以下に本発明の実施の形態の緩衝器Dについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。また、本発明の実施の形態に係る緩衝器Dは、鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークに利用されている。以下の説明では、その緩衝器Dを含むフロントフォークが車両に取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。なお、緩衝器Dは、蔵乗型車両以外の車両にも利用できる。
緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、ピストン2に連結されるとともに一端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、ピストンロッド3に設けられて伸側室Laと圧側室Lbとを連通する減衰通路としてのバイパス路3aと、バイパス路3aに設けた減衰力調整バルブVとを備えて構成されている。
なお、本実施の形態では、緩衝器Dは、収縮時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器とされており、減衰力調整バルブVは緩衝器Dの圧側減衰力の調節に利用されている。なお、図示はしないが、緩衝器Dは、鞍乗型車両のステアリングシャフトに連結されるブラケットによって伸長時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器と連結されている。よって、緩衝器Dと伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器は、対を成して鞍乗型車両の前輪を支持するフロントフォークを形成し、協働して鞍乗型車両の車体の振動を抑制する。なお、緩衝器Dは、伸長時にのみ減衰力を発揮するものであってもよいし、伸縮の双方で減衰力を発揮するものであってもよく、減衰力調整バルブVは、減衰力を調節するために利用される。
以下、本発明の一実施の形態の緩衝器Dについて具体的に説明する。図2に示すように、緩衝器Dは、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有して構成されるテレスコピック型のチューブ部材Tを備える。
そして、鞍乗型車両が凹凸のある路面を走行するなどして前輪が上下に振動すると、インナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りしてチューブ部材Tが伸縮する。このように、チューブ部材Tが伸縮することを、緩衝器Dが伸縮するともいう。なお、チューブ部材Tは、正立型になっていて、アウターチューブ10が車軸側チューブ、インナーチューブ11が車体側チューブとなっていてもよい。
つづいて、チューブ部材Tの上端となるアウターチューブ10の上端は、キャップ12で塞がれている。その一方、チューブ部材Tの下端となるインナーチューブ11の下端は、車軸側のブラケットBで塞がれている。さらに、アウターチューブ10とインナーチューブ11の重複部の間にできる筒状の隙間は、アウターチューブ10の下端に装着されてインナーチューブ11の外周に摺接する環状のシール部材13で塞がれている。
このようにしてチューブ部材T内は密閉空間とされており、そのチューブ部材T内に緩衝器本体Sが収容されている。この緩衝器本体Sは、インナーチューブ11内に設けられるシリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、下端がピストン2に連結されるとともに上端がシリンダ1外へと突出してキャップ12に連結されるピストンロッド3とを有している。
キャップ12は、アウターチューブ10に連結されているので、ピストンロッド3はアウターチューブ10に連結されているともいえる。さらに、シリンダ1は、インナーチューブ11に連結されている。このように、緩衝器本体Sは、アウターチューブ10とインナーチューブ11との間に介装されている。
また、シリンダ1の上端には、環状のヘッド部材14が装着されており、このヘッド部材14の内側をピストンロッド3が軸方向へ移動自在に貫通する。ヘッド部材14は、ピストンロッド3を摺動自在に支えており、そのヘッド部材14とキャップ12との間に、コイルばねからなる懸架ばね15が介装されている。
そして、緩衝器Dが伸縮してインナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りすると、ピストンロッド3がシリンダ1に出入りしてピストン2がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
また、緩衝器Dが収縮してピストンロッド3がシリンダ1内へと侵入すると、懸架ばね15が圧縮されて弾性力を発揮して緩衝器Dを伸長方向へ付勢する。このように、懸架ばね15は圧縮量に応じた弾性力を発揮して、車体を弾性支持できるようになっている。
なお、本実施の形態の緩衝器Dは片ロッド型で、ピストンロッド3がピストン2の片側からシリンダ1外へ延びている。しかし、緩衝器Dが両ロッド型になっていて、ピストンロッドがピストンの両側からシリンダ外へ延びていてもよい。さらには、ピストンロッド3がシリンダ1から下方へ突出して車軸側に連結されるとともに、シリンダ1が車体側に連結されていてもよい。また、懸架ばね15は、エアばね等のコイルばね以外のばねであってもよい。
つづいて、シリンダ1内には、作動油等の液体が充填された液室Lが形成されており、この液室Lがピストン2で伸側室Laと圧側室Lbとに区画されている。ここでいう伸側室とは、ピストンで区画された二室のうち、緩衝器の伸長時にピストンで圧縮される方の部屋のことである。その一方、圧側室とは、ピストンで区画された二室のうち、緩衝器の収縮時にピストンで圧縮される方の部屋のことである。
また、シリンダ1外、より詳しくは、緩衝器本体Sとチューブ部材Tとの間の空間は液溜室Rとされている。この液溜室Rには、シリンダ1内の液体と同じ液体が貯留されるとともに、その液面上側にエア等の気体の封入されたガス室Gが形成されている。このように、チューブ部材Tは、シリンダ1内の液体とは別に、液体を貯留するタンク16の外殻として機能する。
