以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
本明細書において、「車両走行中」とは、例えば後述する車速センサの検出値(あるいは出力値)が0を越えたときから、車速センサの検出値が0となるまでの間である。「車両停止時」とは、例えば車速センサの検出値が0となった後、後述する傾斜センサ又は加速度センサの検出値が安定したときである。「発進直後」とは、例えば車速センサの検出値が0を超えたときからの所定期間である。「発進直前」とは、例えば車速センサの検出値が0を超えたときから所定時間前の時間である。「車両停止中」とは、例えば傾斜センサ又は加速度センサの検出値が安定したときから車速センサの検出値が0を越えたときである。この「安定したとき」は、傾斜センサ又は加速度センサの出力値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサの検出値が0になってから所定時間経過後(例えば1〜2秒後)としてもよい。傾斜センサの出力値の「安定状態」とは、傾斜センサの出力値の単位時間あたりの変化量が所定量以下の状態であり、「不安定状態」とは、当該変化量が所定量を超える状態である。「車両300が停車している」とは、車両300が「車両停止時」あるいは「車両停止中」の状態にあることを意味する。前記「車両走行中」、「車両停止時」、「発進直後」、「発進直前」、「車両停止中」、「安定したとき」、「安定状態」、「不安定状態」及び「所定量」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。右側の前照灯ユニット210R及び左側の前照灯ユニット210Lは実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、車両後方側に着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成される。灯室216には車両用灯具としての灯具ユニット10が収納される。
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成される。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合する。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定される。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定される。ユニットブラケット224には、レベリングアクチュエータ226が接続される。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成される。灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M,N方向に伸縮することで後傾姿勢、前傾姿勢となり、これにより光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整ができる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、及び投影レンズ20を備える。光源14は、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。リフレクタ16は、少なくとも一部が楕円球面状であり、光源14から放射された光を反射する。光源14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒部材であり、切欠部と複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部又はシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。投影レンズ20は、平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、図2では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108及び傾斜センサ110を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、傾斜センサ110は、レベリングECU100の外に設けられてもよい。レベリングECU100には、車両制御ECU302やライトスイッチ304が接続される。車両制御ECU302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、傾斜センサ110の出力値を示す信号を受信する。
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続される。これらのセンサから出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU100の受信部102によって受信される。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、傾斜センサ110の出力値を用いて、灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)を調節するオートレベリング制御を実行する。制御部104は、角度演算部1041、調節指示部1042、RAM1043、終了信号生成部1044、異常検知部1045、及びバッファ量変更部1046を有する。
角度演算部1041は、傾斜センサ110出力値とRAM1043に保存している情報を用いて車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部1042は、角度演算部1041で生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸角度θoの調節を指示する調節信号を生成する。制御部104は、調節指示部1042で生成した調節信号を送信部106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動し、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。終了信号生成部1044は、電源306からの電力供給が停止する際に、レベリングECU100の動作が正常に終了することを示す終了信号を生成する。異常検知部1045は、レベリングECU100が異常状態に陥ったこと、及び異常状態から復帰したことを検知する。バッファ量変更部1046は、後述する車両姿勢角度θvの推定処理において、直線又はベクトルの一回の導出に用いる傾斜センサ110の出力値の数を周期的に増減させる。制御部104が有する各部の動作については、後に詳細に説明する。
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。電源306からレベリングECU100への電力供給は、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンのときに実施され、イグニッションスイッチがオフのときに停止される。
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、傾斜センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、傾斜センサ110の出力値から車両300のピッチ方向の傾斜角度又はその変化を導出し、光軸角度θoを車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射光の到達距離を最適に調節することができる。
本実施の形態において、傾斜センサ110は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。傾斜センサ110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。このため、傾斜センサ110は、図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、傾斜センサ110は、重力加速度ベクトルGを検出することができる。傾斜センサ110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。
傾斜センサ110は車両300に対して任意の姿勢で取り付けられるため、傾斜センサ110が車両300に搭載された状態における傾斜センサ110のX軸、Y軸、Z軸(センサ側の軸)は、車両300の姿勢を決める車両300の前後軸、左右軸及び上下軸(車両側の軸)と必ずしも一致しない。このため、制御部104は、傾斜センサ110から出力される3軸の成分、すなわちセンサ座標系の成分を、車両300の3軸の成分、すなわち車両座標系の成分に変換する必要がある。傾斜センサ110の軸成分を車両300の軸成分に変換して車両300の傾斜角度を算出するためには、車両300に取り付けられた状態の傾斜センサ110の軸と車両300の軸と路面角度との位置関係を示す基準軸情報が必要である。そこで、制御部104は、例えば以下のようにして基準軸情報を生成する。
まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に対して平行になるよう設計された路面(以下では適宜、この路面を基準路面という)に置かれ、第1基準状態とされる。第1基準状態では、車両300は運転席に1名乗車した状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、初期化信号が送信される。制御部104は、初期化信号を受けると所定の初期化処理を実行する。初期化処理では、初期エイミング調整が実施され、灯具ユニット10の光軸Oが初期角度に合わせられる。また、制御部104は、傾斜センサ110の座標系と車両300の座標系と車両300が位置する基準路面(言い換えれば水平面)との位置関係を対応付ける。
すなわち、制御部104は、第1基準状態における傾斜センサ110の出力値を、第1基準ベクトルS1=(X1,Y1,Z1)として、制御部104内のRAM1043あるいはメモリ108に記録する。メモリ108は、不揮発性メモリである。これにより、傾斜センサ側の軸と、基準路面との位置関係が対応付けられる。次に、車両300は、ピッチ角度のみが第1状態と異なる第2状態とされる。例えば、第1状態にある車両300の前部又は後部に荷重が掛けることで、車両300を第2状態とすることができる。制御部104は、車両300が第2状態にあるときの傾斜センサ110の出力値を第2基準ベクトルS2=(X2,Y2,Z2)としてRAM1043あるいはメモリ108に記録する。
第1基準ベクトルS1を取得することで、傾斜センサ110のZ軸と車両300の上下軸とのずれを把握することができる。また、第1基準ベクトルS1に対する第2基準ベクトルS2の成分の変化から、車両300の前後、左右軸と傾斜センサ110のX、Y軸のずれを把握することができる。これにより、傾斜センサ側の軸と車両側の軸の位置関係が対応付けられ、その結果、車両側の軸と基準路面の位置関係が対応付けられる。制御部104は、基準軸情報として、傾斜センサ110の出力値における各軸成分の数値(基準路面における数値を含む)を車両300の各軸成分の数値と対応付けた変換テーブルを、メモリ108に記録する。
傾斜センサ110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部104の角度演算部1041が変換テーブルを用いて車両300の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換する。したがって、傾斜センサ110の出力値からは、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の加速度を検出可能である。
車両停止中の傾斜センサ110の出力値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、傾斜センサ110の出力値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θrと、路面に対する車両300の傾斜角度である車両姿勢角度θvとを含む、水平面に対する車両300の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
オートレベリング制御は、車両300のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両300の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが維持されることが望まれる。これを実現するためには、合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
これに対し、制御部104は、オートレベリングの基本制御として、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定し、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定して、合計角度θから車両姿勢角度θvを導出する。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。また、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
例えば、上述した初期化処理において、角度演算部1041は、生成された基準軸情報を用いて、第1基準状態における傾斜センサ110の出力値を車両300の3軸成分に変換し、これらの値を路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてRAM1043に記憶して保持する。また、必要に応じてこれらの基準値をメモリ108に書き込む。そして、制御部104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、灯具ユニット10の光軸角度θoの調節信号を生成する。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している車両姿勢角度θvの基準値に含めて得られる車両姿勢角度θvを、新たな基準値として保持する。また、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、調節信号の生成又は出力を回避するか光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力する。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している路面角度θrの基準値に含めて得られる路面角度θrを、新たな基準値として保持する。
例えば、車両300が実際に使用される状況において、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避する。制御部104は、調節指示部1042が調節信号の生成又は出力を回避するか、光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力することで、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避することができる。そして、角度演算部1041が、車両停止時に傾斜センサ110の出力値から、現在(車両停止時)の合計角度θを算出する。次いで、角度演算部1041は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して、路面角度θrを得る(θr=θ−θv基準値)。そして、得られた路面角度θrを、新たな路面角度θrの基準値として、RAM1043に保持している路面角度θrの基準値を更新する。これにより、路面角度θrの変化量と推定される車両走行中の合計角度θの変化量が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部1041は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分Δθ1(合計角度θの変化量)を算出する。そして、路面角度θrの基準値に差分Δθ1を算入して新たな路面角度θrの基準値を算出し(新θr基準値=θr基準値+Δθ1)、路面角度θrの基準値を更新する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。角度演算部1041は、次のようにして差分Δθ1を算出することができる。すなわち、角度演算部1041は、車両300の発進直後に、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値として保持する。そして、角度演算部1041は、車両停止時に、現在(車両停止時)の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を算出する。
また、制御部104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoを調節するようレベリングアクチュエータ226を駆動させる。具体的には、車両停止中、角度演算部1041は傾斜センサ110の出力値から現在の合計角度θを所定のタイミングで繰り返し算出する。算出された合計角度θはRAM1043に保持される。そして、角度演算部1041は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る(θv=θ−θr基準値)。また、得られた車両姿勢角度θvを新たな車両姿勢角度θvの基準値として、RAM1043に保持している車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化量と推定される車両停止中の合計角度θの変化量が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部1041は、車両停止中に現在の合計角度θと保持している合計角度θの基準値との差分Δθ2(合計角度θの変化量)を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出時に得られた合計角度θ、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出時に得られた合計角度θである。そして、角度演算部1041は、車両姿勢角度θvの基準値に差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化と推定される車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
