JP2020165412A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】高圧配線をできる限り短くすることで、コストの削減と故障又は断線の発生の回避とを共に実現する。【解決手段】内燃機関10は、点火プラグ96が点火するために必要な電圧を発生する点火コイル88を有する。内燃機関10は、車両の車体フレーム16に支持された状態で車両に搭載されている。点火コイル88は、平面視で、シリンダ室を備えるシリンダブロック54と重なるように、シリンダブロック54の上部に配置されている。【選択図】図3

Description

本発明は、ピストンを収容するシリンダと、シリンダヘッドとによって形成される燃焼室に臨むように、シリンダヘッドに点火プラグが取り付けられている内燃機関に関する。
例えば、特許文献1には、車両に搭載された内燃機関において、シリンダの側面に点火コイルを配置することが開示されている。
特開2009−191750号公報
特許文献1では、シリンダの側面に配置された点火コイルと、シリンダヘッドの上面に取り付けられた点火プラグとを高圧配線で接続し、点火コイルから高圧配線を介して点火プラグに高電圧を供給している。
このように、特許文献1では、内燃機関の側面(シリンダの側面)から内燃機関の上面(シリンダヘッドの上面)に高圧配線を引き回す必要があるため、高圧配線が長くなり、コストがかかる。また、点火コイル及び高圧配線が内燃機関から車両の車幅方向に突出するので、内燃機関を搭載する車両の外観性が低下する。さらに、車両の走行時の側面衝突又は進行方向の前方から飛来する飛び石等によって、点火コイルが故障し、又は、高圧配線が断線する可能性もある。
そこで、本発明は、高圧配線をできる限り短くすることで、コストの削減と故障又は断線の発生の回避とを共に実現することができる内燃機関を提供することを目的とする。
本発明の態様は、往復運動を行うピストン(72)を少なくとも1つ収容する少なくとも1つのシリンダ(54、74)と、前記シリンダ(54、74)に取り付けられ、該シリンダ(54、74)と共に燃焼室(102)を形成するシリンダヘッド(56)と、前記燃焼室(102)に臨むように前記シリンダヘッド(56)に取り付けられる点火プラグ(96)とを有する内燃機関(10)に関する。この場合、前記内燃機関(10)は、前記点火プラグ(96)を点火させるために必要な電圧を発生する点火コイル(88)をさらに有し、車両(12)の車体フレーム(16)に支持された状態で該車両(12)に搭載されている。また、前記点火コイル(88)は、平面視で前記シリンダ(54、74)と重なるように、前記シリンダ(54、74)の上面に配置されている。
また、前記内燃機関(10)は、前記シリンダヘッド(56)に接続される吸気部材(100)をさらに有する。この場合、前記点火コイル(88)は、側面視で前記シリンダヘッド(56)又は前記吸気部材(100)よりも後方に配置されている。
さらに、前記吸気部材(100)は、前記内燃機関(10)の吸気量を制御するスロットルボディ(100a)と、前記スロットルボディ(100a)と前記燃焼室(102)に連通する吸気ポート(104)とを接続する吸気パイプ(100b)とを有する。前記点火コイル(88)は、側面視で前記スロットルボディ(100a)よりも後方に配置されている。
また、前記内燃機関(10)は、始動用の電動機(66)をさらに有する。この場合、前記点火コイル(88)は、側面視で前記電動機(66)よりも前方に配置されている。
また、前記内燃機関(10)は、前記ピストン(72)の往復運動に起因して回転する回転軸(68)と、前記回転軸(68)の回転数を検知する回転数検知部(70)とをさらに有する。この場合、前記点火コイル(88)は、側面視で前記回転数検知部(70)よりも前方に配置されている。
また、前記内燃機関(10)は、複数の軸部材(68、136、138)を収容するケース(52)をさらに有する。この場合、前記ケース(52)の上部には、前記車体フレーム(16)に結合するための結合ボス(58a)が設けられている。前記点火コイル(88)は、側面視で前記結合ボス(58a)よりも前方に配置されている。
さらにまた、前記点火コイル(88)は、平面視で前記車体フレーム(16)と重なるように配置されている。
また、前記内燃機関(10)は、前記燃焼室(102)に接続される吸気部材(100)と、始動用の電動機(66)とをさらに有する。この場合、前記点火コイル(88)は、正面視で前記吸気部材(100)及び前記電動機(66)と重なるように配置されている。
さらに、前記点火コイル(88)は、ステー部材(86)を介して前記シリンダ(54、74)に取り付けられている。
また、前記内燃機関(10)は、前記シリンダ(54、74)を介して前記シリンダヘッド(56)に連結されるケース(52)をさらに有する。この場合、前記点火コイル(88)又は前記ステー部材(86)の少なくとも一部は、側面視で前記シリンダヘッド(56)の頂部と前記ケース(52)の頂部とを結ぶ仮想線(108)よりも下方に位置する。
なお、前記車両(12)は、鞍乗型車両であればよい。
本発明によれば、シリンダの上面に点火コイルが配置されるので、点火コイルを点火プラグに近接して配置することができる。これにより、高価な高圧配線を可能な限り短くすることができる。
また、点火コイル及び高圧配線が内燃機関から車両の車幅方向に突出することを回避することができる。これにより、内燃機関を搭載する車両の外観性が向上する。さらに、車両の走行時の側面衝突又は飛び石等に起因する点火コイルの故障及び高圧配線の断線の発生を抑制することができる。
また、上下方向に突出しやすい吸気部材の近くに点火コイルを配置することで、車体フレームと内燃機関との間のデッドスペースを有効活用することができる。
また、スロットルボディは、スペースを取るため、デッドスペースが生じやすい。そこで、スロットルボディの後方に点火コイルを配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。また、スロットルボディに接続される配線類や点火コイルに接続される配線を、効率よくまとめることができる。
また、内燃機関では、クランクケース側で最も突出する部品がセルモータである場合が多い。特に、車両において、車体フレームと内燃機関との距離が開く前方部分は、デッドスペースとなりやすい。そこで、電動機の前方に点火コイルを配置することで、デッドスペースをより有効に活用することができる。また、電動機の配線と点火コイルの配線とを効率よくまとめることもできる。
また、内燃機関では、クランクケースの上面の前方部分に、回転数検知部のようなピックアップセンサを設けることが多い。この結果、回転数検知部の周囲がデッドスペースとなりやすい。そこで、回転数検知部の前方に点火コイルを配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。また、回転数検知部の配線と点火コイルの配線とを効率よくまとめることができる。
また、カブ型の自動二輪車の車両では、クランクケースの上面で車体フレームと結合する場合が多い。この結果、結合ボスの周囲がデッドスペースとなりやすい。そこで、結合ボスの前方に点火コイルを配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。
また、点火コイルは、シリンダブロックと同様に、高温となりやすいので、平面視で車体フレームと重なるように点火コイルを配置することで、高温となる部材の車幅方向の突出を防ぐと共に、触れにくい配置とすることができる。
また、正面視で吸気部材及び電動機と重なるように点火コイルを配置することで、上下方向への点火コイルの突出を防ぎつつ、内燃機関の省スペース化を実現することができる。
この場合、ステー部材を介してシリンダブロックに点火コイルを取り付けることで、シリンダブロックからの熱で点火コイルが高熱になることを回避することができる。
また、シリンダヘッドの頂部とケースの頂部とを結ぶ仮想線と、クランクケース、シリンダブロック及びシリンダヘッドの各上部とを結んでできる領域は、デッドスペースとなりやすい。そこで、このような領域に点火コイル又はステー部材を配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。
なお、車両が鞍乗型車両であることで、上述した効果を容易に奏することができる。
車両の左側面図である。 図1の内燃機関の左側面図である。 図1の内燃機関の右側面図である。 図1の内燃機関の平面図である。 図2のV−V線に沿った断面図である。 図5のVI−VI線に沿った断面図である。 クランクケースを破断して図示した平面図である。 クランクケースを破断して図示した斜視図である。 ガスケットの平面図である。 図4のX−X線に沿った断面図である。 図2のXI−XI線に沿った断面図である。 シリンダヘッドの底面図である。 図3のXIII−XIII線に沿った断面図である。 図3のXIV−XIV線に沿った断面図である。
以下、本発明に係る内燃機関について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[1.車両12の概略構成]
図1は、本実施形態に係る内燃機関10を搭載した車両12の左側面図である。なお、本実施形態では、車両12のシート14に着座した運転者から見た方向を基準に、車両12の前後、左右及び上下の方向を説明する。また、左右一対の構成要素については、左側の構成要素の参照数字に「L」、右側の構成要素の参照数字に「R」の符号を付けて説明する場合がある。
本実施形態は、図1に示すカブ型の自動二輪車に適用される。なお、本実施形態は、図1の自動二輪車に限定されることはなく、各種の鞍乗型の車両及び原動機(内燃機関)に適用可能である。
車両12は、車体フレーム16を有する。車体フレーム16は、ヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18から斜め下後方に延びる単一のメインフレーム20と、メインフレーム20の後端部から斜め上後方に延びるシートフレーム22とを備える。
