/(O+N)比ということがある)が、5%以上25%以下であることが好ましい。例えば、この比率は、以下のようにして測定することができる。まずシロキサザン化合物をシリコンウェハ上に塗布して成膜を行い、600nm膜厚のサンプルを作成する。このサンプルの赤外吸収スペクトルをFT−IRにて測定し、カーブフィッティングによりピーク分離を行う。1180cm−1付近に現れるピークがSi−NHに、1025cm−1付近に現れるピークがSi−O−Si、926cm−1付近に現れるピークがSi−N−Siに、それぞれアサインされ、それらのピーク面積比率から、(Si−O−Si)/[(Si−O−Si)+(Si−NH)+(Si−N−Si)]×100の計算式によって、O/(O+N)比を求めることができる。
また、本発明によるシロキサザン化合物は、分子構造に特徴があり、従来一般的に知られているシロキサザン化合物に比較して、シロキサン構造部分が主として直鎖構造を有していて、分岐鎖構造をほとんど有していないという特徴がある。
このような構造の特徴は、インバースゲートデカップリング法に基づく定量的29Si−NMR(本発明において、簡単に「29Si−NMR」ということがある)により検出することができる。すなわち、本発明によるシロキサザン化合物は、29Si−NMRにより評価した場合に特定の特性値を示す。29Si−NMRは、定量的に29SiのNMRスペクトルを得ることができ、より正確な29Si核の定量などを行うための方法として知られている。具体的には石英のNMRチューブ由来のピークを−110ppmとして、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の積分値を比較することにより分析を行う。本発明によるシロキサザン化合物は、石英のNMR管を用いて29Si−NMRを測定し、シロキサザン化合物分子中の−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の積分値比が特定の範囲にあることを特徴の一つとしている。
本発明においては29Si−NMRの測定は具体的に以下のようにして行うことができる。
まず、合成して得られたシロキサザン化合物をエバポレーターで溶媒を除去し、得られたシロキサザンを0.4gを重溶媒、たとえば重クロロホルム(関東化学株式会社製)1.6gに溶解させ試料溶液を得る。試料溶液をJNM−ECS400型核磁気共鳴装置(商品名、日本電子株式会社製)を用いて、1,000回測定しての29Si−NMRスペクトルを得る。図1はこの方法により得られた、本発明によるシロキサザン化合物のNMRスペクトルの一例である。このNMRスペクトルには、シロキサザン化合物のシラザン構造(−N1/2−Si−N1/2−:下記式(i))に含まれるSiとシロキサザン構造(−N1/2−Si−O1/2−:下記式(ii))に含まれるSiとに帰属されるピーク(δ=−25〜−55ppm付近)、三官能シロキサン構造(−Si(O1/2−):下記式(iii))に含まれるSiに帰属されるピーク(δ=−75〜−90ppm付近)が認められる。
(式中、Rは水素または炭化水素基を示す)
本発明によるシロキサザン化合物において、三官能シロキサン構造に含まれるSiに帰属されるピークは、小さいほど本発明の効果が強く発現し、シリカ質膜を形成させたときに6員環以上環構造が増加する傾向にある。このため、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、三官能シロキサン結合に帰属されるピーク(−75ppm〜−90ppmに検出されるピーク)の面積の比率(以下、三官能シロキサンピーク強度比ということがある)が、4.0%以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下である。
このような特定の構造を有するシロキサザン化合物は、組成物として基板上に塗膜形成後、水蒸気雰囲気で焼成する際、水蒸気が深さ方向に容易に浸透していくという特徴を有する。その理由は、シロキサザン構造(上記式(ii))を導入することで、膜密度が疎になり、その結果、焼成時間を短縮することができると考えられる。
[シロキサザン化合物の製造方法]
本発明によるシロキサザン化合物は、一般に、ペルヒドロポリシラザンを形成させ、さらにそのペルヒドロポリシラザンをアミン存在下で重縮合させることにより合成することができる。ここで、従来の方法に対して、添加するアミン水溶液の水濃度、温度、滴下速度、アミンの種類や加水分解するポリマーの構造を制御することによって、本発明によるシロキサザン化合物を製造することができる。
