JP2020180404A - 紙用ワニスへの添加物 - Google Patents

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【課題】古紙から再生パルプを製造する工程において、紙用ワニスからピッチを発生させない紙用ワニスへの添加物を提供する。【解決手段】 本発明の紙用ワニスへの添加物は、下記一般式(1)で示される。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、紙用ワニスへの添加物に関するものである。
パルプ(古紙再生パルプも含む)を使って紙を製造する際には、ピッチと称される物質が発生する。ピッチとなる成分としては様々のものがあるが、例えば、木材由来の天然樹脂成分、古紙に付着していたガムテープやセロファンテープ、背糊、インク、塗工薬剤などに含まれる樹脂成分、さらにパルプ化工程や製紙工程で使用される消泡剤、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、定着剤、柔軟剤、嵩高剤など様々な添加薬品等に由来する樹脂成分が挙げられる。これらの樹脂成分はそれぞれの製造工程において、乳化、分散状態で存在していたのが、pHの変化やせん断力、硫酸バンドなど定着剤の添加などの外的要因により、乳化、分散破壊が生じ、凝集し、巨大化し、ピッチになる。
このピッチは、紙への付着、または、熟成タワー、濃縮機、ロール、ドライヤー等の紙の製造装置に付着し、その付着した蓄積物が脱落して紙へ再付着することにより、紙の品質の低下や、断紙の発生による生産性・作業性の低下等の障害を引き起こす。さらに近年、紙の多様化による使用薬品類の増加と、製造工程で使用する水のクローズ化が高くなるにつれて、従来にも増してこのピッチによる障害の発生が増加している。
これらのピッチの問題を解決する方法として、ピッチコントロール剤を製紙あるいは古紙再生におけるそれぞれの工程で添加する方法がある。その方法としては、界面活性剤などを利用してピッチの凝集を抑制、あるいは凝集したピッチを分散させ、細かい状態でピッチを紙に抄き込ませる方法、無機物を添加してピッチの粘着性をなくし、ピッチの凝集を抑制し紙に抄き込ませる方法、ピッチを有機溶剤で溶解する方法などがある。
例えば、特許文献1では、(A)ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンとの縮合物、および(B)カチオン界面活性剤を含有し、カチオン界面活性剤が、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドおよびアルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートからなる群から選ばれた少なくとも一つのカチオン性界面活性剤であることを特徴とするピッチ付着防止剤が提示されている。
特許文献2では、カチオン性界面活性剤とカチオン性高分子化合物及びホスホン酸を含有し、カチオン性界面活性剤が、炭素数10〜20のアルキル基を有するベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリドであるピッチコントロール剤が提示されている。
しかしながら、紙の製造工程において、上記ピッチ付着防止剤、あるいはピッチコントロール剤を添加したり、あるいは紙の原材料と接触する製紙機などに、上記ピッチ付着防止剤、あるいはピッチコントロール剤を噴霧しても、特許文献1、特許文献2に開示された物質はどちらにおいてもピッチを化学的に分解できるものではないために、パルプ又は紙の原材料と接触する製紙機などに対するピッチの付着を防止できたとしても、パルプ又は紙の中にピッチが残り、その結果パルプ又は紙の品質が低下する問題がある。また特許文献1のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンとの縮合物や、特許文献2のカチオン性高分子化合物などは、製造工程で使用する水を循環し何度も使用するとピッチの原因ともなり、その結果パルプ又は紙の品質が低下する問題がある。従って、このような高分子化合物の使用は極力避けなければならない。
このように、特許文献1,2に開示されているピッチ付着防止剤やピッチコントロール剤では紙の製造工程におけるピッチによる障害を十分に抑制出来るものではない。そして、紙の製造工程に古紙再生パルプを使用すると、それを使用しない場合に比べて古紙再生パルプに由来するピッチの成分が加わる。従って、ピッチによる障害を減少させるためには古紙再生における対策も行った方がよいと考えられる。しかしながら、古紙再生工程におけるピッチコントロール剤については上述したとおりの状況である。
さらに、昨今の販売競争の激化により、人の関心を惹く鮮やかで美しい印刷物、凝った意匠の印刷物が多く作成されるようになってきている。このような印刷物は、印刷の保護のため、あるいは表面にマット加工やエンボス加工を施すために紙加工用塗料である紙用ワニスが印刷の後に塗布されている。あるいは光沢を紙に付すために、最初から紙用ワニスが紙に塗布されている。このような紙用ワニスには様々な樹脂が用いられているが、疎水性の樹脂からなるワニスはピッチを発生させる。
特開平8−337988号公報 特開2003−268696号公報 特開2018−39907号公報
ピッチの原因となる紙用ワニスが塗工された紙が古紙として増加しているが、紙用ワニスを塗工された古紙からピッチを発生させない検討はこれまでになされてこなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、古紙から再生パルプを製造する工程において、紙用ワニスからピッチを発生させない紙用ワニスへの添加物を提供することにある。
本発明の紙用ワニスへの添加物は、下記一般式(1)で示される。
(R、R、R及びRのうち、1つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数5〜36のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、
残りの2つ又は3つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のAは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のアルケニレン基であり、nは1〜12の整数であり、1つの分子中におけるnの総和は12以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよく、
