以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るレベリングECUの制御対象である灯具ユニットを含む前照灯ユニットの概略鉛直断面図である。この前照灯ユニット210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造である。左右に配置された前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットLの説明は適宜省略する。
前照灯ユニット210Rは、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、その車両後方側に取り外し可能な着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成されている。灯室216には、光を車両前方に照射する灯具ユニット10(車両用灯具)が収納されている。
灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。したがって、灯具ユニット10は、エイミング調整ネジ220の調整状態で定められた灯室216内の所定位置に固定されるとともに、その位置を基準にピボット機構218aを中心として、前傾姿勢または後傾姿勢等に姿勢変化可能である。また、灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。
ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10は、ピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度、すなわち、光軸Oの上下方向の角度を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸Oのピッチ角度を下方に向けるレベリング調整ができる。
灯具ユニット10は、エイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構(図示せず)を配置する。また、ランプブラケット218には前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置される。そして、2本のエイミング調整ネジ220を回転させることで、灯具ユニット10をエイミングピボット機構を中心に上下左右に旋回させ、光軸Oを上下左右に調整することができる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18、光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、および投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。リフレクタ16は、バルブ14から放射された光を反射する。バルブ14からの光およびリフレクタ16で反射した光は、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材であり、軸方向に一部が切り欠かれた切欠部と、複数のシェードプレート(図示せず)とを備える。切欠部またはシェードプレートのいずれかが光軸O上に移動されて、所定の配光パターンが形成される。リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、この楕円球面は、灯具ユニット10の光軸Oを含む断面形状が楕円形状の少なくとも一部となるように設定されている。リフレクタ16の楕円球面状部分は、バルブ14の略中央に第1焦点を有し、投影レンズ20の後方焦点面上に第2焦点を有する。
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置される。バルブ14は、投影レンズ20の後方焦点を含む焦点面である後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。なお、灯具ユニット10の構成は特にこれに限定されず、投影レンズ20を持たない反射型の灯具ユニットなどであってもよい。
図2は、前照灯ユニット、車両制御ECUおよびレベリングECUの動作連携を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、図2では前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lをまとめて前照灯ユニット210としている。また、レベリングECU100は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図2ではそれらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
レベリングECU100(車両用灯具の制御装置)は、受信部102、制御部104、送信部106、メモリ108、および加速度センサ110を備える。レベリングECU100は、例えば車両300のダッシュボード付近に設置される。なお、レベリングECU100の設置位置は特に限定されず、例えば前照灯ユニット210内に設けられてもよい。また、加速度センサ110は、レベリングECU100の外に設けられていてもよい。レベリングECU100には、車両300に搭載された車両制御ECU302や、ライトスイッチ304が接続されている。車両制御ECU302やライトスイッチ304から出力される信号は、受信部102によって受信される。また、受信部102は、加速度センサ110の出力値を受信する。
