以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品を示す。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Dは、車両における車体と車輪との間に介装され、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン10と、このピストン10に一端が連結されて他端がシリンダ1外に延びるロッド11と、シリンダ1の外周に配置される外筒12と、シリンダ1及び外筒12の外側に設けられるタンク2と、このタンク2内に摺動自在に挿入されるフリーピストン20とを備える。そして、ロッド11の図1中上端とシリンダ1の図1中下側に、それぞれ取付部材13,14を設け、ロッド11側の取付部材13を車体に連結し、シリンダ1側の取付部材14を車軸に連結している。このため、路面凹凸による衝撃が車輪に入力されると、シリンダ1にロッド11が出入りして緩衝器Dが伸縮する。
シリンダ1内には、作動油等の液体が充填されるロッド11側の伸側室L1とピストン10側の圧側室L2が形成されており、これらがピストン10で区画されている。また、タンク2内には、ロッド11出没体積分のシリンダ1内容積変化を補償したり、温度変化による液体の体積変化を補償したりするための液体を貯留するリザーバRが形成されている。このリザーバRは、フリーピストン20で液体が充填される液溜室L3と、気体が封入される気室Gとに区画されている。また、シリンダ1と外筒12との間の筒状の隙間は、液体が流れる外周通路P8とされており、この外周通路P8の一端が伸側室L1に開口し、外周通路P8と伸側室L1が常に連通する。本実施の形態において、減衰力を発生するための流体として作動油等の液体を利用しているが、気体を利用してもよい。
シリンダ1内に形成される伸側室L1と圧側室L2は、伸側第一減衰通路P1と圧側分流通路P7を介して連通される。伸側第一減衰通路P1には、伸側メインバルブV1が設けられ、圧側分流通路P7には、圧側分流バルブV7が設けられている。伸側メインバルブV1は、緩衝器Dの伸長時において、伸側室L1の圧力が圧側室L2の圧力よりも所定以上高くなると伸側第一減衰通路P1を開いて伸側室L1から圧側室L2へ向かう液体の流れを許容し、当該流れに抵抗を与えるが、反対方向の流れを阻止する。圧側分流バルブV7は、緩衝器Dの収縮時において、圧側室L2の圧力が伸側室L1の圧力よりも所定以上高くなると圧側分流通路P7を開いて圧側室L2から伸側室L1へ向かう液体の流れを許容し、当該流れに抵抗を与えるが、反対方向の流れを阻止する。
また、シリンダ1と外筒12との間に形成される外周通路P8とタンク2内に形成される液溜室L3は、伸側第二減衰通路P3と圧側吸込通路P6を介して連結される。外周通路P8は、常に伸側室L1に連通するので、伸側第二減衰通路P3と圧側吸込通路P6は、ともに、伸側室L1と液溜室L3とを連通する。伸側第二減衰通路P3には、伸側絞り弁V3が設けられ、圧側吸込通路P6には、圧側逆止弁V6が設けられている。伸側絞り弁V3は、伸側第二減衰通路P3を絞り、当該伸側第二減衰通路P3の途中にオリフィスO(図5)を形成するとともに、当該オリフィスOの流路面積を変更できる。圧側逆止弁V6は、緩衝器Dの収縮時において圧側吸込通路P6を開き、圧側吸込通路P6を液溜室L3から伸側室L1へ向かう液体の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する。
また、シリンダ1内に形成される圧側室L2とタンク2内に形成される液溜室L3は、圧側第一減衰通路P2、圧側第二減衰通路P4及び伸側吸込通路P5を介して連通される。圧側第一減衰通路P2には、圧側メインバルブV2と調整弁V20が直列に設けられ、圧側第二減衰通路P4には、圧側絞り弁V4が設けられ、伸側吸込通路P5には伸側逆止弁V5が設けられている。圧側メインバルブV2は、緩衝器Dの収縮時において、圧側室L2の圧力が液溜室L3の圧力よりも所定以上高くなると圧側第一減衰通路P2を開いて圧側室L2から液溜室L3へ向かう液体の流れを許容し、当該流れに抵抗を与えるが、反対方向の流れを阻止する。この圧側メインバルブV2に直列される調整弁V20は、圧側第一減衰通路P2の流路面積を変更できる。圧側絞り弁V4は、圧側第二減衰通路P4を絞り、当該圧側第二減衰通路P4の途中にオリフィスO(図5)を形成するとともに、当該オリフィスOの流路面積を変更できる。伸側逆止弁V5は、緩衝器Dの伸長時において伸側吸込通路P5を開き、伸側吸込通路P5を液溜室L3から圧側室L2へ向かう液体の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する。
次に、本実施の形態の緩衝器Dの具体的な構成を説明する。
図2に示すように、本実施の形態において、シリンダ1と外筒12は、ともに、筒状に形成されており、ぞれぞれの中心を通る中心線が重なるように、内外二重に配置される。シリンダ1と外筒12の図2中上端には、ロッド11を軸方向移動自在に軸支するロッドガイド15が固定される。このロッドガイド15には、環状のシール部材16が積層されており、ロッド11の外周を液密に塞ぐ。また、ロッドガイド15と外筒12との間は、環状のOリング17で塞がれている。このため、シリンダ1内と外筒12内の液体が、シリンダ1と外筒12の図2中上端から外気側に漏れない。また、ロッドガイド15の図2中下部には、シリンダ1との間に隙間を形成する溝15aが設けられている。このため、前述のように、伸側室L1と外周通路P8が常に連通されて、伸側室L1と外周通路P8との間を液体が行き来できる。他方、シリンダ1と外筒12の図2中下端部には、これらとタンク2とを連結する連結部材3が設けられており、この連結部材3に、シリンダ1側の取付部材14が設けられている。
