以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝装置Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路としての伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bと、圧力室R3と、圧力室R3内に移動自在に挿入されて圧力室R3を伸側流路5を介して伸側室R1に連通される伸側圧力室7と圧側流路6を介して圧側室R2に連通される圧側圧力室8とに区画するフリーピストン9と、フリーピストン9の圧力室R3に対する変位を抑制する附勢力を発生するばね要素10と、伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力を上回る場合に当該伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧を低減する差圧低減手段11とを備えて構成され、車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝装置Dが伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝装置Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
そして、伸側室R1および圧側室R2さらには圧力室R3内には作動油等の液体が充満され、また、シリンダ1内の図中下方には、シリンダ1の内周に摺接して圧側室R2と気体室Gとを区画する摺動隔壁12が設けられている。
なお、上記した伸側室R1、圧側室R2および圧力室R3内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
また、ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド4の一端に連結され、ピストンロッド4は、シリンダ1の図中上端部から外方へ突出されている。なお、ピストンロッド4とシリンダ1との間は図示しないシールでシリンダ1内が液密状態とされている。図示したところでは、緩衝装置Dがいわゆる片ロッド型に設定されているため、緩衝装置Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド4の体積は、気体室G内の気体の体積が膨張あるいは収縮し摺動隔壁12が図1中上下方向に移動することによって補償されるようになっている。このように緩衝装置Dは、単筒型に設定されているが、摺動隔壁12および気体室Gの設置に変えて、シリンダ1の外周や外部にリザーバを設けて当該リザーバによって上記ピストンロッド4の体積補償を行ってもよい。また、緩衝装置Dが片ロッド型ではなく、両ロッド型に設定されてもよい。
さらに、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bの途中には、オリフィスやリーフバルブ等の減衰力発生要素13a,13bが設けられており、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bを通過する液体の流れに減衰力発生要素13a,13bによって抵抗を与えることができるようになっている。この減衰力発生要素13aは、詳しくは、図示はしないが、伸側減衰通路3aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定し、減衰力発生要素13bも、また、圧側減衰通路3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定しており、減衰力発生要素13aが伸側減衰通路3aを通過する液体の流れに与える抵抗を減衰力発生要素13bが圧側減衰通路3bを通過する液体の流れに与える抵抗よりも大きくしている。つまり、緩衝装置Dが伸縮する際に、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bのみを介して減衰力を発生する場合を考えると、伸長作動時には伸側減衰通路3aのみを液体が通過し、収縮作動時には圧側減衰通路3bのみを液体が通過するようになっており、ピストン速度が同じである場合、伸長作動時の減衰力の方が収縮作動時の減衰力よりも大きい。なお、減衰力発生要素13a,13bは、たとえば、周知のオリフィスとリーフバルブとを並列した構成とすればよく、この構成以外にも、たとえば、チョークとリーフバルブを並列させる構成やその他の構成を採用することもできるのは当然である。また、減衰通路は、伸側室R1と圧側室R2とを連通していればよいので、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bをピストン2以外に設けることも可能であり、たとえば、ピストンロッド4に設けたり、シリンダ1外に設けたりすることもできる。
そして、圧力室R3は、この実施の形態の場合、ピストン2の下方に連結されて圧側室R2へ臨むハウジング14内に設けた中空部14aによって形成されており、当該中空部14aの側壁に摺接して中空部14a内を図1中上下方向に移動可能とされるフリーピストン9で中空部14aを図1中上方の伸側圧力室7と図1中下方の圧側圧力室8とに仕切っている。すなわち、フリーピストン9は、ハウジング14内に摺動自在に挿入されており、ハウジング14に対して図1中では上下方向に変位することができるようになっている。
また、フリーピストン9は、圧力室R3を形成する中空部14aの下端部に一端が連結されて圧側圧力室8内に収容されるばね要素10における他端に連結され、これにより、フリーピストン9はハウジング14内の所定位置に位置決めされた位置(以下、単に「フリーピストン中立位置」という)から変位するとばね要素10からその変位量に比例した附勢力が作用することになる。上記したフリーピストン中立位置は、フリーピストン9が圧力室R3に対してばね要素10によって位置決められる位置であって、必ずしも中空部14aの上下方向における中間点に設定されなくともよい。ばね要素10は、伸側圧力室7に収容されてもよく、ばね要素10を伸側圧力室7と圧側圧力室8のそれぞれに収容される二つのばねで構成して、これらばねでフリーピストン9を挟持して中立位置へ位置決めしてもよい。
なお、ハウジング14内は、図示したところでは、フリーピストン9によって上下に伸側圧力室7と圧側圧力室8に区画され、緩衝装置Dが伸縮して抑制する振動方向とフリーピストン9の移動方向が一致しており、緩衝装置D全体が図1中上下方向に振動することによって、フリーピストン9のハウジング14に対する上下方向の振動が励起されることを避けたい場合には、フリーピストン9の移動方向を緩衝装置Dの伸縮方向と直交する方向、すなわち、図1中左右方向に設定し、伸側圧力室7と圧側圧力室8を図1中横方向に配置するようにすることもできる。
また、当該ハウジング14には、圧側室R2と圧側圧力室8とを連通する圧側通路6が設けられており、当該圧側流路6には絞り6aが設けられ、これを通過する液体の流れに抵抗を与えることができるようになっている。なお、当該絞り6aをフリーピストン9が中立位置から変位すればするほど開口面積を小さくする可変絞りとしてもよく、その場合には、フリーピストン9がハウジング14の上端に当接するか、ばね要素10が最圧縮状態となるストロークエンドへ近づくにつれてフリーピストン9の変位速度を減ずることができる。
さらに、伸側室R1と伸側圧力室7は、ピストンロッド4の伸側室R1に臨む側部から開口してピストン2およびハウジング14を通じる伸側流路5を介して連通されている。このように、伸側室R1と伸側圧力室7とが伸側流路5によって連通され、圧側室R2と圧側圧力室8と圧側流路6によって連通され、伸側圧力室7と圧側圧力室8の容積はフリーピストン9がハウジング14内で変位することによって変化するので、この緩衝装置Dにあっては、上記した伸側流路5、伸側圧力室7、圧側圧力室8および圧側流路6からなる流路が、見掛け上、伸側室R1と圧側室R2を連通しており、伸側室R1と圧側室R2は、伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bの他にも上記した見掛け上の流路によっても連通されることになる。
そして、差圧低減手段11は、伸側流路5の途中に設けた伸側弁要素11aと、同じく伸側流路5の途中であって伸側弁要素11aに対して並列に設けた伸側逆止弁11bとを備えて構成されている。
伸側弁要素11aは、この実施の形態の場合、オリフィスやチョークといった絞り弁とされており、液体が双方向に通過することを許容している。したがって、液体は、伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう方向へ伸側弁要素11aを通過することが可能であるとともに、逆に、伸側圧力室7から伸側室R1へ向かう方向へ伸側弁要素11aを通過することも可能とされている。このように、伸側弁要素11aは、液体の双方向通行を可能としてもよく、また、伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう液体の流れのみを許容して、通過する液体の流れに抵抗を与える弁であってもよく、少なくとも伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう液体の流れを許容して通過する液体の流れに抵抗を与える弁であればよい。他方、伸側逆止弁11bは、伸側圧力室7から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するようになっており、逆向きの液体の流れを阻止する。上記したところから、伸側弁要素11aは、たとえば、オリフィスやチョーク以外にもリーフバルブやポペット弁やニードル弁等とされてもよく、オリフィスを備えたリーフバルブ状の逆止弁のように弁要素が逆止弁としての機能も備える場合には、伸側逆止弁11bを伸側弁要素11aに統合するようにしてもよいのは当然である。
つづいて、緩衝装置Dの基本的な作動について説明する。緩衝装置Dがシリンダ1に対してピストン2が図1中上下動する伸縮作動を呈すると、ピストン2によって伸側室R1と圧側室R2の一方が圧縮され、伸側室R1と圧側室R2の他方が膨張されるので、伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮される方の圧力が高まると同時に、伸側室R1と圧側室R2のうち容積拡大される方の圧力が低下して両者に差圧が生じて、伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮側の液体は、伸側減衰通路3aと圧側減衰通路3bのうち一方と、これに加えて伸側流路5、伸側圧力室7、圧側圧力室8および圧側流路6からなる見掛け上の流路を介して伸側室R1と圧側室R2のうち拡大側に移動する。
ここで、緩衝装置Dに入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置Dの伸縮方向の振動の周波数が低周波であっても高周波であっても、緩衝装置Dの伸長行程におけるピストン速度が同じである場合、低周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅は、高周波振動入力時の緩衝装置Dの振幅よりも大きくなる。このように緩衝装置Dに入力される振動の周波数が低い場合、振幅が大きいため、伸縮1周期で伸側室R1と圧側室R2を行き交う液体の流量は大きくなる。この流量に略比例して、フリーピストン9が動く変位も大きくなるが、フリーピストン9はばね要素10で附勢されているため、フリーピストン9の変位が大きくなると、フリーピストン9が受けるばね要素10からの附勢力も大きくなり、その分、伸側圧力室7の圧力と圧側圧力室8の圧力に差圧が生じて、伸側室R1と伸側圧力室7の差圧および圧側室R2と圧側圧力室8の差圧が小さくなり、上記の見掛け上の流路を通過する流量は小さくなる。この見掛け上の流路を通過する流量が小さい分、通路3aの流量は大きくなるので、緩衝装置Dが発生する減衰力が大きいまま維持される。
逆に、緩衝装置Dに高周波振動が入力される場合、振幅が低周波振動入力時よりも小さいため、伸縮1周期で伸側室R1と圧側室R2を行き交う液体の流量は小さく、フリーピストン9の動く変位も小さくなる。すると、フリーピストン9が受けるばね要素10から附勢力も小さくなる。その分、伸側圧力室7の圧力と圧側圧力室8の圧力がほぼ同等圧となり、伸側室R1と伸側圧力室7の差圧および圧側室R2と圧側圧力室8の差圧は低周波振動入力時よりも大きくなって、上記の見掛け上の流路を通過する流量が低周波振動入力時よりも増大する。この見掛け上の流路を通過する流量が増大した分は、伸側減衰通路3aの流量が減少することになるので、緩衝装置Dが発生する減衰力は低周波振動入力時の減衰力よりも小さくなる。
