JP7322491B2 - 造粒物およびその製造方法、並びに無機粉末用造粒剤 - Google Patents
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Description
特許文献1には、1)ドロマイトまたは石灰石:10~90%、2)水酸化マグネシウム:10~40%、および3)カキガラ:10~60%(%は質量)を配合してなる混合石灰肥料において、バインダーとして、イースト菌発酵廃液、アミノ酸発酵廃液、パルプ廃液、アルコール発酵廃液等を使用することが記載されている。
さらにこれらのバインダーには、臭気の強いものが多く、粒状化の際の作業環境が悪化する傾向があった。また、一部の有機廃液は、アルカリ性が強く、同様に、作業環境が悪化する傾向があった。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<11>に関する。
<1> 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる、造粒物。
<2> 前記繊維状セルロースが、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有する、<1>に記載の造粒物。
<3> 前記微細繊維状セルロースが、アニオン性基を含有する、<1>または<2>に記載の造粒物。
<4> 前記無機粉末100質量部に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が0.01質量部以上1質量部以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の造粒物。
<5> 前記繊維状セルロース中の前記微細繊維状セルロースの含有量が10質量%以上100質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の造粒物。
<6> 前記造粒物が、肥料用、土壌改良剤用、融雪剤用である、<1>~<5>のいずれかに記載の造粒物。
<7> 前記無機粉末が、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする、<1>~<6>のいずれかに記載の造粒物。
<8> 前記無機粉末の粒度が16メッシュ以上である、<1>~<7>のいずれかに記載の造粒物。
<9> 前記造粒物の平均粒径が1mm以上10mm以下である、<1>~<8>のいずれかに記載の造粒物。
<10> 繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを含む、無機粉末用造粒剤。
<11> 無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する、造粒物の製造方法。
本発明の造粒物は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。また、本発明の造粒物の製造方法は、無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する。
本発明によれば、臭気および強アルカリによる造粒の作業環境の悪化が抑制され、さらに、バインダーの使用量が抑制された造粒物およびその製造方法が提供される。また、本発明の造粒物は高い粒硬度を有するとともに、水中での崩壊性を有し、肥料、土壌改良剤、融雪剤等の各種の用途に好適に使用可能である。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを無機粉末のバインダーとして使用することにより、臭気および強アルカリによる造粒の作業環境の悪化が抑制される。繊維状セルロース、および該繊維状セルロースを含有する水系分散液は、臭気が殆んどなく、また、pHも3~10程度であり、従来のパルプ廃液等に比べて、作業環境の悪化を抑制可能である。また、繊維状セルロースが微細繊維状セルロースを含有することにより、該微細繊維状セルロースは増粘剤として機能することが知られており、少ない使用量で無機粉末同士を結着することが可能であるために、従来のバインダーに比べて、使用量が抑制できたと考えられる。
また、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースは、造粒物に適度な粒硬度を付与するとともに、繊維状セルロースが親水性であることから、造粒物は水中での崩壊性を有するものと考えられる。さらに、繊維状セルロースは、生分解性であることから、肥料、土壌改良剤、融雪剤等に使用した場合でも、バインダーによる環境負荷の低減が期待される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の繊維状セルロースは、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロース(以下、単に「微細繊維状セルロース」または「CNF」ともいう)を含有する。また、繊維状セルロースは、前記微細繊維状セルロースに加えて、繊維幅が1,000nmを超える繊維状セルロース(以下、「パルプ繊維」ともいう)を含有していてもよい。
微細繊維状セルロースは、繊維幅が1000nm以下である繊維状セルロースである。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。
繊維状セルロース中の微細繊維状セルロースの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは30質量%以上であり、100質量%であってもよい。
微細繊維状セルロースとして、後述するイオン性基を含有する微細繊維状セルロースと、未変性微細繊維状セルロースとを併用してもよい。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
なお、微細繊維状セルロースには、イオン性基を導入する処理が行われていなくてもよい。
リンオキソ酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシ基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には-PO3H2で表される基である。リンオキソ酸基に由来する置換基には、リンオキソ酸基の塩、リンオキソ酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リンオキソ酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として繊維状セルロースに含まれていてもよい。また、リンオキソ酸基は、たとえば、亜リン酸基(ホスホン酸基)であってもよく、リンオキソ酸基に由来する置換基は、亜リン酸基の塩、亜リン酸エステル基などであってもよい 。
また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、とくに限定されない。また、Rの主鎖を構成する炭素原子数はとくに限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リンオキソ酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細繊維状セルロースの収率を高めることもできる。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、イオン性基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの微細繊維状セルロースの質量を示す。
