JP2020161475A - 多価金属二次電池用アノライト及び多価金属二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、正極の作動を妨げずに多価金属二次電池を作動させるのに適したアノライト及びそれを用いた多価金属二次電池を提供することを目的とする。【解決手段】脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含むイオン伝導材である多価金属二次電池用アノライト、及びそれを用いた多価金属二次電池。【選択図】なし

Description

本発明は、多価金属二次電池用アノライト及び多価金属二次電池に関する。
近年、エネルギーデバイスの開発はますます盛んに行われており、二次電池の分野においては、高容量、高出力、安全性、耐久性、原料の低コスト化等の観点で開発が進められている。例えば、最も普及しているリチウム二次電池がレアメタルであるリチウムを電極原料とする一方で、原料の低コスト化の観点から、電極を汎用金属で代替するナトリウム電池、マグネシウム電池等の研究も行われている。また、二次電池には揮発性及び引火性の有機溶媒を用いた電解液が用いられる一方で、安全性及び耐久性等の観点から、電解液を、イオン液体やグライム錯体といった無溶媒液体に代替する研究が行われている。無溶媒液体は有機溶媒を用いた通常の電解液とは異なる電気化学的挙動を示すため、無溶媒液体中の電気化学的挙動を明らかにする研究も行われている。
例えばマグネシウム電池においては、イオン液体を電解質に用いた電池を組んで充放電を行うと大きな過電圧が発生するため、マグネシウムの理論電位から期待される電圧よりはるかに低い電圧(特に放電時)でしか作動させることができない。一方、マグネシウム塩化物単体、あるいはアルカリ金属塩化物に塩化マグネシウムを混合した高温溶融塩中でマグネシウムの円滑なレドックスが起こることが既に知られているが、レドックスが起こる温度は500℃以上の高温であるため、室温付近での作動には適さない。(非特許文献1)
この問題に関して、非特許文献2では、マグネシウムを対極に用いたサイクリックボルタンメトリーの結果から、常温溶融塩つまりイオン液体であるBMI[TFSA](1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)に、BMICl(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド)、及びMg[TFSA]2(マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)を溶解させることで調製した、塩化物イオン含有イオン液体をイオン伝導材に用いることで、マグネシウムが理論電位で過電圧を生じることなく作動したことが報告されている。
また、非特許文献3において、アルカリ金属TFSA溶融塩にMg[TFSA]2を混合し350℃以上で溶融させた塩中では逆に大きな過電圧が発生すること、及び、BMIのような芳香族カチオンからなる塩化物(BMICl)に塩化マグネシウムを混合し、200℃以上で溶融させたオニウム系塩化物溶融塩中ではマグネシウムが理論電位近傍で大きな過電圧を生じることなく作動したことが報告されており、できるだけTFSAアニオンを含まない組成が好適であることが示唆されている。しかしながら、実用的に最も期待される室温近傍で作動するイオン液体はTFSAアニオンを含むものが多く、実用電池に期待される室温近傍での円滑な作動が可能でかつマグネシウム金属の円滑な作動の両立は困難であった。
また、これら塩化物を含有する電解質は酸化分解電位が+2.8V vs Mg/Mg2+以下であることから、これらを電解質とする場合、塩化ビスマスやシェブレルのような当該電位以下の電位で作動する正極しか用いることができない。(非特許文献4)
B.Borresenら、Electrochemical Society Proceedings,96(7),157(1996). 電気化学会第85回大会講演要旨集 2D04(2018). ECS Transactions,86(14)(2018) 21−28 電気化学会第85回大会講演要旨集 1F09(2018).
本発明者は、塩化物イオンを含ませた無溶媒液体(ゼロソルベント)を用いた場合におけるマグネシウムの電気化学的挙動に関するこれまでの知見に基づいて、ハロゲンイオンを含ませたイオン伝導材を用いる多価金属二次電池の作製を検討した。
しかしながら、これまで報告されている、塩化物イオンを含ませた無溶媒液体を用いた場合のマグネシウムの作動は、あくまでサイクリックボルタンメトリーで確認された電気化学的挙動として確認されたに過ぎない。
本発明者は、実際の多価金属電池への適用を想定して種々検討を行った。ところが、例えば、マグネシウムの場合、これまでマグネシウムの作動が報告された室温溶融状態のイオン伝導材(BMI[TFSA]に、BMICl及びMg[TFSA]2を溶解させたもの)では、BMIカチオンなどの芳香族系カチオンの多くがマグネシウムの理論電位より正の電位に存在するため、マグネシウム金属上では不安定で、電池としての作動に問題があった。
そこで、本発明の課題は、正極の作動を妨げずに多価金属二次電池を作動させるのに適したアノライト及びそれを用いた多価金属二次電池を提供することにある。
本発明者が鋭意検討した結果、驚くべきことに、固体である有機脂肪族ハロゲン化物と固体である多価金属ハロゲン化物とを混合すると液体(常温溶融塩)になることを見出すとともに、さらに、このような特徴的な常温溶融塩を含ませたイオン伝導材の擬固体が、正極の作動を妨げずに多価金属二次電池を作動させるのに適することを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含むイオン伝導材である、多価金属二次電池用アノライト。
項2. 前記脂肪族オニウムハロゲン化物がエーテル基を含有する、項1に記載の多価金属二次電池用アノライト。
項3. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムハロゲン化物である、項1又は2に記載の多価金属二次電池用アノライト。
項4. 前記多価金属ハロゲン化物が、マグネシウムハロゲン化物、亜鉛ハロゲン化物、又はアルミニウムハロゲン化物である、項1〜3のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
項5. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドであり、前記多価金属ハロゲン化物が塩化マグネシウムである、項1〜4のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
項6. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドであり、前記多価金属ハロゲン化物が塩化亜鉛である、項1〜4のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
項7. 前記常温溶融塩における多価金属原子に対するハロゲン原子の構成モル比が3以上である、項1〜5のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
項8. ハロゲンイオンの含有量が1M以上である、項1〜7のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
項9. 項1〜8のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライトを含む、多価金属二次電池。
