以下に本発明の実施の形態の緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。また、本発明の実施の形態に係る緩衝器は、鞍乗型車両の後輪を懸架するリアクッション装置に利用されている。以下の説明では、緩衝器が車両に取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Aは、アウターシェル10と、このアウターシェル10に出入りするピストンロッド3とを有して伸縮可能な緩衝器本体Dと、この緩衝器本体Dの外周に設けられる懸架ばねSと、緩衝器本体Dと一体的に設けられた減衰力調整部Eと、この減衰力調整部Eとホースで接続されるタンクTとを備えている。
また、緩衝器Aは倒立型であり、ピストンロッド3がアウターシェル10から下方へ突出する。そのピストンロッド3の下端には、車軸側のブラケット30が設けられている。このブラケット30は、車体に揺動自在に連結されるスイングアームに連結される。このスイングアームには、後輪が回転自在に支持されているので、ピストンロッド3は後輪の車軸に連結されるといえる。
その一方、アウターシェル10の上端外周には、有天筒状のエンドキャップ11が螺合されている。このエンドキャップ11の頂部には、車体側のブラケット12が設けられ、アウターシェル10がそのブラケット12を介して車体に連結される。
このようにして緩衝器本体Dは、車両における車体と後輪の車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して後輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド3がアウターシェル10に出入りして緩衝器本体Dが伸縮する。このように、緩衝器本体Dが伸縮することを、緩衝器Aが伸縮するともいう。
また、本実施の形態において、懸架ばねSはコイルばねである。この懸架ばねSの上端は、アウターシェル10の外周に装着された上側ばね受け13で支持される。その一方、懸架ばねSの下端は、車軸側のブラケット30に取り付けられた下側ばね受け31で支持される。車軸側のブラケット30は、ピストンロッド3に連結されているので、懸架ばねSは、その一端をアウターシェル10で支えられ、他端をピストンロッド3で支えられているといえる。
そして、緩衝器Aが収縮してピストンロッド3がアウターシェル10内へと侵入すると、懸架ばねSが圧縮されて弾性力を発揮して緩衝器Aを伸長方向へ付勢する。このように、懸架ばねSは圧縮量に応じた弾性力を発揮して、車体を弾性支持できるようになっている。
なお、緩衝器Aを取り付ける向きは、図示する限りではなく、例えば、図1中上下を逆向きにしてもよい。また、緩衝器Aの取付対象は、車両に限らず適宜変更できる。さらに、懸架ばねSは、エアばね等のコイルばね以外のばねであってもよいのは勿論、緩衝器Aの取付対象によっては懸架ばねSを省略してもよい。
つづいて、緩衝器本体Dは、複筒型であり、アウターシェル10の内側に内筒としてのシリンダ1が設けられている。このシリンダ1内には、ピストン2が摺動自在に挿入されている。このピストン2は、ピストンロッド3の上端外周にナット32で連結されている。そして、緩衝器Aの伸縮時には、ピストンロッド3がシリンダ1に出入りして、ピストン2がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
また、前述のように、アウターシェル10の上端外周には、有天筒状のエンドキャップ11が螺合され、このエンドキャップ11でアウターシェル10の上端が塞がれている。その一方、アウターシェル10の下端には、ピストンロッド3を摺動自在に支える環状のロッドガイド14が装着されている。このロッドガイド14には、シール15,16,17が装着されており、ピストンロッド3の外周と、アウターシェル10の内周がそれぞれシールされている。
このようにしてアウターシェル10内は密閉空間となっており、シリンダ1内を含むアウターシェル10内に収容される液体が外方へ漏れるのが防止されている。そして、シリンダ1内には、作動油等の液体が充填された作動室Lが形成されており、この作動室Lがピストン2で下側の伸側室L1と上側の圧側室L2とに区画されている。
ここでいう伸側室L1とは、ピストン2で区画される二室のうち、緩衝器Aの伸長時にピストン2で圧縮される方の部屋のことである。その一方、圧側室L2とは、ピストン2で区画される二室のうち、緩衝器Aの収縮時にピストン2で圧縮される方の部屋のことである。
ピストン2には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側通路2aと圧側通路2bが形成されるとともに、伸側通路2a又は圧側通路2bを通って伸側室L1と圧側室L2との間を移動する液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素FHが取り付けられている。このハード側減衰要素FHは、伸側通路2aを開閉するリーフバルブである伸側のハードリーフバルブ20と、圧側通路2bを開閉するリーフバルブである圧側のハードリーフバルブ21と、オリフィス22(図3)とを有して構成されている。