そのタンク16内となる液溜室Rは、伸側室Laと連通されており、伸側室Laの圧力がタンク16内(液溜室R)の圧力と常に略同圧(タンク圧)となる。さらに、液溜室Rは、シリンダ1の下端に固定されたバルブケース4で圧側室Lbと仕切られている。このバルブケース4には、圧側室Lbと液溜室Rとを連通する吸込通路4aが形成されるとともに、この吸込通路4aを開閉する吸込バルブ40が装着されている。
その吸込バルブ40は、伸側チェックバルブであり、緩衝器Dの伸長時に吸込通路4aを開いて、その吸込通路4aを液溜室Rから圧側室Lbへと向かう液体の流れを許容するが、緩衝器Dの収縮時には吸込通路4aを閉塞した状態に維持される。なお、本実施の形態の吸込バルブ40は、リーフバルブであるが、ポペットバルブ等であってもよい。
また、ピストン2には、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する伸側通路2aと圧側通路2bが形成されるとともに、伸側通路2aを開閉する伸側チェックバルブ20と、圧側通路2bを圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21が装着されている。
ハード側減衰要素21は、ピストン2の上側に積層されるリーフバルブ21aと、このリーフバルブ21aと並列に設けられるオリフィス21bとを有して構成されている。
リーフバルブ21aは、金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有し、外周側(または内周側)の撓みを許容された状態でピストン2に装着されている。そして、圧側室Lbの圧力が、リーフバルブ21aの外周部を上側へ撓ませる方向へ作用するようになっている。また、オリフィス21bは、ピストン2Rの弁座(符示せず)に離着座するリーフバルブ21aの外周部に設けられた切欠きで形成されているが、前記弁座に設けられた打刻等によって形成されてもよい。
圧側室Lbは、緩衝器Dの収縮時にピストン2で圧縮されてその内圧が上昇し、伸側室Laの圧力よりも高くなる。このような緩衝器Dの収縮時にピストン速度が低速域にあり、圧側室Lbと伸側室Laとの差圧がリーフバルブ21aの開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス21bを通って圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。また、上記差圧が大きくなってリーフバルブ21aの開弁圧以上になると、リーフバルブ21aの外周部が撓んで、液体がその外周部とピストン2との間にできる隙間を通って圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
このように、オリフィス21bと、このオリフィス21bと並列されるリーフバルブ21aとを有して構成されるハード側減衰要素21は、緩衝器Dの収縮時に圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第一の減衰要素である。そして、この圧側のハード側減衰要素21による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス21bに起因し、中高速域にある場合にはリーフバルブ21aに起因する。
その一方、伸側チェックバルブ20は、緩衝器Dの伸長時に伸側通路2aを開いて、その伸側通路2aを伸側室Laから圧側室Lbへと向かう液体の流れを許容するが、緩衝器Dの収縮時には伸側通路2aを閉塞した状態に維持される。なお、本実施の形態の伸側チェックバルブ20は、リーフバルブであるが、ポペットバルブ等であってもよい。さらには、シリンダ1内での液体の吸込不足が生じなければ、伸側通路2aと伸側チェックバルブ20を省略してもよい。
つづいて、ピストンロッド3には、ハード側減衰要素21を通過する液体の流量を変更するため、ハード側減衰要素21を迂回して伸側室Laと圧側室Lbとを連通するバイパス路3aの途中に設けられた流路面積を変更可能な減衰力調整バルブVと、バイパス路3aの途中に減衰力調整バルブVと直列に設けられるソフト側減衰要素50とが設けられている。
より詳しくは、図2に示すように、ピストンロッド3は、減衰力調整バルブVが挿入される筒状のヨーク31と、ヨーク31の先端となる図2中下端の開口部の内周に装着されるピストン保持部材30と、ヨーク31の末端側に連なってシリンダ1外へと延びる筒状のロッド本体32とを有する。ピストン保持部材30は、有底筒状のハウジング部30aと、このハウジング部30aの底部分から下方へ突出するピストン取付軸30bとを含み、このピストン取付軸30bの外周に環状のピストン2がハード側減衰要素21ともにナットNで固定されている。
ピストン保持部材30におけるハウジング部30aの筒部分の内周には、その内側を上室30cと下室30dとに仕切るバルブケース5が固定されている。そのバルブケース5には、上室30cと下室30dを連通する通路5aが形成されており、その通路5aにソフト側減衰要素50が設けられている。さらに、ピストン保持部材30のピストン取付軸30bには、図2中下端である先端から開口して、圧側室Lbを上室30cおよび下室30dを介して減衰力調整バルブVへ連通する縦孔30eが設けられている。ピストン取付軸30bの先端外周には、ナットNが螺着される螺子部30fが設けられている。さらに、ピストン取付軸30bには、その側方であって螺子部30fよりも図2中上方から開口して縦孔30eに連通する横孔30gが設けられている。ピストン取付軸30bの外周には、リーフバルブ21a、ピストン2、伸側チェックバルブ20および筒状のカラー19が装着されており、これらリーフバルブ21a、ピストン2、伸側チェックバルブ20および筒状のカラー19は、螺子部30fに螺着されるナットNとハウジング部30aとによって挟持されてピストン取付軸30bに固定される。
リーフバルブ21aは、ピストン取付軸30bに内周が固定されて外周の撓みが許容されており、圧側通路2bを開閉し、伸側チェックバルブ20は、ピストン取付軸30bの外周で軸方向にスライドして伸側通路2aを開閉する。