項10. (a)多価金属種からなる負極活物質を含むアノードと、(b)前記多価金属二次電池用アノライトの擬固体であるアノライト層と、(c)ハロゲンイオンを含まないイオン伝導材の擬固体であるカソライト層と、(d)多価金属/多価金属イオンに対する標準電位がハロゲンイオンの標準電位よりも貴である正極活物質を含むカソードと、がこの順で積層された積層体を含む、項9に記載の多価金属二次電池。
項11. 前記正極活物質がカーボンである、項10に記載の多価金属二次電池。
項12. 前記多価金属が、マグネシウム又はその合金、若しくは亜鉛又はその合金である、項9〜11のいずれかに記載の多価金属二次電池。
本発明によれば、多価金属二次電池の作動により一層適したアノライト及びそれを用いた多価金属二次電池が提供される。従って、本発明によれば、正極材料として高電位で作動する物質を選択することも可能となり、これによって、これまでにない高電圧で多価金属二次電池を作動させることも可能となる。
本発明の多価金属二次電池の一例であるコイン電池の断面図を模式的に示す。 試験例1で得られた、DEME(N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)カチオン)含有塩の示差走査熱量測定結果を示す。 試験例2で得られた、常温溶融塩DEMECl−MgCl2(実施例1)をイオン伝導材として用いた3極セルにおけるMg作用極の開回路電位(OCP)の経時変化の測定結果である。 試験例3で得られた、常温溶融塩DEMECl−MgCl2(実施例1)中でのMg金属上でのサイクリックボルタモグラムである。 試験例4−1で得られた、リチウム二次電池の充放電結果を示す。 試験例4−1で得られた、マグネシウム二次電池(電解液は一液であり、Mg[TFSA]2含有Py13[TFSA]を用いた。)の充放電結果を示す。 試験例4−2で得られた、マグネシウム二次電池(実施例2)の充放電結果を示す。 試験例5で得られた、マグネシウム二次電池(電解液は一液であり、試験例4−2における実施例2のマグネシウム二次電池で用いられたアノライトを用いた。)の充放電結果を示す。 試験例6で得られた、マグネシウム二次電池(実施例3)の充放電結果を示す。 試験例7−1で得られた、マグネシウム二次電池(アノライト層及びカソライト層を含み、アノライト層は、芳香族オニウムカチオンであるBMIカチオンを含む擬固体である。)のサイクル特性を示す。 試験例7−2で得られた、試験例4−2で作製したマグネシウム二次電池(実施例2)のサイクル特性を示す。 試験例8−1で得られた、亜鉛二次電池(電解液は一液であり、Zn[TFSA]2含有Py13[TFSA]イオン液体を用いた。)の充放電結果を示す。 試験例8−2で得られた、亜鉛二次電池(アノライト層及びカソライト層を含み、アノライト層は、Zn[TFSA]2及びZnCl2を含むPy13[TFSA]の擬固体である。)の充放電結果を示す。 試験例8−3で得られた、亜鉛二次電池(実施例4)の充放電結果を示す。 試験例9で得られた、マグネシウム二次電池(実施例5)の充放電結果を示す。 試験例10で得られた、マグネシウム二次電池(実施例6)の充放電結果を示す。
1.多価金属二次電池用アノライト
本発明の多価金属二次電池用アノライトは、脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含むイオン伝導材であって、負極用の電解質として用いられるものである。
脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩
脂肪族オニウムハロゲン化物及び多価金属ハロゲン化物は、いずれも単独では常温固体塩(40℃以下で固体状態である塩)である。しかしながら、これらを互いに混合すると常温でも液体状態の塩、つまり常温溶融塩になる。なお、本発明において、常温溶融塩は、40℃以下、好ましくは35℃以下、さらに好ましくは30℃以下、一層好ましくは25℃以下で溶融状態である塩をいう。常温溶融塩が溶融状態を呈する温度の下限としては特に限定されず、低いほど好ましいが、例えば−50℃超が挙げられる。この常温溶融塩は、常温でイオン伝導が可能である点、塩化物イオンを含有する点、及び脂肪族オニウムカチオンが還元反応で安定であり電位窓が広い点等により、多価金属二次電池のアノライト(負極用電解質)として有用であるだけでなく、多価金属二次電池を高電圧で作動させることができるという電気化学的特性上の特有の効果を発揮する。
脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩がこのような特有の効果を発揮する理由としては定かではないが、脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物とが混合されて常温溶融塩を形成する時に、MXn -(Mは多価金属、Xはハロゲン、nはMの価数を超える数)のようなハロゲン化物錯アニオンを効率的に形成していることによると考えられる。一方、単に通常のイオン液体に固体ハロゲン塩と固体多価金属塩とを別々に溶解することで元素組成が同様の常温溶融塩を調製したとしても、上記のハロゲン化物錯アニオンを形成する前にマグネウムの強い電場によってイオン液体構成アニオン(例えばTFSA)が配位してしまうことで、上述のハロゲン化物錯アニオンは形成されにくいと考えられる。
原料となる脂肪族オニウムハロゲン化物としては、非環式または環式の非芳香族性炭化水素基を有するオニウムカチオンとハロゲンアニオンとの塩であればよい。脂肪族オニウムハロゲン化物は常温固体塩である。なお、本発明において、常温固体塩は、40℃以下で固体状態である塩をいう。好ましくは、脂肪族オニウムハロゲン化物としては、下記一般式(I)で示される塩が挙げられる。
上記式(I)中、Aは、窒素(N)又はリン(P)を表す。R1及びR2は、互いに同じ又は異なっていてもよい炭素数1〜5、好ましくは2〜4のアルキル基、又は、それらが互いに連結した(−R1−R2−として形成された)炭素数4〜6、好ましくは4〜5のアルキレン基を表す。これらの中でも、R1及びR2は、同じ又は異なっていてもよい炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキル基であることがより好ましい。R3は、炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3のアルキル基を示す。R4は、炭素数1〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のアルキル基又は下記式(II)で示されるエーテル基含有基を示す。これらの中でも、R4は、下記式(II)で示されるエーテル基含有基であることが一層好ましい。
上記式(II)中、R41は、シグマ結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4のアルキレン基を表す。R42は、炭素数1〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のアルキル基を表す。
上記式(I)中、Xは、ハロゲン原子を表し、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を表し、好ましくは塩素、臭素を表し、より好ましくは塩素を表す。
好ましい脂肪族オニウムハロゲン化物の例としては、以下の(a)〜(f)の塩が挙げられる。