このように、ピストン速度が低い場合には、流量に対する差圧の周波数伝達関数の周波数に対するゲイン特性は、従来例と同じく式(2)で示される図2に示すが如くの特性となる。また、振動周波数の入力に対する減衰力のゲインを示す緩衝装置Dにおける減衰力の特性は、図3に示すように、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発生し、高周波数域の振動に対しては減衰力を小さくすることができ、緩衝装置Dの減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができる。なお、緩衝装置Dの収縮行程にあっても、上述の伸長行程と同様に、低周波数域の振動に対しては大きな減衰力を発生し、高周波数域の振動に対しては減衰力を小さくすることができ、緩衝装置Dの減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができる。そして、図3の減衰特性における小さい値を採る折れ点周波数Faの値を車両のばね上共振周波数の値以上であって車両のばね下共振周波数の値以下に設定し、大きい値を採る折れ点周波数Fbを車両のばね下共振周波数以下に設定することで、緩衝装置Dは、ばね上共振周波数の振動の入力に対しては高い減衰力を発生することができ、車両の姿勢を安定させて、車両旋回時に、搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、ばね下共振周波数の振動が入力されると必ず低い減衰力を発生することになるので、車軸側の振動の車体側への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。なお、緩衝装置Dの減衰特性の設定は、従来の緩衝装置と同様に係数C1、C2、C3、ばね要素10のばね定数Kで設定されるが、各係数C1、C2、C3とばね定数Kの設定いかんで絞り6aの有無も任意である。
つづいて、差圧低減手段11の作用について説明する。緩衝装置Dがシリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する伸長作動を呈する場合、液体は、伸側流路5を通過して伸側室R1から伸側圧力室7へ移動しようとするが伸側逆止弁11bを通過できないため、伸側弁要素11aのみを通過する。そのため、圧力損失が生じて、伸側圧力室7の圧力は伸側室R1の圧力よりも低くなる。このように、緩衝装置Dの伸長作動時には、差圧低減手段11によって伸側室R1の高圧が減圧されて伸側圧力室7に伝播されるので、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧は従来の緩衝装置のそれよりも低減される。
他方、緩衝装置Dがシリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する収縮作動を呈する場合、圧側室R2の圧力が圧側圧力室8へ伝播して、フリーピストン9が押し上げられるため、液体は、伸側圧力室7から伸側室R1へ移動しようとするが、伸側逆止弁11bが開くために、この伸側逆止弁11bを通過して伸側室R1へ移動する。このように、収縮作動時には、伸側圧力室7の圧力は、速やかに低圧側の伸側室R1とほぼ同等の圧力に低下するようになっている。
このように、差圧低減手段11は、伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力を上回る緩衝装置Dの伸長作動時に、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧を低減するようになっている。
ここで、緩衝装置Dでは、高周波振動入力時には、見掛け上の流路を通過する液体の流量を多くするようになっているが、車両における乗り心地を向上させる都合上、収縮作動時に発生する減衰力よりも伸長作動時に発生する減衰力を大きくしており、高周波振動が継続して入力されると、伸長作動時に圧縮される伸側室R1の圧力は、収縮作動時に圧縮される圧側室R2の圧力よりも高くなる傾向にあるため、伸側圧力室7の圧力の方が圧側圧力室8の圧力よりも高くなる。しかしながら、差圧低減手段11によって、緩衝装置Dの伸長作動時には、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧が低減される。
その結果、本発明の緩衝装置Dでは、高周波振動が継続して入力されて、伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力よりも高くなる状態となっても、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧が低減されるので、フリーピストン9がフリーピストン中立位置から圧側圧力室8側へ偏って変位した状態となることを抑制できる。なお、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧が低減されるだけで、フリーピストン9の作動を妨げるものではないので、緩衝装置Dの基本作動である高周波振動時に減衰力を低減する作動を損なうこともない。
それゆえ、本発明の緩衝装置Dでは、高周波振動が継続して入力されてもフリーピストン9の変位に偏りが生じないため、フリーピストン9の圧側圧力室8側へのストローク余裕を確保することができ、フリーピストン9がハウジング14に当接して圧側圧力室8への変位ができなくなることを防止することができる。この結果、本発明の緩衝装置Dによれば、高周波振動が継続的に入力されても、フリーピストン9のストローク余裕が確保されるので、減衰力低減効果を失うことがない。
また、この緩衝装置Dにあっては、高周波振動が継続的に入力されても、減衰力低減効果を発揮することができるので、悪路やでこぼこ道を車両が走行する場合にあっても、良好な乗心地を実現できる。
なお、差圧低減手段11は、伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう液体に対しては伸側弁要素11aで抵抗を与えるが、反対に、伸側圧力室7から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては伸側逆止弁11bが開くので、伸側室R1から伸側圧力室7へ液体が流れる場合と伸側圧力室7から伸側室R1へ液体が流れる場合とで、式(2)における係数C2の値が異なる。したがって、緩衝装置Dの伸長作動時と収縮作動時とで振動周波数に対する減衰力の特性が異なるが、伸長作動時の係数C2と収縮作動時の係数C2の値を、両者の減衰特性における折れ点周波数Faの値が車両のばね上共振周波数の値以上であって車両のばね下共振周波数の値以下となり、折れ点周波数Fbが車両のばね下共振周波数以下となるような値に設定するとよい。
また、差圧低減手段11が、伸側流路5の途中に設けられて伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう流れに抵抗を与える伸側弁要素11aと、伸側流路5の途中に伸側弁要素11aに並列して設けられて伸側圧力室7から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する伸側逆止弁11bとを備えることで、緩衝装置Dの伸長作動時には、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧を低減してフリーピストン9が圧側圧力室8側へ偏って変位することを抑制しつつ、緩衝装置Dの収縮作動時において伸側圧力室7の圧力の速やかな圧力低下を実現することで、フリーピストン9の伸側圧力室7側への変位を妨げず、緩衝装置Dの伸縮方向が反転した際にフリーピストン9の戻り遅れが生じてフリーピストン9の圧側圧力室8側への偏りを助長することがなく、偏り抑制効果が高くなる。
なお、差圧低減手段11は、上記構成に限定されるものではなく、たとえば、伸側流路5を伸側室R1と伸側圧力室7とを連通する複数の流路で構成して、これら複数の流路のうち少なくとも一つ以上に、伸側室R1から伸側圧力室7へ向かう流れに抵抗を与える伸側弁要素11aとこの伸側弁要素11aに並列されて伸側圧力室7から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する伸側逆止弁11bとを設けるようにしてもよい。そうすることで、緩衝装置Dの伸長作動時には伸側逆止弁11bが閉じて伸側弁要素11aが効いて、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧が低減され、収縮作動時には、伸側逆止弁11bが開くので伸側圧力室7の圧力の速やかな圧力低下を実現され、フリーピストン9が圧側圧力室8側へ偏って変位することを抑制でき、フリーピストン9の戻り遅れも解消される。つまり、伸側流路5に伸側弁要素11aと伸側逆止弁11bとを設けることには、伸側流路5が複数の流路で構成され、この流路の一部または全部に伸側弁要素11aと伸側逆止弁11bとを設けることが含まれる。
また、図4に示すように、差圧低減手段15は、伸側流路5ではなく圧側流路6側に設けることも可能である。この場合には、圧側流路6の途中であって絞り6aに直列して配置されて圧側圧力室8から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側弁要素15aと、圧側弁要素15aに並列して圧側流路6の途中に設けられて圧側室R2から圧側圧力室8へ向かう液体の流れのみを許容する圧側逆止弁15bとで構成されてもよい。この場合、緩衝装置Dの伸長作動時に、伸側圧力室7の圧力が高くなって、フリーピストン9が圧側圧力室8を圧縮するように図中下方へ移動する場合、圧側圧力室8内の液体は、絞り6aと圧側弁要素15aを通過して圧側室R2へ移動するので、圧側圧力室8と圧側室R2の差圧は、圧側弁要素15aがない場合よりも大きくなる。そのため、緩衝装置Dの伸長作動時には、差圧低減手段15によって伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧は従来の緩衝装置のそれよりも低減される。なお、絞り6aを廃止することができるし、伸側流路5に絞り等の弁を設けてもよい。
このように、差圧低減手段15は、伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力を上回る緩衝装置Dの伸長作動時に、伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧を低減するようになっている。よって、差圧低減手段15が上述のように構成することで、緩衝装置Dに高周波振動が継続して入力されても、伸側圧力室7の圧力が圧側圧力室8の圧力よりも高くなる状態となっても、フリーピストン9がフリーピストン中立位置から圧側圧力室8側へ偏って変位した状態となることを抑制できる。この差圧低減手段15を設けた緩衝装置Dによっても、フリーピストン9の圧側圧力室8側へのストローク余裕を確保することができ、フリーピストン9がハウジング14に当接して圧側圧力室8への変位ができなくなることを防止することができ、減衰力低減効果を失うことがない。他方、緩衝装置Dが収縮作動を呈する場合、圧側室R2の液体は、圧側逆止弁15bが開くので、圧側逆止弁15bを優先的に通過し絞り6aを介して圧側圧力室8へ移動する。すると、圧側室R2と圧側圧力室8を液体が交流する際の抵抗は、緩衝装置Dの伸長作動時よりも収縮作動時の方が小さくなるので、収縮作動時の方が圧側室R2内の圧力が圧側圧力室8へ伝播しやすくなる。したがって、緩衝装置Dの収縮作動時においては、圧側圧力室8の圧力の速やかな上昇を実現することで、フリーピストン9の伸側圧力室7側への変位を妨げず、緩衝装置Dの伸縮方向が反転した際にフリーピストン9の戻り遅れが生じてフリーピストン9の圧側圧力室8側への偏りを助長することがなく、偏り抑制効果も高くなる。なお、差圧低減手段15における圧側弁要素15aと圧側逆止弁15bは、圧側流路6を圧側室R2と圧側圧力室8を連通する複数の流路で構成する場合、これら流路の一部または全部に設けるようにしてもよいし、伸側流路5の途中に設けるべき伸側弁要素11aと伸側逆止弁11bとともに設置することも可能である。
上記したように、差圧低減手段11(15)を備えた緩衝装置Dでは、高周波振動が継続的に入力されても、フリーピストン9の圧側圧力室8側への偏りを抑制することができる。このことから、上記した伸側減衰通路3aおよび圧側減衰通路3bのそれぞれに並列される伸側サブ減衰通路16と圧側サブ減衰通路17の開放と遮断を切換える切換機構18をフリーピストン9に連動させても安定した動作を期待することができる。
以下、伸側サブ減衰通路16、圧側サブ減衰通路17および切換機構18を備えた緩衝装置D1について説明する。
