JP2020164365A - 窒化ホウ素粉末及び樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化ホウ素粉末の耐電圧性を向上させること。【解決手段】本発明の一側面は、体積基準の粒度分布において、5μm以上30μm未満の領域に存在するピークAと、50μm以上100μm未満の領域に存在するピークBとを有する、窒化ホウ素粉末である。【選択図】なし

Description

本発明は、窒化ホウ素粉末及び樹脂組成物に関する。
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU等の電子部品においては、使用時に発生する熱を効率的に放熱することが課題となっている。この課題に対して、従来、電子部品を実装するプリント配線板の絶縁層の高熱伝導化や、電子部品又はプリント配線板を電気絶縁性の熱インターフェース材(Thermal Interface Materials)を介してヒートシンクに取り付けることが行われてきた。このような絶縁層及び熱インターフェース材には、熱伝導率が高いセラミックス粉末が用いられる。
セラミックス粉末としては、高熱伝導率、高絶縁性、低比誘電率等の特性を有している窒化ホウ素粉末が注目されている。例えば、特許文献1には、凝集体の形状を一層球状化して充填性を高めると共に、粉末強度の向上を図り、さらには高純度化により、当該粉末を充填した伝熱シート等の絶縁性の向上および耐電圧の安定化を達成した六方晶窒化ホウ素粉末として、一次粒子の長径と厚みの比が平均で5〜10で、一次粒子の凝集体の大きさが平均粒径(D50)で2μm以上200μm以下で、嵩密度が0.5〜1.0g/cmであることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末が開示されている。
特開2011−98882号公報
しかしながら、従来の窒化ホウ素粉末においては、耐電圧性の点で未だ改善の余地がある。そこで、本発明は、窒化ホウ素粉末の耐電圧性を向上させることを目的とする。
本発明者らが、耐電圧性の向上のために検討したところ、粒径が比較的小さい窒化ホウ素粉末と、粒径が比較的大きい窒化ホウ素粉末とを併用することが有効であることを見出した。
本発明の一側面は、体積基準の粒度分布において、5μm以上30μm未満の領域に存在するピークAと、50μm以上100μm未満の領域に存在するピークBとを有する、窒化ホウ素粉末である。
窒化ホウ素粉末の粉末X線回折法における(100)面のピーク強度I(100)に対する(002)面のピーク強度I(002)の比I(002)/I(100)は、9.0以下であってよい。
ピークBにおける極大頻度は、ピークAにおける極大頻度より大きくてよい。
本発明の他の一側面は、樹脂と、上記の窒化ホウ素粉末と、を含有する樹脂組成物である。
本発明の他の一側面は、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において5μm以上30μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Aと、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において50μm以上100μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程を備える、窒化ホウ素粉末の製造方法である。
上記工程において、窒化ホウ素粉末Bの体積割合が窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、窒化ホウ素粉末Aと窒化ホウ素粉末Bとを混合してよい。
本発明の他の一側面は、樹脂と、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において5μm以上30μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Aと、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において50μm以上100μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程を備える、樹脂組成物の製造方法である。
上記工程において、窒化ホウ素粉末Bの体積割合が窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、樹脂と窒化ホウ素粉末Aと窒化ホウ素粉末Bとを混合してよい。
本発明によれば、窒化ホウ素粉末の耐電圧性を向上させることができる。
(a)は実施例で用いた窒化ホウ素粉末Aの粒度分布を示すグラフであり、(b)は実施例で用いた窒化ホウ素粉末Bの粒度分布を示すグラフである。 実施例1の窒化ホウ素粉末の粒度分布を示すグラフである。 実施例2の窒化ホウ素粉末の粒度分布を示すグラフである。 参考例1の窒化ホウ素粉末の粒度分布を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
一実施形態に係る窒化ホウ素粉末は、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素粉末(塊状窒化ホウ素粉末)である。窒化ホウ素の一次粒子は、例えば鱗片状の六方晶窒化ホウ素粒子であってよい。この場合、窒化ホウ素の一次粒子の長手方向の長さは、例えば、1μm以上であってよく、10μm以下であってよい。
