JP2019039113A - ピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止するピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とするピッチコントロール剤。【化1】
Description
本発明は、ピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法に関する。さらに詳しくは、紙の製造工程におけるピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止する、ピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法に関する。
パルプ(古紙再生パルプも含む)を使って紙を製造する際にピッチと称される物質が発生する。ピッチとなる成分としては様々のものがあるが、例えば、木材由来の天然樹脂成分、古紙に付着していたガムテープやセロファンテープ、背糊、インク、塗工薬剤などに含まれる樹脂成分、さらにパルプ化工程や製紙工程で使用される消泡剤、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、定着剤、柔軟剤、嵩高剤など様々な添加薬品等に由来する樹脂成分が挙げられる。これらの樹脂成分はそれぞれの製造工程において、乳化、分散状態で存在していたのが、pHの変化やせん断力、硫酸バンドなど定着剤の添加などの外的要因により、乳化、分散破壊が生じ、凝集し、巨大化し、ピッチになる。
このピッチは、紙への付着、または、熟成タワー、濃縮機、ロール、ドライヤー等の紙の製造装置に付着し、その付着した蓄積物が脱落して紙へ再付着することにより、紙の品質の低下や、断紙の発生による生産性・作業性の低下等の障害を引き起こす。さらに近年、紙の多様化による使用薬品類の増加と、製造工程で使用する水のクローズ化が高くなるにつれて、従来にも増してこのピッチによる障害の発生が増加している。
これらのピッチの問題を解決する方法として、ピッチコントロール剤をそれぞれの工程で添加する方法がある。その方法としては、界面活性剤などを利用してピッチの凝集を抑制、あるいは凝集したピッチを分散させ、細かい状態でピッチを紙に抄き込ませる方法、無機物を添加してピッチの粘着性をなくし、ピッチの凝集を抑制し紙に抄き込ませる方法、ピッチを有機溶剤で溶解する方法などがある。
例えば、特許文献1では、(A)ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンとの縮合物、および(B)カチオン界面活性剤を含有し、カチオン界面活性剤が、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドおよびアルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートからなる群から選ばれた少なくとも一つのカチオン性界面活性剤であることを特徴とするピッチ付着防止剤が提示されている。
特許文献2では、カチオン性界面活性剤とカチオン性高分子化合物及びホスホン酸を含有し、カチオン性界面活性剤が、炭素数10〜20のアルキル基を有するベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリドであるピッチコントロール剤が提示されている。
しかしながら、紙の製造工程において、上記ピッチ付着防止剤、あるいはピッチコントロール剤を添加したり、あるいは紙の原材料と接触する製紙機などに、上記ピッチ付着防止剤、あるいはピッチコントロール剤を噴霧しても、特許文献1、特許文献2に開示された物質はどちらにおいてもピッチを化学的に分解できるものではないために、パルプ又は紙の原材料と接触する製紙機などに対するピッチの付着を防止できたとしても、パルプ又は紙の中にピッチが残り、その結果パルプ又は紙の品質が低下する問題がある。また特許文献1のジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンとの縮合物や、特許文献2のカチオン性高分子化合物などは、製造工程で使用する水を循環し何度も使用するとピッチの原因ともなり、その結果パルプ又は紙の品質が低下する問題がある。従って、このような高分子化合物の使用は極力避けなければならない。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止するピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とするピッチコントロール剤が、ピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のピッチコントロール方法は、紙の製造工程において、上述の一般式(1)で示される化合物がパルプの乾燥重量に対して0.0005質量%以上5質量%以下となるように上述のピッチコントロール剤を添加することを特徴とする。
本発明の別のピッチコントロール方法は、紙の製造工程において、製造機器のうち紙の製造原料が接触する部分に上述のピッチコントロール剤を噴霧することを特徴とする。
本発明によれば、ピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止するピッチコントロール剤及びピッチコントロール方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物を制限することを意図するものではない。