車両制御ECU302には、ステアリングセンサ310、車速センサ312、ナビゲーションシステム314等が接続されており、これらのセンサ等から各種情報を取得して、レベリングECU100等に送信することができる。例えば、車両制御ECU302は、車速センサ312の出力値をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100は、車両300の走行状態を検知することができる。
ライトスイッチ304は、運転者の操作内容に応じて、前照灯ユニット210の点消灯を指示する信号や、前照灯ユニット210によって形成すべき配光パターンを指示する信号、オートレベリング制御の実行を指示する信号等を、電源306や、車両制御ECU302、レベリングECU100等に送信する。例えば、ライトスイッチ304は、オートレベリング制御の実施を指示する信号をレベリングECU100に送信する。これにより、レベリングECU100はオートレベリング制御を開始する。
受信部102が受信した信号は、制御部104に送信される。制御部104は、受信部102から送られてきた加速度センサ110の出力値と必要に応じてメモリ108に保持している情報をもとに車両300の傾斜角度の変化を導出して、灯具ユニット10の光軸調節を指示する調節信号を生成する。制御部104は、生成した調節信号を送信部106からレベリングアクチュエータ226に出力する。レベリングアクチュエータ226は、受信した調節信号をもとに駆動されて、灯具ユニット10の光軸Oが車両上下方向(ピッチ角度方向)について調整される。
車両300には、レベリングECU100、車両制御ECU302、および前照灯ユニット210に電力を供給する電源306が搭載されている。ライトスイッチ304の操作により前照灯ユニット210の点灯が指示されると、電源306から電源回路230を介してバルブ14に電力が供給される。
続いて、上述の構成を備えたレベリングECU100によるオートレベリング制御について詳細に説明する。図3は、車両に生じる加速度ベクトルと、加速度センサで検出可能な車両の傾斜角度を説明するための模式図である。図4は、実施形態1に係るレベリングECUによって実施されるオートレベリング制御を説明するための模式図である。図5(A)は、荷重変化で生じる車両の加速度の変化を説明するための模式図であり、図5(B)は、微速車両移動で生じる車両の加速度の変化を説明するための模式図である。
たとえば、車両後部の荷室に荷物が載せられていたり後部座席に乗員がいる場合、車両姿勢は後傾姿勢となり、荷物が下ろされたり後部座席の乗員が下車した場合、車両姿勢は後傾姿勢の状態から前傾する。灯具ユニット10の照射方向も車両300の姿勢に対応して上下に変動し、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、レベリングECU100は、加速度センサ110の出力値から車両のピッチ方向の傾斜角度の変化を導出し、レベリングアクチュエータ226を制御して光軸Oのピッチ角度を車両姿勢に応じた角度とする。このように、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで行うオートレベリング制御を実施することで車両姿勢が変化しても前方照射の到達距離を最適に調節することができる。
ここで、加速度センサ110は、例えば互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を有する3軸加速度センサである。加速度センサ110は、任意の姿勢で車両300に取り付けられ、車両300に生じる加速度ベクトルを検出する。走行中の車両300には、重力加速度と車両300の移動により生じる運動加速度とが生じる。そのため、加速度センサ110は、図3に示すように、重力加速度ベクトルGと運動加速度ベクトルαとが合成された合成加速度ベクトルβを検出することができる。また、車両300の停止中、加速度センサ110は、重力加速度ベクトルGを検出することができる。加速度センサ110は、検出した加速度ベクトルの各軸成分の数値を出力する。加速度センサ110から出力されるX軸、Y軸、Z軸の各成分の数値は、制御部104によって車両の前後軸、左右軸、上下軸の成分に変換される。
車両停止中の加速度センサ110の出力値からは、重力加速度ベクトルGに対する車両300の傾きを導出することができる。すなわち、加速度センサ110が検出する加速度から、水平面に対する路面の傾斜角度である路面角度θr(第1角度)と、路面に対する車両の傾斜角度である車両姿勢角度θv(第2角度)とが含まれる、水平面に対する車両の傾斜角度である合計角度θを導出することができる。なお、路面角度θr、車両姿勢角度θvおよび合計角度θは、それぞれ車両300の前後軸の上下方向の角度、言い換えれば車両300のピッチ方向の角度である。
上述したオートレベリング制御は、車両の傾斜角度の変化にともなう車両用灯具の前方照射距離の変化を吸収して、照射光の前方到達距離を最適に保つことを目的とするものである。したがって、オートレベリング制御に必要とされる車両の傾斜角度は、車両姿勢角度θvである。そのため、加速度センサ110を用いたオートレベリング制御では、加速度センサ110が検出する加速度から導出される合計角度θの変化が、車両姿勢角度θvの変化によるものである場合に灯具ユニット10の光軸位置を調節し、路面角度θrの変化によるものである場合に灯具ユニット10の光軸位置を維持するように制御することが望まれる。