シリンダ1内には、ピストン10が摺動自在に挿入されており、当該ピストン10は、ロッド11の図2中下端部にロックナット18で固定されている。そして、ピストン10とロッドガイド15との間に液体が充填されて伸側室L1が形成されており、ピストン10と連結部材3との間に液体が充填されて圧側室L2が形成されている。シリンダ1の図2中下端は、外筒12から下側に突出して連結部材3に嵌るので、圧側室L2が外周通路P8と直接連通せず、伸側室L1を介して連通される。
ピストン10には、当該ピストン10を軸方向に貫通し、伸側室L1と圧側室L2とを連通する複数の孔(符示せず)が形成されており、これらの孔により、伸側第一減衰通路P1と圧側分流通路P7がそれぞれ構成される。本実施の形態において、伸側第一減衰通路P1を開閉する伸側メインバルブV1と、圧側分流通路P7を開閉する圧側分流バルブV7は、ともに、軸方向に積層された複数枚のリーフバルブを備えて構成される。
伸側メインバルブV1は、ピストン10の図2中下側に積層されて伸側第一減衰通路P1の出口を塞ぐ。伸側第一減衰通路P1の入口は、圧側分流バルブV7で塞がれず、常に伸側室L1に開口する。そして、伸側メインバルブV1は、伸側室L1がピストン10で加圧される緩衝器Dの伸長時であって、伸側室L1の圧力が圧側室L2の圧力を所定よりも上回ると、外周部を図2中下側に撓ませて伸側第一減衰通路P1を開く。反対に、緩衝器Dの収縮時には、伸側メインバルブV1が開かず、伸側第一減衰通路P1を閉じた状態に維持する。
他方の圧側分流バルブV7は、ピストン10の図2中上側に積層されて圧側分流通路P7の出口を塞ぐ。圧側分流通路P7の入口は、伸側メインバルブV1で塞がれず、常に圧側室L2に開口する。そして、圧側分流バルブV7は、圧側室L2がピストン10で加圧される緩衝器Dの収縮時であって、圧側室L2の圧力が伸側室L1の圧力を所定よりも上回ると、外周部を図2中上側に撓ませて圧側分流通路P7を開く。反対に、緩衝器Dの伸長時には、圧側分流バルブV7が開かず、圧側分流通路P7を閉じた状態に維持する。
なお、本実施の形態において、伸側メインバルブV1と圧側分流バルブV7がともに複数枚のリーフバルブを備えて構成されており、各リーフバルブは薄い環状板である。このため、ピストン10に伸側メインバルブV1と圧側分流バルブV7を取り付けても軸方向に嵩張らない。したがって、緩衝器Dが軸方向に嵩張るのを防いで、緩衝器Dの車両への搭載性を良好にできる。しかし、伸側メインバルブV1と圧側分流バルブV7は、リーフバルブ以外のバルブ(例えば、ポペット弁等)であってもよい。また、圧側分流通路P7を設けると、伸側室L1が拡大する緩衝器Dの収縮時に、圧側分流通路P7と後述の圧側吸込通路P6の両方から伸側室L1に液体を供給できる。このため、圧側吸込通路P6を通過する液体の流量を減らして、当該圧側吸込通路P6に設ける圧側逆止弁V6の大型化を防止できる。しかし、圧側分流通路P7を廃し、圧側吸込通路P6のみから拡大する伸側室L1に液体を供給するようにしてもよい。
シリンダ1及び外筒12の外側に設けられるタンク2は、筒状に形成されており、本実施の形態において、シリンダ1及び外筒12と横並びにして設けられている。なお、シリンダ1とタンク2を縦並びに設けてもよいが、この場合と比較して、前述の構成によれば緩衝器Dが軸方向に嵩張るのを防いで、緩衝器Dの車両への搭載性を良好にできる。また、シリンダ1とタンク2とを縦並びにする場合には、シリンダ1とタンク2とを繋ぎ目なく一体形成してもよい。また、本実施の形態のような別置き型のタンク2を廃して外筒12の外周にアウターシェルを設け、外筒12とアウターシェルとの間をリザーバRとして利用してもよい。
タンク2の図2中上下の開口は、それぞれ、キャップ22,23で塞がれる。また、タンク2内における両キャップ22,23の間には、フリーピストン20が摺動自在に挿入されるとともに、バルブディスク21が下側のキャップ23でタンク2内に固定されている。そして、フリーピストン20と上側のキャップ22との間に気体が封入されて気室Gが形成されており、フリーピストン20とバルブディスク21との間に液体が充填されて液溜室L3が形成されている。上側のキャップ22には、エアバルブ24が取り付けられており、当該エアバルブ24に気体注入用のホース等を接続すれば、気室G内圧を調整できる。なお、本実施の形態においては、フリーピストン20で液溜室L3と気室Gとを区画するが、緩衝器Dの伸縮時における気室Gの膨縮を許容できれば、他の部材(例えば、ブラダ、ベローズ等)で液溜室L3と気室Gとを区画してもよい。
また、タンク2におけるシリンダ1側の側部には、図3,4に示すように、タンク2内と圧側室L2との間、又は、タンク2内と外周通路P8との間を液体が移動にするのを可能にする第一、第二、第三の孔2a,2b,2cが設けられている。これらの孔2a,2b,2cは、絞りとならないように配慮されており、第一、第二の孔2a,2bは、バルブディスク21よりも上側に略横並びに設けられ、液溜室L3に開口する(図3)。また、第三の孔2cは、バルブディスク21の下側に設けられ、下側のキャップ23とバルブディスク21との間の空間L4と、下側のキャップ23に形成される孔23aと、連結部材3に形成される後述の第二横孔3bを介して圧側室L2に連通する(図2,4)。加えて、タンク2の内周には、第三の孔2cが開口する位置に、周方向に沿って環状の溝2dが設けられている(図2)。この溝2dにより、下側のキャップ23とタンク2との間に環状の隙間が形成されるので、第三の孔2cとキャップ23の孔23aが向い合せにならなくても上記隙間を介して連通する。したがって、キャップ23の周方向の位置合わせが不要となる。
