JP2020179365A - 造粒物およびその製造方法、並びに無機粉末用造粒剤 - Google Patents

造粒物およびその製造方法、並びに無機粉末用造粒剤 Download PDF

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Abstract

【課題】臭気および強アルカリによる造粒時の作業環境の悪化が抑制され、さらに、バインダーの使用量が抑制された造粒物およびその製造方法を提供すること。さらに、前記造粒物に使用する無機粉末用造粒剤を提供すること。【解決手段】繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる、造粒物。【選択図】なし

Description

本発明は、造粒物およびその製造方法、並びに無機粉末用造粒剤に関する。
一般的に、鉱物肥料の多くは、粉状または砂状(以下、これらを合わせて粉体状ともいう)を呈しており、以前は、粉体状のまま土壌に散布して用いられてきた。しかし、機械散布が一般的に行われるようになり、散布用機械への適用性、または散布時の飛散防止の観点から、粉体状肥料を粒状化することが必要とされるようになってきている。
特許文献1には、1)ドロマイトまたは石灰石:10〜90%、2)水酸化マグネシウム:10〜40%、および3)カキガラ:10〜60%(%は質量)を配合してなる混合石灰肥料において、バインダーとして、イースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、パルプ廃液、アルコール発酵廃液等を使用することが記載されている。
特開2003−128484号公報
特許文献1に記載された混合石灰肥料では、実施例において、アルコール発酵廃液やイースト菌発酵廃液をバインダーとして使用している。従来、粒状化の際のバインダーとしては、上述したイースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、アルコール発酵廃液に加え、パルプ廃液などの有機廃液が使用されてきたが、いずれも無機粉末に対する添加量が多量に必要であり、無機粉末の含有量が相対的に少なくなるという問題があった。
さらにこれらのバインダーには、臭気の強いものが多く、粒状化の際の作業環境が悪化する傾向があった。また、一部の有機廃液は、アルカリ性が強く、同様に、作業環境が悪化する傾向があった。
本発明は、臭気および強アルカリによる造粒時の作業環境の悪化が抑制され、さらに、バインダーの使用量が抑制された造粒物およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は前記造粒物に使用する無機粉末用造粒剤を提供することを目的とする。
本発明者は、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースが、無機粉末を造粒する際のバインダーとして有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<11>に関する。
<1> 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる、造粒物。
<2> 前記繊維状セルロースが、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有する、<1>に記載の造粒物。
<3> 前記微細繊維状セルロースが、アニオン性基を含有する、<1>または<2>に記載の造粒物。
<4> 前記無機粉末100質量部に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が0.01質量部以上1質量部以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の造粒物。
<5> 前記繊維状セルロース中の前記微細繊維状セルロースの含有量が10質量%以上100質量%以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載の造粒物。
<6> 前記造粒物が、肥料用、土壌改良剤用、融雪剤用である、<1>〜<5>のいずれかに記載の造粒物。
<7> 前記無機粉末が、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする、<1>〜<6>のいずれかに記載の造粒物。
<8> 前記無機粉末の粒度が16メッシュ以上である、<1>〜<7>のいずれかに記載の造粒物。
<9> 前記造粒物の平均粒径が1mm以上10mm以下である、<1>〜<8>のいずれかに記載の造粒物。
<10> 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを含む、無機粉末用造粒剤。
<11> 無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する、造粒物の製造方法。
本発明によれば、臭気および強アルカリによる造粒の作業環境の悪化が抑制され、さらに、バインダーの使用量が抑制された造粒物およびその製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記造粒物に使用する無機粉末用造粒剤を提供することができる。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。 図2は、カルボキシ基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
[造粒物およびその製造方法]
本発明の造粒物は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。また、本発明の造粒物の製造方法は、無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する。
本発明によれば、臭気および強アルカリによる造粒の作業環境の悪化が抑制され、さらに、バインダーの使用量が抑制された造粒物およびその製造方法が提供される。また、本発明の造粒物は高い粒硬度を有するとともに、水中での崩壊性を有し、肥料、土壌改良剤、融雪剤等の各種の用途に好適に使用可能である。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを無機粉末のバインダーとして使用することにより、臭気および強アルカリによる造粒の作業環境の悪化が抑制される。繊維状セルロース、および該繊維状セルロースを含有する水系分散液は、臭気が殆んどなく、また、pHも3〜10程度であり、従来のパルプ廃液等に比べて、作業環境の悪化を抑制可能である。また、繊維状セルロースが微細繊維状セルロースを含有することにより、該微細繊維状セルロースは増粘剤として機能することが知られており、少ない使用量で無機粉末同士を結着することが可能であるために、従来のバインダーに比べて、使用量が抑制できたと考えられる。
また、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースは、造粒物に適度な粒硬度を付与するとともに、繊維状セルロースが親水性であることから、造粒物は水中での崩壊性を有するものと考えられる。さらに、繊維状セルロースは、生分解性であることから、肥料、土壌改良剤、融雪剤等に使用した場合でも、バインダーによる環境負荷の低減が期待される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<繊維状セルロース>
本発明の繊維状セルロースは、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロース(以下、単に「微細繊維状セルロース」または「CNF」ともいう)を含有する。また、繊維状セルロースは、前記微細繊維状セルロースに加えて、繊維幅が1,000nmを超える繊維状セルロース(以下、「パルプ繊維」ともいう)を含有していてもよい。