そこで、レベリングECU100の制御部104は、車両停止中に合計角度θが変化した場合に光軸を調節し、車両走行中に合計角度θが変化した場合に光軸調節を回避する制御を実施する。車両走行中は、積載荷量や乗車人数が増減して車両姿勢角度θvが変化することは稀であるため、走行中の合計角度θの変化を路面角度θrの変化と推定することができる。一方、車両停止中は、車両300が移動して路面角度θrが変化することは稀であるため、車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角度θvの変化と推定することができる。
制御部104は、加速度センサ110から受信した加速度から合計角度θを導出し、車両停止中の合計角度θの変化に対して光軸調節を指示する調節信号を生成して送信部106を介して出力する。一方、車両走行中の合計角度θの変化に対しては当該調節信号の出力を回避する。制御部104は、調節信号を生成しないことで調節信号の出力を回避する。あるいは、制御部104は、調節信号を生成した上で生成した調節信号の出力を回避してもよい。なお、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸位置の維持を指示する維持信号を生成し、この維持信号を出力するようにしてもよい。
また、制御部104は、車両停止中、灯具ユニット10の光軸Oを調節すべき車両姿勢変化が推定される加速度の変化があるときに調節信号を出力する。灯具ユニット10の光軸Oを調節すべき車両姿勢変化としては、例えば人の乗降や荷物の積み下ろし等の車両300にかかる荷重の変化に起因する変化を挙げることができる。一方、光軸調節の対象から除外すべき車両姿勢変化としては、例えば車両停止時に沈み込んだサスペンションの伸長や、微速発進し直後に停止する微速車両移動に起因する変化を挙げることができる。
車両停止時に車両300が減速することで沈み込んだサスペンションは、車両停止中に徐々に伸長していく(以下、車両停止時のサスペンションの収縮とその後の伸長をサスペンション変位と称する)。サスペンション変位のうち、車両停止時(すなわち車両走行中)に起こるサスペンションの収縮は、制御部104が車両停止中の合計角度θの変化を車両姿勢角θvの変化とみなして光軸調節を実施するため、車両姿勢角θvの変化として扱われない。一方、車両停止中に起こるサスペンションの伸長は車両姿勢角θvの変化として扱われる。したがって、サスペンション変位による合計角度θの変化を光軸調節の対象とすると、もっぱらサスペンションの伸長による合計角度θの変化だけが光軸調節の対象となるため、光軸位置が実際の車両姿勢角度θvに対応する位置からずれてしまう可能性がある。よって、サスペンション変位に起因する車両姿勢変化は、光軸調節の対象から除外すべきである。
また、微速車両移動は、微速発進時にサスペンションの沈み込みをともなう。微速発進時に沈み込んだサスペンションは車両停止中に元の位置に戻るとは限らず、サスペンションの微速車両移動による収縮分の一部は、通常の車両走行中に伸長する場合がある。この車両走行中における微速車両移動による収縮分の伸長は、光軸調節の対象とはならない。そのため、微速車両移動による合計角度θの変化を光軸調節の対象とすると、光軸位置にずれが生じる可能性がある。よって、微速車両移動に起因する車両姿勢変化は、光軸調節の対象から除外すべきである。
なお、微速車両移動は、車速センサ312によって車速の変化が検知されない場合がある。あるいは、通信のタイムラグによって、制御部104は、微速車両移動により変化した加速度を加速度センサ110から受信したときに、車速センサ312から車速信号を受信していない場合がある。これらの場合、制御部104は、車両300が微速発進して走行状態に入ったことを検知できない。そのため、微速車両移動に起因する車両姿勢変化は、車両停止中の車両姿勢変化に含まれ得る。
したがって、上述のように光軸Oを調節すべき車両姿勢変化が推定される加速度の変化があるときに調節信号を出力することで、サスペンション変位や微速車両移動による車両姿勢変化を光軸調節の対象とした場合に生じ得る光軸位置ずれを軽減することができる。
また、車両停止中の合計角度θの変化には、加速度センサ110の検出誤差や制御部104の計算誤差等が含まれる可能性がある。そのため、光軸Oを調節すべき車両姿勢変化が推定される加速度の変化があるときに調節信号を出力することで、車両停止中に光軸調節が所定周期で繰り返された場合に起こり得る光軸位置ずれの増大を回避することができる。
具体的には、制御部104は、図4に示すようにオートレベリング制御を実施する。まず、例えば車両メーカの製造工場やディーラの整備工場などで、車両300が水平面に置かれて基準状態とされる。基準状態では、例えば車両300の運転席に1名乗車している状態とされる。そして、初期化処理装置のスイッチ操作等により、レベリングECU100に初期化信号が送信される。制御部104は、受信部102を介して初期化信号を受けると初期エイミング調整を開始し、灯具ユニット10の光軸Oを初期設定位置に合わせる。また、制御部104は、車両300が基準状態にあるときの加速度センサ110の出力値を、路面角度θrの基準値(θr=0°)、車両姿勢角度θvの基準値(θv=0°)としてメモリ108に記録することで、これらの基準値を保持する。