ヘッドパイプ18の上端には、運転者が操作する操向ハンドル24が軸支されている。ヘッドパイプ18の下端には、ステアリングステム26を介して、左右一対のフロントフォーク28L、28Rが操舵可能に軸支されている。フロントフォーク28L、28Rの下端は、前輪30を軸支する。
メインフレーム20の下方には、内燃機関10(パワーユニット)が支持されている。メインフレーム20の後端部には、左右一対のピボットブラケット32L、32Rが下方に延びている。ピボットブラケット32Lには、スイングアーム34の前端部が上下方向に揺動可能に支持されている。スイングアーム34の後端は、後輪36(被回転運動部)を軸支する。シートフレーム22とスイングアーム34との間には、リヤクッション38が連結されている。シートフレーム22の上方には、シート14が配置されている。
車体フレーム16は、車体カバー40で覆われている。車体カバー40は、フロントカバー42、左右一対のメインフレームカバー44L、44R、レッグシールド46、アンダーカウル48及びボディカバー50等を有する。フロントカバー42は、ヘッドパイプ18を前方から覆う。各メインフレームカバー44L、44Rは、メインフレーム20等を左右から覆う。レッグシールド46は、フロントカバー42と各メインフレームカバー44L、44Rとを連結し、運転者の足を前方から覆う。アンダーカウル48は、各メインフレームカバー44L、44Rを下方で連結する。ボディカバー50は、メインフレーム20の後端部及びシートフレーム22等を覆う。
[2.内燃機関10の構成]
次に、内燃機関10の構成について、図2〜図14を参照しながら説明する。ここでは、内燃機関10の外観構成、内部構成、及び、各部の構成について、説明する。
<2.1 内燃機関10の外観構成>
先ず、図2〜図4を参照して、内燃機関10の外観構成を説明する。
内燃機関10は、メインフレーム20の下方で、メインフレーム20及びピボットブラケット32L、32Rに支持された状態で、車両12に搭載されている。内燃機関10は、クランクケース52(パワーユニットケース)と、クランクケース52の前端部から斜め上前方に傾斜して延びるシリンダブロック54(シリンダ)と、シリンダブロック54の前端部に連結されたシリンダヘッド56とを有する。
クランクケース52は、金属製のケースである。クランクケース52の上部(上壁、上面)には、メインフレーム20側に膨出する1つの結合ボス58aが設けられている。また、クランクケース52の後部(後壁、後面)には、ピボットブラケット32L、32R側に膨出する2つの結合ボス58b、58cが設けられている。一方、メインフレーム20の後端部側には、クランクケース52の上部に向かって下方に延びる左右一対のリブ60L、60Rが設けられている。
クランクケース52の上部の結合ボス58aには、車幅方向にネジ孔が形成されている。該ネジ孔には、左右一対のリブ60L、60Rに形成された孔をそれぞれ挿通する2本のボルト62aが螺合している。また、クランクケース52の後部の2つの結合ボス58b、58cには、車幅方向にネジ孔が形成されている。結合ボス58bのネジ孔には、ピボットブラケット32L、32Rにそれぞれ形成された孔を挿通する2本のボルト62bが螺合している。結合ボス58cのネジ孔には、ピボットブラケット32L、32Rにそれぞれ形成された孔を挿通する2本のボルト62cが螺合している。これにより、クランクケース52を含む内燃機関10は、メインフレーム20の直下において、車体フレーム16に支持される。
そして、内燃機関10には、各種の構成要素が連結されている。この場合、車体フレーム16(メインフレーム20)と内燃機関10との間は、デッドスペース(空間)となっている。そこで、本実施形態では、これらの構成要素の内燃機関10から車幅方向への突出を回避するため、各種の構成要素がデッドスペースに配置されている。
具体的に、クランクケース52の上部において、結合ボス58aの前方には、始動用の電動機66が配置されている。クランクケース52内には、車幅方向に延びる内燃機関10の駆動軸(回転軸)としてのクランク軸68(クランクシャフト、動力発生部)が収容されている(図2、図3、図5及び図6参照)。電動機66は、クランクケース52の上部におけるクランク軸68の上方に配置されている。
また、クランクケース52の上部において、始動用の電動機66の前方には、回転数検知部70が取り付けられている。回転数検知部70は、車両12の車速に応じたクランク軸68の回転数を検知するセンサ(車速センサ、ピックアップセンサ)であって、クランク軸68の軸心に指向するように、クランクケース52の上部から斜め上前方に延びた状態で該クランクケース52に取り付けられている。
シリンダブロック54は、往復運動を行うピストン72を収容するシリンダ室74(シリンダ)を有する(図5及び図6参照)。シリンダブロック54には、シリンダ室74の軸線方向、すなわち、クランクケース52からシリンダブロック54が延びる斜め上前方の方向に沿って、複数の挿通孔76が形成されている。シリンダヘッド56にも、シリンダ室74の軸線方向に沿って、複数の挿通孔78が形成されている。シリンダブロック54の複数の挿通孔76と、シリンダヘッド56の複数の挿通孔78とは、互いに連通しており、各挿通孔76、78には、スタッドボルト等の締結部材80が挿通する。
この場合、複数の挿通孔76を挿通する複数の締結部材80は、それぞれ、一端部がクランクケース52に形成された不図示のネジ穴に螺合し、他端部がシリンダヘッド56側でナット82と螺合する。これにより、クランクケース52に対してシリンダブロック54及びシリンダヘッド56が順に取り付けられる。
シリンダブロック54の外周面には、シリンダ室74の軸線方向に略直交する方向(交差方向)に複数の冷却フィン84が形成されている。また、シリンダブロック54の上部(上面)には、枠板状のステー部材86が固定されている。ステー部材86の上面には、シリンダブロック54から離間した状態で、点火コイル88が取り付けられている。
シリンダヘッド56は、図5及び図6に示す動弁機構90(動弁構造)及び吸排気系統を収容する本体部分と、ヘッドカバーに相当する部分とを一体化した構造を有する。シリンダヘッド56の外周面のうち、シリンダブロック54側には、シリンダ室74の軸線方向に対して略直交する方向(交差方向)に複数の冷却フィン92が形成されている。
シリンダヘッド56の右側面におけるシリンダブロック54側の中央部分には、プラグホール94が形成されている。プラグホール94には、点火プラグ96が取り付けられている。点火プラグ96と点火コイル88とは、高圧配線98を介して接続されている。点火コイル88は、点火プラグ96を点火するために必要な高電圧を発生し、発生した高電圧を、高圧配線98を介して点火プラグ96に供給する。
シリンダヘッド56の上部には、吸気部材100が接続されている。吸気部材100は、内燃機関10の吸気量を制御するスロットルボディ100aと、スロットルボディ100aと後述する燃焼室102に連通する吸気ポート104(図6参照)とを接続する吸気パイプ100bとを有する。吸気パイプ100bには、燃焼室102に燃料を噴射するインジェクタ106が取り付けられている。従って、点火コイル88の前方に吸気部材100及びインジェクタ106が配置されている。
前述のように、内燃機関10は、メインフレーム20の直下で車体フレーム16に支持され、且つ、メインフレーム20と内燃機関10との間のデッドスペースに該内燃機関10に接続される各種の構成要素が配置されている。従って、図4の平面視で示すように、各種の構成要素は、内燃機関10及びメインフレーム20と重なるように内燃機関10の上部に配置されている。
すなわち、点火コイル88は、図4の平面視で、シリンダブロック54と重なるように、シリンダブロック54の上部に配置されている。また、点火コイル88は、図2及び図3の側面視で、シリンダヘッド56及び吸気部材100(スロットルボディ100a、吸気パイプ100b)の後方、且つ、3つの結合ボス58a〜58c、回転数検知部70及び電動機66よりも前方に配置されている。さらに、点火コイル88は、図4を参照して、前方から見ると、正面視で、吸気部材100及び電動機66と重なるように配置されている。しかも、図2及び図3の側面視で、シリンダヘッド56の頂部(上端部)とクランクケース52の頂部(上部側の結合ボス58a)とを結ぶ二点鎖線の仮想線108を設定した場合、点火コイル88又はステー部材86の少なくとも一部は、該仮想線108よりも下方の空間(仮想線108と内燃機関10との間の空間)に位置するように、シリンダヘッド56の上部に配置されている。
<2.2 内燃機関10の内部構成>
次に、図5〜図14を参照して、内燃機関10の内部構成について説明する。内燃機関10は、クランク軸68の軸方向(軸線)が車幅方向に沿った空冷単気筒エンジンである。なお、内燃機関10の主要な構成要素は、例えば、特開2016−160812号公報及び特許第6002269号公報に開示されている。そのため、内燃機関10の内部構成の説明では、これらの公報に開示されている構成要素と同じ構成要素については、概略的に説明し、その作用については説明を簡略化するか、又は、省略する。
(2.2.1 クランクケース52及びシリンダブロック54側の内部構成)
先ず、内燃機関10のクランクケース52及びシリンダブロック54側の内部構成について、図5〜図8を参照しながら説明する。
クランクケース52は、車幅方向に略直交する分割面(図5、図7及び図8に示す左右中心面110)を境に、左側の第1ケース112Lと右側の第2ケース112Rとに分割可能なケースである。第1ケース112Lの左側方には、第1ケースカバー114L(図1、図2、図4及び図5参照)が取り付けられている。一方、第2ケース112Rの右側方には、第2ケースカバー114R(図3〜図5参照)が取り付けられている。また、クランクケース52は、マニュアルトランスミッション等の変速機を収容するミッションケースを兼ねている。クランクケース52を含む内燃機関10の内部では、エンジンオイルとしての潤滑液が適宜循環、撹拌されている。