そして、調節指示部1042は、算出された車両姿勢角度θvあるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。例えば、調節指示部1042は、予めメモリ108に記録されている車両姿勢角度θvの値と光軸角度θoの値とを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、調節信号を生成する。調節信号は、送信部106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。
(電源306からの電力供給が停止する際の制御)
制御部104は、電源306から供給される電力で駆動する。このため、電源306からの電力供給が停止すると、RAM1043に記憶されている路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値が消えてしまう。そこで、イグニッションスイッチがオフ状態に移行した場合、制御部104は、RAM1043により保持している路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値を、不揮発性メモリであるメモリ108に書き込む。
より詳細には、イグニッションスイッチがオフ状態に移行すると、角度演算部1041は、RAM1043に保持している路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値をメモリ108に書き込む。これにより、レベリングECU100は、イグニッションスイッチがオフになって電源306からの給電が停止されても、車両姿勢角度θv及び路面角度θrの基準値を保持することができる。また、終了信号生成部1044は、路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値がメモリ108に書き込まれると、レベリングECU100の動作が正常に終了することを示す終了信号を生成し、メモリ108に書き込む。
イグニッションスイッチがオフになってから、路面角度θr及び車両姿勢角度θvの基準値の書き込み、及び終了信号の書き込みが終了するまでの間に必要とされる電力は、例えばイグニッションスイッチがオフ状態になってから、電源306からの電力供給が停止するまでの間に電源306から供給される電力と、電源306の周辺やレベリングECU100に設けられたコンデンサ(キャパシタ)等の蓄電素子(図示せず)から供給される電力とで賄うことができる。
(電源306からの電力供給が開始される際の制御)
イグニッションスイッチがオフの状態では、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀である。このため、イグニッションスイッチのオフからオンまでの間、すなわち電源306からの給電が停止している間の合計角度θの変化を、車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。そこで、角度演算部1041は、電源306からの電力供給が開始されると、起動後の最初の制御として、現在の合計角度θから、メモリ108から読み出した路面角度θrの基準値を減算して、現在の車両姿勢角度θvを得る。そして、得られた車両姿勢角度θvを基準値としてRAM1043に保持する。また、得られた車両姿勢角度θvを用いて調節信号を生成する。これにより、電源306からの電力供給が停止している間の車両姿勢角度θvの変化を基準値に取り込むことができ、また光軸角度θoを適切な位置に調節できる。このため、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
(レベリングECUが異常状態に陥った際の光軸制御)
上述したように、オートレベリングの基本制御では合計角度θから車両姿勢角度θvあるいは路面角度θrの基準値が減算されて、基準値が繰り返し更新される。あるいは合計角度θの変化の差分Δθ1が路面角度θrの基準値に、差分Δθ2が車両姿勢角度θvの基準値にそれぞれ算入されて、基準値が繰り返し更新される。これにより、路面角度θr及び車両姿勢角度θvの変化がそれぞれの基準値に取り込まれる。
このため、レベリングECU100に異常が発生すると、異常状態に陥っている間は路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値が更新されないため、異常状態に陥っている間の路面角度θrの変化量と車両姿勢角度θvの変化量とを基準値に取り込むことができない。そして、レベリングECU100が異常状態から復帰した場合、その後再開されるオートレベリング制御では、異常状態に陥っている間の路面角度θr及び車両姿勢角度θvの変化が取り込まれていない基準値を用いて光軸角度θoの調節がなされる。このため、レベリングECU100が異常状態から復帰しても、その後、高精度にオートレベリング制御を実行することが困難になる。
そこで、レベリングECU100は、異常状態に陥った場合に以下の制御を実行する。まず、レベリングECU100の異常状態としては、レベリングECU100への電力供給が維持されている状態で、傾斜センサ110や車速センサ312等の各種センサの出力値といった、オートレベリング制御に必要とされる情報が受信部102に入力されない状態を挙げることができる。レベリングECU100がこの異常状態に陥ると、異常検知部1045は、レベリングECU100が異常状態に陥ったことを検知し、レベリングECU100が異常状態に陥ったことを示す異常発生信号を生成して調節指示部1042に送信する。異常検知部1045は、例えば車速センサ312や傾斜センサ110からの出力値の入力が所定時間ない場合に、レベリングECU100が異常状態に陥ったことを検知することができる。各種センサの出力値の入力が滞る原因としては、各種センサ自体の故障や、レベリングECU100と各種センサとの間における断線等が挙げられる。異常検知部1045は、各種センサから故障信号を受信することによっても、レベリングECU100が異常状態に陥ったことを検知することができる。
調節指示部1042は、異常検知部1045から異常発生信号を受信すると、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定する。基準角度としては、例えば、初期角度あるいは安全角度を挙げることができる。初期角度とは、上述した初期化処理で車両300がとる姿勢(第1基準状態での姿勢)において設定される角度、すなわちθv=0°に対応する光軸角度である。安全角度は、他者に与えるグレアが軽減される光軸角度である。安全角度としては、水平よりも下向き、例えば最も下向きの光軸角度を挙げることができる。基準角度をどのような角度に設定するかは、他車両の運転者に与えるグレアの抑制と、自車両の運転者の視認性向上との観点から適宜設定することができる。例えば、グレアの抑制と視認性向上の両方を考慮した場合、基準角度として初期角度が好適である。また、グレアの抑制を優先する場合、基準角度として安全角度が好適である。
その後、レベリングECU100が異常状態から復帰すると、異常検知部1045は、レベリングECU100が異常状態から復帰したことを検知し、レベリングECU100が異常状態から復帰したことを示す異常復帰信号を生成して角度演算部1041及び調節指示部1042に送信する。異常検知部1045は例えば、異常発生信号を生成した後、各種センサからの出力値の入力を検知した場合に、レベリングECU100が異常状態から復帰したことを検知することができる。
角度演算部1041は、異常検知部1045から異常復帰信号を受信すると、車両走行中に得られる傾斜センサ110の出力値に基づいて現在の車両姿勢角度θvを推定する。そして、調節指示部1042は、光軸角度θoの固定状態を解除するとともに推定した車両姿勢角度θvを用いて調節信号を生成する。現在の車両姿勢角度θvが推定されるまでの間は、光軸角度θoの固定状態を維持する。
また、角度演算部1041は、推定した車両姿勢角度θvを新たな車両姿勢角度θvの基準値としてRAM1043に保持する。これにより、レベリングECU100が異常状態に陥っている間の車両姿勢角度θvの変化を基準値に取り込むことができる。また、その後の車両停止時に行われる路面角度θrの基準値の更新により、レベリングECU100が異常状態に陥っている間の路面角度θrの変化を基準値に取り込むことができる。
以下に、車両走行中に得られる傾斜センサ110の出力値に基づいた車両姿勢角度θvの推定処理について説明する。図4(A)及び図4(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図4(A)は、車両姿勢角度θvが0°の状態を示し、図4(B)は、車両姿勢角度θvが0°から変化した状態を示している。また、図4(A)及び図4(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速若しくは後進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示すグラフである。
車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図4(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は車両300の前後軸L(あるいは傾斜センサ110のX軸)は路面に対して平行となる。このため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸Lに平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に、傾斜センサ110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸Lに対して平行な直線となる。
一方、図4(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、車両300の前後軸Lは路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸Lに対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸Lに対して傾いた直線となる。
車両前後方向の加速度を第1軸(X軸)に設定し、車両上下方向の加速度を第2軸(Z軸)に設定した座標に、車両走行中に得られる傾斜センサ110の出力値をプロットすると、図5に示す結果を得ることができる。図5において、点tA1〜tAnは図4(A)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。点tB1〜tBnは図4(B)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。この出力値のプロットには、傾斜センサ110の出力値から得られる車両座標系の加速度値をプロットすることが含まれる。
このようにプロットした少なくとも2点から直線又はベクトルを導出し、その傾きを得ることで車両姿勢角度θvを推定することができる。例えば、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法や移動平均法等を用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを算出する。車両姿勢角度θvが0°の場合、傾斜センサ110の出力値からx軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、傾斜センサ110の出力値から車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度(図5におけるθAB)、あるいは直線近似式Bの傾きそのものが、車両姿勢角度θvとなる。よって、車両走行中の傾斜センサ110の出力値をプロットして得られる直線又はベクトルの傾きから、車両姿勢角度θvを推定することができる。
そこで角度演算部1041は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両走行中に得られる傾斜センサ110の出力値をプロットする。そして、プロットした複数点から得られる直線又はベクトルの傾きを用いて車両姿勢角度θvを推定し、推定した車両姿勢角度θvに基づいて車両姿勢角度θvの基準値を補正する。あるいは、推定した車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持する。また、調節指示部1042は、推定された車両姿勢角度θvに基づいて光軸角度θoを調節する。以降は、補正あるいは更新した車両姿勢角度θvを車両姿勢角度θvの基準値とし、また現在の合計角度θとこの車両姿勢角度θvの基準値とから得られる路面角度θrを路面角度θrの基準値として、上述した基本制御が再開される。
車両姿勢角度θvの推定処理において、角度演算部1041は、車速センサ312の出力値に基づいて車両300が走行中であることを検知すると、車両姿勢角度θvの推定を開始する。傾斜センサ110の出力値は、所定の時間間隔で繰り返し制御部104に送信される。制御部104に送信された傾斜センサ110の出力値は、RAM1043あるいはメモリ108に保持される。また、バッファ量変更部1046は、保持された傾斜センサ110の出力値の数をカウントする。そして、出力値の数が直線又はベクトルの一回の導出に必要とされる予め定められた数、すなわちバッファ量に達したとき、出力値の数がバッファ量に達したことを示す信号を角度演算部1041に送信する。
角度演算部1041は、バッファ量変更部1046から信号を受信すると、上述した座標に傾斜センサ110の出力値をプロットして、直線又はベクトルを導出する。なお、傾斜センサ110の出力値を受信する毎に角度演算部1041が座標に出力値をプロットし、バッファ量変更部1046が傾斜センサ110の出力値の数をカウントして上述した信号を角度演算部1041に送信し、角度演算部1041がこの信号を受信してから直線又はベクトルを導出してもよい。
また、バッファ量変更部1046は、直線あるいはベクトルの導出に用いる傾斜センサ110の出力値の数、すなわちバッファ量を周期的に増減させる。以下に、バッファ量の変化と推定される車両姿勢角度θvとの関係について説明する。図6は、バッファ量が一定である場合の車両姿勢角度θvの推移を模式的に示す図である。図7は、バッファ量を周期的に増減させた場合の車両姿勢角度θvの推移を模式的に示す図である。図6及び図7において、上段はバッファ量の推移を示し、下段は車両姿勢角度θvの推移を示す。また、下段の破線は実際の車両姿勢角度θvを示し、実線は推定される車両姿勢角度θvを示す。
図6に示すように、バッファ量を一定とした場合、時間b〜c、c〜d及びe〜fの期間(特に、これらの期間の前半)に見られるように、実際の車両姿勢角度θvが変化した直後において、推定される車両姿勢角度θvが実際の車両姿勢角度θvに対して大きく乖離することがある。すなわち、上述した期間では、実際の車両姿勢角度θvの変化に対して推定される車両姿勢角度θvの追従性が低下することがある。また、タイミングa〜b、d〜e及びf以降の期間に見られるように、推定される車両姿勢角度θvに振幅が発生することがある。
これに対し、図7に示すように、バッファ量を周期的に増減させた場合、バッファ量が相対的に小さいときには、実際の車両姿勢角度θvに対する推定される車両姿勢角度θvの追従性を高めることができる。一方、バッファ量が相対的に大きい場合には、車両姿勢角度θvの推定精度を高めることができる。これにより、実際の車両姿勢角度θvに対する推定される車両姿勢角度θvの追従性と、車両姿勢角度θvの推定精度の向上との両立を図ることができる。よって、オートレベリング制御の高精度化を図ることができる。図7では、バッファ量を連続的に増加させ、バッファ量が所定の上限値に達すると下限値に低減させる変化を、周期的に実行する場合を示している。なお、バッファ量の増加は、連続的な増加に限定されず、段階的な増加であってもよい。
バッファ量変更部1046は、例えば、一回の走行を一周期としてバッファ量を変化させる。すなわち、車両300が走行を開始してから停止するまでを一周期とする。そして、バッファ量変更部1046は、現在の周期が終了してから次の周期が開始されるまでの間に、傾斜センサ110の出力値に所定値以上の大きな変化があった場合、あるいは車両300のドアの開閉センサ(図示せず)から開閉を示す信号を受信した場合に、傾斜センサ110の出力値に所定値以上の変化がなかった場合や開閉センサから開閉を示す信号を受信しなかった場合に比べて、次回の周期の開始時のバッファ量、すなわち次回の周期におけるバッファ量の下限値を小さくする(時間g,h)。これにより、車両姿勢角度θvの変化が大きい場合に、実際の車両姿勢角度θvに対する推定される車両姿勢角度θvの追従性が低下することを抑制することができる。なお、ドアの開閉があった場合は、車両300への人の乗り降りや荷物の上げ下ろしがあった可能性が高い。このため、ドアの開閉を検知することで、車両姿勢角度θvが大きく変化することを予測することができる。
角度演算部1041は、バッファ量が最大であるときに導出された直線から得られる車両姿勢角度θvを、基準値として保持する(図7において黒丸で示すタイミング)。これにより、推定精度の高い車両姿勢角度θvを基準値とすることができるため、オートレベリングの精度を高めることができる。
なお、プロットから直線又はベクトルを導出し、この傾きに基づいて車両姿勢角度θvを算出する制御を基本とするオートレベリング制御において、上述したバッファ量を周期的に変化させる制御を実行してもよい。
