JP2020156031A - ドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカ - Google Patents

ドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカ Download PDF

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Abstract

【課題】高音域の音を高い音圧で出力することができるドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカを提供すること。【解決手段】本発明に係るドーム型振動板(111)は、第1曲率(κ1)を有する第1部分(111_1)と、第1部分(111_1)の内周側に配置されて第1部分(111_1)と一体的に設けられた、第1曲率(κ1)と異なる第2曲率(κ2)を有する第2部分(111_2)と、を備える、【選択図】図3

Description

本発明は、ドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカに関する。
近年、情報技術及び音響技術の向上により、従来のCDでは扱えなかった高音域(20kHz以上)の音を含む音源、いわゆるハイレゾ音源の普及が広がってきている。このため、ハイレゾ音源を高品質で再生するためのスピーカの開発が望まれている。
特許文献1には、コーン型振動板を用いたスピーカが開示されている。特許文献1に開示されたスピーカは、剛性の大きいコーン型振動板を用いている。このような構成を有するスピーカは、周波数特性の上限が5〜8kHzまでの周波数の音を高い音圧で出力できるとされている。
特開2012−44352号公報
例えば、ハイレゾ音源の再生など、例えば20kHz以上の高周波の音を高い音圧で出力することが求められている。しかしながら、特許文献1に記載されるようなコーン型振動板単独では、20kHz以上の高周波の音を高い音圧で出力するのは難しいという問題があった。
このような背景から、ツイータの役割を担う小型のドーム型振動板とコーン型振動板とを組み合わせたバランスドドーム型の振動板が注目されている。
このようなバランスドドーム型の振動板で、出力可能な周波数を上げるためには、ドーム型振動板が振動可能な高域再生周波数限界を上げる必要がある。また、ドーム型振動板の振動可能な高域再生周波数限界を上げるためには、ドーム型振動板の膜厚を薄くして軽量化するなどの方法が知られている。しかしながら、ドーム型振動板の膜厚をある程度まで薄くすると、それ以降は十分な強度を保つことが難しいという問題があった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高周波帯域の音を高い音圧で出力することができるドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカを提供することを目的とする。
本発明に係るドーム型振動板は、
第1曲率を有する第1部分と、
前記第1部分の内周側に配置されて前記第1部分と一体的に設けられた、前記第1曲率と異なる第2曲率を有する第2部分と、
を備える。
本発明によれば、高音域の音を高い音圧で出力することができるドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカを提供することができる。
第1の実施形態に係るスピーカの斜視図である。 第1の実施形態に係るスピーカの断面斜視図である。 第1の実施形態における振動板の斜視図である。 第1の実施形態における振動板の断面斜視図である。 第1の実施形態における振動板の断面水平図である。 第1の実施形態における振動板の音圧−周波数特性を表すグラフである。 第2の実施形態における振動板の斜視図である。 第2の実施形態における振動板の断面斜視図である。 第2の実施形態における振動板の断面水平図である。 第1の実施形態における振動板の音圧−周波数特性を表すグラフである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、曲率が比較的大きい部分と曲率が比較的小さい部分とを組み合わせてドーム型振動板を形成すると、従来のドーム型振動板では現れなかった振動モードが現れるという知見を得た。本発明に係るドーム型振動板、バランスドドーム振動板及びスピーカは、このような知見に基づくものであり、高音域の音を高い音圧で出力することができるものである。
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。なお、当然のことながら、図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸正向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。本明細書中においては、音が出力される放音方向がZ軸正向きとなるようにスピーカ及び振動板を配置して説明する。