シリンダブロック54は、円筒状のシリンダスリーブ116を有する。シリンダスリーブ116は、左右中心面110に沿った軸線を有し、シリンダ室74を形成する。シリンダ室74には、ピストン72が左右中心面110(シリンダ室74の軸線)に沿って往復動可能に嵌装されている。
ピストン72は、コネクティングロッド118を介してクランク軸68のクランクピン120に連結されている。クランク軸68は、クランクピン120を支持する左右のクランクウェブ122L、122Rと、各クランクウェブ122L、122Rから左右外側にそれぞれ突出するジャーナル部124L、124Rと、各ジャーナル部124L、124Rからさらに左右外側にそれぞれ延びる延長軸126L、126Rとを有する。従って、ピストン72の往復運動の動力は、クランク軸68によって回転運動の動力に変換される。
第1ケース112L側(左側)の延長軸126Lの基端側には、カムドライブスプロケット128が設けられている。シリンダブロック54内の左側には、シリンダ室74の軸線方向に沿った動力伝達機構収容室130が形成されている。動力伝達機構収容室130には、カムドライブスプロケット128を含むチェーン式伝動機構としての動力伝達機構132が収容されている。シリンダヘッド56内には、動力伝達機構132に回転可能に連結されたカム軸134が設けられている。カムドライブスプロケット128を含む動力伝達機構132は、クランク軸68の回転運動の動力をカム軸134に伝達することで、クランク軸68と連動してカム軸134を回転駆動させる。
クランクケース52の内部には、互いに略平行に車幅方向に延びる複数の回転軸が配置されている。複数の回転軸とは、前述のクランク軸68と、クランク軸68の後方に配置されたメイン軸である第1変速軸136(第1被動軸)と、第1変速軸136の後方に配置されたカウンタ軸である第2変速軸138(第2被動軸)とである。
第1ケース112Lの左側の側壁140Lと第2ケース112Rの右側の側壁140Rとは、互いに向かい合う一対の側壁140L、140Rを構成する。一対の側壁140L、140Rには、上述した複数の回転軸の両端部を回転自在に軸支する支持孔142L、142R(図8参照)が形成されている。従って、クランクケース52内において、クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138は、それぞれ、一対の側壁140Lに形成された2つの支持孔142L、142Rに回転自在に軸支され、且つ、車幅方向に配置されている。
クランクケース52内において、クランク軸68と第1変速軸136との間には、第1動力伝達装置144が設けられている。また、クランクケース52内において、第1変速軸136と第2変速軸138との間には、第2動力伝達装置146が設けられている。さらに、クランクケース52内において、第2変速軸138の後方には、キックスピンドル148が配置されている。
第1動力伝達装置144は、クランクケース52内の第2ケース112R側に設けられ、クランク軸68による回転運動の動力を第1変速軸136に伝達する。第2動力伝達装置146は、左右中心面110を跨ぐように、クランクケース52内に設けられ、第1変速軸136による回転運動の動力を第2変速軸138に伝達する。第2変速軸138は、第2動力伝達装置146から伝達された動力を、第1ケース112Lの後部左側の機関出力部150に出力し、機関出力部150からスイングアーム34内のチェーン式伝動機構152を介して後輪36(図1参照)に伝達する。
第1動力伝達装置144は、クランクケース52内の第2ケース112R側でクランク軸68の右端部(右側の延長軸126R)に連結された遠心クラッチ154と、クランクケース52内の第2ケース112R側で第1変速軸136の右端部に連結された多板クラッチ156とを有する。
遠心クラッチ154は、右側の延長軸126Rに同軸支持されており、クラッチアウタ154a、クラッチインナ154b及び遠心ウェイト154cを有する。クラッチアウタ154aは、右方に開放する有底円筒部材であり、右側の延長軸126Rに相対回転可能に支持されている。クラッチインナ154bは、クラッチアウタ154aの内周側で、右側の延長軸126Rに一体回転可能に支持されている。遠心ウェイト154cは、クラッチアウタ154aの内周側で、クラッチインナ154bに拡開作動可能に支持されている。なお、クラッチインナ154bの右側には、遠心分離式のオイルフィルタ158が形成されている。
遠心ウェイト154cは、クランク軸68の停止時及び低速回転時には、クラッチアウタ154aの内周面から離間し、遠心クラッチ154を動力伝達不能な切断状態とする。また、遠心ウェイト154cは、クランク軸68の回転数の上昇に伴い拡開作動し、所定回転数以上でクラッチアウタ154aの内周面に摩擦係合し、遠心クラッチ154を動力伝達可能な接続状態とする。
クラッチアウタ154aの中心部には、ワンウェイクラッチ160が嵌合している。ワンウェイクラッチ160は、クラッチアウタ154aに先んじてクラッチインナ154b及びクランク軸68が正転する場合、フリー状態となってトルク伝達を行わない。これにより、クラッチインナ154b及びクランク軸68は、クラッチアウタ154aに対して空転する。なお、クランク軸68の正転とは、内燃機関10の運転時の回転に相当する。
また、ワンウェイクラッチ160は、クラッチインナ154b及びクランク軸68に先んじてクラッチアウタ154aが正転する場合、又は、クラッチアウタ154aに対してクラッチインナ154b及びクランク軸68が逆転する場合、クラッチインナ154bの回転速度が所定速度未満であれば、フリー状態を保ってトルク伝達を行わない。これにより、クラッチアウタ154aは、クラッチインナ154b及びクランク軸68に対して空転する。
一方、ワンウェイクラッチ160は、クラッチインナ154bの回転速度が所定速度以上になると、ワンウェイ作動状態となる。この状態でクラッチインナ154b及びクランク軸68に先んじてクラッチアウタ154aが正転すると、トルク伝達が可能となり、クラッチアウタ154a、クラッチインナ154b及びクランク軸68が一体に正転可能となる。
クラッチアウタ154aの中央部左側には、左方に延びる円筒状の伝動筒154dが設けられる。伝動筒154dの左端側には、プライマリドライブギヤ162が一体回転可能に設けられる。プライマリドライブギヤ162は、第1変速軸136の右側部に相対回転可能に支持されたプライマリドリブンギヤ164に噛み合う。プライマリドライブギヤ162及びプライマリドリブンギヤ164は、内燃機関10の一次減速機構を構成する。
第1変速軸136の右端部は、遠心クラッチ154の右端よりも左方で終端し、多板クラッチ156が同軸支持されている。多板クラッチ156は、変速用クラッチであり、クラッチアウタ156a、クラッチインナ156b及び複数のクラッチ板156cを有する。
クラッチアウタ156aは、右方に開放する有底円筒部材であり、第1変速軸136の右端部に相対回転可能に支持されている。クラッチアウタ156aの左側には、プライマリドリブンギヤ164が一体回転可能に支持されている。クラッチインナ156bは、クラッチアウタ156aの内周側に配置されて第1変速軸136の右端部に一体回転可能に支持されている。各クラッチ板156cは、クラッチアウタ156aとクラッチインナ156bとの間で車幅方向に積層されている。
多板クラッチ156は、不図示のダイヤフラムスプリングの付勢力によってクラッチ板156cを圧接して摩擦係合させる。多板クラッチ156は、不図示のシフトペダルの変速操作に連動してクラッチ板156cの圧接を一時的に解除し、車両12の変速機である第2動力伝達装置146でのシフトチェンジをスムーズにする。
第2動力伝達装置146は、第1変速軸136と第2変速軸138との間に設けられ、択一的な確立を可能とした複数の歯車列166a〜166dを備える変速機である。クランク軸68の回転運動による動力は、歯車列166a〜166dを構成する任意の歯車を介して、第1変速軸136から第2変速軸138に伝達される。第2変速軸138の左端部は、クランクケース52の後部左側に突出して機関出力部150となる。
歯車列166a〜166dは、第1変速軸136及び第2変速軸138にそれぞれ支持された変速段数分の歯車で構成される。第2動力伝達装置146は、第1変速軸136と第2変速軸138との間で歯車列166a〜166dの対応する歯車同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。各歯車は、自身を支持する変速軸に対して相対回転可能な自由歯車と、自身を支持する変速軸に対して一体回転可能な固定歯車と、自身を支持する変速軸にスプライン嵌合するスライド歯車とに分類される。
第2動力伝達装置146は、不図示のチェンジ機構の作動によりスライド歯車を移動させ、変速段に応じた歯車列166a〜166dを選定する。図5では、左側から右側に向かって、順に、四速歯車列166d、二速歯車列166b、三速歯車列166c及び一速歯車列166aが並んで配置される。
クランク軸68の左側の延長軸126Lの左端部には、ACG(交流発電機)スタータ168が同軸支持されている。ACGスタータ168は、三相交流式の発電電動機であり、内燃機関10を始動するスタータモータ(セルモータ)として機能すると共に、内燃機関10の運転に伴い発電する交流発電機としても機能する。
ACGスタータ168は、アウタロータ型の回転電機であり、アウタロータ168a及びインナステータ168bを有する。アウタロータ168aは、左方に開放する有底円筒部材であり、左側の延長軸126Lの左端部に一体回転可能に支持される。インナステータ168bは、アウタロータ168aの内周側に配置され、第1ケースカバー114Lに固定支持される。アウタロータ168aの内周側には、周方向に並ぶ複数のマグネット168cが固定される。インナステータ168bの外周側には、周方向に並ぶ複数のコイル168dが形成される。
