JP2020161232A - リチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、電極組成物からなる層と集電体との密着性を向上させる目的で集電体表面に略垂直方向に伸びる導電性繊維を配した集電体が開示されている。
上記課題を踏まえて、本発明は電極組成物からなる層に対する親和性及び密着性に優れた集電体を用いた電池を提供することを目的とする。
本発明は、集電体と前記集電体の表面に形成された電極組成物層とを有するリチウムイオン電池であって、前記電極組成物層が電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を含み、前記集電体が導電性基材と、前記導電性基材の表面であって前記電極組成物層と接する面に高分子化合物及び導電性フィラーを含む導電性組成物層とを有し、前記導電性組成物層に含まれる高分子化合物と前記被覆層に含まれる高分子化合物とが同じ組成であることを特徴とするリチウムイオン電池である。
正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1−xCoxO2、LiMn1−yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ−p−フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
これらの中では電解液への濡れ性及び吸液の観点からフッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの混合物が好ましく、ビニル樹脂がより好ましい。
ウレタン樹脂(A)は柔軟性を有するため、リチウムイオン電池活物質をウレタン樹脂(A)で被覆することにより電極の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することができる。
これらのうち、好ましくはPEG、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合ジオールおよびポリオキシエチレンオキシテトラメチレンブロック共重合ジオールであり、特に好ましくはPEGである。
ウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、40,000〜500,000であることが望ましく、より望ましくは50,000〜400,000である。ウレタン樹脂(A)の数平均分子量が40,000未満では被膜の強度が低くなり、500,000を超えると溶液粘度が高くなって、均一な被膜が得られないことがある。
例えば、活性水素成分(a1)として高分子ジオール(a11)と鎖伸長剤(a13)を用い、イソシアネート成分(a2)と高分子ジオール(a11)と鎖伸長剤(a13)とを同時に反応させるワンショット法や、高分子ジオール(a11)とイソシアネート成分(a2)とを先に反応させた後に鎖伸長剤(a13)を続けて反応させるプレポリマー法が挙げられる。
また、ウレタン樹脂(A)の製造は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下または非存在下で行うことができる。溶媒の存在下で行う場合の適当な溶媒としては、アミド系溶媒[DMF、ジメチルアセトアミドなど]、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシドなど)、ケトン系溶媒[メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど]、芳香族系溶媒(トルエン、キシレンなど)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものはアミド系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒およびこれらの2種以上の混合物である。
ウレタン樹脂(A)の製造は当該業界において通常採用されている製造装置で行うことができる。また溶媒を使用しない場合はニーダーやエクストルーダーなどの製造装置を用いることができる。このようにして製造されるウレタン樹脂(A)は、30重量%(固形分)DMF溶液として測定した溶液粘度が通常10〜10,000ポイズ/20℃であり、実用上好ましいのは100〜2,000ポイズ/20℃である。
ビニルモノマー(b)を必須構成単量体とする重合体(B)は柔軟性を有するため、正極活物質粒子を重合体(B)で被覆することにより電極の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することができる。
特に、ビニルモノマー(b)としてカルボキシル基を有するビニルモノマー(b1)及び下記一般式(1)で表されるビニルモノマー(b2)を含むことが望ましい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4〜36の分岐アルキル基である。]
R2は炭素数4〜36の分岐アルキル基であり、R2の具体例としては、1−アルキルアルキル基(1−メチルプロピル基(sec−ブチル基)、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、1−ブチルエイコシル基、1−ヘキシルオクタデシル基、1−オクチルヘキサデシル基、1−デシルテトラデシル基、1−ウンデシルトリデシル基等)、2−アルキルアルキル基(2−メチルプロピル基(iso−ブチル基)、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルヘプチル基、2−メチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−メチルデシル基、2−エチルノニル基、2−ヘキシルオクタデシル基、2−オクチルヘキサデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルトリデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、2−トリデシルペンタデシル基、2−デシルオクタデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基、2−ヘキサデシルオクタデシル基、2−テトラデシルエイコシル基、2−ヘキサデシルエイコシル基等)、3〜34−アルキルアルキル基(3−アルキルアルキル基、4−アルキルアルキル基、5−アルキルアルキル基、32−アルキルアルキル基、33−アルキルアルキル基および34−アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7〜11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1〜1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7〜8量体)およびα−オレフィン(炭素数5〜20)オリゴマー(4〜8量体)等に対応するオキソアルコールのアルキル残基のような1またはそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