脂肪族オニウムハロゲン化物のより具体的な例としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムハロゲン化物((a)のアンモニウム塩)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム(「Py13」とも記載する)ハロゲン化物((b)のピロリジニウム塩)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム(「Py14」とも記載する)ハロゲン化物((c)のピロリジニウム塩)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(「DEME」とも記載する)ハロゲン化物((d)のアンモニウム塩)、N,N,N,N−トリメチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムハロゲン化物((e)のアンモニウム塩)、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム(「MEMP」とも記載する)ハロゲン化物((f)のピロリジニウム塩)が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは(d)、(e)、(f)に示される脂肪族オニウムハロゲン化物が挙げられ、より好ましくは(d)、(e)に示される脂肪族オニウムハロゲン化物が挙げられ、さらに好ましくは(d)に示される脂肪族オニウムハロゲン化物が挙げられる。
常温溶融塩の調製において、上記の脂肪族オニウムハロゲン化物は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価金属ハロゲン化物としては、常温固体塩であれば特に限定されない。多価金属ハロゲン化物としては、例えば、多価金属フッ化物、多価金属塩化物、多価金属臭化物、多価金属ヨウ化物が挙げられ、好ましくは多価金属塩化物、多価金属臭化物が挙げられ、より好ましくは多価金属塩化物が挙げられる。また、多価金属ハロゲン化物としては、例えば、マグネシウムハロゲン化物、亜鉛ハロゲン化物、アルミニウムハロゲン化物が挙げられる。これらの中でも、好ましい多価金属ハロゲン化物の例としては、塩化マグネシウム、塩化亜鉛が挙げられる。
脂肪族オニウムハロゲン化物及び多価金属ハロゲン化物の組み合わせにおいては、例えば、脂肪族オニウム塩化物と多価金属塩化物とを組み合わせるように、両塩を構成するハロゲンは共通とすることが好ましい。特に、脂肪族オニウムハロゲン化物及び多価金属ハロゲン化物の好ましい組み合わせとしては、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドと塩化マグネシウムとの組み合わせ;N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドと塩化亜鉛との組み合わせが挙げられる。
脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩において、多価金属原子に対するハロゲン原子の構成モル比(ハロゲン原子/多価金属)としては、例えば3以上が挙げられる。電池をより高電圧で作動させる観点から、ハロゲン原子/多価金属比としては、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、一層好ましくは6.5以上、特に好ましくは6.8以上が挙げられる。ハロゲン原子/多価金属比の範囲の上限としては特に限定されないが、常温溶融状態を好ましく得る観点から、例えば9以下、好ましくは8以下、より好ましくは7.5以下、さらに好ましくは7以下が挙げられる。
本発明の多価金属二次電池用アノライトにおけるハロゲンイオンの量としては、例えば1M以上が挙げられる。電池をより高電圧で作動させる観点から、ハロゲンイオンの量としては、好ましくは1.2M以上、より好ましくは1.4M以上、さらに好ましくは1.5M以上、一層好ましくは1.6M以上、特に好ましくは1.7M以上が挙げられる。ハロゲンイオン量は高いほど好ましいため、更に好ましくは、2M以上、3M以上、4M以上、5M以上、6M以上、6.5M以上が挙げられる。ハロゲンイオンの量の範囲の上限としては、例えば8M以下又は7M以下が挙げられる。
脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩は、脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物とを混合することで得られる。好ましくは、常温溶融塩は、脂肪族オニウムハロゲン化物及び多価金属ハロゲン化物のいずれか一方(好ましくは融点の低い方の化合物)を加熱溶融し、当該加熱溶融塩に対して、他方の化合物を加えて溶解させ、その後、室温に冷却することで容易に得られる。より好ましくは、常温溶融塩は、脂肪族オニウムハロゲン化物の加熱溶融塩に、多価金属ハロゲン化物を加えて溶解させ、その後、室温に冷却することで得られる。また、原料となる脂肪族オニウムハロゲン化物及び多価金属ハロゲン化物は、それぞれ、ハロゲン原子/多価金属比が上記の範囲内となる量で用いることができる。
他の成分
本発明の多価金属二次電池用アノライトは、上述の脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩に加えて、他の成分を含んでいてもよい。
例えば、他の成分として、アノライトの粘度調整(具体的には、粘度低下)により擬固体化を容易にする等を目的として、他のイオン液体(常温溶融塩)を含んでいてもよい。他のイオン液体を構成するカチオンとしては特に限定されないが、電気化学的特性に鑑み、上記の脂肪族オニウムであることが好ましい。また、他のイオン液体を構成するアニオンとしては特に限定されず、塩の溶解温度を下げる観点及び/又はイオン拡散を促進する観点等から適宜選択されるが、例えば、BF4 -、BF3CF3 -、BF3C2F5 -、BF3C3F7 -、BF3C4F9 -、BF3(CN)-、BF2(CN)2 -、BF(CN)3 -、B(CN)4 -、PF6 -、(C2F5)3PF3 -、CF3CO2 -、CF3SO3 -、C2F5SO3 -、C3F7SO3、C4F9SO3 -、(FSO2)2N-(FSA-)、FSO2NSO2CF3 -(FTA-)、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)、CF3SO2NSO2C2F5 -(C12 -)、CF3CONSO2CF3 -(TSAC-)、(C2F5SO2)2N-(BFTA-)、CF2SO2NSO2nC4F9(C14 -)、環状(-CF2SO2NSO2CF2-)-(CTFSA-)、環状(-CF2SO2NSO2C2F4-)-(C3FSA-)、(CF3SO2)3C-、(FSO2)3C-、BOB-等が挙げられる。これらのアニオンの中でも、酸素を含むアニオン、つまりCF3CO2 -、CF3SO3 -、C2F5SO3 -、C3F7SO3、C4F9SO3 -、(FSO2)2N-(FSA-)、FSO2NSO2CF3 -(FTA-)、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)、CF3SO2NSO2C2F5 -(C12 -)、CF3CONSO2CF3 -(TSAC-)、(C2F5SO2)2N-(BFTA-)、CF2SO2NSO2nC4F9(C14 -)、環状(-CF2SO2NSO2CF2-)-(CTFSA-)、環状(-CF2SO2NSO2C2F4-)-(C3FSA-)、(CF3SO2)3C-、(FSO2)3C-、BOB-が好ましく、CF3SO3 -、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)がより好ましく、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)がさらに好ましい。他のイオン液体の好適な具体例としては、DEME−TFSA、MEMP−TFSAが挙げられ、より好ましくはDEME−TFSA(下記式(g))が挙げられる。