伸側と圧側のハードリーフバルブ20は、それぞれ金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有する。伸側のハードリーフバルブ20は、その外周側(又は内周側)の撓みを許容された状態でピストン2の上側に装着されており、伸側のハードリーフバルブ20には伸側室L1の圧力が外周部を上側へ撓ませる方向へ作用する。圧側のハードリーフバルブ21は、その外周側(又は内周側)の撓みを許容された状態でピストン2の下側に積層されており、圧側のハードリーフバルブ21には圧側室L2の圧力が外周部を下側へ撓ませる方向へ作用する。
オリフィス22は、ピストン2の弁座に離着座する伸側と圧側のハードリーフバルブ20,21の一方又は両方の外周部に設けられた切欠き、或いは、上記弁座に設けられた打刻等によって形成されている。このため、オリフィス22は、伸側通路2aと圧側通路2bの一方又は両方に、伸側及び圧側のハードリーフバルブ20,21と並列に設けられているといえる。
伸側室L1は、緩衝器Aの伸長時にピストン2で圧縮されてその内圧が上昇し、圧側室L2の圧力よりも高くなる。その一方、圧側室L2は、緩衝器Aの収縮時にピストン2で圧縮されてその内圧が上昇し、伸側室L1の圧力よりも高くなる。このように、緩衝器Aの伸縮時には伸側室L1と圧側室L2に差圧が生じる。そして、緩衝器Aの伸縮時にピストン速度が低速域にあり、上記差圧が伸側及び圧側のハードリーフバルブ20,21の開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス22を通って伸長時には伸側室L1から圧側室L2へと向かい、収縮時には圧側室L2から伸側室L1へと向かう。そして、その液体の流れに対してオリフィス22により抵抗が付与される。
また、緩衝器Aの伸長時にピストン速度が高まって中高速域にあり、上記差圧が大きくなって伸側のハードリーフバルブ20の開弁圧以上になると、伸側のハードリーフバルブ20の外周部が上側へ撓んでその外周部とピストン2との間に隙間ができて、液体がその隙間を通って伸側室L1から圧側室L2へと向かうとともに、その液体の流れに対して抵抗が付与される。
また、緩衝器Aの収縮時にピストン速度が高まって中高速域にあり、上記差圧が大きくなって圧側のハードリーフバルブ21の開弁圧以上になると、圧側のハードリーフバルブ21の外周部が下側へ撓んでその外周部とピストン2との間に隙間ができて、液体がその隙間を通って圧側室L2から伸側室L1へと向かうとともに、その液体の流れに対して抵抗が付与される。
以上からわかるように、ハード側減衰要素FHのオリフィス22と、伸側のハードリーフバルブ20は、緩衝器Aの伸長時に伸側室L1から圧側室L2へと向かう液体の流れに抵抗を与える伸側の第一の減衰要素として機能する。また、ハード側減衰要素FHのオリフィス22と、圧側のハードリーフバルブ21は、緩衝器Aの収縮時に圧側室L2から伸側室L1へと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第一の減衰要素として機能する。そして、これら第一の減衰要素による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス22に起因し、中高速域にある場合には伸側又は圧側のハードリーフバルブ20,21に起因する。
つづいて、シリンダ1とアウターシェル10との間には、筒状の隙間C1が形成されている。その隙間C1は、シリンダ1の下端部に形成された孔1aを介して常に伸側室L1と連通されている。さらに、その隙間C1は、アウターシェル10の上端部に形成された孔10aと、エンドキャップ11に形成された伸側開口11aを通じて減衰力調整部Eに連通されている。また、エンドキャップ11には、圧側開口11bが形成されており、圧側室L2がその圧側開口11bを通じて減衰力調整部Eに連通されている。
図2に示すように、減衰力調整部Eは、筒状のハウジング4と、このハウジング4の一端を塞ぐキャップ40と、ハウジング4の他端を塞ぐボトム部材41と、このボトム部材41に保持されてハウジング4内に固定されるバルブケース5と、ハウジング4内におけるバルブケース5のキャップ40側に設けられる電磁弁Vとを備えている。
また、本実施の形態において、ハウジング4の中心を通る減衰力調整部Eの中心軸Yは、図1に示すピストンロッド3の中心を通る緩衝器本体Dの中心軸Xに対して直交する直線Zに沿うように配置されている。以下、説明の便宜上、減衰力調整部Eの図2中左右を単に「左」「右」というが、減衰力調整部Eを取り付ける向きは適宜変更可能である。例えば、減衰力調整部Eを中心軸Yが車両の車幅(左右)方向へ延びるように配置しても、前後方向へ延びるように配置してもよい。
また、本実施の形態において、減衰力調整部Eのハウジング4は、アウターシェル10の上端を塞ぐエンドキャップ11、及び車体側のブラケット12と一体成形されている。ここでいう一体成形とは、別個に成形した複数の部材を接着又は接合するのではなく、複数の部材を成形と同時に接合して一体とするとの意味である。
つづいて、図2に示すように、ハウジング4は、その内部にバルブケース5を収容するサブシリンダ部4aと、電磁弁Vを収容するケース部4bとを含む。そして、サブシリンダ部4a内は、バルブケース5によって左側(キャップ40側)の第一室L3と、右側(反キャップ側)の第二室L4とに仕切られている。そのバルブケース5には、第一室L3と第二室L4を連通する伸側ソフト通路5aと圧側ソフト通路5bが形成されるとともに、伸側ソフト通路5a又は圧側ソフト通路5bを通って第一室L3と第二室L4との間を移動する液体の流れに対して抵抗を与えるソフト側減衰要素FSが取り付けられている。