緩衝装置D1は、図5に示すように、上記した緩衝装置Dの構成に加えて、伸側サブ減衰通路16、圧側サブ減衰通路17および切換機構18を備えている。以下、説明が重複するので、緩衝装置D1が緩衝装置Dと異なる部分についてのみ詳細に説明し、同一の部分については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
緩衝装置D1は、図5に示すように、緩衝装置Dの構成に加えて、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容するとともに伸側減衰通路3aに並列される伸側サブ減衰通路16と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容するとともに圧側減衰通路3bに並列される圧側サブ減衰通路17と、伸側サブ減衰通路16と圧側サブ減衰通路17の開放と遮断を切換える切換機構18とを備えて構成されている。
伸側サブ減衰通路16および圧側サブ減衰通路17は、この実施の形態では、共にピストン2の図5中上端の伸側室側端から図5中下端の圧側室側端へ通じていて、上記した伸側減衰通路3aと圧側減衰通路3bに並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。
詳しくは、伸側サブ減衰通路16は、途中に、伸側サブバルブ16aを備えている。この伸側サブバルブ16aは、伸側サブ減衰通路16を通過する流体の流れに抵抗を与えることができるようになっているとともに、この例では、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁としても機能して、伸側サブ減衰通路16を一方通行の通路に設定している。また、伸側サブバルブ16aが通過流体に与える抵抗は、上記した伸側減衰通路3aに設けられた減衰力発生要素13aが通過流体に与える抵抗に比して大きくても小さくてもよい。そして、伸側減衰通路3aと伸側サブ減衰通路16は並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通しているので、緩衝装置D1の伸長作動時において、伸側サブ減衰通路16が開放されると液体は伸側減衰通路3aに加えて伸側サブ減衰通路16をも通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動することになる。そのため、液体が伸側減衰通路3aのみを通過する場合に比較して、伸側サブ減衰通路16を開放する場合の方が緩衝装置D1の発生減衰力は低くなる。
他方の圧側サブ減衰通路17も途中に、圧側サブバルブ17aを備えている。この圧側サブバルブ17aは、圧側サブ減衰通路17を通過する流体の流れに抵抗を与えることができるようになっているとともに、この例では、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁としても機能して、圧側サブ減衰通路17を一方通行の通路に設定している。また、圧側サブバルブ17aが通過流体に与える抵抗は、上記した圧側減衰通路3bに設けられた減衰力発生要素13bが通過流体に与える抵抗に比して大きくても小さくてもよい。そして、圧側減衰通路3bと圧側サブ減衰通路17は並列して伸側室R1と圧側室R2とを連通しているので、緩衝装置D1の収縮作動時において、圧側サブ減衰通路17が開放されると液体は圧側減衰通路3bに加えて圧側サブ減衰通路17をも通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動することになる。そのため、液体が圧側減衰通路3bのみを通過する場合に比較して、圧側サブ減衰通路17を開放する場合の方が緩衝装置D1の発生減衰力は低くなる。
なお、伸側サブバルブ16aと圧側サブバルブ17aは、たとえば、周知のオリフィスとリーフバルブとを並列した構成等とすればよく、この構成以外にも、たとえば、チョークとリーフバルブを並列させる構成やその他の構成を採用することもでき、逆止弁を別途設けるのであれば流体の双方向通行を可能とするバルブを採用することも可能である。
切換機構18は、伸側サブ減衰通路16と圧側サブ減衰通路17の途中に設けられており、伸側サブ減衰通路16と圧側サブ減衰通路17の途中に設けた切換スプール19を備えて構成され、連結レバー19dによってフリーピストン9に連結されている。そして、切換スプール19は、フリーピストン9が中立位置から伸側圧力室7を圧縮する方向へ所定の伸側変位以上変位すると採る伸側ポジション19bと、フリーピストン9が中立位置から圧側圧力室8を圧縮する方向へ所定の圧側変位以上変位すると採る圧側ポジション19cと、フリーピストン9の中立位置からの変位が上記伸側変位および圧側変位に達しない状態にあるときに採る中立ポジション19aとを備えた4ポート3位置の切換弁として構成されている。
そして、切換スプール19は、中立ポジション19aを採る際に、伸側サブ減衰通路16と圧側サブ減衰通路17とを共に開放し、伸側ポジション19bを採る際に、伸側サブ減衰通路16を開放すると共に圧側サブ減衰通路17を遮断し、圧側ポジション19cを採る際に伸側サブ減衰通路16を遮断するとともに圧側サブ減衰通路17を開放するようになっている。
なお、この例では、切換機構18は、フリーピストン9が中立位置から伸側圧力室7を圧縮する方向へ所定の伸側変位以上変位すると伸側サブ減衰通路16を開放するとともに圧側サブ減衰通路17を遮断し、フリーピストン9が中立位置から圧側圧力室8を圧縮する方向へ所定の圧側変位以上変位すると伸側サブ減衰通路16を遮断するとともに圧側サブ減衰通路17を開放するようになっていればよいので、上記構成以外の構成を採用することもでき、たとえば、伸側サブ減衰通路16を開閉する開閉弁と圧側サブ減衰通路17を開閉する開閉弁とを独立して設けて、これら開閉弁をフリーピストン9に連動するようにしてもよい。また、上記した所定の伸側変位と所定の圧側変位は、任意に設定することができる。
さらに、切換スプール19をフリーピストン9側へ向けて附勢するばねを設けて、常に連結レバー19dがフリーピストン9に当接するようにすれば、連結レバー19dとフリーピストン9とが一体的に連結されなくとも良く、この場合には、上記切換スプール19を附勢するばねとばね要素10との間にフリーピストン9と切換スプール19が介装されることになるので、上記ばねとばね要素10とフリーピストン9を中立位置に位置決めるばね要素を構成するようにしてもよい。
つづいて、緩衝装置D1の作動について説明する。まず、フリーピストン9の中立位置からの変位が上記した所定の伸側変位および圧側変位に達しない状態での緩衝装置D1の作動について説明する。
この場合、切換機構18は、中立ポジション19aを採り、伸側サブ減衰通路16および圧側サブ減衰通路17は連通され開放状態となる。この状態では、緩衝装置D1がシリンダ1に対してピストン2が図1中上下動する伸縮作動を呈すると、ピストン2によって伸側室R1と圧側室R2の一方が圧縮され、伸側室R1と圧側室R2の他方が拡張されるので、伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮される方の圧力が高まると同時に、伸側室R1と圧側室R2のうち容積拡大される方の圧力が低下して両者に差圧が生じて、伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮側の液体は、伸側減衰通路3aと伸側サブ減衰通路16、或いは、圧側減衰通路3bと圧側サブ減衰通路17のうちいずれか一方と、これに加えて伸側流路5、伸側圧力室7、圧側圧力室8および圧側流路6からなる見掛け上の流路を介して伸側室R1と圧側室R2のうち拡大側に移動する。
ここで、フリーピストン9の中立位置からの変位の振幅が小さくなるのは、緩衝装置D1の振幅が小さく圧力室R3内に流入する流体量が少ない場合であり、伸縮一周期で伸側室R1と圧側室R2を行き交う流体の流量が小さくなるのは、緩衝装置D1に入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置D1の伸縮方向の振動の周波数が高周波である場合である。このように高周波の振動が緩衝装置D1に入力される場合、フリーピストン9の中立位置からの変位量が少なく、伸側サブ減衰通路16および圧側サブ減衰通路17が開放され、緩衝装置D1が発生する減衰力は低くなる。そして、特に、緩衝装置D1の伸縮速度が非常に高くなる場面にあってフリーピストン9が中立位置近傍で変位しづらくなっても、フリーピストン9が中立位置近傍にある場合には、切換機構18が伸側サブ減衰通路16および圧側サブ減衰通路17を開放するので、このような場面でも減衰力低減効果が減殺されず、確実に緩衝装置D1の減衰力を低減することができる。
つづいて、フリーピストン9の中立位置からの変位が上記した所定の伸側変位および圧側変位に達する状態での緩衝装置D1の作動について説明する。この場合は、緩衝装置D1の振幅が大きく、伸側圧力室7或いは圧側圧力室8に大流量が流入して、フリーピストン9が中立位置から大きく変位し、ストロークエンドまでのストローク余裕が少なくなる状況であり、ストロークエンドまで達すると、見掛け上の流路を介して伸側室R1と圧側室R2の流体の交流が少なくなるので、高周波振動の入力に対して減衰力を低減する効果が少なくなる。
このようにフリーピストン9が変位すると、切換機構18は、フリーピストン9が中立位置から伸側圧力室7を圧縮する方向へ変位している場合には、伸側サブ減衰通路16を開放して圧側サブ減衰通路17を遮断し、他方、フリーピストン9が中立位置から圧側圧力室8を圧縮する方向へ変位している場合には、圧側サブ減衰通路17を開放して伸側サブ減衰通路16を遮断する。
そして、切換機構18が伸側サブ減衰通路16を開放して圧側サブ減衰通路17を遮断している状態では、緩衝装置D1が伸長作動をすると、伸側室R1の流体は伸側減衰通路3aのみならず伸側サブ減衰通路16をも介して圧側室R2へ移動するので、緩衝装置D1は、低い減衰力を発生する。この状態で、緩衝装置D1が収縮作動をすると、圧側サブ減衰通路17が遮断されているので、圧側室R2の流体は圧側減衰通路3bのみを介して伸側室R1へ移動するので、緩衝装置D1は、高い減衰力を発生する。
フリーピストン9が中立位置から伸側圧力室7を圧縮する方向へ変位しているということは、緩衝装置D1は、大振幅で収縮作動を呈していた状況であるから、さらに収縮作動を呈する場合には、高減衰力を発揮し、反対に、収縮作動を終えて伸長作動に転じる場合には低い減衰力を発揮することになる。
つまり、この状況では、車体が車輪に対して大きく沈み込む場合に緩衝装置D1は高い減衰力を発揮してこれを抑制し、反対に、車体が車輪から離間する、すなわち、緩衝装置D1が伸びようとすると、減衰力を低減させて当該車体の動きを極力抑制しないようにして、車体振動を低減する。
逆に、切換機構18が伸側サブ減衰通路16を遮断して圧側サブ減衰通路17を開放している状態では、緩衝装置D1が伸長作動をすると、伸側サブ減衰通路16が遮断されているので、伸側室R1の流体は伸側減衰通路3aのみを介して圧側室R2へ移動するので、緩衝装置D1は、高い減衰力を発生する。この状態で、緩衝装置D1が収縮作動をすると、圧側室R2の流体は圧側減衰通路3bのみならず圧側サブ減衰通路17をも介して伸側室R1へ移動するので、緩衝装置D1は、低い減衰力を発生する。
フリーピストン9が中立位置から圧側圧力室8を圧縮する方向へ変位しているということは、緩衝装置D1は、大振幅で伸長作動を呈していた状況であるから、さらに伸長作動を呈する場合には、高減衰力を発揮し、反対に、伸長作動を終えて収縮作動に転じる場合には低い減衰力を発揮することになる。
つまり、この状況では、車体が車輪から大きく離間する場合に緩衝装置D1は高い減衰力を発揮してこれを抑制し、反対に、車体が車輪へ沈み込む方向へ変位する、すなわち、緩衝装置D1が縮もうとする際には、減衰力を低減させて当該車体の動きを極力抑制しないようにして、車体振動を低減する。
以上をまとめると、緩衝装置D1が大振幅の収縮作動を呈してフリーピストン9が中立位置から所定の伸側変位以上変位する場合、それ以上の収縮作動に対して緩衝装置D1は高い減衰力を発揮し、伸長作動に転じると緩衝装置Dは低い減衰力を発揮し、緩衝装置D1が大振幅で伸長作動を呈してフリーピストン9が中立位置から所定の圧側変位以上変位する場合、それ以上の伸長作動に対して緩衝装置D1は高い減衰力を発揮し、収縮作動に転じると緩衝装置Dは低い減衰力を発揮する。そのため、この緩衝装置D1では、車体振動を効果的に抑制して車両における乗り心地を向上することができる。
このように大振幅で緩衝装置D1が伸縮する場合、ピストン速度が速くとも伸縮一周期に要する時間はかかり、振動周波数としてとらえると低周波数の振動ということになる。したがって、緩衝装置D1が大振幅の収縮作動を呈してフリーピストン9が中立位置から所定の伸側変位以上変位する場合の動作は、それ以上の収縮作動に対して高い減衰力を発揮し、伸長作動に転じると低い減衰力を発揮し、また、緩衝装置D1が大振幅の伸長作動を呈してフリーピストン9が中立位置から所定の圧側変位以上変位する場合の動作は、それ以上の伸長作動に対して高い減衰力を発揮し、収縮作動に転じると低い減衰力を発揮することになる。