m−は対イオンであり、mは1以上の整数である。)
本発明によれば、紙用ワニスに添加をするだけで、その紙用ワニスが塗工された古紙から発生するピッチを容易に分解することができるワニス用添加物を提供することが可能となる。
本発明の紙用ワニスへの添加物を適用するワニスは、本発明の添加物を添加しないまま紙に塗工され、その紙が古紙再生工程に入った際にピッチを発生させる成分を有しているワニスである。ピッチを発生させる成分は疎水性の樹脂であり、具体的には、天然樹脂であるアクリルエステル樹脂、乾性油(天然エステル樹脂)、コハク、コーパルおよびロジン等、あるいは合成樹脂であるアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂等を挙げることができる。一方、水溶性又は親水性である物質(例えば、デンプンやPVAなど)のみが含まれているワニスは、ピッチを発生させないので、本発明の添加物を添加する必要はない。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
実施形態に係る紙用ワニスへの添加物は、下記一般式(1)で示される。
(R、R、R及びRのうち、1つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数5〜36のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、
残りの2つ又は3つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のAは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のアルケニレン基であり、nは1〜12の整数であり、1つの分子中におけるnの総和は12以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよく、
m−は対イオンであり、mは1以上の整数である。)
このような一般式(1)で表される物質をあらかじめ紙用ワニスに添加しておくことで、古紙再生工程において、一般式(1)で表される物質が紙用ワニスを分解すると考えられ、ワニスからピッチが発生することを防ぐ。本実施形態の一般式(1)の化合物がピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止する理由は定かではではないが、本願発明者らは以下のように推察する。
一般式(1)の化合物は、古紙再生の離解工程において、トラブルの原因となる油脂成分、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などエステル基を含むピッチ成分に対して、離解工程におけるアルカリ等の成分と相乗的に作用して、そのエステル結合を切断し分解する触媒として機能し、ピッチ成分を化学的に分解促進することができると推定している。これによってピッチ成分が分解されるため、ピッチ成分が凝集すること、およびピッチが巨大化することは生じない。
さらに、一般式(1)の化合物の窒素に結合している4つの基の種類や長さ、およびアルキレンオキシ基の数を適度に調節することで、疎水性と親水性とのいずれか一方に偏らないようにバランスを取ることにより、水相と有機化合物相(樹脂相)との両方の内部を移動できることができ、ピッチを効率よく分解、または分散することができる。このバランスという点では先行技術文献1,2に開示されている物質は、疎水性に偏っていると考えられる。
また、4級アンモニウム塩によるイオンによる親水性だけでなく、ヒドロキシアルキル基の水酸基やポリエーテル基の非イオン系の親水基を有するため、異なるイオン性の化合物(アニオン系)によるコンプレックスによる影響もない。
なお、一般式(1)の物質をあらかじめ紙用ワニスに添加しておくので、ピッチの原因となる樹脂成分と一般式(1)の物質とがごく近いところに存在しているため、そこに離解工程の溶液が接触することで、ワニスの樹脂成分を効率的にピッチ成分にはならないようにすることができるとともに、離解工程において一般式(1)の物質を加えるよりも少量の添加量で効果が得られる。また、古紙に含まれる紙の種類及び混合比率は、その都度その都度変わってくるが、一般式(1)の物質をあらかじめ紙用ワニスに添加していると、ワニスが塗工された紙が含まれている際には確実にワニス由来のピッチが生じないようにすることができる。
前記一般式(1)において、Rが、炭素数5〜36のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、R、R、Rが、それぞれ独立に、アラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は前記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のnが1〜6の整数であり、1つの分子中におけるnの総和が6以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよいことが好ましい。
前記一般式(1)において、Rが、炭素数8〜22のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、R、R、Rが、それぞれ独立に、アラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は前記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のnが1〜6の整数であり、1つの分子中におけるnの総和が6以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよいことがより好ましい。
前記一般式(1)において、Rが、炭素数8〜22のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、R、R、Rが、それぞれ独立に、アラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は前記一般式(2)で示される基であって且つR、R、Rの少なくとも1つが前記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のnが1〜6の整数であり、1つの分子中におけるnの総和が6以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよいことがさらに好ましい。
