以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の第一の実施の形態における緩衝装置D1は、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの伸側室R1および圧側室R2に区画するピストン2と、リザーバRと、リザーバRから圧側室R2へと向かう液体の流れのみを許容する吸込通路3と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路4と、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該液体の流れに与える抵抗を変更可能な減衰力調整部としての減衰力可変バルブVと、小断面積部14aと大断面積部14bとを有する圧力室14を備えたハウジングとしてのボトム部材11と、圧力室14の小断面積部14a内に摺動自在に挿入される小ピストン部5bと圧力室14の大断面積部14b内に摺動自在に挿入される大ピストン部5cとを備えて小断面積部14a内に小ピストン部5bで小室15を区画し、大断面積部14b内であって小ピストン部5bの外周に外周室17を区画し、大断面積部14b内に大ピストン部5cで大室16を区画するフリーピストン5と、フリーピストン5を圧力室14に対して中立位置に位置決めるとともに当該フリーピストン5の中立位置からの変位を抑制する附勢力を発揮するばね要素6と、小室15と外周室17のうち一方、この例では、外周室17を伸側室R1に連通する伸側通路20と、大室16を圧側室R2に連通する圧側通路19と、フリーピストン5のボトム部材11への衝突を抑制する液圧クッション機構Lとを備えている。
また、緩衝装置D1は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド21を備えており、ピストンロッド21の一端21aはピストン2に連結されるとともに、他端である上端は、シリンダ1の上端を封止する環状のロッドガイド8によって摺動自在に軸支されて外方へ突出されている。さらに、緩衝装置D1は、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間に伸側室R1とリザーバRとを連通する排出通路7を形成する中間筒9と、中間筒9の外周を覆って中間筒9との間にリザーバRを形成する有底筒状の外筒10とを備えて構成されており、減衰力可変バルブVは排出通路7とリザーバRとの間に設けられている。シリンダ1および中間筒9の下端は、ボトム部材11によって封止されており、このボトム部材11に圧力室14と吸込通路3が設けられている。
そして、伸側室R1、圧側室R2さらには圧力室14内には作動油等の液体が充満され、また、リザーバR内には、当該液体とともに気体が充填されている。なお、上記した液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
以下、緩衝装置D1の各部について詳細に説明する。ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド21の図1中下端である一端21aに連結されている。また、ピストンロッド21とこれを軸支するロッドガイド8との間は、シール部材12によってシールされており、シリンダ1内は液密状態に保たれている。
ロッドガイド8は、外周が中間筒9および外筒10に嵌合することができるように段階的に外径が大きくなっていて、シリンダ1、中間筒9および外筒10の図1中上端開口を閉塞している。
他方、シリンダ1の図1中下端には、ボトム部材11が嵌合されている。このボトム部材11は、圧力室14と吸込通路3の他に、シリンダ1内に嵌合される小径部11aと、小径部11aよりも外径が大きい中間筒9内に嵌合する中径部11bと、中径部11bの図1中下端側に設けられて中径部11bよりも外径が大きな大径部11cと、大径部11cの図1中下端側に設けた筒部11dと、筒部11dに設けた複数の切欠11eとを備えている。
そして、外筒10内に、ボトム部材11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8およびシール部材12を収容し、外筒10の図1中上端を加締めると、外筒10の加締部10aと外筒10の底部10bとで、ボトム部材11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8およびシール部材12が挟み込まれて、これらが外筒10に固定される。なお、外筒10の開口端を加締めるのではなく、外筒10に螺着されるキャップと底部10bとでボトム部材11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8およびシール部材12を挟み込むようにしてもよい。
ボトム部材11に設けられた吸込通路3は、具体的には、ボトム部材11に設けられてリザーバRを圧側室R2へ連通する通路3aと、当該通路3aに設けたチェックバルブ3bとを備えている。通路3aは、ボトム部材11の小径部11aの図1中上端から開口して大径部11cの図1中下端へ通じるようになっており、リザーバRへは切欠11eを介して通じている。チェックバルブ3bは、液体がリザーバRから圧側室R2へ向かって流れる場合にのみ開弁するようになっており、通路3aがリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、逆方向への流れを阻止する一方通行に設定され、これら通路3aとチェックバルブ3bによって吸込通路3が構成されている。
ピストン2は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路4が設けられている。整流通路4は、具体的には、ピストン2に設けられて圧側室R2を伸側室R1へ連通する通路4aと、当該通路4aに設けたチェックバルブ4bとを備えている。チェックバルブ4bは、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かって流れる場合にのみ開弁するようになっており、通路4aが圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容し、逆方向への流れを阻止する一方通行に設定され、これら通路4aとチェックバルブ4bによって整流通路4が構成されている。
また、シリンダ1の図中上端近傍には、伸側室R1に臨む透孔1aが設けられており、伸側室R1がシリンダ1と中間筒9との間に形成された環状隙間に連通されている。シリンダ1と中間筒9の間の環状隙間は、伸側室R1とリザーバRとを連通する排出通路7を形成している。減衰力可変バルブVは、外筒10と中間筒9に架け渡されて固定されるバルブブロック13に設けられており、中間筒9内の排出通路7をリザーバRに接続する流路13aと、流路13aの途中に設けた弁体13bと、弁体13bより上流側である伸側室R1の圧力を当該弁体13bに開弁方向へ押圧するように作用させるパイロット通路13cと、弁体13bを閉弁方向に押圧する押圧力を発揮するとともに当該押圧力を可変にする押圧装置13dとを備えて構成されている。押圧装置13dは、図示したところでは、たとえば、ソレノイドで弁体13bを閉弁方向に押圧する圧力を制御するようになっており、外部からソレノイドへ供給する電流供給量に応じて上記圧力を変化させることができるようになっている。押圧装置13dは、上記以外にもソレノイド等のアクチュエータのみで弁体13bを押圧するものであってもよいし、これら以外にも供給される電流量や電圧量に応じて押圧力を変化させることができるものであってよい。また、減衰力調整部としては、液体が磁気粘性流体とされる場合には、減衰力可変バルブVに変えて、排出通路7とリザーバRとを連通する流路に磁界を作用させることができるもの、たとえば、コイル等であってもよく、外部から供給される電流量によって磁界の大きさを調整して流路を通過する磁気粘性流体の流れに与える抵抗を変化させるようにしてもよい。さらに、流体を電気粘性流体とする場合には、減衰力調整部は、排出通路7とリザーバRとを連通する流路に電界を作用させることができるものであってもよく、外部から与えられる電圧によって電界の大きさを調整して、上記流路を流れる電気粘性流体に与える抵抗を変化させるようにしてもよい。
したがって、この緩衝装置D1の場合、収縮作動する際には、ピストン2が図1中下方へ移動して圧側室R2が圧縮され、圧側室R2内の液体が整流通路4を介して伸側室R1へ移動する。この収縮作動時には、ピストンロッド21がシリンダ1内に侵入するためシリンダ1内でロッド侵入体積分の液体が過剰となり、過剰分の液体がシリンダ1から押し出されて排出通路7を介してリザーバRへ排出される。緩衝装置D1は、排出通路7を通過してリザーバRへ移動する液体の流れに減衰力可変バルブVで抵抗を与えることによって、シリンダ1内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