本発明によるシロキサザン化合物の製造方法をより具体的に説明すると以下の通りである。
まず、原料としてジクロロシランをジクロロメタンまたはベンゼンなどの溶媒中で、アンモニアと反応させてペルヒドロポリシラザンを形成させる。ここで、ペルヒドロポリシラザンの分子量が大きすぎると、形成されるシロキサザンの酸素導入量が低くなる傾向にあるので、ペルヒドロポリシラザンの分子量は低いことが好ましい。具体的には、ペルヒドロポリシラザンの分子量は、好ましくは3,100以下、より好ましくは2,000以下である。
次いで、中間生成物であるペルヒドロポリシラザンと水とを、溶媒中で加熱し、アミン存在下で、重縮合反応させることによって本発明によるシロキサザン化合物を形成させることができる。
前記溶媒としては、ペルヒドロポリシラザンを分解しないものであれば任意のものが使用できる。このようなものとしては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素の炭化水素溶媒、ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベンゼン等のハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。好ましい溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素等である。また、反応系に添加するアミンとしては、3級アミンが好ましく、ピリジンなどの芳香族アミンも好ましい。
本発明の重縮合反応は、一般に前記した溶媒中で実施されるが、この場合、ペルヒドロポリシラザンの濃度は一般に0.1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜12質量%である。ペルヒドロポリシラザンの濃度がこれより低いと分子間重縮合反応が十分進行せず、またそれより高いと分子間重縮合反応が進みすぎてゲルを生成することがある。ポリマー溶液の反応温度は一般的に−10℃〜60℃、好ましくは−5℃〜30℃が好ましい。この範囲より低い温度では反応時には重縮合反応が十分進行せず、その後の溶媒置換時に重縮合反応が急速に進行してしまうため、構造制御が困難となり、されに進行してゲルを生成することがある、また、この範囲より高い温度でも、反応時に重縮合反応が進みすぎて構造制御が困難となり、ゲルを生成することがある。反応雰囲気としては、大気の使用が可能であるが、好ましくは、水素雰囲気などの還元性雰囲気や、乾燥窒素、乾燥アルゴン等の不活性ガス雰囲気あるいはそれらの混合雰囲気が使用される。本発明における重縮合反応においては、副生物の水素によって反応の際圧力がかかるが、必ずしも加圧は必要でなく、常圧を採用することができる。なお、反応時間は、ペルヒドロポリシラザンの種類、濃度および塩基性化合物又は塩基性溶媒の種類、濃度、重縮合反応温度など諸条件により異なるが、一般的に0.5時間〜40時間の範囲とすれば充分である。
[組成物]
本発明による組成物は、前記のシロキサザン化合物と溶媒とを含むものである。この組成物液を調製するために用いられる溶媒としては、(a)芳香族化合物、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン等、(b)飽和炭化水素化合物、たとえばシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、p−メンタン等、(c)不飽和炭化水素、たとえばシクロヘキセン等、(d)エーテル、たとえばジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等、(e)エステル、たとえば酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル等、(f)ケトン、たとえばメチルイソブチルケトン(MIBK)等、が挙げられるが、これらに限定はされない。また、複数種の溶媒を使用することにより、PHPSの溶解度や溶媒の蒸発速度を調節することもできる。
組成物への溶媒の配合量は、採用する塗布方法により作業性がよくなるように、また微細な溝内への溶液の浸透性や溝外部において必要とされる膜厚を考慮して、用いるシロキサザン化合物の質量平均分子量、その分布及び構造に応じて適宜選定することができる。
本発明による組成物は、組成物の全質量を基準として、一般に0.5〜60質量%、好ましくは2〜45質量%のシロキサザン化合物を含む。
[シリカ質膜の形成方法]