また、実施形態に係る紙用ワニスは、上記の紙用ワニスへの添加物が添加されているワニスであり、紙への塗布用のワニスであれば、ワニスの種類は特に限定されない。なお、ワニスには複数の種類の上記の添加物を添加しても構わない。
本実施形態に係る紙用ワニスへの添加物をもう少し具体的に説明すると、前記一般式(1)に示される第四級アンモニウム塩であって、R、R、RおよびRは上述した化合物であって、対イオンのXm−は、第4級アンモニウム化合物と対イオンを形成することができるアニオンであれば特に制限はなく、例えば、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲンアニオン;硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなど無機アニオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、乳酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、アジピン酸イオンなどの一価又は多価カルボン酸に由来するアニオン;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオン、アルキル又はアリールリン酸エステルイオンなどのリン酸エステルアニオン;アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオンなどスルホン酸アニオン;メチルカーボネートイオン、エチルカーボネートイオンなどのアルキルカーボーネートアニオン;アルキル硫酸エステルイオン、アルケニル硫酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルイオンなど硫酸エステルアニオンなどを挙げることができる。
本実施形態に係る添加物が添加されるワニスとしては、疎水性の樹脂成分を含有しているワニスであれば特に限定されない。その中でも、アクリルエステル系ポリマー、アクリルエステル系オリゴマー、アクリルエステル系モノマー、亜麻仁油、大豆油など乾性油、半乾性油などのエステル結合を有する化合物が含まれるワニスに対して本実施形態の添加物は効果を発揮する。
本実施形態の一般式(1)の化合物の、ワニスへの添加量は、下記式
{一般式(1)の化合物質量/(配合するワニスの質量+一般式(1)の化合物質量)}×100
により、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る紙用ワニスへの添加物をワニスに添加し、そのワニスでコーティングされた紙を古紙再生工程に投入すると、アルカリの存在で、ワニスを確実に紙の繊維から剥離させることができ、さらに、ワニスに含まれる樹脂を分解するので、これまでの界面活性剤や溶剤を使った可溶化または分散化した場合と違って、pHの変化や機械的シェアーによる、樹脂の再凝集による巨大化したピッチが発生しない。よって、優れた品質の再生パルプを作ることができる。
また、古紙再生工程においてアルカリを添加することにより、ワニス剥離化の効果が得られるが、アルカリを多量に添加することにより、古紙から得られるパルプの繊維が細く短くなって微細パルプが増加し、パルプ品質が著しく低下する。そして、古紙再生工程を経ることによりパルプ品質は低下してしまう。しかし、本実施形態に係る紙用ワニスへの添加物をワニスに添加しておくと、アルカリの使用量が少なくても高いワニスの剥離性、およびワニスに含まれる樹脂が分解されることによるピッチが発生しないという効果が得られ、過剰のアルカリ添加による弊害を緩和できる。
また、本実施形態の4級アンモニウム塩からなる添加物はワニスに添加することによって、ピッチトラブルを解消させるが、この添加物をあらかじめワニスに配合していてもよいし、ワニスの塗布前にワニスに混合して使用しても効果を発揮する。
なお、本出願人は、本実施形態に係る一般式(1)の化合物とほぼ同じものを、インク用添加物として出願をしている(特許文献3)。インクは文字や画像を紙の上に固定するために用いられるものであり、そのため大量のカーボンブラック等の顔料や染料が含まれている。そして、古紙再生工程においてはインクが再生パルプに残存していると白色度が劣ってしまうために、インクを除去するための脱墨が必要となり、この脱墨は主としてフローテーション工程において行われる。一方、インクからはピッチは発生しない。このように、インクとワニスとでは紙に対して用いられる目的や素材自体の構成が異なり、古紙再生を行う際に除去するための目的及び工程も異なっている。
<4級アンモニウム塩の製造方法>
本実施形態において、添加物である上記一般式(1)により表される4級アンモニウム塩は、R、R、R及びRのうちの1つ又は2つが、それぞれ独立に、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5〜36のアルキル基、又はヒドロキシル基を有していてもよい炭素数5〜36のアルケニル基を示し、残りの3つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は上記一般式(2)で示される基を示し、式(2)中、Aは炭素数1〜4のアルキレン基、又は炭素数2〜4のアルケニレン基を示し、nは1〜12の整数を示し、化合物の分子内におけるnの総和は1〜12であり、nが2以上の場合、複数のAは同一であっても、異なっていてもよい。Xm−は対イオンを示し、mは1以上の整数である。
このうち、R、R、R及びRのうちの1つが、炭素数5〜36のアルキル基、又は炭素数5〜36のアルケニル基であり、残りの3つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は一般式(2)で示される基を示す化合物は、例えば、下記に示される方法等により得ることができる。
(i)トリエタノールアミンに炭素数5〜36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させる方法。
(ii)トリエタノールアミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、炭素数5〜36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させる方法。