反対に、緩衝装置D1が伸長作動する際には、ピストン2が図1中上方へ移動して伸側室R1が圧縮され、伸側室R1内の液体が排出通路7を介してリザーバRへ移動する。この伸長作動時には、ピストン2が上方へ移動して圧側室R2の容積が拡大するが、この拡大分に見合った液体が吸込通路3を介してリザーバRから供給される。そして、緩衝装置D1は、排出通路7を通過してリザーバRへ移動する液体の流れに減衰力可変バルブVで抵抗を与えることによって伸側室R1内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
上述したところから理解できるように、緩衝装置D1は、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ1内から排出通路7を介して液体をリザーバRへ排出し、液体が圧側室R2、伸側室R1、リザーバRを順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝装置に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰力可変バルブVによって発生するようになっている。なお、ピストンロッド21の断面積をピストン2の断面積の二分の一に設定しておくことで、同振幅であればシリンダ1内から排出される作動油量を伸圧両側で等しく設定できるため、伸圧両側で減衰力可変バルブVが流れに与える抵抗を同じにしておくと、伸側と圧側の減衰力を等しくすることもできる。
つづいて、圧力室14は、この実施の形態の場合、上述したボトム部材11に設けた中空部によって形成されている。圧力室14は、詳しくは、内壁の図1中上下方向に対して垂直に切った断面で仕切られる面積が途中で異なっており、図1中下方側の内壁断面で仕切った面積が小さい小断面積部14aと図1中上方側の内壁断面で仕切った面積が大きい大断面積部14bと、小断面積部14aと大断面積部14bの途中に設けた段部14cとを備えて構成されている。
この圧力室14内には、フリーピストン5が摺動自在に挿入されている。フリーピストン5は、この場合、板状の基部5aと、基部5aの図1中下端から立ち上がり圧力室14の小断面積部14a内に摺動自在に挿入される筒状の小ピストン部5bと、基部5aの図1中上端の外周から立ち上がり圧力室14の大断面積部14b内に摺動自在に挿入される筒状の大ピストン部5cとを備えており、段付き形状とされている。したがって、フリーピストン5は、図1中上下方向に移動することができるようになっている。また、圧力室14における小断面積部14aと大断面積部14bは、フリーピストン5の摺動方向に沿って形成されればよい。
そして、フリーピストン5は、その小ピストン部5bを小断面積部14a内に摺動自在に挿入することで、小断面積部14a内であって小ピストン部5bの図1中下方に小室15を区画し、大ピストン部5cを大断面積部14b内に摺動自在に挿入することで大断面積部14b内であって大ピストン部5cの図1中上方に大室16を区画し、大断面積部14b内の基部5aと段部14cとの間であって小ピストン部5bの外周に外周室17を区画している。フリーピストン5の大ピストン部5cの外周には大断面積部14bの内周に摺接するシールリング5dが装着されており、大室16と外周室17とがフリーピストン5の外周を通じて連通することが無いようになっている。なお、小ピストン部5bの外周にも外周室17と小室15との連通を防止するべく、シールリングを設けるようにしてもよい。
上記のように形成された小室15は、ボトム部材11に設けた通路18および切欠11eを介してリザーバRに連通され、小室15にはリザーバRに由来する圧力が作用している。大室16は、同じくボトム部材11の小径部11aの図1中上端から開口して大断面積部14bの上端に通じる圧側通路19を介して圧側室R2に連通されており、圧側室R2に由来する圧力が作用していて、圧側室R2に連通される圧側圧力室として機能している。
また、外周室17は、ボトム部材11に設けた伸側通路20と、伸側通路20に対向するシリンダ1の下端近傍に設けた透孔1bとを介して、排出通路7に接続されている。液圧クッション機構Lは、可変絞り弁であって、この伸側通路20の途中に設けられており、フリーピストン5が圧力室に対して中立位置から所定量変位すると流路面積を減少させるようになっており、フリーピストン5の中立位置からの変位量に応じて流路面積を減少させるようになっている。液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁は、フリーピストン5の中立位置からの変位量が多くなればなるほど流路面積を減少させるものであってもよいし、流路面積に下限を設定して流路面積が下限以下に減少しないものであってもよいし、また、可変絞り弁が流路面積を減少し始めるフリーピストン5の変位量である所定量はフリーピストン5がストロークエンドに到達しない範囲で任意に設定することができ、0に設定してフリーピストン5が中立位置から変位すると直ちに流路面積を減少するようにしてもよく、また、可変絞り弁が流路面積を減少し始めるフリーピストン5の中立位置からの変位量をフリーピストン5の移動方向の両側で異なるように設定してもよい。
戻って、排出通路7は、上述したように、伸側室R1に通じているので、外周室17は、伸側室R1に連通されていて、伸側室R1に由来する圧力が作用し、伸側圧力室として機能している。外周室17は、この実施の形態では、緩衝装置D1をユニフロー構造にするために設けた減衰力可変バルブVへ液体を導く排出通路7を利用して伸側室R1に連通するようにしているので、排出通路7を共用することができ、ボトム部材11に圧力室14を設けても別個に伸側室R1に外周室17を連通する通路を設ける必要がなくなる点で緩衝装置D1のコスト軽減および軽量化の点で有利である。
上記したところから、大室16内の圧力、すなわち、圧側室R2から導入される圧力(圧側室由来の圧力)がフリーピストン5の大ピストン部5cを図1中上下方向に垂直な面で切った断面の外縁で仕切られる面積を受圧面積(圧側受圧面積A1)として作用しており、小室15および外周室17を圧縮する方向である図1中下方へフリーピストン5を押圧している。
他方、外周室17内の圧力、すなわち、伸側室R1から導入される圧力(伸側室由来の圧力)がフリーピストン5の大ピストン部5cを図1中上下方向に垂直な面で切った断面の外縁と小ピストン部5bを図1中上下方向に垂直な面で切った断面の外縁で仕切られる面積を受圧面積(伸側受圧面積B1)として作用しており、さらに、小室15内の圧力、すなわち、リザーバRの圧力がフリーピストン5の小ピストン部5bを図1中上下方向に垂直な面で切った断面の外縁で仕切られる面積を受圧面積として作用しており、大室16を圧縮する方向である図1中上方へフリーピストン5を押圧している。
このように、フリーピストン5を摺動方向の一方(図1中下方)に押圧するよう当該フリーピストン5に圧側室由来の圧力を作用させるとともに、フリーピストン5を摺動方向の他方(図1中上方)に押圧するようフリーピストン5に伸側室由来の圧力を作用させており、フリーピストン5の圧側室由来圧力が作用する圧側受圧面積A1をフリーピストン5の伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B1よりも大きくしてある。また、フリーピストン5を摺動方向の他方に押圧するように伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B1以外の部位C1、つまり、小室15に臨む面にリザーバRに由来の圧力を作用させている。
さらに、フリーピストン5の圧力室14に対する変位に対して当該変位を抑制する附勢力を作用させるため、大室16内であって大断面積部14bの頂壁とフリーピストン5の基部5aとの間、および、小室15内であって小断面積部14aの底壁とフリーピストン5の基部5aとの間に、それぞれ、ばね要素6としてのコイルばねである圧側ばね6aおよび伸側ばね6bがともに圧縮状態で介装されている。このようにフリーピストン5は、これら圧側ばね6aおよび伸側ばね6bによって上下側から挟持されて、圧力室14内の所定の中立位置に位置決められていて、中立位置から変位すると圧側ばね6aおよび伸側ばね6bがフリーピストン5を中立位置に戻そうとする附勢力を発揮するようになっている。中立位置は、圧力室14の軸方向の中央を指すものではなく、フリーピストン5がばね要素6によって位置決められる位置のことである。
なお、ばね要素6としては、フリーピストン5を中立位置に位置決めるとともに、附勢力を発揮できればよいので、コイルばね以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばね等の弾性体を用いてフリーピストン5を弾性支持するようにしてもよい。また、一端がフリーピストン5に連結される単一のばね要素6を用いる場合には、大断面積部14bの頂壁或いは小断面積部14aの底壁に他端を固定するようにしてもよい。
