JP5285955B2 - 車両用照明装置 - Google Patents

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本発明は、自動車等の車両の走行状況等の情報に基づいて、前照灯のような灯具の配光方向(光の照射方向)を変化させる車両用照明装置に関する。
従来、車両の走行状況に対応して灯具の配光を変化させることができる適応型照明システム(Adaptive Front lighting System:以下、AFSという)が知られており、これによって、車両の運転者の視覚支援、或いは先行車や対向車へのグレア低減を図り、走行安全性を高められる。
例えば、AFSを有する自動車においては、図1に示すように、前後輪のサスペンション装置の近傍に設置されたストロークセンサ1,2や自動車のステアリングホイールの操舵角、自動車の速度その他自動車の走行状況を示す車両情報検出部3からの検出信号を電子制御ユニット(Electronic Control Unit:以下、ECUという)4に入力し、ECU4は、入力された検出信号に基づいて、自動車の前部左右に設置されたスイブル式灯具、すなわち光軸を左右及び鉛直方向に偏向制御可能な前照灯(ヘッドランプ)5を制御する。このような前照灯は、その内部に設けられたリフレクタを水平方向及び鉛直方向に回転駆動することで前照灯の照射方向の角度(以下、配光角度という)を変化させる角度可変手段として、スイブルアクチュエータ6及びレベリングアクチュエータ7を備え、それによって光軸を水平方向に振るスイブル機能と鉛直方向に振るレベリング機能とを有する。
車両情報検出部3は、灯具1の配光を変化させる制御に必要な車両の情報を検出して情報信号をECU4に供給するものであり、操舵角センサや車速センサやヘッドランプスイッチなどで構成される。
ECU4は、車両の走行状況等の車両情報に基づいて灯具の配光角度を制御する配光制御手段を構成するものであり、図2に示すように、上記検出信号を入力して処理する信号処理部4aと、その信号について演算処理する演算部4bと、その演算処理に必要なデータを記憶する記憶部4cと、演算処理結果に基づき上記アクチュエータを制御するための信号を出力する出力部4dとを備えている。そして、操舵角などの車両情報(信号)から車両の走行状態を認識し、それに応じて、光軸を進行先に向けて照射するように左右の前照灯5L,5Rのスイブルアクチュエータ6L,6Rを駆動する制御信号を出力する(運転者の視覚支援)。また、乗車人数や荷物の積載状況、或いは路面の凹凸状態や加減速走行によって生じる車体の前後方向の傾斜角度(ピッチ角)をストロークセンサ1,2で検出し、それに応じて、光軸が常に路面と一定角度をなすように左右の前照灯5L,5Rのレベリングアクチュエータ7L,7Rを鉛直方向に調整する制御信号を出力する(視覚支援及びグレア低減)。
上記AFSによれば、車両が曲線状の道路を走行する際には、その走行状況に対応してカーブ先の道路を照明することが可能になり、走行安全性が高められる。
このようなAFSの機能を実現するアクチュエータには、ステッピングモータが使用され、1個のアクチュエータに少なくとも4本のケーブルが接続されることから、アクチュエータが増加すればそれだけ接続ケーブルも増加し、配線構成が複雑化するという問題がある。これを解消するため、最近では、ECUとアクチュエータとの間の通信を無線方式にすることで、接続用のハーネスを削減するようにしている。その通信プロトコルは、主にLIN(Local Interconnect Network)が使用されている。
上記無線による通信システムは、図3に示すように、センサからの信号その他車両情報を入力するマスタECU10及びこれと無線通信するスレーブECU20で構成される。図3において、マスタECU10とスレーブECU20は、それぞれ図1のECU4と各アクチュエータ6,7に該当する。マスタECU10からモータ制御情報が送信され、スレーブECU20がこれを受信し処理して、モータの位置制御を行う。
このマスタECU10とスレーブECU20のいずれも、演算処理装置(CPU)を備えている。そして、マスタECU10は、そのCPU11に接続される周辺回路として、車両情報などの入力信号を受ける入力インタフェース12、CPU11とスレーブECU20との間で通信するための通信インタフェース13、及び、電源電圧の低下やCPUのプログラム暴走を監視するウォッチドッグタイマ(WDT)リセット回路14を備えて構成されている。一方、スレーブECU20は、そのCPU21に接続される周辺回路として、CPU21とマスタECU10との間で通信するための通信インタフェース22、及び上記ステッピングモータを駆動する信号を出力するモータ駆動回路23を備えて構成されている。
従来、このような通信システムでは、電源を投入すると、ECUのCPUが初期化され、両ECU間の通信が開始される。ここで、マスタECU10はモータ位置初期化信号を送信し、スレーブECU20がこれを受信してモータ位置の初期化を実行し、基準位置を記憶する。その初期化は、ステッピングモータをストッパに向けて駆動し、ストッパに当ったところでステッピングモータを所定のステップ数だけ反転させ、基準位置で停止させるものである。このとき、前記スイブルアクチュエータ6の基準位置は、車両の左右方向の正面中央であり、前記レベリングアクチュエータ7の基準位置は、上下方向の初期エーミング位置(路面と照射光軸のなす角が0.5度の位置)である。その後、配光制御が実行される。