また、カラー19は、筒状であって、ピストン取付軸30bの外径よりも内径が大径な筒部19aと、筒部19aの図2中で下端内周に設けられてピストン取付軸30bの外周に嵌合するフランジ部19bと、筒部19aに設けられて筒部19aの内外を連通する複数の孔19cとを備えている。そして、カラー19は、ピストン取付軸30bの外周に前述のように取り付けられると、筒部19aが径方向にて横孔30gに対向して、ピストン取付軸30bの横孔30gが孔19cを介して圧側室Lbに連通される。
なお、カラー19の孔19cの全部の流路面積は、横孔30gの全部の流路面積以上に設定されており、この条件を満たせば、孔19cの設置数は任意に設定できる。また、縦孔30eと横孔30gの合計の流路面積は、全開状態の減衰力調整バルブVの流路面積以上となっていればよく、横孔30gの設置数は任意である。また、横孔30gの形状は任意であり、たとえば、ピストン取付軸30bの周方向に沿う長孔等とされてもよい。
つづいて、ヨーク31は、ロッド本体32の先端外周から外周方向へ突出するフランジ部31aと、フランジ部31aから垂下されて減衰力調整バルブVが挿入される収容筒31bと、収容筒31bの側方から開口して内部に通じる複数の透孔31cと、収容筒31bの外周であって反ピストン側端から延びて各透孔31cに通じる複数の溝31dとを備えて構成されている。よって、ヨーク31の外周であって反ピストン側端から各透孔31cにかけて複数の軸方向に延びる溝31dが設けられている。
また、ヨーク31の下端の内周である収容筒31bの内周には、ハウジング部30aの上端内周に螺着する螺子部31eが設けられており、ヨーク31にピストン保持部材30が螺子締結によって装着されている。なお、ヨーク31とピストン保持部材30の締結は、溶接、圧入その他の螺子締結以外の締結方法を採用してもよい。このように、透孔31cによって伸側室Laとヨーク31の内側が連通されており、透孔31cと上室30cとをつなぐ通路の途中に減衰力調整バルブVが設けられている。なお、ヨーク31は、減衰力調整バルブVの全体を収容してもよいし、一部を収容するものであってもよい。
また、減衰力調整バルブVとソフト側減衰要素50を収容するヨーク31およびピストン保持部材30の外径は、シリンダ1の内径よりも小さく、これらで伸側室Laを仕切らないように配慮されている。
なお、透孔31cは、ヨーク31の周方向に沿って等間隔に六個設けられているが、透孔31cの全部の流路面積と、ヨーク31とシリンダ1との間のうち透孔31cが設けられる位置よりも図2中上方の反ピストン側の部位における環状隙間Xの流路面積は、全開状態の減衰力調整バルブVの流路面積以上となっていればよく、透孔31cと溝31dの設置数は任意である。また、透孔31cの形状は任意であり、ヨーク31の週方向に沿う長孔等とされてもよい。また、本実施の形態では、溝31dは、透孔31c毎に対応させて六個設けられているが、一つの溝31dが複数の透孔31cに連通されてよい。
また、溝31dは、本実施の形態では、ヨーク31の外周に軸方向に沿って設けられており、溝31dの長さはヨーク31の反ピストン側端から透孔31cまでを接続する上で最短となる。よって、溝31dがヨーク31の軸方向に対して斜めに形成されたり蛇行したりする場合に比較して、液体が溝31dを通過する際の抵抗が最少となるように配慮されている。
本実施の形態では、バイパス路3aは、前述のヨーク31またはピストン保持部材30に形成された透孔31c、上室30c、下室30d、縦孔30eよび横孔30gを有して構成されており、ハード側減衰要素21を迂回して伸側室Laと圧側室Lbとを連通している。そして、このバイパス路3aの途中に減衰力調整バルブVとソフト側減衰要素50が直列に設けられている。
ソフト側減衰要素50は、バルブケース5の上側に積層されるリーフバルブ50aと、このリーフバルブ50aと並列に設けられるオリフィス50bとを有して構成されている。
リーフバルブ50aは、金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有し、外周側(または内周側)の撓みを許容された状態でバルブケース5に装着される。そして、下室30dの圧力が、リーフバルブ50aの外周部を上側へ撓ませる方向へ作用するようになっている。また、オリフィス50bは、バルブケース5Rの弁座に離着座するリーフバルブ50aの外周部に設けられた切欠きで形成されているが、前記弁座に設けられた打刻等によって形成されてもよい。
下室30dの圧力は、緩衝器Dの収縮時であって減衰力調整バルブVがバイパス路3aを開いているときに上室30cの圧力よりも高くなる。そして、このような緩衝器Dの収縮時にピストン速度が低速域にあり、上室30cと下室30dの差圧がリーフバルブ50aの開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス50bを通って下室30dから上室30c、即ち、圧側室Lbから伸側室Laへ向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。また、上記差圧が大きくなってリーフバルブ50aの開弁圧以上になると、リーフバルブ50aの外周部が撓んで、液体がその外周部とバルブケース5との間にできる隙間を通って下室30dから上室30c、即ち、圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
このように、オリフィス50bと、このオリフィス50bと並列されるリーフバルブ50aとを有して構成されるソフト側減衰要素50は、緩衝器Dの収縮時に圧側バイパス路3aを圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第二の減衰要素である。そして、このソフト側減衰要素50による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス50bに起因し、中高速域にある場合にはリーフバルブ50aに起因する。