また、ケース部4bと電磁弁Vとの間には、隙間C2が形成されており、その隙間C2と第一室L3とをつなぐ部分を電磁弁Vで開閉するようになっている。さらに、ケース部4bには、その隙間C2に開口するとともに伸側開口11aに通じる通孔(図示せず)が形成されている。前述のように伸側開口11aは、シリンダ1とアウターシェル10との間の隙間C1を介して伸側室L1に連通されている。
その一方、サブシリンダ部4aのバルブケース5よりも右側には、圧側開口11b(図1)に通じる通孔(図示せず)が形成されている。前述のように圧側開口11bは圧側室L2に連通されており、第二室L4は圧側室L2と常に連通されている。さらに、その第二室L4にはタンクTが接続されており、これにより圧側室L2がタンクTと常に連通される。
図1に示すように、そのタンクT内はフリーピストン18で液室L5とガス室Gとに仕切られている。そのガス室Gには、高圧ガスが封入されており、ガス室Gの圧力で液室L5を加圧し、その圧力がシリンダ1内に作用するようになっている。そして、圧側室L2の圧力がタンクT内の圧力と常に略同圧(タンク圧)となる。
つまり、本実施の形態では、前述のシリンダ1とアウターシェル10との間にできる筒状の隙間C1、ケース部4b内の隙間C2、第一室L3、及び第二室L4を有してハード側減衰要素FHを迂回して伸側室L1と圧側室L2とを連通するバイパス路Bが形成されている。そして、そのバイパス路BにタンクTが接続されるとともに、バイパス路BにおけるタンクTとの接続部よりも伸側室L1側に電磁弁Vとソフト側減衰要素FSが直列に設けられている。ソフト側減衰要素FSは、伸側ソフト通路5aを開閉するリーフバルブである伸側のソフトリーフバルブ50と、圧側ソフト通路5bを開閉するリーフバルブである圧側のソフトリーフバルブ51と、オリフィス52(図3)とを有して構成されている。
伸側と圧側のソフトリーフバルブ50、51は、それぞれ金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有する。伸側のソフトリーフバルブ50は、その外周側(又は内周側)の撓みを許容された状態でバルブケース5の右側に装着されており、伸側のソフトリーフバルブ50には第一室L3の圧力が外周部を右側へ撓ませる方向へ作用する。圧側のソフトリーフバルブ51は、その外周側(又は内周側)の撓みを許容された状態でバルブケース5の左側に積層されており、圧側のソフトリーフバルブ51には第二室L4の圧力が外周部を左側へ撓ませる方向へ作用する。
オリフィス52は、バルブケース5の弁座に離着座する伸側と圧側のソフトリーフバルブ50,51の外周部に設けられた切欠き、或いは上記弁座に設けられた打刻等によって形成されている。このため、オリフィス52は、伸側ソフト通路5aと圧側ソフト通路5bの一方又は両方に、伸側及び圧側のソフトリーフバルブ50,51と並列に設けられているといえる。
第一室L3の圧力は、緩衝器Aの伸長時であって電磁弁Vが開いているときに伸側室L1の圧力を受けて上昇し、第二室L4の圧力よりも高くなる。その一方、第二室L4の圧力は、緩衝器Aの収縮時であって電磁弁Vが開いているときに圧側室L2の圧力(タンク圧)を受けて上昇し、第一室L3の圧力よりも高くなる。このように、緩衝器Aの伸縮時であって、電磁弁Vが開いている場合には第一室L3と第二室L4に差圧が生じる。
そして、緩衝器Aの伸縮時であって電磁弁Vが開いているときにピストン速度が低速域にあり、上記差圧が伸側及び圧側のソフトリーフバルブ50,51の開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス52を通って伸長時には第一室L3から第二室L4、即ち、伸側室L1から圧側室L2へと向かい、収縮時には第二室L4から第一室L3、即ち、圧側室L2から伸側室L1へと向かい、その液体の流れに対して抵抗が付与される。
また、緩衝器Aの伸長時であって電磁弁Vが開いているときにピストン速度が高まって中高速域にあり、上記差圧が大きくなって伸側のソフトリーフバルブ50の開弁圧以上になると、伸側のソフトリーフバルブ50の外周部が撓んでその外周部とバルブケース5との間に隙間ができて、液体がその隙間を通って第一室L3から第二室L4、即ち、伸側室L1から圧側室L2へと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
また、緩衝器の収縮時であって電磁弁Vが開いているときにピストン速度が高まって中高速域にあり、上記差圧が大きくなって圧側のソフトリーフバルブ51の開弁圧以上になると、圧側のソフトリーフバルブ51の外周部が撓んでその外周部とバルブケース5との間に隙間ができて、液体がその隙間を通って第二室L4から第一室L3、即ち、圧側室L2から伸側室L1へと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