左側の延長軸126LのACGスタータ168側の箇所には、磁性体を含む検出用歯車170が取り付けられている。回転数検知部70は、検出用歯車170の歯面と向かい合うように、クランク軸68の軸心に指向して、クランクケース52に取り付けられている。従って、クランク軸68の回転に伴って検出用歯車170が回転した場合、回転数検知部70は、検出用歯車170の歯数を検出することにより、検出した歯数に応じたクランク軸68の回転数を検知する。
キックスピンドル148の右端部は、第2ケース112Rの後部右側に突出し、不図示のキックアームに連結されている。キックスピンドル148の左端部には、キックドライブギヤ172が同軸支持されている。キックドライブギヤ172は、キックアームの踏み降ろしによるキックスピンドル148の一方向への回転時にのみ、不図示の噛合い機構を介してキックスピンドル148と一体回転する。
キックドライブギヤ172は、一速歯車列166aのドリブンギヤに噛み合う。キックドライブギヤ172の回転動力は、一速歯車列166a、第1変速軸136、多板クラッチ156、プライマリドリブンギヤ164及びプライマリドライブギヤ162を介して、遠心クラッチ154のクラッチアウタ154aに正転として入力される。この正転の回転トルクが所定トルク以上であれば、ワンウェイクラッチ160がワンウェイ作動状態となる。さらなる正転によりワンウェイクラッチ160がロック作動すると、クラッチアウタ154aからクラッチインナ154b及びクランク軸68に正転トルクが伝達可能となる。すなわち、キックスタータによる内燃機関10のクランキングが可能となる。
そして、本実施形態において、クランクケース52は、図6及び図8に示すように、クランクケース52内を潤滑する潤滑液を保持する潤滑液保持部174を該クランクケース52内の下方に備えている。なお、図6では、内燃機関10のうち、クランクケース52の部分を概略的に図示している。
図6〜図8に示すように、クランクケース52内における潤滑液保持部174の上方、且つ、第1変速軸136又は第2変速軸138の下方には、第1壁部176が設けられている。また、クランクケース52内における潤滑液保持部174の上方、且つ、クランク軸68の下方には、第2壁部178が設けられている。
クランクケース52内では、前方から後方に向かって、クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138が順に配置されている。そのため、クランクケース52内において、クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138と潤滑液保持部174との間には、第2壁部178が前方に設けられ、第1壁部176が第2壁部178に連なるように後方に設けられている。
この場合、第1壁部176の少なくとも一部は、第1変速軸136又は第2変速軸138を中心とした下方に凸の円弧状に形成されている。また、第2壁部178の少なくとも一部は、クランク軸68を中心とした下方に凸の円弧状に形成されている。なお、図6〜図8に示すように、第1壁部176は、該第1壁部176の円弧がシリンダ室74から逸れるように形成されている。また、第2壁部178は、シリンダブロック54にまで延びるように円弧状に形成されている。
前述のように、クランクケース52は、第1ケース112Lと第2ケース112Rとに分割可能である。そのため、第1壁部176は、第1ケース112Lの側壁140Lの第1変速軸136及び第2変速軸138側から左右中心面110に向かって車幅方向(クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138の各軸方向)に延びる円弧状のリブとしての第1ケース側第1壁部176Lと、第2ケース112Rの側壁140Rの第1変速軸136及び第2変速軸138側から左右中心面110に向かって車幅方向に延びる円弧状のリブとしての第2ケース側第1壁部176Rとから構成される。
第1ケース側第1壁部176Lと第2ケース側第1壁部176Rとの間には、第1間隙180が形成されている。すなわち、第1ケース側第1壁部176Lの右端部と、第2ケース側第1壁部176Rの左端部との間で前後方向に形成される隙間が、第1間隙180となる。第1間隙180は、車幅方向に幅狭の第1狭間隙部180aと、車幅方向に幅広の第1広間隙部180bとから構成される。ここで、第1狭間隙部180a及び第1広間隙部180bのうち、一方の間隙部は前方に形成され、他方の間隙部は後方に形成される。図7及び図8には、第1広間隙部180bが前方に形成され、第1狭間隙部180aが後方に形成される場合を図示している。
同様に、第2壁部178は、第1ケース112Lの側壁140Lのクランク軸68側から左右中心面110に向かって車幅方向に延びる円弧状のリブとしての第1ケース側第2壁部178Lと、第2ケース112Rの側壁140Rのクランク軸68側から左右中心面110に向かって車幅方向に延びる円弧状のリブとしての第2ケース側第2壁部178Rとから構成される。
第1ケース側第2壁部178Lと第2ケース側第2壁部178Rとの間には、第2間隙182が形成されている。この場合も、第1ケース側第2壁部178Lの右端部と、第2ケース側第2壁部178Rの左端部との間で前後方向に形成される隙間が、第2間隙182となる。第2間隙182は、車幅方向に幅狭の第2狭間隙部182aと、車幅方向に幅広の第2広間隙部182bとから構成される。第2狭間隙部182a及び第2広間隙部182bのうち、一方の間隙部は前方に形成され、他方の間隙部は後方に形成される。図7及び図8には、第2狭間隙部182aが前方に形成され、第2広間隙部182bが後方に形成される場合を図示している。
そして、内燃機関10では、該内燃機関10が始動し、クランク軸68が回転すると、不図示のポンプが駆動する。ポンプは、潤滑液保持部174に保持された潤滑液を汲み出す。汲み出された潤滑液は、クランクケース52に設けられた供給通路184内を通過し、噴射孔185からピストン72の底面に向けてシリンダ室74内に噴射される(図5参照)。これにより、シリンダ室74及びピストン72が潤滑される。
また、クランクケース52には、供給通路184から第2ケース112R側に分岐し、クランク軸68の右側の延長軸126Rにまで至る分岐通路186が形成されている。右側の延長軸126Rの軸心部分には、分岐通路186に連通するクランク軸通路188が車幅方向に形成されている。また、右側の延長軸126Rにおいて、クランク軸通路188から径方向に開口する複数の連通孔190が形成されている。従って、供給通路184から分岐通路186を介してクランク軸通路188に供給された潤滑液は、クランク軸68の回転に伴い、クランクケース52内において、複数の連通孔190からクランク軸68の径方向に飛散する。これにより、クランクケース52内の各部を潤滑することができる。
さらに、クランクピン120には、クランク軸通路188に連通するクランクピン通路192が形成されている。クランク軸通路188に供給された潤滑液の一部は、クランクピン通路192にも供給される。これにより、クランクピン120を潤滑することができる。
クランクケース52内における第1壁部176及び第2壁部178の上方の内部空間を潤滑した潤滑液は、下方の第1壁部176及び第2壁部178に落下する。第1壁部176には第1間隙180が形成され、第2壁部178には第2間隙182が形成されている。従って、第1壁部176に落下した潤滑液は、第1間隙180を通って潤滑液保持部174に落下する。また、第2壁部178に落下した潤滑液は、第2間隙182を通って潤滑液保持部174に落下する。
(2.2.2 ガスケット194の構成)
また、図5、図6及び図9に示すように、シリンダブロック54とクランクケース52との間には、ガスケット194が介挿されている。ガスケット194は、紙等の非金属製のシール部材である。ガスケット194は、シリンダ室74の軸方向から見て、シリンダ室74又は動力伝達機構収容室130を囲うように、略環状に形成されている。すなわち、図9に示すように、ガスケット194は、シリンダ室74を囲う環状部194aと、該シリンダ室74から離れるように環状部194aから動力伝達機構収容室130側に形成された凹部194bとを有する。つまり、ガスケット194の環状部194aは、シリンダ室74を囲い、該環状部194aに連なる凹部194bは、動力伝達機構収容室130を囲う。
また、シリンダブロック54内では、シリンダ室74及び動力伝達機構収容室130を含む複数の室が壁196を隔てて設けられている。この場合、ガスケット194の環状部194aと凹部194bとの間は、シリンダブロック54内の隣り合う複数の室のうち、少なくとも2つの室を連通させる隙間部分である連通部194cとして形成されている。図9では、シリンダ室74と動力伝達機構収容室130とを連通部194cで連通させる場合を図示している。従って、連通部194cを設けることにより、凹部194bが形成される。
さらに、ガスケット194には、クランクケース52のネジ穴に螺合する締結部材80(図2及び図3参照)を挿通させるための複数の挿通孔198が形成されている。すなわち、ガスケット194には、シリンダブロック54及びシリンダヘッド56の複数の挿通孔76、78と、複数のネジ穴とに対応して、複数の挿通孔198が形成されている。連通部194cは、複数の挿通孔198を避けるように、複数の挿通孔198の間に設けられている。なお、環状部194aと凹部194bとは、曲線状の接続部200によって接続されている。
(2.2.3 シリンダヘッド56側の内部構成)
次に、内燃機関10のシリンダヘッド56側の内部構成について、図10〜図14を参照しながら説明する。
シリンダヘッド56内において、該シリンダヘッド56の左端部側には、シリンダブロック54の動力伝達機構収容室130(図5及び図9参照)に連通する動力伝達機構収容室202が形成されている。また、シリンダヘッド56内において、該シリンダヘッド56の右端部側には、後述する動弁機構90を収容するための動弁機構収容室204が形成されている。動弁機構収容室204と動力伝達機構収容室202とは、壁206で仕切られている。