本発明によるシリカ質膜の形成方法は、前記の組成物を、基材上に塗布し、加熱することを含んでなる。基材の形状は特に限定されず、目的に応じて任意に選択することができる。しかしながら、本発明による硬化用組成物は、狭い溝部などにも容易に浸透し、溝の内部においても均一なシリカ質膜を形成できるという特徴があるため、アスペクト比の高い溝部や孔を有する基板に適用することが好ましい。具体的には最深部の幅が0.2μm以下でそのアスペクト比が2以上である溝を少なくとも一つ有する基材などに適用することが好ましい。ここで溝の形状に特に限定はなく、断面が長方形、順テーパー形状、逆テーパー形状、曲面形状、等いずれの形状であってもよい。また、溝の両端部分は開放されていても閉じていてもよい。
従来法では、最深部の幅が0.2μm以下でそのアスペクト比が2以上である溝をシリカ質材料で埋封しようとしても、シリカ質への転化時の体積収縮が大きいために溝内部が溝外部よりも低密度化し、溝の内外で材質が均質となるように溝を埋封することが困難であった。これに対して、本発明によると、溝の内外で均一なシリカ質膜を得ることができる。このような本発明の効果は、最深部の幅が0.1μm以下のような非常に微細な溝を有する基材を用いた場合により一層顕著なものとなる。
アスペクト比の高い溝を少なくとも一つ有する基材の代表例として、トランジスター素子、ビットライン、キャパシター、等を具備した電子デバイス用基板が挙げられる。このような電子デバイスの製作には、PMDと呼ばれるトランジスター素子とビットラインとの間、トランジスター素子とキャパシターとの間、ビットラインとキャパシターとの間、またはキャパシターと金属配線との間の絶縁膜や、IMDと呼ばれる複数の金属配線間の絶縁膜の形成、或いはアイソレーション溝の埋封、といった工程に続き、微細溝の埋封材料を上下に貫通する孔を形成するスルーホールめっき工程が含まれる場合がある。
本発明は、アスペクト比の高い基材に対し、その溝の内外で均質なシリカ質材料による埋封が必要とされる他のいずれの用途にも適している。このような用途として、例えば、液晶ガラスのアンダーコート(Na等パッシベーション膜)、液晶カラーフィルターのオーバーコート(絶縁平坦化膜)、フィルム液晶のガスバリヤ、基材(金属、ガラス)のハードコーティング、耐熱・耐酸化コーティング、防汚コーティング、撥水コーティング、親水コーティング、ガラス、プラスチックの紫外線カットコーティング、着色コーティング、が挙げられる。
このような基材への硬化用組成物の塗布方法に特に制限はなく、通常の塗布方法、例えば、スピンコート法、浸漬法、スプレー法、転写法、スリットコート法等が挙げられる。
硬化用組成物の塗布後、塗膜の乾燥又は予備硬化の目的で、大気中、不活性ガス中又は酸素ガス中で50〜400℃の温度で10秒〜30分の処理条件による乾燥工程を行う。
乾燥により溶媒は除去され、微細溝は実質的にシロキサザン化合物によって埋封されることになる。
本発明によると、溝内外に含まれるシロキサザン化合物を加熱することでシリカ質材料に転化させる。加熱する際に水蒸気を含む雰囲気において加熱することが好ましい。
水蒸気を含む雰囲気とは、水蒸気分圧が0.5〜101kPaの範囲内にある雰囲気をいい、好ましくは1〜90kPa、より好ましくは1.5〜80kPaの範囲の水蒸気分圧を有する。加熱は300〜1200℃の温度範囲で行うことができる。
なお、水蒸気を含む雰囲気において高温で、例えば600℃を超える温度で、加熱すると、同時に加熱処理に晒される電子デバイス等の他の要素が存在する場合に当該他の要素への悪影響が懸念されることがある。このような場合には、シリカ転化工程を二段階以上に分け、最初に水蒸気を含む雰囲気において比較的低温で、例えば300〜600℃の温度範囲で加熱し、次いで水蒸気を含まない雰囲気においてより高温で、例えば500〜1200℃の温度範囲で加熱することができる。
水蒸気を含む雰囲気における水蒸気以外の成分(以下、希釈ガスという。)としては任意のガスを使用することができ、具体例として空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、等が挙げられる。希釈ガスは、得られるシリカ質材料の膜質の点では酸素を使用することが好ましい。しかしながら、希釈ガスは、当該加熱処理に晒される電子デバイス等の他の要素への影響をも考慮して適宜選択される。なお、上述の二段階加熱方式における水蒸気を含まない雰囲気としては、上記希釈ガスのいずれかを含む雰囲気の他、1.0kPa未満の減圧または真空雰囲気を採用することもできる。
これらの事情を勘案して設定される好適な加熱条件の例を挙げる。