このような窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素粉末は、体積基準の粒度分布(以下、単に「粒度分布」ともいう)において、5μm以上30μm未満の領域に存在するピークAと、50μm以上100μm未満の領域に存在するピークBとを有している。窒化ホウ素粉末の粒度分布は、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布を意味する。具体的な測定条件は、実施例に記載の測定条件であってよい。5μm以上30μm未満の領域にピークが存在するとは、5μm以上30μm未満の領域に、頻度(体積%)が極大となる径(粒度分布の傾きが正から負に変化する径)が存在することを意味する。同様に、50μm以上100μm未満の領域にピークが存在するとは、50μm以上100μm未満の領域に、頻度(体積%)が極大となる径(粒度分布の傾きが正から負に変化する径)が存在することを意味する。
ピークAが存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の下限値は、8μm以上、10μm以上、12μm以上、14μm以上、16μm以上、又は18μm以上であってもよい。ピークAが存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の上限値は、28μm以下、26μm以下、24μm以下、22μm以下、又は20μm以下であってもよい。
ピークBが存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の下限値は、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、80μm以上、又は85μm以上であってもよい。ピークBが存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の上限値は、98μm以下、96μm以下、94μm以下、92μm以下、又は90μm以下であってもよい。
一実施形態において、ピークBにおける極大頻度F(体積%)は、ピークAにおける極大頻度F(体積%)より大きい。ピークAにおける極大頻度F(体積%)に対するピークBにおける極大頻度F(体積%)の比(F/F)は、窒化ホウ素粉末の熱伝導率を向上させる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは、10以上、20以上、又は30以上、更に好ましくは40以上、60以上、80以上、100以上、120以上、140以上、160以上、又は180以上である。当該比(F/F)は、窒化ホウ素粉末の耐電圧性を更に向上させる観点から、好ましくは220以下、より好ましくは、200以下、180以下、160以下、140以下、120以下、100以下、80以下、60以下、又は40以下、更に好ましくは30以下、20以下、又は10以下である。
ピークAにおける極大頻度F(体積%)は、例えば、0.01体積%以上であってよく、5体積%以下であってよい。ピークBにおける極大頻度F(体積%)は、例えば、10体積%以上であってよく、20体積%以下であってよい。
窒化ホウ素粉末は、ピークAが存在する領域及びピークBが存在する領域以外の領域にその他のピークを更に有していてもよく有していなくてもよい。窒化ホウ素粉末がその他のピークを更に有する場合、窒化ホウ素粉末は、例えば、30μm以上50μm未満の領域のみにその他のピークを更に有し、5μm未満の領域及び100μm超えの領域にはその他のピークを有していなくてよい。
窒化ホウ素粉末の粉末X線回折法における(100)面のピーク強度I(100)に対する(002)面のピーク強度I(002)の比I(002)/I(100)は、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下である。当該比I(002)/I(100)が小さいほど、窒化ホウ素の一次粒子が凝集していることを意味する。当該比I(002)/I(100)は、X線回折装置(例えばリガク社製ULTIMA−IV)を用いて測定される窒化ホウ素粉末の(002)面のピーク強度及び(100)面のピーク強度から算出される。なお、X線回折測定においては、前処理として窒化ホウ素粉末をプレス成型した後、成型体の面内方向の平面の法線に対して、互いに対称となるようにX線を照射する。
上述したような窒化ホウ素粉末は、例えば、体積基準の粒度分布において5μm以上30μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Aと、体積基準の粒度分布において50μm以上100μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程(混合工程)を備える製造方法により得られる。
窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bは、それぞれ窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなるものである。窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bそれぞれの最頻径は、窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bそれぞれの粒度分布において頻度(体積%)が最大となる径を意味する。窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bの粒度分布は、上述した窒化ホウ素粉末の粒度分布と同様にして測定される。
窒化ホウ素粉末Aの最頻径が存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の下限値は、8μm以上、10μm以上、12μm以上、14μm以上、16μm以上、又は18μm以上であってもよい。窒化ホウ素粉末Aの最頻径が存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の上限値は、28μm以下、26μm以下、24μm以下、22μm以下、又は20μm以下であってもよい。