本発明の多価金属二次電池用アノライトが他の成分を含む場合は、アノライトは、脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物とを混合して常温溶融塩を調製し、その後に、常温溶融塩を他の成分で希釈することによって調製する。他の成分は、アノライト中のハロゲンイオン量が上記の範囲内となる量で用いることができる。
なお、上述の脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩が、通常の電池使用環境下での温度で良好な溶融状態を示すとともに電気化学的特性に非常に優れているため、本発明のアノライトには、これらの他のイオン液体を含まなくてもよい。より高い放電電圧を得る観点から、本発明のアノライトには他のイオン液体を含まないことが好ましい。
なお、亜鉛二次電池の場合は、上述の脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物(亜鉛ハロゲン化物)との混合物である常温溶融塩だけでなく、芳香族イオン液体を含むアノライトでも作動する。そのような芳香族イオン液体の具体例としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMI)塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)塩が挙げられ、芳香族イオン液体を含むアノライトの具体的な例としては、BMIClとBMI[TFSA]とZnCl2とを混合したアノライトが挙げられる。
2.多価金属二次電池
本発明の多価金属二次電池は、上述のアノライトを含んで構成される。本発明の多価金属二次電池の具体的形態は特に限定されないが、図1に、本発明の多価金属二次電池の一例としてコイン電池を模式的に示す。本発明の多価金属二次電池は、図1の多価金属二次電池100に例示されるように、(a)アノード110と、(b)特定のアノライト層120と、(c)特定のカソライト層130と、(d)特定のカソード140とがこの順で積層された積層体を含むことができる。また、本発明の多価金属二次電池は、図1の多価金属二次電池100に例示されるように、アノライト層120とカソライト層130との間にセパレータ150が介在していてもよい。以下、図1を例に挙げて本発明の多価金属二次電池について詳述する。
(a)アノード
アノード110は、多価金属種からなる負極活物質を含む電極であればよい。多価金属種としては、多価金属二次電池の種類に応じて決定すればよく、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、及びそれらの合金が挙げられる。
多価金属二次電池がマグネシウム二次電池である場合、アノード110の負極活物質は、マグネシウムを含有し、酸化・還元を繰り返すことができる物質であればよい。具体的には、析出・溶解を繰り返すことができる金属マグネシウム;マグネシウムイオンの脱合金・合金化反応を繰り返すことができるマグネシウム合金が挙げられる。好ましくは、負極活物質としては、マグネシウム合金が挙げられる。マグネシウム合金としては、Mg−Al、Mg−Al−Zn、Mg−Zn(ZK51A,ZK61A)、Mg−希土類元素(EZ33,ZE41,QE22A,WE54A,WE43A)、Mg−Al−Zn(AZ31C,AZ61A,AZ80A)、Mg−Zn−Zr(ZK60A)等が挙げられる。
多価金属二次電池が亜鉛二次電池である場合、アノード110の負極活物質は、亜鉛を含有し、酸化・還元を繰り返すことができる物質であればよい。具体的には、析出・溶解を繰り返すことができる金属亜鉛;酸化・還元を繰り返すことができる、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩;亜鉛イオンの脱合金・合金化反応を繰り返すことができる亜鉛合金が挙げられる。
多価金属二次電池がアルミニウム二次電池である場合、アノード110の負極活物質は、アルミニウムを含有し、酸化・還元を繰り返すことができる物質であればよい。具体的には、析出・溶解を繰り返すことができる金属アルミニウム;アルミニウムイオンの脱合金・合金化反応を繰り返すことができるアルミニウム合金が挙げられる。アルミニウム合金としては、Si、Mn、Cr、Ni、Cu、Mgのうちの少なくとも1種とアルミニウムとの合金が挙げられる。
上記の負極活物質の中でも、好ましくは、マグネシウム又はその合金、若しくは亜鉛又はその合金が挙げられる。
アノード110は、上記の負極活物質のみから構成されてもよいし、上記の負極活物質が集電体に担持されることで構成されてもよい。集電体としては、ステンレス鋼、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔等の金属が挙げられる。
(b)アノライト層
アノライト層120は、上記「1.多価金属二次電池用アノライト」に記載したアノライトの擬固体である。アノライトを擬固体化することで、アノライト中に含まれるハロゲンイオンがカソライト層130内に進入することを防止する。
多価金属二次電池用アノライトを擬固体化する方法としては、特に限定されず、どのような方法を用いてもよい。一般的にイオン液体をゲル化する方法を特に限定することなく用いることができ、好ましくは、上記の多価金属二次電池用アノライトにシリカ(二酸化ケイ素)を混合してゲル化(擬固体化)させることができる。
アノライトを擬固体化するためのシリカの形状及び大きさとしては特に限定されず、擬固体化が可能である限り任意の形状及び大きさのものが用いられる。例えば、形状としては、粒子状、板状、針状等が挙げられる。粒子の大きさとしては、ナノ粒子程度の大きさであればよく、例えば球状のシリカを用いる場合では、平均粒子径として好ましくは5〜15nm、より好ましくは8〜13nmが挙げられる。なお、平均粒子径は、レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径である。
アノライト層120を構成する擬固体中のシリカの含有量としては、5〜20重量%、好ましくは8〜17重量%、より好ましくは10〜15重量%、さらに好ましくは12〜15重量%が挙げられる。
セパレータ
セパレータ150は、アノライト層120とカソライト層130との間に介在することで、アノライト層120とカソライト層130との二相構造をより安定的に保つことができる。
セパレータ150としては、電池や電気二重層キャパシタにおいてセパレータとして用いられているものを特に限定することなく用いることができる。通常、セパレータ150は、多孔質体である。セパレータ150の材料としては、合成樹脂、シリカ、セラミック等が挙げられ、これらの材料が単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。合成樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。イオン伝導体の浸透性の観点から、好ましくは、これらの熱可塑性樹脂にシリカ微粉体等のが混ぜ込まれた材料が挙げられる。熱可塑性樹脂に混ぜ込まれるシリカ微粉体は必ずしもアノライトやカソライトの擬固体化に用いられるシリカと形状が同じである必要はない。
(c)カソライト層
カソライト層130は、ハロゲンイオンを含まないイオン伝導材(カソライト;正極電解質)の擬固体である。カソライトを擬固体化することで、アノライト中に含まれるハロゲンイオンがカソライト層130内に進入することを防止し、ハロゲンイオンフリーの状態を保つ。
ハロゲンイオンを含まないイオン伝導材(カソライト)は、多価金属イオンを含み且つ溶剤を含まないものであればよい。具体的には、イオン液体に多価金属イオンを含有させた常温溶融塩であればよい。