なお、以下に説明される複数の実施形態は、独立に実施されることもできるし、適宜組み合わせて実施されることもできる。これら複数の実施形態は、互いに異なる新規な特徴を有している。したがって、これら複数の実施形態は、互いに異なる目的又は課題を解決することに寄与し、互いに異なる効果を奏することに寄与する。
[第1の実施形態]
まず、図1及び図2を用いて、第1の実施形態に係るスピーカ1の具体的な構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るスピーカ1の斜視図である。図2は、図1のスピーカ1を切断線II−IIで切った断面斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るスピーカ1は、振動板11を備える。また、図2に示すように、スピーカ1は、さらにボビン12、ボイスコイル13、ヨーク14、マグネット15、プレート16、及びフレーム17を備える。本実施形態において、振動板11、ボビン12、ボイスコイル13、ヨーク14、マグネット15、プレート16、及びフレーム17は、いずれも放音方向から見て円形状あるいは円環状に形成されており、それぞれは同心円状にある。
振動板11は、放音方向に振動することによって、放音方向に音を出力する板である。振動板11は、高周波帯域の振動を効率よく発生させるために、高剛性の材料で形成されることが好ましい。振動板11は、例えばポリエーテルイミド(PEI)、カーボン繊維、アラミド繊維などの高硬度な繊維素材や、軽金属などで一体的に形成することができる。
図1及び図2に示す振動板11は、放音方向に凸なドーム型振動板111と、放音方向に凹であってドーム型振動板111の周囲に設けられたコーン型振動板112と、を備える。すなわち、振動板11は、バランスドドーム型の振動板であるとして説明する。振動板111は、コーン型振動板112を備えない、ドーム型振動板のみであってもよい。このうち、ドーム型振動板111は高い周波数で振動するツイータとしての役割を担う。また、コーン型振動板112は、大きな面積で振動することによって音圧を高める役割を担う。ドーム型振動板111の詳細な構造については後述する。
振動板11の大きさは、出力したい音の周波数帯域にもよるが、例えば放音方向から見て直径40mm程度とすることができる。このうち、ドーム型振動板111の直径は、放音方向から見て20〜25mm程度とすることができる。また、振動板11の厚さは、0.05〜0.1mm程度とすることができる。
図2に示すように、ボビン12は、振動板11に対して振動を伝達する円筒状の芯である。ボビン12は、ポリイミド(PI)やガラスイミド等の高剛性の材料によって形成される。図2に示すように、ボビン12の外径はドーム型振動板111の外径とほぼ等しく形成されている。また、ボビン12の上端は、ドーム型振動板111の下端と当接している。
このような構成においては、ボビン12が放音方向に振動することで、ボビン12の上端から振動板11の下端に振動を伝達することができる。また、円筒形のボビン12は、その上端がドーム型振動板111の下端と当接しているため、ボビン12は、ドーム型振動板111に対して放音方向の振動をより強く誘起することができる。
ボイスコイル13は、ボビン12の外周に巻回されたコイルである。ボイスコイル13は、銅線やアルミ線等の金属導線で形成することができる。ボイスコイル13の両端は図示しない電源に接続されており、当該電源を制御することによって、ボイスコイル13に流れる電流の大きさや周波数を制御できる。後述するマグネット15などにより形成される磁気回路と、ボイスコイル13中を流れる電流により、ボビン12及びボイスコイル13は放音方向に力を受け、ボイスコイル13の電流の向きに従って振動する。
なお、ボイスコイル13と電源(不図示)との間には、予め定められた周波数以下の電流のみがボイスコイル13を流れるように、電気フィルタを設けてもよい。例えば、ボイスコイル13と電源(不図示)との間に、フィルタリングしたい周波数帯域に応じた電気容量を有するコンデンサを直列に繋いでもよい。このような構成においては、電流のうち高周波再生において不要な低周波成分を除去し、高周波の音をより高品質に再生することができる。
ヨーク14は、放音方向に延びる円柱部と、円柱部の下端から径方向側に広がるフランジ部と、を有する部材であって、鉄などの磁性材料で形成される。ヨーク14の円柱部の外径は、ボビン12の内径より少し小さく形成されており、ヨーク14の円柱部の上端はボビン12及びボイスコイル13の内方にあるように配置される。