ここで、マスタECU10には、上記のようなWDTが設定されているので、これによって異常を検出すると、CPUをリセットする。このCPUがリセットされたときには、マスタECU10からの通信が遮断されるので、スレーブECU20は、モータ位置を初期化することになる。これが車両の走行中に行われると、上記のようにステッピングモータがストッパまで駆動されるため、車両の照明光軸が変化してしまい、進行先が見えなくなったり対向車にグレアを与えたりして事故の原因となる恐れがある。
これを防止するため、従来の車両用照明装置では、例えば特許文献1に示されるように、異常や障害が発生したとき、マスタECUはCPUをリセットし、スレーブECUは、通信遮断により異常を検出すると、直ちにランプの光軸を基準位置に戻して固定するフェールセーフ処理を行うようにしている。
また、特許文献2に示されるように、車両用前照灯装置において起動後に前回終了時の異常履歴を照会して異常状態で終了していた場合には、初期化処理を行わずに直接フェールセーフ処理を行うことも提案されている。
特許第3643315号公報 特開2007−45257号公報
しかしながら、従来のフェールセーフ処理では、次の電源投入によってシステムを起動しない限り配光制御が行われず、上記AFSの機能が失われたままである。すなわち、従来の車両用照明装置では、異常が発生した場合、フェールセーフ処理によって光軸が固定されるので、電源を再投入してシステムを起動させるまで配光制御が機能しないという問題があった。
本発明は、電源の再投入をしなくても、制御手段が正常に復帰したときにいち早く配光制御機能を再開することができ、また、再開時に運転者に違和感を感じさせないようにする車両用前照灯装置を提供することを目的とする。
本発明は、車両に搭載した灯具の配光角度を変化させる角度可変手段と、該車両の走行状況等の車両情報に基づいて該角度可変手段による灯具の配光角度を制御する配光制御手段とを備え、前記配光制御手段は、電源投入時には、前記角度可変手段により灯具の配光角度を基準位置に設定する初期化処理を行い、異常検出時には、灯具の配光角度を基準位置に固定するフェールセーフ処理を行うように構成される車両用照明装置において、前記配光制御手段は、初期化処理後に設定される初期化フラグを備え、異常検出時には、正常復帰後に初期化フラグをチェックして初期化フラグが設定されている場合には、初期化処理を行わずに前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるか否かをチェックして、前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるとき前記フェールセーフ処理を解除して配光角度の制御を開始することを特徴とする。
本発明によれば、初期化処理後に設定される初期化フラグを監視し、既に初期化が行われていれば、例えば、配光制御手段としてのマスタECUのCPUにリセットがかかっても、初期化処理を行わずに配光制御を開始するようにしたので、マスタECUが正常に復帰したとき、迅速に配光制御機能を再開することができる。
また、初期化フラグが設定されている場合に、配光制御手段は、初期化処理を行わずに前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるか否かをチェックして、前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるとき前記フェールセーフ処理を解除して前記配光角度の制御を開始する。
これによれば、配光制御を再開する際には、制御位置と基準位置(フェールセーフで固定した位置)が重なった時点から再開するので、運転者に違和感や幻惑を与えることがないという効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、前述した図3の通信システムと同様のハードウェア回路で構成され、その動作は、マスタECU10とスレーブECU20の各CPUに設定されたコンピュータプログラムによって実行される。従って、本実施形態のハードウェア構成については説明を省略するが、実施形態で配光制御される前照灯は、車両の前部の左右両側にそれぞれ装備される灯具であって、配光範囲、配光形状、配光明るさのうち少なくとも1つを変化させて、車両の進行方向の視界(視認性)をより広く確保する機能を有するものである。そのような灯具は、スイブル装置によりスイブルして灯具の配光が変化するスイブルタイプであるが、放電灯(メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)など)を光源とするプロジェクタタイプの灯具であってもよい。また、LEDなどの半導体型光源、ハロゲンランプ、白熱ランプなどを光源とするもの、また、反射タイプの灯具、直射タイプの灯具などでもよい。
本実施形態の車両用照明装置の作動について、図4を参照して説明する。