図2に示すように、バルブディスク21には、当該バルブディスク21を軸方向に貫通し、液溜室L3と空間L4とを連通する複数の孔(符示せず)が形成されている。そして、バルブディスク21の孔、空間L4、孔23a、第三の孔2c及び第二横孔3bを備えて、圧側室L2と液溜室L3とを連通する圧側第一減衰通路P2と伸側吸込通路P5がそれぞれ構成される。本実施の形態において、圧側第一減衰通路P2を開閉する圧側メインバルブV2は、軸方向に積層された複数枚のリーフバルブを備えて構成され、伸側吸込通路P5を開閉する伸側逆止弁V5は、一枚以上のリーフバルブを備えて構成される。
圧側メインバルブV2は、バルブディスク21の図2中上側に積層されて圧側第一減衰通路P2の出口を塞ぐ。圧側第一減衰通路P2の入り口は、伸側逆止弁V5で塞がれず、常に空間L4に開口し、圧側室L2に連通する。そして、圧側メインバルブV2は、圧側室L2がピストン10で加圧される緩衝器Dの収縮時であって、圧側室L2の圧力が液溜室L3の圧力を所定よりも上回ると、外周部を図2中上側に撓ませて圧側第一減衰通路P2を開く。反対に、緩衝器Dの伸長時には、圧側メインバルブV2が開かず、圧側第一減衰通路P2を閉じた状態に維持する。
他方の伸側逆止弁V5は、バルブディスク21の図2中下側に積層されて伸側吸込通路P5の出口を塞ぐ。伸側吸込通路P5の入口は、圧側メインバルブV2で塞がれず、常に液溜室L3に開口する。そして、伸側逆止弁V5は、圧側室L2が拡大する緩衝器Dの伸長時に外周部を図2中下側に撓ませて伸側吸込通路P5を開くが、緩衝器Dの収縮時には伸側吸込通路P5を開かず、閉じた状態に維持する。
なお、本実施の形態において、圧側メインバルブV2と伸側逆止弁V5がともにリーフバルブを備えて構成されており、各リーフバルブは薄い環状板である。このため、バルブディスク21に圧側メインバルブV2と伸側逆止弁V5を取り付けても軸方向に嵩張らない。したがって、タンク2が軸方向に嵩張るのを防いで、緩衝器Dの車両への搭載性を良好にできる。しかし、圧側メインバルブV2と伸側逆止弁V5は、リーフバルブ以外のバルブ(例えば、ポペット弁等)であってもよい。
つづいて、シリンダ1及び外筒12と、タンク2とを連結する連結部材3は、図2に示すように、シリンダ1及び外筒12に連結される有底筒状のシリンダ側連結部30と、当該シリンダ側連結部30からタンク2側に延びて、当該タンク2とボルト等(図示せず)で締結されるタンク側連結部31とを有している。シリンダ側連結部30の内周は、最深部に向けて三段階に縮径されており、シリンダ側連結部30において、開口側の最も内径が大きい部分がナット部30a、当該部分に続いて内径が大きい部分が第一縮径部30b、当該部分に続いて内径が大きい部分が第二縮径部30c、最も内径が小さい部分が第三縮径部30cである。
そして、ナット部30aの内周には、螺子溝が形成されており、当該ナット部30aが外筒12の外周に螺合される。第一縮径部30bの内周には、周方向に沿う環状溝(符示せず)が形成されており、当該環状溝に嵌る環状のOリング32で外筒12の外周を塞ぎ、外筒12内の液体が外気側に漏れるのを塞ぐ。また、外筒12は、図2中下端部の外径が他の部分よりも小さくなっており、当該下端部が第一縮径部30bに嵌る。そして、外筒12の外周にできる段差がナット部30aと第一縮径部30bとの間にできる段差に突き当たるまで外筒12を連結部材3内に捻じ込んだとき、第一縮径部30bが外筒12の図2中下端から下側に延びるようになっている。また、シリンダ1は、外筒12から図2中下側に突出して第二縮径部30cの内周に嵌り、シリンダ1の図2中下端が第二縮径部30cと第三縮径部30dとの境界にできる段差に突き当たる。
さらに、連結部材3には、第一縮径部30bにおいて外筒12から図2中下側に突出する部分とシリンダ1との間にできる隙間とタンク2の第一の孔2aとを連通する第一横孔3aと、第三縮径部30dの内周端からタンク2の第三の孔2cにかけて延びる第二横孔3bと、第一横孔3aから分岐して、タンク2の第二の孔2bに連通する第一分岐通孔3c(図3)と、第二横孔3bから分岐して第一分岐通孔3cの途中に合流する第二分岐通孔3d(図4,3)が形成される(図4)。図4中、第二分岐通孔3dの一部が、第一分岐通孔3c側の開口を超えてタンク2側に延びているが、当該部分の末端はタンク2の側面によって塞がれる。このため、第二横孔3bから第二分岐通孔3dに流入する液体は、第一分岐通孔3cと、第二の孔2bを通って液溜室L3へ移動する。
そして、図3に示すように、第一横孔3aにおける第一分岐通孔3cとの分岐点よりも液溜室L3側に、外周通路P8と液溜室L3を区画するバルブディスク33が設けられる。このバルブディスク33には、当該バルブディスク33を軸方向に貫通する複数の孔33aが形成されている。そして、このバルブディスク33の孔33a、第一の孔2a及び第一横孔3aを備えて、外周通路P8を介して伸側室L1と液溜室L3とを連通する圧側吸込通路P6が構成される。本実施の形態において、圧側吸込通路P6を開閉する圧側逆止弁V6は、軸方向に積層された一枚以上のリーフバルブを備えて構成される。
圧側逆止弁V6は、バルブディスク33の図3中右側に積層されて孔33aの出口を塞ぐ。また、孔33aの入口は、常に液溜室L3側に開口する。そして、圧側逆止弁V6は、伸側室L1が拡大する緩衝器Dの収縮時に外周部を図3中右側に撓ませて圧側吸込通路P6を開くが、緩衝器Dの伸長時には圧側吸込通路P6を開かず、閉じた状態に維持する。