図1は、リンオキソ酸基を有する繊維状セルロースに対するNaOH滴下量とpHの関係を示すグラフである。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図1の上側部に示すような滴定曲線を得る。図1の上側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットしており、図1の下側部に示した滴定曲線では、アルカリを加えた量に対するpHの増分(微分値)(1/mmol)をプロットしている。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ確認される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第1解離酸量と等しくなり、第1終点から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの第2解離酸量と等しくなり、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中に含まれる繊維状セルロースの総解離酸量と等しくなる。そして、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リンオキソ酸基導入量(mmol/g)となる。なお、単にリンオキソ酸基導入量(またはリンオキソ酸基量)と言った場合は、第1解離酸量のことを表す。
なお、図1において、滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼び、第1終点から第2終点までの領域を第2領域と呼ぶ。たとえば、リンオキソ酸基がリン酸基の場合であって、このリン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上、リンオキソ酸基における弱酸性基量(本明細書では第2解離酸量ともいう)が低下し、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、リンオキソ酸基における強酸性基量(本明細書では第1解離酸量ともいう)は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。また、リンオキソ酸基が亜リン酸基の場合は、リンオキソ酸基に弱酸性基が存在しなくなるため、第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなるか、第2領域に必要としたアルカリ量はゼロとなる場合もある。この場合、滴定曲線において、pHの増分が極大となる点は一つとなる。
なお、上述のリンオキソ酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リンオキソ酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基量(以降、リンオキソ酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リンオキソ酸基量(C型)=リンオキソ酸基量(酸型)/{1+(W-1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維状セルロースが有するリンオキソ酸基由来の総アニオン量(リンオキソ酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した値)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
繊維状セルロースに対するカルボキシ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながらpHの変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。なお、必要に応じて、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。
図2に示されるように、この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が一つ観測される。この増分の極大点を第1終点と呼ぶ。ここで、図2における滴定開始から第1終点までの領域を第1領域と呼ぶ。第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中のカルボキシ基量と等しくなる。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除すことで、カルボキシ基の導入量(mmol/g)を算出した。
なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、カルボキシ基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの繊維状セルロースの質量1gあたりの置換基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。
すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W-1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)
上述の方法によるイオン性基量の測定は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースに適用され、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維のイオン性基の量を測定する場合には、パルプ繊維を微細化してから測定する。
(セルロースを含む繊維原料)
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料から製造される。
セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。
セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、キチン、キトサンなどの直鎖型の含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。
-リンオキソ酸基導入工程-
リンオキソ酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リンオキソ酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)を、セルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リンオキソ酸基導入繊維が得られることとなる。
本実施形態に係るリン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。
化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、とくに乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、とくに水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾や濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。
繊維原料に対する化合物Aの添加量は、とくに限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶乾質量)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖の酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。