この場合、ばね要素6として圧側ばね6aと伸側ばね6bとを用いており、フリーピストン5を基部5aの両側に筒状の小ピストン部5bおよび大ピストン部5cを設けた形状とすることで、圧側ばね6aを大ピストン部5c内に、小ピストン部5b内に伸側ばね6bを収容することができ、圧側ばね6aおよび伸側ばね6bの伸縮スペースが確保されてフリーピストン5のストローク長を充分に確保しつつ圧力室14の全長を短縮化することができる。なお、緩衝装置D1の全長やストローク長に制約がなく、圧力室14の全長を充分に確保することができる場合には、フリーピストン5の構造を小ピストン部5bと大ピストン部5cを中実な円柱状としてこれらを一体化した構造とすることも可能である。
緩衝装置D1は、以上のように構成され、この緩衝装置D1は、圧力室14がフリーピストン5によって伸側圧力室としての外周室17と圧側圧力室としての大室16とに区画されており、フリーピストン5が移動すると大室16と外周室17の容積が変化する。
緩衝装置D1が伸長作動する場面では、ピストン2が図1中上方へ移動するので、圧縮される伸側室R1からは液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出され、拡大される圧側室R2へは吸込通路3を介してリザーバRから液体が供給される。よって、伸側室R1内の圧力は上昇し、圧側室R2内の圧力はリザーバR内とほぼ等しくなる。
大室16は、圧側通路19を介して圧側室R2に連通されているので、圧側室R2内の圧力が伝搬し、大室16内の圧力は圧側室R2に由来した圧力となるため、リザーバR内とほぼ等しい圧力となる。また、小室15もリザーバRに連通されているので小室15内もリザーバR内とほぼ等しい圧力となる。他方、外周室17は、伸側室R1に連通されており、外周室17内には、伸側室R1に由来した圧力が作用する。
したがって、緩衝装置D1が伸長作動する場合、フリーピストン5の圧側受圧面積A1と部位C1にはリザーバRの圧力にほぼ等しい圧力が作用し、伸側受圧面積B1にはリザーバRの圧力よりも高い伸側室R1に由来する圧力が作用するので、フリーピストン5は、図1中上方側へ押されて移動することになる。このようにフリーピストン5が移動すると、このフリーピストン5の移動量に応じて外周室17へ液体が流れ込み、大室16から圧側室R2へ液体が排出されるので、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、液体が伸側室R1から圧側室R2へ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。また、フリーピストン5が中立位置から上方へ移動して所定量以上変位すると、液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁が流路面積を減少させるため、外周室17内へ液体が流れ込みにくくなり、フリーピストン5の移動速度が減速され、フリーピストン5とボトム部材11とが勢いよく衝突することが阻止され、両者が接触する際の打音を低減することができる。
逆に、緩衝装置D1が収縮作動する場面では、ピストン2が図1中下方へ移動するので、整流通路4によって、圧縮される圧側室R2と拡大される伸側室R1が連通状態におかれシリンダ1内から液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出される。よって、伸側室R1内および圧側室R2内の圧力は、ほぼ等しくともに上昇することになる。
大室16は、圧側通路19を介して圧側室R2に連通されているので、圧側室R2内の圧力が伝搬し、大室16内の圧力は圧側室R2に由来した圧力となるが、圧側室R2が伸側室R1に連通状態におかれるため、大室16内の圧力は伸側室R1内とほぼ等しい圧力となる。他方、外周室17も伸側通路20を介して伸側室R1に連通されており、外周室17内には、伸側室R1に由来した圧力が作用する。
したがって、緩衝装置D1が収縮作動する場合、フリーピストン5の圧側受圧面積A1と伸側受圧面積B1には伸側室R1の圧力にほぼ等しい圧力が作用し、部位C1にはリザーバRの圧力が作用するので、フリーピストン5は、図1中下方側へ押されて移動する。このようにフリーピストン5が移動すると、外周室17から排出通路7へ液体が排出されるものの大室16へ圧側室R2から液体が流入し、小室15から液体がリザーバRへ排出されるので、大室16の容積拡大量から外周室17の容積減少量を差し引きした量の液体がシリンダ1内からリザーバRへ移動することになり、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、上記量の液体がシリンダ1内からリザーバRへ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。また、フリーピストン5が中立位置から下方へ移動して所定量以上変位すると、液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁が流路面積を減少させるため、外周室17内から液体が排出されにくくなり、フリーピストン5の移動速度が減速され、フリーピストン5とボトム部材11とが勢いよく衝突することが阻止され、両者が接触する際の打音を低減することができる。
このように、フリーピストン5を摺動方向の一方(図1中下方)に押圧するよう当該フリーピストン5に圧側室由来の圧力を作用させるとともに、フリーピストン5を摺動方向の他方(図1中上方)に押圧するようフリーピストン5に伸側室由来の圧力を作用させており、フリーピストン5の圧側室由来圧力が作用する圧側受圧面積A1をフリーピストン5の伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B1よりも大きくしてあるので、ユニフロー型に設定されて収縮作動時には伸側室R1と圧側室R2とが構造上等圧となる緩衝装置にあってもフリーピストン5を作動させて圧力室14を見掛け上の流路として機能させることができる。
ここで、緩衝装置D1へ入力される振動周波数が低い場合と高い場合で、ピストン速度が同じであるという条件下で考えると、まず、入力周波数が低い場合、入力される振動の振幅が大きくなり、フリーピストン5の振幅が大きくなり、フリーピストン5が圧側ばね6aおよび伸側ばね6bでなるばね要素6から受ける附勢力が大きくなる。緩衝装置D1が低い振動周波数で伸縮する場合、ストローク量が大きくなるので液体がシリンダ1からリザーバRへ排出される流量が多く、また、フリーピストン5の振幅が大きくなってばね要素6の附勢力が大きくなるためフリーピストン5のそれ以上の移動がしづらくなるので、見掛け上の通路として機能する圧力室14を介して伸側室R1と圧側室R2の液体のやり取りが少なくなり、減衰力可変バルブVを通過する流量が多いので、緩衝装置D1が発生する減衰力が高いまま維持される。対して、緩衝装置D1への入力周波数が高い場合、入力される振動の振幅が小さくなり、ピストン2の振幅も小さい。この場合、シリンダ1からリザーバRへ排出される流量が少なく、フリーピストン5の振幅も小さくなるためにフリーピストン5がばね要素6から受ける附勢力が小さくなり、緩衝装置D1が伸長行程にあっても収縮行程にあっても、減衰力可変バルブVを通過する流量に対して見掛け上の流路を通過する流量の割合が低周波振動時よりも多くなるので、緩衝装置D1が発生する減衰力が低減されて低くなる。
なお、緩衝装置D1の伸縮速度がある程度高くなると、伸側通路20に設けた液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁が液体の流れに対して大きな抵抗を示すようになり、フリーピストン5が動きづらくなるため、減衰力低減効果が殆ど発揮されなくなる。そのため、緩衝装置D1の減衰特性は、図2に示すように、推移することになる。図2中の各実線は、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVで緩衝装置D1の伸側および圧側の減衰力をソフト、ミディアム、ハードとした場合について減衰特性を示しており、破線は、ソフト、ミディアム、ハードの減衰特性に設定される状況において、緩衝装置D1に高周波振動が入力されて、減衰力が低減された場合の減衰力の特性を示している。
図2に示すように、この緩衝装置D1にあっては、減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、車両のばね上部材の共振周波数帯の低周波振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車体(ばね上部材)の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、車両のばね下部材の共振周波数帯の高周波振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車輪側(ばね下部材側)の振動の車体側(ばね上部材側)への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
また、上述したように緩衝装置D1は、減衰力可変バルブVが液体の流れに与える抵抗を調整することによって、減衰力を調節することができる。つまり、この緩衝装置D1にあっては、減衰力可変バルブVによる減衰力調整を行いつつも、高周波数の振動に対しては、減衰力を低減することができるのである。