(1)本発明による硬化用組成物を所定の基材に塗布、乾燥後、温度が300〜600℃の範囲、水蒸気分圧が0.5〜101kPaの範囲の雰囲気中で加熱し、引き続き温度が400〜1200℃の範囲で、酸素分圧が0.5〜101kPaの範囲の雰囲気中で加熱すること;
(2)本発明による硬化用組成物を所定の基材に塗布、乾燥後、温度が300〜600℃の範囲、水蒸気分圧が0.5〜101kPaの範囲の雰囲気中で加熱し、引き続き温度が400〜1200℃の範囲で、窒素、ヘリウム及びアルゴンの中から選ばれる一種又は二種以上の不活性ガス雰囲気中で加熱すること、並びに
(3)本発明による硬化用組成物を所定の基材に塗布、乾燥後、温度が300〜600℃の範囲、水蒸気分圧が0.5〜101kPaの範囲の雰囲気中で加熱し、引き続き温度が400〜1200℃の範囲で、1.0kPa未満の減圧または真空雰囲気中で加熱すること。
加熱の際の目標温度までの昇温速度及び降温速度に特に制限はないが、一般に1℃〜100℃/分の範囲とすることができる。また、目標温度到達後の加熱保持時間にも特に制限はなく、一般に1分〜10時間の範囲とすることができる。
上記の加熱工程により、シロキサザン化合物が水蒸気による加水分解反応を経てSi−O結合を主体とするシリカ質材料へ転化する。この転化反応は、また有機基の分解もないため、反応前後での体積変化が非常に小さい。このため、本発明による硬化用組成物を用いてアスペクト比の高い溝を有する基材の表面にシリカ質膜を形成させた場合には、溝の内外のいずれにおいても均質になる。また、本発明の方法によると、CVD法のようなコンフォーマル性がないため、微細溝内部に均一に埋封できる。さらに、従来法ではシリカ膜の高密度化が不十分であったが、本発明の方法によると、シリカ質転化後の膜の高密度化が促進され、クラックが生じにくい。また、ポリシラザン化合物と比較してポリマー中の窒素原子が少ないため、均一なシリカ質膜に転化するための焼成時間を短縮することができる。これは、特に厚膜のシリカ質膜の形成時に有利である。さらに形成されたシリカ質膜において、表面から深い位置における窒素原子の濃度が高くなるのが一般的であるが、本発明によれば、窒素原子の濃度が深さ方向で均一性が高くなる。
なお、本発明によるシリカ質膜の形成方法において、基板表面に形成されるシリカ質膜の厚さ、溝外部の表面に形成された塗膜の厚さに特に制限はなく、一般にはシリカ質材料への転化時に膜にクラックが生じない範囲の任意の厚さとすることができる。上述したように、本発明の方法によると膜厚が0.5μm以上となる場合でも被膜にクラックが生じにくいので、たとえば幅1000nmのコンタクトホールで、2.0μm深さの溝を実質的に欠陥なく埋封することができる。
また、本発明による電子素子の製造方法は、上記の組成物を基材上に塗布し、加熱することを含んでなるものである。
[実施例]
本発明を実施例によってさらに詳述すると以下の通りである。
[合成例1:中間体(A)の合成]
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた10L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ピリジン7,500mlを反応容器に投入し、−3℃まで冷却した。次いでジクロロシラン500gを加えると各色固体状のアダクト(SiHCl・2CN))が生成した。反応混合物が−3℃以下になったことを確認し、撹拌しながらこれにゆっくりとアンモニア350gを吹き込んだ。引き続いて30分間撹拌し続けた後、乾燥窒素を液層に30分間吹き込み、過剰のアンモニアを除去した。得られたスラリー状の生成物を乾燥窒素雰囲気下でテフロン(登録商標)製0.2μmフィルターを用いて加圧濾過を行い、濾液6,000mlを得た。エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、濃度42.1%のペルヒドロポリシラザンのキシロール溶液を得た。得られたペルヒドロポリシラザンをGPC(展開液:CHCl)により分析したところ、ポリスチレン換算の質量平均分子量は1,401であった。この処方にて得られたペルヒドロポリシラザンを以下、中間体(A)と呼ぶ。
[実施例1]
定量送液ポンプ、アミン水溶液用恒温槽、冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた10L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ピリジン4959gと合成例1で得られた42.1%の中間体(A)450gを投入し、窒素ガスを0.5NL/minでバブリングしながら、均一になるように攪拌した。−3℃に冷却後、引き続いてピリジン水溶液1135gをゆっくり滴下した。滴下後30分間攪拌をした後、実施例1のシロキサザン化合物が得られた。