なお、本実施の形態において、圧側逆止弁V6がリーフバルブを備えて構成されており、各リーフバルブは薄い環状板である。このため、バルブディスク33に圧側逆止弁V6を取り付けても軸方向に嵩張らない。したがって、図2,3に示すように、圧側逆止弁V6を連結部材3の内部に取り付けたとしても、連結部材3が大型化するのを防いで、緩衝器Dの車両への搭載性を良好にできる。しかし、圧側逆止弁V6は、リーフバルブ以外のバルブ(例えば、ポペット弁等)であってもよい。
また、図4に示すように、第二横孔3bにおける第二分岐通孔3dとの分岐点よりも液溜室L3側(部屋L4側)に、第二横孔3bの流路面積を変更する調整弁V20が設けられる。本実施の形態において、調整弁V20は、連結部材3に固定される筒状のハウジング8と、このハウジング8の内周に螺合する弁体9と、この弁体9をロックするナット90とを備える。弁体9は、ハウジング8から第二横孔3b側に突出する頭部9aと、この頭部9aに連なり、ハウジング8に螺合する螺子軸部9bとを備える。頭部9aは、先端部外周が半球状に湾曲する。また、頭部9aの末端部外周には、Oリング91が設けられており、第二横孔3bを流れる液体が外気側に漏れるのを防止できる。ナット90は、ハウジング8から外気側に突出する螺子軸部9bの外周に螺合されて、ハウジング8に対する弁体9の軸方向の位置ずれを防ぐ。
上記構成によれば、ナット90を緩めて弁体9を正回転させると、弁体9の頭部9aが第二横孔3b内に進入し、第二横孔3bの流路面積が狭まる。反対に、弁体9を逆回転させると、弁体9の頭部9aが第二横孔3bから退出し、第二横孔3bの流路面積が広くなる。前述のように、第二横孔3bは、圧側第一減衰通路P2の一部を構成するので、調整弁V20の調整で圧側第一減衰通路P2の流路面積を変更できる。そして、調整弁V20を操作して、圧側第一減衰通路P2の流路面積を変更し、圧側メインバルブV2が全開となった後の減衰力を変更するようになっている。このようにする都合上、本実施の形態において調整弁V20は、第二横孔3bの流路面積を絞り過ぎないように配慮されている。
なお、本実施の形態において、調整弁V20は、圧側メインバルブV2の上流側となる圧側室L2側に設けられるので、調整弁V20を連結部材3に取り付けられて緩衝器Dの構成を簡易にできる。しかし、調整弁V20を圧側メインバルブV2の下流側に設けてもよい。また、本実施の形態において、調整弁V20は、伸側逆止弁V5の下流に位置し、伸側逆止弁V5を通過した液体が調整弁V20を通るようになっている。この場合にも、前述のように、第二横孔3bが調整弁V20によって絞り過ぎないように配慮されているので、緩衝器Dの伸長時に圧側室L2で液体が不足する心配がない。しかし、伸側逆止弁V5を通過した液体が調整弁V20を介さずに直接圧側室L2内に流入できるようにしてもよく、調整弁V20の構成も任意に変更できる。また、圧側室L2で液体の不足が起こらない範囲であれば、圧側メインバルブV2が全開になる前に調整弁V20が効くようにしてもよい。
つづいて、図3に示すように、第一分岐通孔3cは、シリンダ1と連結部材3の第一縮径部30bとの間にできる隙間、第一横孔3a及び第二の孔2bとともに、外周通路P8を介して伸側室L1と液溜室L3とを連通する伸側第二減衰通路P3を構成する。この伸側第二減衰通路P3を絞る伸側絞り弁V3は、第一分岐通孔3cにおける第二分岐通孔3dとの合流点よりも伸側室L1側(外周通路P8側)に設けられる。そして、伸側室L1がピストン10で加圧される緩衝器Dの伸長時において、第一横孔3aに設けた圧側逆止弁V6が閉じた状態に維持される。よって、伸側メインバルブV1が開弁するまでの間、伸側室L1の液体は、第一横孔3aにおける圧側逆止弁V6よりも伸側室L1側と、第一分岐通孔3cと第二の孔2bを通って液溜室L3に移動する。このように、伸側第二減衰通路P3を通過する液体は、伸側メインバルブV1を通らずに伸側室L1から液溜室L3に移動できる。
他方の第二分岐通孔3dは、図4,3に示すように、第二横孔3b、第一分岐通孔3c、及び第二の孔2bとともに、圧側室L2と液溜室L3とを連通する圧側第二減衰通路P4を構成する。この圧側第二減衰通路P4を絞る圧側絞り弁V4は、第二分岐通孔3dの途中に設けられる。そして、圧側室L2がピストン10で加圧される緩衝器Dの収縮時において、圧側メインバルブV2が開弁するまでの間、第二横孔3bにおける第三の孔2c側への移動が阻止される。よって、圧側室L2の液体は、第二横孔3bと、第二分岐通孔3dと、第一分岐通孔3cの伸側絞り弁V3よりも液溜室L3側と、第二の孔2bを通って液溜室L3に移動する。このように、圧側第二減衰通路P4を通過する液体は、圧側メインバルブV2及び調整弁V20を迂回して圧側室L2から液溜室L3に移動できる。
本実施の形態において、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4は、共通の構成を備えており、ともに、連結部材3に固定される筒状のハウジング4と、このハウジング4の内周に螺合する筒状のケース5と、このケース5内に摺動自在に挿入される弁体6と、ケース5内における弁体6の外気側に螺合するばね受7と、弁体6とばね受7との間に介装されるコイルばねSとを有する(図3,4)。また、連結部材3には、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4を取り付けるための取付孔3eが、連結部材3の外側面から第一分岐通孔3cと第二分岐通孔3dにかけて、それぞれ設けられている。