動力伝達機構収容室202は、シリンダヘッド56の左側のカバー部材208を取り外すことで外部からアクセス可能である。また、動弁機構収容室204は、シリンダヘッド56の上側及び下側のカバー部材210、212を取り外すことで外部からアクセス可能である。この場合、動弁機構収容室204は、上方に開口する一方の調整穴214と、下方に開口する他方の調整穴216とを有する。一方の調整穴214は、上側のカバー部材210で閉塞されている。また、他方の調整穴216は、下側のカバー部材212で閉塞されている。従って、シリンダヘッド56から各カバー部材210、212を取り外した状態で、各調整穴214、216を介して動弁機構90にアクセスすることになる。
動弁機構収容室204には、シリンダ室74(燃焼室102)に対する空気の出入りを制御するための動弁機構90が保持されている。動弁機構90は、前述のカム軸134、2本のロッカーアームシャフト218、220、2つのロッカーアーム222、224、吸気バルブ226(弁、バルブ)及び排気バルブ228(弁、バルブ)を備える。
カム軸134は、動弁機構収容室204内で車幅方向に延びている。カム軸134の左端部は、壁206を貫通して動弁機構収容室204に挿入され、動力伝達機構132に連結されている。カム軸134の右端部は、シリンダヘッド56の右側の内壁230に回転可能に軸支されている。従って、カム軸134は、クランク軸68から動力伝達機構132を介して駆動力(回転運動の動力)を受けることで、回転可能である。
2本のロッカーアームシャフト218、220は、動弁機構収容室204内で、カム軸134を挟んで、上下に配置され、且つ、車幅方向に延びている。
この場合、シリンダヘッド56の右側の内壁230には、上側のロッカーアームシャフト218に対応して、左側に突出するヘッドボス232が形成されている。ロッカーアームシャフト218の一端部(右端部)は、ヘッドボス232に形成された穴234に嵌め込まれている。また、2本のロッカーアームシャフト218の他端部(左端部)は、壁206に形成された穴に嵌め込まれている。これにより、ロッカーアームシャフト218は、動弁機構収容室204内で、車幅方向に支持される。
一方、下側のロッカーアームシャフト220の一端部(右端部)は、内壁230に形成された穴に嵌め込まれている。壁206には、下側のロッカーアームシャフト220に対応して、右側に突出するヘッドボス236が形成されている。ロッカーアームシャフト220の他端部(左端部)は、ヘッドボス236に形成された穴238に嵌め込まれている。これにより、ロッカーアームシャフト220は、動弁機構収容室204内で、車幅方向に支持される。
2つのヘッドボス232、236には、2つの穴234、238、すなわち、2本のロッカーアームシャフト218、220の中心軸(軸心)に指向する挿通孔240、242がそれぞれ形成されている。各挿通孔240、242は、中心軸を有する略円筒形状の貫通孔である。この場合、動弁機構収容室204内で、上側のヘッドボス232に設けられた挿通孔240(吸気バルブ226側の挿通孔240)は、上側の調整穴214に指向するように形成されている。また、下側のヘッドボス236に設けられた挿通孔242(排気バルブ228側の挿通孔242)は、下側の調整穴216に指向するように形成されている。さらに、ヘッドボス232、236に設けられた各挿通孔240、242の中心軸は、それぞれ、該挿通孔240、242に向かい合う調整穴214、216と略直交している。
一方、ロッカーアームシャフト218の一端部及びロッカーアームシャフト220の他端部にも、該ロッカーアームシャフト218、220の径方向に貫通する挿通孔244、246が形成されている。本実施形態において、ヘッドボス232、236の挿通孔240、242と、該ヘッドボス232、236の穴234、238に嵌め込まれるロッカーアームシャフト218、220の挿通孔244、246とは、ロッカーアームシャフト218、220を軸回りに任意の位相に回転させることで、互いに連通する一対の挿通孔240〜246を構成する。
そして、一対の挿通孔240、244には、ロッカーアームシャフト218の相対回転を規制するための棒状部材248が挿通する。また、一対の挿通孔242、246には、ロッカーアームシャフト220の相対回転を規制するための棒状部材250が挿通する。
2本の棒状部材248、250は、それぞれ、一対の挿通孔240〜246に挿通する棒状の挿通部248a、250aと、挿通部248a、250aのヘッドボス232、236側(調整穴214、216側)に設けられ、挿通部248a、250aよりも大径の頭部248b、250bとを有する。
頭部248b、250bの挿通部248a、250a側は、平面状に形成されている。また、ヘッドボス232、236の調整穴214、216側は、挿通部248a、250aが一対の挿通孔240〜246に挿通した際に、頭部248b、250bの平面部分と面接触する平面部252、254として形成されている。この場合、平面部252、254は、調整穴214、216と略平行な平面であることが望ましい。
具体的に、棒状部材248、250は、螺旋状の雄ネジ部が形成されたネジ部材である。また、棒状部材248、250に対応して、一対の挿通孔240〜246には、内周面に螺旋状の雌ネジ部が形成されている。この場合、雄ネジ部と雌ネジ部との形状を略一致させることで、ネジ部材としての棒状部材248、250を一対の挿通孔240〜246の雌ネジ部に螺合させることができる。これにより、ロッカーアームシャフト218、220の回転を容易に規制することができる。
なお、棒状部材248、250は、ネジ部材に限定されることはなく、ロッカーアームシャフト218、220の回転を規制することができるのであれば、どのような部材でも採用可能である。例えば、少なくともロッカーアームシャフト218、220の一端部(右端部)を磁性体とし、棒状部材248、250を永久磁石とすれば、棒状部材248、250の挿通部248a、250aを一対の挿通孔240〜246に挿通させることで、ロッカーアームシャフト218、220の回転を容易に規制することができる。
2本のロッカーアーム222、224は、それぞれ、ロッカーアームシャフト218、220に相対回転可能に支持されている。各ロッカーアーム222、224の一端部は、ローラ256、258を介してカム軸134に連結されている。各ロッカーアーム222、224は、カム軸134からローラ256、258を介して伝達される駆動力で、ロッカーアームシャフト218、220を中心に揺動する。
また、内燃機関10では、シリンダヘッド56とシリンダ室74のピストン72とによって、燃焼室102が形成されている。シリンダヘッド56内のシリンダブロック54側において、上方部分には、一端部が吸気パイプ100bに連通し、他端部が燃焼室102に連通可能な吸気ポート104が形成されている。また、シリンダヘッド56内のシリンダブロック54側において、下方部分には、一端部が燃焼室102に連通可能であり、他端部が不図示の排気装置に連通する排気ポート260が形成されている。
さらに、シリンダヘッド56において、吸気バルブ226は、吸気ポート104側(上側)のロッカーアーム222の他端部から伝達される駆動力で燃焼室102を開閉することで、吸気ポート104から燃焼室102に空気を供給する。また、排気バルブ228は、排気ポート260側(下側)のロッカーアーム224の他端部から伝達される駆動力で燃焼室102を開閉することで、燃焼室102から排気ポート260を介して排気する。また、シリンダヘッド56には、先端部が燃焼室102に臨むように、点火プラグ96がプラグホール94に取り付けられている。
さらに、動弁機構収容室204内で、吸気バルブ226と上側のロッカーアーム222の他端部との間には、タペットクリアランスを調整するための吸気側調整機構262が設けられている。従って、上側の調整穴214は、吸気側調整機構262にアクセスするための調整穴も兼ねている。同様に、動弁機構収容室204内で、排気バルブ228と下側のロッカーアーム224の他端部との間には、タペットクリアランスを調整するための排気側調整機構264が設けられている。従って、下側の調整穴216は、排気側調整機構264にアクセスするための調整穴である。
また、図12〜図14に示すように、シリンダヘッド56のシリンダブロック54側(シリンダヘッド56の底面側)には、シリンダヘッド56の外周面からシリンダブロック54の冷却フィン84に向かって開口する開口部266が形成されている。
具体的に、シリンダヘッド56の内部には、点火プラグ96の側部(プラグホール94)、吸気ポート104の側部及び排気ポート260の側部と外部とを連通させるエアジャケット268が設けられている。開口部266は、エアジャケット268から冷却フィン84に向けて開口している。この場合、開口部266は、シリンダヘッド56内におけるシリンダブロック54の下方側に位置するように形成されている。なお、エアジャケット268と、吸気ポート104及び排気ポート260とは、壁270で隔てられている。
これにより、図13及び図14で矢印に示すように、車両12の走行時、エアジャケット268には、点火プラグ96の側部(プラグホール94)の箇所から走行風が導入される。導入された走行風は、吸気ポート104の側部及び排気ポート260の側部を通り、開口部266を介して後方に抜ける(導風される)。開口部266の後方には、シリンダブロック54のシリンダヘッド56側の冷却フィン84があるため、開口部266から後方に抜けた走行風は、該冷却フィン84を好適に冷却することができる。なお、エアジャケット268を通過する走行風の一部は、下方にも抜ける。
[3.変形例]
上記の説明では、内燃機関10が単気筒である場合について説明した。本実施形態は、単気筒の内燃機関に限定されることはなく、複数気筒の内燃機関にも適用可能である。従って、本実施形態は、複数のシリンダ室74の各々に1つのピストン72が設けられた内燃機関、1つのシリンダ室74に複数のピストン72が設けられた内燃機関、複数のシリンダ室74に複数のピストン72が設けられた内燃機関にも、適用可能である。