〔微細繊維状セルロース〕
微細繊維状セルロースは、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロースである。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
繊維状セルロース中の微細繊維状セルロースの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上であり、100質量%であってもよい。
微細繊維状セルロースとして、後述するイオン性基を含有する微細繊維状セルロースと、未変性微細繊維状セルロースとを併用してもよい。
微細繊維状セルロースの繊維幅は、1000nm以下である。微細繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状のセルロースである。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。
微細繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域の破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEM、AFMによる画像解析より求めることができる。
微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10000以下であることが好ましく、50以上1000以下であることがより好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、微細繊維状セルロースを含有するシートを形成しやすい。また、溶媒分散体を作製した際に十分な増粘性が得られやすい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。
本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえばイオン性基および非イオン性基のうちの少なくとも1種を有する。分散媒中における繊維の分散性を向上させ、解繊処理における解繊効率を高める観点からは、微細繊維状セルロースがイオン性基を有することがより好ましい。イオン性基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。
なお、微細繊維状セルロースには、イオン性基を導入する処理が行われていなくてもよい。
イオン性基としてのアニオン性基としては、たとえばリンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基(単にリンオキソ酸基ということもある)、カルボキシ基またはカルボキシ基に由来する置換基(単にカルボキシ基ということもある)、およびスルホン基またはスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リンオキソ酸基およびカルボキシ基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リンオキソ酸基であることがとくに好ましい。
リンオキソ酸基またはリンオキソ酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基である。
リンオキソ酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシ基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−POで表される基である。リンオキソ酸基に由来する置換基には、リンオキソ酸基の塩、リンオキソ酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リンオキソ酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として繊維状セルロースに含まれていてもよい。また、リンオキソ酸基は、たとえば、亜リン酸基(ホスホン酸基)であってもよく、リンオキソ酸基に由来する置換基は、亜リン酸基の塩、亜リン酸エステル基などであってもよい 。
式(1)中、a、bおよびnは自然数であり、mは任意の数である(ただし、a=b×mである)。α,α,・・・,αおよびα’のうちa個がOであり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αおよびα’の全てがOであっても構わない。Rは、各々、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。なお、式(1)におけるαは、セルロース分子鎖に由来する基であってもよい。
飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、とくに限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数はとくに限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リンオキソ酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細繊維状セルロースの収率を高めることもできる。
βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、または芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、もしくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、または水素イオン等が挙げられるが、とくに限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、とくに限定されない。
微細繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、微細繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.50mmol/g以下であることがさらに好ましく、3.00mmol/g以下であることがよりさらに好ましい。イオン性基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、イオン性基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの増粘剤などの種々用途において良好な特性を発揮することができる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、イオン性基の対イオンが水素イオン(H)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