また、ソフト側減衰要素50のリーフバルブ50aは、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aと比較してバルブ剛性の低い(撓みやすい)バルブであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。換言すると、液体は、同一条件下において、リーフバルブ21aよりもリーフバルブ50aの方を通過しやすい。また、ソフト側減衰要素50のオリフィス50bは、ハード側減衰要素21のオリフィス21bよりも開口面積が大きい大径オリフィスであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。
つづいて、減衰力調整バルブVは、図2に示すように、ピストンロッド3内に固定される筒状のホルダ6内に往復動可能に挿入される減衰力調整部としての筒状のスプール7と、スプール7を軸方向に駆動するソレノイド9と、ソレノイド9の推力に対向してスプール7を付勢する付勢ばね8とを備えて構成されている。そして、減衰力調整バルブVは、ホルダ6内におけるスプール7の位置を調節して開度を大小調節する。
より具体的には、ホルダ6は、ピストンロッド3内のバルブケース5よりも上側に、軸方向の一端を上側(ヨーク31側)へ、他端を下側(バルブケース5側)へ向けた状態で、ピストンロッド3の中心軸に沿って配置されている。さらに、ホルダ6には、軸方向にずれた位置に設けられて径方向に貫通する複数のポート6a,6bが形成されている。ポート6aは、ホルダ6に対して周方向に沿って等間隔に設けられた四つの長孔6a1,6a2で構成されている。なお、図2は断面図となっているので、紙面の手前側と奥側の長孔が図示されていない。ポート6bは、図2中で、ホルダ6に対してポート6aよりも下方にずれた位置に配置されて周方向に沿って等間隔に設けられた四つの長孔6b1,6b2で構成されている。なお、図2は断面図となっているので、紙面の手前側と奥側の長孔が図示されていない。このようにホルダ6には、軸方向にずれた位置に複数のポート6a,6bを備えている。ポート6a,6bは、ヨーク31の透孔31cを介して伸側室Laに連通されており、スプール7で開閉される。また、ホルダ6は、図2中下端に、ピストン保持部材30のハウジング部30aの内周に嵌合するフランジ部6dを備えている。
スプール7は、筒状で、ホルダ6内に摺動自在に挿入されており、図2中上下方向に往復動可能とされている。より詳細には、スプール7は、ポート6aに対応してポート6aに対向可能な連通ポート7aと、ポート6bに対応してポート6bに対向可能な連通ポート7bとを備えている。連通ポート7a,7bは、スプール7に対してスプール7の移動方向である軸方向にずれた位置に配置されており、具体的には、ポート6a,6bのホルダ6に対する軸方向配置と同じ配置でスプール7に設けられている。つまり、連通ポート7a,7bの軸方向の間隔は、ポート6a,6bの軸方向の間隔と等しく、ポート6aが対応する連通ポート7aに連通すると、ポート6bと連通ポート7bも連通する。よって、任意のポート6a(6b)が対応する連通ポート7a(7b)に連通されると、全ポート6a,7bがそれぞれ対応する連通ポート7a,7bに連通する。また、連通ポート7aは、スプール7に対して周方向に沿って等間隔に設けられた四つの長孔7a1,7a2,7a3で構成されている。なお、図2は断面図となっているので、手前側の長孔が図示されていない。連通ポート7bは、図2中で、スプール7に対して連通ポート7aよりも下方にずれた位置に配置されて周方向に沿って等間隔に設けられた四つの長孔7b1,7b2,7b3で構成されている。なお、図2は断面図となっているので、手前側の長孔が図示されていない。「各ポート6a,6bのそれぞれに対応する連通ポート7a,7b」との表現は、各ポート6a,6bのそれぞれ対して一対一で各連通ポート7a,7bが対応しており、ポート6aに連通ポート7aが、ポート6bに連通ポート7bが、それぞれ対応していることを意味してする。
また、スプール7の外周には、周方向に沿って設けられて全連通ポート7aが連通される環状溝7cと、周方向に沿って設けられて全連通ポート7bが連通される環状溝7dとを備えている。本実施の形態では、環状溝7cは、連通ポート7aに正対していて、その上下方向幅が連通ポート7aの図2中上下方向幅に一致し、環状溝7dは、連通ポート7bに正対していて、その図2中上下方向幅は、連通ポート7bの図2中上下方向幅に一致している。そして、環状溝7cと環状溝7dのスプール7の軸方向における間隔は、ポート6a,6bの軸方向における間隔に等しい。
このように構成されたスプール7は、ホルダ6内に挿入されると、ホルダ6に設けられたポート6a,6bを開閉する。具体的には、スプール7の外周に設けた環状溝7cが対応するポート6aに対向するとともに、スプール7の外周に設けた環状溝7dが対応するポート6bに対向する状態では、スプール7は、ポート6a,6bを連通ポート7a,7bを介してスプール7内に連通させる。ポート6a,6bは、ヨーク31に設けた透孔31cを通じて伸側室Laに連通されている。他方、スプール7内は、上室30c、バルブケース5に設けた通路5a、下室30dおよび縦孔30eを介して圧側室Lbに連通されている。よって、バイパス路3aの途中に減衰力調整バルブVが設けられており、ポート6a,6bがスプール7内に連通すると減衰力調整バルブVが開弁してバイパス路3aが開放され、バイパス路3aを通じて伸側室Laと圧側室Lbとが連通される。
そして、ホルダ6に対してスプール7が移動すると、ポート6aが環状溝7cに対向する面積およびポート6bが環状溝7dに対向する面積が変化するので、スプール7のホルダ6に対する軸方向位置に応じて流路面積を変更できる。スプール7がホルダ6に対して図2中下方に移動してポート6a,6bがそれぞれ環状溝7c,7dに完全に対向しなくなってスプール7の外周で閉塞されると、ポート6a,6bと対応する連通ポート7a,7bとの連通が絶たれてバイパス路3aが遮断される。スプール7が図2中に示した位置からホルダ6に対して下方へ移動して、環状溝7cがポート6aに対向し始めると同時に環状溝7dもポート6bに対向し始める。また、環状溝7cとポート6aとが対向するとともに環状溝7dとポート6bとが対向している状態から、スプール7がホルダ6に対して上方へ移動して、環状溝7cがポート6aに対向しなくなると同時に環状溝7dもポート6bに対向しなくなる。このように、スプール7がホルダ6に対して軸方向に移動すると、ポート6aとポート6bの開放度合が変化して減衰力調整バルブVの流路面積が大小変化する。