(iii)炭素数5〜36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、下記一般式(a−1)で示される化合物、炭素数1〜4のアルキルハライド、炭素数2〜4のアルケニルハライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート、塩化ベンジル及びエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法
Y−R10−OH (a−1)
(式(a−1)中、Yはハロゲン原子を示し、R10は炭素数2〜4のアルキレン基(又はアルケニレン基)を示す。)。
(iv)炭素数5〜36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(v)炭素数5〜36のアルキル基(又はアルケニル基)と、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1〜4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数2〜4のアルケニル基からなる群より選択される基を2つ有する三級アミンを上記一般式(a−1)で示される化合物、炭素数1〜4のアルキルハライド、炭素数2〜4のアルケニルハライド、炭素数1〜4のジアルキル硫酸、炭素数1〜4のジアルキルカーボネート、塩化ベンジル又はエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
(vi)炭素数5〜36のアルキル基(又はアルケニル基)と、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1〜4のアルキル基、水酸基を有する炭素数2〜4のアルケニル基からなる群より選択される基を2つ有する三級アミンを酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
、R、R及びRのうちの2つが、それぞれ独立に、炭素数5〜36のアルキル基、又は炭素数5〜36のアルケニル基であり、残りの2つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は一般式(2)で示される基を示す化合物は、例えば、下記に示される方法等により得ることができる。
(i)炭素数5〜36のジアルキル(又はジアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(ii)炭素数5〜36のモノアルキル(又はモノアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、炭素数5〜36のアルキル(又はアルケニル)ハライドを反応させ4級化する方法。
(iii)炭素数5〜36のジアルキル(又はジアルケニル)アミンにアルキレンオキシドを付加し、その後、上記一般式(a−1)で示される化合物、炭素数1〜4のアルキルハライド、炭素数2〜4のアルケニルハライド、炭素数1〜4のジアルキル硫酸、炭素数1〜4のジアルキルカーボネート、塩化ベンジル及びエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
(iv)炭素数5〜36のアルキル基(アルケニル基)を2つ、残りを炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1〜4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数2〜4のアルケニル基からなる群より選択される基を1つ有する三級アミンを酸で中和した後、アルキレンオキシドを反応させて4級化する方法。
(v)炭素数5〜36のアルキル基(アルケニル基)を2つ、残りを炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、水酸基を有する炭素数1〜4のアルキル基及び水酸基を有する炭素数2〜4のアルケニル基からなる群より選択される基を1つ有する三級アミンに、上記一般式(a−1)で示される化合物、炭素数1〜4のアルキルハライド、炭素数2〜4のアルケニルハライド、炭素数1〜4のジアルキル硫酸、炭素数1〜4のジアルキルカーボネート、塩化ベンジル又はエピクロロヒドリンなどを用いて4級化する方法。
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<第4級アンモニウム塩の調製>
{化合物(E1)〜(E10)及び(CE1)〜(CE4)の調整}
前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩について、表1及び2に示されるように第4級アンモニウム基の置換基や対イオンの種類を変更した化合物をそれぞれ調製した。
なお、表1及び2中、EO及びPOは、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、EO及びPOの右側に表示した下付きの数字は付加モル数(又は平均付加モル数)を示す。また、表1及び2中で、例えば、化合物(E6)のようにR及びRの項目をまたいで−(EO)Hという記載がある場合は、R及びRが含有するEOがそれぞれ1つ以上であって且つ両方の合計が4つであることを表している。化合物(E7)のようにR及びRの項目をまたいで−(EO)−(PO)Hという記載がある場合は、R及びRが含有するEOがそれぞれ1つ以上であって且つ両方のEOの合計が6つ、POの合計が2つであることを表しており、R及びRの一方にPOが含有されていなくてもよい。化合物(CE2)は、R、R及びRが含有するEOがそれぞれ1つ以上であって且つR、R及びRのEOの合計が10、POの合計が10であることを表しており、R、R及びRのうち1つ又は2つにPOが含有されていなくてもよい。