繊維状セルロースに対するイオン性基の導入量は、たとえば中和滴定法により測定することができる。中和滴定法による測定では、得られた繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながらpHの変化を求めることにより、導入量を測定する。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロース含有スラリーに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。繊維状セルロースに対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上述のリンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リンオキソ酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リンオキソ酸基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(リンオキソ酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した値)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法によるリンオキソ酸基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液1滴の滴下量が多すぎる場合や、滴定間隔が短すぎる場合、本来より低いリンオキソ酸基量となるなど正確な値が得られないことがある。適切な滴下量、滴定間隔としては、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。また、繊維状セルロース含有スラリーに溶解した二酸化炭素の影響を排除するため、たとえば、滴定開始の15分前から滴定終了まで、窒素ガスなどの不活性ガスをスラリーに吹き込みながら測定するなどが望ましい。
図2は、カルボキシ基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
繊維状セルロースに対するカルボキシ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。なお、必要に応じて、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
図2に示されるように、この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ観測される。この増分の極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)を算出した。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、カルボキシ基の対イオンが水素イオン(H)であるときの繊維状セルロースの質量1gあたりの置換基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量であることから、酸型の繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(C型))(mmol/g)を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W−1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
なお、滴定法による置換基量の測定においては、水酸化ナトリウム水溶液の滴定間隔が短すぎる場合、本来より低い置換基量となることがあるため、適切な滴定間隔、たとえば、0.1N水酸化ナトリウム水溶液を5〜30秒に10〜50μLずつ滴定するなどが望ましい。
上述の方法によるイオン性基量の測定は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースに適用され、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維のイオン性基の量を測定する場合には、パルプ繊維を微細化してから測定する。
〔微細繊維状セルロースの製造方法〕
(セルロースを含む繊維原料)
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。
セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
上述のようなイオン性基を導入した微細繊維状セルロースを得るためには、上述したセルロースを含む繊維原料にイオン性基を導入するイオン性基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程をこの順で有することが好ましく、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。イオン性基導入工程としては、リンオキソ酸基導入工程およびカルボキシ基導入工程が例示される。以下、それぞれについて説明する。
(イオン性基導入工程)
−リンオキソ酸基導入工程−
リンオキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リンオキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リンオキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、とくに乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、とくに水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン原子を有し、セルロースとエステル結合を形成可能な化合物であればよく、リン酸もしくはその塩、亜リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸(五酸化二リン)などが挙げられるが、とくに限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。亜リン酸としては、たとえば99%亜リン酸(ホスホン酸)が挙げられる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、たとえばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、亜リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、とくに限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、とくにトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。
リンオキソ酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加または混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、リンオキソ酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置、円盤乾燥装置、ロール型加熱装置、プレート型加熱装置、流動層乾燥装置、バンド型乾燥装置、ろ過乾燥装置、振動流動乾燥装置、気流乾燥装置、減圧乾燥装置、赤外線加熱装置、遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置、高周波乾燥装置を用いることができる。
本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練または撹拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リンオキソ酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
リンオキソ酸基導入工程は、少なくとも1回行えばよいが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリンオキソ酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリンオキソ酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リンオキソ酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。