また、スプール7の上端にはプレート70が積層されており、そのプレート70にソレノイド9の後述するプランジャ9aが当接している。その一方、スプール7の下端には、付勢ばね8が当接し、スプール7を移動方向の一方である図2中上方へ向けて付勢している。付勢ばね8は、外周に対して内周が図2中上下方向に変位すると内周を元の位置へ戻す付勢力を発揮する螺旋形状をしたばねとされている。付勢ばね8は、外周がホルダ6の付勢ばね8の下方であってピストン保持部材30のハウジング部30aの内周に嵌合される筒状のスペーサ22とホルダ6のフランジ部6dとにより挟持されてピストンロッド3に固定されている。そして、付勢ばね8の内周はスプール7の図2中下端外周に設けた環状凹部7eに嵌合しており、付勢ばね8は、ホルダ6に対してスプール7を図2中上方となる移動方向の一方へ向けて付勢しており、スプール7がホルダ6に対して図2中下方へ変位するとスプール7を元の位置へ戻す付勢力を発揮する。スプール7は、付勢ばね8の付勢力によって附勢される一方、ソレノイド9から付勢ばね8の付勢力に対向する推力を受けない状態では、図2に示すように、最も上方に位置決めされて環状溝7c,7dをポート6a,6bに対向させない。よって、減衰力調整バルブVは、非通電時には、バイパス路3aを遮断する。
また、減衰力調整バルブVのソレノイド9は、ヨーク31内に収容されており、詳しくは図示しないが、コイルを含む筒状のステータと、このステータ内に移動自在に挿入される筒状の可動鉄心と、可動鉄心の内周に装着されて先端がプレート70に当接するプランジャ9aとを有している。このソレノイド9に電力供給するハーネス90は、ロッド本体32の内側を通って外方へ突出し、電源に接続されている。
そして、そのハーネス90を通じてソレノイド9へ通電すると、可動鉄心が下側へ引き寄せられてプランジャ9aが下向きに移動し、スプール7が付勢ばね8の付勢力に抗して押し下げられる。すると、環状溝7cを介してポート6aと連通ポート7aが連通するとともに環状溝7dを介してポート6bと連通ポート7bが連通するようになって減衰力調整バルブVが開く。また、その減衰力調整バルブVの開度とソレノイド9への通電量との関係は正の比例定数をもつ比例関係となり、通電量を増やすほど開度が大きくなる。さらに、ソレノイド9への通電を断つと減衰力調整バルブVが閉じる。
このように、本実施の形態の減衰力調整バルブVは、常閉型で、その弁体となるスプール7を付勢ばね8で閉方向へ付勢するとともに、ソレノイド9で開方向の推力をスプール7に与えるようになっている。また、減衰力調整バルブVの通電量に比例して開度が大きくなり、その開度の増加に伴いバイパス路3aの流路面積が大きくなる。よって、減衰力調整バルブVへの通電量に比例してバイパス路3aの流路面積が大きくなるともいえる。
つづいて、本実施の形態の緩衝器Dは、ハード側減衰要素21の流量を手動で調節するための手動バルブ41が設けられている。手動バルブ41は、図1に示すように、緩衝器Dのボトム部分に設けられており、圧側室Lbと液溜室Rとを連通する排出通路4bの流路面積を手動操作によって変更できる。
この手動バルブ41は、排出通路4bの途中に設けられた環状の弁座(符示せず)に離着座するニードル状の弁体41aを含む。そして、手動バルブ41を回転操作すると、その回転方向により弁体41aが弁座に遠近して排出通路4bの流路面積が大小調節される。本実施の形態では、減衰力調整バルブVへの通電が正常になされる正常時には、弁体41aを弁座に着座させ、手動バルブ41で排出通路4bの連通を遮断した状態とする。
以上をまとめると、緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、先端がピストン2に連結されるとともに末端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、シリンダ1内の伸側室Laに接続されるタンク16とを備え、伸側室Laの圧力がタンク圧となっている。
さらに、緩衝器Dには、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する通路として、伸側通路2a、圧側通路2b、およびバイパス路3aが設けられている。伸側通路2aには、伸側室Laから圧側室Lbへ向かう液体の一方向流れのみを許容する伸側チェックバルブ20が設けられており、圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体は、圧側通路2bまたはバイパス路3aを通るようになっている。
そして、圧側通路2bには、オリフィス21bと、これに並列されるリーフバルブ21aを有して構成されていて、液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21が設けられている。その一方、バイパス路3aには、オリフィス21bより開口面積の大きいオリフィス50bと、これに並列されるリーフバルブ21aよりもバルブ剛性の低いリーフバルブ50aを有して構成されていて、液体の流れに与える抵抗を小さくしたソフト側減衰要素50が設けられている。
さらに、そのバイパス路3aには、ソフト側減衰要素50と直列に減衰力調整バルブVが設けられており、その減衰力調整バルブVへの通電量の調節によりバイパス路3aの流路面積を変更できるようになっている。そして、減衰力調整バルブVは、常閉型で、通電量に比例してバイパス路3aの流路面積を大きくするように設定されている。
また、緩衝器Dには、圧側室Lbとタンク16とを連通する通路として、吸込通路4aと排出通路4bが設けられている。吸込通路4aには、タンク16から圧側室Lbへ向かう液体の一方向流れのみを許容する吸込バルブ40が設けられている。その一方、排出通路4bには、手動操作により開閉される常閉型の手動バルブ41が設けられている。
緩衝器Dは、以上のように構成されており、緩衝器Dの収縮時には、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入してピストン2が圧側室Lbを圧縮する。正常時には手動バルブ41が排出通路4bを閉じている。このため、緩衝器Dの収縮時には、圧側室Lbの液体が圧側通路2bまたはバイパス路3aを通って伸側室Laへと移動する。当該液体の流れに対しては、ハード側減衰要素21またはソフト側減衰要素50によって抵抗が付与されて、その抵抗に起因する圧側減衰力が発生する。
また、正常時における緩衝器Dの収縮時に、ハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50を通過する液体の分配比は、バイパス路3aの流路面積に応じて変わり、これにより減衰係数が大小して発生する圧側減衰力が大小調節される。
具体的には、前述のように、ハード側減衰要素21およびソフト側減衰要素50は、それぞれオリフィス21b,50bと、これに並列されるリーフバルブ21a,50aとを有して構成されている。このため、減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例するオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のピストン速度に比例するバルブ特性となる。
そして、減衰力調整バルブVへの通電量を増やして開度を大きくすると、バイパス路3aの流量が増えてハード側減衰要素21を通過する液体の割合が減るとともに、ソフト側減衰要素50を通過する液体の割合が増える。ソフト側減衰要素50のオリフィス50bは、ハード側減衰要素21のオリフィス21bよりも開口面積の大きい大径オリフィスであるので、ソフト側減衰要素50側へ向かう液体の割合が増えるソフトモードでは、減衰係数が低速域と中高速域の両方で小さくなってピストン速度に対して発生する圧側減衰力が小さくなる。そして、減衰力調整バルブVへ供給する電流量を最大にしたときに、減衰係数が最小になってピストン速度に対して発生する圧側減衰力が最小となる。
これとは逆に、減衰力調整バルブVへの通電量を減らして開度を小さくすると、バイパス路3aの流量が減ってハード側減衰要素21を通過する液体の割合が増えるとともに、ソフト側減衰要素50を通過する液体の割合が減る。すると、減衰係数が大きくなってピストン速度に対する圧側減衰力が大きくなる。そして、減衰力調整バルブVへの通電を断って減衰力調整バルブVを閉じるとバイパス路3aの連通が遮断されるので、全流量がハード側減衰要素21を通過するようになる。すると、減衰係数が最大になって、ピストン速度に対して発生する圧側減衰力が最大となる。
このように、第一、第二の減衰要素であるハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50を通過する液体の分配比を減衰力調整バルブVで変えると減衰係数が大小し、図3に示すように、圧側の減衰力特性を示す特性線の傾きが変わる。そして、その特性線の傾きを最大にして発生する減衰力を大きくするハードモードと、傾きを最小にして発生する減衰力を小さくするソフトモードとの間で圧側減衰力が調節される。
そして、ソフトモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で小さくなるとともに、ハードモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で大きくなる。このため、減衰力特性がオリフィス特性からバルブ特性へと移行する際の変化がどのモードでも緩やかである。
さらに、ソフト側減衰要素50は、オリフィス50bと並列に、バルブ剛性の低いリーフバルブ50aを有している。このため、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aとしてバルブ剛性が高く、開弁圧の高いバルブを採用し、圧側減衰力を大きくする方向の調整幅を大きくしても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。
また、フェール時(非正常時)には、減衰力調整バルブVへの通電が断たれてハードモードに切り替わる。このとき、手動バルブ41を開けば、圧側室Lbの液体が圧側通路2bのみならず排出通路4bをも通過するようになるので、ハード側減衰要素21を通過する液体の流量が減って発生する圧側減衰力が低減される。
また、緩衝器Dの収縮時にシリンダ1内に侵入したピストンロッド3体積分の液体は、伸側室Laからタンク16へと排出される。
反対に、緩衝器Dの伸長時には、伸側チェックバルブ20が開き、伸側室Laの液体が伸側通路2aを通って圧側室Lbへと移動する。このとき、液体は伸側チェックバルブ20を比較的抵抗なく通過できる。さらに、伸側室Laは、タンク16と連通されていてタンク圧に維持される。よって、緩衝器Dは、伸長側の減衰力を発揮しない。なお、前述したように、緩衝器Dは、伸長時にのみ減衰力を発生する緩衝器と対を成してフロントフォークを構成しているので、前輪と車体が離間する場合には伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器が車体の振動を抑制する。
以下に、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。本実施の形態に係る緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、ピストン2に連結されるとともに一端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、ピストンロッド3に設けられて伸側室Laと圧側室Lbとを連通するバイパス路(減衰通路)3aと、バイパス路(減衰通路)3aに設けた減衰力調整バルブVとを備え、減衰力調整バルブVは、バイパス路(減衰通路)3aに設けられるスプール(減衰力調整部)7と、スプール(減衰力調整部)Vを駆動して流路抵抗を調節するソレノイド9とを有し、ピストンロッド3は、内方に減衰力調整バルブVが挿入される筒状のヨーク31と、ヨーク31の内周に装着されてピストン2を保持するピストン保持部材30とを有し、ヨーク31は、側方から開口して内部に通じてバイパス路(減衰通路)3aの一部を成す複数の透孔31cと、外周に設けられて反ピストン側端から延びて透孔31cに通じる溝31dとを有している。