これらのうち、電解液の吸液の観点から好ましいのは2−アルキルアルキル基であり、更に好ましいのは2−エチルヘキシル基及び2−デシルテトラデシル基である。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
重合に際しては、公知の重合開始剤〔アゾ系開始剤[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリルなど)、パーオキシド系開始剤(ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシドなど)]など〕を使用して行なうことができる。
重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜2重量%である。
溶液または分散液のモノマー濃度は5〜95重量%、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて0.01〜5%、粘着力および凝集力の観点から好ましくは0.05〜2%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等)およびハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。使用量はモノマーの全重量に基づいて2%以下、粘着力および凝集力の観点から好ましくは0.5%以下である。
被覆電極活物質粒子を基準とした前記高分子化合物の重量割合は、1〜20重量%であることが好ましく、成形性と抵抗値との観点から、2〜7重量%であることがより好ましい。
導電助剤としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電助剤が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1〜20μmであることが好ましい。
被覆電極活物質粒子は、例えば、前記高分子化合物及び電極活物質粒子並びに必要により用いる導電助剤を混合することによって製造してもよく、前記高分子化合物と導電助剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材と電極活物質粒子とを混合することにより製造してもよい。
なお、電極活物質粒子と前記高分子化合物と導電助剤とを混合する場合、混合順序には特に制限はないが、電極活物質粒子と前記高分子化合物とを混合した後、さらに導電助剤を加えて混合することが好ましい。
上記方法により、前記高分子化合物と必要により用いる導電助剤を含む被覆層によって電極活物質の表面の少なくとも一部が被覆される。
前記電極組成物は、必要に応じて、導電助剤を含んでも良い。導電助剤としては、前述のものが挙げられる。前記電極組成物に含まれる導電助剤の重量割合は、前記の被覆活物質粒子の被覆層に含まれる導電助剤も併せて、前記電極活物質層の重量を基準として0.1〜12重量%であることが好ましく、0.5〜10重量%であることがより好ましく、1.0〜8.0重量%であることが特に好ましい。前記電極組成物に含まれる導電助剤の重量割合がこの範囲であると、得られる電池の電気特性が良好となる。
前記電極用バインダとしては、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。これらの電極用バインダは電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着固定するために用いられる公知のリチウムイオン電池用結着剤として知られており、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去して固体として析出させることで電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着する。
前記導電性基材としては、導電性を有してさえいれば材料は特に限定されないが、公知の金属性基材及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂性基材(特開2012−150905号公報等に樹脂集電体として記載されている)等を好適に用いることができる。
金属性基材としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される1種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属性基材として用いてもよい。
これらの導電材料は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電材料としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電材料が導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1〜20μmであることが好ましい。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
前記樹脂、前記導電材料、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂性基材用材料を得る。
混合の方法としては、導電材料のマスターバッチを得てからさらに樹脂と混合する方法、樹脂、導電材料、及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロール等を用いることができる。
集電体の、前記導電性基材の表面であって電極組成物層と接する面が有する導電性組成物層と、電極組成物層が有する被覆電極活物質の被覆層とが、同じ組成の高分子化合物を含むことで、集電体と電極組成物層との親和性及び密着性が増す。
前記導電性組成物層が有する導電性フィラーの重量割合は、前記高分子化合物及び導電性フィラーとを含む導電性組成物層の重量を基準として10〜50重量%であることが好ましい。
表面粗さRaとしては、約50mm×50mmの大きさの試験片を切り出し、その表面を、キーエンス製超深度形状測定顕微鏡「VK8500」を用い、レンズ100倍、ピッチ0.01μm、シャッタースピードAUTO、ゲイン835の測定条件にて40μm×40μmのエリアの表面粗さRaを4点測定し、その平均値を用いる。
前記導電性組成物層の膜厚は、後述する導電性組成物スラリーを導電性基材にアプリケーターで塗工する際の導電性組成物スラリー量及びアプリケーターのギャップで調整することができる。
