JP2020184438A - 固体電解質層の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本開示は、上記実情に鑑み、割れ難い固体電解質層の製造方法を提供することを目的とする。
無機固体電解質と、前記有機フィラーとを含み、全固形分中の前記有機フィラーの含有量が5体積%以上である固体電解質組成物を調製する工程と、
前記固体電解質組成物を用いて固体電解質層を形成する工程とを有し、
前記固体電解質組成物に含有させる前の前記有機フィラーの平均長さdに対する、前記固体電解質層中の前記有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)が1以上5以下であることを特徴とする。
無機固体電解質と、前記有機フィラーとを含み、全固形分中の前記有機フィラーの含有量が5体積%以上である固体電解質組成物を調製する工程と、
前記固体電解質組成物を用いて固体電解質層を形成する工程とを有し、
前記固体電解質組成物に含有させる前の前記有機フィラーの平均長さdに対する、前記固体電解質層中の前記有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)が1以上5以下であることを特徴とする。
本開示の製造方法では、有機フィラーとして、前記特定のアスペクト比を有する繊維状のものを特定量用い、更に、固体電解質組成物に含有させる前の有機フィラーの平均長さdに対する、固体電解質層中の有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)を1以上5以下としている。前記比(D50/d)は、固体電解質組成物の撹拌時間等により調整可能であり、固体電解質層中での有機フィラーの分散状態の指標となる。有機フィラーが集合体を形成せずに分散され、有機フィラーの各繊維が単体で存在している場合に、前記比(D50/d)が1付近となるため、前記比(D50/d)が1以上5以下であることにより、固体電解質層中の有機フィラーの分布の偏りが抑制されていると考えられる。そのため、本開示の製造方法により得られる固体電解質層は、前記特定形状の有機フィラーが良好に分散した特定の構造を有すると推定され、当該特定の構造が固体電解質層を割れ難くし、即ち耐割れ性を向上していると推定される。
以下、本開示の固体電解質層の製造方法の各工程について詳細に説明する。
本開示の製造方法に用いられる有機フィラーは、固体電解質組成物に含有される前において、アスペクト比が150以上500以下であり、繊維状である。前記有機フィラーのアスペクト比が150以上であることにより、固体電解質層を強化して、耐割れ性を向上すると推定される。また、前記有機フィラーのアスペクト比が500以下であることにより、前記有機フィラーの分散性の低下が抑制されるため、固体電解質層全体が均一に強化されると推定される。
ここで、有機フィラーのアスペクト比とは、有機フィラーの数平均直径に対する数平均繊維長の比(数平均繊維長/数平均直径)である。なお、本開示において、後述する有機フィラーの平均長さdは、有機フィラーの数平均繊維長と同義である。
前記有機フィラーは、前記材料を1種単独で含むものであっても、2種以上を混合して含むものであってもよい。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、少なくとも無機固体電解質と、有機フィラーとを含み、効果を損なわない範囲において、必要に応じて結着剤及び溶剤等のその他の成分を更に含んでいてもよい。
無機固体電解質としては、全固体電池に用いられる公知の無機固体電解質を適宜選択して用いることができ、特に限定はされない。例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質等を挙げることができる。中でもイオン伝導性が高い点から、硫化物固体電解質が好ましい。
硫化物固体電解質としては、例えば、Li2S−P2S5、Li2S−P2S5−LiI、Li2S−P2S5−LiI−LiBr、Li2S−P2S5−Li2O、Li2S−P2S5−Li2O−LiI、Li2S−SiS2、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−LiBr、Li2S−SiS2−LiCl、Li2S−SiS2−B2S3−LiI、Li2S−SiS2−P2S5−LiI、Li2S−B2S3、Li2S−P2S5−ZmSn(ただし、m、nは正の数を表し、Zは、Ge、Zn又はGaを表す。)、Li2S−GeS2、Li2S−SiS2−Li3PO4、Li2S−SiS2−LixMOy(ただし、x、yは正の数を表し、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInを表す。)等を挙げることができる。中でも、イオン伝導性が高い点から、Li2S−P2S5を含むものであることがより好ましく、Li2S−P2S5−LiI−LiBrが特に好ましい。なお、前記「Li2S−P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
