以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、実施の形態に係るレベリングECUの制御対象である車両用灯具を含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。右側の前照灯ユニット210R及び左側の前照灯ユニット210Lは実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明する。前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、車両後方側に着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には車両用灯具としての灯具ユニット10が収納されている。
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、レベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M,N方向に伸縮することで後傾姿勢、前傾姿勢となり、これにより光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整ができる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、及び投影レンズ20を備える。光源14は、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。リフレクタ16は、少なくとも一部が楕円球面状であり、光源14から放射された光を反射する。光源14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒部材であり、切欠部と複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部又はシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。投影レンズ20は、平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECU及びレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、図2では前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具の制御装置としてのレベリングECU100は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108、加速度センサ110及び補正部112を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、加速度センサ110は、レベリングECU100の外に設けられていてもよい。レベリングECU100には、車両制御ECU302やライトスイッチ304が接続されている。車両制御ECU302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、加速度センサ110の検出値を受信する。
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続されている。これらのセンサから出力された信号は、車両制御ECU302を介してレベリングECU100の受信部102によって受信される。ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号やオートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104が受信する信号のうち加速度センサ110の検出値は、制御部104を介して補正部112に送信される。補正部112は、制御部104から加速度センサ110の検出値を受信し、後述のように検出値を補正する。なお、補正部112は、加速度センサ110の検出値を受信部102から直接受信してもよい。補正された検出値は、メモリ108に保持される。制御部104は、補正部112により補正された加速度センサ110の検出値を用いて、灯具ユニット10の光軸Oを制御する。制御部104は、角度演算部1041及び調節指示部1042を有する。角度演算部1041は、補正部112により補正された加速度センサ110の検出値と必要に応じてメモリ108が保持する情報を用いて車両300のピッチ角度情報を生成する。調節指示部1042は、角度演算部1041で生成されたピッチ角度情報を用いて灯具ユニット10の光軸位置の調節を指示する調節信号を生成し出力する。
制御部104は、調節指示部1042で生成した調節信号を送信部106を介してレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動する。これにより、灯具ユニット10の光軸Oがピッチ角度方向について調整される。制御部104及び補正部112の動作については、後に詳細に説明する。
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302及び前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介して光源14に電力が供給される。