加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リンオキソ酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。
カルボキシ基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化やフェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。
カルボン酸由来の基を有する化合物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。
繊維原料に対するカルボキシ基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシ基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、2.5mmol/g以下であることが好ましく、2.20mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてイオン性基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒によりイオン性基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理(中和処理)を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、イオン性基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。
アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程におけるイオン性基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえばイオン性基導入繊維の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。たとえば、イオン性基導入工程、酸処理工程、アルカリ処理工程および解繊処理工程をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、とくに限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、とくに限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸、カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。
酸処理における酸溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば繊維原料の絶対乾燥質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。
イオン性基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。
解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、とくに限定されないが、たとえば高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。
また、リンオキソ酸基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、たとえば水素結合性のある尿素などのリンオキソ酸基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。
本発明において、繊維状セルロースは、上述した微細繊維状セルロースに加えて、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有していてもよい。
パルプ繊維は、たとえばイオン性基および非イオン性基のうちの少なくとも1種を有していてもよい。分散媒中におけるパルプ繊維の分散性を向上させる観点からは、パルプ繊維がイオン性基を有することがより好ましい。イオン性基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。
パルプ繊維にアニオン性基を導入する方法は、微細繊維状セルロースの製造方法における、イオン性基導入工程を実施することで得られ、解繊処理工程を有しない以外は、同様の方法により製造することができる。
パルプ繊維の繊維幅および平均繊維幅は、実施例に記載の方法により測定される。
(粘度)
本発明において、繊維状セルロースの固形分濃度が0.4%(0.4質量%)に調整した分散液(スラリー)の23℃における粘度は、造粒性をより向上させる観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1.0×103mPa・s以上であり、さらに好ましくは3×103mPa・s以上、よりさらに好ましくは5.0×103mPa・s以上であり、同様の観点から、好ましくは1×105mPa・s以下、より好ましくは7×104mPa・s以下、さらに好ましくは5×104mPa・s以下、よりさらに好ましくは3.5×104mPa・s以下、よりさらに好ましくは2.5×104mPa・s以下、よりさらに好ましくは1.5×104mPa・s以下である。
上記の粘度は、繊維状セルロースの固形分濃度を0.4%に調整したスラリーを1500rpmで5分間、ディスパーサーにて撹拌した後、測定前に23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した後、B型粘度計を用いて23℃、回転数3rpmの条件で測定する。より具体的には、たとえばB型粘度計であるBLOOKFIELD社製、アナログ粘度計T-LVTを用いることができる。測定条件は、たとえば液温23℃にて、粘度計の回転数は3rpmにて測定を行い、測定開始から3分のときの粘度値を当該分散液の粘度とする。なお、上記分散液は、繊維状セルロースが完全に溶解していてもよく、分散状態であってもよい。
本発明の造粒物は、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。
本発明において使用される無機粉末としては、とくに限定されず、造粒物の使用目的に応じて、適宜選択すればよい。
造粒物を肥料用に使用する場合、無機粉末としては、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする無機粉末であることが好ましい。
リン酸を主成分とする無機粉末としては、過リン酸石灰(Ca(H2PO4)2・H2OとCaSO4との混合物)、重過リン酸石灰(Ca(H2PO4)2・H2O)、熔成リン肥、焼成リン肥(Ca5Na2(PO4)4)、リン酸アンモニウムが例示される。ここで、過リン酸石灰は、リン鉱石を硫酸と反応させ生成するリン酸一カルシウムと、硫酸カルシウム(石膏)との混合物であり、重過リン酸石灰は、リン鉱石とリン酸とを反応させ、リン酸一カルシウムを製造する。また、リン酸アンモニウムはリン鉱石と硫酸とを反応させて得られたリン酸とアンモニウムとを反応させて得られる。熔成リン肥は、リン鉱石と蛇紋岩を電気炉で加熱溶解して得られ、リン鉱石中のフッ素アパタイトを加熱により分解し、フッ素を除去することで、有機リン酸肥料としたものである。さらに、焼成リン肥は、リン鉱石を炭酸ナトリウム、リン酸と溶融しない程度の高温で焼成し、アパタイト構造を破壊し、フッ素を除去し、リン酸肥料とするものである。