そのため、緩衝装置D1は、高周波振動に対しては低い減衰力を発揮し、低周波振動に対しては高い減衰力を発揮し、入力される振動の周波数に応じて適切な減衰力を発揮することができる。したがって、緩衝装置D1は、入力振動周波数に依存した減衰力を発揮して、車軸側の振動の車体側への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
そして、この緩衝装置D1によれば、伸縮速度が非常に高くなる場面にあってフリーピストン9が中立位置近傍で変位しづらくなっても、フリーピストン9が中立位置近傍にある場合には、切換機構18が伸側サブ減衰通路16および圧側サブ減衰通路17を開放するので、高周波振動の入力時に減衰力低減効果が減少されず、確実に緩衝装置D1の減衰力を低減することができる。
また、この緩衝装置D1にあっては、フリーピストン9が中立位置から伸側圧力室7を圧縮する方向へ変位している場合には、切換機構18は、伸側サブ減衰通路16を開放して圧側サブ減衰通路17を遮断し、他方、フリーピストン9が中立位置から圧側圧力室8を圧縮する方向へ変位している場合には、圧側サブ減衰通路17を開放して伸側サブ減衰通路16を遮断するので、緩衝装置D1の伸縮方向の切換時に高い減衰力が発生されてしまうことがなく、車軸側から車体への振動伝達を効果的に絶縁することができる。
したがって、この場合の緩衝装置D1は、入力振動の周波数が低い場合、高い減衰力を発揮し、入力振動の周波数が高い場合には、低い減衰力を発揮でき、上記した緩衝装置Dと同様の作動を呈する。そして、この緩衝装置D1にあっても、差圧低減手段11を備えているので、フリーピストン9は圧側圧力室8側へ偏って変位することがなく、高周波振動が継続して入力されても、圧側ポジション19cを採り続けて中立ポジション19aへ復帰できなくなってしまう恐れがない。そのため、緩衝装置D1にあっては、高周波振動が継続して入力されても、圧側ポジション19cを採り続けて伸側サブ減衰通路16を遮断するとともに圧側サブ減衰通路17を開放しっぱなしとなって適正な減衰力を発揮できなくなってしまう恐れもない。
そして、この緩衝装置D1では、差圧低減手段11を備えているので、高周波振動が継続して入力されてもフリーピストン9が圧側圧力室8側へ偏って変位することがないから、上記した切換機構18の適切な動作が保証され、緩衝装置D1は安定して車体の制振に適した減衰力を発揮することができる。この緩衝装置D1にあっても、差圧低減手段11の代わりに或いはこれに加えて差圧低減手段15を設けるようにしても同様の効果を得ることができる。
また、緩衝装置D1は、ピストン速度が速く大振幅で伸縮作動を呈する状況以外では、入力される振動周波数が高くなると減衰力を低減することができるので、入力振動周波数に依存した減衰力を発揮して、車軸側の振動の車体側への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
なお、上述したフリーピストン9の中立位置からの所定の伸側変位と圧側変位とを小さくすればするほど、上記した緩衝装置D1の動作のうち、切換機構18が中立ポジション19aを採る際の周波数によって減衰力が変化する動作(周波数感応動作)よりも切換機構18が伸側ポジション19b或いは圧側ポジション19cを採る動作が優先的に現れるようになり、反対に、大きくすればするほど周波数感応動作の方が優先的に現れるようになる。したがって、車両の特性に応じて上記所定の伸側変位と圧側変位をチューニングすることで車両に適した動作を緩衝装置D1に発揮させるようにするとよい。
以上では、緩衝装置Dの構造を概念的に説明したが、以下、より構造を具体化した一具体例である緩衝装置D2について説明する。
具体的な緩衝装置D2は、基本的には、図6に示すように、シリンダ21と、シリンダ21内に摺動自在に挿入されシリンダ21内を2つの作動室である伸側室R4および圧側室R5に区画するピストン22と、一端がピストン22に連結されるピストンロッド23と、伸側室R4および圧側室R5を連通する減衰通路31と、ピストンロッド23の先端に固定されて内部に圧力室R6を形成するハウジング24と、ハウジング24内に移動自在に挿入されて圧力室R6を伸側流路25を介して伸側室R4に連通される伸側圧力室27と圧側流路26を介して圧側室R5に連通される圧側圧力室28とに区画するフリーピストン29と、フリーピストン29のハウジング24に対する変位を抑制する附勢力を発生するばね要素としてのコイルばね42,43と、伸側圧力室27の圧力が圧側圧力室28の圧力を上回る場合に当該伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧を低減する差圧低減手段30とを備えて構成されている。なお、図示はしないが、図1に示した緩衝装置Dと同様に、シリンダ21の下方には、摺動隔壁が設けられており気体室が設けられている。
以下、各部について詳細に説明する。まず、ピストンロッド23は、その図6中下端側に小径部23aが形成され、小径部23aの先端側には螺子部23bが形成されている。また、上記のようにピストンロッド23の下端を小径にしたことによって段部23cが設けられている。そして、ピストンロッド23には、小径部23aの先端から開口し当該小径部23aの側部に抜ける通路23dが形成されている。
ピストン22は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド23の小径部23aが挿入されている。また、このピストン22には、伸側室R4と圧側室R5とを連通する伸側ポート31aと圧側ポート31cが設けられ、伸側ポート31aの図6中下端はピストン22の図6中下方に積層されるリーフバルブでなる伸側バルブ31bにて開閉され、他方の圧側ポート31cの図6中上端もピストン22の図6中上方に積層されるリーフバルブでなる圧側バルブ31dによって開閉される。
この伸側バルブ31bおよび圧側バルブ31dは、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド23の小径部23aが挿入され、内周側がピストンロッド23に固定されて外周側の撓みが許容されてピストン22に積層されている。なお、伸側バルブ31bおよび圧側バルブ31dを構成するリーフバルブの積層枚数や厚みは、望む減衰特性に応じて任意に変更することができる。また、伸側バルブ31bおよび圧側バルブ31dは、リーフバルブ以外のバルブとされてもよい。リーフバルブは、薄い環状板でありピストンロッド23に組付けた際に軸方向の長さが短くて済むので、伸側バルブ31bおよび圧側バルブ31dをリーフバルブとすることで、緩衝装置D2のストローク長を確保しやすくなる。
そして、伸側バルブ31bは、緩衝装置D2の伸長作動時に伸側室R4と圧側室R5の差圧によって撓んで開弁し伸側ポート31aを開放して伸側室R4から圧側室R5へ移動する流体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝装置D2の収縮作動時には伸側ポート31aを閉塞するようになっていて伸側ポート31aを一方通行に設定している。他方の圧側バルブ31dは、伸側バルブ31bとは反対に緩衝装置D2の収縮作動時に圧側ポート31cを開放し、伸長作動時には圧側ポート31cを閉塞するようになっていて圧側ポート31cを一方通行に設定している。すなわち、伸側バルブ31bは、緩衝装置D2の伸長作動時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の圧側バルブ31dは、緩衝装置D2の収縮作動時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素である。よって、この実施の形態にあっては、減衰通路31は、伸側ポート31a、伸側バルブ31b、圧側ポート31cおよび圧側バルブ31dとで構成されている。また、伸側バルブ31bは、伸側ポート31aを閉じた状態にあっても、図示はしない周知のオリフィスによって伸側室R4と圧側室R5とが連通されるようになっており、オリフィスは、たとえば、伸側バルブ31bの外周に切欠を設けたり、ピストン22に設けられて伸側バルブ31bが着座する符示しない弁座に凹部を設けたりするなどして形成される。圧側バルブ31dも同様に切欠等によってオリフィスが形成される。なお、緩衝装置D2のピストン速度が同じ場合、圧側バルブ31dよりも伸側バルブ31bの方が液体の流れに与える抵抗を大きくしてある。減衰通路31は、伸側室R4と圧側室R5とを連通していればよいので、ピストン22以外に設けることも可能であり、たとえば、ピストンロッド23に設けたり、シリンダ21外に設けたりすることもできる。
つづいて、ピストン22の図6中上方であって、圧側バルブ31dの図6中上方となる伸側室側には、順に、環状の差圧低減用のバルブディスク32と、バルブディスク32と協働して伸側弁要素と伸側逆止弁として機能する差圧低減用のリーフバルブ33と、環状であって外径がリーフバルブ33よりも小径なシム34と、同じく環状のバルブストッパ72が積層されて、ピストンロッド23の小径部23aの外周に装着されている。また、ピストン22の図6中下方には、伸側バルブ31bが積層され、伸側バルブ31bは、ピストン22とともにピストンロッド23の小径部23aの外周に装着される。そして、伸側バルブ31bの図6中下方から圧力室R6を形成するハウジング24がピストンロッド23の螺子部23bに螺着される。このハウジング24によって、図6中上から順にピストンロッド23の外周に装着されるバルブストッパ72、シム34、リーフバルブ33、バルブディスク32、圧側バルブ31d、ピストン22および伸側バルブ31bは、ピストンロッド23の段部23cとハウジング24によって挟持されてピストンロッド23に固定される。このように、ハウジング24は、内部に圧力室R6を形成するだけでなく、ピストン22や上記したバルブ類をピストンロッド23に固定するピストンナットとしての役割を果たしている。
上記したバルブディスク32は、外径がシリンダ21の内径よりも小径に設定され、図6中上端となる伸側室側端から開口して内周へ通じるポート32aを備えている。そして、バルブディスク32が上記したようにピストンロッド23に固定されると、バルブディスク32の内周に開口するポート32aがピストンロッド23に設けた通路23dに連通される。詳しくは後述するが、通路23dは、ハウジング24内に設けられる伸側圧力室27に連通されている。したがって、伸側流路25は、この場合、通路23dおよびポート32aとで構成されている。なお、図示したところでは、通路23dには、抵抗となる弁を設けていないが、絞り等の弁を設けるようにしてもよい。
リーフバルブ33は、内周側がピストンロッド23の小径部23aに固定されていて、外周側の撓みが許容されている。そして、リーフバルブ33は、バルブディスク32の伸側室側端に積層されて、ポート32aの開口端を閉じており、外周側が図6中上方へ撓むことでポート32aを開放することができるようになっている。また、リーフバルブ33は、外周を切り欠いて形成したオリフィス33aを備えている。
したがって、伸側圧力室27の圧力が伸側室R4の圧力を上回って、リーフバルブ33の開弁圧に達すると、リーフバルブ33が撓んでポート32aが開放し、伸側圧力室27から伸側室R4へ向かう液体の流れを許容し、反対に、伸側室R4から伸側圧力室27へ向かう液体の流れに対して、リーフバルブ33はポート32aを閉塞するので、液体はリーフバルブ33の外周に形成のオリフィス33aのみを介して伸側室R4から伸側圧力室27へ流入するようになっている。つまり、リーフバルブ33は、伸側圧力室27から伸側室R4へ向かう液体の流れのみを許容する伸側逆止弁として機能するとともに、伸側室R4から伸側圧力室27へ向かい液体の流れに対してはオリフィス33aで流路を制限して当該流れに抵抗を与える伸側弁要素として機能していて、伸側逆止弁と伸側弁要素としてのオリフィス33aは、並列して伸側流路25に設けられている。なお、オリフィス33aは、リーフバルブ33の貫通する小孔とされてもよいし、リーフバルブ33がポート32aを閉じていてもポート32aと伸側室R4とを連通するようバルブディスク32に設けてもよい。
したがって、本実施の形態の緩衝装置D2にあっては、差圧低減手段30は、上記した、バルブディスク32とリーフバルブ33とで構成されている。また、上述のようにリーフバルブ33がバルブディスク32の伸側室側端に積層されることで、リーフバルブ33と圧側バルブ31dが撓んでも互いに干渉することがなく、リーフバルブ33と圧側バルブ31dが互いに相手方の作動を妨げることがない。