続いて、上述の構成を備えるレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、加速度センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。図4(A)及び図4(B)は、車両の運動加速度ベクトルの方向と車両姿勢角度との関係を説明するための模式図である。図4(A)は、車両姿勢角度θvが変化していない状態を示し、図4(B)は、車両姿勢角度θvが変化している状態を示している。また、図4(A)及び図4(B)において、車両300が前進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを実線矢印で示し、車両300が減速若しくは後進したときに生じる運動加速度ベクトルα及び合成加速度ベクトルβを破線矢印で示している。図5は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示すグラフである。
例えば、車両後部の荷室に荷物が載せられたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷室から荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。車両が後傾姿勢あるいは前傾姿勢になると、灯具ユニット10の照射方向も上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、加速度センサ110の検出値から車両のピッチ方向の傾斜角度又はその変化を導出し、光軸Oのピッチ角度(以下では適宜、この角度を光軸角度θoという)を車両姿勢に応じた角度とする。車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで、車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
加速度センサ110は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。そのため、加速度センサ110は、図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、加速度センサ110は重力加速度ベクトルGを検出することができる。加速度センサ110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。加速度センサ110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部104によって車両の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換される。したがって、加速度センサ110の検出値からは、車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の加速度を導出可能である。
車両停止中の加速度センサ110の検出値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、加速度センサ110の検出値から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θrと、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度θvとを含む、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度θを導出可能である。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θv及び合計角度θは、車両300のピッチ方向の角度である。
これに対し、オートレベリング制御は、車両のピッチ方向の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。すなわち、オートレベリング制御では、車両姿勢角度θvが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置が調節され、路面角度θrが変化した場合に灯具ユニット10の光軸位置が維持されることが望まれる。これを実現するためには、加速度センサ110から得られる合計角度θから、車両姿勢角度θvについての情報を抽出する必要がある。
ここで、車両300は路面に対して平行に移動する。よって、運動加速度ベクトルαは、車両姿勢角度θvによらず路面に対して平行なベクトルとなる。また、図4(A)に示すように、車両300の車両姿勢角度θvが0°であった場合、理論上は車両300の前後軸Lは(車両軸とセンサ軸とが一致する場合は加速度センサ110のX軸も)路面に対して平行となるため、運動加速度ベクトルαは、前後軸L(あるいはセンサのX軸)に平行なベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際に、加速度センサ110によって検出される合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、前後軸Lに対して平行な直線となる。
一方、図4(B)に示すように、車両姿勢角度θvが0°でない場合、前後軸Lは路面に対して斜めにずれるため、運動加速度ベクトルαは、前後軸Lに対して斜めに延びるベクトルとなる。よって、車両300の加減速によって運動加速度ベクトルαの大きさが変化した際の合成加速度ベクトルβの先端の軌跡は、前後軸Lに対して傾いた直線となる。
そこで、角度演算部1041は、車両300の加速時及び減速時の少なくとも一方における、車両前後方向の加速度の変化量と車両上下方向の加速度の変化量との比率を算出する。すなわち、角度演算部1041は、図5に示すように車両前後方向の加速度を第1軸(X軸)に設定し、車両上下方向の加速度を第2軸(Z軸)に設定した座標に、車両300の加速時及び減速時の少なくとも一方における加速度センサ110の検出値をプロットする。点tA1〜tAnは、図4(A)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。点tB1〜tBnは、図4(B)に示す状態での時間t1〜tnにおける検出値である。