また、上記の説明では、複数の回転軸(クランク軸68、第1変速軸136、第2変速軸138)が車幅方向に配置されている場合について説明した。本実施形態では、複数の回転軸が車幅方向とは異なる方向(例えば、前後方向、上下方向)に配置されている内燃機関10にも適用可能である。この場合、クランクケース52において、該異なる方向に直交し、且つ、互いに向かい合う2つの側壁140L、140Rに、複数の回転軸の両端部を軸支するための支持孔142L、142Rが形成される。
さらに、上記の説明では、前述の棒状部材248、250をネジ部材とし、調整穴214、216を閉塞するカバー部材210、212を固定するためのネジ部材を兼ねてもよい。これにより、棒状部材248、250の挿通部248a、250aが一対の挿通孔240〜246に螺合することで、ロッカーアームシャフト218、220の回り止めと、調整穴214、216の閉塞とを行うことができる。
さらにまた、上記の説明では、クランクケース52及びシリンダ室74の内部を潤滑液で潤滑する場合について説明した。本実施形態では、潤滑液をシリンダヘッド56内に供給し、供給した潤滑液で動弁機構90を潤滑してもよい。この場合、挿通孔76、78を潤滑液の供給通路として利用してもよいし、又は、クランクケース52からシリンダブロック54を介してシリンダヘッド56に至る潤滑液の供給通路を別途設けてもよい。これにより、シリンダヘッド56内において、カム軸134の回転に伴って、該カム軸134の径方向に潤滑液を飛散させることで、シリンダヘッド56内の各部を好適に潤滑することができる。
[4.本実施形態の効果]
以上説明した本実施形態の構成による効果について、以下に説明する。
<4.1 第1の構成の効果>
本実施形態は、第1の構成として、回転運動による動力を発生するクランク軸68(動力発生部)を備える内燃機関10(パワーユニット)であって、回転運動を後輪36(被回転運動部)に伝達する複数の回転軸(クランク軸68、第1変速軸136、第2変速軸138)と、動力を伝達する第1動力伝達装置144及び第2動力伝達装置146と、複数の回転軸、第1動力伝達装置144及び第2動力伝達装置146を内部に保持するクランクケース52(パワーユニットケース)とをさらに備える。
複数の回転軸は、動力発生部としてのクランク軸68(駆動軸)と、クランク軸68から第1動力伝達装置144を介して動力が伝達される第1変速軸136(第1被動軸)と、第1変速軸136から第2動力伝達装置146を介して動力が伝達され、伝達された動力を後輪36に伝達する第2変速軸138(第2被動軸)とである。
クランクケース52は、シリンダブロック54及びクランクケース52内を潤滑する潤滑液を保持する潤滑液保持部174をクランクケース52内の下方に備える。クランクケース52内における潤滑液保持部174の上方、且つ、第1変速軸136又は第2変速軸138の下方には、第1壁部176が設けられている。
この構成によれば、潤滑液保持部174と第1変速軸136又は第2変速軸138との間に第1壁部176が設けられている。これにより、車両12の急加速時又はウィリー走行時に、潤滑液保持部174に保持されている潤滑液がばたついても、該潤滑液が第1変速軸136又は第2変速軸138にかかることを回避することができる。この結果、不必要に潤滑液がかかることを回避し、フリクションや誤検知の発生を防止することができる。
この場合、第1壁部176の少なくとも一部が第1変速軸136又は第2変速軸138を中心とした円弧状に形成されていれば、クランクケース52を含めた車両12に大きな加速度が発生しても、潤滑液が大きくばたついて、第1変速軸136及び第2変速軸138等に不必要に潤滑液がかかることを効果的に抑制することができる。
内燃機関10は、車両12に搭載される。クランクケース52は、車幅方向(クランク軸68の軸方向)に沿って、第1ケース112Lと第2ケース112Rとに分割可能なケースである。第1壁部176は、第1ケース112Lから車幅方向に延びる第1ケース側第1壁部176Lと、第2ケース112Rから車幅方向に延びる第2ケース側第1壁部176Rとから構成される。このように、双方のケースから壁部が延びていることで、クランクケース52の組付性を向上させることができる。
また、第1ケース側第1壁部176Lと第2ケース側第1壁部176Rとの間には、第1間隙180が形成されている。このように、若干の潤滑液の出入りを許容することで、第1変速軸136及び第2変速軸138にかかった潤滑油を潤滑液保持部174に効率よく排出することができる。
さらに、クランクケース52内における潤滑液保持部174の上方、且つ、クランク軸68の下方には、第2壁部178が設けられている。これにより、内燃機関10を含む車両12に大きな加速度が発生しても、潤滑液が大きくばたついて、クランク軸68等に不必要に潤滑液がかかることを防ぐことができる。
この場合、第2壁部178の少なくとも一部がクランク軸68を中心とした円弧状に形成されていれば、クランク軸68等に不必要に潤滑液がかかることを効果的に抑制することができる。
クランクケース52は、車両12の少なくとも車幅方向に沿って互いに向かい合う一対の側壁140L、140Rを有する。第1壁部176及び第2壁部178は、一対の側壁140L、140Rから車幅方向に延び、クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138は、それぞれ、一対の側壁140L、140Rに設けられた支持孔142L、142Rに回転自在に支持される。このように、同じ側壁140L、140Rに第1壁部176又は第2壁部178と支持孔142L、142Rとが同一方向に形成されているので、クランクケース52の加工が容易となる。
第2壁部178は、第1ケース112Lから車幅方向に延びる第1ケース側第2壁部178Lと、第2ケース112Rから車幅方向に延びる第2ケース側第2壁部178Rとから構成される。これにより、クランクケース52の組付性をさらに向上させることができる。
この場合、第1ケース側第2壁部178Lと第2ケース側第2壁部178Rとの間には、第2間隙182が形成されている。このように、若干の潤滑液の出入りを許容することで、クランク軸68にかかった潤滑油を潤滑液保持部174に効率よく排出することができる。
第1間隙180及び第2間隙182は、それぞれ、車両12の前後方向に沿った幅狭の狭間隙部(第1狭間隙部180a、第2狭間隙部182a)と幅広の広間隙部(第1広間隙部180b、第2広間隙部182b)とによって構成される。これにより、クランク軸68、第1変速軸136及び第2変速軸138側から潤滑液保持部174側への潤滑液の排出効率を向上させることができる。
この場合、狭間隙部及び広間隙部のうち、一方の間隙部は、前方に形成され、他方の間隙部は、後方に形成されている。これにより、車両12の加速度がかかりやすい方向に広間隙部を設けることで、潤滑液の排出効率を一層向上させることができる。例えば、車両12が加速又は制動すると、潤滑液は、前方に移動する。そのため、広間隙部を前方に設ければ、潤滑液を効率よく潤滑液保持部174に排出することができる。
なお、内燃機関10は、シリンダ室74(シリンダ)内を往復運動するピストン72によって回転運動を発生させ、第1変速軸136及び第2変速軸138は、選択的に動力伝達可能な複数の歯車列166a〜166dによって動力を伝達する。これにより、内燃機関10を車両12に好適に搭載することができる。
<4.2 第2の構成の効果>
また、本実施形態は、第2の構成として、クランク軸68(クランクシャフト)から駆動力を受けるカム軸134と、ロッカーアームシャフト218、220と、ロッカーアームシャフト218、220に相対回転可能に支持され、カム軸134から伝達される駆動力でロッカーアームシャフト218、220を中心に揺動するロッカーアーム222、224と、ロッカーアーム222、224から伝達される駆動力で燃焼室102を開閉する少なくとも1つのバルブ(吸気バルブ226、排気バルブ228)とを備える内燃機関10の動弁機構90(動弁構造)に関する。
動弁機構90は、ロッカーアームシャフト218、220を内燃機関10のシリンダヘッド56に支持するヘッドボス232、236と、棒状部材248、250とをさらに備える。ヘッドボス232、236及びロッカーアームシャフト218、220には、ロッカーアームシャフト218、220を軸回りに任意の位相に回転させることで、互いに連通する一対の挿通孔240〜246が形成されている。棒状部材248、250は、一対の挿通孔240〜246に挿通することで、ロッカーアームシャフト218、220の相対回転を規制する。
この構成によれば、ロッカーアームシャフト218、220及びヘッドボス232、236に形成された一対の挿通孔240〜246に棒状部材248、250を挿通することで、ロッカーアームシャフト218、220の相対回転を規制する。これにより、簡単な構成でロッカーアームシャフト218、220の相対回転が規制されるので、部品コスト及び製造コストを低減することができる。
この場合、カム軸134、ロッカーアームシャフト218、220、ロッカーアーム222、224、吸気バルブ226及び排気バルブ228は、シリンダヘッド56内に収納される一体構造である。シリンダヘッド56内における吸気バルブ226及び排気バルブ228とロッカーアーム222、224との間には、タペットクリアランスを調整するための調整機構(吸気側調整機構262、排気側調整機構264)が設けられている。また、シリンダヘッド56には、外部から吸気側調整機構262及び排気側調整機構264にアクセスするための調整穴214、216が形成されている。一対の挿通孔240〜246は、中心軸を有する略円筒形状であり、ヘッドボス232、236側の挿通孔240、242の中心軸は、調整穴214、216に指向している。
これにより、調整穴214、216を介して、棒状部材248、250に簡単にアクセスすることが可能となる。この結果、ロッカーアームシャフト218、220の回り止めを含む動弁機構90に対する整備性や組付性を向上させることができる。