図5に示すように、ハウジング4は、ケース5を収容する筒状のハウジング本体40と、このハウジング本体40の軸方向の一端部から外周側に突出する環状の鍔41と、ハウジング本体40の軸方向の他端部から内周側に突出する環状のシート部42とを備える。このシート部42は、当該シート部42の中心部を軸方向に貫通する中心孔42aを有する。シート部42の図5中下部の内径は、下端に向けてすり鉢状に広がっており、当該すり鉢状の内周面が弁座42bとなっている。
また、ハウジング本体40の外周は、シート部42に向けて二段階に縮径されている。このハウジング本体40の外周において、図5中下部分に螺子溝が形成され、中央部分に周方向に沿う環状溝が形成されている。そして、ハウジング4は、シート部42側から取付孔3eに捻じ込まれて連結部材3に固定される。また、上記環状溝に嵌る環状のOリング43でハウジング4の外周を塞ぎ、連結部材3内の液体が外気側に漏れるのを防止できる。
また、ハウジング本体40の内周は、シート部42に向けて三段階に縮径されており、ハウジング本体40において、外気側の最も内径が大きい部分が第一支持部40a、当該部分に続いて内径が大きい部分がハウジングナット部40b、当該部分に続いて内径が大きい部分が第二支持部40c、最も内径が小さい部分が連通部40dである。ハウジング4において、ハウジング本体40の連通部40dからシート部42にかけての外周は、他の部分よりも小径に形成されており、当該部分と連結部材3との間に環状の隙間Cが形成される。また、ハウジング本体40の連通部40dには、当該連通部40dの肉厚を貫通する孔40eが形成されている。よって、第一分岐通孔3c又は第二分岐通孔3dを流れる液体がハウジング4でせき止められず、シート部42の中心孔42a、連通部40d内、孔40e、隙間Cの順に通って第一分岐通孔3c又は第二分岐通孔3dに戻る。加えて、本実施の形態においては、環状の隙間Cを備えているので、ハウジング4の周方向の位置合わせをしなくても、第一分岐通孔3c又は第二分岐通孔3dと孔40eとの連通が妨げられない。また、ハウジングナット部40bの内周には、螺子溝が形成される。
ハウジング4の内周に螺合する筒状のケース5は、ハウジング4の第二支持部40cの内周面に摺接するストッパ部50と、ハウジングナット部40bの内周に螺合するケース螺子軸部51と、ハウジング4の第一支持部40aの内周面に摺接するケース摺動部52と、内周に螺子溝が形成されるケースナット部53とを有する。ケースナット部53は、ハウジング4から外気側に突出しており、ケースナット部53を掴んでケース5を回転すると、ケース5はハウジング4内を軸方向に移動し、回転を止めるとその位置で留まる。ケース摺動部52の外周には、周方向に沿う環状溝が形成されており、当該環状溝に嵌る環状のOリング53でケース5の外周を塞ぎ、連結部材3内の液体が外気側に漏れるのを防ぐ。また、ケース螺子軸部51からケース摺動部52にかけての内径は、一定であり、ケースナット部53の内径よりも小さく、ストッパ部50の内径よりも大きくなっている。また、ケースナット部53の外気側端部には、キャップ54が螺合されており、ケース5内に螺合するばね受7の図5中下側への移動を規制する。
ケース5内に摺動自在に挿入される弁体6は、ニードル弁であり、先端に向けて先細りとなる栽頭円錐状の頭部60と、この頭部60の末端に連なる軸部61と、この軸部61の外周から外側に張り出すフランジ部62とを有する。そして、フランジ部62がケース螺子軸部51の内周面に摺接し、軸部61がケース5におけるストッパ部50の内周面に摺接し、頭部60がケース5から突出して弁座42bに対向する。このように、弁体6は、ケース5に軸部60とフランジ部62を支えられながらケース5内を軸方向に移動できる。そして、弁体6がケース5内を移動して弁座42bに近づくと、弁座42bと頭部60との間に形成されるオリフィスOの流路面積が狭くなる。よって、第一分岐通孔3c又は第二分岐通孔3dを液体が移動する際の抵抗が大きくなる。反対に、弁体6がケース5内を移動して弁座42bから離れると、弁座42bと頭部60との間に形成されるオリフィスOの流路面積が広くなる。よって、第一分岐通孔3c又は第二分岐通孔3dを液体が通過する際の抵抗が小さくなる。
また、弁体6におけるフランジ部62の外径は、ケース5におけるストッパ部50の内径よりも大きいので、弁体6の弁座42b側への移動はストッパ部50で規制される。加えて、弁体6は、コイルばねSにより弁座42b側に附勢されているので、弁体6の上流側の圧力に起因する弁体6を図5中下側に押し下げようとする力がコイルばねSの附勢力に打ち勝つまでは、フランジ部62がストッパ部50に当接した状態に維持される。そして、弁体6の上流側の圧力に起因する弁体6を図5中下側に押し下げようとする力がコイルばねSの附勢力に打ち勝つと、上記押し下げる力に応じて弁体6が後退するので、オリフィスOの流路面積が広がる。
上記構成によれば、伸側メインバルブV1又は圧側メインバルブV2が開くまでの低速域において、弁体6が後退を開始するまでの極低速域では、オリフィスOの流路面積が一定で、速度の二乗に比例するオリフィス特性の減衰力が発生する(図6中破線X1,X4)。また、低速域において、弁体6が後退を開始してからの速度領域(以下、後期低速域という)では、速度に応じてオリフィスOの流路面積が徐々に大きくなり、速度に比例するバルブ特性の減衰力が発生する(図6中実線X2,X5)。そして、この後期低速域では、極低速域と比較して特性線の傾きを緩やかにできる。なお、本実施の形態において、弁体6の後退量は、速度に依存して徐々に大きくなるので、後期低速域の減衰力特性がバルブ特性となるが、コイルばねSの設定によっては、弁体6が後退を開始してすぐに最大限まで後退できるようにしてもよい。この場合、後期低速域の減衰力特性もオリフィス特性となる。この場合においても、後期低速域におけるオリフィスOの流路面積が極低速域と比較して大きいので、特性線の傾きが緩やかになる。
加えて、前述のように、ケース5はハウジング4内を移動できる。よって、弁体6のフランジ部62とケース5のストッパ部50が当接した状態にあるときの極低速域におけるオリフィスOの流路面積(以下、初期流路面積という)を、前記ケース5の移動により変更できる。具体的には、ケース5を正回転してシート部42側に向けて前進させると、オリフィスOの初期流路面積が小さくなるので、速度に対する極低速域の減衰力を大きくできる。反対に、ケース5を逆回転してシート部42から離すように後退させると、オリフィスOの初期流路面積が大きくなるので、速度に対する極低速域の減衰力を小さくできる。
また、弁体6には、軸部62の図5中下端から軸部62の側方にかけて貫通する連通孔6aが形成されており、ストッパ部50の図5中上下を連通している。このため、弁体6がケース5内を軸方向に移動して、ばね受7とストッパ部50との間に形成される空間の容積が変わったとしても、この空間内で過不足する液体を連通孔6aを介して補える。また、連通孔6aの途中に絞りを設けておけば、弁体6が急激に大きく移動するのを抑制できる。
つづいて、ケース5内に螺合されるばね受7は、ケース摺動部52の内周面に摺接するばね受摺動部70と、ケースナット部53の内周に螺合するばね受螺子軸部71とを有する。ばね受摺動部70の外周には、周方向に沿う環状溝が形成されており、この環状溝に嵌る環状のOリング72でばね受7の外周を塞ぎ、連結部材3内の液体が外気側に漏れるのを防ぐ。他方のばね受螺子軸部71の外気側端部には、当該ばね受7を回転するための工具等を係合できる係合溝7aが形成されており、キャップ54には軸方向に貫通する孔54aが形成されている。そして、孔54aから工具等を挿入してケース5内でばね受7を回転すると、ばね受7はケース5内を軸方向に移動し、回転を止めるとその位置で留まる。より詳細に説明すると、ばね受7をケース5に対して正回転して弁体6側に前進させると、低速域において、オリフィス特性からバルブ特性へ変化する特性線上のポイントである変曲点Y1,Y3(図6)を高速側にずらせる。反対に、ばね受7をケース5に対して逆回転して弁体6から離れるように後退させると、コイルばねSが伸長して弾性力が小さくなるので、上記変曲点Y1,Y3(図6)を低速側にずらせる。また、コイルばねSをばね定数の異なる他のばねに変更すれば、後期低速域における特性線(実線X2,X5)の傾きを変更できる。
なお、本実施の形態において、弁体6を弁座42b側に附勢する弾性部材としてコイルばねSを利用している。しかし、例えば、皿ばね又はゴム等、他の弾性を有する部材を弾性部材として利用してもよい。また、本実施の形態において、ケース5をハウジング4の内周に螺合しており、ケース5をハウジング4に対して回転するとケース5がハウジング4内を軸方向に移動し、回転を止めるとその場に留まる。このため、ハウジング4に対するケース5の軸方向位置の調整が容易である。しかし、ハウジング4に対するケース5の軸方向位置を変更するとともに、変更した位置にケース5を留めておければ、螺合以外の方法でケース5の位置を調整してもよい。同様に、ばね受7をケース5の内周に螺合しており、ケース5に対するばね受7の軸方向位置の調整も容易である。しかし、ケース5に対するばね受7の軸方向位置を変更するとともに、変更した位置にばね受7を留めておければ、螺合以外の方法でばね受7の位置を調整してもよい。
また、本実施の形態においては、フランジ部62がストッパ部50に当接し、弁体6の弁座42b側への移動がケース5により規制される状態においても、弁体6が弁座42bからわずかに離れ、これらの間にオリフィスOを形成するようになっている。よって、緩衝器Dは、極低速域において、当該オリフィスOの初期流路面積に応じた減衰力を発生する。しかし、伸側メインバルブV1又は圧側メインバルブV2を構成するリーフバルブに切欠を設けたり、当該リーフバルブが着座する弁座に打刻を設けたりしてオリフィスを形成し、当該オリフィスで極低速域の減衰力を発生する場合には、伸側絞り弁V3又は圧側絞り弁V4によって形成されるオリフィスOの初期流路面積を零に設定してもよい。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。
緩衝器Dの伸長時には、ピストン10がシリンダ1内を図1,2中上方に移動して伸側室L1を圧縮し、圧側室L2を拡大する。そして、緩衝器Dが低速で伸長する低速域では、伸側メインバルブV1の開弁圧に達しないので、縮小される伸側室L1の液体は、伸側第一減衰通路P1を通過せず、外周通路P8と伸側第二減衰通路P3を通過して液溜室L3に移動する。よって、伸側低速域において、緩衝器Dは、液体が伸側第二減衰通路P3を通過する際の、伸側絞り弁V3の抵抗に起因する減衰力を発生する。この伸側低速域の減衰力特性は、弁体6がケース5で弁座42b側への移動を規制された状態から後退を開始する変曲点Y1の前後で変化する(図6)。
上記伸側低速域において、弁体6が後退を開始する速度に達しない極低速域では、図6中破線X1で示すように、緩衝器Dの減衰力特性が速度の二乗に比例するオリフィス特性となる。また、弁体6が後退を開始すると、弁体6の後退する量が速度に応じて徐々に大きくなるので、オリフィスOの流路面積が徐々に広がる。よって、弁体6が後退を開始する速度に達した後の後期低速域では、図6中実線X2で示すように、緩衝器Dの減衰力特性が速度に比例するバルブ特性に変化する。そして、極低速域における減衰力は、ハウジング4に対してケース5を回転し、オリフィスOの初期流路面積を変更することで調節できる。また、極低速域から後期低速域に移行する変曲点Y1の位置は、ケース5に対してばね受7を回転し、コイルばねSの弾性力を変更することで調節できる。
つづいて、緩衝器Dの伸長速度が高くなって高速域に達すると、伸側メインバルブV1が開弁し、縮小される伸側室L1の液体が、伸側第一減衰通路P1を通過して圧側室L2に移動するようになる。よって、伸側高速域において、緩衝器Dは、液体が伸側第一減衰通路P1を通過する際の、伸側メインバルブV1の抵抗に起因する減衰力を発生する。この伸側高速域の減衰力特性は、図6中一点鎖線X3で示すように、速度に比例するバルブ特性である。
前述の後期低速域における減衰力特性を示した特性線(実線X2)の傾きは、直後の伸側高速域の特性線(一点鎖線X3)の傾きよりも大きく、直前の極低速域の特性線(破線X1)の傾きよりも小さい。このため、乗り心地を良好にする目的で極低速域の減衰力を大きくしても、低速域から高速域に移行する特性線上のポイントである変曲点Y2を境にした減衰力特性の変化が緩やかである。つまり、極低速域の減衰力を大きくしても低速域から高速域に移行する際に減衰力特性が急変しないので、極低速域における乗り心地を損なわずに搭乗者にショックを知覚させるのを防止できる。
また、緩衝器Dの伸長時には、伸側逆止弁V5が開き、液溜室L3の液体が伸側吸込通路P5を通って拡大する圧側室L2に移動する。また、緩衝器Dの伸長時には、シリンダ1から退出したロッド11体積分シリンダ1内容積が大きくなるが、フリーピストン20が図1,2中下側に移動して気室Gを拡大し、シリンダ1内容積変化を補償できる。
反対に、緩衝器Dの収縮時には、ピストン10が図1,2中下方に移動して圧側室L2を圧縮し、伸側室L1を拡大する。そして、緩衝器Dが低速で収縮する低速域では、圧側メインバルブV2及び圧側分流バルブV7の開弁圧に達しないので、縮小される圧側室L2の液体は、圧側第一減衰通路P2及び圧側分流通路P7を通過せず、圧側第二減衰通路P4を通過して液溜室L3に移動する。よって、圧側低速域において、緩衝器Dは、液体が圧側第二減衰通路P4を通過する際の、圧側絞り弁V4の抵抗に起因する減衰力を発生する。この圧側低速域の減衰力特性は、伸長時と同様に、弁体6がケース5で弁座42b側への移動を規制された状態から後退を開始する変曲点Y3の前後で変化する(図6)。
上記圧側低速域において、弁体6が後退を開始する速度に達しない極低速域では、図6中破線X4で示すように、緩衝器Dの減衰力特性が速度の二乗に比例するオリフィス特性となる。また、弁体6が後退を開始すると、弁体6の後退する量が速度に応じて徐々に大きくなるので、オリフィスOの流路面積が徐々に広がる。よって、弁体6が後退を開始する速度に達した後の後期低速域では、図6中実線X5で示すように、緩衝器Dの減衰力特性が速度に比例するバルブ特性に変化する。そして、極低速域における減衰力は、ハウジング4に対してケース5を回転し、オリフィスOの初期流路面積を変更することで調節できる。また、極低速域から後期低速域に移行する変曲点Y3の位置は、ケース5に対してばね受7を回転し、コイルばねSの弾性力を変更することで調節できる。
つづいて、緩衝器Dの収縮速度が高くなって高速域に達すると、圧側メインバルブV2が開弁し、縮小される圧側室L2の液体が、圧側第一減衰通路P2を通過して液溜室L3に移動するようになる。また、圧側分流バルブV7が開弁すると、圧側室L2の液体が圧側分流通路P7を通過して伸側室L1にも移動するようになる。よって、圧側高速域において、緩衝器Dは、液体が圧側第一減衰通路P2を通過する際の、圧側メインバルブV2の抵抗に起因する減衰力を発生する。加えて、圧側高速域において、圧側分流バルブV7が開弁すると、緩衝器Dは、液体が圧側分流通路P7を通過する際の、圧側分流バルブV7の抵抗に起因する減衰力を発生する。この圧側高速域の減衰力特性は、図6中一点鎖線X6で示すように、速度に比例するバルブ特性である。
前述の後期低速域における減衰力特性を示した特性線(実線X5)の傾きは、直後の圧側高速域の特性線(一点鎖線X6)の傾きよりも大きく、直前の極低速域の特性線(破線X4)の傾きよりも小さい。このため、乗り心地を良好にする目的で極低速域の減衰力を大きくしても、低速域から高速域に移行する特性線上のポイントである変曲点Y4を境にした減衰力特性の変化が緩やかである。つまり、極低速域の減衰力を大きくしても低速域から高速域に移行する際に減衰力特性が急変しないので、極低速域における乗り心地を損なわずに搭乗者にショックを知覚させるのを防止できる。
また、本実施の形態において、圧側第一減衰通路P2の途中に、当該通路の流路面積を変更する調整弁V20が設けられる。このため、圧側メインバルブV2が最大限に開口した後の、減衰力を調整弁V20で変更できる。
また、緩衝器Dの収縮時には、圧側逆止弁V6が開き、液溜室L3の液体が圧側吸込通路P6と外周通路P8を通って拡大する伸側室L1に移動する。また、緩衝器Dの収縮時には、シリンダ1内に進入したロッド11体積分シリンダ1内容積が小さくなるが、フリーピストン20が図1,2中上側に移動して気室Gを圧縮し、シリンダ1内容積変化を補償できる。
上記説明において、緩衝器Dの伸縮速度の領域を低速域と高速域とに区画し、さらに低速域を極低速域と後期低速域とに区画しているが、各領域の閾値はそれぞれ任意に設定できる。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
本実施の形態において、緩衝器Dは、シリンダ1の外側に設けられて内部にリザーバRが形成されるタンク2と、シリンダ1とタンク2とを連結する連結部材3とを備える。そして、この連結部材3に、伸側絞り弁V3、圧側絞り弁V4、調整弁V20の全てが取り付けられる。
上記構成によれば、図2に示すように、シリンダ1とタンク2とを横並びにしたり、シリンダ1の中心線とタンク2の中心線が交差する(立体交差を含む)ようにシリンダ1とタンク2とを配置させたりできる。よって、シリンダ1とタンク2とを一体型にして、直列に配置する場合と比較して、緩衝器Dが軸方向に嵩張るのを防止できるとともに、シリンダ1とタンク2との配置を緩衝器Dの取り付けスペースに適した配置にし易い。また、連結部材3は、シリンダ1及びタンク2と異なり、ピストン10又はフリーピストン20の摺動を可能にする摺動部を設ける必要がなく、形状自由度が高い。加えて、連結部材3は、シリンダ1とタンク2とを連結する都合上、シリンダ1内とタンク2内とを連通する通路を形成し易い。よって、連結部材3は、伸側絞り弁V3、圧側絞り弁V4及び調整弁V20を設けるのに適している。しかし、シリンダ1とタンク2とを連結部材3を介さずに一体型にしてもよく、伸側絞り弁V3、圧側絞り弁V4及び調整弁V20の何れか又は全てをシリンダ1内又はタンク2内に設けてもよい。
また、本実施の形態において、圧側メインバルブ(メインバルブ)V2と直列に圧側第一減衰通路(第一減衰通路)P2の流路面積を変更する調整弁V20を設けている。
上記構成によれば、圧側メインバルブV2が最大限に開弁した後の、圧側高速減衰力を調整弁V20で調整できる。よって、収縮時の減衰力特性を車両の仕様、使用環境、搭乗者の好み等に合わせて、より最適な特性に調整できる。しかし、調整弁V20を廃するとしてもよい。また、本実施の形態においては、調整弁V20を圧側メインバルブV2に直列させているが、伸側メインバルブV1と直列に設け、伸側第一減衰通路P1の流路面積を変更するようにしてもよい。
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、ケース5内の弁体6の図5中下側(他端側)に挿入されてコイルばね(弾性部材)Sの一端を支持し、ケース5に対する軸方向位置を調整可能なばね受7を備えている。
上記構成によれば、低速域におけるオリフィス特性の減衰力(図6中破線X1,X4)からバルブ特性の減衰力(図6中実線X2,X5)に切り換わる変曲点Y1,Y3を調節できる。加えて、本実施の形態においては、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4の両方がばね受7を備えるので、減衰力特性を車両の仕様、使用環境、搭乗者の好み等に合わせて、より最適な特性に調整できる。しかし、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4の一方又は両方のばね受7位置を固定してもよい。
また、本実施の形態において、緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室L1と圧側室L2に区画するピストン10と、リザーバRと、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側第一減衰通路P1と、圧側室L2とリザーバRとを連通する圧側第一減衰通路P2と、伸側第一減衰通路P1を開閉し、伸側第一減衰通路P1を移動する流体の流れに抵抗を与える伸側メインバルブV1と、圧側第一減衰通路P2を開閉し、圧側第一減衰通路P2を移動する流体の流れに抵抗を与える圧側メインバルブV2と、伸側室L1とリザーバRとを連通する伸側第二減衰通路P3と、圧側メインバルブV2を迂回して圧側室L2とリザーバRとを連通する圧側第二減衰通路P4と、伸側第二減衰通路P3を絞る伸側絞り弁V3と、圧側第二減衰通路P4を絞る圧側絞り弁V4とを備える。そして、伸側絞り弁V3及び圧側絞り弁V4は、軸方向の一端部に設けられた弁座42bを含むハウジング4と、ハウジング4内に挿入されてハウジング4に対する軸方向位置を調整可能なケース5と、図5中上端(一端)を弁座42bに向けてケース5内に移動可能に挿入されるとともに、ケース5で弁座42b側への移動を規制される弁体6と、弁体6を弁座42b側に附勢するコイルばね(弾性部材)Sとを有する。
上記構成によれば、極低速域における減衰力を大きくして、速度の増加に対して速やかに減衰力を立ち上げたとしても、伸側メインバルブV1又は圧側メインバルブV2が開弁する前に弁体6が後退するように設定できる。このように設定すると、弁体6の後退によりオリフィスOの流路面積が大きくなって、後期低速域における特性線(図6中実線X2、X5)の傾きを小さくできる。よって、緩衝器Dの伸縮速度が低速域から高速域に移行して、減衰力特性が伸側メインバルブV1又は圧側メインバルブV2のバルブ特性に切り換わったとき、減衰力特性が急変せず、搭乗者にショックを知覚させて乗り心地が悪いと感じさせずに済む。つまり、上記構成によれば、極低速域における乗り心地を損なわずに、低速域から高速域に移行する際のショックを低減できる。
加えて、上記構成によれば、伸長時と収縮時の両方の極低速域の減衰力を個別に調整できる。
なお、本実施の形態において、緩衝器Dが伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4の両方を備え、これらが本発明に係る構成を備えているが、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4の一方を省略してもよく、伸側絞り弁V3と圧側絞り弁V4の一方のみが本発明に係る構成を備えるとしてもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。