本実施形態のピッチコントロール剤は、下記一般式(1)で示される化合物を含む。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
本実施形態のピッチコントロール剤は、ピッチの発生抑制の観点から一般式(1)中、R1は、炭素数5〜22のアルキル基、炭素数5〜22のヒドロキシアルキル基、炭素数5〜22のアルケニル基、炭素数5〜22のヒドロキシアルケニル基であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は一般式(2)で示される基であって、nは1〜100の整数であり、R2、R3、R4の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基の数と、nの数との総和が、1〜100の整数であって、X−は対イオンで示される化合物を含むことが好ましい。
本実施形態のピッチコントロール剤は、一般式(1)中、R1は、炭素数5〜7のアルキル基、炭素数5〜7のヒドロキシアルキル基、炭素数5〜7のアルケニル基、炭素数5〜7のヒドロキシアルケニル基であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は一般式(2)で示される基であって、nは1〜6の整数であり、R2、R3、R4の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基の数と、nの数との総和が、1〜6の整数であって、X−は対イオンで示される化合物か、または一般式(1)中、R1は、炭素数8〜22のアルキル基、炭素数8〜22のヒドロキシアルキル基、炭素数8〜22のアルケニル基、炭素数8〜22のヒドロキシアルケニル基であり、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基、ベンジル基、グリシジル基、又は一般式(2)で示される基であって、nは1〜15の整数であり、R2、R3、R4の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基の数と炭素数2〜4のヒドロキシアルケニル基の数と、nの数との総和が、1〜15の整数であって、X−は対イオンで示される化合物を含むことがより好ましい。
本実施形態の一般式(1)の化合物がピッチの発生を抑制し、ピッチによる紙製品の品質の低下を防止する理由は定かではではないが、本研究者らは以下のように推察する。
つまり、一般式(1)の化合物は、トラブルの原因となる油脂成分、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などエステル基を含むピッチ成分と接触した際、そのエステル結合を切断し分解する触媒として機能し、ピッチ成分を化学的に分解促進することができる。これによってピッチの凝集を抑え、巨大化を防止することができる。また、樹脂表面から分解するため、表面の粘着性(接着性)を低下することができる。
さらに、一般式(1)の化合物の窒素に結合している4つの基の種類や長さ、およびアルキレンオキシ基の数を適度に調節することで、疎水性と親水性とのいずれか一方に偏らないようにバランスを取ることにより、水相と有機化合物相(樹脂相)との両方の内部を移動できることができ、ピッチを効率よく分解、または分散することができる。このバランスという点では先行技術文献1,2に開示されている物質は、疎水性に偏っていると考えられる。
また、4級アンモニウム塩によるイオンによる親水性だけでなく、ヒドロキシアルキル基の水酸基やポリエーテル基の非イオン系の親水基を有するため、異なるイオン性の化合物(アニオン系)によるコンプレックスによる影響もない。
一般式(1)の化合物の製造方法としては、特に限定するものではなく、公知の製造方法で得られる。
一般式(1)で示される化合物はそのままピッチコントロール剤として使用してもよいが、水や有機溶剤に溶解、乳化又は分散させて、それをピッチコントロール剤として使用することができる。 前記有機溶剤の種類としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1〜6の低級アルコール;前記低級アルコールのアルキレンオキシド付加物;エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール;3−メチル−3−メトキシブタノールなどが挙げられる。
また、一般式(1)で示される化合物はピッチコントロール剤として製剤化するため、浸透性や洗浄性などを付与するために、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、一般式(1)以外のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤、酸やアルカリ剤などを配合できる。
ピッチコントロール剤の中に含有される一般式(1)の化合物の含有量は、1質量%以上100質量%以下が好ましく、5質量%以上100質量%以下がより好ましく、10質量%以上100質量%以下がさらにより好ましい。
次に、ピッチコントロール方法について説明する。
本発明のピッチコントロール方法の一態様は、紙の製造工程において、上述の一般式(1)で示される化合物がパルプの乾燥重量に対して、0.0005質量%以上5質量%以下となるようにに上述のピッチコントロール剤を添加することを特徴とする。
本発明のピッチコントロール方法の別の態様は、紙の製造工程において、製造機器のうち紙の製造原料が接触する部分に上述のピッチコントロール剤を噴霧することを特徴とする。