カリウムを主成分とする無機粉末としては、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(K2SO4)、ケイ酸カリウム等が例示される。塩化カリウムは、鉱石(シルビナイト、カーナリタイトなど)を選鉱または再結晶などを行って得る方法、天然かん水を濃縮、分別結晶などを行って得る方法、などによって得られる。また、硫酸カリウムは、塩化カリウムに硫酸を反応させることによって得られる。ケイ酸カリウムは、フライアッシュ、水酸化カリウムおよび水酸化マグネシウムを混合、造粒し、さらに焼成することによって得られる。
また、ケイ酸を主成分とする無機粉末は、鉱さいが挙げられ、具体的には、製銑鉱さい、普通鋼鉱さい、ステンレス鉱さい、シリコマンガン鉱さい等が例示される。
マグネシウムを主成分とする無機粉末としては、ドロマイト(苦土石灰)、キーゼライト等が例示される。また、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等を使用してもよい。
マンガンを主成分とする無機粉末としては、硫酸マンガン、炭酸マンガン等が例示される。また、マンガン鉱さいを使用してもよい。
ホウ素を主成分とする無機粉末としては、ホウ砂が例示される。
なお、無機粉末は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、造粒物が肥料用である場合、造粒物は、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の三要素のうち、2以上を含む複合肥料であってもよく、マンガン、ホウ素の両方を含む微量要素複合肥料であってもよい。
造粒物が肥料用である場合、上述した無機粉末に加え、さらに、尿素等の有機粉末を含有していてもよいが、造粒性の観点から、無機粉末と有機粉末の合計に対する無機粉末の量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%であってもよい。
なお、造粒物を融雪剤用に使用する場合、上記の無機粉末に加えて、さらに、尿素や、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム等の酢酸金属塩を使用してもよい。
なお、メッシュと目開きとの関係は、JIS Z 8801-1:2006に準拠して求められ、16メッシュは目開き1mm、30メッシュは目開き300μm、50メッシュは目開き300μm、83メッシュは目開き180μmに相当する。また、500メッシュは目開き25μm、330メッシュは目開き45μm、200メッシュは目開き75μm、149メッシュは目開き100μmに相当する。
本発明の造粒物は、微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる。
無機粉末100質量部に対する微細繊維状セルロースの含有量は、造粒性および造粒物に適度な粒硬度を付与する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上、よりさらに好ましくは0.1質量部以上、よりさらに好ましくは0.15質量部以上、よりさらに好ましくは0.2質量部以上であり、バインダーの使用量を抑制する観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、よりさらに好ましくは0.5質量部以下、よりさらに好ましくは0.4質量部以下、よりさらに好ましくは0.3質量部以下である。
造粒物の粒硬度は、実施例に記載の方法により測定される。
平均粒径は、ふるい分け法により測定され、JIS Z 8801:2006に準拠した基準ふるいを使用したロータップ式自動ふるい器を使用し、目開きの小さなものから順に重ね合わせて、それぞれのふるい上に残った試料を秤量し、累積50%となる粒径を平均粒径とする。
なお、本発明により得られた造粒物に対して、ふるい分けを行うことで、微粒子や粗大粒子を除去してもよい。
これらの中でも、造粒物の粒硬度および造粒物が水中での崩壊性を有する観点から、本発明の造粒物は、肥料用、土壌改良用および融雪剤用として好適に使用される。
本発明の造粒物の製造方法(造粒方法)はとくに限定されないが、無機粉末と繊維状セルロースの水系分散液とを混合する方法であることが好ましく、たとえば、撹拌造粒、転動造粒、押出造粒等の造粒方法から適宜選択すればよい。これらの中でも、使用時に水中での崩壊性を有する造粒物とする観点、および製造コストの観点から、転動造粒が好ましい。
本発明の造粒物の製造方法は、無機粉末に、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有するものであることが好ましく、無機粉末を、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を用いて転動造粒する工程を有することがより好ましい。
ここで、使用する無機粉末および繊維状セルロースについては上述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
従って、無機粉体に付与する水系分散液の量が所望の範囲となるように、繊維状セルロースの分散液(スラリー)を適宜希釈して、無機粉体に付与することが好ましい。
繊維状セルロースの水系分散液の溶媒としては、水を主成分とするものであり、水に加えて有機溶媒を含有していてもよい。前記有機溶媒としては、解繊工程において挙げた極性有機溶媒が例示される。水系分散液の溶媒中の水の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
転動造粒法としては、公知の方法から適宜選択すればよく、ロッシェ法、ドラム法などが利用できる。また、転動造粒器としては、セメントミキサー、ドラムミキサー、パン型造粒器などが使用される。
繊維状セルロースの水系分散液の付与方法はとくに限定されず、予め無機粉末と繊維状セルロースの水系分散液をミキサーやニーダーによって混練してから造粒器に入れてもよいが、繊維状セルロースの水系分散液を無機粉末全体に均一に付与して、造粒を均一に進行させる観点から、噴霧付与など、小さな液滴で付与することが好ましい。
造粒時間はとくに限定されないが、所望の粒硬度を有する造粒物を得る観点、短時間で造粒物を製造し、製造効率を向上させる観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは4分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは10分以下である。
また、造粒物から余分な水分を除去する観点から、造粒中に加熱してもよく、また、造粒中に気体を送気してもよい。
本発明の無機粉末用造粒剤は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースを含有する。
上記繊維状セルロースおよび微細繊維状セルロースとしては、上述した繊維状セルロースおよび微細繊維状セルロースが例示され、好ましい範囲も同様である。
なお、無機粉末用造粒剤として、繊維状セルロースに加えて、他のバインダー成分を含有していてもよく、たとえば、リグニン、廃糖蜜、ベントナイト、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が例示される。
無機粉末用造粒剤の固形分中の繊維状セルロースの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