繊維原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、繊維原料に対するリンオキソ酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リンオキソ酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。
−カルボキシ基導入工程−
カルボキシ基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化やフェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては、とくに限定されないが、たとえば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が、アルキル基、フェニル基等の置換基により置換されたものが挙げられる。
カルボキシ基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合には、たとえばその処理をpHが6以上8以下の条件で行うことが好ましい。このような処理は、中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、たとえばリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、繊維原料としてパルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル、犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシ基まで酸化することができる。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。
繊維原料に対するカルボキシ基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシ基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、2.5mmol/g以下であることが好ましく、2.20mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。
(洗浄工程)
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてイオン性基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりイオン性基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
(アルカリ処理(中和処理)工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理(中和処理)を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、イオン性基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるイオン性基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえばイオン性基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、イオン性基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、イオン性基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行ったイオン性基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。
(酸処理工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。たとえば、イオン性基導入工程、酸処理工程、アルカリ処理工程および解繊処理工程をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、とくに限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、とくに限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば繊維原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
(解繊処理工程)
イオン性基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。
解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、とくに限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
解繊処理工程においては、たとえばイオン性基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。
解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。
また、リンオキソ酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、たとえば水素結合性のある尿素などのリンオキソ酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
〔パルプ繊維〕
本発明において、繊維状セルロースは、上述した微細繊維状セルロースに加えて、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有していてもよい。
パルプ繊維は、たとえばイオン性基および非イオン性基のうちの少なくとも1種を有していてもよい。分散媒中におけるパルプ繊維の分散性を向上させる観点からは、パルプ繊維がイオン性基を有することがより好ましい。イオン性基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。
パルプ繊維にアニオン性基を導入する方法は、微細繊維状セルロースの製造方法における、イオン性基導入工程を実施することで得られ、解繊処理工程を有しない以外は、同様の方法により製造することができる。
パルプ繊維の繊維幅および平均繊維幅は、良好な造粒性を得る観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは25μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは35μm以下である。
パルプ繊維の繊維幅および平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定される。
繊維状セルロース中のパルプ繊維の含有量は、少ない繊維状セルロースの使用量で造粒する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下であり、0質量%であってもよい。
<繊維状セルロースの物性>
(粘度)
本発明において、繊維状セルロースの固形分濃度が0.4%(0.4質量%)に調整した分散液(スラリー)の23℃における粘度は、造粒性をより向上させる観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1.0×10mPa・s以上であり、さらに好ましくは3×10mPa・s以上、よりさらに好ましくは5.0×10mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは1×10mPa・s以下、より好ましくは7×10mPa・s以下、さらに好ましくは5×10mPa・s以下、よりさらに好ましくは3.5×10mPa・s以下、よりさらに好ましくは2.5×10mPa・s以下、よりさらに好ましくは1.5×10mPa・s以下である。