イオン液体を構成するカチオンとしては特に限定されないが、電気化学的特性に鑑み、上記「1.多価金属二次電池用アノライト」に記載した脂肪族オニウムであることが好ましい。また、イオン液体を構成するアニオンとしては特に限定されず、塩の溶解温度を下げる観点及び/又はイオン拡散を促進する観点等から適宜選択されるが、例えば、BF4 -、PF6 -、CF3CO2 -、CF3SO3 -、(FSO2)2N-(FSA-)、FSO2NSO2CF3 -(FTA-)、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)、CF3SO2NSO2C2F5 -(C12 -)、CF3CONSO2CF3 -(TSAC-)、(C2F5SO2)2N-(BFTA-)、CF2SO2NSO2nC4F9(C14 -)、環状(-CF2SO2NSO2CF2-)-(CTFSA-)、環状(-CF2SO2NSO2C2F4-)-(C3FSA-)等が挙げられる。これらのアニオンの中でも、(CF3SO2N)2N-(TFSA-)が特に好ましい。イオン液体の好適な具体例としては、Py13−TFSA、Py14−TFSAが挙げられ、より好ましくはPy13−TFSA(下記式(h))が挙げられる。
上記のイオン液体に含有させる多価金属イオンは、多価金属二次電池の種類に応じて決定すればよい。具体的には、多価金属二次電池がマグネシウム二次電池である場合、多価金属イオンはマグネシウムイオンであり、多価金属二次電池が亜鉛二次電池である場合、多価金属イオンは亜鉛イオンであり、多価金属二次電池がアルミニウム二次電池である場合、多価金属イオンはアルミニウムイオンである。
上記のイオン液体に含有させる多価金属イオンのイオン源となる塩としては特に限定されず、ハロゲンイオンを含まない多価金属塩が特に限定されることなく用いられる。ハロゲンイオンを含まない多価金属塩は、常温で固体の塩であればよく、上記のイオン液体に溶解させることで、イオン伝導材全体として常温溶融塩を構成する。ハロゲンイオンを含まない多価金属塩におけるアニオンは、上記のイオン液体を構成するアニオンで挙げたものから選択することができる。好ましくは、ハロゲンイオンを含まない多価金属塩におけるアニオンは、上記のイオン液体を構成するアニオンと同じである。
ハロゲンイオンを含まないイオン伝導材(カソライト)は、上記のイオン液体に、上記のハロゲンイオンを含まない多価金属塩を溶解することによって調製することができる。多価金属塩は、多価金属イオンの濃度が、カソライト中例えば0.35〜0.65M、好ましくは0.4〜0.6M、より好ましくは0.45〜0.55Mとなる量で用いることができる。調製されたイオン伝導材(カソライト)を擬固体化する方法としては、アノライトの擬固体化と同様に行うことができる。つまり、カソライトにシリカナノ粒子を混合してゲル化(擬固体化)させることができる。
カソライト層130を構成する擬固体中のシリカナノ粒子の含有量としては、5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%、より好ましくは8〜11重量%が挙げられる。
(d)カソード
カソード140は、多価金属/多価金属イオンに対する標準電位がハロゲンイオンの標準電位よりも貴である正極活物質を含む。図示された態様では、カソード140は、正極活物質層141と集電材142とを含む。正極活物質層141はと集電材142の表面に形成されている。
本発明では、イオン伝導材を、ハロゲンイオンを含むアノライト層120及びハロゲンイオンを含まないカソライト層130の二相化としているため、正極活物質として、従前の多価金属二次電池の正極活物質として通常用いられる、ハロゲンの標準電位よりも卑であるシェブレル材(例えばMo68)等を用いず、ハロゲンの標準電位よりも貴である材料を用いることができる。このため、多価金属二次電池を高電圧で作動させることができる。
正極活物質層141は、正極活物質と結着剤とを含む正極合剤で構成される。正極活物質としては、ハロゲンイオンの標準電位よりも貴であればよく、特に限定されないが、金属カチオンインサーション型正極活物質、アニオンインサーション型正極活物質、コンバージョン系正極活物質、有機正極物質等が挙げられ、好ましくは金属カチオンインサーション型正極活物質、アニオンインサーション型正極活物質が挙げられ、さらに好ましくはアニオンインサーション型正極活物質が挙げられる。
金属カチオンインサーション型正極活物質としては、多価金属イオンの挿入脱離が可能な材料であれば特に限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池電池で用いられる正極材料と類似の化合物が挙げられ、より具体的には、マグネシウムイオンの挿入脱離が可能と考えられる材料として、MgCo24,MgMn24,MgFe24,MgCr24等のスピネル酸化物;V25,MoO3,TiS2,Ti24等の層状酸化物、等の遷移金属酸化物系材料が挙げられる。
アニオンインサーション型正極活物質としては、アニオンの挿入脱離が可能な材料であれば特に限定されない。例えば、炭素系材料、オキシ金属ハライド等が挙げられる。より具体的には、炭素系材料としては、天然グラファイト・人造グラファイト(KS6、KS6L、SFG6、SFG6L)等のグラファイト、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、アセチレンブラック(AB)、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相法炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。また、オキシ金属ハライドとしては、ハロゲンイオンのインサーションが可能であるBiOClやVOCl等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭素系材料が挙げられ、より好ましくは、グラファイト、CNT、ABが挙げられ、さらに好ましくはCNTが挙げられる。
コンバージョン系正極活物質としては、コンバージョン反応が可能な材料であれば特に限定されない。例えば、金属塩化物が挙げられ、より具体的にはBiCl3等が挙げられる。有機正極物質としては、キノン化合物等が挙げられる。
正極活物質としては、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、例えば金属カチオンインサーション型正極活物質とアニオンインサーション型正極活物質とを組み合わせて用いてもよく、この場合、金属カチオンインサーション型正極物質が正極合剤の例えば65重量%以上、好ましくは70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上を占めるように正極合剤を構成することができる。
本発明では、優れた特性を奏する多価金属二次電池用アノライトが用いられるため、使用できる正極活物質の選択肢が広範囲にわたる。選択できる正極活物質としては、高電圧で作動する正極材料も可能であり、4V以上の電圧を示す正極材料を選択することさえ可能である。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。集電材142としては、アルミニウム、モリブデン、タングステンなどが挙げられる。
その他の構成
多価金属二次電池における上記以外の他の構成は、電池の具体的形態に応じて当業者が適宜設計することができる。例えば図1に例示するコイン電池は、上記の積層体の他に、積層体を収容する外装缶(正極缶)160、外装缶とかしめられる負極キャップ(負極缶)170、負極キャップ170とアノード110とを電気的に接続するバネ171及び板172、積層体全体をシールするガスケット180、カソライト130及びカソード140をシールするガスケット190を含んで構成されている。外装缶160、負極キャップ170、バネ171及び板172の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属である。ガスケット180,190の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂が挙げられる。