車両300が実際に使用される状況において、制御部104は、車両走行中の合計角度θの変化に対して光軸調節を回避する(図4の「車両走行中」における「光軸調節回避」)。車両300が走行中であることは、例えば車速センサ312から得られる車速により判断することができる。前記「車両走行中」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときから、車速センサ312の検出値が0となるまでの間である。この「車両走行中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
そして車両停止時に、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して、路面角度θrを得る。そして、得られた路面角度θrを新たな基準値としてメモリ108に保持する。前記「車両停止時」は、例えば車速センサ312の検出値が0となった後、加速度センサ110の検出値が安定したときである。すなわち、制御部104は、車両300の車速が0になってから、車両姿勢が安定するのを待って(図4の「車両停止時」における「路面角度更新待機」)、車両姿勢が安定した後に路面角度θrを更新する(図4の「車両停止時」における「路面角度更新」)。前記「車両停止時」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
なお、制御部104は、車両停止時に算出された路面角度θrと、メモリ108に記録されている路面角度θrの基準値との差が所定量以上であった場合に、路面角度θrの基準値を算出された路面角度θrに更新してもよい。これによれば、路面角度θrの基準値が頻繁に書き換えられることを回避でき、制御部104の制御負担の軽減とメモリ108の長寿命化を図ることができる。
車両停止中、制御部104は、加速度センサ110により検出される加速度に、所定のしきい値を上回る変化があった場合、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して、車両姿勢角度θvを得る。そして、得られた車両姿勢角度θvを新たな基準値としてメモリ108に保持するとともに、更新した車両姿勢角度θvの基準値を用いて調節信号を生成して出力する。すなわち、車両停止中、制御部104は所定のしきい値を上回る加速度の変化(振動)があるまで待機状態をとる(図4の「車両停止中」における「振動待機」)。振動があると、制御部104は、車両姿勢が安定するのを待って(図4の「車両停止中」における「車両姿勢角度更新待機」)、車両姿勢が安定した後に車両姿勢角度θvを更新し、灯具ユニット10の光軸調節を実施する(図4の「車両停止中」における「車両姿勢角度更新、光軸調節実施」)。その後、制御部104は、振動待機状態に戻る。
灯具ユニット10の光軸Oを調節すべき車両姿勢変化は、加速度センサ110により検出される加速度の変化量の大きさから推定することができる。すなわち、通常、荷重変化があった場合は、サスペンション変位や微速車両移動があった場合に比べて車両300がより大きく振動するため、加速度センサ110により検出される加速度はより大きく変化する。したがって、加速度の変化に所定のしきい値を設定し、加速度の変化がこのしきい値を上回るか否かを判断することで、光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定することができる。
車両停止時に合計角度θから車両姿勢角度θvを減算して路面角度θrの基準値を更新し、車両停止中に合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvの基準値を更新する制御では、サスペンション変位や微速車両移動による車両姿勢変化を光軸調節の対象とすると、誤差が路面角度θrおよび車両姿勢角度θvの基準値に累積してしまうが、上述のように光軸Oを調節すべき車両姿勢変化が推定される加速度の変化があるときに調節信号を出力することで、このような誤差の累積を抑制することができる。なお、前記「所定のしきい値」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
制御部104は、加速度の変化の大きさに加えて変化の方向を考慮して光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定してもよい。すなわち、図5(A)に示すように、車両停止中に車両300にかかる荷重の変化があった場合、通常、車両300は前後方向に比べて左右方向および上下方向に大きく揺れるため、加速度センサ110により検出される加速度のうち、車両前後方向に対応する加速度に比べて車両左右方向に対応する加速度と車両上下方向に対応する加速度に大きな変化が見られる。一方、図5(B)に示すように、微速車両移動があった場合、車両300は左右方向および上下方向に比べて前後方向に大きく揺れるため、加速度センサ110により検出される加速度のうち、車両左右方向に対応する加速度と車両上下方向に対応する加速度に比べて車両前後方向に対応する加速度に大きな変化が見られる。
また、図5(A)および図5(B)の比較から分かるように、車両停止中に荷重変化があった場合、微速車両移動があった場合に比べて、車両前後方向に対応する加速度の変化が小さく、車両左右方向に対応する加速度および車両上下方向に対応する加速度の変化が大きい。また、図示は省略するが、サスペンションの変位があった場合は、荷重変化があった場合に比べて車両前後方向、左右方向、上下方向の加速度の変化が小さい。
