JP2020148330A - 継ぎ手部を有する鋳鉄管および鋳鉄管継ぎ手部の防食方法 - Google Patents

継ぎ手部を有する鋳鉄管および鋳鉄管継ぎ手部の防食方法 Download PDF

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【課題】より簡便で低コストな管端部の少なくとも一方の管外周面にリング部を有する継ぎ手部を有する鋳鉄管を提供すること。【解決手段】少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に溶接された周方向に間隙を有する鋳鉄リング部を備え、該間隙に合成樹脂充填剤が充填硬化されている鋳鉄管、ならびに鋳鉄管の少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に、周方向に間隙を有する鋳鉄リングを嵌装する工程、該鋳鉄リングを溶接により管外周面に固定する工程、該周方向の間隙に、および存在する場合には、鋳鉄リングと管外周面との当接部分の間隙に、合成樹脂充填剤を充填する工程、その後鋳鉄管を温水槽に浸漬させる工程、ならびに温水槽に浸漬させた後の鋳鉄管の管外面に塗料を塗装する工程を含む鋳鉄管継ぎ手部の防食方法。【選択図】図1

Description

本発明は、継ぎ手部を有する鋳鉄管、とりわけより簡便で低コストな管端部の少なくとも一方の管外周面にリング部を有する継ぎ手部を有する鋳鉄管、ならびに鋳鉄管継ぎ手部の防食方法に関する。
消火栓用配管に用いるハウジング方式の継手用の管(以下、ハウジング形管と称す)は、鋼管が主流であったが、種々のニーズによりダクタイル鋳鉄製ハウジング形管も製造されている。ハウジング形管は、同径の管端部同士を突き合わせ、各管端部外周面に設けられた突部に適合させた接合継手部材をボルト締結することにより接合するものである。この管端部の外周面の突部は、周方向に間隙を有するリング部材を、管外周面に形成した溝内に嵌装し、溶接を行なうことにより設けられる。このため、溶接されたリング部にも周方向に間隙が生じることとなる。そして、このような管端部の防食方法としては、スプレー塗装や刷毛塗り塗装等による合成樹脂塗装が行われている。
上記管端部の外周面の突部については、ハウジング形管のみならず、従来から上下水道管などに用いられている受口および挿し口の組み合わせによる継ぎ手構造を有する鋳鉄管の、挿し口側端部に設けられる突部(リング部)についても同様の構成が用いられている。特許文献1では、鋳鉄管の挿し口リングを鉄と合金化する金属の溶射金属層を介して挿し口側外周面に外嵌し、鋳鉄管をフェライト化焼鈍することにより挿し口リングと鋳鉄管とを鉄と溶射金属との合金層を介して治金的に接合する方法が開示されている。
特開平7−155936号公報
リング部を管外周面と溶接し、管端部外周面をスプレー塗装や刷毛塗り塗装等による合成樹脂塗装による防食する場合には、特にリング部の間隙部分について、スプレー塗装や刷毛塗り塗装等では塗装むらが起こりやすく、赤錆の発生などが問題となっている。
特許文献1の方法では、溶射金属を用い、さらにリング部材を外嵌したのち、高温での焼鈍処理を必要とする繁雑でコスト高な方法であるため、より簡便でコストのかからない方法により得られる継ぎ手を有する鋳鉄管が望まれている。
また、リング部材の溶接については、リング部材が鋳鉄製である場合、鋳鉄と鋳鉄との溶接となり、技術的にも難しく、溶接ビード部の補修加工が必要となるなどの課題がある。さらに、溶接面積が大きくなるとコスト的にも問題となる。一方、強度の観点からは、リング部材の溶接は、管中央側のリング部と鋳鉄管とのみを行うだけで十分であるため、防食性を損なうことなく溶接面積を低減することが望まれている。
そこで、本発明は、より簡便で低コストな管端部の少なくとも一方の管外周面にリング部を有する継ぎ手部を有する鋳鉄管、ならびに鋳鉄管継ぎ手部の防食方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、管外周面に溶接された周方向に間隙を有する鋳鉄リング部が設けられた鋳鉄管において、該間隙に合成樹脂充填剤を充填することにより、より簡便で低コストな管端部の少なくとも一方の管外周面にリング部を有する継ぎ手部を有する鋳鉄管が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に溶接された周方向に間隙を有する鋳鉄リング部を備え、
該間隙に合成樹脂充填剤が充填硬化されている鋳鉄管、
[2]前記鋳鉄リング部と前記管外周面との溶接が、管中央側の該鋳鉄リング部と該管外周面との全当接部分と、管端部側の該鋳鉄リング部と該管外周面との当接部分の一部とに施され、
管端部側の該リング部と該管外周面との当接部分の間隙には合成樹脂充填剤が充填硬化されている前記[1]記載の鋳鉄管、
[3]前記鋳鉄リング部と前記管外周面との溶接が、管中央側の該鋳鉄リング部と該管外周面との全当接部分に施され、
管端部側の該鋳鉄リング部と該管外周面との当接部分の間隙には合成樹脂充填剤が充填硬化されている上記[1]記載の鋳鉄管、
[4]前記鋳鉄リング部が前記管外周面に形成された溝に嵌合されている上記[1]〜[3]のいずれかに記載の鋳鉄管、
[5]ハウジング方式継手用の管であり、かつ両端に前記鋳鉄リング部を有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の鋳鉄管、
[6]合成樹脂充填剤がエポキシ系樹脂である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の鋳鉄管、ならびに
[7]鋳鉄管継ぎ手部の防食方法であって、
鋳鉄管の少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に、周方向に間隙を有する鋳鉄リングを嵌装する工程、
該鋳鉄リングを溶接により管外周面に固定する工程、
該周方向の間隙に、および存在する場合には、鋳鉄リングと管外周面との当接部分の間隙に、合成樹脂充填剤を充填する工程、
その後鋳鉄管を温水槽に浸漬させる工程、ならびに
温水槽に浸漬させた後の鋳鉄管の管外面に塗料を塗装する工程
を含む鋳鉄管継ぎ手部の防食方法
に関する。
本発明の鋳鉄管においては、少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に溶接された鋳鉄リング部の周方向の間隙に合成樹脂充填剤を充填硬化することにより、簡易な工程により、コストを掛けずに継ぎ手部に溶接された鋳鉄リング部の周方向に生じた間隙の防食を行うことができる。
また、管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分の少なくとも一部を溶接の代わりに合成樹脂充填剤を充填硬化することにより、使用する溶接材料を減らし、コストを削減することができる。
本発明の鋳鉄管の継ぎ手部構造の一例を説明する側面図である。 本発明の鋳鉄管の継ぎ手部構造を別の一例を説明する側面図である。 本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造のまた別の一例を説明する側面図である。 本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の一例を説明する管端部側からの側面図である。 本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の別の一例を説明する管端部側からの側面図である。 本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造のまた別の一例を説明する管端部側からの側面図である。 ハウジング形管である本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の一例を説明する断面図である。 ハウジング形管である本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の別の一例を説明する断面図である。 両端に受口および挿し口を有する本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の一例を説明する断面図である。 両端に受口および挿し口を有する本発明の鋳鉄管の継ぎ手構造の別の一例を説明する断面図である。
以下、本発明の鋳鉄管について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に溶接された周方向に間隙を有する鋳鉄リング部を備え、該間隙に合成樹脂充填剤が充填硬化されている鋳鉄管である。
図1は、本発明の鋳鉄管の継ぎ手部構造の一例を説明する側面図であり、鋳鉄管Pは、少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面1に溶接された周方向に間隙3を有する鋳鉄リング部2を備え、その間隙3には合成樹脂充填剤5が充填硬化されている。