得られたシロキサザン化合物について、O原子とN原子の総数に対するO原子の比率を測定した。実施例1のシロキサザン化合物をシリコンウェハ上に塗布して成膜を行い、600nm膜厚のサンプルを作成した。得られたサンプルの赤外吸収スペクトルをFT−IRにて測定し、カーブフィッティングによりピーク分離を行った。1180cm−1付近に現れるピーク(Si−NH)、1025cm−1付近に現れるピーク(Si−O−Si)、926cm−1付近に現れるピーク(Si−N−Si)のピーク面積比率から、(Si−O−Si)/[(Si−O−Si)+(Si−NH)+(Si−N−Si)]×100の計算式によって、O原子とN原子の総数に対するO原子の比率を測定した。また、それらのシロキサザン化合物を29Si−NMR測定により得られるスペクトルにおいて、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率を算出した。この結果、実施例1のシロキサザンのO原子とN原子の総数に対するO原子の比率(O/(O+N)比)は6.2%であり、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率(三官能シロキサンピーク強度比)は0であった。
[実施例2〜5および比較例1]
実施例1に対して、水溶液の添加量を変えて、O/(O+N)比が異なるシロキサザン化合物を合成した。
[比較例2]
実施例1に対して、水溶液の添加量を3594gに変更して合成を行ったところ、最終的にゲル化してしまいシロキサザン化合物を得ることはできなかった。
[比較例3および4]
合成例1で得られた中間体(A)をジブチルエーテルに溶解させ、質量平均分子量1,401である、比較例3のペルヒドロポリシラザンを得た。
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた10L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ピリジン4680g、乾燥キシロール151gと合成例1で得られた42.1%の中間体(A)1546gを投入し、窒素ガス0.5NL/minでバブリングを行いながら、均一になるように撹拌した。引き続いて100℃で11.4時間改質反応を行い、比較例4の質量平均分子量が3,068のペルヒドロポリシラザンが得られた。
[比較例5〜7]
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた10L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ピリジン7,500gを反応容器に投入し、−3℃まで冷却した。次いでジクロロシラン142gを加えると各色固体状のアダクト(SiHCl・2CN))が生成した。続いて、−10℃まで冷却した後ピリジン水溶液1009gをゆっくり滴下した。反応混合物が−3℃以下になったことを確認し、撹拌しながらこれにゆっくりとアンモニア427gを吹き込んだ。引き続いて30分間撹拌し続けた後、乾燥窒素を液層に30分間吹き込み、過剰のアンモニアを除去した。得られたスラリー状の生成物を乾燥窒素雰囲気下でテフロン(登録商標)製0.2μmフィルターを用いて加圧濾過を行い、濾液6,000mlを得た。エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、濃度20.0%のペルヒドロポリシラザンのキシロール溶液を得た。得られたペルヒドロポリシラザンの質量平均分子量をは1526であり、また、O/(O+N)比は4.9%であった(比較例5)。
比較例5に対して乾燥ピリジン5979g、ピリジン水溶液2552g、アンモニア400gに変更して合成を行い、O/(O+N)比が10.8%、構造が異なるシロキサザン化合物を得た(比較例6)。
比較例5に対して乾燥ピリジン6015g、濃度2倍のピリジン水溶液2551.8g、アンモニア356gに変更して合成を行ったところ、最終的にゲル化してしまい、シロキサザン化合物を得ることができなかった(比較例7)。
[比較例8〜11]