また、一対の挿通孔240〜246の中心軸は、ロッカーアームシャフト218、220の略中心に指向している。すなわち、ロッカーアームシャフト218、220の径方向に挿通孔240〜246が形成されている。これにより、挿通孔240〜246の全長を最大限確保することができる。この結果、棒状部材248、250によるロッカーアームシャフト218、220の回り止めの効果を一層向上させることができる。
さらに、棒状部材248、250は、一対の挿通孔240〜246に挿通する棒状の挿通部248a、250aと、挿通部248a、250aのヘッドボス232、236側に設けられ、挿通部248a、250aよりも大径の頭部248b、250bとを有する。ヘッドボス232、236は、挿通部248a、250aが一対の挿通孔240〜246に挿通した際に、頭部248b、250bと面接触する平面部252、254を有する。平面部252、254は、調整穴214、216と略平行な平面である。これにより、単一の方向(例えば、調整穴214、216の方向)からの加工で平面部252、254を容易に形成することが可能となる。この結果、シリンダヘッド56の加工コスト及び加工工数を低減することができる。
さらにまた、ヘッドボス232、236側の挿通孔240、242の中心軸と調整穴214、216とは略直交している。これにより、調整穴214、216を介した棒状部材248、250へのアクセスが一層容易になる。
また、一対の挿通孔240〜246には、螺旋状の雌ネジ部が内周面に形成され、棒状部材248、250の外周面には、螺旋状の雄ネジ部が形成されている。この場合、雌ネジ部と雄ネジ部とは、形状が略一致する。これにより、棒状部材248、250を含む動弁機構90の組み付け及び分解を容易に行うことができる。
<4.3 第3の構成の効果>
さらに、本実施形態は、第3の構成として、往復運動を行うピストン72を少なくとも1つ収容する少なくとも1つのシリンダ室74(シリンダ)と、シリンダ室74を有するシリンダブロック54に取り付けられ、該シリンダ室74と共に燃焼室102を形成するシリンダヘッド56と、燃焼室102に臨むようにシリンダヘッド56に取り付けられる点火プラグ96とを有する内燃機関10に関する。
この場合、内燃機関10は、点火プラグ96を点火させるために必要な電圧を発生する点火コイル88をさらに有し、車両12の車体フレーム16に支持された状態で該車両12に搭載されている。点火コイル88は、平面視でシリンダ室74を含むシリンダブロック54と重なるように、シリンダブロック54の上部(上面)に配置されている。
この構成によれば、シリンダブロック54の上部に点火コイル88が配置されるので、点火コイル88を点火プラグ96に近接して配置することができる。これにより、高価な高圧配線98を可能な限り短くすることができる。また、点火コイル88及び高圧配線98が内燃機関10から車両12の車幅方向に突出することを回避することができる。これにより、内燃機関10を搭載する車両12の外観性が向上する。さらに、車両12の走行時の側面衝突又は飛び石等に起因する点火コイル88の故障及び高圧配線98の断線の発生を抑制することができる。
また、内燃機関10は、シリンダヘッド56に接続される吸気部材100をさらに有する。点火コイル88は、側面視でシリンダヘッド56又は吸気部材100よりも後方に配置されている。このように、上下方向に突出しやすい吸気部材100の近くに点火コイル88を配置することで、車体フレーム16と内燃機関10との間のデッドスペースを有効活用することができる。
吸気部材100は、内燃機関10の吸気量を制御するスロットルボディ100aと、スロットルボディ100aと燃焼室102に連通する吸気ポート104とを接続する吸気パイプ100bとを有する。点火コイル88は、側面視でスロットルボディ100aよりも後方に配置されている。吸気系の部材のうち、特に、スロットルボディ100aは、スペースを取るため、デッドスペースが生じやすい。そこで、スロットルボディ100aの後方に点火コイル88を配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。また、スロットルボディ100aに接続される配線類や点火コイル88に接続される配線を、効率よくまとめることができる。
内燃機関10は、始動用の電動機66をさらに有する。点火コイル88は、側面視で電動機66よりも前方に配置されている。内燃機関10では、クランクケース52側で最も突出する部品がセルモータである場合が多い。特に、車両12において、車体フレーム16と内燃機関10との距離が開く前方部分は、デッドスペースとなりやすい。そのため、電動機66の前方に点火コイル88を配置することで、デッドスペースをより有効に活用することができる。また、電動機66の配線と点火コイル88の配線とを効率よくまとめることもできる。
また、内燃機関10は、ピストン72の往復運動に起因して回転するクランク軸68(回転軸)と、クランク軸68の回転数を検知する回転数検知部70とをさらに有する。点火コイル88は、側面視で回転数検知部70よりも前方に配置されている。
内燃機関10では、クランクケース52の上面の前方部分に、回転数検知部70のようなピックアップセンサを設けることが多い。この結果、回転数検知部70の周囲がデッドスペースとなりやすい。そこで、回転数検知部70の前方に点火コイル88を配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。また、回転数検知部70の配線と点火コイル88の配線とを効率よくまとめることができる。
内燃機関10は、複数の軸部材(クランク軸68、第1変速軸136、第2変速軸138)を収容するクランクケース52をさらに有する。クランクケース52の上部には、車体フレーム16に結合するための結合ボス58aが設けられている。点火コイル88は、側面視で結合ボス58aよりも前方に配置されている。カブ型の自動二輪車の車両12では、クランクケース52の上面で車体フレーム16と結合する場合が多い。この結果、結合ボス58aの周囲がデッドスペースとなりやすい。そこで、結合ボス58aの前方に点火コイル88を配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。
この場合、点火コイル88は、平面視で車体フレーム16と重なるように配置されていることが望ましい。点火コイル88は、シリンダブロック54と同様に、高温となりやすい。従って、上記の構成とすることで、高温となる部材の車幅方向の突出を防ぐと共に、触れにくい配置とすることができる。
内燃機関10は、燃焼室102に接続される吸気部材100と、始動用の電動機66とをさらに有する。点火コイル88は、正面視で吸気部材100及び電動機66と重なるように配置されている。これにより、上下方向への点火コイル88の突出を防ぎつつ、内燃機関10の省スペース化を実現することができる。
この場合、点火コイル88は、ステー部材86を介してシリンダブロック54に取り付けられている。これにより、シリンダブロック54からの熱で点火コイル88が高熱になることを回避することができる。
内燃機関10は、シリンダブロック54を介してシリンダヘッド56に連結されるクランクケース52をさらに有する。この場合、点火コイル88又はステー部材86の少なくとも一部は、側面視でシリンダヘッド56の頂部とクランクケース52の頂部とを結ぶ仮想線108よりも下方に位置する。仮想線108とクランクケース52、シリンダブロック54及びシリンダヘッド56の各上部とを結んでできる領域は、デッドスペースとなりやすい。そこで、このような領域に点火コイル88又はステー部材86を配置することで、デッドスペースを有効活用することができる。
なお、車両12が鞍乗型車両であれば、上述した効果を容易に奏することができる。
<4.4 第4の構成の効果>
さらにまた、本実施形態は、第4の構成として、往復運動を行うピストン72を少なくとも1つ収容する少なくとも1つのシリンダ室74(シリンダ)と、シリンダ室74に対する空気の出入りを制御する動弁機構90と、シリンダ室74を保持するシリンダブロック54と、シリンダブロック54に隣接して取り付けられ、動弁機構90を保持するシリンダヘッド56とを有する内燃機関10に関する。
シリンダブロック54の外周面には、シリンダ室74の軸方向に交差する複数の冷却フィン84が設けられている。また、シリンダヘッド56のシリンダブロック54側には、シリンダヘッド56の外周面から冷却フィン84に向かって開口する開口部266が形成されている。
この構成によれば、車両12の走行時、前方からの走行風は、開口部266を介して、シリンダブロック54に流れる。これにより、シリンダブロック54にシリンダヘッド56が隣接して取り付けられることで、シリンダヘッド56に隠れてしまう該シリンダヘッド56側の冷却フィン84にも走行風(冷却風)を当てることができる。この結果、簡単な構成で、冷却フィン84によるシリンダ室74(シリンダヘッド56)の冷却効果を向上させることができる。
内燃機関10は、シリンダ室74とシリンダヘッド56とによって形成される燃焼室102に臨むように、シリンダヘッド56に取り付けられる点火プラグ96をさらに備える。シリンダヘッド56には、外部から燃焼室102に空気を供給するための吸気ポート104と、燃焼室102から外部に排気するための排気ポート260と、点火プラグ96の側部、吸気ポート104の側部及び排気ポート260の側部と外部とを連通させるエアジャケット268とが設けられている。開口部266は、エアジャケット268から冷却フィン84に向けて開口している。このように、走行風が流れる位置に開口部266が設けられるので、シリンダヘッド56側からシリンダブロック54の冷却フィン84への導風効率が向上する。
内燃機関10は、ピストン72の往復運動を回転運動に変換するクランク軸68と、クランク軸68を収容するクランクケース52とをさらに有する。内燃機関10は、車両12に搭載され、シリンダブロック54は、クランクケース52の前部から上方又は前方に突出している。シリンダ室74(シリンダブロック54)の軸線は、前方に向かって、水平より上向きに傾いている。これにより、走行風は、シリンダヘッド56の外周面に当たり、開口部266を介して、シリンダブロック54の冷却フィン84に導かれる。この結果、導風効率を一層向上させることができる。