上記の粘度は、繊維状セルロースの固形分濃度を0.4%に調整したスラリーを1500rpmで5分間、ディスパーサーにて撹拌した後、測定前に23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した後、B型粘度計を用いて23℃、回転数3rpmの条件で測定する。より具体的には、たとえばB型粘度計であるBLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T−LVTを用いることができる。測定条件は、たとえば液温23℃にて、粘度計の回転数は3rpmにて測定を行い、測定開始から3分のときの粘度値を当該分散液の粘度とする。なお、上記分散液は、繊維状セルロースが完全に溶解していてもよく、分散状態であってもよい。
<無機粉末>
本発明の造粒物は、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。
本発明において使用される無機粉末としては、とくに限定されず、造粒物の使用目的に応じて、適宜選択すればよい。
造粒物を肥料用に使用する場合、無機粉末としては、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする無機粉末であることが好ましい。
窒素を主成分とする無機粉末としては、硫酸アンモニウム((NHSO)、塩化アンモニウム(NHCl)、硝酸アンモニウム、(NHNO)硝酸ナトリウム(NaNO)、石灰窒素(CaCN、CaO)が例示される。ここで、石灰窒素は、たとえば、石炭から得られるコークスと生石灰とを原料としており、硝酸ナトリウムは、たとえばチリ硝石を原料としている。
リン酸を主成分とする無機粉末としては、過リン酸石灰(Ca(HPO・HOとCaSOとの混合物)、重過リン酸石灰(Ca(HPO・HO)、熔成リン肥、焼成リン肥(CaNa(PO)、リン酸アンモニウムが例示される。ここで、過リン酸石灰は、リン鉱石を硫酸と反応させ生成するリン酸一カルシウムと、硫酸カルシウム(石膏)との混合物であり、重過リン酸石灰は、リン鉱石とリン酸とを反応させ、リン酸一カルシウムを製造する。また、リン酸アンモニウムはリン鉱石と硫酸とを反応させて得られたリン酸とアンモニウムとを反応させて得られる。熔成リン肥は、リン鉱石と蛇紋岩を電気炉で加熱溶解して得られ、リン鉱石中のフッ素アパタイトを加熱により分解し、フッ素を除去することで、有機リン酸肥料としたものである。さらに、焼成リン肥は、リン鉱石を炭酸ナトリウム、リン酸と溶融しない程度の高温で焼成し、アパタイト構造を破壊し、フッ素を除去し、リン酸肥料とするものである。
カリウムを主成分とする無機粉末としては、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(KSO)、ケイ酸カリウム等が例示される。塩化カリウムは、鉱石(シルビナイト、カーナリタイトなど)を選鉱または再結晶などを行って得る方法、天然かん水を濃縮、分別結晶などを行って得る方法、などによって得られる。また、硫酸カリウムは、塩化カリウムに硫酸を反応させることによって得られる。ケイ酸カリウムは、フライアッシュ、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムを混合、造粒し、さらに焼成することによって得られる。
石灰を主成分とする無機粉末は、カルシウム分を主成分とする無機粉末であり、たとえば、生石灰、消石灰、炭酸石灰、石灰窒素などが例示される。
また、ケイ酸を主成分とする無機粉末は、鉱さいが挙げられ、具体的には、製銑鉱さい、普通鋼鉱さい、ステンレス鉱さい、シリコマンガン鉱さい等が例示される。
マグネシウムを主成分とする無機粉末としては、ドロマイト(苦土石灰)、キーゼライト等が例示される。また、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等を使用してもよい。
マンガンを主成分とする無機粉末としては、硫酸マンガン、炭酸マンガン等が例示される。また、マンガン鉱さいを使用してもよい。
ホウ素を主成分とする無機粉末としては、ホウ砂が例示される。
なお、無機粉末は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、造粒物が肥料用である場合、造粒物は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の三要素のうち、2以上を含む複合肥料であってもよく、マンガン、ホウ素の両方を含む微量要素複合肥料であってもよい。
造粒物が肥料用である場合、上述した無機粉末に加え、さらに、尿素等の有機粉末を含有していてもよいが、造粒性の観点から、無機粉末と有機粉末の合計に対する無機粉末の量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%であってもよい。
造粒物を土壌改良剤用に使用する場合、無機粉末としては、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト、ベントナイト、珪藻土焼成物等が例示される。
また、造粒物を融雪剤用に使用する場合には、無機粉末としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、カーボンブラック等が例示される。
なお、造粒物を融雪剤用に使用する場合、上記の無機粉末に加えて、さらに、尿素や、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム等の酢酸金属塩を使用してもよい。
無機粉末の粒度はとくに限定されないが、16メッシュ以上であることが好ましい。ここで、粒度とは、50質量%以上の粒子が通過したふるいの最大メッシュを意味する。無機粉末の粒度は、より好ましくは30メッシュ以上、さらに好ましくは50メッシュ以上、よりさらに好ましくは83メッシュ以上である。また、好ましくは500メッシュ以下、より好ましくは330メッシュ以下、さらに好ましくは200メッシュ以下、よりさらに好ましくは149メッシュ以下である。
なお、メッシュと目開きとの関係は、JIS Z 8801−1:2006に準拠して求められ、16メッシュは目開き1mm、30メッシュは目開き300μm、50メッシュは目開き300μm、83メッシュは目開き180μmに相当する。また、500メッシュは目開き25μm、330メッシュは目開き45μm、200メッシュは目開き75μm、149メッシュは目開き100μmに相当する。
<造粒物の特性>
本発明の造粒物は、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。
無機粉末100質量部に対する微細繊維状セルロースの含有量は、造粒性および造粒物に適度な粒硬度を付与する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上、よりさらに好ましくは0.1質量部以上、よりさらに好ましくは0.15質量部以上、よりさらに好ましくは0.2質量部以上であり、バインダーの使用量を抑制する観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、よりさらに好ましくは0.5質量部以下、よりさらに好ましくは0.4質量部以下、よりさらに好ましくは0.3質量部以下である。
なお、本発明において、造粒物は、繊維状セルロースおよび無機粉末に加え、他の成分を含有していてもよい。具体的には、繊維状セルロース以外のバインダー成分や、上述した有機粉末等が例示される。繊維状セルロース以外のバインダー成分としては、リグニン、廃糖蜜、ベントナイト、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が例示される。繊維状セルロース以外のバインダー成分の含有量は、繊維状セルロースの含有量を100質量部としたとき、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下であり、含有しなくてもよい。