ハウジング24は、ピストンロッド23の螺子部23bに螺合される筒状の螺子筒36と、螺子筒36の外周に設けた鍔37とを備えたナット部35と、ナット部35における鍔37の外周に開口部が加締められて一体化される有底筒状の外筒38とを備えて構成されている。そして、ナット部35および外筒38で圧側室R5内に圧力室R6を画成している。なお、ナット部35と外筒38との一体化に際し、上記加締め加工以外にも溶接等の他の方法を採用することも可能であり、ナット部35と外筒38とを一部品で構成されてもよい。
そして、上記のように形成される圧力室R6内には、フリーピストン29が摺動自在に挿入されて、圧力室R6は、図6中上方側の伸側圧力室27と下方側の圧側圧力室28に区画されている。
ナット部35は、螺子筒36をピストンロッド23の螺子部23bに螺着することによって、ハウジング24をピストンロッド23の小径部23aに固定することが可能なようになっている。ゆえに、外筒38の下端外周の断面形状を真円以外の形状、たとえば、一部を切欠いた形状や、六角形等の形状として係合部38bを形成してあって、当該係合部38bの外周に係合する工具を用いてハウジング24をピストンロッド23に螺着する作業を容易としている。なお、外筒38の下端ではなく、少なくとも一部の外周形状を真円以外の形状をしておくことで工具での締付が可能となるが、外周の全部を真円以外の形状に設定してもよい。
外筒38は、有底筒状であって、その外筒底部38aには、圧側流路26の一部を構成する固定オリフィス39が設けられ、外筒38の側部には圧側室R5をハウジング24内へ連通する二つの可変オリフィス40,41が設けられている。
他方、フリーピストン29は、有底筒状とされており、底部29aを図6中下方へ向けて筒部29bの外周を外筒38の内周に摺接させてハウジング24内に挿入されている。フリーピストン29は、上記のようにハウジング24内に摺動自在に挿入されると圧力室R6内を伸側圧力室27と圧側圧力室28とに区画する。なお、フリーピストン29の底部29aを図6中下方へ向けてハウジング24内に収容することで、フリーピストン29のナット部35における螺子筒36への干渉を避けることができる。さらに、フリーピストン29は、この実施の形態の場合、筒部29bの外周に環状溝29cと、フリーピストン9の底部29aから環状溝29cへ通じる孔29dを備えている。
また、このフリーピストン29に、フリーピストン29の圧力室R6に対する変位量に応じてその変位を抑制する附勢力を作用させるばね要素が設けられており、このばね要素は、フリーピストン29の底部29aとナット部35の鍔37との間に介装されるコイルばね42と、圧側圧力室28内であって外筒38における外筒底部38aとフリーピストン29の底部29aとの間に介装されるコイルばね43とで構成されている。よって、フリーピストン29は、コイルばね42,43に挟持されて圧力室R6内で中立位置に位置決められた上で弾性支持されている。
なお、ばね要素としては、フリーピストン29を弾性支持できればよいので、コイルばね42,43以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばね等の弾性体を用いてフリーピストン29を弾性支持するようにしてもよい。また、一端がフリーピストン29に連結される単一のばね要素を用いる場合には、ナット部35或いは外筒38に他端を固定するようにしてもよい。
そして、上記環状溝29cは、フリーピストン29がばね要素としてのコイルばね42,43によって弾性支持されて中立位置にあるときには必ず上記可変オリフィス40,41に対向して圧側圧力室28と圧側室R5を連通するとともに、フリーピストン29がストロークエンドまで変位する、すなわち、ナット部35の鍔57或いは外筒38の内周に設けた段部38cに当接するまで変位するとフリーピストン29の外周で完全にラップされて閉塞されるようになっている。すなわち、圧側流路26は、環状溝29c、孔29d、可変オリフィス40,41および固定オリフィス39で構成されている。なお、可変オリフィス40,41を二つ設けているが、その数は任意である。
つまり、この具体的な緩衝装置D2の場合、フリーピストン29の中立位置からの変位量が増加していくと、可変オリフィス40,41の開口全てが環状溝29cに対向する状況からフリーピストン29の外周に対向し始める状況に移行して徐々に可変オリフィス40,41の流路面積が減少し始め、圧側流路26における流路抵抗が徐々に増加する。そして、この実施の形態では、フリーピストン29の変位量の増加に伴って徐々に可変オリフィス40,41の流路面積が減少し、フリーピストン29がストロークエンドに達すると、可変オリフィス40,41が完全にフリーピストン29の外周で閉塞されて、圧側流路26における流路抵抗が最大となり圧側圧力室28が固定オリフィス39のみによって圧側室R5に連通されるようになっている。
さて、緩衝装置D2は、以上のように構成されるが、続いて緩衝装置D2の作動について説明する。まず、フリーピストン29における中立位置からの変位量が可変オリフィス40,41を閉塞し始めない範囲内にある場合の緩衝装置D2における動作について説明する。
この場合、フリーピストン29は、圧側流路26の抵抗を変化させることなく変位することが可能である。そして、緩衝装置D2へ入力される振動周波数が低い場合と高い場合で、ピストン速度が同じであるという条件下で考えると、まず、入力周波数が低い場合、入力される振動の振幅が大きくなり、フリーピストン29の振幅も、可変オリフィス40,41を閉塞し始めない範囲内で大きくなる。
フリーピストン29の振幅が上記の範囲で大きくなると、フリーピストン29がコイルばね42,43から受ける附勢力が大きくなり、緩衝装置D2が伸長する場合、圧側圧力室28内の圧力は、伸側圧力室27内の圧力よりも上記コイルばね42,43の附勢力分だけ小さくなり、逆に、緩衝装置D2が収縮する場合には、伸側圧力室27内の圧力は、圧側圧力室28内の圧力よりも上記コイルばね42,43の附勢力分だけ小さくなる。
このように、緩衝装置D2が低周波振動を呈すると伸側圧力室27と圧側圧力室28にコイルばね42,43の附勢力に見合った差圧が生じているので、伸側室R4と伸側圧力室27の差圧および圧側室R5と圧側圧力室28の差圧が小さくなり、伸側流路25、圧側流路26、伸側圧力室27および圧側圧力室28でなる見掛け上の流路を通過する流量は小さい。この見掛け上の流路を通過する流量が小さい分、伸側ポート31a或いは圧側ポート31cの流量は大きくなるので、緩衝装置D2が発生する減衰力が大きいまま維持される。
逆に、緩衝装置D2への入力周波数が高い場合、入力される振動の振幅が小さくなり、フリーピストン29の振幅はより小さくなる。フリーピストン29の振幅が小さくなると、フリーピストン29がコイルばね42,43から受ける附勢力が小さくなり、緩衝装置D2が伸長行程にあっても収縮行程にあっても、伸側圧力室27内の圧力と圧側圧力室28内の圧力とが略等しくなる。すると、伸側室R4と伸側圧力室27の差圧および圧側室R5と圧側圧力室28の差圧は大きくなるので、伸側流路25および圧側流路26を通過する流量も多くなる。
緩衝装置D2へ入力される振動の周波数が低い場合には、見掛け上の流路を通過する流量は小さく、入力周波数が高い場合には、見掛け上の流路を通過する流量は大きくなり、入力速度が同じであれば、伸側室R4から圧側室R5或いは圧側室R5から伸側室R4へ流れる流量は、入力周波数によらず等しくならなければならないため、伸側ポート31a或いは圧側ポート31cを通過する流量は、入力周波数が低い場合には多くなって減衰力が高く、反対に、入力周波数が高い場合には少なくなって減衰力は低くなる。したがって、緩衝装置D2の減衰特性は、上記した緩衝装置Dと同様に図3に示すように、推移することになる。
したがって、この緩衝装置D2にあっても、緩衝装置Dと同様に、減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、ばね上共振周波数の振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車両の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、ばね下共振周波数の振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車軸側の振動の車体側への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
つづいて、差圧低減手段30の作用について説明する。緩衝装置D2がシリンダ21に対してピストン22が図6中上方へ移動する伸長作動を呈する場合、液体は、伸側流路25を通過して伸側室R4から伸側圧力室27へ移動しようとするが伸側逆止弁としてのリーフバルブ33がポート32aを閉じており伸側弁要素としてのオリフィス33aのみを通過する。そのため、圧力損失が生じて、伸側圧力室27の圧力は伸側室R4の圧力よりも低くなる。このように、緩衝装置D2の伸長作動時には、差圧低減手段30によって伸側室R4の高圧が減圧されて伸側圧力室27に伝播されるので、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧は従来の緩衝装置のそれよりも低減される。
他方、緩衝装置D2がシリンダ21に対してピストン22が図6中下方へ移動する収縮作動を呈する場合、圧側室R5の圧力が圧側圧力室28へ伝播して、フリーピストン29が押し上げられるため、伸側圧力室27が圧縮されて伸側逆止弁としてのリーフバルブ33の外周が撓んでポート32aが開放される。そのため、収縮作動時には、伸側圧力室7の圧力は、低圧側の伸側室R4へ逃げて速やかに低下するようになっている。
このように、差圧低減手段30は、伸側圧力室27の圧力が圧側圧力室28の圧力を上回る緩衝装置D2の伸長作動時に、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧を低減するようになっている。
ここで、緩衝装置D2では、高周波振動入力時には、見掛け上の流路を通過する液体の流量を多くするようになっているが、車両における乗り心地を向上させる都合上、収縮作動時に発生する減衰力よりも伸長作動時に発生する減衰力を大きくしており、高周波振動が継続して入力されると、伸長作動時に圧縮される伸側室R4の圧力は、収縮作動時に圧縮される圧側室R5の圧力よりも高くなる傾向にあるため、伸側圧力室27の圧力の方が圧側圧力室28の圧力よりも高くなる。しかしながら、差圧低減手段30によって、緩衝装置D2の伸長作動時には、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧が低減される。
その結果、本発明の緩衝装置D2では、高周波振動が継続して入力されて、伸側圧力室27の圧力が圧側圧力室28の圧力よりも高くなる状態となっても、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧が低減されるので、フリーピストン29がフリーピストン中立位置から圧側圧力室28側へ偏って変位した状態となることを抑制できる。なお、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧が低減されるだけで、フリーピストン29の作動を妨げるものではないので、緩衝装置D2の基本作動である高周波振動時に減衰力を低減する作動を損なうこともない。
それゆえ、本発明の緩衝装置D2では、高周波振動が継続して入力されてもフリーピストン29の変位に偏りが生じないため、フリーピストン29の圧側圧力室28側へのストローク余裕を確保することができ、フリーピストン29がハウジング24に当接して圧側圧力室28への変位ができなくなることを防止することができる。この結果、本発明の緩衝装置D2によれば、高周波振動が継続的に入力されても、フリーピストン29のストローク余裕が確保されるので、減衰力低減効果を失うことがない。
また、この緩衝装置D2にあっては、高周波振動が継続的に入力されても、減衰力低減効果を発揮することができるので、悪路やでこぼこ道を車両が走行する場合にあっても、良好な乗心地を実現できる。
さらに、差圧低減手段30が、伸側流路25の途中に設けられて伸側室R4から伸側圧力室27へ向かう流れに抵抗を与える伸側弁要素と、伸側流路25の途中に伸側弁要素に並列して設けられて伸側圧力室27から伸側室R4へ向かう流れのみを許容する伸側逆止弁とを備えることで、緩衝装置D2の伸長作動時には、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧を低減してフリーピストン29が圧側圧力室28側へ偏って変位することを抑制しつつ、緩衝装置D2の収縮作動時において伸側圧力室27の圧力の速やかな圧力低下を実現することで、フリーピストン29の伸側圧力室27側への変位を妨げず、緩衝装置D2の伸縮方向が反転した際にフリーピストン29の戻り遅れが生じてフリーピストン29の圧側圧力室28側への偏りを助長することがなく、偏り抑制効果が高くなる。