なお、本発明のピッチコントロール剤の対象となる紙の製造工程と、パルプ及び紙の種類などに関して特に限定するものではなく、例えば前記パルプには木材を蒸解した後の未洗浄の粗製パルプなども含む。
詳細には、本発明のピッチコントロール剤を使用する工程として、木材パルプなどや古紙再生パルプを使って紙を製造する工程に摘要される。
まず本発明のピッチコントロール方法の一態様である本発明のピッチコントロール剤を紙の製造工程に添加する方法について説明する。
本発明のピッチコントロール剤の添加場所は、特に限定されるものではないが、紙の製造、原料の種類等により、最適な添加場所が異なり、古紙からのパルプの製造の場合、例えば、離解機、ファイバーフロードラムなどによる離解工程の前あるいは離解工程中、ニーダー、ディスパーザーなどで機械的せん断力を加える高濃度処理工程の前、フローテーション前などに添加することが挙げられる。一方紙の製造においては、例えば、パルプや薬剤などの混合工程に使われるミキシングチェスト、マシンチェスト、種箱などや、抄紙後の白水ピット(又はセーボールなど)などに添加することが挙げられる。
<本発明のピッチコントロール剤の使用量>
本発明のピッチコントロール剤の使用量は、ピッチコントロール効果、コストの観点から、一般式(1)で示される化合物が処理されるパルプの乾燥重量に対して、0.0005質量%以上5質量%以下となるようにピッチコントロール剤を添加することを特徴とするが、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
本発明のピッチコントロール剤の使用量は、ピッチコントロール効果、コストの観点から、一般式(1)で示される化合物が処理されるパルプの乾燥重量に対して、0.0005質量%以上5質量%以下となるようにピッチコントロール剤を添加することを特徴とするが、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
次に本発明のピッチコントロール方法の別態様である本発明のピッチコントロール剤を紙の製造工程において紙の製造原料に接触する製造機器に噴霧する方法について説明する。
噴霧する装置としては、古紙からのパルプの製造では、濃縮機、洗浄機の網などが挙げられ、紙の製造では、抄紙フェルト、抄紙ワイヤー、抄紙ロール、加工ロールなどが挙げられる。これらの製造機器において、少なくとも紙の製造原料が接触する部分にピッチコントロール剤を噴霧する。
製造装置に噴霧させる方法としては、特に限定するものではないが、例えば、洗浄水シャワーライン、噴霧スプレー装置などが挙げられる。吹き付ける時期は、操業中連続的に吹き付けたり、操業が止まっているときに吹き付けたりできる。
噴霧の場合、本発明のピッチコントロール剤の使用量は、紙の製造原料に接触する製造機器の大きさ、構造、汚れ具合により、特に限定されるものではなく、ピッチコントロール剤の使用濃度としては、ピッチコントロール効果、コストの観点から一般式(1)で示される化合物の濃度として、0.0005質量%以上10質量%以下が好ましく、0.001質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
その他、本発明のピッチコントロール剤を使用する際に、酸やアルカリ剤、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、一般式(1)以外のカチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高級脂肪酸、鉱物油、有機溶剤、オレンジオイルなどの天然溶剤等を加えてもよい。
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<一般式(1)の化合物>
実施例に用いた一般式(1)の化合物、比較例に用いたカチオン化合物及びピッチコントロール剤を下記表1、2、3に示す。表1、2においてR2〜R4は置換基としてのEO及びPOという表記は、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、数字は付加モル数を示す。また表中で、例えば化合物No.(E2)のようにR2とR3の項目にまたいで(EO)4Hという記載がある場合は、R2とR3に合計で4モルのエチレンオキシドを付加したということを表す。また、No.(E3)のように(EO)4(PO)2Hという表記がある場合はR2とR3に合計でEO4モル,PO2モルをブロックで付加したことを表す。また、No.(E4)のように(EO4/PO4)Hという表記がある場合はR2とR3に合計でEO4モル、PO4モルをランダムで付加したことを表す。
実施例に用いた一般式(1)の化合物、比較例に用いたカチオン化合物及びピッチコントロール剤を下記表1、2、3に示す。表1、2においてR2〜R4は置換基としてのEO及びPOという表記は、それぞれ、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を示し、数字は付加モル数を示す。また表中で、例えば化合物No.(E2)のようにR2とR3の項目にまたいで(EO)4Hという記載がある場合は、R2とR3に合計で4モルのエチレンオキシドを付加したということを表す。また、No.(E3)のように(EO)4(PO)2Hという表記がある場合はR2とR3に合計でEO4モル,PO2モルをブロックで付加したことを表す。また、No.(E4)のように(EO4/PO4)Hという表記がある場合はR2とR3に合計でEO4モル、PO4モルをランダムで付加したことを表す。