以上からわかるように、ソフト側減衰要素FSのオリフィス52と、伸側のソフトリーフバルブ50は、緩衝器Aの伸長時にバイパス路Bを伸側室L1から圧側室L2へと向かう液体の流れに抵抗を与える伸側の第二の減衰要素として機能する。また、ソフト側減衰要素FSのオリフィス52と、圧側のソフトリーフバルブ51は、緩衝器Aの収縮時にバイパス路Bを圧側室L2から伸側室L1へと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第二の減衰要素として機能する。そして、これら第一、第二の減衰要素による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス52に起因し、中高速域にある場合には伸側又は圧側のソフトリーフバルブ50,51に起因する。
また、ソフト側減衰要素FSの伸側のソフトリーフバルブ50は、ハード側減衰要素FHの伸側のハードリーフバルブ20よりもバルブ剛性の低い(撓みやすい)バルブであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。同様に、ソフト側減衰要素FSの圧側のソフトリーフバルブ51は、ハード側減衰要素FHの圧側のハードリーフバルブ21よりもバルブ剛性の低い(撓みやすい)バルブであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。換言すると、液体は、同一条件下において、ハードリーフバルブ20,21よりもソフトリーフバルブ50,51の方を通過しやすい。さらに、ソフト側減衰要素FSのオリフィス52は、ハード側減衰要素FHのオリフィス22よりも開口面積が大きい大径オリフィスであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。
つづいて、電磁弁Vは、ハウジング4内に固定される筒状のホルダ6と、このホルダ6内に往復動可能に挿入されるスプール7と、このスプール7をその移動方向の一方へ付勢する付勢ばね8と、この付勢ばね8の付勢力と反対方向の推力をスプール7へ与えるソレノイド9とを有して構成されている。そして、ホルダ6内におけるスプール7位置の変更により、電磁弁Vの開度が大小調節される。
より具体的には、ホルダ6は、ハウジング4内に軸方向の一端を左側(キャップ40側)へ、他端を右側(バルブケース5側)へ向けた状態で、ハウジング4の中心軸Yに沿って配置されている。さらに、ホルダ6には、その肉厚を径方向へ貫通する一以上のポート6aが形成されている。そのポート6aは、隙間C2を介して伸側室L1に連通されており、スプール7で開閉される。
そのスプール7は、筒状で、ホルダ6内に摺動自在に挿入されている。このスプール7の左端には、プレート70が積層されており、そのプレート70にソレノイド9の後述するプランジャ9aが当接している。その一方、スプール7の右端には、付勢ばね8が当接し、当該付勢ばね8でスプール7を左側(ソレノイド9側)へ付勢している。
また、スプール7の中心部に形成された中心孔7aは、スプール7の右端開口を介して第一室L3と連通している。さらに、スプール7には、その外周の周方向に沿って環状溝7bが形成されるとともに、この環状溝7bの内側と中心孔7aとを連通する一以上の側孔7cが形成されている。これにより、環状溝7bの内側が側孔7cと中心孔7aを介して第一室L3と連通される。
上記構成によれば、ホルダ6のポート6aに環状溝7bが対向する位置にスプール7がある場合には、伸側室L1と第一室L3との連通が許容される。ここでいう環状溝7bとポート6aが対向した状態とは、径方向視で環状溝7bとポート6aとが重なり合う状態をいい、その重複量に応じてバイパス路Bの開口面積が変わる。
例えば、環状溝7bとポート6aの重複量が増えて電磁弁Vの開度が大きくなると、バイパス路Bの開口面積が大きくなる。反対に、環状溝7bとポート6aの重複量が減って電磁弁Vの開度が小さくなると、バイパス路Bの開口面積が小さくなる。さらに、環状溝7bとポート6aが完全に重ならない位置までスプール7が移動して電磁弁Vが閉じると、バイパス路Bの連通が遮断される。
また、電磁弁Vのソレノイド9は、詳細な図示を省略するが、コイルを含む筒状のステータと、このステータ内に移動自在に挿入される筒状の可動鉄心と、この可動鉄心の内周に装着されて先端がプレート70に当接するプランジャ9aとを有している。このソレノイド9に電力供給するハーネス90は、キャップ40から外方へ突出し、電源に接続されている。
そして、そのハーネス90を通じてソレノイド9へ通電すると、可動鉄心が右側へ引き寄せられてプランジャ9aが右方へ移動し、スプール7が付勢ばね8の付勢力に抗して右向きに移動する。すると、環状溝7bとポート6aが対向するようになって電磁弁Vが開く。その電磁弁Vの開度とソレノイド9への通電量との関係は、正の比例定数をもつ比例関係となり、通電量を増やすほど開度が大きくなる。さらに、ソレノイド9への通電を断つと電磁弁Vが閉じる。
このように、本実施の形態の電磁弁Vは、常閉型で、その弁体となるスプール7を付勢ばね8で閉方向へ付勢するとともに、ソレノイド9で開方向の推力をスプール7に与えるようになっている。また、電磁弁Vの通電量に比例して開度が大きくなり、その開度の増加に伴いバイパス路Bの開口面積が大きくなる。よって、電磁弁Vへの通電量に比例してバイパス路Bの開口面積が大きくなるともいえる。