なお、無機粉末用造粒剤は、粉末状、ウェットパウダー状、液状等のいずれの性状であってもよく、使用に際にしては、水に溶解または分散させたスラリー状に調製して使用することが好ましい。
[リン酸基導入パルプ繊維(リン酸化パルプ)の作製]
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量245g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700mL)を使用した。この原料パルプに対してリンオキソ酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で250秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸基導入パルプ繊維(リン酸化パルプ)を得た。
次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対して中和処理を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、中和処理が施されたリン酸化パルプを得た。
リン酸化パルプに対しFT-IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った結果、1,230cm-1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。リン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。また、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(第1解離酸量)は、1.45mmol/gであった。なお、総解離酸量は、2.45mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は30μm程度であった。
[リン酸基導入微細繊維状セルロース(リン酸化CNF)の作製]
上記製造例1にて得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理し、リン酸基導入微細繊維状セルロース(リン酸化CNF)分散液(分散液(2))を得た。X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。また、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(第1解離酸量)は、1.45mmol/gであった。後述する測定方法で測定される繊維幅は3~5nmであった。
[亜リン酸基導入微細繊維状セルロース(亜リン酸化CNF)の作製]
リン酸二水素アンモニウムの代わりに亜リン酸(ホスホン酸)33質量部を用いた以外は、[製造例1]と同様に操作を行い、亜リン酸基が導入されたパルプ繊維(亜リン酸化パルプ)を得た。
得られた亜リン酸化パルプに対しFT-IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1,210cm-1付近に亜リン酸基の互変異性体であるホスホン酸基のP=Oに基づく吸収が観察され、パルプに亜リン酸基(ホスホン酸基)が付加されていることが確認された。また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。
[カルボキシ基導入微細繊維状セルロース(TEMPO酸化CNF)の作製]
原料パルプとして、王子製紙(株)製の針葉樹クラフトパルプ(未乾燥)を使用した。この原料パルプに対してアルカリTEMPO酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)と、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)1.6質量部と、臭化ナトリウム10質量部を、水10,000質量部に分散させた。次いで、13質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して3.8mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10以上10.5以下に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。上記TEMPO酸化処理により、パルプ繊維にカルボキシ基が導入された。
[未変性パルプ繊維の作製]
針葉樹クラフトパルプを離解して、未変性パルプ繊維を得た。未変性パルプ繊維にイオン交換水を加え、濃度が2質量%となるように希釈し、分散液(5)とした。後述する測定方法で測定される繊維幅は30μm程度であった。
[未変性微細繊維状セルロース(未変性CNF)の作製]
上記[製造例5]で得られた未変性パルプ繊維にイオン交換水を加え、濃度が2質量%となるように希釈した後、リファイナー処理に供してCSFが50mL以下になるまで叩解(プレ解繊)した。
リン酸基導入パルプおよび未変性パルプ繊維の繊維幅は、カヤーニ繊維長測定器(カヤーニオートメーション(株)製、FS-200形)を用いて測定した。
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL-2000EX)により観察した。
微細繊維状セルロースのリンオキソ酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ(株)、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5秒に10μLずつ加えながら、スラリーが示すpHの値の変化を計測することにより行った。なお、滴定開始の15分前から窒素ガスをスラリーに吹き込みながら滴定を行った。この中和滴定では、アルカリを加えた量に対して測定したpHをプロットした曲線において、増分(pHのアルカリ滴下量に対する微分値)が極大となる点が二つ観測される。これらのうち、アルカリを加えはじめて先に得られる増分の極大点を第1終点と呼び、次に得られる増分の極大点を第2終点と呼ぶ(図1)。滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の第1解離酸量と等しくなる。また、滴定開始から第2終点までに必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の総解離酸量と等しくなる。なお、滴定開始から第1終点までに必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除した値をリン酸基量(mmol/g)とした。
リンオキソ酸化パルプについては、リンオキソ酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製し、このスラリーを、湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて2回処理して得られた分散液に対して、上述した方法と同様にアルカリを用いた滴定を行った。
微細繊維状セルロースおよびカルボキシ基導入パルプ繊維のカルボキシ基量は、イオン交換樹脂による処理後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を30秒に1回、50μLずつ加えた以外は[リンオキソ酸基量の測定]と同様に測定した。カルボキシ基量(mmol/g)は、計測結果のうち図2に示す第1領域に相当する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して算出した。