窒化ホウ素粉末Bの最頻径が存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の下限値は、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、80μm以上、又は85μm以上であってもよい。窒化ホウ素粉末Bの最頻径が存在する領域(窒化ホウ素粉末の径)の上限値は、98μm以下、96μm以下、94μm以下、92μm以下、又は90μm以下であってもよい。
一実施形態において、混合工程では、窒化ホウ素粉末Bの体積割合が窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、窒化ホウ素粉末Aと窒化ホウ素粉末Bとを混合してよい。窒化ホウ素粉末Bの体積割合は、窒化ホウ素粉末の熱伝導率を向上させる観点から、窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bの合計100体積部に対して、好ましくは60体積部以上、より好ましくは、65体積部以上、70体積部以上、75体積部以上、80体積部以上、85体積部以上、又は90体積部以上、更に好ましくは、91体積部以上、93体積部以上、又は95体積部以上、特に好ましくは96体積部以上又は98体積部以上である。窒化ホウ素粉末Bの体積割合は、窒化ホウ素粉末の耐電圧性を更に向上させる観点から、好ましくは、99体積部以下、97体積部以下、又は95体積部以下、より好ましくは、90体積部以下、85体積部以下、80体積部以下、75体積部以下、70体積部以下、又は65体積部以下である。
窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bのそれぞれは、例えば、塊状の炭化ホウ素を粉砕する粉砕工程と、粉砕された炭化ホウ素を窒化して炭窒化ホウ素を得る窒化工程と、炭窒化ホウ素を脱炭させる脱炭工程とを備える製造方法により製造することができる。
粉砕工程では、塊状の炭素ホウ素(炭化ホウ素塊)を一般的な粉砕機又は解砕機を用いて粉砕する。このとき、例えば、粉砕時間及び炭化ホウ素塊の仕込み量を調整することにより、所望の最頻径を有する炭化ホウ素粉末を得る。なお、炭化ホウ素粉末の最頻径は、上述した窒化ホウ素粉末の最頻径と同様に測定される。このように、炭化ホウ素粉末の最頻径を所望の窒化ホウ素粉末の最頻径に近づけるよう調整することにより、上述した最頻径を有する窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bが得られる。
続いて、窒化工程では、窒化反応を進行させる雰囲気下かつ加圧条件下で、炭化ホウ素粉末を焼成することにより、炭窒化ホウ素を得る。
窒化工程における雰囲気は、窒化反応を進行させる雰囲気であり、例えば、窒素ガス及びアンモニアガス等であってよく、これらの一種単独又は2種以上の組合せであってよい。当該雰囲気は、窒化のしやすさとコストの観点から、好ましくは窒素ガスである。当該雰囲気中の窒素ガスの含有量は、好ましくは95体積%以上、より好ましくは99.9体積%以上である。
窒化工程における圧力は、好ましくは0.6MPa以上、より好ましくは0.7MPa以上であり、好ましくは1.0MPa以下、より好ましくは0.9MPa以下である。当該圧力は、更に好ましくは0.7〜1.0MPaである。窒化工程における焼成温度は、好ましくは1800℃以上、より好ましくは1900℃以上であり、好ましくは2400℃以下、より好ましくは2200℃以下である。焼成温度は、更に好ましくは1800〜2200℃である。圧力条件及び焼成温度は、炭化ホウ素の窒化を更に好適に進行させ、工業的にも適切な条件であることから、好ましくは、1800℃以上かつ0.7〜1.0MPaである。
窒化工程における焼成時間は、窒化が十分に進む範囲で適宜選定され、好ましくは6時間以上、より好ましくは8時間以上であり、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下であってよい。
脱炭工程では、窒化工程にて得られた炭窒化ホウ素を、常圧以上の雰囲気にて、所定の保持温度で一定時間保持する熱処理を行う。これにより、脱炭かつ結晶化された窒化ホウ素の一次粒子(一次粒子が鱗片状の六方晶窒化ホウ素)が凝集してなる窒化ホウ素粒子を得ることができる。
脱炭工程における雰囲気は、常圧(大気圧)の雰囲気又は加圧された雰囲気である。加圧された雰囲気の場合、圧力は、例えば0.5MPa以下、好ましくは0.3MPa以下であってよい。
脱炭工程では、例えば、まず、所定の温度(脱炭開始可能な温度)まで昇温した後に、所定の温度で保持温度まで更に昇温する。所定の温度(脱炭開始可能な温度)は、系に応じて設定可能であり、例えば、1000℃以上であってよく、1500℃以下であってよく、好ましくは1200℃以下である。所定の温度(脱炭開始可能な温度)から保持温度へ昇温する速度は、例えば5℃/分以下であってよく、好ましくは、4℃/分以下、3℃/分以下、又は2℃/分以下であってもよい。
保持温度は、粒成長が良好に起こりやすく、得られる窒化ホウ素粉末の熱伝導率を更に向上できる観点から、好ましくは1800℃以上、より好ましくは2000℃以上である。保持温度は、好ましくは2200℃以下、より好ましくは2100℃以下であってよい。
保持温度における保持時間は、結晶化が十分に進む範囲で適宜選定され、例えば、0.5時間超えであってよく、粒成長が良好に起こりやすい観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上、特に好ましくは10時間以上である。保持温度における保持時間は、例えば40時間未満であってよく、粒成長が進みすぎて粒子強度が低下することを低減でき、また、工業的な不都合も低減できる観点から、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。