鋳鉄リング部2の間隙3は、リング取付のために設けられたものであり、取り付けに際し、なるべく間隙が狭くなるように調整される。このような間隙3は、通常約10mm以下が好ましい。間隙3が10mmより広くなると、円周上に自動溶接が行えなくなるため、生産性に支障が生じる傾向がある。
合成樹脂充填剤は、特に限定されるものではないが、樹脂の種類としてはエポキシ系樹脂充填剤が水質にも悪影響を及ぼさないことから好ましい。また、鋳鉄管は、通常、鋳鉄リング部を嵌装し、溶接により固定し、さらに必要部分に合成樹脂充填剤を充填した後、温水槽(約90℃)を通過させた後に外面塗装がなされる。このため、充填後にすぐに温水槽を通過させることのできる合成樹脂を用いることが好ましい。また、水中硬化型の樹脂を用いれば、温水漕を通過させる間に硬化させることができる。具体的には、合成樹脂のなかでも2剤型エポキシ系樹脂が好ましい。このような2剤型エポキシ系樹脂のなかでも、例えばビーオーケミカル(株)製のBOメジコン#10やBOメジコン#10VPなど、パテ状のものがヘラや手などで塗り込むことが容易であり、さらにリング間隙周辺部に付着しても容易にウエス等で拭き取ることができるため好ましい。デブコン等の鉄セメントを使用すると、硬化に長い時間が必要となり、さらに施工後のグラインダー等での手入れ作業が生じるため、リードタイムが長くなり、生産性が低下する。
鋳鉄管の外周面1と鋳鉄リング部2との溶接は、特に限定されるものではなく、例えば鋳鉄用の溶接材料、ニッケル溶接棒、鉄−ニッケル溶接棒などを用いて行うことができる。具体的には、ニッコー熔材工業(株)から製造販売されている鋳鉄用の溶接棒、DM−100、DMA−100、DM−150、DM−150Mなどが挙げられる。また、溶接方法は、特に限定されるものではないが、たとえばガス溶接やアーク溶接などがあげられる。
図1においては管中央側および管端部側の両方の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分にすべて溶接が施されている。一方、強度の観点からは、リング部材の溶接は、管中央側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分のみを行うだけで十分であるため、図2においては、管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分には点溶接が施されており、この点溶接の間に合成樹脂充填剤を充填硬化させており、さらに図3においては、管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分には溶接は施されておらず、管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分の間隙には全て合成樹脂充填剤を充填硬化させている。
図4〜6は、それぞれ図1〜3に対応する管端部側からの側面図である。
図7および8は、ハウジング形管の継ぎ手構造の一例を説明する断面図であり、図2および3あるいは図5および6の管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分に合成樹脂充填剤5が充填硬化されている部分を切断した断面図である。図7および8では、鋳鉄管Pは、両端をそれぞれ別の管と接合するために両端に鋳鉄リング部材2を溶接材料4で各々管中央側で溶接している。また、図8は、鋳鉄リングが管外周面1に形成された溝6に嵌合されている態様を示す。
図9および10は、両端に受口および挿し口を有する鋳鉄管の継ぎ手構造の一例を説明する断面図であり、図2および3あるいは図5および6の管端部側の鋳鉄リング部と管外周面との当接部分に合成樹脂充填剤5が充填硬化されている部分を切断した断面図である。図10は、鋳鉄リングが管外周面1に形成された溝6に嵌合されている態様を示す。このような鋳鉄リング部としては、管外周面に別部材として突部を形成させるものであれば、特に限定されることなく本発明を適用することができる。
本発明のまた別の実施形態は、鋳鉄管継ぎ手部の防食方法であって、鋳鉄管の少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に、周方向に間隙を有する鋳鉄リングを嵌装する工程、該鋳鉄リングを溶接により管外周面に固定する工程、該周方向の間隙に、および存在する場合には、鋳鉄リングと管外周面との当接部分の間隙に、合成樹脂充填剤を充填する工程、その後鋳鉄管を温水槽に浸漬させる工程、ならびに温水槽に浸漬させた後の鋳鉄管の管外面に塗料を塗装する工程を含む鋳鉄管継ぎ手部の防食方法である。
各部材や継ぎ手部の構造については、上述の鋳鉄管について説明した内容がすべて適用される。充填剤を充填した後に温水槽に浸漬させる工程は、管外面防食用塗装のために行われるものであるが、充填剤に充填後にすぐに温水槽を通過させることのできる合成樹脂を用いた場合には、充填剤の充填後に特に時間を設けることなく温水槽に浸漬させる工程へと進めることができる。温水槽に浸漬させる時間は、例えば、10〜15分間程度である。温水槽の温度は、例えば、90〜95℃に保たれている。
温水槽に浸漬させた鋳鉄管の管外面に塗料を塗装する工程には、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの合成樹脂塗料を使用することができるが、特に限定されるものではない。これらの塗料は、鋳鉄管の上塗り塗料として流通しているものを用いればよく、特に限定されるものではない。水道管に使用する場合には、例えば、日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に規定されている合成樹脂塗料を好適に用いることができる。
具体的には、塗料として用いるアクリル系樹脂としては、例えば、大日本塗料(株)製のクリモトコートWR、日本ペイント・インダストリアルコーティングス(株)製のクリモトコートAC−1−SR、日本ペイント・インダストリアルコーティングス(株)製のクリモトコートAC−1などを使用することができる。
また、塗料として用いるエポキシ系樹脂としては、例えば、大日本塗料(株)製のクリモトコートNT#100新H、関西ペイント(株)製のクリモトコートNT#100新などを使用することができる。
塗料を塗装する方法としては、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装、ローラーや刷毛などを使用することができる。
塗料を塗装して得られる塗膜の膜厚は、鋳鉄管の用途によって適宜設定することができるが、水道管用の鋳鉄の場合、おおよそ100〜150μmが好ましく、100〜120μmがより好ましい。
P 鋳鉄管
1 管外周面
2 鋳鉄リング部
3 リング部の間隙
4 溶接部材
5 合成樹脂充填剤
6 溝

Claims (7)

  1. 少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に溶接された周方向に間隙を有する鋳鉄リング部を備え、
    該間隙に合成樹脂充填剤が充填硬化されている鋳鉄管。
  2. 前記鋳鉄リング部と前記管外周面との溶接が、管中央側の該鋳鉄リング部と該管外周面との全当接部分と、管端部側の該鋳鉄リング部と該管外周面との当接部分の一部とに施され、
    管端部側の該リング部と該管外周面との当接部分の間隙には合成樹脂充填剤が充填硬化されている請求項1記載の鋳鉄管。
  3. 前記鋳鉄リング部と前記管外周面との溶接が、管中央側の該鋳鉄リング部と該管外周面との全当接部分に施され、
    管端部側の該鋳鉄リング部と該管外周面との当接部分の間隙には合成樹脂充填剤が充填硬化されている請求項1記載の鋳鉄管。
  4. 前記鋳鉄リング部が前記管外周面に形成された溝に嵌合されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳鉄管。
  5. ハウジング方式継手用の管であり、かつ両端に前記鋳鉄リング部を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳鉄管。
  6. 合成樹脂充填剤がエポキシ系樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋳鉄管。
  7. 鋳鉄管継ぎ手部の防食方法であって、
    鋳鉄管の少なくとも一端の継ぎ手部の管外周面に、周方向に間隙を有する鋳鉄リングを嵌装する工程、
    該鋳鉄リングを溶接により管外周面に固定する工程、
    該周方向の間隙に、および存在する場合には、鋳鉄リングと管外周面との当接部分の間隙に、合成樹脂充填剤を充填する工程、
    その後鋳鉄管を温水槽に浸漬させる工程、ならびに
    温水槽に浸漬させた後の鋳鉄管の管外面に塗料を塗装する工程
    を含む鋳鉄管継ぎ手部の防食方法。
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