初めに電源投入、すなわち車両のイグニションスイッチがONしてエンジンが始動することにより、システムが起動する。このとき、マスタECU10とスレーブECU20のCPUが初期化され(ST1)、スレーブECU20では、モータ位置初期化フラグをリセット(0にセット)する(ST2)。そして、両ECU間の通信が開始され(ST3)、マスタECU10からスレーブECU20に対してモータ位置初期化命令が送信される(ST4)。この命令を受けて、スレーブECU20はモータ位置初期化フラグが立っているか(1であるか)をチェックする(ST5)。その結果“YES”であれば、後述のST8(スレーブECU20でフェールセーフ対応中か否か)の判断を行う。一方、“NO”であれば、モータ位置の初期化を実施する(ST6)。初期化は、前述のように、ステッピングモータをストッパに向けて駆動し、ストッパに当ったところでステッピングモータを所定のステップ数だけ反転させ、基準位置で停止させる処理である。その後、スレーブECU20は、初期位置を記憶し(ST7)、モータ位置初期化フラグを1にセットする(ST8)。このモータ初期化位置を、フェールセーフ対応時の基準位置とする。
次に、スレーブECU20でフェールセーフ対応中(基準位置に固定中)か否かの判断を行い(ST9)、“YES”であれば、モータの制御位置が基準位置か否かをチェックする(ST10)。その結果“YES”のとき、又はST9の判断で“NO”の場合、マスタECU10でCPUリセット発生か否かを判断し(ST11)、“NO”であれば、配光制御を実施して(ST12)、マスタECU10でのCPUリセット発生の判断(ST11)に戻る。つまり、ST12の配光制御は、マスタECU10でのCPUリセット発生まで行われる。
一方、ST11の判定で“YES”であれば、スレーブECU20が通信異常を検出し(ST13)、フェールセーフ対応として基準位置に固定する(ST14)。そして、マスタECU10の正常復帰をチェックし(ST15)、“NO”であれば、ST14のフェールセーフ対応(基準位置に固定)に戻る。つまり、スレーブECU20のフェールセーフ対応は、マスタECU10が正常復帰するまで行われる。また、ST15の判定で“YES”であれば、上記ST3の通信開始に戻り、両ECU間の通信が開始される。但し、フェールセーフ対応は、ST12の配光制御が実施されるまで解除されない。
上記ST10の判断で“NO”、すなわちモータの制御位置が基準位置でない場合には、ST14のフェールセーフ対応を行い、基準位置を維持する。
上記のように、この実施形態では、モータの初期化完了後にスレーブECU20で初期化フラグを立てること(ST8)が特徴であり、マスタECU10の正常復帰後に(ST15で“YES”)、スレーブECU側の初期化フラグを見て、フラグが立っている場合には(ST5で“YES”)、前述の初期化処理を行わずに配光制御を再開する(ST12)。この時まで、モータ位置はスレーブECU側で記憶されている。
また、フェールセーフ対応(基準位置に固定)中であれば(ST9で“YES”)、モータの制御位置が基準位置であるとき(ST10で“YES”)、ST11の判定で“NO”、すなわちマスタECU10でCPUリセット発生がない限り、フェールセーフ対応が解除される(ST12)ので、配光制御は、制御位置と基準位置が重なった時点から再開される。従って、配光制御の再開時に、運転者に違和感や幻惑を与えることはない。
上記のように、実施形態では、配光制御手段として、車両に搭載されているECUを用いているが、他に、カーナビゲーション(ナビゲーションシステム)のCPUその他のコンピュータを使用してもよい。
また、配光制御手段が行うフェールセーフ処理は、スイブルされている前照灯を基準位置に戻すことのほか、前照灯の光軸を下に向けたり消灯(瞬時消灯、調光消灯)させたりする処理であってもよい。
更に、前照灯には、スイブル装置によりスイブルして配光が変化するスイブルタイプの灯具を用いているが、車両の前部に追加装備される固定式の追加タイプの灯具であってもよい。この場合、配光制御手段が行うフェールセーフ処理は、設定された配光に変化されている灯具を瞬時消灯もしくは調光消灯させて基準状態に戻したり、或いは別個の駆動装置により灯具の光軸を下に向けたりする処理である。
AFSの機能を装備した車両の照明装置の概略構成を示す図。 車両に搭載されたECUとその入出力側の構成を示すブロック図。 ECUとアクチュエータ間で通信するシステムの構成図。 実施形態の作動を示すフローチャート。
符号の説明
1、2…ストロークセンサ、3…車両情報検出部、4…ECU(配光制御手段)、5…前照灯(灯具)、6…スイブルアクチュエータ、7…レベリングアクチュエータ、10…マスタECU、11…CPU、12…入力インタフェース、13…通信インタフェース、14…ウォッチドッグタイマ・リセット回路、20…スレーブECU、21…CPU、22…通信インタフェース、23…モータ駆動回路。

Claims (1)

  1. 車両に搭載した灯具の配光角度を変化させる角度可変手段と、該車両の走行状況等の車両情報に基づいて該角度可変手段による灯具の配光角度を制御する配光制御手段とを備え、前記配光制御手段は、電源投入時には、前記角度可変手段により前記灯具の配光角度を基準位置に設定する初期化処理を行い、異常検出時には、前記灯具の配光角度を基準位置に固定するフェールセーフ処理を行うように構成される車両用照明装置において、
    前記配光制御手段は、前記初期化処理後に設定される初期化フラグを備え、前記異常検出時には、正常復帰後に該初期化フラグをチェックして初期化フラグが設定されている場合には、前記初期化処理を行わずに前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるか否かをチェックして、前記配光角度の制御位置が前記基準位置であるとき前記フェールセーフ処理を解除して前記配光角度の制御を開始することを特徴とする車両用前照灯装置。
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