(調製例1)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にヘキシルアミンを1モル当量仕込み、そのオートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ヘキシルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で同量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃で塩化ベンジルを1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.3であった。H−NMR及び13C−NMR[JMN−ECZ500R(日本電子(株))]を用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがヘキシル基、R及びRが−(EO)H、Rがベンジル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E1)の化合物を得た。
(調製例2)
環流コンデンサー付きの4つ口フラスコにラウリルジメチルアミンを1モル当量及び重量比で倍量の蒸留水を仕込み、85〜95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物(E2)を得た。
得られた化合物のアミン価0.2であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがラウリル基、R、R及びRがメチル基である化合物であることを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E2)の化合物を得た。
(調整例3)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルジメチルアミンを1モル当量と重量比で同量の蒸留水を仕込み、リン酸を0.97モル当量混合し中和した。このオートクレーブを窒素置換した後、85〜95℃でエチレンオキシド1.1モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物の酸価は0.2であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがラウリル基、R及びRがメチル基、Rが−(EO)Hである化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E3)の化合物を得た。
(調整例4)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、そのオートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.1であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがラウリル基、R及びRが−(EO)H、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E4)の化合物を得た。
(調製例5)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物である中間体化合物を得た。中間体化合物に対して重量比で同量の蒸留水を中間体化合物に添加し、さらにパラトルエンスルホン酸を0.97モル当量混合し中和した。オートクレーブを窒素置換した後、これに再度85〜95℃でエチレンオキシド1.1モル当量を吹き込んだ。4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物の酸価は0であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがラウリル基、R、R及びRが−(EO)Hである化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E5)の化合物を得た。
(調製例6)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にステアリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをステアリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量をオートクレーブに吹き込み、4時間熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド4モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でジエチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.3であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがステアリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で4モルのEOが付加した構造、Rがエチル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E6)の化合物を得た。
(調製例7)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。4時間の熟成を行った。さらに触媒として水酸化ナトリウムをラウリルアミンの5/1000質量分を仕込み、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。その後、120〜130℃でエチレンオキシド4モル当量をオートクレーブに吹き込み、4時間熟成を行い、さらに、プロピレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。その後、4時間熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド6モル、プロピレンオキシド2モルブロック付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と中間体化合物と重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、さらに85〜95℃で塩化ベンジルを1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価0.3であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて、上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがラウリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で6モルのEO及び2モルのPOがそれぞれブロックで付加した構造、Rがベンジル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E7)の化合物を得た。