造粒物の粒硬度は、造粒物の用途によって異なる、用途に応じて適宜選択すればよい。造粒物を肥料用に使用する場合には、保存および機械散布に耐えうる観点から、好ましくは450g以上、より好ましくは500g以上、さらに好ましくは550g以上、よりさらに好ましくは700g以上、よりさらに好ましくは800g以上、よりさらに好ましくは900g以上であり、そして、適度な崩壊性や溶解性を付与する観点から、好ましくは5,000g以下、より好ましくは3,000g以下、さらに好ましくは2,000g以下、よりさらに好ましくは1,500g以下、よりさらに好ましくは1,200g以下である。
造粒物の粒硬度は、実施例に記載の方法により測定される。
造粒物の平均粒径はとくに限定されず、用途により適宜選択すればよいが、造粒が容易である観点から、好ましくは1mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下、よりさらに好ましくは4mm以下である。
平均粒径は、ふるい分け法により測定され、JIS Z 8801:2006に準拠した基準ふるいを使用したロータップ式自動ふるい器を使用し、目開きの小さなものから順に重ね合わせて、それぞれのふるい上に残った試料を秤量し、累積50%となる粒径を平均粒径とする。
なお、本発明により得られた造粒物に対して、ふるい分けを行うことで、微粒子や粗大粒子を除去してもよい。
本発明において、造粒物は種々の用途に適用でき、たとえば、肥料用、土壌改良用、融雪剤用、防滑剤用、舗装材用、等に適用できる。
これらの中でも、造粒物の粒硬度および造粒物が水中での崩壊性を有する観点から、本発明の造粒物は、肥料用、土壌改良用および融雪剤用として好適に使用される。
[造粒物の製造方法]
本発明の造粒物の製造方法(造粒方法)はとくに限定されないが、無機粉末と繊維状セルロースの水系分散液とを混合する方法であることが好ましく、たとえば、撹拌造粒、転動造粒、押出造粒等の造粒方法から適宜選択すればよい。これらの中でも、使用時に水中での崩壊性を有する造粒物とする観点、および製造コストの観点から、転動造粒が好ましい。
本発明の造粒物の製造方法は、無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有するものであることが好ましく、無機粉末を、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を用いて転動造粒する工程を有することがより好ましい。
ここで、使用する無機粉末および繊維状セルロースについては上述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
無機粉体に付与する繊維状セルロースの水系分散液の量は、無機粉体に均一に水系分散液を付与して、造粒を均一に進行させる観点、および短時間での造粒を可能とする観点から、無機粉体100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
従って、無機粉体に付与する水系分散液の量が所望の範囲となるように、繊維状セルロースの分散液(スラリー)を適宜希釈して、無機粉体に付与することが好ましい。
繊維状セルロースの水系分散液の溶媒としては、水を主成分とするものであり、水に加えて有機溶媒を含有していてもよい。前記有機溶媒としては、解繊工程において挙げた極性有機溶媒が例示される。水系分散液の溶媒中の水の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
造粒物は、無機粉末を、繊維状セルロースの水系分散液をバインダーとして使用して造粒することにより得られ、造粒方法としては転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒等の方法が使用可能であり、中でも転動造粒が好ましい。肥料用造粒物などは、一般に球状のものが、不規則形状や鋭い角をもったものよりも好まれる観点から、転動造粒法がとくに好適である。
転動造粒法としては、公知の方法から適宜選択すればよく、ロッシェ法、ドラム法などが利用できる。また、転動造粒器としては、セメントミキサー、ドラムミキサー、パン型造粒器などが使用される。
繊維状セルロースの水系分散液の付与方法はとくに限定されず、予め無機粉末と繊維状セルロースの水系分散液をミキサーやニーダーによって混練してから造粒器に入れてもよいが、繊維状セルロースの水系分散液を無機粉末全体に均一に付与して、造粒を均一に進行させる観点から、噴霧付与など、小さな液滴で付与することが好ましい。
造粒時間はとくに限定されないが、所望の粒硬度を有する造粒物を得る観点、短時間で造粒物を製造し、製造効率を向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは4分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは10分以下である。
また、造粒物から余分な水分を除去する観点から、造粒中に加熱してもよく、また、造粒中に気体を送気してもよい。
本発明において、転動造粒により得られた造粒物に対して、適宜ふるい分け等の分級を行ってもよい。これにより、微小な粒子や粗大な粒子を除去して、所望の粒径を有する造粒物が得られる。
[無機粉末用造粒剤]
本発明の無機粉末用造粒剤は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを含有する。
上記繊維状セルロースおよび微細繊維状セルロースとしては、上述した繊維状セルロースおよび微細繊維状セルロースが例示され、好ましい範囲も同様である。
なお、無機粉末用造粒剤として、繊維状セルロースに加えて、他のバインダー成分を含有していてもよく、たとえば、リグニン、廃糖蜜、ベントナイト、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が例示される。
無機粉末用造粒剤の固形分中の繊維状セルロースの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
なお、無機粉末用造粒剤は、粉末状、ウェットパウダー状、液状等のいずれの性状であってもよく、使用に際にしては、水に溶解または分散させたスラリー状に調製して使用することが好ましい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[製造例1]
[リン酸基導入パルプ繊維(リン酸化パルプ)の作製]
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/mシート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700mL)を使用した。この原料パルプに対してリンオキソ酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で250秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸基導入パルプ繊維(リン酸化パルプ)を得た。
次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、100g(絶乾質量)のリン酸化パルプ1に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。
次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して上記洗浄処理を行い、イオン交換水を添加して固形分濃度が2質量%のリン酸化パルプ分散液(分散液(1))を得た。