そして、プロットした複数点(少なくとも2点)から直線を導出し、得られる直線の傾きを上述した比率として算出する。なお、当該直線はベクトルであってもよい。角度演算部1041は、プロットされた複数点tA1〜tAn,tB1〜tBnに対して最小二乗法や移動平均法等を用いて直線近似式A,Bを求め、当該直線近似式A,Bの傾きを比率として算出する。
車両姿勢角度θvが0°の場合、加速度センサ110の検出値から座標のX軸に平行な直線近似式Aが得られる。すなわち、直線近似式Aの傾きは0となる。これに対し、車両姿勢角度θvが0°でない場合、加速度センサ110の検出値から、車両姿勢角度θvに応じた傾きを有する直線近似式Bが得られる。直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度(図5におけるθAB)が、車両姿勢角度θvとなる。なお、センサ座標系と車両座標系とがずれている場合、加速度センサ110の検出値の生データをプロットして得られる直線近似式Aの傾きには両座標系のずれ分が反映されるため、車両姿勢角度θvが0°であっても傾きは0にならない。しかしながら、この場合は直線近似式Bの傾きについても同様に両座標系のずれ分が反映されるため、直線近似式Aと直線近似式Bとがなす角度を車両姿勢角度θvとすることができる。
したがって、車両300の加減速時における車両前後方向及び車両上下方向の加速度の変化量の比率(直線の傾き)又はその変化を計測することで、加速度センサ110の検出値から車両姿勢角度θv又はその変化を知ることができる。すなわち、上述した直線の傾きから、車両姿勢角度θvを推定可能である。そして、得られた車両姿勢角度θvの情報を利用することで、より高精度なオートレベリング制御を実現することができる。
本実施の形態に係るレベリングECU100は、上述した直線の傾きから得られる車両姿勢角度θvについての情報を利用して、次のようなオートレベリング制御を実行する。すなわち、まず、車両メーカの製造工場等で、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。そして、初期化処理装置のスイッチ操作やCAN(Controller Area Network)システムの通信等により、レベリングECU100に初期化信号が送信される。制御部104は、初期化信号を受けると初期エイミング調整を開始し、灯具ユニット10の光軸Oを初期設定位置に合わせる。また、制御部104は、基準状態における加速度センサ110の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ108に記録する。
また、車両300が基準状態を保ったまま走行させられる。そして、角度演算部1041は、上述した座標に加速度センサ110の検出値をプロットし、このプロットから直線近似式を求める。この直線近似式は、図5における直線近似式Aに対応する。制御部104は、この直線近似式Aの傾きを傾きの基準値としてメモリ108に記録する。
車両300が実際に使用される状況において、車両走行中は積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀である。そのため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。そこで、調節指示部1042は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置を維持するように制御する。光軸位置を維持する場合、光軸調節を指示する調節信号の出力を回避するか、光軸位置の維持を指示する維持信号を出力することで、光軸位置を維持することができる。なお、調節信号の出力の回避は、調節信号を生成しないことで回避してもよいし、調節信号を生成した上で生成した調節信号の出力を回避してもよい。
そして車両停止時に、角度演算部1041が現在(車両停止時)の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを得る。そして、得られた路面角度θrを新たな基準値としてメモリ108に保持する。これにより、路面角度θrの変化と推定される車両走行中の合計角度θの変化が、路面角度θrの基準値に取り込まれる。なお、角度演算部1041は、車両停止時に走行前後での合計角度θの差分を算出し、この差分を路面角度θrの基準値に算入して新たな路面角度θrの基準値を算出してもよい。
前記「車両走行中」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。前記「車両停止時」は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ110の出力値が安定したときである。この「安定したとき」は、加速度センサ110の検出値の単位時間あたりの変化量が所定量以下となったときとしてもよいし、車速センサ312の検出値が0になってから所定時間経過後としてもよい。前記「車両停止時」、「所定量」、及び「所定時間」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
一方、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀である。そのため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。そこで、調節指示部1042は、車両停止中の合計角度θの変化に対して、光軸を調節する。具体的には、車両停止中、角度演算部1041は加速度センサ110の検出値から得られる現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る。得られた車両姿勢角度θvは、新たな基準値としてメモリ108に保持される。車両姿勢角度θvの計算は、例えば所定のタイミングで繰り返し実行される。なお、角度演算部1041は、例えば前回検出した合計角度θと現在の合計角度θとの差分を算出し、この差分を車両姿勢角度θvの基準値に算入して新たな車両姿勢角度θvの基準値を算出してもよい。