そこで、制御部104は、加速度センサ110により検出される加速度から導出される車両の前後方向の加速度、左右方向の加速度および上下方向の加速度の少なくとも1つの変化に基づいて、光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定することができる。例えば、制御部104は、これら3つの加速度の少なくとも1つについて所定のしきい値を設定し、加速度の変化がこの所定のしきい値を上回るか否か判断することで光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定することができる。
このように、加速度の変化の大きさに加えて変化の方向を考慮することで、光軸Oを調節すべき車両姿勢変化をより高精度に推定することができる。なお、車両300にかかる荷重の変化と微速車両移動とでは、車両前後方向の加速度に大きな差がある。そのため、前後方向の加速度の変化と、左右方向または上下方向の加速度の変化とに基づいて光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定することで、荷重変化と微速車両移動とをより高精度に識別することができるため、光軸Oを調節すべき車両姿勢変化をより高精度に推定することができる。また、FFT(Fast Fourier Transform)による周波数解析によって灯具ユニット10の光軸Oを調節すべき車両姿勢変化を推定してもよい。
なお、制御部104は、算出された車両姿勢角度θvと、メモリ108に記録されている車両姿勢角度θvの基準値との差が所定量以上であった場合に、車両姿勢角度θvの基準値を算出された車両姿勢角度θvに更新し、光軸調節を実施してもよい。これによれば、車両姿勢角度θvの基準値の書き換えと光軸調節が頻繁に実施されることを回避でき、制御部104の制御負担の軽減とメモリ108およびレベリングアクチュエータ226の長寿命化を図ることができる。前記「車両停止中」は、例えば加速度センサ110の検出値が安定したときから車両発進時までであり、この「車両発進時」は、例えば車速センサ312の検出値が0を越えたときである。前記「車両停止中」は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
図6は、実施形態1に係るレベリングECUにより実行されるオートレベリング制御フローチャートである。図6のフローチャートではステップを意味するS(Stepの頭文字)と数字との組み合わせによって各部の処理手順を表示する。このフローは、たとえばライトスイッチ304によってオートレベリング制御モードの実行指示がなされている状態において、イグニッションがオンにされた場合に制御部104により所定のタイミングで繰り返し実行され、イグニッションがオフにされた場合に終了する。
まず、制御部104は、車両走行中であるか判断する(S101)。車両走行中である場合(S101のY)、制御部104は、光軸調節を回避して(S102)、本ルーチンを終了する。車両走行中でない場合(S101のN)、制御部104は、車両停止時であるか判断する(S103)。車両停止時である場合(S103のY)、制御部104は、現在の合計角度θから車両姿勢角度θvの基準値を減算して路面角度θrを計算し(S104)、計算された路面角度θrを新たな基準値として更新する(S105)。その後、制御部104は、光軸調節を回避して(S102)、本ルーチンを終了する。
車両停止時でない場合(S103のN)、この場合は車両停止中であることを意味するため、制御部104は、しきい値を上回る加速度の変化があるか判断する(S106)。しきい値を上回る加速度の変化がない場合(S106のN)、制御部104は、本ルーチンを終了する。しきい値を上回る加速度の変化がある場合(S106のY)、制御部104は、現在の合計角度θから路面角度θrの基準値を減算して車両姿勢角度θvを計算し(S107)、計算された車両姿勢角度θvを新たな基準値として更新する(S108)。そして、制御部104は、更新された車両姿勢角度θvの基準値に基づいて光軸を調節し(S109)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るレベリングECU100は、車両停止中、灯具ユニット10の光軸Oを調節すべき車両姿勢変化が推定される加速度の変化があるときに光軸調節を実施し、車両走行中は光軸調節を回避している。これにより、サスペンション変位や微速車両移動による車両姿勢変化を光軸調節の対象とした場合に生じ得る光軸位置ずれを軽減することができる。そのため、加速度センサ110を用いて灯具ユニット10の光軸調節を実施するオートレベリング制御の精度を高めることができる。
なお、上述したレベリングECU100は、本発明の一態様である。このレベリングECU100は、加速度センサ110で検出される加速度を受信する受信部102と、上述したオートレベリング制御を実行する制御部104とを有する。
本発明の他の態様としては、車両用灯具システムを挙げることができる。この車両用灯具システムは、灯具ユニット10と、加速度センサ110と、レベリングECU100と(実施形態1ではレベリングECU100に加速度センサ110が含まれている)を有する。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれる。