JP2020152850A - 活性エネルギー線硬化型インキ組成物及びその製造方法、並びにそれを用いた印刷物の製造方法 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型インキ組成物及びその製造方法、並びにそれを用いた印刷物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バイオマス由来の原材料比率を高めつつ、ロジン変性フェノール樹脂等の顔料分散性に優れた材料を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物を提供すること。【解決手段】エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、及び特定液体成分を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、上記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値(以下、sp値と呼ぶ。)が9.0(cal/cm3)1/2以上11.0(cal/cm3)1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物である活性エネルギー線硬化型インキ組成物とすればよい。【選択図】なし

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物及びその製造方法、並びにそれを用いた印刷物の製造方法に関する。
インキ組成物を用いて印刷を行う場合、印刷対象である被印刷物の材質や形状等に併せて各種の印刷方式が適切に選択され、インキ組成物もその印刷方式に合わせて適切な性状を有するものが選択される。例えば、平らな印刷用紙に対しては、平版を用いたオフセット印刷方式が選択され、植物油や鉱物油を含み粘度の高いオフセット印刷用インキ組成物が用いられ、段ボール用紙への印刷においては、ゴム凸版を用いたフレキソ印刷方式が選択され、流動性の極めて高い水性のフレキソ印刷用インキ組成物が用いられること等が挙げられる。この他、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、インクジェット印刷等、様々な印刷方式が適宜選択されて印刷が行われていることは周知の通りである。
ところで、印刷において、印刷対象へインキ組成物を付着させて画像を形成させることと併せて重要な要素の一つとして挙げられるのが、印刷後のインキ組成物の乾燥である。印刷された直後のインキ組成物は、被印刷体の表面で十分に固定されておらず、指などで触った際に指へインキ組成物が付着する、擦られた際に画像が乱れて汚れてしまう等の問題を生じる。このため、印刷後の被印刷体を後加工へ回す場合、被印刷体の表面でインキ組成物が十分に固定(すなわち乾燥)された状態であることが必要である。印刷後のインキ組成物の固定(すなわち乾燥)過程は、用いたインキ組成物の種類に応じて様々であり、例えば、被印刷体への溶剤の浸透、被印刷物からの溶剤の蒸発、インキ組成物に含まれる成分の酸化による高分子量化等が挙げられる。いずれの場合であっても、乾燥過程はそれなりの時間を要するものであり、技術の進歩によって印刷速度が向上している昨今では、乾燥過程に要する時間というのも無視できないものになっている。
このような状況において、近年では活性エネルギー線硬化型のインキ組成物を用いた印刷も行われている。活性エネルギー線硬化型のインキ組成物は、紫外線や電子線の照射によりインキ組成物に含まれる成分が高分子量化し、乾燥を実現する。この乾燥に要する時間は極めて短く、このインキ組成物を用いた印刷は、印刷物を速やかに後加工へ回したい等といった要望に応えるものになっている。このような乾燥方式に対応したインキ組成物の一例として、オフセット印刷方式用のものが例えば特許文献1等で提案され、樹脂凸版印刷方式用のものが例えば特許文献2等で提案されている。
ところで近年、様々な業界や業種で環境負荷低減活動が展開されているが、いずれについても最終的な目標は地球環境保全で共通している。印刷インキ業界においてもこれまで各種の観点から環境負荷低減を促す活動が行われ、そのような活動の趣旨に適合した製品には各種の認証マークが付されることになっている。このような認証マークとしては、NL規制マーク、ベジタブルマーク、GPマーク、クリオネマーク等が存在する。このような中にあって、最近、印刷インキ工業連合会によって新たにインキグリーンマーク(以下、IGマークと呼ぶ。)制度が制定された。IGマークは、主にインキ組成物を構成する各成分のうちのバイオマスに由来する成分の比率を指標とし、その程度に応じてインキ組成物の環境対応レベルを3段階にランク付けする制度である。つまりこの制度は、環境負荷の低減を目的として、化石資源由来の原材料をバイオマス由来の原材料に代替することを促すことを特徴とするものといえる。
上述の活性エネルギー線硬化型のインキ組成物においても、より少ない紫外線の照射で乾燥できる製品や、消費電力の少ない発光ダイオード(LED)の光で乾燥できる省エネ対応の製品が販売されており、環境負荷低減を目指した動きが広がっているのは他のインキ組成物と同様である。しかしながら、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物では、その成分としてモノマーやオリゴマーを多量に用いなければならないことからバイオマスを由来とする成分を多用することが困難であるとされ、それ故上記IGマークの認定基準には、バイオマス由来の成分比率が含まれておらず、これに代えてリサイクル適性や省エネ対応といった環境対応特性が指標として用いられているのが現状である。
特許第5477995号公報 特開2004−161812号公報
以上のような背景において、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物においてもバイオマス由来の成分比率を高めることは社会的に有用であり、その意義は極めて大きいといえる。しかしながら、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物で用いられるモノマーやオリゴマーは、一般のインキ組成物で用いられるバイオマス由来の材料との相溶性が必ずしも良くなく、そのような材料を適用するのが難しいのが現状である。
また、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物は、その他の乾燥方式で乾燥させるインキ組成物よりも歴史が浅く、それを構成する素材は未だに発展段階にあるといえる。特に、モノマーやオリゴマーとの相溶性の観点から、オフセット印刷用のインキ組成物等において長年用いられてきたロジン変性フェノール樹脂等のような高い顔料分散性を備えた樹脂を活性エネルギー線硬化型のインキ組成物で用いることが難しく、モノマーやオリゴマーといった、必ずしも顔料分散性の良くない低分子量の成分で顔料を分散させている現状もある。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、バイオマス由来の原材料比率を高めつつ、ロジン変性フェノール樹脂等の顔料分散性に優れた材料を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のsp値(濁点滴定法による溶解性パラメータ)を備えた動植物由来の油脂又はその変性物を用いることにより、ロジン変性フェノール樹脂を初めとした、従来のインキ組成物で用いられてきた顔料分散性の高い樹脂を活性エネルギー線硬化型のインキ組成物中に相溶性良く用いることが可能になることを見出した。ここで、動植物由来の油脂又はその変性物は勿論バイオマス由来であるし、ロジン変性フェノール樹脂を初めとした樹脂に含まれるロジンもまたバイオマス由来である。したがって、これらの成分を含む本発明のインキ組成物は、バイオマス由来の原材料比率の高い製品となる。本発明は、以上の知見をもとに完成されたものであり、以下のようなものを提供する。