以上をまとめると、本実施の形態に係る緩衝器Aは、図3に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室L1と圧側室L2とに区画するピストン2と、先端がピストン2に連結されるとともに末端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、シリンダ1内の圧側室L2に接続されるタンクTとを備え、圧側室L2の圧力がタンク圧となっている。さらに、緩衝器Aには、伸側室L1と圧側室L2とを連通する通路として、伸側通路2a、圧側通路2b、及びバイパス路Bが設けられている。
そして、伸側通路2aと圧側通路2bには、それぞれを開閉する伸側のハードリーフバルブ20と圧側のハードリーフバルブ21が設けられ、伸側通路2aと圧側通路2bの一方又は両方に伸側及び圧側のハードリーフバルブ20,21と並列にオリフィス22が設けられている。そして、伸側のハードリーフバルブ20、圧側のハードリーフバルブ21、及びオリフィス22を有して液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素FHが構成されている。
その一方、バイパス路BにはタンクTが接続されるとともに、バイパス路BにおけるタンクTとの接続部より伸側室L1側が伸側ソフト通路5aと圧側ソフト通路5bに分岐している。そして、伸側ソフト通路5aと圧側ソフト通路5bには、それぞれを開閉する伸側のソフトリーフバルブ50と圧側のソフトリーフバルブ51が設けられ、伸側ソフト通路5aと圧側ソフト通路5bの一方又は両方に伸側及び圧側のソフトリーフバルブ50,51と並列にオリフィス52が設けられている。
このオリフィス52は、オリフィス22より開口面積の大きい大径オリフィスである。また、ソフトリーフバルブ50,51は、ハードリーフバルブ20,21よりバルブ剛性の低いリーフバルブである。そして、伸側のソフトリーフバルブ50、圧側のソフトリーフバルブ51、及びオリフィス52を有して液体の流れに与える抵抗を小さくしたソフト側減衰要素FSが構成されている。
さらに、バイパス路BにおけるタンクTとの接続部よりも伸側室L1側には、ソフト側減衰要素FSと直列に電磁弁Vが設けられており、その電磁弁Vへの通電量の調節によりバイパス路Bの開口面積を変更できるようになっている。そして、電磁弁Vは、常閉型で、通電量に比例してバイパス路Bの開口面積を大きくするように設定されている。
以下に、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Aの作動について説明する。
緩衝器Aの伸長時には、ピストンロッド3がシリンダ1から退出してピストン2が伸側室L1を圧縮する。すると、伸側室L1の液体がハード側減衰要素FH又はバイパス路Bのソフト側減衰要素FSを通って圧側室L2へと移動するとともに、シリンダ1から退出したピストンロッド3体積分の液体がタンクTから圧側室L2へと供給される。伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに対しては、ハード側減衰要素FH又はソフト側減衰要素FSによって抵抗が付与されて、その抵抗に起因する伸側減衰力が発生する。そして、この緩衝器Aの伸長時にハード側減衰要素FHとソフト側減衰要素FSを通過する液体の分配比が電磁弁Vへの通電量に応じて変わる。
具体的には、緩衝器Aの伸長時において、液体は、ハード側減衰要素FHの伸側の第一の減衰要素を構成する伸側のハードリーフバルブ20又はオリフィス22、或いは、ソフト側減衰要素FSの伸側の第二の減衰要素を構成する伸側のソフトリーフバルブ50又はオリフィス52を通過する。このように、伸側の第一、第二の減衰要素は、それぞれオリフィス22,52と、これに並列されるリーフバルブであるハードリーフバルブ20又はソフトリーフバルブ50とを有して構成される。このため、伸側の減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例するオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のピストン速度に比例するバルブ特性となる。
そして、電磁弁Vへ供給する電流量を増やして開度を大きくしていくと、バイパス路Bの流量が増えてソフト側減衰要素FSの伸側の減衰要素を通過する液体の割合が増えるとともに、ハード側減衰要素FHの伸側の減衰要素を通過する液体の割合が減る。ソフト側減衰要素FSの伸側の減衰要素であるオリフィス52は、ハード側減衰要素FHの伸側の減衰要素であるオリフィス22よりも開口面積の大きい大径オリフィスであるので、ソフト側減衰要素FS側へ向かう液体の割合が増えると、減衰係数が低速域と中高速域の両方で大きくなってピストン速度に対して発生する伸側減衰力が小さくなる。そして、電磁弁Vへ供給する電流量を最大にしたときに、電磁弁Vが全開になる。すると、減衰係数が最小になってピストン速度に対して発生する伸側減衰力が最小となる。
また、これとは逆に、電磁弁Vへ供給する電流量を減らして開度を小さくしていくと、バイパス路Bの流量が減ってソフト側減衰要素FSの伸側の減衰要素を通過する液体の割合が減るとともに、ハード側減衰要素FHの伸側の減衰要素を通過する液体の割合が増える。すると、減衰係数が低速域と中高速域の両方で大きくなってピストン速度に対して発生する伸側減衰力が大きくなる。そして、電磁弁Vへの通電を断つと、電磁弁Vが閉じて、全流量がハード側減衰要素FHの伸側の減衰要素を通過するようになる。すると、減衰係数が最大になってピストン速度に対して発生する伸側減衰力が最大となる。