マグネット15は、円環状の磁石である。マグネット15には、例えばネオジム磁石を用いることができる。マグネット15は、ヨーク14のフランジ部の上に載置され、ヨーク14の円柱部を囲むように形成されている。
マグネット15の上部には、マグネット15を挟んでヨーク14のフランジ部と対向するように、円環状のプレート16が設けられている。プレート16は、鉄などの磁性材料で形成される。
このような構成においては、ヨーク14、マグネット15、及びプレート16が一体となって磁気回路を形成し、プレート16の内径部からヨーク14へ向かって強い磁場を生じさせる。ボビン12及びボイスコイル13は、当該磁場とボイスコイル13中を流れる電流とによって放音方向に力を受け、振動することができる。
なお、フレーム17は、スピーカ1の外枠である。フレーム17は、例えばPIやPEIなどの樹脂によって形成される。フレーム17は、振動板11やプレート16を支持する。
ここで、ドーム型振動板111の詳細な構造について、図3〜図5を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係る振動板11の斜視図である。図4は、図3の振動板11を切断線IV−IVで切った断面斜視図である。図5は、図3の振動板11を切断線IV−IVで切ってY軸負方向側から見たときの断面水平図である。
図3〜図5に示すように、ドーム型振動板111は、放音方向に凸な形状を有する第1部分111_1と、第1部分111_1の内方(即ち、内径側)に配置されて第1部分111_1と一体的に設けられた第2部分111_2と、を備える。第1部分111_1は放音方向から見て円環形状であり、第2部分111_2は放音方向から見て円形状である。
本発明の実施形態においては、第1部分111_1及び第2部分111_2は、放音方向から見て、いずれも中心軸周りを同心円状に設けられている。これによって、半径方向における第1部分111_1と第2部分111_2の境界の位置が、周方向で均一になるため、振動の様子が周方向で均一になる。
第1部分111_1は第1曲率κを有し、第2部分111_2は、第2曲率κを有する。第1曲率κと第2曲率κは異なっている。図4及び図5に示すように、第2部分111_2は放音方向に凸な形状を有しており、第2曲率κは第1曲率κよりも小さい。なお、本明細書中において曲率とは、その面の曲率半径の逆数と定義する。平坦な面の曲率はゼロである。
本発明に係るドーム型振動板111は、互いに異なる曲率を有する第1部分111_1と第2部分111_2とを備えるため、単一の曲率を有するドーム型振動板では発現しない振動モードを発現させることができる。つまり、単一の曲率を有するドーム型振動板と比較すると、振動板の放音軸を通る断面において、中心から第1部分111_1と第2部分111_2との境界までの長さと、第1部分111_1と第2部分111_2との境界から下端までの距離は、単一の曲率を有するドーム型振動板の放音軸を通る断面における中心から下端までの距離に比べて、それぞれ短い。したがって、その長さに応じたモードを誘起できる本発明に係るドーム型振動板111は、高音域の音を高い音圧で出力することができる。
以下、本発明の効果について、実際の実験結果を用いて詳細に説明する。図6は、振動板の音圧−周波数特性を表すグラフである。図6の横軸は周波数、縦軸はその周波数における音の音圧を表している。縦軸の値は、振動板から放音方向に25cm離れた場所での音圧である。なお、音圧−周波数特性のグラフは、周波数応答解析によるシミュレーションの結果である。
図6において、破線は従来の振動板の音圧−周波数特性、実線は本実施形態に係る振動板11の音圧−周波数特性を表している。ここでいう従来の振動板とは、単一の曲率を有するドーム型振動板と、コーン型振動板とを備えるバランスドドーム型の振動板である。なお、それぞれの振動板の寸法は、以下の表1の通りとした。表1に記載された寸法以外の条件については同じ条件としてシミュレーションを行った。例えば、振動板の最外周は振動せず、ドーム型振動板の下端が放音軸方向に振動可能としてシミュレーションを行った。
Figure 2020156031
図6に示すように、従来の振動板では、35kHz付近の高周波帯域における音圧が120dB程度であった。一方、本実施形態に係る振動板11では、35kHz付近の高周波帯域における音圧が130dB以上であった。
この結果は、本実施形態におけるドーム型振動板111が、従来のドーム型振動板に比べて、高音域の音を高い音圧で出力することができることを示している。
本実施形態に係る振動板11が、従来の振動板と比べて高音域の音を出力しやすい理由は、以下のように説明できる。