このように構成された緩衝器Dでは、減衰力調整バルブVが挿入されてシリンダ1との間の環状隙間が一番狭くなるヨーク31の外周に透孔31cと溝31dが形成されるので、シリンダ1とヨーク31との環状隙間Xの流路面積が拡大される。この緩衝器Dでは、ピストンロッド3内にソレノイド9を備えた減衰力調整バルブVを収容しても環状隙間Xにおける流路抵抗を低減でき、最小の減衰力が環状隙間Xの流路抵抗で決まってしまう問題を解消でき、減衰力調整バルブVにより最小の減衰力を調整できる。よって、本発明の緩衝器Dによれば、ソレノイドを利用した減衰力調整バルブを備えていても、減衰力調整幅を大きくできるとともにフルソフト時の減衰力も低くできる。
また、本実施の形態では、溝31dは、ヨーク31の外周に軸方向に沿って設けられている。このように構成された緩衝器Dによれば、溝31dの長さがヨーク31の反ピストン側端から透孔31cまでを接続する上で最短となって、液体が溝31dを通過する際の抵抗が最少となるので、より一層フルソフト時の減衰力を低減でき車両における乗心地を向上できる。
本実施の形態の緩衝器Dにおける減衰力調整バルブVは、筒状であって内外を連通する複数のポート6a,6bを有するホルダ6と、筒状であってホルダ6内に軸方向に往復動可能に挿入されるとともに各ポート6a,6bのそれぞれに対応して対向可能な連通ポート7a,7bを開閉可能なスプール7と、スプール7を軸方向へ駆動するソレノイド9とを備え、各ポート6a,6bは、ホルダ6に対して軸方向にずれた位置に設けられ、各連通ポート7a,7bは、各ポート6a,6bの軸方向における配置と同じ配置でスプール7に対して軸方向にずれた位置に設けられている。
このように構成された緩衝器Dによれば、ホルダ6とスプール7にそれぞれスプール7の移動方向である軸方向へずれて、かつ、同一配置で複数のポート6a,6bと連通ポート7a,7bが設けられており、各ポート6a,6bと各連通ポート7a,7bを同時に対向させ得る。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、ホルダ6に対してスプール7のストローク量を小さくしても全開時に大きな流路面積を確保できる。なお、本実施の形態では、軸方向にずれた位置に二つのポート6a,6bと二つの連通ポート7a,7bを設けているが、三つ以上のポートと連通ポートを設けてもよい。
また、本実施の形態では、ポート6a,6bは、それぞれホルダ6の周方向に沿って設けた長孔6a1,6a2,6a3,6b1,6b2,6b3で構成されており、ポート6a自体の流路面積も大きく確保できる。
なお、ポート6a,6bは、ホルダ6の強度低下を招かないのであれば、一つの長孔で形成されてもよいが、複数の長孔で形成されるとホルダ6の剛性を確保しつつ、流路面積を大きくできるという利点がある。連通ポート7a,7bについても同様に、スプール7の強度低下を招かないのであれば、一つの長孔で形成されてもよいが、複数の長孔で形成されるとスプール7の剛性を確保しつつ、流路面積を大きくできるという利点がある。
そして、このように構成された緩衝器Dでは、減衰力調整バルブVのストローク量を小さくしても全開時の流路面積を大きく確保できるので、減衰力調整バルブが大型化せず緩衝器Dに組み込んでも緩衝器Dのストローク長を犠牲にすることなく、バイパス路3aを通過する液体の抵抗を極小さくできる。よって、本発明の緩衝器Dによれば、ストローク長を確保しつつも大きな減衰力調整幅を実現できる。
また、本実施の形態に係る緩衝器Dにおけるバイパス路(減衰通路)3aは、ピストンロッド3の先端から開口して圧側室Lbを減衰力調整バルブVへ連通する縦孔30eと、ピストンロッド3の側方から開口して圧側室Lbを縦孔30eへ連通する横孔30gとを含んで形成されている。
このように構成された緩衝器Dでは、ピストンロッド3に減衰力調整バルブVに通じるバイパス路(減衰通路)3aを設ける上で、流路面積が一番狭くなる縦孔30eに加えて、横孔30gを設けたので、バイパス路(減衰通路)3aにおける流路面積が拡大される。この緩衝器Dでは、ピストンロッド3内にソレノイド9を備えた減衰力調整バルブVを収容してもバイパス路(減衰通路)3aにおける流路抵抗を低減でき、最小の減衰力がピストンロッド3に設けられる縦孔30eの流路抵抗で決まってしまう問題を解消でき、減衰力調整バルブVにより最小の減衰力を調整できる。よって、本発明の緩衝器Dによれば、ソレノイドを利用した減衰力調整バルブを備えていても、減衰力調整幅を大きくできるとともにフルソフト時の減衰力も低くできる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストンロッド3が外周にピストン2が装着されるとともにピストン2を固定するナットNが螺着されるピストン取付軸30bを有し、筒状であって内外を連通する孔19cを有してピストン取付軸30bの外周に配置されるとともにピストン2とナットNとの間に介装されるカラー19を備え、横孔30gがピストン取付軸30bのカラー19に対向する位置に開口している。このように構成された緩衝器Dでは、ピストン取付軸30bにピストン2およびナットNを装着しても、ピストン取付軸30bに設けた横孔30gをカラー19に設けた孔19cよって圧側室Lbに連通させ得る。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、簡素な形状のカラー19を設けるだけで横孔30gを圧側室Lbに連通させ得るので、ピストン2やナットNに加工を施して複雑な形状の孔を設けて横孔30gを圧側室Lbに連通させる必要が無くなり、製造コストが安価となる。