このように、ハード側減衰要素FHとソフト側減衰要素FSの伸側の第一、第二の減衰要素を通過する液体の分配比を電磁弁Vで変えると減衰係数が大小し、図4に示すように、伸側の減衰力特性を示す特性線の傾きが変わる。そして、その特性線の傾きを最大にして発生する減衰力を大きくするハードモードと、傾きを最小にして発生する減衰力を小さくするソフトモードとの間で伸側減衰力が調節される。
また、ソフトモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で小さくなるとともに、ハードモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で大きくなる。このため、減衰力特性がオリフィス特性からバルブ特性へと移行する際の変化がどのモードでも緩やかである。
さらに、ソフト側減衰要素FSの伸側の減衰要素は、オリフィス52と並列に、バルブ剛性の低いリーフバルブであるソフトリーフバルブ50を有している。このため、ハード側減衰要素FHの伸側の減衰要素を構成するリーフバルブとして、バルブ剛性が高く、開弁圧の高いハードリーフバルブを採用し、伸側減衰力を大きくする方向の調整幅を大きくしても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。
反対に、緩衝器Aの収縮時には、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入してピストン2が圧側室L2を圧縮する。すると、圧側室L2の液体がハード側減衰要素FH又はバイパス路Bのソフト側減衰要素FSを通って伸側室L1へと移動するとともに、シリンダ1内へ侵入したピストンロッド3体積分の液体が圧側室L2からタンクTへと排出される。圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れに対しては、ハード側減衰要素FH又はソフト側減衰要素FSによって抵抗が付与されて、その抵抗に起因する圧側減衰力が発生する。そして、この緩衝器Aの収縮時にハード側減衰要素FHとソフト側減衰要素FSを通過する液体の分配比が電磁弁Vへの通電量に応じて変わる。
具体的には、緩衝器Aの伸長時において、液体は、ハード側減衰要素FHの圧側の第一の減衰要素を構成する圧側のハードリーフバルブ21又はオリフィス22、或いは、ソフト側減衰要素FSの圧側の第二の減衰要素を構成する圧側のソフトリーフバルブ51又はオリフィス52を通過する。このように、圧側の第一、第二の減衰要素は、それぞれオリフィス22,52と、これに並列されるリーフバルブであるハードリーフバルブ21又はソフトリーフバルブ51とを有して構成される。このため、圧側の減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例するオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のピストン速度に比例するバルブ特性となる。
そして、緩衝器Aの収縮時においてもハード側減衰要素FHとソフト側減衰要素の圧側の第一、第二の減衰要素を通過する液体の分配比を変えると減衰係数が大小し、伸側の減衰力と同様に、圧側の減衰力特性を示す特性線の傾きが変わる。そして、緩衝器Aの収縮時であっても伸長時と同様に、上記特性線の傾きを最大にして発生する減衰力を大きくするハードモードと、傾きを最小にして発生する減衰力を小さくするソフトモードとの間で圧側減衰力が調整される。
また、伸長時と同様に、収縮時においても、減衰力特性を示す特性線の傾きがソフトモードでは低速域と中高速域の両方で小さくなり、ハードモードでは低速域と中高速域の両方で大きくなるので、減衰力特性がオリフィス特性からバルブ特性へと移行する際の変化がどのモードでも緩やかである。さらに、ソフト側減衰要素FSの圧側の減衰要素も、オリフィス52と並列に、バルブ剛性の低いリーフバルブであるソフトリーフバルブ51を有しているので、ハード側減衰要素FHの圧側の減衰要素を構成するリーフバルブとして、バルブ剛性が高く、開弁圧の高いハードリーフバルブを採用しても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。
以下に、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Aの作用効果について説明する。
本実施の形態に係る緩衝器Aは、シリンダ1と、このシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室L1と圧側室L2とに区画するピストン2と、このピストン2に連結されるとともに一端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、圧側室L2に接続されてシリンダ1内を加圧するタンクTとを備えている。