本発明は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、及び特定液体成分を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、上記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値(以下、sp値と呼ぶ。)が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物である活性エネルギー線硬化型インキ組成物である。
上記特定液体成分は、sp値9.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下の動植物油由来の油脂及びその変性物、並びにカシューナッツシェルオイル及びその変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記特定樹脂のsp値は、8.0(cal/cm1/2以上9.0(cal/cm1/2以下であることが好ましい。
インキ組成物中における上記特定液体成分の含有量が10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
上記特定液体成分は、ヒマシ油、ヤシ油、エポキシ化植物油、カシューナッツシェルオイル、及びカシューナッツシェルオイルの変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また本発明は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、特定液体成分、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法であって、上記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値(以下、sp値と呼ぶ。)が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物であって、加温された上記特定液体成分に前記特定樹脂を溶解させてワニスを調製する工程を備えることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法でもある。
また本発明は、上記の活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含むことを特徴とする印刷物の製造方法でもある。
本発明によれば、バイオマス由来の原材料比率を高めつつ、ロジン変性フェノール樹脂等の顔料分散性に優れた材料を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物が提供される。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物の一実施形態、活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法の一実施態様、及び印刷物の製造方法の一実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態又は実施態様に限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
<活性エネルギー線硬化型インキ組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物(以下、単にインキ組成物とも呼ぶ。)は、特に限定されないが、オフセット平版印刷や樹脂凸版印刷等に好ましく用いられ、紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射を受けて硬化する能力を備える。後述するように、本発明のインキ組成物は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物(モノマーやオリゴマー等)を含有し、活性エネルギー線の照射を受けた際に生じたラジカルがエチレン性不飽和結合を備えた化合物を高分子量化させることで硬化する。そのため、印刷直後に印刷物の表面でべたついているインキ組成物に活性エネルギー線が照射されると、瞬時にこのインキ組成物が硬化して皮膜となり、乾燥(タックフリー)状態となる。
本発明のインキ組成物をオフセット印刷に用いる場合、その印刷対象としては通常のオフセット印刷で印刷されるものを特に限定されずに挙げることができる。上記のように、本発明のインキ組成物は、印刷後に活性エネルギー線を照射することで瞬時にタックフリーとなるので、これを用いて印刷を行うことにより、印刷された印刷物を速やかに後工程に回すことが可能になる。また、本発明のインキ組成物は、樹脂凸版印刷にも好ましく用いることができる。樹脂凸版印刷は、樹脂製の凸版印刷版の凸部にインキ組成物を付着させ、その付着したインキ組成物を被印刷体に転写させる印刷方式である。その印刷対象としては、シールやラベル等の軽印刷物や、曲面体等が挙げられる。より具体的には、シールやラベルの例として合成紙や紙等で構成されたシール、サーマルシール等が挙げられ、曲面体である印刷物として合成樹脂や紙等で構成された飲料用カップ、アイスクリームカップ、ヨーグルト容器、カップ麺容器等といった容器類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。なお、これらを構成する合成樹脂としては、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。樹脂凸版印刷で用いる印刷版は樹脂製で被印刷体の形状に応じて変形できるので、上記のような曲面体にも印刷が可能となる。
本発明のインキ組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、電子線や紫外線等が例示される。これらの中でも、装置のコストや扱いやすさという観点からは、活性エネルギー線として紫外線が好ましく例示され、その場合、本発明のインキ組成物は、光照射に伴ってラジカルを生成させる光重合開始剤を含有することになる。そして、その紫外線の波長としては、用いる光重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜決定されればよいが、400nm以下を挙げることができる。このような紫外線を発生させる紫外線照射装置としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、希ガスを封入したエキシマランプ、紫外線発光ダイオード(LED)等を挙げることができる。なお、活性エネルギー線として電子線が選択される場合、電子線の照射に伴ってインキ組成中の成分に含まれる化学結合が解離してラジカルが生成し、このラジカルがインキ組成物中のモノマー等の成分を重合させるので、光重合開始剤は不要となる。
本発明のインキ組成物は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、及び特定液体成分を含む。この特定樹脂と特定液体成分とを組み合わせて用いることが本発明のポイントである。通常、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物では、アクリル酸及び/又はメタアクリル酸(本明細書において、これらをまとめて(メタ)アクリル酸とも呼ぶ。)化合物を主成分であるモノマーやオリゴマーとして用いるが、これらの成分は、溶解性パラメータ(sp値)が高く、sp値の低い、従来型のオフセットインキ組成物等で用いられてきたロジン変性フェノール樹脂等と相溶しない。また、これらの樹脂を溶解させるには加熱が必要なため、モノマー等でこれを溶解させてワニスを調製しようとすると、そのモノマーが加熱により重合してしまう等の問題もある。そのため、これらの樹脂を活性エネルギー線硬化型のインキ組成物で用いることは困難だった。
しかしながら、本発明者らの検討により、所定のsp値を有する、動植物油由来の油脂又はその変性物を用いてロジン変性フェノール樹脂等を溶解させると、モノマーやオリゴマーと相溶するワニスが調製できることが明らかになった。本発明はこうした知見に基づいてなされたものであり、これら動植物油由来の油脂又はその変性物が特定液体成分に該当し、従来のオフセットインキ組成物で用いられてきたロジン変性フェノール樹脂等の樹脂が特定樹脂に該当する。これらを組み合わせて活性エネルギー線硬化型のインキ組成物に用いることにより、インキ組成物中の顔料分散性が向上する、インキ組成物におけるバイオマス含有量が向上する等の効果が得られる。
なお、本発明のインキ組成物は、光重合開始剤を含んでもよい。本発明のインキ組成物は、光重合開始剤を含まなくとも電子線に対して硬化性を示すが、光重合開始剤を含むことにより紫外線等の光に対して硬化性を示すようになる。また、本発明のインキ組成物は、着色成分(本発明において、インキ組成物に白色や金属色を付与する成分も着色成分に含めるものとする。)を含んでもよい。本発明のインキ組成物が着色成分を含む場合には、そのインキ組成物は例えば画像や文字等の印刷用途に用いることができるし、本発明のインキ組成物が着色成分を含まない場合には、そのインキ組成物は例えばコーティング等の用途に用いることができる。本発明のインキ組成物は、情報を伝達したり鑑賞の対象となったりすること等を目的とした通常の印刷物のみならず、パッケージ印刷等、各種の印刷用途に対応する。以下、各成分について説明する。
[エチレン性不飽和結合を備えた化合物]
エチレン性不飽和結合を備えた化合物は、後述する光重合開始剤や電子線照射により生じたラジカルによって重合して高分子量化する成分であり、モノマーやオリゴマー等と呼ばれる成分である。また、オリゴマーよりもさらに高分子量であるポリマーについてもエチレン性不飽和結合を備えたものが各種市販されている。このようなポリマーも上記モノマーやオリゴマーによって、又は当該ポリマー同士によって架橋されて高分子量化することができる。そこで、こうしたポリマーを、上記モノマーやオリゴマーとともにエチレン性不飽和結合を備えた化合物として用いてもよい。
モノマーは、エチレン性不飽和結合を有し、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、重合する前の状態では比較的低分子量の液体成分であることが多く、上記ポリマーを溶解させてワニスとする際の溶媒とされたり、インキ組成物の粘度を調節したりする目的にも用いられる。モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ備える単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上備える2官能以上のモノマーが挙げられる。2官能以上のモノマーは、インキ組成物が硬化するのに際して分子と分子とを架橋することができるので、硬化速度を速めたり、強固な皮膜を形成させたりするのに寄与する。単官能のモノマーは、上記のような架橋能力を持たない反面、架橋に伴う硬化収縮を低減させるのに寄与する。これらのモノマーは、必要に応じて各種のものを組み合わせて用いることができる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキルアクリレート、(メタ)アクリル酸、エチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。これらの単官能モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
2官能以上のモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートトリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの2官能以上のモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、モノマーの一種として、エポキシ化植物油をアクリル変性することにより得られるエポキシ化植物油アクリレートがある。これは、不飽和植物油の二重結合に過酢酸、過安息香酸等の酸化剤でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加重合させた化合物である。不飽和植物油とは、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するトリグリセリドのことであり、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が例示される。この種のモノマーは、植物油を由来とするものなので、インキ組成物におけるバイオマス成分量を増加させるのに役立つ。エポキシ化植物油アクリレートは、各種のものが市販されているのでそれを用いてもよい。
オリゴマーは、上記のように重合して高分子量化する成分であるが、もともとが比較的高分子量の成分であるので、インキ組成物に適度な粘性や弾性を付与する目的にも用いられる。オリゴマーとしては、エポキシ樹脂等といったエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、植物油に含まれる不飽和結合をエポキシ化してこれを酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示される植物油変性多官能(メタ)アクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート等を挙げることができる。このようなオリゴマーは市販されており、例えば、ダイセル・サイテック株式会社製のエベクリルシリーズ、サートマー社製のCN、SRシリーズ、東亜合成株式会社製のアロニックスM−6000シリーズ、7000シリーズ、8000シリーズ、アロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−1600、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴ等の商品名で入手することができる。これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン性不飽和結合を備えたポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、インキ組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、ポリジアリルフタレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。
インキ組成物中における、エチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量は、10〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。エチレン性不飽和結合を備えた化合物の含有量が上記の範囲であることにより、良好な硬化性と良好な印刷適性とを両立できる。また、エチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましく、0〜20質量%がさらに好ましい。ポリマーの含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与してミスチング等の発生を抑制できるとともに、インキ組成物の良好な硬化性を確保することができるので好ましい。
[特定液体成分]
特定液体成分は、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法における溶解性パラメータsp値が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物である。このようなsp値を有する油脂は、ロジン変性フェノール樹脂等の従来オフセットインキ組成物で用いられてきた樹脂を溶解することでモノマーやオリゴマーとの相溶性の良好なワニスを与えるばかりでなく、その多くが非可食であり、飢餓問題を生じることなくバイオマスカウントを獲得できるので有用である。本発明は、特定液体成分がこれら二つの課題(相溶性が良好なワニスを与えること、及び飢餓問題を生じずにバイオマスカウントを得ること)を一挙に解決できる点に注目しており、特定液体成分を用いることは、後述する特定樹脂を用いることと併せて本発明のポイントとなる。なお、特定液体成分は重合性を備えたものではないが、本発明者らの検討によれば、この成分によるインキ組成物の硬化性は殆ど問題にならない程度であるばかりか、特定液体成分を含有する本発明のインキ組成物を用いて印刷を行うと、良好な光沢を備えた印刷物が得られることが判明している。その理由としては、特定液体成分がエチレン性不飽和結合を持たず、ラジカルの存在下において急速に重合する性質のものではないため、印刷後のインキ組成物内においてモノマー等の成分がラジカルの存在により重合する間も、特定液体成分がインキ組成物の流動性を維持し、レベリングの向上に寄与するためと考えられる。
特定液体成分はモノマーやオリゴマーとの相溶性が良好なので、相溶性という観点からはインキ組成物に対するその添加量に上限はないが、硬化性などの特性を維持するとの観点から、本発明ではインキ組成物への特定液体成分の添加量としては、80質量%を上限として好ましく挙げることができる。この上限は、50質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。また、特定液体成分のインキ組成物中への添加量としては、5質量%を下限として好ましく挙げることができる。この下限は、10質量%であることがより好ましい。なお、特定液体成分は常温で液状を呈することが好ましい。常温で液状とは、インキ組成物の保存環境や印刷環境における温度にて液体であるとの意味である。このような常温としては、0〜50℃程度が挙げられる。
sp値は、溶解性パラメータであり、簡便な実測法である濁点滴定により測定することができ、下記のK.W.SUH,J.M.CORBETTの式に従い算出される値である。なお、この方法によるsp値の算出については、J.Appl.Polym.Sci.1968,12,2359を参考にすることができる。なお、これは条件(B)におけるsp値についても同様である。
式 sp値=(Vml 1/2・δH+Vmh 1/2・δD)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
濁点滴定では、試料0.5gを良溶媒であるトルエン10mL又はトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)10mLに溶解させた中に低sp値貧溶媒であるn−ヘキサンを加えていき、濁点での滴定量H(mL)を読み、同様にトルエン溶液中に高sp値貧溶媒であるエタノールを加えたときの濁点における滴定量D(mL)を読み、これらを下記式に適用し、Vml、Vmh、δH、及びδDを算出し、上記式へ代入すればよい。
なお、上記の濁点滴定で用いた各溶剤の分子容やsp値は次の通りである。
良溶媒の分子容 φ0 トルエン:106.28mL/mol
TMPTA:279.55mL/mol
低sp値貧溶媒の分子容 φl n−ヘキサン:131.61mL/mol
高sp値貧溶媒の分子容 φh エタノール:58.39mL/mol
各溶剤のsp値 トルエン:9.14、TMPTA:9.88
n−ヘキサン:7.28、エタノール:12.58
ml=(φ0・φl)/{(1−VH)・φl+VH・φ0}
mh=(φ0・φh)/{(1−VD)・φh+VD・φ0}
VH=H/(M+H)
VD=D/(M+D)
δH=(δ0・M)/(M+H)+(δl・H)/(M+H)
δD=(δ0・M)/(M+D)+(δl・D)/(M+D)

δ0:良溶媒のsp値
δl:低sp値貧溶媒のsp値
δh:高sp値貧溶媒のsp値
H:低sp値貧溶媒の滴定量(mL)
D:高sp値貧溶媒の滴定量(mL)
M:良溶媒の量(mL)
VH:低sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
VD:高sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
動植物由来の油脂という用語は、通常であれば動植物油といったトリグリセリドを意味することが多いが、本発明では広く動植物を由来とする油状の物質を意味する。動植物由来の油脂の変性物としては、sp値が上記の範囲であるか否かを問わない動植物由来の油脂に対して化学修飾を加えた結果、sp値が上記の範囲となるものを挙げることができる。このような変性物としてはヤシ油、ヒマシ油等といった高sp値を有するトリグリセリドの脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、重合ヒマシ油、不飽和動植物油又はそれらの脂肪酸のエポキシ化物、カシューナッツシェルオイルの重合物、カシューナッツシェルオイル変性誘導体等を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和結合を持たないとは、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のような、ラジカルの存在下において急速に重合する性質の置換基を持たないという意味である。
不飽和動植物油又はそれらの脂肪酸のエポキシ化物(以下、「エポキシ化油脂」と適宜省略する。)は、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸とアルコールとのエステルである。このようなエポキシ化油脂としては、エポキシ基を有するトリグリセリドのみならず、エポキシ基を有する脂肪酸とアルコール(モノアルコール又はポリアルコールであることを問わない。)とのエステルを挙げることができる。このようなアルコールとしては、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数1〜14のアルコールが例示されるが特に限定されない。グリセリン等のような多価アルコールの場合、当該多価アルコールには、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸が少なくとも1つ縮合(すなわちエステル結合を形成)していればよく、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸が複数個縮合していてもよい。この場合、それぞれの脂肪酸は互いに独立に選択されてもよい。エポキシ化油脂は、分子中にエポキシ基が存在することにより高いsp値を示すので、もともと低いsp値の各種動植物油やその脂肪酸エステル等を原料としてこれをエポキシ化したものであってもよい。
エポキシ基は、酸素原子が、既に互いに結合している2個の炭素原子のそれぞれに結合している、3員環状エーテル(オキシラン又はアルキレンオキシドとも呼ばれる)である。エポキシ化油脂としては、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ベニバナ油、エポキシ化トール油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化2−エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化大豆油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化パーム油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル等が例示される。これらの中でもエポキシ化トール油が好ましく例示される。
エポキシ化油脂は、多様な方法で調製することができる。例えば、トリグリセリドを母骨格とするエポキシ化油脂は、脂肪酸部分に不飽和結合を備えた植物油又は動物油を適切な酸化剤や過酸化物により酸化することで得られる。また、トリグリセリドでない脂肪酸エステルを母骨格とするエポキシ化油脂は、不飽和結合を備えた、動植物油由来の脂肪酸をアルコール(モノオール又はポリオールであることを問わない。)と反応させてエステル化、エステル交換又はエステル置換反応をさせることにより脂肪酸エステルを得て、さらにこれらの脂肪酸エステルを適切な酸化剤や過酸化物により酸化することで得られる。なお、これらの調製方法は一例であり、その他の調製方法を採用することもできるし、市販のエポキシ化油脂を購入して用いてもよい。
カシューナッツシェルオイルは、カシューナッツシェルリキッドとも呼ばれ、食用として使用される天然のカシューナッツの実を採取する際、副生物として得られるカシューナッツの殻に含まれる油状の液体であり、アナカルド酸、カルドール、2−メチルカルドール、カルダノール等を含む。これらのうち、カルダノール及びカルドールは芳香環にヒドロキシル基及び直鎖状炭化水素が結合した化合物であり、2−メチルカルダノールはカルダノールの芳香環にメチル基が結合した化合物であり、カルダノール酸はカルダノールの芳香環にカルボキシル基が結合した化合物で、これらはいずれもアルケニル置換フェノール類ということができる。ここに含まれるアルケニル基は、炭素数が15〜18の脂肪族炭化水素基であり、その鎖中に1〜3個の不飽和結合を含む。なお、このアルケニル基に含まれる不飽和結合は、直鎖状の炭化水素基の途中に含まれるものであり、エチレン性不飽和結合とは異なる。カシューナッツシェルオイルは、様々なグレードのものが各種市販されているので、そのような市販品を本発明に用いてもよい。このような製品は、カルダノールの純度、色、臭気等に応じていくつかのラインナップがある。このようなラインナップとしては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NX−2021、NX−2022、NX−2023D、NX−2023、UltraLITE2023、NX−2024、NX−2025、NX−2026等や、東北化工株式会社製のCNSL、LB−7000、LB−7250等が挙げられる。
カシューナッツシェルオイルの変性誘導体としては、カシューナッツシェルオイルに含まれるアルケニル置換フェノール類のフェノール性水酸基に各種の基を導入したものや、アルケニル基の不飽和結合に各種の置換基を導入したものや、アルケニル基の不飽和結合を酸化してエポキシ化したもの等が挙げられる。このような変性誘導体は各種のものが市販されているので、そのような市販品を本発明に用いてもよい。
このような変性誘導体の中でも、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表される化合物が好ましく挙げられる。
Figure 2020152850
上記一般式(1)中、Rは水素原子、グリシジル基、−(CHOH(mは1〜3の整数である。)、−(CO)−H(pは1〜15の整数である。)、−(CHCH(CH)O)−H(qは1〜15の整数である。)であり、Rは不飽和結合を0〜3個含む、炭素数15〜18の脂肪族炭化水素基、又はその脂肪族炭化水素に含まれる不飽和結合の一部若しくは全部が酸化されてエポキシ環を形成した基であり、各Rはそれぞれ独立にOR、炭素数1〜3のアルキル基又はカルボキシル基であり、nは0〜4の整数である。
上記一般式(1)で表す化合物の市販品としては、例えば、Cardolite社製のCardolite(登録商標)LITE2020やCardolite(登録商標)NC−513、NC−510、GX−5166、GX−5167、GX−5170、GX−5248、GX−5190、GX−5191、GX−2551等が挙げられる。これらのうちLITE2020は、Rが−CHCHOHでRが炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルエーテル化合物であり、NC−513は、Rがグリシジル基でRが炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルグリシジルエーテルであり、NC−510は、Rが水素原子でRが炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェノールであり、GX−5166、5167及び5170は、Rが−(CO)−Hで、Rが炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルエチルオキシレートであって、GX−5166がp=7、GX−5167がp=9、GX−5170がp=12であり、GX−5243、5190及び5191は、Rが−(CHCH(CH)O)−Hで、Rが炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルプロピルオキシレートであって、GX−5243がq=1、GX−5190がq=7、GX−5191がq=9である。GX−2551は、下記化学式(5−1)、(5−2)及び(5−3)で表す化合物の混合物であり、Rがグリシジル基で、Rが炭素数15のアルケニル基に含まれる不飽和結合の1又は複数が酸化されてエポキシ環となった基で、nが0のエポキシ化カルダノールである。