なお、本開示において固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の結着剤等も含まれる。
有機フィラーとしては、前述した有機フィラーを用いる。
前記有機フィラーの含有量は、固体電解質組成物に含まれる全固形分中、5体積%以上であればよいが、固体電解質層のイオン伝導性の低下を抑制する点から、15体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがより好ましく、8体積%以下であることがより更に好ましい。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、結着剤を含んでいてもよい。結着剤としては、従来固体電解質層に用いられている公知のものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等を挙げることができる。
前記固体電解質組成物が結着剤を含有する場合、前記結着剤の含有量は、特に限定はされないが、結着剤としての機能を十分に発現させる点から、固体電解質組成物に含まれる全固形分中、0.1体積%以上であることが好ましく、一方、前記無機固体電解質及び前記有機フィラー等を十分に含有させる点から、5体積%以下であることが好ましい。
前記固体電解質組成物が溶剤を含有する場合、前記溶剤の含有量は、前記有機フィラーを良好に分散することができ、固体電解質組成物の塗工性が良好になるように適宜調整され、特に限定はされない。
前記固体電解質組成物の製造方法は、特に限定はされないが、前記有機フィラーの分散性を向上する点から、前記有機フィラーを溶剤中に分散させた分散液を得た後、当該分散液に、前記無機固体電解質及び前記結着剤等のその他の成分を添加し、更に撹拌する方法を好ましく用いることができる。前記固体電解質組成物は、前記有機フィラーの分散性を向上し、固体電解質組成物に含有させる前の前記有機フィラーの平均長さdに対する、固体電解質層中の前記有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)を容易に1以上5以下とする観点から、塗布直前まで撹拌されることが好ましい。また、同様の観点から、前記分散液の撹拌は、超音波処理による撹拌が好ましい。
前記撹拌の条件は、前記有機フィラーの添加量及び種類等に応じて、適宜調整され、特に限定はされないが、前記有機フィラーの分散性を向上する観点から、前記有機フィラーを前記溶剤中に分散させた分散液を60秒以上撹拌した後、当該分散液に前記無機固体電解質及び前記結着剤等のその他の成分を添加し、更に90秒以上撹拌することが好ましい。
前記固体電解質組成物を用いて固体電解質層を形成する工程において、固体電解質層を形成する方法は、固体電解質層の耐割れ性を向上する点から、支持体上に前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程と、当該塗膜をプレスする工程とを有する方法であることが好ましい。
前記固体電解質組成物を塗布する方法は、前記固体電解質組成物の粘度等に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記固体電解質組成物がペーストの場合は、支持体上に前記固体電解質組成物を垂らすことにより、前記固体電解質組成物を塗布することができる。
前記固体電解質組成物を塗布した後、乾燥する際の乾燥条件は、前記固体電解質組成物に含まれる溶剤の種類及び含有量等に応じて適宜調整されるものであり、特に限定はされないが、例えば、乾燥温度を60℃以上120℃以下とし、乾燥時間を10分以上60分以下としてもよい。
前記固体電解質組成物を塗布する支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えば金属箔等を用いることができる。本開示の製造方法においては、剥離可能な支持体を用いて、固体電解質層を形成した後に支持体を剥離してもよいし、電極板等を支持体として用いて、支持体上に固体電解質層を形成したものをそのまま全固体電池に組み込んでもよい。剥離可能な支持体としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
本開示において、前記固体電解質組成物に含有させる前の前記有機フィラーの平均長さdに対する、前記固体電解質層中の前記有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)は、1以上5以下である。固体電解質層の耐割れ性及びイオン伝導性を向上する点から、前記比(D50/d)は、4.5以下であることが好ましく、4.1以下であることがより好ましく、3.6以下であることがより更に好ましい。