なお、実施例、比較例に用いた非イオン活性剤は、化合物(D):ステアリルアルコール《(PO)12/[(EO)30/(PO)12ランダム付加物]ブロック付加物》である。
(実施例1)古紙再生におけるピッチコントロール剤の評価
JIS標準離解機に、ろ紙及び雑誌の背糊部分(接着剤として酢酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂を使用)及び宅急便の伝票の接着剤塗工部分(粘着剤としてアクリエステル系樹脂を使用)を混合した紙(ろ紙80質量%/背糊部分10質量%/伝票10質量% 以下混合紙という)を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対混合紙)、一般式(1)化合物No.(E1)を1.0質量%(対混合紙)、化合物(D)を0.1質量%(対混合紙)、及び混合紙の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度40℃にて10分間離解させて、パルプ(離解後のパルプ)を得た。
JIS標準離解機に、ろ紙及び雑誌の背糊部分(接着剤として酢酸ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂を使用)及び宅急便の伝票の接着剤塗工部分(粘着剤としてアクリエステル系樹脂を使用)を混合した紙(ろ紙80質量%/背糊部分10質量%/伝票10質量% 以下混合紙という)を100g、水酸化ナトリウムを1.0質量%(対混合紙)、一般式(1)化合物No.(E1)を1.0質量%(対混合紙)、化合物(D)を0.1質量%(対混合紙)、及び混合紙の濃度が5質量%となるように水を入れ、温度40℃にて10分間離解させて、パルプ(離解後のパルプ)を得た。
離解後のパルプを、パルプ濃度1質量%まで水で希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し離解洗浄後のパルプを得た。
また、前記離解後のパルプを1質量%になるように40℃の水で希釈し、デンバー型フローテーター(熊谷理機社製)にて空気をエアー量3.0L/分の割合で通し、1分毎にかきとりながら、5分間フローテーション処理を行い、フローテーション後のパルプを得た。それぞれ離解洗浄後のパルプ及びフローテーション後のパルプを、丸型抄紙機にてJISP−8209に従って坪量200g/m2にて手抄きを行った。プレス処理を行い、ドラムドライヤーにて105℃×5分乾燥し、それぞれ離解洗浄後の試験紙、及びフローテーション後の試験紙を得た。
それぞれ離解洗浄後の試験紙及びフローテーション後の試験紙5gをトルエン抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分をそれぞれ離解洗浄後の試験紙、フローテーション後の試験紙に残存したピッチ量とした。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は8mg以下、フローテーション後の試験紙に残存したピッチ量は4mg以下であれば合格とした。
(実施例2〜13、比較例1〜6)
添加する化合物を表4、5に示す成分及び組成に変えた他は、実施例1と同じ方法で離解洗浄後の試験紙、及びフローテーション後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は8mg以下、フローテーション後の試験紙に残存したピッチ量は4mg以下であれば合格とした。
添加する化合物を表4、5に示す成分及び組成に変えた他は、実施例1と同じ方法で離解洗浄後の試験紙、及びフローテーション後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は8mg以下、フローテーション後の試験紙に残存したピッチ量は4mg以下であれば合格とした。
(実施例15)ダンボール製造におけるピッチコントロール剤の評価
JIS標準離解機に、市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて25質量%に調整したものをピッチとして4g、ダンボール古紙100g、及び水1900g(パルプ濃度5質量%)を加え、さらに水酸化ナトリウムを0.1質量%(対ダンボール古紙)、一般式(1)化合物No.(E1)を0.05質量%(対ダンボール古紙)を加えて、温度40℃にて、10分間離解し、パルプ(離解後のパルプ)を得た。
JIS標準離解機に、市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて25質量%に調整したものをピッチとして4g、ダンボール古紙100g、及び水1900g(パルプ濃度5質量%)を加え、さらに水酸化ナトリウムを0.1質量%(対ダンボール古紙)、一般式(1)化合物No.(E1)を0.05質量%(対ダンボール古紙)を加えて、温度40℃にて、10分間離解し、パルプ(離解後のパルプ)を得た。
離解後のパルプを、パルプ濃度1質量%まで希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し、離解洗浄後のパルプを得た。
離解洗浄後のパルプを丸型抄紙機にてJISP−8209に従って坪量200g/m2にて手抄きを行った。プレス処理を行い、ドラムドライヤーにて105℃×5分乾燥し、離解洗浄後の試験紙を得た。離解洗浄後の試験紙5gをトルエン抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量とした。