Figure 2020152850
上記一般式(2)中、Xは不飽和結合を0〜3個含む、炭素数15−18の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基である。上記一般式(2)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NC−514が挙げられる。
上記一般式(3)中、R、R及びnは、上記一般式(1)におけるものと同じであり、rは、1〜5の整数である。上記一般式(3)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)GX−2520が挙げられる。
上記一般式(4)中、R、R及びnは、上記一般式(1)におけるものと同じであり、Rは、水素原子又は水酸基であり、Rは、水素原子又は−COHである。上記一般式(4)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)GX−9301及びGX−9302が挙げられる。
カシューナッツシェルオイルの重合体としては、カシューナッツシェルオイル及び/又はその変性誘導体のホルムアルデヒドによる縮合物が好ましく例示される。このような縮合物の一例として、下記一般式(6)で表すものを挙げることができる。
Figure 2020152850
上記一般式(6)中、各Rはそれぞれ独立に水素原子、−(CHOH又はグリシジル基でmは1〜3の整数であり、各Rはそれぞれ独立に不飽和結合を0〜3個含む、炭素数15〜18の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。
上記一般式(6)で表す市販品としては、例えば、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NC−547及びNX−4000シリーズが挙げられる。NC−547は、下記一般式(7−1)で例示する構造を備えた、カルダノールとカルダノール変性誘導体とのホルムアルデヒドによる縮合物である。NX−4000シリーズは、下記一般式(7−2)で例示する構造を備えた、カルダノールのホルムアルデヒドによる縮合物である。
Figure 2020152850
上記一般式(7−1)及び(7−2)において、各Rはそれぞれ独立に不飽和結合を0〜3個含む、炭素数15〜18の脂肪族炭化水素基である。
特定液体成分は、非可食油脂又はその変性物であることが好ましい。ここでいう非可食油脂とは、食用でない油脂全般を指すものである。なお、sp値が9.0(cal/cm1/2未満の非可食油脂であっても、その油脂に対してエポキシ化等の化学変性を加えた結果、その変性物のsp値が9.0(cal/cm1/2以上となるならば、その変性物は本発明における特定液体成分として扱う。
これら特定液体成分の中でも、ヒマシ油、ヤシ油、エポキシ化植物油、カシューナッツシェルオイル、及びカシューナッツシェルオイルの変性物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく挙げられる。
既に述べたように、特定液体成分のsp値は、9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満である。後述する特定樹脂と特定液体成分とのより良い相溶性を得るとの観点からは、特定液体成分は、sp値9.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下の動植物油由来の油脂及びその変性物、並びにカシューナッツシェルオイル及びその変性物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。後述する特定樹脂のsp値は、8.0〜9.0(cal/cm1/2程度のものが多い点から、上記のように、特定液体成分のsp値の上限は、カシューナッツシェルオイルを除いて9.0(cal/cm1/2程度が好ましい。カシューナッツシェルオイルは、10.0(cal/cm1/2以上のsp値を備えるが、例外的に、sp値が低い特定樹脂に対しても高い特定樹脂に対しても相溶する。その理由は必ずしも明らかでないが、カシューナッツシェルオイルは、長鎖アルキル基又はアルケニル基を備えたフェノール化合物を含み、この長鎖アルキル基によりsp値の低い樹脂と相溶することができ、フェノール骨格によりsp値の高い樹脂とも相溶することができるためと考えられる。
[特定樹脂]
特定樹脂は、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。これらの樹脂は、オフセットインキ組成物等の従来型のインキ組成物には広く用いられてきたものであるが、モノマーやオリゴマーとの相溶性が悪く、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物には採用の難しい材料だった。本発明では、この特定樹脂と特定液体成分とを組み合わせることで、モノマーやオリゴマーと良好に相溶するワニスを調製できるとの知見から完成されたことは、既に述べたとおりである。例えば、ロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂では、それらを構成するロジンがバイオマス由来の成分となるし、ロジン変性アルキッド樹脂では、ロジンに加えて長鎖脂肪酸もバイオマス由来の成分となる。このため、本発明のインキ組成物は、高いバイオマス含有量を有するものとなる。
ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂は、いずれも市販されており、容易に入手することが可能である。これらの樹脂として、市販のものを用いてもよいし、公知の手段で合成したものを用いてもよい。これらの中でも、ロジン変性フェノール樹脂が好ましく用いられる。
特定樹脂のsp値としては、8.0(cal/cm1/2以上9.0(cal/cm1/2以下を好ましく挙げることができる。特定樹脂のsp値がこれらの範囲であることにより、特定液体成分との良好な相溶性が得られるので好ましい。
インキ組成物中の特定樹脂の含有量としては、5質量%〜30質量%程度を好ましく挙げることができる。
特定樹脂は、特定液体成分中で100〜250℃程度に加温されることにより溶解してワニスとされる。特定樹脂は、こうしてワニスとされた状態でモノマーやオリゴマー等の成分と混合され、インキ組成物の調製に用いられる。