よって、本発明の緩衝装置D1では、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができる。
さらに、液圧クッション機構Lがフリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止するので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D1が発生する減衰力が急変することもなくなる。
したがって、本発明の緩衝装置D1によれば、フリーピストン5とハウジングとしてのボトム部材11の打音の発生を抑制できるとともに減衰力の急変を防止することができ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、減衰力を低減する周波数帯は、フリーピストン5の圧側受圧面積A1および伸側受圧面積B1、部位C1の面積、通路18、圧側通路19の流路抵抗、液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁における流路抵抗およびばね要素6のばね定数(この場合、圧側ばね6aと伸側ばね6bの合成ばね定数)の設定によって、任意に決定することができる。したがって、この場合、外周室17を伸側室R1へ連通する伸側通路20に液圧クッション機構Lを設けているが、その代わりに、或いはこれに加えて、通路18および圧側通路19の途中に液圧クッション機構Lとして可変絞り弁を設けることができる。
また、フリーピストン5は、ばね要素6によって中立位置へ位置決めされるように附勢されていて、中立位置へ戻されるので、フリーピストン5がストロークエンドで停止してしまって、緩衝装置D1が高周波振動入力時に減衰力低減効果をうまく発揮できなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。さらに、フリーピストン5の外周の断面形状と圧力室14の内壁の断面形状は、円形以外の形状を採用することも可能である。
なお、上記したところでは、小室15をリザーバRへ連通しているが、小室15を緩衝装置D1の外部へ連通して大気開放したり、低圧の気体を封入して気室としたりするようにしてもよい。そのようにしても、緩衝装置D1が伸長作動する場合には、フリーピストン5が図1中上方側へ押されて移動し、フリーピストン5の移動量に応じて外周室17へ液体が流れ込み、大室16から圧側室R2へ液体が排出され、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、液体が減衰力可変バルブVを迂回して伸側室R1から圧側室R2へ移動することになり、また、緩衝装置D1が収縮作動する場合には、フリーピストン5が図1中下方側へ押されて移動し、外周室17と大室16の合計容積が拡大する分、液体が減衰力可変バルブVを迂回してシリンダ1内からリザーバRへ移動するため、減衰力可変バルブVを通過する液体量が減少することになり、緩衝装置D1は、小室15をリザーバRへ連通した場合と同様に高周波振動に対して減衰力を低減する効果を発揮することができる。小室15内を気室にする場合、伸側ばねを気体ばねとすることも可能である。さらに、小室15を大気開放するか気室とすることで、小室15をリザーバRへ連通させなくともよいので、圧力室14を形成するハウジングをピストンロッド21に固定するか、ピストンロッド21内に設けるようにすることも可能である。ただし、小室15をリザーバRへ連通することで、圧力室14を完全に緩衝装置D1内に収容するとともに、小室15から外周室17或いは大室16への気体の混入を防止することができるメリットがある。
上記したところでは、ボトム部材11については概略的に説明したが、当該ボトム部材11を具体的に緩衝装置に適用するに当たっては、たとえば、図3に示したように、フリーピストン5が挿入される中空部22aを備えたケース部材22と、ケース部材22の中空部22aを閉塞する蓋部材23とで構成することができる。
詳細には、ケース部材22は、円柱状であって外周に三つの段部を備えて図3中上方へ向かうほど段階的に縮径されており、先端側の二段は中間筒9との間に隙間空けて中間筒9内に挿入されており、下端から二段目は中間筒9に嵌合され、最下段は外径が中間筒9の内径よりも大径となっている。また、中間筒9に嵌合する下端から二段目の外周にはシールリング24が装着されており、ケース部材22の外周を通じて排出通路7とリザーバRとが連通されてしまうことを防止している。さらに、ケース部材22の最下段は、筒状とされており、内外を連通する複数の切欠22bを備えている。
また、ケース部材22は、図3中上端から開口する中空部22aを備えており、この中空部22aは、蓋部材23によって閉塞されて、圧力室25を形成している。また、中空部22aは、途中から先端側が縮径されていて、圧力室25における小断面積部25aを形成し、途中から基端側が小断面積部25aよりも大径の大断面積部25bを形成し、小断面積部25aと大断面積部25bとの間に段部25cが形成されている。
さらに、ケース部材22は、ケース部材22の外周であって先端側から二段目の側方から開口して大断面積部25bの内周であって段部25cの近傍に通じるオリフィス通路22cと、同じくケース部材22の外周であって先端側から二段目の側方から開口して大断面積部25bの内周に通じるオリフィス通路22dと、ケース部材22の下端から開口して中空部22aの先端へ通じる通路22eと、ケース部材22を図3中上下方向に貫通する通路22fとを備えている。
蓋部材23は、円板状であって中央に図3中上下方向に沿って設けたボルト挿通孔23aと、図3中下端外周に設けた筒状のソケット23bと、図3中上下方向に沿って設けたポート23cとを備えて構成されている。この蓋部材23のソケット23b内にケース部材22の先端を挿入して嵌合すると、中空部22aが閉塞されて圧力室25が形成される。
ボルト挿通孔23aには、先端に螺子部を備えた軸部26aと、頭部26bと備えたボルト26が挿通されており、このボルト26の軸部26aの外周にディスク状のチェックバルブ27が装着されている。チェックバルブ27は、ボルト26と軸部26aに設けた螺子部に螺着されるナット28によって、蓋部材23に固定され、ポート23cを開閉するようになっている。また、ボルト26には、軸部26aの先端から開口して頭部26bの下端に通じる通路26cが設けられており、圧力室25が圧側室R2に連通されるようになっている。
そして、ケース部材22の中空部22a内には、フリーピストン5と圧側ばね6aおよび伸側ばね6bとが収容されており、蓋部材23のソケット23b内にケース部材22の先端を挿入して嵌合すると、圧側ばね6aおよび伸側ばね6bとが圧縮されてフリーピストン5をそれぞれ附勢して中立位置へ位置決めする。
そして、上記のようにして構成された圧力室25内には、フリーピストン5が挿入されることで、圧力室25内が小室15、大室16および外周室17に区画される。
フリーピストン5は、大ピストン部5cの外周に設けた環状溝5eと、基部5aの小ピストン部5bよりも外周から開口して環状溝5eに通じる孔5fとを備えている。
このフリーピストン5を圧力室25内に摺動自在に挿入すると、圧力室25の大断面積部25b内に摺動自在に挿入される大ピストン部5cで当該大断面積部25b内に大室16が区画され、圧力室25の小断面積部25a内に摺動自在に挿入される小ピストン部5bで当該小断面積部25a内に小室15が区画され、さらに、大断面積部25b内であって段部25cと基部5aの間であって小ピストン部5bの外周に外周室17が区画される。
また、フリーピストン5は、ばね要素6によって中立位置へ位置決められると、大ピストン部5cの外周に設けた環状溝5eがオリフィス通路22dの開口に対向するようになっており、フリーピストン5が中立位置から図3中上下方向へ変位して所定量以上変位すると環状溝5eとオリフィス通路22dのラップ面積が減少し、環状溝5eがオリフィス通路22dに対向しなくなると大ピストン部5cでオリフィス通路22dが閉塞されるようになっている。
小室15内は、ケース部材22に設けた通路22eを介してリザーバRに連通され、大室16は、ボルト26に設けた通路26cを介して圧側室R2に連通される。外周室17は、オリフィス通路22cによって排出通路7に連通されるが、環状溝5eがオリフィス通路22dに対向している状況ではオリフィス通路22d、環状溝5eおよび孔5fによっても排出通路7に連通される。よって、この具体的な緩衝装置D1にあっては、伸側通路20は、オリフィス通路22c、オリフィス通路22d、環状溝5eおよび孔5fによって構成され、また、フリーピストン5の変位によってオリフィス通路22dの流路面積を変化するようになっており、フリーピストン5とケース部材22とで液圧クッション機構Lとしての可変絞り弁を構成している。
蓋部材23にケース部材22を嵌合して一体化すると、ポート23cは、通路22fを介してリザーバRに連通するようになっている。チェックバルブ27は、緩衝装置D1の伸長作動時に圧側室R2内の圧力が減圧されると外周側が撓んで開弁し、ポート23cおよび通路22fを介してリザーバRを圧側室R2へ連通するようになっており、このチェックバルブ27は、ポート23cおよび通路22fと協働して吸込通路3を構成する。