さらに、上記緩衝器Aは、伸側室L1と圧側室L2との間を移動する液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素FHと、これを迂回して伸側室L1と圧側室L2とを連通するバイパス路Bの開口面積を変更可能な電磁弁Vと、バイパス路Bに電磁弁Vと直列に設けられるソフト側減衰要素FSとを備えている。そして、ハード側減衰要素FHが、オリフィス22と、これに並列に設けられるリーフバルブである伸側と圧側のハードリーフバルブ20,21とを有して構成されている。その一方、ソフト側減衰要素FSが、オリフィス22よりも開口面積の大きいオリフィス(大径オリフィス)52を有して構成されている。
上記構成によれば、シリンダ1内をタンクTで加圧しているので、減衰力の発生応答性を良好にできる。さらに、緩衝器Aの伸縮時に発生する減衰力の特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、オリフィス特有のオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のバルブ特性となる。そして、電磁弁Vでバイパス路Bの開口面積を変更すれば、緩衝器Aの伸縮時に伸側室L1と圧側室L2との間を移動する液体のうち、ハード側減衰要素FHとソフト側減衰要素FSを通過する液体の流量の分配比が変わるので、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方を自由に設定できて、ピストン速度が中高速域にある場合の減衰力の調整幅を大きくできる。
さらに、バイパス路Bの開口面積を変更してソフト側減衰要素FSへ向かう液体の分配比率を大きくするソフトモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が小さくなる。その一方、ソフト側減衰要素FSへ向かう液体の分配比率を小さくするハードモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が大きくなる。このため、減衰力の特性が、低速域でのオリフィス特性から中高速域でのバルブ特性へ変化する際に、その特性線の傾きの変化がどのモードにおいても緩やかになる。これにより、本実施の形態に係る緩衝器Aを車両に搭載した場合には、上記傾きの変化に起因する違和感を軽減し、車両の乗り心地を良好にできる。
また、本実施の形態の緩衝器Aでは、ソフト側減衰要素が上記オリフィス(大径オリフィス)52と、このオリフィス52と並列に設けられるリーフバルブである伸側と圧側のソフトリーフバルブ50,51とを有して構成されている。このように、ソフト側減衰要素FSにもリーフバルブを設けると、ハード側減衰要素FHのリーフバルブであるハードリーフバルブ20,21をバルブ剛性が高く、開弁圧の高いバルブにしても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。つまり、上記構成によれば、ハード側減衰要素のリーフバルブであるハードリーフバルブ20,21として、バルブ剛性の高いバルブを採用できる。そして、そのようにすると、減衰力を大きくする方向へ減衰力の調整幅が大きくなるので、ピストン速度が中高速域にある場合の減衰力の調整幅を一層大きくできる。
また、本実施の形態では、ハード側減衰要素FHのリーフバルブとして、伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側のハードリーフバルブ20と、圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側のハードリーフバルブ21が設けられている。さらに、ソフト側減衰要素FSのリーフバルブとして、バイパス路Bを伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側のソフトリーフバルブ50と、バイパス路Bを圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側のソフトリーフバルブ51が設けられている。これにより、緩衝器Aの伸長時と収縮時の両方で、減衰力を大きくする方向へ減衰力の調整幅が大きくなるので、ピストン速度が中高速域にある場合の伸圧両側の減衰力の調整幅を一層大きくできる。
とはいえ、本実施の形態の緩衝器Aでは、圧側室L2にタンクTが接続されていて、圧側室L2の圧力がタンク圧以上にならないので、圧側減衰力の調整幅を伸側減衰力の調整幅ほど大きくはできない。そこで、図5に示す緩衝器A1のように、ソフト側減衰要素FSの圧側のソフトリーフバルブ51を廃し、ソフト側減衰要素FSの圧側の減衰要素としてオリフィス52のみを設けてもよい。換言すると、ソフト側減衰要素FSのリーフバルブとして、バイパス路Bを伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側のソフトリーフバルブ50のみが設けられていてもよい。
さらに、本実施の形態のタンクT内には、高圧ガスが封入されたガス室Gが形成されており、このガス室Gの圧力でシリンダ1内を加圧している。しかし、タンクTの構成は適宜変更できる。例えば、本実施の形態では、ガス室Gと液室L5とをフリーピストン18で仕切っているが、このフリーピストン18に替えてブラダ、ベローズ等を利用してもよい。また、タンクT内にフリーピストン18を液室L5側へ付勢するコイルばね等の金属製のばねを設け、その付勢力を利用してシリンダ1内を加圧してもよい。