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、紫外線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、生じたラジカルが上記エチレン性不飽和結合を備えた化合物を重合させ、インキ組成物を硬化させる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線が照射された際にラジカルを生じさせるものであれば特に限定されない。なお、上記のように、電子線を活性エネルギー線として用いて本発明のインキ組成物を硬化させる場合には、本発明のインキ組成物に光重合開始剤を添加しなくともよい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。このような光重合開始剤は市販されており、例えばBASF社からイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア184、イルガキュア379、イルガキュア819、TPO等の商品名で、Lamberti社からDETX等の商品名で入手することができる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
インキ組成物中における光重合開始剤の含有量としては、3〜30質量%が好ましく挙げられ、2〜15質量%がより好ましく挙げられ、2〜13質量%がさらに好ましく挙げられる。インキ組成物中における光重合開始剤の含有量が上記の範囲であることにより、インキ組成物の十分な硬化性と、良好な内部硬化性やコストとを両立できるので好ましい。
[着色成分]
着色成分としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン等の白色顔料、アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
着色成分の含有量としては、インキ組成物の全体に対して1〜30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、着色されたインキ組成物を調製する場合、補色として他の色の着色成分を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、上記の各成分に加えて、必要に応じて他の成分を添加することができる。そのような成分としては、体質顔料、重合禁止剤、分散剤、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類等が挙げられる。
体質顔料は、インキ組成物に適度な印刷適性や粘弾性等の特性を付与するための成分であり、インキ組成物の調製において通常用いられる各種のものを用いることができる。このような体質顔料としては、クレー、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、ベントナイト、タルク、マイカ、酸化チタン等が例示される。こうした体質顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0〜33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。インキ組成物にこのような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してインキ組成物が増粘するのを抑制できる。インキ組成物中の重合禁止剤の含有量としては、0.01〜1質量%程度を例示することができる。
分散剤は、インキ組成物中に含まれる着色成分や体質顔料を良好な状態に分散させるために用いられる。このような分散剤は、各種のものが市販されており、例えばビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYK(商品名)シリーズ等を挙げることができる。
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するには、従来公知の方法を適用できる。このような方法としては、上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉して顔料(すなわち着色成分及び体質顔料)を分散させた後、必要に応じて添加剤(重合禁止剤、アルコール類、ワックス類等)を加え、さらに上記モノマー成分や油成分の添加により粘度調整することが例示される。インキ組成物における粘度としては、ラレー粘度計による25℃での値が10〜70Pa・sであることを例示できるが、特に限定されない。
<活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製方法>
上記活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製方法もまた、本発明の一つである。本発明のインキ組成物の製造方法は、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、特定液体成分、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法であって、上記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、上記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物であって、加温された上記特定液体成分に上記特定樹脂を溶解させてワニスを調製する工程を備えることを特徴とする。これらの内容のうち、上記インキ組成物にて既に説明したものについてはその説明を省略し、これらと異なる部分を中心に説明する。
本発明の製造方法は、加温された特定液体成分に特定樹脂を溶解させてワニスを調製する工程を備えることを特徴とする。特定液体成分及び特定樹脂については既に説明した通りである。
特定液体成分に特定樹脂を溶解させてワニスを調製するには、特定液体成分に固形の特定樹脂を加え、これらを100〜250℃程度に加温しながら撹拌すればよい。溶解時間としては30〜60分程度を挙げることができるが特に限定されず、溶解状態を観察しながら溶解時間を適宜調節すればよい。
ワニスを調製する際、特定樹脂と特定液体成分との混合比としては、質量比(特定樹脂:特定液体成分)で20:80〜40:60程度を提示できるが、特に限定されない。
調製されたワニスと、既に説明した各種の成分とを混合及び混練することでインキ組成物が調製される。インキ組成物中におけるワニスの含有量としては、20〜70質量%程度が好ましく挙げられ、20〜60質量%程度がより好ましく挙げられ、20〜50質量%程度がさらに好ましく挙げられる。
<印刷物の製造方法>
上記本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法も本発明の一つである。本発明の印刷物の製造方法は、本発明のインキ組成物を用いることを除いて、通常の印刷技術を用いて実施されるものである。このような印刷技術としては、オフセット印刷や樹脂凸版印刷等を好ましく挙げることができる。なお、樹脂凸版印刷を用いる場合の印刷対象の例としては、既に述べた通りである。
印刷により作製された未乾燥状態の印刷物に対して活性エネルギー線の照射を行うことにより、未乾燥状態の印刷物は瞬時に乾燥状態となる。これは、印刷用紙の表面に存在するインキ組成物が、活性エネルギー線の照射により硬化することで実現される。活性エネルギー線としては、電子線や紫外線等公知のものを採用することができる。
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は質量部を意味する。また、sp値の単位は、(cal/cm1/2である。
[ワニス1の調製]