脱炭工程においては、原料として、窒化工程で得られた炭窒化ホウ素に加えて、ホウ素源を混合して脱炭及び結晶化を行ってもよい。ホウ素源としては、ホウ酸、酸化ホウ素、又はその混合物が挙げられる。この場合、必要に応じて当該技術分野で用いられるその他の添加物を更に用いてもよい。
炭窒化ホウ素とホウ素源との混合割合は、適宜選定される。ホウ素源としてホウ酸又は酸化ホウ素を用いる場合、ホウ酸又は酸化ホウ素の割合は、炭窒化ホウ素100質量部に対して、例えば100質量部以上であってよく、好ましくは150質量部以上であり、また、例えば300質量部以下であってよく、好ましくは250質量部以下である。
以上のようにして得られる窒化ホウ素粉末に対して、篩によって所望の粒度分布を有する窒化ホウ素粉末が得られるように分級する工程(分級工程)を実施してもよい。これにより、所望の最頻径を有する窒化ホウ素粉末A及び窒化ホウ素粉末Bが更に好適に得られる。
以上説明した窒化ホウ素粉末は、例えば、放熱部材に好適に用いられる。窒化ホウ素粉末は、放熱部材に用いられる場合、例えば樹脂と共に混合された樹脂組成物として用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、樹脂と、上記の窒化ホウ素粉末とを含有する樹脂組成物である。
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂等を用いることができる。
樹脂組成物がプリント配線板の絶縁層に用いられる場合、樹脂は、耐熱性及び回路への接着強度に優れる観点から、好ましくはエポキシ樹脂であり、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はナフタレン型エポキシ樹脂である。樹脂組成物が熱インターフェース材に用いられる場合、樹脂は、耐熱性、柔軟性及びヒートシンク等への密着性に優れる観点から、好ましくはシリコーン樹脂である。
樹脂組成物は、樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有していてよい。硬化剤は、樹脂の種類によって適宜選択される。例えばエポキシ樹脂と共に用いられる硬化剤としては、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、イミダゾール化合物等が挙げられ、イミダゾール化合物が好適に用いられる。硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよく、15質量部以下又は10質量部以下であってよい。
窒化ホウ素粉末の含有量は、樹脂組成物の全体積を基準として、樹脂組成物の熱伝導率を向上させ、優れた放熱性能が得られやすい観点から、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上であり、成形時に空隙の発生、並びに、絶縁性及び機械強度の低下を抑制できる観点から、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
上述したような樹脂組成物は、例えば、樹脂と、上述した窒化ホウ素粉末Aと、上述した窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程(混合工程)を備える製造方法により得られる。
一実施形態において、混合工程では、窒化ホウ素粉末Bの体積割合が窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、窒化ホウ素粉末Aと窒化ホウ素粉末Bとを混合してよい。窒化ホウ素粉末Bの体積割合は、上述した窒化ホウ素粉末の製造方法における混合工程で説明したものと同様である。
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1(a)に示す粒度分布を有する窒化ホウ素粉末A(最頻径:19.8μm)5体積部と、図1(b)に示す粒度分布を有する窒化ホウ素粉末B(最頻径:87.9μm)95体積部とを混合し、窒化ホウ素粉末を得た。なお、窒化ホウ素粉末A,Bの粒度分布は、ベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(LS−13 320)を用い、本装置で設定可能な測定条件である、0.04〜2000μmの粒径範囲を116分割した条件(log(μm)=0.04の幅)で測定した体積基準の粒度分布である。
(実施例2)
窒化ホウ素粉末Aを35体積部、窒化ホウ素粉末Bを65体積部に変更した以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素粉末を得た。
(参考例1)
窒化ホウ素粉末Bのみを用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素粉末を得た。
[粒度分布の測定]
得られた各窒化ホウ素粉末について、窒化ホウ素粉末A,Bと同様にして体積基準の粒度分布を測定した。実施例1,2の窒化ホウ素粉末の粒度分布を図2(a),3(a)にそれぞれ示し、参考例1の窒化ホウ素粉末の粒度分布を図4(a)に示す。図2(b),3(b),4(b)には、これらの各窒化ホウ素粉末の5〜30μmの領域の粒度分布を拡大したグラフをそれぞれ示す。図2〜4から分かるとおり、実施例1,2の窒化ホウ素粉末では、窒化ホウ素粉末Aの最頻径(19.8μm)に対応する位置にピークAが存在し、窒化ホウ素粉末Bの最頻径(87.9μm)に対応する位置にピークBが存在している。一方、図4から分かるとおり、参考例1では、窒化ホウ素粉末Bの最頻径(87.9μm)に対応する位置にピークBが存在しているが、ピークAは存在していない。
また、実施例1,2の各窒化ホウ素粉末について、ピークAにおける極大頻度F(体積%)に対するピークBにおける極大頻度F(体積%)の比(F/F)を算出したところ、実施例1:38.7、実施例2:3.8であった。
[I(002)/I(100)の測定]