(調製例8)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にトリエタノールアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンの5/1000質量分を仕込み、オートクレーブを窒素置換した。120〜130℃でエチレンオキシド9モル当量をオートクレーブに吹き込んだ。その後、4時間の熟成を行い、トリエタノールアミンのエチレンオキシド9モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込んだ。その後、85〜95℃でステアリルクロリド1.1モル当量を4つ口フラスコに徐々に仕込んだ。仕込み終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.3であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が一般式(A)中、Rがステアリル基、R、R及びRが、結合手3つ有する窒素原子1モルに対して合計で12モルのEOが付加した構造である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E8)の化合物を得た。
(調製例9)
ジデシルメチルアミンを1モル当量と、ジデシルメチルアミンと重量比で同量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でジメチル硫酸1.1モル当量を4つ口フラスコに徐々に仕込んだ。仕込み終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.1であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、R及びRがデシル基、R、Rがメチル基である化合物であることを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E9)の化合物を得た。
(調製例10)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にジラウリルアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをジラウリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。次いで、120〜130℃でエチレンオキシド4モル当量をオートクレーブに吹き込み、その後、4時間の熟成を行い、ジラウリルアミンのエチレンオキシド4モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.1であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、R、Rがラウリル基、Rが−(EO)H、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(E10)の化合物を得た。
(比較調製例1)
比較用の化合物(CE1)として、テトラメチルアンモニウムクロリド(試薬:東京化成工業製)を用意した。
(比較調製例2)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にトリエタノールアミンを1モル当量と触媒として水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンの5/1000質量分を仕込んだ。オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。次いで、120〜130℃でエチレンオキシド7モル当量をオートクレーブに吹き込み、その後、4時間の熟成を行った。熟成後、さらに、プロピレンオキシド10モル当量を吹き込み、再び4時間の熟成を行い、トリエタノールアミンのエチレンオキシド7モル、プロピレンオキシド10モルブロック付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込んだ。その後、85〜95℃でオレイルクロリド1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.4であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が一般式(A)中、Rがオレイル基、R、R及びRが、結合手3つ有する窒素原子1モルに対して合計で10モルのEO及び10モルのPOがそれぞれブロックで付加した構造である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(CE2)の化合物を得た。
(比較調製例3)
耐圧反応容器(オートクレーブ)ステアリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをステアリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した。その後、120〜130℃でエチレンオキシド28モル当量をオートクレーブに吹き込み、4時間の熟成を行い、ステアリルアミンのエチレンオキシド30モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水とを還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でジメチル硫酸を1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.1であった。またH−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、Rがステアリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で30モルのEOが付加した構造であり、Rがメチル基である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(CE3)の化合物を得た。