製造
本発明の多価金属二次電池の製造方法は特に限定されないが、例えば図1に例示するコイン電池形態の多価金属二次電池100の場合、次のようにして製造することができる。正極缶160に、カソード140と、カソライト層130を固定するためのスペーサー190とを設置し、カソード140上にカソライトゲルを塗布することでカソライト層130を形成する。また、研磨したアノード110上にアノライトゲルを塗布してアノライト層120を形成し、アノライト層120にセパレータ150を重ねた積層体を、カソライト層130上に重ねる。コインセル部材であるバネ171及び板172を設置し、最後に負極缶170を設置する。正極缶160と負極缶170とをかしめて多価金属二次次電池を得る。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験例1
本試験例では、脂肪族オニウムハロゲン化物であるN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリド(DEMECl)と多価金属ハロゲン化物である塩化マグネシウム(MgCl2)とから常温溶融塩DEMECl−MgCl2(実施例1)を調製した。粘度及びイオン伝導度の測定は、低湿度チャンバー(DAIKIN 露点<−60℃)内で行った。粘度の測定には、Brookfiled RVDV−III+を用いた。示差走査熱量測定(DSC)には、Perkin−Elmer Pyris1 DSCを用いた。密度測定には、Heガスピクノメータ(Accupyc II 1340)を用いた。イオン伝導度の測定は、Radiometer analytical CDC749セルを用い、交流インピーダンスアナライザ(Solartoron 1260)により交流法で測定した。
DEMEClは、N,N−ジエチルメチルアミンと2−メトキシエチルクロライドをオートクレーブで加熱加圧化で4級化反応によって合成した。加熱真空乾燥にて十分に乾燥(水分量140ppm)させた。DEMEClの融点は67℃、とMgCl2の融点は714℃であり、それぞれ室温付近では固体であるが、DEMEClを加熱溶融し、MgCl2(高純度化学)を、DEMEClとMgCl2のモル比が5:1となるように加えて溶解させ室温に冷却することで、室温でも過冷却によって溶融状態(流動性)を保った塩が得られた。これを以後DEMECl−MgCl2と表記する。
得られた流動性の塩DEMECl−MgCl2の45℃における密度は、Accupyc II 1340で測定した結果、1.10g・ml-1であり、DEMEClとMgCl2のモル比が5:1の場合の平均分子量が167であることから、モル濃度は、6.57mol・dm-3と求められた。図2に、DEME含有塩のDSC測定結果を示す。
DEMECl−MgCl2は、ガラス転移点を示すのみで、常温で安定的に流動状態を保つ塩であることが認められた。
一方、DEMECl−MgCl2のイオン伝導度は、45℃において90μS/cmと低いが、Waldenプロット上では理想線(1M KCl aq.)上に位置している。このことから、得られた流動性の塩は、TFSAなどからなる一般的なイオン液体というよりは、常温下でありながら高温溶融アルカリ金属溶融塩に近いふるまいをしていると考えられる。
試験例2
本試験例では、DEMECl−MgCl2(実施例1)をイオン伝導材として用い、Mgを作用極、Ptを対極、ヨウ素レドックスを含むEMI[TFSA]イオン液体に白金を挿入したものを参照極とした3極セルにおける、Mg作用極のフェロセン基準で校正した開回路電位(OCP)の経時変化を測定した。この電気化学測定は、Arガス雰囲気グローブボックス内で、85℃の条件で行った。
結果を図3に示す。図3では、Li及びMgの標準酸化還元電位もあわせて示す。図3より、DEMECl−MgCl2中でのMg上の電位が、Mgの理論電位よりもおよそ+0.3V貴であることがわかった。つまり、DEMECl−MgCl2中では、リチウム基準に対して1V程度の比較的貴な電位でマグネシウム負極が作動することが示された。
試験例3
本試験例では、DEMECl−MgCl2(実施例1)中でのMg金属上でのサイクリックボルタモグラム(作用極:Mg、対極:W、レドックス:I-/I3 -、10mV/s、85℃)を得た。結果を図4に示す。図4に示されるように、DEMECl−MgCl2中でマグネシウム金属電極が可逆に作動することが分かった。
試験例4
本試験例(試験例4−1及び4−2)では、グラファイト正極を用いたコイン電池形態の二次電池の充放電を行った。
試験例4−1
(リチウム二次電池の材料)
・アノード:リチウム金属
・カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
・電解液:1.0M LiTFSA含有Py13[TFSA]イオン液体
(マグネシウム二次電池の材料)
・アノード:マグネシウム合金(AZ31B)
・カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
・電解液:0.5M Mg[TFSA]2含有Py13[TFSA]イオン液体
(製造方法)
材料を、アルゴンガス雰囲気グローブボックス内で2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込み、コイン電池形態の二次電池を作製した。マグネシウム合金(AZ31)は、大気雰囲気で予め鏡面研磨を行ったものをグローブボックスに持ち込み、コイン電池作製直前に再度グローブボックス内で研磨を行った。リチウムについては、グローブボックス内で保管しているリチウム箔(本城金属)をグローブボックス内で打ち抜いたものを使用した。カソード、セパレータ、電解液、コインセル部材(SUS板及びSUSバネ)については、あらかじめ十分に真空乾燥させたものをグローブボックス内に持ち込み、正極缶に、合剤正極(直径11mmφ)、電解液を含浸させたセパレータ(16mmφ)、負極(14mmφ)、スペーサー、バネ、負極缶をこの順に設置後、グローブボックスボックス内に設置したカシメ機によりかしめ処理を行い、コイン電池を作製した。
T=45℃、充電レートC/10,放電レートC/10の測定条件で、リチウム二次電池の充放電を行った。結果を図5に示す。また、T=45℃、充電レートC/10,放電レートC/20の測定条件で、マグネシウム二次電池の充放電を行った。結果を図6に示す。
図5に示されるように、正極の作動電位は、リチウム金属基準で平均電圧4.7Vであった。マグネシウム金属の電位とリチウム金属の電位の差の理論値は0.7Vであるため、マグネシウム金属が使えるならば平均電圧4.0Vでの作動が期待できる。しかしながら、図6に示すように、従前の電解液では放電電圧2.0Vにとどまった。この理由は、マグネシウム負極上で大きな過電圧(特に溶出過電圧)が発生するためである。
試験例4−2
上記の試験例2より、DEMECl−MgCl2が良好なマグネシウム負極特性を示すことが示されたが、DEMECl−MgCl2の酸化限界電位は、+0.5V vs Fc/Fc+であり、Mgを用いても2.5V程度の正極しか用いることができない。これに鑑み、本試験例では、高電圧化を目指し、DEMECl−MgCl2を擬固体化し、正極側の電解質には塩化物などのハロゲンを含まないTFSA系イオン液体等を用いることで、マグネシウム二次電池を構成した。具体的には、次の材料を用いて、コイン電池形態のマグネシウム二次電池(実施例2)を作製した。
(材料)
・アノード:マグネシウム合金(AZ31、厚み100μm)を用いた。