まず、ドーム型振動板111において、第1部分111_1の第1曲率κと第2部分111_2の第2曲率κは異なるため、第1部分111_1と第2部分111_2は、それぞれ異なる剛性を有する。本実施形態においては、第2曲率κが第1曲率κよりも小さいため、第2部分111_2は、第1部分111_1よりも水平面に近い形状を有する。したがって、第2部分111_2は、第1部分111_1よりも放音方向の振動に対する剛性が小さい。ここで、第1部分111_1と第2部分111_2との境界部分は、振動伝達において機械的なフィルタの役割を果たす。
比較的剛性の小さい第2部分111_2は、比較的剛性の大きい第1部分111_1よりも、比較的高い周波数帯域で共振し、この場合、高次モードを含めてモードAとする。モードAは、剛性の小さい第2部分111_2のみが振動しやすいモードである。ドーム型振動板111の下端から中心に向かって考えたときに、ボビン12から第1部分111_1に伝達された振動が、第1部分111_1の高剛性がゆえに、第1部分111_1の振動が第2部分111_2に伝達できる状態である。
一方、第1部分111_1は、比較的低い周波数帯域で共振し、この場合、高次モードを含めてモードBとする。モードBは、第1部分111_1のみが振動しやすいモードである。ドーム型振動板111の下端から中心に向かって考えたときに、ボビン12から第1部分111_1に伝達された振動が境界部分で反射して境界部分とドーム型振動板111の下端の間で定在波が発生している状態である。
モードAとモードBの他に、第1部分111_1と第2部分111_2は、モードA及びモードBより高い周波数帯域において、第1部分111_1と第2部分111_2の両方が共振し、この場合、高次モードを含めてモードCとする。モードCは、第1部分111_1と第2部分111_2が同時に振動しやすいモードで、第1部分111_1と第2部分111_2との境界部分における、第1部分111_1の振動と第2部分111_2の振動とが滑らかにつながるモードとなる。
ドーム型振動板111の下端から中心に向かって考えたときに、ボビン12から第1部分111_1に伝達された振動が境界部分で反射することなく第2部分111_2に伝達できるモードがモードCである。このとき、第1部分111_1と第2部分111_2とで剛性に差があるが、境界部分で反射しないで高次のモードAと高次のモードBとが同時に発現する状態である。
したがって、各モードの低次のモードを比較した場合、モードA、モードB、モードCの順で発現周波数が高くなる。
本実施形態に係る振動板11においては、上記モードCのような振動モードが発現することにより、高音域の音を高い音圧で出力することができると考えられる。モードCにおいては、第1部分111_1と第2部分111_2の両方が振動するため、ドーム型振動板111が一体的に振動することができるからである。
なお、図6を参照すると、振動板11は、25kHz付近、30kHz付近、及び35kHz付近の周波数帯域に強い振動ピークを有することがわかる。一方、周波数応答解析の結果によると、25kHz付近では第2部分111_2のみが振動し、30kHz付近では第1部分111_1のみが振動し、35kHz付近では第1部分111_1と第2部分111_2の両方が振動することがわかった。
この結果は、25kHz付近、30kHz付近、及び35kHz付近の周波数帯域が、それぞれ上記モードA、モードB、モードCの振動モードに対応するということを支持するものといえる。
[第2の実施形態]
次に、図7〜図9を用いて、第2の実施形態における振動板21の構成について説明する。図7は、第2の実施形態に係る振動板21の斜視図である。図8は、図7の振動板21を切断線VIII−VIIIで切った断面斜視図である。図9は、図7の振動板11を切断線VIII−VIIIで切ってY軸負方向側から見たときの断面水平図である。
振動板21の大きさや材質は、第1の実施形態に係る振動板11と同一である。
図7〜図9に示すように、振動板21は、放音方向に凸なドーム型振動板211と、放音方向に凹であってドーム型振動板211の周囲に設けられたコーン型振動板212と、を備える。すなわち、振動板21は、バランスドドーム型の振動板である。
ドーム型振動板211は、放音方向に凸な形状を有する第1部分211_1と、第1部分211_1の内方(即ち、内周側)に配置されて第1部分211_1と一体的に設けられた平面状の第2部分211_2と、を備える。第1部分211_1は放音方向から見て円環形状であり、第2部分211_2は放音方向から見て円形状である。第1部分211_1及び第2部分211_2は、放音方向から見て、いずれも中心軸周りを同心円状に設けられている。
すなわち、第2の実施形態における振動板21は、基本的な第2部分211_2が平面状であるという点において、第1の実施形態における振動板11と異なるものである。