このように構成されたボトム部材11をシリンダ1の下端に嵌合すると、蓋部材23のソケット23bの図3中上端がシリンダ1の下端に当接するようになっているので、外筒10の加締部10aと外筒10の底部10bとで、ボトム部材11、シリンダ1を挟み込むと、ボトム部材11に軸力を作用させてケース部材22と蓋部材23を押しつけることができ、両者が分離することなく一体化される。なお、中間筒9については、外筒10と中間筒9の両者に減衰力可変バルブVが設けられたバルブブロック13が架け渡されて固定されるので、中間筒9をロッドガイド8とボトム部材11とで上下から挟みこまずに、中間筒9のこれらロッドガイド8およびボトム部材11に対する上下方向への移動を許容するようにしている。中間筒9の上下方向の移動を許容することで、中間筒9に対する減衰力可変バルブVの取付位置にある程度の誤差が生じても緩衝装置D1を組み付けることができるようになっている。また、この具体的な緩衝装置D1にあっては、伸側室R1と排出通路7との連通に際して、ロッドガイド8に切欠8aを設けて両者を連通するようにしているが、シリンダ1に孔を設けるようにしてもよい。
なお、ケース部材22における外周径が最小の最先端の外周にシールリング29を装着しておくと、蓋部材23とケース部材22との間がシールされ、排出通路7と大室16とが直接連通してしまうことを防止できる。
上記のようにボトム部材11を構成することで、緩衝装置D1に無理なく組み込むことができ、緩衝装置D1を実現することができる。そして、この緩衝装置D1にあっても、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができる。
さらに、液圧クッション機構Lがフリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止するので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D1が発生する減衰力が急変することもなくなる。
また、液圧クッション機構Lをフリーピストン5とハウジングを構成するケース部材22とで構成することで、簡単な構造で可変絞り弁を伸側通路に設けることができ、部品点数も増加することが無い。
また、図4に示すように、蓋部材23にケース部材22の筒状の先端の内周が圧入されるとともにポート23cに通じる環状溝23dを設けておくと、環状溝23dの内周側の壁にケース部材22の先端の内周が隙間を生じることなく圧入されて、大室16と吸込通路3との連通も阻止されて、安定した減衰力低減効果を得ることができる。シールリング29は、ソケット23b側に装着して、ケース部材22の先端外周に密着するようにしてもよい。
さらに、図5に示した第二の実施の形態における緩衝装置D2のように、外周室17をリザーバRへ、伸側通路30を介して小室15を伸側室R1へ連通するようにしてもよい。なお、緩衝装置D2は、図1に示した緩衝装置D1に対し、外周室17をリザーバRへ連通する点、液圧クッション機構L1としての可変絞り弁を途中に配した伸側通路30を介して小室15を伸側室R1へ連通する点が異なっており、他は全て緩衝装置D1と同様の構成となっているので、異なる部分以外の説明については説明が重複するので同じ符号を付すだけとして詳しい説明は省略する。
この緩衝装置D2の場合、ボトム部材11内に設けられた小室15が伸側通路30およびシリンダ1に設けた透孔1bおよび排出通路7を介して伸側室R1に連通され、外周室17が通路31を介してリザーバRに連通されている。なお、大室16は、緩衝装置D1と同様に、圧側通路19を介して圧側室R2に連通されている。
このようにしても、フリーピストン5を摺動方向の一方(図5中下方)に押圧するよう当該フリーピストン5に圧側室由来の圧力を作用させるとともに、フリーピストン5を摺動方向の他方(図5中上方)に押圧するようフリーピストン5に伸側室由来の圧力を作用させており、フリーピストン5の圧側室由来圧力が作用する圧側受圧面積A2をフリーピストン5の伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B2よりも大きくすることができる。また、フリーピストン5を摺動方向の他方に押圧するように伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B2以外の部位C2、つまり、フリーピストン5の外周室17に臨む面にリザーバRに由来の圧力を作用させている。よって、この実施の形態の緩衝装置D2にあっては、小室15が伸側圧力室として機能し、大室16が圧側圧力室として機能している。
液圧クッション機構L1は、可変絞り弁であって、この伸側通路30の途中に設けられており、フリーピストン5が圧力室に対して中立位置から所定量変位すると流路面積を減少させるようになっており、フリーピストン5の中立位置からの変位量に応じて流路面積を減少させるようになっている。液圧クッション機構L1としての可変絞り弁は、フリーピストン5の中立位置からの変位量が多くなればなるほど流路面積を減少させるものであってもよいし、流路面積に下限を設定して流路面積が下限以下に減少しないものであってもよいし、また、可変絞り弁が流路面積を減少し始めるフリーピストン5の変位量である所定量はフリーピストン5がストロークエンドに到達しない範囲で任意に設定することができ、0に設定してフリーピストン5が中立位置から変位すると直ちに流路面積を減少するようにしてもよく、また、可変絞り弁が流路面積を減少し始めるフリーピストン5の中立位置からの変位量をフリーピストン5の移動方向の両側で異なるように設定してもよい。
緩衝装置D2は、以上のように構成され、圧力室14がフリーピストン5によって伸側圧力室としての小室15と圧側圧力室としての大室16とに区画されており、フリーピストン5が移動すると小室15と大室16との容積が変化する。
緩衝装置D1が伸長作動する場面では、ピストン2が図5中上方へ移動するので、圧縮される伸側室R1からは液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出され、拡大される圧側室R2へは吸込通路3を介してリザーバRから液体が供給される。よって、伸側室R1内の圧力は上昇し、圧側室R2内の圧力はリザーバR内とほぼ等しくなる。
大室16は、圧側通路19を介して圧側室R2に連通されているので、圧側室R2内の圧力が伝搬し、大室16内の圧力は圧側室R2に由来した圧力となるため、リザーバR内とほぼ等しい圧力となる。また、外周室17もリザーバRに連通されているので外周室17内もリザーバR内とほぼ等しい圧力となる。他方、小室15は、伸側室R1に連通されており、小室15内には、伸側室R1に由来した圧力が作用する。
したがって、緩衝装置D2が伸長作動する場合、フリーピストン5の圧側受圧面積A2と部位C2にはリザーバRの圧力にほぼ等しい圧力が作用し、伸側受圧面積B2にはリザーバRの圧力よりも高い伸側室R1に由来する圧力が作用するので、フリーピストン5は、図5中上方側へ押されて移動することになる。このようにフリーピストン5が移動すると、このフリーピストン5の移動量に応じて小室15へ液体が流れ込み、大室16から圧側室R2へ液体が排出されるので、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、液体が伸側室R1から圧側室R2へ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。また、フリーピストン5が中立位置から上方へ移動して所定量以上変位すると、液圧クッション機構L1としての可変絞り弁が流路面積を減少させるため、小室15内へ液体が流れ込みにくくなり、フリーピストン5の移動速度が減速され、フリーピストン5とボトム部材11とが勢いよく衝突することが阻止され、両者が接触する際の打音を低減することができる。
逆に、緩衝装置D2が収縮作動する場面では、ピストン2が図5中下方へ移動するので、整流通路4によって、圧縮される圧側室R2と拡大される伸側室R1が連通状態におかれシリンダ1内から液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出される。よって、伸側室R1内および圧側室R2内の圧力は、ほぼ等しくともに上昇することになる。
大室16は、圧側通路19を介して圧側室R2に連通されているので、圧側室R2内の圧力が伝搬し、大室16内の圧力は圧側室R2に由来した圧力となるが、圧側室R2が伸側室R1に連通状態におかれるため、伸側室R1内とほぼ等しい圧力となる。他方、小室15も伸側通路30を介して伸側室R1に連通されており、小室15内には、伸側室R1に由来した圧力が作用する。したがって、緩衝装置D2が収縮作動する場合、フリーピストン5の圧側受圧面積A2と伸側受圧面積B2には伸側室R1の圧力にほぼ等しい圧力が作用し、部位C2にはリザーバRの圧力が作用するので、フリーピストン5は、図5中下方側へ押されて移動する。このようにフリーピストン5が移動すると、小室15から排出通路7へ液体が排出されるものの大室16へ圧側室R2から液体が流入し、外周室17から液体がリザーバRへ排出されるので、大室16の容積拡大量から小室15の容積減少量を差し引きした量の液体がリザーバRへ移動することになり、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、液体がシリンダ1内からリザーバRへ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。また、フリーピストン5が中立位置から下方へ移動して所定量以上変位すると、液圧クッション機構L1としての可変絞り弁が流路面積を減少させるため、小室15内から液体が排出されにくくなり、フリーピストン5の移動速度が減速され、フリーピストン5とボトム部材11とが勢いよく衝突することが阻止され、両者が接触する際の打音を低減することができる。