リン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った結果、1,230cm−1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。リン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。また、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(第1解離酸量)は、1.45mmol/gであった。なお、総解離酸量は、2.45mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は30μm程度であった。
[製造例2]
[リン酸基導入微細繊維状セルロース(リン酸化CNF)の作製]
上記製造例1にて得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、リン酸基導入微細繊維状セルロース(リン酸化CNF)分散液(分散液(2))を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(第1解離酸量)は、1.45mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は3〜5nmであった。
[製造例3]
[亜リン酸基導入微細繊維状セルロース(亜リン酸化CNF)の作製]
リン酸二水素アンモニウムの代わりに亜リン酸(ホスホン酸)33質量部を用いた以外は、[製造例1]と同様に操作を行い、亜リン酸基が導入されたパルプ繊維(亜リン酸化パルプ)を得た。
得られた亜リン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1,210cm−1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)が付加されていることが確認された。また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られた亜リン酸化パルプに対し[製造例2]と同様に微細化処理を行い、亜リン酸基導入微細繊維状セルロース(亜リン酸化CNF)分散液(分散液(3))を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、後述する測定方法で測定される(亜)リン酸基量(第1解離酸量)は1.51mmol/gだった。なお、総解離酸量は、1.54mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は3〜5nmであった。
[製造例4]
[カルボキシ基導入微細繊維状セルロース(TEMPO酸化CNF)の作製]
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(未乾燥)を使用した。この原料パルプに対してアルカリTEMPO酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)と、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部を、水10,000質量部に分散させた。次いで、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して3.8mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上10.5以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。上記TEMPO酸化処理により、パルプ繊維にカルボキシ基が導入された。
次いで、得られたTEMPO酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、TEMPO酸化後のパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5,000質量部のイオン交換水を注ぎ、撹拌して均一に分散させた後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
得られたTEMPO酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
得られたTEMPO酸化パルプに対し[製造例2]と同様に微細化処理を行い、カルボキシ基導入微細繊維状セルロース(TEMPO酸化CNF)分散液(分散液(4))を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、後述する測定方法で測定されるカルボキシ基量は、1.30mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は3〜5nmであった。
[製造例5]
[未変性パルプ繊維の作製]
針葉樹クラフトパルプを離解して、未変性パルプ繊維を得た。未変性パルプ繊維にイオン交換水を加え、濃度が2質量%となるように希釈し、分散液(5)とした。後述する測定方法で測定される繊維幅は30μm程度であった。
[製造例6]
[未変性微細繊維状セルロース(未変性CNF)の作製]
上記[製造例5]で得られた未変性パルプ繊維にイオン交換水を加え、濃度が2質量%となるように希釈した後、リファイナー処理に供してCSFが50mL以下になるまで叩解(プレ解繊)した。
プレ叩解した未変性パルプ繊維に対し[製造例2]と同様に微細化処理を行い、未変性微細繊維状セルロース(未変性CNF)分散液(分散液(6))を得た。後述する方法で繊維幅を測定したところ、1000nm以下の微細繊維状セルロースが観察された。
[繊維幅の測定]
リン酸基導入パルプおよび未変性パルプ繊維の繊維幅は、カヤーニ繊維長測定器(カヤーニオートメーション(株)製、FS−200形)を用いて測定した。
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL−2000EX)により観察した。
[リンオキソ酸基量の測定]
微細繊維状セルロースのリンオキソ酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ(株)、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値をリン酸基量(mmol/g)とした。
リンオキソ酸化パルプについては、リンオキソ酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理して得られた分散液に対して、上述した方法と同様にアルカリを用いた滴定を行った。
[カルボキシ基量の測定]
微細繊維状セルロースおよびカルボキシ基導入パルプ繊維のカルボキシ基量は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を30秒に1回、50μLずつ加えた以外は[リンオキソ酸基量の測定]と同様に測定した。カルボキシ基量(mmol/g)は、計測結果のうち図2に示す第1領域に相当する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して算出した。
[実施例1]
原料無機粉末として、王子木材緑化(株)製の石灰粉末(以下、単に「石灰粉末」ともいう。)を使用した。石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(2)を固形分で0.05質量部添加し、セメントミキサーで5分回転して造粒した。なお、分散液(2)は、石灰粉末100質量部に対する添加量が10質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。造粒物を篩い分けし、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例2]
分散液(2)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例3]