また、離解後にパルプを排出した、離解機の壁面及び攪拌羽根にトルエンを含ませた綿で丁寧にふき取り、その綿をトルエンにて抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量とした。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は5mg以下、離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は100mg以下であれば合格とした。
(実施例16〜28、比較例7〜12)
添加する化合物を表6、7に示す成分及び組成に変えた他は、実施例15と同じ方法で離解洗浄後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は5mg以下、離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は100mg以下であれば合格とした。
添加する化合物を表6、7に示す成分及び組成に変えた他は、実施例15と同じ方法で離解洗浄後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。離解洗浄後の試験紙に残存したピッチ量は5mg以下、離解機の壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は100mg以下であれば合格とした。
(実施例29)パルプ化工程、製紙工程を想定したピッチコントロール剤の評価
熊谷理機製PFIミルに、市販のクラフトパルプ(N材)60gと水340g(パルプ濃度15質量%)にクラフトパルプ(NBKP)を製造している洗浄機で採取したピッチを入手し、トルエンにて抽出し、抽出液から、溶剤を蒸発させて乾燥物を得た。その乾燥物を再度トルエンに溶解させて(25質量%)、ピッチのトルエン溶液とした。そのトルエン溶液を4.0g、 一般式(1)化合物No.(E1)を0.5質量%(対パルプ)となるようPFIミル(熊谷理機製)に投入し、温度30℃にて2000回転叩解処理し、叩解後に得られたパルプを、パルプ濃度1質量%になるよう希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し、叩解後のパルプを得た。
熊谷理機製PFIミルに、市販のクラフトパルプ(N材)60gと水340g(パルプ濃度15質量%)にクラフトパルプ(NBKP)を製造している洗浄機で採取したピッチを入手し、トルエンにて抽出し、抽出液から、溶剤を蒸発させて乾燥物を得た。その乾燥物を再度トルエンに溶解させて(25質量%)、ピッチのトルエン溶液とした。そのトルエン溶液を4.0g、 一般式(1)化合物No.(E1)を0.5質量%(対パルプ)となるようPFIミル(熊谷理機製)に投入し、温度30℃にて2000回転叩解処理し、叩解後に得られたパルプを、パルプ濃度1質量%になるよう希釈し、再び15質量%まで100メッシュ金網にて濃縮し洗浄し、叩解後のパルプを得た。
叩解後のパルプを丸型抄紙機にてJISP−8209に従って坪量200g/m2にて手抄きを行った。プレス処理を行い、ドラムドライヤーにて105℃×5分乾燥し、叩解後の試験紙を得た。叩解後の試験紙5gをトルエン抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を叩解後の試験紙に残存したピッチ量とした。
また、叩解後にパルプを排出したPFIミルの壁面及び攪拌羽根にトルエンを含ませた綿で丁寧にふき取り、その綿をトルエンにて抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分をPFIミルの壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量とした。叩解後の試験紙に残存したピッチ量は2mg以下、PFIミルの壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
(実施例30〜42、比較例13〜16)
添加する化合物を表8、9に示す成分及び組成に変えた他は、実施例29と同じ方法で叩解後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。叩解後の試験紙に残存したピッチ量は2mg以下、PFIミルの壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
添加する化合物を表8、9に示す成分及び組成に変えた他は、実施例29と同じ方法で叩解後の試験紙を得て、同じ評価試験を行った。叩解後の試験紙に残存したピッチ量は2mg以下、PFIミルの壁面及び攪拌羽根の残留ピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
(実施例43)装置への噴霧によるピッチコントロール剤の評価
紙を抄紙するのに使用され、ウェットパルプをガイドする際、ピッチの付着が問題となっているフェルトに対するピッチ汚れの除去性を検証するため、ウェットパルプをガイドするフェルトと同じフェルト10gを、(P1)市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて4質量%に調整したピッチのトルエン溶液に含浸し風乾燥した。重量増加が0.20±0.01gであることを確認してピッチ汚れ試験布とした。この試験布に一般式(1)化合物No.(E1)の1質量%水溶液を噴霧し、フェルトに対して50質量%付着させ、風乾燥した。