前述の通り高分子化合物を製造し、得られた前記高分子化合物の溶液と前記導電性フィラーを混合して導電性組成物スラリーを作成する。得られた導電性組成物スラリーを前記導電性基材の電極組成物層と接する面にアプリケーターを用いて塗工し、60〜80℃で3時間以上真空乾燥させて脱溶剤することで、導電性組成物層を作製することができる。
本発明の集電体と前記被覆電極活物質粒子を含む電極組成物層とを組み合わせて電極を作製する。得られた電極と対極となる電極とを組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収容し、非水電解液を注入し、セル容器を密封する方法等により製造することができる。
また、正極集電体の一方の面だけに正極活物質層を形成した本発明のリチウムイオン電池用正極の、正極集電体の他方の面に負極活物質からなる負極活物質層を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレータと積層してセル容器に収容し、非水電解液を注入し、セル容器を密閉することでも得られる。この場合、集電体の両面に前記高分子化合物及び前記導電性フィラーを含む導電性組成物層を有することになる。
電解質としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、好ましいものとしては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩系電解質、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2及びLiN(C2F5SO2)2等のフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質、LiC(CF3SO2)3等のフッ素原子を有するスルホニルメチド系電解質等が挙げられる。これらの内、高濃度時のイオン伝導性及び熱分解温度の観点から好ましいのはフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質であり、LiN(FSO2)2がより好ましい。LiN(FSO2)2は、他の電解質と併用してもよいが、単独で使用することがより好ましい。
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、酢酸ビニル5.0部、2−エチルヘキシルアクリレート23.7部及び酢酸エチル185.5部を仕込み75℃に昇温した。酢酸ビニル11.1部、2−エチルヘキシルアクリレート21.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート28.1部、アクリル酸11.1部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.200部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.200部を混合した。得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.800部を酢酸エチル12.4部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6〜8時間目にかけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を2時間継続し、酢酸エチルを702.4部加えて樹脂濃度10重量%の高分子化合物H1の溶液を得た。高分子化合物H1の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は420,000であった。
Mwは、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により求めた。
装置:「HLC−8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「TSKgel GMHXL」(2本)、「TSKgel Multipore HXL−Mを各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μL
流量:0.6mL/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン[東ソー(株)製]
高分子化合物
高分子化合物H2:ポリフッ化ビニリデン[商品名「ソレフ6010」、SOLVAY社製]
高分子化合物H3:ウレタン樹脂[商品名「サンプレンLQ582」、三洋化成工業(株)製]
導電性フィラー
AB:アセチレンブラック[商品名「デンカブラック」、デンカ(株)製]
FB:ファーネスブラック[商品名「#3030」、三菱ケミカル(株)製]
KB:ケッチェンブラック[商品名「EC300J」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]
黒鉛:黒鉛粒子[商品名「SNG−WXA1」、JFEケミカル(株)製]
CNT:カーボンナノチューブ[商品名「K−Nanos100P」、Kumho社製]
CNF:カーボンナノファイバー[商品名「VGCF−H」、昭和電工(株)製]
高分子化合物を固形分量として1重量部、導電性フィラー4重量部、有機溶媒95重量部になるように各材料を混合して導電性組成物スラリー1〜9を得た。高分子化合物及び導電性フィラーの組合せは表1の記載の通りである。有機溶媒には、高分子化合物がH1の場合には酢酸エチルを、H2の場合にはN−メチル−2−ピロリドンを、H3の場合にはN,N−ジメチルホルムアミドを使用した。
2軸押出機にて、樹脂[商品名「サンアロマーPC684S」、サンアロマー(株)製]77部、導電性フィラー[商品名「#3030」、三菱ケミカル株式会社製]10部、導電性フィラー[商品名「K−Nanos100P」、Kumho社製]8部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001(酸変性ポリプロピレン)」、三洋化成工業(株)製]5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物をTダイから押し出し、50℃に温調した冷却ロールで圧延することで、樹脂性基材を得た。得られた樹脂性基材の膜厚は50μmであった。
導電性組成物スラリー1を、樹脂性基材表面にアプリケーターを用いてギャップ150μmで塗工し、70℃で7時間真空乾燥して脱溶剤させて、樹脂性基材表面に導電性組成物層が形成された集電体を作製した。
実施例1の導電性スラリー1を、表1の記載に従って導電性スラリー2〜9に変更した以外は実施例1と同様にして集電体を作製した。
比較例1については、導電性スラリー1を高分子化合物H1の1重量%酢酸エチル溶液に変更した以外は実施例1と同様にして集電体を作製した。
比較例2については、導電性組成物層を形成せず、樹脂性基材をそのまま集電体とした。
形成された導電性組成物層の膜厚は膜厚計[ミツトヨ製]を用いて測定し、結果を表1に記載した。