分散液(2)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例4]
分散液(2)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例5]
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(3)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例6]
分散液(3)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例7]
分散液(3)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例8]
分散液(3)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例9]
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(4)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例10]
分散液(4)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例11]
分散液(4)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例12]
分散液(4)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例13]
石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(6)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例14]
分散液(6)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例15]
分散液(6)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例16]
分散液(6)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[実施例17]
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(1)を固形分で0.32質量部、分散液(2)を固形分で0.08質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。なお、分散液(1)および分散液(2)は、石灰粉末100質量部に対する合計の添加量が20質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。
[実施例18]
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(5)を固形分で0.32質量部、分散液(6)を固形分で0.08質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。なお、分散液(5)および分散液(6)は、石灰粉末100質量部に対する合計の添加量が20質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。
[比較例1]
石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(5)を固形分で0.4質量部添加し、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は実施例1と同様にして、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[比較例2]
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとしてパルプ廃液(黒液)を固形分で1質量部添加し、セメントミキサーで5分回転して造粒した。パルプ廃液は、石灰粉末100質量部に対する添加量が10質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。造粒物を篩い分けし、粒径1〜4mmの造粒物を得た。
[石灰粉末の粒度の測定]
JIS Z8801−1:2006に準拠したメッシュを用いて篩い分けしたところ、100メッシュを50質量%透過した。
[粒硬度の測定]
粒径1〜4mmの造粒物10粒の硬度を木屋式硬度計にて測定し、その平均値とした。
[水中崩壊性の評価]
造粒物20粒を2000μmのふるい上に並べて、適当な大きさの容器中に置き、造粒物が水に十分浸るまで水を注いだ。1夜静置後、ふるいを取り出してふるい上に残存する未崩壊粒を数え、崩壊率が8割以上となった場合を崩壊性ありとした。
[結果]
実施例でバインダーとして使用した繊維状セルロースは、全てpHが9以下であり、臭気もなかった。また、得られた造粒物の粒硬度は500g以上で、強度の高い造粒物が得られた。さらに、水中での崩壊性もあった。一方、比較例1はバインダーのpHおよび臭気は良好で崩壊性もあったが、粒硬度が低かった。また、比較例2は粒硬度および崩壊性は良好だったが、バインダーのpHは12以上で独特の臭気があった。また、実施例と比較すると、使用するバインダーの量も多かった。
従って、本発明では、pHや臭気の問題なく、バインダーの使用量が少なくても、粒硬度と水中での崩壊性に優れた造粒物が得られることが示された。
本発明により、粒硬度と水中での崩壊性に優れた造粒物を提供でき、肥料、土壌改良剤、融雪剤等としての使用が期待される。

Claims (11)

  1. 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる、造粒物。
  2. 前記繊維状セルロースが、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有する、請求項1に記載の造粒物。
  3. 前記微細繊維状セルロースが、アニオン性基を含有する、請求項1または2に記載の造粒物。
  4. 前記無機粉末100質量部に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が0.01質量部以上1質量部以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の造粒物。
  5. 前記繊維状セルロース中の前記微細繊維状セルロースの含有量が10質量%以上100質量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の造粒物。
  6. 前記造粒物が、肥料用、土壌改良剤用、融雪剤用である、請求項1〜5のいずれかに記載の造粒物。
  7. 前記無機粉末が、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする、請求項1〜6のいずれかに記載の造粒物。
  8. 前記無機粉末の粒度が16メッシュ以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の造粒物。
  9. 前記造粒物の平均粒径が1mm以上10mm以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の造粒物。
  10. 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを含む、無機粉末用造粒剤。
  11. 無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する、造粒物の製造方法。
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