紙を抄紙するのに使用され、ウェットパルプをガイドする際、ピッチの付着が問題となっているフェルトに対するピッチ汚れの除去性を検証するため、ウェットパルプをガイドするフェルトと同じフェルト10gを、(P1)市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて4質量%に調整したピッチのトルエン溶液に含浸し風乾燥した。重量増加が0.20±0.01gであることを確認してピッチ汚れ試験布とした。この試験布に一般式(1)化合物No.(E1)の1質量%水溶液を噴霧し、フェルトに対して50質量%付着させ、風乾燥した。
500mlのビーカーに、水300mlに、マグネチックスターラーで一定攪拌した状態で液に試験布を投入、10分間攪拌した。その後試験布を取り上げて乾燥し、トルエンにて抽出し、抽出分を乾燥してその乾燥分を試験布残存ピッチ量とした。
また、(P2)クラフトパルプ(NBKP)を製造している洗浄機で採取したピッチを入手し、トルエンにて抽出し、抽出液から溶剤を蒸発させてその残存物をトルエンにて4質量%の溶液としたものをピッチとして用いた他は、前述と同じ方法でピッチ汚れ試験布を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とし、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とした。
(実施例44〜56、比較例17〜22)
噴霧する化合物を表10、11に示す成分及び組成に変えた他は、実施例43と同じ方法でピッチ汚れ試験布を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とし、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とした。
噴霧する化合物を表10、11に示す成分及び組成に変えた他は、実施例43と同じ方法でピッチ汚れ試験布を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とし、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験布に残存したピッチ量は80mg以下であれば合格とした。
(実施例57)装置への噴霧によるピッチコントロール剤の評価
紙を抄紙する際、ピッチの付着が問題となっている抄紙網(プラスチックワイヤー)に対するピッチ汚れの除去性を検証するため、実際紙を抄紙する抄紙網と同じ抄紙網を10gにカットしたものに、(P1)市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて6質量%に調整したピッチのトルエン溶液に含浸し風乾燥した。重量増加が0.15±0.01gであることを確認してピッチ汚れ試験網を得た。この試験網に一般式(1)化合物No.(E1)の0.2質量%水溶液を噴霧し、試験網に対して25質量%付着させ、風乾燥させた。
紙を抄紙する際、ピッチの付着が問題となっている抄紙網(プラスチックワイヤー)に対するピッチ汚れの除去性を検証するため、実際紙を抄紙する抄紙網と同じ抄紙網を10gにカットしたものに、(P1)市販のガムテープ(株式会社ニトムズ製、透明梱包用テープ)をトルエン抽出し、得られた抽出液から一旦トルエンを蒸発させ、最後にトルエンにて6質量%に調整したピッチのトルエン溶液に含浸し風乾燥した。重量増加が0.15±0.01gであることを確認してピッチ汚れ試験網を得た。この試験網に一般式(1)化合物No.(E1)の0.2質量%水溶液を噴霧し、試験網に対して25質量%付着させ、風乾燥させた。
500mlのビーカーに、水300mlに、マグネチックスターラーで一定攪拌した状態で液に試験網を投入、10分間攪拌した。その後試験網を取り上げて乾燥し、トルエンにて抽出し、抽出分を乾燥させてその乾燥分を試験網残存ピッチ量とした。
また、(P2)クラフトパルプ(NBKP)を製造している洗浄機で採取したピッチを入手し、トルエンにて抽出し、抽出液から溶剤を蒸発させてその残存物をトルエンにて6質量%の溶液にしたものをピッチとして用いた他は、前述と同じ方法でピッチ汚れ試験網を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
(実施例58〜70、比較例23〜28)
噴霧する化合物を表12、13に示す成分及び組成に変えた他は、実施例57と同じ方法でピッチ汚れ試験網を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
噴霧する化合物を表12、13に示す成分及び組成に変えた他は、実施例57と同じ方法でピッチ汚れ試験網を得て、同じ評価試験を行った。(P1)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下、(P2)で作成したピッチを用いて試験した試験網に残存したピッチ量は40mg以下であれば合格とした。
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
Claims (3)
- 下記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とするピッチコントロール剤。
- 紙の製造工程において、請求項1記載の一般式(1)で示される化合物をパルプの乾燥重量に対して、0.0005質量%以上5質量%以下添加することを特徴とするピッチコントロール方法。
- 紙の製造工程において、製造機器のうち紙の製造原料に接触する部分に請求項1記載のピッチコントロール剤を噴霧することを特徴とするピッチコントロール方法。
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