第2の実施形態においては、第2部分211_2の曲率(第2曲率)はゼロである。つまり、第2部分211_2は平坦な形状となっている。したがって、放音方向の振動に対する第2部分211_2の剛性は、第1部分211_1の剛性よりも低い。このため、振動板21においては、第2部分211_2のみが振動しやすいモードA、第1部分211_1のみが振動しやすいモードB、及び第1部分211_1と第2部分211_2の両方が振動するモードCの3つの振動モードが発現する。このうちモードCは、最も高い周波数帯域の振動モードであって、第1部分211_1と第2部分211_2の両方が振動する。したがって、ドーム型振動板211は、高音域の音を高い音圧で出力することができる。
なお、第1部分211_1と第2部分211_2の境界から、放音方向に対して逆側の第1部分211_1の端部までの径方向の表面長さ(第1長さd・図9参照)と、境界から第2部分211_2の中心までの径方向の表面長さ(第2長さd・図9参照)とは、等しいことが好ましい。このような構成では、上記モードCにおける第1部分211_1側の振動と第2部分211_2側の振動とが共振しやすく、より音圧を高めることができる。このとき、径方向の表面長さが等しいとは、厳密に一致する場合に限定されず、概略として近似している場合を含む。要するに、上記モードCにおける第1部分211_1側の振動と第2部分211_2側の振動とが共振しやすい構成を実現できる範囲で、近似していればよい。
図10は、放音方向から見た直径が20mmのドーム型振動板211において、第2部分211_2の直径を14mm、11mm、6mmと変化させた場合の音圧−周波数特性を表すグラフである。縦軸の値は、振動板から放音方向に25cm離れた場所での音圧である。
図10において、点線は従来の振動板の音圧−周波数特性を表し、破線、長破線、及び実線は本実施形態に係るドーム型振動板211の音圧−周波数特性を表す。ただし、破線は第2部分211_2の直径を6mmとした場合、長破線は第2部分211_2の直径を14mmとした場合、実線は第2部分211_2の直径を11mmとした場合の、音圧−周波数特性をそれぞれ表している。なお、ここでいう従来の振動板とは、単一の曲率を有するドーム型振動板と、コーン型振動板とを備えるバランスドドーム型の振動板である。
図10に示すように、ドーム型振動板211は、第2部分211_2の直径が14mm、11mm、6mmのいずれの場合であっても、35kHz付近の高周波帯域における音圧が従来の振動板の音圧よりも高かった。この結果は、本実施形態におけるドーム型振動板211が、従来のドーム型振動板に比べて、高音域の音を高い音圧で出力することができることを示している。
さらに、35kHz付近の高周波帯域における音圧に着目すると、第2部分211_2の直径を11mmとした場合に、第2部分211_2の直径を14mmまたは6mmとした場合よりも高い音圧を示すことがわかった。これは、第2部分211_2の直径が11mmのときは、第1長さd(図9参照)と第2長さd(図9参照)がどちらも約5.2mmとほぼ等しく、第1部分211_1の振動と第2部分211_2の振動が互いに共振しやすくなったからであると考えられる。
なお、第1長さdと第2長さdが等しい場合、コーン型振動板212の径方向の長さ(第3長さd・図9参照)は、第1長さdまたは第2長さdの整数倍(例えば2倍)近くであることが好ましい。このような構成においては、第1部分211_1側の振動と第2部分211_2側の振動とが共振しやすいことに加え、コーン型振動板212の振動も共振しやすい。したがって、音圧をさらに高めることができる。
なお、図10を参照すると、振動板21は、25kHz付近、30kHz付近、及び35kHz付近の周波数帯域に強い振動ピークを有することがわかる。一方、周波数応答解析の結果によると、25kHz付近では第2部分211_2のみが振動し、30kHz付近では第1部分211_1のみが振動し、35kHz付近では第1部分211_1と第2部分211_2の両方が振動することがわかった。
この結果は、25kHz付近、30kHz付近、及び35kHz付近の周波数帯域が、それぞれ上記モードA、モードB、モードCの振動モードに対応するということを支持するものといえる。
以上、本実施形態に係るスピーカ及び振動板の具体的な構成例について説明した。本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記の実施形態において、本発明のスピーカに用いられる振動板はバランスドドーム型であるとして説明したが、本発明に係るスピーカは、本発明に係るドーム型振動板を備えていればよい。すなわち、コーン型振動板を備えていなくてもよい。このような構成においても、本発明に係るスピーカは、高音域の音を高い音圧で出力することができる。