・アノライト層:試験例1で得たDEMECl−MgCl2と、DEME[TFSA]とを混合し、アノライトを調製した。DEME[TFSA]は、DEMECl−MgCl2の調製に用いたDEMEClのアノライト中の濃度が1.5M相当、MgCl2の濃度が0.25M相当となる量で用いた。アノライトに、SiO2ナノ粒子(Aldrich シリカナノ粒子;レーザ回折/散乱法によって測定される体積平均粒子径10nm)を13重量%となるように加え、擬固体化した。
・セパレータ:シリカ微粉体が混ぜ込まれたポリオレフィン微多孔質膜;日本板硝子製;品番040A2を用いた。
・カソライト層:Py13[TFSA]にMg[TFSA]2を0.5M溶解させ、上述のSiO2ナノ粒子を9重量%となるように加え、擬固体化した。
・カソード:TFSA-の挿入脱離により高電位(>+4.7V vs Li/Li+)で作動するグラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極を用いた(理論容量:120mAhg-1)。
(製造方法)
これらの材料を十分に真空乾燥させ、アルゴンガス置換グローブボックス内で2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込み、コイン電池を作製した。具体的には、まず、正極缶に合剤正極(直径11mmφ)と、カソライトゲルを固定するためのPTFEのスペーサーとを設置し、正極上にカソライトゲルを塗布することでカソライト層を形成した。また、負極として用意したAZ31合金(直径14mmφ)は、グローブボックスに持ち込む前に鏡面研磨を行い、さらにグローブボックスに持ち込んだ後、コインセル組み立て直前に再度研磨を行った。研磨した負極上にアノライトゲルを塗布してアノライト層を形成し、アノライト層にセパレータ(直径16mmφ)を重ねた積層体を、カソライト層上に重ね、コインセル部材(SUS板及びSUSバネ)を設置した。最後に負極缶(負極キャップ)を設置し、グローブボックスボックス内に設置したカシメ機によりかしめ処理を行い、コイン電池の形態のマグネシウム二次電池を得た。
得られたマグネシウム二次電池の充放電を行った。測定条件は試験例4−1と同じである。結果を図7に示す。なお、図7では、図6の結果を破線で併せて示している。図7に示すとおり、放電開始電圧4.0V、放電時の電圧は3V以上であった。つまり、アノード側のみに塩化物を含有するイオン伝導材を用いることで、Mg合金の円滑な作動を行い、カソード側への塩化物の混入を防ぐために、カソード側、アノード側それぞれのイオン伝導材をシリカナノ粒子で擬固体化することで、高電圧作動に成功した。後述の試験例5の結果に鑑みても、実施例2の電池により、アノライトとカソライトとが有効に分離することで、液間電位差の影響も少なく電池がスムーズに作動したことが分かった。
試験例5
以下の条件で、グラファイト正極を用い、アノライトのみを用いたコイン電池形態のマグネシウム二次電池(比較例1)を作製し、以下の条件で充放電を行った。結果を図8に示す。
アノード:マグネシウム合金(AZ31)
カソード:グラファイト合剤正極
電解液:DEMECl1.0M,MgCl20.25M 含有DEME[TFSA](試験例4−2における実施例2のマグネシウム二次電池で用いられたアノライト)
測定条件:T=45℃、充電レートC/10,放電レートC/10
図8に示すとおり、試験例4−2における実施例2のマグネシウム二次電池で用いられたイオン伝導材のうちアノライトのみを一液で用いた場合には、塩化物イオンの酸化によって3V以上の電圧での充電ができず、グラファイト正極の充電は行われないため、放電容量はほとんど認められなかった。
試験例6
アノライト層を構成する擬固体からDEME[TFSA]を除いたことを除いて試験例4−2(実施例2)と同様にして、マグネシウム二次電池(実施例3)を作製した。具体的には、アノライト層を構成する擬固体は、次のようにして作製した。試験例1で得たDEMECl−MgCl2(DEMECl:MgCl2=5:1(モル比))に、SiO2ナノ粒子を14重量%となるように加え、擬固体化した。
得られたマグネシウム二次電池について、試験例4−2と同様に充放電を行った。結果を図9に示す。なお、図9においては、図7の結果を破線で併せて示している。図9に示すとおり、DEME[TFSA]を含まないアノライトは高粘度であるにも関わらず電池として良好に作動した。また、放電電圧がDEME[TFSA]を含む場合(試験例4−2の実施例2)よりも高くなることが確認された。
試験例7
本試験例(試験例7−1及び7−2)では、グラファイト正極を用いたコイン電池形態のマグネシウム二次電池のサイクル特性を調べた。
試験例7−1
以下の材料を2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込み、試験例4−2と同様にしてコイン電池形態のマグネシウム二次電池(比較例2)を作製した。以下の条件でコイン電池の充放電を3回行った。結果を図10に示す。
アノード:マグネシウム合金(AZ31)
カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
アノライト層:BMI[TFSA]とBMIClとを3:2のモル比で混合し、さらに0.25M、Mg[TFSA]2を溶解させた。この混合塩中のBMIClの濃度はおよそ1.5Mである。これに、SiO2ナノ粒子を15重量%となるように加え、擬固体化した。
カソライト層:Py13[TFSA]にMg[TFSA]2を0.5M溶解させ、上述のSiO2ナノ粒子を9重量%となるように加え、擬固体化した。
測定条件:T=45℃、充電レートC/10,放電レートC/20
図10に示すように、芳香族オニウムカチオンを含むイオン伝導材を用いた場合のマグネシウム二次電池は、充放電サイクル特性が悪いことが分かった。
試験例7−2
試験例4−2のコイン電池形態のマグネシウム二次電池(実施例2)を用い、試験例4−2の条件(試験例7−1と同じ条件)でコイン電池の充放電を3回行った。結果を図11に示す。
図11に示すように、脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含むイオン伝導材を用いた場合のマグネシウム二次電池は、サイクル特性に優れていることが分かった。
試験例8
本試験例(試験例8−1〜8−3)では、グラファイト正極を用いたコイン電池形態の亜鉛二次電池の充放電を行った。
試験例8−1
以下の材料を2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込みコイン電池形態の亜鉛二次電池(比較例3)を作製した。以下の条件でコイン電池の充放電を行った。結果を図12に示す。
アノード:亜鉛箔
カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
電解液:0.5M Zn[TFSA]2含有Py13[TFSA]イオン液体
測定条件:T=45℃、充電レート:C/10,放電レート:C/10
図12に示すように、亜鉛の場合は塩化物イオンを含まない電解液であっても、おなじく塩化物を含まない電解液で作動させたリチウムの結果(図5)と同様にスムーズな充放電が亜鉛の理論電位で作動していることがわかる。しかしながら亜鉛の理論電位がマグネシウムよりも2V以上貴であるため、電池作動電圧が2Vにとどまる。
試験例8−2
以下の材料を2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込み、試験例4−2と同様にしてコイン電池形態の亜鉛二次電池(比較例4)を作製した。以下の条件でコイン電池の充放電を行った。結果を図13に示す。
アノード:亜鉛箔
カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