また、ピストンロッド23に設けた通路23dに連通されるポート32aを備えたバルブディスク32とリーフバルブ33とで伸側逆止弁を構成することで軸方向長さも短くて済むとともにピストンロッド23への組み付けも容易となる。また、伸側弁要素をリーフバルブ33の外周に設けたオリフィス33aとすることで、リーフバルブ33に伸側逆止弁と伸側弁要素の両方の機能を集約することができる。
次に、フリーピストン29の中立位置からの変位量が圧側流路26の流路抵抗を増加させる範囲内となる場合の緩衝装置D2における動作について説明する。
可変オリフィス40,41は、緩衝装置D2が伸長しても収縮しても、フリーピストン29が中立位置から変位して、その変位量に応じて、徐々に流路面積を小さくし、フリーピストン29が上下のいずれかストロークエンドに到達すると完全に閉塞されて流路面積を固定オリフィス39の流路面積と同じくして最小とする状況となる。
つまり、フリーピストン29が可変オリフィス40,41を閉塞し始めた後は変位量に応じて圧側流路26の流路抵抗を徐々に大きくし、フリーピストン29がストロークエンドに到達すると流路抵抗が最大となる。
ここで、フリーピストン29がストロークエンドまで変位するのは、伸側圧力室27もしくは圧側圧力室28への液体の流出入量が多い場合であり、具体的には、緩衝装置D2の伸縮の振幅が大きい場合である。
緩衝装置D2に入力される振動周波数が比較的高い場合、緩衝装置D2は、フリーピストン29が可変オリフィス40,41を閉塞し始める位置へ変位するまでは、比較的低い減衰力を発生しているが、フリーピストン29が可変オリフィス40,41を閉塞し始める位置を越えて変位するようになると、徐々に圧側流路26の流路抵抗が徐々に大きくなっていくので、フリーピストン29のそれ以上のストロークエンド側への移動速度が減少されて、見掛け上の流路を介しての液体の移動量も減少し、その分、伸側ポート31a或いは圧側ポート31cを通過する液体量が増加することになり、緩衝装置D2の発生減衰力は徐々に大きくなっていく。
そして、フリーピストン29がストロークエンドに達すると、それ以上、見掛け上の流路を介しての液体の移動はなくなり、緩衝装置D2の伸縮方向を転ずるまでは液体は伸側ポート31a或いは圧側ポート31cのみを通過することになり、緩衝装置D2は、最大の減衰係数で減衰力を発生することになる。
すなわち、フリーピストン29がストロークエンドまで変位してしまうような高周波数で大振幅の振動が緩衝装置D2に対し入力されても、フリーピストン29の中立位置からの変位量が任意の変位量を超えるとフリーピストン29がストロークエンドに達するまでに緩衝装置D2は徐々に発生減衰力を大きくするので、低い減衰力から急激に高い減衰力に変化することが無くなる。つまり、フリーピストン29がストロークエンドに達して圧力室R6を介して伸側室R4と圧側室R5の液体の交流ができなくなるときに急激に減衰力の大きさが変化してしまうことがなくなり、低減衰力から高減衰力への減衰力変化がなだらかとなる。さらに、フリーピストン29が圧力室R6における両端側のストロークエンドまで到る際に、徐々に発生減衰力を大きくするので、減衰力の急激な変化を抑制する機能は、緩衝装置D2の伸圧の両行程で発揮される。
したがって、この緩衝装置D2にあっては、高周波数で振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力がなだらかに変化することになって、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずにすみ、車両における乗り心地を向上することができ、特に、急激な減衰力変化によって車体が振動しボンネットが共振して異音が発生してしまう事態も防止でき、この点でも車両における乗り心地を向上することができる。
なお、緩衝装置D2にあっては、差圧低減手段30によってフリーピストン29の圧側圧力室28側への偏りを抑制できるとともに、リーフバルブ33が伸側逆止弁として機能して、収縮行程時に伸側圧力室27の圧力を速やかに伸側室R4へ逃がすので、フリーピストン29がストロークエンドまで変位しても速やかにフリーピストン29を中立位置へ戻すことができる。したがって、この緩衝装置D2にあっては、可変オリフィス40,41が全開されない状態が長時間に亘って発生することがなく、減衰力が長時間に亘って高止まりすることを防止することができる。
このように、具体的な緩衝装置D2にあっては、フリーピストン29がストロークエンドまで変位する事態が生じても、減衰力が高止まりを防止できるから、車軸から車体への振動の伝達を絶縁する効果が消失してしまうといった不具合を解消でき、車両における乗り心地をより一層向上することができる。
以上に説明した緩衝装置D2では、差圧低減手段30を伸側流路25に設けているが、図7に示す緩衝装置D3のように、伸側流路25ではなく圧側流路26側に差圧低減手段を設けることも可能である。
具体的には、差圧低減手段は、ハウジング24の外筒38の外筒底部38aの下端に螺子軸38dを設け、この螺子軸38dに、シム44と、リーフバルブ45と、有底筒状のキャップ部材46を装着し、ナット47で固定することで設置される。
外筒38に設けられる固定オリフィス39は、この場合、螺子軸38dの図7中下端となる先端から開口して外筒底部38aの図7中上端となる圧側圧力室側端へ通じる透孔38eの途中に設けられている。
シム44とリーフバルブ45は、環状であって、シム44の外径はリーフバルブ45の外径よりも小径とされ、また、リーフバルブ45は、外周を切り欠いて形成される圧側弁要素としてのオリフィス45aを備えている。
また、キャップ部材46は、有底筒状であって、底部に螺子軸38dの挿通を許容する挿通孔46aと、底部に設けたポート46bと、筒部の上端内周に設けたシールリング46cとを備え、内径が外筒38の外径よりも大径に設定されている。
したがって、キャップ部材46の挿通孔46aに螺子軸38dを挿入すると、外筒38の外周がキャップ部材46によって覆われ、シールリング46cが外筒38の外周であって可変オリフィス40,41よりも図7中上方側に密着するようになっている。そして、このキャップ部材46と外筒38との間には環状の隙間Sが形成されて、上記した可変オリフィス40,41がキャップ部材46に覆われて上記隙間Sに連通される。つまり、隙間Sは、ポート46bを介して圧側室R5に連通され、可変オリフィス40,41、フリーピストン29の環状溝29cおよび孔29dを介して圧側圧力室28へ連通されている。
この場合、圧側室R5と圧側圧力室28は、透孔38eの他に、環状溝29c、孔29d、可変オリフィス40,41、隙間Sおよびポート46bでなる流路を介して連通され、これらで圧側流路26を構成している。
このキャップ部材46の図7中下方側から螺子軸38dにナット47を螺着することで、図7中上から順に螺子軸38dに装着されたシム44、リーフバルブ45およびキャップ部材46が当該螺子軸38dに固定される。
すると、リーフバルブ45は、内周が螺子軸38dに固定されて外周側の撓みが許容され、撓まずにキャップ部材46の底部の図7中上端に積層される状態ではポート46bを閉じ、外周側が撓むことで当該ポート46bを開放することができる。
つまり、リーフバルブ45は、ポート46bを介してその外周を上方へ撓ませるよう作用する圧側室R5の圧力とその背面側からキャップ部材46の底部へ押しつけるように作用する上記隙間Sの圧力を上回って差圧が開弁圧に達すると、撓んでポート46bを開放して圧側室R5から隙間S、可変オリフィス40,41を介して圧側圧力室28へ向かう液体の流れを許容する。他方、リーフバルブ45は、圧側圧力室28の圧力が圧側室R5の圧力よりも高い場合、隙間Sの圧力も圧側室R5よりも高くなるため、閉弁状態を保ってポート46bを閉じ、流路をオリフィス45aに制限する。つまり、リーフバルブ45は、キャップ部材46と協働して圧側逆止弁を構成している。また、圧側圧力室28から圧側室R5へ液体が向かう場合、リーフバルブ45が閉弁状態となるので、リーフバルブ45の外周に設けたオリフィス45aのみを液体が通過することになる。よって、オリフィス45aは、圧側弁要素として機能する。
この場合、緩衝装置D3の伸長作動時に、伸側圧力室27の圧力が高くなって、フリーピストン29が圧側圧力室28を圧縮するように図中下方へ移動する場合、圧側圧力室28内の液体は、透孔38eとこれに並列される圧側弁要素としてのオリフィス45aを通過して圧側室R5へ移動するので、圧側圧力室28と圧側室R5の差圧は、オリフィス45aがない場合よりも大きくなる。そのため、緩衝装置D3の伸長作動時には、差圧低減手段によって伸側圧力室7と圧側圧力室8の差圧は従来の緩衝装置のそれよりも低減される。
このように、差圧低減手段は、伸側圧力室27の圧力が圧側圧力室28の圧力を上回る緩衝装置D3の伸長作動時に、伸側圧力室27と圧側圧力室28の差圧を低減するようになっている。よって、差圧低減手段が上述のように構成することで、緩衝装置D3に高周波振動が継続して入力されても、伸側圧力室27の圧力が圧側圧力室28の圧力よりも高くなる状態となっても、フリーピストン29がフリーピストン中立位置から圧側圧力室28側へ偏って変位した状態となることを抑制できる。この差圧低減手段を設けた緩衝装置D3によっても、フリーピストン29の圧側圧力室28側へのストローク余裕を確保することができ、フリーピストン29がハウジング24に当接して圧側圧力室28への変位ができなくなることを防止することができ、減衰力低減効果を失うことがない。他方、緩衝装置D3が収縮作動を呈する場合、圧側室R5の液体は、リーフバルブ45がポート46bを開放するので、オリフィス45aが効かずに、比較的抵抗なくポート46bを通過して圧側圧力室28へ移動する。
すると、圧側室R5と圧側圧力室28を液体が交流する際の抵抗は、緩衝装置D3の伸長作動時よりも収縮作動時の方が小さくなるので、収縮作動時の方が圧側室R5内の圧力が圧側圧力室28へ伝播しやすくなる。したがって、緩衝装置D3の収縮作動時においては、圧側圧力室28の圧力の速やかな上昇を実現することで、フリーピストン29の伸側圧力室27側への変位を妨げず、緩衝装置D3の伸縮方向が反転した際にフリーピストン29の戻り遅れが生じてフリーピストン29の圧側圧力室28側への偏りを助長することがなく、偏り抑制効果も高くなる。
さらに、差圧低減手段は、ハウジング24の外筒38の外周に装着されるキャップ部材46と、このキャップ部材46の底部に積層されてポート46bを開閉するリーフバルブ45とを備えていて、外筒38の外筒底部38aに設けた螺子軸38dに固定することで簡単に緩衝装置D3に設置することが可能であり、リーフバルブ45とキャップ部材46の底部の厚みを薄くすることができ緩衝装置D3のストローク長の確保が容易となる。
次に、切換機構を備えた緩衝装置D1をより構造を具体化した一具体例である緩衝装置D4について説明する。
この緩衝装置D4は、図8に示すように、上記した緩衝装置D2の構成に加えて、伸側サブ減衰通路50、圧側サブ減衰通路51および切換機構52を備えている。以下、説明が重複するので、緩衝装置D4が緩衝装置D2と異なる部分についてのみ詳細に説明し、同一の部分については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
まず、ピストンロッド23には、小径部23aの先端から開口する袋孔状の弁孔48が設けられており、この弁孔48の底部側がピストンロッド23の小径部23aの側部から開口する連通孔80によって、バルブディスク32の内周に開口するポート32aに連通されている。ポート32aが伸側室R4に通じているので、弁孔48は、伸側室R4に連通されている。
また、ピストンロッド23には、小径部23aの外周から開口して弁孔48へ通じる透孔49a,49b,49c,49dがそれぞれ軸方向にずれた位置に設けられている。
上記したバルブディスク32は、外径がシリンダ21の内径よりも小径に設定され、図8中上端となる伸側室側端から開口して内周へ通じるポート32aを備えている。そして、バルブディスク32が上記したようにピストンロッド23に固定されると、バルブディスク32の内周に開口するポート32aがピストンロッド23に設けた連通孔80に連通される。
まず、ピストン22は、緩衝装置D2におけるピストン22と同様の構成に加えて、伸側ポート31aの圧側室側の開口端にピストン22の内周に通じる窓31eと、圧側ポート31cの伸側室側の開口端にピストン22の内周に通じる窓31fとを備えている。
そして、ピストン22の図8中下方に積層された伸側バルブ31bの図8中下側となる圧側室側には、外径がシリンダ21の内径よりも小径に設定される伸側バルブディスク53が積層され、さらに、伸側バルブディスク53の図8中下側となる圧側室側には、リーフバルブでなる伸側サブバルブ54が積層されている。さらに、ピストン22の図8中上方に積層された圧側バルブ31dとバルブディスク32との間に、外径がシリンダ21の内径よりも小径に設定される圧側バルブディスク55とこの圧側バルブディスク55の図8中上側となる伸側室側に積層されるリーフバルブでなる圧側サブバルブ56とが介装されている。