X線回折装置(リガク製「ULTIMA−IV」)により、窒化ホウ素粉末の粉末X線回折法における(100)面のピーク強度I(100)に対する(002)面のピーク強度I(002)の比I(002)/I(100)を算出したところ、実施例1:6.2、実施例2:6.5であった。なお、X線回折測定においては、前処理として窒化ホウ素粉末をプレス成型した後、成型体の面内方向の平面の法線に対して、互いに対称となるようにX線を照射した。
[耐電圧性の測定]
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100質量部と、硬化剤としてイミダゾール類(四国化成社製、2E4MZ−CN)10質量部との混合物に対し、得られた窒化ホウ素粉末を50体積%となるように混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、PET製フィルム上に厚みが0.2mmになるように塗布した後、100℃で40分間加熱乾燥し、これによりBステージ状態のシートを作製した。
得られたシートをPET製フィルムからはがし、厚さ2.0mmの銅板上に置き、その上に更に0.5mmの銅板を配置して積層体を得た。この積層体に対して、プレス機によって面圧160kgf/cmをかけながら180℃300分間加熱硬化することで、評価用試料を得た。得られた評価用試料の耐電圧を、KIKUSUI製「TOS 8650」を用いて、JIS C 6481に基づき測定した。結果を表1に示す。
[熱伝導率の測定]
実施例1,2の窒化ホウ素粉末については、以下の手順で熱伝導率も測定した。
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100質量部と、硬化剤としてイミダゾール類(四国化成社製、2E4MZ−CN)10質量部との混合物に対し、実施例1,2の窒化ホウ素粉末を50体積%となるように混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、PET製シート上に厚みが1.0mmになるように塗布した後、500Paの減圧脱泡を10分間行った。その後、温度150℃、圧力160kg/cm条件で60分間のプレス加熱加圧を行って、0.5mmのシートを作製した。
得られたシートから10mm×10mmの大きさの測定用試料を切り出し、キセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製、LFA447NanoFlash)を用いたレーザーフラッシュ法により、測定用試料の熱拡散率A(m/秒)を測定した。また、測定用試料の比重B(kg/m)をアルキメデス法により測定した。また、測定用試料の比熱容量C(J/(kg・K))を、示差走査熱量計(DSC;リガク社製、ThermoPlusEvoDSC8230)を用いて測定した。これらの各物性値を用いて、熱伝導率H(W/(m・K))をH=A×B×Cの式から求めた。結果を表1に示す。
Figure 2020164365

Claims (8)

  1. 窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素粉末であって、
    体積基準の粒度分布において、5μm以上30μm未満の領域に存在するピークAと、50μm以上100μm未満の領域に存在するピークBとを有する、窒化ホウ素粉末。
  2. 前記窒化ホウ素粉末の粉末X線回折法における(100)面のピーク強度I(100)に対する(002)面のピーク強度I(002)の比I(002)/I(100)が9.0以下である、請求項1に記載の窒化ホウ素粉末。
  3. 前記ピークBにおける極大頻度が、前記ピークAにおける極大頻度より大きい、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粉末。
  4. 樹脂と、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粉末と、を含有する樹脂組成物。
  5. 窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において5μm以上30μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Aと、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において50μm以上100μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程を備える、窒化ホウ素粉末の製造方法。
  6. 前記工程において、前記窒化ホウ素粉末Bの体積割合が前記窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、前記窒化ホウ素粉末Aと前記窒化ホウ素粉末Bとを混合する、請求項5に記載の窒化ホウ素粉末の製造方法。
  7. 樹脂と、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において5μm以上30μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Aと、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなり、体積基準の粒度分布において50μm以上100μm未満の領域に最頻径を有する窒化ホウ素粉末Bと、を混合する工程を備える、樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記工程において、前記窒化ホウ素粉末Bの体積割合が前記窒化ホウ素粉末Aの体積割合より多くなるように、前記樹脂と前記窒化ホウ素粉末Aと前記窒化ホウ素粉末Bとを混合する、請求項7に記載の樹脂組成物の製造方法。
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