ロジン変性フェノール樹脂(sp値8.83)40質量部、及びエポキシ化大豆油60質量部の混合物を200℃で60分間加熱することで溶解させ、ワニス1を得た。
[ワニス2の調製]
エポキシ化大豆油に代えてヒマシ油を用いたこと以外は、ワニス1と同様の手順でワニス2を得た。
[ワニス3の調製]
エポキシ化大豆油に代えてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を用いたこと以外は、ワニス1と同様の手順でワニス3を調製したが、ワニス3中において樹脂は溶解していなかった。
[ワニス4の調製]
エポキシ化大豆油に代えて大豆油を用いたこと以外は、ワニス1と同様の手順でワニス5を得た。
[ワニス5の調製]
ポリジアリルフタレート(株式会社大阪ソーダ製、A−DAP)40質量部、TMPTA 60質量部の混合物を100℃で60分間加熱することで溶解させ、ワニス5を得た。ワニス5は、特定樹脂を含まない、従来の活性エネルギー線硬化型インキ組成物に用いるものと同様のワニスである。
[インキ組成物の調製]
カーボンブラック(三菱化学株式会社製、MA−70)、上述のワニス、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DI−TMPTA)、イルガキュア907(商品名、BASF社製、光重合開始剤)、イルガキュア184(商品名、BASF社製、光重合開始剤)、及びポリエチレンワックスの各成分を表1に記載した配合量で混合した後、三本ロールミルで混練することにより、実施例1〜2、比較例1、及び参考例1の各インキ組成物を調製した。なお、本発明の特定液体成分を用いたものでないワニス3は、上記のように樹脂が溶解しなかったので、インキ組成物の調製には用いなかった。
[光沢の評価]
実施例、比較例及び参考例の各インキ組成物のそれぞれについて、インキ組成物0.1ccを、RI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いて塗工紙(日本製紙株式会社製、オーロラコート)に展色した後に、40mJ/cmの紫外線を照射して硬化させ、硬化直後の濃度をSpectroeye濃度計(Gretagmacbeth社製)により測定し、その濃度が1.50になるように調整した。次いで、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて展色面の60°反射光沢値を求めた。その結果を表1の光沢値欄に記載した。なお、インキ組成物の相溶性が悪く、インキ組成物中に析出物を生じていたものについては、各評価欄に評価不能と記載した。
[硬化性の評価]
実施例、比較例及び参考例の各インキ組成物のそれぞれについて、硬化性試験を行った。まず、インキ組成物の試料0.1ccをとりRI展色機(2分割ロール、株式会社明製作所製)を用いて塗工紙(日本製紙株式会社製、オーロラコート)に展色し、直ちに紫外線照射(メタルハライドランプ、照射量:36mJ/cm)を行って展色されたインキ組成物を硬化皮膜とした。これを室温で1分間放置した後、硬化皮膜(すなわち印刷面)の表面を学振型耐摩擦堅牢度試験機(荷重1kg、あて紙:上質紙)で10回擦った。擦った後における印刷面の状態を目視で観察し、下記の基準にて評価した。その評価結果を表1の「硬化性」欄に示す。
◎:印刷面に全く傷がなく、きわめて良好
○:印刷面にわずかなかすり傷が観察されるが、実用上の問題はない
△:印刷面に目立つ傷が観察される
×:印刷面に皮膜の剥離が観察される
Figure 2020152850
表1に示すように、本発明のインキ組成物は、ロジン変性フェノールを用いたものにもかかわらず、通常の活性エネルギー線硬化型インキ組成物(参考例1)と同様の相溶性を示し、それよりも良好な光沢を示した。このことから、従来、活性エネルギー線硬化型インキ組成物にて使用の困難だった特定樹脂が、特定液体成分と組み合わせることで使用可能になることがわかる。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、及び特定液体成分を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、
    前記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値(以下、sp値と呼ぶ。)が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物である活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  2. 前記特定液体成分が、sp値9.0(cal/cm1/2以上10.0(cal/cm1/2以下の動植物油由来の油脂及びその変性物、並びにカシューナッツシェルオイル及びその変性物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  3. 前記特定樹脂のsp値が、8.0(cal/cm1/2以上9.0(cal/cm1/2以下である請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  4. インキ組成物中における前記特定液体成分の含有量が10質量%以上50質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  5. 前記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂である請求項1〜4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  6. 前記特定液体成分が、ヒマシ油、ヤシ油、エポキシ化植物油、カシューナッツシェルオイル、及びカシューナッツシェルオイルの変性物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物。
  7. エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定樹脂、特定液体成分、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法であって、
    前記特定樹脂が、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂及びアスファルト樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記特定液体成分が、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値(以下、sp値と呼ぶ。)が9.0(cal/cm1/2以上11.0(cal/cm1/2未満の動植物由来の油脂又はその変性物であって、
    加温された前記特定液体成分に前記特定樹脂を溶解させてワニスを調製する工程を備えることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インキ組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化型インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含むことを特徴とする印刷物の製造方法。
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