なお、前記メジアン径D50は、レーザー回折光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径である。前記有機フィラーは繊維状のため、前記有機フィラーの粒径は、有機フィラーの長さ(繊維長)に相当する。前記有機フィラーの粒径は、前記固体電解質層の断面のSEM画像から測定することができ、有機フィラーが集合体を形成している場合は、当該集合体を1粒子として粒径を測定する。メジアン径D50は、このようにして測定される60点の粒径から求められる。
(1)固体電解質組成物の調製
有機フィラーとしては、アラミド繊維(ダイセルファインケム(株)製、製品名:ティアラ、アスペクト比:150)を用いた。
無機固体電解質としては、Li2S:P2S5:LiBr:LiIのモル比が225:75:15:10となるように、各原料を配合して硫化物固体電解質(10LiI−15LiBr−75(3Li2S−P2S5)を得た。
酪酸ブチルに、前記有機フィラーを入れ、超音波ホモジナイザー((株)エスエムテー製、超音波分散機、型式:UH−50)を用いて60秒間撹拌して有機フィラーを解砕し、分散液を得た。
得られた前記分散液に、前記硫化物固体電解質、及び結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、超音波ホモジナイザーを用いて90秒間撹拌し、固体電解質組成物のペーストを得た。固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量は5体積%であった。
得られた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、ホットプレート(アズワン(株)製、型番:ND−2A)上で100℃、30分の条件で乾燥し、塗膜を形成した。このように、Al箔上に固体電解質組成物の塗膜を形成した積層体を2つ準備した。Cu箔に前記固体電解質組成物の塗膜が接するように、Cu箔の両面に各々前記積層体を重ね、線圧5ton/cm、170℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA−602)でプレスすることにより、Cu箔の両面に各々固体電解質層を形成した。その後、JIS K 6251で規定されるダンベル型試験片(引張6号形)の形状に打ち抜き、固体電解質層の表面にあるAl箔を剥離して、測定サンプルとした。
実施例1において、固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量が表1に示す量となるように、有機フィラーの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
実施例1において、有機フィラーとして、アスペクト比が150のアラミド繊維に代えて、アスペクト比が500のアラミド繊維を用い、更に、固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量が表1に示す量となるように、有機フィラーの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
実施例1において、有機フィラーを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
実施例1において、有機フィラーとして、アスペクト比が150のアラミド繊維に代えて、アスペクト比が1.5のアラミド繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
比較例3、8は、各々実施例1、5において、固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量が1体積%となるように、固体電解質組成物を調製する際に有機フィラーの添加量を変更した以外は、各々実施例1、5と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
比較例4、5、6は、各々実施例1、3、4において、固体電解質組成物を撹拌する時間を90秒から30秒に変更した以外は、各々実施例1、3、4と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
比較例7、9は、各々実施例1、5において、固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量が20体積%となるように、固体電解質組成物を調製する際に有機フィラーの添加量を変更した以外は、各々実施例1、5と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
実施例1において、有機フィラーとして、アスペクト比が150のアラミド繊維に代えて、アスペクト比が1100のアラミド繊維を用い、更に、固体電解質組成物に含まれる全固形分中の有機フィラーの含有量が表1に示す量となるように、有機フィラーの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