(比較調製例4)
耐圧反応容器(オートクレーブ)にラウリルアミンを1モル当量仕込み、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシド2モル当量を吹き込んだ。4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を得た。さらに、触媒として水酸化ナトリウムをラウリルアミンの5/1000質量分を仕込んだ。そして、オートクレーブ内を減圧脱水し、オートクレーブを窒素置換した後、120〜130℃でエチレンオキシ43モル当量をオートクレーブに吹き込み、4時間の熟成を行い、ラウリルアミンのエチレンオキシド45モル付加物である中間体化合物を得た。この中間体化合物1モル当量と、中間体化合物に対して重量比で倍量の蒸留水を還流コンデンサー付きの4つ口フラスコに仕込み、85〜95℃でラウリルクロリド1.1モル当量滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行うことで4級化反応を進行させ化合物を得た。
得られた化合物のアミン価は0.2であった。H−NMR及び13C−NMRを用いて上記中間体化合物及び4級化化合物を分析し、4級化化合物が、一般式(A)中、R及びRがラウリル基、R及びRが、結合手2つ有する窒素原子1モルに対して合計で45モルのEOが付加した構造である化合物を含むことを確認した。さらに4級化化合物をエバポレーターにて70℃で減圧脱水して(CE4)の化合物を得た。
< 活性エネルギー線硬化ワニス>
−UV硬化ワニス−
活性エネルギー線硬化ワニスとして、UV硬化ワニス(製品名:FD HS OPニス GL:東洋インキ製)を用いた。表1記載の実施例である各一般式(A)の化合物及び表2に示した比較例化合物を表3及び表4に示した添加量(質量%)={UV硬化ワニス添加物質量/(UV硬化ワニス質量+UV硬化ワニス添加物質量)}×100)、でUV硬化ワニスに配合して均一に混合し各試験用UV硬化ワニスを得た。
−UV硬化ワニス印刷−
上記で得た各試験用UV硬化ワニスをそれぞれ、市販の坪量135g/m の両面アート紙に、手動スクリーン印刷機( 株式会社ハイテックヨシカワ製) を使用して、200μm の厚みで10cm×20cmの範囲に塗布した。同様に1mmの厚みで10cm×20cmの範囲に塗布した。また、スライドガラスに約200μmの厚みで0.5cm×0.5cmの範囲に塗布した。塗布した両面アート紙及びスライドガラスにコンベア式UV装置(アイグラフィックス株式会社製)を使用して、120W/cmのメタルハイドライドランプにてUV光を積算光量1000mJ/cm照射し、試験用UV硬化ワニスを硬化させた。
UV光により試験用UV硬化ワニスを硬化させた後、60℃で一週間強制乾燥させ、200μmの厚みで塗布したUV硬化ワニス塗布紙X1、1mmの厚みで塗布したUV硬化ワニス塗布紙X2、及び200μmの厚みで塗布したUV硬化ワニス塗布ガラスY1を得た。
−UV硬化ワニスによるピッチ試験1(紙ピッチ残留試験)−
容量が2LであるJIS標準離解機に、UV硬化ワニス塗布紙X1を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対UV硬化ワニス塗布紙X1)、UV硬化ワニス塗布紙X1の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度45℃にて20分間離解させて、離解後のパルプを得た。離解後のパルプを、UV硬化ワニス塗布紙X1濃度1質量%まで水で希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し離解洗浄後のパルプを得た。
離解洗浄後のパルプを、丸型抄紙機にてJIS P 8222(1998年)(パルプ−試験用手すき紙の調整方法)に従って坪量200g/mにて手抄きを行った。プレス処理を行い、ドラムドライヤーにて105℃×5分乾燥し、それぞれ離解洗浄後の試験紙を得た。
ドラムドライヤーはあらかじめ溶剤などで表面の汚れをふき取った状況で試験紙を乾燥させ、乾燥させたときの紙の貼りつき状態を確認した。ピッチ残留が多い場合は乾燥機に貼り付く。
それぞれ離解洗浄後の試験紙10gをトルエン抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分をそれぞれ離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量とした。実施例の抽出量の結果を表3、比較例の抽出量の結果を表4に示した。
−ドライヤーの紙貼り付き試験−
ドラムドライヤー貼り付きの度合いを1〜4で評価した。
実施例のドライヤー貼り付き試験の結果を表3、比較例のドライヤー張り付き試験の結果を表4に示した。
1:強く貼り付いてドライヤー表面に紙が残留
2:強く貼り付くがドライヤー表面に紙は残留しない
3:貼り付くが貼り付きが弱く取れやすい
4:まったく貼りつかない
−UV硬化ワニスによるピッチ試験2(離解機ピッチ付着残留試験)−
容量が2LであるJIS標準離解機に、UV硬化ワニス塗布紙X2を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対UV硬化ワニス塗布紙X2)、UV硬化ワニス塗布紙X2の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度45℃にて20分間離解処理した。離解後に離解したUV硬化ワニス塗布紙X2を全て排出した。離解機の壁面及び攪拌羽根にトルエンを含ませた綿で丁寧にふき取り、その綿をトルエンにて抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量とした。実施例の離解機残留ピッチ抽出量の結果を表3、比較例の離解機残留ピッチ抽出量の結果を表4に示した。
−耐摩擦試験−
UV硬化ワニス塗布紙X1を、学振型摩擦試験機によって荷重100g×100回の条件で擦り、ワニスの剥がれ具合を評価した。評価は、ワニスの剥がれ具合を目視して行い、以下のように1〜3で評価した。実施例の耐摩擦試験の結果を表3、比較例の耐摩擦試験の結果を表4に示した。
1:剥がれが多い
2:剥がれが少し
3:剥がれが見られない。
−引っかき硬度(鉛筆法)−
JIS K 5600−5−4(1999年)に従って、UV硬化ワニス塗布ガラスY1を鉛筆でこすってワニスの硬度を測定した。実施例の引っかき硬度試験結果を表3、比較例の引っかき硬度試験結果を表4に示した。