そして、調節指示部1042は、得られた車両姿勢角度θv(更新した車両姿勢角度θvの基準値であってもよい)を用いて光軸調節を指示する調節信号を生成する。例えば、調節指示部1042は、予めメモリ108に記録されている車両姿勢角度θvと光軸角度θoとを対応付けた変換テーブルを用いて光軸角度θoを決定し、この光軸角度θoとなるように光軸Oを調節する。前記「車両停止中」は、例えば加速度センサ110の出力値が安定したときから車速センサ312の検出値が0を越えるまでの期間である。前記「車両停止中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
車両300の加速時及び/又は減速時、例えば車両の発進時あるいは停止時を含む所定時間、角度演算部1041は、車両前後方向の加速度を第1軸に設定し車両上下方向の加速度を第2軸に設定した座標に、加速度センサ110の検出値を例えば経時的にプロットし、プロットした複数点から直線近似式を連続的若しくは所定時間毎に算出する。例えば、加速度センサ110の検出値は、所定の時間間隔で繰り返しメモリ108に記憶される。そして、メモリ108に記憶された検出値の数が、直線の算出に用いる予め定められたプロット数に達したとき、角度演算部1041は直線を算出する。そして、角度演算部1041は、得られた直線近似式の傾きとメモリ108に保持されている傾きの基準値とから、車両姿勢角度θvを算出する。なお、メモリ108に保持される検出値は、補正部112により補正された検出値である。補正部112が実施する検出値の補正については、後に詳細に説明する。
調節指示部1042は、得られた車両姿勢角度θvに基づいて調節信号を生成し、光軸角度θoを補正する。また、メモリ108に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を補正する。例えば、調節指示部1042は、直線近似式の傾きから得られた車両姿勢角度θvに対応する光軸角度θoとなるように光軸角度θoを補正する。また、メモリ108に保持されている車両姿勢角度θvの基準値を、直線近似式の傾きから得られた車両姿勢角度θvに書き換える。これにより、路面角度θrの基準値及び車両姿勢角度θvの基準値を繰り返し書き換えることで加速度センサ110の検出誤差等が基準値に積み重なって、オートレベリング制御の精度が低下してしまうことを抑制することができる。制御部104は、車両300の1回の発進から停止までの間における加減速時の加速度センサ110の出力値を記録しておき、車両停止時等に直線近似式を算出して、補正処理を実行してもよい。
なお、制御部104は、現在の直線の傾きと前回の直線の傾きとの差を計算し、この差を基準値へ積算していき、初回計算からの積算値を用いて補正処理を実行してもよい。また、制御部104は、得られた直線近似式の傾きと前回の計算で得られた直線近似式の傾きとを比較し、直線近似式の傾きの変化が検出された場合、当該傾きの変化に基づいて補正処理を実行してもよい。
例えば、メモリ108に保持されている車両姿勢角度θvの基準値がp°であり、直線近似式の傾きの変化の初回計算からの積算値がq°であったとする。あるいは、直近の車両停止時に保持していた車両姿勢角度θvの基準値とその後の発進時、すなわち今回の発進時に保持していた車両姿勢角度θvの基準値との差がp°であり、前回の発進時に算出した直線近似式と今回の発進時に算出した直線近似式の傾きの差がq°であったとする。この場合、調節指示部1042は、車両姿勢角度θvの誤差(p−q)°だけ光軸角度θo及び車両姿勢角度θvの基準値を補正する。また、調節指示部1042は、上述した直線近似式の傾きの変化を検出した場合に、光軸角度θoを水平方向若しくは初期設定位置に近づけ、車両姿勢角度θvの基準値を0°若しくは初期値に近づけるように補正してもよい。
(補正部による検出値補正)
続いて、補正部112が実施する検出値補正について説明する。図6(A)及び図6(B)は、路面角度の傾きに応じた加速度センサの検出値の変化を説明するための図である。図7(A)及び図7(B)は、路面角度の傾きによる加速度センサの検出値と車速から求まる加速度とのずれを説明するための図である。図6(A)、図7(A)及び図7(B)は、車両前後方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示している。図6(B)は、車両左右方向の加速度と車両上下方向の加速度の関係を示している。図7(A)及び図7(B)では、見やすさのために加速度x及び加速度aのベクトルをX軸からずらしている。
走行路面が坂道(縦勾配)である場合や、路面の水はけ等を考慮して走行路面に横勾配が設けられている場合、これらの勾配に起因して加速度センサ110の検出値が変化する。したがって、車両300に同じ加速度がかかった場合でも、走行路面が水平路面である場合と勾配を有する路面である場合とで、検出値のプロット位置にずれが生じる。そのため、走行路面に勾配があると、上述した補正処理の精度が低下するおそれがある。したがって、オートレベリング制御の高精度化を図る上で、勾配を有する路面上で得られた加速度センサ110の検出値を、水平路面上で得られる検出値に相当する値に変換することが望ましい。そこで補正部112は、加速度センサ110の検出値を以下のように補正する。
具体的には、図6(A)に示すように、水平路面上での加速度センサ110の検出値をh、ピッチ方向(縦方向)に角度θr1だけ傾いた路面上での加速度センサ110の検出値をh1とする。この場合、検出値h1のx成分(加速度x)及びz成分(加速度z)は、
(x,z)=(Gsinθr1,Gcosθr1)
となる。一方、検出値hは、