樹脂集電体をΦ15mmに打ち抜き、電気抵抗測定器[IMC−0240型、井元製作所(株)製]及び抵抗計[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の貫通抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(1.77cm2)をかけた値を貫通抵抗値(Ω・cm2)として結果を表1に記載した。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×1.77(cm2)
得られた集電体から約50mm×50mmの大きさの試験片を切り出し、その表面(導電性組成物層を上側)を、キーエンス製超深度形状測定顕微鏡「VK8500」を用い、レンズ100倍、ピッチ0.01μm、シャッタースピードAUTO、ゲイン835の測定条件にて40μm×40μmのエリアの表面粗さRaを4点測定し、その平均値を表面粗さの測定値として結果を表1に記載した。
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率でEC:PC=1:1)にLiN(FSO2)2(LiFSI)を2mol/Lの割合で溶解させ、リチウムイオン電池用電解液を調製した。
万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]を用いて、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243]20部と製造例1で得た高分子化合物H1の溶液300部とアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック]57部とLiNi0.8Co0.15Al0.05O2[(株)BASF戸田バッテリーマテリアルズ製HED NCA−7050、体積平均粒子径10μm]875部を室温、720rpmの条件で15分撹拌した。撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を80℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた混合物を300μmの金属メッシュを取り付けたハンマークラッシャーNH−34S[(株)三庄インダストリー製]で粉砕し造粒を行い混合造粒物を得た。得られた混合造粒物98.2部と製造例4で作製した電解液1.8部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}に入れ、2000rpmで5分間混合して、正極組成物の合計重量に基づく上記電解液の重量割合が1.8重量%である正極組成物を作製した。得られた正極組成物を指で押すと、正極組成物に含まれる正極活物質粒子の一部が、塊状に接着して合一化し、かつ、弱い力で分離することができる状態であった。
得られた正極組成物をロールプレス機にセットされた粉体投入口に入れ、以下の条件で正極組成物の成形を行った。
ロールプレス機から排出された正極組成物層1は、ガラス板の上に載せて移動しても形状が壊れない程度にしっかり固められており、厚さは均一で350μmであり、平滑な表面を有していた。なお、正極活物質層の厚さは、マイクロメータにより測定した。
ロールプレス機の条件は以下の通りである。
ロールサイズ:250mmφ×400mm
ロール回転速度:1m/分
ロールの間隔(ギャップ):350μm
圧力:10kN(線圧:25kN/m)
製造例5に記載の高分子化合物H1の溶液を高分子化合物H2と同じポリフッ化ビニリデンの樹脂濃度10重量%のN−メチル−2−ピロリドン溶液に変更した以外は製造例5と同様にして正極組成物層2を得た。
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた集電体の導電性組成物層が形成されている面に前記正極組成物層を載せて、プレス機[井元製作所製手動加熱プレス]を用いて常温、2MPaでプレスした。プレス後の集電体/正極組成物層を垂直にした時に、集電体と正極組成物層に位置のずれが生じなかった場合は○、位置のずれが生じた場合は×を表1に記載した。
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた集電体の導電性組成物層が形成されている面に正極組成物層1又は2を、表1に記載の通り組み合わせて正極を作製した。
前記正極にセパレータ(セルガード社製、#3501、厚さ25μm)、対極としてLi金属、負極集電体として銅箔を順に配置し、発電要素を形成した。そして、正極集電体及び負極集電体にそれぞれタブを接続し、アルミラミネートフィルム製の外装体で発電要素を挟んだ。そして外装体の3辺を熱圧着封止して発電要素を収納した。この発電要素に電解液を追加で注入し、真空下において、タブが導出するように外装体を封止することで、リチウムイオン電池を得た。
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた集電体を用いて、前述の通りにリチウムイオン電池の作製をそれぞれ10回行った。実施例1〜8で得られた集電体を用いた場合、電池の作製中に正極集電体と正極組成物層がずれることはなく10回すべて問題なく電池を作製することができた。一方、比較例2又は3で得られた集電体を用いた場合には、10回中3回は正極集電体と正極組成物層の位置がずれて電池の作製がスムーズに行えなかった。
比較例1で得られた集電体は貫通抵抗値が高くなっていた。
Claims (5)
- 集電体と前記集電体の表面に形成された電極組成物層とを有するリチウムイオン電池であって、
前記電極組成物層が電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子を含み、
前記集電体が導電性基材と、前記導電性基材の表面であって前記電極組成物層と接する面に高分子化合物及び導電性フィラーを含む導電性組成物層とを有し、
前記導電性組成物層に含まれる高分子化合物と前記被覆層に含まれる高分子化合物とが同じ組成であることを特徴とするリチウムイオン電池。 - 前記高分子化合物が、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂又はこれらの混合物である請求項1に記載のリチウムイオン電池。
- 前記導電性フィラーが導電性繊維を含む請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池。
- 前記高分子化合物及び導電性フィラーを含む導電性組成物層の表面粗さRaが0.1〜5μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
- 前記高分子化合物及び導電性フィラーを含む導電性組成物層の膜厚が5〜20μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
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