このように、緩衝装置D2にあっても、フリーピストン5を摺動方向の一方(図5中下方)に押圧するよう当該フリーピストン5に圧側室由来の圧力を作用させるとともに、フリーピストン5を摺動方向の他方(図5中上方)に押圧するようフリーピストン5に伸側室由来の圧力を作用させており、フリーピストン5の圧側室由来圧力が作用する圧側受圧面積A2をフリーピストン5の伸側室由来圧力が作用する伸側受圧面積B2よりも大きくしてあるので、ユニフロー型に設定されて収縮作動時には伸側室R1と圧側室R2とが構造上等圧となる緩衝装置にあってもフリーピストン5を作動させて圧力室14を見掛け上の流路として機能させることができる。
よって、この他の実施の形態の緩衝装置D2にあっても、減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、車両のばね上部材の共振周波数帯の低周波振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車体(ばね上部材)の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、車両のばね下部材の共振周波数帯の高周波振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車輪側(ばね下部材側)の振動の車体側(ばね上部材側)への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
また、上述したように緩衝装置D2は、減衰力可変バルブVが液体の流れに与える抵抗を調整することによって、減衰力を調節することができる。つまり、この緩衝装置D2にあっては、減衰力可変バルブVによる減衰力調整を行いつつも、高周波数の振動に対しては、減衰力を低減することができるのである。
したがって、本発明の緩衝装置D2にあっても、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができる。
さらに、液圧クッション機構L1がフリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止するので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D2が発生する減衰力が急変することもなくなる。よって、緩衝装置D2にあっても、フリーピストン5とハウジングとしてのボトム部材11の打音の発生を抑制できるとともに減衰力の急変を防止することができ、車両における乗り心地を向上することができる。
また、減衰力を低減する周波数帯は、フリーピストン5の圧側受圧面積A2および伸側受圧面積B2、部位C2の面積、圧側通路19および通路31の流路抵抗、液圧クッション機構L1としての可変絞り弁の流路抵抗およびばね要素6のばね定数(この場合、圧側ばね6aと伸側ばね6bの合成ばね定数)の設定によって、任意に決定することができる。したがって、この場合、小室15を伸側室R1へ連通する伸側通路30に液圧クッション機構L1としての可変絞り弁を設けているが、その代わりに、或いは、これに加えて、圧側通路19および通路31の一方または両方に可変絞り弁をもうけるようにしてもよい。
なお、上記したところでは、外周室17をリザーバRへ連通しているが、外周室17を緩衝装置D2の外部へ連通して大気開放したり、低圧の気体を封入して気室としたりするようにしてもよい。そのようにしても、緩衝装置D2が伸長作動する場合には、フリーピストン5が図5中上方側へ押されて移動し、フリーピストン5の移動量に応じて小室15へ液体が流れ込み、大室16から圧側室R2へ液体が排出され、圧力室14が見掛け上の流路として機能して、液体が減衰力可変バルブVを迂回して伸側室R1から圧側室R2へ移動することになり、また、緩衝装置D2が収縮作動する場合には、フリーピストン5が図5中下方側へ押されて移動し、外周室17と大室16の合計容積が拡大する分、液体が減衰力可変バルブVを迂回してシリンダ1内からリザーバRへ移動して減衰力可変バルブVを通過する液体量が減少することになり、緩衝装置D2は、外周室17をリザーバRへ連通した場合と同様に高周波振動に対して減衰力を低減する効果を発揮することができる。外周室17内を気室にする場合、伸側ばねを気体ばねとすることも可能である。さらに、外周室17を大気開放するか気室とすることで、外周室17をリザーバRへ連通させなくともよいので、圧力室14を形成するハウジングをピストンロッド21に固定するか、ピストンロッド21内に設けるようにすることも可能である。ただし、外周室17をリザーバRへ連通することで、圧力室14を完全に緩衝装置D2内に収容するとともに、外周室17から小室15或いは大室16への気体の混入を防止することができるメリットがある。
上記したところでは、ボトム部材11については概略的に説明したが、当該ボトム部材11を具体的に緩衝装置D2に適用するに当たっては、たとえば、図6に示すように、フリーピストン5が挿入される中空部32aを備えたケース部材32と、ケース部材32の中空部32aを閉塞する蓋部材33とで構成することができる。
詳細には、ケース部材32は、有底筒状であって、内周に段部32bを備えた中空部32aと、外周に設けた環状溝32cと、環状溝32cから中空部32aに通じるオリフィス通路34およびオリフィス通路35と、底部から段部32bへ抜けて中空部32aに通じる通孔36と、図6中下端外周に設けた螺子部32dとを備えて構成されている。中空部32aは、蓋部材33によって閉塞されて圧力室37を形成しており、段部32bより先端側が小径となっていて圧力室37における小断面積部37aを形成し、段部32bより基端側が小断面積部37aよりも大径の大断面積部37bを形成している。また、オリフィス通路34およびオリフィス通路35は、小断面積部37aに連通しており、通孔36は、大断面積部37bに連通している。なお、オリフィス通路34は、フリーピストン5が小室15を最圧縮しても閉塞されないように、中空部32aの先端から開口して図6中下方へ伸びる縦孔34aと、縦孔34aと環状溝32cとを連通してオリフィスとして機能する横孔34bとを備えている。また、オリフィス通路35は、環状溝32cから開口して中空部32aの内周であって小断面積部37aの側壁に通じている。
また、蓋部材33は、有頂筒状とされており、筒部33aの図6中下端から頂部33bの図6中上端へ抜けるポート33cと、頂部33bの中央に図6中上下方向に沿って設けたボルト挿通孔33dと、筒部33aの内周に設けた螺子部33eと、筒部33aの外周に設けた三つの段部33f,33g,33hと、筒部33aの段部33fから段部33gの間から開口して内部へ通じる貫通孔33iとを備えている。さらに、筒部33aの下端には切欠33jが設けられていて、筒部33aの内外が連通されている。
蓋部材33の筒部33aにおける段部33fは、シリンダ1の図6中下端に当接するようになっていて、蓋部材33の段部33fより先端側の図6中上方側がシリンダ1内に嵌合するようになっており、また、筒部33aの外周であって段部33gから段部33hは中間筒9に嵌合するようになっている。したがって、筒部33aの外周であって段部33fから段部33gまでの部位と中間筒9との間には、排出通路7を形成する環状隙間が設けられており、中間筒9に嵌合する筒部33aの外周にはシールリング38が装着されていて、排出通路7とリザーバRとが蓋部材33と中間筒9との間の隙間を介して連通することを防止している。そして、この蓋部材33の筒部33a内にケース部材32を挿入して螺子部32dを螺子部33eに螺着すると蓋部材33にケース部材32が固定されるとともに中空部32aが閉塞されて圧力室37が形成される。
ボルト挿通孔33dには、先端に螺子部を備えた軸部39aと、頭部39bと備えたボルト39が挿通されており、このボルト39の軸部39aの外周にディスク状のチェックバルブ40が装着されている。チェックバルブ40は、ボルト39と軸部39aに設けた螺子部に螺着されるナット41によって、蓋部材33に固定され、ポート33cを開閉するようになっている。また、ボルト39には、軸部39aの先端から開口して頭部39bの下面に通じる通路39cが設けられており、圧力室37が圧側室R2に連通されるようになっている。
そして、ケース部材32の中空部32a内には、フリーピストン5と圧側ばね6aおよび伸側ばね6bとが収容されており、蓋部材33にケース部材32を固定すると、圧側ばね6aおよび伸側ばね6bとが圧縮されてフリーピストン5をそれぞれ附勢して中立位置へ位置決めする。
フリーピストン5は、図3に示した緩衝装置D1と同様に、基部5aと、基部5aの図1中下端から立ち上がり圧力室37の小断面積部37a内に摺動自在に挿入される筒状の小ピストン部5bと、基部5aの図6中上端の外周から立ち上がり圧力室37の大断面積部37b内に摺動自在に挿入される筒状の大ピストン部5cとを備えて段付き形状とされている。ただし、この緩衝装置D2におけるフリーピストン5は、図3に示した緩衝装置D1では、環状溝5eが大ピストン部5cの外周に設けられ、また、孔5fが基部5aの小ピストン部5bよりも外周から開口して環状溝5eに通じていたが、この緩衝装置D2のフリーピストン5にあっては、これら環状溝5eおよび孔5fを廃止してその代わりに、小ピストン部5bの外周に環状溝5gを設け、小ピストン部5bの内周から開口して環状溝5gへ通じる孔5hを備えている。
このフリーピストン5を圧力室37内に摺動自在に挿入すると、圧力室37の大断面積部37b内に摺動自在に挿入される大ピストン部5cで当該大断面積部37b内に大室16が区画され、圧力室37の小断面積部37a内に摺動自在に挿入される小ピストン部5bで当該小断面積部37a内に小室15が区画され、さらに、大断面積部37b内であって段部32bと基部5aの間であって小ピストン部5bの外周に外周室17が区画される。
大室16は、ボルト39に設けた通路39cを介して圧側室R2に連通され、圧側通路は通路39cによって形成される。また、外周室17は、通孔36および切欠33jを介してリザーバRへ連通される。なお、通孔36は段部32bに開口するので、フリーピストン5が段部32bに完全に密着するまでは外周室17とリザーバRとの連通が断たれないように配慮されている。
また、フリーピストン5は、ばね要素6によって中立位置へ位置決められると、小ピストン部5bの外周に設けた環状溝5gがオリフィス通路35の開口に対向するようになっており、フリーピストン5が中立位置から図6中上下方向へ変位して所定量以上変位すると環状溝5gとオリフィス通路35のラップ面積が減少し、環状溝5gがオリフィス通路35に対向しなくなると小ピストン部5bでオリフィス通路35が閉塞されるようになっている。
小室15内は、オリフィス通路34、環状溝32c、貫通孔33iおよび排出通路7によって伸側室R1連通されるが、環状溝5gがオリフィス通路35に対向している状況ではオリフィス通路34だけでなくオリフィス通路35、環状溝5gおよび孔5hによっても伸側室R1に連通される。よって、この具体的な緩衝装置D2にあっては、伸側通路30は、オリフィス通路34、オリフィス通路35、環状溝5gおよび孔5h、環状溝32c、貫通孔33iおよび排出通路7によって構成され、また、フリーピストン5の変位によってオリフィス通路35の流路面積を変化させるようになっており、フリーピストン5とケース部材32とで液圧クッション機構L1としての可変絞り弁を構成している。大室16は、ボルト39に設けた通路39cを介して圧側室R2に連通され、外周室17は、通孔36および切欠33jを介してリザーバRへ連通される。なお、通孔36は段部32bに開口するので、フリーピストン5が段部32bに完全に密着するまでは外周室17とリザーバRとの連通が断たれないように配慮されている。
蓋部材33に設けたポート33cは、切欠33jを介してリザーバRに連通するようになっている。チェックバルブ40は、緩衝装置D2の伸長作動時に圧側室R2内の圧力が減圧されると外周側が撓んで開弁し、ポート33cを介してリザーバRを圧側室R2へ連通するようになっており、このチェックバルブ40は、ポート33cと協働して吸込通路3を構成する。
このように構成されたボトム部材11をシリンダ1の下端に嵌合すると、蓋部材33の段部33fの図6中上端がシリンダ1の下端に当接するようになっているので、外筒10の加締部10aと外筒10の底部10bとで、ボトム部材11、シリンダ1を挟み込むと、これらを外筒10に対して不動に固定することができるようになっている。なお、中間筒9については、この緩衝装置D2にあっても上述した緩衝装置D1と同様に、外筒10と中間筒9の両者に減衰力可変バルブVが架け渡されて固定されるので、中間筒9をロッドガイド8とボトム部材11とで上下から挟みこまずに、中間筒9のこれらロッドガイド8およびボトム部材11に対する上下方向への移動を許容するようにしている。
上記のようにボトム部材11を構成することで、緩衝装置D2に無理なく組み込むことができ、緩衝装置D2を実現することができる。そして、この緩衝装置D2にあっても、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができる。
さらに、液圧クッション機構L1がフリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止するので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D2が発生する減衰力が急変することもなくなる。
また、液圧クッション機構L1をフリーピストン5とハウジングを構成するケース部材32とで構成することで、簡単な構造で可変絞り弁を伸側通路に設けることができ、部品点数も増加することが無い。なお、緩衝装置D2にあっては、図6中で圧力室37の下方に配置される小室15を下端が当該小室15の下端よりも上方側に配置される排出通路7に連通する必要があり、また、オリフィス通路34がフリーピストン5によって閉塞されないよう配慮しているため、オリフィス通路34、環状溝32cと貫通孔33iとでなる複雑な通路を設ける必要があるが、緩衝装置D1のように小室15よりも上方側に配置される外周室17を排出通路7に連通するようにすることで、緩衝装置D2より緩衝装置D1の方が、通路形状が簡単で加工が容易となる利点がある。
また、上記したところでは、圧力室14,25,37は、フリーピストン5が図中上下方向に移動可能なように形成されているが、フリーピストン5が図中上下方向ではなく、横方向や斜め方向に移動可能なように形成することも可能であり、フリーピストン5が緩衝装置D1,D2に入力される上下方向の振動の影響を受けにくくすることもできるが、圧力室14,25,37をフリーピストン5が図中上下方向に移動可能なように形成することで、フリーピストン5のストローク量を確保しやすく、大型なフリーピストン5を採用することもできる利点がある。
つづいて、液圧クッション機構のバリエーションについて説明する。液圧クッション機構は、フリーピストン5が圧力室14に対して中立位置から大室16を圧縮する圧方向へ圧側所定量以上変位すると圧側通路の流路面積を制限する圧側通路制限手段と、フリーピストン5がハウジングに対して中立位置から上記小室を圧縮する伸方向へ伸側所定量以上変位すると伸側通路の流路面積を制限する伸側通路制限手段とで構成されてもよい。
図7に示すように、伸側通路制限手段と圧側通路制限手段とを備えた第三の実施の形態における緩衝装置D3は、上記した図6に示した緩衝装置D2の液圧クッション機構L1を伸側通路制限手段と圧側通路制限手段でなる液圧クッション機構L2に置き換えた構成を採用しており、他の部分は緩衝装置D2と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
大室16は、チェックバルブ40を外周に装着したボルト47に設けた通路47aにて圧側室R2に連通されており、この通路47aが圧側通路として機能している。なお、このボルト47における通路47aは、緩衝装置D2のボルト39の通路39cよりも大室側の開口径を大きくしてある。
また、小室15は、圧力室37の下端から開口する縦孔48、この縦孔48に連通される横孔49、ケース部材32の外周に設けた環状溝32cを通じて伸側室R1に連通されるが、横孔49にはオリフィスが設けられない。さらに、緩衝装置D2では小室15は小断面積部37aの側壁に開口するオリフィス通路35をも介して伸側室R1に連通されていたが、この緩衝装置D3にあっては、オリフィス通路35は廃止されている。よって、この緩衝装置D3では、縦孔48、横孔49、環状溝32c、貫通孔33iおよび排出通路7によって構成される。
そして、フリーピストン5の基部5aの図7中上端には棒状の圧側プランジャ50が設けられ、基部5aの図7中下端には棒状の伸側プランジャ51が設けられていて、緩衝装置D2におけるフリーピストン5に設けられていた環状溝5gおよび孔5hは緩衝装置D3では廃止されている。
そして、フリーピストン5が中立位置から大室16を圧縮する方向である図7中上方向へ変位すると、圧側プランジャ50が通路47a内に侵入して、圧側通路である通路47aにおける流路面積を減少させる。他方、フリーピストン5が中立位置から小室15を圧縮する方向である図7中下方向へ変位すると、伸側プランジャ51が縦孔48内に侵入して、伸側通路における流路面積を減少させる。
つまり、この実施の形態では、圧側通路制限手段は、圧側プランジャ50によって構成され、伸側通路制限手段は、伸側プランジャ51によって構成されている。