レベリングECU100の他の異常状態としては、イグニッションスイッチがオン状態であるにもかかわらず、レベリングECU100の駆動が停止した状態を挙げることができる。このような状態としては、電源306とレベリングECU100との間の給電線の接続不良等により、レベリングECU100への電力供給が停止してしまった場合を挙げることができる。レベリングECU100がこの異常状態に陥った後に、給電線の接続不良の解消によってレベリングECU100が再び駆動すると、異常検知部1045は、レベリングECU100が異常状態に陥ったこと、及び異常状態から復帰したことを検知する。そして、異常復帰信号を角度演算部1041及び調節指示部1042に送信する。
給電線の接続不良等によりレベリングECU100への電力供給が停止してしまった場合は、終了信号生成部1044により終了信号が生成されることなくレベリングECU100の駆動が停止する。このため、異常検知部1045は、メモリ108に終了信号が書き込まれていないことに基づいて、レベリングECU100が異常状態に陥り、その後復帰したことを検知することができる。
また、イグニッションスイッチがオン状態であるにもかかわらず、レベリングECU100の駆動が停止した状態としては、例えば、イグニッションスイッチのオフにより正常に終了した状態にあるレベリングECU100が、その後、イグニッションスイッチがオン状態に移行したにもかかわらず正常に起動しなかった場合を挙げることができる。レベリングECU100がこの異常状態に陥った後に、再度のイグニッションスイッチのオフ、オンの切り替えがなされてレベリングECU100が正常起動すると、異常検知部1045は、レベリングECU100が異常状態に陥ったこと、及び異常状態から復帰したことを検知する。そして、異常復帰信号を角度演算部1041及び調節指示部1042に送信する。
異常検知部1045は、レベリングECU100の起動時に角度演算部1041により算出される車両姿勢角度θvが、車両300の設計上取り得る車両姿勢角度θvの最大値を超えるか否かを判断する。そして、この車両姿勢角度θvが当該最大値を超える場合に、レベリングECU100が異常状態に陥り、その後復帰したと判断することができる。
レベリングECU100が異常状態にある間は、オートレベリング制御は実行されないため、光軸角度θoは必然的に現在角度に固定される。異常復帰信号を受信した角度演算部1041及び調節指示部1042は、上述した車両姿勢角度θvの推定処理を実行する。また、バッファ量変更部1046は、上述したバッファ量の変更処理を実行する。
図8は、実施の形態1に係る車両用灯具の制御装置により実行されるオートレベリング制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御の実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に制御部104により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
制御部104は、レベリングECU100に異常が発生しているか判断する(S101)。レベリングECU100に異常が発生していない場合(S101のN)、制御部104は、車両300が停車しているか判断する(S102)。車両300が停止していない場合、すなわち走行中である場合(S102のN)、制御部104は本ルーチンを終了する。車両300が停車している場合(S102のY)、制御部104は、前回のルーチンのステップS102における停車判定において車両300が走行中(S102のN)であったか判断する(S103)。
前回の判定が走行中であった場合(S103のY)、この場合は「車両停止時」であることを意味し、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S104)。そして、得られた路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値として更新し(S105)、本ルーチンを終了する。
前回の判定が走行中でなかった場合(S103のN)、この場合は「車両停止中」であることを意味し、制御部104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを算出する(S106)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新して(S107)、本ルーチンを終了する。
レベリングECU100に異常が発生している場合(S101のY)、制御部104は、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定する(S108)。そして、レベリングECU100が異常状態から復帰したか判断する(S109)。なお、レベリングECU100に発生した異常が、上述したレベリングECU100の駆動が停止する異常であった場合、ステップS101における異常発生の判定と、ステップS109における異常復帰の判定とが同時になされることになる。
レベリングECU100が異常状態から復帰していない場合(S109のN)、制御部104は、光軸角度θoの固定を継続する(S108)。レベリングECU100が異常状態から復帰した場合(S109のY)、制御部104は、車両走行中の傾斜センサ110の出力値を用いた車両姿勢角度θvの推定処理を実行する(S110)。そして、推定された車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また推定された車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新し(S111)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100では、制御部104が基本制御として、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸角度θoの調節信号を生成するとともに、合計角度θの変化量を車両姿勢角度θvの基準値に含めて得られる車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持し、車両走行中の合計角度θの変化に対して、調節信号の生成又は出力を回避するか光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力するとともに、合計角度θの変化量を路面角度θrの基準値に含めて得られる路面角度θrを新たな基準値として保持する制御を実行する。
また、制御部104は、異常検知部1045によってレベリングECU100が異常状態に陥ったことが検知された場合、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定する。また、制御部104は、異常状態から復帰したことが検知された後、車両走行中に得られる傾斜センサ110の出力値に基づいて現在の車両姿勢角度θvを推定する。そして、光軸角度θoの固定状態を解除するとともに推定した車両姿勢角度θvを用いて調節信号を生成する。これにより、レベリングECU100が異常状態に陥っている期間中更新されなかったことで精度が低下した車両姿勢角度θv及び路面角度θrの両基準値に基づいた光軸調節を回避することができる。よって、他車両の運転者がグレアを受けたり、自車両の運転者の視認性が著しく低下することを抑制することができる。したがって、本実施の形態のレベリングECU100によれば、オートレベリング制御の性能を高めることができる。
また、本実施の形態では、車両姿勢角度θvの推定処理を実行するため、早期にオートレベリング制御を再開することができる。これにより、オートレベリング制御の性能をより高めることができる。
本発明は、上述した実施の形態1に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態1と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態1及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
(変形例1)
上述した実施の形態1では、レベリングECU100が異常状態から復帰した場合に、車両姿勢角度θvの推定処理が実行されるが、レベリングECU100の復帰後に以下の処理が実行されてもよい。すなわち、変形例1に係るレベリングECU100では、異常検知部1045は、レベリングECU100の異常状態からの復帰を検知しても、外部機器から現在の車両姿勢角度θvを示す信号を受信するまで、異常復帰信号の出力を待機する。そして、異常検知部1045は、外部機器から当該信号を受信すると、異常復帰信号を角度演算部1041及び調節指示部1042に送信する。調節指示部1042は、異常検知部1045から異常復帰信号を受信すると、光軸角度θoの固定状態を解除するとともに受信した車両姿勢角度θvを用いて調節信号を生成する。また、角度演算部1041は、受信した車両姿勢角度θvを、新たな基準値としてRAM1043に保持する。
外部機器としては、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などに配置される、初期化処理装置やCAN(Controller Area Network)システム等を挙げることができる。例えば、車両300が上述した基準路面に置かれている状態で初期化処理が実行されることで、制御部104は、現在の車両姿勢角度θv(θv=0°)を示す信号を受信する。なお、現在の路面角度θr(θr=0°)を示す信号を併せて受信してもよい。このような変形例1に係るレベリングECU100によっても、他車両の運転者がグレアを受けたり、自車両の運転者の視認性が著しく低下することを抑制することができる。よって、オートレベリング制御の性能を高めることができる。
なお、上述した実施の形態1及び変形例1に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度、及び路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度を含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度を導出可能な傾斜センサと、
前記車両用灯具の光軸角度の調節を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記傾斜センサの出力値を示す信号を受信する受信部と、
路面角度基準値及び車両姿勢角度基準値を保持し、車両停止中の前記合計角度の変化に対して、車両用灯具の光軸角度の調節信号を生成するとともに当該合計角度の変化量を前記車両姿勢角度基準値に含めて得られる車両姿勢角度を新たな基準値として保持し、車両走行中の前記合計角度の変化に対して、前記調節信号の生成又は出力を回避するか前記光軸角度の維持を指示する維持信号を出力するとともに当該合計角度の変化量を前記路面角度基準値に含めて得られる路面角度を新たな基準値として保持する制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記制御装置が異常状態に陥ったこと、及び前記異常状態から復帰したことを検知する異常検知部を有し、
前記異常検知部によって制御装置が異常状態に陥ったことが検知された場合、前記光軸角度を現在角度あるいは所定の基準角度に固定し、
異常状態から復帰したことが検知された後、車両走行中に得られる前記傾斜センサの出力値に基づいて現在の前記車両姿勢角度を推定し、光軸角度の固定状態を解除するとともに推定した車両姿勢角度を用いて前記調節信号を生成するか、又は外部機器から現在の車両姿勢角度を示す信号を受信し、光軸角度の固定状態を解除するとともに受信した車両姿勢角度を用いて前記調節信号を生成することを特徴とする車両用灯具システム。
[実施の形態2]
図1は、実施の形態2に係る制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。本実施の形態における前照灯ユニット210及び灯具ユニット10は、第1の実施の形態と同様の構造を有する。
図9は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、図9では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU2100及び車両制御ECU302は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図9ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU2100は、受信部2102、制御部2104、送信部2106、メモリ2108及び傾斜センサ2110を備える。レベリングECU2100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU2100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、傾斜センサ2110は、レベリングECU2100の外に設けられてもよい。レベリングECU2100には、車両制御ECU302、ライトスイッチ304及びイグニッションスイッチ308等が接続される。車両制御ECU302、ライトスイッチ304及びイグニッションスイッチ308等から出力される信号は、受信部2102によって受信される。また、受信部2102は、傾斜センサ2110の出力値を示す信号を受信する。
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314、ドアセンサ316等が接続される。ドアセンサ316は、車両300の車室ドア及び/又は荷室ドアの開閉を検知するセンサである。これらのセンサから出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU2100の受信部2102によって受信される。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU2100等に送信する。イグニッションスイッチ308は、オンオフの状態を示す信号をレベリングECU2100、車両制御ECU302及び電源306に送信する。
受信部2102が受信した信号は、制御部2104に送信される。制御部2104は、傾斜センサ2110の出力値を用いて、灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)を調節するオートレベリング制御を実行する。制御部2104は、角度演算部21041、調節指示部21042、診断指示部21043、故障判断部21044、停止検知部21045、荷重変化検知部21046及びイグニッション検知部21047を有する。
角度演算部21041は、傾斜センサ2110の出力値と、レベリングECU2100が有するRAM(図示せず)に保存している情報を用いて車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部21042は、角度演算部21041で生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸角度θoの調節を指示する調節信号を生成する。制御部2104は、調節指示部21042で生成した調節信号を送信部2106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動し、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。診断指示部21043は、傾斜センサ2110の故障診断の実行を指示する実行指示信号を、送信部2106を介して傾斜センサ2110に出力する。傾斜センサ2110の故障診断については後に詳細に説明する。
故障判断部21044は、傾斜センサ2110の故障診断において傾斜センサ2110から出力される故障診断用の出力値に基づいて、傾斜センサ2110の故障を判断する。停止検知部21045は、車両300の停止を検知する。停止検知部21045は、例えば車速センサ312の検知値が0となった後、傾斜センサ2110の出力値が安定したとき(すなわち、車両停止時)、車両300が停止したことを検知する。荷重変化検知部21046は、車両300における人の乗降あるいは荷物の積み下ろしを検知する。荷重変化検知部21046は、車速が0の状態で、傾斜センサ2110の出力値が安定状態から不安定状態に移行し、その後再び安定状態に移行した場合に、人の乗降あるいは荷物の積み下ろしがあったことを検知することができる。あるいは、荷重変化検知部21046は、ドアセンサ316からドアの開閉があったことを示す信号を受信したとき、人の乗降あるいは荷物の積み下ろしがあったことを検知することができる。イグニッション検知部21047は、例えばイグニッションスイッチ308が出力する信号に基づいて、イグニッションスイッチ308のオンオフを検知する。制御部2104が有する各部の動作については、後に詳細に説明する。
車両300には、レベリングECU2100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。電源306からレベリングECU2100への電力供給は、イグニッションスイッチ308がオンのときに実施され、イグニッションスイッチ308がオフのときに停止される。
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU2100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、傾斜センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU2100は、傾斜センサ2110の出力値から車両300のピッチ方向の傾斜角度又はその変化量を導出し、光軸角度θoを車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射光の到達距離を最適に調節することができる。