−黄変性−
UV硬化ワニス印刷ガラスY1の塗布部を肉眼で確認し、黄変の度合いを確認したが、いずれも黄変は認められなかった。
<油性ワニス>
−油性ワニス−
油性ワニスとして、製品名:TK 多色機 OPニス M:東洋インキ製、を用いた。表1記載の実施例である各一般式(A)の化合物、及び表2に示した比較化合物を添加剤として、表5及び表6に示した添加量(質量%)={油性ワニス添加剤の質量/(油性ワニス質量+油性ワニス添加剤の質量)}×100)、で油性ワニスに配合して均一に混合し各試験用油性ワニスを得た。
−油性ワニス印刷−
上記で得た各試験用油性ワニスをそれぞれ市販の坪量135g/mの両面アート紙に、手動スクリーン印刷機(株式会社ハイテックヨシカワ製) を使用して、約200μmの厚みで10cm×20cmの範囲に塗布した。同様に、1mmの厚みで10cm×20cmの範囲に塗布した。同様にスライドガラスに約200μmの厚みで0.5cm×0.5cmの範囲に塗布した。塗布した両面アート紙及びスライドガラスを100℃×30秒間、熱乾燥して試験用油性ワニスを硬化させた。その後、さらに60℃ で1週間強制乾燥させ、200μmの厚みで塗布した油性ワニス塗布紙X3、1mmの厚みで塗布した油性ワニス塗布紙X4、及び200μmの厚さで印刷した油性ワニス塗布ガラスY2を得た。
−油性ワニスによるピッチ試験1(紙ピッチ残留試験)−
容量が2LであるJIS標準離解機に、油性ワニス塗布刷紙X3を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対油性ワニス塗布刷紙X3)、油性ワニス塗布刷紙X3の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度45℃にて20分間離解させて、離解後のパルプを得た。離解後のパルプを、油性ワニス塗布刷紙X3濃度1質量%まで水で希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し離解洗浄後のパルプを得た。
離解洗浄後のパルプを、丸型抄紙機にてJIS P 8222(1998年)(パルプ−試験用手すき紙の調整方法)に従って坪量200g/mにて手抄きを行った。プレス処理を行い、ドラムドライヤーにて105℃×5分乾燥し、それぞれ離解洗浄後の試験紙を得た。
ドラムドライヤーはあらかじめ溶剤などで表面の汚れをふき取った状況で試験紙を乾燥させ、乾燥させたときの紙の貼りつき状態を確認した。ピッチ残留が多い場合は乾燥機に貼り付く。
それぞれ離解洗浄後の試験紙10gをトルエン抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分をそれぞれ離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量とした。実施例の抽出量の結果を表5、比較例の抽出量の結果を表6に示した。
−ドライヤーの紙貼り付き試験−
ドラムドライヤー貼り付きの度合いを1〜4で評価した。
実施例のドライヤー貼り付き試験の結果を表5、比較例のドライヤー張り付き試験の結果を表6に示した。
1:強く貼り付いてドライヤー表面に紙が残留
2:強く貼り付くがドライヤー表面に紙は残留しない
3:貼り付くが貼り付きが弱く取れやすい
4:まったく貼りつかない
−油性ワニスによるピッチ試験2(離解機ピッチ付着残留試験)−
容量が2LであるJIS標準離解機に、油性ワニス塗布紙X4を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対油性ワニス塗布紙X4)、油性ワニス塗布紙X4の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度45℃にて20分間離解処理した。離解後に離解した油性ワニス塗布紙X4を全て排出した、離解機の壁面及び攪拌羽根にトルエンを含ませた綿で丁寧にふき取り、その綿をトルエンにて抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量とした。実施例の離解機残留ピッチ抽出量の結果を表5、比較例の離解機残留ピッチ抽出量の結果を表6に示した。
−耐摩擦試験−
油性ワニス塗布紙X3を、学振型摩擦試験機によって荷重100g×100回の条件で擦り、ワニスの剥がれ具合を評価した。評価は、ワニスの剥がれ具合を目視して行い、以下のように1〜3で評価した。実施例の耐摩擦試験の結果を表5、比較例の耐摩擦試験の結果を表6に示した。
1:剥がれが多い
2:剥がれが少し
3:剥がれが見られない。
−引っかき硬度(鉛筆法)−
JIS K 5600−5−4(1999年)に従って、油性ワニス塗布ガラスY2を鉛筆でこすってワニスの硬度を測定した。実施例の引っかき硬度試験結果を表5、比較例の引っかき硬度試験結果を表6に示した。
−黄変性−
油性ワニス塗布ガラスY2の印刷部を肉眼で確認し、黄変の度合いを確認したが、いずれも黄変は認められなかった。
(その他の実施形態)
上述の実施形態、実施例は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
実施例に用いたワニス以外のワニス、例えば他の種類・品番のUV硬化型ワニスや油性ワニスに、実施形態に係る紙用ワニスへの添加物を添加しても同様の効果が得られる。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)で示される紙用ワニスへの添加物。
    (R、R、R及びRのうち、1つ又は2つが、それぞれ独立に、炭素数5〜36のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルケニル基であり、
    残りの2つ又は3つが、それぞれ独立に、炭素数7〜10のアラルキル基、グリシジル基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は下記一般式(2)で示される基であって、一般式(2)のAは炭素数1〜4のアルキレン基又は炭素数2〜4のアルケニレン基であり、nは1〜12の整数であり、1つの分子中におけるnの総和は12以下であり、nが2以上の場合は複数のAのうち少なくとも一つが他とは異なる基であってもよく、
    m−は対イオンであり、mは1以上の整数である。)
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