また、上記の実施形態において、第2曲率は第1曲率よりも小さい構成例を説明したが、第2曲率と第1曲率の大小はこれに限られない。すなわち、第2曲率が第1曲率より大きくてもよい。このような構成においても、本発明に係るドーム型振動板は、高音域の音を高い音圧で出力することができる。ただし、指向性の観点から、第2曲率は第1曲率より小さい方が好ましい。
また、上記の実施形態において、第2部分は放音方向に対して凸または平坦な面であるとして説明したが、第2部分は放音方向に対して凹(即ち、放音方向に対して逆方向に凸)な面であってもよい。このような構成においても、本発明に係るドーム型振動板は、高音域の音を高い音圧で出力することができる。ただし、指向性の観点から、第2部分は放音方向に対して凸または平坦な面である方が好ましい。
また、上記の実施形態において、振動板は放音方向から見て円形であるとして説明したが、振動板の形状はこれに限られない。すなわち、振動板は放音方向から見て多角形であってもよいし、楕円形であってもよい。なお、この場合、振動板の曲率は、稜線に沿った曲率半径の逆数、あるいは短軸方向の曲率半径の逆数として定義することができる。
また、上記の実施形態において、第1部分及び第2部分は、放音方向から見て同心円状に設けられているとして説明したが、第1部分及び第2部分の位置関係はこれに限られない。ただし、指向性の観点から、第1部分及び第2部分は、放音方向から見て同心円状に設けられている方が好ましい。
第1部分と第2部分が放音方向から見て同心でない場合、その境界も同心ではなくなる。すなわち、偏心量に応じて第1部分と第2部分のそれぞれの径方向の長さが周方向にて変化し、その長さに応じた振動モードが発現するため、振動板表面にはそれぞれの長さに応じた振動モードが低い先鋭度にて混在する。これによって、ある周波数の音圧が複数の振動モードで構成されるため、ピークディップが抑制されたより滑らかな音圧周波数特性になる。
なお、上記第2の実施形態において、第1部分と第2部分の境界から、放音方向に対して逆側の第1部分の端部までの径方向の表面長さ(第1長さ)と境界から第2部分の中心までの径方向の表面長さ(第2長さ)が等しい方が好ましいとして説明した。しかしながら、この関係は、第2部分が平面状である場合に限られない。すなわち、第2部分が放音方向に凸あるいは凹である場合であっても、上記第1長さと上記第2長さは等しい方が好ましい。
なお、本発明の実施形態において、第1部分は放音方向に凸の形状にて説明を進めたが、第1部分が放音方向に対して逆方向に凸の形状においても本発明における効果を得ることができる。
1 スピーカ
11、21、91 振動板
12 ボビン
13 ボイスコイル
14 ヨーク
15 マグネット
16 プレート
17 フレーム
111、211、911 ドーム型振動板
111_1、211_1 第1部分
111_2、211_2 第2部分
112、212、912 コーン型振動板
第1長さ
第2長さ
第3長さ
κ 第1曲率
κ 第2曲率

Claims (9)

  1. 第1曲率を有する第1部分と、
    前記第1部分の内周側に配置されて前記第1部分と一体的に設けられた、前記第1曲率と異なる第2曲率を有する第2部分と、
    を備える、ドーム型振動板。
  2. 前記第2曲率は、前記第1曲率よりも小さい、
    請求項1に記載のドーム型振動板。
  3. 前記第1部分は、凸な形状を有し、
    前記第2部分は、前記第1部分の突出方向と同じ方向に凸な形状を有する、
    請求項1または2に記載のドーム型振動板。
  4. 前記第1部分は、凸な形状を有し、
    前記第2部分は、平坦な形状を有する、
    請求項1または2に記載のドーム型振動板。
  5. 前記第1部分は、前記ドーム型振動板における音が出力される放音方向から見て円環形状であり、
    前記第2部分は、前記放音方向から見て円形状である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のドーム型振動板。
  6. 前記第1部分及び前記第2部分は、前記放音方向から見て同心円状に設けられている、
    請求項5に記載のドーム型振動板。
  7. 前記第1部分と前記第2部分の境界から、前記放音方向に対して逆側の前記第1部分の端部までの径方向の表面長さが、前記境界から前記第2部分の中心までの前記径方向の表面長さと等しい、
    請求項6に記載のドーム型振動板。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のドーム型振動板と、
    コーン型振動板と、を備える、
    バランスドドーム振動板。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のドーム型振動板、または、請求項8に記載のバランスドドーム振動板を備える、
    スピーカ。
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