また、本実施の形態では、電磁弁Vは通電量に比例して開度が変化するように設定されている。当該構成によれば、バイパス路Bの開口面積を無段階で変更できる。
また、本実施の形態において、電磁弁Vは、バイパス路Bに接続されるポート6aが形成される筒状のホルダ6と、このホルダ6内に移動可能に挿入されてポート6aを開閉可能なスプール7と、このスプール7の移動方向の一方へスプール7を付勢する付勢ばね8と、この付勢ばね8の付勢力と反対方向の推力をスプール7に与えるソレノイド9とを有する。
ここで、例えば、特開2010−7758号公報に記載の電磁弁のように、弁体として往復動可能なニードルバルブを有し、そのニードルバルブの尖端と弁座との間にできる隙間を大小させて開度を変更する場合、開度の調整幅を大きくするには弁体のストローク量を大きくする必要があるが、そのようにはできない場合がある。
具体的には、ニードルバルブのストローク量を大きくすると、そのニードルバルブの可動スペースが大きくなって収容スペースの確保が難しくなる。また、ニードルバルブのストローク量を大きくするため、ソレノイドのプランジャのストローク量を大きくしようとすると、ソレノイドの設計変更が必要になって煩雑である。さらには、ソレノイドの設計変更をせずにニードルバルブのストローク量を大きくしようとすると、プランジャの移動量に対するニードルバルブの移動量を大きくするための部品が必要になって部品数が増えるとともに収容スペースを確保するのが難しくなる。
これに対して、本実施の形態の電磁弁Vでは、筒状のホルダ6内に往復動可能に挿入されるスプール7で、ホルダ6に形成されたポート6aを開閉し、これにより電磁弁Vが開閉するようになっている。このため、ポート6aをホルダ6の周方向に複数形成したり、周方向に長い形状にしたりすれば、電磁弁Vの弁体であるスプール7のストローク量を大きくしなくても電磁弁Vの開度を大きくできる。よって、電磁弁Vの開度の調整幅を大きくして、減衰力の調整幅を容易に大きくできる。
さらに、上記構成によれば、電磁弁Vの開度と通電量との関係を容易に変更できる。例えば、電磁弁Vの開度と通電量との関係を負の比例定数をもつ負の比例関係にして、通電量が大きくなるほど開度を小さくしたい場合には、非通電時にポート6aが最大限に開く位置にポート6a、又はこのポート6aを開くための環状溝7bを配置すればよい。
また、伸側ソフト通路に通じる伸側ポートと、圧側ソフト通路に通じる圧側ポートを設け、これらを個別に開閉するとしてもよい。このように、電磁弁Vの構成、並びに電磁弁Vの開度と通電量との関係は自由に変更できる。
さらに、図1,5に示す緩衝器A,A1では、伸圧両側の減衰力を発揮するとともに、伸圧両側の減衰力を電磁弁Vで調節できるようになっている。しかし、ハード側減衰要素FHの伸側と圧側のハードリーフバルブ20,21の一方と、ソフト側減衰要素FSの伸側と圧側のソフトリーフバルブ50,51の一方又は両方を省略してもよく、緩衝器A,A1を伸長時と収縮時の何れか一方でのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器にしたり、伸側又は圧側の何れか一方の減衰力のみを電磁弁で調節したりしてもよい。
また、本実施の形態では、スプール7が有底筒状のハウジング4の中心軸Yに沿って移動する。ハウジング4は、その中心軸Yがピストンロッド3の中心を通る中心軸Xに直交する直線Z(図1)に沿うように配置されるので、スプール7がその直線Zに沿って移動するともいえる。
上記構成によれば、緩衝器Aの伸縮方向と直交する方向へスプール7が移動し、その移動方向が車両の振動方向とが一致しない。このため、車両走行時の振動によりスプール7をその移動方向へ加振せずに済む。しかし、スプール7の移動方向は、必ずしもその限りではない。例えば、スプール7がピストンロッド3の中心を通る中心軸Xに対して斜めに移動しても、中心軸Xに沿って移動してもよい。
また、本実施の形態の緩衝器Aは、電磁弁Vと、ソフト側減衰要素FSを収容するハウジング4とを備え、このハウジング4がシリンダ1と一体化されている。ここでいう、シリンダ1とハウジング4が一体化された状態とは、緩衝器Aを単体で取り扱う際にハウジング4がシリンダ1に対して自由に動かないように固定されていて、これらを一つ(一体)の部材の如く取り扱い可能な状態をいう。
上記構成によれば、エンドキャップ11等のハウジング4とシリンダ1とを連結する部分に形成される孔を利用してハウジング4内とシリンダ1内とを連通できる。このため、ハウジング4とシリンダ1とをホースで接続する必要がなく、液体がホースを通過する際の抵抗によって意図しない減衰力が生じるのを防止できる。さらには、ホースを省略できるのでコストを低減できる。
しかし、ハウジング4を含む減衰力調整部Eの取付方法は適宜変更できる。例えば、ハウジング4とシリンダ1とをホースで接続してもよい。また、本実施の形態では、ハウジング4とタンクTとをホースで接続しているが、タンクTとハウジング4を一体化してもよい。そして、このような場合には、ハウジング4、エンドキャップ11、車体側のブラケット12、及びタンクTを一体成形してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。