さらに、本実施の形態では、上記緩衝器Dは、圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21と、このハード側減衰要素21を迂回して圧側室Lbと伸側室Laとを連通するバイパス路3aの流路面積を変更可能な減衰力調整バルブVと、バイパス路3aに減衰力調整バルブVと直列に設けられるソフト側減衰要素50とを備えている。そして、ハード側減衰要素21がオリフィス21bと、このオリフィス21bと並列に設けられるリーフバルブ21aとを有して構成されている。その一方、ソフト側減衰要素50は、オリフィス21bよりも開口面積の大きいオリフィス(大径オリフィス)50bを有して構成されている。
上記構成によれば、緩衝器Dの収縮時に発生する減衰力の特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、オリフィス特有のオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のバルブ特性となる。そして、電磁弁Vでバイパス路3aの開口面積を変更すれば、緩衝器Dの収縮時に圧側室Lbから伸側室Laへと移動する液体のうち、ハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50のそれぞれを通過する流量の分配比が変わるので、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方を自由に設定できて、ピストン速度が中高速域にある場合の圧側減衰力の調整幅を大きくできる。
さらに、バイパス路3aの開口面積を大きくするソフトモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が小さくなる。その一方、バイパス路3aの開口面積を小さくするハードモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が大きくなる。このため、圧側減衰力の特性が、低速域でのオリフィス特性から中高速域でのバルブ特性に変化する際に、その特性線の傾きの変化をどのモードにおいても緩やかになる。これにより、本実施の形態に係る緩衝器Dを車両に搭載した場合には、上記傾きの変化に起因する違和感を軽減し、車両の乗り心地を良好にできる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ソフト側減衰要素50が前記オリフィス(大径オリフィス)50bと、このオリフィス50bと並列に設けられるリーフバルブ50aを有して構成されている。このように、ソフト側減衰要素50にもリーフバルブ50aを設けると、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aをバルブ剛性が高く、開弁圧の高いバルブにしても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。つまり、上記構成によれば、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aとしてバルブ剛性の高いバルブを採用できる。そして、そのようにすると、圧側減衰力を大きくする方向へ減衰力の調整幅が大きくなるので、ピストン速度が中高速域にある場合の圧側減衰力の調整幅を一層大きくできる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストン2がピストンロッド3の他端に連結されて片ロッド型になっている。さらに、緩衝器Dは、伸側室Laに接続されるタンク16と、このタンク16から圧側室Lbへ向かう液体の流れのみを許容する吸込バルブ40とを備えている。当該構成によれば、シリンダ1に出入りするピストンロッド3の体積分をタンク16で補償できる。さらには、緩衝器Dを圧縮行程でのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器にできる。
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、減衰力調整バルブVは、通電量に比例して開度が変化するように設定されている。当該構成によれば、バイパス路3aの開口面積を無段階で変更できる。
また、本実施の形態の緩衝器Dは、圧側室Lbとタンク16とを連通する排出通路4bの流路面積を手動操作によって変更可能な手動バルブ41を備えている。当該構成によれば、フェール時に減衰力調整バルブVを閉じるようにしても、手動バルブ41を手動で開けば発生する圧側減衰力が低減される。このため、フェールモードでの圧側減衰力が過大になるのを防止でき、車両の乗り心地を良好にできる。
なお、本実施の形態では、緩衝器Dを収縮時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器としているが、図4に液圧回路図で示した緩衝器のように、圧側通路2bにハード側減衰要素21の代わりに圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ60を設け、伸側通路2aを減衰通路として伸側室Laから圧側室Lbへ向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素61を設け、バイパス路3aにソフト側減衰要素50の代わりに伸側室Laから圧側室Lbへと向かう液体の流れに抵抗を与えるソフト側減衰要素62を設け、吸込通路4aにおける吸込バルブ40を廃止するとともに、排出通路4bおよび手動バルブ41を廃止して、緩衝器Dを伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器としてもよい。このように緩衝器Dを構成すると、リーフバルブを有して構成されるソフト側減衰要素とソフト側減衰要素を通過する液体の分配比を減衰力調整バルブVで変えると減衰係数が大小するので、伸側の減衰力特性を示す特性線の傾きを圧側のみで減衰力を発揮する緩衝器Dと同様に変えられる。
また、各実施の形態において、ピストン速度が通常の速度域にある場合の減衰力特性をバルブ特性にする必要が無ければ、バイパス路3aに減衰力調整バルブVのみを設けて、ソフト側減衰要素50については省略してもよいし、ハード側減衰要素21についても廃止して減衰力調整バルブVのみで収縮、伸長或いは伸縮両側の減衰力を調整してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。