アノライト層:Py13[TFSA]にZn[TFSA]20.5MとZnCl20.1Mとを溶解させ、上述のSiO2ナノ粒子を13重量%となるように加え、擬固体化した。
カソライト層:Py13[TFSA]にZn[TFSA]2を0.5M溶解させ、上述のSiO2ナノ粒子を9重量%となるように加え、擬固体化した。
測定条件:T=45℃、充電レート:C/10,放電レート:C/10
図13に示すように、イオン伝導材をアノライト層とカソライト層とで分け、アノライトが脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含まない場合には、アノライトの方に塩化亜鉛を混合しても、塩化物の正極側への混入が防がれているため、より卑な電位で作動するグラファイト正極が作動できることが確認できた。しかしながら、この場合でも、亜鉛の作動電位は、マグネシウムの理論電位よりも2V程度高いため、作動電圧は2V程度にとどまることがわかる。
試験例8−3
以下の材料を2032コインセル(直径20mm、高さ3.2mm)(正極缶にはアルミクラッドを用いた。)に組み込み、試験例4−2と同様にしてコイン電池形態の亜鉛二次電池(実施例4)を作製した。以下の条件でコイン電池の充放電を行った。結果を図14に示す。
アノード:亜鉛箔
カソード:グラファイト合剤正極(グラファイト(KS6L)合剤(KS6L:PVDF=92:8(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極)
アノライト層:多価金属ハロゲン化物として塩化亜鉛(ZnCl2)を用いたことを除いて、試験例1と同様にして、常温溶融塩DEMECl−ZnCl2を調製した。DEMECl−ZnCl2と、DEME[TFSA]とを混合し、アノライトを調製した。DEME[TFSA]は、DEMECl−ZnCl2の調製に用いたDEMEClのアノライト中の濃度が1.25M相当、ZnCl2の濃度が0.25M相当となる量で用いた。アノライトに、SiO2ナノ粒子を13重量%となるように加え、擬固体化した。
カソライト層:Py13[TFSA]にZn[TFSA]2を0.5M溶解させ、上述のSiO2ナノ粒子を9重量%となるように加え、擬固体化した。
測定条件:T=45℃、充電レート:C/10,放電レート:C/10
図14に示すように、イオン伝導材をアノライト層とカソライト層とで分け、アノライトが脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含ませた場合、アノライトの方に高濃度の塩化物イオンを含ませることで、驚くべきことに亜鉛(その理論電位がマグネシウムよりも2V以上正に位置するため、本来的に高電圧化が困難な金属である。)を負極としているのもかかわらず、3V以上の高い電圧で作動したことが分かった。これは、高濃度塩化物溶融塩中での亜鉛の作動電位が、亜鉛本来の理論電位よりも1.2V程度負電位側にシフトしたことを示唆する。
試験例9
カソードとして、V25及びABの合剤正極(V25:AB:PVDF=70:10:20(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極を用いたことを除いて、試験例4−2(実施例2)と同様にして、マグネシウム二次電池(実施例5)を作成した。
得られたマグネシウム二次電池について、T=65℃、充電レートC/100、放電レートC/20の測定条件で、充放電を行った。結果を図15に示す。図15に示す通り、V25を正極活物質に用いた実際の電池の場合でも、良好な充放電結果が得られた。
試験例10
カソードとして、V25及びCNTの合剤正極(V25:CNT:PI=93:2:5(重量比))の層を集電体(Al箔)上に形成した電極を用いたことを除いて、試験例4−2(実施例2)と同様にして、マグネシウム二次電池(実施例6)を作成した。
得られたマグネシウム二次電池について、T=110℃、充電レートC/25、放電レートC/25の測定条件で、充放電を行った。結果を図16に示す。図16に示すとおり、V25を正極活物質に用いた実際の電池の場合でも、良好な充放電結果が得られた。さらに、このマグネシウム二次電池は、放電時の電圧低下が少ない点でも極めて優れた電池特性を示した。
本発明によると、固体である有機脂肪族ハロゲン化物と固体である多価金属ハロゲン化物とを混合することで得られる液体(常温溶融塩)が新たに見出され、この常温溶融塩を多価金属二次電池のアノライトとして用いることで、様々な種類の正極を用いて多価金属二次電池を作動させることが可能となる。例えば、正極材料として高電位で作動する物質を選択することも可能となり、これによって、多価金属二次電池を高電圧で作動させることが可能となる。例えば、正極活物質としてグラファイトを用いた場合のマグネシウム二次電池及び亜鉛二次電池において、これまで報告例のない3V以上での充放電が可能となる。
100…多価金属二次電池
110…アノード
120…アノライト層
130…カソライト層
140…カソード
141…正極活物質

Claims (12)

  1. 脂肪族オニウムハロゲン化物と多価金属ハロゲン化物との混合物である常温溶融塩を含むイオン伝導材である、多価金属二次電池用アノライト。
  2. 前記脂肪族オニウムハロゲン化物がエーテル基を含有する、請求項1に記載の多価金属二次電池用アノライト。
  3. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムハロゲン化物である、請求項1又は2に記載の多価金属二次電池用アノライト。
  4. 前記多価金属ハロゲン化物が、マグネシウムハロゲン化物、亜鉛ハロゲン化物、又はアルミニウムハロゲン化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
  5. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドであり、前記多価金属ハロゲン化物が塩化マグネシウムである、請求項1〜4のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
  6. 前記エーテル基含有オニウムハロゲン化物が、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムクロリドであり、前記多価金属ハロゲン化物が塩化亜鉛である、請求項1〜4のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
  7. 前記常温溶融塩における多価金属原子に対するハロゲン原子の構成モル比が3以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
  8. ハロゲンイオンの含有量が1M以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライト。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の多価金属二次電池用アノライトを含む、多価金属二次電池。
  10. (a)多価金属種からなる負極活物質を含むアノードと、(b)前記多価金属二次電池用アノライトの擬固体であるアノライト層と、(c)ハロゲンイオンを含まないイオン伝導材の擬固体であるカソライト層と、(d)多価金属/多価金属イオンに対する標準電位がハロゲンイオンの標準電位よりも貴である正極活物質を含むカソードと、がこの順で積層された積層体を含む、請求項9に記載の多価金属二次電池。
  11. 前記正極活物質がカーボンである、請求項10に記載の多価金属二次電池。
  12. 前記多価金属が、マグネシウム又はその合金、若しくは、亜鉛又はその合金である、請求項9〜11のいずれかに記載の多価金属二次電池。
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