原料無機粉末として、王子木材緑化(株)製の石灰粉末(以下、単に「石灰粉末」ともいう。)を使用した。石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(2)を固形分で0.05質量部添加し、セメントミキサーで5分回転して造粒した。なお、分散液(2)は、石灰粉末100質量部に対する添加量が10質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。造粒物を篩い分けし、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(2)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(2)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(2)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例1]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(3)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(3)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(3)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(3)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例5]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(4)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(4)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(4)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(4)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例9]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(6)を固形分で0.05質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(6)の添加量を固形分で0.1質量部とした以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(6)の添加量を固形分で0.2質量部とした以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
分散液(6)の添加量を固形分で0.4質量部とし、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は、[実施例13]と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(1)を固形分で0.32質量部、分散液(2)を固形分で0.08質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。なお、分散液(1)および分散液(2)は、石灰粉末100質量部に対する合計の添加量が20質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとして分散液(5)を固形分で0.32質量部、分散液(6)を固形分で0.08質量部添加した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。なお、分散液(5)および分散液(6)は、石灰粉末100質量部に対する合計の添加量が20質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。
石灰粉末100質量部に、バインダーとして分散液(5)を固形分で0.4質量部添加し、石灰粉末100質量部に対する添加量が20質量部となるようにイオン交換水で希釈した以外は実施例1と同様にして、粒径1~4mmの造粒物を得た。
石灰粉末100質量部に対して、バインダーとしてパルプ廃液(黒液)を固形分で1質量部添加し、セメントミキサーで5分回転して造粒した。パルプ廃液は、石灰粉末100質量部に対する添加量が10質量部となるように適宜イオン交換水で希釈して使用した。造粒物を篩い分けし、粒径1~4mmの造粒物を得た。
JIS Z8801-1:2006に準拠したメッシュを用いて篩い分けしたところ、100メッシュを50質量%透過した。
粒径1~4mmの造粒物10粒の硬度を木屋式硬度計にて測定し、その平均値とした。
造粒物20粒を2000μmのふるい上に並べて、適当な大きさの容器中に置き、造粒物が水に十分浸るまで水を注いだ。1夜静置後、ふるいを取り出してふるい上に残存する未崩壊粒を数え、崩壊率が8割以上となった場合を崩壊性ありとした。
実施例でバインダーとして使用した繊維状セルロースは、全てpHが9以下であり、臭気もなかった。また、得られた造粒物の粒硬度は500g以上で、強度の高い造粒物が得られた。さらに、水中での崩壊性もあった。一方、比較例1はバインダーのpHおよび臭気は良好で崩壊性もあったが、粒硬度が低かった。また、比較例2は粒硬度および崩壊性は良好だったが、バインダーのpHは12以上で独特の臭気があった。また、実施例と比較すると、使用するバインダーの量も多かった。
従って、本発明では、pHや臭気の問題なく、バインダーの使用量が少なくても、粒硬度と水中での崩壊性に優れた造粒物が得られることが示された。
Claims (7)
- 繊維幅が2nm以上1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースと、無機粉末とを造粒してなる、造粒物であって、
前記造粒物が、肥料用、土壌改良剤用、融雪剤用であり、
前記無機粉末100質量部に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が0.01質量部以上1質量部以下であり、
前記繊維状セルロースの含有量を100質量部としたとき、繊維状セルロース以外のバインダーの含有量が、20質量部以下であり、
前記造粒物の平均粒径が1mm以上10mm以下である、
造粒物。 - 前記繊維状セルロースが、繊維幅が1,000nmを超えるパルプ繊維を含有する、請求項1に記載の造粒物。
- 前記微細繊維状セルロースが、アニオン性基を含有する、請求項1または2に記載の造粒物。
- 前記繊維状セルロース中の前記微細繊維状セルロースの含有量が10質量%以上100質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の造粒物。
- 前記無機粉末が、窒素、リン酸、カリウム、石灰、ケイ酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素よりなる群から選択される少なくとも1つを主成分とする、請求項1~4のいずれかに記載の造粒物。
- 前記無機粉末の粒度が16メッシュ以上である、請求項1~5のいずれかに記載の造粒物。
- 無機粉末に、繊維幅が2nm以上1,000nm以下の微細繊維状セルロースを含有する繊維状セルロースの水系分散液を混合して造粒する工程を有する、請求項1~6のいずれかに記載の造粒物の製造方法。
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