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた10L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ジクロロメタン7,500mlを反応容器に投入し、−3℃まで冷却した。次いでジクロロシラン341gを加え、続いてアンモニア173gとテトラヒドロフラン水溶液1261gを同時に加えて反応させた。続いて、0℃まで冷却した後、引き続いて30分間撹拌し続けた後、乾燥窒素を液層に30分間吹き込み、過剰のアンモニアを除去した。得られたスラリー状の生成物を乾燥窒素雰囲気下でテフロン(登録商標)製0.2μmフィルターを用いて加圧濾過を行い、濾液8,000mlを得た。
エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、濃度20.0%のシロキサザンのキシロール溶液を得た。得られたシロキサザンの質量平均分子量は3,069であり、O/(O+N)比は9.5%であった(比較例8)。
比較例8に対して、テトラヒドロフランの添加量を変化させて、比較例9〜11のシロサザンを得た
[比較例12]
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた1L反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥ピリジン490mlを反応容器に投入し、−3℃まで冷却した。次いでジクロロシラン51.9gを加えると各色固体状のアダクト(SiHCl・2CN))が生成した。反応混合物が−3℃以下になったことを確認し、撹拌しながらこれにゆっくりとアンモニア51.0gを吹き込んだ。引き続いて30分間撹拌し続けた後、乾燥窒素を液層に30分間吹き込み、過剰のアンモニアを除去した。得られたスラリー状の生成物を100℃1時間加熱後、乾燥窒素雰囲気下でテフロン(登録商標)製0.2μmフィルターを用いて加圧濾過を行い、濾液40mlを得た。エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、濃度23.0%のペルヒドロポリシラザンのキシロール溶液を得た。得られたペルヒドロポリシラザンの質量平均分子量は1158であった(比較例12)。
[比較例13]
冷却コンデンサー、メカニカルスターラーと温度制御装置を備えた300mL反応容器内部を乾燥窒素で置換した後、乾燥キシレン80mlを反応容器に投入し、続いて比較例12で得られたポリシラザン10gとトリエチルアミン10gを投入、−3℃まで冷却した。4.7%トリエチルアミン水溶液10.5gを10分間かけて滴下した。引き続いて30分間撹拌し続けた後、エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、濃度18.9%のシロキサザンのキシロール溶液を得た。得られたシロキサザンの質量平均分子量は7544、O/(O+N)比は14.8%であった。
[比較例14]
比較例13に対して、トリエチルアミンをブチルアミンに置き換えて、2.4%ブチルアミン水溶液20.5gを添加して合成を行った。得られたシロキサザンの質量平均分子量は7544であった。しかし、最終的にゲル化してしまい取り扱うのは困難であった。
[比較例15]
比較例14に対して、トリエチルアミンをピリジンに置き換えて、合成を行った。得られたシロキサザンの質量平均分子量は2872、O/(O+N)比は11.2%であった。
各例によりるシロキサザンのO/(O+N)比および三官能シロキサンピーク強度比は、表1に示す通りであった。
表中、n/aは、組成物がゲル化し、測定できなかったことを示す。
図1は、本発明の一実施態様であるシロキサザン化合物を29Si−NMR測定して得られる典型的なスペクトルであり、図2は、比較例のシロキサザン化合物を29Si−NMR測定して得られる典型的なスペクトルである。図2では、−75ppm〜−90ppmにピークが確認されるが、図1では確認されない。
実施例3のシロキサザン化合物と、比較例4のシロキサザン化合物とを、それぞれ塗布膜600nmになるようにキシレンを加えて、濃度調整を行い、組成物を調製した。得られた組成物をスピンコーター(ミカサ株式会社製スピンコーター1HDX2(商品名))を用いて、4インチウェハに回転数1000rpmでスピン塗布した。得られた塗布膜を試料として、二次イオン質量分析法(SIMS)にて窒素の含有量の分析を行った。
SIMS測定は以下の条件で行った。
シロキサザン溶液を基板に塗布して600nmの膜を得た後、80%水蒸気雰囲気下350℃120分、さらに続いて、窒素雰囲気下で850℃60分加熱を行って、シリカ質膜を得た。得られた膜を、SIMS装置 PHI ADEPT1010を用いて、1次イオンCs、1次加速電圧5.0kv、の条件で膜中の窒素含有量の分析を行った。