(x,z)=(0,G)
となる。したがって、検出値h1の加速度xは、検出値hに対してGsinθr1だけずれる。また、検出値h1の加速度zは、検出値hに対してG(1−cosθr1)だけずれる。
そこで、補正部112は、下記式(1)に基づいて検出値の車両上下方向の加速度zの補正量Maを導出し、加速度zを補正する(以下では適宜、この補正を縦勾配のz補正という)。縦勾配のz補正において、補正部112は、加速度センサ110の検出値のz成分に補正量Maを加算する。
Ma=G(1−cosθr) ・・・(1)
式(1)において、Gは重力加速度である。また、θrは、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度である。ここで、路面角度θrは、検出値の車両前後方向の加速度xと車両300の車速から求まる車両前後方向の加速度aとの差から推定される。すなわち、図7(A)に示すように、車両300の加減速中に検出される加速度は、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβである。走行路面が水平である場合、重力加速度ベクトルGは加速度センサ110のZ軸あるいは車両300の上下軸に平行である。また、上述したように車両300は路面に対して平行に移動するため、車両300の加減速時に生じる運動加速度ベクトルαは加速度センサ110のX軸あるいは車両300の前後軸に対して平行なベクトルとなる。そのため、合成加速度ベクトルβの加速度xの値は、車速から計算で求まる車両前後方向の加速度aと等しい。
これに対し、図7(B)に示すように、路面角度θrが角度θr1だけ傾いた場合、重力加速度ベクトルGはZ軸に対して角度θr1だけ傾く。そのため、合成加速度ベクトルβの加速度xの値は、重力加速度ベクトルGがZ軸に対して傾いた分だけ大きくなる。このときの重力加速度ベクトルGのx成分はGsinθr1となる。また、加速度xと加速度aとの差(オフセット)は、
差=x−a
で与えられる。また、合成加速度ベクトルβの加速度xは、
x=Gsinθr1+a
で与えられる。この式を変形すると、
x−a=Gsinθr1
が得られる。したがって、差(x−a)は、Gsinθr1と等しい。ここで、加速度xは加速度センサ110の検出値から取得でき、加速度aは車速から計算で求めることができる。また、重力加速度Gは定数である。したがって、加速度xと加速度aとの差から路面角度θrである角度θr1を求めることができる。
また、オートレベリング制御において取り得る路面角度θrの値は、約±30%の範囲に含まれる非常に小さい値である。そのため、Gsinθr1とθr1とは近似する。したがって、Gsinθr1をθr1に置き換えることができる。また、上述のように、
x−a=Gsinθr1
である。よって、
Gsinθr1=x−a=θr1
の式が成り立つ。以上より、角度θr1すなわち路面角度θrは、加速度センサ110の検出値の加速度xと、車速から計算で求まる加速度aとの差から推定することができる。例えば、補正部112は、予めメモリ108に記録されている差(x−a)と路面角度θrとを対応付けた変換テーブルを用いて、路面角度θrを決定する。このように、加速度xと加速度aとの差から路面角度θrを算出することで、補正部112による検出値補正を簡素化することができ、レベリングECU100にかかる負担を軽減させることができる。
また、補正部112は、下記式(2)に基づいて加速度xの補正量Mbを導出して加速度xを補正する(以下では適宜、この補正を縦勾配のx補正という)。縦勾配のx補正において、補正部112は、加速度センサ110の検出値のx成分から補正量Mbを減算する。
Mb=Gsinθr ・・・(2)
式(2)において、Gは重力加速度である。また、θrは路面角度である。路面角度θrは、式(1)のθrと同様に、検出値の車両前後方向の加速度xと車両の車速から求まる車両前後方向の加速度aとの差から推定される。また補正量Mbは、上述したように加速度xと加速度aとの差(x−a)とすることができる。
また、図6(B)に示すように、水平路面上での加速度センサ110の検出値をh、ロール方向(横方向)に路面角度θr1だけ傾いた路面上での加速度センサ110の検出値をh1とする。この場合、検出値h1のy成分(加速度y)及びz成分は、
(y、z)=(y、√(G2−y2))
となる。一方、検出値hは、
(y,z)=(0,G)
となる。したがって、検出値h1の加速度zは、検出値hに対して{G−√(G2−y2)}だけずれる。
そこで、補正部112は、下記式(3)に基づいて加速度zの補正量Mcを導出して加速度zを補正する(以下では適宜、この補正を横勾配のz補正という)。横勾配のz補正において、補正部112は、加速度センサ110の検出値のz成分に補正量Mcを加算する。
式(3)において、Gは重力加速度である。yは検出値の車両左右方向の加速度である。yとしては、実際の車両300の使用状況で得られる検出値群におけるy成分の平均値や、最大値と最小値との間の中間値等を用いることができる。また、Gsinθrを用いてもよい。
補正部112によって縦勾配のz補正、縦勾配のx補正及び横勾配のz補正が施された検出値は、メモリ108に記録される。そして、上述した補正処理において、角度演算部1041は、この補正部112により補正された検出値をプロットして直線を導出し、この直線の傾きから車両姿勢角度θvを得る。そして、調節指示部1042は、この直線から得られる車両姿勢角度θvを用いて光軸Oを調節する。これにより、検出値をプロットして得られる直線からの車両姿勢角度θvの推定精度を高めることができる。そのため、オートレベリング制御の精度を高めることができる。