そして、伸側バルブディスク53は、環状であって、圧側室側端から内周へ通じる伸側サブポート53aを備えており、この伸側サブポート53aの出口端が上記した伸側サブバルブ54によって開閉されるようになっている。また、圧側バルブディスク55は、環状であって、伸側室側端から内周へ通じる圧側サブポート55aを備えており、この圧側サブポート55aの出口端が上記した圧側サブバルブ56によって開閉されるようになっている。
また、伸側バルブ31bと伸側バルブディスク53との間には、環状のシム57が介装され、圧側バルブ31dと圧側バルブディスク55との間には、環状のシム58が介装されている。さらに、伸側サブバルブ54の図8中下方には、環状のシム59と伸側サブバルブ54の撓み量を規制する環状のバルブストッパ60が積層され、圧側サブバルブ56とバルブディスク32との間には、環状のシム61が介装されている。シム57は、環状であって外径が伸側バルブ31bの外径よりも小径であり、シム58は、環状であって外径が圧側バルブ31dの外径よりも小径であり、シム59は、環状であって外径が伸側サブバルブ54の外径よりも小径であり、シム61は、環状であって外径が圧側サブバルブ56の外径よりも小径であり、これらシム57,58,59,61は、複数枚の環状板を積層して構成してもよい。
上記したバルブストッパ62、シム34、リーフバルブ33、バルブディスク32、シム61、圧側サブバルブ56、圧側バルブディスク55、シム58、圧側バルブ31d、ピストン22、伸側バルブ31b、シム57、伸側バルブディスク53、伸側サブバルブ54、シム59およびバルブストッパ60は、順に上記したピストンロッド23の小径部23aに組み付けられ、バルブストッパ60の図8中下方から、上記螺子部23bに圧力室R6を形成するハウジング24が螺着される。このハウジング24によって、これらのピストンロッド23の小径部23aに組み付けられた各部品がピストンロッド23に固定される。このように、ハウジング24は、内部に圧力室R6を形成するだけでなく、ピストン22やバルブ類をピストンロッド23に固定する役割をも果たしている。
上記したように、ピストン22、バルブディスク32、圧側バルブディスク55および伸側バルブディスク53をピストンロッド23の小径部23aの外周に装着すると、ピストン22の伸側ポート31aは、窓31eとピストンロッド23の小径部23a外周から開口する透孔49aを通じて弁孔48へ連通され、ピストン22の圧側ポート31cは、窓31fとピストンロッド23の小径部23a外周から開口する透孔49bを通じて弁孔48へ連通される。また、伸側バルブディスク53に設けた伸側サブポート53aもピストンロッド23の小径部23a外周から開口する透孔49cを通じて弁孔48へ連通され、圧側バルブディスク55に設けた圧側サブポート55aもピストンロッド23の小径部23a外周から開口する透孔49dを通じて弁孔48へ連通される。
そして、この実施の形態では、伸側サブ減衰通路50は、伸側ポート31a、透孔49a、透孔49cおよび伸側サブポート53aによって構成されている。また、透孔49aと透孔49cとが弁孔48を通じて連通されており、このように、伸側サブ減衰通路50の途中に弁孔48が設けられている。また、圧側サブ減衰通路51は、圧側ポート31c、透孔49b、透孔49dおよび圧側サブポート55aによって構成されている。また、透孔49bと透孔49dとが弁孔48を通じて連通されており、このように、圧側サブ減衰通路51の途中に弁孔48が設けられている。
つまり、伸側サブバルブ54は、圧側室R5側からの圧力によっては開かずに伸側サブ減衰通路50を介して作用する伸側室R4の圧力を受けて撓むと伸側サブポート53aを開放するようになっていて、伸側サブポート53aを通過する流体の流れに抵抗を与えると共に、伸側サブポート53aを一方通行に設定している。また、圧側サブバルブ56は、伸側室R4側からの圧力によっては開かずに圧側サブ減衰通路51を介して圧側室R5の圧力を受けて撓むと圧側サブポート55aを開放するようになっていて、圧側サブポート55aを通過する流体の流れに抵抗を与えると共に、圧側サブポート55aを一方通行に設定している。
なお、伸側サブバルブ54および圧側サブバルブ56を構成するリーフバルブの積層枚数や厚みは、望む減衰特性に応じて任意に変更することができる。
また、このフリーピストン29に、フリーピストン29の圧力室R6に対する変位量に応じてその変位を抑制する附勢力を作用させるばね要素が設けられており、このばね要素は、圧側圧力室28内であって外筒38の外筒底部38aとフリーピストン29の底部29aとの間に介装されるコイルばね64と、弁孔48内であって後述する切換スプール65との間に介装されるコイルばね63とで構成されている。切換スプール65は、弁孔48内に摺動自在に挿入されており、図8中下端をフリーピストン29の底部29aに当接させていて、フリーピストン29は、切換スプール65を介してコイルばね63,64に挟持されて圧力室R6内で中立位置に位置決められた上で弾性支持されている。
なお、ばね要素としては、フリーピストン29を弾性支持できればよいので、コイルばね63,64以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばね等の弾性体を用いてフリーピストン29を弾性支持するようにしてもよい。また、一端がフリーピストン29に連結される単一のばね要素を用いる場合には、ナット部35或いは外筒38に他端を固定するようにしてもよい。切換スプール65がフリーピストン29に一体化される場合、コイルばね63を廃止して別途コイルばねを伸側圧力室27内に収容してフリーピストン29とナット部35との間に介装するようにしてもよいし、コイルばね63をそのままにして別のコイルばねを伸側圧力室27内に収容してコイルばね63,64と当該別のコイルばねでばね要素を構成することも可能である。
つづいて、切換機構52は、ピストンロッド23の一端となる図8中下端から開口して伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51の途中に設けられる弁孔48と、当該弁孔48内に摺動自在に挿入されてフリーピストン29の変位によって軸方向へ変位する切換スプール65とを備えて構成されている。
弁孔48内に摺動自在に挿入される切換スプール65は、外周に周方向に沿って設けた二つの環状凹部65a,65bと備え、その一端となる図8中下端は球状とされて、この下端をフリーピストン29の底部29aに当接させている。切換スプール65のフリーピストン29への当接面を球状としているので、フリーピストン29の底部29aを傷めることがない。また、フリーピストン29と切換スプール65とが分離状態とされているので、圧力室R6内で軸方向へ摺動するフリーピストン29と、弁孔48内で軸方向へ摺動する切換スプール65が偏心していても容易に組み立てることができ、フリーピストン29と切換スプール65とが互いに相手の変位を妨げる摩擦力を発生することもない。
また、切換スプール65は、他端となる図8中上端から開口して、一端側の外周へ通じるスプール内通路65cを備えている。スプール内通路65cは、常時伸側圧力室27内に通じており、また、弁孔48および連通孔80を介して伸側室R4に通じて、連通孔80とともに、伸側流路25を形成している。なお、この緩衝装置D4にあっても、緩衝装置D2と同様に、バルブディスク32とリーフバルブ33とで伸側弁要素と伸側逆止弁とを構成して差圧低減手段30を伸側流路25に設けている。
さらに、切換スプール65は、上記した弁孔48の底部と切換スプール65の他端となる図8中上端との間に介装してコイルばね63によって、常時、フリーピストン29へ向けて附勢されており、フリーピストン29から離間することがないようになっている。
そして、切換スプール65は、フリーピストン29の中立位置からの変位が伸側変位および圧側変位に達しない位置にある際には、ピストン22の伸側ポート31aに連通する透孔49aと伸側サブポート53aに連通する透孔49cの双方に環状凹部65aを対向させ、圧側ポート31cに連通する透孔49bと圧側サブポート55aに連通する透孔49dの双方に環状凹部65bを対向させ、伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51を開放するようになっている。
したがって、フリーピストン29の中立位置からの変位が上記した伸側変位および圧側変位に達しない位置にある際には、緩衝装置D4が伸縮作動を呈すると、流体は、伸側ポート31aと伸側サブポート53aを共に通過するか、或いは圧側ポート31cと圧側サブポート55aを共に通過して伸側室R4と圧側室R5を行き来することになる。
他方、フリーピストン29が図9に示すように、上方へ移動して中立位置から所定の伸側変位以上に変位する際には、切換スプール65もフリーピストン29によって図8の状態から図9のように上方へ押し上げられて、環状凹部65aを透孔49a,49cに対向させて、透孔49a,49cを環状凹部65aで連通するようになっている。なお、この状態では、切換スプール65は、外周であって環状凹部65a,65b間を透孔49bに対向させて透孔49bを遮断する。つまり、伸側ポート31aに通じる透孔49aと伸側サブポート53aに通じる透孔49cが切換スプール65によって連通され、圧側ポート31cに通じる透孔49bが切換スプール65によって遮断される。したがって、フリーピストン29が中立位置から所定の伸側変位以上に変位する際には、伸側サブ減衰通路50が連通状態とされ、圧側サブ減衰通路51は遮断された状態となる。この場合、透孔49bを切換スプール65で閉塞することに代えて、透孔49dに切換スプール65の環状凹部65a,65b以外の部位を対向させて、これを遮断するようにしてもよい。
また、フリーピストン29が図10に示すように、下方へ移動して中立位置から所定の圧側変位以上に変位する際には、切換スプール65もフリーピストン29の変位でコイルばね63によって図8の状態から図10のように下方へ押し下げられて、環状凹部65bを透孔49b,49dに対向させて、透孔49b,49dを環状凹部65bで連通するようになっている。なお、この状態では、切換スプール65は、外周であって環状凹部65a,65b間を透孔49aに対向させて透孔49aを遮断する。この場合には、圧側ポート31cに通じる透孔49bと圧側サブポート55aに通じる透孔49dが切換スプール65によって連通され、伸側ポート31aに通じる透孔49aが切換スプール65によって遮断される。したがって、フリーピストン29が中立位置から所定の圧側変位以上に変位する際には、圧側サブ減衰通路51が連通状態とされ、伸側サブ減衰通路50は遮断された状態となる。この場合、透孔49aを切換スプール65で閉塞することに代えて、透孔49cに切換スプール65の環状凹部65a,65b以外の部位を対向させて、これを遮断するようにしてもよい。
なお、伸側バルブ31b、圧側バルブ31d、伸側サブバルブ54および圧側サブバルブ56が通過液体に与える抵抗は、リーフバルブの積層枚数や厚みを変更することで行うことができる。リーフバルブの積層枚数や厚みを変更する場合、透孔49a,49b,49c,49dとピストン22、伸側バルブディスク53および圧側バルブディスク55との相対位置が変化するので、その調整をシム57,58,59,61における厚みや環状板の積層枚数の調節で、透孔49aを伸側ポート31aに連通させ、透孔49bを圧側ポート31cに連通させ、透孔49cを伸側サブポート53aに連通させ、透孔49dを圧側サブポート55aに連通させることができる位置へ、それぞれピストン22、伸側バルブディスク53および圧側バルブディスク55をピストンロッド23に対して位置決めるようにすればよい。また、この実施の形態では、減衰特性の設定が比較的容易となるために、伸側バルブ31b、圧側バルブ31d、伸側サブバルブ54および圧側サブバルブ56にリーフバルブを用いたが、オリフィス或いはチョークと逆止弁とを直列に設けたバルブ構成や、ポペット弁やニードル弁といったリーフバルブ以外の構成を採用することも可能であるが、リーフバルブを採用することで、減衰特性の調節が容易で、且つ、バルブ自体の軸方向の全長が短くて済むので、緩衝装置D4のストローク長を確保して、緩衝装置D4の車両への搭載性が向上する利点がある。
続いて、緩衝装置D4の作動について説明する。まず、フリーピストン29の中立位置からの変位が上記した所定の伸側変位および圧側変位に達しない状態での緩衝装置D4の作動について説明する。