得られた結果は図3に示す通りであった。この結果より、本発明によるシロキサザン化合物を含む組成物を用いた塗布膜では、窒素原子の濃度は、深さ方向でほとんど変化しないが、ポリシラザン化合物を含む組成物を用いた塗布膜では、窒素原子の濃度は、深さ方向に進むほど、濃度が上がっていることがわかる。これは、本発明によるシロキサザン化合物を用いた場合、均一なシリカ質膜を形成するための酸化を行うための焼成時間を短縮できることを示している。
[トレンチ内膜組成評価]
各シロキサザン化合物を塗布膜で600nm程度になるように濃度調整を行い、塗布液を調製した。調製した塗布液を濾過精度0.02μmのPTFE製フィルターで濾過した。濾過後の塗布液をスピンコーター(東京エレクトロン株式会社製Mark8)を用いて、シリコンウェハ上に1000rpmにて塗布した。このウェハは、縦断面が長方形であり、深さ500nm、幅100nmのトレンチを有するもので、本トレンチが100個連続で並んだ構造を特徴とする。塗布済みのウェハをまず150℃にて3分間プリベークに付した。その後、焼成炉(光洋サーモシステム株式会社製VF1000LP)にて350℃の水蒸気雰囲気にて120分、引き続いて850℃の窒素雰囲気下で焼成を行った。そして、化学機械研磨(CMP)にて溝の最表面まで研磨を行い、基盤上の余剰の膜を除去した。続いて得られたトレンチ基盤を二次イオン質量分析法(SIMS)にてトレンチ内の窒素原子濃度の分析を行った。窒素原子濃度が深さ方向に一定かつ1×1020atom/cm以下であれば良好であると判断できる。窒素濃度がそれを超えると、膜中の窒素原子濃度が一定でなくなるので好ましくない。各実施例の窒素原子濃度は、いずれも1×1020atom/cm以下であった。一方、各比較例の窒素原子濃度は、いずれも1×1020atom/cmを超えていた。
この結果より、本発明によるシロキサザン化合物を含む組成物を用いたトレンチ内塗布膜では、窒素原子濃度は、深さ方向でほとんど変化しないが、ポリシラザン化合物を含む組成物を用いた塗布膜では、窒素原子濃度は、深さ方向に進むほど、濃度が上がっていることがわかる。これは、本発明によるシロキサザン化合物を用いた場合、均一なシリカ質膜を形成するための酸化を行うための焼成時間を短縮できることを示している。

Claims (10)

  1. 以下の一般式(I)および(II)
    (式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはアリール基であり、1つのSi原子に結合する2つのRのうち少なくとも1つが水素原子である)
    で表される繰り返し単位を有するシロキサザン化合物であって、
    前記シロキサザン化合物において、O原子とN原子の総数に対する、O原子の比率が、5%以上25%以下であり、かつ
    前記シロキサザン化合物をインバースゲートデカップリング法に基づく29Si−NMRにより得られるスペクトルにおいて、−25ppm〜−55ppmに検出されるピークの面積に対する、−75ppm〜−90ppmに検出されるピークの面積の比率が、4.0%以下である、シロキサザン化合物。
  2. 前記シロキサザン化合物の質量平均分子量が、1,500以上52,000以下である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記RおよびRが、水素原子である、請求項1または2に記載の化合物。
  4. ペルヒドロポリシラザンと、水とを、アミン存在下で反応させることを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
  5. 前記アミンがピリジンである、請求項4に記載の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物と、溶媒とを含んでなる、組成物。
  7. 前記溶媒が、(a)芳香族化合物、(b)飽和炭化水素化合物、(c)不飽和炭化水素、(d)エーテル、(e)エステル、および(f)ケトンからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
  8. 請求項6または7に記載の組成物を基材上に塗布し、加熱することを含んでなる、シリカ質膜の製造方法。
  9. 前記加熱を水蒸気雰囲気下で行う、請求項8に記載のシリカ質膜の製造方法。
  10. 請求項6または7に記載の組成物を基材上に塗布し、加熱することを含んでなる、電子素子の製造方法。
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