図8は、実施の形態に係るレベリングECUにより実行されるオートレベリング制御のフローチャートである。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に制御部104により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
まず、制御部104は、車両走行中であるか判断する(S101)。車両走行中である場合(S101のY)、制御部104は、補正部112により補正された加速度センサ110の検出値を用いて直線近似式を算出する(S102)。そして、制御部104は、直線近似式の傾きを用いて光軸角度θo及び車両姿勢角度θvの基準値を補正し(S103)、本ルーチンを終了する。車両走行中でない場合(S101のN)、制御部104は、車両停止時であるか判断する(S104)。車両停止時である場合(S104のY)、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減じて路面角度θrを算出する(S105)。そして、路面角度θrの基準値を算出された路面角度θrに更新し(S106)、本ルーチンを終了する。
車両停止時でない場合(S104のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減じて車両姿勢角度θvを算出する(S107)。続いて、制御部104は、算出された車両姿勢角度θvを用いて光軸角度θoを調節する(S108)。そして、制御部104は、車両姿勢角度θvの基準値を算出された車両姿勢角度θvに更新し(S109)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係るレベリングECU100では、補正部112が、上記式(1)に基づいて加速度zの補正量Maを導出し、上記式(2)に基づいて加速度xの補正量Mbを導出し、上記式(3)に基づいて加速度zの補正量Mbを導出して、検出値の加速度x及び加速度zを補正している。そして、制御部104は、補正部112により補正された検出値を用いて、灯具ユニット10の光軸調節を指示する調節信号を出力している。これにより、検出値をプロットして得られる直線からの車両姿勢角度θvの推定精度を高めることができる。そのため、加速度センサ110を用いたオートレベリング制御の精度、若しくは正確度を高めることができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述の実施の形態と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
上述した実施の形態では、縦勾配のz補正、縦勾配のx補正、及び横勾配のz補正の3つの補正を実施しているが、特にこれに限定されず、実施する補正は、3つの補正の少なくとも1つであればよい。すなわち、実施する補正は3つの補正のうちいずれか1つのみであってもよいし、任意の2つの組み合わせであってもよい。なお、オートレベリング制御の精度向上を図る上での3つの補正の重要度は、重要度が高い順に、縦勾配のz補正、横勾配のz補正、縦勾配のx補正である。
なお、上述の実施形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する車両の傾斜角度を導出可能な加速度センサと、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
前記検出値の車両上下方向の加速度をz、重力加速度をG、前記検出値の車両前後方向の加速度と車両の車速から求まる車両前後方向の加速度との差から推定される、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度をθrとしたとき、下記式(1)に基づいて加速度zの補正量Maを導出して加速度zを補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記検出値を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
Ma=G(1−cosθr) ・・・(1)
[項目2]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する車両の傾斜角度を導出可能な加速度センサと、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
前記検出値の車両上下方向の加速度をz、重力加速度をG、前記検出値の車両左右方向の加速度をyとしたとき、下記式(3)に基づいて加速度zの補正量Mcを導出して加速度zを補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記検出値を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
[項目3]
光軸を調節可能な車両用灯具と、
水平面に対する車両の傾斜角度を導出可能な加速度センサと、
前記車両用灯具の光軸調節を制御するための制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記加速度センサの検出値を受信するための受信部と、
前記検出値の車両前後方向の加速度をx、重力加速度をG、前記検出値の車両前後方向の加速度と車両の車速から求まる車両前後方向の加速度との差から推定される、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度をθrとしたとき、下記式(2)に基づいて加速度xの補正量Mbを導出して加速度xを補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記検出値を用いて、車両用灯具の光軸位置の調節を指示する調節信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とする車両用灯具システム。
Mb=Gsinθr ・・・(2)