(1)耐割れ性評価
測定サンプルについて、引張試験機((株)エー・アンド・デイ製、型名:STB−1225S)を用いて、試験速度1mm/1minで引張試験を行った。
引張試験を行っている間に、測定サンプルが有する固体電解質層を、高速度カメラ((株)フォトロン製、FASTCAM mini AX200)を用いて、フレームレート60fpsにて観察した。引張試験データ(変位)及び高速カメラの録画データから、固体電解質層の割れが入った時点でのひずみ量を算出した。ひずみ量を表1に示す。固体電解質層に加わる外力が大きくなるほど、固体電解質層が割れやすくなるか、変形が大きくなるため、ひずみ量が大きいほど、固体電解質層が割れ難かったことを意味する。前記ひずみ量が5%以上の場合に、固体電解質層に入る割れの数が顕著に減少したため、前記ひずみ量が5%以上であると、固体電解質層の耐割れ性が顕著に向上している。
CP加工機(JEOL製、型番:IB−09020CP)を用いて測定サンプルの断面を8時間かけて加工し、断面出しを行った。得られた断面のSEM像を観察し、有機フィラーの粒径(繊維長)を測定した。SEM像の観察は3視野で行い、有機フィラーの粒径を合計60点(1視野20点×3視野)測定した。測定した粒径のデータからメジアン径D50を算出した。更に、固体電解質組成物に含有させる前の有機フィラーの平均長さ(繊維長)dに対する、固体電解質層中の有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)を算出した。D50/dを表1に示す。D50/dが1に近いほど有機フィラーの分散性に優れる。
測定サンプルから固体電解質層のみを1cm2のサイズで打ち抜き、厚みと重量を測定し、かさ密度を算出した。一方、固体電解質層が含有する各材料(無機固体電解質、有機フィラー、結着剤)の真密度と配合量から、固体電解質層の真密度を算出した。固体電解質層の真密度に対するかさ密度の比(%)として固体電解質層の充填率を算出した。充填率を表1に示す。
各実施例及び各比較例で用いた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、ホットプレート(アズワン(株)製、型番:ND−2A)上で100℃、30分の条件で乾燥して塗膜を形成した。当該塗膜上にCu箔を重ねて、線圧5ton/cm、170℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA−602)でプレスすることにより、固体電解質層を形成した。その後、固体電解質層を粉末状に解砕し、圧粉セルを作製した。得られた圧粉セルについて、インピーダンス測定を行い、Cole−Coleプロットを得て抵抗値を求め、抵抗値からイオン伝導度を算出した。イオン伝導度を表1に示す。
実施例1と有機フィラーを添加しなかった比較例1との対比により、有機フィラーを5体積%含有させることで、耐割れ性が向上することが明らかにされた。
比較例3、8、10は有機フィラーの含有量を5体積%未満としたため、前記耐割れ性評価でのひずみ量が小さく、耐割れ性に劣っていた。
比較例2は、アスペクト比が150未満の有機フィラーを用いたため、前記耐割れ性評価でのひずみ量が小さく、耐割れ性に劣っていた。有機フィラーのアスペクト比が150未満であったことにより、有機フィラーによる強度向上の効果が得られ難かったと推定される。
比較例4〜7、9は、有機フィラーのD50/dが5超過であったため、前記耐割れ性評価でのひずみ量が小さく、耐割れ性に劣っていた。比較例4〜7、9では、有機フィラーの分布に偏りがあり、固体電解質層の強度がばらついていたことにより、割れやすかったと推定される。
比較例11、12は、アスペクト比が500超過の有機フィラーを用いたため、前記耐割れ性評価でのひずみ量が小さく、耐割れ性に劣っていた。有機フィラーのアスペクト比が500超過であったことにより、有機フィラーが凝集しやすく、固体電解質層中に有機フィラーの分布量が少ない部分があったことにより、有機フィラーの分布量が少ない部分から割れが発生し、進行したことにより、割れが生じやすかったと推定される。
Claims (1)
- アスペクト比が150以上500以下の有機フィラーを準備する工程と、
無機固体電解質と、前記有機フィラーとを含み、全固形分中の前記有機フィラーの含有量が5体積%以上である固体電解質組成物を調製する工程と、
前記固体電解質組成物を用いて固体電解質層を形成する工程とを有し、
前記固体電解質組成物に含有させる前の前記有機フィラーの平均長さdに対する、前記固体電解質層中の前記有機フィラーのメジアン径D50の比(D50/d)が1以上5以下であることを特徴とする、固体電解質層の製造方法。
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