このように、液圧クッション機構L2は、フリーピストン5が中立位置から圧側所定量以上変位すると、圧側通路の流路面積を減少させて液体の通過に対する抵抗を大きくするので、フリーピストン5の図7中上方向である圧方向への変位を抑制してフリーピストン5の移動速度を低下させ、フリーピストン5が中立位置から伸側所定量以上変位すると、伸側通路の流路面積を減少させて液体の通過に対する抵抗を大きくするので、フリーピストン5の図7中下方向である伸方向への変位を抑制してフリーピストン5の移動速度を低下させることができる。なお、圧側所定量は、圧側プランジャ50が通路47a内に侵入し始める位置で設定することができるので、ボルト47或いは圧側プランジャ50の長さを調節することで任意に設定することができ、伸側所定量は、伸側プランジャ51が縦孔48内に侵入し始める位置で設定することができるので、伸側プランジャ51の長さを調節することで任意に設定することができる。圧側所定量と伸側所定量は異なっていてもよい。
したがって、この緩衝装置D3にあっても、フリーピストン5が中立位置から圧側所定量以上変位するか伸側所定量以上変位すると、フリーピストン5の移動速度を低下せしめることができ、フリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止できるので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D2が発生する減衰力が急変することもなくなる。なお、圧側通路制限手段と伸側通路制限手段は、いずれか一方で液圧クッション機構L2を構成することもでき、また、上記した液圧クッション機構L1と併用することもできる。
さらに、図8に示すように、圧側プランジャ52が通路47aの開口端を完全に閉塞するように設定される場合には、ボルト47の側方から通路47a内に連通するオリフィス孔47bを設けておくことも可能である。
また、図9に示した第四の実施の形態における緩衝装置D4のように、圧側通路制限手段が圧側プランジャ50の代わりに、ハウジングの一部を構成する蓋部材33に設けた大室16へ臨む環状壁53と、フリーピストン5の基部5aの大室側に設けられて内方への環状壁53の侵入を許容する環状突起54とで構成されてもよい。
環状壁53は、内周に螺子部を備えていて中空ボルト55が螺着されており、この中空ボルト55内の通路55aを通じて大室16が圧側室R2に連通されている。よって、中空ボルト55に設けた通路55aにて圧側通路が形成されている。また、環状壁53は、環状壁53の外周から内周へ通じるオリフィス孔53aを備えている。対して、環状突起54の内径は、環状壁53の内周への侵入が可能な径とされており、環状突起54内に環状壁53が侵入して当該環状壁53の先端がフリーピストン5の基部5aに当接してもオリフィス孔53aが環状突起54に閉塞されないようになっている。
そして、フリーピストン5が中立位置から大室16を圧縮する方向である図9中上方向へ変位すると、環状壁53が環状突起54内に侵入して、圧側通路における流路面積を減少させる。
このように、液圧クッション機構L3は、フリーピストン5が中立位置から圧側所定量以上変位すると、圧側通路の流路面積を減少させて液体の通過に対する抵抗を大きくするので、フリーピストン5の図9中上方向である圧方向への変位を抑制してフリーピストン5の移動速度を低下させ、フリーピストン5が中立位置から伸側所定量以上変位すると、伸側通路の流路面積を減少させて液体の通過に対する抵抗を大きくするので、フリーピストン5の図9中下方向である伸方向への変位を抑制してフリーピストン5の移動速度を低下させることができる。なお、圧側所定量は、環状壁53が環状突起54内に侵入し始める位置で設定することができるので、環状壁53或いは環状突起54の長さを調節することで任意に設定することができる。圧側所定量と伸側所定量は異なっていてもよい。
したがって、この緩衝装置D4にあっても、フリーピストン5が中立位置から圧側所定量以上変位するか伸側所定量以上変位すると、フリーピストン5の移動速度を低下せしめることができ、フリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止できるので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D2が発生する減衰力が急変することもなくなる。この緩衝装置D4の圧側通路制限手段は、緩衝装置D3の伸側通路制限手段および液圧クッション機構L,L1と併用することもできる。
最後に、図10に示した第五の実施の形態における緩衝装置D5について説明する。緩衝装置D5は、上記した図6に示した緩衝装置D2に対して液圧クッション機構L4を変更したものであり、他の部分は緩衝装置D2と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
液圧クッション機構L4は、フリーピストン5が圧力室37に対して中立位置から大室16を圧縮する圧方向へ圧側所定量以上変位するとフリーピストン5によって閉鎖されてフリーピストン5のそれ以上の圧方向への変位を抑制する圧側クッション室60と、フリーピストン5が圧力室37に対して中立位置から小室15を圧縮する伸方向へ伸側所定量以上変位するとフリーピストン5によって閉鎖されてフリーピストン5のそれ以上の伸び方向への変位を抑制する伸側クッション室61とを備えている。
具体的には、フリーピストン5の大ピストン部5cの図10中上端外周に設けた環状凹部で圧側クッション室60が形成され、フリーピストン5の小ピストン部5bの図10中下端外周に設けた環状凹部で伸側クッション室61が形成されている。
また、蓋部材33の大室16に臨む端部に大室16側へ突出する環状凸部62が設けられており、ケース部材32の中空部32aの図10中下端外周、つまり、小断面積部37aの下端内周に環状凸部63が設けられている。
環状凸部62の内径は、圧側クッション室60を形成する環状凹部内に侵入可能な径とされ、環状凸部63の内径についても伸側クッション室61を形成する環状凹部内に侵入可能な径とされている。
したがって、フリーピストン5が中立位置から図10中上方向へ変位して圧側所定量以上変位すると、圧側クッション室60を形成する環状凹部内に環状凸部62が侵入するようになって、圧側クッション室60が閉鎖される。そうなると、フリーピストン5のそれ以上図10中上方側へ移動しようとしても圧側クッション室60内の圧力が上昇してフリーピストン5のそれ以上の上方側への移動を制限する。反対に、フリーピストン5が中立位置から図10中下方向へ変位して伸側所定量以上変位すると、伸側クッション室61を形成する環状凹部内に環状凸部63が侵入するようになって、伸側クッション室61が閉鎖される。そうなると、フリーピストン5のそれ以上図10中下方側へ移動しようとしても伸側クッション室61内の圧力が上昇してフリーピストン5のそれ以上の下方側への移動を制限する。なお、圧側所定量は、圧側クッション室60を形成する環状凹部内に環状凸部62が侵入し始める位置で設定することができるので、圧側クッション室60を形成する環状凹部の長さ或いは環状凸部62の位置及び長さを調節することで任意に設定することができ、伸側所定量は、伸側クッション室61を形成する環状凹部内に環状凸部63が侵入し始める位置で設定することができるので、伸側クッション室61を形成する環状凹部の長さ或いは環状凸部63の位置及び長さを調節することで任意に設定することができる。圧側所定量と伸側所定量は異なっていてもよい。
したがって、この緩衝装置D5にあっても、フリーピストン5が中立位置から圧側所定量以上変位するか伸側所定量以上変位すると、フリーピストン5の移動速度を低下せしめることができ、フリーピストン5とハウジングであるボトム部材11とが勢いよく衝突することを防止できるので、フリーピストン5とボトム部材11の衝突による打音が低減されて車両搭乗者に違和感や不安感を与えずに済み、また、フリーピストン5が急激に停止させられることがなくなるので、急激に減衰力低減効果が消失して緩衝装置D2が発生する減衰力が急変することもなくなる。なお、圧側クッション室60と伸側クッション室61のいずれか一方で液圧クッション機構L4を構成することもでき、また、上記した液圧クッション機構L,L1と併用することもできる。
また、液圧クッション機構L4は、緩衝装置D1の構造に適用することも可能であり、さらに、伸側クッション室61は、フリーピストン5の基部5aの外周に環状凹部を設けることで形成して、圧力室25,37の大断面積部25b,37bの下端内周に環状凸部を設けるようにすれば、外周室17内で伸側クッション室61を設けることが可能である。
さらに、伸側クッション室61および圧側クッション室60は、上記した構造以外によって形成されてもよく、圧側クッション60はフリーピストン5が圧方向へ圧側所定量以上変位するとフリーピストン5によって閉鎖されるようになっていればよく、伸側クッション室61についてもフリーピストン5が伸方向へ伸側所定量以上変位するとフリーピストン5によって閉鎖されるようになっていればよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。