また、開口部266は、シリンダヘッド56内で前後方向に形成されている。走行風の流れと同じ方向に開口部266を設けることにより、開口部266への導風量を向上させることができる。この結果、シリンダヘッド56の後方に配置されることで走行風が当たりにくくなるシリンダブロック54のシリンダヘッド56側の冷却フィン84に走行風を容易に当てることができる。
さらに、開口部266は、シリンダブロック54の下方側に位置するようにシリンダヘッド56内に形成されている。これにより、開口部266に臨むシリンダブロック54の下面側と地面との間で負圧が発生し、前方からの走行風を開口部266により多く取り込むことができる。
<4.5 第5の構成の効果>
また、本実施形態は、第5の構成として、往復運動を行う少なくとも1つのピストン72を収容する少なくとも1つのシリンダ室74と、往復運動を回転運動に変換するクランク軸68とを有する内燃機関10に関する。
内燃機関10は、クランク軸68を収容するクランクケース52と、シリンダ室74を形成するシリンダスリーブ116と、シリンダスリーブ116を覆うシリンダブロック54と、回転運動に応じて吸気バルブ226及び排気バルブ228(弁)を動作させることで、シリンダ室74に対する空気の出入りを制御する動弁機構90と、クランク軸68から動弁機構90に回転運動の動力を伝達する動力伝達機構132と、シリンダブロック54内に形成され、動力伝達機構132を収容する動力伝達機構収容室130と、シリンダブロック54とクランクケース52との間に介挿されるガスケット194とをさらに有する。
この場合、ガスケット194は、シリンダ室74の軸方向から見て、シリンダ室74又は動力伝達機構収容室130を囲うように、略環状に形成されている。ガスケット194におけるシリンダ室74を囲う環状部194aのうち、少なくとも一部は、該環状部194aの他部に対して、シリンダ室74から離れる凹部194bを形成する。そして、凹部194bは、動力伝達機構収容室130側に設けられる。
この構成によれば、ガスケット194の凹部194bがシリンダ室74から動力伝達機構収容室130に向けて設けられている。これにより、シリンダ室74と動力伝達機構収容室130とは、シリンダブロック54とクランクケース52との間で、凹部194bによって形成される隙間部分を介して連通する。この結果、シリンダスリーブ116の熱膨張が発生しても、ガスケット194の応力(歪)が抑制され、シリンダ室74の歪が軽減される。また、動力伝達機構収容室130側にガスケット194の凹部194bを設けることで、ガスケット194の剛性が低くなり、シリンダ室74の歪の抑制効果が一層向上する。
ここで、シリンダブロック54内では、少なくとも1つのシリンダ室74及び動力伝達機構収容室130を含む複数の室が壁196(壁部)を隔てて設けられている。ガスケット194には、シリンダブロック54内の隣り合う複数の室のうち、少なくとも2つの室を連通させる連通部194cが形成され、連通部194cが凹部194bを形成する。これにより、ガスケット194の加工が容易になる。
また、シリンダブロック54及びガスケット194には、クランクケース52に締結する締結部材80が挿通する複数の挿通孔76、198が形成されている。連通部194cは、複数の挿通孔76、198の間に設けられる。このように、挿通孔76、198を確保することで、クランクケース52及びシリンダブロック54に対するガスケット194の位置決めが容易となる。また、挿通孔76、198の間に連通部194cが設けられることで、該連通部194cを最大限に確保することができる。
さらに、環状部194aと凹部194bとの接続部分(接続部200)は、曲線状に形成されている。これにより、ガスケット194にかかる応力を効率よく逃がすことができる。
ガスケット194が非金属製の部材であれば、該ガスケット194の加工が一層容易となる。
以上、本発明について好適な実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記の実施形態の記載範囲に限定されることはない。上記の実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定されて解釈されるものではない。
10…内燃機関(パワーユニット) 12…車両
16…車体フレーム 36…後輪(被回転運動部)
52…クランクケース(パワーユニットケース)
54…シリンダブロック(シリンダ、パワーユニットケース)
56…シリンダヘッド
68…クランク軸(クランクシャフト、駆動軸、回転軸)
72…ピストン(動力発生部) 74…シリンダ室(シリンダ)
76、198…挿通孔 84…冷却フィン
88…点火コイル 90…動弁機構(動弁構造)
96…点火プラグ 102…燃焼室
116…シリンダスリーブ 130…動力伝達機構収容室
132…動力伝達機構 134…カム軸
136…第1変速軸(第1被動軸、回転軸)
138…第2変速軸(第2被動軸、回転軸)
144…第1動力伝達装置 146…第2動力伝達装置
174…潤滑液保持部 176…第1壁部
194…ガスケット 194a…環状部
194b…凹部
218、220…ロッカーアームシャフト 222、224…ロッカーアーム
226…吸気バルブ(バルブ、弁) 228…排気バルブ(バルブ、弁)
232、236…ヘッドボス 248、250…棒状部材
266…開口部

Claims (11)

  1. 往復運動を行うピストン(72)を少なくとも1つ収容する少なくとも1つのシリンダ(54、74)と、前記シリンダ(54、74)に取り付けられ、該シリンダ(54、74)と共に燃焼室(102)を形成するシリンダヘッド(56)と、前記燃焼室(102)に臨むように前記シリンダヘッド(56)に取り付けられる点火プラグ(96)とを有する内燃機関(10)において、
    前記内燃機関(10)は、前記点火プラグ(96)を点火させるために必要な電圧を発生する点火コイル(88)をさらに有し、車両(12)の車体フレーム(16)に支持された状態で該車両(12)に搭載され、
    前記点火コイル(88)は、平面視で前記シリンダ(54、74)と重なるように、前記シリンダ(54、74)の上面に配置されている、内燃機関(10)。
  2. 請求項1記載の内燃機関(10)において、
    前記シリンダヘッド(56)に接続される吸気部材(100)をさらに有し、
    前記点火コイル(88)は、側面視で前記シリンダヘッド(56)又は前記吸気部材(100)よりも後方に配置されている、内燃機関(10)。
  3. 請求項2記載の内燃機関(10)において、
    前記吸気部材(100)は、前記内燃機関(10)の吸気量を制御するスロットルボディ(100a)と、前記スロットルボディ(100a)と前記燃焼室(102)に連通する吸気ポート(104)とを接続する吸気パイプ(100b)とを有し、
    前記点火コイル(88)は、側面視で前記スロットルボディ(100a)よりも後方に配置されている、内燃機関(10)。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    始動用の電動機(66)をさらに有し、
    前記点火コイル(88)は、側面視で前記電動機(66)よりも前方に配置されている、内燃機関(10)。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    前記ピストン(72)の往復運動に起因して回転する回転軸(68)と、前記回転軸(68)の回転数を検知する回転数検知部(70)とをさらに有し、
    前記点火コイル(88)は、側面視で前記回転数検知部(70)よりも前方に配置されている、内燃機関(10)。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    複数の軸部材(68、136、138)を収容するケース(52)をさらに有し、
    前記ケース(52)の上部には、前記車体フレーム(16)に結合するための結合ボス(58a)が設けられ、
    前記点火コイル(88)は、側面視で前記結合ボス(58a)よりも前方に配置されている、内燃機関(10)。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    前記点火コイル(88)は、平面視で前記車体フレーム(16)と重なるように配置されている、内燃機関(10)。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    前記燃焼室(102)に接続される吸気部材(100)と、始動用の電動機(66)とをさらに有し、
    前記点火コイル(88)は、正面視で前記吸気部材(100)及び前記電動機(66)と重なるように配置されている、内燃機関(10)。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    前記点火コイル(88)は、ステー部材(86)を介して前記シリンダ(54、74)に取り付けられている、内燃機関(10)。
  10. 請求項9記載の内燃機関(10)において、
    前記シリンダ(54、74)を介して前記シリンダヘッド(56)に連結されるケース(52)をさらに有し、
    前記点火コイル(88)又は前記ステー部材(86)の少なくとも一部は、側面視で前記シリンダヘッド(56)の頂部と前記ケース(52)の頂部とを結ぶ仮想線(108)よりも下方に位置する、内燃機関(10)。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の内燃機関(10)において、
    前記車両(12)は、鞍乗型車両である、内燃機関(10)。
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