本実施の形態において、傾斜センサ2110は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。傾斜センサ2110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。このため、傾斜センサ2110は、図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、傾斜センサ2110は、重力加速度ベクトルGを検出することができる。傾斜センサ2110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。
傾斜センサ2110は車両300に対して任意の姿勢で取り付けられるため、傾斜センサ2110が車両300に搭載された状態における傾斜センサ2110のX軸、Y軸、Z軸(センサ側の軸)は、車両300の姿勢を決める車両300の前後軸、左右軸及び上下軸(車両側の軸)と必ずしも一致しない。このため、制御部2104は、傾斜センサ2110から出力される3軸の成分、すなわちセンサ座標系の成分を、車両300の3軸の成分、すなわち車両座標系の成分に変換する必要がある。傾斜センサ2110の軸成分を車両300の軸成分に変換して車両300の傾斜角度を算出するためには、車両300に取り付けられた状態の傾斜センサ2110の軸と車両300の軸と路面角度との位置関係を示す基準軸情報が必要である。そこで、制御部2104は、例えば以下のようにして基準軸情報を生成する。
まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に対して平行になるよう設計された路面(以下では適宜、この路面を基準路面という)に置かれ、第1基準状態とされる。第1基準状態では、車両300は運転席に1名乗車した状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、初期化信号が送信される。制御部2104は、初期化信号を受けると所定の初期化処理を実行する。初期化処理では、初期エイミング調整が実施され、灯具ユニット10の光軸Oが初期角度に合わせられる。また、制御部2104は、傾斜センサ2110の座標系と車両300の座標系と車両300が位置する基準路面(言い換えれば水平面)との位置関係を対応付ける。
すなわち、制御部2104は、第1基準状態における傾斜センサ2110の出力値を、第1基準ベクトルS1=(X1,Y1,Z1)として、制御部2104内のRAMあるいはメモリ2108に記録する。メモリ2108は、不揮発性メモリである。次に、車両300は、ピッチ角度のみが第1状態と異なる第2状態とされる。例えば、第1状態にある車両300の前部又は後部に荷重が掛けることで、車両300を第2状態とすることができる。制御部2104は、車両300が第2状態にあるときの傾斜センサ2110の出力値を第2基準ベクトルS2=(X2,Y2,Z2)としてRAMあるいはメモリ2108に記録する。
第1基準ベクトルS1を取得することで、傾斜センサ側の軸と基準路面との位置関係が対応付けられ、傾斜センサ2110のZ軸と車両300の上下軸とのずれを把握することができる。また、第1基準ベクトルS1に対する第2基準ベクトルS2の成分の変化から、車両300の前後、左右軸と傾斜センサ2110のX、Y軸のずれを把握することができる。これにより、傾斜センサ側の軸と車両側の軸の位置関係が対応付けられ、その結果、傾斜センサ側の軸と車両側の軸と基準路面の位置関係が対応付けられる。制御部2104は、基準軸情報として、傾斜センサ2110の出力値における各軸成分の数値(基準路面における数値を含む)を車両300の各軸成分の数値と対応付けた変換テーブルを、メモリ2108に記録する。
傾斜センサ2110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部2104の角度演算部21041が変換テーブルを用いて車両300の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換する。したがって、傾斜センサ2110の出力値からは、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の加速度を検出可能である。
車両停止中の傾斜センサ2110の出力値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、傾斜センサ2110の出力値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θr、及び路面に対する車両300の傾斜角度である車両姿勢角度θvを含む、水平面に対する車両300の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
オートレベリング制御は、車両300のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両300の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが維持されることが望まれる。これを実現するためには、合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
これに対し、制御部2104は、オートレベリング制御として、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定し、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定して、合計角度θから車両姿勢角度θvを導出する。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。また、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
例えば、上述した初期化処理において、角度演算部21041は、生成された基準軸情報を用いて、第1基準状態における傾斜センサ2110の出力値を車両300の3軸成分に変換し、これらの値を路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてRAMに記憶して保持する。また、必要に応じてこれらの基準値をメモリ2108に書き込む。そして、制御部2104は、傾斜センサ2110の出力値を用いて合計角度θを導出し、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoの調節信号を生成して出力する。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している車両姿勢角度θvの基準値に含めて得られる車両姿勢角度θvを、新たな基準値として保持する。また、制御部2104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、調節信号の生成又は出力を回避するか光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力する。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している路面角度θrの基準値に含めて得られる路面角度θrを、新たな基準値として保持する。
例えば、車両300が実際に使用される状況において、制御部2104は、車両走行中は合計角度θの変化に対してレベリングアクチュエータ226の駆動を回避する。制御部2104は、調節指示部21042が調節信号の生成又は出力を回避するか、光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力することで、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避することができる。そして、角度演算部21041が、車両停止時に傾斜センサ2110の出力値から現在(車両停止時)の合計角度θを算出する。次いで、角度演算部21041は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して、路面角度θrを得る(θr=θ−θv基準値)。そして、得られた路面角度θrを、新たな路面角度θrの基準値として、RAMに保持している路面角度θrの基準値を更新する。更新前の路面角度θrの基準値と、更新後の路面角度θrの基準値との差は、車両300の走行前後における合計角度θの変化量に相当する。これにより、路面角度θrの変化量と推定される車両走行中の合計角度θの変化量が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部21041は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分Δθ1(合計角度θの変化量)を算出する。そして、路面角度θrの基準値に差分Δθ1を算入して新たな路面角度θrの基準値を算出し(新θr基準値=θr基準値+Δθ1)、路面角度θrの基準値を更新する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。角度演算部21041は、次のようにして差分Δθ1を算出することができる。すなわち、角度演算部21041は、車両300の発進直後に、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値として保持する。そして、角度演算部21041は、車両停止時に、現在(車両停止時)の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を算出する。車両走行中、制御部2104は合計角度θを繰り返し導出してもよいし、導出しなくてもよい。
また、制御部2104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoを調節するようレベリングアクチュエータ226を駆動させる。具体的には、角度演算部21041は、車両停止中に、傾斜センサ2110の複数の出力値を用いて合計角度θを繰り返し導出する。制御部2104は、例えば、複数の出力値の平均値を合計角度θとする。算出された合計角度θはRAMに保持される。そして、角度演算部21041は、導出した合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る(θv=θ−θr基準値)。また、得られた車両姿勢角度θvを新たな車両姿勢角度θvの基準値として、RAMに保持している車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化量と推定される車両停止中の合計角度θの変化量が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部21041は、車両停止中に現在の合計角度θと保持している合計角度θの基準値との差分Δθ2(合計角度θの変化量)を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出時に得られた合計角度θ、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出時に得られた合計角度θである。そして、角度演算部21041は、車両姿勢角度θvの基準値に差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化と推定される車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
そして、調節指示部21042は、算出された車両姿勢角度θvあるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。例えば、調節指示部21042は、予めメモリ2108に記録されている車両姿勢角度θvの値と光軸角度θoの値とを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、調節信号を生成する。調節信号は、送信部2106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。
図10は、実施の形態2に係る車両用灯具の制御装置により実行されるオートレベリング制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御の実行指示がなされている状態において、イグニッションスイッチ308がオンにされた場合に制御部2104により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションスイッチ308がオフにされた場合に終了する。
制御部2104は、車両300が停車しているか判断する(S201)。車両300が停止していない場合、すなわち走行中である場合(S201のN)、制御部2104は本ルーチンを終了する。車両300が停車している場合(S201のY)、制御部2104は、前回のルーチンのステップS201における停車判定において車両300が走行中(S201のN)であったか判断する(S202)。
前回の判定が走行中であった場合(S202のY)、この場合は「車両停止時」であることを意味し、制御部2104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S203)。そして、得られた路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値として更新し(S204)、本ルーチンを終了する。
前回の判定が走行中でなかった場合(S202のN)、この場合は「車両停止中」であることを意味し、制御部2104は、合計角度θを導出するとともに、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを算出する(S205)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新して(S206)、本ルーチンを終了する。
(傾斜センサ2110の故障診断)
傾斜センサ2110は、自己の故障診断機能を有する。図11(A)及び図11(B)は、傾斜センサの故障診断を説明するための模式図である。図11(A)は、傾斜センサ2110の通常時の動作状態を示す。図11(B)は、傾斜センサ2110の故障診断時の動作状態を示す。図12は、故障診断の実行タイミングを説明するためのタイミングチャートである。上段の縦軸は車速を示す。下段の縦軸は合計角度を示す。上段及び下段の横軸は時間を示す。下段における黒丸(●)は、周期診断の実行タイミングを示す。黒四角(■)は、特定診断の実行タイミングを示す。白丸(○)は、周期診断の実行タイミングであるが車両300が安定状態にないために診断の実行が回避されるタイミングを示す。
傾斜センサ2110は、例えば静電容量型の3軸加速度センサであり、錘部2111と、錘部2111を支持するダイアフラム2112と、第1電極2113及び第2電極2114と、を有する。第1電極2113及び第2電極2114は互いに離間して配置され、両者の間に錘部2111及びダイアフラム2112が配置される。
図11(A)に示すように、傾斜センサ2110の通常の使用状況において、傾斜センサ2110に加速度Qがかかると、錘部2111に加速度Qが作用してダイアフラム2112が変位する。これにより、第1電極2113及び第2電極2114とダイアフラム2112との間の静電容量が変化する。傾斜センサ2110は、この静電容量の変化を検出することで、傾斜センサ2110にかかる加速度Qを検出することができる。ダイアフラム2112は傾斜センサ2110のX,Y,Z方向に変位可能であり、よって傾斜センサ2110はX,Y,Z方向の加速度を検出することができる。図11(A)では、ダイアフラム2112と第1電極2113とが距離d1だけ離間し、ダイアフラム2112と第2電極2114とが距離d2だけ離間している。傾斜センサ2110は、距離d1,d2に応じた静電容量を電気信号に変換して出力する。
傾斜センサ2110は、診断指示部21043から故障診断の実行指示信号を受信すると、故障診断を実行する。故障診断では第1電極2113及び第2電極2114間に所定の電圧が印加される。これにより、ダイアフラム2112は強制的に変位される。そして、傾斜センサ2110は、このダイアフラム2112の位置に応じた電気信号を、故障診断用の出力値として出力する。
レベリングECU2100は、傾斜センサ2110に印加する電圧の値と、当該電圧の印加により正常にダイアフラム2112が変位した場合に出力される出力値とを対応付けた診断用テーブルを、RAMあるいはメモリ2108に予め保持している。故障判断部21044は、故障診断用の出力値と診断用テーブルを用いて、傾斜センサ2110の故障を診断する。例えば故障判断部21044は、故障診断用の出力値が、診断用テーブルにおいて故障診断時の印加電圧に対応付けられた出力値と等しい場合に、傾斜センサ2110が正常であると判断する。また、印加電圧に対応付けられた出力値でない場合に、傾斜センサ2110が故障していると判断する。外部からの衝撃等によってダイアフラム2112が破損したり屈曲した場合には、所定の電圧を印加しても、印加した電圧に対応する正しい位置にダイアフラム2112が変位しない。このため、故障診断用の出力値が、診断用テーブルにおいて印加電圧に対応付けられた出力値と等しくない場合に、傾斜センサ2110が故障していると判断することができる。
なお、故障判断部21044は、複数の診断結果に基づいて、傾斜センサ2110の故障を判断してもよい。例えば、故障判断部21044は、故障診断用の出力値が所定回数以上連続して故障を示す値である場合に、傾斜センサ2110が故障していると判断する。
図11(B)では、ダイアフラム2112が第1電極2113と距離d3だけ離間し、第2電極2114と距離d4だけ離間する位置に変位するよう電圧が印加されている。そして、この電圧の印加によって、第1電極2113と距離d3だけ離間し、第2電極2114と距離d4だけ離間する位置に、ダイアフラム2112が強制的に変位されている。傾斜センサ2110は、このダイアフラム2112の位置に応じた電気信号を、故障診断用の出力値として故障判断部21044に出力する。図11(B)では、印加した電圧に対して正しい位置にダイアフラム2112が変位している。したがって、故障診断用の出力値は、診断用テーブルにおいて印加電圧に対応付けられた出力値に等しい。よって、故障判断部21044は、傾斜センサ2110が正常であると判断する。
傾斜センサ2110が上述した静電容量型の3軸加速度センサ以外の型のセンサであっても、それぞれの型に応じた故障診断を実行することができる。このような故障診断機能は公知であるため、詳細な説明を省略する。
傾斜センサ2110の故障診断時に、傾斜センサ2110に重力以外の加速度がかかっている状況では、この加速度の影響により正確な故障診断が困難になる。このため、傾斜センサ2110の故障診断は、重力以外の加速度が傾斜センサ2110にかかっていない条件下で実施することが望ましい。そこで、診断指示部21043は、傾斜センサ2110の出力値の変化量が所定量以下である車両300の安定状態にあるときに、故障診断の実行指示信号を出力する。これにより、傾斜センサ2110の故障診断をより高精度に実施することができる。この結果、傾斜センサ2110の故障が見過ごされるおそれを低減することができるため、車両用灯具のオートレベリング制御の精度を高めることができる。
また、図12に示すように、診断指示部21043は、実行指示信号を周期的に出力する。すなわち、診断指示部21043は、傾斜センサ2110の周期診断の実行を指示する。このように、診断指示部21043が周期的に実行指示信号を出力することで、傾斜センサ2110の故障をより早期に発見することができる。
図12において、時間a〜bは車両走行中の期間であり、時間cは車両停止時であり、時間aまで、及び時間c以降は車両停止中の期間である。時間d〜eは車両300に人の乗降あるいは荷物の積み下ろしがなされている期間である。傾斜センサ2110の出力値は、時間dで安定状態から不安定状態に変化し、その後時間eに再び安定状態に変化している。時間fはイグニッションスイッチ308がオフ状態に移行したときであり、時間gはイグニッションスイッチ308がオン状態に移行したときである。
本実施の形態において、診断指示部21043は、車両停止中に周期診断を実行している(図12の黒丸のタイミング)。しかしながら、診断指示部21043は、車両走行中にも周期診断を実行してもよい。また、診断指示部21043は、周期診断における診断の実行タイミングであっても、時間d〜eの期間のように傾斜センサ2110の出力値の変化量が所定量を超える不安定状態にある場合は実行指示信号の送信を回避する。これにより、車両300が不安定状態にあるときは、傾斜センサ2110の故障診断が回避される(図12の白丸のタイミング)。
また、診断指示部21043は、周期診断と並行して特定診断を実行する。特定診断では、車両300に所定の事象が起こったときに実行指示信号が出力される。具体的には、診断指示部21043は、車両300の停止が検知された場合、人の乗降あるいは荷物の積み下ろしが検知された場合、及びイグニッションスイッチ308のオンオフの切り替えが検知された場合に、実行指示信号を出力する。診断指示部21043は、停止検知部21045により車両300の停止が検知されたとき(図12の時間c)に実行指示信号を出力する。また、診断指示部21043は、荷重変化検知部21046により人の乗降あるいは荷物の積み下ろしが検知されたとき(図12の時間e)に実行指示信号を出力する。また、診断指示部21043は、イグニッション検知部21047がイグニッションスイッチ308のオフを検知したとき(図12の時間f)、及びイグニッション検知部21047がイグニッションスイッチ308のオンを検知したとき(図12の時間g)に実行指示信号を出力する。
このように、周期診断に加えて特定診断を実行することで、傾斜センサ2110の故障をより早期に発見することができる。また、停止検知部21045が車両300の停止を検知したとき、荷重変化検知部21046が人の乗降あるいは荷物の積み下ろしがあったことを検知したとき、及びイグニッション検知部21047がイグニッションスイッチ308のオンオフを検知したときは、車両300が安定状態にある可能性が高い。このため、特定診断を実行することで、傾斜センサ2110の故障診断の精度をより高めることができ、これによりオートレベリング制御の精度をより高めることができる。
上述のように、制御部2104が受信する傾斜センサ2110の出力値には、故障診断時の出力値が含まれる。故障診断時の出力値は、故障診断時の車両300にかかる加速度ではなく、傾斜センサ2110に印加された電圧に対応する値である。このため、オートレベリング制御において、故障診断時の出力値を用いて合計角度θを導出すると、オートレベリング制御の精度が低下するおそれがある。
そこで、角度演算部21041は、オートレベリング制御における合計角度θの導出において、故障診断時の出力値を除いた出力値を用いる。これにより、より正確な合計角度θを導出することができるため、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。例えば、傾斜センサ2110は、故障診断時の出力値を出力する際、故障診断が実行されたことを示す信号を併せて出力する。故障診断時の出力値は、故障診断が実行されたことを示す信号とともに、RAMあるいはメモリ2108に保持される。角度演算部21041は、故障診断が実行されたことを示す信号の有無に基づいて、傾斜センサ2110の出力値が故障診断時の出力値であるか否かを検知することができる。
あるいは、診断指示部21043は、オートレベリング制御における合計角度θの一回の導出に用いる傾斜センサ2110の複数の出力値に、故障診断時の出力値が所定数以下含まれるように、実行指示信号を出力する。例えば、診断指示部21043は、合計角度θの導出に用いる複数の出力値中に含まれる故障診断時の出力値が1以下となるように、実行指示信号を出力する。これにより、故障診断時の出力値を含めて合計角度θを導出する場合に、合計角度θの導出精度が低下することを抑制することができる。また、故障診断時の出力値を除外して合計角度θを導出する場合に、合計角度θの導出に用いる出力値数の減少によって合計角度θの導出精度が低下することを、抑制することができる。
調節指示部21042は、故障判断部21044が傾斜センサ2110の故障を検知すると、一例として、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定する。基準角度としては、例えば、初期角度あるいは安全角度を挙げることができる。初期角度とは、上述した初期化処理で車両300がとる姿勢(第1状態での姿勢)において設定される角度、すなわちθv=0°に対応する光軸角度である。安全角度は、他者に与えるグレアが軽減される光軸角度である。安全角度としては、水平よりも下向き、例えば最も下向きの光軸角度を挙げることができる。基準角度をどのような角度に設定するかは、他車両の運転者に与えるグレアの抑制と、自車両の運転者の視認性向上との観点から適宜設定することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係るレベリングECU2100では、診断指示部21043が、車両300の安定状態にあるときに、傾斜センサ2110に故障診断の実行指示信号を出力する。これにより、傾斜センサ2110の故障診断をより高精度に実施することができる。このため、オートレベリング制御の精度を高めることができる。また、診断指示部21043は、実行指示信号を周期的に出力する。これにより、傾斜センサ2110の故障を早期に発見することができるため、故障した傾斜センサ2110を用いたオートレベリング制御が実行されることを抑制することができる。よって、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
また、角度演算部21041は、オートレベリング制御において合計角度θを導出する際に、故障診断時の出力値を用いずに合計角度θを導出する。あるいは、診断指示部21043は、合計角度θの一回の導出に用いる傾斜センサ2110の複数の出力値に、故障診断時の出力値が所定数以下含まれるように、実行指示信号を出力する。これらにより、合計角度θの導出精度の低下を抑制することができるため、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
また、診断指示部21043は、車両の停止、人の乗降あるいは荷物の積み下ろし、及びイグニッションスイッチのオンオフの切り替えが検知された場合に、実行指示信号を出力する。このように、周期診断とは異なるタイミングで故障診断を実行することで、傾斜センサ2110の故障をより早期に発見することができる。このため、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
[実施の形態3]
実施の形態3に係るレベリングECU2100は、車両走行中の傾斜センサ2110の出力値から導出される車両姿勢角度θvに基づいて光軸角度θoを調節する点を除き、実施の形態2に係るレベリングECU2100の構成と共通する。以下、実施の形態3に係るレベリングECU2100について実施の形態2と異なる構成を中心に説明する。
本実施の形態において、角度演算部21041は、車両走行中の傾斜センサ2110の出力値から得られる車両前後方向及び上下方向の加速度を用いて、現在の車両姿勢角度θvを導出する。以下に、車両走行中に得られる傾斜センサ2110の出力値に基づいた車両姿勢角度θvの導出方法について説明する。
図4(A)及び図4(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図4(A)は、車両姿勢角度θvが0°の状態を示し、図4(B)は、車両姿勢角度θvが0°から変化した状態を示している。また、図4(A)及び図4(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速若しくは後進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示すグラフである。なお、図4(A)及び図4(B)における符号「110」を符号「2110」に置き換えて説明する。
車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図4(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は車両300の前後軸L(あるいは傾斜センサ2110のX軸)は路面に対して平行となる。このため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸Lに平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に、傾斜センサ2110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸Lに対して平行な直線となる。
一方、図4(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、車両300の前後軸Lは路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸Lに対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸Lに対して傾いた直線となる。
車両前後方向の加速度を第1軸(X軸)に設定し、車両上下方向の加速度を第2軸(Z軸)に設定した座標に、車両走行中に得られる傾斜センサ2110の出力値をプロットすると、図5に示す結果を得ることができる。図5において、点tA1〜tAnは図4(A)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。点tB1〜tBnは図4(B)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。この出力値のプロットには、傾斜センサ2110の出力値から得られる車両座標系の加速度値をプロットすることが含まれる。
このようにプロットした少なくとも2点から直線又はベクトルを導出し、その傾きを得ることで車両姿勢角度θvを導出することができる。例えば、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法や移動平均法等を用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを算出する。車両姿勢角度θvが0°の場合、傾斜センサ2110の出力値からX軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、傾斜センサ2110の出力値から車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度(図5におけるθAB)、あるいは直線近似式Bの傾きそのものが、車両姿勢角度θvとなる。よって、車両走行中の傾斜センサ2110の出力値をプロットして得られる直線又はベクトルの傾きから、車両姿勢角度θvを導出することができる。
そこで角度演算部21041は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両走行中に得られる傾斜センサ2110の出力値をプロットする。そして、プロットした複数点から得られる直線又はベクトルの傾きを用いて車両姿勢角度θvを導出する。そして、調節指示部21042は、導出された車両姿勢角度θvを用いて調節信号を出力する。
例えば、角度演算部21041は、車速センサ312の出力値に基づいて車両300が走行中であることを検知すると、上述した車両姿勢角度θvの導出処理を開始する。傾斜センサ2110の出力値は、所定の時間間隔で繰り返し制御部2104に送信され、RAMあるいはメモリ2108に保持される。そして、出力値の数が直線又はベクトルの一回の導出に必要とされる予め定められた数に達すると、角度演算部21041は、上述した座標に傾斜センサ2110の出力値をプロットして、直線又はベクトルを導出する。なお、傾斜センサ2110の出力値を受信する毎に角度演算部21041が座標に出力値をプロットし、プロット数が直線又はベクトルの一回の導出に必要とされる数に達したときに、直線又はベクトルが導出されてもよい。
(傾斜センサ2110の故障診断)
傾斜センサ2110は、実施の形態2と同様の故障診断機能を有する。図13は、故障診断の実行タイミングを説明するためのタイミングチャートである。上段の縦軸は車速を示す。下段の縦軸は合計角度を示す。上段及び下段の横軸は時間を示す。下段における黒丸(●)は、周期診断の実行タイミングを示す。白丸(○)は、周期診断の実行タイミングであるが車両300が安定状態にないために診断の実行が回避されるタイミングを示す。
本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、診断指示部21043は、傾斜センサ2110の出力値の変化量が所定量以下である車両300の安定状態にあるときに、故障診断の実行指示信号を出力する。これにより、傾斜センサ2110の故障診断をより高精度に実施することができる。この結果、車両用灯具のオートレベリング制御の精度を高めることができる。
また、図13に示すように、診断指示部21043は、実行指示信号を周期的に出力する。診断指示部21043が周期的に実行指示信号を出力することで、傾斜センサ2110の故障をより早期に発見することができる。図13において、時間a〜fは車両走行中の期間である。時間a〜b、c〜d及びe〜fは、車両300が不安定状態にある期間である。本実施の形態では、診断指示部21043は車両走行中に周期診断を実行している(図13の黒丸のタイミング)。しかしながら、診断指示部21043は、車両停止中にも周期診断を実行してもよい。また、診断指示部21043は、周期診断における診断の実行タイミングであっても、時間a〜b、c〜d及びe〜fの期間のように、傾斜センサ2110の出力値が不安定状態にある場合は実行指示信号の送信を回避する。これにより、車両300が不安定状態にあるときは、傾斜センサ2110の故障診断が回避される(図13の白丸のタイミング)。
なお、診断指示部21043は、傾斜センサ2110の出力値の変化量に加えて、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ヨーレートセンサ、アクセルペダルの踏み込みを検知するアクセルセンサ、ブレーキペダルの踏み込みを検知するブレーキセンサ、シフトポジションセンサ等の出力値に基づいて、車両300が安定状態にあることを検知してもよい。あるいは、傾斜センサ2110の出力値の変化量に代えて、これらのセンサの出力値に基づいて車両300の安定状態を推定してもよい。
制御部2104が受信する傾斜センサ2110の出力値には、故障診断時の出力値が含まれる。これに対し、角度演算部21041は、オートレベリング制御における車両姿勢角度θvの導出において、故障診断時の出力値を除いた出力値を用いる。これにより、より正確な合計角度θを導出することができるため、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
あるいは、診断指示部21043は、オートレベリング制御における車両姿勢角度θvの一回の導出に用いる傾斜センサ2110の複数の出力値に、故障診断時の出力値が所定数以下含まれるように、実行指示信号を出力する。例えば、診断指示部21043は、合計角度θの導出に用いる複数の出力値中に含まれる故障診断時の出力値が1以下となるように、実行指示信号を出力する。これにより、故障診断時の出力値を含めて車両姿勢角度θvを導出する場合に、導出精度が低下することを抑制することができる。また、故障診断時の出力値を除外して車両姿勢角度θvを導出する場合に、導出に用いる出力値数の減少によって車両姿勢角度θvの導出精度が低下することを、抑制することができる。
本発明は、上述した実施の形態2,3に限定されるものではなく、実施の形態2,3を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられて得られる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施の形態2,3同士、及び上述の実施の形態2,3と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態2,3及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
(変形例2)
変形例2に係るレベリングECU2100は、実施の形態2で説明したオートレベリング制御(以下ではこの制御を第1制御と称する)と、実施の形態3で説明したオートレベリング制御(以下ではこの制御を第2制御と称する)とを組み合わせて実行する。
例えば、制御部2104は、基本制御として第1制御を実行する。第1制御では、車両停止中の合計角度θの変化に対して調節信号が出力されるとともに、当該合計角度θの変化量を車両姿勢角度θvの基準値に含めて得られる車両姿勢角度θvが新たな基準値として保持される。また、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸角度が維持されるとともに、当該合計角度θの変化量を路面角度θrの基準値に含めて得られる路面角度θrが新たな基準値として保持される。
また、制御部2104は、車両走行中に第2制御を実行する。第2制御では、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両走行中に得られる傾斜センサ2110の出力値がプロットされ、プロットされた複数点から得られる直線又はベクトルの傾きを用いて車両姿勢角度θvが導出される。そして、制御部2104は、第2制御で得られた車両姿勢角度θvに基づいて、車両姿勢角度θvの基準値を補正する。例えば、制御部2104は、車両姿勢角度θvの基準値を第2制御で得られた車両姿勢角度θvに置き換える。あるいは、車両姿勢角度θvの基準値を第2制御で得られた車両姿勢角度θvに近づくように補正する。さらに、第2制御で得られた車両姿勢角度θvに基づいて、光軸角度θoが補正される。
本変形例においても、実施の形態2及び3と同様の傾斜センサ2110の故障診断が実施される。また、故障診断時の出力値の扱いについても、実施の形態2及び3と同様である。なお、故障判断部21044は、車両停止中に実行される故障診断の結果と、車両走行中に実施される故障診断の結果とを組み合わせて、傾斜センサ2110の故障を判断してもよい。
上述した実施の形態2,3及び変形例2において、車両の停止、人の乗降あるいは荷物の積み下ろし、及びイグニッションスイッチ308のオンオフの切り替えの1つ又は2つだけを、特定診断の実行対象としてもよい。すなわち、車両の停止、人の乗降あるいは荷物の積み下ろし、及びイグニッションスイッチ308のオンオフの切り替えの少なくとも1つが特定診断の実行対象となる。
上述した実施の形態2,3及び変形例2において、診断指示部21043は車両300が不安定状態にあるとき実行指示信号の出力を回避している。しかしながら、この構成に限定されず、車両300が不安定状態にあるときでも診断指示部21043は実行指示信号を出力するが、故障判断部21044は、不安定状態で得られた故障診断用の出力値を用いて故障を判断しない、という構成であってもよい。
なお、上述した実施の形態2,3及び変形例2に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目2]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
自己の故障診断機能を有する傾斜センサと、
前記車両用灯具の光軸角度の調節を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記傾斜センサの出力値を示す信号を受信する受信部と、
前記傾斜センサの出力値を用いて車両の傾斜角度又はその変化量を導出し、車両用灯具の光軸角度の調節信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記傾斜センサに故障診断の実行指示信号を出力する診断指示部を有し、
前記診断指示部は、前記出力値の変化量が所定量以下である車両の安定状態にあるときに前記実行指示信号を出力することを特徴とする車両用灯具システム。
[実施の形態4]
図1は、実施の形態4に係る制御装置の制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。本実施の形態における前照灯ユニット210及び灯具ユニット10は、第1の実施の形態と同様の構造を有する。
図14は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、図14では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU3100及び車両制御ECU302は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図14ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU3100は、受信部3102、制御部3104、送信部3106、メモリ3108及び加速度センサ3110を備える。レベリングECU3100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU3100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、加速度センサ3110は、レベリングECU3100の外に設けられてもよい。レベリングECU3100には、車両制御ECU302及びライトスイッチ304等が接続される。車両制御ECU302及びライトスイッチ304等から出力される信号は、受信部3102によって受信される。また、受信部3102は、加速度センサ3110の出力値を示す信号を受信する。
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続される。これらのセンサから出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU3100の受信部3102によって受信される。車速センサ312は、例えば車輪の回転数に基づいて車両300の速度を算出するセンサである。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU3100等に送信する。
受信部3102が受信した信号は、制御部3104に送信される。制御部3104は、加速度センサ3110の出力値を用いて車両300の傾斜角度又はその変化量を導出し、灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)の調節信号を出力するオートレベリング制御を実行する。制御部3104は、角度演算部31041、調節指示部31042、及び異常判定部31043を有する。
角度演算部31041は、加速度センサ3110の出力値と、必要に応じてレベリングECU3100が有するRAM(図示せず)に保存している情報とを用いて、車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部31042は、角度演算部31041で生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸角度θoの調節を指示する調節信号を生成する。制御部3104は、調節指示部31042で生成した調節信号を送信部3106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動し、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。異常判定部31043は、車速センサ312の出力値と加速度センサ3110の出力値とを用いて、加速度センサ3110の異常を判定する。制御部3104が有する各部の動作及び加速度センサ3110の異常判定については、後に詳細に説明する。
車両300には、レベリングECU3100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。電源306からレベリングECU3100への電力供給は、イグニッションスイッチがオンのときに実施され、イグニッションスイッチがオフのときに停止される。
(オートレベリング制御)
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU3100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図15は、センサ座標系と車両座標系との関係を説明するための模式図である。図15において、左側の図は車両座標系を示し、中央の図はセンサ座標系を示し、右側の図は加速度センサ3110が車両300に搭載された状態でのセンサ座標系及び車両座標系を示す。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、加速度センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両300が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU3100は、加速度センサ3110の出力値から車両300のピッチ方向の傾斜角度又はその変化を導出し、光軸角度θoを車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射光の到達距離を最適に調節することができる。
図15に示すように、加速度センサ3110は、互いに直交するX軸SX、Y軸SY及びZ軸SZを有し、各軸での加速度を検知する3軸加速度センサである。また、車両300は、その姿勢を決める前後軸VX、左右軸VY、及び上下軸VZを有する。加速度センサ3110は、センサ座標系が車両300の車両座標系と一致するように、車両300に取り付けられる。すなわち、加速度センサ3110と車両300とは、X軸SXと前後軸VX、Y軸SYと左右軸VY、及びZ軸SZと上下軸VZが、それぞれ平行となるように互いの位置関係が定められている。そして、加速度センサ3110は、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。
走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。このため、図3に示すように、加速度センサ3110は重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、加速度センサ3110は重力加速度ベクトルGを検出することができる。加速度センサ3110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。上述のように加速度センサ3110と車両300とは互いの座標系が一致しているため、加速度センサ3110から出力されるセンサ座標系の各軸成分の数値は、そのまま車両座標系の各軸成分の数値となる。
また、車両停止中の加速度センサ3110の出力値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、加速度センサ3110の出力値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θrと、路面に対する車両300の傾斜角度である車両姿勢角度θvとを含む、水平面に対する車両300の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
オートレベリング制御は、車両300のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両300の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸角度θoが維持されることが望まれる。これを実現するためには、合計角度θから車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
(基本制御)
これに対し、制御部3104は、オートレベリングの基本制御として、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定し、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定して、合計角度θから車両姿勢角度θvを導出する。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、車両走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。また、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
例えば、まず車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に対して平行になるよう設計された路面(以下では適宜、この路面を基準路面という)に置かれ、基準状態とされる。基準状態では、車両300は運転席に1名乗車した状態とされる。そして、工場の初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、初期化信号が送信される。制御部3104は、初期化信号を受けると所定の初期化処理を実行する。初期化処理では、初期エイミング調整が実施され、灯具ユニット10の光軸Oが初期角度に合わせられる。また、制御部3104の角度演算部31041は、基準状態における加速度センサ3110の出力値を路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてRAMに記憶して保持する。また、必要に応じてこれらの基準値をメモリ3108に書き込む。
そして、制御部3104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸角度θoを調節するようレベリングアクチュエータ226を駆動させる。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している車両姿勢角度θvの基準値に含めて得られる車両姿勢角度θvを、新たな基準値として保持する。また、制御部3104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避する。また、これとともに、当該合計角度θの変化量を、保持している路面角度θrの基準値に含めて得られる路面角度θrを、新たな基準値として保持する。
例えば、車両300が実際に使用される状況において、角度演算部31041は、車両走行中の合計角度θの変化に対して、調節信号の生成又は出力を回避するか光軸角度θoの維持を指示する維持信号を出力することで、レベリングアクチュエータ226の駆動を回避する。そして、角度演算部31041は、車両停止時に加速度センサ3110の出力値から、現在(車両停止時)の合計角度θを算出する。次いで、角度演算部31041は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して、路面角度θrを得る(θr=θ−θv基準値)。そして、得られた路面角度θrを、新たな路面角度θrの基準値として、RAMに保持している路面角度θrの基準値を更新する。更新前の路面角度θrの基準値と、更新後の路面角度θrの基準値との差は、車両300の走行前後における合計角度θの変化量に相当する。これにより、路面角度θrの変化量と推定される車両走行中の合計角度θの変化量が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部31041は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分Δθ1(合計角度θの変化量)を算出する。そして、路面角度θrの基準値に差分Δθ1を算入して新たな路面角度θrの基準値を算出し(新θr基準値=θr基準値+Δθ1)、路面角度θrの基準値を更新する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。角度演算部31041は、次のようにして差分Δθ1を算出することができる。すなわち、角度演算部31041は、車両300の発進直後に、発進直前の合計角度θを合計角度θの基準値として保持する。そして、角度演算部31041は、車両停止時に、現在(車両停止時)の合計角度θから合計角度θの基準値を減算して差分Δθ1を算出する。
また、制御部3104は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、灯具ユニット10の光軸角度θoの調節信号を生成し出力することで、レベリングアクチュエータ226を駆動させる。具体的には、車両停止中、角度演算部31041は加速度センサ3110の出力値から現在の合計角度θを所定のタイミングで繰り返し算出する。算出された合計角度θはRAMに保持される。そして、角度演算部31041は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る(θv=θ−θr基準値)。また、得られた車両姿勢角度θvを新たな車両姿勢角度θvの基準値として、RAMに保持している車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化量と推定される車両停止中の合計角度θの変化量が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
あるいは、角度演算部31041は、車両停止中に現在の合計角度θと保持している合計角度θの基準値との差分Δθ2(合計角度θの変化量)を算出する。このとき用いられる合計角度θの基準値は、例えば、車両300の停止後最初の差分Δθ2の算出では差分Δθ1の算出時に得られた合計角度θ、すなわち車両停止時の合計角度θであり、2回目以降の場合は前回の差分Δθ2の算出時に得られた合計角度θである。そして、角度演算部31041は、車両姿勢角度θvの基準値に差分Δθ2を算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出し(新θv基準値=θv基準値+Δθ2)、車両姿勢角度θvの基準値を更新する。これにより、車両姿勢角度θvの変化と推定される車両停止中の合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの基準値に取り込まれる。
そして、調節指示部31042は、算出された車両姿勢角度θvあるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。例えば、調節指示部31042は、予めメモリ3108に記録されている車両姿勢角度θvの値と光軸角度θoの値とを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、調節信号を生成する。調節信号は、送信部3106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。
(補正処理)
上述したように、オートレベリングの基本制御では合計角度θから車両姿勢角度θvあるいは路面角度θrの基準値が減算されて、基準値が繰り返し更新される。あるいは合計角度θの変化の差分Δθ1が路面角度θrの基準値に、差分Δθ2が車両姿勢角度θvの基準値にそれぞれ算入されて、基準値が繰り返し更新される。これにより、路面角度θr及び車両姿勢角度θvの変化がそれぞれの基準値に取り込まれる。このように路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値を繰り返し書き換える場合、加速度センサ3110の検出誤差等が基準値に積み重なって、オートレベリング制御の精度が低下してしまうおそれがある。そこで、レベリングECU3100は、以下に説明する基準値及び光軸角度θoの補正処理を実行する。
図4(A)及び図4(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図4(A)は、車両姿勢角度θvが0°の状態を示し、図4(B)は、車両姿勢角度θvが0°から変化した状態を示している。また、図4(A)及び図4(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速若しくは後進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示すグラフである。なお、図4(A)及び図4(B)における符号「110」を符号「3110」に、符号「L」を符号「VX」にそれぞれ置き換えて説明する。
車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図4(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は車両300の前後軸VX及び加速度センサ3110のX軸SXは路面に対して平行となる。このため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸VXに平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に、加速度センサ3110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸VXに対して平行な直線となる。
一方、図4(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、車両300の前後軸VXは路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、車両300の前後軸VXに対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、車両300の前後軸VXに対して傾いた直線となる。
車両前後方向の加速度を第1軸(X軸)に設定し、車両上下方向の加速度を第2軸(Z軸)に設定した座標に、車両走行中に得られる加速度センサ3110の出力値をプロットすると、図5に示す結果を得ることができる。図5において、点tA1〜tAnは図4(A)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。点tB1〜tBnは図4(B)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。この出力値のプロットには、加速度センサ3110の出力値から得られる車両座標系の加速度値をプロットすることが含まれる。
このようにプロットした少なくとも2点から直線又はベクトルを導出し、その傾きを得ることで車両姿勢角度θvを推定することができる。例えば、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法や移動平均法等を用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを算出する。車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ3110の出力値からX軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ3110の出力値から車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。したがって、直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度(図5におけるθAB)、あるいは直線近似式Bの傾きそのものが、車両姿勢角度θvとなる。よって、車両走行中の加速度センサ3110の出力値をプロットして得られる直線又はベクトルの傾きから、車両姿勢角度θvを推定することができる。
そこで角度演算部31041は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、車両走行中に得られる加速度センサ3110の出力値をプロットする。そして、プロットした複数点から得られる直線又はベクトルの傾きを用いて車両姿勢角度θvを推定し、推定した車両姿勢角度θvに基づいて車両姿勢角度θvの基準値を調整する。あるいは、推定した車両姿勢角度θvを新たな基準値として保持する。これにより、車両姿勢角度θvの基準値が補正される。また、調節指示部31042は、推定した車両姿勢角度θvあるいは更新された新たな車両姿勢角度θvの基準値を用いて、光軸角度θoの調節信号を生成する。調節信号は、送信部3106からレベリングアクチュエータ226へ出力される。これにより、光軸角度θoが補正される。以降は、補正あるいは更新した車両姿勢角度θvを車両姿勢角度θvの基準値とし、また現在の合計角度θとこの車両姿勢角度θvの基準値とから得られる路面角度θrを路面角度θrの基準値として(これにより路面角度θrの基準値が補正される)、上述した基本制御が再開される。
例えば、角度演算部31041は、車速センサ312の出力値に基づいて車両300が走行中であることを検知すると補正処理を開始する。補正処理において、加速度センサ3110の出力値は、所定の時間間隔で繰り返し制御部3104に送信される。制御部3104に送信された加速度センサ3110の出力値は、RAMあるいはメモリ3108に保持される。そして、出力値の数が直線又はベクトルの一回の導出に必要とされる予め定められた数に達したとき、角度演算部31041は、上述した座標に加速度センサ3110の出力値をプロットして、直線又はベクトルを導出する。なお、加速度センサ3110の出力値を受信する毎に角度演算部31041が座標に出力値をプロットし、プロットした出力値の数が所定数に達したときに直線又はベクトルを導出してもよい。
(加速度センサ3110の異常判定)
異常判定部31043は、車両走行中に得られる車速センサ312の出力値から導出される加速度(以下では適宜、この加速度を車速センサ由来加速度という)と、加速度センサ3110の出力値から導出される車両前後方向の加速度(以下では適宜、この加速度を加速度センサ由来加速度という)とを比較して、すなわち両加速度の差に基づいて、加速度センサ3110に異常が発生しているか否かを判定する。
図16(A)及び図16(B)は、異常判定部による加速度センサの異常判定を説明するための模式図である。図16(A)及び図16(B)において、横軸は車両300が位置する路面に対して平行な路面水平軸PHであり、縦軸は車両300が位置する路面に対して垂直な路面垂直軸PVである。また、実線矢印は車速センサ由来加速度のベクトルを表し、破線矢印は加速度センサ由来加速度のベクトルを表す。
異常判定部31043は、車速センサ312から車両300の速度を示す信号を受信すると、車速を時間で微分することで車速センサ由来加速度を得る。また、異常判定部31043は、加速度センサ由来加速度として、上述した補正処理において座標にプロットした加速度センサ3110の出力値における車両前後方向成分の値を用いる。図16(A)には、車両姿勢角度θvが0°の状態にある車両300が水平路面を走行している状況において導出される車速センサ由来加速度と加速度センサ由来加速度とが示されている。この場合、加速度センサ3110が正常であれば、車速センサ由来加速度と加速度センサ由来加速度とは大きさが一致する。したがって、車両姿勢角度θvが0°且つ路面角度θrが0°であれば、両加速度が一致するか否かに基づいて加速度センサ3110の異常を判定することができる。
しかしながら、運動加速度ベクトルαは路面に対して平行であるため、車速センサ由来加速度のベクトルは路面水平軸PHに対して平行である。一方、加速度センサ由来加速度は車両前後方向の加速度であり、車両前後方向すなわち車両300の前後軸VXは、車両姿勢角度θvの変化によって路面に対して角度が変化する。したがって、加速度センサ由来加速度のベクトルは必ずしも路面に対して平行にならない。このため、加速度センサ由来加速度の大きさは、加速度センサ3110が正常であっても車速センサ由来加速度の大きさに対してずれが生じる。また、加速度センサ3110は、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出する。このため、車両300の前後軸VXが路面に対して平行でない場合(すなわち車両姿勢角度θvが0でない場合)、及び路面が水平でない場合(すなわち路面角度θrが0でない場合)、重力加速度が加速度センサ由来加速度に含まれる。このため、加速度センサ由来加速度の大きさは、加速度センサ3110が正常であっても車速センサ由来加速度の大きさに対してずれが生じる。
そこで、異常判定部31043は、車速センサ由来加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が、所定の許容範囲C1を超える場合に、加速度センサ3110が異常であると判定する。異常判定部31043は、当該大きさの差の導出を複数回繰り返し、大きさの差が所定回数以上連続して許容範囲C1を超える場合に、加速度センサ3110が異常であると判定してもよい。許容範囲C1は、路面角度θr及び車両姿勢角度θvの変化による加速度センサ由来加速度の変化量に基づいて定められる範囲である。許容範囲C1の決定に考慮される車両姿勢角度θvの変化の範囲は、車両300が車両設計上取り得る車両姿勢角度θvの範囲である。また、許容範囲C1の決定に考慮される路面角度θrの範囲は、一般的な道路の傾斜角度の範囲であり、例えば±10%である。許容範囲C1は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
本実施の形態では、センサ座標系と車両座標系とが一致している。したがって、車両前後方向の加速度は、加速度センサ3110のX軸SX方向の加速度である。このため、車速センサ由来加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が許容範囲C1を超える場合、加速度センサ3110のX軸SXに異常が生じていることを検知することができる。
異常判定部31043は、例えば、車速センサ312の出力値に基づいて車両300が走行中であることを検知すると、加速度センサ3110の異常判定を開始する。そして、異常判定部31043は、車両走行中に異常判定を周期的に実行する。このように、周期的に異常判定を実行することで、加速度センサ3110の異常をより早期に発見することができる。異常判定部31043は、加速度センサ3110の異常を検知すると、異常発生信号を調節指示部31042及び車両制御ECU302に送信する。
調節指示部31042は、異常判定部31043から異常発生信号を受信すると、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定する。基準角度としては、例えば、初期角度あるいは安全角度を挙げることができる。初期角度とは、上述した初期化処理で車両300がとる姿勢(基準状態での姿勢)において設定される角度、すなわちθv=0°に対応する光軸角度である。安全角度は、他者に与えるグレアが軽減される光軸角度である。安全角度としては、水平よりも下向き、例えば最も下向きの光軸角度を挙げることができる。基準角度をどのような角度に設定するかは、他車両の運転者に与えるグレアの抑制と、自車両の運転者の視認性向上との観点から適宜設定することができる。例えば、グレアの抑制と視認性向上の両方を考慮した場合、基準角度として初期角度が好適である。また、グレアの抑制を優先する場合、基準角度として安全角度が好適である。車両制御ECU302は、異常発生信号を受信するとインジケータを点灯させる。これにより、加速度センサ3110の異常が車両300の使用者に報知される。
図17は、実施の形態4に係る車両用灯具の制御装置により実行されるオートレベリング制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに制御部3104により所定のタイミングで繰り返し実行され、オートレベリング制御の実行指示が解除される(あるいは停止指示がなされる)か、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
制御部3104は、車両300が停車しているか判断する(S301)。車両300が停車している場合(S301のY)、制御部3104は、前回のルーチンのステップS301における停車判定において車両300が走行中(S301のN)であったか判断する(S302)。前回の判定が走行中であった場合(S302のY)、この場合は「車両停止時」であることを意味し、制御部3104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S303)。そして、得られた路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値として更新し(S304)、本ルーチンを終了する。
前回の判定が走行中でなかった場合(S302のN)、この場合は「車両停止中」であることを意味し、制御部3104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを算出する(S305)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新して(S306)、本ルーチンを終了する。
車両300が停車していない場合、すなわち走行中である場合(S301のN)、制御部3104は、車速センサ由来加速度を用いる加速度センサ3110の異常判定を実行し、加速度センサ3110に異常が発生しているか判断する(S307)。加速度センサ3110に異常が生じている場合(S307のY)、制御部3104は、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定し、車両制御ECU302に異常発生信号を送信して(S308)、本ルーチンを終了する。また、制御部3104は、次回以降のフローの実行を停止する。
加速度センサ3110に異常が発生していない場合(S307のN)、制御部3104は、車両走行中の加速度センサ3110の出力値を用いた補正処理を実行する(S309)。制御部3104は補正処理において、車両姿勢角度θvを推定し、この推定された車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを補正し、また推定された車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新する。そして、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係るレベリングECU3100は、加速度センサ3110の異常を判定する異常判定部31043を備える。そして、異常判定部31043は、車両走行中に得られる車速センサ312の出力値から導出される加速度と、加速度センサ3110の出力値から導出される車両前後方向の加速度との差に基づいて、加速度センサ3110の異常を判定する。これにより、加速度センサ3110の異常を発見することができるため、異常が発生した加速度センサ3110を用いたオートレベリング制御が実行されることを抑制することができる。よって、オートレベリング制御の精度を高めることができる。また、車速センサ由来加速度は頻繁に変化するため、加速度センサ3110の異常判定を容易に、また高精度に実行することができる。
[実施の形態5]
実施の形態5に係るレベリングECU3100は、レベリングECU3100の車両300への取り付け姿勢が異なる点を除き、実施の形態4に係るレベリングECU3100の構成と共通する。以下、実施の形態5に係るレベリングECU3100について実施の形態4と異なる構成を中心に説明する。
図18は、実施の形態5におけるセンサ座標系と車両座標系との関係を説明するための模式図である。図18において、左側の図は車両座標系を示し、中央の図はセンサ座標系を示し、右側の図は加速度センサ3110が車両300に搭載された状態でのセンサ座標系及び車両座標系を示す。
本実施の形態では、加速度センサ3110は、X軸SXと車両300の前後軸VXとが非平行であり、且つZ軸SZと車両300の上下軸VZが非平行となるように、車両300に対して姿勢が定められる。この場合、オートレベリング制御及び加速度センサ3110の異常判定において、制御部3104は、加速度センサ3110から出力される3軸の成分を車両300の3軸の成分に変換する必要がある。加速度センサ3110の軸成分を車両300の軸成分に変換するためには、車両300に取り付けられた状態の加速度センサ3110の軸と車両300の軸と路面角度との位置関係を示す基準軸情報が必要である。そこで、制御部3104は、例えば以下のようにして基準軸情報を生成する。
まず、車両300が実施の形態4で説明した基準状態(以下では適宜、この基準状態を第1基準状態という)とされる。そして、初期化処理において、制御部3104は、第1基準状態における加速度センサ3110の出力値を、第1基準ベクトルS1=(X1,Y1,Z1)として、RAMあるいはメモリ3108に記録する。次に、車両300は、ピッチ角度のみが第1状態と異なる第2状態とされる。例えば、第1状態にある車両300の前部又は後部に荷重が掛けることで、車両300を第2状態とすることができる。制御部3104は、車両300が第2状態にあるときの加速度センサ3110の出力値を第2基準ベクトルS2=(X2,Y2,Z2)としてRAMあるいはメモリ3108に記録する。
第1基準ベクトルS1を取得することで、加速度センサ側の軸と基準路面との位置関係が対応付けられ、加速度センサ3110のZ軸SZと車両300の上下軸VZとのずれを把握することができる。また、第1基準ベクトルS1に対する第2基準ベクトルS2の成分の変化から、前後軸VXとX軸SXのずれ、及び左右軸VYとY軸SYのずれを把握することができる。これにより、加速度センサ側の軸と車両側の軸の位置関係が対応付けられ、その結果、加速度センサ側の軸と車両側の軸と基準路面の位置関係が対応付けられる。制御部3104は、基準軸情報として、加速度センサ3110の出力値における各軸成分の数値(基準路面における数値を含む)を車両300の各軸成分の数値と対応付けた変換テーブルを、メモリ3108に記録する。加速度センサ3110から出力されるX軸SX、Y軸SY、Z軸SZの各成分の数値は、角度演算部31041が変換テーブルを用いて車両300の前後軸VX、左右軸VY、上下軸VZの成分に変換する。
このように、本実施の形態ではX軸SXと前後軸VX、及びZ軸SZと上下軸VZとがそれぞれ平行でない。このため、加速度センサ3110の異常判定に用いられる加速度センサ由来加速度、すなわち車両前後方向の加速度は、加速度センサ3110の出力値におけるX軸SX成分とZ軸SZ成分とに基づいて導出される。このため、車速センサ由来加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が許容範囲C1を超える場合、加速度センサ3110のX軸SX及びZ軸SZのいずれかに異常が生じていることを検知することができる。したがって、本実施の形態によれば、加速度センサ3110の異常判定において判定対象となる軸を増やすことができるため、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
[実施の形態6]
実施の形態6に係るレベリングECU3100は、車速センサ由来加速度に代えて重力加速度を加速度センサ3110の異常判定に用いる点を除を除き、実施の形態4に係るレベリングECU3100の構成と共通する。以下、実施の形態6に係るレベリングECU3100について実施の形態4と異なる構成を中心に説明する。
本実施の形態に係るレベリングECU3100において、異常判定部31043は、車両300の存在位置における重力加速度と、加速度センサ3110の出力値から導出される車両上下方向の加速度(以下では適宜、この加速度を加速度センサ由来加速度という)とを比較して、すなわち両加速度の差に基づいて、加速度センサ3110に異常が発生しているか否かを判定する。
図19(A)及び図19(B)は、実施の形態6における異常判定部による加速度センサの異常判定を説明するための模式図である。図19(A)及び図19(B)において、縦軸は車両300の存在位置における鉛直方向に対して平行な鉛直軸QVであり、横軸は車両300の存在位置における水平方向に対して平行な水平軸QHである。また、実線矢印は重力加速度のベクトルを表し、破線矢印は加速度センサ由来加速度のベクトルを表す。
異常判定部31043は、加速度センサ由来加速度として、上述した補正処理において座標にプロットした加速度センサ3110の出力値における車両上下方向成分の値を用いる。図19(A)には、車両姿勢角度θvが0°の状態にある車両300が水平路面に位置している状況において導出される重力加速度と加速度センサ由来加速度とが示されている。この場合、加速度センサ3110が正常であれば、重力加速度と加速度センサ由来加速度とは大きさが一致する。したがって、車両姿勢角度θvが0°且つ路面角度θrが0°であれば、両加速度が一致するか否かに基づいて加速度センサ3110の異常を判定することができる。
しかしながら、重力加速度は鉛直方向に対して平行であるため、重力加速度のベクトルは鉛直軸QVに対して平行である。一方、加速度センサ由来加速度は車両上下方向の加速度であり、車両上下方向すなわち車両300の上下軸VZは、車両姿勢角度θvの変化によって鉛直方向に対して角度が変化する。したがって、加速度センサ由来加速度のベクトルは、必ずしも鉛直方向に対して平行にならない。このため、加速度センサ由来加速度の大きさは、加速度センサ3110が正常であっても重力加速度の大きさに対してずれが生じる。また、加速度センサ3110は、車両走行中は重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出する。このため、車両300の上下軸VZが鉛直方向に対して平行でない場合、及び路面が水平でない場合、運動加速度が加速度センサ由来加速度に含まれる。このため、加速度センサ由来加速度の大きさは、加速度センサ3110が正常であっても重力加速度の大きさに対してずれが生じる。
そこで、異常判定部31043は、重力加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が、所定の許容範囲C2を超える場合に、加速度センサ3110が異常であると判定する。許容範囲C2は、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び車両300に生じる運動加速度のそれぞれの変化による加速度センサ由来加速度の変化量に基づいて定められる範囲である。許容範囲C2の決定に考慮される車両姿勢角度θvの変化の範囲は、車両300が車両設計上取り得る車両姿勢角度θvの範囲である。また、許容範囲C2の決定に考慮される路面角度θrの範囲は、一般的な道路の傾斜角度の範囲であり、例えば±10%である。また、許容範囲C2の決定に考慮される運動加速度の大きさの範囲は、車両設計上、車両300に生じる運動加速度の範囲である。許容範囲C2は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
本実施の形態では、センサ座標系と車両座標系とが一致している。したがって、車両上下方向の加速度は、加速度センサ3110のZ軸SZ方向の加速度である。このため、重力加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が許容範囲C2を超える場合、加速度センサ3110のZ軸SZに異常が生じていることを検知することができる。
加速度センサ3110の異常判定は、車両停止中に実行されることが好ましい。これにより、運動加速度に起因する加速度センサ由来加速度の変化を除外することができるため、加速度センサ3110の異常判定の精度を高めることができる。この場合、異常判定部31043は、例えば車速センサ312の出力値に基づいて車両300が停止中であることを検知すると、加速度センサ3110の異常判定を開始する。そして、異常判定部31043は、車両停止中に異常判定を周期的に実行する。異常判定部31043は、加速度センサ3110の異常を検知すると、異常発生信号を調節指示部31042及び車両制御ECU302に送信する。
図20は、実施の形態6に係る車両用灯具の制御装置により実行されるオートレベリング制御の一例を示すフローチャートである。このフローの実行タイミングは、実施の形態4(図17)と同様である。
制御部3104は、車両300が停車しているか判断する(S401)。車両300が停車している場合(S401のY)、制御部3104は、前回のルーチンのステップS401における停車判定において車両300が走行中(S401のN)であったか判断する(S402)。前回の判定が走行中であった場合(S402のY)、制御部3104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを算出する(S403)。そして、得られた路面角度θrを新たな路面角度θrの基準値として更新し(S404)、本ルーチンを終了する。
前回の判定が走行中でなかった場合(S402のN)、制御部3104は、重力加速度を用いる加速度センサ3110の異常判定を実行し、加速度センサ3110に異常が発生しているか判断する(S405)。加速度センサ3110に異常が生じている場合(S405のY)、制御部3104は、光軸角度θoを現在角度あるいは所定の基準角度に固定し、車両制御ECU302に異常発生信号を送信して(S406)、本ルーチンを終了する。また、制御部3104は、次回以降のフローの実行を停止する。
加速度センサ3110に異常が生じていない場合(S405のN)、制御部3104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを算出する(S407)。そして、得られた車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節し、また得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新して(S408)、本ルーチンを終了する。車両300が停車していない場合、すなわち走行中である場合(S401のN)、制御部3104は、車両走行中の加速度センサ3110の出力値を用いた補正処理を実行し(S409)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係るレベリングECU3100において、異常判定部31043は、重力加速度と、加速度センサ3110の出力値から導出される車両上下方向の加速度との差に基づいて、加速度センサ3110の異常を判定する。これにより、加速度センサ3110の異常を発見することができるため、異常が発生した加速度センサ3110を用いたオートレベリング制御が実行されることを抑制することができる。よって、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
[実施の形態7]
実施の形態7に係るレベリングECU3100は、レベリングECU3100の車両300への取り付け姿勢が異なる点を除き、実施の形態6に係るレベリングECU3100の構成と共通する。以下、実施の形態7に係るレベリングECU3100について実施の形態6と異なる構成を中心に説明する。
本実施の形態では、加速度センサ3110は、X軸SXと車両300の前後軸VXとが非平行であり、且つZ軸SZと車両300の上下軸VZが非平行となるように、車両300に対して姿勢が定められる(図18参照)。したがって、本実施の形態では、制御部3104が実施の形態5と同様に基準軸情報を有する。加速度センサ3110から出力されるX軸SX、Y軸SY、Z軸SZの各成分の数値は、角度演算部31041が基準軸情報を用いて車両300の前後軸VX、左右軸VY、上下軸VZの成分に変換する。
本実施の形態では、X軸SXと前後軸VX、及びZ軸SZと上下軸VZとがそれぞれ平行でない。よって、加速度センサ由来加速度、すなわち車両上下方向の加速度は、加速度センサ3110の出力値におけるX軸SX成分とZ軸SZ成分とに基づいて導出される。このため、重力加速度と加速度センサ由来加速度との大きさの差が許容範囲C2を超える場合、加速度センサ3110のX軸SX及びZ軸SZのいずれかに異常が生じていることを検知することができる。したがって、本実施の形態によれば、加速度センサ3110の異常判定において判定対象となる軸を増やすことができるため、オートレベリング制御の精度をより高めることができる。
本発明は、上述した各実施の形態4−7に限定されるものではなく、各実施の形態4−7を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくは変形が加えられて得られる実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述の各実施の形態4−7同士、及び上述の各実施の形態4−7と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
実施の形態4−7では、オートレベリング制御として、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸調節を実施し、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸角度を維持する基本制御と、走行中の加速度センサ3110の出力値から導出される直線等の傾きを用いて行われる補正処理とが実行される。しかしながら、特にこの構成に限定されず、レベリングECU3100は、基本制御のみを実行してもよいし、補正処理のみを基本制御として実行してもよい。
実施の形態4及び5では、車速センサ由来加速度を用いる加速度センサ3110の異常判定が実行され、実施の形態6及び7では、重力加速度を用いる加速度センサ3110の異常判定が実行されている。しかしながら、特にこの構成に限定されず、レベリングECU3100は、車速センサ由来加速度を用いる異常判定と、重力加速度を用いる異常判定との両方を実行してもよい。この場合、両方の判定結果を組み合わせて、加速度センサ3110の異常を判断してもよい。
実施の形態5及び7において、Y軸SYと左右軸VYとは平行であるが、Y軸SYと左右軸VYも非平行としてもよい。これにより、加速度センサ3110の3軸に対して異常判定を行うことができる。すなわち、車速センサ由来加速度を用いる異常判定では、X軸SXと車両300の前後軸VXとを非平行とし、且つY軸SYと車両300の左右軸VY、及びZ軸SZと車両300の上下軸VZの少なくとも一方の組み合わせを非平行とすることで、異常判定における判定対象を、センサ座標系と車両座標系とを一致させる場合に比べて広げることができる。また、重力加速度を用いる異常判定では、Z軸SZと車両300の上下軸VZとを非平行とし、且つX軸SXと車両300の前後軸VX、及びY軸SYと車両300の左右軸VYの少なくとも一方の組み合わせを非平行とすることで、異常判定における判定対象を、センサ座標系と車両座標系とを一致させる場合に比べて広げることができる。
実施の形態4及び5において、レベリングECU3100は、路面水平軸PHと路面垂直軸PVとで構成される座標(図16(A)及び図16(B)参照)を備え、この座標を用いて加速度センサ3110の異常判定を実行してもよい。この場合、当該座標に加速度センサ3110の出力値がプロットされ、プロットされた出力値の路面水平軸成分の大きさと車速センサ由来加速度の大きさとが比較される。制御部3104は、上述した初期化処理において、基準状態(第1基準状態)にある車両300における加速度センサ3110の出力値を用いて当該座標を生成する。また、制御部3104は、路面角度θrの変化量を当該座標に反映させる。これにより、加速度センサ3110の異常判定の精度をより高めることができる。
同様に、実施の形態6及び7において、レベリングECU3100は、水平軸QHと鉛直軸QVとで構成される座標(図19(A)及び図19(B)参照)を備え、この座標を用いて加速度センサ3110の異常判定を実行してもよい。この場合、当該座標に加速度センサ3110の出力値がプロットされ、プロットされた出力値の鉛直軸成分の大きさと重力加速度の大きさとが比較される。制御部3104は、上述した初期化処理において、基準状態(第1基準状態)にある車両300における加速度センサ3110の出力値を用いて当該座標を生成する。また、制御部3104は、車両姿勢角度θv及び路面角度θrの変化量を当該座標に反映させる。これにより、加速度センサ3110の異常判定の精度をより高めることができる。
なお、上述した実施の形態4−7及び変形例に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目3]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
車速センサと、
加速度センサと、
前記車両用灯具の光軸角度の調節を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記車速センサ及び前記加速度センサの出力値を示す信号を受信する受信部と、
前記加速度センサの出力値を用いて車両の傾斜角度又はその変化量を導出し、前記車両用灯具の光軸角度の調節信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加速度センサの異常を判定する異常判定部を有し、
前記異常判定部は、車両走行中に得られる前記車速センサの出力値から導出される加速度と、前記加速度センサの出力値から導出される車両前後方向の加速度との差に基づいて、前記加速度センサの異常を判定することを特徴とする車両用灯具システム。
[項目4]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
加速度センサと、
前記車両用灯具の光軸角度の調節を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサの出力値を示す信号を受信する受信部と、
前記加速度センサの出力値を用いて車両の傾斜角度又はその変化量を導出し、前記車両用灯具の光軸角度の調節信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記加速度センサの異常を判定する異常判定部を有し、
前記異常判定部は、車両の存在位置における重力加速度と、前記加速度センサの出力値から導出される車両上下方向の加速度との差に基づいて、前記加速度センサの異常を判定することを特徴とする車両用灯具システム。