この場合、切換機構52は、伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51を開放する。この状態では、緩衝装置D4がシリンダ21に対してピストン22が図8中上下動する伸縮作動を呈すると、ピストン22によって伸側室R4と圧側室R5の一方が圧縮され、伸側室R4と圧側室R5の他方が拡張されるので、伸側室R4と圧側室R5のうち圧縮される方の圧力が高まると同時に、伸側室R4と圧側室R5のうち容積拡大される方の圧力が低下して両者に差圧が生じて、伸側室R4と圧側室R5のうち圧縮側の流体は伸側ポート31aと伸側サブ減衰通路50、或いは、圧側ポート31cと圧側サブ減衰通路51のいずれかと、これに加えて、上記した見掛け上の流路を介して伸側室R4と圧側室R5のうち拡大側に移動する。
ここで、フリーピストン29の中立位置からの変位の振幅が小さくなるのは、緩衝装置D4の振幅が小さく圧力室R6内に流入する流体量が少ない場合であり、伸縮一周期で伸側室R4と圧側室R5を行き交う流体の流量は小さくなるのは、緩衝装置D4に入力される振動の周波数、すなわち、緩衝装置D4の伸縮方向の振動の周波数が高周波である場合である。このように高周波の振動が緩衝装置Dに入力される場合、フリーピストン29の中立位置からの変位量が少なく、伸側サブ減衰通路50および圧側サブ減衰通路51が開放され、緩衝装置D4が発生する減衰力は低くなる。そして、特に、緩衝装置D4の伸縮速度が非常に高くなる場面にあってフリーピストン29が中立位置近傍で変位しづらくなっても、フリーピストン29が中立位置近傍にある場合には、切換機構52が伸側サブ減衰通路50および圧側サブ減衰通路51を開放するので、このような場面でも減衰力低減効果が減殺されず、確実に緩衝装置D4の減衰力を低減することができる。
さらに、フリーピストン29の中立位置からの変位が上記した所定の伸側変位および圧側変位に達する状態での緩衝装置D4の作動について説明する。
この場合は、緩衝装置D4の振幅が大きく、伸側圧力室27或いは圧側圧力室28に大流量が流入して、フリーピストン29が中立位置から大きく変位し、ストロークエンドまでのストローク余裕が少なくなる状況であり、ストロークエンドまで達すると、見掛け上の流路を介して伸側室R4と圧側室R5の流体の交流が少なくなるので、高周波振動の入力に対して減衰力を低減する効果が少なくなる。
しかしながら、このようにフリーピストン29が変位すると、切換機構52は、フリーピストン29が中立位置から伸側圧力室27を圧縮する方向へ変位している場合には、伸側サブ減衰通路50を開放して圧側サブ減衰通路51を遮断し、他方、フリーピストン29が中立位置から圧側圧力室28を圧縮する方向へ変位している場合には、圧側サブ減衰通路51を開放して伸側サブ減衰通路50を遮断する。
そして、切換機構52が伸側サブ減衰通路50を開放して圧側サブ減衰通路51を遮断している状態では、緩衝装置D4が伸長作動をすると、伸側室R4の流体は伸側ポート31aのみならず伸側サブ減衰通路50をも介して圧側室R5へ移動するので、緩衝装置D4は、低い減衰力を発生する。この状態で、緩衝装置D4が収縮作動をすると、圧側サブ減衰通路51が遮断されているので、圧側室R5の流体は圧側ポート31cのみを介して伸側室R4へ移動するので、緩衝装置D4は、高い減衰力を発生する。
フリーピストン29が中立位置から伸側圧力室27を圧縮する方向へ変位しているということは、緩衝装置D4は、大振幅で収縮作動を呈していた状況であるから、さらに収縮作動を呈する場合には、高減衰力を発揮し、反対に、収縮作動を終えて伸長作動に転じる場合には低い減衰力を発揮することになる。
つまり、この状況では、車体が車輪に対して大きく沈み込む場合に緩衝装置D4は高い減衰力を発揮してこれを抑制し、反対に、車体が車輪から離間する、すなわち、緩衝装置D4が伸びようとすると、減衰力を低減させて当該車体の動きを極力抑制しないようにして、車体振動を低減する。
逆に、切換機構52が伸側サブ減衰通路50を遮断して圧側サブ減衰通路51を開放している状態では、緩衝装置D4が伸長作動をすると、伸側サブ減衰通路50が遮断されているので、伸側室R4の流体は伸側ポート31aのみを介して圧側室R5へ移動するため、緩衝装置D4は、高い減衰力を発生する。この状態で、緩衝装置D4が収縮作動をすると、圧側室R5の流体は圧側ポート31cのみならず圧側サブ減衰通路51をも介して伸側室R4へ移動するので、緩衝装置D4は、低い減衰力を発生する。
フリーピストン29が中立位置から圧側圧力室28を圧縮する方向へ変位しているということは、緩衝装置D4は、大振幅で伸長作動を呈していた状況であるから、さらに伸長作動を呈する場合には、高減衰力を発揮し、反対に、伸長作動を終えて収縮作動に転じる場合には低い減衰力を発揮することになる。
つまり、この状況では、車体が車輪から大きく離間する場合に緩衝装置D4は高い減衰力を発揮してこれを抑制し、反対に、車体が車輪へ沈み込む方向へ変位する、すなわち、緩衝装置D4が縮もうとする際には、減衰力を低減させて当該車体の動きを極力抑制しないようにして、車体振動を低減する。
以上をまとめると、緩衝装置D4が大振幅の収縮作動を呈してフリーピストン29が中立位置から所定の伸側変位以上変位する場合、それ以上の収縮作動に対して緩衝装置D4は高い減衰力を発揮し、伸長作動に転じると緩衝装置Dは低い減衰力を発揮し、緩衝装置D4が大振幅の伸長作動を呈してフリーピストン29が中立位置から所定の圧側変位以上変位する場合、それ以上の伸長作動に対して緩衝装置D4は高い減衰力を発揮し、収縮作動に転じると緩衝装置D4は低い減衰力を発揮する。そのため、この緩衝装置D4では、車体振動を効果的に抑制して車両における乗り心地を向上することができる。
すなわち、この緩衝装置D4によれば、伸縮速度が非常に高くなる場面にあってフリーピストン29が中立位置近傍で変位しづらくなっても、フリーピストン29が中立位置近傍にある場合には、切換機構52が伸側サブ減衰通路50および圧側サブ減衰通路51を開放するので、高周波振動の入力時に減衰力低減効果が減少されず、確実に緩衝装置D4の減衰力を低減することができる。
また、この緩衝装置D4にあっては、フリーピストン29が中立位置から伸側圧力室27を圧縮する方向へ変位している場合には、切換機構52は、伸側サブ減衰通路50を開放して圧側サブ減衰通路51を遮断し、他方、フリーピストン29が中立位置から圧側圧力室28を圧縮する方向へ変位している場合には、圧側サブ減衰通路51を開放して伸側サブ減衰通路50を遮断するので、緩衝装置D4の伸縮方向の切換時に高い減衰力が発生されてしまうことがなく、車軸側から車体への振動伝達を効果的に絶縁することができる。
そして、フリーピストン29における中立位置からの変位量がオリフィス40,41を閉塞し始める変位を可変変位とすると、フリーピストン29の中立位置からの変位量が上記可変変位に達すると、この可変変位に達してからはその変位量に応じて、徐々に流路面積を小さくする。つまり、フリーピストン29が可変オリフィス40,41を閉塞し始めた後は変位量に応じて可変オリフィス40,41における流路抵抗が徐々に大きくなる。なお、可変変位は、フリーピストン29の伸側圧力室27を圧縮する方向と圧側圧力室28を圧縮する方向とで異なるように設定されてもよく、伸側変位および圧側変位に対して独立に設定することができる。
したがって、フリーピストン29が可変オリフィス40,41を閉塞し始める位置を超えて変位するようになると、徐々に可変オリフィス40,41の流路抵抗が徐々に大きくなって、フリーピストン29のそれ以上のストロークエンド側への移動速度が減少されて、フリーピストン29とハウジング24との軸方向で勢いよく衝突することが防止されて、大きな打音の発生を抑制することができる。なお、フリーピストン29とハウジング24のいずれかにこれらの衝突音の発生を防止するクッションを設けるようにしてもよい。
また、フリーピストン29が可変変位に達するまで変位し、伸側変位および圧側変位を超えて変位する場合には、フリーピストン29の中立位置方向への変位も抑制されるので、減衰力の高低の切り換わりが振動的になってしまうことが抑制され、安定した減衰力を発揮することができる。また、フリーピストン29の変位速度が緩慢となって切換スプール65が伸側サブポート53aと圧側サブポート55aの開閉を徐々に行うので、減衰特性の急変が回避されて乗心地のより一層の向上が望める。そして、この緩衝装置D4では、差圧低減手段30を備えているので、高周波振動が継続して入力されてもフリーピストン29が圧側圧力室28側へ偏って変位することがないから、上記した切換機構52の適切な動作が保証され、緩衝装置D4は安定して車体の制振に適した減衰力を発揮することができる。この緩衝装置D4にあっても、差圧低減手段30の代わりに或いはこれに加えて差圧低減手段を設けるようにしても同様の効果を得ることができる。
また、この緩衝装置D4にあっては、シリンダ21内に移動自在に挿入されて一端に隔壁部材としてのピストン22が固定されるピストンロッド23を備え、圧力室R6がピストンロッド23の一端に固定されるハウジング24により形成され、切換機構52が、ピストンロッド23の一端から開口して伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51の途中に設けられる弁孔48と、弁孔48内に摺動自在に挿入されてフリーピストン29の変位によって軸方向へ変位する切換スプール65とを備えているので、切換機構52をピストンロッド23の内部に組み込むことができ、これにより緩衝装置D4をコンパクトにすることができる。
また、緩衝装置D4は、伸側サブ減衰通路50が切換機構52を介して伸側室R4へ連通される伸側サブポート53aを備えて圧側室R5に配置される伸側バルブディスク53と伸側バルブディスク53に積層されて伸側サブポート53aを開閉する伸側サブバルブ54とを備え、圧側サブ減衰通路51が切換機構52を介して圧側室R5へ連通される圧側サブポート55aを備えて伸側室R4に配置される圧側バルブディスク55と圧側バルブディスク55に積層されて圧側サブポート55aを開閉する圧側サブバルブ56とを備えているので、伸側サブ減衰通路50を通過する流体の流れに与える抵抗と圧側サブ減衰通路51を通過する流体の流れに与える抵抗とを別々に設定でき、伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51の開放の際において、伸長作動時と収縮作動時における減衰力を異ならしめることができる。
また、この緩衝装置D4では、減衰通路31が隔壁部材としてのピストン22に設けられて伸側室R4と圧側室R5とを連通する伸側ポート31aおよび圧側ポート31cと、ピストン22の圧側室R5側に積層されて伸側ポート31aを開閉する伸側バルブ31bと、ピストン22の伸側室R5側に積層されて圧側ポート31cを開閉する圧側バルブ31dとを備えているので、伸側サブ減衰通路50と圧側サブ減衰通路51の遮断の際において、伸長作動時と収縮作動時における減衰力を異ならしめることができる。
さらに、この緩衝装置D4にあっては、ピストンロッド23に弁孔48を伸側室R4へ連通する連通孔80を設け、切換スプール65は、一端をフリーピストン29に当接するとともに、他端から開口して伸側圧力室27へ通じるスプール内通路65cを備え、伸側流路25がスプール内通路65cと連通孔80を含んで形成されるので、他所へ伸側通路25を設ける場合に比較して、緩衝装置D4をコンパクトにすることができ、また、スプール内通路65cの途中に絞り弁等を設けておらず、切換スプール65の両端となる図8中上下端に伸側圧力室27内の圧力が作用しても切換スプール65が当該圧力によって上下方向に附勢されないので、フリーピストン29の変位に影響を与えることがない。
そして、緩衝装置D4にあっては、隔壁部材としてのピストン22、伸側バルブ31b、圧側バルブ31dが共に環状であって、伸側バルブディスク53は、環状であって伸側バルブ31bの圧側室R5側に積層され、伸側サブバルブ54は、環状であって伸側バルブディスク53の圧側室R5側に積層され、圧側バルブディスク55は、環状であって圧側バルブ31dの伸側室R4側に積層され、圧側サブバルブ56は、環状であって圧側バルブディスク55の伸側室側に積層され、ピストン22、バルブディスク32、リーフバルブ33、伸側バルブ31b、圧側バルブ31d、伸側バルブディスク53、伸側サブバルブ54、圧側バルブディスク55および圧側サブバルブ56は、ピストンロッド23の一端外周に装着されてハウジング24によってピストンロッド23に固定されるようになっているので、上記した各部材をピストンロッド23に組み付けるだけで差圧低減手段30、伸側サブ減衰通路50および圧側サブ減衰通路51を形成することができ、固定もハウジング24によって行うことができるので組立が容易となる。さらに、リーフバルブ33、伸側バルブ31b、伸側サブバルブ54、圧側バルブ31dおよび圧側サブバルブ56が互いに対面していないのでお互いが干渉せず、各々の撓みが阻害されることがないので、安定した減衰力を発揮することができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。